JP2016160139A - A型ゼオライト材料の製造方法 - Google Patents

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Tadashi Kobashi
正 小橋
雅人 辻口
Masahito Tsujiguchi
雅人 辻口
康彦 内海
Yasuhiko Uchiumi
康彦 内海
伸明 柿森
Nobuaki Kakimori
伸明 柿森
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敦 中平
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Shunsuke Yagi
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Abstract

【課題】不要となり回収されたアルミノホウケイ酸ガラスを多大なエネルギーを消費せずに、効率的に資源として有効利用する方法を提供し、さらに、ガラス基材の表層を短時間で均一にゼオライト化することにより、イオン交換能に優れ、水質浄化材、触媒材料などに利用可能なA型ゼオライト材料の製造方法を提供する。
【解決手段】アルミノホウケイ酸ガラスと水とAl源を原料として、ガラス表層部を均一にゼオライト化することによるA型ゼオライト材料の製造方法であって、ゼオライト化補助剤としてSi源を添加する補助剤添加工程と、アルミノホウケイ酸ガラスと水とAl源とSi源の混合物を短時間で加熱処理する合成工程とを含むことを特徴とするA型ゼオライト材料の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、添加剤によりアルミノホウケイ酸ガラスの表層を短時間で均一にゼオライト化することによるA型ゼオライト材料の製造方法に関する。
近年、液晶パネルを用いた液晶テレビなどの家電製品、パソコン、携帯端末などの製品が急速に普及している。ここで、上述した「液晶パネル」とは、貼り合せた2枚のガラス基板の内側に液晶材料を注入、封入し、各ガラス基板の外側に偏光板(樹脂)を貼り付けたものを指す。液晶パネルを用いた製品の普及に伴い、液晶パネルの廃棄物(廃液晶パネル)の数量も急激に増加しているが、環境との共存が期待される循環型社会の形成の中、廃液晶パネルについてもリサイクルし資源を有効に利用することが要望されている。
現在、家電製品や情報機器などの廃棄物に含まれる液晶表示装置、液晶パネルは、廃棄物の量としては少ないこともあって、廃棄物の処理施設にて製品ごとに破砕された後、プラスチックを多量に含むシュレッダーダストと共に、埋め立て処理あるいは焼却処理されている。
また、シリカ、アルミナを含むスラグ、焼却灰、廃ガラス等の廃棄物を有用なSi(シリコン)源、Al(アルミニウム)源として各種ゼオライトを合成する研究が行なわれている。ゼオライトは0.3〜2nmの均一な大きさの細孔を有するアルミノシリケートであり、化学的、熱的に安定な物質である。ゼオライトはその細孔構造に起因する吸着能、分子ふるい作用、イオン交換能を有していることから、触媒、吸着剤、ガス分離膜、洗剤用ビルダーなどに応用されている。
一般的にゼオライトは粉末状のものから、用途に合わせて膜状や粒状に加工されたものなど様々な形態で製造されている。板状や粒状に加工された基材の表面にゼオライト層を形成させる際には、ゼオライトの能力を安定的にかつ、優れた性能で発揮させるために、その表面への高い被覆率、密着性、純度、生成量が重要とされている。また、生産コストの低減や生産量を確保するために製造時間を短縮させることが望まれている。
特開2013−43170号公報(特許文献1)には、多孔質体上にゼオライト結晶層を製造する方法が開示されている。この特許文献1に記載された方法は、モノリシス構造からなる多孔質体に、シリカとアルミナ原料の水溶液を接触させた後に、水熱反応により、ピンホールの少ないゼオライト支持多孔質体を製造する方法である。
また、特開2008−74695号公報(特許文献2)には、多孔質基材上にゼオライト膜を製造する方法が開示されている。この特許文献2に記載された方法は、セラミックスからなる多孔質基材の表層に、種結晶となるゼオライト粉末とセラミックス粉末とを含有する種結晶含有層を担持させ、これを水熱合成により成長させて、均一にゼオライト膜を製造する方法である。
また、特開平7−165418号公報(特許文献3)には、フライアッシュを原料としてゼオライトを製造する方法が開示されている。この特許文献3に記載された方法は、フライアッシュにゼオライト化補助剤として、コロイダルシリカを添加し、A型およびX型ゼオライトを製造する方法である。
また特許第3792139号(特許文献4)には、石炭灰を含む原料を、アルカリ水溶液中で加熱処理する人工ゼオライトの製造方法が開示されている。この特許文献4に記載された方法は、原料の硅礬比を4以下とし、かつ前記加熱処理時の原料濃度が0.5〜1.2kg/リットルとなるように調整された前記石炭灰を含む原料とアルカリ水溶液に対して、更に水を加え、この混合液を耐圧容器内に投入し、当該耐圧容器内において飽和蒸気により内部温度を150℃以上で1〜2時間加熱した状態を保って反応させ、得られた反応生成物を冷却し、脱水して、人工ゼオライトを製造する方法である。
また、特許第3754551号(特許文献5)には、水性のゾル状態のゼオライト反応原料混合物を、多孔質支持体の存在下に、水熱合成反応させて前記支持体上にゼオライト膜を析出させる際に、前記原料混合物を、マイクロ波を間欠的に照射して、95〜110℃の温度条件で加熱して5〜30分でゼオライト膜を製造する方法が開示されている。
さらに、特開2004−51406号公報(特許文献6)には、人工ゼオライト原料粉末をN規程のアルカリ水溶液と固液比1:nで混合してスラリー化し、該スラリーを所定温度T℃で一定時間t(分)熱水処理し、その後得られた反応済みのスラリーを脱液及び水洗処理して人工ゼオライトを製造するに際し、前記アルカリ水溶液中に塩を共存させて前記熱水処理によるゼオライト生成反応を活性化させ、合成時間を短縮して人工ゼオライトを生成することを特徴とする塩共存下による人工ゼオライトの製造方法が開示されている。
