以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係るガスノズルについて説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。また、各図において、寸法等は厳密には一致しない。
(実施の形態)
まず、ガスノズル10の構成について、説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るガスノズル10の外観を模式的に示す斜視図である。同図に示すように、ガスノズル10は、蓋体110と、蓋体110によって覆われる本体120とで構成される筐体100を備える。また、図2は、本発明の実施の形態に係るガスノズル10の筐体100内方に配置されている構成要素を示す斜視図である。具体的には、図2は、ガスノズル10から筐体100の蓋体110を分離した状態での構成を示す斜視図である。また、図3は、本体120から筐体100内方に配置されている構成要素を分離して分解した場合の各構成要素を示す分解斜視図である。
なお、図2及び以降の図では、説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として示しており、Z軸方向を上下方向として説明している箇所があるが、実際の使用態様において、Z軸方向が上下方向になるとは限らない。また、本明細書においては、ガスの流れに関する場合、上側、下側には、それぞれ、上流側、下流側の意味も含まれる。
ガスノズル10は、当該ガスノズル10の外部から例えば配管等を介して導入口11へ導入されたガスを放出口12から放出する。ここで、導入口11へ導入されたガスは、例えば、流速、圧力又は流線等が変化する偏流又は旋回流等を含む乱流(非定常流)である。ガスノズル10は、このような乱流を定常流へと整流して放出口12から放出する。
ガスノズル10は、例えば、レーザ溶接におけるシールドガスの吹き付け用のノズルである。なお、ガスノズル10は、シールドガスの吹き付け用のノズルには限定されず、アーク溶接におけるアシストガスの吹き付け用のノズルであってもよいし、ガス溶接における酸素等の燃焼用ガスの吹き付け用のノズルであってもよい。
図1に示すように、ガスノズル10は筐体100を備え、また、図2に示すように、筐体100内方には、分岐体200と、整流体300と、整流網400とが収容されている。
なお、ガスノズル10には、上記の構成の他、筐体100と当該筐体100内部の各構成要素との間にスペーサ等が配置されていてもよい。
筐体100は、板状部材である蓋体110と、蓋体110によって導入口11及び放出口12以外が覆われる本体120とで構成されている。この筐体100は、整流体300等を内部に収容後、蓋体110と本体120とがネジ止め等で固定されることにより、整流体300等を保持する。なお、蓋体110及び本体120の材質は、特に限定されないが、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼などの金属である。
分岐体200は、ガスノズル10の外部から導入口11に導入されたガスを複数(本実施の形態では5つ)に分岐する部材であり、上(Z軸方向プラス側)から次の順で配置された分岐部210、220、230、240を備える。分岐体200は、下(Z軸方向マイナス側)にいくにつれてX軸方向にガスを分岐する。
分岐部210は、導入口11に対応する位置で凹部211と、凹部211の底面に開口が形成されてZ軸方向に貫通する貫通孔212とを有し、導入口11から導入されたガスを凹部211及び貫通孔212を介して分岐部220へ導く。この凹部211には、凹部の内壁に沿ってパッキン(不図示)が配置される。これにより、導入口11に導入されたガスの漏れを抑えつつ分岐部210に導くことができる。
分岐部220は、分岐部210の下側(Z軸方向マイナス側)に設けられ、貫通孔212に対応する位置でX軸方向に延設された凹部221と、凹部221の底面に開口が形成されZ軸方向に貫通する複数の貫通孔(本実施の形態では、2つの貫通孔222)とを有する。これにより、分岐部220は、貫通孔212から導入されたガスをX軸方向に2つに分岐させて各貫通孔222を介して分岐部230へ導く。
分岐部230は、分岐部220の下側(Z軸方向マイナス側)に設けられ、貫通孔222に対応する位置でX軸方向に延設された凹部231と、凹部231の底面に開口が形成された複数の貫通孔(本実施の形態では、4つの貫通孔232)とを有する。これにより、分岐部230は、分岐部220によって2つに分岐されたガスを、X軸方向両側にさらに4つに分岐させて各貫通孔232を介して分岐部240へ導く。
分岐部240は、分岐部230の下側(Z軸方向マイナス側)に設けられ、貫通孔232に対応する位置でX軸方向に延設された凹部241と、凹部241の底面に開口が形成された複数の貫通孔(本実施の形態では、5つの貫通孔242)とを有する。これにより、分岐部240は、分岐部230によって4つに分岐されたガスを、X軸方向両側にさらに5つに分岐させて各貫通孔242を介して整流体300へ導く。
このように、導入口11から導入されたガスは、分岐体200によってX軸方向両側に複数(本実施の形態では5つ)に分岐されて整流体300へと導かれる。ここで、上述したように導入口11から導入されたガスは乱流であるが、分岐体200で分岐されるに伴って上流側から下流側に向けて漸次整流される。ただし、分岐体200では十分に整流できず、分岐体200によって分岐されたガスの各々が乱流となる場合がある。つまり、整流体300に導かれたガスの各々に乱流の成分が残っている場合がある。なお、分岐体200による整流作用については、後述する。
整流体300は、分岐部240の下側(Z軸方向マイナス側)に設けられ、分岐部240によって5つに分岐されたガスの各々を整流して放出する。整流体300は、分岐部240の複数の貫通孔242と1対1に対応する複数の整流部(本実施の形態では、5つの整流部310)を備え、各整流部310によって、対応する貫通孔242によって導入されたガスを整流する。整流体300の詳細な構成については、後述する。
