JP2016151011A - フェロコークス製造装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温羽口からの水平方向距離による炉内温度差を低減し、均一な品質のフェロコークスを製造することのできるフェロコークス製造装置を提供する。【解決手段】竪型乾留炉本体と、前記竪型乾留炉本体の第1の高さに設けられた、前記竪型乾留炉本体内へ高温ガスを吹き込むための少なくとも一つの高温羽口と、前記竪型乾留炉本体の第2の高さに設けられた、前記竪型乾留炉内のガスを前記高温羽口から水平方向に離れた位置で抜き出すための、前記竪型乾留炉本体の外部に連通する少なくとも一つのガス排出口とを有するフェロコークス製造装置。【選択図】 図1

Description

本発明は、炭素含有物質と鉄含有物質とを含む成型物を竪型乾留炉で乾留する、フェロコークスの製造装置に関するものである。特に、本発明は、ガス排出口を設けることによって高温ガスの流れを制御し、原料を均一に加熱することを可能としたフェロコークスの製造装置に関するものである。
製鉄の分野においては、原料である鉄鉱石をコークスとともに高炉に装入し、両者を高温で反応させることによって銑鉄を製造している。コークスは、石炭を乾留することによって得られるものであり、高炉内においては、通気をよくするためのスペーサー、熱源、および還元材として機能する。
近年、高炉における製鉄プロセスの効率を高めるために、高炉へ装入されるコークスの一部をフェロコークスに置き換えることが提案されている。フェロコークスとは、鉄鉱石等の鉄含有物質とともに石炭を乾留して製造されるものであり、その内部には、鉄含有物質が還元されて生成した微粒子状の金属鉄が含まれている。この金属鉄は、高炉内での反応の進行に伴って生成したCOがコークス(C)と反応して還元ガスであるCOを再生する反応を促進する触媒の機能を有している。そのため、フェロコークスを使用することにより、高炉内の低温部からコークスのガス化反応を開始させ、熱保存帯の温度を低くすることができる。したがって、フェロコークスの使用は、還元材比を大きく低減し、省エネルギーおよびCO排出量削減に寄与するものと期待されている。このような有用性のため、フェロコークスの製造技術に関する研究が進められている。
現在用いられている一般的な冶金用コークスは、原料である石炭を室炉式コークス炉で乾留して製造される。そこで、同様に、室炉式コークス炉を用いてフェロコークスを製造する方法が検討された。例えば、a)石炭と粉鉄鉱石の混合物を室炉式コークス炉に装入して乾留する方法や、b)石炭と鉄鉱石を冷間、すなわち室温で成型し、得られた成型物を室炉式コークス炉に装入して乾留する方法などが提案されている(非特許文献1)。
しかし、通常の室炉式コークス炉は珪石煉瓦で構成されているため、鉄鉱石を装入して乾留を行うと、珪石煉瓦の主成分であるシリカが鉄鉱石と反応し、低融点のファイアライトが生成する。この反応による珪石煉瓦の損傷が問題となるため、従来の室炉式コークス炉を用いたフェロコークスの製造は、工業的には実施されていない。
そこで、室炉式コークス製造方法に代わるフェロコークス製造方法として、竪型乾留炉を用いる方法が提案されている(特許文献1、2)。この方法においては、乾留炉として、珪石煉瓦ではなくシャモット煉瓦で構成される竪型シャフト炉が使用される。また、原料である石炭と鉄鉱石は、バインダーとともに混合し、冷間で所定の大きさに成型して得られる成型炭として、前記竪型炉に装入される。そして、竪型炉内に熱媒ガスを吹込んで加熱することにより成型炭を乾留し、成型フェロコークスが製造される。この方法によれば、鉄鉱石による煉瓦の損傷を受けることなく、乾留を行うことができる。
特許第4666114号公報 特許第5504731号公報
「コークス技術年報」燃料協会、1958年、p.38
しかし、上記竪型炉を用いた方法で得られるフェロコークスには、以下に述べる理由により、品質のばらつきがあることが分かった。
