JP2016151302A - 捩り振動低減装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡単な構成で、複数の制振特性を有する捩り振動低減装置を提供する。【解決手段】質量体13を振子運動可能に保持している回転体14と捩り振動が生じる制振対象物6との間に、回転体14に連結された第1回転要素11と制振対象物6に連結された第2回転要素10と第3回転要素9との少なくとも三つの回転要素によって差動作用を行う遊星回転機構8が設けられた捩り振動低減装置1であって、第3回転要素9を第1回転要素10もしくは第2回転要素11あるいは所定の固定部15に選択的に連結する係合機構16を備えている。【選択図】図1
Description
この発明は、慣性質量体の振子運動によって振動を低減する捩り振動低減装置に関するものである。
この種の振動低減装置が特許文献1や特許文献2あるいは特許文献3に記載されている。特許文献1に記載された装置は、トルクが伝達されて回転する回転体に、質量体を振子運動可能に保持させた装置であり、その質量体は、振幅に応じて振子の長さ(振子運動の支点から質量体の重心までの長さ)が変化するように保持され、その結果、振動次数に合わせた振子運動を行うように構成されている。また、特許文献2あるいは特許文献3に記載された装置は、振子運動する質量体を保持している回転部材を、所定の回転軸などの制振対象物に遊星歯車機構を介して取り付け、その遊星歯車機構を増速機として機能させることにより、回転体およびこれに保持されている質量体の回転数を制振対象物の回転数より大きくするように構成されている。
特許文献1に記載された装置における質量体は、振幅に応じて振子長さが変化するが、その変化の態様あるいは質量体の振子運動の軌跡は、その質量体の振子運動をガイドする溝の形状や質量体を回転体に保持させているピンの位置などによって決まる一定の態様もしくは軌跡に限定される。したがって、振動の低減効果は、設計上想定した振動に対しては大きくなるものの、それとは異なる振動に対しては低減効果が十分ではなくなる可能性がある。
また、遊星歯車機構などによる増速機構を設けた特許文献2や特許文献3に記載された装置においては、増速機構による増速率はその構成に応じた一定値に固定される。したがって、設計上定めた所定の次数の振動に対する振動低減効果が大きくなるものの、これとは異なる次数の振動に対する低減効果が必ずしも高くならない。
このように、従来の装置では、特定の振動に対しての低減効果が良好であっても、これとは異なる振動に対しての低減効果が十分ではないので、例えば燃焼気筒数が変更されるエンジンに連結されている場合、燃焼気筒数が変化することに伴って入力する振動が変化するので、十分な制振性能を得られない可能性があった。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであって、入力される振動が変化してもそれぞれに対応した振動低減機能を発揮することのできる捩り振動低減装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、この発明は、質量体を振子運動可能に保持している回転体と捩り振動が生じる制振対象物との間に、前記回転体に連結された第1回転要素と前記制振対象物に連結された第2回転要素と第3回転要素との少なくとも三つの回転要素によって差動作用を行う遊星回転機構が設けられた捩り振動低減装置において、前記第3回転要素を前記第1回転要素もしくは前記第2回転要素あるいは所定の固定部に選択的に連結する係合機構を備えていることを特徴とするものである。
この発明によれば、係合機構を係合させ、また解放させることにより、遊星回転機構が増速機として機能し、あるいは減速機として機能し、もしくは遊星回転機構の全体が一体となって回転し、さらには遊星回転機構が空転状態となってトルクを伝達しないから、遊星回転機構に連結されている回転体およびこれに保持されている質量体の回転数を、係合機構によって変化させることができる。その結果、周波数が異なる複数の振動に対する制振効果に優れた捩り振動低減装置を得ることができる。
つぎにこの発明の実施の形態を図を参照して説明する。図1はこの発明に係る捩り振動低減装置の第1の実施例を示す模式図であって、ここに示す捩り振動低減装置1は、エンジン2と変速機3との間に配置されている。エンジン2は、複数の気筒を有し、車速や要求駆動力(アクセル開度もしくはスロットル開度)に応じて燃焼気筒数を変更できるように構成されている。変速機2は車両に搭載されている一般的な変速機であって、手動変速機や自動変速機、あるいは無段変速機などであってよい。
