JP2016144825A - 2次プレス加工性評価方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】2次プレス成形を行うときの各種加工要素の歪状態を正確に把握できるための評価方法を提供する。
【解決手段】本発明は、特定のプレス加工性評価装置1を用いてプレス成形の対象となる対象材料を1次プレス成形し、1次プレス成形体を得る1次プレス成形工程と、このプレス加工性評価装置1を用いて、1次プレス成形体に所定の加工が施された変形1次プレス成形体を2次プレス成形する等して2次プレス成形体を得る2次プレス成形工程と、2次プレス成形体の変形量を測定する2次変形量測定工程とを含む。特定のプレス加工性評価装置1は、多枝形状の凸部132を有するパンチ13と、この凸部132と嵌合可能な凹部231、及びこの凹部231を囲むダイス側平面部232を有するダイス23と、プレス成形の対象となる対象材料をダイス側平面部232及び板押え側平面部321で挟み込み可能な板押え32とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、2次プレス加工性評価方法に関する。
鋼材又は非鉄材を使用したプレス成形品は、各部位に所定の塑性変形を生じることで所望の形状となる。
プレス成形の塑性変形の加工要素は、最大主歪及び最小主歪を用いて、引張り方向の変形、圧縮方向の変形、変形無しの各組合せにより、大きく4種類に分類される。変形後も直交を保つような3つの直交軸を歪の主軸といい、その主軸方向の垂直歪が主歪であって、そのうちの最大値、最小値が最大主歪、最小主歪と呼ばれている。図9は、それらの加工要素を図示したものである。最大主歪をε、最小主歪をε、そして最大主歪εと最小主歪εのどちらとも直交する板厚方向歪をεと表記している。最大主歪εが引張り変形であって、最小主歪εが変形なしである加工要素を平面歪引張変形(図9のA)、最大主歪εと最小主歪εがいずれも引張り変形である加工要素を二軸引張変形(図9のC)、最大主歪εが引張り変形であって、最小主歪εが圧縮変形である加工要素を縮みフランジ変形(図9のD)、最大主歪εが引張り変形、最小主歪εが圧縮変形であり、圧縮が引張りの1/2相当の歪量である加工要素を単軸引張変形又は伸びフランジ変形と称している(図9のB)。
ところで、鋼材又は非鉄材の加工性を評価する方法は多数存在するが、ほとんどは加工要素が一つである単一成形の評価である。例えば、穴広げ試験や鞍型試験のような単一成形による加工性の評価方法が行われている。また、金属板の伸びフランジ成形性を評価する手法として、パンチ、ダイス及びパッドを用いて、V字状に切断したコーナーを有する金属製のブランクをプレス成形して金属板の伸びフランジ成形性を評価する試験方法が知られている(特許文献1)。
特開2008−264829号公報
しかしながら、実際のプレス加工では、1つの成形加工品の中に複数個の加工要素が含まれる複合成形が主である。例えば、図19に示すように、管が1本から複数本へ分岐する構造を有するプレス成形部品は、対象材料に対し、上記した代表的な4つの加工要素(平面歪引張変形、二軸引張変形、縮みフランジ変形及び単軸引張変形)をいずれも含む1次プレス成形を行うことによって得られる。さらに、図19に示すプレス成形部品は、1次プレス成形加工品における多枝形状領域とは異なる他の領域のいずれか一方を所定幅のフランジ領域を残して取り除き、フランジ領域に対し、単軸引張り変形の一態様である伸びフランジ変形を含む2次プレス成形を行うという加工も加えられている。複合成形品の加工安定度を評価するためには各種加工要素の歪状態を正確に把握することが必要であり、複合成形時の各種加工要素の歪状態を正確に把握することにより、1次プレス成形における割れ危険部位や2次プレス成形を行う際の各部位の加工度を正確に特定することが可能となる。
ところが、これまでの加工性評価方法は、歪状態の評価を単一の加工要素ごとに行い、これを実際の複合成形品と比較して、最終的な評価としてきたが、複合成形は、1つの成形加工品の中で隣り合う別の加工要素の影響を多分に受けるため、単一成形での評価結果と、複合成形での評価結果との間で齟齬が生じる場合があった。そのため、複数個の加工要素が付与された1次成形加工品の2次成形加工性を正確に評価するのは難しく、2次成形加工性の評価は、予め二軸引張変形による単一変形を付与したブランクを用いて行っていた。
しかしながら、二軸引張変形のみを付与した1次成形加工品に2次プレス成形を付与した場合の評価結果と、複数種類の加工要素からなる複合成形を付与した1次成形加工品に2次プレス成形を付与した場合の評価結果との間では、齟齬が生じ得る。複合成形を付与した1次成形加工品に2次プレス加工を付与する場合、2次成形加工品の減肉や割れ等の加工安定度を評価するためには、1次プレス成形及び2次プレス成形の各種加工要素の歪状態を正確に把握することが必要である。
また、変形の態様は、プレス成形部品の種類によって異なり、プレス成形部品ごとにそれぞれ異なる金型(ダイス、パンチ)を作成するのは非常に煩雑である。
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、複合成形からなる1次プレス成形によって得られる単一形状の1次プレス成形体により、さらに2次プレス成形を行うときの各種加工要素(平面歪引張変形、二軸引張変形、縮みフランジ変形及び単軸引張変形)の歪状態を正確に把握できるための評価方法を提供することである。
本発明者らは、上記のような課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、特定の形状のパンチ及びダイスを備える装置を用いることで、上記の課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
(1)本発明は、3以上の枝からなる多枝形状の凸部を有するパンチと、前記凸部と嵌合可能な3以上の枝からなる多枝形状の凹部、及び前記凹部を囲むダイス側平面部を有するダイスと、前記ダイス側平面部と略平行な板押え側平面部を有し、プレス成形の対象となる対象材料を前記ダイス側平面部及び前記板押え側平面部で挟み込み可能な板押えとを備えるプレス加工性評価装置を用いて、プレス成形の対象となる対象材料を1次プレス成形し、1次プレス成形体を得る1次プレス成形工程と、前記プレス加工性評価装置を用いて、前記1次プレス成形体に所定の加工が施された変形1次プレス成形体を2次プレス成形するか、又は前記プレス加工性評価装置の所定のパラメータを変更して前記1次プレス成形体若しくは前記変形1次プレス成形体を2次プレス成形し、2次プレス成形体を得る2次プレス成形工程と、前記2次プレス成形体の平面歪引張変形、単軸引張変形、二軸引張変形及び縮みフランジ変形の中から少なくとも一種以上の変形量を測定する2次変形量測定工程とを含む、2次プレス加工性評価方法である。
(2)本発明は、前記多枝形状の枝が3つである場合、隣り合う枝どうしがなす角は互いに鈍角であり、前記多枝形状の枝が4つである場合、隣り合う枝どうしがなす角は略直角であり、前記多枝形状の枝が5つ以上である場合、隣り合う枝どうしがなす角は互いに鋭角である、上記(1)に記載の2次プレス加工性評価方法である。
(3)本発明は、前記多枝形状の枝が4つであり、前記凸部及び前記凹部が略十字形状である、上記(1)又は(2)に記載の2次プレス加工性評価方法である。