特開2013−43170号公報 特開2008−74695号公報 特開平7−165418号公報 特許第3792139号 特許第3754551号 特開2004−51406号公報
液晶パネルは、省電力・省資源に貢献できる表示装置であるので、今後、高度情報化社会の進展に伴って、急激に生産量が増大するとともに、その表示面積も大型化することが予測され、これに伴って、今後、廃液晶パネルも、数・量ともに急激に増大すると予想される。したがって、液晶パネルの重量の大半を占めるガラス(液晶パネルガラス)についても、廃棄物を低減し、資源を大切にする観点から、再生利用することが好ましい。しかし一般的な再資源化方法として、セメント材料として再利用する方法では、液晶パネルガラスはスラグとなり、ガラス自体として再生利用することはできない。
資源有効利用の観点からは、回収された液晶パネルガラスを液晶パネルガラス自体として再びマテリアルリサイクルすることが望ましい。しかしながら、液晶パネルガラス表面に付着している不純物、ガラス組成の異なる数多くの品種が存在することなどの理由で、光学的特性、熱特性の厳しい仕様が求められる液晶パネルガラスにリサイクルすることは、技術的に確立されていない。そのため、回収した液晶パネルガラスの、液晶パネルガラス以外の高付加価値製品としての用途開発が課題となっている。
なお、液晶パネルガラスにはアルミノホウケイ酸ガラスと呼ばれるガラスが通常用いられている。アルミノホウケイ酸ガラスは、液晶パネルの製造工程に適合するように作られた特殊なガラスであり、その歪点は650℃以上である。これに対し、びんガラス、建築用窓ガラス、ガラス繊維、食器ガラスなど幅広くガラス製品に用いられているソーダライムガラスの歪点は、550℃以下である。このように、100℃以上歪点が異なるため、一般的にガラス製品に使用されるソーダライムガラスの溶融加工設備で、再生利用のためのアルミノホウケイ酸ガラスの溶融加工を行なうことは、加熱設備の性能、設備全般の耐熱性などの点で非常に困難である。また溶融温度の高いアルミノホウケイ酸ガラスを、通常はソーダライムガラスを原料として使用する建築用窓ガラス、ガラス繊維、食器ガラスなどの汎用的な製品へ使用することは、エネルギー消費の観点からも不利となる。このように、通常のソーダライムガラス製品の原料としての用途に用いる方法は技術的に確立されていないのが現状である。このため、不要となった液晶パネルガラスの用途として、現状の製造工程の温度と比較し加工温度が上昇しない用途に用いる再資源化方法が望まれている。
ガラスのようにゼオライトと同様の成分を含んだ廃材を原料として、それらを基材としてその表層部にゼオライトを形成させる研究が行なわれている。しかしながら、基材からのSi溶出、あるいはAl溶出だけでは、均一に表層をゼオライト化することは困難とされている。基材表層を均一にゼオライト化するためには、長時間あるいは高温での加熱処理や、アルカリ金属水酸化物の濃度を上昇させることにより、十分に反応を進行させることが重要となるが、準安定相であるA型ゼオライトを得ることが難しくなる。これらの観点から、基材上にA型ゼオライトを均一に形成させることは困難であり、その解決方法が望まれている。
上述した特許文献1に記載された方法は、多孔質体上にゼオライト結晶層を製造する方法であり、多孔質体上を均一にゼオライト化することができるが、基材となる多孔質体にはゼオライトの成分は含まれておらず、調製した水溶液からしかシリカとアルミナが供給されない。そのため、ゼオライトを生成させるために多くのSi源とAl源の添加が必要となる。
また、上述した特許文献2に記載された方法は、多孔質基材上でゼオライト膜を製造する方法であり、多孔質基材上に種結晶を担持させる方法であるため、そのままでは均一に種結晶を基材表層にいきわたらせるのは困難であり、種結晶含有層を担持させ、それを焼成するといったような前処理が必要であり、効率が悪くなる。
また、上述した特許文献3に記載された方法は、フライアッシュを原料としてゼオライトを製造する方法であり、純度の高いゼオライトを得るためにフライアッシュ中の不純物を除く工程として酸処理が必要であるため効率が悪くなる。また、ゼオライト化補助剤として、コロイダルシリカを添加しているが、フライアッシュ50gに対して、コロイダルシリカを最小でも15mLと多量添加しており、補助剤としての添加ではない。また、コロイド状の溶液を用いるために、反応が均一系とならず、合成規模をスケールアップした際に、ゼオライトの生成の仕方にむらが生じやすい。また、原料はフライアッシュを用いているため粉体であり、バルク体の表層を均一にゼオライト化するといった目的でSi源は用いられていない。
一方で、基材からのSi溶出、あるいはAl溶出だけでは、短時間で均一に表層をゼオライト化することも困難とされている。基材表層を均一にゼオライト化するためには、上述の通り、反応を十分に進行させることが重要となるが、合成温度を上げて、100℃以上の温度で合成する場合、短時間での合成は可能ではあるが、生成相の制御ができなくなるだけではなく、加熱処理設備を耐圧仕様にする必要があるために、生産コストが高くなる。また、比較的低温で長時間かけて合成する方法もあるが、1バッチに多くの時間がかかり、効率が悪くなる。これらの観点から、基材上にA型ゼオライトを短時間で均一に形成させることは困難であり、その解決方法が望まれている。
上述した特許文献4に記載された方法は、石炭灰からゼオライトを製造する方法であり、短時間でゼオライトの製造が可能であるが、加熱処理温度を150℃以上に設定する必要があり、耐圧設備が必要となるために、生産コストが高くなる。
また、上述した特許文献5に記載された方法は、多孔質支持体上にゼオライト膜を製造する方法であり、100℃以下の条件でも短時間でゼオライトが製造可能であるが、マイクロ波を照射する設備が必要であるために、製造コストが高くなる他、マイクロ波照射では量産化した際に、むらなくゼオライト膜を製造することは困難である。
また、上述した特許文献6に記載された方法は、アルカリ水溶液中に食塩等の塩を添加して人工ゼオライト原料粉末からゼオライトを製造する方法であり、塩を添加することにより、アルカリ水溶液の濃度低減、または製造時間の短縮効果が得られる。しかし、海水を用いているために、採取場所や時期によって海水成分の組成が異なっており、それにより、Na型やK型などの複数のゼオライトが混在して生成することになり、純度が悪くなる。
