JP2016147788A - アルミノホウケイ酸ガラスを原料とするa型ゼオライトの製造方法 - Google Patents

アルミノホウケイ酸ガラスを原料とするa型ゼオライトの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】不要となり回収されたアルミノホウケイ酸ガラスを多大エネルギーを消費せず効率的に資源として有効利用する方法を提供し、さらに、イオン交換能に優れ、水質浄化材、触媒材料などに利用可能で、A型ゼオライトの製造方法を提供する。【解決手段】アルミノホウケイ酸ガラスを原料として、アルミノホウケイ酸ガラスの表層部をゼオライト化することによるA型ゼオライトの製造方法であって、アルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ溶液との混合物を合成温度にまで昇温する昇温工程と、昇温後に混合物を一定温度で保持する合成工程を含むことを特徴とするA型ゼオライトの製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、昇温工程を制御したアルミノホウケイ酸ガラスを原料とするA型ゼオライトの製造方法に関する。
近年、液晶パネルを用いた液晶テレビなどの家電製品、パソコン、携帯端末などの製品が急速に普及している。ここで、上述した「液晶パネル」とは、貼り合せた2枚のガラス基板の内側に液晶材料を注入、封入し、各ガラス基板の外側に偏光板(樹脂)を貼り付けたものを指す。液晶パネルを用いた製品の普及に伴い、液晶パネルの廃棄物(廃液晶パネル)の数量も急激に増加しているが、環境との共存が期待される循環型社会の形成の中、廃液晶パネルについてもリサイクルし資源を有効に利用することが要望されている。
現在、家電製品や情報機器などの廃棄物に含まれる液晶表示装置や液晶パネルは、廃棄物の量としては少ないこともあって、廃棄物の処理施設にて製品ごとに破砕された後、プラスチックを多量に含むシュレッダーダストと共に、埋め立て処理あるいは焼却処理されている。
特許3666031号公報(特許文献1)には、石炭灰などの廃材を原料としてゼオライトを製造する方法が開示されている。この特許文献1に記載された方法は、石炭灰に酸性水溶液を加えて、カルシウム成分の除去処理を行なうことによって、廃材からA型ゼオライトを製造する方法である。
また、特開2011−11955号公報(特許文献2)には、水砕スラグまたは製紙スラッジ焼却灰を原料としてゼオライトを製造する方法が開示されている。この特許文献2に記載された方法は、原料に3NのNaOHとエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を添加した後に水熱合成をし、阻害反応を引き起こすカルシウム成分を捕捉することにより、廃材からA型ゼオライトを製造する方法である。
特許3666031号公報 特開2011−11955号公報
液晶パネルは、省電力・省資源に貢献できる表示装置であるので、今後、高度情報化社会の進展に伴って、急激に生産量が増大するとともに、その表示面積も大型化することが予測され、これに伴って、今後、廃液晶パネルも、数・量ともに急激に増大すると予想される。したがって、液晶パネルの重量の大半を占めるガラス(液晶パネルガラス)についても、廃棄物の低減と資源を大切にする観点から、再生利用することが好ましい。しかし一般的な再資源化方法として、セメント材料として再利用する方法では、液晶パネルガラスはスラグとなり、ガラス自体として再生利用することはできない。
資源有効利用の観点からは、回収された液晶パネルガラスを液晶パネルガラス自体として再びマテリアルリサイクルすることが望ましい。しかしながら、液晶パネルガラス表面に付着している不純物、ガラス組成の異なる数多くの品種が存在することなどの理由で、光学的特性、熱特性の厳しい仕様が求められる液晶パネルガラスにリサイクルすることは、技術的に確立されていない。そのため、回収した液晶パネルガラスの、液晶パネルガラス以外の高付加価値製品としての用途開発が課題となっている。
なお、液晶パネルガラスにはアルミノホウケイ酸ガラスと呼ばれるガラスが通常用いられている。アルミノホウケイ酸ガラスは、液晶パネルの製造工程に適合するように作られた特殊なガラスであり、その歪点は650℃以上である。これに対し、びんガラス、建築用窓ガラス、ガラス繊維、食器ガラスなど幅広くガラス製品に用いられているソーダライムガラスの歪点は、550℃以下である。このように、100℃以上歪点が異なるため、一般的にガラス製品に使用されるソーダライムガラスの溶融加工設備で、再生利用のためのアルミノホウケイ酸ガラスの溶融加工を行なうことは、加熱設備の性能、設備全般の耐熱性などの点で非常に困難である。また溶融温度の高いアルミノホウケイ酸ガラスを、通常はソーダライムガラスを原料として使用する建築用窓ガラス、ガラス繊維、食器ガラスなどの汎用的な製品へ使用することは、エネルギー消費の観点からも不利となる。このように、通常のソーダライムガラス製品の原料としての用途に用いる方法は技術的に確立されていないのが現状である。このため、不要となった液晶パネルガラスの用途として、現状の製造工程の温度と比較し加工温度が上昇しない用途に用いる再資源化方法が望まれている。
しかしながら、石炭灰などを原料としてゼオライトを生成する方法である、上述した特許文献1に記載された方法では、石炭灰を原料とする場合、石炭灰がゼオライト化を阻害するカルシウム成分を多く含むため、酸処理などカルシウム成分を除去する処理が必要であり、効率が悪くなる。
