以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るシート給送装置を備えた画像形成装置の一例であるレーザープリンタの構成を示す正面から視た断面図である。レーザープリンタ(以下、プリンタという)200の画像形成装置本体であるレーザープリンタ本体(以下、プリンタ本体という)201には、シートSに画像を形成する画像形成部20が設けられている。さらに、プリンタ本体201には、下部に設けられている給紙カセット11からシートSを給送するシート給送部10を備えた本体シート給送装置が設けられている。給紙カセット11はプリンタ本体201の正面(ユーザが各操作をする側)から着脱可能に設けられている。プリンタ本体201の一側面には、給紙カセット11からは供給できないサイズや材質のシートを、ユーザがセットして自動的に給送するための手差し給送装置100が備えられている。
画像形成部20は、スキャナーユニット20aと、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の4色のトナー画像を形成する4個のプロセスカートリッジ21を備えている。各プロセスカートリッジ21は、感光体ドラム21aを備えている。また、画像形成部20は、プロセスカートリッジ21の上方に配された中間転写ユニット30を備えている。
中間転写ユニット30は、駆動ローラ32及びテンションローラ32a、従動ローラ32bに巻き掛けられた中間転写ベルト31を備えている。また、中間転写ユニット30は、中間転写ベルト31の内側に設けられ、感光体ドラム21aに対向した位置で中間転写ベルト31に当接する1次転写ローラ33を備えている。ここで、中間転写ベルト31は、各感光体ドラム21aに接するように配置され、不図示の駆動部により駆動される駆動ローラ32により矢印A方向に回転する。
そして、この中間転写ベルト31に1次転写ローラ33によって正極性の転写バイアスを印加することにより、感光体ドラム上の負極性を持つ各色トナー像が順次中間転写ベルト31に多重転写される。これにより、中間転写ベルト上にはフルカラー画像が形成される。
なお、中間転写ユニット30の駆動ローラ32と対向する位置には、中間転写ベルト上に形成されたフルカラー画像をシートSに転写する2次転写部を構成する2次転写ローラ34が設けられている。さらに、2次転写ローラ34の上部には定着部40が配置され、定着部40のシート搬送方向下流側には排出ローラ対15が配置されている。また、プリンタ本体201の側面には定着部40等においてシートのジャムが発生した場合、ジャムシートの処理を行うために開放されるカバー70が開閉可能に設けられている。さらに、プリンタ本体201の所定の位置には画像形成部20の画像形成動作及び手差し給送装置100のシート給送動作等を制御する制御部300が設けられている。
次に、このように構成されたプリンタ200の画像形成動作について説明する。画像形成動作が開始されると、まず不図示のパソコン等からの画像情報に基づきスキャナーユニット20aはレーザ光を照射し、表面が所定の極性・電位に一様に帯電されている感光体ドラム21aの表面を順次露光して感光体ドラム上に静電潜像を形成する。この後、この静電潜像をトナーにより現像し、可視化する。そして、感光体ドラム上のイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の4色のトナー画像を1次転写ローラ33に印加される転写バイアスにより中間転写ベルト31に転写し、中間転写ベルト31上にフルカラートナー画像を形成する。
このトナー画像形成動作に並行して給紙カセット11に収容されたシートSがピックアップローラ12により送り出され、この後、シートSは、停止した状態のレジストレーションローラ対14まで搬送されて斜行が補正される。次に、2次転写部において、斜行が補正されたシートSの先端と中間転写ベルト上のフルカラートナー像との位置を合わせるようにレジストレーションローラ対14が駆動され、シートSを2次転写部まで搬送する。そして、2次転写部にて、2次転写ローラ34に印加した2次転写バイアスにより、フルカラートナー像がシートS上に一括して転写される。
次に、フルカラートナー像が転写されたシートSは、定着部40に搬送され、定着部40に設けられた定着ローラ対41により、熱及び圧力を受けて各色のトナーが溶融混色することによりシートS上のトナー像がフルカラー画像として定着される。この後、トナー画像が定着されたシートSは、排出ローラ対15によりプリンタ本体上面に設けられた排紙トレイ51に排紙される。