なお、分岐体200及び整流体300の材質は、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、アクリル樹脂やポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等の樹脂である。
また、分岐体200による分岐数、及び、整流体300が備える整流部310の個数を、上記説明ではいずれも5つとしたが、これに限定されない。また、ガスノズル10は、分岐体200を備えず、導入口11から導入されたガスが整流体300に直接導かれる(ぶつかる)ように構成されていてもよい。
整流網400は、整流体300の下側(Z軸方向マイナス側)に設けられ、枠体441、442によって挟持された例えば複数枚のメッシュを備える、この整流網400は、整流体300から放出されたガスを透過させることにより整流する。これにより、整流体300から放出されたガスは、1つにまとめられて、ガスノズル10の放出口12から放出される。
具体的には、整流体300から放出されたガスは、各々が整流されてはいるものの、全体として1つにまとめられたガスの流れにはなっていない。そこで、整流網400を設けて整流体300から放出ガスを透過させることにより、1つのガスの流れにまとめることができる。
なお、整流網400の材質は特に限定されないが、例えば、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅などの金属である。また、整流網400は、複数枚のメッシュを備える構成に限らず、例えば、1枚のメッシュを備える構成であってもよいし、微細孔加工された板状部材であってもよいし、金属の粉体を焼結した多孔体の板状部材であってもよい。
次に、整流体300の構成について、詳細に説明する。図4は、本発明の実施の形態に係る整流体300の構成を示す斜視図である。図5は、本発明の実施の形態に係る整流部310の構成を示す斜視図である。なお、図5では、整流部310を構成する樹脂等の部材を透視して図示している。また、説明の便宜のため、分岐部240に設けられた貫通孔242を図示するととともに、当該貫通孔242のZ軸方向マイナス側の開口である放出口243、及び、当該放出口243に対向する整流部310の対向領域AR1に、ドットのハッチングを施している。また、図5では、貫通孔242によって導入されるガスG24の流れを矢印で図示している。
図4に示すように、整流体300は、X軸方向に並んで配置された5つの整流部310を備える。
整流部310は、図5に示すように、壁面320と、当該壁面320と交差する方向に当該壁面320を貫通して形成される複数の貫通孔(本実施の形態では、10個の貫通孔330)とを備える。例えば、整流部310は、樹脂等で形成された部材を切削加工することにより形成される。
ここで、整流部310に対しては、分岐部240の対応する貫通孔242によってガスG24が導入されるため、当該整流部310においてガスが導入される導入口は、貫通孔242の放出口243となる。
整流部310の分岐部240側(Z軸方向プラス側)には、壁面320を底面とする凹部340が形成されており、上方から見て(Z軸方向プラス側から見て)、当該凹部340に上記分岐部240の貫通孔242が位置するように配置されている。このような構成により、貫通孔242によって導入されたガスG24は、壁面320にぶつかることとなる。
同様に、整流部310の整流網400側(Z軸方向マイナス側)にも凹部350が形成されている。つまり、整流体300は、上下対称(Z軸方向において対称)に構成されている。このような構成により、筐体100内部に整流体300を収容する際の当該整流体300の向き調整が不要となる。
壁面320は、貫通孔242の放出口243に対向する対向領域AR1を有し、対向領域AR1と異なる箇所に配置された複数の貫通孔330によって形成された開口331が配置されている。つまり、対向領域AR1には、複数の貫通孔330による開口331は形成されていない。
対向領域AR1は、概ね、放出口243の壁面320への投影部分である。ただし、対向領域AR1は投影部分と完全に同一でなくてもよく、投影部分の大きさに比べて多少(例えば面積比で10%程度)大小があってもよいし、投影部分の形状と多少異なってもよい。
対向領域AR1は、放出口243から導入されるガスG24の流れ方向に対して垂直に配置されている。ここで、「ガスの流れ方向」とは、当該ガスの主流の方向を指す。言い換えると、当該ガスを流す流路の軸方向を指す。つまり、ガスG24の流れ方向とは、貫通孔242の軸方向を指す。本実施の形態では、対向領域AR1は、貫通孔242の軸方向(Z軸方向)と垂直なXY平面と平行に配置されている。
複数の貫通孔330の各々は、対向領域AR1と異なる箇所に配置され、壁面320と交差する方向(本実施の形態では、直交する方向)に当該壁面320を貫通して形成される。つまり、複数の貫通孔330の各々は、対向領域AR1から見て互いに異なる方向に配置されている。言い換えると、複数の貫通孔330の各々は、当該貫通孔330と対向領域AR1とを結ぶ直線が互いに重ならない位置に配置されている。
各貫通孔330は、凹部340と凹部350とを連通するように形成される。つまり、貫通孔330は、凹部340の底面である壁面320に開口331を有し、凹部350の底面に開口332を有する。
このように、複数の貫通孔330の各々は、壁面320のうち対向領域AR1を有する面(本実施の形態では、壁面320そのもの)に開口して形成される。言い換えると、壁面320のうち対向領域AR1が配置されている部分と、複数の貫通孔330の各々により開口331が配置されている部分とは、同一面である。すなわち、これらの部分同士は、同一の高さ(Z軸方向において同一位置)に配置される。
