JP2016150897A - 植物性原料由来の炭化物およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】揮発分が少なく、金属元素および/または非金属元素の含有量が十分に低減された植物性原料由来の炭化物を提供すること、およびそのような炭化物を比較的低い温度で製造することできる方法を提供すること。【解決手段】植物性原料を有機酸水溶液中に浸漬して植物性原料中の金属元素および/または非金属元素の含有量を低下させることにより得た炭素前駆体を、酸水溶液中で50〜150℃の温度において保持して金属元素および/または非金属元素の含有量をさらに低下させ、次いでその炭素前駆体を150〜350℃の温度において水熱炭化する。【選択図】なし
Description
本発明は、植物性原料由来の炭化物およびその製造方法に関する。
炭素質材料は、コンデンサー用電極、電解用電極、活性炭、担持体等として様々な用途に用いられており、今後更なる開発が期待されている。これらの炭素質材料は従来、石炭コークス、石炭または石油ピッチ、フラン樹脂またはフェノール樹脂等を原料として製造される。近年、化石燃料資源の使用は、地球環境に影響を与え、および埋蔵量の減少による価格高騰にも起因して、今後の使用が困難になることが予想されている。
そこで、籾殻や藁等の植物由来の材料を原料とした多孔質炭素材料が提案されている(特許文献1)。
しかしながら、特許文献1に記載の多孔質炭素材料は、植物由来の材料を窒素ガスやアルゴンガスといった不活性ガス雰囲気下や真空雰囲気下で予備炭素化処理および炭素化処理が行われることにより得られるものである。このような気相中での予備炭素化処理および炭素化処理では、植物由来の材料に含まれる一部の成分が揮発するため、高い回収率で炭化物を得ることは困難であった。また、特許文献1における植物由来の材料の予備炭素化処理は、400℃〜700℃の比較的高い温度にて行われるため、省エネルギーの観点から好ましいものではなかった。
また、植物性原料には、生物の生命活動維持に必要な種々の金属が含まれている。したがって、植物性原料由来の炭素材を電子材料として用いた場合、このような金属が不純物となり、電気的な障害が生じることが懸念される。また、水のろ過等に用いられる活性炭などの吸着剤では、吸着した物質と金属とが反応し、水溶性物質が形成され、水中へ再び放出される等の問題が生じる上に、炭化賦活時に、残留する金属により孔形成反応が加速され、必要以上に多孔化が進行する。さらに、触媒担持体においては、担持する触媒金属と含有不純物金属との反応により、目的とした粒径または組成で触媒成分を担持できない等の問題が生じる。
上述の特許文献1では、植物由来の材料から得られる多孔質炭素材料を酸またはアルカリで処理することにより炭化物中のケイ素成分を除去する方法が提案されている。
しかしながら、特許文献1において提案されている方法は、植物由来の材料を800℃〜1400℃にて炭化した後、酸またはアルカリで処理する方法であるため、金属分は炭化時に炭素と化合するため十分に除去されない。また、特許文献1に記載の方法では、炭素と化合後のケイ素を除去するために、フッ化水素酸がケイ素化合物に対して過剰量添加されているが、フッ化水素酸は、腐食性が高い毒劇物であり、およびマグネシウムやカルシウムについては十分に除去することができない。さらに、特許文献1の方法では、植物に由来する金属元素の含有量は、季節や地域により異なるため、工業原料として平滑化することが難しい等の問題があった。
また、植物性原料由来の炭素質材料に関し、植物由来の有機物を酸性溶液により液相脱灰する方法(特許文献2)、植物性原料を水で洗浄して植物性原料中に含有される金属成分を溶出除去する方法(特許文献3)、植物性原料または炭素化された植物性原料を水系溶媒中でマイクロ波加熱処理することにより、植物性原料または炭素化された植物性原料に含有される金属成分を溶出除去する方法(特許文献4)なども提案されている。
しかしながら、特許文献2に記載されている方法においては、有機酸を使用した場合、浸漬初期に有機酸水溶液中へ溶出する有機物により、有機酸とアルカリ土類金属および/または重金属との反応が阻害される。そのため、特許文献2に記載の方法では、マグネシウム、カルシウム、鉄については除去するのが困難である。また、塩酸等の強酸を用いて脱灰を行った場合には、脱灰後の植物由来の有機物に塩素等が残留しないように、脱灰後に多量の水で水洗を行わねばならない。
また、特許文献3および特許文献4には、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属および重金属を溶出除去することが記載されているものの、具体的にはカリウムの除去が確認されているのみである。また、洗浄に水を用いる特許文献3および特許文献4に記載の方法では、水に対する溶解度が十分に高くないアルカリ土類金属塩および重金属塩を十分に除去することができない。
比較的低い温度にて植物由来の炭化物を製造する方法として、ココナッツ繊維やユーカリ葉を150〜300℃の温度にて水熱炭化処理して炭化物を製造する方法(非特許文献1)、ポプラ材チップを脱イオン水中で220℃にて水熱処理する方法(非特許文献2)、へーゼルナッツ殻の粉末を脱イオン水中で250℃にて水熱処理する方法が提案されている(非特許文献3)。しかしながら、これらの方法では、含有酸素量が低く、および焼成の際に揮発する成分が少ない炭化物は得られない。
Zhengang Liu、外1名、「Upgrading of waste biomass by hydrothermal carbonization(HTC) and low temperature pyrolysis(LTP): A comparative evaluation」、Applied Energy、第114巻、2014年2月、第857〜864頁
Jan Stemann、外2名、「Hydrothermal carbonization: process water characterization and effects of water recirculation」、Bioresource Technology、第143巻、2013年6月、第139〜146頁
Ece Unur、外3名、「Nanoporous carbons from hydrothermally treated biomass as anode materials for lithium ion batteries」、Microporous and Mesoporous Materials、第174巻、2013年7月、第25〜33頁
本発明の目的は、揮発分が少なく、金属元素および/または非金属元素の含有量が十分に低減された植物性原料由来の炭化物を提供することであった。また、本発明の別の目的は、そのような炭化物を、比較的低い温度において高い回収率で製造することできる方法を提供することであった。