上述の特許文献1〜6には、廃棄物または多孔質体上にゼオライトを合成する方法、および合成したゼオライト材料が開示されているが、特許文献1〜6に開示されたいずれの方法も、安価でかつ簡易的な方法で板状や粒状のような基材表層を均一に、かつ短時間でゼオライト化させることが困難である。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、不要となり回収されたアルミノホウケイ酸ガラスを多大なエネルギーを消費せず効率的に資源として有効利用する方法を提供し、さらに、微量のゼオライト化補助剤を添加することにより、ガラス基材の表層を均一にゼオライト化し、イオン交換能に優れ、水質浄化材、触媒材料などに利用可能なA型ゼオライト材料の製造方法を提供することである。
また、粒状ガラス表層を短時間で均一にゼオライト化するために、簡易的な設備で、短時間でA型ゼオライト材料の製造を可能とする方法を提供する。
本発明のA型ゼオライト材料の製造方法は、アルミノホウケイ酸ガラスと水とAl源を原料として、アルミノホウケイ酸ガラスの表層部をゼオライト化することによるA型ゼオライト材料の製造方法であって、ゼオライト化補助剤としてSi源を原料に添加する補助剤添加工程と、アルミノホウケイ酸ガラスと水とAl源とSi源との混合物を加熱処理する合成工程とを含むことを特徴とする。
本発明のA型ゼオライト材料の製造方法において、前記Si源として用いられるSi化合物が水溶性であることが好ましく、前記Si源として用いられるSi化合物がケイ酸ナトリウムであることがさらに好ましい。
また本発明のA型ゼオライト材料の製造方法において、前記Si化合物の添加量がアルミノホウケイ酸ガラス中のSiに対して、0.4at%以上10at%以下のSi添加であることが好ましい。またこの場合、前記合成工程は、75℃以上110℃以下で、3時間以上加熱処理を行なう工程であることがより好ましい。
また本発明のA型ゼオライト材料の製造方法において、前記Si化合物の添加量がアルミノホウケイ酸ガラス中のSiに対して、0.04at%以上5at%以下のSi添加であってもよい。この場合、前記合成工程は75℃以上110℃以下で、6時間以上加熱処理を行なう工程であることがさらに好ましい。
本発明のA型ゼオライト材料の製造方法において、前記補助剤添加工程の前に、原料に含まれるSi/Alモル比が1.0以上2.5以下となるようにAl源を添加する調合工程を含むことが好ましい。
本発明のA型ゼオライト材料の製造方法において、前記Al源として用いられるAl化合物がアルミン酸ナトリウムであることが好ましい。
本発明のA型ゼオライト材料の製造方法において、前記アルミノホウケイ酸ガラスを50μm以上700μm以下に粉砕したものを原料とすることが好ましい。
本発明のA型ゼオライト材料の製造方法において、前記合成工程は、0Nを超えて3N以下の濃度のアルカリ金属水酸化物を用いる工程であることが好ましい。
本発明のA型ゼオライト材料の製造方法において、前記アルミノホウケイ酸ガラスは、SiO:50重量%以上、Al:10重量%以上20重量%以下、B:5重量%以上20重量%以下、MgO+CaO+ZnO+SrO+BaO:5重量%以上20重量%以下の組成を有することが好ましい。
本発明によれば、不要となった液晶パネルなどから回収されたアルミノホウケイ酸ガラスを高付加価値なA型ゼオライト材料へと有効に利用することが可能となる。本発明により、高温溶融などを施すことなく、不要となったアルミノホウケイ酸ガラスを用いたA型ゼオライト材料を製造できるため、低環境負荷、かつ、低コストな製造方法が提供される。また、簡単な処理でA型ゼオライト材料を製造することが可能となり、安価なA型ゼオライト材料を得ることができる。さらに、本発明によれば、所定の処理を経ることで反応を制御でき、イオン交換能に優れ、吸着剤などに利用可能な、表層が高純度A型ゼオライトとなったゼオライト材料を合成できるA型ゼオライト材料の製造方法を提供することができる。
また本発明によれば、ガラスは粉砕粒径を大きくし、ゼオライトの支持体とすることができるので、流水中における水質浄化用途にも使用することが可能となる。粒径が大きなガラスの表層をゼオライト化することにより、粉体のゼオライトと比較し、通水性の良い材料として利用可能であり、土壌改質剤などへの利用に適した材料を提供することができる。また、粉砕工程で支持体のガラス粒径を任意の大きさに変化させることが可能であり、用途に合わせた大きさのガラスを支持体とするA型ゼオライト材料を作製することができる。また、粉砕粒径を小さくする必要がないため、粉砕コスト、粉砕時間を抑え、低コスト、かつ、短時間で製造可能なA型ゼオライト材料を提供することができる。
本発明によれば、ゼオライト化補助剤として、微量のSi源を添加することにより、ガラス表層を均一にゼオライト化することが可能である。また、Si源を添加することにより、より短時間でガラス表層を均一にゼオライト化させることも可能となる。さらに、従来の表層を均一に覆うことが可能であった条件と比較して、生成相の制御も容易である。また、添加剤を加えるだけでゼオライト生成量とガラス表層への被覆率向上、および合成時間の短縮効果が得られるため、耐圧合成設備やマイクロ波照射設備等を必要とせず、低コストでの合成が可能である。さらに本発明によれば、Si源の添加量を制御することにより、ガラス基材とゼオライト層との密着性が向上し、ガラスからのゼオライト剥離が低減されることから、長期間安定的に使用することが可能である。
さらに、本発明によれば、原料であるアルミノホウケイ酸ガラス粒子を支持体とし、表面のみがゼオライトとなったコア−シェル材料を得ることができるため、バインダーを用いて粉末ゼオライトを造粒するといった工程が不要になる。また、本発明によれば、比較的粒径が大きい材料を提供することにより、カラムなどに充填した際に、通水性に優れ、土壌改質剤として使用した際に雨水などにより流失することが無いA型ゼオライト材料を提供することができる。
