JP2016160232A - 含フッ素オレフィンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
オレフィンメタセシス反応活性を有する金属−カルベン錯体化合物(10)の存在下、下記式(21)で表される化合物と下記式(31)で表される化合物を反応させて下記式(41)で表される化合物を得て、前記式(41)で表される化合物を異性化することにより、下記式(51)で表される化合物を製造する方法。
Rfは、炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基、炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基、または、炭素数5〜20の(ペル)フルオロアリール基である。
〔2〕
金属−カルベン錯体化合物(10)における金属が、ルテニウム、モリブデンまたはタングステンである、〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕
前記Rfが、炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基、または炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基である、〔1〕または〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕
前記Rfが炭素数1〜8のペルフルオロアルキル基である〔1〕〜〔3〕のいずれか1に記載の製造方法。
〔5〕
前記式(21)で表される化合物が、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−オクテンである、〔1〕〜〔4〕のいずれか1に記載の製造方法。
なお本明細書において、「式(X)で表される化合物」のことを、単に「化合物(X)」と称する場合がある。また化合物の構造式中での波線は、E/Zの異性体のうち、いずれか一方または両方の混合物であることを意味する。
「ペルハロゲン化アルキル基」とは、アルキル基の水素原子が全てハロゲン原子で置換された基を意味する。ペルハロゲン化アルコキシ基とは、アルコキシ基の水素原子が全てハロゲン原子で置換された基を意味する。「ペルハロゲン化アルコキシ基」及び「ペルハロゲン化アリール基」についても同様である。
「(ペル)ハロゲン化アルキル基」とは、ハロゲン化アルキル基とペルハロゲン化アルキル基とを合わせた総称で用いる。すなわち該基は1個以上のハロゲン原子を有するアルキル基である。「(ペル)ハロゲン化アルコキシ基」、「(ペル)ハロゲン化アリール基」、及び「(ペル)ハロゲン化アリールオキシ基」についても同様である。
「アリール基」とは、芳香族化合物において芳香環を形成する炭素原子の内いずれか1つの炭素原子に結合した1つの水素原子を取り去った残基に相当する一価の基を意味し、炭素環化合物から誘導されるアリール基と、ヘテロ環化合物から誘導されるヘテロアリール基とを合わせた総称で用いる。
炭化水素基の炭素数とは、ある炭化水素基全体に含まれる炭素原子の総数を意味し、該基が置換基を有さない場合は炭化水素基骨格を形成する炭素原子の数を、該基が置換基を有する場合は炭化水素基骨格を形成する炭素原子の数に置換基中の炭素原子の数を加えた総数を表す。
本発明はオレフィンメタセシスを利用し、原料オレフィンの炭素数を増やす含フッ素オレフィンの製造方法に関する。例えば、下記式(21)で表わされる原料オレフィンを金属−カルベン錯体存在下で反応させた場合、下記スキーム(I)に表わすような反応機構により、炭素数が増えた下記式(41)で表わされる含フッ素オレフィンが得られる。式(41)で表される化合物を異性化(二重結合部分の異性化)させることにより、プロピレンの3位の水素原子の一つが含フッ素基で置換された目的の化合物(51)を得る。
また下記スキーム(I)に示される中間体である化合物(11)及び化合物(12)は、オレフィンメタセシス反応活性を有する金属−カルベン錯体化合物(10)の代表例として記載する。特定の金属−カルベン錯体化合物(10)としては、ルテニウム−カルベン錯体、モリブデン−カルベン錯体、又はタングステン−カルベン錯体(以下、「金属−カルベン錯体」とも総称する。)が例示できる。
金属−カルベン錯体化合物(10)として、上記スキーム(I)では化合物(11)及び化合物(12)を例に示したが、金属と二重結合を形成している炭素原子に結合する2つの官能基は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の一価炭化水素基、または、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む炭素数1〜20の一価炭化水素基であればよく、これらは互いに結合して環を形成してもよい。
化合物(10)は本発明に係る製造方法において触媒としての役割を果たすが、試薬として投入するもの及び反応中で生成するもの(触媒活性種)の両方を意味する。ここで、化合物(10)は反応条件下、配位子のいくつかが解離することで触媒活性を示すようになるものと、配位子の解離なしで触媒活性を示すものが知られているが、本発明ではいずれでもよく限定されない。また一般に、オレフィンメタセシスは触媒へのオレフィンの配位と解離を繰り返しながら進行するため、反応中、触媒上にオレフィン以外の配位子がいくつ配位しているかは必ずしも明確でない。したがって本明細書中、[L]は配位子の数や種類を特定するものではない。
なお、上記ルテニウム−カルベン錯体は、単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。さらに必要に応じてシリカゲルやアルミナ、ポリマー等の担体に担持して用いてもよい。
なお、上記モリブデン−カルベン錯体又はタングステン−カルベン錯体は、単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。さらに必要に応じてシリカゲルやアルミナ、ポリマー等の担体に担持して用いてもよい。
化合物(21)におけるRfは、前記定義と同様である。
化合物(31)としては、プロピレンを用いる。