また水砕スラグまたは製紙スラッジ焼却灰を原料としてゼオライトを製造する方法である、上述した特許文献2に記載された方法は、原料中のカルシウム成分によるゼオライト生成の阻害反応を抑制するため、Ca/EDTAモル比が0.5〜1.5になるようにEDTAを添加する工程が必要であり、効率が悪くなる。
上述の特許文献1、2には、廃棄物からゼオライトを合成する方法および廃棄物から合成したゼオライト材料が開示されているが、特許文献1、2に開示されたいずれの方法も安定的にA型ゼオライト単相を得ることは困難であり、複数のゼオライトが混在してしまうか原料の結晶構造が残存してしまうという課題がある。また、他相が混在してしまうことにより純度の高いA型ゼオライトと比較した場合に、A型ゼオライトの特徴であるイオン交換性能が低下してしまうという課題がある。また、廃棄物にはカルシウムなどのゼオライト生成の阻害要因となる成分が含有していることがあり、純度の高いA型ゼオライトを得るためには、事前に前処理を行ない、カルシウムなどの溶出処理が必要となる。また、液晶パネルから回収した前処理なしアルミノホウケイ酸ガラスを原料としたゼオライト合成方法や合成したゼオライト材料は開示されていない。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、不要となり回収されたアルミノホウケイ酸ガラスを多大エネルギーを消費せず効率的に資源として有効利用する方法を提供し、さらに、イオン交換能に優れ、水質浄化材、触媒材料などに利用可能で、A型ゼオライトの製造方法を提供することである。
また、カルシウム成分除去のための酸処理や、カルシウム成分捕捉のためのマスキング剤添加などの前処理を必要とせず、効率的で、容易に反応制御可能なA型ゼオライトの製造方法を提供することもその目的とする。
また、本発明によれば、原料であるアルミノホウケイ酸ガラス粒子を支持体とし、表面のみがゼオライトとなった材料を得ることができ、比較的粒径が大きい材料を提供することにより、カラムなどに充填した際に、通水性に優れ、土壌改質剤として使用した際に雨水などにより流失することが無いゼオライト材料を提供することを目的とする。
本発明は、アルミノホウケイ酸ガラスを原料として、アルミノホウケイ酸ガラスの表層部をゼオライト化することによるA型ゼオライトの製造方法であって、アルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ溶液との混合物を合成温度にまで昇温する昇温工程と、昇温後に混合物を一定温度で保持する合成工程を含むことを特徴とする。
本発明のA型ゼオライトの製造方法において、前記昇温工程は、合成温度にまで、0時間を超えて1時間以下昇温することにより、アルミノホウケイ酸ガラスの表層部において、カルシウム含有アルミノシリケートゲルの生成を抑制させることが好ましい。
また本発明のA型ゼオライトの製造方法において、前記昇温工程は合成温度にまで、9時間以上23時間以下昇温することにより、アルミノホウケイ酸ガラスの表層部において、カルシウム含有アルミノシリケートゲルの生成を抑制させることが好ましい。
本発明のA型ゼオライトの製造方法は、前記昇温工程および前記合成工程はアルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ溶液との混合物を水熱処理により加熱処理することが好ましい。
本発明のA型ゼオライトの製造方法はまた、前記昇温工程の前にアルミノホウケイ酸ガラスをアルカリ溶液と接触させるアルカリ処理工程を含むことが好ましい。
本発明のA型ゼオライトの製造方法は、Si/Alモル比が1.0以上2.5以下となるようにアルミニウム化合物を添加する調合工程を、前記アルカリ処理工程のさらに前に含むことが好ましい。
本発明のA型ゼオライトの製造方法は、前記アルミノホウケイ酸ガラスを50μm以上700μm以下に粉砕したものを原料とすることが好ましい。
本発明のA型ゼオライトの製造方法において、前記昇温工程および合成工程は、0Nを超えて3N以下の濃度のアルカリ溶液を用いる工程であることが好ましい。
本発明のA型ゼオライトの製造方法において、前記合成工程は、75℃以上110℃以下で、12時間以上加熱処理を行なう工程であることが好ましい。
本発明のA型ゼオライトの製造方法において、前記アルミノホウケイ酸ガラスが、SiO:50重量%以上、Al:10〜20重量%、MgO+CaO+ZnO+SrO+BaO:5〜20重量%の組成を有することが好ましい。
本発明のA型ゼオライトの製造方法において、前記アルミノホウケイ酸ガラスが、液晶パネルから回収したアルミノホウケイ酸ガラスであることが好ましい。
本発明によれば、不要となった液晶パネルなどから回収されたアルミノホウケイ酸ガラスを高付加価値なゼオライト材料へと有効に利用することが可能となる。本発明より、高温溶融などを施すことなく、不要となったアルミノホウケイ酸ガラスを用いたゼオライトを製造できるため、低環境負荷、かつ、低コストな製造方法が提供される。また、簡単な処理でゼオライトを製造することが可能となり、安価なゼオライト材料を得ることができる。さらに、本発明によれば、所定の処理を経ることで反応を制御でき、イオン交換能に優れ、吸着剤などに利用可能な、表層が高純度A型ゼオライトとなったゼオライト材料を合成することが可能となるA型ゼオライトの製造方法を提供することができる。