本発明のA型ゼオライト材料の製造方法の好ましい一例を示すフローチャートである。 本発明のA型ゼオライト材料の製造方法に好適に用いられるアルミノホウケイ酸ガラスを備える典型的な一例の液晶パネル1を模式的に示す断面図である。 実験例1で得られた各試料(実施例1〜4、比較例1)のX線回折によるA型ゼオライト材料の積分強度の一例を示すグラフである。 実験例1で得られた各試料(実施例1〜4、比較例1)のSEM写真である。 実験例2で得られた各試料(実施例5〜8、比較例2)の合成時間に対するA型ゼオライト材料積分強度を示すグラフである。 実験例2で得られた各試料(実施例5〜8、比較例2)の合成の各時点(3時間、6時間、12時間、24時間)でのSEM写真である。
本発明のアルミノホウケイ酸ガラスを用いた水溶性Si源添加によるA型ゼオライト材料の製造方法は、基本的には、ゼオライト化補助剤としてSi源を原料に添加する補助剤添加工程と、アルミノホウケイ酸ガラスと水とAl源とSi源との混合物を加熱処理する合成工程とを含むことを特徴とする。
本発明により製造されるA型ゼオライト材料は、粉砕されたアルミノホウケイ酸ガラスを支持体とし、ゼオライト化補助剤であるSi源を微量に添加することにより、ガラス表層部が均一にA型ゼオライト化していることを特徴とする。
また、Si源を添加することにより、より短時間でガラス表層を均一にゼオライト化させることも特徴とする。
このような本発明のA型ゼオライト材料の製造方法によれば、高温での溶融処理を施すことなく、アルミノホウケイ酸ガラスを原料として用いてA型ゼオライト材料を製造することができる。これにより、不要となった液晶パネルなどに用いられているアルミノホウケイ酸ガラスを、低環境負荷のプロセスで、資源として有効に利用することが可能となる。また、本来不要となったアルミノホウケイ酸ガラスを原料とし、かつ、原料ガラスを高温溶融しないため、エネルギー消費量が少なく、設備コストおよびエネルギーコストが低く抑えられ安価なA型ゼオライト材料を得ることができる。また、反応を制御することにより、アルミノホウケイ酸ガラスの表層に、不純相の少ない、高純度A型ゼオライトを合成できるため、高性能な水浄化剤、乾燥剤、分子ふるい、触媒などに使用できるA型ゼオライト材料を製造することが可能となる。
本発明におけるアルミノホウケイ酸ガラスは、SiO:50重量%以上、Al:10重量%以上20重量%以下の組成を有することが、好ましい。これにより、SiO/Alがモル比で4.24であり、すなわちSi/Alモル比が1以上の範囲にあり、FAU型ゼオライト(Si/Alモル比:1.5以上3以下)、A型ゼオライト(Si/Alモル比:1)の原料として好適である。なお、アルミノホウケイ酸ガラスがこのような組成を有することは、たとえば蛍光X線分析を用いた組成分析により確認することができる。
液晶表示装置に使用されているアルミノホウケイ酸ガラスを再資源化するため、本発明において原料となるアルミノホウケイ酸ガラスは、液晶表示装置に搭載される液晶パネルガラスとして使用されているアルミノホウケイ酸ガラス組成範囲である、SiO:50重量%以上、Al:10重量%以上20重量%以下、B:5重量%以上20重量%以下、MgO+CaO+ZnO+SrO+BaO:5重量%以上20重量%以下の範囲であることがより好ましい。SiOおよびAl組成、すなわち上述したSi/Alモル比の観点から、このような組成のアルミノホウケイ酸ガラスは、ゼオライトの原料として好適に使用される。
本発明においては、原料となるアルミノホウケイ酸ガラスが上述した組成を有することで、不要となった液晶パネルなどから回収したアルミノホウケイ酸ガラスを原料として好適に使用できるため資源有効利用が可能となる。このように液晶パネル用のアルミノホウケイ酸ガラスを用いることで、石炭灰、フライアッシュ、スラグなどを用いた場合と異なり、原料組成のばらつきが少ないため、効率的に、反応制御性が良く、ゼオライトを製造することが可能となる。
さらに、アルミノホウケイ酸ガラスは、従来、加工温度が高く、再溶融する場合に多大なエネルギーを消費するため、環境負荷およびエネルギーコストの面から、ほとんどリサイクルがなされていなかった。本発明によれば、従来リサイクルされておらず、今後急激に増加すると予測される不要となったアルミノホウケイ酸ガラスを資源として有効に利用することが可能となるといった効果が奏される。
ここで、図1は、本発明のA型ゼオライト材料の製造方法の好ましい一例を示すフローチャートである。上述したように、本発明のA型ゼオライト材料の製造方法は、補助剤添加工程(図1中、ステップS4)と合成工程(図1中、ステップS6)を必須の工程として含む。また図1に示す例のように、補助剤添加工程と合成工程との間に、アルミノホウケイ酸ガラスをアルカリ金属水酸化物溶液と接触させるアルカリ処理工程(図1中、ステップS5)を含むことが、好ましい。図1に示す例のフローチャートは、さらに、アルミノホウケイ酸ガラス回収工程(図1中、ステップS1)、粉砕工程(図1中、ステップS2)および調合工程(図1中、ステップS3)を有する場合を示している。以下、図1に示す例のフローチャートに沿って、本発明のA型ゼオライト材料の製造方法を詳細に説明する。
〔1〕アルミノホウケイ酸ガラス回収工程(ステップS1)
図1に示す例では、まず、アルミノホウケイ酸ガラス回収工程(ステップS1)として、たとえば、液晶パネルからアルミノホウケイ酸ガラスを回収する。ここで、図2は、典型的な一例の液晶パネルを模式的に示す断面図である。図2には、TFT(Thin Film Transistor)などのアクティブ素子(図示せず)を備えた液晶パネルを示している。図2に示す例の液晶パネルは、たとえば、対向配置された2枚のパネルガラス(カラーフィルタ側パネルガラス2a、TFT側パネルガラス2b)を備える。これらパネルガラス(ガラス基板)2a,2bは、対向配置された側(内面側)に、周縁部に沿ってシール樹脂体(シール材)3が設けられ、互いに貼り合わされてなる。また、これらパネルガラス2a,2bとシール樹脂体3とによって密封された領域には、液晶が封入され、液晶層4が形成されている。
