本発明は、車両用ベルトモールに関する。
一般に、車両のドアは、ドアパネルと、ドアパネルの上部に組み付けられたドアフレームとを備える。ドアフレームはドアの窓枠である。窓開口は、昇降するドアガラスによって開閉される。ドアパネルの上縁部には、例えば下記特許文献1乃至3に記載されているように、車両用ベルトモールが組み付けられる。この車両用ベルトモールは、ドアバネルの上縁部に沿って延設されたベルトモール本体部を有する。また、この車両用ベルトモールは、ベルトモール本体部における車室側の側面からドアガラスへ向かって延設されたリップ部を有する。リップ部の先端は、ドアガラスに押し付けられて、撓んでいる。リップ部の先端部がドアガラスに押し付けられた状態でドアガラスが昇降することにより、ドアガラスに付着した水滴、埃などが除去される。リップ部は、経年劣化して硬化する。すなわち、リップ部の弾性力が低下する。また、リップ部は、経年劣化してドアガラスから離れるように変形する(反る)こともある。このように、リップ部が経年劣化したとき、リップ部の先端部がドアガラスへ押し付けられる力が低下する。したがって、ドアガラスに付着した水滴、埃などが除去され難くなる。
そこで、リップ部の耐久性を高めた車両用ベルトモールが知られている。例えば、特許文献1の車両用ベルトモールのリップ部の内部には、補強材が埋設されている。そのため、リップ部の弾性力が低下し難い。すなわち、リップ部の耐久性が高い。
また、特許文献2の車両用ベルトモールは、2つのリップ部を有する。上側及び下側のリップ部は、支持リップ部を有する。支持リップ部は、リップ部の本体部の中間部からベルトモール本体部へ向かって延設されている。支持リップ部の先端部は、ベルトモール本体部に当接している。リップ部の本体部が撓むと支持リップ部も撓む。これにより、リップ部の本体部がドアガラス側へ押圧される。このように、支持リップ部を撓ませてリップ部の本体部をドアガラス側へ押圧することにより、リップ部の本体部の付け根の部分に作用する応力を軽減できるので、リップ部の本体部の耐久性が向上する。
また、特許文献3の車両用ベルトモールは、2つのリップ部を有する。下側のリップ部は、サブリップを有する。サブリップは、リップ部の本体部の中間部から上方へ延設されている。リップ部の本体部がある程度撓むと、サブリップがベルトモール本体部に当接して撓む。これにより、リップ部の本体部がドアガラス側へ押圧される。このように、サブリップを撓ませてリップ部の本体部をドアガラス側へ押圧することにより、リップ部の本体部の付け根の部分に作用する応力を軽減できるので、リップ部の本体部の耐久性が向上する。
特開2007−131270号公報
特開2004−130961号公報
特開2012−171559号公報
特許文献1の車両用ベルトモールは、リップ部の内部に補強材が埋設されているので、部品コスト及び製造コストが高い。また、特許文献2の車両用ベルトモールは、2つのリップ部にそれぞれ支持リップ部が形成されているので、材料コストが高い。また、特許文献3の車両用ベルトモールは、上側のリップ部の耐久性を向上させる手段を有していないので、下側のリップ部よりも上側のリップ部が先に劣化する虞がある。
本発明は上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、リップ部の耐久性を向上させた車両用ベルトモールであって、安価な車両用ベルトモールを提供することにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、車両のドア(1)のドアパネル(2)の上縁に沿って延設されたベルトモール本体部(20)と、前記ベルトモール本体部における車室側の側面から前記ドアのドアガラス(G)へ向かって延設された第1リップ部(30)と、前記第1リップ部の下方に設けられ、前記ベルトモール本体部における車室側の側面から前記ドアのドアガラスへ向かって延設された第2リップ部(40)と、を備えた車