以下、本発明に係るタッチパネルにつき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、本明細書において数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
図1は、本実施の形態に係るタッチパネル100の要部分解斜視図である。このタッチパネル100は、センサ本体102と、図示しない制御回路(IC回路等)とを有する。
センサ本体102は、第1導電シート10Aと第2導電シート10Bとが積層されて構成された積層導電シート12と、第1導電シート10A上に積層された保護層106とを有する。センサ本体102(積層導電シート12及び保護層106)は、例えば、液晶ディスプレイ等の表示装置108における表示パネル110上に配置される。センサ本体102は、上面から見たときに、表示パネル110の表示画面110aに対応した領域に配されたタッチ位置のセンサ部112と、表示パネル110の外周部分に対応する領域に配された端子配線部114(いわゆる額縁)とを有する。
積層導電シート12は、図2に示すように、第1導電シート10Aと第2導電シート10Bとが積層されて構成されている。
第1導電シート10Aは、絶縁層である第1透明基体14A(図3参照)の一主面上に形成された第1電極層としての第1導電部16Aを有する。第2導電シート10Bも同様に、図2及び図3に示すように、絶縁性の第2透明基体14B(図3参照)の一主面上に形成された第2導電部16B(第2電極層)を有する。
この中、第1透明基体14A及び第2透明基体14Bの厚みは50〜350μm以下が好ましく、80〜250μmが一層好ましく、100〜200μmが特に好ましい。
第1透明基体14A及び第2透明基体14Bとしては、プラスチックフイルム、プラスチック板、ガラス板等を挙げることができる。
上記プラスチックフイルム及びプラスチック板の原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、ポリエチレンビニルアセテート(EVA)等のポリオレフィン類;ビニル系樹脂;その他、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)等を用いることができる。
第1透明基体14A及び第2透明基体14Bとしては、PET(融点:258℃)、PEN(融点:269℃)、PE(融点:135℃)、PP(融点:163℃)、ポリスチレン(融点:230℃)、ポリ塩化ビニル(融点:180℃)、ポリ塩化ビニリデン(融点:212℃)やTAC(融点:290℃)等の融点が約290℃以下であるプラスチックフイルム、又はプラスチック板が好ましく、特に、光透過性や加工性等の観点から、PETが好ましい。積層導電シート12に使用される第1導電シート10A及び第2導電シート10Bのような導電性フイルムは透明性が要求されるため、第1透明基体14A及び第2透明基体14Bの透明度は高いことが好ましい。
一方の第1導電部16Aは、図2に示すように、それぞれ第1方向(x方向)に延びる複数の帯状の第1導電パターン18A(第1電極)を有する。これら複数の第1導電パターン18Aは、第2方向(第1方向と直交する方向:y方向)に沿って配列されている。
各第1導電パターン18Aは、銀細線20同士が交差することにより形成される。この交差に伴って、銀細線20によって囲繞される空間(開口部)、すなわち、セル22Aが複数個形成される。
複数個のセル22Aの形状は、図4に示すように互いに異なり、且つ規則性(統一性)が低い。換言すれば、銀細線20によって形成される第1導電パターン18Aのメッシュパターンはランダムである。例えば、ハッチングを付したセル22’は四角形状であり、頂点C1及び頂点C2を直線で結ぶ銀細線20pと、頂点C2及び頂点C3を直線で結ぶ銀細線20qと、頂点C3及び頂点C4を直線で結ぶ銀細線20rと、頂点C4及び頂点C1を直線で結ぶ銀細線20sとで形成されている。なお、この図4から理解されるように、セル22Aはいずれも、少なくとも3辺を有する多角形状である。
以下、本明細書中における「多角形」には、幾何学的に完全な多角形のみならず、前記完全な多角形に対し軽微な変更を加えた「実質的な多角形」も含まれるものとする。軽微な変更の例示として、セル22Aと比べて微小な点要素・線要素の付加や、セル22Aを構成する各辺(銀細線20)の部分的欠損等が挙げられる。また、一部、あるいは全部の辺が曲線からなっていても多角形と呼ぶものとする。
ランダムなメッシュパターンは、例えば、ボロノイ分割法や、ドロネー三角形分割法によって形状を設定することができる。