本発明者らは、植物性原料を有機酸水溶液中に浸漬して植物性原料中の金属元素および/または非金属元素の含有量を低下させることにより得た炭素前駆体を、酸水溶液中で50〜150℃の温度において保持して金属元素および/または非金属元素の含有量をさらに低下させ、次いでその炭素前駆体を150〜350℃の温度において水熱炭化することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明には、以下のものが含まれる。
[1]揮発分が70重量%以下であり、および含有酸素量が30%以上であり、金属元素Siの含有量に対する金属元素Kの含有量の比は0.6以下である、植物性原料由来の炭化物。
[2]植物性原料は椰子殻または珈琲豆である、[1]に記載の炭化物。
[3]植物性原料は椰子殻であり、および比表面積は400m2/g以上である、[1]に記載の炭化物。
[4]植物性原料は珈琲豆であり、および比表面積は10m2/g以上である、[1]に記載の炭化物。
[5]植物性原料を水熱炭化することにより得られる、[1]〜[4]のいずれかに記載の炭化物。
[6][1]〜[5]のいずれかに記載の炭化物を焼成することにより得られる炭素質材料。
[7][6]に記載の炭素質材料からなる酸吸着剤。
[8]植物性原料由来の炭化物を製造するための方法であって、
1)植物性原料を有機酸水溶液中に浸漬することにより、植物性原料中の金属元素および/または非金属元素の含有量を低下させた炭素前駆体を得る工程、
2)工程1)において得られた炭素前駆体を酸水溶液中で50〜150℃の温度において保持することにより、炭素前駆体中の金属元素および/または非金属元素の含有量をさらに低下させる工程、および
3)炭素前駆体を酸水溶液中で150〜350℃の温度において水熱炭化する工程
を含む、方法。
[1]揮発分が70重量%以下であり、および含有酸素量が30%以上であり、金属元素Siの含有量に対する金属元素Kの含有量の比は0.6以下である、植物性原料由来の炭化物。
[2]植物性原料は椰子殻または珈琲豆である、[1]に記載の炭化物。
[3]植物性原料は椰子殻であり、および比表面積は400m2/g以上である、[1]に記載の炭化物。
[4]植物性原料は珈琲豆であり、および比表面積は10m2/g以上である、[1]に記載の炭化物。
[5]植物性原料を水熱炭化することにより得られる、[1]〜[4]のいずれかに記載の炭化物。
[6][1]〜[5]のいずれかに記載の炭化物を焼成することにより得られる炭素質材料。
[7][6]に記載の炭素質材料からなる酸吸着剤。
[8]植物性原料由来の炭化物を製造するための方法であって、
1)植物性原料を有機酸水溶液中に浸漬することにより、植物性原料中の金属元素および/または非金属元素の含有量を低下させた炭素前駆体を得る工程、
2)工程1)において得られた炭素前駆体を酸水溶液中で50〜150℃の温度において保持することにより、炭素前駆体中の金属元素および/または非金属元素の含有量をさらに低下させる工程、および
3)炭素前駆体を酸水溶液中で150〜350℃の温度において水熱炭化する工程
を含む、方法。
本発明の植物性原料由来の炭化物は、揮発分が70重量%以下であるため、炭化物の焼成後、高い回収率で炭素質材料を得ることができる。また、本発明の植物性原料由来の炭化物は、含有酸素量が30%以上であり、比較的比表面積が大きいため、炭素質材料としたときに優れた酸吸着性を発揮することができる。さらに、本発明の植物性原料由来の炭化物は、金属元素Siの含有量に対する金属元素Kの含有量の比は0.6以下であるため、炭素質材料の原料として好適に用いることができる。
本発明は、植物性原料由来の炭化物に関するものである。本発明では、炭化物とは、植物性原料を炭素化することにより得られる物質であって、焼成により炭素質材料とすることができるものをいう。
植物性原料としては、椰子殻、珈琲豆および籾殻等が挙げられる。本発明では、入手可能性および金属元素の含有量の低減効果の観点から、椰子殻および珈琲豆が好ましい。また、本発明の炭化物は、1種または2種以上の植物性原料に由来するものであってよい。
椰子殻としては、特に限定されないが、ココ椰子、パーム椰子等の椰子殻が挙げられる。また、本発明では、燃料や活性炭等の原料としても一般に用いられる椰子殻チップと呼ばれる椰子殻を破砕したものが好ましい。
珈琲豆としては、珈琲豆の産地、品種にかかわらず任意の珈琲豆であってよい。珈琲豆は、飲料としての珈琲を抽出する前の珈琲豆であってよく、飲料としての珈琲を抽出した後の一般的に珈琲粕と称される抽出残渣であってもよい。
本発明の炭化物は、揮発分が炭化物の全重量を基準として70重量%以下である。したがって、本発明の植物性原料由来の炭化物は、炭素分を多く含み、焼成において揮発する成分が少ないため、高い回収率で炭素質材料を得ることができる。本発明の炭化物は、好ましくは揮発分が炭化物の全重量を基準として70重量%以下、より好ましくは69重量%以下である。また、本発明の炭化物の揮発分の下限値は、特に限定されないが、少ないほど好ましく、例えば50重量%以上などである。本発明では、揮発分とは、植物性原料由来の炭化物を焼成した場合に揮発する成分、例えばH2、CO、CO2等のことである。揮発分は、例えば熱重量分析(TG)装置により測定することができる。
また、本発明の炭化物は、含有酸素量が30%以上である。本発明では、含有酸素量とは、例えば炭化物を黒鉛坩堝中において真空中またはアルゴンガス、窒素ガス、Heガス等の不活性ガス雰囲気中で、炭化物を2200℃付近で熱処理し、黒鉛と炭化物に含まれる酸素とが反応することで発生するCOを定量し、熱処理前の炭化物の総量に対する熱処理により発生したCOに含まれる酸素量の割合として求めることができる。本発明では、含有酸素量は、例えば酸素・窒素・水素分析装置(堀場製作所製EMGA−930)を用いて測定することができる。ここで、含有酸素量は、2200℃付近で黒鉛との接触によりCOを発生し得るカルボキシル基、フェノール基、ケトン類等の含酸素官能基の炭化物中の総量を示す指標であると言える。本発明の植物性原料由来の炭化物は、含有酸素量が30%以上であり、含酸素官能基を多く含むため、炭素質材料としたとき優れた酸吸着性を発揮することが可能となる。本発明の炭化物は、含有酸素量が好ましくは34%以上、より好ましくは36%以上である。また、本発明の炭化物の揮発分の上限値は、特に限定されないが、例えば50%以下などである。
本発明の炭化物は、炭化物中の金属元素Siの含有量に対する金属元素Kの含有量の比が0.6以下である。したがって、本発明の植物性原料由来の炭化物は、電子部品、活性炭や触媒用担持体等の多孔体などの種々の用途に用いる炭素質材料の原料として好ましく用いることができる。また、本発明の炭化物中の金属元素Siの含有量に対する金属元素Kの含有量の比の下限値は、特に限定されないが、低いほど好ましく、例えば0.01以上などである。本発明では、炭化物中の金属元素の含有量は、蛍光X線分析装置(例えば、株式会社リガク製ZSX Primusμ)を用いて測定することができる。