本実施の形態では、複数の貫通孔330の各々は、互いに独立している。つまり、複数の貫通孔330のうち一の貫通孔330内を流れるガスは、他の一の貫通孔330内を流れるガスと干渉しない。
各貫通孔330は、本実施の形態では、管形状である。ここで、「管形状」とは、中空の細長い構造を指し、例えば、管軸方向の大きさをH、当該管軸方向に垂直な方向の大きさ(内径)をDとすると、特定的にはH/Dが3以上を満たすものを指し、より特定的にはH/Dが5以上を満たすものを指す。
本実施の形態において、各貫通孔330は、上下方向(Z軸方向)において内径が一定の円管形状である。なお、貫通孔330の形状はこれに限らず、下方(Z軸方向マイナス側)にいくにつれて内径が小さくなるテーパー形状であってもよいし、円管形状でなく、水平面(XY平面)で切断した断面が多角形状となる管形状であってもよい。
また、本実施の形態において、複数の開口331の面積の総和は、放出口243の面積よりも大きい。なお、複数の開口331の面積の総和は、放出口243の面積と等しくてもかまわないし、放出口243の面積より小さくてもかまわない。
図6は、本発明の実施の形態に係る整流部310の構成を示す上面図である。なお、同図では、説明の便宜のため、対向領域AR1、及び、壁面320のうち当該対向領域AR1を除く領域の各々に、ドットのハッチングを施している。
同図に示すように、複数の貫通孔330(本実施の形態では、10個の貫通孔330)は、対向領域AR1を中心とする放射状の位置に配置されている。ここで、「放射状の位置に配置される」とは、任意の点に対して概ね反対方向に位置することを指し、具体的には、任意の点を中心に全方位に亘って配置される、又は、任意の点を中心に四方八方に配置されることを指す。
なお、「対向領域を中心とする」とは、具体的には、対向領域の中心(例えば、重心等)を中心位置とすることを指し、本実施の形態では、円形状である対向領域AR1の円の中心ARcを中心位置とすることを指す。
より具体的には、複数の貫通孔330は、対向領域AR1と当該複数の貫通孔330の各々とを結ぶ線分のなす角度θ1が均等となる位置に配置される。当該線分は、具体的に本実施の形態では、対向領域AR1の円の中心ARcと複数の貫通孔330の各々の開口331の中心とを結ぶ線分である。
同図では、10個の貫通孔330のうち隣り合う2つの貫通孔330の各々と対向領域AR1とを結ぶ線分によってなされる角度のみをθ1として図示しているが、他の隣り合う2つの貫通孔330についても同様である。つまり、10個の貫通孔330が配置された本実施の形態において、θ1≒36[degree]である。
なお、「角度が均等になる」とは、角度が実質的に同一であればよく、完全に同一でなくてもよい。例えば、本実施の形態では、θ1は、31≦θ1≦41[degree]を満たす範囲であればよい。
また、複数の貫通孔330は、対向領域AR1を中心とする同一円周上に配置されている。同図では、10個の貫通孔330の各々は、対向領域AR1の中心ARcを中心とする半径D1の同一円周上に配置されている。
なお、「同一円周上に配置される」とは、中心位置からの距離が実質的に同一となることであり、完全に同一でなくてもよい。例えば、本実施の形態では、複数の貫通孔330の各々から対向領域AR1の中心までの距離が平均距離に対して5%以内の誤差であればよい。また、貫通孔330の中心が同一円周上に位置していなくてもよく、貫通孔330の少なくとも一部が同一円周上に位置していればよい。
本実施の形態では、複数の貫通孔330の各々は、上下方向(Z軸方向)に貫通して形成されているため、壁面320において、対向領域AR1を中心とする同一円周上に等間隔で複数の開口331が配置される。
このような整流部310の構成により、貫通孔242によって整流部310に導入されたガスG24が整流される。以下、整流部310による整流メカニズムについて、説明する。
図7は、本発明の実施の形態に係る整流部310におけるガスの流れを示す上面図である。図8は、本発明の実施の形態に係る整流部310におけるガスの流れを示す断面図である。具体的には、同図は、図6のA−A’断面における断面図である。なお、同図では、分岐部240も併せて図示している。
これらの図に示すように、貫通孔242の放出口243から整流部310へ導入されたガスG24は、対向領域AR1にぶつかって拡散するガスG31となる。つまり、ガスG24は、対向領域AR1にぶつかることにより、流れ方向を変えて、当該対向領域AR1から放射状に広がるガスG31となる。すなわち、ガスG31は、対向領域AR1を中心とする同心円状に拡散する。
ここで、上述したように、貫通孔242によって導かれたガスG24は乱流の成分が残っている場合がある。この場合、対向領域AR1にぶつかる直前のガスにも乱流の成分が残っている。これに対して、ガスG24が対向領域AR1にぶつかった後のガスG31は、当該対向領域AR1から壁面320に沿って流れる(拡散する)ため、当該ガスG31の流れ方向は対向領域AR1から壁面320に沿って広がる方向となり、当該ガスG31の流速はガスG24の流速のバラつきの影響を受けにくくなる。
その後、ガスG31が拡散して複数の貫通孔330各々の開口331に到達すると、ガスG31は、流れ方向を変えて貫通孔330内を流れる。
ここで、上述したように、貫通孔330は管形状であるため、貫通孔330内を流れるガスG31は、下方(Z軸方向マイナス側)へ進むにつれて流れ方向が貫通孔330の管軸方向(Z軸方向)に整えられる。
これにより、貫通孔330の下側(Z軸方向マイナス側)の開口332から放出されるガスG31は、流れ方向がZ軸方向マイナス側となる。よって、複数の貫通孔330の各々から放出されたガスG31が、互いにぶつからない(干渉しない)ように放出される。
したがって、整流部310から放出されるガス(ガスG31の集合)は、定常流となる。つまり、各整流部310は、対応する貫通孔242によって導入されたガスG24を整流して放出する。
このように、複数の整流部310(本実施の形態では、5つの整流部310)を備える整流体300は、分岐部240によって分岐されたガスを整流する。
