JP2016151674A - フィルム及び偏光板 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐湿熱性や寸法安定性に優れ、また、機械的強度にも優れ、液晶ディスプレイに使用される偏光板に貼り合わされる位相差フィルムとして好適なフィルムを提供する。
【解決手段】ポリカーボネート樹脂を主成分とし延伸工程と熱固定工程を経て製造されたフィルムであって、下記(1)〜(3)の特性を有するフィルム。このフィルムを用いて作成された偏光板。
(1)3次元複屈折(Nx、Ny、Nz)が、Nx>Ny>Nz。
(2)面内位相差(Re)と厚み位相差(Rth)比が、1.5nm≦Rth/Re≦6.0nm。
(3)厚み位相差(Rth)が、130nm≦Rth≦180nm。
【選択図】なし

Description

本発明は、フィルムに関するものであり、特に、液晶ディスプレイに使用される偏光板に貼り合わされる位相差フィルムとして好適に用いることのできるフィルム及びその製造方法に関するものである。本発明はまた、このフィルムよりなる位相差フィルム、このフィルムを用いた偏光板とこの偏光板を有する液晶表示装置に関する。
近年、液晶ディスプレイが、テレビ、パソコン、デジタルカメラ、携帯電話等の表示装置として広く用いられている。液晶ディスプレイは、表示側を前面側、その反対側(バックライト側)を後面側とするとき、前面側偏光板/液晶/後面側偏光板の構成を有する。また、液晶方式によっては、液晶装置の光漏れを防ぐために位相差フィルムを挟み込んでおり、例えば、VA(垂直配向)型液晶方式においては、前面側偏光板/位相差フィルム/液晶/位相差フィルム/後面側偏光板の構成とされている。
従来、液晶の光漏れ防止用位相差フィルムとしては、高い透明性や光学等方性を有することから、トリアセチルセルロースフィルム(以下、TACフィルムと略記することがある)を使用する提案がなされている(例えば、非特許文献1)。
しかし、近年の液晶ディスプレイの大型化、高品質化が進むにしたがって、液晶パネル用部材には機械的強度や高温高湿環境下での安定性の向上が求められるようになってきているのに対して、TACフィルムは寸法安定性、耐湿熱性に劣るために、位相差フィルムにTACフィルムを採用した偏光板では収縮に伴う応力の発生、偏光子の機能劣化の問題があり、このような偏光板を用いた液晶表示装置の画質に影響を与えることが課題となっていた。
また、VA(垂直配向)型液晶方式においては、各製造メーカー共に仕様は共通しておらず、垂直方向への液晶の配合度が異なる事がある。よって、垂直方向へ配向する液晶からの光漏れを防止するために、厚み位相差(Rth)が高い位相差フィルムを用いる事が有る。
KONICA MINOLTA TECHNOLOGY REPORT VOL.3(2006)第133頁〜第136頁「VA型液晶TV用視野角拡大フィルムVA−TACの開発」
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、耐湿熱性や寸法安定性に優れ、また、機械的強度にも優れ、液晶ディスプレイに使用される偏光板に貼り合わされる位相差フィルムとして好適なフィルム及びその製造方法と、このフィルムよりなる位相差フィルム、このフィルムを用いた偏光板及び液晶表示装置を提供することにある。
本発明者らは、上記実情に鑑み、鋭意検討した結果、特定の構成からなるフィルムを用いれば、上述の課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、ポリカーボネート樹脂を主成分とし延伸工程と熱固定工程を経て製造されたフィルムであって、下記(1)〜(3)の特性を有するフィルムが提供される。
(1)3次元複屈折(Nx、Ny、Nz)が、Nx>Ny>Nz。
(2)厚み位相差(Rth)と面内位相差(Re)の比が、1.5nm≦Rth/Re≦6.0nm。
(3)厚み位相差(Rth)が、130nm≦Rth≦180nm。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、二軸延伸されたフィルムであって、一軸延伸目の延伸温度(T1)と延伸倍率(V1)、及び、二軸延伸目の延伸温度(T2)と延伸倍率(V2)、並びに、二軸延伸目の延伸直後の熱固定ゾーンの熱固定温度(T3)と、請求項1に記載のポリカーボネートを主成分とする樹脂のガラス転移温度(Tg)が、以下の(4)〜(6)の条件を満たすことを特徴とするフィルムが提供される。
(4)10℃<(T2−T1)<20℃
(5)−0.2倍<(V2−V1)<0.5倍
(6)(Tg−30)℃≦T3≦(Tg−10)℃
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、前記ポリカーボネート樹脂が、下記式(I)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含有することを特徴とするフィルムが提供される。
Figure 2016151674
また、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、前記ポリカーボネート樹脂がさらに、下記式(II)で表されるトリシクロデカンジメタノールに由来する構造単位を含有することを特徴とするフィルムが提供される。
Figure 2016151674