また、図6A〜図6D、及び図7A〜図7Dに例示したようなメッシュパターンの開口部を変形した態様でもよい。
銀細線20の幅方向寸法(線幅)は、特に限定されるものではなく、例えば、10μm以下に設定することができるが、4μm以下が好ましい。セル22Aの形状がランダムであることと、銀細線20の線幅がこのように小さいこととが相俟って、導電パターンのモアレが改善されて視認性が良好となる。線幅は、2μm以下とすることも可能である。なお、タッチパネル100の検出感度を確保するべく、銀細線20の線幅は0.5μm以上であることが好ましい。
図2に示すように、各第1導電パターン18Aの一方の端部は、第1結線部40aを介して銀細線20による第1端子配線パターン42aに電気的に接続されている。
一方、第2導電シート10Bを構成する第2透明基体14B(図3参照)の一主面上に形成された第2導電部16Bは、図2に示すように、それぞれ第2方向(y方向)に延びる複数の帯状の第2導電パターン18B(第2電極)を有する。これら複数の第2導電パターン18Bは、第1方向(x方向)に沿って配列されている。すなわち、積層導電シート12では、図3に示すように、絶縁性の第1透明基体14Aを介して第1導電パターン18Aと第2導電パターン18Bが対向する。
各第2導電パターン18Bも上記と同様に、銀細線20同士が交差することにより形成される。この交差に伴って、銀細線20によって囲繞されるセル22Bが形成される。
この場合、第2導電パターン18Bのメッシュパターンは第1導電パターン18Aと同様にランダムである。すなわち、複数個のセル22Bの形状は、セル22Aと同様に互いに異なり、且つ規則性(統一性)が低い。セル22Bにおける銀細線20の好ましい線幅及びその理由、並びにセル22Bの配線形状の決定手法等はセル22Aと同様であり、従って、その詳細な説明は省略する。
図2に示すように、各第2導電パターン18Bの一方の端部は、第2結線部40bを介して銀細線20による第2端子配線パターン42bに電気的に接続されている。
タッチパネル100に適用した第1導電シート10Aは、図2に示すように、センサ部112に対応した部分に、上述した多数の第1導電パターン18Aが配列され、端子配線部114には各第1結線部40aから導出された銀細線20による複数の第1端子配線パターン42aが配列されている。
図1の例では、第1導電シート10Aの外形は、上面から見て長方形状を有し、センサ部112の外形も長方形状を有する。端子配線部114のうち、第1導電シート10Aの一方の長辺側の周縁部には、その長さ方向中央部分に、複数の第1端子116aが前記一方の長辺の長さ方向に配列形成されている。また、センサ部112の一方の長辺(第1導電シート10Aの一方の長辺に最も近い長辺:y方向)に沿って複数の第1結線部40aが直線状に配列されている。各第1結線部40aから導出された第1端子配線パターン42aは、第1導電シート10Aの一方の長辺における略中央部に向かって引き回され、それぞれ対応する第1端子116aに電気的に接続されている。
従って、センサ部112における一方の長辺の両側に対応する各第1結線部40aに接続された第1端子配線パターン42aは、略同じ長さにて引き回されることになる。これにより、局所的な信号伝達の遅延を抑制することができる。これは、応答速度の高速化につながる。
第2導電シート10Bにおいては、図2に示すように、センサ部112に対応した部分に多数の第2導電パターン18Bが配列され、端子配線部114には各第2結線部40bから導出された複数の第2端子配線パターン42bが配列されている。
図1に示すように、端子配線部114のうち、第2導電シート10Bの一方の長辺側の周縁部には、その長さ方向中央部分に、複数の第2端子116bが前記一方の長辺の長さ方向に配列形成されている。また、センサ部112の一方の短辺(第2導電シート10Bの一方の短辺に最も近い短辺:x方向)に沿って複数の第2結線部40b(例えば奇数番目の第2結線部40b)が直線状に配列され、センサ部112の他方の短辺(第2導電シート10Bの他方の短辺に最も近い短辺:x方向)に沿って複数の第2結線部40b(例えば偶数番目の第2結線部40b)が直線状に配列されている。