竪型炉では、炉壁に設けられた高温ガス吹込み羽口(高温羽口)から炉内に高温のガスを吹込むことによって加熱が行われる。しかし、炉内には成型炭が充填されているため、吹込まれたガスの流量は羽口から離れるにしたがって急激に減少し、その結果、高温羽口に近い部分は高温であるが、高温羽口から離れた位置の温度は羽口付近に比べて低いという温度分布が炉内に形成される。原料である成型炭は、竪型炉の炉頂から装入されて炉内を下降しつつ乾留され、最終的に炉の下部より排出されるため、炉内部を通過する成型炭の温度は、高温羽口からの水平方向距離によって異なることとなる。この水平方向における温度の不均一性のために、炉の下部から排出される製品の乾留の度合いにばらつきが生じてしまう。
本発明は、上記の実情に鑑み開発されたものであり、高温羽口からの水平方向距離による炉内温度差を低減し、均一な品質のフェロコークスを製造することのできるフェロコークス製造装置を提供することを目的とする。
発明者らは、上記の目的を達成すべく、鋭意研究を行った結果、竪型乾留炉を備えるフェロコークス製造装置において、竪型乾留炉本体の適切な位置に、高温羽口から吹き込まれた高温ガスを前記高温羽口から水平方向に異なる位置で抜き出すための、該竪型乾留炉本体の外部に連通したガス排出口を設けることによって、炉内における高温ガスの流れを制御し、水平方向における温度差を低減できることを見出した。本発明は、前記知見に立脚するものである。
すなわち、本発明の要旨構成は、次のとおりである。
(1)竪型乾留炉本体と、
前記竪型乾留炉本体の第1の高さに設けられた、前記竪型乾留炉本体内へ高温ガスを吹き込むための少なくとも一つの高温羽口と、
前記竪型乾留炉本体の第2の高さに設けられた、前記竪型乾留炉本体内のガスを前記高温羽口から水平方向に異なる位置で抜き出すための、前記竪型乾留炉本体の外部に連通する少なくとも一つのガス排出口とを有するフェロコークス製造装置。
(2)前記第1の高さと第2の高さの差が1.5m以下である、前記(1)に記載のフェロコークス製造装置。
(3)前記ガス排出口が、前記竪型乾留炉本体の壁面に設けられた排気口である、前記(1)または(2)に記載のフェロコークス製造装置。
(4)前記竪型乾留炉本体の水平断面が、第1の対向する1組の壁面と、第2の対向する一組の壁面とによって画定される矩形であり、
前記高温羽口が、前記第1の対向する1組の壁面のそれぞれに、少なくとも1つずつ設けられ、
前記排気口が、前記第2の対向する1組の壁面のそれぞれに、少なくとも1つずつ設けられている、前記(3)に記載のフェロコークス製造装置。
(5)前記竪型乾留炉本体の内部に、少なくとも1つの排気用パイプを有し、
前記ガス排出口が、前記排気用パイプの一端に設けられた吸気口であり、
前記吸気口が前記排気用パイプを通じて前記竪型乾留炉の外部に連通している、前記(1)または(2)に記載のフェロコークス製造装置。
(6)前記竪型乾留炉本体の水平断面が長方形であり、
前記長方形の1組の長辺に、少なくとも2組の前記高温羽口が、それぞれ向かい合って設けられており、
少なくとも1つの前記吸気口が、前記長方形の短辺方向中央、かつ隣接する2組の前記高温羽口の前記長辺方向における中央に設けられている、前記(5)に記載のフェロコークス製造装置。
(7)前記竪型乾留炉本体の、前記第1の高さとは異なる第3の高さに設けられた、前記竪型乾留炉本体内へ高温ガスを吹き込むための少なくとも一つの高温羽口をさらに有し、
前記第2の高さが、前記第1の高さと第3の高さの間であり、
前記第3の高さと第2の高さの差が1.5m以下である、前記(1)〜(6)のいずれか一つに記載のフェロコークス製造装置。
本発明のフェロコークスの製造装置によれば、高温羽口からの水平方向距離による炉内温度差を低減し、均一な品質のフェロコークスを製造することできる。これにより、品質の安定した冶金用フェロコークスを工業的に生産することが可能となる。