(4)本発明は、前記ダイスを平面視する場合、前記凹部の角部は曲線をなしており、前記ダイスの前記枝の幅をWdとし、前記ダイスの前記枝の角部における曲率半径をRcとするとき、前記Wdの前記Rcに対する比Wd/Rcは、2以上15未満であり、前記パンチを正面視する場合、前記凸部の頂部における肩部は、曲線をなしており、前記肩部における曲率半径をRpとし、前記凸部の厚さをHpとし、さらに、前記ダイスを断面視する場合、前記凹部の底部は曲線をなしており、前記底部の曲率半径をRdとするとき、Hp≧(Rp+Rd)/2である、上記(1)から(3)のいずれかに記載の2次プレス加工性評価方法である。
(5)本発明は、前記2次変形量測定工程は、前記対象材料に複数の印を予め転写し、2次プレス成形の前後での前記印の最大主歪及び最小主歪を測定し、前記2次プレス成形体の前記凸部の隅部に隣接する底部を含む領域に相当する箇所であって、最大主歪が最も大きく、最小主歪が略変形なしである箇所の変形量を、前記平面歪引張変形に関係する変形量とし、前記2次プレス成形体の枝における長さ方向の側面の領域に相当する箇所であって、最大主歪が最も大きく、最小主歪が圧縮変形である箇所の変形量を、前記単軸引張変形に関係する変形量とし、前記2次プレス成形体の前記凸部の角部であり、かつ、肩部である領域に相当する箇所であって、最大主歪が最も大きく、最小主歪が引張変形である箇所の変形量を、前記二軸引張変形に関係する変形量とし、前記2次プレス成形体の凸部を囲む平面部の領域に相当する箇所であって、最大主歪が最も大きく、最小主歪が最も小さい箇所の変形量を、前記縮みフランジ変形に関係する変形量とする工程である、請求項1から4のいずれかに記載の2次プレス加工性評価方法である。
(6)本発明は、前記複数の印の最大主歪及び最小主歪の関係をプロットし、このプロットの結果から前記2次プレス成形体の割れを予測する割れ予測工程をさらに含む、上記(1)から(5)のいずれかに記載の2次プレス加工性評価方法である。
(7)本発明は、前記対象材料として、四角形状、八角形状、楕円形状、又は円形状であるブランクを用いる、上記(1)から(6)のいずれかに記載の2次プレス加工性評価方法である。
(8)本発明は、前記所定の加工は、前記1次プレス成形工程の後、前記2次プレス成形工程の前に、前記1次プレス成形体における多枝形状領域又は前記多枝形状領域とは異なる他の領域のいずれか一方を、所定幅のフランジ領域を残して取り除き、前記変形1次プレス成形体を得る工程を含み、前記2次プレス成形工程は、前記プレス加工性評価装置を用いて前記変形1次プレス成形体の前記フランジ領域をフランジアップする工程を含む、上記(1)から(7)のいずれかに記載の2次プレス加工性評価方法である。
(9)本発明は、前記2次プレス成形工程は、前記プレス加工性評価装置の板押え力を変更して前記1次プレス成形体を2次プレス成形する工程を含み、前記2次プレス成形工程における板押え力は、前記1次プレス成形工程における板押え力よりも高い、上記(1)から(7)のいずれかに記載の2次プレス加工性評価方法である。
(10)本発明は、3以上の枝からなる多枝形状の凹部を有するパンチと、前記凹部と嵌合可能な3以上の枝からなる多枝形状の凸部、及び前記凸部を囲むダイス側平面部を有するダイスと、前記ダイス側平面部と略平行な板押え側平面部を有し、プレス成形の対象となる対象材料を前記ダイス側平面部及び前記板押え側平面部で挟み込み可能な板押えとを備える、前記対象材料のプレス加工性を評価するプレス加工性評価装置を用いてプレス成形の対象となる対象材料を1次プレス成形し、1次プレス成形体を得る1次プレス成形工程と、前記1次プレス成形体の平面歪引張変形、単軸引張変形、二軸引張変形及び縮みフランジ変形の中から少なくとも二種以上の変形量を測定する1次変形量測定工程と、前記プレス加工性評価装置を用いて、前記1次プレス成形体に所定の加工が施された変形1次プレス成形体を2次プレス成形するか、又は前記プレス加工性評価装置の所定のパラメータを変更して前記1次プレス成形体若しくは前記変形1次プレス成形体を2次プレス成形し、2次プレス成形体を得る2次プレス成形工程と、前記2次プレス成形体の平面歪引張変形、単軸引張変形、二軸引張変形及び縮みフランジ変形の中から少なくとも一種以上の変形量を測定する2次変形量測定工程とを含む、2次プレス加工性評価方法である。
3以上の枝からなる多枝形状の凸部を有するパンチと、前記凸部と嵌合可能な3以上の枝からなる多枝形状の凹部、及び前記凹部を囲むダイス側平面部を有するダイスと、前記ダイス側平面部と略平行な板押え側平面部を有し、プレス成形の対象となる対象材料を前記ダイス側平面部及び前記板押え側平面部で挟み込み可能な板押えとを備えるプレス加工性評価装置を用いて、プレス成形の対象となる対象材料を1次プレス成形する。この1次プレス成形によって得られる1次プレス成形体は、3以上の枝からなる多枝形状の凸部と、この凸部を囲む略平面な平面部とを有する。
続いて、前記プレス加工性評価装置を用いて、前記1次プレス成形体に所定の加工が施された変形1次プレス成形体を2次プレス成形するか、又は前記プレス加工性評価装置の所定のパラメータを変更して前記1次プレス成形体若しくは前記変形1次プレス成形体を2次プレス成形し、2次プレス成形体を得る。
例えば、1次プレス成形工程の後、2次プレス成形工程の前に、1次プレス成形体における多枝形状領域又は前記多枝形状領域とは異なる他の領域のいずれか一方を、所定幅のフランジ領域を残して取り除き、変形1次プレス成形体を得る。そして、2次プレス成形工程において、変形1次プレス成形体のフランジ領域を上記のプレス加工性評価装置でフランジアップする。
また、例えば、1次プレス成形工程から2次プレス成形工程までの間に1次プレス成形体の一部領域を取り除くことなく、プレス加工性評価装置の板押え力を、1次プレス成形工程における板押え力よりも高くして1次プレス成形体を2次プレス成形する。
2次プレス成形において、2次プレス成形体の凸部を囲む平面部のうち、前記凸部の隅部に隣接する底部を含む領域に相当する箇所であって、最大主歪が最も大きく、最小主歪が略変形なしである箇所の2次プレス前後の変形量を測定することで、2次プレス成形体の平面歪引張変形が主体で関与する変形量を測定できる。
また、2次プレス成形体の枝における長さ方向の側面の領域に相当する箇所であって、最大主歪が最も大きく、最小主歪が圧縮変形である箇所の2次プレス前後の変形量を測定することで、2次プレス成形体の単軸引張変形が主体で関与する変形量を測定できる。
そして、2次プレス成形体の凸部の角部であり、かつ、肩部である領域に相当する箇所であって、最大主歪が最も大きく、最小主歪が引張変形である箇所の2次プレス前後の変形量を測定することで、2次プレス成形体の二軸引張変形が主体で関与する変形量を測定できる。
さらに、2次プレス成形体の凸部を囲む平面部の領域に相当する箇所であって、最大主歪が最も大きく、最小主歪が最も小さい箇所の2次プレス前後の変形量を測定することで、2次プレス成形体の縮みフランジ変形が主体で関与する変形量を測定できる。
したがって、本発明は、複合成形からなる1次プレス成形によって得られる単一形状の1次プレス成形体により、さらに2次プレス成形を行うときの各種加工要素(平面歪引張変形、二軸引張変形、縮みフランジ変形及び単軸引張変形)の歪状態を正確に把握できる。
