JP2016148380A - 軌道輪の製造方法及び軸受の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】炭素繊維強化樹脂を含む軌道輪の製造において、炭素繊維強化樹脂の部分を形成するのに十分な圧力をかける。
【解決手段】軌道輪の製造方法は、第1部分(11a,11b)及び第2部分(12a)を形成するための炭素繊維強化樹脂のシートを積層する工程と、炭素繊維強化樹脂のシートの表面に、第1部分及び前記第2部分の形状に応じた型(7a〜7g)を配置する工程と、型が配置された炭素繊維強化樹脂のシートの積層体に圧力を加える工程と、型を取り除く工程と、を有する。型は、軌道輪の径方向に垂直な面であって第1部分の一部と重なる面、又は、軌道輪の軸方向に垂直な面であって第2部分の一部と重なる面の少なくともいずれかの面で分割されている。
【選択図】図3C

Description

本発明は、軌道輪の製造方法に関し、より詳細には、車両用軸受及びその軌道輪の製造方法に関する。
一般に、ハブユニットと称される車両用軸受は、軌道輪としての外輪及び内方部材を備えている。外輪は、筒状をなす。内方部材は、外輪の内側に配置される。外輪の内周面及び内方部材の外周面には、転動体が配置される軌道面が形成されている。外輪及び内方部材の少なくとも一方は、外周面から径方向外方に突出するフランジを有する。
特許文献1には、固定輪である外輪と、回転軸であるハブと、外輪とハブと間に配置される転動体を備えるハブユニット軸受が開示されている。外輪には、懸架装置を取り付けるためのフランジが設けられる。特許文献1では、外輪の軌道面は、鋼材で形成され、フランジは、炭素繊維プリプレグの積層体で形成される。この炭素繊維プリプレグは、炭素繊維を面状に編組して樹脂で結束したものとすることができる。
特開2011−178314号公報
上記従来技術におけるフランジ部の炭素繊維プリプレグの積層体は、熱プレス又はオートクレーブにより圧力をかけて形成される。本願発明者は、炭素繊維強化樹脂で形成する部分の形状を工夫することによる軽量化及び強度向上を検討した。その結果、炭素繊維プリプレグの積層体は、様々な形状をとり得る。その場合、製造工程において、炭素繊維プリプレグに対して、所望の形状又は強度を得るのに十分な圧力をかけるのが難しくなる場合があることが本願発明者によって見出されている。
そこで、本願は、炭素繊維強化樹脂を含む軌道輪の製造において、炭素繊維強化樹脂の部分を形成するのに十分な圧力をかけることができる、軌道輪の製造方法を開示する。
本開示に係る軌道輪の製造方法は、車両用軸受の軌道輪であって、金属で形成された金属軌道部と、前記金属軌道部に取り付けられ前記軌道輪の軸方向の延びる第1部分と、前記第1部分の外周面から前記軌道輪の径方向に延びる第2部分とを有する軌道輪の製造方法に関する。この製造方法は、前記第1部分及び前記第2部分を形成するための炭素繊維強化樹脂のシートを積層する工程と、前記炭素繊維強化樹脂のシートの表面に、前記第1部分及び前記第2部分の形状に応じた型を配置する工程と、前記型が配置された炭素繊維強化樹脂のシートの積層体に圧力を加える工程と、前記型を取り除く工程と、を有する。前記型は、前記軌道輪の径方向に垂直な面であって前記第1部分の一部と重なる面、又は、前記軌道輪の軸方向に垂直な面であって前記第2部分の一部と重なる面の少なくともいずれかの面で分割されている。
本開示に係る製造方法によれば、炭素繊維強化樹脂を含む軌道輪の製造において、炭素繊維強化樹脂の部分を形成するのに十分な圧力をかけることができる。
図1は、実施形態1に係る車両用軸受10の断面図である。 図2は、図1に示す軸受10の外輪1断面図である。 図3Aは、外輪1の製造工程の一例を説明するための図である。 図3Bは、外輪1の製造工程の一例を説明するための図である。 図3Cは、外輪1の製造工程の一例を説明するための図である。 図3Dは、外輪1の製造工程の一例を説明するための図である。 図3Eは、外輪1の製造工程の一例を説明するための図である。 図3Fは、外輪1の製造工程の一例を説明するための図である。 図4は、型を、分割せずに一体的に形成した場合の例を示す図である。 図5は、バリが生成される場合の例を示す図である。 図6は、型分割の変形例を示す図である。 図7は、炭素繊維プリプレグ及び型の配置の変形例を示す図である。 図8は、実施形態2に係る車両用軸受20の断面図である。 図9は、図8に示す第1部分215及び第2部分221を形成する工程における型の配置の一例を示す図である。
実施の形態に係る軌道輪の製造方法は、車両用軸受の軌道輪であって、金属で形成された金属軌道部と、前記金属軌道部に取り付けられ前記軌道輪の軸方向の延びる第1部分と、前記第1部分の外周面から前記軌道輪の径方向に延びる第2部分とを有する軌道輪の製造方法に関する。この製造方法は、前記第1部分及び前記第2部分を形成するための炭素繊維強化樹脂のシートを積層する工程と、前記炭素繊維強化樹脂のシートの表面に、前記第1部分及び前記第2部分の形状に応じた型を配置する工程と、前記型が配置された炭素繊維強化樹脂のシートの積層体に圧力を加える工程と、前記型を取り除く工程と、を有する。前記型は、前記軌道輪の径方向に垂直な面であって前記第1部分の一部と重なる面、又は、前記軌道輪の軸方向に垂直な面であって前記第2部分の一部と重なる面の少なくともいずれかの面で分割されている。
上記製造方法によれば、積層された炭素繊維強化樹脂のシートに型を配置して圧力をかけることにより、炭素繊維強化樹脂で第1部分と第2部分を形成することができる。これにより、軸受の軽量化を図ることができる。また、型は、軌道輪の径方向に垂直な面で第1部分の一部を通る面又は軌道輪の軸方向に垂直な面で第2部分の一部を通る面で分割されている。このように分割された型を配置した炭素繊維強化樹脂シートを加圧する際に、型から第1部分と第2部分の双方に対して径方向及び軸方向の力がかかりやすくなる。そのため、炭素繊維強化樹脂の部分を形成するのに十分な圧力をかけることが容易になる。
前記型は、前記第1部分が有する前記軌道輪の径方向に垂直な表面を含む面、又は、前記第2部分が有する前記軌道輪の軸方向に垂直な表面を含む面の少なくともいずれかの面で分割することができる。
これにより、加圧時に、第1部分が有する軌道輪の径方向に垂直な表面及び第2部分が有する軌道輪の軸方向に垂直な表面に対して型からの力がかかりやすくなる。そのため、炭素繊維強化樹脂の部分を形成するのに十分な圧力をかけることがより容易になる。
前記型は、前記第1部分が有する前記軌道輪の径方向に垂直な2つの互いに対向する表面それぞれを含む2つの面で分割することができる。