本発明の第1の実施形態におけるフェロコークス製造装置の正面概略図である。 本発明の第1の実施形態におけるフェロコークス製造装置の、A−A面における水平断面概略図である。 本発明の第2の実施形態におけるフェロコークス製造装置の正面概略図である。 本発明の第3の実施形態におけるフェロコークス製造装置の正面概略図である。 本発明の第4の実施形態におけるフェロコークス製造装置の正面概略図である。 本発明の第4の実施形態におけるフェロコークス製造装置の側面概略図である。 本発明の第4の実施形態におけるフェロコークス製造装置の、B−B面における水平断面概略図である。 本発明の第5の実施形態におけるフェロコークス製造装置の正面概略図である。 本発明の第5の実施形態におけるフェロコークス製造装置の側面概略図である。 本発明の第6の実施形態におけるフェロコークス製造装置の正面概略図である。 本発明の実施例1におけるシミュレーション結果を示す図である。 本発明の実施例2におけるシミュレーション結果を示す図である。
次に、本発明を実施する方法について具体的に説明する。
・ 竪型乾留炉
本発明のフェロコークス製造装置では、乾留炉として竪型炉(竪型シャフト炉)を使用する。竪型炉は、炉頂部に装入口を、下部にフェロコークス排出口を、それぞれ備えており、前記装入口から原料が装入される。原料としては、常法にしたがい、石炭と鉄鉱石をバインダーとともに混合し、冷間で成型して得られる成型炭を使用することができる。前記装入口より炉内に充填された原料は、炉内をゆっくりと下降しながら乾留され、フェロコークスとして前記フェロコークス排出口から排出される。
前記竪型乾留炉の本体部分の形状は特に限定されず、各種公知の形状とすることができる。使用可能な炉の水平断面形状としては、例えば、正方形、長方形、円形などが挙げられる。なお、ここで炉の水平断面形状とは、耐火物などからなる炉壁に囲まれた炉内空間の水平方向断面における形状を意味する。
・ 高温羽口
前記竪型乾留炉の第1の高さには、少なくとも1つの高温羽口が設けられている。高温羽口とは、炉壁を貫通して設けられた、炉内へ高温ガスを吹き込むための導入口である。前記高温羽口の個数と配置は、炉本体の形状や寸法に応じて、適切に乾留を行うために必要な温度が得られるよう設定される。高温羽口は、炉壁上の同じ高さに、互いに対向するように少なくとも1組設けることが好ましい。ここで、高さとは、炉底からの炉長方向の位置を意味する。また、十分に加熱を行うために、異なる高さに複数段の高温羽口を設けることもでき、その場合には、特に2段とすることが好ましい。具体的には、竪型乾留炉本体の、前記第1の高さとは異なる第3の高さに、少なくとも一つの高温羽口をさらに設けることが好ましい。
・ 冷却羽口
本発明における乾留炉は、その下部に冷却のための設備を備えた連続式乾留炉とすることが好ましい。具体的には、炉の下部、高温羽口より下方の炉底付近に、乾留されたコークスを冷却するためのガスを吹き込む冷却羽口を設ける。前記冷却羽口より吹き込まれた低温のガスは、コークスを冷却しながら炉内を上昇し、高温羽口から吹き込まれた高温ガスと合流した後に、さらに上昇し、炉頂から排出される。排出されたガスは、炉外に設けた冷却装置によって温度を調整した後に、再度、前記冷却羽口から炉内へ吹き込んで、循環使用することが好ましい。また、炉頂より排出されたガスの一部を、炉外に設けた加熱装置によって再加熱し、上記高温羽口から吹き込んで循環使用することがより好ましい。
・ ガス排出口
本発明においては、上記高温羽口の近傍に、該高温羽口から吹き込まれた高温ガスを該高温羽口から水平方向に異なる位置で抜き出すための、前記竪型乾留炉本体の外部に連通した、少なくとも一つのガス排出口を設けることが重要である。
高温羽口近傍にガス排出口を有しない従来の竪型炉では、高温羽口から吹き込まれたガスは下方の冷却羽口より吹き込まれたガスと合流し、炉内を上昇して炉の上部から排出される。このように炉頂方向へのガスの流れが存在する一方、水平方向のガスの流れは炉内に充填された成型炭によって阻害される。その結果、水平方向における温度のばらつきが生じ、高温羽口から近い部分を通過する成型炭は十分に加熱されるが、高温羽口から水平方向に離れた位置を通過する成型炭は十分に加熱されないことになる。
