JP7464176B1 - プレス成形割れ判定方法、装置及びプログラム、並びにプレス成形品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
さらに、本発明は、割れ発生有無の判定の結果に基づいて割れ発生を抑制するようにプレス成形条件を調整してプレス成形品を製造するプレス成形品の製造方法に関する。
FLDはプレス成形における各変形様式(等二軸変形、不等二軸変形、平面ひずみ変形、単軸変形)での成形限界を実験室規模での成形試験により測定して作成するものである。そして、成形限界線図の作成においては、試験片の幅をいくつかの水準に変更して試験片の長軸方向と短軸方向の変形比率を変化させることにより、試験片の破断発生時における長軸方向と短軸方向それぞれのひずみを測定している。
さらに、引張強度が980MPaを超えるような高強度鋼板においては、10%程度の低ひずみ量でネッキングが発生し、その直後に破断が発生する。そのため、成形限界を精度よく判定する方法が提案されてきた。
中島法は、図16(a)に示すように、球頭パンチ203と上型ダイ205としわ押さえ207とを備えた成形金型201を用いて試験片100を張出成形する張出試験により成形限界を求める方法である。
一方、マルシニアック法は、図16(b)に示すように、平頭パンチ213と、上型ダイ205としわ押さえ207とを備えた成形金型211を用いるものである。そして、マルシニアック法では、平頭パンチ213と試験片100との間にドライビングシート215を挟んで試験片100を張出成形する張出試験により成形限界を求める。
これに対し、マルシニアック法は、先端部213aが平面の平頭パンチ213を用いて張出成形するものである。そのため、試験片100は曲げ変形されず、得られる成形限界は試験片100の曲げ変形の影響を受けない。
このように、FLDに基づいた割れ発生有無の予測結果と実際のプレス成形品での割れ発生の有無とで大きく乖離している事例が多々発生して問題があった。
さらに、曲げ変形を受ける部位を有するプレス成形品において割れ発生の有無を予め判定し、その判定結果に基づいてプレス成形品における割れの発生を抑制して製造する技術が求められていた。
成形限界取得プロセスと、プレス成形品割れ判定プロセスと、を含み、
前記成形限界取得プロセスは、
前記金属板を種々の曲げ変形度で成形し、該成形した前記金属板の曲げ変形度と、該曲げ変形度で成形した前記金属板の最大主ひずみ及び最小主ひずみと、の関係で表される前記金属板の成形限界を取得し、
前記プレス成形品割れ判定プロセスは、
前記プレス成形品における最大主ひずみ及び最小主ひずみと、前記プレス成形品における曲げ変形度として最大主ひずみ方向の曲率と、を前記プレス成形品における割れ判定パラメータとして取得し、該取得した割れ判定パラメータと前記成形限界取得プロセスで取得した前記成形限界に基づいて、前記プレス成形品における割れ発生の有無を判定する、ことを特徴とするものである。
前記プレス成形品割れ判定プロセスにおいて、前記プレス成形品における前記曲げ変形度を以下の式で算出することを特徴とするものである。
ρ=(ε1,outer-ε1,inner)/t
ここで、
ρ:曲げ変形度
ε1,outer:曲げ外側の最大主ひずみ
ε1,inner:曲げ内側の最大主ひずみ
t:板厚
前記成形限界取得プロセスにおける前記金属板を、前記プレス成形品割れ判定プロセスにおいて割れ発生の有無を判定する前記プレス成形品のブランクとして用いられる金属材料から採取されたものとすることを特徴とするものである。
成形限界取得ユニットと、プレス成形品割れ判定ユニットと、を含み、
前記成形限界取得ユニットは、
種々の曲げ変形度で成形した前記金属板の曲げ変形度と、該曲げ変形度で成形した前記金属板の最大主ひずみ及び最小主ひずみと、の関係で表される前記金属板の成形限界を取得し、
前記プレス成形品割れ判定ユニットは、
前記プレス成形品における最大主ひずみ及び最小主ひずみと、前記プレス成形品における曲げ変形度として最大主ひずみ方向の曲率と、を前記プレス成形品における割れ判定パラメータとして算出し、該算出した割れ判定パラメータと前記成形限界取得ユニットにより取得した前記成形限界に基づいて、前記プレス成形品における割れ発生の有無を判定する、ことを特徴とするものである。