本発明に係る2次プレス加工性評価方法を使用するのに好適なプレス加工性評価装置1を説明するための概略断面図である。 一実施形態に係るパンチ13を説明するための図である。 他の実施形態に係るパンチ13を説明するための図である。 ダイス23を説明するための図である。 板押え32を説明するための図である。 1次プレス成形工程によって得られる1次プレス成形体40の一例を示す概略説明図である。 ダイス23における枝の幅Wdと角部の曲率半径Rcとの比Wd/Rcに関してプレス成形体の状態を説明するための図である。 2次プレス成形工程の一例を示す概略説明図である。 プレス成形の塑性変形の加工要素を説明するための図である。 上記の各加工要素における最小主歪と最大主歪との関係を示す図である。 試験例において使用したダイス及びパンチの寸法を示す図である。 試験例1及び2において、1次プレス成形した後の変形1次プレス成形体を説明するための図である。 試験例1及び2において、変形1次プレス成形した後の2次プレス成形体を説明するための図である。 試験例1及び2に係る1次プレス成形体及び2次プレス成形体の加工前後での歪分布を示す図である。 試験例2に係る1次プレス成形体及び2次プレス成形体の歪み状態を示す図である。 図15に図14のa〜dを重ね合わせた図である。 実製品での検証を行うにあたり、各種プレス成形体における板厚変化率の測定位置を説明するための図である。 図17における位置1〜3での板厚変化率を示す図である。 管が1本から複数本へ分岐する構造を有するプレス成形部品の一例を示す図である。
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
<2次プレス加工性評価方法>
本発明に係る2次プレス加工性評価方法は、特定のプレス加工性評価装置を用いてプレス成形の対象となる対象材料を1次プレス成形し、1次プレス成形体を得る1次プレス成形工程と、このプレス加工性評価装置を用いて、1次プレス成形体に所定の加工が施された変形1次プレス成形体を2次プレス成形するか、又はプレス加工性評価装置の所定のパラメータを変更して1次プレス成形体若しくは変形1次プレス成形体を2次プレス成形し、2次プレス成形体を得る2次プレス成形工程と、2次プレス成形体の変形量を測定する2次変形量測定工程とを含む。
〔1次プレス成形工程〕
1次プレス成形工程は、特定のプレス加工性評価装置1を用いてプレス成形の対象となる対象材料を1次プレス成形し、1次プレス成形体40を得る工程である。
[プレス加工性評価装置1]
図1は、プレス加工性評価装置1を説明するための模式図である。プレス加工性評価装置1は、パンチ部10と、このパンチ部10と嵌合可能なダイス部20と、パンチ部10及びダイス部20の両側に設けられるガイド部30A、30Bとを備える。
パンチ部10は、底板11と、この底板11の表面に設けられたパンチホルダー12と、このパンチホルダーの表面で支持されるパンチ13と有する。ダイス部20は、上板21と、この上板の底面に設けられたダイスホルダー22と、このダイスホルダー22の底面で支持されるダイス23とを有する。ガイド部30A、30Bは、ダイス部20の両側に設けられ、ダイス部20の移動方向を定めるガイドピン31A、31Bと、パンチ部10の両側に設けられ、プレス成形の対象となる対象材料(以下、「プレス成形対象材料」と略称する。)をダイス部20とともに挟み込み可能な板押え32A、32Bと、板押え32A、32Bの底部に設けられ、板押え32A、32Bを支えるクッションピン33A、33Bとを有する。図1には、プレス成形対象材料の板材50をパンチ10とダイス23との間に配置した態様が示されている。当該板材50は、プレス加工中にパンチ13とダイス23との間に引き込まれて、その外周が収縮するため、板材50の幅は、パンチ13の幅よりも十分に大きなものが使用される。
(パンチ13)
図2の(a)は、パンチ13の一例を示す概略斜視図であり、多枝形状の枝が4つである場合の一例である。パンチ13は、凸部132を有する。凸部132は、4つの凸部132A、132B、132C、132Dからなる多枝形状を呈している。
図2の(b)は、パンチ13の平面図であり、図2の(c)は、パンチ13の正面図である。
凸部132は、3以上の枝132A,132B,132C,132Dからなる多枝形状で構成される。パンチ13の凸部132は、多枝形状で構成されていないと、プレス成形したときに、プレス成形体の隣り合う枝どうしが交差する交差部を形成することができず、プレス成形体の平面歪引張変形を好適に測定できないため、好ましくない。
枝の数は、特に限定されるものでないが、プレス成形体の形状が比較的単純であり、プレス成形体の平面歪引張変形、単軸引張変形、二軸引張変形及び縮みフランジ変形の中から少なくとも二種以上の変形量を比較的容易に測定できる点で、枝の数は、3以上8以下であることが好ましく、3以上5以下であることがより好ましい。また、枝先端又は枝交差部における材料の圧延方向の影響を検討するに際し、一般的な引張試験において行われる、プレス成形の対象材料の圧延方向に対して、0°、45°、90°の各方向における正確な歪み量のデータを採取するためには、枝の数は、4であることが特に好ましい。
隣り合う枝どうしがなす好ましい角度は、多枝形状の枝の数によって異なる。多枝形状の枝が3つである場合、隣り合う枝どうしがなす角は互いに鈍角であることが好ましい。多枝形状の枝が4つである場合、隣り合う枝どうしがなす角は略直角であることが好ましい。また、多枝形状の枝が5つ以上である場合、隣り合う枝どうしがなす角は互いに鋭角であることが好ましい。なお、隣り合う枝どうしがなす角は、鈍角と鋭角との両方を含むようにすることもできる。
図3の(a)は、多枝形状の枝が3つであるパンチ13’の一例を示す平面図であり、図3の(b)は、多枝形状の枝が5つであるパンチ13’’の一例を示す平面図である。各種加工要素(平面歪引張変形、二軸引張変形、縮みフランジ変形及び単軸引張変形)の変形状態をより正確に把握できるようにするため、図2及び図3に示すとおり、隣り合う枝どうしがなす好ましい角度は、互いに略等しいことがより好ましい。すなわち、隣り合う枝どうしがなす角は、(枝の数)/360°程度であることがより好ましい。具体的には、多枝形状の枝が3つである場合、隣り合う枝どうしがなす角は、互いに略120°であり、凸部12が略三ツ矢状に形成されていることが好ましい。多枝形状の枝が3つである場合、隣り合う枝どうしがなす角は、互いに略直角であり、凸部12が略十字状に形成されていることが好ましい。また、多枝形状の枝が5つである場合、隣り合う枝どうしがなす角は、略72°であり、互いに略星状であることが好ましい。
パンチ13は、図2(b)に示すように、パンチの凸部132を平面視する場合、凸部132のパンチ角部eは、パンチ13の径方向内側に湾曲しており、凸部132の隅部fは、パンチ13の径方向外側に湾曲している。本明細書において、凸部132の角部eとは、凸部132の周縁(エッジ)のうち、枝が周囲に突出して凸方向に形成された部分をいい、凸部132の隅部fとは、凸部132の周縁(エッジ)のうち、隣り合う枝どうしがなす凹方向に形成された部分をいう。
また、図2の(c)に示すとおり、パンチの凸部132を正面視する場合、凸部132の周縁(エッジ)のうち、枝132A、132B、132C、132Dの頂部におけるパンチ肩部gは、パンチ13の径方向内側に曲率半径Rpで湾曲させるR(曲線)をなしており、パンチ肩部gから凸部132の基部に向かう外形は、ほぼ縦方向に延びる形状をなしている。本明細書において、凸部132の頂部とは、凸部132におけるプレス成形対象材料と当接する側をいい、凸部132の基部とは、凸部132おけるパンチホルダー12の上に配設される側をいう。
加えて、パンチの凸部132の頂部から基部までの厚さをHpとするとき、Hp≧(Rp+Rd)/2であることが好ましい。Hpが(Rp+Rd)/2以上であることにより、対象材料をプレス成形して得られるプレス成形体の平面歪引張変形及び単軸引張変形を好適に測定できる。
(ダイス23)
図4の(a)は、ダイス23の一例を示す概略斜視図であり、4つの枝を有するパンチ13と組み合わせて使用されるダイス例である。図4の(b)は、ダイス23の平面図であり、図4の(c)は、図4(a)のX−X線における断面図である。