これにより、型は、第1部分の軌道輪の径方向に垂直な2つの表面のうち一方の表面に重なる面と、他方の表面に重なる面との間の部分が、他の部分とは独立した形状となる。そのため、加圧時において、型の上記部分は、他の部分の型の影響を受けずに、第1部分に対して力を加えることができる。その結果、第1部分に対して、所望の形状を得るために適切な力を加えやすくなる。
前記型は、前記第2部分が有する前記軌道輪の軸方向に垂直な2つの互いに対向する表面それぞれを含む2つの面で分割することができる。
これにより、型は、第2部分が有する軌道輪の軸方向に垂直な2つの表面のうち一方の表面に重なる面と、他方の表面に重なる面との間の部分が、他の部分とは独立した形状となる。そのため、加圧時において、型の上記部分は、他の部分の型の影響を受けずに、第2部分に対して力を加えることができる。その結果、第2部分に対して、所望の形状を得るために適切な力を加えることができる。
前記第1部分及び前記第2部分を形成するための前記炭素繊維強化樹脂のシートは、前記炭素繊維強化樹脂に含まれる炭素繊維が、前記軌道輪の径方向に垂直な方向又は前記軌道輪の軸方向に垂直な方向に配置されるように積層することができる。
これにより、加圧時に、型から炭素繊維強化樹脂のシートに対して、炭素繊維の方向に垂直な方向に力が加わりやすくなる。そのため、炭素繊維強化樹脂で形成される第1部分及び第2部分の強度をより強くすることができる。
前記炭素繊維強化樹脂のシートを積層する工程において、金属で形成され、軌道面を有する金属軌道部に、前記第1部分及び前記第2部分を形成するための炭素繊維強化樹脂のシートを積層することができる。
これにより、金属で形成される金属軌道部に、炭素繊維強化樹脂で、軸方向に延びる第1部分と径方向に延びる第2部分を形成することができる。炭素繊維強化樹脂で形成された部分は、第1部分と第2部分を有するので金属軌道部から外れにくい。そのため、軌道輪において、炭素繊維強化樹脂の部分の強度を確保することができる。
実施の形態に係る軸受の製造方法は、外輪と、内方部材と、前記外輪及び前記内方部材の間に転動可能に配置された転動体とを備える軸受の製造方法に関する。前記製造方法により製造される前記外輪及び内方部材の少なくとも一方は、金属で形成された金属軌道部と、前記金属軌道部に取り付けられ前記外輪又は内方部材の軸方向の延びる第1部分と、前記第1部分の外周面から前記外輪又は内方部材の径方向に延びる第2部分とを有する。前記第1部分及び前記第2部分を有する前記外輪又は内方部材の製造工程は、前記第1部分及び前記第2部分を形成するための炭素繊維強化樹脂のシートを積層する工程と、前記炭素繊維強化樹脂のシートの表面に、前記第1部分及び前記第2部分の形状に応じた型を配置する工程と、前記型が配置された炭素繊維強化樹脂のシートの積層体に圧力を加える工程と、前記型を取り除く工程と、を有する。前記型は、前記外輪又は内方部材の径方向に垂直な面であって前記第1部分の一部と重なる面、若しくは、前記外輪又は内方部材の軸方向に垂直な面であって前記第2部分の一部と重なる面の少なくともいずれかの面で分割されている。
<実施形態>
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。図中同一及び相当する構成については同一の符号を付し、同じ説明を繰り返さない。説明の便宜上、各図において、構成を簡略化又は模式化して示したり、一部の構成を省略して示したりする場合がある。
[実施形態1]
(全体構成)
図1は、実施形態1に係る車両用軸受10の軸心Xを含む平面における断面図である。図1に示す軸受10において、Aは車両への取付状態において車体に近い方すなわち車幅方向内側の端、Bは車両への取付状態において車体から遠い方すなわち車幅方向外側の端である。以後、軸受10において、車体により近い位置を軸方向の内方、車体からより遠い位置を軸方向の外方と称する場合がある。
図1に示すように、軸受10は、外輪1と、内方部材2と、複数の転動体3,4とを備える。外輪1及び内方部材2は、軸受10の軌道輪である。図1に示す例では、外輪1は、固定輪であり、内方部材2は、外輪の内周側に設けられる回転軸(回転輪)である。転動体3,4は、外輪1と内方部材2との間に回転可能な状態で配置される。外輪1と内方部材は同軸に配置される。すなわち、外輪1の軸心及び内方部材の軸心は、いずれも軸受の軸心Xと同じである。
(外輪の構成例)
図2は、図1に示す軸受10の外輪1の軸心Xを含む平面における断面図である。図2に示す外輪1において、Aは車両への取付状態において車体に近い方すなわち車幅方向内側の端、Bは車両への取付状態において車体から遠い方すなわち車幅方向外側の端である。
外輪1は、軌道部11と、フランジ12とを備える。軌道部11は、筒状をなす。フランジ12は、軌道部11の外周面から軌道部11の径方向外方に突出している。フランジ12には、懸架装置(図示略)が取り付けられる。
軌道部11は、例えば鋼等の金属で形成された金属軌道部111と、炭素繊維強化樹脂(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)で形成された第1部分11a,11bを含む。第1部分11a,11bは、金属軌道部111と接して軌道部11の軸方向に延びる。第1部分11a,11bは、金属軌道部111に対して固定されている。第1部分11a,11bは、軌道部11の径方向に垂直な面に沿って延びる炭素繊維を含む樹脂で形成される。
第1部分11a,11b及び金属軌道部111は、いずれも筒状をなす。第1部分11a,11bは、金属軌道部111の外周面に設けられる。すなわち、第1部分11a,11bの径方向内方には、金属軌道部111が配置される。第1部分11a、11bに、金属軌道部111が挿入されている。第1部分11a,11bの内周面の少なくとも一部は、金属軌道部111の外周面に接している。第1部分11a,11bは、金属軌道部111と同軸に配置される。金属軌道部111の内周面には、転動体3,4と接する軌道面113,114が設けられる。
フランジ12は、炭素繊維強化樹脂で形成され、軌道部11の径方向外側に延びる第2部分12a,12bを含む。第2部分12a,12bは、軌道部11の軸方向に垂直な面に沿って延びる炭素繊維を含む樹脂で形成される。第2部分12a,12bと軌道部11の第1部分11a,11bとは、少なくとも一部において連続した構成とすることができる。
なお、第1部分11a,11bの炭素繊維の方向と第2部分12a,12bの炭素繊維の方向は、上記例に限られない。例えば、第2部分12a,12b及び第1部分11a,11bのいずれにおいても、炭素繊維が軌道部11の径方向に垂直な面又は軸方向に垂直な面に沿って延びるように形成することもできる。
