JP2016151251A - 位置決め装置、これを備えている回転機械、及び位置決め方法 - Google Patents

位置決め装置、これを備えている回転機械、及び位置決め方法 Download PDF

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Abstract

【課題】外側部材に対して、外側部材の内周側に配置されている内側部材を位置決めする位置決め装置の部品点数を減らす。
【解決手段】外側部材11には、内周側から外周側に延びるピン挿通孔12が形成され、内側部材6には、外周側から内周側に向かって凹んだピン溝7が形成されている。位置決め装置20は、外側部材11のピン挿通孔12と内側部材6のピン溝7とに入り込むピン21と、ピン溝7の溝側面8に接する溝接触部材41と、を備える。ピン21と溝接触部材41とのうち、一方の部材には、他方の部材と対向する部分に他方の部材から遠ざかる向きに凹む位置規制凹部55が形成されている。他方の部材には、他方の部材の一部分36が塑性変形して位置規制凹部55に入り込んで位置規制凹部55に接する爪部が形成されている。
【選択図】図4

Description

本発明は、軸線を中心として周方向に延びる外側部材に対して、外側部材の内周側に配置され軸線を中心として周方向に延びる内側部材を位置決めする位置決め装置、これを備えている回転機械、及び位置決め方法に関する。
蒸気タービン、ガスタービンあるいは圧縮機等の回転機械は、ロータ軸と、このロータ軸を中心として周方向に延びるケーシング等の外側部材と、この外側部材の内周側に配置されロータ軸を中心として周方向に延びる内側部材とを備えている。このような回転機械では、外側部材に対する相対位置が定まっているロータ軸に対して、内側部材の相対位置を合わせるために位置決め装置が用いられることがある。
このような位置決め装置としては、例えば、特許文献1に開示されているものがある。この位置決め装置は、外側部材である車室のピン挿通孔と内側部材である翼環の溝とに入り込むラジアルピンと、ラジアルピンの先端部と溝の溝側面との間に配置されているライナと、ライナをラジアルピンの先端部に固定するボルトと、を備えている。ライナには、溝側面に接する溝接触面と、ラジアルピンの先端部に接触するピン接触面とが形成されている。さらに、このライナには、溝接触面からピン接触面に向かって貫通してボルトのネジ部が挿通されるネジ挿通孔と、ネジ挿通孔と連通しボルトのボルト頭部が収まるボルト頭収納凹部とが形成されている。
実開昭61−017104号公報
上記特許文献1に記載の技術の位置決め装置は、前述したように、ラジアルピンと、ネジ挿通孔やボルト頭部収納凹部等が形成されているライナと、このライナをラジアルピンに固定するボルトとを備えている。このような位置決め装置を含め、あらゆる装置に対して、装置を構成する部品点数を削減することが望まれている。
そこで、本発明は、部品点数を減らすことができる位置決め装置、これを備えている回転機械、及び位置決め方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための発明の一態様としての位置決め装置は、
軸線を中心として周方向に延びる外側部材に対して、前記外側部材の内周側に配置され軸線を中心として周方向に延びる内側部材を位置決めする位置決め装置において、前記外側部材の内周側から外周側へ延びるピン挿通孔と前記内側部材の外周側から内周側に向かって凹んだ溝とに入り込むピンと、前記ピンに取り付けられ、前記溝の溝側面に接する溝接触部材と、を備え、前記ピンと前記溝接触部材とのうち、一方の部材には、他方の部材と対向する部分に前記他方の部材から遠ざかる向きに凹む位置規制凹部が形成され、前記他方の部材には、前記他方の部材の一部分が塑性変形して前記位置規制凹部に入り込んで前記位置規制凹部に接する爪部が形成されている。
当該位置決め装置では、ピンと溝接触部材を対向させた後、他方の部材の一部分を塑性変形させて、この一部分を爪部として一方の部材の位置規制凹部に入れて、位置規制凹部に接触させる。この結果、ピンと溝接触部材と相対移動が規制される。このため、当該位置決め装置では、内側部材の溝の溝側面に接する部材をピンに固定するためのボルト等の部材が不要になり、部品点数を減少させることができる。
ここで、前記位置決め装置において、前記ピンは、前記外側部材の前記ピン挿通孔に挿通される挿通部と、前記内側部材の前記溝に入り込む溝挿入部と、を有し、前記挿通部は、ピン軸線を中心として、前記ピン軸線と平行なピン軸線方向に長い柱状を成し、前記溝挿入部は、前記挿通部の前記ピン軸線方向のうちの一方側である先端側に形成され、前記溝挿入部には、前記ピン軸線と平行な支持面が形成され、前記溝接触部材には、前記溝挿入部の前記支持面と対向する被支持面が形成されていもよい。
この場合、前記挿通部には、前記先端側に、前記支持面の側を向き且つ前記支持面から遠ざかるに連れて次第に前記先端側に向かうテーパ受け面が形成され、前記溝接触部材には、前記挿通部のテーパ受け面に面接触するテーパ接触面が形成されていてもよい。
当該位置決め装置では、ピンの挿通部の先端側に支持面から遠ざかるに連れて次第に先端側に向かうテーパ受け面が形成され、溝接触部材には、このテーパ受け面に面接触するテーパ接触面が形成されている。このため、当該位置決め装置では、ピン軸線方向における先端側とは反対の基端側へのピンに対する溝接触部材の相対移動を規制することができる。また、当該位置決め装置では、ピンの支持面から遠ざかる側への溝接触部材の相対移動も規制することができる。よって、当該位置決め装置では、位置規制凹部及びここに入り込む爪部によるピンに対する溝接触部材の相対移動規制と相俟って、よりピンに対する溝接触部材の相対移動を規制することができる。
ピンの支持面は、溝接触部材の被支持面を介して、内側部材からの力を受ける。このため、支持面の面積及び被支持面の面積は、内側部材から受ける力に耐えるために、大きい方が好ましい。当該位置決め装置では、ピンの支持面及び溝接触部材の被支持面中に、ボルトが挿入されるボルト孔を形成する必要がない。このため、当該位置決め装置では、ボルト孔が形成されている場合と比べて、ピンの支持面及び溝接触部材の被支持面の幅等を変えずに、これらの面の面積を大きくすることができる。
また、前記ピンが前記溝挿入部を有する前記位置決め装置において、前記溝挿入部には、前記溝挿入部の表面のうちで前記溝接触部材の表面と対向する対向面と、前記溝挿入部の前記表面のうちで前記対向面を除く露出面と、前記対向面と前記露出面との角と、が形成され、前記溝接触部材には、前記溝接触部材の表面のうちで前記ピンの表面と対向する対向面と、前記溝接触部材の前記表面のうちで前記対向面を除く露出面と、前記溝接触部材の前記対向面と前記溝接触部材の前記露出面との角と、が形成され、前記位置規制凹部は、前記一方の部材の前記角を含む領域に形成されていてもよい。
当該位置決め装置では、一方の部材の角に位置規制凹部を形成するので、容易に位置規制凹部を形成することができる。
前記溝挿入部及び前記溝接触部材のそれぞれが前記露出面を有する位置決め装置において、前記溝挿入部の前記露出面は、前記溝挿入部の前記先端側に形成され且つ前記先端側を向く先端面を有し、前記溝接触部材の前記露出面は、前記溝接触部材の前記先端側に形成され且つ前記先端側を向く先端面を有し、前記位置規制凹部は、前記一方の部材の前記先端面と前記対向面との角を含む領域に形成されていてもよい。
当該位置決め装置では、位置規制凹部とここに入り込む爪部とにより、溝接触部材の移動をその先端側で主として規制することができる。また、前述したように、ピンの挿通部の先端側に、言い換えるとピンの溝挿入部の基端側に形成されているテーパ受け面と、このテーパ受け面に面接触する溝接触部材のテーパ接触面とにより、溝接触部材の移動をその基端側で主として規制することができる。よって、当該位置決め装置では、溝接触部材の先端側と基端側との両方で、ピンに対する溝接触部材の相対移動を規制することができる。
前記溝挿入部及び前記溝接触部のそれぞれが前記角を有する、以上のいずれかの前記位置決め装置において、前記位置規制凹部を画定する凹面は、前記一方の部材の前記対向面と前記露出面との双方に対して傾斜する仮想軸を中心とする仮想円柱の外周面の一部を成してもよい。
当該位置決め装置では、一方の部材の対向面と露出面との双方に対して傾いている方向に、円柱形状の工具を直線的に移動させることで、位置規制凹部を形成することができる。よって、当該位置決め装置では、位置規制凹部を容易に形成することができる。さらに、当該位置決め装置では、ピンの爪部を位置規制凹部の広い範囲に渡って密着させ易く、しかも、ピンの爪部による溝接触部材の位置規制方向を各種方向にすることができる。
また、前記ピンが前記溝挿入部を有する、以上のいずれかの前記位置決め装置において、前記溝接触部材には、前記溝接触部材の前記先端側に形成され且つ前記先端側を向く先端面から前記先端側とは反対の基端側に延び、前記被支持面に対して凸状の第一被係合部が形成され、前記溝挿入部には、前記溝挿入部の前記先端側に形成され且つ前記先端側を向く先端面から前記基端側に延び、前記支持面に対して凹状の第一係合部が形成され、前記第一被係合部は、前記被支持面に対する突出量が所定突出量の基端側被係合部と、前記基端側被係合部より前記先端側に配置され前記被支持面に対する突出量が前記所定突出量より大きい先端側被係合部と、を有し、前記第一係合部は、前記支持面に対する凹み量が前記基端側被係合部が入り込める所定凹み量の基端側係合部と、前記基端側係合部より前記先端側に配置され前記支持面に対する凹み量が前記先端側被係合部が入り込める凹み量の先端側係合部と、を有し、前記位置規制凹部は、前記溝挿入部の前記先端面と前記先端側係合部とを含む領域と、前記溝接触部材の前記先端面と前記先端側被係合部とを含む領域とのうちの一方の領域に形成されていてもよい。
また、前記ピンが前記溝挿入部を有する、以上のいずれかの前記位置決め装置において、前記溝挿入部には、前記支持面に対して凸状又は凹状を成す係合部が形成され、前記溝接触部材には、前記被支持面に対して凹状又は凸状を成して前記係合部が係合する被係合部が形成されていてもよい。
当該位置決め装置では、溝挿入部の係合部が溝接触部材の被係合部に係合することで、ピンに対する溝接触部材の相対移動を規制することができる。また、当該位置決め装置では、ピン中の所定の位置に溝接触部材を容易かつ正確に取り付けることができる。さらに、内側部材の溝及び記外側部材のピン挿通孔からピンを引き抜く際、溝接触部材の溝内の残留可能性を少なくすることができる。
前記溝挿入部に係合部が形成され、前記溝接触部材に被係合部が形成されている前記位置決め装置において、前記溝挿入部の前記係合部は、前記ピン軸線方向に長い第一係合部と、前記支持面に対して平行で且つ前記ピン軸線に対して垂直な方向に長い第二係合部と、のうち少なくとも一方の係合部を有し、前記溝接触部材の前記被係合部は、前記ピン軸線方向に長く前記第一係合部が係合する第一被係合部と、前記被支持面に対して平行で且つ前記ピン軸線に対して垂直な方向に長く前記第二係合部が係合する第二被係合部と、のうち少なくとも一方の被係合部を有してもよい。
また、前記ピンが前記溝挿入部を有する、以上のいずれかの前記位置決め装置において、前記溝接触部材と前記溝内の前記ピンとの間に配置されているライナを備え、前記溝接触部材は、前記被支持面の前記基端側に前記被支持面に隣接して前記基端側を向く基端面が形成され、前記ライナは、前記被支持面と前記支持面とのうち少なくとも一方の面に接するライナ本体と、前記ライナ本体に対して折れ曲がり前記基端面に対向する移動規制部と、を有してもよい。