図4の(a)に示すように、ダイス23は、パンチ13と嵌合可能に形成される。ダイス23は、凸部132と嵌合可能な4つの凹部231、及びこの凹部231を囲むダイス側平面部232を有する。
図4の(b)に示すように、ダイス23は、凹部231を平面視する場合、凹部231の枝231A、231B、231C、231Dのダイス角部eは、ダイス23の径方向内側に曲率半径Rcで湾曲させるR(曲線)をなしており、凹部132の枝231A、231B、231C、231Dのダイス隅部fは、ダイス23の径方向外側に曲率半径Rcで湾曲させるR(曲線)をなしている。本明細書において、凹部231の枝231A、231B、231C、231Dのダイス角部eとは、凹部231の周縁(エッジ)のうち、凸方向に形成された部分をいい、凹部231の枝231A、231B、231C、231Dのダイス隅部fとは、凹部231の周縁(エッジ)のうち、凹方向に形成された部分をいう。
また、図4の(c)に示すように、ダイスの凹部231を凹部断面(図4(a)のX−X面)で断面視する場合、凹部231のプレス成形対象材料に当接する側における底部hは、ダイス23の径方向外側に曲率半径Rdで湾曲させるR(曲線)をなしている。ダイス底部hから凹部231の基部に向かう外形は、ほぼ縦方向に延びる形状をなしている。本明細書において、凹部231の基部とは、凹部231におけるダイスホルダー22に配設される側をいう。
対象材料をプレス成形して得られるプレス成形体の二軸引張及び縮みフランジを好適に測定できるようにするため、ダイス凹部231の枝231A、231B、231C、231Dの幅をWdとし、枝231A、231B、231C、231Dのダイス角部eにおける曲率半径をRcとするとき、WdのRcに対する比Wd/Rcは、2以上15未満であることが好ましく、3以上12未満であることがより好ましい。
図7の(a)に示すとおり、Wd/Rcが小さすぎると(Rcが大きすぎると)、プレス成形体において、枝の角部eの境界に応力が局部的に集中し、プレス成形体の割れを生じ得る。図7の(b)に示すとおり、Wd/Rcが大きすぎると(Rcが小さすぎると)、プレス成形体において、枝の角部eの周方向で塑性歪域が縮小し、角部eで割れが発生し得るため、好ましくない。なお、本明細書において、曲率半径は、輪郭形状測定器(型式:Contracer CV−2000、株式会社ミツトヨ製)によって求めた値をいうものとする。
(板押え32)
図5は、板押え32を説明するための図である。板押え32は、ダイス側平面部232と略平行な板押え側平面部321を有し、プレス成形の対象となる対象材料をダイス側平面部232及び板押え側平面部321で挟み込み可能に構成される。プレス加工性評価装置1が板押え32を備えていない場合、プレス成形の対象となる対象材料をプレス成形したときに、プレス成形体の多枝形状領域を囲む略平面領域を形成できず、プレス成形体の縮みフランジ変形を好適に測定できないため、好ましくない。
(変形例)
なお、図1〜図5では、パンチ13が凸状の多枝形状を有し、ダイス23が凹状の多枝形状を有するものとして説明しているが、これに限るものではない。パンチ13が凹状の多枝形状を有し、ダイス23が凸状の多枝形状を有する場合であっても、同様の効果を奏する。
具体的には、プレス加工性評価装置は、3以上の枝からなる多枝形状の凹部を先端に有するパンチと、上記凹部と嵌合可能な3以上の枝からなる多枝形状の凸部、及びこの凸部を囲むダイス側平面部を有するダイスと、上記ダイス側平面部と略平行な板押え側平面部を有し、プレス成形の対象となる対象材料を上記ダイス側平面部及び上記板押え側平面部で挟み込み可能な板押えとを備えるものであってもよい。
なお、この変形例に係るプレス加工性評価装置であっても、パンチとダイスの凹凸を交換すれば、隣り合う枝どうしがなす角、上記Wd、Rc、Hp、Rp、Rd等のパラメータの好適な範囲は、上述と同じであるといえる。
[1次プレス成形体40]
図6は、プレス加工性評価装置1を用いてプレス成形の対象となる対象材料を1次プレス成形することによって得られる1次プレス成形体40の一例を示す斜視図である。図6の(a)は、画像で示したもの、図6の(b)は、それを模式的に示した斜視図であり、図6(c)は、その平面図を、図6(d)は、図6(c)にZと記した方向からの正面図をそれぞれ示したものである。1次プレス成形体40は、凸部41と、この凸部41を囲む略平面な平面部42とを有する。また、凸部41は、枝43A、43B、43C、43Dからなる多枝形状を呈している。
プレス成形対象材料は、パンチ13の枝132とダイス23の凹部231との間で加工されて変形するので、プレス成形体40の凸部41(枝43A、43B等)は、パンチ132A、132B等の形状及びダイス23の231A、231B等の形状に対応した凸形状となるように成形され、平面部42は、ダイス23の頂部側の上面及び板押さえ32の平面に対応した形状となるように成形される。すなわち、プレス成形体の凸部41は、図2(b)、(c)に示すようなパンチ13のパンチ角部e、パンチ隅部f、パンチ肩部gに対応する形状と、図4(a)〜(c)に示すようなダイス23のダイス角部e、ダイス隅部f、ダイス底部hに対応する形状として、角部e、隅部f、肩部g、底部hのような部位を備えている。
〔2次プレス成形工程〕
続いて、2次プレス成形工程について説明する。2次プレス成形工程は、プレス加工性評価装置1を用いて、1次プレス成形体40に所定の加工が施された変形1次プレス成形体を2次プレス成形するか、又はプレス加工性評価装置1の所定のパラメータを変更して1次プレス成形体40若しくは変形1次プレス成形体を2次プレス成形し、2次プレス成形体を得る工程である。
図8は、2次プレス成形の具体的態様を説明するための図である。図8の(a)〜(c)は、具体的な加工形態として、3種類の加工形態1〜3を例示している。図8(a)の加工形態1と図8(b)の加工形態2は、プレス加工性評価装置により十字状に成形される1次加工(図では十字成形と略称)を施して1次プレス成形体を得た後、当該1次プレス成形体にトリミング処理を施して変形1次プレス成形体を得る。その後、当該変形1次プレス成形体に2次加工を行うものである。図8の「1次加工」において、左図がトリミング前の形状を示しており、右図がトリミング後の形状におけるy−y´線での概略断面図を示している。図8に記載した「トリム部」は、トリミングした部分を示し、「フランジアップ部」は、2次加工によりフランジアップさせる領域を示す。
加工形態3は、1次プレス成形体に2次加工を行うものである。図8(a)、(b)の「1次加工」欄は、左図がトリミング前の形状を示しており、右図がトリミング後の形状におけるy−y’線での概略断面図を示している。
第1の具体的態様として、図8(a)の加工形態1に示すように、1次プレス成形工程の後、1次プレス成形体40における凸部41(多枝形状領域に相当)の中央部から、所定幅のフランジ領域を残して、トリム部を取り除き、変形1次プレス成形体を得る。その後、2次プレス成形工程において、プレス加工性評価装置1を用いて、当該変形1次プレス成形体のフランジ領域をフランジアップすることにより、2次プレス成形体を得ることが挙げられる。この態様は、図8の加工形態1の「想定形状」に示すような、1次プレス成形では二軸引張変形の一態様である張出し加工を行い、2次プレス成形では単軸引張変形の一態様である伸びフランジ変形を行う場合に対応する。
第2の具体的態様として、図8(b)の加工形態2に示すように、1次変形量測定工程の後、2次プレス成形工程の前に、1次プレス成形体40における平面部42(多枝形状領域とは異なる他の領域に相当)から、所定幅のフランジ領域を残して、トリム部を取り除き、変形1次プレス成形体を得た後、2次プレス成形工程において、プレス加工性評価装置1を用いて当該変形1次プレス成形体のフランジ領域をフランジアップすることが挙げられる。上記のこの態様は、図8(b)の「想定形状」に示すような、1次プレス成形では平面歪引張変形及び単軸引張変形を含む複合変形を行い、2次プレス成形では単軸引張変形の一態様である伸びフランジ変形を行う場合に対応する。