エンジン2の出力軸4にフライホイール5が取り付けられており、このフライホイール5から変速機3の入力軸6にトルクを伝達し、またトルクを遮断する発進クラッチ7が設けられている。発進クラッチ7は、摩擦板をフライホイール5に接触させることにより係合状態となってトルクを伝達し、また摩擦板をフライホイール5から離隔させることにより解放状態となってトルクを遮断するように構成されている。この発進クラッチ7は、湿式クラッチあるいは乾式クラッチのいずれでもよく、また油圧を介して電気的に制御されるクラッチ、あるいはペダル操作によって切り替わる手動クラッチのいずれであっもよい。また、パウダークラッチなどの従来知られている他の形式のクラッチであってもよい。
発進クラッチ7と前記入力軸6との間に遊星回転機構8が設けられている。遊星回転機構8は、回転中心側に配置されているサン回転要素9と、そのサン回転要素9に対して同心円上に配置されたリング回転要素10と、サン回転要素9の外周面とリング回転要素10の内周面との間に配置された遊星回転部材を自転かつ公転可能に保持しているキャリヤ回転要素11との3つの回転要素によって差動作用を行う機構である。より具体的には、サンギヤ9と、リングギヤ10と、キャリヤ11とを有する遊星歯車機構8である。なお、遊星回転機構8は、互いに摩擦接触するローラタイプの回転要素を備えた機構であってもよい。そのキャリヤ11に前記発進クラッチ7がばねダンパー12を介して連結されている。またキャリヤ11に前記入力軸6が連結されている。したがって入力軸6がこの発明の実施例における制振対象物に相当している。
また、制振のための慣性トルクを発生する質量体13を振子運動可能に保持している回転体14が、リングギヤ10に一体となって回転するように連結されている。質量体13は球体あるいは円板などの転動可能な形状を有しており、回転体14にはその質量体13を収容しかつ転動させる収容部が形成されている。したがって、これら質量体13および回転体14は、質量体13を遠心力によってその転動面に押し付け、トルクの変動によって転動面に沿って質量体13が往復動作するように構成されている。なお、質量体13を回転体14にいわゆるピン止めして回転体14のトルクが変動することによって質量体13が揺動(振子運動)するように構成されていてもよい。
サンギヤ9を他の部材、例えばケーシングの一部などの固定部15に連結してサンギヤ9を固定する係合機構16が設けられている。この係合機構16は、摩擦式もしくは噛み合い式の係合機構であって、図示しない油圧アクチュエータあるいは電磁アクチュエータなどのアクチュエータによって動作し、係合状態で前記サンギヤ9を固定部15に連結してその回転を止め、また解放状態でサンギヤ9の固定を解除してサンギヤ9をフリー状態とするように構成されている。
図2は、係合機構16の係合および解放ごとの遊星回転機構8の動作状態を示す共線図であって、太い実線は係合機構16が係合してサンギヤ9を固定した状態を示している。この状態では、キャリヤ11がエンジン2から伝達されたトルクで回転するから、リングギヤ10がキャリヤ11より速い回転数で回転する。すなわち回転体14およびこれに保持されている質量体13が入力軸6より高速で回転する。また、係合機構16を解放した場合、サンギヤ9がいわゆるフリー状態になって何らの反力も発生しない。したがってサンギヤ9やリングギヤ10はキャリヤ11からピニオンギヤを介して伝達されるトルクやそれぞれの摩擦力あるいは慣性力などに応じた特定できない回転数で回転し、あるいは停止している。その動作状態は図2に線として表示できない。なお、一般的には、サンギヤ9がフリー回転し、リングギヤ10およびこれに連結されている回転体14にはトルクが伝達されずにこれらは停止する。このように、遊星回転機構8は、係合機構16の係合および解放の状態に応じて動作状態、すなわちリングギヤ10や質量体13を保持している回転体14の回転数を変化させることができるので、変速機構を構成している。