これに対し本発明では、高温羽口から導入され、成型炭層を通過したガスを、前記ガス排出口から炉外へガスを抜き出すことによって炉内における水平方向のガスの流れを促進し、炉内水平方向における温度分布を均一化することができる。前記効果を得るために、本発明のフェロコークス製造装置においては、前記竪型乾留炉内のガスを前記高温羽口から水平方向に異なる位置で抜き出すための、少なくとも一つのガス排出口を設ける。
上記ガス排出口の位置は、前記高温羽口から水平方向に異なる位置であればよいが、高温羽口の高さを第1の高さ、ガス排出口の高さを第2の高さとしたとき、前記第1の高さと第2の高さの差を1.5m以下とすることが好ましい。このように、高温羽口とガス排出口を高さ方向に近い位置に設置することにより、炉内における水平方向のガスの流れを効果的に形成し、炉内水平方向における温度分布を一層均一化することができる。なお、前記第1の高さと第2の高さの差は、1.0m以下とすることがより好ましく、0m、すなわち、高温羽口とガス排出口を同じ高さとすることがさらに好ましい。なお、本発明における羽口およびガス排出口の高さは、それらの開口部の炉長方向における中心を基準として規定することとする。羽口の場合、炉の内壁面における開口部の中心を基準とする。
高温羽口が、高さ方向に複数段設けられている場合には、少なくとも1つの段の高温羽口に対応する高さにガス排出口が設けられていれば本発明の効果を得ることができる。例えば、高温羽口が上下2段に設けられている場合、すなわち、前記第1の高さとは異なる第3の高さに、さらに高温羽口が設けられている場合には、上段と下段の少なくとも一方の段に対応する高さにガス排出口を設ければよい。また、上段と下段の高温羽口それぞれに対応する高さに、1段ずつガス排出口を設けることが好ましい。
別の好ましい態様として、上段と下段の間の高さに、1段のガス排出口を設けることもできる。このように配置することによって、上段と下段の高温羽口から吹き込まれた高温ガスを、前記1段のガス排出口から抜き出すことができる。その際、前記1段のガス排出口の高さは、上段と下段のいずれからも1.5m以内とすることが好ましい。また、この場合、ガス排出口の高さを上段と下段の中央の高さとすることがより好ましい。
上記ガス排出口の具体的な形態は限定されず、炉外に連通し、ガスを炉外へ排気できるものであれば使用できる。例えば、炉壁に設けられた排気口や、炉内に設置された排気用パイプの先端に設けられた吸気口などが、本発明におけるガス排出口として利用できる。
なお、本発明におけるガスの吹き込み、排気、循環には、ブロワーなど、各種公知の送風手段を用いることができる。
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいてさらに具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の好適な例を示すものであり、本発明は、その記載によって何ら限定されるものではない。本発明の実施形態は、本発明の趣旨に適合する範囲で適宜変更することが可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に包含される。また、各図面において、共通する構成要素には、同一の参照番号を使用する。
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態におけるフェロコークス製造装置の正面概略図を図1に示す。図中、1は竪型乾留炉本体であり、その上部に装入部2、下部にフェロコークス排出部3を備えている。竪型乾留炉本体1の中央付近には高温羽口4および排気口5が設けられており、前記高温羽口4から高温のガスが炉内に吹き込まれる一方、該高温ガスの一部は炉内の成型炭層を通って排気口5から炉外へ排出される。したがって、本実施形態においては、排気口5がガス排出口として機能する。高温羽口と排気口の高さ方向における中心間距離は1.5m以下とすることが好ましいが、本実施形態では両者を同じ高さに配置した。また、竪型乾留炉本体1の下部には、冷却羽口6が設けられており、乾留が終了したフェロコークスを冷却するための低温ガスが前記冷却羽口6から吹き込まれる。