植物性原料が椰子殻である場合、その炭化物の比表面積は、好ましくは400m2/g以上、より好ましくは450m2/g以上、さらに好ましくは490m2/g以上である。また、椰子殻に由来する炭化物の比表面積の上限値は、特に限定されないが、例えば1000m2/g以下等である。本発明では、比表面積は、BET法に基づいて測定される比表面積のことである。
また、植物性原料が珈琲豆である場合、その炭化物の比表面積は、好ましくは10m2/g以上、より好ましくは20m2/g以上、さらに好ましくは30m2/g以上である。また、珈琲豆に由来する炭化物の比表面積の上限値は、特に限定されないが、例えば200m2/g以下等である。
本発明の植物性原料由来の炭化物は、植物性原料を有機酸水溶液中に浸漬して金属元素および/または非金属元素の含有量を低下させることにより得た炭素前駆体を、50〜150℃の温度にて酸水溶液中に保持して金属元素および/または非金属元素の含有量をさらに低下させ、次いでその炭素前駆体を酸水溶液中で150〜350℃の温度にて水熱炭化することにより得られる。
したがって、本発明は、
1)植物性原料を有機酸水溶液中に浸漬することにより、植物性原料中の金属元素および/または非金属元素の含有量を低下させた炭素前駆体を得る工程、
2)工程1)において得られた炭素前駆体を酸水溶液中で50〜150℃の温度において保持することにより、炭素前駆体中の金属元素および/または非金属元素の含有量をさらに低下させる工程、および
3)炭素前駆体を酸水溶液中で150〜350℃の温度において水熱炭化する工程
を含む植物性原料由来の炭化物の製造方法をも提供する。
1)植物性原料を有機酸水溶液中に浸漬することにより、植物性原料中の金属元素および/または非金属元素の含有量を低下させた炭素前駆体を得る工程、
2)工程1)において得られた炭素前駆体を酸水溶液中で50〜150℃の温度において保持することにより、炭素前駆体中の金属元素および/または非金属元素の含有量をさらに低下させる工程、および
3)炭素前駆体を酸水溶液中で150〜350℃の温度において水熱炭化する工程
を含む植物性原料由来の炭化物の製造方法をも提供する。
本発明では、植物性原料を有機酸水溶液中に浸漬することにより、植物性原料中の金属元素および/または非金属元素の含有量を低下させた炭素前駆体を得ることを、以下、脱灰とも称する。また、本発明では、炭素前駆体とは、炭化する前の植物由来物質であって、脱灰により得られるものをいう。
ここで、一般に、植物は、カリウム、マグネシウムおよびカルシウム等のアルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素およびリン等の非金属元素を多く含有する。しかしながら、これらの金属元素を含有する植物性原料を炭化すると、炭化の際に、炭素材として必要な炭素質が分解されるおそれがある。また、リン等の非金属元素は酸化し易いので、炭化物の表面の酸化度が変化し、炭化物の性状が大きく変化するため、好ましくない。
また、植物性原料を炭化した後に行う炭化物の精製処理では、炭化物からリン、カルシウムおよびマグネシウムを十分に除去することは困難である。さらに、炭化物中の金属元素および非金属元素の含有量によって、炭化物の精製処理に要する時間や精製処理後の炭化物中の金属元素および/または非金属元素の残存量は大きく異なる。したがって、植物性原料中の金属元素および/または非金属元素の含有量は、炭化前に十分に除去しておくことが好ましい。
このような観点から、本発明の植物性原料由来の炭化物の製造方法は、植物性原料を脱灰することにより炭素前駆体とする工程を含んでなる。
植物性原料として椰子殻チップを用いる場合、椰子殻チップの大きさの上限としては、好ましくは椰子殻を1/2程度に割ったもの、より好ましくは1/4程度に割ったもの、さらに好ましくは1/8程度に割ったもの、特に好ましくは1/10程度に割ったものである。また、椰子殻の大きさの下限としては、好ましくは2mm角程度に粉砕したもの、より好ましくは5mm角程度に粉砕したもの、さらに好ましくは10mm角程度に粉砕したものである。上記の上限および下限の組合わせの範囲内であれば、脱灰により金属元素および/または非金属元素を効率的に低減させることができるため好ましい。本発明では、上記の上限および下限の範囲内の大きさの椰子殻チップであれば、異なった大きさの椰子殻チップを組み合わせて用いることができる。
植物性原料として珈琲豆を用いる場合、珈琲豆の大きさの上限としては、好ましくは珈琲豆を1/2程度に割ったもの、より好ましくは5mm以下に粗粉砕したものである。また、本発明において植物性原料として用いる珈琲豆の大きさの下限としては、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは1mm以上である。本発明では、上記の上限および下限の任意の組合わせの範囲内で用いてよく、種々の大きさに粉砕された珈琲豆を混合して用いてもよい。とりわけ、0.1mm〜5mm程度に粉砕されたものは、脱灰により金属元素および/または非金属元素を効率的に低減させることができるため好ましい。
本発明では、上記脱灰において、植物性原料からアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素および/または非金属元素を除去するために有機酸水溶液を用いる。有機酸は、リンや硫黄、ハロゲン等の不純物源となる元素を含まないことが好ましい。有機酸がリンや硫黄、ハロゲン等の元素を含まない場合には、脱灰後の水洗を省略し、有機酸が残存する植物性原料を炭化した場合であっても、炭素材として好適に用いることできる炭化物が得られるため有利である。また、使用後の有機酸の廃液処理を特別な装置を用いることなく比較的容易に行うことができるため有利である。
有機酸の例としては、飽和カルボン酸、例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸、蓚酸、酒石酸、クエン酸等、不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸等、芳香族カルボン酸、例えば安息香酸、フタル酸、ナフトエン酸等が挙げられる。入手可能性、酸性度による腐食および人体への影響の観点から、酢酸、蓚酸およびクエン酸が好ましい。
本発明では、有機酸は、溶出する金属化合物の溶解度、廃棄物の処理、環境適合性等の観点から、水性溶液と混合して有機酸水溶液として用いる。水性溶液としては、水、水と水溶性有機溶媒との混合物などが挙げられる。水溶性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロピレングリコール、エチレングリコールなどのアルコールが挙げられる。
有機酸水溶液中の酸の濃度としては、特に限定されるものではなく、用いる酸の種類に応じて濃度を調節して用いることができる。本発明では、通常、有機酸水溶液の総量を基準として0.001重量%〜20重量%、より好ましくは0.01重量%〜18重量%、さらに好ましくは0.02重量%〜15重量%の範囲の酸濃度の有機酸水溶液を用いる。酸濃度が上記範囲内であれば、適切な金属元素および/または非金属元素の溶出速度が得られるため実用的な時間で脱灰を行うことが可能となる。また、植物性原料における酸の残留量が少なくなるので、その後の製品への影響も少なくなる。