当該位置決め装置では、ライナの移動規制部が溝接触部材の基端面に対向するため、ライナの溝接触部材に対する先端側への相対移動を規制することができる。よって、当該位置決め装置では、ライナが先端側に抜け落ちることを規制することができる。
また、前記ピンが前記溝挿入部を有する、以上のいずれかの前記位置決め装置において、前記外側部材の外周側には、前記ピン挿通孔に連通し、前記ピン挿通孔よりも径が大きく外周側から内周側に向かって凹む凹部が形成されており、前記凹部内に配置され、前記外側部材の内周側に存在する流体が外周側へ流れ出るのを抑制するシール部材を備えてもよい。
当該位置決め装置では、内部に流体が流れる回転機械でも、外側部材のピン挿通孔から流体の外部への流出を抑えることができる。
また、前記ピンが前記溝挿入部を有する、以上のいずれかの前記位置決め装置において、前記外側部材の前記ピン挿通孔は、円柱状の孔であり、前記ピンの前記挿通部は、前記ピン挿通孔に挿通可能な円柱状を成し、前記溝挿入部は、円柱状の前記挿通部の外周面の一部が延長された周面である側周面と、前記挿通部の外周面を延長した仮想外周面よりも内側に位置して前記溝接触部材が取り付けられる面と、を有し、前記溝挿入部に前記溝接触部材が取り付けられた際、前記溝接触部材は、前記仮想外周面よりも前記内側に位置してもよい。
当該位置決め装置では、円柱形状のピン挿入孔に対して、溝挿通部に溝接触部材が固定されているピンを容易に挿入することができる。
また、以上のいずれかの前記位置決め装置において、前記溝接触部材と前記溝内の前記ピンとの間に配置されているライナを備えてもよい。
また、以上のいずれかの前記位置決め装置において、前記外側部材の外周側には、前記ピン挿通孔に連通し、外周側から内周側に向かって凹む凹部が形成されており、前記外側部材の前記凹部の開口を塞ぐ蓋部材を備えてもよい。
当該位置決め装置では、ピン挿通孔からのピンの脱落を防止することができる。
また、以上のいずれかの前記位置決め装置において、前記ピンと前記溝接触部材とのうち、前記一方の部材に複数の前記位置規制凹部が形成されていてもよい。
当該位置決め装置では、一方の部材に形成されている複数の位置規制凹部のそれぞれに、他方の部材の爪部を入れることで、ピンと溝接触部材と相対移動をより規制することができる。また、当該位置決め装置では、ピンに溝接触部材を取り付けた際、複数の位置規制凹部のうちのいずれかを予備の位置規制凹部として、爪部を入れずに残しておくことで、ピンから溝接触部材を外して、再度、ピンに溝接触部材を取り付ける際に、予備の位置規制凹部を利用することできる。
また、以上のいずれかの前記位置決め装置において、前記他方の部材には、前記爪部を基準にして前記一方の部材の前記位置規制凹部と反対側に変形補助凹部が形成されていてもよい。
当該位置決め装置では、他方の部材の一部分をポンチ等の工具で塑性変形させるにあたり、他方の部材の一部分に隣接した位置にポンチ等の工具を容易に当てることができ、他方の部材の一部分を容易に塑性変形させることができる。
上記目的を達成するための発明の一態様としての回転機械は、
以上のいずれかの位置決め装置と、前記外側部材と、前記内側部材と、前記内側部材の内周側に配置され、前記軸線を中心として回転するロータと、を備える。
ここで、前記回転機械において、前記ロータは、蒸気タービンロータであってもよい。すなわち、前記回転機械は、蒸気タービンであってもよい。
上記目的を達成するための発明の一態様としての位置決め方法は、
軸線を中心として周方向に延びる外側部材に対して、前記外側部材の内周側に配置され軸線を中心として周方向に延びる内側部材を位置決めする位置決め方法において、前記外側部材の内周側から外周側へ延びるピン挿通孔と前記内側部材の外周側から内周側に向かって凹んだ溝とに入り込むピンと、前記溝の溝側面に接する溝接触部材と、を有する位置決め装置を準備する準備工程と、前記ピンに前記溝接触部材を組み付けた調整済みピンを組み立てる調整済みピン組立工程と、前記外側部材の前記ピン挿通孔及び前記内側部材の前記溝に、前記調整済みピンを入れる位置決め装置取付工程と、を実行し、前記準備工程で準備する前記ピンと前記溝接触部材とのうち、一方の部材には、他方の部材と対向する部分に前記他方の部材から遠ざかる向きに凹む位置規制凹部が形成されており、前記調整済みピン組立工程は、前記ピンに前記溝接触部材を対向させ、前記他方の部材の一部分を爪部として塑性変形させて、前記位置規制凹部に入れて前記位置規制凹部に接触させる部材組み付け工程を含む。
当該位置決め方法では、部材組み付け工程において、他方の部材の一部分を塑性変形させて、この一部分を爪部として一方の部材の位置規制凹部に入れて、位置規制凹部に接触させる。この結果、ピンと溝接触部材と相対移動が規制される。このため、当該位置決め方法では、位置決め装置の部品として、内側部材の溝の溝側面に接する部材をピンに固定するためのボルト等の部材が不要になり、準備工程で準備する部品点数を減少させることができる。
ここで、前記位置決め方法において、前記調整済みピン組立工程は、前記一方の部材に前記位置規制凹部を形成する凹部形成工程を含み、前記部材組み付け工程では、前記ピンに前記溝接触部材を対向させ、前記他方の部材の一部を爪部として塑性変形させて、前記調整済みピン組立工程前に既に形成されている前記位置規制凹部と、前記凹部形成工程で形成された前記位置規制凹部とのうち、一方の位置規制凹部に入れてもよい。
上記目的を達成するための発明の他の態様としての位置決め方法は、
軸線を中心として周方向に延びる外側部材に対して、前記外側部材の内周側に配置され軸線を中心として周方向に延びる内側部材を位置決めする位置決め方法において、前記外側部材の内周側から外周側へ延びるピン挿通孔と前記内側部材の外周側から内周側に向かって凹んだ溝とに入り込むピンと、前記溝の溝側面に接する溝接触部材と、を有する位置決め装置を準備する準備工程と、前記ピンに前記溝接触部材を組み付けた調整済みピンを組み立てる調整済みピン組立工程と、前記外側部材の前記ピン挿通孔及び前記内側部材の前記溝に、前記調整済みピンを入れる位置決め装置取付工程と、を実行し、前記調整済みピン組立工程は、前記ピンと前記溝接触部材とのうち、一方の部材に、他方の部材と対向する部分に前記他方の部材から遠ざかる向きに凹む位置規制凹部を形成する凹部形成工程と、前記ピンに前記溝接触部材を対向させ、前記他方の部材の一部を爪部として塑性変形させて、前記位置規制凹部に入れて前記位置規制凹部に接触させる部材組み付け工程と、を含む。
当該位置決め方法でも、部材組み付け工程において、他方の部材の一部分を塑性変形させて、この一部分を爪部として一方の部材の位置規制凹部に入れて、位置規制凹部に接触させる。この結果、ピンと溝接触部材と相対移動が規制される。このため、当該位置決め方法では、位置決め装置の部品として、内側部材の溝の溝側面に接する部材をピンに固定するためのボルト等の部材が不要になり、準備工程で準備する部品点数を減少させることができる。
以上のいずれかの前記位置決め方法において、前記準備工程では、複数のライナを準備し、前記調整済みピン組立工程は、複数の前記ライナのうちからいずれかのライナを選定するライナ選定工程を含み、前記部材組み付け工程では、前記ピンと前記溝接触部材との間に前記ライナ選定工程で選定した前記ライナを配置し、前記ライナを介して前記ピンに前記溝接触部材を対向させ、前記溝接触部材の一部を爪部として塑性変形させて、前記位置規制凹部に入れてもよい。
また、以上のいずれかの前記位置決め方法において、前記調整済みピン組立工程は、前記溝接触部材の厚さを調整する厚さ調整工程を含み、前記部材組み付け工程は、前記厚さ調整工程後に実行してもよい。
本発明の一態様によれば、位置決め装置の部品点数を少なくすることができる。
本発明に係る一実施形態における回転機械の断面図である。 本発明に係る一実施形態における位置決め装置の全体側面図である。 図2におけるIII−III線断面図である。 本発明に係る一実施形態における位置決め装置の要部分解斜視図である。 本発明に係る一実施形態におけるピンの斜視図である。 本発明に係る一実施形態における溝接触部材の斜視図である。 本発明に係る一実施形態における溝接触部材の要部拡大斜視図である。 本発明に係る一実施形態における位置決め装置の要部側面図である。 図8におけるIX矢視図である。 図8におけるX矢視図である。 本発明に係る一実施形態における位置決め装置の組み立て過程での要部斜視図である。 本発明に係る一実施形態における位置決め装置の組み立て完了後の要部斜視図である。 本発明に係る一実施形態における位置決め装置の組み立て完了後の要部断面図である。 本発明に係る一実施形態における位置決め方法の手順を示すフローチャートである。 本発明に係る一実施形態における位置決め方法を示す説明図(その1)である。 本発明に係る一実施形態における位置決め方法を示す説明図(その2)である。 本発明に係る一実施形態における位置決め方法を示す説明図(その3)である。 本発明に係る一実施形態における仮位置決め装置の要部側面図である。 本発明に係る一実施形態における調整済み位置決め装置の要部側面図である。 本発明に係る一実施形態の変形例における位置決め装置の要部平面図である。 本発明に係る一実施形態の他の変形例における位置決め装置の要部斜視図である。 本発明に係る一実施形態のさらに他の変形例における位置決め装置の要部平面である。 本発明に係る一実施形態の第一変形例における位置決め方法の手順を示すフローチャートである。 本発明に係る一実施形態の第二変形例における位置決め方法の調整済みピン組立工程の詳細手順を示すフローチャートである。 本発明に係る一実施形態の第三変形例における位置決め方法の手順を示すフローチャートである。 本発明に係る一実施形態のさらに他の変形例における位置決め装置の要部断面図である。 本発明に係る一実施形態のさらに他の変形例における位置決め装置の全体側面である。
以下、本発明に係る位置決め装置及びこれを備えている回転機械の一実施形態、及び位置決め装置の変形例について、図面を参照して詳細に説明する。
「実施形態」
まず、本発明に係る位置決め装置及びこれを備えている回転機械の一実施形態について、図1〜図19を用いて説明する。
本実施形態の回転機械は、蒸気タービンである。この蒸気タービンは、図1に示すように、回転軸線Arを中心として回転するロータ(蒸気タービンロータ)1と、ロータ1の外周側に配置され、回転軸線Arを中心として環状を成す翼環5と、この翼環5の外周側に配置され、回転軸線Arを中心として環状を成す車室10と、車室10に対する翼環5の相対位置を定める位置決め装置20と、を備えている。なお、以下では、回転軸線Arが延びている方向を軸方向Daとし、回転軸線Arを基準とした径方向を単に径方向Drとし、回転軸線Arに対する周方向を単に周方向Dcとする。また、回転軸線Arに対して垂直で且つ水平な方向を左右方向Dhとし、回転軸線Arに対して垂直で且つ鉛直な方向を上下方向Dvとする。