第2部分12a,12bは、第1部分11a,11bの軸方向の端部でない中央部の外周面から径方向に延びて形成される。そのため、第1部分11a,11bは、軸方向の一方の端部から第2部分12a,12bへ延びる部分(第1部分11a)と、軸方向の他方の端部から第2部分12a,12bへ延びる部分(第1部分11b)とを有する。すなわち、軸受10の軸心Xを含む面における断面において、第1部分11a,11bと第2部分12a,12bがT字状になるように交差する。このように、第2部分12a,12bの軸方向の両側に第1部分11a,11bを配置することにより、第2部分12a,12bが形成するフランジ12の強度を確保することができる。
第1部分11a、11bの軌道部11の軸方向における幅は、金属軌道部111の幅より大きくなっている。すなわち、第1部分11a、11bは、金属軌道部111の軸方向における端部を覆っている。これにより、金属軌道部111と第1部分11a、11bとが互いに外れにくくすることができる。
具体的には、軌道部11の軸方向において、第1部分11aの一方端である外方端は、金属軌道部111の一方端である外方端よりも突出した位置に配置されている。よって、軌道部11の軸方向において、第1部分11aの外方端部の内周面は、金属軌道部111の外方端部の外周面に接していない。ただし、軌道部11の軸方向において、金属軌道部111の外方端は、第1部分11aの外方端と同じ位置、又は、第1部分11aより突出した位置に配置されていてもよい。
軌道部11の軸方向において、第1部分11bの他方端である内方端は、金属軌道部111の他方端である内方端よりも突出した位置に配置されている。よって、軌道部11の軸方向において、第1部分11bの内方端部の内周面は、金属軌道部111の内方端部の外周面に接していない。ただし、軌道部11の軸方向において、金属軌道部111の内方端は、第1部分11bの内方端と同じ位置、又は、第1部分11bより突出した位置に配置されていてもよい。
第1部分11a,11b及び第2部分12a,12bを形成する炭素繊維強化樹脂は、炭素繊維によって樹脂を強化した複合材料である。母材となる樹脂としては、例えば、エポキシ、フェノール、ポリイミド等の熱硬化性樹脂又は、ナイロン、ポリプロピレン、ポリカーボネイト等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。
上記炭素繊維強化樹脂は、例えば、炭素繊維プリプレグを用いて形成することができる。炭素繊維プリプレグは、炭素繊維に樹脂を含浸させてシート状に形成したものである。炭素繊維プリプレグは、例えば、炭素繊維を一方向に向くように平面状に配置したものを樹脂で結束したものとすることができる。又は、炭素繊維プリプレグは、炭素繊維を平面状に編組して樹脂で結束したものであってもよい。炭素繊維プリプレグを用いた第1部分11a,11b及び第2部分12a,12bの形成方法については、後述する。
図1及び図2においては図示していないが、フランジ12は、複数の締結孔を有してもよい。各締結孔には、懸架装置(図示略)等をフランジ12に取り付けるため、ボルト等の締結部材が挿入される。
(内方部材の構成例)
図1に示すように、内方部材2は、鋼等の金属で構成される。内方部材2は、ハブ輪21と内輪212と含む。ハブ輪21は、軌道面214を有する内軸211と、フランジ22とを備える。フランジ22には、ディスクホイール(図示略)やブレーキディスク(図示略)等が取り付けられる。
ハブ輪21は、外輪1に挿入されている。より具体的には、ハブ輪21は、外輪1の軌道部11の径方向内方に配置されている。ハブ輪21は、軌道部11と同軸に配置される。
ハブ輪21の内軸211は、中実状をなし、軸受10の軸方向に延びる。内輪212は、ハブ輪21の外周面に固定されている。内輪212は、ハブ輪21の軸方向の内方端部に配置される。内輪212は、軸受10の軸心Xを中心とする環状をなす。内輪212は、内軸211と同軸に配置される。
ハブ輪21の内軸211の外周面及び内輪212の外周面には、それぞれ、軌道面213,214が設けられている。軌道面213,214は、それぞれ、軸受10の軸心Xを中心とする環状をなす。軌道面213は、軸受10の軸方向において、軌道面214よりも内方に配置される。軌道面213,214は、それぞれ、外輪1が有する軌道面113,114と対向する。
フランジ22は、内軸211の外周面から内軸211の径方向外方に突出している。フランジ22は、軸受10の軸方向において、外輪1のフランジ12よりも外方に位置している。フランジ22は、複数の締結孔222を有する。各締結孔222には、ディスクホイール(図示略)やブレーキディスク(図示略)等をフランジ22に取り付けるため、ボルト等の締結部材が挿入される。
複数の転動体3,4は、外輪1と内方部材2との間に配置される。より具体的には、複数の転動体3は、外輪1の金属軌道部111が有する軌道面113と、内輪212が有する軌道面213との間に配置される。複数の転動体4は、外輪1の金属軌道部111が有する軌道面114と、ハブ輪21の内軸211が有する軌道面214との間に配置されている。
(軸受の製造方法)
軸受10の製造方法は、外輪1、内方部材2、及び転動体3,4をそれぞれ製造する工程と、これらを組み立てる工程が含まれる。内方部材2の製造工程には、ハブ輪21を製造する工程と、内輪212を製造する工程が含まれる。外輪1の製造工程には、金属軌道部111、第1部分11a、11b及び第2部分12a,12bを製造する工程が含まれる。ハブ輪21、内輪212及び金属軌道部111は、材料となる金属を鍛造により成型し、施削によって軌道面の形成し、熱処理により材質を強化し、研削及び超仕上げによって表面処理をすることで製造することができる。
組立工程では、ハブ輪21に内輪212、外輪1、転動体3,4が取り付けられる。内輪212は、軸方向の内側からハブ輪21に圧入される。転動体3,4および外輪1を内輪212およびハブ輪21の外周に配置される。ハブ輪21は、内輪212が圧入された後、軸方向内側の端部がかしめられる。これにより、ハブ輪21の車体側の端部が図1に示される形状に変形する。部品組立工程を通じて、軸受10が製造される。
(外輪の製造方法)