有機酸水溶液のpHは、好ましくは3.5以下、好ましくは3以下である。有機酸水溶液のpHが上記の値を超えない場合には、金属元素および/または非金属元素の有機酸水溶液への溶解速度が低下することなく、金属元素および/または非金属元素の除去を効率的に行うことができる。
植物性原料を浸漬する際の有機酸水溶液の温度は、特に限定されないが、好ましくは20℃〜98℃、より好ましくは25℃〜60℃、さらに好ましくは30℃〜40℃の範囲である。植物性原料を浸漬する際の有機酸水溶液の温度が、上記範囲であれば、使用する酸の分解が抑制され、実用的な時間での脱灰の実施が可能となる金属元素および/または非金属元素の溶出速度が得られるため好ましい。また、特別な装置を用いずに脱灰を行うことができるため好ましい。さらに、本発明では、脱灰を室温で行うこともできる。この場合、加熱装置が不要となることおよび安全性の観点から好ましい。
本発明では、植物性原料を有機酸水溶液中に浸漬することにより、植物性原料中の金属元素および/または非金属元素の含有量を低下させた炭素前駆体を得る工程の間、有機酸水溶液の更新を少なくとも1回行うことができる。有機酸水溶液の更新を行う方法としては、植物性原料に、有機酸水溶液を連続的に添加し、所定の時間滞留させ、抜き取りながら浸漬を行う方法でも、植物性原料を有機酸水溶液に浸漬し、所定の時間滞留させ、脱液した後、新たに有機酸水溶液を添加して浸漬−脱液を繰り返す方法であっても構わない。また、有機酸水溶液の全部を更新する方法であってよく、有機酸水溶液の一部を更新する方法であってもよい。
植物性原料を有機酸水溶液に浸漬する時間としては、用いる酸に応じて適宜調節することができる。本発明では、浸漬する時間は、経済性および脱灰効率の観点から、通常0.1〜100時間、好ましくは0.2〜80時間、より好ましくは0.5〜50時間の範囲である。
有機酸水溶液の重量に対する浸漬する植物性原料の重量の割合は、用いる有機酸水溶液の種類、濃度および温度等に応じて適宜調節することが可能であり、通常0.1重量%〜200重量%、好ましくは1重量%〜150重量%、より好ましくは1.5重量%〜120重量%の範囲である。上記範囲内であれば、有機酸水溶液に溶出した金属元素および/または非金属元素が有機酸水溶液から析出しにくく、植物性原料への再付着が抑制されるため好ましい。また、上記範囲内であれば、容積効率が適切となるため経済的観点から好ましい。
脱灰を行う雰囲気としては、特に限定されず、浸漬に使用する方法に応じて異なっていてよい。本発明では、脱灰は通常、大気雰囲気中で行う。
これらの操作は、好ましくは1回〜5回、より好ましくは1回〜3回繰り返して行うことができる。浸漬−脱液を繰り返す場合は、通常2回〜8回、好ましくは3回〜5回繰り返して行うことができる。本発明では、脱灰後、必要に応じて洗浄工程および/または乾燥工程を行い得る。
本発明では、炭素前駆体の水熱炭化を酸水溶液中で行う。これにより、本発明では、炭素前駆体の水熱炭化を行う前に、反応器中において、炭素前駆体を酸水溶液中で50〜150℃の温度において保持することにより、炭素前駆体中の金属元素および/または非金属元素の含有量をさらに低下させることが可能となる。ここで、炭素前駆体を酸水溶液中で50〜150℃の温度において保持することにより、炭素前駆体中の金属元素および/または非金属元素の含有量をさらに低下させることを、以下、炭化前処理とも称する。
酸水溶液としては、有機酸または無機酸を水に添加したものを用いることができる。本発明では、リンや硫黄、ハロゲン等の不純物源となる元素を含まない有機酸が好ましい。有機酸がリンや硫黄、ハロゲン等の元素を含まない場合には、脱灰後の水洗を省略し、有機酸が残存する植物性原料を炭化した場合であっても、炭素材として好適に用いることできる炭化物が得られるため有利である。また、使用後の有機酸の廃液処理を特別な装置を用いることなく比較的容易に行うことができるため有利である。
有機酸の例としては、飽和カルボン酸、例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸、蓚酸、酒石酸、クエン酸等、不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸等、芳香族カルボン酸、例えば安息香酸、フタル酸、ナフトエン酸等が挙げられる。有機酸としては、入手可能性、酸性度による腐食および人体への影響の観点から、酢酸、蓚酸およびクエン酸が好ましい。
無機酸の例としては、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウ酸等が挙げられる。無機酸としては、金属除去の観点から、塩酸が好ましい。
炭化前処理は、50〜150℃、好ましくは70℃〜130℃、より好ましくは90℃〜110℃の温度において酸水溶液中に炭素前駆体を保持することにより行う。上記範囲の温度であれば、使用する酸の分解が抑制され、実用的な時間での脱灰の実施が可能となる金属元素および/または非金属元素の溶出速度が得られるため好ましい。
また、加熱速度としては、特に限定されるものではなく、加熱の方法により異なるが、好ましくは1℃/分〜100℃/分、より好ましくは1℃/分〜60℃/分である。加熱速度が上記範囲内であれば、用いる機器の稼働時間が適切であり、かつ金属元素および非金属元素の酸水溶液中への溶解が良好に進行するため好ましい。
酸水溶液中の酸の濃度としては、特に限定されるものではなく、用いる酸の種類に応じて濃度を調節して用いることができる。本発明では、通常、酸水溶液の総量を基準として0.001重量%〜20重量%、より好ましくは0.01重量%〜18重量%、さらに好ましくは0.02重量%〜15重量%の範囲の酸濃度の酸水溶液を用いる。酸濃度が上記範囲内であれば、適切な金属元素および/または非金属元素の溶出速度が得られる。また、炭素前駆体における酸の残留量が少なくなるので、その後の製品への影響も少なくなる。
酸水溶液のpHは、好ましくは3.5以下、より好ましくは3以下である。酸水溶液のpHが上記の値を超えない場合には、金属元素および/または非金属元素の酸水溶液への溶解速度が低下することなく、金属元素および/または非金属元素の除去を効率的に行うことができる。
炭素前駆体を酸水溶液中で保持する時間としては、用いる酸に応じて適宜調節することができる。本発明では、炭素前駆体を酸水溶液中に保持する時間は、金属低減率および経済性の観点から、通常0.1〜100時間、好ましくは0.2〜80時間、より好ましくは0.5〜50時間の範囲である。
酸水溶液の重量に対する浸漬する炭素前駆体の重量の割合は、用いる有機酸水溶液の種類、濃度および温度等に応じて適宜調節することが可能であり、通常0.1重量%〜200重量%、好ましくは1重量%〜150重量%、より好ましくは1.5重量%〜120重量%の範囲である。上記範囲内であれば、酸水溶液に溶出した金属元素および/または非金属元素が酸水溶液から析出しにくく、炭素前駆体への再付着が抑制されるため好ましい。また、上記範囲内であれば、容積効率が適切となるため経済的観点から好ましい。