図2は、図1に示した装置のA−A面における水平断面概略図である。本実施形態における竪型乾留炉1の水平断面の形状は、図2に示したように略正方形であり、炉壁は耐火物7で構成されている。高温羽口4は、一方の対向する一組の壁面に、それぞれ一つずつ設けられており、排気口5は、他方の対向する一組の壁面に、それぞれ一つずつ設けられている。前記高温羽口4と排気口5は、それぞれの壁面の中央に設けることとする。
高温羽口4より吹き込まれた高温ガス8は、充填された成型炭の間隙を進み、成型炭を乾留する。成型炭を乾留する過程で、成型炭からは揮発成分がガスとして発生するため、竪型乾留炉1内のガスは、吹き込まれた高温ガス8と成型炭からの揮発成分とが混合したものとなる。竪型乾留炉1内のガスの一部は排気ガス9として、排気口5から炉外へ排出される。前記排気口の働きにより、炉内における水平方向のガスの移動が促進され、その結果、炉内の水平面内における温度均一性が改善される。また、残りのガスは、炉内を上昇して炉の上部から排出される。
加熱に用いる高温ガスは、炉外に設けた加熱装置によって加熱された後、高温羽口から炉内へ吹き込まれる。高温ガスの温度は800〜1100℃とすることが好ましく、820℃〜1000℃とすることがより好ましい。
本実施態様のフェロコークス製造装置では、高温羽口と同じ高さに排気口を設けているため、水平方向における温度差を効果的に低減し、その結果、製造されたフェロコークスの乾留の度合いがばらつくことを防止できる。また、炉壁にガス排出口を設けるため、炉の内部にガスを排気するための部材を設置する必要が無く、装置の構造が単純であるとともに、炉内における成型炭の移動が妨げられることもない。
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態におけるフェロコークス製造装置の正面概略図を図3に示す。この実施形態は、上記第1の実施の形態における高温羽口4と排気口5の両者を、上下2段に配置したものである。このように2段に高温羽口4を設けることによって、1段に設けた場合に比べて広い範囲を加熱することができ、より効率的に乾留を行うことができる。さらに本実施形態では、各段の高温羽口に対応する位置、すなわち、同じ高さに排気口を設けているため、水平方向における温度のばらつきを効果的に抑制することができる。
なお、この実施の形態においては高温羽口4と排気口5を、それぞれ上下2段に設けているが、3段以上に配置することも可能である。また、特許文献1、2に記載されているように、上段の吹き込み羽口を低温ガス吹き込み羽口(低温羽口)とすることもできる。その場合、前記低温羽口から吹き込まれるガスの温度は、350〜750℃とすることが好ましく、300〜700℃とすることがより好ましい。
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施形態におけるフェロコークス製造装置の正面概略図を図4に示す。本実施形態においては、上記第2の実施形態において2段に設けられていた排気口5を、1段に変更している。前記排気口5を設置する高さは、上段の高温羽口と下段の高温羽口の間の高さとすることが好ましく、本実施形態においては上段の高温羽口と下段の高温羽口の中央の高さとした。その際、前記排気口5の高さ方向における位置は、上段と下段のいずれの高温羽口のからも1.5m以内とした。