一方、シートを手差し給送装置100によりシートを給送する場合は、シートを支持するシート支持手段としての手差しトレイであるマルチ給紙トレイ105上にユーザーがシートをセットする。そして、マルチ給紙トレイ105に積載されたシートをシート給送手段であるピックアップローラ101により送り出す。なお、ピックアップローラ101により送り出されたシートは、フィードローラ102と、フィードローラ102に接触し、シートを1枚ずつ分離して搬送するためのリタードローラ103とにより構成される分離部により1枚ずつ分離される。この後、シートSは、矢印aに示すように搬送ローラ13、レジストレーションローラ対14により2次転写部へ搬送されてフルカラートナー像が転写された後、定着部40に搬送されて画像が定着された状態で排紙トレイ51に排紙される。
プリンタ本体201の側面には、シートの搬送路中でジャムしたシートを除去したり、画像形成部20のメンテナンス等を行うためのカバー70が、プリンタ本体201の下側に配置されている支軸により開放可能に設けられている。カバー70は、プリンタ本体201の外装の一部を兼ねており、図1の符号70bは、プリンタ本体201とカバー70との合わせ目であり、ここを境としてカバー70がプリンタ本体201から開放される。手差し給送装置100の給送部は、マルチフレームFによりユニット化されており、マルチフレームFはカバー70に取り付けられている。
そして、マルチ給紙トレイ105はカバー70に対して開閉自在に設けられており、手差し給送装置100のピックアップローラ101がシートを給送する際には、実線で示すように、プリンタ本体201の側面から側方に突出するように構成されている。また、手差し給送装置100によるシートの給送を行わないときには、マルチ給紙トレイ105を、矢印bの方向に回動させて破線で示すようにプリンタ本体201に対して閉じるようにする。これにより、プリンタ本体201の幅方向(左右方向)の小型化を図ることができる。
そして、マルチ給紙トレイ105を閉じる動作に伴って、マルチ給紙トレイ105がピックアップローラ101に当接してピックアップローラ101を、フィードローラ102のフィードローラ軸102A(図2に図示)を中心に回動させる。この状態は、図1のプリンタ本体201の内部の破線で示す位置である。このように、ピックアップローラ101は、使用されないときには、プリンタ本体201の内部に位置し、使用されるときに、プリンタ本体201の側面から外部に突出するように構成されている。
図2は、手差し給送装置100の構成を示す斜視図であり、図3は手差し給送装置100の側面図である。図2及び図3に示すように、リタードローラ103はリタードローラホルダ107にリタードローラ軸103Aを介して回転自在に保持されている。なお、このリタードローラホルダ107は、マルチフレームFに回動軸107aを介して上下方向に回動可能に支持されると共に、マルチフレームFとの間に設けられた加圧ばね112により、フィードローラ側に付勢されている。これにより、リタードローラ103がフィードローラ102に圧接する。
また、リタードローラ軸103Aの軸上にはトルクリミッタ104が取り付けられている。なお、トルクリミッタ104とリタードローラ103は不図示のカップリングにより回転が同期されており、リタードローラ軸103Aはリタードローラホルダ107に、不図示の回転止めによって回転を規制された状態で保持されている。フィードローラ102は、マルチフレームFによって回転可能に支持されたフィードローラ軸102Aと、不図示のカップリングを介して接続されている。なお、このフィードローラ軸102Aには給紙ギア111が固定されている。
ピックアップローラ101は、フィードローラ軸102Aに上下方向に回動自在に支持されている支持手段である昇降プレート106に、ピックアップローラ駆動軸101Aを介して回転自在に支持されている。そして、ピックアップローラ101は、昇降プレート106内に設けられた駆動列116による駆動伝達によりフィードローラ軸102Aの駆動が伝達されることで、フィードローラ102と同期してRCC方向への回転が可能となっている。なお、以下、ピックアップローラ101、ピックアップローラ駆動軸101A、駆動列116及び昇降プレート106を、昇降ユニット1061という。
ここで、図3に示すように、マルチフレームFの壁面150と昇降プレート106との間にはローラ加圧ばね113が取り付けられている。そして、このローラ加圧ばね113によって昇降ユニット1061を矢印P方向に加圧することにより、昇降ユニット1061にはフィードローラ軸102A回りにQCC方向のモーメントMQCCが作用する。
