JP2016160356A - グリース組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】潤滑油基油と、グリース組成物の全量基準で、増ちょう剤を3〜20質量%、脂肪族アミド化合物を5〜20質量%、および、固体潤滑成分として、モリブデンジチオカーバメートを2〜10質量%およびフッ素樹脂を1〜5質量%含むグリース組成物。
【選択図】なし
Description
近年、自動車や電気機器等の機械技術の進歩に伴い、各種機器は小型軽量化、高出力化、ロングライフ化の傾向あり、運転条件が過酷になってきている。これに伴い、各種機器に使用されるグリースも潤滑性等の要求性能が高まっている。
しかしながら、これらのグリースは潤滑する摺動面の荷重が高い場合には、摩擦係数が高いなどにより、いまだ十分な潤滑特性が得られない。このため、高負荷条件で潤滑特性を維持することが困難であった。
本発明は、かかる知見に基づきなされたもので、次のものからなる。
(2)さらに、潤滑油基油に溶解したモリブデンジチオカーバメートまたはジチオリン酸亜鉛の少なくとも一方または両方を、グリース組成物全量基準で0.2〜5質量%含む上記(1)に記載のグリース組成物。
(4)金属スルフォネートとして、グリース組成物全量基準で、マグネシウムスルフォネートを0.2〜5質量%、およびカルシウムスルフォネートを0.2〜5質量%含む上記(3)に記載のグリース組成物。
(5)固体潤滑成分としてのモリブデンジチオカーバメートを、グリース組成物全量基準で3〜10質量%含む上記(4)に記載のグリース組成物。
本発明の潤滑油基油としては、通常のグリースで用いられている潤滑油基油であれば、鉱油系または合成系のいずれも用いることができるが、40℃における動粘度が1〜500mm2/sのものが好ましく、5〜100mm2/sがより好ましい。40℃における動粘度が1〜500mm2/sから外れると、所望のちょう度を有するグリース組成物を簡便に調製でき難くなる。さらに、優れた潤滑性を有するグリースを調製するためには、粘度指数が90以上、特には95〜250、流動点が−10℃以下、特には−15〜−70℃、引火点が150℃以上の物性を有する潤滑油基油が好ましい。
また、固体潤滑剤を含有する場合には、潤滑油基油の15℃における密度が、0.75〜0.95g/cm3の範囲のものが好ましい。この密度は、特には0.8〜0.9g/cm3のものが好ましい。
この潤滑油基油の含有量は、グリース組成物全量基準で、50〜95質量%が好ましく、60〜85質量%とすることが特に好ましい。潤滑油基油の含有量が50〜95質量%の範囲とすると、所望のちょう度を有するグリース組成物を簡便に調製できる。
本発明の増ちょう剤としては、通常のグリースで用いられている増ちょう剤であれば、特に支障なく用いることができるが、金属石けん系増ちょう剤やウレア系増ちょう剤を用いることが好ましい。増ちょう剤は、一種類でも複数の種類を混合して用いてもよい。この増ちょう剤の含有量は、所望のちょう度が得られれば良く、例えば、グリース組成物の全量基準で、好ましくは2〜30質量%、さらに好ましくは5〜20質量%である。
カルボン酸は、ステアリン酸、アゼライン酸などの脂肪族カルボン酸でも、テレフタル酸などの芳香族カルボン酸でもよいが、1価または2価の脂肪族カルボン酸、特には炭素数6〜20の脂肪族カルボン酸が用いられる。特には、炭素数12〜20の1価脂肪族カルボン酸や炭素数6〜14の2価脂肪族カルボン酸が好ましく用いられる。1個のヒドロキシル基を含む1価脂肪族カルボン酸が好ましい。
金属としては、リチウム、ナトリウムなどのアルカリ金属、カルシウムなどのアルカリ土類金属、アルミニウムのような両性金属でもよいが、アルカリ金属、特にはリチウムが好ましく用いられる。
このようなカルボン酸金属塩は、一種類でも複数の種類を混合して用いてもよい。例えば、12‐ヒドロキシステアリン酸リチウムとアゼライン酸リチウムの混合物は特に好ましい。