ロータ1は、回転軸線Arを中心として軸方向Daに延びているロータ軸2と、周方向Dcに並んでロータ軸2に固定されている複数の動翼3とを有している。環状の翼環5には、翼環5の内周側であってロータ1の動翼3よりも上流側の位置に、周方向Dcに並ぶ複数の静翼9が設けられている。蒸気タービンでは、ロータ軸2の外周側と環状の翼環5の内周側との間の筒状の空間、言い換えると、動翼3及び静翼9が配置されている空間が蒸気流路となる。環状の翼環5は、回転軸線Arを基準に上側の上半翼環6xと、下側の下半翼環6yとを有している。上半翼環6x及び下半翼環6yは、回転軸線Arを基準にして半円弧状を成し、周方向Dcの端部でボルト等により互いに接続されている。また、環状の車室10も、回転軸線Arを基準に上側の上半車室11xと、下側の下半車室11yとを有している。上半車室11x及び下半車室11yも、回転軸線Arを基準にして半円弧状を成し、周方向Dcの端部でボルト等により互いに接続されている。
下半車室11yの周方向Dcの端部には、内周側から外周側に向かって凹む溝18が形成されている。また、下半翼環6yの周方向Dcの端部には、外周側に向かって突出する突起19が設けられ、この突起19が溝18に嵌合している。突起19と溝18との嵌合によって、下半翼環6yは、下半車室11yに対して、上下方向Dv及び軸方向Daに相対移動不能に拘束される。さらに、下半車室11yの内周面には、周方向Dcの全周に亘って内周側に向かって突出する突起(不図示)が形成されている。また、下半翼環6yの外周面には、周方向Dcの全周に亘って内周側に向かって凹む溝部(不図示)が形成されている。前記突起は、前記溝部に全周に亘って嵌合するようになっている。これにより、下半翼環6yは、下半車室11yに対して、軸方向Daに相対移動不能に拘束される。また、周方向の嵌合部は上半車室11xと上半翼環6xにおいても同様に形成されている。なお、位置決め装置20がセットされていない時点で、下半翼環6yは下半車室11yに対して左右方向Dhには移動可能になっている。また、位置決め装置20がセットされていない時点で、上半翼環6xも上半車室11xに対して左右方向Dhには移動可能になっている。
本実施形態では、上半翼環6x及び下半翼環6yのそれぞれが内側部材を成し、上半車室11x及び下半車室11yのそれぞれが外側部材を成す。なお、以下では、上半翼環6x及び下半翼環6yを単に半翼環6という場合があり、上半車室11x及び下半車室11yを単に半車室11という場合がある。
位置決め装置20としては、下半車室11yに対する下半翼環6yの相対位置を定める下側の位置決め装置20と、上半車室11xに対する上半翼環6xの相対位置を定める上側の位置決め装置20とがある。上側の位置決め装置20と下側の位置決め装置20とは、同一構造である。このため、以下では、下側の位置決め装置20について、主として説明する。
図2〜図4に示すように、半車室11には、内周側から外周側へ貫通した円柱状のピン挿通孔12と、外周側から内周側に向かって凹みピン挿通孔12と連通しているフランジ収納凹部13とが形成されている。フランジ収納凹部13の内径寸法は、ピン挿通孔12の内径寸法よりも大きい。このフランジ収納凹部13の内周面には、雌ネジ14が形成されている。ピン挿通孔12は、このフランジ収納凹部13の底面から半車室11の内周側に貫通している。
半翼環6には、半車室11のピン挿通孔12と径方向Drで対向する位置に、外周側から内周側に凹むピン溝7が形成されている。このピン溝7は、図2及び図4に示すように、半翼環6に形成されている溝底面8c、及び半翼環6に形成され左右方向Dhで互いに対向する一対の溝側面8で画定されている。
半車室11のピン挿通孔12及びフランジ収納凹部13、半翼環6のピン溝7は、図1に示すように、いずれも、回転軸線Arと交わり、鉛直方向に延びる鉛直線Lv上に形成されている。
位置決め装置20は、図2〜図4に示すように、半車室11のピン挿通孔12及び半翼環6のピン溝7に入り込むピン21と、ピン溝7の溝側面8に接する溝接触部材41と、溝接触部材41とピン溝7内のピン21との間に配置されるライナ61と、ピン21と半車室11との間をシールするシール材75と、ピン21の頭に接するピン押えネジ81(蓋部材)と、ピン押えネジ81の緩みを規制する緩み止め具85と、を備えている。溝接触部材41は、ピン溝7の一対の溝側面8のうち、第一溝側面8aに接する第一溝接触部材41aと、第二溝側面8bに接する第二溝接触部材41bとを有する。
ピン21は、図2、図4及び図5に示すように、半車室11のピン挿通孔12に挿通される円柱状の挿通部22と、挿通部22の両端のうちの一方の端に形成されている溝挿入部23と、挿通部22の他方の端部に形成されている頭部フランジ31と、有する。ここで、円柱状の挿通部22の中心軸線をピン軸線Apとし、このピン軸線Apが延びている方向をピン軸線方向Dpとする。また、ピン軸線方向Dpで挿通部22に対して溝挿入部23が形成されている側を先端側、ピン軸線方向Dpで挿通部22に対して頭部フランジ31が形成されている側を基端側とする。
溝挿入部23には、円柱状の挿通部22の外周面の一部が延長された側周面23cと、挿通部22の外周面を延長した仮想外周面よりも内側に位置する一対の支持面24と、溝挿入部23の先端側に形成され且つ先端側を向く先端面27と、が形成されている。仮想外周面は、ピン軸線方向Dpに、挿通部22の外周面を延長した仮想の面である。一対の支持面24は、いずれも、仮想外周面よりも内側に位置し、ピン軸線Apに対して垂直な方向で、互いに相反する方向を向いている。一対の支持面24の相互間隔寸法である溝挿入部厚さ寸法Wdの寸法は、円柱状の挿通部22の直径寸法よりも小さい。一対の支持面24には、それぞれ、他方の支持面24側に向かって凹む一対の第一係合凹部25(係合部、第一係合部)25及び第二係合凹部(係合部、第二係合部)26が形成されている。第一係合凹部25は、ピン軸線方向Dpに長く形成されている。第一係合凹部25は、ピン軸線方向Dpに垂直で且つ支持面24に沿った方向で、互いの間隔をあけて、支持面24に形成されている。この第一係合凹部25は、支持面24に対する凹み量が所定凹み量の基端側係合部25aと、基端側係合部25aより先端側に配置されている先端側係合部25bと、を有する。先端側係合部25bは、その凹み量が基端側係合部25aの所定凹み量から先端側に向かうに連れて次第に大きくなる。第二係合凹部26は、ピン軸線方向Dpに垂直で且つ支持面24に沿った方向に長く形成されている。この第二係合凹部26は、支持面24の基端側の位置に形成されている。支持面24は、一対の第一係合凹部25間の主支持面24aと、第一係合凹部25を基準にして主支持面24aと反対側の外面24bとを有する。
一対の支持面24のうちの一方の支持面24と先端面27との角を含む領域、さらに、一対の支持面24のうちの他方の支持面24と先端面27との角を含む領域には、変形補助凹部35が形成されている。変形補助凹部35は、一対の第一係合凹部25のうちの一方の第一係合凹部25寄りで支持面24と先端面27との角を含む領域に形成されている第一補助凹部35aと、一対の第一係合凹部25のうちの他方の第一係合凹部25寄りで支持面24と先端面27との角を含む領域に形成されている第二補助凹部35bと、を有する。
溝挿入部23の表面のうちで溝接触部材41の表面と対向する対向面は、主支持面24a、第一係合凹部25を画定する面、第二係合凹部26を画定する面を含む面である。一方、溝挿入部23の表面のうちで溝接触部材41の表面と対向しない露出面は、先端面27、側周面23c、外面24bである。
円柱状の挿通部22の直径寸法は、半車室11のピン挿通孔12の内径寸法と実質的に同じである。この挿通部22には、先端側に、支持面24から遠ざかるに連れて次第に先端側に向かうテーパ受け面29が形成されている。
頭部フランジ31は、ピン軸線Apを中心として円板状を成している。頭部フランジ31の直径寸法は、円柱状の挿通部22の直径寸法及び半車室11のピン挿通孔12の内径寸法よりも大きく、半車室11のフランジ収納凹部13の内径寸法よりも小さい。頭部フランジ31で、挿通部22が設けられている側の面には、ピン軸線Apを中心として環状のシール溝32が形成されている。前述のシール材75は環状を成し、このシール材75の一部がシール溝32に入り込む。
ピン押えネジ81(蓋部材)は、図2に示すように、半車室11のフランジ収納凹部13に形成されている雌ネジ14に螺合可能な雄ネジが形成されているネジ部82と、ネジ部82の端に形成されているネジ頭部83と、を有する。ネジ頭部83は、レンチ等の工具が係合可能に六角柱状を成している。
緩み止め具85は、半車室11のピン挿通孔12に隣接している緩み止めネジ穴15に螺合可能な緩み止めネジ86と、ピン押えネジ81のネジ頭部83と緩み止めネジ86のネジ頭部87とを連結するワイヤ88と、を有する。ワイヤ88は、ピン押えネジ81のネジ頭部83と、緩み止めネジ86のネジ頭部87とのそれぞれに直接連結されてもよいが、各ネジ61,66のネジ頭部83,87に嵌め込まれているピン21を介してネジ頭部83,87に連結されてもよい。
第一溝接触部材41a及び第二溝接触部材41bは、互いに同一形状である。そこで、以下では、第一溝接触部材41aについてのみ説明する。第一溝接触部材41aには、図4及び図6〜図10に示すように、ピン溝7の第一溝側面8aに接する溝接触面42と、溝接触面42が向く方向に対して反対側を向く被支持面43と、第一溝接触部材41aの先端側に形成され且つ先端側を向く先端面47と、互いに相反する側を向く一対の側面48と、第一溝接触部材41aの基端側に形成され且つ基端側を向く基端面51と、ピン21のテーパ受け面29に面接触するテーパ接触面52と、溝接触面42に連なる第一テーパ面44aと、溝接触面42に連なる一対の第二テーパ面44bと、が形成されている。
一対の側面48は、図6、図9及び図10に示すように、第一溝接触部材41a中、第一溝接触部材41aをピン21の溝挿入部23に固定した状態で、ピン軸線方向Dpに垂直で且つ溝接触面42に沿った方向である溝接触部材幅方向Dawで互いに相反する側に設けられている。先端面47は、第一テーパ面44a、第二テーパ面44b、一対の側面48、及び被支持面43に隣接している面である。基端面51は、図6及び図8に示すように、被支持面43の基端側縁に連なり、この被支持面43から溝接触面42側へ遠ざかるに連れて基端側に向かうテーパ面である。テーパ接触面52は、溝接触面42の基端側縁に連なり、溝接触面42から被支持面43側へ遠ざかるに連れて次第に基端側に向かうテーパ面である。言い換えると、このテーパ接触面52は、被支持面43から溝接触面42側へ遠ざかるに連れて先端側に向かうテーパ面である。第一テーパ面44aは、溝接触面42から先端側に向かうに連れて次第に被支持面43に近づくよう、溝接触面42に対して傾斜している。一対の第二テーパ面44bは、図6、図9及び図10に示すように、それぞれ、第一溝接触部材41a中、溝接触部材幅方向Dawで互いに相反する側に設けられている。一対の第二テーパ面44bは、溝接触面42から被支持面43に近づくに連れて次第に相手側の第二テーパ面44bから遠ざかるよう、溝接触面42に対して傾斜している。