第3の具体的態様として、図8(c)の加工形態3に示すように、1次プレス成形工程から2次プレス成形工程までの間に1次プレス成形体40の一部領域を取り除くことなく、プレス加工性評価装置1の板押え力を、1次プレス成形工程における板押え力よりも高くして1次プレス成形体40を2次プレス成形することが挙げられる。この態様は、図8(c)の「想定形状」に示すような、1次プレス成形では縮みフランジの一態様である絞り加工を行い、2次プレス成形では二軸引張変形の一態様である張出し加工を行う場合に対応する。
〔2次変形量測定工程〕
続いて、2次変形量測定工程について説明する。2次変形量測定工程は、2次プレス成形体の平面歪引張変形、単軸引張変形、二軸引張変形及び縮みフランジ変形の中から少なくとも一種以上の変形量を測定する工程である。
変形量を測定する手法として、非接触歪測定装置ARGUS(GOM社製/コベルコ科研)を用い、以下の(1)〜(4)の手順を経ることが挙げられる。
(1)プレス成形対象材料(供試材)の表面に、複数の印として、φ0.8mmドットマーク(1.5mm間隔)を電解転写して形成する。
(2)形成されたドットマークを、加工前後でCCDカメラを用いて多方向から撮影する。
(3)撮影されたドットマークに基づいて加工前後のドット間距離を測定し、その変化量から最大主歪及び最小主歪を算出する。
(4)最大主歪及び最小主歪に基づいて、プレス成形体の平面歪引張変形、単軸引張変形、二軸引張変形及び縮みフランジ変形の中から少なくとも二種以上の変形量を測定する。
手順(4)を詳しく説明するため、まず、図9を参照しながら、プレス成形の塑性変形の加工要素について説明する。
塑性変形の加工要素は、最大主歪及び最小主歪を用いて、引張方向の変形、圧縮方向の変形、変形なしの各組合せにより、大きく4種類に分類される。図9は、その加工要素を図示したものであり、最大主歪をε、最小主歪をε、そして最大主歪εと最小主歪εのどちらとも直交する板厚方向歪をεと記載している。
最大主歪εが引張変形であり、最小主歪εが変形なしである加工要素を平面歪引張変形(図9のA)と称される。最大主歪εと最小主歪εがいずれも引張変形である加工要素を二軸引張変形(図9のC)と称される。最大主歪εが引張変形であって、最小主歪εが圧縮変形である加工要素を縮みフランジ変形(図9のD)と称される。最大主歪εが引張り変形、最小主歪εが圧縮変形であり、圧縮が引張の1/2相当の歪量である加工要素を単軸引張変形又は伸びフランジ変形と称される(図9のB)。
次に、手順(4)の説明について説明する。まず、平面歪引張変形は、最大主歪εが引張変形であり、最小主歪εが変形なしの加工要素であるから、プレス成形品において、その加工要素に近接した歪状態を有する領域は、平面歪引張変形を強く受けて加工された領域であると判断できる。本実施形態では、図2に示すパンチ13と図4に示すダイス23により加工されて、図7に示すようなプレス成形体40が成形される。プレス成形体40の凸部41の周縁には、パンチ13のパンチ隅部fに対応し、ダイス23のダイス隅部fに対応した形状を有する隅部fに隣接して、領域Cが形成される。当該領域Cは、ダイス23のダイス底部hの曲率半径Rdに対応して形成された曲線形状を有する底部hを含むものである。当該領域Cは、最大主歪εが大きく、最小主歪εが0に近い歪量で測定されることから、平面歪引張変形を強く受けている領域である。領域Cにおいて、最大主歪εが最も大きく、最小主歪εが略変形なしである箇所のプレス前後の変形量を、平面歪引張変形が主体で関与する量とする。
単軸引張変形は、最大主歪εが引張り変形、最小主歪ε2が圧縮変形であり、圧縮による歪量が引張による歪量の1/2相当の加工要素である。本実施形態では、図7に示すプレス成形体40の枝43A、43B、43C、43Dの長さ方向の側面には、領域Sが形成される。当該領域Sは、パンチ基部からパンチ肩部c1に向けて略縦方向に延びる形状に対応し、ダイス基部からダイス肩部c2に向けて略縦方向に延びる形状に対応して形成された領域を含むものである。当該領域Sは、最大主歪εが大きく、最小主歪εが圧縮変形として測定されることから、単軸引張変形を強く受けている領域である。領域Sにおいて、最大主歪εが最も大きく、最小主歪εが圧縮変形である箇所のプレス前後の変形量を、単軸引張変形が主体で関与する量とする。
二軸引張変形は、最大主歪εと最小主歪εがいずれも引張変形である加工要素である。本実施形態では、図7に示すプレス成形体40の凸部41の角部であり、かつ、肩部である領域Tを形成する。当該領域Tは、パンチ13のパンチ角部eとパンチ肩部g及びダイス23のダイス角部eとダイス底部hの形状に対応して形成された領域を含むものである。当該領域Tは、最大主歪εと最小主歪εが大きな引張歪として測定されることから、二軸引張変形を強く受けている領域である。領域Tにおいて、最大主歪εが最も大きく、最小主歪εが引張変形である箇所のプレス前後の変形量を、二軸引張変形が主体で関与する量とする。
縮みフランジ変形は、最大主歪εが引張変形であって、最小主歪εが圧縮変形である加工要素である。本実施形態では、図7に示すプレス成形体40の平面部42において、例えば凸部の角部の周囲等の領域Fは、ダイス23の頂部側の上面及び板押さえ32の平面に対応して形成された領域を含むものである。当該領域Fは、最大主歪εが大きな引張歪として、また、最小主歪εが大きな圧縮歪として測定されることから、縮みフランジ変形を強く受けている領域である。領域Fにおいて、最大主歪εが最も大きく、最小主歪εが最も小さい箇所のプレス前後の変形量を、縮みフランジ変形が主体で関与する量とする。
〔割れ予測工程〕
必須の態様ではないが、本発明は、複数の印の最大主歪及び最小主歪の関係をプロットし、このプロットの結果から2次プレス成形体の割れを予測する割れ予測工程をさらに含むことが好ましい。このプロットは、例えば、成形線図として作成することができる。本明細書において、割れ予測は、上記非接触歪測定装置ARGUSを用いて行うものとする。
図10を参照しながら、割れ予測工程について説明する。図10において、縦軸は、最大主歪εの大きさを示し、横軸は、最小主歪εの大きさを示す。平面歪引張変形の場合、最大主歪εが引張変形であり、最小主歪εが変形なしであることから、図10の縦軸にあたる直線L(ε=0)方向の変形形態が、平面歪引張変形に相当する。
二軸引張変形の場合、最大主歪εと最小主歪εがいずれも引張変形であることから、図9の直線L(ε=ε)方向の変形形態が、二軸引張変形に相当する。
縮みフランジ変形の場合、最大主歪εが引張変形であり、最小主歪εが圧縮変形であることから、図9の直線L(ε=−ε)方向の変形形態が、縮みフランジ変形に相当する。
単軸引張変形(伸びフランジ変形)の場合、圧縮による歪量が引張りによる歪量の1/2相当であるから、図10の直線L(ε=−2ε)方向の変形形態が、単軸引張変形に相当する。
プレス加工時の歪量が過大になると、加工割れを生じやすくなる。図10に示すように、最大主歪εと最小主歪εが増加するほど、引張り割れを発生しやすくなる。一方、最大主歪εが低減し、最小主歪εが圧縮する方向(マイナス側)に移行すると、引張り割れの発生が抑制される。