ジイソシアネートとは、炭化水素の2つの水素がイソシアネート基で置換された化合物であり、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネー卜などが好ましく、炭化水素が、非環状炭化水素でも環状炭化水素でもよく、芳香族炭化水素でも脂環族炭化水素、脂肪族炭化水素でもよい。その炭素数は、4〜20、特には8〜18が好ましい。
本発明の脂肪族アミド化合物は、脂肪族炭化水素の少なくとも1つの水素がアミド基(‐NH‐CO‐)で置換された化合物であり、アミド基を1つ含む化合物(モノアミド)、アミド基を2つ含む化合物(ビスアミド)またはアミド基を3つ含む化合物(トリアミド)のいずれをも用いることができる。
好ましく用いられるアミド化合物は、融点が40〜180℃、より好ましくは80〜180℃、更に好ましくは100〜170℃、分子量が242〜932、より好ましくは298〜876のものである。
脂肪族のモノアミド、ビスアミド、及びトリアミドは、下記の一般式(1)、一般式(2)及び(3)、及び一般式(4)でそれぞれ表される。
R1‐CO‐NH‐A1‐NH‐CO‐R2 ・・・・(2)
R1‐NH‐CO‐A1‐CO‐NH‐R2 ・・・・(3)
R1‐M‐A1‐CH(A2‐M‐R3)‐A3‐M‐R2・・・・(4)
なお、モノアミドの場合、R2が水素又は炭素数10〜20の飽和又は不飽和の鎖状炭化水素基であることが好ましい。
また、ジアミンの酸アミドの場合は、A1が炭素数1〜4の2価の飽和鎖状炭化水素基のものが好ましい。
さらに、式(2)及び(3)において、R1、R2、またはA1で表される炭化水素基は、一部の水素が水酸基(‐OH)で置換されていてもよい。
一般式(3)で表されるジ酸のビスアミドとしては、具体的には、N,N’‐ビスステアリルセバシン酸アミド等が挙げられる。
これらビスアミドの中でも、一般式(2)及び一般式(3)のR1とR2がそれぞれ独立して炭素数12〜20の飽和鎖状炭化水素基又は不飽和鎖状炭化水素基のアミド化合物であることが好ましい。
本発明は、固体潤滑成分として、少なくともモリブデンジチオカーバメートとフッ素樹脂を含むものであり、モリブデンジチオカーバメートの含有量はグリース組成物全量基準で、2〜10質量%であり、3〜10質量%、さらには5〜10質量%とすることが好ましい。フッ素樹脂の含有量はグリース組成物全量基準で、1〜5質量%であり、1.5〜5質量%とすることが好ましい。
本発明における固体潤滑成分としてのMoDTCとは、潤滑油基油に溶解していない固体粒子状のモリブデンジチオカーバメート(以下、「MoDTC」ともいう)のことである。
本発明のMoDTCとしては、下記一般式(5)で表される化合物を用いることができる。
なお、一般式(5)中のR4およびR5で表される炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、シクロアルキル基が好適なものとして挙げられる。また、aは1〜3、bは1〜3、cは2〜6が好ましく、酸素原子と硫黄原子の比率は1:0.5〜1:4が好ましい。これらのMoDTCは、一般に潤滑油基油に対する溶解度が低いため、基油の溶解量以上をグリース組成物に含有させることにより、潤滑油基油に溶解していない固体潤滑成分とすることができる。なお、R4、R5が炭素数2〜4のアルキル基からなるMoDTCは潤滑油基油に対する溶解度が非常に低いため、この種のMoDTCを用いることがより好ましい。
本発明で用いるモリブデンジチオカーバメートは、粒子直径が0.2〜50μmのものが好ましく、1〜10μmのものがより好ましい。
本発明では、固体潤滑成分として、モリブデンジチオカーバメートとともに、ふっ素樹脂を用いる。このようなふっ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)等などが好適である。
このフッ素樹脂は、粒子直径が0.2〜50μmのものが好ましく、1〜10μmのものがより好ましい。