コンピュータを、成形限界取得ユニットと、プレス成形品割れ判定ユニットと、して実行させる機能を備え、
前記成形限界取得ユニットは、
種々の曲げ変形度で成形した前記金属板の曲げ変形度と、該曲げ変形度で成形した前記金属板の最大主ひずみ及び最小主ひずみと、の関係で表される前記金属板の成形限界を取得し、
前記プレス成形品割れ判定ユニットは、
前記プレス成形品における最大主ひずみ及び最小主ひずみと、前記プレス成形品における曲げ変形度として前記最大主ひずみ方向の曲率と、を前記プレス成形品における割れ判定パラメータとして算出し、該算出した割れ判定パラメータと前記成形限界取得ユニットにより取得した前記成形限界とに基づいて、前記プレス成形品における割れ発生の有無を判定する、ことを特徴とするものである。
前記プレス成形割れ判定方法の前記プレス成形品割れ判定プロセスにおいて割れ発生有りと判定された場合、割れ発生なしと判定されるまで、前記プレス成形品のプレス成形条件を調整して前記プレス成形割れ判定を繰り返し行うプレス成形条件調整プロセスと、
前記プレス成形品割れ判定プロセスにおいて割れ発生無しと判定されるように前記プレス成形条件調整プロセスにおいて調整されたプレス成形条件で、前記プレス成形品を製造するプレス成形品製造プロセスと、を含むことを特徴とするものである。
<プレス成形割れ判定方法>
本発明の実施の形態1に係るプレス成形割れ判定方法は、金属板をプレス成形したプレス成形品における割れ発生の有無を判定するものであって、図1に示すように、成形限界取得プロセスP1と、プレス成形品割れ判定プロセスP3と、を含むものである。
成形限界取得プロセスP1は、金属板を種々の曲げ変形度で成形し、成形した金属板の曲げ変形度と、当該曲げ変形度で成形した金属板の最大主ひずみ及び最小主ひずみと、の関係で表される金属板の成形限界を取得するものである。
試験片101は、図4(a)に示すように、円板状のものであり、等二軸変形の成形限界を求めるものである。
一方、試験片103は、図4(b)及び(c)に示すように、円板状の周縁部の直径方向に対向する位置に円弧状に切り欠いた形状の切り欠き部103aを形成したものである。そして、試験片103については、中央部103bの最も幅狭の部位の幅Wを種々に変更し、幅Wを狭くするに従い、等二軸変形から不等二軸変形、平面ひずみ変形となり、次第に単軸引張に近づけ、各変形様式での成形限界を求めるものである。
さらに、試験片100は、金属板の表面にマーキング(所定の格子又はひずみ測定用パターン)が付されたものとする。
もっとも、本実施の形態1において、曲げ変形度は、張出成形された部位の曲率半径や曲率を実測せずに、試験片100の張出成形に用いたパンチ113の先端部113aの曲率で表してもよい。
例えば、破断が発生するまで張出成形した試験片100の破断発生部の近傍において、試験片100の表面に付したマーキングの形状から破断発生時の最大主ひずみと最小主ひずみを求めても良いし、後述する方法により求めてもよい。
成形試験ステップS11は、図4に例示するような試験片100を種々の曲げ変形度で張出成形し、張出成形した試験片100に生じるひずみを測定し、ひずみテータベースを構築するものである。
本実施の形態1では、試験片100の形状は、図4に示すように、直径φ180mmの円形状の試験片101と、これを基準として幅方向に切り欠いた形状の試験片103とした。さらに、試験片103については、中央部103bの幅Wが25mmから160mmまでの5種類の形状とした。一例として、図4(b)に幅Wが60mm、図4(c)に幅Wが80mmの試験片103を示す。
このように形状を決定した試験片100の表面に、ひずみ測定用の格子状のパターン(グリッド)を転写した。
DICでは、張出成形過程における試験片100の表面を所定の時間間隔で撮像する。そして、各時間ステップで撮像した画像を画像解析し、試験片100の表面に付された格子の変形具合より試験片100に生じる面内2方向のひずみとして最大主ひずみと最小主ひずみを測定する。
このようにして張出成形過程の各時間ステップで測定したひずみ量は、時系列順にひずみデータベースに記憶した。