炭化前処理を行う際の反応器中の圧力は、特に限定されないが、0.1MPa〜1.0MPa、好ましくは0.1MPa〜0.5MPa、より好ましくは0.1MPa〜0.2MPaである。上記範囲の圧力であれば、酸水溶液に溶出した金属元素および/または非金属元素が酸水溶液から析出しにくく、炭素前駆体への再付着が抑制されるため好ましい。
次いで、酸水溶液中で150〜350℃の範囲の温度において炭素前駆体の水熱炭化を行う。これにより、植物性原料中の金属元素および/または非金属元素の含有量を低下させながら植物性原料の炭化を行うことが可能となる。また、植物性原料の水熱炭化を酸水溶液中で行うことにより、水中に溶出した有機分についても炭素化することができるため、高い回収率で炭化物が得られることとなる。また、植物性原料を、150〜350℃の比較的低い温度にて炭素化することができる。さらに、揮発分が少なく、含有酸素量が高く、比表面積の増加した炭化物を製造することができる。ここで、揮発分が少ない炭化物を製造できる理由は定かではないが、水熱炭化では、植物性原料中の低分子有機分が揮発せずに炭素分とともに残るため、強固な炭化物となるためであると考えられる。また、含有酸素量が高い炭化物を製造できる理由についても定かではないが、水熱炭化では、植物性原料中の酸素官能基が分解されにくい化学構造、例えばエーテル基やキノン等となるためであると考えられる。
酸水溶液は、炭化前処理に用いたものをそのまま用いることができるし、または一部若しくは全部を更新することもできる。また、炭化前処理に用いた酸水溶液とは異なった種類、濃度、pHの酸水溶液へ交換することもできる。本発明では、炭素前駆体から溶出した成分の炭化が行える点や製造コストの点から炭化前処理に用いたものをそのまま用いることが好ましい。
本発明では、酸水溶液中での炭素前駆体の水熱炭化は、150〜350℃の温度において行う。150℃未満の温度では、炭化が十分に進行せず、炭化物が得られないおそれがある。350℃を超える温度では、熱分解が進行し、含有酸素量や回収率が低減するおそれがある。本発明では、水熱炭化は、好ましくは160℃〜340℃、より好ましくは170℃〜330℃、さらに好ましくは180℃〜320℃の範囲で行う。
また、加熱速度としては、特に限定されるものではなく、加熱の方法により異なるが、好ましくは1℃/分〜60℃/分、より好ましくは1℃/分〜30℃/分である。加熱速度が上記範囲内であれば、炭化時の縮合が進行し、良好な炭化物の回収率が得られるため好ましい。また、用いる機器の稼働時間が適切なものとなるため、経済的観点から好ましい。
水熱炭化を行う間の反応器中の圧力は、好ましくは0.1MPa〜10MPa、より好ましくは0.5MPa〜7MPa、さらに好ましくは0.6MPa〜5MPaである。上記範囲の圧力であれば、炭化時の縮合が進行し、良好な炭化物の回収率が得られるため好ましい。
水熱炭化を行う時間は、水熱炭化を行う温度や圧力などに応じて適宜調節することができる。本発明では、10分〜300分程度であればよく、好ましくは30分〜180分程度行えばよい。
本発明では、炭素前駆体を酸水溶液中で150〜350℃の温度において水熱炭化する工程を行った後、必要に応じて洗浄工程および/または乾燥工程を行うことができる。
このようにして得られた炭化物は、カリウムを好ましくは300ppm以下、より好ましくは150ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下の量で含有する。炭化物中のカリウムの含有量が上記含有量以下であれば、炭素質材料の原料として好適に用いることができる。
椰子殻由来の炭化物は、マグネシウムを好ましくは21ppm以下の量で含有する。
椰子殻由来の炭化物は、カルシウムを好ましくは60ppm以下、より好ましくは55ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下の量で含有する。
椰子殻由来の炭化物は、リンを好ましくは40ppm以下、より好ましくは39ppm以下、さらに好ましくは38ppm以下の量で含有する。
椰子殻由来の炭化物は、カルシウムを好ましくは60ppm以下、より好ましくは55ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下の量で含有する。
椰子殻由来の炭化物は、リンを好ましくは40ppm以下、より好ましくは39ppm以下、さらに好ましくは38ppm以下の量で含有する。
珈琲豆由来の炭化物は、マグネシウムを好ましくは180ppm以下、より好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは40ppm以下の量で含有する。
珈琲豆由来の炭化物は、カルシウムを好ましくは500ppm以下、より好ましくは350ppm以下、さらに好ましくは200ppm以下の量で含有する。
珈琲豆由来の炭化物は、リンを好ましくは450ppm以下、より好ましくは350ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下の量で含有する。
珈琲豆由来の炭化物は、カルシウムを好ましくは500ppm以下、より好ましくは350ppm以下、さらに好ましくは200ppm以下の量で含有する。
珈琲豆由来の炭化物は、リンを好ましくは450ppm以下、より好ましくは350ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下の量で含有する。
炭化物中の各金属元素および/または非金属元素の含有量の下限値は、特に限定されず、少ないほど好ましく、より好ましくは、炭化物中に各金属元素および/または非金属元素が含まれないことである。炭化物中の各金属元素および/または非金属元素の含有量は、蛍光X線分析装置(例えば、株式会社リガク製ZSX Primusμ)を用いて測定することができる。以下に説明する金属元素/非金属元素含有量の測定に従って求めた値である。
本発明の植物由来の炭化物は、焼成を行うことにより炭素質材料が得られる。
焼成における加熱温度としては、特に限定されるものではなく、250℃〜1000℃の範囲で行うことができる。高すぎる温度では、結晶化により炭素骨格が剛直化し、様々な電子材料に用いる炭素質材料として好ましくない。また、低すぎる温度では、蓄熱発火の可能性が高く、また空気中の酸素により容易に酸化され保存安全性が低くなる問題がある。焼成は、好ましくは270℃〜750℃の範囲、より好ましくは280℃〜700℃の範囲、更に好ましくは400〜650℃の範囲で行う。上記範囲で焼成することは、得られた炭素質材料の酸化等による変質の抑制、保存安定性確保の観点から好ましい。
また、加熱速度としては、特に限定されるものではなく、加熱の方法により異なるが、好ましくは1℃/分〜100℃/分、より好ましくは1℃/分〜60℃/分である。加熱速度が上記範囲内であれば、炭化時の縮合が進行し、良好な炭素質材料の回収率が得られるため好ましい。また、用いる機器の稼働時間が適切なものとなるため、経済的観点から好ましい。