本発明では、潤滑油基油に油溶状態で存在するモリブデンジチオカーバメートとジチオリン酸亜鉛の少なくとも一方を含むことが好ましく、特には両者を含むことがより好ましい。
両者の合計の含有量は、グリース組成物全量基準で、1〜5質量%、さらには3〜5質量%とすることが好ましい。潤滑油基油に溶解させるモリブデンジチオカーバメートの含有量は、グリース組成物全量基準で0.5〜5質量%が好ましく、さらには1〜4質量%とすることがより好ましい。ジチオリン酸亜鉛の含有量は、グリース組成物全量基準で0.5〜5質量%、さらには1〜5質量%とすることが好ましい。
この場合、一般式(5)中のR4およびR5で表される炭化水素基としては、例えば、炭素数5〜24のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜24のアルキルアリール基および炭素数7〜12のアリールアルキル基が好適なものとして挙げられる。さらに、R4、R5が炭素数8以上のアルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基およびアリールアルキル基からなるMoDTCは潤滑油基油に対する溶解度が比較的大きいため、この種のMoDTCを用いることがより好ましい。
本発明のグリース組成物においては、さらに金属スルフォネートを含有することが好ましい。金属スルフォネートの含有量は、グリース組成物全量基準で0.5〜10質量%とすることが好ましく、1〜5質量%がより好ましい。金属スルフォネートとしては、アルカリ土類金属の塩、すなわち、アルカリ土類金属スルフォネートを用いることが好ましい。この場合、マグネシウムスルフォネートは、グリース組成物全量基準で0.2〜5質量%含有させることが好ましく、0.5〜3質量%より好ましく、一方、カルシウムスルフォネートについては、同様に0.2〜5質量%が好ましく、0.5〜3質量%が好ましい。
また、前記合成スルフォン酸としては、例えば、洗剤の原料となるアルキルベンゼン製造プラントから副生したり、ポリオレフィンをベンゼンにアルキル化することにより得られる、直鎖状又は分枝状のアルキル基を有するアルキルベンゼンを原料とし、これをスルフォン化したもの、あるいはジノニルナフタレン等のアルキルナフタレンをスルフォン化したもの等が挙げられる。またこれらアルキル芳香族化合物をスルフォン化する際のスルフォン化剤としては特に限定されず、通常、発煙硫酸又は無水硫酸等が用いられる。
本発明のグリース組成物には、上記成分以外に、必要に応じて、一般に潤滑油やグリースに用いられている、清浄剤、分散剤、摩耗防止剤、粘度指数向上剤、酸化防止剤、極圧剤、防錆剤、腐食防止剤などを適宜添加することができる。
本発明のグリース組成物は、一般的なグリースの製造方法で作製できるが、脂肪族アミド化合物を混合後に、その融点以上に一度加熱することが好ましい。
すなわち、まず、潤滑油基油にその溶解量のMoDTCを添加、溶解させた後に、脂肪族アミド化合物とその潤滑油基油をそのアミド化合物の融点以上に加熱して冷却後、増ちょう剤と固体潤滑成分としてのMoDTC及びフッ素樹脂などを物理的に混合する方法でもよく、また、増ちょう剤を含む全ての成分を所定量(MoDTCについては、基油溶解分+固体潤滑剤分)混合した後に、アミド化合物の融点以上に加熱して冷却することでもよい。
・実施例2及び3以外の実施例、比較例の鉱物油:常圧蒸留残渣を減圧蒸留して得られた留出油を溶剤精製した次に示す性状を有する潤滑油基油
40℃における動粘度;175mm2/s
15℃における密度;0.89g/cm3
粘度指数;96
流動点;−12.5℃
引火点;290℃
・実施例2の鉱物油:上記と同様の方法で精製した次の性状を有する潤滑油基油
40℃における動粘度;93mm2/s
15℃における密度;0.89g/cm3
粘度指数;98
流動点;−12.5℃
引火点;280℃
・実施例3の鉱物油:上記と同様の方法で精製した次の性状を有する潤滑油基油
40℃における動粘度;523mm2/s