本発明によれば、ガラスは粉砕粒径を大きくし、ゼオライトの支持体とすることができるので、流水中における水質浄化用途にも使用することが可能となる。粒径が大きなガラスの表面をゼオライト化することにより、粉体のゼオライトと比較し、通水性の良い材料として利用可能であり、土壌改質剤などへの利用に適した材料を提供することができる。また、粉砕工程で支持体のガラス粒径を任意の大きさに変化させることが可能であり、用途に合わせた大きさのガラスを支持体とするゼオライトを作製することができる。また、粉砕粒径を小さくする必要がないため、粉砕コスト、粉砕時間を抑え、低コスト、かつ、短時間で製造可能なゼオライト材料を提供することができる。
本発明によれば、昇温工程を制御することにより、効率的にA型ゼオライトを製造することができる。殊に昇温工程における合成温度までの時間を適切に調整すれば、A型ゼオライト生成の阻害要因となるカルシウム含有アルミノシリケートゲルの生成を抑制できるので、アルミノホウケイ酸ガラスに対して、カルシウム成分除去のための酸処理や、カルシウム成分捕捉のためのマスキング剤添加などの前処理が不要となる。それにより、低コストでより簡易なプロセスでA型ゼオライトの合成が可能となる。さらに、本発明によれば、ガラス支持体とゼオライトの間に生成するカルシウム含有アルミノシリケートゲルの生成が抑制されるため、ガラス支持体とゼオライトとの密着性が向上し、ガラスからのゼオライト剥離が低減されることから、長期間安定的に使用することが可能である。
本発明のA型ゼオライトの製造方法の好ましい一例を示すフローチャートである。 本発明のA型ゼオライトの製造方法に好適に用いられるアルミノホウケイ酸ガラスを備える典型的な一例の液晶パネル1を模式的に示す断面図である。 実施例1で前処理なしのガラスから得られたアルミノシリケートゲルを含むろ液の外観の一例である。左が6時間かけて昇温した際のろ液、右が15分間以内で昇温した際のろ液である。 実施例1で得られたアルミノシリケートゲルの一例を示すSEM写真と組成分析の結果である。図4(a)が前処理なしガラスから昇温6時間で得られたゲル、図4(b)が酸処理ありガラスから得られたゲルの結果である。 実施例2で得られたゼオライト材料のX線回折の一例を示すグラフである。 実施例2で得られたゼオライト材料のX線回折による生成相と積分強度の一例を示すグラフである。 実施例2で得られたゼオライト材料の一例を示すSEM写真である。図7(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ昇温時間が0、6、12、23時間で合成した場合のゼオライト材料のSEM写真である。 実施例3で得られたゼオライト材料のX線回折による生成相と積分強度の一例を示すグラフである。図8(a)、(b)、(c)はそれぞれ昇温時間を0、6、12時間で固定し、昇温後の合成時間を変化させた場合のグラフである。
本発明のアルミノホウケイ酸ガラスを用いたA型ゼオライトの製造方法は、基本的には、アルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ溶液との混合物を合成温度にまで昇温する昇温工程と、昇温後に混合物を一定温度で保持する合成工程を含むことを特徴とする。
本発明により製造されるゼオライト材料は、粉砕されたアルミノホウケイ酸ガラスを支持体とし、表層部がA型ゼオライト化していることを特徴とする。また、昇温工程における合成温度までの時間を適切に調整すれば、前処理なしで、表層部がA型ゼオライト化したゼオライト材料を得ることができる。
このような本発明のA型ゼオライトの製造方法によれば、高温での溶融処理を施すことなく、アルミノホウケイ酸ガラスを原料として用いてゼオライト材料(好適にはA型ゼオライト)を製造することができる。これにより、不要となった液晶パネルなどに用いられているアルミノホウケイ酸ガラスを、低環境負荷のプロセスで、資源として有効に利用することが可能となる。また、本来不要となったアルミノホウケイ酸ガラスを原料とし、かつ、原料ガラスを高温溶融しないため、エネルギー消費量が少なく、設備コストおよびエネルギーコストが低く抑えられ安価なゼオライト材料を得ることができる。また、反応を制御することにより、アルミノホウケイ酸ガラス表層に、不純相の少ない、高純度A型ゼオライトを合成できるため、高性能な水浄化剤、乾燥剤、分子ふるい、触媒などに使用できるゼオライト材料を製造することが可能となる。
本発明におけるアルミノホウケイ酸ガラスは、SiO:50重量%以上、Al:10重量%以上20重量%以下の組成を有することが、好ましい。これにより、SiO/Alがモル比で4.24であり、すなわちSi/Alモル比が1以上の範囲にあり、FAU型ゼオライト(Si/Alモル比:1.5以上3以下)やA型ゼオライト(Si/Alモル比:1)の原料として好適である。なお、アルミノホウケイ酸ガラスがこのような組成を有することは、たとえば蛍光X線分析を用いた組成分析により確認することができる。
液晶表示装置に使用されているアルミノホウケイ酸ガラスを再資源化するため、本発明において原料となるアルミノホウケイ酸ガラスは、液晶表示装置に搭載される液晶パネルガラスとして使用されているアルミノホウケイ酸ガラス組成範囲である、SiO:50重量%以上、Al:10重量%以上20重量%以下、B:5重量%以上20重量%以下、MgO+CaO+ZnO+SrO+BaO:5重量%以上20重量%以下の範囲であることがより好ましい。SiOおよびAl組成、すなわち上述したSi/Alモル比の観点から、このような組成のアルミノホウケイ酸ガラスは、ゼオライトの原料として好適に使用される。