焼成における温度制御のパターンとしては、所望の温度にまで一気に昇温することもできるし、250〜400℃の範囲で一旦温度を維持し、再び昇温して所望の温度まで昇温することもできる。上記範囲内で一旦温度を維持することは、炭化時の縮合を容易に進め、炭化率、炭素密度および炭素質材料の回収率の向上に寄与する場合がある。
焼成における最高温度での保持時間は、特に限定されないが、通常、10分〜300分程度保持すればよく、好ましくは30分〜240分程度保持すればよい。
焼成を行う雰囲気としては、不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましく、窒素雰囲気中で行うことがより好ましい。焼成を行う間、酸化による炭素質材料の構造変化および酸化分解助長による炭素質材料の回収率低下を回避し易くするために、酸化性ガス、即ち酸素の存在は、好ましくは1容積%以下、より好ましくは0.5容積%以下である。
焼成を行う際の不活性ガス気流は特に限定されるものではなく、通常0.001メートル/秒〜1メートル/秒の範囲であればよい。
焼成後の取り出し温度としては、空気中の酸素により酸化されない温度であれば特に限定されるものではなく、通常200℃以下、より好ましくは100℃以下で空気中に取り出すことが好ましい。
焼成の方法としては、特に限定されるものではなく、バッチ式および連続式の何れの方式でもよく、外熱式および内熱式の何れの方式でもよい。
炭素質材料を製造した後、必要に応じて、除金属工程、粉砕工程および/またはさらなる焼成工程を実施することができる。しかしながら、本発明の方法により精製した炭素前駆体を用いて炭化物を製造した場合には、精製工程において局所的に高い濃度の金属成分が十分に除去されるため、さらなる除金属工程を省略することができる。
このようにして得られた炭素質材料は、酸素吸収材、水ろ過用活性炭や消臭用活性炭等の多孔体、触媒用担持体等として好ましく用いることができる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
[揮発分の測定]
炭化物の揮発分は、熱重量分析(TG)装置(セイコーインスツル株式会社製TG−DTA6300)を用いて、N2雰囲気下、50℃から1000℃まで昇温しながら炭化物を加熱し、1000℃到達時の炭化物の重量減少率として算出した。
炭化物の揮発分は、熱重量分析(TG)装置(セイコーインスツル株式会社製TG−DTA6300)を用いて、N2雰囲気下、50℃から1000℃まで昇温しながら炭化物を加熱し、1000℃到達時の炭化物の重量減少率として算出した。
[含有酸素量の測定]
炭化物の含有酸素量は酸素・窒素・水素分析装置(堀場製作所製EMGA−930)を用いて、2200℃まで昇温したときに発生する一酸化炭素から算出した。詳細には、Heガス雰囲気下、黒鉛坩堝に試料を入れ、出力4.0kWの高周波を流し、黒鉛坩堝ごと2200℃まで昇温する。この際、試料中の酸素成分が黒鉛と反応することで発生する一酸化炭素を、赤外線吸収法により検出することで、含有酸素量を測定した。
炭化物の含有酸素量は酸素・窒素・水素分析装置(堀場製作所製EMGA−930)を用いて、2200℃まで昇温したときに発生する一酸化炭素から算出した。詳細には、Heガス雰囲気下、黒鉛坩堝に試料を入れ、出力4.0kWの高周波を流し、黒鉛坩堝ごと2200℃まで昇温する。この際、試料中の酸素成分が黒鉛と反応することで発生する一酸化炭素を、赤外線吸収法により検出することで、含有酸素量を測定した。
[比表面積の測定]
炭化物の比表面積は、ガス吸着装置(日本ベル株式会社製Belsorp−miniII)を用いて、77KでのN2ガス吸着を行うことで得られる、吸着等温線を用いて、BET法により解析を行うことにより算出した。
炭化物の比表面積は、ガス吸着装置(日本ベル株式会社製Belsorp−miniII)を用いて、77KでのN2ガス吸着を行うことで得られる、吸着等温線を用いて、BET法により解析を行うことにより算出した。
[金属元素および非金属元素の含有量の測定]
植物性原料および炭化物中の金属元素および非金属元素の含有量は、蛍光X線分析装置(株式会社リガク製ZSX Primusμ)を用いて評価した。
[金属元素および非金属元素の残留率]
炭化物中の金属元素および非金属元素の残留率は、植物性原料に含まれる金属元素および非金属元素の含有量に対する炭化物中の金属元素および非金属元素の含有量の割合として算出した。
植物性原料および炭化物中の金属元素および非金属元素の含有量は、蛍光X線分析装置(株式会社リガク製ZSX Primusμ)を用いて評価した。
[金属元素および非金属元素の残留率]
炭化物中の金属元素および非金属元素の残留率は、植物性原料に含まれる金属元素および非金属元素の含有量に対する炭化物中の金属元素および非金属元素の含有量の割合として算出した。
[表面観察]
実施例1および比較例1において得られた炭化物の表面を走査型電子顕微鏡(キーエンス社製VE−8800)にて観察した。加速電圧は10kVとし、二次電子検出器にて観察を行った。
実施例1および比較例1において得られた炭化物の表面を走査型電子顕微鏡(キーエンス社製VE−8800)にて観察した。加速電圧は10kVとし、二次電子検出器にて観察を行った。
実施例1
撹拌機および温度コントローラーを装着したフラスコ中に、約2mm角の椰子殻チップ(フィリピン産)100gおよび10重量%クエン酸水溶液(pH3.4)233gを投入し、撹拌しながら、95℃に加温し、3時間加熱した後、室温まで冷却し、ろ過により脱液した。この操作を2回繰り返し、脱灰を行った。このようにして脱灰した椰子殻を真空1Torr下、80℃で24時間乾燥した。次に脱灰した椰子殻チップ25gを、反応器(ステンレス製耐圧容器)中において、10重量%クエン酸水溶液(pH3.4)78gに浸漬した後、3℃/分の加熱速度にてクエン酸水溶液を100℃に加温し30分間保持した。その後、2℃/分の加熱速度にてクエン酸水溶液を250℃へ加温し、30分間水熱炭化を行った。反応器内の圧力は4.2MPaまで上昇した。その後、自然冷却にて60℃以下になったところで取り出した。炭化物の回収率は65.2%であった。
撹拌機および温度コントローラーを装着したフラスコ中に、約2mm角の椰子殻チップ(フィリピン産)100gおよび10重量%クエン酸水溶液(pH3.4)233gを投入し、撹拌しながら、95℃に加温し、3時間加熱した後、室温まで冷却し、ろ過により脱液した。この操作を2回繰り返し、脱灰を行った。このようにして脱灰した椰子殻を真空1Torr下、80℃で24時間乾燥した。次に脱灰した椰子殻チップ25gを、反応器(ステンレス製耐圧容器)中において、10重量%クエン酸水溶液(pH3.4)78gに浸漬した後、3℃/分の加熱速度にてクエン酸水溶液を100℃に加温し30分間保持した。その後、2℃/分の加熱速度にてクエン酸水溶液を250℃へ加温し、30分間水熱炭化を行った。反応器内の圧力は4.2MPaまで上昇した。その後、自然冷却にて60℃以下になったところで取り出した。炭化物の回収率は65.2%であった。