このように、本実施の形態1では、成形開始から破断発生まで所定の時間間隔(例えば、1回/秒)で試験片100の表面を撮影し、撮影した各画像についてひずみ量の測定を行い、破断が発生したと判定されるまで継続した。
成形限界解析ステップS13は、成形試験ステップS11において構築したひずみデータベースに基づいて、試験片100の曲げ変形度ごとに、試験片100の破断発生部における最大主ひずみと最小主ひずみとで表される成形限界ひずみを求めるステップである。
まず、成形試験ステップS11において構築したひずみデータベースから、曲げ変形度ごとに、成形開始から破断までの試験片100の破断発生部近傍の最大主ひずみと最小主ひずみを所定の時間ステップごとに抽出した。そして、曲げ変形度ごとに抽出した最大主ひずみと最小主ひずみそれぞれの時系列データを作成した。
このように、曲げ変形度ごとに成形限界ひずみを求めることにより、曲げ変形度と、最大主ひずみと、最小主ひずみとの関係で表される成形限界を求めた。
成形限界面作成ステップS15は、最大主ひずみ、最小主ひずみ及び曲げ変形度を三軸とする三次元座標空間に、成形限界解析ステップS13において曲げ変形度ごとに求めた成形限界ひずみをプロットするステップである。さらに、成形限界面作成ステップS15は、最大主ひずみ、最小主ひずみ及び曲げ変形度の関係で表される成形限界面を作成するステップである。
次に、この2つの成形限界ひずみとは曲げ変形度の異なる成形限界ひずみ群のうち当該2つの成形限界ひずみのプロットを結ぶ線分との距離が最も小さい1つの成形限界ひずみのプロットを選択する。
続いて、抽出した2つの成形限界ひずみのプロットと、選択した1つの成形限界ひずみのプロットと、により三角形平面を形成する。
このような三角形平面の作成を全ての成形限界ひずみ群のプロットについて行う。そして、作成された三角形平面を組み合わせた多角面を成形限界面とする。
重み付けの与え方としては、例えば、実際のプレス成形において割れが生じやすい曲げ変形度の成形限界については重みを大きくするとよい。これにより、決定された成形限界平面又は成形限界曲面と実際のプレス成形において割れが生じやすい曲げ変形度における成形限界ひずみのプロットとの誤差を小さくすることができる。
例えば、最小主ひずみが負の領域と正の領域のそれぞれに成形限界平面又は成形限界曲面を仮定し、各領域について成形限界ひずみのプロットとの垂直距離の二乗和が最小となるように、成形限界平面又は成形限界曲面を決定すればよい。成形限界ひずみのプロットとの垂直距離に重みをつけた二乗和が最小となるように成形限界面を作成する場合においても同様とする。
プレス成形品割れ判定プロセスP3は、プレス成形品における最大主ひずみ及び最小主ひずみと、プレス成形品における曲げ変形度として最大主ひずみ方向の曲率と、をプレス成形品における割れ判定パラメータとして取得する。さらに、プレス成形品割れ判定プロセスP3は、取得した割れ判定パラメータと成形限界取得プロセスP1で取得した成形限界とに基づいて、プレス成形品における割れ発生の有無を判定する。
プレス成形FEM解析ステップS31は、金属板をプレス成形品にプレス成形する過程のFEM解析を行うステップである。
プレス成形割れ判定パラメータ算出ステップS33は、プレス成形品における最大主ひずみ及び最小主ひずみと、プレス成形品における曲げ変形度と、をプレス成形品における割れ判定パラメータとして算出するステップである。ここで、プレス成形品における最大主ひずみ及び最小主ひずみと曲げ変形度は、プレス成形FEM解析ステップS31におけるFEM解析結果に基づいて算出する。
しかしながら、複雑形状のプレス成形品においては、最大主ひずみ方向の特定は手間がかかる。そこで、例えば、簡易的に以下に述べるいずれかの方法でプレス成形品の曲げ変形度を算出するとよい。
プレス成形品における通常の変形形態は、曲げ変形だけでなく、他の変形形態との組み合わせである。すなわち、プレス成形品の変形形態は広義の引張曲げ状態と言える。引張曲げ変形のうち、引張変形を受けた部位のひずみは板厚方向に一定で作用し、曲げ変形を受けた部位のひずみは板厚方向に分布を持つ。そのため、プレス成形品における曲げ変形度は、曲げ変形を受けた部位の曲げ外側と曲げ内側のひずみ差を用いて表すことができる。
ε=±t/2r
ここで、tは板厚、rは曲率半径であり、曲げ外側のひずみはプラス、曲げ内側のひずみはマイナスである。そして、曲率半径rは曲率ρの逆数であるため、上式から以下の式が導かれる。