本実施形態では、高温羽口を2段に設けているため、高温羽口を1段のみ設ける場合に比べて広い範囲を加熱することができ、より効率的に乾留を行うことができる。そして、排気口5を、上段の高温羽口4と下段の高温羽口4の間に設けることにより、両方の高温羽口から吹き込まれたガスを炉外へ排気し、水平方向における温度のばらつきを効果的に抑制することができる。さらに、上記第2の実施形態のように排気口を2段に設ける場合に比べて、装置の構造を簡略化できるため、設備コストの面で有利である。
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施形態におけるフェロコークス製造装置の正面概略図を図5に、側面概略図を図6に、それぞれ示す。また、図7は、図5に示した装置のB−B面における水平断面概略図である。この実施形態では、竪型乾留炉本体を横方向に長い形状とし、その水平断面を図7に示したように長方形とする。炉本体が横方向に長いため、装入部2、高温羽口4、および冷却羽口6は、それぞれ横方向に複数、等間隔に設ける。
本実施形態では、炉内からガスを排気するための手段として、上記第1〜第3の実施形態における排気口に代えて、排気用パイプ10を使用する。前記排気用パイプ10は、炉の底部から炉長方向に垂直に設置されており、該排気用パイプ10の上端に設けられた吸気口11が、本発明におけるガス排出口として機能する。したがって、上記吸気口11の高さと高温羽口4の高さの差は1.5m以下とすることが好ましく、本実施形態では図5〜7に示したように両者を同じ高さとしている。
排気用パイプ10は炉内で高温にさらされるため、耐熱性材料からなるものであることが好ましい。前記耐熱性材料としては、例えば、耐熱ステンレス鋼、Ni基超合金、セラミックなど、各種公知の材料を使用することができる。
本実施形態のように吸気口11が上を向いている場合、炉内を下降してきた原料(成型炭)が吸気口11から排気用パイプ10に入り込んでしまう可能性がある。これを防止するために、排気用パイプの先端に、原料侵入防止手段を設ける。図5〜7には、前記原料侵入防止手段として、コーン状のカバー12を用いた場合を示している。カバー12は、吸気口11の上部を塞がないように排気用パイプ10の上端に取り付けられており、カバー12と吸気口11との隙間からガスが排気される。なお、前記原料侵入防止手段としては、原料の侵入を防止できる部材であればカバー12以外のものも使用することができる。その一例としては、原料を通さない程度に目が細かい網、メッシュ、穴あき板、多孔性材料などが挙げられる。
前記排気用パイプ10の形状は特に限定されず、吸気口11から吸い込んだガスを炉外へ排出できるものであればよいが、炉内における原料と乾留後のコークスの移動を阻害しないために、図5〜7に示したように垂直に設けることが好ましい。
吸気口11は、その設置高さが上記条件を満たしていればよく、水平方向における位置は特に限定されない。しかし、本実施形態では、水平面内における温度分布を均一にするという観点から、図7に示したように配置することとする。
図7に示した例では、竪型乾留炉本体の水平断面が長方形であり、前記長方形の1組の長辺に、4組の高温羽口4が、それぞれ向かい合わせに、前記長方形の長手方向に等間隔に配置されている。一方、吸気口11は、前記長方形の長手方向に、前記高温羽口と同じ間隔で5個配置されているが、その位置は、前記間隔の1/2だけ長辺方向にずらされている。また、前記長方形の短辺方向における吸気口11の位置は、中央とした。
本実施形態では、排気用パイプを用いるため、壁面に設けた排気口を用いる場合と異なり、任意の場所にガス排出口を設けることができる。そのため、竪型乾留炉本体が横方向に長い場合であっても、炉内に複数の吸気口を設け、効果的にガスの流れを制御することができる。特に、高温羽口と吸気口11を図7に示したように配置することによって、吸気口と、該吸気口に隣接する高温羽口との距離が等しくなるため、炉内の温度分布をより均一にすることができる。
本実施形態では、排気用パイプ10を一列に同一線上に配置するようにしたが、排気用パイプ10は、必要に応じて複数列を配置してもよい。また必ずしも同一線上に配置する必要は無く、必要に応じて適当な位置に配置してもよい。