また、L〜Lで示された加工要素は、それぞれの歪み状態に応じて、板厚変化が減少又は増加し、この板厚変化量が過大になると、加工割れの発生に至り、板厚変化に応じて引張割れ又は圧縮割れを生じやすくなる。このうち、L〜Lに近接した変形形態では、引張変形の割合が大きく、板厚が減少する方向にあるので、引張割れの発生が予測される。Lに近接した変形形態は、圧縮変形の割合が大きく、板厚が増加する方向にあるので、圧縮割れの発生が予測される。
本発明は、このような予測のもとで、プレス加工された後の歪状態(歪分布)を測定し、L〜Lの加工要素を強く受けている箇所の歪状態に基づいて、加工割れの可能性を予測するものであり、原板のプレス加工性を評価するものである。
具体的には、プレス加工された変形領域において歪状態(歪分布)を測定し、成形線図のようにプロットし、プロットした結果から、最大主歪及び最小主歪が大きい箇所を特定し、この特定箇所の歪状態に基づいて板厚減少率を算出し、加工割れの成否を予測することができる。
本発明によると、複合成形からなる1次プレス成形によって得られる単一形状の1次プレス成形体により、さらに2次プレス成形を行うときの各種加工要素(平面歪引張変形、二軸引張変形、縮みフランジ変形及び単軸引張変形)の歪状態を正確に把握できる。そして、最大主歪が大きい箇所、あるいは最小主歪が大きい箇所にプロットがあると、測定対象をプレス成形したときに測定対象の板厚が大きく減少し得ると予測できる。その結果、2次プレス成形品の割れが生じ易いと予測できる。
さらに、上記のプロットした結果は、L〜Lの歪状態と比較し、L〜Lと近接する度合い(近接度)を求めることができる。成形材料や加工条件を変えると、測定領域の歪量及び近接度も変化するので、歪量及び近接度の変化を比較することによって、成形材料の加工性、加工安定性を評価したり、適した加工条件を評価することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<2次プレス成形体の製造>
〔試験例1〕
板厚が1.5mmである第1のSUS430改良鋼(高加工用フェライト系ステンレス鋼)を供試材とし、一辺が300mmである略正方形にカットしたプレス成形対象材料の板材を用いた。当該板材に対して、上記プレス加工性評価装置により下記に示す1次プレス条件でプレス成形を行い、図12に示すような1次プレス成形体40を得た。
図11(a)は、使用したダイス23の平面図を示したものであり、図11(b)は、当該ダイス23のY−Y線での断面図を示したものである。図11(c)は、使用したパンチ13の正面図を示したものである。
(1次プレス条件)
装置 :2000kN サーボプレス
ダイス、パンチ :図11に示すとおり
板押え力 :9.5トン
速度 :5spm
潤滑条件 :加工用表面保護フィルムSPV3633(日東電工社製)
対象材料方向:圧延方向が金型の前後方向と平行
加工高さ :32mm
続いて、図12に示すように、1次プレス成形体40における平面部(多枝形状領域とは異なる他の領域に相当)から、幅10mmのフランジ領域(フランジ残り部62)を残してトリム部61を取り除き、変形1次プレス成形体60を得た。その後、上記プレス加工性評価装置を用いて、当該変形1次プレス成形体60を対して、下記に示す2次プレス条件でプレス成形を行い、上記変形1次プレス成形体60のフランジ残り部62をフランジアップさせて、図13に示すような2次プレス成形体70を得た。
(2次プレス条件)
装置 :2000kN サーボプレス
ダイス、パンチ :図11に示すとおり
板押え力 :9.5トン
速度 :5spm
潤滑条件 :加工用表面保護フィルムSPV3633(日東電工社製)
対象材料方向:圧延方向が金型の前後方向と平行
加工高さ :39mm
〔試験例2〕
プレス成形対象材料が、長さ:300mm四方、板厚:1.5mmの第2のSUS430改良鋼(高加工用フェライト系ステンレス鋼)であること以外は、試験例1と同じ手法にて、2次プレス成形体を得た。なお、当該第2のSUS430改良鋼は、試験例1のSUS430改良鋼と異なる組成を有する。
<解析>
〔変形量の測定〕
上記のとおり、変形量は、非接触歪測定装置ARGUS(GOM社製/コベルコ科研)を用い、次の手法にて測定した。
(1)加工前の対象材料(供試材)の表面に、φ0.8mmドットマーク(1.5mm間隔)を電解転写して形成した。
(2)プレス加工前のドットマークと、プレス加工後のドットマークとを、CCDカメラを用いて多方向から撮影した。
(3)撮影されたドットマークに基づいて加工前後のドット間距離を測定し、その変化量から最大主歪及び最小主歪を算出した。
〔成形線の作成〕
上記の算出の結果から、各々のドットマークについて、最大主歪を縦軸座標とし、最小主歪を横軸座標とした複数の座標を得ることができる。図14のうち、「1次加工」は、これら複数の座標をプロットすることによって得られる、1次プレス成形体の歪分布である。図14のうち、「2次加工」は、これら複数の座標をプロットすることによって得られる、2次プレス成形体の歪分布である。これらの歪分布において、直線L(ε=0)方向の変形は、平面歪引張変形に相当し、直線L(ε=−2ε)方向の変形は、単軸引張変形に相当する。直線L(ε=ε)方向の変形は、二軸引張変形に相当し、直線L(ε=−ε)方向の変形は、縮みフランジ変形に相当する。また、濃淡で示した領域は、最大主歪の大きさに対応し、淡色に近づくほど最大主歪量が大きいことを示し、濃色に近づくほど最大主歪量が小さいことを示す。
また、歪分布の最外線を結ぶことによって成形線が得られる。例えば、図14に示した成形線では、a〜dにおいて突出する形状の曲線が描かれている。これらのa〜dは、プレス成形体で測定された領域のうち、最大主歪ε及び最小主歪εが大きい箇所に位置しており、4つの加工要素A〜Dの変形形態を強く受けている領域である。これらの測定箇所は、このうち、直線Lに最も近接する点aは、平面歪引張変形の測定に好適な箇所に相当し、直線Lに最も近接する点bは、単軸引張変形の測定に好適な箇所に相当し、直線Lに最も近接する点cは、二軸引張変形の測定に好適な箇所に相当し、直線Lに最も近接する点dは、縮みフランジ変形の測定に好適な箇所に相当する。
図14に示すように、1次加工では歪量が非常に軽度なため、試験例2に係る2次プレス成形体と、試験例1に係る2次プレス成形体とは、歪分布に大きな差異は確認されない。1次加工では、1次プレス成形体の凸部は、点aのような平面歪変形に近い歪分布となっている。それに対し、2次加工では、試験例1と試験例2はともに、点a’のような単軸引張変形を伴う歪が新たに発生する。試験例1と試験例2を対比すると、両者の点aは、単軸引張変形の基準線Lに近接する距離が異なっており、試験例2の線分a−a’は、試験例1の線分a−a’よりも単軸引張変形の基準線Lに向かって傾いている。単軸引張変形は、図9に示すように、最大主歪が引張、最小主歪が圧縮の加工要素であるから、単軸引張変形が加わるプレス成形体は、最小主歪の絶対値が大きくなるほど、体積一定の関係により、板厚減少が小さくなる傾向にある。そのため、上記の線分a−a’が単軸引張変形の基準線Lに近づくほど最小主歪の影響度が強くなり、板厚減少の程度が小さくなることを視覚的に把握できる。そして、過度の板厚減少が割れに関係することから、2次加工後の割れ易さに関する鋼種間の序列を簡易的に評価することができる。
図14に示された試験結果は、試験例2の線分a−a’が試験例1よりも単軸引張変形の基準線Lに近接することを示している。そのため、試験例2で使用されたステンレス鋼は、試験例1で使用されたよりも板厚減少が小さく、2次プレス成形品の割れが抑えられて、加工性が良好な鋼種であると判定できる。
加工領域において加工割れが発生し易くなる条件を概略すると、表1の示すとおりである。最大主歪及び最小主歪が大きいことに加えて、a〜dがL〜Lに近接あるいは離隔する程度に応じて、加工割れが発生し易い状態となる。その理由を、プレス成形中の板材が体積一定の関係にあることに基づいて説明する。