本発明においては、原料となるアルミノホウケイ酸ガラスが上述した組成を有することで、不要となった液晶パネルなどから回収したアルミノホウケイ酸ガラスを原料として好適に使用できるため資源有効利用が可能となる。このように液晶パネル用のアルミノホウケイ酸ガラスを用いることで、石炭灰、フライアッシュ、スラグなどを用いた場合と異なり、原料組成のばらつきが少ないため、効率的に、反応制御性が良く、ゼオライトを製造することが可能となる。
さらに、アルミノホウケイ酸ガラスは、従来、加工温度が高く、再溶融する場合に多大なエネルギーを消費するため、環境負荷およびエネルギーコストの面から、ほとんどリサイクルがなされていなかった。本発明によれば、従来リサイクルされておらず、今後急激に増加すると予測される不要となったアルミノホウケイ酸ガラスを資源として有効に利用することが可能となるといった効果が奏される。
ここで、図1は、本発明のA型ゼオライトの製造方法の好ましい一例を示すフローチャートである。上述したように、本発明のA型ゼオライトの製造方法は、昇温工程(図1中、ステップS6)と合成工程(図1中、ステップS7)を必須の工程として含む。また、合成するA型ゼオライトの構造を調整するため、その前に、所定のAl/SiO比となるようにアルミニウム化合物を添加する調合工程(図1中、ステップS4)と、アルミノホウケイ酸ガラスを任意の形状に成形する成形加工工程(図1中、ステップS3)とをさらに有していることが好ましい。また図1に示す例のように、調合工程と昇温工程との間に、アルミノホウケイ酸ガラスをアルカリ溶液と接触させるアルカリ処理工程(図1中、ステップS5)を含むことが、好ましい。図1に示す例のフローチャートは、さらに、アルミノホウケイ酸ガラス回収工程(図1中、ステップS1)および粉砕工程(図1中、ステップS2)を有する場合を示している。以下、図1に示す例のフローチャートに沿って、本発明のA型ゼオライトの製造方法を詳細に説明する。
〔1〕アルミノホウケイ酸ガラス回収工程
図1に示す例では、まず、アルミノホウケイ酸ガラス回収工程(ステップS1)として、たとえば、液晶パネルからアルミノホウケイ酸ガラスを回収する。ここで、図2は、典型的な一例の液晶パネルを模式的に示す断面図である。図2には、TFT(Thin Film Transistor)などのアクティブ素子(図示せず)を備えた液晶パネルを示している。図2に示す例の液晶パネルは、たとえば、対向配置された2枚のパネルガラス(カラーフィルタ側パネルガラス2a、TFT側パネルガラス2b)を備える。これらパネルガラス(ガラス基板)2a,2bは、対向配置された側(内面側)に、周縁部に沿ってシール樹脂体(シール材)3が設けられ、互いに貼り合わされてなる。また、これらパネルガラス2a,2bとシール樹脂体3とによって密封された領域には、液晶が封入され、液晶層4が形成されている。
また、典型的な液晶パネルでは、図2に示すように、各パネルガラス2a,2bの対向配置された側とは反対側(外面側)には、偏光板5が粘着剤により貼着されている。典型的な液晶パネルでは、図2に示すように、カラーフィルタ側パネルガラス2aの内面側に、反射防止膜6、カラーフィルタ7、透明導電膜8および配向膜9が形成されている。また、典型的な液晶パネルでは、図2に示すように、TFT側パネルガラス2bの内面側に、画素電極10、バス電極11、絶縁膜12、透明導電膜8および配向膜9が形成されている。前記反射防止膜6、カラーフィルタ7、透明導電膜8、配向膜9、画素電極10、バス電極11および絶縁膜12の膜厚は、前記2枚のパネルガラス2a,2bの厚みと比較して、十分に薄い。以下、図2に示す例の液晶パネルよりアルミノホウケイ酸ガラスを得る手順を説明するが、本発明において原料となるアルミノホウケイ酸ガラスを回収する手順はこれに限定されるものではなく、また、液晶パネルから回収されたものにも限定されない。
まず、液晶テレビなど、液晶パネルを備えた表示装置などから取り出された、たとえば図2に示すような構造の液晶パネル1から偏光板5を除去する。偏光板5の除去は、公知の機械的な方法を利用する。次に、貼り合わされたガラス基板2a,2bを、2枚に分離する。具体的には、ガラス基板におけるシール樹脂体3よりも内側の四辺を、該シール樹脂体3に沿って、ダイヤモンドソーやガラスカッターなどの切断工具を用いて矩形状に切断する。その後、必要に応じて外力を加えることにより、元の大きさよりも一回り小さい大きさのガラス基板を、液晶パネルから切断して取り外す。ガラス基板が取り外されると、封入されていた液晶層4が開封され、液晶は、ガラス基板に付着した状態で露出する。次に、液晶が露出したガラス基板から樹脂性のスキージを用いてかき取ることによって液晶を除去する。
液晶パネルなどから回収されたアルミノホウケイ酸ガラスには、通常、カラーフィルタに使用される有機物薄膜、TFT(Thin Film Transistor)に使用される金属薄膜および無機物薄膜などの不純物が付着している。このような不純物は、たとえばサンドブラスト、回転研磨などの従来公知の機械的手法、ならびに、たとえば酸性溶液、有機溶媒によるエッチングなどの従来公知の化学的手法を適宜組み合わせることで、除去することができる。このように使用済み液晶テレビから取り出した液晶パネルからアルミノホウケイ酸ガラスが回収される。
〔2〕粉砕工程