ε1,outer-ε1,inner=t/r
ρ=(ε1,outer-ε1,inner)/t
ここで、
ρ:曲げ変形度
ε1,outer:曲げ外側の最大主ひずみ
ε1,inner:曲げ内側の最大主ひずみ
t:板厚
ε1,outer及びε1,innerは、プレス成形品のFEM解析により算出することができる。
最大主ひずみ方向の曲率と、曲面上に定義される幾何学的な曲率のうち最大である最大曲率は概ね一致するため、簡易的にはこの方法で曲げ変形度を算出してもよい。
プレス成形割れ発生有無判定ステップS35は、プレス成形品における割れ発生の有無を判定するステップである。プレス成形品における割れ発生の有無は、プレス成形割れ判定パラメータ算出ステップS33において算出した割れ判定パラメータと、成形限界取得プロセスP1で取得した成形限界と、に基づいて判定する。
この場合、成形試験ステップにおいては、成形開始から破断までプレス成形品に生じたひずみを時系列順に記録することにより、ひずみデータベースを構築することができる。そして、プレス成形品に生じたひずみ(最大主ひずみ、最小主ひずみ)は、プレス成形品におけるスクライブドサークルやグリッドの寸法変化から取得することができる。さらに、曲げ変形度は、実際のプレス成形品における最大主ひずみ方向の曲率を測定することにより取得することができる。
上記の説明は、プレス成形品における割れ発生の有無を判定する方法に関するものであった。もっとも、本発明は、割れ発生の有無を判定する装置として構成することもできる。
プレス成形割れ判定装置1は、コンピュータ(PC等)のCPU(中央演算処理装置)によって構成されたものであってもよい。この場合、上記の各ユニットは、コンピュータのCPUが所定のプログラムを実行することによって機能する。
成形限界取得ユニット10は、種々の曲げ変形度で成形した金属板の曲げ変形度と、当該曲げ変形度で成形した金属板の最大主ひずみ及び最小主ひずみと、の関係で表される金属板の成形限界を取得するものである。
張出成形試験結果取込部11は、前述した図2に示すように種々の曲げ変形度で張出成形した金属板の試験片100に生じるひずみを曲げ変形度ごとに測定した張出成形試験結果を取り込むものである。
成形限界解析部13は、張出成形試験結果取込部11により取り込んだ張出成形試験結果に基づいて、試験片100の曲げ変形度ごとに、試験片100の破断発生部における最大主ひずみと最小主ひずみとで表される成形限界ひずみを求めるものである。
成形限界解析部13は、ひずみ分布抽出装置と、成形限界取得装置と、を有するものが例示できる(図示なし)。
成形限界面作成部15は、最大主ひずみ、最小主ひずみ及び曲げ変形度を三軸とする三次元座標空間に、成形限界解析部13により曲げ変形度ごとに求めた成形限界ひずみをプロットするものである。さらに、成形限界面作成部15は、最大主ひずみ、最小主ひずみ及び曲げ変形度の関係で表される成形限界面を作成するものである。
プレス成形品割れ判定ユニット20は、プレス成形品のプレス成形解析を行い、プレス成形品における最大主ひずみ及び最小主ひずみと、プレス成形品における曲げ変形度として最大主ひずみ方向の曲率と、を割れ判定パラメータとして取得するものである。そして、プレス成形品割れ判定ユニット20は、取得した割れ判定パラメータと成形限界取得ユニット10により取得した成形限界とに基づいて、プレス成形品における割れ発生の有無を判定するものである。
プレス成形FEM解析部21は、金属板をプレス成形品にプレス成形する過程のFEM解析を行うものである。
プレス成形割れ判定パラメータ算出部23は、プレス成形品における最大主ひずみ及び最小主ひずみと、曲げ変形度と、をプレス成形品における割れ判定パラメータとして算出するものである。
プレス成形割れ発生有無判定部25は、プレス成形割れ判定パラメータ算出部23により算出した割れ判定パラメータと、成形限界取得ユニット10により取得した成形限界と、に基づいて、プレス成形品における割れ発生の有無を判定するものである。
本発明の実施の形態1は、コンピュータによって構成されたプレス成形割れ判定装置を機能させるプレス成形割れ判定プログラムとして構成することができる。
