JP2016160916A - 密閉型回転圧縮機および冷凍サイクル装置とベーンの被膜製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本実施形態は、圧縮機構部を構成するベーンの側面において、特に、負荷が小さい中央部領域は、被膜の厚さを薄くする、または被膜をなくすことで、内部応力低減による被膜剥離を防止し、信頼性を確保する密閉型回転圧縮機および冷凍サイクル装置とベーンの被膜製造方法を提供する。
【解決手段】密閉型回転圧縮機は、冷媒を圧縮する圧縮機構部を備え、圧縮機構部を構成するベーンは、その摺動面にPVD処理およびCVD処理の少なくともいずれか一方で処理された被膜を形成し、前記ベーンが当接するローラが嵌合する回転軸の偏心部の偏心量をeとしたとき、前記ベーンの先端および後端から内側に2e離れた摺動方向中央部領域の少なくとも一部に、前記被膜の厚さが他部より薄い薄肉部または被膜のない非被膜部を形成した。
【選択図】 図3
【解決手段】密閉型回転圧縮機は、冷媒を圧縮する圧縮機構部を備え、圧縮機構部を構成するベーンは、その摺動面にPVD処理およびCVD処理の少なくともいずれか一方で処理された被膜を形成し、前記ベーンが当接するローラが嵌合する回転軸の偏心部の偏心量をeとしたとき、前記ベーンの先端および後端から内側に2e離れた摺動方向中央部領域の少なくとも一部に、前記被膜の厚さが他部より薄い薄肉部または被膜のない非被膜部を形成した。
【選択図】 図3
Description
本発明の実施形態は、密閉型回転圧縮機および冷凍サイクル装置とベーンの被膜製造方法に関する。
冷凍サイクル装置は、室内を冷房あるいは暖房する空気調和機、冷蔵庫、冷凍ショーケースなどの冷凍装置、あるいはヒートポンプ式給湯機に用いられる。これらの冷凍サイクル装置は、密閉型回転圧縮機を組み込み、HFC系冷媒もしくはその他HC系やCO2等の自然冷媒などの冷媒を循環させる。
密閉型回転圧縮機は、密閉ケース内に電動機部および電動機部と回転軸を介して連結する圧縮機構部を収納する。圧縮機構部は、シリンダ内に回転軸に嵌合されたローラを配置し、このローラ周面にベーンの先端を弾性的に当接する。電動機部が駆動されローラが回転すると、ベーンがベーン案内溝に沿って往復動自在に摺動する。
したがって、ベーン先端がローラ周面に対して摩耗し易く、さらに、ベーンの側面およびベーン案内溝壁面が摩耗し易い。特許文献1には、ローラとベーン先端との油膜厚さを適正に確保し、ベーン側面とベーン案内溝壁面との摺動を円滑にする技術が開示されている。
この技術は、ベーン先端の円弧の中心を、ベーンの中心より低圧側へずらして設け、さらにベーンに上死点近傍で密閉容器底部の油溜り部と連通する給油溝をベーンの低圧側面幅の中央部に設けたことを特徴としている。しかしながら、長期の使用に亘れば、ベーンの先端および両側面である摺動面が摩耗してくるのを避けられない。
近時、ベーンの先端および側面などの摺動面に、少なくともPVD(物理蒸着)処理、もしくはCVD(化学蒸着)処理の、いずれか、あるいは両方で処理された被膜を形成する。この被膜により、長期に亘ってベーン摺動面の摩耗防止を図る技術が多用される傾向にある。
一方、ベーンの先端と比較して、この側面においては、摺動領域が広く、処理面積も広いため、被膜の内部応力による剥離や、部品変形による剥離が生じ易いことも不具合として知られている。
すなわち、回転軸の回転にともなって、ローラの周面一部がシリンダの内径部周壁に沿って接触しながら偏心運動する。回転軸の偏心部の偏心方向がベーン案内溝方向と一致したとき(上死点位置)、ベーンの先端はシリンダの内径部周壁と同一位置まで後退し、その位置から180°回転したとき(下死点位置)ベーンの先端はシリンダ内径部へ最も長く突出する。
回転軸の偏心部の偏心量をeとすると、ベーンの先端がシリンダの内径部周壁と同一位置まで後退したとき、ベーンの後端は、ベーン案内溝からベーンを弾性的に押圧する弾性体を収容するベーン背室へ突出する。このときのベーン後端のベーン背室への突出量は、ベーン背室の容積により異なるが、概ね偏心量eの2倍の距離である2e分である。