被支持面43には、図4、図6、図8〜図10に示すように、ピン21の第一係合凹部25に嵌り込む第一被係合凸部(被係合部、第一被係合部)45と、ピン21の第二係合凹部26に嵌り込む第二被係合凸部(被係合部、第二被係合部)46とが形成されている。第一被係合凸部45は、ピン21の一対の第一係合凹部25と同様に、互いの間隔をあけて一対形成されている。この第一被係合凸部45は、被支持面43に対する突出量が所定突出量の基端側被係合部45aと、基端側被係合部45aより先端側に配置されている先端側被係合部45bと、を有する。先端側被係合部45bは、その突出量が基端側被係合部45aの所定突出量から先端側に向かうに連れて次第に大きくなる。第一被係合凸部45の基端側被係合部45aは、ピン21における第一係合凹部25の基端側係合部25aに入り込む。また、第一被係合凸部45の先端側被係合部45bは、ピン21における第一係合凹部25の先端側係合部25bに入り込む。第一被係合凸部45には、溝接触部材幅方向Dawで互いに相反する側を向く一対の凸側面が形成されている。第一溝接触部材41aの側面48の一部は、一対の凸側面のうちの一方の凸側面を成す。一対の凸側面のうちの他方の凸側面は、凸内側面48aを成す。第二被係合凸部46のピン軸線方向Dpの幅は、ピン21の第二係合凹部26のピン軸線方向Dpの幅より僅かに狭い。このため、溝接触部材41の第二被係合凸部46がピン21の第二係合凹部26に嵌り込んでも、溝接触部材41は、ピン21に対してピン軸線方向Dpに僅かに相対移動可能である。
第二溝接触部材41bは、前述したように、第一溝接触部材41aと同一形状である。但し、第二溝接触部材41bの溝接触面42は、ピン溝7の第二溝側面8bに接する。
一対の第一被係合凸部45のうちの一方の第一被係合凸部45の凸内側面48aと先端面47との角を含む領域には、第一位置規制凹部55aが形成されている。さらに、他方の第一被係合凸部45の凸内側面48aと先端面47との角を含む領域には、第二位置規制凹部55bが形成されている。なお、以下では、第一位置規制凹部55a及び第二位置規制凹部55bを総称して、位置規制凹部55と言う。位置規制凹部55は、円柱形状の工具を先端面47と凸内側面48aとの双方に対して傾斜する方向に移動させて形成される。このため、位置規制凹部55を画定する凹面は、図7に示すように、被支持面43に対して平行で、先端面47と凸内側面48aとの双方に対して傾斜する仮想軸を中心とする仮想円柱Cvの外周面の一部を成す。なお、ピン21の第一補助凹部35a及び第二補助凹部35bも、円柱形状の工具をピン21の先端面27と支持面24との双方に対して傾斜する方向に移動させて形成させる。このため、第一補助凹部35a及び第二補助凹部35bを画定する凹面も、ピン21の先端面27と支持面24との双方に対して傾斜する仮想軸を中心とする仮想円柱の外周面の一部を成す。
このように、本実施形態では、位置規制凹部55及び変形補助凹部35を円柱形状の工具を直線的に移動させて形成するので、位置規制凹部55及び変形補助凹部35を容易に形成することができる。
本実施形態では、前述したように、第一被係合凸部45の凸内側面48aと先端面47との角を含む領域に、位置規制凹部55を形成している。そこで、本実施形態では、この位置規制凹部55を形成する領域を確保すると共に、後述するように、ピン21の一部を塑性変形させて、爪部37として位置規制凹部55に入れた際に、位置規制凹部55周りの強度を確保するために、第一被係合凸部45の先端側被係合部45bの突出量を基端側被係合部45aの突出量よりも大きくしている。
溝接触部材41の表面のうちでピン21の表面と対向する対向面は、被支持面43、第一被係合凸部45を形成する面、第二被係合凸部46を画定する面、基端面51、テーパ接触面52を含む面である。一方、溝接触部材41の表面のうちでピン21の表面と対向しない露出面は、先端面47、一対の側面48、第一テーパ面44a、第二テーパ面44bとを含む面である。但し、一対の側面48のうち、第一被係合凸部45の凸側面を形成する部分は、対向面であり、露出面ではない。
ライナ61は、図4、図9及び図13に示すように、矩形の板状又はシート状を成している。このライナ61は、ピン21の支持面24及び/又は溝接触部材41の被支持面43に接するライナ本体62と、ライナ本体62の基端側縁につながる移動規制部65と、を有する。ライナ本体62には、溝接触部材41の第二被係合凸部46が挿通される凸挿通部63が形成されている。移動規制部65は、ライナ本体62に対して折れ曲がっている。この移動規制部65は、溝接触部材41の基端面51に対向する。
ライナ61のピン軸線方向Dpで互いに対向する一対の辺の長さ寸法L1(図9参照)は、ピン21の一対の第一係合凹部25の相互間隔寸法、及び溝接触部材41の一対の第一被係合凸部45の相互間隔寸法よりも僅かに小さい。よって、このライナ61をピン21の溝挿入部23と溝接触部材41との間に配置した際、溝挿入部23の係合部25,26及び溝接触部材41の被係合部45,46を避けた位置に、このライナ61を配置することができる。このため、本実施形態では、ライナ61がピン21に対して固着しにくく、位置決め装置20の取外しの際、ピン21からライナ61を容易に取り外すことができる。
図18及び図19に示すように、ピン溝7の第一溝側面8aと第二溝側面8bとの間隔寸法である溝幅寸法Wcは、第一溝接触部材41aの溝接触面42と被支持面43との間隔寸法である溝接触部材厚さ寸法Wpと、第二溝接触部材41bの溝接触面42と被支持面43との間隔寸法である溝接触部材厚さ寸法Wpと、溝挿入部23の溝挿入部厚さ寸法Wdとを合計した寸法よりも大きい。ライナ61には、その厚さ寸法が互いに異なる複数種のライナ61がある。例えば、厚さが0.05mm、0.1mm、0.2mm、0.3mmのライナ61が、それぞれ、複数枚ある。
次に、以上で説明した位置決め装置20を用いた半翼環6の位置決め方法について、図14に示すフローチャートを用いて説明する。なお、この位置決めは、新規に蒸気タービンを設置する場合や蒸気タービンの構成部品である翼環5の換装工事の場合等に行われる。また、以下では、位置決め装置20を用いて、下半車室11yに対する下半翼環6yの位置決め方法について説明する。
まず、以上で説明した位置決め装置20を準備する(S0:準備工程)。すなわち、位置決め装置20を構成するピン21、ライナ61、溝接触部材41、シール材75、ピン押えネジ81、緩み止め具85を準備する。この際、互いに厚さの異なる複数のライナ61を準備する。
実質的な位置決め作業の開始前、下半翼環6yは下半車室11yから外されている。また、ロータ1は、下半車室11yに設けられている軸受部(図示されていない)に支持されていない。
実質的な位置決め作業の開始にあたって、まず、下半翼環6yをクレーン等で吊るして、この下半翼環6yを下半車室11y内に収める。この過程で、図15に示すように、仮ピン21aを有する仮位置決め装置20aを用いて、左右方向Dhにおける下半翼環6yの下半車室11yに対する仮位置決めを行う(S1:仮位置決め工程)。
仮位置決め装置20aの仮ピン21aは、図18に示すように、本実施形態の位置決め装置20におけるピン21と、一対の溝接触部材41と、一対の規定厚さの規定ライナ61aと、を有する。この場合、一対の規定ライナ61aの規定厚さは、この一対の規定ライナ61aの厚さ寸法Woと、一対の溝接触部材41の溝接触部材厚さ寸法Wpと、ピン21の溝挿入部23の溝挿入部厚さ寸法Wdとを合計した寸法が、ピン溝7の溝幅寸法Wcと実質的に一致する寸法である。なお、仮ピン21aは、半車室11のピン挿通孔12に挿通される円柱状の挿通部22と、挿通部22の端に形成されている溝挿入部とを有し、この溝挿入部の厚さ寸法が、ピン溝7の溝幅寸法Wcと実質的に一致しているものであってもよい。すなわち、ここで用いる仮ピン21aは、ピン溝7に入る部分の厚さ寸法がピン溝7の溝幅寸法Wcと実質的に同じであれば、如何なるものであってもよい。なお、この仮位置決め装置20aも、準備工程(S0)で準備しておくことが好ましい。
次に、図16に示すように、クレーン等を用いて、ロータ1を下半車室11yに配置する(S2:ロータ配置工程)。この過程で、ロータ1は、下半車室11yに設けられている軸受部(図示されていない)に支持され、下半車室11yに対するロータ1の左右方向Dhの相対位置が定まる。
次に、ロータ1又は下半車室11yに対する下半翼環6yの左右方向Dhのズレ量を計測する(S3:ズレ計測工程)。なお、既に、下半車室11yに対するロータ1の左右方向Dhの相対位置が定まっている関係上、ロータ1に対する下半翼環6yの左右方向Dhのズレ量と、下半車室11yに対する下半翼環6yの左右方向Dhのズレ量とは同じである。
次に、ズレ計測工程(S3)で計測したズレ量に応じた厚さのライナ61を選定し、このライナ61をピン21に取り付ける(S4:調整済みピン組立工程)。この調整済みピン組立工程(S4)では、まず、複数のライナ61のうちからいずれかのライナ61を選定する(S41:ライナ選定工程)。ライナ選定工程(S41)では、例えば、図18に示すように、仮ピン21aで仮位置決めされた下半翼環6yが下半車室11yに対する、左右方向Dhでのズレ量がaであるとする。この際、仮ピン21aの構成要素である一対の規定ライナ61aの厚さ寸法は、いずれもWoであるとする。このズレ量aを修正するためには、図19に示すように、一対のライナ61のうち、一方のライナ61の厚さ寸法W1が(Wo−a)であり、他方のライナ61の厚さ寸法W2が(Wo+a)であればよい。そこで、準備工程(S0)で準備しておいた複数のライナ61のうちから、厚さ寸法W1が(Wo−a)のライナ61と、厚さ寸法W2が(Wo+a)のライナ61とを選定する。なお、厚さ寸法W1が(Wo−a)のライナ61、厚さ寸法W2が(Wo+a)のライナ61は、いずれも、一枚のライナ61である必要はなく、複数枚のライナ61で構成させるものであってもよい。
調整済みピン組立工程(S4)では、ライナ選定工程(S41)後、選定したライナを溝接触部材41に取り付けた後、溝接触部材41をピン21に取り付ける(S42:部材組み付け工程)。この部材組み付け工程(S42)では、まず、図4及び図13に示すように、選定したライナ61のライナ本体62を溝接触部材41の被支持面43に対向させると共に、このライナ61の移動規制部65を溝接触部材41の基端面51に対向させる。続いて、このライナ61の凸挿通部63に、溝接触部材41の第二被係合凸部46を挿通させる。次に、溝接触部材41の第一被係合凸部45をピン21の第一係合凹部25に入れると共に、溝接触部材41の第二被係合凸部46をピン21の第二係合凹部26に入れる。続いて、溝接触部材41をピン21に対して基端側に僅かに相対移動させて、溝接触部材41のテーパ接触面52をピン21のテーパ受け面29に面接触させる。次に、図11及び図12に示すように、ポンチ等の工具Tの先端をピン21の変形補助凹部35に入れ、この工具Tをハンマー等で叩いて、ピン21の一部分で変形補助凹部35と近接する溝接触部材41の位置規制凹部55との間の部分36を、この位置規制凹部55側に塑性変形させる。ピン21のこの部分36は、塑性変形により、爪部37として位置規制凹部55に入り込んで、位置規制凹部55を画定する凹面の広い範囲に渡って密着する。すなわち、溝接触部材41の位置規制凹部55は、ピン21の一部36によりコーキングさせる。
以上で調整済みピン組立工程(S4)が終了し、選定されたライナ及び溝接触部材41がピン21に取り付けられる。このように、選定されたライナ61及び溝接触部材41が取り付けられたピン21が調整済みピン21bを成す。