例えば、aがLに近接する場合は、引張り歪が1軸方向(最大主歪方向)に偏ることによって、板材の面内の歪み域が狭くなり、局部的な板厚減少を生じ易くなる。bがLから最大主歪軸方向に離れる場合は、圧縮歪みによる板厚増加の効果が低下し、局部的な板厚減少を招く。また、cがLに近接すると、2軸方向で歪が均等になるので、板材の面内の歪が均一に広がりやすくなるのに対し、cがLから最大主歪方向に離れる場合は、均一な歪み域が狭くなり、局部的な板厚減少が発生しやすくなる。dがLから最小主歪軸方向に離れる場合は、1軸方向(最大主歪方向)の引張要素が小さくなり、板材の面内の圧縮歪が過多となるため、板厚増加の追従が困難となって割れが発生しやすくなる。
図15は、図14に示した成形線を、試験例2に係る1次プレス成形体及び2次プレス成形体に重ね合わせることで歪分布を可視化して模式的に示したものである。破線は、プレス成形体の凸部の輪郭を示す。また、濃淡を示した領域は、最大主歪の大きさに対応し、色が淡色に近づくほど最大主歪量が大きいことを示し、色が濃色に近づくほど最大主歪量が小さいことを示す。
図16は、図15について、図14に示した点a〜dに相当する箇所の最大主歪及び最小主歪を詳細に説明したものである。1次加工のプレス成形体におけるa〜dの丸で囲んだ部分は、点a〜dに相当する箇所を示す。丸内に記載した矢印εは、点a〜dにおいて最大主歪が生じた方向を示し、矢印εは、点a〜dにおいて最小主歪が生じた方向を示す。また、この矢印の方向は、変形の方向を示し、外向きの矢印は、変形が引張変形であることを示し、内向きの矢印は、変形が圧縮変形であることを示す。なお、点aの位置では平面歪引張変形の測定が好適であり、点bの位置では単軸引張変形の測定が好適であり、点cの位置では二軸引張変形の測定が好適であり、点dの位置では縮みフランジ変形の測定が好適である。2次加工のプレス成形体におけるa’の丸で囲んだ部分は、点a’に相当する箇所を示す。点a’は、1次加工のプレス成形体における点aに対応する位置にあり、矢印εや矢印εの意味は、上記と同様である。なお、以下、点a〜d、点a’を位置a〜d、位置a’ということもある。
図16の1次加工のプレス成形体に示すように、(ア)1次プレス成形体の凸部の隅部fに隣接する底部hを含む領域に相当する箇所(位置aを含み、図6のCに相当する領域)では、平面歪引張変形が生じていることが分かる。また、(イ)1次プレス成形体の枝における長さ方向の側面の領域に相当する箇所(位置bを含み、図6のSに相当する領域)では、単軸引張変形が生じていることが分かる。また、(ウ)1次プレス成形体の凸部の角部eであり、かつ、肩部gである領域に相当する箇所(位置cを含み、図6のTに相当する領域)では、二軸引張変形が生じていることが分かる。また、(エ)1次プレス成形体の平面部の領域に相当する箇所(位置dを含み、図6のFに相当する領域)では、縮みフランジ変形が生じていることが分かる。すなわち、試験例に係るプレス成形体は、4つの加工要素(平面歪引張変形、二軸引張変形、縮みフランジ変形及び単軸引張変形)をいずれも含んでおり、位置aが平面歪引張変形の測定に、位置bが単軸引張変形の測定に、位置cが二軸引張変形の測定に、また、位置dが単軸引張変形の測定にそれぞれ好適な箇所である。また、2次プレス成形体における位置a’を含む領域は、平面歪引張変形及び単軸引張変形が生じていることが分かる。
〔実製品での検証〕
[実製品の製造]
試験例1及び試験例2と同じ供試材に対し、金型(ダイス、パンチ及び板押え)の形状が異なること以外は、試験例1及び試験例2と同じ条件にて1次プレス成形及び2次プレス成形を行うことで、図19に示す形状の1次プレス成形体及び2次プレス成形体を得た。
そして、図17における位置1〜3について、プレス成形前後での板厚変化率を計測した。板厚の変化は、超音波厚み計(型式:38DL−PLUS、オリンパス株式会社製)により計測した。図18にその結果を示す。図18の「実プレス成形品」に示すように、試験例2のステンレス鋼材(試験例2鋼)からなる2次プレス成形体は、試験例1のステンレス鋼材(試験例1鋼)からなる2次プレス成形体に比べて、板厚変化率が有意に低減し、板厚減少が抑制されていた。加えて、図13で示した十字形状の2次プレス成形体による結果は、図18の「十字成形品」に示すように、上記の「実プレス成形品」の結果と同様の傾向であった。
以上のことから、本発明に係る2次プレス加工性評価方法を用いることで、複合成形からなる1次プレス成形によって得られる単一形状の1次プレス成形体により、さらに2次プレス成形を行うときの各種加工要素(平面歪引張変形、二軸引張変形、縮みフランジ変形及び単軸引張変形)の歪状態を正確に把握できるといえる。従来のように単一の加工要素による評価結果と比較する必要がないので、単一成形評価と複合成形評価との齟齬に起因する問題が生じない。そのため、実際の2次プレス成形品について加工性や加工安定性を正確に評価することができる。
また、測定結果をプロットし、歪分布を得ることで、歪みの状態を一元化して把握することができるので、成形対象材料どうしの成形性や加工性の相違を比較できる。
また、成形線図と板厚減少率とを比較することで、成形対象材料ごとの加工性を評価できる。
<ダイス及びパンチの形状の最適化>
〔試験例3〕
板厚:0.8mmの第3のSUS430改良鋼(高加工用フェライト系ステンレス鋼)を供試材とし、一辺が300mmである略正方形にカットしたプレス成形対象材料を用いて、上記プレス加工性評価装置にて下記に示す1次プレス条件で1次プレス成形し、複数種類の1次プレス成形体を得た。なお、当該供試材は、試験例1、2で使用したSUS430改良鋼と異なる組成を有するSUS430改良鋼である。
(1次プレス条件)
ダイス及びパンチの形状は、図2、図4に示すとおりである。枝の幅Wdと枝の角部の曲率半径Rcとの比Wd/Rcは、1、1.5、2、2.5、5、10、15、15.5の8種類にしている。その他の条件は、試験例2と同じである。
試験例3によって得られた種々の1次プレス成形体について、枝の割れの状態を観察した。枝の割れがない場合を“○”とし、図7の(a)に示すように、角部eの境界で割れが生じている場合を“×”とし、図7の(b)に示すように、角部eで割れが生じている場合を“×”とした。その結果を表2に示す。
表2に示すように、Wd/Rcが2以上15以下である場合、プレス成形体の枝において、割れは生じなかった。一方、Wd/Rcが2未満である場合、図7の(a)に示すように、1次プレス成形体において、角部eの境界に応力が局部的に集中し、プレス成形体の割れが発生した。また、Wd/Rcが15を超える場合、図7の(b)に示すとおり、1次プレス成形体において、枝の角部eの周方向の塑性歪域が縮小し、角部eでの割れが発生した。
〔試験例4〕
試験例3と同じ高加工用フェライト系ステンレス鋼を供試材とし、一辺が300mmである略正方形にカットしたプレス成形対象材料の板材を用いた。上記プレス加工性評価装置により、下記に示す1次プレス条件でプレス成形を行い、複数種類の1次プレス成形体を得た。
(1次プレス条件)
ダイス及びパンチの形状は、図2、図4に示すとおりである。パンチの凸部を正面視し、当該凸部の厚さをHpとし、パンチ肩部gの曲率半径をRpとし、ダイス底部hの曲率半径をRdとするとき、Hpと(Rp+Rd)との比Hp/(Rp+Rd)が、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2の10種類にしている。その他の条件は、試験例3と同じである。