上記化合物(21)と化合物(31)とのオレフィンメタセシスにより得られる、含フッ素化合物(41)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
異性化反応の方法に特に制限はないが、例えば文献(Journal of Oganometallic Chemistry, 293 (1985) 139−146)記載の方法に従って行うことができる。
上記異性化反応により、化合物(41)の内部オレフィンが末端オレフィンに移行し、化合物(51)が得られる。化合物(51)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
本発明はオレフィンメタセシスによる含フッ素オレフィンの製造方法に関するものであり、典型的には、異なる2種類のオレフィンと金属−カルベン錯体を接触させることによってオレフィンメタセシスを行い、原料とは異なるオレフィンを得るものである。
また原料となるオレフィンは微量の不純物(例えば過酸化物、フッ化水素等)を含むことがあるので、目的物収率向上の点で精製してもよい。精製方法については特に制限はない。例えば文献(Armarego,W.L.F.et al.,Purification of Laboratory Chemicals(Sixth Edition),2009,Elsevier)記載の方法に従って行うことができる。
原料となる両オレフィンのモル比に特に限定はないが、通常基準となるオレフィン1モルに対して、もう一方のオレフィンを0.01〜100モル程度用い、好ましくは0.1〜10モル程度用いる。
試薬として投入する場合、市販の金属−カルベン錯体をそのまま用いてもよく、あるいは市販試薬から公知の方法で合成した市販されていない金属−カルベン錯体を用いてもよい。
系内で発生させる場合、公知の方法で前駆体となる金属錯体から調製した金属−カルベン錯体を本発明に用いることができる。
なお、目的物収率向上の点で、前記溶媒は脱気及び脱水されたものを用いることが好ましい。脱気操作について、特に制限はないが、凍結脱気等を行うことがある。脱水操作について、特に制限はないが、通常モレキュラーシーブ等と接触させる。前記脱気及び脱水操作は通常金属−カルベン錯体と接触させる前に行う。
オレフィンと金属−カルベン錯体を接触させる相としては、特に制限はないが、反応速度の点で、通常は液相が用いられる。原料となるオレフィンが反応条件下で気体の場合、液相で実施するのが難しいため、気−液二相で実施することもできる。なお、液相で実施する場合には溶媒を用いることができる。このとき用いる溶媒としては、上記、金属−カルベン錯体の溶解又は懸濁に用いた溶媒と同様のものを利用することができる。なお、原料となるオレフィンのうち少なくとも一方が反応条件下で液体の場合、無溶媒で実施できることがある。
オレフィンと金属−カルベン錯体を接触させる時間としては、特に制限はないが、通常1分〜48時間の範囲で実施される。
オレフィンと金属−カルベン錯体を接触させる圧力としては、特に制限はないが、加圧下でも、常圧下でもよいし、減圧下でもよい。通常0.001〜10MPa程度、好ましくは0.01〜1MPa程度である。
<市販試薬>
本実施例において、触媒は、特に記載しない場合においては、市販品をそのまま反応に用いた。溶媒(m−キシレン−d10、ベンゼン−d6)及び内部標準物質(p−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン)は、市販品をあらかじめ凍結脱気したあと、モレキュラーシーブ4Aで乾燥してから反応に用いた。
<評価方法>
本実施例において、合成した化合物の構造は日本電子株式会社製の核磁気共鳴装置(JNM−AL300)により1H−NMR、19F−NMR測定を行うことで同定した。また、分子量は株式会社島津製作所製のガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS−QP2010Ultra)を用いて、電子イオン化法(EI)により求めた。
(1)化合物Aの合成:第2世代グラブス触媒による3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−オクテンとプロピレンのクロスメタセシス
窒素雰囲気下、第2世代グラブス触媒(10mol%、0.006mmol)、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−オクテン(0.06mmol、20.9mg)およびC6D6(0.6mL)をNMR測定管の中に量り入れて氷冷した。最後に氷冷下でプロピレン(0.12mmol、ガスとして2.7mL)を加えてNMR管を60℃に加熱して1時間反応させた。反応終了後、NMRおよびGC−MSを測定し化合物Aの生成を確認した。
これら一連の反応を以下に示す。
生成物AのGC−MS(EI):[M−F]+=341.
生成物AのGC−MS(CI):[M−F]+=341.
別途合成した化合物Aを、KCH2Si(CH3)3と反応させ、続いてClB(C2H5)2と反応させ、加水分解する。これにより4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9−トリデカフルオロ−1−ノネンを得る。
Claims (5)
- 金属−カルベン錯体化合物(10)における金属が、ルテニウム、モリブデンまたはタングステンである、請求項1に記載の製造方法。
- 前記Rfが、炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基、または炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基である、請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記Rfが炭素数1〜8のペルフルオロアルキル基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記式(21)で表される化合物が、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−オクテンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
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