図1に示す例では、続く粉砕工程(ステップS2)において、原料として使用するアルミノホウケイ酸ガラスを粉砕する。ここで、アルミノホウケイ酸ガラスの粉砕のサイズとしては、50μm以上700μm以下の範囲内であることが好ましい。アルミノホウケイ酸ガラスを50μm以上700μm以下に粉砕したものを原料とすることで、表層でのゼオライト化反応が生じるとともに、粒のコア部分にアルミノホウケイ酸ガラスを残すことができる。粒径が50μmより小さくなると、粒のコア部分にアルミノホウケイ酸ガラスが残らずに全体がゼオライト化してしまう。一方、粒径が700μmを超えると、粉砕形状が扁平になるため、用途が限定されてしまう。また、用途に合わせた粒径とすることで、かつ、表層はA型ゼオライト化した材料とすることで、各用途での粒径サイズによる不具合が生じず、イオン交換能などの性能が高い材料が製造できるという利点がある。また、合成の際に容器内で堆積厚をもったアルミノホウケイ酸ガラス内部まで反応が進行し、濃度のゆらぎが減少し、構造のばらつきが少ない、均一なゼオライト構造をもったゼオライト材料を得ることが可能となる。
粉砕の方法としては、従来公知のせん断方式の破砕機、ハンマーミル、ロールミル、カッターミル、ボールミル、ジェットミルなどを用いて粉砕することができる。また、複数段処理を行ない、粉砕することもできる。ハンマーミルなどを用い、粗破砕した後、ボールミルなどで微粉砕すると効率よく粉砕することができる。たとえば、上述の液晶パネルから回収された液晶パネル画面サイズのアルミノホウケイ酸ガラスを、ハンマーミルなどで処理し、5mm以下のサイズに粗破砕したものを、さらに、ボールミルを用い1mm以下に粉砕し、アルミノホウケイ酸ガラスの原料として用いる。
〔3〕成形加工工程
図1に示す例では、続く成形加工工程(ステップS3)において、粉砕したアルミノホウケイ酸ガラスに溶融、焼成を行ない、成形加工を施す。たとえば、粉砕したアルミノホウケイ酸ガラスを溶融、焼成することにより、発泡ガラスや板ガラス、多孔質ガラスなどの任意の形状に成形し、アルミノホウケイ酸ガラスをゼオライトの支持体とすることができる。また、成形加工により、発泡ガラスや多孔質ガラスの場合では、ガラスの表面積が増大し、ガラス表層部のゼオライトの生成量も増加するため、ゼオライトがもつイオン交換能や吸着能を向上させることが可能である。
発泡ガラスの成形法としては、粉砕した上述のアルミノホウケイ酸ガラスに対して、任意の発泡剤を添加し、この混合物を600℃以上1200℃以下にまで加熱した後に急冷することによって発泡ガラスを得ることが可能である。
板ガラスの成形法としては、粉砕したアルミノホウケイ酸ガラスを600℃以上1200℃以下にまで加熱することにより溶融させ、板状に成形することにより得ることが可能である。
多孔質ガラスの成形法としては、粉砕したアルミノホウケイ酸ガラスを100℃以上900℃以下の間で焼成することにより得ることが可能である。中でも特に、気孔率の大きい多孔質ガラスを製造する場合には、粉砕したアルミノホウケイ酸ガラスを500℃以上900℃以下の間で焼成することにより得ることが可能である。
成形加工せずに、粉砕したアルミノホウケイ酸ガラスで、そのまま用途に適用可能な形状であれば、成形加工工程を省略することができる。
〔4〕調合工程
図1に示す例では、続く調合工程(ステップS4)において、アルミニウム化合物を添加し、粉体中のSiO/Alモル比の調整を行なう。たとえば、アルミノホウケイ酸ガラス中に含まれるSiOと、アルミノホウケイ酸ガラス中に含まれるAlと、添加したアルミニウム化合物に含まれるAlとを考慮したSiO/Alモル比に関し、好ましくはSi/Alモル比が1以上2.5以下(SiO/Alモル比が2以上5以下)、より好ましくはSi/Alモル比が1.5以上2.1以下(SiO/Alモル比が3以上4.2以下)となるようにアルミニウム化合物を添加することにより、A型ゼオライトの合成が可能となる。
添加するアルミニウム化合物としては、たとえば、NaAlO、Al(OH)、AlClなどを用いることができる。NaAlO、Al(OH)、AlClを用いることにより、反応性が高く、効率的に反応を進行させることができる。
アルミニウム化合物の形態としては、粉体が好ましい。これにより後述のアルカリ処理工程において、均一に混合撹拌することが可能となる。
〔5〕アルカリ処理工程
図1に示す例では、次に、アルカリ処理工程(ステップS5)において、上述のアルミノホウケイ酸ガラスと、アルカリ溶液とを混合し、撹拌する。当該アルカリ処理工程は、本発明のA型ゼオライトの製造方法に必須の工程ではないが、図1に示す例のように、調合工程と昇温工程との間に、当該アルカリ処理工程を行なうことが好ましい。混合し、撹拌する具体的な方法としては、従来公知の撹拌機を用いる。たとえば、マグネチックスターラー、インペラ式撹拌機、バレル式撹拌機などを用いることができる。これにより、アルミノホウケイ酸ガラスがアルカリ溶液に溶解しやすくなる。
アルカリ処理工程における撹拌温度は、5℃以上100℃以下が好ましい。アルカリ処理工程において攪拌温度が100℃を超えると、アルカリ溶液が気化し、安全上の問題が生じる虞がある。また、アルカリ処理工程における攪拌温度が5℃未満になると、溶解反応が極めて遅くなり、効率が悪くなってしまう場合がある。
またアルカリ処理工程における撹拌時間は、1秒間以上100時間以下が好ましい。アルカリ処理工程において攪拌時間が1秒間未満になると、アルカリ溶液とアルミノホウケイ酸ガラスの十分な反応が得られず、アルミノホウケイ酸ガラスがそのまま残ってしまいゼオライトの合成割合が低くなってしまう虞がある。また、アルカリ処理工程において撹拌時間が100時間を超えると反応の進行が極端に遅くなり効率が悪くなってしまう場合がある。