昇降プレート106のフィードローラ軸102A側の底面には凸部106aが設けられている。また、昇降プレート106の下方には、マルチフレームFによって支持されたカムフォロア軸1091によって回転可能に支持されているカムフォロア109が設けられている。そして、このカムフォロア109の上端部には、昇降プレート106の凸部106aと接離可能に当接するプレート当接面109aが設けられている。
また、カムフォロア109の下方にはマルチフレームFによって回転可能に支持されたローラ高さ制御カム軸108Aと不図示のカップリングを介して接続されているカムであるローラ高さ制御カム108が設けられている。そして、このローラ高さ制御カム108のカム面108Jと、カムフォロア109の下端部に設けられたカム当接部109bが当接している。
また、ローラ高さ制御カム軸108Aの一端には、図2に示すようにカムギア110が設けられており、このカムギア110と、フィードローラ軸102Aの給紙ギア111がアイドラギア114を介して噛み合っている。なお、カムギア110、給紙ギア111及びアイドラギア114と、プリンタ本体201に設けられている本体側ギア115(図4に図示)とで、後述する給紙モータ118の回転を手差し給送装置100に伝達する駆動伝達手段131が構成される。また、駆動伝達手段131には、給紙モータ118から本体側ギア115に回転を伝達するギア列130も含まれる(図4に図示)。また、図3において、105aはマルチ給紙トレイ105から下流へとシートSが搬送される際にシートSを案内するガイド部である。
ここで、図2及び図3は、手差し給送装置100がシート給送ジョブを開始する前の状態を示しており、このときピックアップローラ101はホームポジションに位置している。なお、ピックアップローラ101がホームポジションに位置しているとき、ピックアップローラ101は、図3に示すようにマルチ給紙トレイ105に積載されたシートSに当接せず、シートSの上方の待機位置に待機している。
図4は、手差し給送装置100の図2に示す矢印C方向から給紙部を見たときのギア配列図である。給紙ギア111には、カバー70が閉じられた状態のとき、カバー70に設けられ、後述する図9に示す給紙モータ118により回転する本体側ギア115が噛合している。そして、給送ジョブの指令が入ると、給紙モータ118の駆動力が、本体側ギア115から給紙ギア111に伝達され、給紙ギア111は図4に示すWCC方向に回転する。なお、給送動作は、後述する図10に示す紙有無検知センサ301によって、マルチ給紙トレイ105上にシートSがあることが確認されると開始が可能となるよう構成されている。
これにより、ピックアップローラ101もWCC方向(シート給送方向)に回転する。これと同時に、アイドラギア114を介して給紙ギア111と噛み合っているカムギア110がVCC方向に回転する。これに伴い、ローラ高さ制御カム軸108A、また、ローラ高さ制御カム軸108Aと回転が同期されているローラ高さ制御カム108もVCC方向へと回転する。
なお、カバー70はプリンタ本体201との合わせ目70bで開放されるため、給紙ギア111と本体側ギア115との噛合は、カバー70が開放されると離間して解除される。また、給紙ギア111の中心には、ワンウェイクラッチ111_OWが圧入されており、このワンウェイクラッチ111_OWにより、給紙ギア111が停止していても、フィードローラ軸102AはWCC方向に空転できるようになっている。
図5は、給送ジョブが開始され、ローラ高さ制御カム軸108Aが回転した直後の状態を示している。ローラ高さ制御カム軸108Aの回転に伴い、ローラ高さ制御カム108がVCC方向へと回転すると、カムフォロア109のカム当接部109bとローラ高さ制御カム108のカム面Jとの当接点はEで示す位置からE’に示す位置に移動する。そして、このように当接点が移動することにより、カムフォロア109はカムフォロア軸1091を中心としてUC方向へ回転する。
カムフォロア109が回転すると、QCC方向へのモーメントMQCCが常に作用している昇降プレート106は、UC方向への回転に伴って移動するカムフォロア109のプレート当接面109aに凸部106aを当接させるため、QCC方向へ回転する。そして、このように昇降プレート106がQCC方向へ回転することにより、ピックアップローラ101は下降を開始する。このように、本体側ギア115に駆動を入力することにより、ピックアップローラ101は、WCC方向(シート給送方向)に回転しながら、下降する。