すなわち、本実施の形態1に係るプレス成形割れ判定プログラムは、金属板をプレス成形したプレス成形品における割れ発生の有無を判定するものである。そして、プレス成形割れ判定プログラムは、コンピュータを、図7に一例として示すような、成形限界取得ユニット10と、プレス成形品割れ判定ユニット20と、して実行させる機能を有するものである。
この場合、張出成形試験結果取込部11は、一例として、金属板の試験片を種々の曲げ変形度で張出成形する張出成形試験により構築されたひずみデータベース構築装置におけるひずみデータベースを取り込むものとする。
<プレス成形品の製造方法>
本発明の実施の形態2に係るプレス成形品の製造方法は、金属板をプレス成形したプレス成形品における割れ発生の有無を判定し、判定した結果に基づいてプレス成形における割れ発生を抑制したプレス成形品を製造するものである。そして、本実施の形態2に係るプレス成形品の製造方法において、金属板をプレス成形したプレス成形品における割れ発生の有無を判定は、前述した本発明の実施の形態1に係るプレス成形割れ判定方法により行う。
以下、図9に基づいて、本実施の形態2に係るプレス成形品の製造方法における具体的な処理を説明する。
成形限界取得プロセスP1は、前述した本実施の形態1と同様、金属板の試験片を種々の曲げ変形度で張出成形し、試験片の曲げ変形度と、試験片に生じる最大主ひずみ及び最小主ひずみと、の関係で表される金属板の成形限界を取得するプロセスである。
プレス成形品割れ判定プロセスP3は、前述した実施の形態1と同様、プレス成形品について算出した割れ判定パラメータと、成形限界取得プロセスで取得した成形限界と、に基づいて、プレス成形品における割れ発生の有無を判定するプロセスである。
そして、プロットした割れ判定パラメータが、成形限界面よりも下方の領域に位置するか否かを判定する(S35b)。
これに対し、割れ判定パラメータが成形限界面の下方に位置しないと判定された場合、割れ発生有り、と判定する(S35d)。
プレス成形条件調整プロセスP5は、プレス成形品割れ判定プロセスP3において割れ発生有りと判定された場合、割れ発生なしと判定されるまで、プレス成形品のプレス成形条件を調整してプレス成形品割れ判定プロセスP3を繰り返し行うプロセスである。
ブランクサイズの変更やブランク形状の変更は、例えば、しわ押さえ力を小さくするように暫定プレス成形条件を調整してプレス成形中にブランクに作用する張力を最適化し、ブランクの材料流動の流入抵抗を調整するように行うとよい。
また、ブランクが張力を受けながら曲げ・曲げ戻し変形を受けるダイ肩部やパンチ肩部では、板厚減少が急激に促進され割れに至りやすく、材料流動に影響するため、プレス成形金型の形状を変更してダイ肩半径及びパンチ肩半径を調整するとよい。さらに、ダイとしわ押さえに接触するブランクを潤滑することにより、絞り限界を調整してもよい。
プレス成形品製造プロセスP7は、プレス成形品割れ判定プロセスP3において割れ発生無しと判定されるようにプレス成形条件調整プロセスP5において調整されたプレス成形条件で、プレス成形品を製造するプロセスである。
例えば、プレス成形条件としてしわ押さえ力を調整する場合、プレス成形機の空圧式ダイクッション(補助圧力装置)の空気圧の制御盤での設定値を変更すればよい。
また、プレス金型形状(ダイ肩半径、パンチ肩半径)を調整する場合、プレス成形解析(S31b)に用いた成形金型(モデル)の形状データを、NC工作機械と連携したCAD/CAMプログラムに入力し、NC加工用のNCデータ(NCプログラム)に変換する。そして、変換したNCデータ(NCプログラム)を用いて、NC工作機械により鋼材製金型、またはフルモールド鋳造法による発泡スチロール製の鋳造用金型模型を機械加工すればよい。
さらに、ダイとしわ押さえに接触するブランクの潤滑を調整する場合、潤滑油の種類の変更(粘度増加、極圧添加剤の添加)、ポリエチレンフィルム等の高分子フィルムの挿入、等を行えばよい。
さらに、本実施例では、割れ発生の有無を判定した結果に基づいて割れ発生を抑制するようにプレス成形条件を調整し、調整したプレス成形条件でプレス成形品を製造したときの割れ抑制効果を検証した。
本実施例では、曲げ外側の最大主ひずみと曲げ内側の最大主ひずみとの差を板厚で除したものを曲げ変形度とした場合を発明例1、最大主曲率を曲げ変形度とした場合を発明例2とした。