また、典型的な液晶パネルでは、図2に示すように、各パネルガラス2a,2bの対向配置された側とは反対側(外面側)には、偏光板5が粘着剤により貼着されている。典型的な液晶パネルでは、図2に示すように、カラーフィルタ側パネルガラス2aの内面側に、反射防止膜6、カラーフィルタ7、透明導電膜8および配向膜9が形成されている。また、典型的な液晶パネルでは、図2に示すように、TFT側パネルガラス2bの内面側に、画素電極10、バス電極11、絶縁膜12、透明導電膜8および配向膜9が形成されている。前記反射防止膜6、カラーフィルタ7、透明導電膜8、配向膜9、画素電極10、バス電極11および絶縁膜12の膜厚は、前記2枚のパネルガラス2a,2bの厚みと比較して、十分に薄い。以下、図2に示す例の液晶パネルよりアルミノホウケイ酸ガラスを得る手順を説明するが、本発明において原料となるアルミノホウケイ酸ガラスを回収する手順はこれに限定されるものではなく、また、液晶パネルから回収されたものにも限定されない。
まず、液晶テレビなど、液晶パネルを備えた表示装置などから取り出された、たとえば図2に示すような構造の液晶パネル1から偏光板5を除去する。偏光板5の除去は、公知の機械的な方法を利用する。次に、貼り合わされたガラス基板2a,2bを、2枚に分離する。具体的には、ガラス基板におけるシール樹脂体3よりも内側の四辺を、該シール樹脂体3に沿って、ダイヤモンドソーやガラスカッターなどの切断工具を用いて矩形状に切断する。その後、必要に応じて外力を加えることにより、元の大きさよりも一回り小さい大きさのガラス基板を、液晶パネルから切断して取り外す。ガラス基板が取り外されると、封入されていた液晶層4が開封され、液晶は、ガラス基板に付着した状態で露出する。次に、液晶が露出したガラス基板から樹脂性のスキージを用いてかき取ることによって液晶を除去する。
液晶パネルなどから回収されたアルミノホウケイ酸ガラスには、通常、カラーフィルタに使用される有機物薄膜、TFT(Thin Film Transistor)に使用される金属薄膜および無機物薄膜などの不純物が付着している。このような不純物は、たとえばサンドブラスト、回転研磨などの従来公知の機械的手法、ならびに、たとえば酸性溶液、有機溶媒によるエッチングなどの従来公知の化学的手法を適宜組み合わせることで、除去することができる。このように使用済み液晶テレビから取り出した液晶パネルからアルミノホウケイ酸ガラスが回収される。
〔2〕粉砕工程(ステップS2)
図1に示す例では、続く粉砕工程(ステップS2)において、原料として使用するアルミノホウケイ酸ガラスを粉砕する。ここで、アルミノホウケイ酸ガラスは、50μm以上700μm以下の範囲内の粒径(中心径)となるように粉砕されることが好ましい。アルミノホウケイ酸ガラスを50μm以上700μm以下に粉砕したものを原料とすることで、表層でのゼオライト化反応が生じるとともに、粒のコア部分にアルミノホウケイ酸ガラスを残すことができる。粒径が50μmより小さくなると、粒のコア部分にアルミノホウケイ酸ガラスが残らずに全体がゼオライト化してしまう。一方、粒径が700μmを超えると、粉砕形状が扁平になるため、用途が限定されてしまう。また、用途に合わせた粒径とすることで、かつ、表層はA型ゼオライト化した材料とすることで、各用途での粒径による不具合が生じず、イオン交換能などの性能が高い材料が製造できるという利点がある。また、合成の際に容器内で堆積厚をもったアルミノホウケイ酸ガラス内部まで反応が進行し、濃度のゆらぎが減少し、構造のばらつきが少ない、均一なゼオライト構造をもったA型ゼオライト材料を得ることが可能となる。
粉砕の方法としては、従来公知のせん断方式の破砕機、ハンマーミル、ロールミル、カッターミル、ボールミル、ジェットミルなどを用いて粉砕することができる。また、複数段処理を行ない、粉砕することもできる。ハンマーミルなどを用い、粗破砕した後、ボールミルなどで微粉砕すると効率よく粉砕することができる。たとえば、上述の液晶パネルから回収された液晶パネル画面サイズのアルミノホウケイ酸ガラスを、ハンマーミルなどで処理し、5mm以下のサイズに粗破砕したものを、さらに、ボールミルを用い1mm以下に粉砕し、アルミノホウケイ酸ガラスの原料として用いる。
〔3〕調合工程(ステップS3)
図1に示す例では、続く調合工程(ステップS3)において、Al源を添加し、粉体中のSiO/Alモル比の調整を行なう。たとえば、アルミノホウケイ酸ガラス中に含まれるSiOと、アルミノホウケイ酸ガラス中に含まれるAlと、添加したAl源に含まれるAlとを考慮したSiO/Alモル比に関し、好ましくはSi/Alモル比が1.0以上2.5以下(SiO/Alモル比が2.0以上5.0以下)、より好ましくはSi/Alモル比が1.5以上2.1以下(SiO/Alモル比が3.0以上4.2以下)となるようにAl源を添加することにより、A型ゼオライトの合成が可能となる。
添加するAl化合物としては、たとえば、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウムなどを用いることができる。特に、アルミン酸ナトリウムを用いることにより、反応性が高く、効率的に反応を進行させることができる。
Al化合物の形態としては、粉体が好ましい。これにより後述のアルカリ処理工程において、Al源をアルカリ金属水酸化物溶液中に溶解させ、均一系での反応が可能となる。
〔4〕補助剤添加工程(ステップS4)
図1に示す例では、次に、本発明のA型ゼオライト材料の製造方法の必須の工程である補助剤添加工程(ステップS4)において、Si源をゼオライト化補助剤として添加し、ガラス表層が均一にゼオライト化されるように処理を行なう。
添加するSi源は水溶性のSi化合物であることが好ましい。
添加するSi化合物としては、たとえば、水溶性のケイ酸ナトリウム、シリカ粉末、シリコンアルコキシドなどを用いることができる。特に、ケイ酸ナトリウムを用いることにより、反応性が高く、効率的に反応を進行させることができる。
添加するSi化合物の形態としては、粉体が好ましい。これにより、後述の合成工程において、Si源をアルカリ金属水酸化物溶液中に溶解させ、均一系での反応が可能となる。