以下、外輪1の製造方法について説明する。図3A〜図3Fは、図1及び図2に示す外輪1の製造工程の一例を説明するための図である。図3Aに示すように、まず、鋼等の金属製且つ筒状(環状)の金属軌道部111を準備する。次に、図3Bに示すように、金属軌道部111の外周面上に、複数の炭素繊維強化樹脂のシートを積層する。ここでは、一例として、炭素繊維強化樹脂のシートとして、炭素繊維プリプレグを積層する場合について説明する。各炭素繊維プリプレグは、炭素繊維を含む樹脂の層である。各炭素繊維プリプレグにおいて、炭素繊維は各層の面内方向に延びて形成される。
炭素繊維プリプレグの積層において、例えば、第1部分11a、11bを形成する部分では、外輪1の径方向に炭素繊維プリプレグを積層し、第2部分12a,12bを形成する部分では、外輪の軸方向に炭素繊維プリプレグを積層することができる。すなわち、第1部分11a,11bに対応する部分では、炭素繊維が外輪1(軌道輪)の径方向に垂直な方向を向くように炭素繊維プリプレグを積層し、第2部分12a,12bに対応する部分では、炭素繊維が外輪1(軌道輪)の軸方向に垂直な方向を向くように炭素繊維プリプレグを積層することができる。この場合、第2部分12a,12bと第1部分11a,11bとは、少なくとも一部において連続した構成とすることができる。これにより、フランジ12の強度を確保することができる。
第1部分と第2部分とが連続している構成としては、例えば、第1部分の炭素繊維の少なくとも一部が第2部分の炭素繊維とつながっている構成とすることができる。或いは、第1部分の少なくとも一部を構成する炭素繊維強化樹脂の層が、第2部分の炭素繊維強化樹脂の層とつながっている構成とすることができる。具体的には、第1部分と第2部分の双方に渡って配置される炭素繊維強化樹脂のシートが少なくとも1つ存在するよう構成することができる。
金属軌道部111の外周面において、各炭素繊維プリプレグは、金属軌道部111の径方向に積層される。積層される複数の炭素繊維プリグレグの少なくとも一部は、フランジ12を形成する部分で折り曲げられ、折り曲げられた炭素繊維プリグレグの面が軌道部11の軸方向に垂直な面と平行になる状態で固定される。これにより、金属軌道部111の外周面上に積層される炭素繊維プリプレグの少なくとも一部の層は、フランジ12を形成する炭素繊維プリプレグと連続した構成とすることができる。
このように、炭素繊維プリプレグを、金属軌道部111上で、径方向に垂直な面と軸方向に垂直な面を有する状態で固定したものを、複数、積層することができる。これにより、金属軌道部111の径方向に垂直な方向に積層される部分と、軸方向に垂直な方向に積層される部分が連続した状態で、炭素繊維プリプレグを積層することができる。金属軌道部111の径方向に垂直な方向に積層される部分は、第1部分11a,11bを形成する。軸方向に垂直な方向に積層される部分は、第2部分12a,12bを形成する。ただし、炭素繊維プリプレグの積層方向及び配置は特に限定されるものではない。
次に、図3Cに示すように、積層された炭素繊維プリプレグの表面に、第1部分11a,11b及び第2部分12a,12bの形状に応じた型7a〜7gを配置する。型は、炭素繊維プリプレグの積層体の表面の少なくとも一部に接するように配置される。例えば、炭素繊維プリプレグの積層体の表面のうち、面精度(設計上の理想的な面に対する精度)が求められる面に型を接するように配置することができる。型から炭素繊維プリプレグへ力を加えることで、炭素繊維プリプレグの積層体を所望の形状に成型することができる。
図3Cに示す例では、第1部分11a,11b及び第2部分12a,12bを形成する炭素繊維プリプレグの表面のうち、金属軌道部111に接していない面に型7a〜7gが接するように配置される。型7a〜7gは、複数の部分に分割されている。図3Cに示す例では、型7a〜7gは、外輪1の径方向に垂直な面であって第1部分11a,11bの一部と重なる面P3,P4,P5,P6及び、外輪1の軸方向に垂直な面であって第2部分12aの一部と重なる面P1,P2で分割されている。
具体的には、型7a,7g,7fは、外輪1の径方向に垂直な面P5,P6で分割されている。面P5は、第1部分11aの径方向に垂直な1つの表面11a1を含む面である。すなわち、面P5は、表面11a1と同一面である。面P5の表面11a1から軸方向に延びた部分で型が分割される。面P6は、表面11a1と反対側の径方向に垂直な第1部分11aの表面11a2を含む面である。面P6は、表面11a2と同一面である。面P6の表面11a2から軸方向に延びた部分で型が分割される。
これにより、第1部分11aの径方向に垂直な1つの表面11a1を押す型7a、第1部分11aの軸方向に垂直な表面を押す型7g、及び、第1部分11aの径方向に垂直な他の表面11a2を受ける型7fをそれぞれ独立して設けることができる。後の加圧工程では、分割された型7a,7g,7fにより、第1部分11aの様々な面に対して型から圧力を適切にかけることができる。そのため、加圧後の第1部分11aの表面11a1,11a2の面精度(例えば、円筒度、真円度又は表面粗さ等)を高めることができる。
型7c,7d,7eは、外輪1の径方向に垂直な面P3,P4で分割されている。面P3は、第1部分11bの径方向に垂直な1つの表面11b1を含む面である。面P4は、表面11b1と反対側の径方向に垂直な第1部分11bの表面11b2を含む面である。
これにより、第1部分11bの径方向に垂直な1つの表面11b1を押す型7c、第1部分11aの軸方向に垂直な表面を押す型7d、及び、第1部分11bの径方向に垂直な他の表面11b2を受ける型7eをそれぞれ独立して設けることができる。加圧工程では、分割された型7c,7d,7eにより、第1部分11bの様々な面に対して型から圧力を適切にかけることができる。そのため、第1部分11bの表面11b1,11b2の面精度(例えば、円筒度、真円度又は表面粗さ等)を高めることができる。
型7a,7b,7cは、外輪1の軸方向に垂直な面P1,P2で分割されている。面P1は、第2部分12aの軸方向に垂直な1つの表面12a1を含む平面である。すなわち、面P1は、表面12a1と同一面である。面P1の表面12a1から径方向に延びた部分で型が分割される。面P2は、表面12a1の反対側の軸方向に垂直な第2部分12bの表面12b1を含む平面である。すなわち、面P2は、表面12b1と同一面である。面P2の表面12b1から径方向に延びた部分で型が分割される。
これにより、第2部分12aの軸方向に垂直な1つの表面12a1を押す型7a、第2部分12a,12bの径方向に垂直な表面を押す型7b、及び、第2部分12a,12bの軸方向に垂直な他の表面12b1を押す型7cをそれぞれ独立して設けることができる。加圧工程では、分割された型7a,7b,7cにより、第2部分12a,12bの様々な面に対して型から圧力を適切にかけることができる。そのため、第2部分12a,12bの表面12a1,12b1の面精度(例えば、軸心Xに対する直角度又は表面粗さ等)を高めることができる。