また、本発明の第5の発明によれば、ポリカーボネート樹脂とする原料を製膜して得られたフィルムを二軸延伸することにより下記(1)〜(3)の特性を有するフィルムを製造する方法であって、該二軸延伸における一軸延伸目の延伸温度(T1)と延伸倍率(V1)、及び、二軸延伸目の延伸温度(T2)と延伸倍率(V2)、並びに、二軸延伸目の延伸直後の熱固定ゾーンの熱固定温度(T3)と、請求項1に記載のポリカーボネートを主成分とする樹脂のガラス転移温度(Tg)が、以下の(4)〜(6)の条件を満たすことを特徴とするフィルムの製造方法が提供される。
(1)3次元複屈折(Nx、Ny、Nz)が、Nx>Ny>Nz。
(2)厚み位相差(Rth)と面内位相差(Re)の比が、1.5nm≦Rth/Re≦6.0nm。
(3)厚み位相差(Rth)が、130nm≦Rth≦180nm。
(4)10℃<(T2−T1)<20℃
(5)−0.2倍<(V2−V1)<0.5倍
(6)(Tg−30)℃≦T3≦(Tg−10)℃
また、本発明の第6の発明によれば、第5の発明に係るフィルムの製造方法により製造されたフィルムが提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜4のいずれか又は第6の発明に係るフィルムよりなる位相差フィルムが提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜4のいずれか又は第6の発明に係るフィルムを用いて作製された偏光板が提供される。
また、本発明の第9の発明によれば、第8の発明に係る偏光板が設けられた液晶表示装置が提供される。
本発明によれば、耐湿熱性や寸法安定性に優れ、また、機械的強度にも優れ、液晶ディスプレイに使用される偏光板に貼り合わされる位相差フィルムとして好適なフィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。
[フィルム]
本発明のフィルムは、ポリカーボネート樹脂を主成分とし、3次元複屈折(Nx、Ny、Nz)、面内位相差(Re)、及び厚み位相差(Rth)が、以下の(1)〜(3)の条件を満たすものである。
(1)3次元複屈折(Nx、Ny、Nz)が、Nx>Ny>Nz。
(2)厚み位相差(Rth)と面内位相差(Re)の比が、1.5≦Rth/Re≦6.0nm。
(3)厚み位相差(Rth)が、130nm≦Rth≦180nm。
ここで、面内位相差(Re)、厚み位相差(Rth)は、Nxを遅相軸とすると、以下の式で算出される。
Re=(Nx−Ny)/2×フィルム厚み
Rth=((Nx+Ny)/2−Nz)×フィルム厚み
また、ここで主成分とは、フィルム中の成分として、好ましくは50重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上含むことをいう。
本発明のフィルムは、単層構成であっても多層構成であってもよく、多層構成の場合、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を超えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。
1.フィルムの物性等
以下、本発明のフィルムの物性等について具体的に説明する。
(1)3次元複屈折
本発明のフィルムの3次元複屈折(Nx、Ny、Nz)は、Nx>Ny>Nzである。
即ち、本発明のフィルムを、液晶、特にVA方式の液晶装置の位相差フィルムに使用する場合、複数枚の位相差フィルムの逐次張り合わせを必要とせずに視野角拡大効果を得るためには、Nx>Ny>Nzである必要がある。
(2)面内位相差(Re)
本発明のフィルムの面内位相差(Re)は、特に規定するものではないが、30nm以上、100nm以下であり、特に35nm以上、60nm以下であることが好ましい。即ち、本発明のフィルムを、液晶、特にVA方式の液晶装置の位相差フィルムに使用する場合、光漏れを有効に防止するためには、上記範囲の面内位相差(Re)を有する必要がある。フィルムの面内位相差(Re)が上記範囲外であると、斜め方向からの液晶からの光漏れを防止することができない。
(3)厚み位相差(Rth)
本発明のフィルムの厚み位相差(Rth)は、130nm以上、180nm以下であり、特に135nm以上、160nm以下であることが好ましい。即ち、本発明のフィルムを、液晶、特にVA方式の液晶装置において、垂直方向の配向度が高い液晶を使用している液晶装置の位相差フィルムに使用する場合、光漏れを有効に防止するためには、上記範囲の厚み位相差(Rth)を有する必要がある。フィルムの厚み位相差(Rth)が上記範囲外であると、垂直方向から液晶へ入射する光と、Positive−Cの3次元複屈折分布を保有する液晶との影響を相殺することができなくなる。
(4)厚み位相差(Rth)と面内位相差(Re)の比
本発明のフィルムの厚み位相差(Rth)と面内位相差(Re)の比は、1.5以上、6.0以下であり、特に2.0以上、5.0以下であることが好ましい。即ち、本発明のフィルムを、液晶、特にVA方式の液晶装置において、垂直方向の配向度が高い液晶を使用している液晶装置の位相差フィルムに使用する場合、光漏れを有効に防止するためには、上記範囲の厚み位相差(Rth)と面内位相差(Re)の比を有する必要がある。フィルムの厚み位相差(Rth)と面内位相差(Re)の比が上記範囲外であると、斜め方向から液晶へ入射する光と、垂直方向から入射する光とPositive−Cの3次元複屈折分布を保有する液晶との影響の、両方を相殺することができなくなる。
3次元複屈折(Nx、Ny、Nz)、面内位相差(Re)、及び厚み位相差(Rth)が上記(1)〜(3)の条件を満たすフィルムは、例えば、主成分のポリカーボネート樹脂として、好ましくは後述のポリカーボネート樹脂を用い、後述の特定の逐次二軸延伸工程を経る本発明のフィルムの製造方法により製造することができる。