(第5の実施の形態)
本発明の第5の実施形態におけるフェロコークス製造装置の正面概略図を図8に、側面概略図を図9に、それぞれ示す。本実施形態においては、上記第4の実施形態において竪型炉底部に炉頂方向に向けて設置されていた排気用パイプ10を、竪型炉の上方から炉底部の方向に垂直に設置する形態としている。それ以外の配置については、第4の実施形態と同様とした。
本実施形態によれば、排気用パイプを用いるため、任意の場所にガス排出口を設けることができ、炉内の温度分布を効果的に均一化できる。また、排気用パイプを炉の底部から炉長方向に垂直に設置する第4の実施形態の場合と異なり、吸気口11、すなわち、排気用パイプの先端が下方を向いているため、原料が排気用パイプの内部に入り込むことがない。したがって、原料侵入防止手段を設ける必要がなく、装置の構造を簡略化できる。
(第6の実施の形態)
本発明の第6の実施形態におけるフェロコークス製造装置の正面概略図を図10に示す。この実施形態は、上記第5の実施形態における高温羽口4を、上下2段に配置したものである。一方、排気用パイプ10の本数は第5の実施形態と同じであり、吸気口11を、上段の高温羽口4と下段の高温羽口4の中央の高さに設けた。前記吸気口11の高さは、上段と下段のいずれの高温羽口からも1.5m以内の位置とした。
本実施形態でも、排気用パイプ10を、必要に応じて複数列配置してもよい。また、必ずしも同一線上に配置する必要は無く、必要に応じて適当な位置に配置してもよい。
本実施形態では、高温羽口を2段に設けているため、高温羽口を1段のみ設ける場合に比べて広い範囲を加熱することができ、より効率的に乾留を行うことができる。そして、吸気口11を、上段の高温羽口4と下段の高温羽口4の間に設けることにより、両方の高温羽口から吹き込まれたガスの一部を成型炭層通過後に炉外へ排気し、水平方向における温度のばらつきを効果的に抑制することができる。
(実施例1)
次に、本発明の効果を示すために、竪型炉の操業を模擬した熱流体シミュレーションを実施した。まず、実施例1として、上記第1の実施の形態におけるフェロコークス製造装置(図1、2)のモデルにおけるシミュレーション結果を示す。なお、前記シミュレーションにおいては、成型炭が降下する竪型乾留炉本体の内部寸法を、幅1.8m×奥行き1.8m×高さ16mとし、高温羽口4と排気口5は同じ高さに設けられているものとした。高温羽口4からは850℃の高温ガスを、流量3,600Nm/hで吹き込む条件とした。また、排気口5からは、流量800Nm/hでガスを排気する条件(実施例1)と、ガスを一切排気しない条件(比較例1)でシミュレーションを行い、両者の結果を比較した。なお、排気口5からガスを排気する条件では、排気したガスを850℃に再加熱して高温羽口4へ循環させたため、高温羽口4からは合計4,400Nm/hでガスを吹き込むことになる。冷却羽口6からは50℃の冷風を、流量2,000Nm/hで吹き込む条件とした。また、装入部2からは5.4t/hの速度で成型炭を投入した。
上記実施例1の条件におけるシミュレーションの結果を図11に示す。この図は、定常状態に達した時点での、高温羽口高さの水平断面における炉内温度分布を示したものであり、色の薄い部分が高温であることを、色の濃い部分が低温であることを、それぞれ示している。
上記実施例1と比較例1における、高温部温度と低温部温度を表1に示す。ここで、前記高温部温度と低温部温度は、それぞれ、高温羽口高さの水平断面における最高温度と最低温度を表す。図11に示したように、高温羽口からの距離に応じて温度分布が生じているが、ガスの排気を行った実施例1では、排気口からガスの排気を行わなかった比較例1に比べて、低温部の温度が高くなっており、炉内における温度差が減少していることが分かる。
(実施例2)