調整済みピン組立工程(S4)が終了した段階では、溝接触部材41のテーパ接触面52がピン21のテーパ受け面29に面接触している。このため、溝接触部材41はピン21に対して基端側への相対移動が規制される。また、ピン21の爪部37が溝接触部材41の位置規制凹部55に入り込んでいるため、溝接触部材41はピン21に対して先端側への相対移動が規制される。この段階では、溝接触部材41の基端部側のテーパ接触面52がピン21のテーパ受け面29に面接触していると共に、溝接触部材41の先端部側の位置規制凹部55にピン21の爪部37が入り込んでいる。このため、溝接触部材41は、ピン21に対して、ピン21の支持面24から離間する側への相対移動が規制される。さらに、この段階では、溝接触部材41の第一被係合凸部45がピン21の第一係合凹部25に入り込んでいるため、溝接触部材41は、ピン21に対して溝接触部材幅方向Dawへの相対移動が規制される。よって、この段階では、溝接触部材41は、ピン21に対して全ての方向への相対移動が規制されている。言い換えると、この段階では、溝接触部材41がピン21に固定されている。
以上のように、溝接触部材41のテーパ接触面52がピン21のテーパ受け面29に面接触していることにより、溝接触部材41はピン21に対して基端側への相対移動及びピン21の支持面24から離間する側への相対移動が規制される。しかも、溝接触部材41のテーパ接触面52及びピン21のテーパ受け面29がいずれもテーパ面であるため、溝接触部材41のピン21に対する相対移動を規制しつつも、ライナ61の厚さ変更にも対応することができる。
また、調整済みピン組立工程(S4)が終了した段階では、ライナ本体62は、溝接触部材41の被支持面43とピン21の支持面24との間に挟まれている。このため、ライナ61は、溝接触部材41の被支持面43から離間する側への相対移動、及び、ピン21の支持面24から離間する側への相対移動が規制される。この段階では、ライナ61の移動規制部65が溝接触部材41の基端面51に接触している。このため、ライナ61は、溝接触部材41及びピン21に対して先端側への相対移動が規制される。さらに、この段階では、ライナ61は、溝接触部材41の一対の第一被係合凸部45の間に配置されている。このため、ライナ61は、溝接触部材41及びピン21に対して、溝接触部材幅方向Dawへの相対移動が規制される。よって、この段階では、ライナ61は、溝接触部材41及びピン21に対して全ての方向への相対移動が規制されている。言い換えると、この段階では、ライナが溝接触部材41及びピン21に固定されている。
ピン21の溝挿入部23に、ライナ61及び溝接触部材41が固定された状態では、この溝接触部材41は、円柱状の挿通部22の外周面を延長した前述の仮想外周面よりも内側に位置する。
次に、仮位置決めされている下半翼環6yを左右方向Dhに移動可能にクレーン等で仮保持する(S5:仮保持工程)。
次に、図17に示すように、下半翼環6yを仮位置決めしている仮位置決め装置20aをこの下半翼環6y及び下半車室11yから取外す(S6:仮位置決め解除工程)。なお、前述の仮保持工程(S5)は、この仮位置決め解除工程(S6)の実行後に行ってもよい。
続いて、図17に示すように、仮位置決め装置20aの替りに調整済み位置決め装置20bを下半翼環6y及び下半車室11yに取り付ける(S7:位置決め装置取付工程)。この調整済み位置決め装置20bは、前述の調整済みピン21bを含む位置決め装置20である。この調整済み位置決め装置20bの取付では、まず、調整済みピン21bを、下半車室11yのピン挿通孔12、下半翼環6yのピン溝7に入れる。この際、ピン21のシール溝32にシール材75を予め入れておく。
前述したように、ピン21の溝挿入部23には、円柱状の挿通部22の外周面の一部が延長された側周面23cが形成されている。また、ピン21の溝挿入部23にライナ61及び溝接触部材41が固定された状態では、この溝接触部材41が円柱状の挿通部22の外周面を延長した前述の仮想外周面よりも内側に位置している。さらに、溝接触部材41には、その先端側に第一テーパ面44aが形成されている。このため、調整済みピン21bを、下半車室11yのピン挿通孔12及び下半翼環6yのピン溝7に容易に入れることができる。
次に、図2及び図3に示すように、下半車室11yのピン挿通孔12と連通しているフランジ収納凹部13にピン押えネジ81を捻じ込む。このピン押えネジ81が捻じ込まれると、ピン押えネジ81の先端と調整済みピン21bの頭部フランジ31とが接する。すなわち、下半車室11yのフランジ収納凹部13の開口がピン押えネジ81(蓋部材)により塞がれ、調整済みピン21bは、ピン押えネジ81によりピン挿通孔12から抜け止めされる。次に、ピン押えネジ81に緩み止め具85を取り付ける。この緩み止め具85の取付では、半車室11の緩み止めネジ穴15に緩み止めネジ86を捻じ込む。この緩み止めネジ86のネジ頭部87とピン押えネジ81のネジ頭部83とをワイヤ88で連結し、ピン押えネジ81の緩み方向の回転を規制する。
そして、下半車室11yのクレーン等による仮保持を解除する(S8:仮保持解除工程)。
以上で、下半車室11yに対する下半翼環6yの左右方向Dhの位置決めが完了する。
なお、以上では、ズレ計測工程(S3)後であって下半翼環6yの仮保持工程(S5)の前に、調整済みピン組立工程(S6)を実行している。しかしながら、ズレ計測工程(S3)後であって位置決め装置取付工程(S7)の前であれば、この調整済みピン組立工程(S6)をいつ実行してもよい。また、以上では、調整済みピン21b及びピン押えネジ81の取付後に、直ちに、緩み止め具85の取付を実行するように記載している。しかしながら、この緩み止め具85の取付は、蒸気タービンの基本的な組立が完了した後に行ってもよい。
以上は、下半車室11yに対する下半翼環6yの位置決め方法の説明であるが、上半車室11xに対する上半翼環6xの位置決めも、以上の位置決め方法の手順と基本的に同じである。但し、この場合、前述のロータ配置工程(S2)は実行されない。具体的には、まず、上半車室11xの内面が上方を向くように仮固定し、この上半車室11xに対して、仮位置決め装置20aを用いて上半翼環6xを仮位置決めする(S1:仮位置決め工程)。次に、上半車室11xに対する上半翼環6xの左右方向Dhのズレ量を計測する(S3:ズレ計測工程)。以下、下半車室11yに対する下半翼環6yの位置決め方法と同様に、調整済みピン組立工程(S4)等を実行する。その後、仮位置決め装置20aを取り外すと共に、上半車室11xから上半翼環6xを取り外す。そして、上半翼環6x、上半車室11x、調整済み位置決め装置20bを下半翼環6y及び下半車室11yに対して組み付ける。
以上のように、本実施形態では、ピン21の一部分36を塑性変形させて、爪部37として溝接触部材41の位置規制凹部55に入れて、この位置規制凹部55に接触させることで、ピン21に対する溝接触部材41の相対移動を規制している。このため、本実施形態の位置決め装置20では、ピン溝7の溝側面8に接する部材をピン21に固定するためのボルト等が不要になり、部品点数を減らすことができる。
ピン21の支持面24は、溝接触部材41の被支持面43を介して、半翼環6から左右方向Dhの力を受ける。このため、支持面24の面積及び被支持面43の面積は、半翼環6から受ける力に耐えるために、大きい方が好ましい。本実施形態では、ピン21の支持面24及び溝接触部材41の被支持面43中に、ボルトが挿入されるボルト孔を形成する必要がない。このため、本実施形態の位置決め装置20では、ボルト孔が形成されている場合と比べて、ピン21の支持面24及び溝接触部材41の被支持面43の幅等を変えずに、これらの面24,43の面積を大きくすることができる。
本実施形態では、ライナ61を溝接触部材41とピン21の溝挿入部23との間で挟み込むため、ライナ61と蒸気との接触が抑えられ、ライナ61の腐食を抑制することができる。
本実施形態では、ピン21の溝挿入部23に第一係合凹部25及び第二係合凹部26が形成され、溝接触部材41に第一被係合凸部45及び第二被係合凸部46が形成されている。このため、ピン21中の所定の位置に溝接触部材41を容易かつ正確に取り付けることができる。しかも、本実施形態では、一対の第一係合凹部25が、ピン軸線方向Dpに長く且つ互いに間隔をあけてピン21の溝挿入部23に形成され、これに入り込む一対の第一被係合凸部45が、ピン軸線方向Dpに長く互いに間隔をあけて、溝接触部材41に形成されている。ライナ61は、一対の第一係合凹部25及び一対の第一被係合凸部45の間に配置される。このため、本実施形態では、ライナ61の幅方向の両側からの蒸気の接触を抑えることができる。
ピン溝7の壁面と溝接触部材41とが固着してしまった状態で、ピン21をピン溝7から引き抜こうとすると、ピン21の爪部37等が破損して、溝接触部材41がピン溝7内に残ってしまう可能性がある。本実施形態では、第二係合凹部26及び第二被係合凸部46がいずれもピン軸線方向Dpに対して垂直な方向に長く形成されているため、ピン21をピン軸線方向Dpに移動させた際、ピン21と共に溝接触部材41がピン軸線方向Dpに移動する。よって、本実施形態では、ピン21をピン溝7及びピン挿通孔12から外す際、溝接触部材41のピン溝7内の残留可能性を少なくすることができる。
本実施形態では、ピン21の頭部フランジ31と半車室11のフランジ収納凹部13の底面との間にシール材75が配置されるので、車室10内の蒸気が車室10のピン挿通孔12を介して外部に流出するのを抑えることができる。
本実施形態では、ピン21中で塑性変形させる一部分36に隣接して、変形補助凹部35が形成されている。このため、本実施形態では、ピン21の一部分36をポンチ等の工具Tで塑性変形させるにあたり、ピン21の一部分36に隣接した位置にポンチ等の工具Tを容易に当てることができ、ピン21の一部分36を容易に塑性変形させることができる。このように、変形補助凹部35は、ピン21の一部分36をポンチ等の工具Tで容易に塑性変形させるためのものであるため、この変形補助凹部35は、必須のものではない。
本実施形態では、変形補助凹部35を画定する凹面が仮想円柱Cvの外周面の一部を成すため、円柱状又は円錐形状のポンチ等の工具Tをこの凹面に容易に沿わすことができる。また、本実施形態では、位置規制凹部55を画定する凹面も仮想円柱の外周面の一部を成すため、ピン21の爪部37をこの凹面の広い範囲に渡って密着させ易く、しかも、ピン21の爪部37による溝接触部材41の位置規制方向を各種方向にすることができる。
本実施形態では、ピン挿通孔12に連通しているフランジ収納凹部13にピン押えネジ81を捻じ込むので、ピン挿通孔12からのピン21の脱落を防止することができる。さらに、本実施形態では、ピン挿通孔12に挿通されているピン21を取り外す際、ピン押えネジ81を緩めて、このピン押えネジ81を外すことで、ピン21を簡単に取り外すことができる。しかも、本実施形態では、このピン押えネジ81の緩みを緩み止め具85により規制できるため、ピン押えネジ81の脱落に伴うピン21の脱落を抑えることができる。なお、ピン21の頭やピン押えネジ81のネジ部82を半車室11にポンチ等を用いてコーキングしてもよい。
「爪部及び位置規制凹部の変形例」
次に、以上で説明した位置決め装置における爪部及び位置規制凹部の各種変形例について説明する。
上記実施形態における位置規制凹部55は、溝接触部材41における第一被係合凸部45の凸内側面48aと先端面47との角を含む領域に形成されている。また、上記実施形態における爪部37は、ピン21中でこの位置規制凹部55に対向する一部分36を変形させたものである。しかしながら、位置規制凹部及び爪部は、他の領域に形成してもよい。
具体的には、図20に示すように、溝接触部材41の側面48と先端面47との角を含む領域に位置規制凹部55cを形成してもよい。この場合、ピン21中でこの位置規制凹部55cに対向する一部分36cを塑性変形させて、この一部分36cを爪部とする。また、この一部分36cを基準として、位置規制凹部55cとは反対側に変形補助凹部35cを形成してもよい。