そして、この位置から回転軸が180°回転したとき、ベーン先端はローラの偏心量eの2倍の距離である2e分だけ突出し、ベーンの側面はベーン背室から抜け出てベーン案内溝に収まる。
結局、ベーンの側面において、先端から2e分と、後端から約2e分だけがベーン案内溝から突没し、その際にベーン案内溝の両端角部と高い面圧で摺動し、歪みが生じて内部応力が発生する。一方、ベーンの側面において、先端および後端から2e分を除く中央部領域は、常にベーン案内溝内にあって負荷が小さく、歪みによる内部応力が発生することは極く少ない。
そこで本実施形態は、圧縮機構部を構成するベーンの側面において、特に、負荷が小さい中央部領域は被膜の厚さを薄くすることで、運転初期の内部応力低減による被膜剥離を防止し、信頼性を確保する密閉型回転圧縮機および冷凍サイクル装置とベーンの被膜製造方法を提供しようとするものである。
本実施形態の密閉型回転圧縮機は、冷媒を圧縮する圧縮機構部を備え、圧縮機構部を構成するベーンは、その摺動面にPVD処理およびCVD処理の少なくともいずれか一方で処理された被膜を形成し、ベーンが当接するローラが嵌合する回転軸の偏心部の偏心量をeとしたとき、ベーンの先端および後端から内側に2e離れた摺動方向中央部領域の少なくとも一部に、被膜の厚さが他部より薄い薄肉部または被膜のない非被膜部を形成した。
本実施形態の冷凍サイクル装置は、前記密閉型回転圧縮機と、凝縮器と、膨張装置と、蒸発器を、順次、冷媒管を介して連通し、冷凍サイクル回路を構成した。
本実施形態のベーンの被膜製造方法は、前記密閉型回転圧縮機の圧縮機構部を構成するベーンは、摺動方向中央部領域に物理的な障害物を設けて、PVD処理およびCVD処理の少なくともいずれか一方をなし、薄肉部または非被膜部を形成する。
以下、第1の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、密閉型回転圧縮機Kの概略縦断面図であるとともに、この密閉型回転圧縮機Kを備えた冷凍サイクル装置の冷凍サイクル回路Rの構成図である。
冷凍サイクル装置の冷凍サイクル回路Rは、密閉型回転圧縮機Kと、凝縮器2と、膨張装置3と、蒸発器4およびアキュームレータ5を順次、冷媒管Pを介して連通することで構成される。冷凍サイクル回路Rに用いられる冷媒は、HFC系冷媒、HFO系冷媒、HC(炭化水素系)系冷媒または二酸化炭素(CO2)冷媒である。
図1は、密閉型回転圧縮機Kの概略縦断面図であるとともに、この密閉型回転圧縮機Kを備えた冷凍サイクル装置の冷凍サイクル回路Rの構成図である。
冷凍サイクル装置の冷凍サイクル回路Rは、密閉型回転圧縮機Kと、凝縮器2と、膨張装置3と、蒸発器4およびアキュームレータ5を順次、冷媒管Pを介して連通することで構成される。冷凍サイクル回路Rに用いられる冷媒は、HFC系冷媒、HFO系冷媒、HC(炭化水素系)系冷媒または二酸化炭素(CO2)冷媒である。
密閉型回転圧縮機Kは、2シリンダタイプであって、密閉ケース10を備える。この密閉ケース10内の上部に電動機部11が収容され、下部に複数の圧縮機構部12が収容される。電動機部11は、回転軸13を介して圧縮機構部12と連結される。
電動機部11は、回転子15および固定子16とからなり、インバータで駆動されるブラシレスDC同期モータ、ACモータ、もしくは商用電源で駆動されるモータであっても良い。
電動機部11は、回転子15および固定子16とからなり、インバータで駆動されるブラシレスDC同期モータ、ACモータ、もしくは商用電源で駆動されるモータであっても良い。
密閉ケース10の内底部には潤滑油の油溜り部Mが形成されていて、ここに圧縮機構部12が浸漬される。潤滑油として、ポリオールエステル油、エーテル系油、鉱物油、アルキベンゼン油、PAG油の単一油もしくは混合油が用いられる。