なお、フィルムの3次元複屈折(Nx、Ny、Nz)、面内位相差(Ro)及び厚み位相差(Rth)の具体的な測定方法は、後述の実施例の項に記載されるとおりである。
本発明のフィルムの膜厚については特に制限はないが、その上限値については、好ましくは80μm以下であり、さらに好ましくは70μm以下であり、特に好ましくは60μm以下である。フィルムの膜厚が80μmを超えると、これを用いた偏光板の総膜厚が厚くなり、液晶パネルの薄膜化が困難となる。フィルムの膜厚は製膜条件などによって調整できる。例えば、溶融押出によりフィルムを作製する場合は、押出量や引取速度によって、膜厚を調整できる。溶液流涎法によりフィルムを作製する場合は、溶液の濃度等によって、膜厚を調整できる。
本発明のフィルムの膜厚の下限値は特に制限がないが、機械的強度の観点から通常は3μm以上であり、5μm以上が好ましく、10μm以上がさらに好ましい。
2.ポリカーボネート樹脂
本発明のフィルムは、ポリカーボネート樹脂(以下、「本発明のポリカーボネート樹脂」と称す場合がある。)を主成分とする。
ポリカーボネート樹脂は、寸法安定性、耐湿熱性に優れ、また、原料設計により、機械的強度や光学特性を高めることも可能であり、ポリカーボネート樹脂を主成分とすることにより、液晶ディスプレイに使用される偏光板に貼り合わされる位相差フィルムとして好適な高特性のフィルムを得ることができる。
本発明のポリカーボネート樹脂としては、代表的なものとして、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(通称ビスフェノール−A)を構造単位とする芳香族ポリカーボネートが挙げられるが、本発明で用いるポリカーボネート樹脂は、これに限定されるものではなく、例えば1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−アルキルシクロアルカン、1,1−ビス(3−置換−4−ヒドロキシフェニル)−アルキルシクロアルカン、1,1−ビス(3,5−置換−4−ヒドロキシフェニル)−アルキルシクロアルカン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン類からなる群から選択される少なくとも1種の2価フェノールをモノマー成分とするホモまたは共重合ポリカーボネート、上記2価フェノールとビスフェノールAをモノマー成分とするポリカーボネートとの混合物、上記2価フェノールとビスフェノールAとをモノマー成分とする共重合ポリカーボネートなどが挙げられる。
本発明のポリカーボネート樹脂としては、高透明性、高強度、高耐熱性、高耐候性等の点より、構造の一部に下記式(I)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂が好ましい。より具体的には、上記式(I)で表されるジヒドロキシ化合物としては、例えば、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド及びイソイデットが挙げられる。
Figure 2016151674
前記式(I)で表されるジヒドロキシ化合物は、生物起源物質を原料として糖質から製造可能なエーテルジオールである。とりわけ、イソソルビドは、澱粉から得られるD−グルコースを水添してから脱水することにより安価に製造可能であって、資源として豊富に入手することが可能である。これらの事情により、上記式(I)で表されるジヒドロキシ化合物としては、イソソルビドが最も好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂は、前記式(I)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位以外の構造単位を、さらに含んでいてもよい。前記式(I)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位以外の構造単位をさらに含むことで、加工容易性及び耐衝撃性を改良することが可能となる。
前記式(I)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位以外の構造単位のなかでも、芳香族環を有さないジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が好ましく用いられる。
より具体的に例えば、国際公開第2004/111106号に記載の脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位及び国際公開第2007/148604号に記載の脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を挙げることができる。
前記脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の中でも、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールから選ばれる少なくとも1種のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことが好ましい。
前記脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の中でも、5員環構造又は6員環構造を含むものであることが好ましい。6員環構造は共有結合によって椅子形又は舟形に固定されていてもよい。