複数の第2導電パターン18Bのうち、例えば奇数番目の第2導電パターン18Bが、それぞれ対応する奇数番目の第2結線部40bに接続され、偶数番目の第2導電パターン18Bが、それぞれ対応する偶数番目の第2結線部40bに接続されている。奇数番目の第2結線部40bから導出された第2端子配線パターン42b並びに偶数番目の第2結線部40bから導出された第2端子配線パターン42bは、第2導電シート10Bの一方の長辺における略中央部に向かって引き回され、それぞれ対応する第2端子116bに電気的に接続されている。従って、例えば第1番目と第2番目の第2端子配線パターン42bは、略同じ長さにて引き回され、以下同様に、第2n−1番目と第2n番目の第2端子配線パターン42bは、それぞれ略同じ長さにて引き回されることになる。このように、第2導電シート10Bの一方の長辺の長さ方向中央部分に第2端子116bを形成することで、上記と同様に局所的な信号伝達の遅延を抑制することができる。このことも、応答速度の高速化に寄与する。
なお、第1端子配線パターン42aの導出形態を上述した第2端子配線パターン42bと同様にしてもよいし、逆に、第2端子配線パターン42bの導出形態を上述した第1端子配線パターン42aと同様にしてもよい。
そして、この積層導電シート12をタッチパネル100として使用する場合は、第1導電シート10A上に保護層106を形成し、第1導電シート10Aの多数の第1導電パターン18Aから導出された第1端子配線パターン42aと、第2導電シート10Bの多数の第2導電パターン18Bから導出された第2端子配線パターン42bとを、例えば、スキャンをコントロールする制御回路に接続する。
タッチ位置の検出方式としては、自己容量方式や相互容量方式を好ましく採用することができる。すなわち、自己容量方式であれば、第1導電パターン18Aに対して順番にタッチ位置検出のための電圧信号を供給し、第2導電パターン18Bに対して順番にタッチ位置検出のための電圧信号を供給する。指先が保護層106の上面に接触又は近接させることで、タッチ位置に対向する第1導電パターン18A及び第2導電パターン18BとGND(グランド)間の容量が増加することから、当該第1導電パターン18A及び第2導電パターン18Bからの伝達信号の波形が他の導電パターンからの伝達信号の波形と異なった波形となる。従って、制御回路では、第1導電パターン18A及び第2導電パターン18Bから供給された伝達信号に基づいてタッチ位置を演算する。
一方、相互容量方式の場合は、例えば第1導電パターン18Aに対して順番にタッチ位置検出のための電圧信号を供給し、第2導電パターン18Bに対して順番にセンシング(伝達信号の検出)を行う。指先が保護層106の上面に接触又は近接させることで、タッチ位置に対向する第1導電パターン18Aと第2導電パターン18B間の寄生容量に対して並列に指の浮遊容量が加わることから、当該第2導電パターン18Bからの伝達信号の波形が他の第2導電パターン18Bからの伝達信号の波形と異なった波形となる。従って、制御回路では、電圧信号を供給している第1導電パターン18Aの順番と、供給された第2導電パターン18Bからの伝達信号に基づいてタッチ位置を演算する。
このような自己容量方式又は相互容量方式のタッチ位置の検出方法を採用することで、保護層106の上面に同時に2つの指先を接触又は近接させても、各タッチ位置を検出することが可能となる。なお、投影型静電容量方式の検出回路に関する先行技術文献として、米国特許第4,582,955号明細書、米国特許第4,686,332号明細書、米国特許第4,733,222号明細書、米国特許第5,374,787号明細書、米国特許第5,543,588号明細書、米国特許第7,030,860号明細書、米国特許出願公開第2004/0155871号明細書等がある。
第1導電パターン18A及び第2導電パターン18Bは、線幅の狭いパターンを得るために、好適にはマイクロコンタクト印刷パターニング法又は銀塩法によって形成することができる。大量のランダムパターンを繰り返し得るためには、消耗するスタンプを用いない銀塩法がより好ましい。
マイクロコンタクト印刷パターニング法とは、マイクロコンタクト印刷法を利用して線幅が狭いパターンを得る方法である。ここで、マイクロコンタクト印刷法は、弾力性のあるポリジメチルシロキサンのスタンプを用い、チオール溶液をインキとして金基材に接触させて単分子膜のパターンを作製する方法である(Whitesedes著、Angew.Chem.Int.Ed.,1998年第37巻第550頁参照)。
マイクロコンタクト印刷パターニング法の代表的なプロセスは、例えば、以下の通りである。すなわち、先ず、基材に金属がコーティングされる(例えば、銀が、PET基材にスパッタコーティングされる)。
次に、単分子膜のマスキングが、金属がコーティングされた基材にマイクロコンタクト印刷法を用いてスタンピングされる。その後、マスキング下のパターンを除いて、基材にコーティングされた金属がエッチングにより除去される。
以上につき、その具体的な作業等は、特表2012−519329号公報の段落[0104]に詳述されている。