試験例4によって得られた種々の1次プレス成形体について、試験例2での<解析>のうち、〔変形量の測定〕及び〔成形線の作成〕を行い、4つの加工要素(平面歪引張変形、二軸引張変形、縮みフランジ変形及び単軸引張変形)の現出の有無を確認した。変形が現出された場合を“○”とし、現出されなかった場合を“×”とした。その結果を表3に示す。
表3に示すように、対象材料を1次プレス成形して得られる1次プレス成形体において、Hp/(Rp+Rd)が0.5以上、すなわち、Hpが(Rp+Rd)の0.5倍以上である場合は、4つの加工要素(平面歪引張変形、二軸引張変形、縮みフランジ変形及び単軸引張変形)の全てを好適に測定できることが確認された。一方、Hp/(Rp+Rd)が0.5未満、すなわち、Hpが(Rp+Rd)の0.5倍未満のプレス成形体においては、4つの加工要素のうち、二軸引張変形だけを測定できるにとどまり、他の加工要素(平面歪引張変形、縮みフランジ変形及び単軸引張変形)を好適に測定できなかった。
Hp≧(Rp+Rd)/2であると、1つの1次プレス成形体において複数の加工要素を現出することから、加工性の評価に活用できる点で好ましい。
1 プレス加工性評価装置
10 パンチ部
11 底板
12 パンチホルダー
13 パンチ
132 凸部
20 ダイス部
21 上板
22 ダイスホルダー
23 ダイス
231 凹部
232 ダイス側平面部
30、30A、30B ガイド部
31、31A、31B ガイドピン
32、32A、32B 板押え
321 板押え側平面部
33 クッションピン
40 1次プレス成形体
41 プレス成形体凸部
42 平面部
43 枝
50 板材
60 変形1次プレス成形体
61 トリム部
62 フランジ残り部
70 2次プレス成形体

Claims (10)

  1. 3以上の枝からなる多枝形状の凸部を有するパンチと、前記凸部と嵌合可能な3以上の枝からなる多枝形状の凹部、及び前記凹部を囲むダイス側平面部を有するダイスと、前記ダイス側平面部と略平行な板押え側平面部を有し、プレス成形の対象となる対象材料を前記ダイス側平面部及び前記板押え側平面部で挟み込み可能な板押えとを備えるプレス加工性評価装置を用いて、プレス成形の対象となる対象材料を1次プレス成形し、1次プレス成形体を得る1次プレス成形工程と、
    前記プレス加工性評価装置を用いて、前記1次プレス成形体に所定の加工が施された変形1次プレス成形体を2次プレス成形するか、又は前記プレス加工性評価装置の所定のパラメータを変更して前記1次プレス成形体若しくは前記変形1次プレス成形体を2次プレス成形し、2次プレス成形体を得る2次プレス成形工程と、
    前記2次プレス成形体の平面歪引張変形、単軸引張変形、二軸引張変形及び縮みフランジ変形の中から少なくとも一種以上の変形量を測定する2次変形量測定工程とを含む、2次プレス加工性評価方法。
  2. 前記多枝形状の枝が3つである場合、隣り合う枝どうしがなす角は互いに鈍角であり、
    前記多枝形状の枝が4つである場合、隣り合う枝どうしがなす角は略直角であり、
    前記多枝形状の枝が5つ以上である場合、隣り合う枝どうしがなす角は互いに鋭角である、請求項1に記載の2次プレス加工性評価方法。
  3. 前記多枝形状の枝が4つであり、前記凸部及び前記凹部が略十字形状である、請求項1又は2に記載の2次プレス加工性評価方法。
  4. 前記ダイスを平面視する場合、前記凹部の角部は曲線をなしており、前記ダイスの前記枝の幅をWdとし、前記ダイスの前記枝の角部における曲率半径をRcとするとき、前記Wdの前記Rcに対する比Wd/Rcは、2以上15未満であり、
    前記パンチを正面視する場合、前記凸部の頂部における肩部は、曲線をなしており、前記肩部における曲率半径をRpとし、前記凸部の厚さをHpとし、さらに、前記ダイスを断面視する場合、前記凹部の底部は曲線をなしており、前記底部の曲率半径をRdとするとき、Hp≧(Rp+Rd)/2である、請求項1から3のいずれかに記載の2次プレス加工性評価方法。
  5. 前記2次変形量測定工程は、
    前記対象材料に複数の印を予め転写し、
    2次プレス成形の前後での前記印の最大主歪及び最小主歪を測定し、
    前記2次プレス成形体の前記凸部の隅部に隣接する底部を含む領域に相当する箇所であって、最大主歪が最も大きく、最小主歪が略変形なしである箇所の変形量を、前記平面歪引張変形に関係する変形量とし、
    前記2次プレス成形体の枝における長さ方向の側面の領域に相当する箇所であって、最大主歪が最も大きく、最小主歪が圧縮変形である箇所の変形量を、前記単軸引張変形に関係する変形量とし、
    前記2次プレス成形体の前記凸部の角部であり、かつ、肩部である領域に相当する箇所であって、最大主歪が最も大きく、最小主歪が引張変形である箇所の変形量を、前記二軸引張変形に関係する変形量とし、
    前記2次プレス成形体の凸部を囲む平面部の領域に相当する箇所であって、最大主歪が最も大きく、最小主歪が最も小さい箇所の変形量を、前記縮みフランジ変形に関係する変形量とする工程である、請求項1から4のいずれかに記載の2次プレス加工性評価方法。
  6. 前記複数の印の最大主歪及び最小主歪の関係をプロットし、このプロットの結果から前記2次プレス成形体の割れを予測する割れ予測工程をさらに含む、請求項1から5のいずれかに記載の2次プレス加工性評価方法。
  7. 前記対象材料として、四角形状、八角形状、楕円形状、又は円形状であるブランクを用いる、請求項1から6のいずれかに記載の2次プレス加工性評価方法。
  8. 前記所定の加工は、前記1次プレス成形工程の後、前記2次プレス成形工程の前に、前記1次プレス成形体における多枝形状領域又は前記多枝形状領域とは異なる他の領域のいずれか一方を、所定幅のフランジ領域を残して取り除き、前記変形1次プレス成形体を得る工程を含み、
    前記2次プレス成形工程は、前記プレス加工性評価装置を用いて前記変形1次プレス成形体の前記フランジ領域をフランジアップする工程を含む、請求項1から7のいずれかに記載の2次プレス加工性評価方法。
  9. 前記2次プレス成形工程は、前記プレス加工性評価装置の板押え力を変更して前記1次プレス成形体を2次プレス成形する工程を含み、
    前記2次プレス成形工程における板押え力は、前記1次プレス成形工程における板押え力よりも高い、請求項1から7のいずれかに記載の2次プレス加工性評価方法。
  10. 3以上の枝からなる多枝形状の凹部を有するパンチと、前記凹部と嵌合可能な3以上の枝からなる多枝形状の凸部、及び前記凸部を囲むダイス側平面部を有するダイスと、前記ダイス側平面部と略平行な板押え側平面部を有し、プレス成形の対象となる対象材料を前記ダイス側平面部及び前記板押え側平面部で挟み込み可能な板押えとを備える、前記対象材料のプレス加工性を評価するプレス加工性評価装置を用いてプレス成形の対象となる対象材料を1次プレス成形し、1次プレス成形体を得る1次プレス成形工程と、
    前記1次プレス成形体の平面歪引張変形、単軸引張変形、二軸引張変形及び縮みフランジ変形の中から少なくとも二種以上の変形量を測定する1次変形量測定工程と、
    前記プレス加工性評価装置を用いて、前記1次プレス成形体に所定の加工が施された変形1次プレス成形体を2次プレス成形するか、又は前記プレス加工性評価装置の所定のパラメータを変更して前記1次プレス成形体若しくは前記変形1次プレス成形体を2次プレス成形し、2次プレス成形体を得る2次プレス成形工程と、
    前記2次プレス成形体の平面歪引張変形、単軸引張変形、二軸引張変形及び縮みフランジ変形の中から少なくとも一種以上の変形量を測定する2次変形量測定工程とを含む、2次プレス加工性評価方法。
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