また、溝接触部材41における第一被係合凸部45の突出面48cと先端面47との角を含む領域に位置規制凹部55dを形成してもよい。なお、第一被係合凸部45の突出面48cとは、ピン21の第一係合凹部25の凹底面25dに対向する面である。この場合、ピン21中でこの位置規制凹部55dに対向する一部分36dを塑性変形させて、この一部分36dを爪部とする。また、この一部分36dを基準として、位置規制凹部55dとは反対側に変形補助凹部35dを形成してもよい。
また、溝接触部材41における第一被係合凸部45の突出面48cとこの第一被係合凸部45の凸内側面48aと先端面47との角を含む領域に位置規制凹部55eを形成してもよい。さらに、溝接触部材41における第一被係合凸部45の突出面48cとこの溝接触部材41の側面48と先端面47との角を含む領域に位置規制凹部55fを形成してもよい。これらの場合も、ピン21中で位置規制凹部55e,55fに対向する一部分36e,36fを塑性変形させて、この一部分36e,36fを爪部とする。また、この一部分36e,36fを基準として、位置規制凹部55e,55fとは反対側に変形補助凹部35e,35fを形成してもよい。
また、溝接触部材41の被支持面43と先端面47との角を含む領域に位置規制凹部55gを形成してもよい。この場合、ピン21中でこの位置規制凹部55gに対向する一部分36gを塑性変形させて、この一部分36gを爪部とする。また、この一部分36gを基準として、位置規制凹部55gとは反対側に変形補助凹部35gを形成してもよい。
ここで、上記実施形態及び上記変形例の位置規制凹部55,55c〜55gは、いずれも、溝接触部材41の表面のうちで、ピン21と対向する対向面と、この対向面を除く露出面との角を含む領域に形成されている。しかしながら、位置規制凹部は、溝接触部材41の対向面と露出面との角を含む領域に形成されなくてもよい。
具体的には、図21に示すように、溝接触部材41の側面48中で、ピン21の外面24bと対向する領域に位置規制凹部55hを形成してもよい。この場合、ピン21の外面24bの一部分であって、ピン21中でこの位置規制凹部55hに対向する一部分36hを塑性変形させて、この一部分36hを爪部とする。また、この一部分36hを基準として、位置規制凹部55hとは反対側に変形補助凹部35hを形成してもよい。
また、溝接触部材41の側面48中で、ピン21における第一係合凹部25を画定する凹側面25cと対向する領域に位置規制凹部55iを形成してもよい。この場合、ピン21の溝挿入部23における側周面23cの一部分であって、ピン21中でこの位置規制凹部55iに対向する一部分36iを塑性変形させて、この一部分36iを爪部とする。この場合、ピン21の第一係合凹部25に溝接触部材41の第一被係合凸部45を入れると、ピン21の位置規制凹部55iを目視できなくなる。このため、ピン21中でこの位置規制凹部55iに対向する一部分36iには、なんらかのマークを付しておくことが好ましい。
上記実施形態及び上記各変形例における位置規制凹部55,55c〜55i及び爪部の組は、いずれも、複数あってもよい。また、複数の組を設ける場合、上記実施形態及び上記各変形例のうちから、一の変形例等で示す組と他の変形例で示す組とを組み合わせてもよい。
上記実施形態及び上記各変形例における位置規制凹部55,55c〜55iは、いずれも溝接触部材41側に形成されている。また、上記実施形態及び上記各変形例における爪部は、ピン21の一部分を塑性変形させたものある。しかしながら、位置規制凹部をピン21側に形成し、溝接触部材41の一部分を塑性変形させて、これを爪部としてもよい。
具体的には、図22に示すように、ピン21における第一係合凹部25を画定する一対の凹側面25cのうち、一方の凹側面25cとピン21の先端面27との角を含む領域に位置規制凹部55jを形成してもよい。なお、ここでの一方の凹側面25cは、第一係合凹部25を画定する一対の凹側面25cのうち、溝挿入部23における側周面23c側の凹側面である。この場合、溝接触部材41の側面48と溝接触部材41の先端面47との角を含む領域であって、溝接触部材41中でこの位置規制凹部55jに対向する一部分36jを塑性変形させて、この一部分36jを爪部とする。また、この一部分36jを基準として、位置規制凹部55jとは反対側に変形補助凹部35jを形成してもよい。
また、ピン21における第一係合凹部25を画定する一対の凹側面25cのうちの他方の凹側面25cとピン21の先端面27との角を含む領域に位置規制凹部55kを形成してもよい。この場合、溝接触部材41における第一被係合凸部45の凸内側面48aと溝接触部材41の先端面47との角を含む領域であって、溝接触部材41中でこの位置規制凹部55kに対向する一部分36kを塑性変形させて、この一部分36kを爪部とする。また、この一部分36kを基準として、位置規制凹部55kとは反対側に変形補助凹部35kを形成してもよい。
また、ピン21における第一係合凹部25を画定する凹底面25dと他方の凹側面25cとピン21の先端面27との角を含む領域に位置規制凹部55mを形成してもよい。さらに、ピン21における第一係合凹部25を画定する凹底面25dと一方の凹側面25cとピン21の先端面27との角を含む領域に位置規制凹部55nを形成してもよい。これらの場合、溝接触部材41中でこの位置規制凹部55m,55nに対向する一部分36m,36nを塑性変形させて、この一部分36m,36nを爪部とする。また、この一部分36m,36nを基準として、位置規制凹部55m,55nとは反対側に変形補助凹部35m,35nを形成してもよい。
また、ピン21の支持面24と先端面27との角を含む領域に位置規制凹部55pを形成してもよい。この場合、溝接触部材41の先端面47の部分であって、この位置規制凹部55pに対向する一部分36pを塑性変形させて、この一部分36pを爪部とする。また、この一部分36pを基準として、位置規制凹部55pとは反対側に変形補助凹部35pを形成してもよい。
ピン21側に位置規制凹部が形成されている上記各変形例における位置規制凹部55j、55k、55m、55n,55pと爪部との組は、いずれも、複数あってもよい。また、複数の組を設ける場合、上記各変形例のうちから、一の変形例等で示す組と他の変形例で示す組とを組み合わせてもよい。さらに、ピン21側に位置規制凹部が形成されている一変形例で示す組と溝接触部材41側に位置規制凹部が形成されている一変形例又は上記実施形態で示す組とを組み合わせてもよい。
「位置決め方法の第一変形例」
以上で説明した位置決め方法の第一変形例について、図23に示すフローチャートに従って説明する。
本変形例の位置決め方法でも、上記実施形態の位置決め方法と同様、準備工程(S0a)、仮位置決め工程(S1)、ロータ配置工程(S2)、ズレ計測工程(S3)、調整済みピン組立工程(S4a)、下半翼環の仮保持工程(S5)、仮位置決め解除工程(S6)、位置決め装置取付工程(S7)、仮保持解除工程(S8)を実行する。但し、本変形例の位置決め方法における準備工程(S0a)及び調整済みピン組立工程(S4a)は、上記実施形態の位置決め方法における準備工程(S0)、調整済みピン組立工程(S4)と異なる。
本変形例の準備工程(S0a)でも、位置決め装置20を構成するピン21、ライナ61、溝接触部材41、シール材75、ピン押えネジ81、緩み止め具85を準備する。但し、本変形例の準備工程(S0a)で準備するピン21には、変形補助凹部35が形成されておらず、溝接触部材41には、位置規制凹部55が形成されていない。
本変形例の調整済みピン組立工程(S4a)では、まず、ピン21に変形補助凹部35を形成すると共に、溝接触部材41に位置規制凹部55を形成する(S40:凹部形成工程)。次に、上記実施形態における調整済みピン組立工程(S4)と同様に、ライナ選定工程(S41)及び部材組み付け工程(S42)を実行する。
ピン21に変形補助凹部35を形成する作業や溝接触部材41に位置規制凹部55を形成する作業は、蒸気タービンの組立現場等で比較的容易に行うことができる作業である。このため、本変形例のように、準備工程(S0a)では、変形補助凹部35が形成されていないピン21、及び、位置規制凹部55が形成されていない溝接触部材41を準備し、調整済みピン組立工程(S4a)で、これらの凹部35,55を形成してもよい。
なお、本変形例では、凹部形成工程(S40)後にライナ選定工程(S41)を実行するが、ライナ選定工程(S41)後に凹部形成工程(S40)を実行してもよい。すなわち、凹部形成工程(S40)は、部材組み付け工程(S42)の前であれば、どの段階で行ってもよい。
また、本変形例では、ピン21側に変形補助凹部35を形成し、溝接触部材41側に位置規制凹部55を形成する例である。しかしながら、本変形例において、溝接触部材41側に変形補助凹部を形成し、ピン21側に位置規制凹部を形成してもよい。
「位置決め方法の第二変形例」
以上で説明した位置決め方法の第二変形例について、図24に示すフローチャートに従って説明する。
本変形例の位置決め方法は、上記実施形態の位置決め方法における調整済みピン組立工程(S4)を変形したもので、他の工程に関しては上記実施形態の位置決め方法と同様である。
本変形例の調整済みピン組立工程(S4b)でも、上記実施形態の調整済みピン組立工程(S4)と同様、ライナ選定工程(S41)、部材組み付け工程(S42)を実行する。
本変形例の調整済みピン組立工程(S4b)では、その後、ピン21にライナ61及び溝接触部材41がしっかりと取り付けられているか、さらに、一対の溝接触部材41の溝接触面42の相互間隔が適切な寸法になっているかの組付け確認を行う(S43:組付け確認工程)。この組付け確認工程(S43)で組付けがOKであることが確認できたならば、下半翼環の仮保持工程(S5)に進む。
一方、この組付け確認工程(S43)で組付けがOKであることが確認できなければ、部材組み付け工程(S42)で組み立てられた調整済みピン21bを分解する(S44:分解工程)。調整済みピン21bの分解にあたっては、塑性変形で形成した爪部37をポンチやたがね等の工具を用いて切断して、ピン21から溝接触部材41を離す。
分解工程(S44)後、溝接触部材41中で先に形成されていた位置規制凹部55とは別の位置に位置規制凹部55を形成すると共に、ピン21中で新たに形成した位置規制凹部55と隣接する位置に新たな変形補助凹部35を形成する(S40b:凹部形成工程)。次に、必要に応じてライナ選定工程(S41b)を実行した後、部材組み付け工程(S42b)を実行する。この部材組み付け工程(S42b)では、溝接触部材41中で新たに形成した位置規制凹部55と対向する部分を塑性変形させ、この部分を爪部としてピン21中で新たに形成した位置規制凹部55に入れる。
この部材組み付け工程(S42b)後、再び、組付け確認工程(S43)を実行し、この組付け確認工程(S43)で組付けがOKであることが確認できたならば、下半翼環の仮保持工程(S5)に進む。
なお、本変形例では、凹部形成工程(S40b)後にライナ選定工程(S41b)を実行するが、ライナ選定工程(S41b)後に凹部形成工程(S40b)を実行してもよい。すなわち、凹部形成工程(S40b)は、部材組み付け工程(S42b)の前であれば、どの段階で行ってもよい。また、準備工程(S0)において、予備の位置規制凹部55が形成されている溝接触部材41と、予備の変形補助凹部35が形成されているピン21とを準備しておけば、調整済みピン組立工程(S4b)で凹部形成工程(S40b)を実行する必要はない。