つぎに作用について説明すると、エンジン2を起動した状態で発進クラッチ7を係合させると、ばねダンパー12および遊星回転機構8のキャリヤ11を介して入力軸6にトルクが伝達される。エンジン2の出力トルクは各気筒での間欠的な燃焼が要因となって振動する。その振動は先ず、ばねダンパー12によって減衰させられる。また、前述した係合機構16が係合している場合には、遊星回転機構8が増速機として機能するので、リングギヤ10およびこれに連結されている回転体14が入力軸6よりも高回転数で回転する。そして、入力軸6に伝達されるトルクが振動すると、リングギヤ9およびこれと一体の回転体14の回転数が変化し、その際の角加速度によって質量体13が振子運動を行う。この質量体13の振子運動に伴う慣性トルクによって振動が低減させられる。その場合の振動伝達ゲインが小さくなる。すなわち制振効果は、質量体13の等価質量が大きいほど、低回転数領域で大きくなる。上述したように係合機構16を係合させて回転体14の回転数を増大させれば、質量体13の実質量が小さくても等価慣性が大きくなるので、エンジン回転数が低回転数域にある状態での捩り振動を効果的に低減することができる。また、係合機構16を解放している状態では、回転体14の回転数が低下し、あるいは回転しない。したがって、エンジン2の出力トルクを増大させて加速する場合、質量体13を連れ回すことがないので、入力軸6のトルクの増大に遅れが生じず、加速応答性が良好になる。また、捩り振動低減装置1では、低回転数域での振動低減に備えて質量体13の実質量を大きくする必要がないので、装置の強度を高くする必要性が少なく、また耐久性の低下を抑制することができる。そして、質量体13の回転数を変化させることができるので、複数の次数の振動(強制力)に対応して良好な振動低減を行うことができる。具体的には、入力される強制力(振動)の次数を捩り振動低減装置1の固有振動数である次数に合わせるように遊星回転機構8(変速機構)の変速比を設定することにより、複数の次数の振動に合わせた制振を行うことができる。したがって、エンジン2がいわゆる可変気筒エンジンである場合、1つの捩り振動低減装置1によって部分気筒運転および全気筒運転のいずれであっても良好に振動低減を行うことができる。
なお、この発明における遊星回転機構および係合機構は、更に他の動作状態(変速比)を設定できるように構成されていてもよい。その例を図3に示し、またその遊星回転機構についての動作状態を図4に共線図で示してある。図3に示す例は、図1に示す構成におけるサンギヤ9とキャリヤ11との間に、この発明の実施例における係合機構に含まれるクラッチ17を追加して設けた例である。したがって、前述した係合機構16であるブレーキを係合しかつクラッチ17を解放した動作状態(変速段)、これらを共に解放した動作状態(変速段)、ブレーキ16を解放しかつクラッチ17を係合した動作状態(変速段)の3つの状態を設定することができる。
ブレーキ16を係合しかつクラッチ17を解放した状態は、前述した図1に示す例で係合機構16を係合させた状態と同様であり、これを図4に太い実線で示してある。すなわち、遊星回転機構8が増速機として機能して高速段が設定される。また、ブレーキ16およびクラッチ17を共に解放した状態は、前述した図1に示す例で係合機構16を解放した状態と同様である。すなわち回転体14にはトルクが積極的には伝達されない。そして、クラッチ17のみを係合させた状態は図4に破線で示すとおりである。すなわち、遊星回転機構8における二つの回転要素が連結されるので、遊星回転機構8の全体が一体となって回転する。いわゆる直結状態となる。したがって、回転体14の回転数と入力軸6の回転数とが同じになり、質量体13の等価質量は高速段が設定されている場合より小さくなり、高回転数域での振動低減効果が向上する。このように、回転数に適合した振動低減を行うことができる。
また、図5に示す例は、上述した図4に示す構成からブレーキ16を取り除いた例である。この構成では、前述したいわゆる直結段といわゆるフリー状態との二つの状態(変速段)を設定することができる。直結段での遊星回転機構8の動作状態を図6に太い実線で示してある。この図5に示す例であっても、二つの動作状態を設定できるから、回転数に適合した振動低減を行うことができる。
さらに、図7に示す例は、直結段とフリー状態とに加えて、反転減速状態を設定できるように構成した例である。ここに示す例では、サンギヤ9に入力軸6およびばねダンパー12が連結され、これが入力要素となっており、これに対してキャリヤ11と所定の固定部15との間にブレーキ16が設けられ、またキャリヤ11とサンギヤ9との間にクラッチ17が設けられている。そのクラッチ17のみを係合させると、キャリヤ11とサンギヤ9とが一体化されるので、遊星回転機構8の全体が一体となって回転し、直結段となる。その状態を図8の共線図に破線で示してある。これに対してブレーキ16のみを係合させれば、リングギヤ10がサンギヤ9とは反対方向に回転する。その回転数は遊星回転機構8におけるギヤ比(サンギヤ9とリングギヤ10との歯数比)に応じて減速された回転数となる。すなわち、反転低速段が設定される。その状態を図8に破線で示してある。なお、ブレーキ16およびクラッチ17を共に解放することにより前述したフリー状態になる。このように図7に示す例であっても、回転体14および質量体13の回転数を高低に異ならせることができるので、回転数に適合した振動低減を行うことができる。