一方、銀塩法は、感光性銀塩含有層を有する感光材料を露光・現像することにより、メッシュ状をなす銀細線20のパターンを得るものである。その具体的な作業等は、特開2009−4348号公報の段落[0163]〜[0241]に詳述されている。
ここで、図3に示すように、第2導電シート10Bの上端面(すなわち、第2導電パターン18B及び第2透明基体14B上)、及び、第1導電シート10Aの上端面(すなわち、第1導電パターン18A及び第1透明基体14A上)には、粘着剤としてのOCA30が粘着シートとして貼付することで配置される。
このOCA30は、140℃、1Hzでの損失係数tanδが0.13以上であるものである。なお、損失係数は、損失弾性率と貯蔵弾性率の比で求められる。すなわち、下記の関係式(a)が成り立つ。
損失係数(tanδ)=損失弾性率/貯蔵弾性率 …(a)
また、OCA30の25℃、1Hzでの貯蔵弾性率は、8.9×104Pa以下である。
このような動的粘弾性特性は、凹凸形状面への追随性(段差追従性)や応力緩和性の観点から重要である。何故なら、ストレスマイグレーションは、OCA30の応力緩和性と初期の残留応力に関係して発現するからである。
応力緩和性の指標であるtanδが0.13以上であれば、OCA30は応力緩和性に優れ、ランダムパターンの狭いセルピッチや鋭角形状に追従して、イオンマイグレーションが発生し難いものとなる。一層好ましいtanδは0.15以上、さらに好ましくは0.20以上である。一方、tanδの値が過度に大きくなると、OCA30の高温における接着性が低下する傾向がある。これを回避すべく、tanδは0.60以下とすることが好ましい。
また、貯蔵弾性率は、貼り合せたときに変形したOCA30の残留応力(初期残留応力)の指標である。この値が8.9×104Pa以下であれば、ストレスマイグレーションを緩和することができる。例えば、OCA30を介して1μm程度の凹凸形状面を有するランダムパターンの銀細線20と貼り合せた場合でも、局所的な残留応力を発生させず、ストレスマイグレーションを抑制することが可能となる。
上記の動的粘弾性特性のOCA30であっても、限度を超えた不規則なランダムパターンに適用することは容易ではない。適用可能なランダムパターンは、セルの面積の標準偏差が、0.017mm2〜0.038mm2の範囲である。標準偏差が0.017mm2未満では、モアレに対する効果がなく、0.038mm2を超えるとストレスマイグレーションが発生するとともに、モアレと色ノイズも発生してしまう。
上記したように、ランダムパターンを有する銀細線20のメッシュ電極上に貼り合わせるOCAが、応力緩和性が低いものであるときには、銀細線20に局所的に残留応力が発生してストレスマイグレーションが起こり易くなる。これに対し、セルの面積の標準偏差が所定の範囲内であるランダムパターンに対して上記した物性のOCA30を用いる本実施の形態によれば、ランダムパターンに起因してストレスマイグレーションが引き起こされることを回避することが可能となる。
上記したような物性を有するOCA30としては、下記の(A)〜(C)に示される成分を含むものが挙げられる。
(A):ガラス転移点Tgが25℃以下であるアルキル(メタ)アクリレートモノマー(ただし、アルキル基は4〜18個の炭素原子を有する)
(B):ガラス転移点Tgが25℃を超える(メタ)アクリレートモノマーのエステル
(C):ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、非置換(メタ)アクリルアミド、N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル置換(メタ)アクリルアミド、尿素官能基を有するモノマー、ラクタム官能基、三級アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、及びこれらの組み合わせを有するモノマーの群から選択されるモノマー
(A)成分、すなわち、アルキル基の炭素数が4〜18であるアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、当該(A)成分単独でOCA30に十分な粘着性(柔軟性)を付与するという観点から、1種又は複数種のモノマーからなるポリマーのガラス転移温度は25℃以下であることが好ましい。具体的には、ホモポリマーのガラス転移温度が25℃以下であるモノマー、例えば、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソアミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソセチル(メタ)アクリレート、2−オクチルデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−メチルブチルアクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、及びこれらの混合物を使用することができる。