図6は、図5の状態からさらにローラ高さ制御カム108がVCC方向へ回転し、カムフォロア109が最もUC方向へ回転したときの状態を示す図である。ここで、カムフォロア109が最もUC方向へ回転すると、カムフォロア109はローラ高さ制御カム108とEminで示す点で当接する。ここで、カムフォロア109がローラ高さ制御カム108とEminで当接する位置は、ピックアップローラ101が最も下がる位置である。マルチ給紙トレイ105上にシート束Sが積載されていない場合には、ピックアップローラ101はマルチ給紙トレイ105のシート積載面に当接して停止する。
しかし、マルチ給紙トレイ105上にシート束Sが積載されている場合、ピックアップローラ101は下降の過程でマルチ給紙トレイ105上に積載されたシート束Sの最上位シートStに当接することにより停止する。そして、ピックアップローラ101が停止すると、昇降プレート106も下降を停止するので、この後、カムフォロア109が更に回転すると、昇降プレート106の凸部106aとカムフォロア109のプレート当接面109aとが離間する。
なお、ピックアップローラ101がマルチ給紙トレイ105に積載されているシートの最上位シートStに当接する給送位置に移動した際、ローラ加圧ばね113によるモーメントMQCCは、ピックアップローラ101がシートSを押圧する力として作用する。このため、ピックアップローラ101がシート給送方向に回転すると、ピックアップローラ101により押圧された最上位シートStは画像形成部に向けて搬送される。
図7は、図6の状態からさらにローラ高さ制御カム108がVCC方向へと回転した状態を示した図である。ローラ高さ制御カム108が更に回転すると、ローラ高さ制御カム108のカム面108JはE”で示す当接点でカムフォロア109のカム当接部109bと当接し、これによりカムフォロア109がUCC方向に回転を始める。
このようにカムフォロア109がUCC方向の回転を始めると、離間していたカムフォロア109のプレート当接面109aと昇降プレート106の凸部106aとが再び当接し、昇降プレート106がQC方向に回動する。これにより、ピックアップローラ101が上昇を開始し、最上位シートStから離間する。なお、ピックアップローラ101が最上位シートStから離間しても、このとき最上位シートStの先端は、フィードローラ102に達しているので、シートの搬送はフィードローラ102により継続される。
そして、ローラ高さ制御カム108が、図3に示す位置(位相)に移動したところで、給紙モータ118が停止する。これにより、ピックアップローラ101はホームポジションに戻り、フィードローラ102によるシートStの搬送も終了する。なお、このときシートStは手差し給送装置100より下流にある搬送ローラ13及びレジストレーションローラ対14により、手差し給送装置100から引き抜かれる。このとき、給紙ギア111が停止しているが、ワンウェイクラッチ111_OWの作用により、給紙ギア111が停止していても、フィードローラ102はWCC方向に空転できるため、シートStの搬送を妨げることはない。
なお、ピックアップローラ101をホームポジションで停止させるために、図2に示すようにフォトセンサ120が配置されている。また、ローラ高さ制御カム108には、ホームポジション検知フラグ119が連結されており、フォトセンサ120と、このホームポジション検知フラグ119とにより、ローラ高さ制御カム108がホームポジションにあることを検知する。そして、このようにローラ高さ制御カム108がホームポジションにあることを検知することにより、ピックアップローラ101がホームポジションにあることを検知する検知手段であるホームポジションセンサ121が構成される。
図8の(a)はピックアップローラ101がホームポジションにあるときの状態を、図8(b)はローラ高さ制御カム108及びピックアップローラ101、フィードローラ102が回転しているときの状態を示している。即ち、ピックアップローラ101がホームポジションにある場合は、図8の(a)に示すように、フォトセンサ120はホームポジション検知フラグのスリット部119aを読み取っているため、透過状態となり、ONとなる。一方、給送ジョブが開始されると、図8の(b)に示すように遮光状態となり、OFFとなる。そして、この後、シートの給送が終了すると、図8の(a)に示す状態に戻り、フォトセンサ120は再び透過状態となり、ONとなる。そして、これをトリガーにして駆動入力を終了することにより、ピックアップローラ101は図2及び図3に示すホームポジションに戻る。
図9は、本実施の形態にかかる手差し給送装置100の制御ブロック図である。図9に示すように、制御手段である制御部300には、紙有無検知センサ301、給紙モータ118、ホームポジションセンサ121の他、操作部等の入力部302、不図示のユーザー確認画面を備えた表示部303が接続される。