圧縮機構部12は、上部に位置する第1の圧縮機構部18Aと、下部に位置する第2の圧縮機構部18Bからなり、これら第1圧縮機構部18Aと第2の圧縮機構部18Bとの相互間には、中間仕切り板20が介在される。
第1の圧縮機構部18Aは第1のシリンダ21を備え、第2の圧縮機構部18Bは第2のシリンダ22を備えている。第1のシリンダ21は密閉ケース10の内周壁に取付けられ、上面には主軸受23が取付けられる。第2のシリンダ22の下面には副軸受24が重ねられ、中間仕切り板20とともに第1のシリンダ21に取付けられる。
回転軸13は、中間部が主軸受23に回転自在に枢支され、下端部は副軸受24に回転自在に枢支される。さらに、回転軸13は第1のシリンダ21と中間仕切り板20および第2のシリンダ22の内径部を貫通し、これら内径部において略180°の位相差で同一直径の第1の偏心部aと、第2の偏心部bを一体に備えている。
第1の偏心部a周面に第1のローラ25が嵌合され、第2の偏心部b周面に第2のローラ26が嵌合される。これら第1、第2のローラ25,26は、回転軸13の回転にともなって、それぞれ周面一部が、第1のシリンダ21および第2のシリンダ22の内径部周壁に沿って線接触しながら偏心運動可能に収容される。
前記第1のシリンダ21の内径部は、主軸受23と中間仕切り板20とによって閉塞され、第1のシリンダ室Saが形成される。第2のシリンダ22の内径部は、中間仕切り板20と副軸受24とによって閉塞され、第2のシリンダ室Sbが形成される。
第1のシリンダ室Saと第2のシリンダ室Sbの直径および、回転軸13の軸方向長さである高さ寸法は、互いに同一に設定される。第1のローラ25は第1のシリンダ室Saに収容され、第2のローラ26は第2のシリンダ室Sbに収容される。
第1のシリンダ室Saと第2のシリンダ室Sbの直径および、回転軸13の軸方向長さである高さ寸法は、互いに同一に設定される。第1のローラ25は第1のシリンダ室Saに収容され、第2のローラ26は第2のシリンダ室Sbに収容される。
主軸受23には、吐出孔cを有する吐出マフラ28が取付けられ、主軸受23に設けられる吐出弁機構29を覆っている。副軸受24にも吐出マフラ30が取付けられ、副軸受24に設けられる吐出弁機構31を覆っている。ただし、この吐出マフラ30には吐出孔が設けられていない。
主軸受23に設けられる吐出弁機構29は第1のシリンダ室Saに連通し、圧縮作用にともないシリンダ室Sa内が所定圧力に上昇したとき開放して、圧縮されたガス冷媒を吐出マフラ28内に吐出する。副軸受24の吐出弁機構31は第2のシリンダ室Sbに連通し、圧縮作用にともないシリンダ室Sb内が所定圧力に上昇したときに開放して、圧縮されたガス冷媒を吐出マフラ30へ吐出する。
副軸受24と、第2のシリンダ22と、中間仕切り板20と、第1のシリンダ21および主軸受23とに亘って吐出ガス案内路(図示しない)が設けられる。この吐出ガス案内路は、第2のシリンダ室Sbで圧縮され、吐出弁機構31を介して下部側の吐出マフラ30へ吐出されたガス冷媒を上部側の吐出マフラ28内へ案内する。
密閉ケース10の上面部には、圧縮された冷媒ガスを吐出する冷媒管Pが接続される。また、アキュームレータ5から2本の吸込み通路である吸込み冷媒管P,Pが延出され、密閉型回転圧縮機Kの密閉ケース10を介して第1のシリンダ21および第2のシリンダ22に接続される。
以下、図2において第1の圧縮機構部18Aを詳細に説明する。第2の圧縮機構部18Bは、第1の圧縮機構部18Aと同一構造につき、第1の圧縮機構部18Aの説明を引用して新たな説明は省略する。
シリンダ21には、この肉厚(軸)方向に沿って、内径部であるシリンダ室Saに開放するベーン案内溝33が設けられ、さらにベーン案内溝33の後端にベーン背室34が連設される。ベーン案内溝33とベーン背室34には、ベーン35が往復動自在に収容される。
ベーン35の先端はシリンダ室Saに突没自在であり、この後端はベーン背室34に突没自在である。ベーン35の先端は平面視で略円弧状に形成されていて、この先端が対向するシリンダ室Saへ突出した状態で、平面視で円形状のローラ25周面に対向する。