発明例1及び発明例2のそれぞれについて、プレス成形品120の各部位について割れ判定の評価値を算出した。割れ判定の評価値は、しわ押さえ力10tonでプレス成形したプレス成形品120の各部位の最小主ひずみ及び曲げ変形度から最大主ひずみの限界値を算出し、FEM解析から得られる最大主ひずみを限界最大主ひずみで除した値とした。ここで割れ判定の評価値が1未満の領域は、FEM解析から得られる判定パラメータが成形限界面の下方に位置する場合に相当し、割れ発生無しと判定する。また、割れ判定の評価値が1以上の領域は、FEM解析から得られる判定パラメータが成形限界面の下方に位置しない場合に相当し、割れ発生有りと判定する。
そして、従来例のプレス成形品120の各部位について、割れ判定の評価値を求めた。従来例の割れ判定の評価値は、しわ押さえ力10tonでプレス成形したプレス成形品の各部位の最小主ひずみから最大主ひずみの限界値を算出し、FEM解析から得られた最大主ひずみを限界最大主ひずみで除した値とした。
これに対し、図13に示すように、従来例においては、プレス成形品120の全体において評価値が1未満であることから割れ発生なしと判定され、発明例1及び発明例2とは異なる判定結果となった。
図14及び図15に、算出した割れ判定パラメータを用いて求めた割れ判定の評価値をプレス成形品120に表示したコンター図を示す。
図14は、前述した発明例1と同様、プレス成形品120における曲げ外側の最大主ひずみと曲げ内側の最大主ひずみとの差を板厚で除した値を曲げ変形度として割れ判定パラメータを算出したものである。
これに対し、図15は、前述した実施例2と同様、プレス成形品120における最大主曲率を曲げ変形度として割れ判定パラメータを算出したものである。
さらに、上記のとおりしわ押さえ力を1tonfとしたプレス成形条件でプレス成形品120を実際に製造したところ、プレス成形品120に割れが発生しなかったことが確認された。
10 成形限界取得ユニット
11 張出成形試験結果取込部
13 成形限界解析部
15 成形限界面作成部
20 プレス成形品割れ判定ユニット
21 プレス成形FEM解析部
23 プレス成形割れ判定パラメータ算出部
25 プレス成形割れ発生有無判定部
100 試験片
101 試験片
103 試験片
103a 切り欠き部
103b 中央部
111 成形金型
113 パンチ
113a 先端部
115 上型ダイ
117 しわ押さえ
120 プレス成形品
201 成形金型
203 球頭パンチ
203a 先端部
205 上型ダイ
207 しわ押さえ
211 成形金型
213 平頭パンチ
213a 先端部
215 ドライビングシート
Claims (8)
- 金属板をプレス成形したプレス成形品における割れ発生の有無を判定するプレス成形割れ判定方法であって、
成形限界取得プロセスと、プレス成形品割れ判定プロセスと、を含み、
前記成形限界取得プロセスは、
前記金属板を種々の曲げ変形度で成形し、該成形した前記金属板の曲げ変形度と、該曲げ変形度で成形した前記金属板の最大主ひずみ及び最小主ひずみと、の関係で表される前記金属板の成形限界を取得し、
前記プレス成形品割れ判定プロセスは、
前記プレス成形品における最大主ひずみ及び最小主ひずみと、前記プレス成形品における曲げ変形度として最大主ひずみ方向の曲率と、を前記プレス成形品における割れ判定パラメータとして取得し、該取得した割れ判定パラメータと前記成形限界取得プロセスで取得した前記成形限界に基づいて、前記プレス成形品における割れ発生の有無を判定する、ことを特徴とするプレス成形割れ判定方法。 - 前記プレス成形品割れ判定プロセスにおいて、前記プレス成形品における前記曲げ変形度を以下の式で算出することを特徴とする請求項1記載のプレス成形割れ判定方法。
ρ=(ε1,outer-ε1,inner)/t
ここで、
ρ:曲げ変形度
ε1,outer:曲げ外側の最大主ひずみ
ε1,inner:曲げ内側の最大主ひずみ
t:板厚 - 前記プレス成形品割れ判定プロセスにおいて、前記プレス成形品における前記曲げ変形度を最大主曲率とすることを特徴とする請求項1記載のプレス成形割れ判定方法。