また、本変形例では、ピン21側に変形補助凹部35を形成し、溝接触部材41側に位置規制凹部55を形成する例である。しかしながら、本変形例においても、溝接触部材41側に変形補助凹部を形成し、ピン21側に位置規制凹部を形成してもよい。
「位置決め方法の第三変形例」
以上で説明した位置決め方法の第三変形例について、図25に示すフローチャートに従って説明する。
本変形例の位置決め方法でも、上記実施形態の位置決め方法と同様、準備工程(S0c)、仮位置決め工程(S1)、ロータ配置工程(S2)、ズレ計測工程(S3)、調整済みピン組立工程(S4c)、下半翼環の仮保持工程(S5)、仮位置決め解除工程(S6)、位置決め装置取付工程(S7)、仮保持解除工程(S8)を実行する。但し、本変形例の位置決め方法における準備工程(S0c)及び調整済みピン組立工程(S4c)は、上記実施形態の位置決め方法における準備工程(S0)、調整済みピン組立工程(S4)と異なる。
本変形例の準備工程(S0c)では、溝接触部材41、シール材75、ピン押えネジ81、緩み止め具85を準備する。一方で、本変形例の準備工程(S0c)では、ライナ61を準備しない。
本変形例の調整済みピン組立工程(S4c)では、ズレ計測工程(S3)で計測したズレ量に応じた厚さに溝接触部材41の厚さを調整する(S41c:厚さ調整工程)。ここで、溝接触部材41の厚さとは、溝接触部材41の溝接触面42と被支持面43との間隔である。この厚さ調整工程(S41c)では、基本的に、溝接触部材41の溝接触面42を削って厚さを調整する。このため、準備工程(S0c)で準備する溝接触部材41の厚さは、ライナ61を用いることを前提とした溝接触部材41の厚さよりも厚い。
調整済みピン組立工程(S4c)では、厚さ調整工程(S41c)後、部材組み付け工程(S42c)を実行する。この部材組み付け工程(S42c)では、ピン21の溝挿入部23と溝接触部材41との間にライナ61を配置せずに、溝接触部材41をピン21に取り付ける。以上で、調整済みピン組立工程(S4c)が完了する。
上記実施形態及び上記各変形例では、ライナ61を抑えるライナ押えとして溝接触部材41を用いる。しかしながら、本変形例では、溝接触部材41をライナとして用いる。本変形例のように、溝接触部材41をライナとして用いると、位置決め装置の部品点数をより少なくすることができる。但し、溝接触部材41をライナとして用いる場合、蒸気タービンを組み立てる現場等で厚さ調整工程(S41c)を実行する必要があるため、現場等での手間が増える。このため、溝接触部材41をライナ押えとして用いるか、ライナとして用いるかは、部品点数の減少と現場等での手間の増加とを比較考量して決めることが好ましい。
なお、本変形例のように、溝接触部材41をライナとして用いる場合でも、第一変形例のように、調整済みピン組立工程で凹部形成工程(S40)を実行してもよい。また、溝接触部材41をライナとして用いる場合でも、第二変形例のように、調整済みピン組立工程で組付け確認工程(S43)、その後の分解工程(S44)等を行ってもよい、但し、この場合、第二変形例における調整済みピン組立工程中のライナ選定工程(S41,S41b)は厚さ調整工程に代わる。さらに、本変形例においても、溝接触部材41側に変形補助凹部を形成し、ピン21側に位置規制凹部を形成してもよい。
「その他の変形例」
上記実施形態では、ピン21の係合部(第一係合凹部25、第二係合凹部26)が凹部で、溝接触部材41の被係合部(第一被係合凸部45、第二被係合凸部46)が凸部である。しかしながら、逆に、ピン21の係合部が凸部で、溝接触部材41の被係合部が凹部であってもよい。
上記実施形態では、ピン21には二つの第一係合凹部25が形成され、溝接触部材41には二つの第一被係合凸部45が形成されている。しかしながら、第一係合凹部25は、一つでもよいし、無くてもよい。また、第一被係合凸部45は、第一係合凹部25の数に合せて、一つでもよいし、無くてもよい。また、上記実施形態における第二係合凹部26及び第二被係合凸部46は無くてもよい。
上記実施形態におけるライナ61の凸挿通部63は、ライナ61に形成された孔である。しかしながら、この凸挿通部63は、溝接触部材41の第二被係合凸部46が挿通させることができれば、孔である必要はない。例えば、凸挿通部63は、ライナ61に形成した切欠きであってもよい。また、前述したように、溝接触部材41の第二被係合凸部46を省略した場合には、ライナ61にこの凸挿通部63を形成する必要はない。
上記実施形態では、第一溝接触部材41aとピン21の溝挿入部23との間、第二溝接触部材41bとピン21の溝挿入部23との間に、それぞれライナ61を配置している。しかしながら、前述のズレ計測工程(S3)で計測された左右方向Dhのズレ量によっては、第一溝接触部材41aとピン21の溝挿入部23との間と、第二溝接触部材41bとピン21の溝挿入部23との間とのうち、一方の間のみにライナ61を配置してもよい。
上記実施形態では、ピン挿通孔12からのピン21の脱落防止のためピン押えネジ81を用いている。しかしながら、このピン押えネジ81を用いず、ピン21の頭を半車室11に溶接してもよい。
上記実施形態において、ピン21には、その先端側にテーパ受け面29が形成され、溝接触部材41には、その基端側にテーパ接触面52が形成されている。これらテーパ受け面29及びテーパ接触面52は、溝接触部材41がピン21に対して基端側へ相対移動するのを規制すると共に、ピン21の支持面24から離間する側へ相対移動するのを規制する役目を担っている。しかしなら、ピンにはテーパ受け面を形成せず、溝接触部材にはテーパ接触面を形成しなくてもよい。
この場合、図26に示すように、例えば、溝接触部材41xには、その基端側に、基端側を向き、且つ溝接触面42と被支持面43とをつなぐ基端面51xが形成されている。この基端面51xは、溝接触部材41xの溝接触面42及び被支持面43に垂直な面でもよいが、傾斜している面や凹凸を有する面でもよい。一方、ピン21xの挿通部22xには、その先端側に、軸方向移動規制面28x及び離間移動規制面29xが形成されている。軸方向移動規制面28xは、先端側を向き溝接触部材41xの基端面51xと対向する面である。離間移動規制面29xは、ピン軸線Apに対して交差する方向であって溝挿入部23側を向いて、溝接触部材41xの溝接触面42と対向する面である。ピン21xにおける挿通部22xの離間移動規制面29xとピン21xにおける溝挿入部23の支持面24との間の間隔寸法は、溝接触部材41xの溝接触面42と被支持面43との間の間隔寸法より大きい。以上のように、溝接触部材41x及びピン21xを構成することで、溝接触部材41xの基端面51xとピン21xの軸方向移動規制面28xとの関係で、溝接触部材41xがピン21xに対して基端側へ相対移動するのを規制することができる。さらに、溝接触部材41xの溝接触面42とピン21xの離間移動規制面29xとの関係で、溝接触部材41xがピン21xの支持面24から離間する側へ相対移動するのを規制することができる。なお、この例では、ピン21xの離間移動規制面29xは、溝接触部材41xの溝接触面42と対向する。しかしながら、溝接触部材41xの基端面51xが軸方向に凸の部分がある場合、ピン21xの離間移動規制面29xは、溝接触部材41xの凸の部分と対向するようにしてもよい。
上記実施形態の半車室11に形成されているピン挿通孔12は、半車室11の内周側から外周側へ貫通した孔である。しかしながら、図27に示すように、ピン挿通孔12yは、半車室11の内周側から外周側へ凹んでいれば、半車室11を貫通していなくてもよい。この場合、ピン21yの挿通部22yには、頭部フランジが形成されていない。また、この場合、ピン軸方向Dpにおける挿通部22yの長さは、ピン挿通孔12yの深さと同等か若干長い。このように、ピン挿通孔12yが半車室11を貫通していなければ、半車室11の内周側から外周側への流体の漏れや、ピン21yの脱落を考慮する必要がなくなる。なお、このように、ピン挿通孔12yが半車室11を貫通していない場合、図14、図23及び図25で説明した位置決め方法において、ロータ配置工程(S2)は、位置決め装置取付工程(S7)の後に行うことになる。これは、ピン21yを半車室11の内周側からピン挿通孔12yに入れる関係上、ロータ1が配置されると、ピン21yをピン挿通孔12yに入れられなくなるからである。
上記実施形態の位置決め装置20は、外側部材としての半車室11に対する内側部材としての半翼環6の相対位置を定めている。しかしながら、本発明は、これに限定されず、回転軸線Arを中心として周方向Dcに延びる外側部材であれば、この外側部材が半車室11である必要はなく、また、同様に、外側部材の内周側に配置されて回転軸線Arを中心として周方向Dcに延びる内側部材であれば、この内側部材が半翼環6である必要はない。また、本発明は、蒸気タービン以外のガスタービンや圧縮機等、他の回転機械に適用してもよい。
1:ロータ(蒸気タービンロータ)、2:動翼、5:翼環、6:半翼環(内側部材)、6x:上半翼環(内側部材)、6y:下半翼環(内側部材)、7:ピン溝、8:溝側面、8a:第一溝側面、8b:第二溝側面、9:静翼、10:車室、11:半車室(外側部材)、11x:上半車室(外側部材)、11y:下半車室(外側部材)、12:ピン挿通孔、13:フランジ収納凹部、14:雌ネジ、20:位置決め装置、20a:仮位置決め装置、20b:調整済み位置決め装置、21,21x,21y:ピン、21a:仮ピン、21b:調整済みピン、22,22x,22y:挿通部、23:溝挿入部、23c:側周面、24:支持面、24a:主支持面、25:第一係合凹部(係合部、第一係合部)、25a:基端側係合部、25b:先端側係合部、26:第二係合凹部(係合部、第二係合部)、27:先端面、28x:軸方向移動規制面、29:テーパ受け面、29x:離間移動規制面、31:頭部フランジ、32:シール溝、35,35c,35d,35e,35f,35g,35i,35j,35k,35m,35n,35p:変形補助凹部、35a:第一補助凹部、35b:第二補助凹部、36,36c,36d,36e,36f,36g,36h,36i,36j,36k,36m,36n,36p:一部分、41:溝接触部材、41a:第一溝接触部材、41b:第二溝接触部材、42:溝接触面、43:被支持面、44a:第一テーパ面、44b:第二テーパ面、45:第一被係合凸部(被係合部、第一被係合部)、46:第二被係合凸部(被係合部、第二被係合部)、47:先端面、48:側面、48a:凸内側面、51:基端面、52:テーパ接触面、55,55c,55d,55e,55f,55g,55i,55j,55k,55m,55n,55p:位置規制凹部、61:ライナ、61a:規定ライナ、62:ライナ本体、63:凸挿通部、65:移動規制部、75:シール材、81:ピン押えネジ(蓋部材)、82:ネジ部、83:ネジ頭部、85:緩み止め具

Claims (23)

  1. 軸線を中心として周方向に延びる外側部材に対して、前記外側部材の内周側に配置され軸線を中心として周方向に延びる内側部材を位置決めする位置決め装置において、
    前記外側部材の内周側から外周側へ延びるピン挿通孔と前記内側部材の外周側から内周側に向かって凹んだ溝とに入り込むピンと、
    前記ピンに取り付けられ、前記溝の溝側面に接する溝接触部材と、
    を備え、