図9は、本実施の形態に係るガスノズル10におけるガスの流れを示す図である。なお、同図では、蓋体110をはずした状態で、分岐体200又は整流体300を構成する樹脂等の部材を透視して図示している。
同図に示すように、ガスノズル10の導入口11へ導入されたガスGinは、分岐部210〜240によって、ガスG21から順次分岐されて5つのガスG24となる。
分岐された5つのガスG24は、全体として、ガスGinの幅(X軸方向の大きさ)よりも大きな幅を持つため、ガスノズル10は、広範囲にガスを放出することができる。例えば、ガスノズル10がレーザ溶接におけるシールドガスの吹き付け用のノズルである場合、X軸方向において広範囲にシールドガスを吹き付けることができるので、溶接箇所の金属の酸化を効果的に抑制できる。よって、当該場合、高い溶接品質を確保することができる。
分岐された5つのガスG24の各々は、上述したように、整流体300によって整流されたガスG31となって放出される。
整流体300から放出されたガスG31は、整流網400を透過することにより、整流された1つのガスGoutにまとめられて、放出口12から放出される。
なお、上述したように、整流作用は整流体300だけでなく、分岐体200のうち分岐部220〜240でも奏される。
つまり、分岐部220では、分岐部210の貫通孔212の下側の開口である放出口213から導入されたガスG21が、凹部221の底面にぶつかって拡散することにより分岐してガスG22となる。そして、分岐したガスG22が各貫通孔222を通り抜けることにより整流されて放出される。
また、分岐部230では、分岐部220の貫通孔222の下側の開口である放出口223から導入されたガスG22が、凹部231の底面にぶつかって拡散することにより分岐してガスG23となる。そして、分岐したガスG23が各貫通孔232を通り抜けることにより整流されて放出される。
また、分岐部240では、分岐部230の貫通孔232の下側の開口である放出口233から導入されたガスG23が、凹部241の底面にぶつかって拡散することにより分岐してガスG24となる。そして、分岐したガスG24が各貫通孔242を通り抜けることにより整流されて放出される。
このように、分岐部220〜240の各々は、整流部310と同様に、ガスG21〜G23が導入される導入口(放出口213〜233)に対応して配置される対向領域を有する壁面(凹部221〜241の底面)と、当該対向領域とは異なる箇所に配置され、当該壁面と交差する方向に当該壁面を貫通して形成される複数の孔部(貫通孔222〜242)とを備える。
つまり、本実施の形態に係るガスノズル10は、分岐部220〜240と整流体300とで多段に構成された整流部を備える。すなわち、分岐部220〜240の各々は、特許請求の範囲に記載の「第一整流部」に包含される。また、さらに、分岐部230及び240並びに整流部310の各々は、特許請求の範囲に記載の「第二整流部」に包含される。
以上のように、本実施の形態に係るガスノズル10は、ガスG24が導入される導入口(本実施の形態では、放出口243)に対向して配置される対向領域AR1を有する壁面320と、対向領域AR1とは異なる箇所に配置され、壁面320と交差する方向に壁面320を貫通して形成される複数の孔部(本実施の形態では複数の貫通孔330)とを備える。
これにより、放出口243から導入されたガスG24は、壁面320の対向領域AR1にぶつかることにより流れ方向を変えて、当該対向領域AR1から分散して壁面320に沿って流れる。このため、対向領域AR1から分散するガスG31は、放出口243から導入されたガスG24の流速のバラつきの影響を受けにくくなり、均一な流速で分散する。また、対向領域AR1から分散するガスG31は、対向領域AR1で流れ方向が変えられたことにより、放出口243から導入されたガスG24の流れ方向のバラつきの影響を受けにくくなる。このような対向領域AR1から分散して流れるガスG31は、壁面320と交差する複数の貫通孔330の各々に到達すると、到達した貫通孔330の内壁に沿うように流れを変えて当該貫通孔330を通り抜けことで、流れ方向が均一化される。よって、複数の貫通孔330を通り抜けたガスG31は、流速及び流れ方向が均一化されたガスとなる。つまり、本実施の形態に係るガスノズル10は、整流されたガスを放出することができる。
また、複数の貫通孔330の各々は、互いに独立している。
これにより、複数の貫通孔330内でガスG31が干渉しないため、複数の貫通孔330を通り抜けたガスG31の流速及び流れ方向をより均一化することができる。つまり、より小さいバラつきで整流されたガスを放出することができる。
また、複数の貫通孔330は、壁面320のうち対向領域AR1を有する面に開口して形成される。
これによれば、複数の貫通孔330が対向領域AR1を有する面(対向領域AR1と同一面)に開口して形成されるので、壁面320の対向領域AR1にぶつかることで流れ方向を変えたガスG31を、スムーズに各貫通孔330まで導くことができる。よって、低損失で整流されたガスを放出することができる。
また、複数の貫通孔330は、対向領域AR1を中心とする放射状の位置に配置される。
ここで、放出口243から導入されたガスG24は、壁面320の対向領域AR1にぶつかることにより、当該対向領域AR1を中心として放射状に分散する。このため、本実施の形態では、対向領域AR1を中心とする放射状の位置に複数の貫通孔330を配置することにより、複数の貫通孔330に到達するガスG31の流速をより均一化することができる。よって、複数の貫通孔330を通り抜けたガスG31の流速をより均一化することができる。つまり、より小さな流速のバラつきで整流されたガスを放出することができる。
また、複数の貫通孔330は、対向領域AR1と複数の貫通孔330の各々とを結ぶ線分のなす角度が均等となる位置に配置される。