5員環構造又は6員環構造である脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことにより、得られるポリカーボネート樹脂の耐熱性を高くすることができる。
脂環式ジヒドロキシ化合物に含まれる炭素原子数は通常70以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、30以下であることがさらに好ましい。
前記5員環構造又は6員環構造を含む脂環式ジヒドロキシ化合物としては、上述の国際公開第2007/148604号に記載のものを挙げることができる。
中でも、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール及びペンタシクロペンタデカンジメタノールを好適に例示することができる。これらの中でも、シクロヘキサンジメタノール又はトリシクロデカンジメタノールが経済性及び耐熱性などからより好ましい。特に、下記式(II)で表されるトリシクロデカンジメタノールに由来する構造単位を含有することが、経済性や耐熱性及び、光学特性とのバランスの点で、最も好ましい。
なお、これらの他の構造単位は、ポリカーボネート樹脂中に1種のみが含まれていてもよく2種以上が含まれていてもよい。
Figure 2016151674
前記ポリカーボネート樹脂の、構造の一部に前記式(I)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合は、ポリカーボネート樹脂中の全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対して、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、特に好ましくは50モル%以上であって、また、好ましくは90モル%下、より好ましくは80モル%以下である。
前記ポリカーボネート樹脂の、構造の一部に前記式(I)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合が上記下限以上であれば、ガラス転移温度の維持による耐熱性の向上が可能となり、また、後述の高い引裂強度を満たすフィルムを得ることができるため好ましい。一方、上記上限以下であることにより、カーボネート構造に由来する着色、生物起源物質を原料に用いる故に微量に含有する不純物に由来する着色等を抑制することができ、通常ポリカーボネートフィルムに要求される透明性を損なわない可能性がある。また、構造の一部に前記式(I)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位のみで構成されるポリカーボネート樹脂等では達成が困難な、適当な成形加工性、機械的強度及び耐熱性等のバランスを取ることができる。
前記ポリカーボネート樹脂は、構造の一部に前記式(I)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、さらに脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位及び/又は脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位とからなることが好ましいが、本発明の目的を損なわない範囲で、さらにそれら以外のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が含まれていてもよい。
前記ポリカーボネート樹脂は、一般に用いられる重合方法で製造することができる。前記ポリカーボネート樹脂の製造方法は、ホスゲン法または炭酸ジエステルと反応させるエステル交換法のいずれでもよい。なかでも、重合触媒の存在下に、構造の一部に前記式(I)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物と、脂肪族及び/又は脂環式ジヒドロキシ化合物と、必要に応じて用いられるその他のジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを反応させるエステル交換法が好ましい。
エステル交換法は、構造の一部に前記式(I)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物の1種又は2種以上と、脂肪族及び/又は脂環式ジヒドロキシ化合物の1種又は2種以上と、必要に応じて用いられるその他のジヒドロキシ化合物の1種又は2種以上と、炭酸ジエステルとに、塩基性触媒、さらにはこの塩基性触媒を中和する酸性物質を添加してエステル交換反応を行う製造方法である。
炭酸ジエステルの代表例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーネート、ビス(ビフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート及びジシクロヘキシルカーボネートなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、特にジフェニルカーボネートが好ましく用いられる。
本発明のポリカーボネート樹脂の分子量は、還元粘度で表すことができ、還元粘度の下限は、0.20dl/g以上が好ましく、0.30dL/g以上がより好ましく、0.35dL/g以上がさらに好ましく、還元粘度の上限は、2.00dL/g以下が好ましい。
ポリカーボネート樹脂の還元粘度が低すぎると得られるフィルムの機械的強度が小さい可能性があり、大きすぎると、成形する際の流動性が低下し、生産性や成形性を低下させる傾向がある。