15℃における密度;0.90g/cm3
粘度指数;97
流動点;−12.5℃
引火点;320℃
40℃における動粘度;68mm2/s
15℃における密度;0.83g/cm3
粘度指数;133
流動点;−45℃
引火点;250℃
なお、このポリ‐α‐オレフィンにはアミン系酸化防止剤を添加。
・Liコンプレックス:2‐ヒドロキシステアリン酸リチウムとアゼライン酸リチウムの複合体(混合割合は2:1)
・ウレア:シクロヘキシルアミンとメチレンジフェルニルジイソシアネートからなる脂環族ジウレア
・エチレンビスステアリルアミド(特級試薬)
・Mgスルフォネート:全塩基価が400mgKOH/g、マグネシウム元素含有量が9質量%、硫黄元素含有量が2質量%
・Caスルフォネート:全塩基価が410mgKOH/g、カルシウム元素含有量が16質量%、硫黄元素含有量が1質量%
・油溶状態のMoDTC:一般式(5)において、R4〜R5が炭素数8〜12のアルキル基、a=2、b=2、c=4であり、酸素原子と硫黄原子の比率は1:1
・MoDTC(固体):一般式(5)において、R4〜R5が炭素数4のアルキル基、a=2、b=2、c=4であり、酸素原子と硫黄原子の比率は3:1
各成分を表1に示す配合量(質量%で示す)で容器に入れ、150℃(アミド化合物の融点以上)に加熱して、マグネチックスターラーで攪拌したのち、室温に冷却した。これをローラ(3本ロール)で加圧分散処理を行い、グリース組成物を調製した。
グリースの性状・性能評価方法は、次の通りである。なお、グリースの硬さを示す混和ちょう度及び耐熱性を示す滴点についてはいずれもJIS K2220に従って測定した。
グリースの摩擦特性の評価はシリンダまたはリングとディスクの往復動摩擦試験機で評価試験を行った。ディスクにグリースを塗布し、摺動させたときの摩擦係数を評価した。摩擦係数が低いものが伝達効率を高めることができる。
低負荷条件は、SUJ-2の外径20mm×内径17mmの円筒リングと、SUJ-2のプレート状のディスク(直径24mm×長さ7.9mm)を用い、試験温度40℃、試験荷重は3MPa、摺動周波数は1Hz、滑り速度4mm/s、振幅2mmとした。
これらの評価結果を表1〜表3に示した。
脂肪族アミド化合物を配合しない場合(比較例6)や、固体潤滑成分としてのMoDTCを含有しない場合(比較例1〜6)では、高負荷条件での摩擦特性が高い。一方、脂肪族アミド化合物と固体潤滑成分としてのMoDTCとフッ素樹脂を含有する場合(実施例1〜12)は高負荷条件での摩擦特性を低くできる。加えて、金属スルフォネートを含有する場合(実施例8〜10)には高負荷条件での摩擦特性をさらに低くできる。特に、金属スルフォネートとして、マグネシウムスルフォネートとカルシウムスルフォネートとの両者を含有する場合(実施例1〜7)には、低負荷条件での摩擦特性も低くすることができる。
Claims (5)
- 潤滑油基油と、グリース組成物の全量基準で、増ちょう剤を3〜20質量%、脂肪族アミド化合物を5〜20質量%、および、固体潤滑成分として、モリブデンジチオカーバメートを2〜10質量%およびフッ素樹脂を1〜5質量%含むグリース組成物。
- さらに、潤滑油基油に溶解したモリブデンジチオカーバメートまたはジチオリン酸亜鉛の少なくとも一方または両方を、グリース組成物の全量基準で0.2〜5質量%含む請求項1に記載のグリース組成物。
- さらに、金属スルフォネートを、グリース組成物の全量基準で0.5〜10質量%含む請求項1または2に記載のグリース組成物。
- 金属スルフォネートとして、グリース組成物の全量基準で、マグネシウムスルフォネートを0.2〜5質量%、およびカルシウムスルフォネートを0.2〜5質量%含む請求項3に記載のグリース組成物。
- 固体潤滑成分としてのモリブデンジチオカーバメートを、グリース組成物の全量基準で3〜10質量%含む請求項4に記載のグリース組成物。
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