ここで、上述したように、放出口243から導入されたガスG24は、対向領域AR1を中心として放射状に分散する。このため、本実施の形態では、対向領域AR1を中心とする均等な角度に複数の貫通孔330を配置することにより、複数の貫通孔330を通り抜けたガスG31全体の流量分布を均一化することができる。つまり、均一な流量分布で整流されたガスを放出することができる。
また、複数の貫通孔330は、対向領域AR1を中心とする同一円周上に配置されている。
ここで、放出口243から導入されたガスG24は壁面320の対向領域AR1にぶつかることにより分散するので、対向領域AR1から当該貫通孔330までの距離が遠くなるほど、各貫通孔330を通り抜けるガスG31の流量が小さくなる。このため、本実施の形態では、対向領域AR1を中心とする同一円周上に複数の貫通孔330を配置することにより、複数の貫通孔330を通り抜けるガスG31の流量を均一化することができる。よって、局所的な流量の増減を抑制しつつ、整流されたガスを放出することができる。
また、複数の貫通孔330の各々は、管形状を有する。
ここで、複数の貫通孔330の貫通距離が短いと、当該複数の貫通孔330を通り抜けたガスG31の流れ方向を十分に均一化できない場合がある。このため、本実施の形態では、複数の孔部が管形状を有することにより、ガスG31の流れ方向を十分に均一化できるので、より整流されたガスを放出することができる。
また、壁面320の対向領域AR1は、放出口243から導入されるガスG24の流れ方向に対して垂直に配置されている。
ここで、放出口243から導入されたガスG24は、壁面320の対向領域AR1に垂直にぶつかる場合、当該対向領域AR1から全方位に亘って均等に分散する。つまり、複数の貫通孔330が対向領域AR1と異なる箇所に配置されていれば、対向領域AR1及び複数の貫通孔330の位置関係によらず、複数の貫通孔330へ到達するガスG31の流量を均一化することができる。よって、複数の貫通孔330の配置の自由度を向上できるので、設計及び製造が容易となる。
また、ガスノズル10は、各々が対向領域を有する壁面と複数の孔部とを備える、第一整流部および複数の第二整流部を備え、複数の第二整流部は、各々が有する対向領域が、第一整流部が有する複数の孔部のいずれかを介してガスが導入される導入口に対向して配置されている。
これにより、第一整流部で整流されたガスが第二整流部でさらに整流される。よって、より小さいバラつきで整流されたガスを放出することができる。
また、本実施の形態では、分岐部230において、当該分岐部230に対してガスG22を導入する導入口である複数の貫通孔222の放出口223同士は、凹部231内部の空間によって互いに接続している。つまり、分岐部220の下面と分岐部230の上面とが当接されることにより形成される空間(凹部231内部の空間)によって、一の放出口223から放出されたガスG22と他の放出口223から放出されたガスG22とは混合され、混合されたガスG23が各貫通孔232内を流れる。
また、分岐部240においても、分岐部230と同様に、放出口233同士が凹部241内部の空間によって互いに接続しているため、一の放出口233から放出されたガスG23と他の放出口233から放出されたガスG23とが混合されて各貫通孔242内を流れる。
これに対して、整流体300では、複数の整流部310に対してガスG24を導入する導入口である複数の貫通孔242の放出口243同士は、壁で遮られている。つまり、分岐部240の下面と整流体300の上面とが当接されることにより形成される壁によって、一の放出口243から放出されたガスG24と他の一の放出口243から放出されたガスG24とは、干渉することなく分離される。
このため、一の貫通孔242の放出口243から放出されたガスG24は、当該貫通孔242に対応する一の整流部310のみに導入され、他の整流部310には導入されない。つまり、整流体300の複数の整流部310では、互いに異なる貫通孔242から導入されたガスG24同士が混ざらずに各貫通孔330を通り抜ける。
つまり、分岐部230及び240の各々では、ガスが導入される導入口(放出口223及び233)と、当該導入口から導入されたガスが通り抜ける貫通孔とが、「多対多」に対応する。一方、整流体300では、ガスが導入される導入口(放出口243)と、当該導入口から導入されたガスが通り抜ける貫通孔330とが、「1対多」に対応する。
このように、整流体300では複数の放出口243から導入されたガスG24同士が混ざらずに貫通孔330を通りぬけるため、整流体300は、分岐部230及び240による整流作用よりも一層効果的に、導入されたガスG24を整流することができる。
なお、分岐部230及び分岐部240の各々においても、整流体300と同様に、導入口(放出口223及び233)から導入されたガスが混じらないように、各導入口からガスが導入される空間を遮る壁部を設けてもよい。これにより、分岐部230及び分岐部240の各々における整流作用を一層高めることができる。
(変形例1)
次に、本発明の実施の形態の変形例1について説明する。上記実施の形態では、複数の貫通孔330は、壁面320のうち対向領域AR1を有する面に開口して形成されるとした。つまり、壁面320のうち、対向領域AR1が配置されている部分と、複数の貫通孔330の各々により開口331が配置されている部分とは、同一面であるとした。これに対し、本変形例では、複数の貫通孔は、対向領域AR1が配置されている面と異なる面に開口して形成される。
図10は、本発明の実施の形態の変形例1に係る整流部310Aの構成を示す斜視図である。なお、同図では、整流部310Aを構成する樹脂等の部材を透視して図示している。また、説明の便宜のため、分岐部240に設けられた貫通孔242の放出口243に対向する対向領域AR1にドットのハッチングを施している。
同図に示すように、整流部310Aの分岐部240側(Z軸方向プラス側)には、壁面320Aを底面とする凹部340Aが形成されている。