上記例で、表面と同一面である面には、厳密に同一の面である場合の他、表面と平行な面でほぼ同一とみなせる程度に表面から離れている面も含む。
また、図3Cに示す型7a,7b,7cは、周方向に分割されている。すなわち、型7a,7b,7cは、軸受10の軸心Xを含む平面で分割されている。これにより、型7a,7b,7cを炭素繊維プリプレグに配置するのを容易にすることができる。また、周方向に分割されているために、型7a,7b,7cは、加圧により径方向及び軸方向に移動することができる。そのため、型7a,7b,7cから炭素繊維プリプレグへ径方向の圧力がかかりやすい構造にすることができる。
型7d,7e,7f,7gは、周方向に分割されず、円筒状に形成される。すなわち、型7d,7e,7f,7gは、周方向に一体的に連なって形成される。これにより、加圧時において、型7f,7eの外周面は径方向に移動せず、第1部分11a,11bの内周面を支持することができる。
次に、図3Dに示すように、型7a〜7gが配置された炭素繊維プリプレグの積層体にバキュームバック13を装着する。金属軌道部111、積層された炭素繊維プリプレグ及び型7a〜7gが、バキュームバック13に密封される。次に、図3Eに示すように、これらの金属軌道部111、積層された炭素繊維プリプレグ及び型7a〜7gを含むバキュームバック13内を真空引きする。
図3Fに示すように、真空引きされたバキュームバック13に対して、例えば、オートクレーブで、加圧及び加熱する。ここでは、バキュームバック13の外側に圧力がかけられ、加熱される。バキュームバックの真空引きに伴い、圧力がかかった型7a,7b,7cが、径方向及び軸方向に移動することにより、型7a,7b,7cが炭素繊維強化樹脂各部の表面を押す。その結果、炭素繊維強化樹脂の各部が成型される。
これにより、炭素繊維プリプレグの積層体を硬化させ第1部分11a,11b及び第2部分12a,12bを成型することができる。また、第1部分11a,11b及び第2部分12a,12bの炭素繊維強化樹脂を一体的に形成することができる。さらに、第1部分11a,11bの金属軌道部111に対する密着度を上げることができる。第1部分11a,11b及び第2部分12a,12bは、金属軌道部111に対して固定される。
加圧後、バキュームバック13及び型7a〜7gを取り除く。その結果、例えば、図2に示す形状の外輪1が得られる。
図2に示す例では、フランジ12の第2部分12a,12bは、軸方向における一方の側の部分(12a)と、他方の側の部分(12b)を含む。一方の側の第2部分12aは、軌道部11の軸方向における一方の端部すなわち外方の端部に面する表面12a1を有する。他方の側の第2部分12bは、軌道部11の他方の端部すなわち内方の端部に面する表面12b1を有する。第1部分11a,11bは、軸方向においてフランジ12より外方に配置される第1部分11aと、フランジ12より内方に配置される第1部分11bとを含む。
一方の側の第2部分12aは、フランジ12の軸方向の一方側において第1部分11aと連続している。他方の側の第2部分12bは、フランジ12の軸方向の他方側において第1部分11bと連続している。すなわち、フランジ12の一方の側において、第1部分11aと第2部分12aは、一体的に形成された炭素繊維強化樹脂で形成されている。フランジ12の他方の側においても、第1部分11bと第2部分12bは、一体的に形成された炭素繊維強化樹脂で形成されている。このように、フランジ12の軸方向における両側において、金属軌道部111に接して軌道部11の軸方向に延びる第1部分11a,11bと、軌道部11の径方向に延びるフランジ12の第2部分12a,12bが一体的に連続した構成とすることで、フランジ12の強度を向上させることができる。
なお、第2部分12a,12bの形状は上記例に限られない。例えば、一方側の第2部分12aと他方側の第2部分12bのうちいずれかが、第1部分11a又は第1部分11bと連続して構成されてもよい。また、一方側の第2部分12aと他方側の第2部分12bの間に、第1部分11a,11bとは連続していない炭素繊維強化樹脂が設けられてもよい。
本実施形態では、図3Cに示すように、炭素繊維プリプレグ(炭素繊維強化樹脂)の積層体の表面に配置される型7a〜7gが、複数の部分(7a〜7g)に分割されている。ここでは、分割面は、外輪1の軸方向に垂直な面であって第2部分12a,12bの一部を通る面P1,P2及び、外輪1の径方向に垂直な面であって第1部分11a,11bの一部を通る面P3,P4,P5,P6となっている。これにより、加圧工程では、分割された部分がそれぞれ独立して、炭素繊維プリプレグの軸方向に垂直な表面及び径方向に垂直な面を押すことができる。そのため、第1部分及び第2部分の形状になった場合でも、型からの圧力が不十分になる炭素繊維プリプレグの面が生じ難くなる。
例えば、図4に示すように、第1部分11a,11b及び第2部分12a,12bに対応する形状の型を、分割せずに一体的に形成した場合、加圧工程で、型からの圧力が不十分となる炭素繊維プリプレグの面が生じやすい。
図4に示す例では、型17は、第1部分11a,11bの径方向に垂直な表面11a1,11a2に対向する部分と、第2部分12a,12bの軸方向に垂直な表面12a1,12b1に対向する部分とが一体的に形成されている。この構成では、例えば、第2部分12aの表面12a1に対向する型17の表面17aと、この表面12a1の反対側の表面12b1に対応する型17の表面17bとの間の距離は変化しない。そのため、型17を炭素繊維プリプレグの積層体に配置した状態で加圧しても、第2部分12a,12bの表面12a1,12b1に対して十分な圧力がかかりにくい。
同様に、第1部分11aの径方向に垂直な2つの表面11a1,11a2にそれぞれ対向する型17の2つの表面17c,17dの距離も変化しない。そのため、加圧時に、第1部分11aの表面11a1,11a2に対して十分な圧力がかかりにくい。
これに対して、図3Cに示すように、第2部分12a,12bの軸方向に垂直な2つ表面12a1,12b1をそれぞれ含む2つの面P1,P2で、型7を分割することで、型7a,7cは、互いに独立して径方向及び軸方向に移動可能になる。そのため、型7a、7cから第2部分12a,12bに対して軸方向に十分な圧力をかけ易くなる。また、第2部分12a,12bの軸方向の一方の側の第1部分11aと、他方の側の第1部分11bに対して、分割された型7a、7cがそれぞれ独立して押すことができる。そのため、第1部分11a,11bの径方向に垂直な表面11a1,11b1に対しても十分な圧力をかけ易くなる。その結果、加圧後の第1部分11a,11bの表面11a,11b1及び第2部分12a,12bの表面12a1,12b1の面精度を高めることができる。