これらの中でも好ましい(A)成分は、熱重合及び光重合いずれの重合方法においても優れた重合性を有する点からアルキルアクリレートであり、具体的には、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソセチルアクリレート、2−オクチルデシルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2−メチルブチルアクリレート等が含まれる。また、粘着性の観点から、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−メチルブチルアクリレートが特に好ましい。
ここで、ホモポリマーの「ガラス転移温度(Tg)」とは、JIS K 7121により測定される値である。すなわち、加熱融解したポリマーをある条件下で冷却していくと過冷却液体を経てガラス状態となるが、この状態が変化する際の温度を意味する。
次に、(B)成分、すなわち、ガラス転移点Tgが25℃を超える(メタ)アクリレートモノマーのエステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート等の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環アルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
次に、(C)成分は、OCA30の凝集力を向上させ、接着性を付与する成分である。すなわち、タッチパネル100において、特に高温下における発泡、剥がれが防止される。
この種のモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−T−オクチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド等の置換アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のビニルモノマー等が挙げられる。これらの中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
OCA30のtanδ及び貯蔵弾性率は、上記各モノマー成分の種類、分子量、組成を適宜変更することによって調整することができる。例えば、(C)成分を多く用いると貯蔵弾性率は高くなり、(A)成分及び(B)成分の量を多くすると貯蔵弾性率を低くすることができる。また、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含むモノマーの共重合体における分子量を上げると、貯蔵弾性率が高くなる傾向がある。マイグレーションと白化の両立という観点から、(A)成分を45〜95重量部、(B)成分を20〜50重量部、(C)成分を1〜40重量部の割合とすることが好ましい。
また、OCA30のtanδは、後述する架橋剤の量によって調整することもできる。具体的には、架橋剤量を増やせばtanδの値が小さくなり、架橋剤量を少なくすればtanδの値は大きくなる。
このような物性を有するOCA30は、応力緩和性が大きい。このようなOCA30を、セルの面積の標準偏差が所定の範囲内であるランダムパターンを有する銀細線20のメッシュ電極上に貼り合せることにより、銀細線20に局所的に残留応力が発生することや、このためにストレスマイグレーションが引き起こされることが回避される。
OCA30には、フェノール系化合物からなるマイグレーション防止剤がさらに含まれていてもよい。この場合、銀のマイグレーションが起こることを一層防止することができる。
フェノール系化合物とは、フェノール基を分子中に含む化合物を意味する。この化合物は、銀イオンを金属銀に還元することにより、イオンマイグレーションを抑制する。
フェノール系化合物は、酸化還元電位が0.40〜1.30Vであるものが好ましく、中でも、イオンマイグレーション抑制能がより優れる点で、0.50〜1.20Vであるものがより好ましく、0.55〜1.1Vであるものがさらに好ましく、0.55〜1.0Vであるものが特に好ましい。還元性化合物の酸化還元電位が0.40V未満又は1.30V超の場合、イオンマイグレーション抑制能に劣る。