アルカリ処理工程に用いるアルカリ溶液としては、特に制限されないが、反応性、廃液処理の観点および取り扱いの容易性の観点から、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ物質を含む溶液が好ましい。溶液はこれらのアルカリ物質を2種以上を含んでいてもよい。なお、強アルカリ溶液であり反応性が極めて高く、安価であることから、またNa型のゼオライトが製造されることから、上記中でも、水酸化ナトリウムをアルカリ溶液として用いることが好ましい。
アルカリ処理工程に用いるアルカリ溶液の濃度は、アルカリの種類、ゼオライトの種類などに応じて適宜選択することができるが、0Nを超えて3N以下が好ましく、0.2N以上2N以下がより好ましく、0.5N以上1.5N以下が特に好ましい。3Nを超えるアルカリ溶液を用いた場合には、A型ゼオライト以外のヒドロキシソーダライトが多量に生成し、ゼオライトの純度が低くなってしまう虞がある。またアルカリ溶液の濃度が0.2N未満になると、アルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ溶液の反応が小さくなり、ガラス相の残存が多く効率的なゼオライト合成がなくなる虞がある。
粉砕したアルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ溶液との混合固液比(g/mL)は、粉砕したアルミノホウケイ酸ガラス/アルカリ溶液=1/100以上1/2以下が好ましく、アルミノホウケイ酸ガラス粉体/アルカリ溶液=1/100以上1/3以下がより好ましい。混合固液比(g/mL)が1/100より小さくなると、必要なアルカリ溶液が多くなりすぎ、処理効率が悪くなってしまう場合がある。混合固液比(g/mL)が1/3より大きくなると、粉砕したアルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ溶液の接触面積が小さくなり、溶解反応が十分に進まなくなる虞がある。また、反応を進行させるためには、アルカリ溶液濃度やアルミニウム化合物の添加量を増大する必要があり、それに伴うアルカリ物質濃度の上昇により、ヒドロキシソーダライトが生成しやすくなる虞がある。
〔6〕昇温工程
図1に示す例では、次に、本発明のA型ゼオライトの製造方法において必須の工程である昇温工程(ステップS6)において、アルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ溶液との混合物を後述の合成工程(ステップS7)の合成温度にまで昇温処理する。
昇温処理は、バッチ式または連続式のいずれによっても行なうことができ、たとえば耐圧容器または反応器にアルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ溶液との混合物を導入し、合成温度にまで加熱する。当該昇温工程においては、アルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ溶液との混合物を水熱処理により昇温処理することが好ましい。
昇温処理は、合成温度に昇温するまで0時間を超えて1時間以下要するのが好ましく、0時間を超えて0.5時間以下要するのがより好ましい。アルミノホウケイ酸ガラスが加熱されることにより、Si成分がアルカリ溶液中に溶出し、あらかじめアルミン酸ナトリウムとして添加し、溶液中に存在するAlと反応して、アルミノシリケートゲルが生成する。この昇温工程を速やかに短時間で行なうことにより、アルミノシリケートゲルを速やかに結晶化させ、A型ゼオライトを生成させることができる。これらの反応は、ガラスとアルカリ溶液界面で局所的に起こるため、アルミノホウケイ酸ガラス表層にゼオライト層が形成される。昇温時間が1時間より長くなると、ガラスからのSi成分の溶出が促進される一方で、ゼオライトへの結晶化速度が緩やかになるため、アルミノシリケートゲルの生成量が増大する。さらには、前処理なしのアルミノホウケイ酸ガラスを使用している場合では、この間にガラスからのカルシウム成分の溶出も促され、カルシウムがゲル中に取り込まれることにより、カルシウム含有アルミノシリケートゲルが生成し、これがLOS型ゼオライトの前駆体となる。
昇温処理は、短時間で合成温度にまで昇温する場合以外でも、極端に昇温速度を緩やかにすることによってもA型ゼオライトを効率よく得ることができ、この場合では、合成温度に昇温するまで9時間以上23時間以下要するのが好ましく、12時間以上18時間以下要するのがより好ましい。これにより、ゼオライトへの結晶化速度が緩やかになるが、ガラスからのSiあるいはカルシウム成分の溶出が抑制され、前処理を行なっていないアルミノホウケイ酸ガラスを用いた場合でも、カルシウム含有アルミノシリケートゲルの生成量も減少し、A型ゼオライトの生成がLOS型ゼオライトよりも優位になる。23時間よりも長くなると、ゼオライトへの結晶化速度だけでなく、ガラスからのSi成分の溶出が大幅に減少し、ゼオライト自体の生成が極端に少なくなる虞がある。
昇温処理は静置条件で行なうことが好ましい。特に、前処理を行なっていないアルミノホウケイ酸ガラスを用いた場合で、昇温処理の初期に撹拌すると、結晶化速度が遅い段階で、ガラスからのSiあるいはカルシウム成分の溶出が促され、カルシウム含有アルミノシリケートゲルが生成し、LOS型ゼオライトが生成する虞がある。
〔7〕合成工程
図1に示す例では、次に、本発明のA型ゼオライトの製造方法において必須の工程である合成工程(ステップS7)において、アルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ溶液との混合物を一定温度で加熱処理する。