凹部340Aは、実施の形態における凹部340と比較して、壁面320Aとして、対向領域AR1を含む中央部分よりも周辺部分が高く(浅く)形成された底面を有する。つまり、壁面320Aは、対向領域AR1を有する面である第一面321と、当該第一面321に連なる他の面であって当該第一面321とは異なる高さ(Z軸方向において異なる位置)に設けられた第二面322とを有する。
本変形例において、複数の貫通孔330の各々は、第二面322に開口して形成されている。つまり、複数の貫通孔330の各々は、壁面320Aのうち対向領域AR1を有する第一面321に連なる他の第二面322に開口して形成されている。
図11は、本発明の実施の形態の変形例1に係る整流部310Aにおけるガスの流れを示す断面図である。具体的には、同図は、図6のA−A’断面に相当する断面における、図10に示す整流部310の断面図である。なお、同図では、分岐部240も併せて図示している。
同図に示すように、放出口243から整流部310へ導入されたガスG24が対向領域AR1にぶつかった後のガスG31は、当該対向領域AR1から第一面321に沿って流れる(拡散する)ため、当該ガスG31Aの流れ方向は対向領域AR1から第一面321に沿って広がる方向となり、当該ガスG31Aの流速はガスG24の流速のバラつきの影響を受けにくくなる。
その後、ガスG31Aは、XY平面における流れ方向を維持しつつ第一面321と第二面322との段差を乗り越えて複数の貫通孔330各々の開口331に到達すると、流れ方向を変えて貫通孔330内を流れる。
これにより、本変形例において貫通孔330の下側(Z軸方向マイナス側)の開口332から放出されるガスG31Aは、実施の形態におけるガスG31と同様に、流れ方向がZ軸方向マイナス側となる。
したがって、整流部310Aから放出されるガス(ガスG31Aの集合)は、定常流となる。つまり、整流部310Aは、実施の形態における整流部310と同様に、貫通孔242によって導入されたガスG24を整流して放出することができる。
よって、この整流部310Aを備える本変形例に係るガスノズルによれば、整流部310Aにおいて、複数の貫通孔330の各々が壁面320Aのうち対向領域AR1を有する第一面321に連なる他の第二面322に開口して形成されている場合であっても、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、本変形例では、対向領域AR1の周囲に第二面322を天井面とする立壁が設けられている。つまり、本変形例では、対向領域AR1を有する第一面321に立設された壁部が配置されている。
このように立壁が設けられていることにより、放出口243から整流部310Aに導入されたガスG24の流れは当該立壁によって妨げられる。よって、放出口243の下の空間(凹部340A内部の空間)がガスG24で満たされやすくなるため、複数の開口331の面積の総和が放出口243の面積に対して比較的大きい場合であっても、高い整流作用を奏することができる。
(変形例2)
次に、本発明の実施の形態の変形例2について説明する。上記実施の形態では、複数の貫通孔330の各々は、互いに独立している。これに対し、本変形例では、複数の貫通孔330の少なくとも2以上(本変形例では5つ)は、互いに連通することにより、1つの貫通孔を形成する。
図12は、本発明の実施の形態の変形例2に係る整流部310Bの構成を示す斜視図である。なお、同図では、整流部310Bを構成する樹脂等の部材を透視して図示している。また、説明の便宜のため、分岐部240に設けられた貫通孔242の放出口243に対向する対向領域AR1にドットのハッチングを施している。
図13は、本発明の実施の形態の変形例2に係る整流部310Bの構成を示す上面図である。なお、同図では、説明の便宜のため、対向領域AR1、及び、壁面320のうち当該対向領域AR1を除く領域の各々に、ドットのハッチングを施している。
これらの図に示す各貫通孔330Bは、上記実施の形態における隣り合う5つの貫通孔330が連通した構成に相当する、例えばスリット形状である。
このように構成された本変形例に係る整流部310Bによれば、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。よって、この整流部310Bを備える本変形例に係るガスノズルによれば、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
(変形例3)
次に、本発明の実施の形態の変形例3について説明する。上記実施の形態では、複数の貫通孔330は、対向領域AR1を中心とする同一円周上に配置されている。これに対し、本変形例では、複数の貫通孔は、対向領域AR1を中心とする正方形の周上に配置されている。
図14は、本発明の実施の形態の変形例3に係る整流部310Cの構成を示す斜視図である。なお、同図では、整流部310Cを構成する樹脂等の部材を透視して図示している。また、説明の便宜のため、分岐部240に設けられた貫通孔242の放出口243に対向する対向領域AR1にドットのハッチングを施している。
同図に示すように、本変形例において、複数の貫通孔330は、対向領域AR1を中心とする正方形の周上に配置されている。
このように構成された本変形例に係る整流部310Cによれば、上記実施の形態と比較して、局所的な流量の増減があるものの、同様の効果を奏することができる。よって、この整流部310Cを備える本変形例に係るガスノズルによれば、局所的な流量の増減があるものの、同様の効果を奏することができる。
ここで、複数の貫通孔330のうち対向領域AR1の中心から最も遠い貫通孔330の開口331までの距離と最も近い貫通孔330の開口331までの距離との差をΔD、各貫通孔330の貫通距離(Z軸方向の大きさ)をLとすると、L>>ΔD(例えば、LがΔDの20倍以上)を満たすように構成されてもよい。この場合、整流部310Cは、局所的な流量の増減を抑制して、上記実施の形態と同様の構成を奏することができる。
(変形例4)
次に、本発明の実施の形態の変形例4について説明する。