なお、ポリカーボネート樹脂の還元粘度は、中央理化社製DT−504型自動粘度計にてウベローデ型粘度計を用い、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート樹脂濃度が0.60g/dlになるように精密に調整した後に、温度20.0℃±0.1℃で、下記に基づき測定値から算出される。
溶媒の通過時間t、溶液の通過時間tから、下記式:
ηrel=t/t
より相対粘度ηrelを求め、相対粘度ηrelから、下記式:
ηsp=(η−η)/η=ηrel−1
より比粘度ηspを求める。
比粘度ηspを濃度c(g/dl)で割って、下記式:
ηred=ηsp/c
より還元粘度(換算粘度)ηredを求める。
また、本発明のポリカーボネート樹脂の耐熱性の指標となるガラス転移温度(Tg)は、100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがさらに好ましい。ガラス転移温度(Tg)の上限については特に制限はないが、通常160℃以下である。
ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度の測定方法は、後述の実施例の項に記載されるとおりである。
3.その他の成分
本発明のフィルムには、紫外線吸収剤が含まれていてもよい。紫外線吸収剤が含まれていると、フィルムの耐候性を向上でき、また液晶や偏光膜の紫外線劣化を防ぐことができる。本発明のフィルムに用いる紫外線吸収剤としては、公知のもの、例えば各種市販のものを特に制限なく使用できる。中でも、公知の芳香族ポリカーボネート樹脂への添加に通常用いられるものを好適に用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)及び2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシルオキシ)−フェノール等のトリアジン系紫外線吸収剤;2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)等のベンゾオキサジン系紫外線吸収剤;2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシ−フェノール等のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤;などを挙げることができる。
紫外線吸収剤の融点としては、特に120℃〜250℃の範囲にあるものが好ましい。融点が120℃以上の紫外線吸収剤を使用することにより、紫外線吸収剤が時間経過とともにフィルム表面に凝集するブリードアウト現象によりフィルム表面が汚れたり、口金や金属ロールを用いてフィルム成形する場合に、ブリードアウトによりそれらが汚れたりすることを防止し、フィルム表面の曇りを減少させ、また改善することが容易になる。
これらの観点から、紫外線吸収剤としては、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)]フェノール及び2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、並びに2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシ−フェノール等のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を好ましく使用できる。
これらの中でも、本発明のポリカーボネート樹脂との相溶性や、液晶や偏光膜の紫外線劣化を効率的に防ぐ観点から、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましく使用できる。
これらの紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記紫外線吸収剤は、本発明のフィルム中に、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、0.0001重量部以上、20重量部以下の割合で含有することが好ましく、0.0005重量部以上、15重量部以下の割合で含有することがより好ましく、0.001重量部以上、10重量部以下の割合で含有することがさらに好ましい。
かかる範囲で紫外線吸収剤を含有することにより、フィルム表面への紫外線吸収剤のブリードやフィルムの機械特性低下を生じることなく、本発明のフィルムの耐候性を向上させ、また液晶や偏光膜の紫外線劣化を防ぐことができる。
本発明の目的を損なわない範囲で、本発明のフィルムにはまた、紫外線吸収剤以外の添加成分として、シランカップリング剤、酸化防止剤、耐候安定剤などのその他の各種添加剤を適宜な量含有していてもよい。また、本発明の目的を損なわない範囲で、本発明のポリカーボネート樹脂以外の樹脂を含有していてもよい。
4.フィルムの製造方法
本発明のフィルムの製造方法は、前記の本発明のポリカーボネート樹脂を主成分として延伸工程と熱固定工程を経るフィルムであって、3次元複屈折(Nx、Ny、Nz)、面内位相差(Re)、及び厚み位相差(Rth)が前述の(1)〜(3)の条件を満たすフィルムを製造することができる方法であればよく、特に制限はないが、例えば、本発明のポリカーボネート樹脂を主成分とする原料を製膜して得られたフィルムを特定の条件で二軸延伸し熱固定をする方法が挙げられる。以下にこのフィルムの製造方法について説明する。
4−1.フィルムの製膜方法