同様に、実施例2として、上記第5の実施の形態のフェロコークス製造装置(図8、9)のモデルにおけるシミュレーションを行った。前記シミュレーションでは、成型炭が降下する竪型乾留炉本体の内部寸法を、幅7.2m×奥行き1.8m×高さ16mとした。また、高温羽口4からは850℃の高温ガスを、各羽口3,600Nm/h、合計14,400Nm/hの流量で吹き込む条件とした。また、排気用パイプ10の吸気口11からは、合計3,200Nm/hの流量でガスを排気する条件(実施例2)と、ガスを一切排気しない条件(比較例2)でシミュレーションを行い、両者の結果を比較した。なお、排気用パイプからガスを排気する条件では、排気したガスを高温羽口4へ循環させたため、高温羽口4からは合計17,600Nm/hでガスを吹き込むことになる。冷却羽口6からは50℃の冷風を、各羽口から2,000Nm/h、合計8,000Nm/hの流量で吹き込む条件とした。また、装入部2からは21.6t/hの速度で成型炭を投入した。
上記実施例2の条件におけるシミュレーションの結果を図12に示す。また、実施例2と比較例2における、高温部温度と低温部温度を表2に示す。高温羽口からの距離に応じて温度分布が生じているが、排気用パイプからガスの排気を行った実施例2では、ガスの排気を行わなかった比較例2に比べて、低温部の温度が高くなっており、炉内における温度差が減少していることが分かる。
1:竪型乾留炉本体
2:装入部
3:フェロコークス排出部
4:高温羽口
5:排気口(ガス排出口)
6:冷却羽口
7:耐火物
8:高温ガス
9:排気ガス
10:排気用パイプ
11:吸気口(ガス排出口)
12:カバー

Claims (7)

  1. 竪型乾留炉本体と、
    前記竪型乾留炉本体の第1の高さに設けられた、前記竪型乾留炉本体内へ高温ガスを吹き込むための少なくとも一つの高温羽口と、
    前記竪型乾留炉本体の第2の高さに設けられた、前記竪型乾留炉本体内のガスを前記高温羽口から水平方向に異なる位置で抜き出すための、前記竪型乾留炉本体の外部に連通する少なくとも一つのガス排出口とを有するフェロコークス製造装置。
  2. 前記第1の高さと第2の高さの差が1.5m以下である、請求項1に記載のフェロコークス製造装置。
  3. 前記ガス排出口が、前記竪型乾留炉本体の壁面に設けられた排気口である、請求項1または2に記載のフェロコークス製造装置。
  4. 前記竪型乾留炉本体の水平断面が、第1の対向する1組の壁面と、第2の対向する一組の壁面とによって画定される矩形であり、
    前記高温羽口が、前記第1の対向する1組の壁面のそれぞれに、少なくとも1つずつ設けられ、
    前記排気口が、前記第2の対向する1組の壁面のそれぞれに、少なくとも1つずつ設けられている、請求項3に記載のフェロコークス製造装置。
  5. 前記竪型乾留炉本体の内部に、少なくとも1つの排気用パイプを有し、
    前記ガス排出口が、前記排気用パイプの一端に設けられた吸気口であり、
    前記吸気口が前記排気用パイプを通じて前記竪型乾留炉の外部に連通している、請求項1または2に記載のフェロコークス製造装置。
  6. 前記竪型乾留炉本体の水平断面が長方形であり、
    前記長方形の1組の長辺に、少なくとも2組の前記高温羽口が、それぞれ向かい合って設けられており、
    少なくとも1つの前記吸気口が、前記長方形の短辺方向中央、かつ隣接する2組の前記高温羽口の前記長辺方向における中央に設けられている、請求項5に記載のフェロコークス製造装置。
  7. 前記竪型乾留炉本体の、前記第1の高さとは異なる第3の高さに設けられた、前記竪型乾留炉本体内へ高温ガスを吹き込むための少なくとも一つの高温羽口をさらに有し、
    前記第2の高さが、前記第1の高さと第3の高さの間であり、
    前記第3の高さと第2の高さの差が1.5m以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のフェロコークス製造装置。
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