上記実施の形態及び変形例1〜3では、ガスノズルの構成について詳細に説明した。このようなガスノズルは、例えば、レーザ溶接におけるシールドガスを吹き付けるために用いられる。本変形例に係るガスノズルは、上記実施の形態及び変形例1〜3のいずれか1つのガスノズルである。
以下、本変形例では、上記ガスノズルが、蓄電素子の液栓の溶接工程におけるシールドガスの吹き付けに用いられる場合を例に、説明する。
図15は、本発明の実施の形態の変形例4に係るガスノズル20を用いた溶接工程の様子を示す斜視図である。なお、図15及び以降の図では、説明の便宜のため、Z’軸方向を上下方向として示しており、Z’軸方向を上下方向として説明している箇所があるが、実際の使用態様において、Z’軸方向が上下方向になるとは限らない。
蓄電素子50は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。例えば、蓄電素子50は、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、またはプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)に適用される。なお、蓄電素子50は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。
図15に示すように、蓄電素子50は、矩形筒状で底を備える本体511と、本体511の開口を閉塞する板状部材である蓋体510とで構成される容器500を備える。この容器500は、電極体等を内部に収容後、蓋体510と本体511とが溶接等されることにより、内部を密封することができるものとなっている。なお、蓋体510及び本体511の材質は、特に限定されないが、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金など溶接可能な金属であるのが好ましい。
蓋体510には、容器500の内部に電解液(非水電解質)などの液体を注入する注液孔を封止するための液栓600が設けられている。この液栓600は、電解液が注入された後の溶接工程において、例えばレーザ溶接等によって封止される。なお、容器500に注入される電解液としては、蓄電素子50の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく、様々なものを選択することができる。また、液栓600の材質は、特に限定されないが、蓋体510と同じ金属であるのが好ましい。
溶接工程では、ガスノズル20によってシールドガスを吹き付けた状態で、液栓600の周縁に沿ってレーザ光線Lの照射位置を移動させながらレーザ溶接を行う。なお、シールドガスは、溶接箇所の金属が外気に触れることによる酸化を抑制できる不活性ガスであれば特に限定されないが、例えば、N2ガス、Arガス、Heガス等である。
以上のように、本変形例によれば、実施の形態又はその変形例に係るガスノズル20を用いてシールドガスを吹き付けた状態で溶接を行う。
ここで、配管21を通じてガスノズル20へと供給されるシールドガスは、通常、乱流となっている。シールドガスが乱流のまま溶接箇所に吹き付けられた場合、溶接箇所の金属が溶融して形成された部分である溶接池にシールドガスが巻き込まれることにより、例えば、溶接箇所の外観不良、溶接深さの不均一化、及び、溶接箇所の内部に気泡が生じるポロシティの発生等の溶接不良が生じて、溶接品質が低下する虞がある。
これに対して、本変形例では、ガスノズル20を用いることにより、高度に整流されたシールドガスを吹き付けた状態で溶接を行うことができるので、高い溶接品質を確保できる。
(変形例5)
次に、本発明の実施の形態の変形例5について説明する。
上記実施の形態及び変形例1〜4では、図1に示すような形状のガスノズルについて、説明した。しかし、ガスノズルの形状はこれに限定されない。また、ガスノズルは整流部を有していればよく、分岐体200及び整流網400を有していなくてもよい。
以下、本変形例では、ガスノズルが、蓄電素子50の容器500の本体511と蓋体510との溶接工程におけるシールドガスの吹き付けに用いられる場合を例に、説明する。
図16は、本発明の実施の形態の変形例5に係るガスノズル20Eを用いた溶接工程の様子を示す断面図である。図17は、図16の底面図である。具体的には、これらの図には、蓄電素子50の容器500を構成する蓋体510と本体511とを溶接する溶接工程の様子が示されている。なお、図17では、説明の便宜のため、各整流部310Eの壁面320E及び対向領域AR1に、ドットのハッチングを施している。
これらの図に示すように、本変形例に係るガスノズル20Eは、Y’軸方向に並んで配置された2つの整流部310Eを備える。2つの整流部310Eは、貫通孔330Eの配置が、Y’軸方向において対称に配置されている点を除き同様の構成を有するため、以下では一方の整流部310Eについて説明する。
整流部310Eは、壁面320Eと、当該壁面320Eと交差する方向に当該壁面320Eを貫通して形成される複数の貫通孔(本変形例では、13個の貫通孔330E)とを備える。
壁面320Eは、導入口(不図示)に対向する対向領域AR1を有し、対向領域AR1と異なる箇所に配置された複数の貫通孔330Eによって形成された開口が配置されている。つまり、対向領域AR1には、複数の貫通孔330Eによる開口は形成されていない。
複数の貫通孔330Eの各々は、対向領域AR1と異なる箇所に配置され、壁面320と交差する方向(本変形例では、直交する方向)に当該壁面320Eを貫通して形成される。つまり、複数の貫通孔330Eの各々は、対向領域AR1から見て互いに異なる方向に配置されている。言い換えると、複数の貫通孔330Eの各々は、当該貫通孔330Eと対向領域AR1とを結ぶ直線が互いに重ならない位置に配置されている。
このような構成により、本変形例に係るガスノズル20Eによれば、実施の形態及び各変形例に係るガスノズルと同様の効果を奏することができる。つまり、整流されたガスを放出することができる。