酸化還元電位は、多くの文献に記載された方法で測定することができるが、本発明においては、以下の方法で測定した値を酸化還元電位と定義する。
すなわち、還元性化合物1mM、支持電解質として過塩素酸テトラブチルアンモニウム0.1Mのジメチルホルムアミド(DMF)溶液に5分間Arバブリングを行った後、ポテンショスタット(ビー・エー・エス株式会社 ALS−604A)にて、サイクリックボルタンメトリー測定を行う。作用極:Glassy Carbon、対極:Pt、参照電極:飽和カロメル電極を用いたときの酸化還元電位を測定する。
フェノール系化合物の好適な具体例としては、以下の式(1)〜式(3)で表される化合物が挙げられる。
式(1)中、R
11〜R
15は、各々独立に、水素原子、水酸基、又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。
炭化水素基の好適例としては、例えば、−O−R31が挙げられる。R31は、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。−O−R31が複数ある場合は、それらは同一であっても異なっていてもよい。
炭化水素基の炭素数としては、絶縁樹脂との相溶性により優れる点で、1〜12が好ましく、1〜10がより好ましい。
炭化水素基としては、より具体的には、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又はこれらを組み合わせた基が挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。
また、R11〜R15の各基の分子量の合計は21以上である。なかでも、35以上が好ましい。なお、上限は特に制限されないが、1000以下が好ましく、500以下がより好ましく、300以下がさらに好ましい。
また、R11〜R15は、任意の2つが互いに結合して環を形成してもよい。例えば、R11とR12、R12とR13、R13とR14、又はR14とR15等のように隣接する2つの基が、各々結合して環を形成してもよい。形成される環の種類は特に制限されないが、例えば、5〜6員環構造を挙げることができる。
式(2)中、R16〜R23は、各々独立に、水素原子、水酸基、又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。
R16〜R23で表される炭化水素基の好適範囲は、上述したR11〜R15で表される炭化水素基の好適範囲と同義である。
また、R16〜R23の各基の分子量の合計は24以上である。なかでも、35以上が好ましい。なお、上限は特に制限されないが、1000以下が好ましく、500以下がより好ましく、300以下がさらに好ましい。また、R16〜R23は、任意の2つが互いに結合して環を形成してもよい。
R24は、水素原子又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。
式(3)中、R25〜R28は、各々独立に、水素原子、水酸基、又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。
R25〜R28で表される炭化水素基の好適範囲は、上述したR11〜R15で表される炭化水素基の好適範囲と同義である。
また、R25〜R28の各基の分子量の合計は40以上である。なかでも、50以上が好ましい。なお、上限は特に制限されないが、1000以下が好ましく、500以下がより好ましく、300以下がさらに好ましい。
また、R25〜R28は、任意の2つが互いに結合して環を形成してもよい。
Lは、ヘテロ原子を有していてもよい2価若しくは3価の炭化水素基、−S−、又は、これらを組み合わせた基を表す。2価の炭化水素基の炭素数は、絶縁樹脂との相溶性により優れる点で、1〜12が好ましく、1〜10がより好ましい。
mは、2又は3の整数を表す。
式(1)中のR13、式(2)中のR18及びR21の好適態様として、式(4)で表される基が挙げられる。
式(4) *−CH2−R34
R34は、水素原子又は炭素数1〜19の炭化水素基を表す。R34で表される炭化水素基の炭素数は、絶縁樹脂との相溶性により優れる点で、1〜12が好ましく、1〜10がより好ましい。*は結合位置を表す。
フェノール系化合物の好適態様として、イオンマイグレーション抑制能がより優れる点で、式(5)で表される化合物が挙げられる。