次に、この制御部300によるシート給送動作制御について図10に示すフローチャートを用いて説明する。制御部300は、例えば電源がONとなった後、入力部302からシート給送動作開始信号が入力される前に、紙有無検知センサ301により、マルチ給紙トレイ105上のシートの有無を検知する。そして、紙有無検知センサ301がONの場合(S100のY)、入力部302からシート給送動作開始信号が入力されるのを待つ。
次に、制御部300は、入力部302からシート給送動作開始信号が入力されると(S101のY)、ピックアップローラ101がホームポジションにあるかを確認する。そして、ホームポジションセンサ121が、ピックアップローラ101がホームポジションにあることを検知してONとなっている場合には(S102のY)、給紙モータ118を駆動し、給紙ギア111に駆動を入力してシート給送動作を開始する(S103)。そして、この後、シート給送ジョブが終了したかを判断し(S104)、シート給送ジョブが終了したと判断すると(S104のY)、給紙モータ118の駆動を停止し、ジョブが終了する。
一方、制御部300は、ピックアップローラ101がホームポジションにない場合には(S102のN)、ホームポジションエラーと判断する。ここで、ピックアップローラ101がホームポジションでない場合、ピックアップローラ101の位置が通常よりも下がっているため、シートSのセットが行いづらい。
このため、ホームポジションエラーと判断すると、制御部300は、給紙モータ118を駆動してピックアップローラ101をホームポジションに戻す。ここで、ピックアップローラ101をホームポジションに戻す際、ピックアップローラ101が回転するので、シートSがマルチ給紙トレイ105に積載されていると、シートSが給送されてしまう。
そこで、制御部300は、ホームポジションエラーと判断した場合には、ユーザーにシートを取り除いてもらうよう表示部303のユーザー確認画面にメッセージを表示する(S105)。そして、この後、シートが取り除かれたことを紙有無検知センサ301により検知すると、給紙モータ118を駆動してピックアップローラ101をホームポジションに戻す。
ところで、このようなホームポジションエラーは、例えば、ジャム処理等のためにカバー70が開放されたときに発生する。通常、図1に示すように、カバー70が閉じられているとき、図4に示すように、本体側ギア115と給紙ギア111が噛合しているため、給紙モータ118による保持力により、給紙ギア111及びカムギア110は回転することはない。よって、昇降プレート106は移動せず、ピックアップローラ101もホームポジションからずれることはない。
しかし、カバー70を開放すると、本体側ギア115と給紙ギア111の噛合が解除される。この場合、給紙モータ118による保持力がなくなるので、昇降ユニット1061の荷重により給紙ギア111及びカムギア110が回転し、これに伴いピックアップローラ101がホームポジションから下がる。つまり、カバー70を開放すると、ピックアップローラ101がホームポジションからずれる。そして、この状態でカバー70を閉じると、ピックアップローラ101がホームポジションからずれた状態で本体側ギア115と給紙ギア111が噛合し、ピックアップローラ101はホームポジションからずれた位置で固定される。
そこで、本実施の形態においては、カバー70を開放した場合でも、ピックアップローラ101をホームポジションに保持することができるよう、図11に示すように、ローラ高さ制御カム108のカム面108Jに段差形状108Kを設けている。この段差形状108Kは、ピックアップローラ101がホームポジションにあるとき、ローラ高さ制御カム108の回転により昇降プレート106を上下方向に回動させるカムフォロア109のカム当接部109bが係脱可能に係合する位置に設けている。
また、この段差形状108Kは、ローラ高さ制御カム108がE及びGの2つの当接点でカムフォロア109に接触するような形状を有している。つまり、ピックアップローラ101がホームポジションにあるとき、カムフォロア109は、2つの当接点E,Gでローラ高さ制御カム108に当接する。さらに、この段差形状108Kは、ローラ高さ制御カム108が、カムフォロア109から、当接点Eにおいてローラ高さ制御カム108をVC方向に回転させる力FEを受けるような形状となっている。また、この段差形状108Kは、当接点Gにおいてローラ高さ制御カム108をVCC方向に回転させる力FGを受けるような形状となっている。