本発明のフィルムの製膜方法としては、公知の方法、例えば、溶液流涎法や、単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーなどの溶融混合設備を有し、Tダイを用いる押出キャスト法やカレンダー法などを採用することができ、特に限定されるものではないが、本発明においては、ハンドリング性や生産性などの面からTダイを用いる押出キャスト法が好適に用いられる。Tダイを用いる押出キャスト法での成形温度は、用いるポリカーボネート樹脂の流動特性や製膜性などによって適宜調整されるが、概ね80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは140℃以上であり、かつ、概ね320℃以下、好ましくは300℃以下、より好ましくは280℃以下、さらに好ましくは260℃以下であり、シランカップリング剤などを添加する場合は反応に伴う樹脂圧の増加やフィッシュアイの増加を抑制するために成形温度を低下させることが好ましい。シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤などの各種添加剤は、予めポリカーボネート樹脂とともにドライブレンドしてからホッパーに供給してもよいし、予めポリカーボネート樹脂等の全ての材料を溶融混合してペレットを作製してから供給してもよいし、添加剤のみを予めポリカーボネート樹脂等の樹脂に濃縮したマスターバッチを作製して供給してもよい。
4−2.フィルムの延伸方法
3次元複屈折(Nx、Ny、Nz)、面内位相差(Re)、及び厚み位相差(Rth)が前述の(1)〜(3)の条件を満たす本発明のフィルムは、上記のようにして得られたフィルムを更に、延伸処理することにより得ることができる。フィルムの延伸処理方法としては、下記(1)〜(4)のような一般的な二軸延伸方法を採用することができ、特に限定されるものではないが、本発明においては、フィルム搬送方向にロール延伸を実施した後に、フィルム搬送方向に直交する方向へテンター延伸を行う逐次二軸延伸を行うことが、生産性の面から好適である。
(1) フィルム搬送方向にロール延伸を実施した後に、フィルム搬送方向に直交する方向へテンター延伸を行う逐次二軸延伸
(2) フィルム搬送方向と直交する方向へテンター延伸を実施した後に、フィルム搬送方向へロール延伸を実施する逐次二軸延伸
(3) フィルム搬送方向に直交する方向へテンター延伸を実施した後に、フィルム自体を直角にして再度テンター延伸を実施する逐次二軸延伸
(4) 同時二軸延伸
本発明で実施される二軸延伸方法において、特に得られるフィルムの面内位相差(Re)及び厚み位相差(Rth)が前記(2),(3)の条件を満たすものとするために、一軸延伸目の延伸温度(T1)と延伸倍率(V1)、二軸延伸目の延伸温度(T2)と延伸倍率(V2)、及び、二軸延伸目の延伸直後の熱固定ゾーンの熱固定温度(T3)、請求項1に記載のポリカーボネートを主成分とする樹脂のガラス転移温度(Tg)が、以下の(4)〜(6)の条件を満たすことが好ましく、特に、以下の(4A)〜(6A)の条件を満たすことが好ましい。
(4)10℃<(T2−T1)<20℃
(5)−0.2倍<(V2−V1)<0.5倍
(6)(Tg−25)℃≦T3≦(Tg−10)℃
(4A)12℃≦(T2−T1)≦18℃
(5A)−0.1倍≦(V2−V1)≦0.4倍
(6A)(Tg−30)℃≦T3≦(Tg−15)℃
なお、ここで、延伸温度(T1)、(T2)、(T3)の単位は「℃」であり、延伸倍率(V1)、(V2)は「倍」である。
延伸温度の差(T2−T1)が10以下の場合は延伸時の3次元複屈折Nx、Ny、Nzの上昇率が高く、NxとNy、Nzの差が大きくなりすぎて、所定の面内位相差(Re)及び、厚み位相差(Rth)の範囲内に収めることができず、(T2−T1)が20以上の場合には、Nx、Nyの差が小さくなり所定の面内位相差(Re)の範囲に収めることができない。
また、延伸倍率の差(V2−V1)が−0.2以下の場合は3次元複屈折Nx、Ny、Nzの差が大きくなりすぎて所定の厚み位相差(Rth)の範囲内に収めることができず、また、工業的にも広幅のフィルムを作製する事が困難であり、(V1−V2)が0.5以上の場合は、Nx、Nyの差が小さくなり所定の厚み位相差(Rth)の範囲に収めることができない。
二軸延伸目の延伸直後の熱固定ゾーンの熱固定温度(T3)は上記の(6)の条件、好ましくは(6A)の条件を満たすものが良い。(T3)が(Tg−25)より小さい場合は延伸時の3次元複屈折率のNx、Nyの差が大きくなりすぎて、所定の面内位相差(Re)の範囲に収める事ができず、また、(T3)が(Tg−10)より大きい場合は延伸時の3次元複屈折率のNx、Ny、Nzの差が大きくなりすぎて所定の厚み位相差(Rth)の範囲内に収める事ができない。
また、テンター延伸工程において熱固定ゾーンというのは数ゾーン設けられるのが通例であるが、フィルム延伸が終わった後すぐの熱固定ゾーンの温度が、上記の(6)の条件を満たしているものが良い。延伸後すぐの熱固定ゾーン以外のゾーンの熱固定温度を上記の(6)の条件にした場合は、延伸後の3次元複屈折率のNx、Ny、Nzの差が大きくなりすぎて、所定の厚み位相差(Rth)の範囲内に収める事ができない。
なお、二軸延伸処理における一軸延伸目の延伸温度(T1)、延伸倍率(V1)、及び、二軸延伸目の延伸温度(T2)、延伸倍率(V2)は、上記の(4)及び(5)の条件、好ましくは(4A)及び(5A)の条件を満たすものであればよいが、具体的な延伸条件としては、一軸延伸目の延伸温度(T1)は(Tg−10)〜(Tg+20)℃の範囲、延伸倍率(V1)は1.1〜2.5倍の範囲で、また、二軸延伸目の延伸温度(T2)は(Tg+10)〜(Tg+40)℃の範囲、延伸倍率(V2)は1.1〜3.0倍の範囲で、上記の条件を満たすように設定されることが好ましい。ここで、「Tg」は、ポリカーボネート樹脂を主成分とするフィルムの成膜原料のガラス転移温度(Tg)である。