また、図3Cに示すように、外輪1の軸方向に垂直な面であって、第2部分12a,12bの互いに対向する2つの表面12a1,12b1をそれぞれ含む2つの面P1,P2で型7を分割することで、例えば、後に行われる第2部分12a,12bの表面処理を簡素化することができる。例えば、加圧工程で、分割された型7の境界部分に対応する箇所には突起(バリ)が生成される場合がある。例えば、分割面P1,P2に対応する型7の境界部分には、図5に示すように、第2部分12a,12bの表面12a1,12b1に沿う方向にバリが生成される場合がある。このようなバリは、後に行われる第2部分12a,12bの表面12a1,12b1に対する表面処理時に除去することができる。そのため、表面処理とバリの除去を同時に行うことができ、工程が簡単になる。
同様に、第1部分11aの互いに対向する径方向に垂直な2つの表面11a1,11a2をそれぞれ含む2つの面P5,P6で型7を分割することで、第1部分11aに形成されるバリを、後の表面11a1,11a2に対する表面処理で同時に除去することができる。
(変形例1)
型7の分割は、図3Cに示す例に限れられない。例えば、図3Cでは、第2部分12a,12bの互いに対向する2つの表面12a1,12b1を含む2つの面P1,P2で型7を分割している。これに対して、例えば、図6に示すように、これらの2つの面P1,P2の間の、外輪1(軌道輪)の軸方向に垂直な面P7で型7を分割することができる。このように、軸方向に垂直な面であって、第2部分12a,12bの一部と重なる面で、型7を分割することで、上記の効果を得ることができる。
図6に示す例では、第1部分11a,11b及び第2部分12a,12bの径方向外方の表面(外周面)に設けられる型が、第2部分12a,12bを通る面P7を境に2つの型7j,7iに分割されている。これにより、一方の型7jは、第2部分12a,12bの軸方向に垂直な表面のうち一方の表面12a1と、一方の側の第1部分11aの表面11a1を、他方の型7iとは独立して押すことができる。他方の型7iは、第2部分12a,12bの軸方向に垂直な表面のうち他方の表面12b1と、他方の側の第1部分11bの表面11b1を、一方の型7jとは独立して押すことができる。
また、図6に示す変形例では、第1部分11aの互いに対向する2つの表面11a1,11a2をそれぞれ含む2つの面P5,P6の間の、径方向に垂直な面(この例では面P6)で型7を分割している。さらに、第1部分11bの互いに対向する2つの表面11b1,11b2をそれぞれ含む2つの面P3,P4の間の径方向に垂直な面(この例では面P4)で型7を分割している。このように、径方向に垂直な面であって第1部分11aの一部と重なる面で、型7を分割することで上記の効果を得ることができる。
なお、図3C及び図6に示す例では、第1部分11a,11bを通る面と第2部分12a,12bを通る面の両方で型を分割しているが、第1部分11a,11bを通る面及び第2部分12a,12bを通る面のうち少なくとも一方の面で型を分割することができる。
(変形例2)
上記例では、金属軌道部111と炭素繊維強化樹脂で形成される部分とを加圧しているが、炭素繊維強化樹脂で形成される部分のみを加圧して形成した第1部分及び第2部分に、金属軌道部111を嵌めることもできる。例えば、分割された型に第1部分及び第2部分を形成するための炭素繊維強化樹脂のシートを積層し、これらのシートの積層体をバキュームバックに密封して真空引きをした状態で加圧及び加熱することができる。加圧及び加熱によって形成された第1部分に対して、金属軌道部111を圧入することにより、第1部分を金属軌道部111に対して固定することができる。
また、上記例では、分割された型を炭素繊維強化樹脂のシートの積層体に対して配置している。これに対して、炭素繊維強化樹脂のシートの積層体に配置された型を分割することもできる。
図7は、第1部分11a,11b及び第2部分12を形成するための炭素繊維プリプレグに対して型を配置した場合の例を示す図である。図7において、型7a,7b,7c,7d,7gの配置は、図3Cと同様にできる。型7hは、第1部分11a,11bの内周の表面11cに配置される。型7hと型7gは、第1部分11aの内周側の径方向に垂直な表面11cを含む面P6で分割されている。型7hと型7dは、第1部分11bの内周側の表面11cを含む面P4で分割されている。この例では、面P6と面P4は略同一面とみなすことができる。
図7に示す構成を得るために、例えば、型7hに第1部分11a,11b及び第2部分12a,12bを形成するための炭素繊維プリプレグを積層することができる。この場合、これらの積層された炭素繊維プリプレグの表面に型7g,7a,7b,7c,7dが配置される。或いは、炭素繊維プリプレグを型7h,型7a及び型7cに積層し、これらの型7h,7a,7cに積層された炭素繊維プリプレグが合体するように、型7h,7a,7cを配置することもできる。
(実施形態2)
実施形態1では、軌道輪としての外輪が、炭素繊維強化樹脂で形成された第1部分及び第2部分を有する場合について説明した。これに対して、軌道輪としての内方部材が炭素繊維強化樹脂で形成された第1部分及び第2部分を有する構成とすることができる。
図8は、実施形態2に係る車両用軸受20の軸心Xを通る面における断面図である。図8に示す軸受20において、Aは車両への取付状態において車体に近い方すなわち車幅方向内側の端、Bは車両への取付状態において車体から遠い方すなわち車幅方向外側の端である。以後、軸受20において、車体により近い位置を軸方向の内方、車体からより遠い位置を軸方向の外方と称する場合がある。
図8に示すように、軸受20は、外輪1と、内方部材6と、複数の転動体3,4とを備える。外輪1及び内方部材6は、軸受20の軌道輪である。内方部材6は、軌道面213を有する内輪212と、軌道面214を有するハブ輪21とを含む。内輪212は、ハブ輪21の外周に設けられる。内輪212は、軸受20の軸を中心とする環状をなす。ハブ輪21は、軌道面214を有する内軸211と、内軸211の外周面から内軸211の径方向外方に突出するフランジ22とを備える。内軸211は、中実状をなす。
図8に示す軸受20は、ハブ輪21の内軸211が、金属で形成された金属軌道部216と、炭素繊維強化樹脂で形成された第1部分215を含む点で実施形態1と異なっている。また、軸受20は、フランジ22が、炭素繊維強化樹脂で形成される第2部分221を有する点でも、実施形態1と異なっている。これにより、軽量化を図ることができる。