ベーン背室34には、図示しないコイルスプリング(d:図1に第2の圧縮機構部18Bについてのみ図示)が収容される。圧縮機構部18Aとして組立てられた状態で、コイルスプリングの一端部が密閉ケース10内周壁に当接し、他端部がベーン35の後端を押圧付勢する。そのため、ベーン35の先端一部(先端縁)はローラ25周面に弾性的に当接する。
図1に示すように、電動機部11に通電され回転軸13が回転駆動すると、第1、第2のローラ25,26が180°の位相差を持って同時に偏心運動をなす。各ローラ25,26の偏心運動にともない、冷媒管Pからベーン35によって区分された第1、第2のシリンダ室Sa,Sbの吸込み室にガス冷媒が吸込まれる。
さらに、区分されたシリンダ室Sa,Sbの圧縮室へ移動し圧縮される。圧縮室の容積が小さくなりガス冷媒の圧力が所定圧に上昇すると吐出弁機構29,31を介して吐出マフラ28,30へ吐出される。
そして、電動機部11を構成する部品相互間に設けられるガス案内路を介して密閉ケース10内部上端に充満し、吐出用冷媒管Pから圧縮機K外部へ吐出される。結局、第1のシリンダ室Saおよび第2シリンダ室Sbとの両方で圧縮作用が行われる。
そして、電動機部11を構成する部品相互間に設けられるガス案内路を介して密閉ケース10内部上端に充満し、吐出用冷媒管Pから圧縮機K外部へ吐出される。結局、第1のシリンダ室Saおよび第2シリンダ室Sbとの両方で圧縮作用が行われる。
高圧のガス冷媒は密閉型回転圧縮機Kから凝縮器2に導かれて凝縮し、液冷媒に変る。この液冷媒は膨張装置3に導かれて断熱膨張し、蒸発器4に導かれて蒸発しガス冷媒に変る。蒸発器4において周囲の空気から蒸発潜熱を奪い、冷凍作用をなす。
再び、図2に戻って、回転軸13の回転にともなってローラ25の周面一部がシリンダ室Sa周壁に沿って接触しながら偏心運動し、回転軸13の偏心部aの偏心方向がベーン案内溝33方向と一致する上死点位置になったとき、ベーン35の先端はシリンダ室Sa周壁と同一位置まで後退することになる。このときの回転角を0°とする。ベーン35の側面後部および後端(以下、「後端部」という)はベーン案内溝33から抜け出てベーン背室34に突出する。
回転軸13の偏心部aの偏心量をeとすると、回転角が0°のとき、ベーン35の後端部は、ベーン案内溝33からベーン背室34に突出するが、このときのベーン35後端部がベーン背室34に突出する量は、ベーン背室34の容積により異なるが、概ね偏心量eの2倍の距離である2e分である。
ここから回転軸13が90°回転して、回転角が90°になったときは、ベーン35の先端はシリンダ室Saに偏心量e分だけ突出し、ベーン35の後端部は偏心量e分だけベーン案内溝33に侵入する。
さらに、回転軸13が90°回転して、回転角が180°になったとき(下死点位置)、ベーン35の先端はシリンダ室Saへ最も長く突出する。このときのベーン35の突出量はローラ25の偏心量eの2倍の距離である2eであり、ベーン35の後端部はベーン背室34から抜け出てベーン案内溝33に収まる。
さらに、回転軸が90°回転して、回転角が270°のとき、ベーン35の先端はシリンダ室Saに量e分だけ突出するよう後退し、ベーン35の後端部は偏心量e分だけベーン案内溝33へ侵入する。
回転角が360°のときは、回転角が0°のときと同一の状態になる。
回転角が360°のときは、回転角が0°のときと同一の状態になる。
結局、ベーン35の側面において、先端からローラ25の偏心量eの2倍の距離である2e分だけがベーン案内溝33からシリンダ室Saに突没するとともに、後端部がローラ25の偏心量eの2倍の距離である約2e分だけがベーン案内溝33からベーン背室34に突没することになる。
ベーン35はシリンダ室を吸込み室と圧縮室に二分しており、往復動にともなう突没の際に、ベーン35の側面は圧力差によってベーン案内溝33に押付けられ、特にベーン案内溝33の両端角部において高い面圧となることから歪みが生じて内部応力が発生する。一方、ベーン35の側面における先端および後端端部から2e分を除いた中央部領域は、常にベーン案内溝33内にあって負荷が小さく、内部応力が発生することは少ない。