加熱処理は、昇温工程(ステップS6)と同様の容器で行なうことができ、バッチ式または連続式のいずれによっても可能で、たとえば耐圧容器または反応器にアルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ溶液との混合物を導入し、好ましくは75℃以上110℃以下、より好ましくは85℃以上95℃以下に加熱する。当該合成工程においては、アルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ溶液との混合物を水熱処理により加熱処理することが好ましい。
これにより、従来のセラミックス材料として焼成する方法と異なり、さらに低温でのゼオライトの合成が可能となり、ボイラーなどの廃熱を利用できる温度範囲であり、省エネルギーに貢献できる方法となる。なお、合成工程における温度が75℃未満である場合には、合成反応速度が極めて遅くなり、効率が悪くなり、ゼオライトの生成が遅くなりガラス相が残存しやすいという傾向にある。また、110℃を超える場合には、ヒドロキシソーダライトなどのA型ゼオライト以外の相が生成してしまい、A型ゼオライトの純度が低くなる場合があるためである。
合成の圧力はその温度での飽和蒸気圧とし、1気圧以上10気圧以下となるように、反応容器内に導入する液体、固体の量を設定し、反応容器内の空間の体積を調整する。
合成時間は昇温時間も含めて、好ましくは12時間以上、より好ましくは18時間以上96時間以下、特に好ましくは24時間以上48時間以下とする。合成時間が12時間未満である場合は、十分にゼオライトが生成しない場合がある。合成時間が96時間を超える場合にはヒドロキシソーダライトなどが多量に生成し、A型ゼオライトの純度が低下してしまう。
上述したような本発明のA型ゼオライトの製造方法によれば、上述した原料から直接的にゼオライト材料(A型ゼオライト)を得ることができる。すなわち、合成の条件を適当に選択することにより、高価な合成装置などを必要とせず、不純相の混入していない高純度のゼオライト材料(A型ゼオライト)を直接的に得ることができる。
なお、本発明のA型ゼオライトの製造方法は、好ましくは110℃以下の温度域で加熱し、作製するものであり、この場合にはボイラーの廃熱などを利用することができる温度域であり、省エネルギーに貢献することができる。
本発明の方法によって、酸処理などの前処理を行なっていないアルミノホウケイ酸ガラスからも、不純相の混入していないA型ゼオライトを得ることができる。また、ガラス支持体とゼオライトとの間に生成するカルシウム含有アルミノシリケートゲルの生成が抑制されるため、ガラス支持体とゼオライトの密着性が向上する。また、A型ゼオライトは、数あるゼオライトの中でもイオン交換能が最も高い。本発明の方法によって得られたゼオライトは、このA型ゼオライトが高純度であるため、イオン交換性能を利用した高性能な水質浄化剤、土壌改良剤などに利用することができる。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<参考例1>
市販の液晶パネル用ガラスについて波長分散型蛍光X線分析によりガラスのSiOおよびAlの組成を求めた結果、SiOが62質量%、Alが18質量%であった。
<実施例1>
内径18mmのカラムに中心径300μmに粉砕したアルミノホウケイ酸ガラスを9g、NaAlOを4.2g加え、さらに1MのNaOH 45mLと混合した。NaAlO原料は、関東化学株式会社製鹿1級アルミン酸ナトリウムを用い、NaOH原料は、和光純薬製特級水酸化ナトリウムペレットを用いた。このとき、Si/Alモル比は1.5となっている。カラムを6時間かけて80℃にまで昇温する条件と、15分間以内で80℃にまで昇温してから6時間保持する条件とでゲルの生成量を比較し、生成したゲルを乾燥後、組成分析を行なった。比較対象として、A型ゼオライトが生成しやすい、酸処理によりカルシウムを除去したアルミノホウケイ酸ガラスから作製したゲルの組成分析も行なった。
6時間後、カラム中のガラスを吸引ろ過した結果、図3に示す通り、昇温時間が6時間の条件のみゲルの生成が確認された。得られたゲルを水洗し、乾燥した後に、エネルギー分散型X線分析により組成分析を行なった結果を図4(a)、(b)に示す。図4(a)より、昇温時間を6時間かけて生成させたゲルはカルシウム(Ca)を含有しており、図4(b)より、酸処理を行ない、カルシウム成分を除いておいたガラスにはカルシウムを含有していないことが確認された。
<実施例2>
耐圧容器に中心径300μmに粉砕したアルミノホウケイ酸ガラスを2.8g、NaAlOを1.3gを加え、さらに0.5MのNaOH 14mLと混合して、10分間撹拌した。NaAlO原料は、関東化学株式会社製鹿1級アルミン酸ナトリウムを用い、NaOH原料は、和光純薬製特級水酸化ナトリウムペレットを用いた。このとき、Si/Alモル比は1.5となっている。撹拌後、耐圧容器を95℃に設定したオーブンに入れ、24時間水熱合成を行なった。その際に、オーブン内の温度が95℃に到達するまでの昇温時間を0、1、3、6、9、12、23時間と変化させ、24時間のうち残りの昇温後の時間は95℃で保持した。合成の完了後、吸引ろ過により合成物をろ別し、乾燥を経て、ゼオライト材料の試料を得た。
得られた試料のX線回折測定を行ない、生成物の同定を行なった結果を図5に、X線回折の積分強度から生成相の割合をまとめた結果を図6に示す。図5、6より、昇温時間が0時間を超えて1時間以下と、9時間以上23時間以下でA型ゼオライトの生成割合が優位になることが確認された。昇温時間の影響により、ガラスの溶解速度、カルシウム含有アルミノシリケートゲルの生成、ゼオライトへの結晶化速度が異なり、生成相に変化がみられた。