両用ベルトモールであって、前記第1リップ部及び第2リップ部のうちのいずれか一方のリップ部は、他方のリップ部へ向かって突出した突出部(33)を有し、前記他方のリップ部における前記ドアガラス側に位置する先端部が、前記他方のリップ部におけるベルトモール本体部側に位置する基端部を支点として、前記ドアガラスから離れる方向へ回動したとき、前記他方のリップ部が前記突出部を押圧して、前記一方のリップ部を前記ドアガラスに押し付け、前記一方のリップ部における前記ドアガラス側に位置する先端部が、前記一方のリップ部におけるベルトモール本体部側に位置する基端部を支点として、前記ドアガラスから離れる方向へ回動したとき、前記突出部が前記他方のリップ部を押圧して、前記他方のリップ部を前記ドアガラスに押し付ける、車両用ベルトモールとしたことにある。
この場合、前記第1リップ部及び前記第2リップ部は、前記ベルトモール本体部における車室側の側面から前記ドアのドアガラスへ向かって斜め上方へ延設され、前記第1リップ部は、前記第2リップ部へ向かって突出した突出部を有するとよい。
本発明によれば、第1リップ部及び第2リップ部のうちのいずれか一方のリップ部が劣化してドアガラスから離れる方向へ回動したとき、突出部によって、他方のリップ部がドアガラスへ押し付けられる。つまり、一方のリップ部が劣化して、前記一方のリップ部によってドアガラスを払拭する性能が低下したとしても、他方のリップ部によってドアガラスを払拭する性能が向上(又は回復)する。これにより、リップ部全体としての耐久性が向上する。
また、特許文献1の車両用ベルトモールのような補強材が不要である。したがって、車両用ベルトモールを安価に提供できる。
本発明の一実施形態に係る車両用ベルトモールが適用された車両用ドアの側面図である。
図1の車両用ベルトモールの斜視図である。
図1のA−A断面図である。
第2リップ部が劣化した状態を示す断面図である。
第1リップ部が劣化した状態を示す断面図である。
本発明の変形例に係る車両用ドアモールの断面を示す断面図である。
本発明の一実施形態に係る車両用ベルトモール10について説明する。まず、車両用ベルトモール10が組み付けられる車両用ドア1の構成について簡単に説明しておく。車両用ドア1は、図1に示すように、車両の左側前部座席の乗降口を開閉するドアパネル2とドアの窓枠を構成するドアサッシュ3を有する。
ドアパネル2は、図示しないヒンジを介して、車両本体部に組み付けられる。ドアパネル2は、車室側に配置されたインナーパネル2aと、車室とは反対側に配置されたアウターパネル2bとが接合されて上方へ開放された袋状に形成されている。ドアサッシュ3はドアパネル2の上端部に組み付けられている。ドアサッシュ3は、ドアパネル2の後端部から上方へ延設された垂直部3aと、ドアパネル2の前端部から上方且つ後方へ延設された湾曲部3bを備える。垂直部3aの下端部は、インナーパネル2aとアウターパネル2bとの間に挿入され、ドアパネル2の後端部(例えばインナーパネル2aの上縁部における後端部)に溶接されている。垂直部3aの上端部は湾曲部3bの後端部に接続されている。また、湾曲部3bの前端部は、インナーパネル2aとアウターパネル2bとの間に挿入され、ドアパネル2の前端部(例えばインナーパネル2aの上縁部における前端部)に溶接されている。
ドアパネル2とドアサッシュ3との間には窓開口DWが形成されている。ドアパネル2内には、ドアガラスGが収容されている。このドアガラスGは、図示しない昇降装置により駆動されて昇降し、窓開口DWを開閉する。アウターパネル2bの上端縁には、車両用ベルトモール10が組み付けられている。なお、車両用ベルトモール10は、左側前部座席のドアに限られず、他のドアにも適用可能である。
つぎに、車両用ベルトモール10の構成について説明する。車両用ベルトモール10は、図2及び図3に示すように、本体部20、第1リップ部30、及び第2リップ部40を備える。