金属軌道部216の外周面には、転動体4と接する軌道面214が設けられる。また、金属軌道部216の外周面の一部は内輪212と接している。
第1部分215は、金属軌道部216の内周面に接して軌道部11の軸方向に延びる。第1部分215は、金属軌道部216に対して固定されている。第1部分215と連続して、軌道部21の径方向に延びる第2部分221が設けられる。第2部分221は径方向に延びてフランジ22を形成する。第1部分215と第2部分221は連続している。第1部分215と第2部分221とが連続する構成の具体例は、上記実施形態1の第1部分11a,11bと第2部分12a,12bの構成と同様にすることができる。例えば、第1部分215に含まれる炭素繊維と第2部分221に含まれる炭素繊維は、少なくとも一部において連続している構成とすることができる。
図8に示す例では、炭素繊維強化繊維のシートの一例である炭素繊維プリプレグを積層して第1部分215及び第2部分221が形成される。例えば、炭素繊維プリプレグを途中で折り曲げて、内方部材6の軸方向に垂直な面と、径方向に垂直な面を含む状態としたものを積層することで、第1部分215及び第2部分221を互いに連続した状態で形成することができる。
内方部材6において、金属軌道部216の内周に形成される軸方向へ延びる炭素繊維強化樹脂は、軸方向の端部で直角に折れ曲がって径方向に延びてフランジ22の端部に達している。このように、金属軌道部216に接して軸方向に延びる第1部分215と、径方向へ延びて、フランジ22を形成する第2部分221とを一体的に形成することで、フランジ22の強度を確保することができる。
図8に示す例では、第2部分221には、軸方向外方へ突出する突出部218が設けられる。突出部218は、軸心Xを中心とする環状をなす。突出部218は、径方向に延びて形成される第2部分221の炭素繊維プリプレグの一部が直角に折れ曲がって軸方向に延びた部分によって形成することができる。すなわち、突出部218の炭素繊維強化樹脂と、第2樹脂部221の炭素繊維強化樹脂の一部は連続している構成とすることができる。これにより、突出部218の強度を確保することができる。
また、図8に示す例では、フランジ22が炭素繊維強化樹脂で形成される。炭素繊維強化樹脂で形成されたフランジ22は、錆びない。そのため、錆びによりフランジ22とブレーキディスク又はディスクホイール等の装着物とが固着することを防止できる。フランジ22は、金属軌道部216の内周面に接して軸方向に延びる第1部分215と連続する第2部分221により形成される。そのため、フランジ22の強度を確保することができる。
内方部材6の第1部分215及び第2部分221は、炭素繊維プリプレグの積層体の表面に、第1部分215及び第2部分221の形状に応じた型を配置し、加圧及び加熱することで形成することができる。加圧及び加熱の工程は、実施形態1と同様に行うことができる。加圧後に、型を除去して、第1部分215を金属軌道部216に圧入することで、内軸211を形成することができる。
図9は、図8に示す内方部材6の第1部分215及び第2部分221を形成する工程における型の配置の一例を示す図である。図9に示す例では、第1部分215と第2部分221を形成するための炭素繊維プリプレグの積層体の表面に、複数の部分に分割された型7p〜7wが配置されている。
これらの型7p〜7wは、第2部分221の軸方向に垂直な表面221a,221bを含む面P8,P9、第1部分215の径方向に垂直な表面(外周面)215aを含む面P11、突出部218の径方向に垂直な表面(外周面)218aを含む面P10で、分割されている。
第2部分221における互いに対向する軸方向に垂直な2つの表面221a,221bをそれぞれ含む2つの面P8,P9で型が分割される。この分割により、3つの型7p,7q,7rを配置することができる。型7pは、第2部分221の軸方向に垂直な2つの表面221a,221bのうち一方の表面221aを、他の型とは独立して押すことができる。型7qは、2つの表面221a,221bの間の第2部分221の外周面を、他の型とは独立して、押すことができる。型7rは、第2部分221の他方の表面221bを、他の型とは独立して押すことができる。このように、面P8,P9の型分割により、第2部分221の異なる表面を、それぞれ独立して押すことができる複数の型7p,7q,7rを配置することができる。
また、第1部分215及び第2部分221の外周を取り巻く型は、軸心Xを含む平面で分割されている。例えば、第2部分221の外周面を取り巻く型7q,7vは、軸心を含む平面を境に2つの型7q,7vに分割されている。これにより、型7q,7vは、径方向に移動可能になる。その結果、型7q,7vから第2部分221の外周面へ径方向の力を加えやすくなる。
また、第1部分215の径方向に垂直な外周面215aと重なる面P11、及び軸心Xを通る平面で型が分割されている。これにより、分割された型7r,7t,7wを配置することができる。型7r,7wは、それぞれ独立して、第1部分215の外周面215aを押すことができる。型7tは、第1部分215の軸方向に垂直な表面を、他の型とは独立して押すことができる。ここで、第1部分215の外周面215aを取り巻く型7r,7wは、軸心Xを含む平面を境に2つの部分(7r,7w)に分かれている。そのため、型7r,7wによって、第1部分215の外周面215aに径方向の力を加えやすくなる。
また、突出部218の外周面218aを含む面P10及び第1部分215の軸心Xを含む平面で型が分割されている。これにより、分割された型7p,7s,7uを配置することができる。型7p,7uは、それぞれ独立して、突出部218の外周面218aを押すことができる。型7sは、突出部218の軸方向に垂直な面及び内周面、並びに、突出部218の径方向内側に位置する第2部分221の面を押すことができる。ここで、突出部218の外周面218aを取り巻く型7p,7uは、軸心Xを含む平面を境に2つの部分(7p,7u)に分かれている。そのため、型7p,7uによって、突出部218の外周面218aに径方向の力を加えやすくなる。