基材としてのアルミノホウケイ酸ガラスの表層にゼオライトが形成されるメカニズムは、基材の近傍におけるSiとAlの濃度が高まることによって、アルミノシリケートゲルが生成し、これが加熱処理されることによって、結晶化が進行し、ゼオライトが生成することによる。一般的に、基材に含まれるSi成分またはAl成分の溶出によりゼオライトを生成させる際には、基材としてのアルミノホウケイ酸ガラスの表層を覆うだけの十分な成分の溶出と、ゼオライト生成相の制御、特に準安定相の制御との両立が困難となる。本発明のA型ゼオライト材料の製造方法では、この課題に対して、事前にSi源を添加しておくことで、基材からのSi成分の溶出との相乗効果により、ガラス近傍において、Si成分濃度を局所的に高め、アルミノシリケートゲルの生成を促すことが可能である。
Si化合物の添加量を幅広い範囲で変化させることにより、添加量と後述の合成工程における加熱時間との間で最適な組合せが導き出される。添加するSi化合物は、添加量がアルミノホウケイ酸ガラス中のSiに対して、0.4at%以上10at%以下のSi添加であることが好ましく、2.0at%以上10at%以下のSi添加がより好ましい。上記のように、Si源を添加することにより、添加しない場合と比較して短時間での合成が可能である。短時間での合成を検討する添加量条件においても、0.4at%未満では、ガラスからのSi溶出量が十分とはならず、アルミノシリケートゲルの生成量が少なくなり、補助剤による合成時間短縮効果が十分に得られない。また、2.0at%未満では補助剤による時間短縮効果は得られるが、添加量が十分ではなく、その効果がみられるまでに12時間以上の合成時間を要する。また、10at%より添加量が多くなると、アルミノホウケイ酸ガラス近傍から離れた箇所でもゼオライトが生成しやすくなり、アルミノホウケイ酸ガラスとゼオライトとの密着性が悪くなる虞がある。また、Si/Al比の上昇により、副生成相となるFAU型ゼオライトやP型ゼオライトが生成する虞がある。
また、上記の添加量の範囲も含まれるが、より微量のSi化合物の添加でも合成が可能である。その場合の添加するSi化合物は、添加量がアルミノホウケイ酸ガラス中のSiに対して、0.04at%以上5.0at%以下のSi添加であることが好ましく、0.04at%以上2.0at%以下のSi添加がより好ましい。0.04at%未満では、濃度が低すぎるために、アルミノシリケートゲルが生成する臨界濃度にまで達せずに、補助剤としての十分な効果が得られない。また、5.0at%より添加量が多くなると、ガラス近傍から離れた箇所でもゼオライトが生成しやすくなり、ガラスとゼオライトとの密着性が悪くなる虞がある。また、添加量が2.0at%より多くなると、その添加量でガラス表層を覆えるだけの十分なSi化合物が添加されており、添加量を増加させることに見合った効果は得られない。
〔5〕アルカリ処理工程(ステップS5)
図1に示す例では、次に、アルカリ処理工程(ステップS5)において、上述のアルミノホウケイ酸ガラスと水とAl源とSi源とアルカリ金属水酸化物溶液とを混合し、撹拌する。当該アルカリ処理工程は、本発明のA型ゼオライト材料の製造方法に必須の工程ではないが、図1に示す例のように、補助剤添加工程と合成工程との間に、当該アルカリ処理工程を行なうことが好ましい。混合し、撹拌する具体的な方法としては、従来公知の撹拌機を用いる。たとえば、マグネチックスターラー、インペラ式撹拌機、バレル式撹拌機などを用いることができる。これにより、アルミノホウケイ酸ガラスがアルカリ金属水酸化物溶液に溶解しやすくなる。
アルカリ処理工程における撹拌温度は、5℃以上100℃以下が好ましい。アルカリ処理工程において攪拌温度が100℃を超えると、アルカリ金属水酸化物溶液が気化し、安全上の問題が生じる虞がある。また、アルカリ処理工程における攪拌温度が5℃未満になると、溶解反応が極めて遅くなり、効率が悪くなってしまう場合がある。
またアルカリ処理工程における撹拌時間は、1秒間以上100時間以下が好ましい。アルカリ処理工程において攪拌時間が1秒間未満になると、アルカリ金属水酸化物溶液とアルミノホウケイ酸ガラスとの十分な反応が得られず、アルミノホウケイ酸ガラスがそのまま残ってしまいA型ゼオライトの合成割合が低くなってしまう虞がある。また、アルカリ処理工程において撹拌時間が100時間を超えると反応の進行が極端に遅くなり効率が悪くなってしまう場合がある。
アルカリ処理工程に用いるアルカリ金属水酸化物溶液としては、特に制限されないが、反応性、廃液処理の観点および取り扱いの容易性の観点から、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ物質を含む溶液が好ましい。溶液はこれらのアルカリ物質を2種以上を含んでいてもよい。なお、強アルカリ溶液であり反応性が極めて高く、安価であることから、またNa型のゼオライトが製造されることから、上記中でも、水酸化ナトリウムをアルカリ金属水酸化物溶液として用いることが好ましい。
アルカリ処理工程に用いるアルカリ金属水酸化物溶液の濃度は、アルカリの種類、ゼオライトの種類などに応じて適宜選択することができるが、0Nを超えて3N以下が好ましく、0.2N以上2N以下がより好ましく、0.5N以上1.5N以下が特に好ましい。3Nを超えるアルカリ金属水酸化物溶液を用いた場合には、A型ゼオライト以外のヒドロキシソーダライトが多量に生成し、A型ゼオライトの純度が低くなってしまう虞がある。またアルカリ金属水酸化物溶液の濃度が0.2N未満になると、アルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ金属水酸化物溶液との反応が小さくなり、ガラス相の残存が多く効率的なゼオライト合成がなくなる虞がある。
粉砕したアルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ金属水酸化物溶液との混合固液比(g/mL)は、粉砕したアルミノホウケイ酸ガラス/アルカリ金属水酸化物溶液=1/100以上1/2以下が好ましく、粉砕したアルミノホウケイ酸ガラス/アルカリ金属水酸化物溶液=1/100以上1/3以下がより好ましい。アルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ金属水酸化物溶液との混合固液比(g/mL)が1/100より小さくなると、必要なアルカリ金属水酸化物溶液が多くなり過ぎ、処理効率が悪くなってしまう場合がある。アルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ金属水酸化物溶液との混合固液比(g/mL)が1/3より大きくなると、粉砕したアルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ金属水酸化物溶液との接触面積が小さくなり、溶解反応が十分に進まなくなる虞がある。また、反応を進行させるためには、アルカリ金属水酸化物溶液濃度やAl化合物の添加量を増大する必要があり、それに伴うアルカリ金属水酸化物濃度の上昇により、ヒドロキシソーダライトが生成しやすくなる虞がある。