本体部20は、合成樹脂製である。本体部20は、窓開口DWの下端縁に沿って車両前後方向に延設されている。本体部20は、内壁部21、上壁部22及び外壁部23を有する。内壁部21は、車両前後方向に延びる板状に形成されている。内壁部21は、ドアガラスGに略平行に形成されている。内壁部21の下端部には、左方(車室とは反対側)へ向かって突出した爪部N1が形成されている。上壁部22は、車両前後方向に延びる板状に形成されている。上壁部22は、内壁部21の上端から左方且つ下方へ延設されている。外壁部23は、車両前後方向に延びる板状に形成されている。外壁部23は、上壁部22の左端から下方へ延設されている。外壁部23は、内壁部21に略平行である。外壁部23の先端(左下端)は、内壁部21の下端よりも上方に位置している。外壁部23の先端部には、右方(車室側)へ突出した爪部N2が形成されている。
第1リップ部30は、合成樹脂製である。第1リップ部30は、窓開口DWの下端縁に沿って車両前後方向に延設されている。第1リップ部30は、内壁部21の車室側の面(右面)における上端部からドアガラスGへ向かって略水平に延設された基端部31と、基端部31におけるドアガラスG側の端部から、ドアガラスGへ向かって斜め上方へ延設された先端部32を有する。基端部31の車幅方向中央部が少しくびれている。すなわち、基端部31の車幅方向中央部の肉厚は、基端部31の車幅方向両端部の肉厚よりも少し小さい。また、先端部32のうちの基端部31側の端部及びドアガラスG側の端部の肉厚は、先端部32の車幅方向中間部の肉厚よりも小さい。第1リップ部30の先端部32に車両高さ方向への外力が作用したとき、主に基端部31が屈曲する。つまり、基端部31を支点として、先端部32が回動する。また、第1リップ部30は、先端部32における基端部31側の端部から、次に説明する第2リップ部40の先端部42へ向かって、斜め下方へ突出した突出部33を有する。
第2リップ部40も、第1リップ部30と同様に、窓開口DWの下端縁に沿って車両前後方向に延設されている。第2リップ部40は、第1リップ部30の下方に形成されている。第2リップ部40の構成は、第1リップ部30の構成とほぼ同様である。すなわち、第2リップ部40は、内壁部21の車室側の面(右面)における下端部からドアガラスGへ向かって略水平に延設された基端部41と、基端部41におけるドアガラスG側の端部から、ドアガラスGへ向かって斜め上方へ延設された先端部42を有する。基端部41の車幅方向中央部が少しくびれている。また、先端部42のうちの基端部41側の端部及びドアガラスG側の端部の肉厚は、先端部42の車幅方向中間部の肉厚よりも小さい。第2リップ部40の先端部42に車両高さ方向への外力が作用したとき、主に基端部41が屈曲する。つまり、基端部41を支点として、先端部42が回動する。なお、第2リップ部40は、第1リップ部30とは異なり、突出部を有していない。
第1リップ部30及び第2リップ部40の材料として、本体部20の材料よりも軟質の材料が採用されている。本体部20、第1リップ部30及び第2リップ部40は、共押出成形法(二色押出成形法)を用いて一体的に形成されている。ただし、本体部20、第1リップ部30及び第2リップ部40が同じ材料で構成されていてもよい。
つぎに、車両用ベルトモール10を車両用ドア1に組み付ける手順について説明する。アウターパネル2bの上端部は、フランジ状に形成されている(図2参照)。つまり、アウターパネル2bの上端部は、アウターパネル2bを構成する板金が折り曲げられて重ねあわされることにより、車両前後方向に延びる板状に形成されている。車両用ベルトモール10をアウターパネル2bの上方から下降させ、内壁部21と外壁部23との間にアウターパネル2bの上端部を挿入する。すると、爪部N2がアウターパネル2bにおける車室とは反対側の面に当接した状態で、爪部N1が前記板金の端面に係止される。上記のようにして、車両用ベルトモール10が車両用ドア1に組み付けられる。