図3は、ベーン35の側面図である。
ベーン35の摺動面である、少なくともベーン35の半円状の先端fと両側面gに対して、PVD(物理蒸着)処理でCrN(窒化クロム)被膜を形成する。ベーン35の非摺動面である上面h、下面iおよび後端jについては、被膜を形成してもよく、特に形成しなくても支障が無い。
ベーン35の摺動面である、少なくともベーン35の半円状の先端fと両側面gに対して、PVD(物理蒸着)処理でCrN(窒化クロム)被膜を形成する。ベーン35の非摺動面である上面h、下面iおよび後端jについては、被膜を形成してもよく、特に形成しなくても支障が無い。
PVD処理として、たとえばスパッタリング法が多用される。これは、プラズマ法により高いエネルギーをもった粒子をターゲット(材料)に衝突させ、その衝撃で材料成分をたたき出し、その粒子を基板(対象物)上に堆積させることで、被膜を形成する方法である。
CVD(化学蒸着)処理は、被膜としたい元素を含むガスを導入し、プラズマにより励起や分解をさせて基板表面に吸着し、反応等を経て被膜を形成する方法である。
CVD(化学蒸着)処理は、被膜としたい元素を含むガスを導入し、プラズマにより励起や分解をさせて基板表面に吸着し、反応等を経て被膜を形成する方法である。
ベーン35の全長をL、ローラ25の回転軸13中心に対する偏心量をeとしたとき、ベーン35の側面gにおいて、ベーン35の先端fおよび後端jからの寸法が2e分の範囲は、上記した処理にて被膜を形成するが、ベーン35の先端fおよび後端jから内側に2e離れたベーン摺動方向中央部領域(図にハッチングで示す範囲)Nを被膜40の厚さが他の部分、すなわち、ベーン35の先端fおよび後端jからの寸法が2e分の範囲より肉厚を薄肉部にする。
すなわち、ベーン35は上面h、下面iおよび後端jを除いた先端fと両側面gが負荷の高い摺動面になるが、被膜40を形成することでベーン35を構成する基材の摩耗防止が図れる。また、ベーン35の側面は摺動領域が広く、処理面積も広いため内部応力による被膜剥離や、部品変形による剥離が生じ易い。
そこで、ベーン35の両側面gにおいて、負荷が小さい中央部領域Nにおける被膜40の厚さを薄くする。したがって、ベーン35の側面gの中央部領域Nでは、内部応力が低減し、よって被膜剥離の防止および信頼性の確保が図れる。
なお、ベーン35の側面gにおけるベーン摺動方向中央部領域N、詳しくは先端fと後端jからそれぞれ偏心部aの偏心量eの2倍の距離2eを除いた中央部領域Nの全部の被膜40を薄くするようにしたが、これに限定されるものではない。
図4は、第2の実施形態のベーン35aの横断平面図である。
ここでは、ベーン35aは、その全周面を所定厚さの被膜41で覆うこととする。ただし、両側面gにおける摺動方向中央部領域Nのうちの一部n1を被膜がない非被膜部にした構成としてもよい。ベーン35aの側面gの中央部領域Nでは、内部応力が低減するので、一部n1に被膜41が無くても、被膜剥離の防止および信頼性の確保が図れる。
ここでは、ベーン35aは、その全周面を所定厚さの被膜41で覆うこととする。ただし、両側面gにおける摺動方向中央部領域Nのうちの一部n1を被膜がない非被膜部にした構成としてもよい。ベーン35aの側面gの中央部領域Nでは、内部応力が低減するので、一部n1に被膜41が無くても、被膜剥離の防止および信頼性の確保が図れる。
さらに、同様の理由から、第2の実施形態の変形例として、図5(A)に示すように、ベーン35bの摺動方向中央部領域Nの一部(ハッチングで示す)のみを長円状の薄膜部41aとし、残り全部を通常厚さの被膜に形成してもよい。また、図5(B)に示すように、ベーン35cの摺動方向中央部領域Nの一部(ハッチングで示す)のみを帯状の薄膜部41bとし、残り全部を通常厚さの被膜としてもよい。