- 前記成形限界取得プロセスにおける前記金属板を、前記プレス成形品割れ判定プロセスにおいて割れ発生の有無を判定する前記プレス成形品のブランクとして用いられる金属材料から採取されたものとすることを特徴とする請求項1記載のプレス成形割れ判定方法。
- 金属板をプレス成形したプレス成形品における割れ発生の有無を判定するプレス成形割れ判定装置であって、
成形限界取得ユニットと、プレス成形品割れ判定ユニットと、を含み、
前記成形限界取得ユニットは、
種々の曲げ変形度で成形した前記金属板の曲げ変形度と、該曲げ変形度で成形した前記金属板の最大主ひずみ及び最小主ひずみと、の関係で表される前記金属板の成形限界を取得し、
前記プレス成形品割れ判定ユニットは、
前記プレス成形品における最大主ひずみ及び最小主ひずみと、前記プレス成形品における曲げ変形度として最大主ひずみ方向の曲率と、を前記プレス成形品における割れ判定パラメータとして算出し、該算出した割れ判定パラメータと前記成形限界取得ユニットにより取得した前記成形限界に基づいて、前記プレス成形品における割れ発生の有無を判定する、ことを特徴とするプレス成形割れ判定装置。 - 金属板をプレス成形したプレス成形品における割れ発生の有無を判定するプレス成形割れ判定プログラムであって、
コンピュータを、成形限界取得ユニットと、プレス成形品割れ判定ユニットと、して実行させる機能を備え、
前記成形限界取得ユニットは、
種々の曲げ変形度で成形した前記金属板の曲げ変形度と、該曲げ変形度で成形した前記金属板の最大主ひずみ及び最小主ひずみと、の関係で表される前記金属板の成形限界を取得し、
前記プレス成形品割れ判定ユニットは、
前記プレス成形品における最大主ひずみ及び最小主ひずみと、前記プレス成形品における曲げ変形度として前記最大主ひずみ方向の曲率と、を前記プレス成形品における割れ判定パラメータとして算出し、該算出した割れ判定パラメータと前記成形限界取得ユニットにより取得した前記成形限界とに基づいて、前記プレス成形品における割れ発生の有無を判定する、ことを特徴とするプレス成形割れ判定プログラム。 - 請求項1乃至3のいずれかに記載のプレス成形割れ判定方法により、金属板をプレス成形したプレス成形品における割れ発生の有無を判定し、該判定した結果に基づいてプレス成形における割れ発生を抑制したプレス成形品を製造するプレス成形品の製造方法であって、
前記プレス成形割れ判定方法の前記プレス成形品割れ判定プロセスにおいて割れ発生有りと判定された場合、割れ発生なしと判定されるまで、前記プレス成形品のプレス成形条件を調整して前記プレス成形割れ判定を繰り返し行うプレス成形条件調整プロセスと、
前記プレス成形品割れ判定プロセスにおいて割れ発生無しと判定されるように前記プレス成形条件調整プロセスにおいて調整されたプレス成形条件で、前記プレス成形品を製造するプレス成形品製造プロセスと、を含むことを特徴とするプレス成形品の製造方法。 - 請求項4に記載のプレス成形割れ判定方法により、金属板をプレス成形したプレス成形品における割れ発生の有無を判定し、該判定した結果に基づいてプレス成形における割れ発生を抑制したプレス成形品を製造するプレス成形品の製造方法であって、
前記プレス成形割れ判定方法の前記プレス成形品割れ判定プロセスにおいて割れ発生有りと判定された場合、割れ発生なしと判定されるまで、前記プレス成形品のプレス成形条件を調整して前記プレス成形割れ判定を繰り返し行うプレス成形条件調整プロセスと、
前記プレス成形品割れ判定プロセスにおいて割れ発生無しと判定されるように前記プレス成形条件調整プロセスにおいて調整されたプレス成形条件で、前記プレス成形品を製造するプレス成形品製造プロセスと、を含むことを特徴とするプレス成形品の製造方法。
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-
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Title |
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アルミニウム合金板の成形限界線図,軽金属,第70巻第10号,日本,2020年04月08日,PP. 490-496 |
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