実施例2
実施例1において得られた脱灰した椰子殻チップ25gを、反応器中において、10重量%酢酸水溶液(pH2.8)78gを投入し、脱灰した椰子殻チップを酢酸水溶液に浸漬した後、3℃/分の加熱速度にて酢酸水溶液(pH2.8)を100℃に加温し30分間保持した。その後、2℃/分の加熱速度にて酢酸水溶液を250℃に加温し、30分間水熱炭化を行った。反応器内の圧力は4.1MPaまで上昇した。その後、自然冷却にて60℃以下になったところで取り出した。炭化物の回収率は58.4%であった。
実施例1において得られた脱灰した椰子殻チップ25gを、反応器中において、10重量%酢酸水溶液(pH2.8)78gを投入し、脱灰した椰子殻チップを酢酸水溶液に浸漬した後、3℃/分の加熱速度にて酢酸水溶液(pH2.8)を100℃に加温し30分間保持した。その後、2℃/分の加熱速度にて酢酸水溶液を250℃に加温し、30分間水熱炭化を行った。反応器内の圧力は4.1MPaまで上昇した。その後、自然冷却にて60℃以下になったところで取り出した。炭化物の回収率は58.4%であった。
実施例3
撹拌機および温度コントローラーを装着したフラスコ中に、珈琲豆(アラビカ種)100gおよび10重量%クエン酸水溶液(pH3.4)233gを投入し、撹拌しながら、95℃に加温し、3時間加熱した後、室温まで冷却し、ろ過により脱液した。この操作を2回繰り返し、脱灰を行った。このようにして脱灰した珈琲豆を真空1Torr下、80℃で24時間乾燥した。次に脱灰した珈琲豆25gを、反応器(ステンレス製耐圧容器)中において10重量%クエン酸水溶液(pH3.4) 78gに浸漬した後、3℃/分の加熱速度にてクエン酸水溶液を100℃に加温し30分間保持した。その後、2℃/分の加熱速度にてクエン酸水溶液を250℃に加温し、30分間水熱炭化を行った。反応器内の圧力は4.2MPaまで上昇した。その後、自然冷却にて60℃以下になったところで取り出した。炭化物の回収率は68.7%であった。
撹拌機および温度コントローラーを装着したフラスコ中に、珈琲豆(アラビカ種)100gおよび10重量%クエン酸水溶液(pH3.4)233gを投入し、撹拌しながら、95℃に加温し、3時間加熱した後、室温まで冷却し、ろ過により脱液した。この操作を2回繰り返し、脱灰を行った。このようにして脱灰した珈琲豆を真空1Torr下、80℃で24時間乾燥した。次に脱灰した珈琲豆25gを、反応器(ステンレス製耐圧容器)中において10重量%クエン酸水溶液(pH3.4) 78gに浸漬した後、3℃/分の加熱速度にてクエン酸水溶液を100℃に加温し30分間保持した。その後、2℃/分の加熱速度にてクエン酸水溶液を250℃に加温し、30分間水熱炭化を行った。反応器内の圧力は4.2MPaまで上昇した。その後、自然冷却にて60℃以下になったところで取り出した。炭化物の回収率は68.7%であった。
実施例4
実施例3において得られた脱灰した珈琲豆25gを、反応器(ステンレス製耐圧容器)中において10重量%酢酸水溶液(pH2.8)78gに浸漬した後、3℃/分の加熱速度にて酢酸水溶液(pH2.8)を100℃に加温し30分間保持した。その後、2℃/分の加熱速度にて酢酸水溶液の温度を250℃へ上昇し、30分間水熱炭化を行った。反応器内の圧力は4.1MPaまで上昇した。その後、自然冷却にて60℃以下になったところで取り出した。炭化物の回収率は59.5%であった。
実施例3において得られた脱灰した珈琲豆25gを、反応器(ステンレス製耐圧容器)中において10重量%酢酸水溶液(pH2.8)78gに浸漬した後、3℃/分の加熱速度にて酢酸水溶液(pH2.8)を100℃に加温し30分間保持した。その後、2℃/分の加熱速度にて酢酸水溶液の温度を250℃へ上昇し、30分間水熱炭化を行った。反応器内の圧力は4.1MPaまで上昇した。その後、自然冷却にて60℃以下になったところで取り出した。炭化物の回収率は59.5%であった。
比較例1
実施例1において用いた椰子殻チップと同じ椰子殻チップ70gを坩堝に入れ、光洋サーモ社製電気炉を用いて、窒素気流3.0L/分(0.003メートル/秒)の流量下、10℃/分で250℃まで昇温、30分保持した後、自然冷却にて60℃以下になったところで取り出した。炭化物の回収率は66.7%であった。
実施例1において用いた椰子殻チップと同じ椰子殻チップ70gを坩堝に入れ、光洋サーモ社製電気炉を用いて、窒素気流3.0L/分(0.003メートル/秒)の流量下、10℃/分で250℃まで昇温、30分保持した後、自然冷却にて60℃以下になったところで取り出した。炭化物の回収率は66.7%であった。
比較例2
実施例3において用いた珈琲豆と同じ珈琲豆70gを坩堝に入れ、光洋サーモ社製電気炉を用いて、窒素気流3.0L/分(0.003メートル/秒)の流量下、10℃/分で250℃まで昇温、30分保持した後、自然冷却にて60℃以下になったところで取り出した。炭化物の回収率は75.5%であった。
実施例3において用いた珈琲豆と同じ珈琲豆70gを坩堝に入れ、光洋サーモ社製電気炉を用いて、窒素気流3.0L/分(0.003メートル/秒)の流量下、10℃/分で250℃まで昇温、30分保持した後、自然冷却にて60℃以下になったところで取り出した。炭化物の回収率は75.5%であった。
比較例3
実施例1において用いた椰子殻チップと同じ椰子殻チップ25gを、反応器(ステンレス製耐圧容器)中において、10重量%クエン酸水溶液(pH3.4)78gに浸漬した後、3℃/分の加熱速度にてクエン酸水溶液(pH3.4)を100℃に加温し30分間保持した。その後、2℃/分の加熱速度にてクエン酸水溶液を250℃に加温し、30分間水熱炭化を行った。反応器内の圧力は4.1MPaまで上昇した。その後、自然冷却にて60℃以下になったところで取り出した。炭化物の回収率は58.4%であった。
実施例1において用いた椰子殻チップと同じ椰子殻チップ25gを、反応器(ステンレス製耐圧容器)中において、10重量%クエン酸水溶液(pH3.4)78gに浸漬した後、3℃/分の加熱速度にてクエン酸水溶液(pH3.4)を100℃に加温し30分間保持した。その後、2℃/分の加熱速度にてクエン酸水溶液を250℃に加温し、30分間水熱炭化を行った。反応器内の圧力は4.1MPaまで上昇した。その後、自然冷却にて60℃以下になったところで取り出した。炭化物の回収率は58.4%であった。
比較例4
実施例1において用いた椰子殻チップと同じ椰子殻チップを、反応器(ステンレス製耐圧容器)中において、10重量%酢酸酸水溶液(pH2.8)78gに浸漬した後、3℃/分の加熱速度にて酢酸酸水溶液(pH2.8)を100℃に加温し30分間保持した。その後、2℃/分の加熱速度にて酢酸酸水溶液を250℃に加温し、30分間水熱炭化を行った。反応器内の圧力は4.0MPaまで上昇した。その後、自然冷却にて60℃以下になったところで取り出した。炭化物の回収率は54.6%であった。