第3の実施形態として、以上説明したベーン35,35a,35b,35cに対するPVD処理もしくはCVD処理で処理された被膜を、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)被膜とする。
図6は、同実施形態のベーン35dの縦断面図である。
DLCは、ベーン35の基材を、たとえばSKH51(高速度工具鋼)とし、PVD処理にてCr(クロム)層を基材の上に形成後、テトラメチルシラン、アセチレンガスを少なくとも原料の1つとしたCVD処理にて被膜を形成したものである。金属を含有せず、水素を含有したアモルファスの硬質炭素膜であり、硬さ、潤滑性、耐摩耗性、化学的安定性、表面平滑性、離型性、耐焼付け性に優れるなどの特徴がある。
DLCは、ベーン35の基材を、たとえばSKH51(高速度工具鋼)とし、PVD処理にてCr(クロム)層を基材の上に形成後、テトラメチルシラン、アセチレンガスを少なくとも原料の1つとしたCVD処理にて被膜を形成したものである。金属を含有せず、水素を含有したアモルファスの硬質炭素膜であり、硬さ、潤滑性、耐摩耗性、化学的安定性、表面平滑性、離型性、耐焼付け性に優れるなどの特徴がある。
たとえば、SKH51であるベーン35dの基材の表面に、PVD処理およびCVD処理で処理されたDLC被膜42を形成する。DLC被膜42の膜厚は、ベーン35の中央部領域Nの後端側を最も薄い薄肉部n1とし、ここから先端fに向かって漸次、厚肉に形成する。先端fの膜厚は最も厚い厚肉部n2とする。
このようにDLC被膜42を、ローラ25と摺接するベーン35の先端fに向かって厚肉に傾斜状とすることにより、いわゆる、くさび膜効果が期待できる。
すなわち、ローラ25とベーン35の傾斜状先端fに形成される厚肉部n2との間に介在する潤滑油は、粘性を有するために互いの隙間に引きずり込まれ、潤滑油の分子同志が押し合って圧力を発生する。潤滑油の粘度が高くなり、油膜は切れ難くなって、潤滑性のより向上を図れる。
そして、ベーン35の中央部領域Nに形成される薄膜部n1から、先端fとローラ25との摺接部へ向かって潤滑油の供給が円滑化し、これらの耐摩耗性の向上を図れる。
すなわち、ローラ25とベーン35の傾斜状先端fに形成される厚肉部n2との間に介在する潤滑油は、粘性を有するために互いの隙間に引きずり込まれ、潤滑油の分子同志が押し合って圧力を発生する。潤滑油の粘度が高くなり、油膜は切れ難くなって、潤滑性のより向上を図れる。
そして、ベーン35の中央部領域Nに形成される薄膜部n1から、先端fとローラ25との摺接部へ向かって潤滑油の供給が円滑化し、これらの耐摩耗性の向上を図れる。
第4の実施形態として、図7に示すように、ベーン35は、摺動方向中央部領域Nに物理的な障害物Zを設けることで、摺動方向中央部領域Nのみ被膜40の厚さを0もしくは薄く形成する薄肉部または被膜のない非被膜部nとした、ベーン35の被膜製造方法を説明する。
図8(A)は、ベーン35に対する被膜製造装置(コーティング装置)の概略構成図であり、図8(B)は同装置の作用説明図である。ここでは、PVD処理のうちのスパッタリング法が用いられている。
密閉構造の筐体50内に、図示しないアルゴンガス供給手段が接続されていて、アルゴンガスを供給できる。筐体50内部の基礎部には駆動機構51が設けられていて、回転テーブル52が取付けられる。
回転テーブル52には、角柱状の支柱53が立設されていて、この支柱53の互いの対向面にベーン35が多数枚支持される(1枚のみ図示)。ベーン35は、後端が支柱53に接し、この高さ方向に沿って適宜な手段で取付けられる。
さらに、回転テーブル52には、支柱53と平行に、物理的な障害物であるじゃま部材Zが立設される。このじゃま部材Zは、ベーン35の側面で、上記した摺動方向中央部領域Nの中心部に沿って取付けられる。結局、じゃま部材Zは、ベーン35の両側面から、ベーン35を挟み込むように立設される。
筐体50の左右両側面には、それぞれ電極54が設けられ、これら電極54と所定の間隔を有して、たとえばクロムもしくはタングステンからなるスパッタターゲット55が設けられる。筐体50の左右両側面外部には、スパッタ電源56が配置され、電極54とスパッタターゲット55にスパッタ電圧を供給できる。