図9に示す構成により、例えば、型7pは、第2部分221の軸方向に垂直な2つの表面のうち一方の表面221aと、突出部218の外周面218aを、型の他の部分(7q、7s,7u)とは独立して、押すことができる。型7qは、第2部分221の外周面を、型7rは、第2部分221の軸方向に垂直な2つの表面のうち他方の表面221bと、第1部分215の外周面215aを、他の型とは独立して押すことができる。同様に、型7uは、第2部分221の軸方向に垂直な2つの表面のうち一方の表面221a及と突出部の外周面218aを、型7vは、第2部分221の外周面を、型7wは、第2部分221の軸方向に垂直な2つの表面のうち他方の表面221bと第1部分215の外周面215aを、それぞれ、他の型とは独立して押すことができる。これにより、第1部分215、第2部分221及び突出部218の面精度を高めることができる。具体的には、第1部分215の外周面215aの円筒度又は表面粗さ、第2部分221の表面221a,221bの軸心Xに対する直角度又は表面粗さ、及び、突出部218の外周面及び内周面の円筒度又は表面粗さ等を高めることができる。
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態において、内方部材2の内軸211を中空の筒状に形成することもできる。
なお、上記実施形態において、型を分割する面P1〜P11は仮想の面である。面で型を分割するといった場合には、その面が、分割された型の一方と他方の境界面となる。例えば、その面には、分割された型の一方と他方との隙間または、一方又は他方のいずれかの面が配置される。
なお、型を分割する面P1〜P11と分割された型の境界面が、若干ずれている場合や、境界面の一部が面P1〜P11から離れている場合も、面P1〜P11で分割されたものとみなすことができる。例えば、型を分割する面の一例として、全体として面状であり、一部において凹凸又は曲面を含む面も、型を分割する面に含まれ得る。
また、上記実施形態には、軌道輪の軸方向に垂直な面で型を分割する構成が含まれるが、この面は、厳密に軸方向に垂直な面でなくてもよい。例えば、軌道輪の軸方向に対して上記効果が得られる程度の若干の角度を有する面で型を分割する場合も、軌道輪の軸方向に垂直な面で型を分割するものとみなすことができる。同様に、軌道輪の径方向に対して上記効果が得られる程度の若干の角度を有する面で型を分割する場合も、軌道輪の径方向に垂直な面で型を分割するものとみなすことができる。
上記例では、オートクレーブを用いて、炭素繊維プリプレグの積層体に圧力をかけることにより、軌道輪の部材として必要な強度及び形状が実現される。加圧は、オートクレームに限られず、例えば、熱プレスにより加圧することもできる。
1 外輪(軌道輪の一例)
2 内方部材(軌道輪の一例)
7a〜7f 型
11 軌道部
11a,11b 第1部分
111金属軌道部
12a,12b第2部分
12,22 フランジ

Claims (7)

  1. 車両用軸受の軌道輪であって、金属で形成された金属軌道部と、前記金属軌道部に取り付けられ前記軌道輪の軸方向の延びる第1部分と、前記第1部分の外周面から前記軌道輪の径方向に延びる第2部分とを有する軌道輪の製造方法であって、
    前記第1部分及び前記第2部分を形成するための炭素繊維強化樹脂のシートを積層する工程と、
    前記炭素繊維強化樹脂のシートの表面に、前記第1部分及び前記第2部分の形状に応じた型を配置する工程と、
    前記型が配置された炭素繊維強化樹脂のシートの積層体に圧力を加える工程と、
    前記型を取り除く工程と、を有し、
    前記型は、前記軌道輪の径方向に垂直な面であって前記第1部分の一部と重なる面、又は、前記軌道輪の軸方向に垂直な面であって前記第2部分の一部と重なる面の少なくともいずれかの面で分割されている、軌道輪の製造方法。
  2. 請求項1に記載の軌道輪の製造方法であって、
    前記型は、前記第1部分が有する前記軌道輪の径方向に垂直な表面を含む面、又は、前記第2部分が有する前記軌道輪の軸方向に垂直な表面を含む面の少なくともいずれかの面で分割されている、軌道輪の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の軌道輪の製造方法であって、
    前記型は、前記第1部分が有する前記軌道輪の径方向に垂直な2つの互いに対向する表面それぞれを含む2つの面で分割されている、軌道輪の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の軌道輪の製造方法であって、
    前記型は、前記第2部分が有する前記軌道輪の軸方向に垂直な2つの互いに対向する表面それぞれを含む2つの面で分割されている、軌道輪の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の軌道輪の製造方法であって、
    前記第1部分及び前記第2部分を形成するための前記炭素繊維強化樹脂のシートは、前記炭素繊維強化樹脂に含まれる炭素繊維が、前記軌道輪の径方向に垂直な方向又は前記軌道輪の軸方向に垂直な方向に配置されるように積層される、軌道輪の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の軌道輪の製造方法であって、
    前記炭素繊維強化樹脂のシートを積層する工程において、前記金属軌道部に、前記第1部分及び前記第2部分を形成するための炭素繊維強化樹脂のシートを積層する、軌道輪の製造方法。
  7. 外輪と、内方部材と、前記外輪及び前記内方部材の間に転動可能に配置された転動体とを備える軸受の製造方法であって、
    前記製造方法により製造される前記外輪及び内方部材の少なくとも一方は、金属で形成された金属軌道部と、前記金属軌道部に取り付けられ前記外輪又は内方部材の軸方向の延びる第1部分と、前記第1部分の外周面から前記外輪又は内方部材の径方向に延びる第2部分とを有し、
    前記第1部分及び前記第2部分を有する前記外輪又は内方部材の製造工程は、
    前記第1部分及び前記第2部分を形成するための炭素繊維強化樹脂のシートを積層する工程と、
    前記炭素繊維強化樹脂のシートの表面に、前記第1部分及び前記第2部分の形状に応じた型を配置する工程と、
    前記型が配置された炭素繊維強化樹脂のシートの積層体に圧力を加える工程と、
    前記型を取り除く工程と、を有し、
    前記型は、前記外輪又は内方部材の径方向に垂直な面であって前記第1部分の一部と重なる面、若しくは、前記外輪又は内方部材の軸方向に垂直な面であって前記第2部分の一部と重なる面の少なくともいずれかの面で分割されている、軸受の製造方法。
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WO2023162313A1 (ja) * 2022-02-24 2023-08-31 日本精工株式会社 ハブユニット軸受

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