実施例1において用いた椰子殻チップと同じ椰子殻チップを、反応器(ステンレス製耐圧容器)中において、10重量%酢酸酸水溶液(pH2.8)78gに浸漬した後、3℃/分の加熱速度にて酢酸酸水溶液(pH2.8)を100℃に加温し30分間保持した。その後、2℃/分の加熱速度にて酢酸酸水溶液を250℃に加温し、30分間水熱炭化を行った。反応器内の圧力は4.0MPaまで上昇した。その後、自然冷却にて60℃以下になったところで取り出した。炭化物の回収率は54.6%であった。
比較例5
実施例3において用いた珈琲豆と同じ珈琲豆を、反応器(ステンレス製耐圧容器)中において、10重量%クエン酸水溶液(pH3.4)25gに浸漬した後、3℃/分の加熱速度にてクエン酸水溶液を100℃(pH3.4)に加温し30分間保持した。その後、2℃/分の加熱速度にてクエン酸水溶液を250℃に加温し、30分間水熱炭化を行った。反応器内の圧力は4.1MPaまで上昇した。その後、自然冷却にて60℃以下になったところで取り出した。炭化物の回収率は64.3%であった。
実施例3において用いた珈琲豆と同じ珈琲豆を、反応器(ステンレス製耐圧容器)中において、10重量%クエン酸水溶液(pH3.4)25gに浸漬した後、3℃/分の加熱速度にてクエン酸水溶液を100℃(pH3.4)に加温し30分間保持した。その後、2℃/分の加熱速度にてクエン酸水溶液を250℃に加温し、30分間水熱炭化を行った。反応器内の圧力は4.1MPaまで上昇した。その後、自然冷却にて60℃以下になったところで取り出した。炭化物の回収率は64.3%であった。
比較例6
実施例3において用いた珈琲豆と同じ珈琲豆を、反応器(ステンレス製耐圧容器)中において、10重量%酢酸酸水溶液(pH2.8)78gに浸漬した後、3℃/分の加熱速度にて酢酸酸水溶液(pH2.8)を100℃に加温し30分間保持した。その後、2℃/分の加熱速度にて酢酸酸水溶液を250℃に加温し、30分間水熱炭化を行った。反応器内の圧力は4.0MPaまで上昇した。その後、自然冷却にて60℃以下になったところで取り出した。炭化物の回収率は52.1%であった。
実施例3において用いた珈琲豆と同じ珈琲豆を、反応器(ステンレス製耐圧容器)中において、10重量%酢酸酸水溶液(pH2.8)78gに浸漬した後、3℃/分の加熱速度にて酢酸酸水溶液(pH2.8)を100℃に加温し30分間保持した。その後、2℃/分の加熱速度にて酢酸酸水溶液を250℃に加温し、30分間水熱炭化を行った。反応器内の圧力は4.0MPaまで上昇した。その後、自然冷却にて60℃以下になったところで取り出した。炭化物の回収率は52.1%であった。
実施例1〜4および比較例1〜6において行った脱灰、炭化前処理および水熱炭化の条件を以下の表1に集約する。
実施例1〜4および比較例1〜6において得られた炭化物中の金属および非金属元素の含有量を上記金属元素/非金属元素含有量を以下の表2に示す。また、植物性原料は、原料ごとに金属元素および非金属元素の含有量についてばらつきが存在する。したがって、そのばらつきによる影響を少なくして本発明による金属元素および非金属元素の低減効果を示すために、含有量の変化が比較的小さいケイ素の含有量に対するカリウムの含有量の割合についても表2に示す。さらに、金属および非金属元素の残留率を以下の表3に示す。
表2および表3に示される通り、脱灰および炭化前処理を行った実施例1〜4では、脱灰を行わなかった比較例1〜6と比べ、ケイ素の含有量に対するカリウムの含有量の割合が低い炭化物が得られた。また、水熱炭化を行った実施例1〜4では、水熱炭化を行わなかった比較例1及び2と比べ揮発分が低く、含有酸素量が高い炭化物が得られた。椰子殻を用い、水熱炭化を行った実施例1および2は、同じ椰子殻を用い、気相炭化を行った比較例1と比べ、比表面積が大きい炭化物が得られた。また、珈琲豆を用い、水熱炭化を行った実施例3および4は、同じ珈琲豆を用い、気相炭化を行った比較例2と比べ、比表面積が大きい炭化物が得られた。
図1および図2に示される通り、本発明による炭化物の表面(図1)は、本発明によらない炭化物の表面(図2)と比べ多くの細孔が形成され、および起伏が大きいことがわかる。したがって、本発明の炭化物は、比表面積が大きく、酸吸着能に優れることが理解される。
Claims (8)
- 揮発分が炭化物の全重量を基準として70重量%以下であり、含有酸素量が30%以上であり、および金属元素Siの含有量に対する金属元素Kの含有量の比は0.6以下である、植物性原料由来の炭化物。
- 植物性原料は椰子殻または珈琲豆である、請求項1に記載の炭化物。
- 植物性原料は椰子殻であり、および比表面積は400m2/g以上である、請求項1に記載の炭化物。
- 植物性原料は珈琲豆であり、および比表面積は10m2/g以上である、請求項1に記載の炭化物。
- 植物性原料を水熱炭化することにより得られる、請求項1〜4のいずれかに記載の炭化物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の炭化物を焼成することにより得られる炭素質材料。
- 請求項6に記載の炭素質材料からなる酸吸着剤。
- 植物性原料由来の炭化物を製造するための方法であって、
1)植物性原料を有機酸水溶液中に浸漬することにより、植物性原料中の金属元素および/または非金属元素の含有量を低下させた炭素前駆体を得る工程、
2)工程1)において得られた炭素前駆体を酸水溶液中で50〜150℃の温度において保持することにより、炭素前駆体中の金属元素および/または非金属元素の含有量をさらに低下させる工程、および
3)炭素前駆体を酸水溶液中で150〜350℃の温度において水熱炭化する工程
を含む、方法。
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2015031145A Pending JP2016150897A (ja) | 2015-02-19 | 2015-02-19 | 植物性原料由来の炭化物およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2016150897A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN114864934A (zh) * | 2022-04-11 | 2022-08-05 | 温州大学碳中和技术创新研究院 | 一种钠离子电池负极用榛子壳硬碳材料的制备方法及其应用 |
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2015
- 2015-02-19 JP JP2015031145A patent/JP2016150897A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN114864934A (zh) * | 2022-04-11 | 2022-08-05 | 温州大学碳中和技术创新研究院 | 一种钠离子电池负极用榛子壳硬碳材料的制备方法及其应用 |
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