また、筐体50の外部には、バイアス電源57が配置され、上記した駆動機構51を介して回転テーブル52と、左右の電極54にバイアス電圧を供給できる。回転テーブル52に供給されたバイアス電圧は、支柱53を介して、ここに支持された多数枚のベーン35に供給される。筐体50自体は、外部58にアースされている。
このようにして構成される被膜製造装置であって、ベーン35を支柱53にセットしたうえで筐体50内にアルゴンガスを供給する。そして、バイアス電源57から回転テーブル52と支柱53を介してベーン35にバイアス電圧を供給するとともに、左右の電極54にスパッタ電圧を供給する。
駆動機構51を駆動して、回転テーブル52を回転する。支柱53とともにベーン35が回転し、左右の電極54に交互に対向する。この状態で、左右のスパッタ電源56から電極54とスパッタターゲット55にスパッタ電圧を供給する。
図8(B)に示すように、筐体50内のアルゴンガスはプラズマ化して、高いエネルギーを持った粒子qとなりスパッタターゲット55に衝突する。その衝撃でスパッタターゲット55を構成する材料分子yがたたき出され、ベーン35に順次付着する。ベーン35にたたき出された材料分子yが堆積され、やがて被膜40が形成される。
その間にも、回転テーブル52と支柱53が回転を継続しており、ベーン35は交互に左右の電極54とスパッタターゲット55に対向するので、ベーン35の両側面には同一厚さの被膜40が形成される。
ベーン35の摺動方向中央部領域Nの略中心部にじゃま部材Zが設けられているので、ベーン35に飛散した材料分子yはじゃま部材Zを避けて付着する。その結果、摺動方向中央部領域Nのみ被膜40の厚さが0もしくは薄く形成される薄肉部nが設けられることになる。
以上、本実施形態を説明したが、上述の実施形態は、例として提示したものであり、実施形態の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
12…圧縮機構部、K…密閉型回転圧縮機、35…ベーン、40…被膜、n1…非被膜部、N…摺動方向中央部領域、42…DLC(ダイヤモンドライクカーボン)被膜、2…凝縮器、3…膨張装置、4…蒸発器、Z…じゃま部材(物理的な障害物)、n…薄膜部。
Claims (5)
- 冷媒を圧縮する圧縮機構部を備えた密閉型回転圧縮機において、前記圧縮機構部を構成するベーンは、その摺動面にPVD処理およびCVD処理の少なくともいずれか一方で処理された被膜を形成し、
前記ベーンが当接するローラが嵌合する回転軸の偏心部の偏心量をeとしたとき、前記ベーンの先端および後端から2e内側に離れた摺動方向中央部領域の少なくとも一部に、前記被膜の厚さが他部より薄い薄肉部または被膜のない非被膜部を形成したことを特徴とする密閉型回転圧縮機。 - 前記ベーンの被膜は、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)被膜であることを特徴とする請求項1記載の密閉型回転圧縮機。
- 前記DLC被膜を有する前記ベーンは、前記ベーンの摺動方向中央部領域の前記薄膜部または前記非被膜部から前記先端に向かって前記被膜を漸次傾斜状に厚肉に形成したことを特徴とする請求項2記載の密閉型回転圧縮機。
- 前記請求項1ないし請求項3のいずれか記載の前記密閉型回転圧縮機と、凝縮器と、膨張装置と、蒸発器を、順次、冷媒管を介して連通し、冷凍サイクル回路を構成したことを特徴とする冷凍サイクル装置。
- 前記請求項1ないし請求項3のいずれか記載の前記密閉型回転圧縮機の前記圧縮機構部を構成する前記ベーンは、前記摺動方向中央部領域に物理的な障害物を設けて、PVD処理およびCVD処理の少なくともいずれか一方をなし、前記薄肉部または前記非被膜部を形成することを特徴とするベーンの被膜製造方法。
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