昇温時間が0、6、12、23時間で得られた試料のSEM観察結果について、図7(a)(0時間)、図7(b)(6時間)、図7(c)(12時間)、図7(d)(23時間)にそれぞれ示す。図7より昇温時間が0時間の場合は、A型ゼオライト特有のキューブ形状が多くなっており、6時間ではLOS型ゼオライト特有の毬形状が多くみられ、12時間では再びA型ゼオライトが増え始め、23時間ではほとんどがキューブ形状になっていることが確認された。
<実施例3>
耐圧容器に中心径300μmに粉砕したアルミノホウケイ酸ガラスを2.8g、NaAlOを1.3g加え、さらに0.5MのNaOH 14mLと混合して、10分間撹拌した。NaAlO原料は、関東化学株式会社製鹿1級アルミン酸ナトリウムを用い、NaOH原料は、和光純薬製特級水酸化ナトリウムペレットを用いた。このとき、Si/Alモル比は1.5となっている。撹拌後、耐圧容器を95℃に設定したオーブンに入れ、24時間水熱合成を行なった。その際に、オーブン内の温度が95℃に到達するまでの昇温時間を0、6、12時間の3条件で固定し、各条件において、昇温時間と合成時間の和が18〜36時間になるように昇温後の合成時間を変化させた。
得られた試料のX線回折測定を行ない、X線回折の積分強度から生成相の割合をまとめた結果を図8に示す。昇温時間を0または12時間にすると、昇温後の合成時間を変化させてもA型ゼオライトの方が生成量が多いことが確認された。昇温6時間で合成時間を変化させると、短時間の合成でもLOS型ゼオライトが生成し、合成時間を長くするにつれてLOS型ゼオライトの割合がさらに増えることが確認された。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 液晶パネル、2a カラーフィルタ側パネルガラス、2b TFT側パネルガラス、3 シール樹脂体、4 液晶層、5 光学フィルム、6 反射防止膜、7 カラーフィルタ、8 透明導電膜、9 配向膜、10 画素電極、11 バス電極、12 絶縁膜。

Claims (11)

  1. アルミノホウケイ酸ガラスを原料として、アルミノホウケイ酸ガラスの表層部をゼオライト化することによるA型ゼオライトの製造方法であって、
    アルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ溶液との混合物を合成温度にまで昇温する昇温工程と、
    昇温後に混合物を一定温度で保持する合成工程を含むことを特徴とするA型ゼオライトの製造方法。
  2. 前記昇温工程は、合成温度にまで、0時間を超えて1時間以下昇温することにより、アルミノホウケイ酸ガラスの表層部において、カルシウム含有アルミノシリケートゲルの生成を抑制させることを特徴とする請求項1に記載のA型ゼオライトの製造方法。
  3. 前記昇温工程は合成温度にまで、9時間以上23時間以下昇温することにより、アルミノホウケイ酸ガラスの表層部において、カルシウム含有アルミノシリケートゲルの生成を抑制させることを特徴とする請求項1に記載のA型ゼオライトの製造方法。
  4. 前記昇温工程および前記合成工程はアルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ溶液との混合物を水熱処理により加熱処理することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のA型ゼオライトの製造方法。
  5. 前記昇温工程の前にアルミノホウケイ酸ガラスをアルカリ溶液と接触させるアルカリ処理工程を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のA型ゼオライトの製造方法。
  6. Si/Alモル比が1.0以上2.5以下となるようにアルミニウム化合物を添加する調合工程を、前記アルカリ処理工程のさらに前に含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のA型ゼオライトの製造方法。
  7. 前記アルミノホウケイ酸ガラスを50μm以上700μm以下に粉砕したものを原料とすることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のA型ゼオライトの製造方法。
  8. 前記昇温工程および合成工程は、0Nを超えて3N以下の濃度のアルカリ溶液を用いる工程であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のA型ゼオライトの製造方法。
  9. 前記合成工程は、75℃以上110℃以下で、12時間以上加熱処理を行なう工程であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のA型ゼオライトの製造方法。
  10. 前記アルミノホウケイ酸ガラスが、SiO:50重量%以上、Al:10〜20重量%、MgO+CaO+ZnO+SrO+BaO:5〜20重量%の組成を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のA型ゼオライトの製造方法。
  11. 前記アルミノホウケイ酸ガラスが、液晶パネルから回収したアルミノホウケイ酸ガラスであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のA型ゼオライトの製造方法。
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