また、本変形例において、複数の貫通孔330Eは、下方から見て(Z’軸方向マイナス側から見て)、容器500の外形に沿って並ぶように配置されている。このような構成により、本変形例に係るガスノズル20Eによれば、下方から見て(Z’軸方向マイナス側から見て)、容器500を周方向に亘って全て包みこむようにシールドガスを吹き付けることができる。
溶接工程では、ガスノズル20Eによってシールドガスを吹き付けた状態で、容器500の本体511と蓋体510との境界部分に沿ってレーザ光線Lの照射位置を移動させながらレーザ溶接を行う。このように、ガスノズル20Eを用いることにより、高度に整流されたシールドガスを吹き付けた状態で溶接を行うことができるので、高い溶接品質を確保できる。
ここで、配管から供給されたシールドガスを、X’Y’平面に設けた流路を順にたどらせながら吹き付ける構成の場合、配管からシールドガスが供給される供給口に近い場所と遠い場所とでは、吹き付けるシールドガスの量にバラつきがある。また、X’Y’平面に設けた流路にカーブやコーナー等の屈曲部がある場合、当該屈曲部の内側と外側とで流れに差が生じることにより、流路中のシールドガスの速度及びベクトルにバラつきが生じる。よって、吹き付けるシールドガスが整流されずに乱流が発生しやすいという問題がある。
これに対して、本変形例では、導入口(不図示)から導入されたシールドガスを、壁面320Eの対向領域AR1にぶつけることにより流れ方向を変えて、当該対向領域AR1から分散させた後に、壁面320Eと交差する複数の貫通孔330Eの各々を介して放出させる。よって、複数の貫通孔330Eを通り抜けたシールドガスは、流速及び流れ方向が均一化される。つまり、本変形例に係るガスノズル20Eは、整流されたシールドガスを放出することができる。
(その他の変形例)
以上、本発明の実施の形態及びその変形例に係るガスノズルについて説明したが、本発明は、この実施の形態及びその変形例に限定されるものではない。
つまり、今回開示された実施の形態及びその変形例は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。すなわち、本発明に係るガスノズルの構成は、上記説明に示す各整流部及び分岐部220〜240の少なくとも1つを備えればよい。
また、例えば、実施の形態の変形例2の構成に実施の形態の変形例3の構成を組み合わせてもかまわない。
また、上記説明では、整流体が備える整流部についてのみ、複数の貫通孔が対向領域を中心とする放射状の位置に配置されることとしたが、分岐部220〜240の各々において、複数の貫通孔が放出口213〜233の各々に対応する対向領域を中心とする放射状の位置に配置されてもかまわない。
また、上記変形例1では、整流部310Aにおいて、対向領域AR1を有する第一面321に立設された壁が配置されていることとしたが、このような壁は分岐部220〜240に配置されていてもかまわない。
例えば、上記説明した分岐部230では、ガスG22が導入される導入口(放出口223)に対応して配置される対向領域を有する壁面(凹部231の底面)に壁が立設されている。つまり、凹部231の底面は、対向領域を有する面である第一面と、当該第一面に連なる他の面であって当該第一面とは異なる高さ(Z軸方向において異なる位置)に設けられた第二面とを有する。これにより、分岐部230は、凹部231における貫通孔232の開口の面積の総和が放出口223の面積の総和に対して比較的大きい場合であっても、高い整流作用を奏することができる。
また、上記説明では、複数の貫通孔は、対向領域AR1を中心とする放射状の位置に配置されるとした。しかし、複数の貫通孔は、対向領域AR1とは異なる箇所に配置されていればよく、例えば、対向領域AR1に対して、複数の貫通孔が概ね同じ方向に配置されていてもかまわない。
また、上記説明では、複数の貫通孔は、対向領域AR1と複数の孔部の各々とを結ぶ線分のなす角度が均等となる位置に配置されるとした。しかし、複数の貫通孔は、対向領域AR1を中心とする放射状の位置に配置されていればよく、例えば、当該線分のなす角度が不均等となる位置に配置されていてもかまわない。これによっても、放出されるガスの流量分布が多少不均一になるものの、整流されたガスを放出することができる。
また、上記説明では、対向領域AR1は、導入口から導入されるガスの流れ方向に対して垂直に配置されているとした。しかし、対向領域AR1は当該導入口に対向して配置されていればよく、当該流れ方向に対して垂直でなくてもかまわない。つまり、当該流れ方向と平行でなければよい。これによっても、複数の貫通孔の配置の自由度が多少低下するものの、整流されたガスを放出することができる。
また、上記説明では、複数の貫通孔は壁面に対して垂直に貫通しているとした。しかし、貫通孔の貫通方向はこれに限定されず、壁面に対して垂直でなくてもかまわない。
また、上記説明では、整流部は1つの部材を例えば切削加工等することにより形成されるとした。しかし、整流部は、複数の貫通孔が形成された柱状部材と当該柱状部材の側面を囲む部材とにより構成されていてもかまわない。また、複数の貫通孔は、柱状部材に形成されるのではなく、柱状部材と当該柱状部材の側面を囲む部材とにより形成される空隙であってもかまわない。
また、上記説明では、整流部は複数の貫通孔を備えたが、対向領域AR1とは異なる箇所に配置された複数の第一貫通孔(孔部)が互いに連通することにより形成された1つの第二貫通孔を備えてもかまわない。
また、上記説明では、整流部310の分岐部240側(Z軸方向プラス側)に凹部340が形成されていることとしたが、整流部310には、放出口243及び開口331以外が閉じられた閉空間が形成されていればよく、対向領域AR1を有する壁面に立設された壁によって囲まれるような空間が形成されていてもかまわない。
また、上記説明では、整流部310の整流網400側(Z軸方向マイナス側)に凹部350が形成されていることとしたが、整流部310には当該凹部350が形成されていなくてもかまわない。