〔6〕合成工程(ステップS6)
図1に示す例では、次に、本発明のA型ゼオライト材料の製造方法において必須の工程である合成工程(ステップS6)において、アルミノホウケイ酸ガラスと水とAl源とSi源との混合物に対して加熱処理を行う。
加熱処理は、バッチ式または連続式のいずれによっても行なうことができ、たとえば耐圧容器または反応器にアルミノホウケイ酸ガラスと水とAl源とSi源と、より好ましくはアルカリ金属水酸化物溶液との混合物を導入し、好ましくは75℃以上110℃以下、より好ましくは85℃以上95℃以下に加熱する。当該合成工程においては、これらの混合物を水熱処理により加熱処理することが好ましい。
これにより、従来のセラミックス材料として焼成する方法と異なり、さらに低温でのゼオライトの合成が可能となり、ボイラーなどの廃熱を利用できる温度範囲であり、省エネルギーに貢献できる方法となる。なお、合成工程における温度が75℃未満である場合には、合成反応速度が極めて遅くなり、効率が悪くなり、ゼオライトの生成が遅くなりガラス相が残存しやすいという傾向にある。また、合成工程における温度が110℃を超える場合には、ヒドロキシソーダライトなどのA型ゼオライト以外の相が生成してしまい、A型ゼオライトの純度が低くなる場合があるためである。
合成の際の圧力はその温度での飽和蒸気圧とし、1気圧以上10気圧以下となるように、反応容器内に導入する液体、固体の量を設定し、反応容器内の空間の体積を調整する。
Si源を添加することでガラス表層を短時間で均一にゼオライト化させる条件、すなわち、添加量がアルミノホウケイ酸ガラス中のSiに対して、0.4at以上10at%以下のSi添加の場合、合成時間は好ましくは3時間以上、より好ましくは6時間以上24時間以下とする。合成時間が3時間未満である場合は、合成時間の短縮効果が得られずに、十分にゼオライトが生成せず、ガラス表層を均一にゼオライト化できない場合がある。合成時間が24時間を超える場合には、添加剤の影響により、Si/Al比が高めになっているため、FAU型ゼオライトやP型ゼオライトが生成し、A型ゼオライトの純度が低下してしまう虞がある。
また、微量の添加剤でガラス表層を均一にゼオライト化させる条件、すなわち、添加量がアルミノホウケイ酸ガラス中のSiに対して、0.04at%以上5.0at%以下のSi添加の場合、合成時間は、好ましくは6時間以上、より好ましくは12時間以上48時間以下とする。合成時間が6時間未満である場合は、微量のSi化合物の添加では十分にゼオライトが生成しない場合がある。合成時間が48時間を超える場合には、Si化合物の添加量が少ない分、FAU型ゼオライトやP型ゼオライトが生成しにくいが、一方で、合成時間の影響で安定相であるヒドロキシソーダライトなどが生成し、A型ゼオライトの純度が低下してしまう。
上述したような本発明のA型ゼオライト材料の製造方法によれば、上述した原料から直接的にA型ゼオライト材料を得ることができる。すなわち、合成の条件を適当に選択することにより、高価な合成装置などを必要とせず、不純相の混入していない高純度のA型ゼオライト材料を直接的に得ることができる。
なお、本発明のA型ゼオライト材料の製造方法は、好ましくは110℃以下の温度域で加熱し、作製するものであり、この場合にはボイラーの廃熱などを利用することができる温度域であり、省エネルギーに貢献することができる。
本発明の方法によって、アルミノホウケイ酸ガラスの基材上に、不純相の混入していないA型ゼオライトを均一に生成させることができる。また、ゼオライト化補助剤であるSi源の添加量を制御することで、アルミノシリケートゲルの生成を抑制し、ガラス基材とゼオライトの密着性が向上する。また、A型ゼオライトは、数あるゼオライトの中でもイオン交換能が最も高い。本発明の方法によって得られたゼオライトは、このA型ゼオライトが高純度であるため、イオン交換性能を利用した高性能な水質浄化剤、土壌改良剤などに利用することができる。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<参考例1>
市販の液晶パネル用ガラスについて、波長分散型蛍光X線分析によりガラスの組成を求めた結果、SiOが62重量%、Alが18重量%、Bが8重量%、MgO+CaO+ZnO+SrO+BaOが10重量%であった。
<実験例1>
7mLの0.5M NaOH溶液に、1.3gのアルミン酸ナトリウムを添加して溶解させた。同様に、7mLの0.5M NaOH溶液に、ガラス中のSi成分に対して、添加するSiの原子組成%がそれぞれ0at%(比較例1)、0.04at%(実施例1)、0.42at%(実施例2)、2.11at%(実施例3)、5at%(実施例4)になるように、メタケイ酸ナトリウムを加えて溶解させた。調製したアルミン酸ナトリウムの溶液と各濃度のメタケイ酸ナトリウムの溶液を混合させ、合計で14mLになるようにした。混合液に中心径300μmに粉砕したアルミノホウケイ酸ガラス4.7gを加え、10分間撹拌した。撹拌後、95℃で24時間の条件で水熱合成を行なった。合成の完了後、吸引ろ過により合成物をろ別し、乾燥を経てA型ゼオライト材料の試料を得た。
得られた実施例1〜4および比較例1の各試料について、X線回折装置MiniFlexII(リガク社製)を用いてX線回折測定を行ない、X線回折におけるA型ゼオライトに対応する積分強度をまとめた結果を図3に示す。メタケイ酸ナトリウムの添加量が0.04at%からゼオライトの生成量がやや増加する傾向がみられ、2.11at%で最大となり、添加量を5at%にしても、積分強度にほとんど変化はみられなかった。