図9に示す捩り振動低減装置は、常時噛み合い式の変速機構20によって回転体14を入力軸6に連結するように構成されている。具体的に説明すると、入力軸6と平行にダンパー軸21が配置され、質量体13を保持している回転体14がこのダンパー軸21に取り付けられている。そのダンパー軸21上には、高速段従動ギヤ22と低速段従動ギヤ23とが回転可能に配置されており、これらのギヤ22,23をダンパー軸21に選択的に連結する切替部材24が配置されている。この切替機構24は、要は、クラッチであって、シンクロナイザーなどの噛み合い式クラッチや摩擦クラッチなどを採用することができる。
また、ダンパー軸21と入力軸6との間にカウンタ軸25が配置され、このカウンタ軸25に、前記高速段従動ギヤ22に噛み合っている高速段駆動ギヤ26と、前記低速段従動ギヤ27に噛み合っている低速段駆動ギヤ27とが取り付けられている。そして、入力軸6には、高速段駆動ギヤ26に噛み合っている伝動ギヤ28が取り付けられている。他の構成は、図1に示す構成と同様である。
したがって図9に示す構成では、切替機構24によって、高速段従動ギヤ22と低速段従動ギヤ23とのいずれかをダンパー軸21に連結することにより、変速機構20によって高速段もしくは低速段を設定することができる。すなわち、回転体14およびこれに保持されている質量体13を各変速段の変速比に応じた回転数で回転させることができる。また、切替機構24をいずれの従動ギヤ22,23にも係合しないニュートラルに設定すれば、回転体14にトルクは伝達されず、回転体14は入力軸6から切り離される。すなわち、回転体14およびこれに保持されている質量体13の回転数を高低に異ならせて設定することができるので、回転数に適合した振動低減を行うことができる。
なお、この発明では、クラッチ17はキャリヤ11とリングギヤ10とを連結し、あるいはサンギヤ9とリングギヤ10とを連結するように設けてもよい。また、回転体14はリングギヤ10に限らず、他の回転要素に連結してもよい。
1…捩り振動低減装置、 2…エンジン、 3…変速機、 4…出力軸、 5…フライホイール、 6…入力軸、 7…発進クラッチ、 8…遊星回転機構(遊星歯車機構)、 9…サン回転要素(サンギヤ)、 10…リング回転要素(リングギヤ)、 11…キャリヤ回転要素(キャリヤ)、 12…ばねダンパー、 13…質量体、 14…回転体、 15…固定部、 16…係合機構(ブレーキ)、 17…クラッチ。
Claims (1)
- 質量体を振子運動可能に保持している回転体と捩り振動が生じる制振対象物との間に、前記回転体に連結された第1回転要素と前記制振対象物に連結された第2回転要素と第3回転要素との少なくとも三つの回転要素によって差動作用を行う遊星回転機構が設けられた捩り振動低減装置において、
前記第3回転要素を前記第1回転要素もしくは前記第2回転要素あるいは所定の固定部に選択的に連結する係合機構を備えていることを特徴とする捩り振動低減装置。
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JP2015028328A JP2016151302A (ja) | 2015-02-17 | 2015-02-17 | 捩り振動低減装置 |
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Citations (3)
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JPH10184799A (ja) * | 1996-12-26 | 1998-07-14 | Mitsubishi Motors Corp | 増速型振り子式動吸振器 |
JP2008075688A (ja) * | 2006-09-19 | 2008-04-03 | Nissan Motor Co Ltd | 車両の動力伝達装置 |
JP2010001905A (ja) * | 2008-06-18 | 2010-01-07 | Toyota Motor Corp | 駆動系回転変動低減装置 |
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2015
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