5.液晶表示装置
本発明のフィルムは、透明性、寸法安定性、耐湿熱性に優れ、光学特性にも優れることから、このような本発明のフィルムを用いた本発明の位相差フィルムは、テレビ、パソコン、デジタルカメラ、携帯電話等の液晶表示装置の部材として高品質な表示画面を実現することができ、また、液晶表示装置製造時の作業性にも優れる。
前述の通り、液晶ディスプレイは、表示側を前面側、その反対側(バックライト側)を後面側とするとき、前面側偏光板/液晶/後面側偏光板の構成を有する。また、液晶方式によっては液晶装置の光漏れを防ぐために位相差フィルムを挟み込んでおり、例えば、VA液晶方式においては、前面側偏光板/位相差フィルム/液晶/位相差フィルム/後面側偏光板という構成となる。
本発明のフィルムは、一方のフィルム面側には接着剤層を介して偏光膜を接着し、他方のフィルム面側には接着剤層を介して液晶や他の機能性フィルムや透明基材を接着することができる。他の機能性フィルムとしては、特に制限はないが、例えば、高屈折率フィルム、低屈折率フィルム、これらを積層した反射防止フィルム、色補正フィルムなどの光学フィルム、ハードコートフィルム、防汚フィルム、電磁波シールドフィルム、赤外線吸収フィルム、紫外線吸収フィルムなどが挙げられる。また、透明基材としては、支持基板としてのガラスや各種透明フィルムが挙げられる。
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、これらの実施例及び比較例により本発明は制限を受けるものではない。なお、以下においてフィルムの延伸時の搬送方向をMD、その直角方向をTDと記載する。
[評価方法]
以下において、種々の物性等の測定及び評価は次のようにして行った。
<ガラス転移温度(Tg)>
示差走査熱量計((株)パーキンエルマー社製、商品名:Pyris1 DSC)を用いて、JIS K7122に準じて、試料約10mgを加熱速度10℃/分で室温から250℃まで昇温し、250℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で室温まで降温し、これを再度加熱速度10℃/分で250℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムから、ガラス転移温度(Tg)を読み取った。
<3次元複屈折(Nx、Ny、Nz)、面内位相差(Ro)及び厚み位相差(Rth)>
各フィルムに対し、位相差測定装置(王子計測社製、商品名:KOBRA−WR)を用いて測定した。なお、Rthは、入射角度0°のときと、40°のときの位相差より算出した。測定結果から、以下のように評価した。
<3次元複屈折(Nx、Ny、Nz)>
○:Nx>Ny>Nzを満たす。
×:Nx>Ny>Nzを満たさない。
<面内位相差(Re)と厚み位相差(Rth)の比>
○:1.5≦Rth/Re≦6.0。
×:Rth/Re<1.5又は6.0<Rth/Re。
<総合評価>
○:3次元複屈折(Nx、Ny、Nz)、面内位相差(Re)と厚み位相差(Rth)の比Rth/Reがすべて○
×:3次元複屈折(Nx、Ny、Nz)、面内位相差(Re)と厚み位相差(Rth)の比Rth/Reのいずれか1以上が×
[ポリカーボネート樹脂]
フィルムの作製に用いたポリカーボネート樹脂は、特開2008−024919号公報に準じた方法により得られた、ジヒドロキシ化合物であるイソソルビドに由来する構造単位とトリシクロデカンジメタノールに由来する構造単位のモル比率がイソソルビド/トリシクロデカンジメタノール=6/4で、ガラス転移温度(Tg)が132℃であるポリカーボネート共重合体である。
[実施例1]
上記ポリカーボネート樹脂をφ65mm単軸押出機に投入し、220〜240℃のバレル設定温度にて溶融混練し、幅1350mm、リップギャップ0.5mmの口金(設定温度240℃)から押出したのち、100℃に温調されたキャストロールにて巻き取り、膜厚100μmの単層フィルムを作製した。
この単層フィルムを、MDへロール延伸した後に、TDへテンター延伸を実施する逐次二軸延伸法にて延伸を実施した。その時の一軸延伸目の延伸温度(T1)と延伸倍率(V1)、二軸延伸目の延伸温度(T2)と延伸倍率(V2)、熱固定温度(T3)は表1に示す通りであり、その関係は、T2−T1=16℃、V2−V1=0倍、T3=115℃であった。また、得られた延伸フィルムの膜厚は51μmであった。
[実施例2]
実施例1の単層フィルムを、MDへロール延伸した後に、TDへテンター延伸を実施する逐次二軸延伸法にて延伸を実施した。その時の一軸延伸目の延伸温度(T1)と延伸倍率(V1)、二軸延伸目の延伸温度(T2)、延伸倍率(V2)と熱固定温度(T3)は表1に示す通りであり、その関係は、T2−T1=16℃、V2−V1=0.2倍、T3=105℃であった。また、得られた延伸フィルムの膜厚は44μmであった。
[比較例1]
実施例1の単層フィルムを、MDへロール延伸した後に、TDへテンター延伸を実施する逐次二軸延伸法にて延伸を実施した。その時の一軸延伸目の延伸温度(T1)と延伸倍率(V1)、二軸延伸目の延伸温度(T2)と延伸倍率(V2)、熱固定温度(T3)は表1に示す通りであり、その関係は、T2−T1=16℃、V2−V1=0倍、T3=125℃であった。また、得られた延伸フィルムの膜厚は50μmであった。
[比較例2]