    前記ピンと前記溝接触部材とのうち、一方の部材には、他方の部材と対向する部分に前記他方の部材から遠ざかる向きに凹む位置規制凹部が形成され、
    前記他方の部材には、前記他方の部材の一部分が塑性変形して前記位置規制凹部に入り込んで前記位置規制凹部に接する爪部が形成されている、
    位置決め装置。
  2. 請求項1に記載の位置決め装置において、
    前記ピンは、前記外側部材の前記ピン挿通孔に挿通される挿通部と、前記内側部材の前記溝に入り込む溝挿入部と、を有し、
    前記挿通部は、ピン軸線を中心として、前記ピン軸線と平行なピン軸線方向に長い柱状を成し、
    前記溝挿入部は、前記挿通部の前記ピン軸線方向のうちの一方側である先端側に形成され、
    前記溝挿入部には、前記ピン軸線と平行な支持面が形成され、
    前記溝接触部材には、前記溝挿入部の前記支持面と対向する被支持面が形成されている、
    位置決め装置。
  3. 請求項2に記載の位置決め装置において、
    前記挿通部には、前記先端側に、前記支持面の側を向き且つ前記支持面から遠ざかるに連れて次第に前記先端側に向かうテーパ受け面が形成され、
    前記溝接触部材には、前記挿通部のテーパ受け面に面接触するテーパ接触面が形成されている、
    位置決め装置。
  4. 請求項2又は3に記載の位置決め装置において、
    前記溝挿入部には、前記溝挿入部の表面のうちで前記溝接触部材の表面と対向する対向面と、前記溝挿入部の前記表面のうちで前記対向面を除く露出面と、前記対向面と前記露出面との角と、が形成され、
    前記溝接触部材には、前記溝接触部材の表面のうちで前記ピンの表面と対向する対向面と、前記溝接触部材の前記表面のうちで前記対向面を除く露出面と、前記溝接触部材の前記対向面と前記溝接触部材の前記露出面との角と、が形成され、
    前記位置規制凹部は、前記一方の部材の前記角を含む領域に形成されている、
    位置決め装置。
  5. 請求項4に記載の位置決め装置において、
    前記溝挿入部の前記露出面は、前記溝挿入部の前記先端側に形成され且つ前記先端側を向く先端面を有し、
    前記溝接触部材の前記露出面は、前記溝接触部材の前記先端側に形成され且つ前記先端側を向く先端面を有し、
    前記位置規制凹部は、前記一方の部材の前記先端面と前記対向面との角を含む領域に形成されている、
    位置決め装置。
  6. 請求項4又は5に記載の位置決め装置において、
    前記位置規制凹部を画定する凹面は、前記一方の部材の前記対向面と前記露出面との双方に対して傾斜する仮想軸を中心とする仮想円柱の外周面の一部を成す、
    位置決め装置。
  7. 請求項2から6のいずれか一項に記載の位置決め装置において、
    前記溝接触部材には、前記溝接触部材の前記先端側に形成され且つ前記先端側を向く先端面から前記先端側とは反対の基端側に延び、前記被支持面に対して凸状の第一被係合部が形成され、
    前記溝挿入部には、前記溝挿入部の前記先端側に形成され且つ前記先端側を向く先端面から前記基端側に延び、前記支持面に対して凹状の第一係合部が形成され、
    前記第一被係合部は、前記被支持面に対する突出量が所定突出量の基端側被係合部と、前記基端側被係合部より前記先端側に配置され前記被支持面に対する突出量が前記所定突出量より大きい先端側被係合部と、を有し、
    前記第一係合部は、前記支持面に対する凹み量が前記基端側被係合部が入り込める所定凹み量の基端側係合部と、前記基端側係合部より前記先端側に配置され前記支持面に対する凹み量が前記先端側被係合部が入り込める凹み量の先端側係合部と、を有し、
    前記位置規制凹部は、前記溝挿入部の前記先端面と前記先端側係合部とを含む領域と、前記溝接触部材の前記先端面と前記先端側被係合部とを含む領域とのうちの一方の領域に形成されている、
    位置決め装置。
  8. 請求項2から6のいずれか一項に記載の位置決め装置において、
    前記溝挿入部には、前記支持面に対して凸状又は凹状を成す係合部が形成され、
    前記溝接触部材には、前記被支持面に対して凹状又は凸状を成して前記係合部が係合する被係合部が形成されている、
    位置決め装置。
  9. 請求項8に記載の位置決め装置において、
    前記溝挿入部の前記係合部は、前記ピン軸線方向に長い第一係合部と、前記支持面に対して平行で且つ前記ピン軸線に対して垂直な方向に長い第二係合部と、のうち少なくとも一方の係合部を有し、
    前記溝接触部材の前記被係合部は、前記ピン軸線方向に長く前記第一係合部が係合する第一被係合部と、前記被支持面に対して平行で且つ前記ピン軸線に対して垂直な方向に長く前記第二係合部が係合する第二被係合部と、のうち少なくとも一方の被係合部を有する、
    位置決め装置。
  10. 請求項2から9のいずれか一項に記載の位置決め装置において、
    前記溝接触部材と前記溝内の前記ピンとの間に配置されているライナを備え、
    前記溝接触部材は、前記被支持面の前記先端側とは反対の基端側に、前記被支持面に隣接して前記基端側を向く基端面が形成され、
    前記ライナは、前記被支持面と前記支持面とのうち少なくとも一方の面に接するライナ本体と、前記ライナ本体に対して折れ曲がり前記基端面に対向する移動規制部と、を有する、
    位置決め装置。
  11. 請求項2から10のいずれか一項に記載の位置決め装置において、
    前記外側部材の外周側には、前記ピン挿通孔に連通し、前記ピン挿通孔よりも径が大きく外周側から内周側に向かって凹む凹部が形成されており、
    前記凹部内に配置され、前記外側部材の内周側に存在する流体が外周側へ流れ出るのを抑制するシール部材を備える、
    位置決め装置。
  12. 請求項2から11のいずれか一項に記載の位置決め装置において、
    前記外側部材の前記ピン挿通孔は、円柱状の孔であり、
    前記ピンの前記挿通部は、前記ピン挿通孔に挿通可能な円柱状を成し、
    前記溝挿入部は、円柱状の前記挿通部の外周面の一部が延長された周面である側周面と、前記挿通部の外周面を延長した仮想外周面よりも内側に位置して前記溝接触部材が取り付けられる面と、を有し、
    前記溝挿入部に前記溝接触部材が取り付けられた際、前記溝接触部材は、前記仮想外周面よりも前記内側に位置する、
    位置決め装置。
  13. 請求項1から9のいずれか一項に記載の位置決め装置において、
    前記溝接触部材と前記溝内の前記ピンとの間に配置されているライナを備える、
    位置決め装置。
  14. 請求項1から13のいずれか一項に記載の位置決め装置において、
    前記外側部材の外周側には、前記ピン挿通孔に連通し、外周側から内周側に向かって凹む凹部が形成されており、
    前記外側部材の前記凹部の開口を塞ぐ蓋部材を備える、
    位置決め装置。
  15. 請求項1から14のいずれか一項に記載の位置決め装置において、
    前記ピンと前記溝接触部材とのうち、前記一方の部材に複数の前記位置規制凹部が形成されている、
    位置決め装置。
  16. 請求項1から15のいずれか一項に記載の位置決め装置において、
    前記他方の部材には、前記爪部を基準にして前記一方の部材の前記位置規制凹部と反対側に変形補助凹部が形成されている、
    位置決め装置。
  17. 請求項1から16のいずれか一項に記載の位置決め装置と、
    前記外側部材と、
    前記内側部材と、
    前記内側部材の内周側に配置され、前記軸線を中心として回転するロータと、
    を備える回転機械。
  18. 請求項17に記載の回転機械において、
    前記ロータは、蒸気タービンロータである、
    回転機械。
  19. 軸線を中心として周方向に延びる外側部材に対して、前記外側部材の内周側に配置され軸線を中心として周方向に延びる内側部材を位置決めする位置決め方法において、
    前記外側部材の内周側から外周側へ延びるピン挿通孔と前記内側部材の外周側から内周側に向かって凹んだ溝とに入り込むピンと、前記溝の溝側面に接する溝接触部材と、を有する位置決め装置を準備する準備工程と、
    前記ピンに前記溝接触部材を組み付けた調整済みピンを組み立てる調整済みピン組立工程と、
    前記外側部材の前記ピン挿通孔及び前記内側部材の前記溝に、前記調整済みピンを入れる位置決め装置取付工程と、
    を実行し、
    前記準備工程で準備する前記ピンと前記溝接触部材とのうち、一方の部材には、他方の部材と対向する部分に前記他方の部材から遠ざかる向きに凹む位置規制凹部が形成されており、
    前記調整済みピン組立工程は、前記ピンに前記溝接触部材を対向させ、前記他方の部材の一部分を爪部として塑性変形させて、前記位置規制凹部に入れて前記位置規制凹部に接触させる部材組み付け工程を含む、
    位置決め方法。
  20. 請求項19に記載の位置決め方法において、
    前記調整済みピン組立工程は、前記一方の部材に前記位置規制凹部を形成する凹部形成工程を含み、
    前記部材組み付け工程では、前記ピンに前記溝接触部材を対向させ、前記他方の部材の一部を爪部として塑性変形させて、前記調整済みピン組立工程前に既に形成されている前記位置規制凹部と、前記凹部形成工程で形成された前記位置規制凹部とのうち、一方の位置規制凹部に入れる、
    位置決め方法。
  21. 軸線を中心として周方向に延びる外側部材に対して、前記外側部材の内周側に配置され軸線を中心として周方向に延びる内側部材を位置決めする位置決め方法において、
    前記外側部材の内周側から外周側へ延びるピン挿通孔と前記内側部材の外周側から内周側に向かって凹んだ溝とに入り込むピンと、前記溝の溝側面に接する溝接触部材と、を有する位置決め装置を準備する準備工程と、
    前記ピンに前記溝接触部材を組み付けた調整済みピンを組み立てる調整済みピン組立工程と、
    前記外側部材の前記ピン挿通孔及び前記内側部材の前記溝に、前記調整済みピンを入れる位置決め装置取付工程と、
    を実行し、
    前記調整済みピン組立工程は、
    前記ピンと前記溝接触部材とのうち、一方の部材に、他方の部材と対向する部分に前記他方の部材から遠ざかる向きに凹む位置規制凹部を形成する凹部形成工程と、
    前記ピンに前記溝接触部材を対向させ、前記他方の部材の一部を爪部として塑性変形させて、前記位置規制凹部に入れて前記位置規制凹部に接触させる部材組み付け工程と、
    を含む、
    位置決め方法。
  22. 請求項19から21のいずれか一項に記載の位置決め方法において、
    前記準備工程では、複数のライナを準備し、
    前記調整済みピン組立工程は、複数の前記ライナのうちからいずれかのライナを選定するライナ選定工程を含み、
    前記部材組み付け工程では、前記ピンと前記溝接触部材との間に前記ライナ選定工程で選定した前記ライナを配置し、前記ライナを介して前記ピンに前記溝接触部材を対向させ、前記溝接触部材の一部を爪部として塑性変形させて、前記位置規制凹部に入れる、
    位置決め方法。
  23. 請求項19から21のいずれか一項に記載の位置決め方法において、
    前記調整済みピン組立工程は、前記溝接触部材の厚さを調整する厚さ調整工程を含み、
    前記部材組み付け工程は、前記厚さ調整工程後に実行する、
    位置決め方法。
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