図3は、ドアガラスGが下降して、窓開口が完全に開いた状態を示しており、この状態では、第1リップ部30及び第2リップ部40が自由状態(両リップ部に外力が作用していない状態)となっている。この状態では、第1リップ部30の先端部32及び第2リップ部40の先端部42は、図3に2点鎖線で示した、ドアガラスGが昇降した際の軌跡を横切っている。また、突出部33と先端部42とは離間している。ドアガラスGが上昇すると、先端部32及び先端部42がドアガラスGに当接し、先端部32及び先端部42は、基端部31及び基端部41を支点として、図3において反時計回りにそれぞれ回動する。すなわち、第1リップ部30及び第2リップ部40が撓む。この状態において、第1リップ部30の突出部33の下端部における車室側の面と第2リップ部40の先端部42における車室とは反対側の面とが当接している(図4A及び図4B参照)。
図4Aに示すように、ドアガラスGが閉じた状態において、第2リップ部40が劣化して反ったとき、先端部42がドアガラスGに押し付けられる力が低下する。しかし、第2リップ部40が反った際、突出部33の下端部が、先端部42によって、上方且つ左方(車室とは反対側)へ押圧される。これにより、第1リップ部30の先端部32は、基端部31を支点として時計回りに回動する(撓む)。そのため、先端部32がドアガラスGに押し付けられる力が増す。一方、図4Bに示すように、ドアガラスGが閉じた状態において、第1リップ部30が劣化して反ったとき、第1リップ部30がドアガラスGに押し付けられる力が低下する。しかし、第1リップ部30が反った際、突出部33の下端部が、先端部42を下方且つ右方(車室側)へ押圧する。これにより、第2リップ部40の先端部42は、基端部41を支点として時計回りに回動する(撓む)。そのため、先端部42がドアガラスGに押し付けられる力が増す。つまり、第1リップ部30及び第2リップ部40のうちのいずれか一方のリップ部が劣化して反ったとき(ドアガラスGから離れるように変形したとき)、突出部33によって、他方のリップ部がドアガラスG側へ押圧される。上記のように、車両用ベルトモール10によれば、一方のリップ部が劣化して、前記一方のリップ部によってドアガラスGを払拭する性能が低下したとしても、他方のリップ部によってドアガラスGを払拭する性能が向上(又は回復)する。これにより、リップ部全体としての耐久性が向上する。
また、特許文献1の車両用ベルトモールのような補強材が不要である。また、突出部33は第1リップ部30にのみ形成されているので、特許文献2の車両用ベルトモールに比べて材料コストが安い。したがって、車両用ベルトモール10を安価に提供できる。
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態においては、先端部32の材料と突出部33の材料は同一である。しかし、これに代えて、突出部33の材料として、先端部32の材料よりも硬質の材料を採用しても良い。
また、例えば、図5に示すように、第2リップ部40は、先端部42から第1リップ部30の先端部32へ向かって、斜め上方へ突出した突出部43を有していてもよい。この場合、第1リップ部30の突出部33の長さを上記実施形態よりも少し短くするとよい。そして、先端部32及び先端部42がドアガラスGに当接した状態において、突出部43の車室とは反対側の面が、突出部33の車室側の面に当接するとよい。これによっても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
1・・・車両用ドア、2・・・ドアパネル、2b・・・アウターパネル、3・・・ドアサッシュ、10・・・車両用ベルトモール、20・・・本体部、21・・・内壁部、22・・・上壁部、23・・・外壁部、30・・・第1リップ部、31・・・基端部、32・・・先端部、33・・・突出部、40・・・第2リップ部、41・・・基端部、42・・・先端部、43・・・突出部、DW・・・窓開口、N1,N2・・・爪部