実施例1の単層フィルムを、MDへロール延伸した後に、TDへテンター延伸を実施する逐次二軸延伸法にて延伸を実施した。その時の一軸延伸目の延伸温度(T1)と延伸倍率(V1)、二軸延伸目の延伸温度(T2)と延伸倍率(V2)、熱固定温度(T3)は表1に示す通りであり、その関係は、T2−T1=16℃、V2−V1=0.8倍、T3=115℃であった。また、得られた延伸フィルムの膜厚は36μmであった。
[比較例3]
実施例1の単層フィルムを、MDへロール延伸した後に、TDへテンター延伸を実施する逐次二軸延伸法にて延伸を実施した。その時の一軸延伸目の延伸温度(T1)と延伸倍率(V1)、二軸延伸目の延伸温度(T2)と延伸倍率(V2)、熱固定温度(T3)は表1に示す通りであり、その関係は、T2−T1=16℃、V2−V1=0倍、T3=125℃であった。ただし、フィルム延伸直後の熱固定ゾーン以外の熱固定温度を115℃とした。また、得られた延伸フィルムの膜厚は51μmであった。
[比較例4]
実施例1の単層フィルムを、MDへロール延伸した後に、TDへテンター延伸を実施する逐次二軸延伸法にて延伸を実施した。その時の一軸延伸目の延伸温度(T1)と延伸倍率(V1)、二軸延伸目の延伸温度(T2)と延伸倍率(V2)は表1に示す通りであり、その関係は、T2−T1=0℃、V2−V1=0.4倍であった。また、得られた延伸フィルムの膜厚は51μmであった。
実施例及び比較例のフィルムの評価結果を表1に示す。
Figure 2016151674
表1より明らかなように、実施例1、2のフィルムはポリカーボネート樹脂から作製され、特定の延伸条件で逐次二軸延伸、熱固定をしたことにより、3次元複屈折(Nx、Ny、Nz)、面内位相差(Re)、及び厚み位相差(Rth)が所定の条件を満たし、位相差フィルムとしての光学特性に優れている。
一方、比較例1は、熱固定温度T3が条件(6)を満たさず、厚み位相差(Rth)が本発明の範囲外の光学特性である。比較例2は、逐次二軸延伸時の(V2−V1)が条件(5)を満たさず、厚み位相差(Rth)と面内位相差(Re)の比、厚み位相差(Rth)が本発明の範囲外である。比較例3は、本発明以外の熱固定ゾーンの温度設定が条件(6)となっているが、延伸後の熱固定温度は条件(6)を満たさず、厚み位相差(Rth)が本発明の範囲外の光学特性となっている。比較例4は逐次二軸延伸時の(T2−T1)が条件(4)を満たさず、厚み位相差(Rth)と面内位相差(Re)の比、厚み位相差(Rth)が本発明の範囲外であり、位相差フィルムには不適当な光学特性となっている。

Claims (9)

  1. ポリカーボネート樹脂を主成分とし延伸工程と熱固定工程を経て製造されたフィルムであって、下記(1)〜(3)の特性を有するフィルム。
    (1)3次元複屈折(Nx、Ny、Nz)が、Nx>Ny>Nz。
    (2)面内位相差(Re)と厚み位相差(Rth)比が、1.5nm≦Rth/Re≦6.0nm。
    (3)厚み位相差(Rth)が、130nm≦Rth≦180nm。
  2. 二軸延伸されたフィルムであって、一軸延伸目の延伸温度(T1)と延伸倍率(V1)、及び、二軸延伸目の延伸温度(T2)と延伸倍率(V2)、並びに、二軸延伸目の延伸直後の熱固定ゾーンの熱固定温度(T3)と、請求項1に記載のポリカーボネートを主成分とする樹脂のガラス転移温度(Tg)が、以下の(4)〜(6)の条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
    (4)10℃<(T2−T1)<20℃
    (5)−0.2倍<(V2−V1)<0.5倍
    (6)(Tg−30)℃≦T3≦(Tg−10)℃
  3. 前記ポリカーボネート樹脂が、下記式(I)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルム。
    Figure 2016151674
  4. 前記ポリカーボネート樹脂がさらに、下記式(II)で表されるトリシクロデカンジメタノールに由来する構造単位を含有することを特徴とする請求項3に記載のフィルム。
    Figure 2016151674
  5. ポリカーボネート樹脂とする原料を製膜して得られたフィルムを二軸延伸することにより下記(1)〜(3)の特性を有するフィルムを製造する方法であって、該二軸延伸における一軸延伸目の延伸温度(T1)と延伸倍率(V1)、及び、二軸延伸目の延伸温度(T2)と延伸倍率(V2)、並びに、二軸延伸目の延伸直後の熱固定ゾーンの熱固定温度(T3)と、請求項1に記載のポリカーボネートを主成分とする樹脂のガラス転移温度(Tg)が、以下の(4)〜(6)の条件を満たすことを特徴とするフィルムの製造方法。
    (1)3次元複屈折(Nx、Ny、Nz)が、Nx>Ny>Nz。
    (2)厚み位相差(Rth)と面内位相差(Re)の比が、1.5nm≦Rth/Re≦6.0nm。
    (3)厚み位相差(Rth)が、130nm≦Rth≦180nm。
    (4)10℃<(T2−T1)<20℃
    (5)−0.2倍<(V2−V1)<0.5倍
    (6)(Tg−30)℃≦T3≦(Tg−10)℃
  6. 請求項5に記載のフィルムの製造方法により製造されたフィルム。
  7. 請求項1〜4のいずれか1項又は請求項6に記載のフィルムよりなる位相差フィルム。
  8. 請求項1〜4のいずれか1項又は請求項6に記載のフィルムを用いて作製された偏光板。
  9. 請求項8に記載の偏光板が設けられた液晶表示装置。
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