得られた試料(実施例1〜4、比較例1)のSEM観察結果について、図4に示す。メタケイ酸ナトリウムを添加しない場合では、A型ゼオライトのキューブがガラス基材上にまばらにしか生成していないのに対し、0.04at%添加すると、ガラス基材上に均一にゼオライトが生成していることが確認された。添加量を増やしていくと、ゼオライトの生成量が増加していく傾向がみられるが、5.0at%からは一部でゼオライトがガラス基材から剥離している箇所が見られた。
<実験例2>
7mLの0.5M 水酸化ナトリウム水溶液に、1.3gのアルミン酸ナトリウムを添加して溶解させた。同様に、7mLの0.5M 水酸化ナトリウム水溶液に、ガラス中のSi成分に対して、添加するSiの原子組成%がそれぞれ0at%(比較例2)、0.42at%(実施例5)、2.11at%(実施例6)、5.0at%(実施例7)、10at%(実施例8)になるように、メタケイ酸ナトリウムを加えて溶解させた。調製したアルミン酸ナトリウムの水溶液と各濃度のメタケイ酸ナトリウムの水溶液を混合させ、合計で14mLになるようにした。混合液に中心径300μmに粉砕したアルミノホウケイ酸ガラス4.7gを加え、10分間撹拌した。撹拌後、各濃度の水溶液を95℃で3、6、12、24時間の条件でそれぞれ水熱合成を行なった。合成の完了後、吸引ろ過により合成物をろ別し、乾燥を経てA型ゼオライト材料の試料を得た。
得られた試料のX線回折測定を実験例1と同様に行ない、X線回折におけるA型ゼオライトに対応する積分強度をまとめた結果を図5に示す。メタケイ酸ナトリウムの添加量が2.11at%以上で3時間または6時間合成すれば、0at%(添加剤なし)の12時間合成と同等の積分強度が得られた。また、同様にメタケイ酸ナトリウムの添加量が2.11at%以上で12時間合成すれば、0at%(添加剤なし)の24時間合成の1.7倍の積分強度が得られた。また、メタケイ酸ナトリウムの添加量が0.42at%でも24時間合成すれば、0at%(添加剤なし)の24時間合成の1.7倍の積分強度が得られたことから、少ない添加量でも時間短縮効果がある可能性が示唆された。
得られた試料のSEM観察結果について、図6に示す。添加剤なし、あるいは添加剤が0.42at%の場合、合成3時間でガラス表層に微量のゼオライトが生成し始め、6時間でその生成量がやや増加し、結晶が成長する様子が確認され、12時間でガラス表層に均一にゼオライトが生成するが、一部でガラス上にゼオライトが生成していない箇所もみられた。一方で、添加剤を2.11at%以上加えると、合成3時間の段階で均一にゼオライトが生成し始め、6時間ではさらに結晶が成長し、12時間ではガラス表層にゼオライトが隙間なく生成している様子が確認された。どれだけ添加剤を加えても、3時間ではA型ゼオライトが生成する初期段階で確認される球形状が多くみられ、6時間では、結晶が成長し、A型ゼオライト特有のキューブ形状が生成している様子が確認された。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 液晶パネル、2a カラーフィルタ側パネルガラス、2b TFT側パネルガラス、3 シール樹脂体、4 液晶層、5 光学フィルム、6 反射防止膜、7 カラーフィルタ、8 透明導電膜、9 配向膜、10 画素電極、11 バス電極、12 絶縁膜。

Claims (12)

  1. アルミノホウケイ酸ガラスと水とAl源を原料として、アルミノホウケイ酸ガラスの表層部をゼオライト化することによるA型ゼオライト材料の製造方法であって、
    ゼオライト化補助剤としてSi源を原料に添加する補助剤添加工程と、
    アルミノホウケイ酸ガラスと水とAl源とSi源との混合物を加熱処理する合成工程とを含む、A型ゼオライト材料の製造方法。
  2. 前記Si源として用いられるSi化合物が水溶性である、請求項1に記載のA型ゼオライト材料の製造方法。
  3. 前記Si源として用いられるSi化合物がケイ酸ナトリウムである、請求項1または2に記載のA型ゼオライト材料の製造方法。
  4. 前記Si化合物の添加量がアルミノホウケイ酸ガラス中のSiに対して、0.4at%以上10at%以下のSi添加である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のA型ゼオライト材料の製造方法。
  5. 前記合成工程は、75℃以上110℃以下で、3時間以上加熱処理を行なう工程である、請求項4に記載のA型ゼオライト材料の製造方法。
  6. 前記Si化合物の添加量がアルミノホウケイ酸ガラス中のSiに対して、0.04at%以上5at%以下のSi添加である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のA型ゼオライト材料の製造方法。
  7. 前記合成工程が75℃以上110℃以下で、6時間以上加熱処理を行なう工程である、請求項6に記載のA型ゼオライト材料の製造方法。
  8. 前記補助剤添加工程の前に、原料に含まれるSi/Alモル比が1.0以上2.5以下となるようにAl源を添加する調合工程を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のA型ゼオライト材料の製造方法。
  9. 前記Al源として用いられるAl化合物がアルミン酸ナトリウムである、請求項1〜8のいずれか1項に記載のA型ゼオライト材料の製造方法。
  10. 前記アルミノホウケイ酸ガラスが50μm以上700μm以下に粉砕したものを原料とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のA型ゼオライト材料の製造方法。
  11. 前記合成工程の前に、0Nを超えて3N以下の濃度のアルカリ金属水酸化物溶液を添加するアルカリ処理工程を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載のA型ゼオライト材料の製造方法。
  12. 前記アルミノホウケイ酸ガラスが、SiO:50重量%以上、Al:10重量%以上20重量%以下、B:5重量%以上20重量%以下、MgO+CaO+ZnO+SrO+BaO:5重量%以上20重量%以下の組成を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載のA型ゼオライト材料の製造方法。
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