ここで、このような形状の段差形状108Kにカムフォロア109のカム当接部109bが当接した状態のとき、カバー70の開閉時に振動等の外乱により、図11の状態から、ローラ高さ制御カム108がわずかにVC方向に回転する場合がある。この場合、カムフォロア109がローラ高さ制御カム108に当接するのはGのみとなり、ローラ高さ制御カム108はVCC方向に回転するよう力を受ける。このため、ローラ高さ制御カム108は、図11の状態を保つことができる。逆に、ローラ高さ制御カム108がわずかにVCC方向に回転すると、当接点はEのみとなり、ローラ高さ制御カムはVC方向に回転するよう力を受ける。このため、ローラ高さ制御カム108は、図11の状態を保つことができる。
このように、段差形状108Kを形成することにより、ローラ高さ制御カム108は、ピックアップローラ101がホームポジションにある状態で、カムフォロア109が押し当てられているときには、図11の状態を保つことができる。これにより、カバー70の開閉時に振動等の外乱があっても、ピックアップローラ101をホームポジションに保つことができる。
さらに、本実施の形態においては、カムフォロア109をローラ高さ制御カム108に常に押し当てることができるよう図12に示すようにカムフォロア付勢バネ117により、カムフォロア109をローラ高さ制御カム108に押し付けるようにしている。これにより、ローラ高さ制御カム108の回転を規制することができ、ピックアップローラ101をホームポジションに確実に保つことができる。
このように、本実施の形態において、段差形状(段部)108Kと、付勢手段であるカムフォロア付勢バネ117により、給紙モータ118による保持力がなくなった際、ローラ高さ制御カム108の回転を規制する規制手段122が構成される。また、リタードローラホルダ107を介してピックアップローラ101を待機位置及びシートと当接する位置に移動させる昇降手段123は、ローラ高さ制御カム108と、カムフォロア109と、規制手段122とにより構成される。
ところで、既述したように、昇降ユニット1061にはフィードローラ軸102A回りに図3で示すQCC方向のモーメントMQCCが作用しており、そのモーメントはカムフォロア109のプレート当接面109aで受け止めている。これにより、カムフォロア109はローラ高さ制御カム108に押しつけられた状態となる。
一方、マルチ給紙トレイ105が、図1において破線で示す収納状態のとき、昇降ユニット1061は、マルチ給紙トレイ105によって受け止められて破線で示す位置に移動する。ここで、この位置に昇降ユニット1061が移動すると、図13に示すように、MQCCを起因として発生する力により、カムフォロア109をローラ高さ制御カム108に押し当て続けることができなくなる。そして、この状態でカバー70を開放すると、給紙モータ118による保持力もなくなるので、ローラ高さ制御カム108の位相を保持することができなくなり、ホームポジションエラーになってしまう。
しかし、本実施の形態において、カムフォロア付勢バネ117により、カムフォロア109はUC方向、すなわちローラ高さ制御カム108と圧接する方向に回転するように付勢されている。これにより、マルチ給紙トレイ105が収納状態のとき、カバー70が開放され、給紙モータ118による保持力がなくなった場合でも、カムフォロア付勢バネ117により、カムフォロア109をローラ高さ制御カム108に押し当てることができる。この結果、マルチ給紙トレイ105を閉じた状態で、カバー70の開閉を行っても、ピックアップローラ101をホームポジションに保つことができる。
以上説明したように、本実施の形態では、カバー70が開放されて駆動伝達手段131の連結が解除された際、規制手段122により、ローラ高さ制御カム108の回転が規制されている。そして、このようにローラ高さ制御カム108の回転が規制されることにより、カバー70が開放された場合でも、ピックアップローラ101を待機位置に保持することができ、これによりシートのセット性の悪化やセット不良を防止することができる。
なお、本実施の形態では、給紙モータ118の負荷により駆動伝達手段131を介してローラ高さ制御カム108の回転が規制される構成を前提として説明したが、これに限定されることはない。駆動源や駆動伝達手段に負荷が無い昇降手段においても、常時ローラ高さ制御カム108の回転が規制されるため、上記実施の形態と同じ効果を奏する。また、本実施の形態は、シート給送装置の一例として手差し給送装置100について説明したが、本発明はこれに限定するものではなく、例えば図1に示すプリンタ本体下部に設けられたシート給送部10(シート給送装置)に対しても適用可能である。