式(5)中、R50及びR51は、各々独立に、水素原子、水酸基、酸素原子を含んでもよい脂肪族炭化水素基、酸素原子を含んでもよい芳香族炭化水素基を表す。なかでも、イオンマイグレーション抑制能がより優れる点で、少なくともR50及びR51のいずれか一方が3級あるいは4級炭素原子を含むアルキル基であることが好ましい。
脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基に含まれる炭素原子の数は特に制限されないが、1〜20がより好ましい。特に、R50が炭素原子数1〜5個のアルキル基で、R51が炭素原子数10〜20個のアルキル基であることが好ましい。
また、R50及びR51の各基中に含まれる炭化水素基の分子量の合計は30以上が好ましく、50以上がより好ましい。炭素原子の合計数が該範囲であれば、銀のイオンマイグレーション抑制能がより向上する。
フェノール系化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
OCA30には、フェノール系化合物に加え、又はフェノール系化合物に代え、メルカプト基(−SH)基を有する複素環化合物(SH基含有複素環化合物)をマイグレーション防止剤として含めるようにしてもよい。該複素環化合物は、メルカプト基及び複素環部に含まれるヘテロ原子によって銀イオンを捕獲して、イオンマイグレーションを抑制する。
複素環化合物は、ヘテロ原子を少なくとも一つ持つ環状化合物である。ヘテロ原子とは、炭素原子及び水素原子以外の原子を意味する。ヘテロ原子は複素環の環系の構成部分を形成する原子のみを意味し、環系に対して外部に位置していたり、少なくとも一つの非共役単結合により環系から分離していたり、環系のさらなる置換基の一部分であるような原子は意味しない。ヘテロ原子の数の上限は特にないが、好ましくは10個以下であり、さらに好ましくは6個以下、特に好ましくは4個以下である。
これらの要件を満たす、いかなるSH基含有複素環化合物を用いてもよいが、ヘテロ原子として好ましくは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子又はホウ素原子であり、さらに好ましくは、窒素原子、硫黄原子又は酸素原子であり、特に好ましくは窒素原子又は硫黄原子である。
複素環の環員数は特に制限されないが、好ましくは4〜10員環であり、より好ましくは5〜9員環であり、さらに好ましくは5〜6員環である。
複素環としては、芳香族及び非芳香族のいずれでもよいが、好ましくは芳香族複素環である。
複素環の構成は単環及び縮環のいずれでもよいが、好ましくは単環又は2個の芳香環からなる複素環である。
これらの複素環として具体的には、ピロール環、チオフェン環、フラン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアザインデン環、テトラアザインデン環、ペンタアザインデン環、ヘキサアザインデン環、プリン環、テトラゾール環、ピラゾロトリアゾール環、ピロロトリアゾール環、及び、これらにベンゾ縮環したインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、キノキサリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、アクリジン環、ベンゾトリアゾール環、及び、これらが一部又は全部飽和したピロリジン環、ピロリン環、イミダゾリン環等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
SH基含有複素環化合物は、メルカプト基を有する。メルカプト基は銀と共有結合を生成する反応性に富む。このメルカプト基は、上記複素環部に結合する。
SH基含有複素環化合物中におけるメルカプト基の量は特に制限されないが、SH基含有複素環化合物の絶縁樹脂中での分散性がより良好である点より、化合物全分子量中に対してメルカプト基の原子量総量が占める割合が50%以下であることが好ましく、特に40%以下が好ましい。
なお、メルカプト基は、一つだけなく、複数含まれていてもよい。
SH基含有複素環化合物は、メルカプト基以外の置換基を有していてもよい。そのような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH)2)、ホスファト基(−OPO(OH) 2)、スルファト基(−OSO3H)等が挙げられる。
次に、本発明によるパターンの特徴を評価する評価値(指標)について説明する。画質の評価は、主としてモアレ、色ノイズの視認性の良否で評価される。本発明においては、評価値(指標)として、主として、モアレの視認性の評価に適した第2評価値と、色ノイズの視認性の評価に適した第1評価値と、モアレと色ノイズ(周波数成分)を略等価的に評価するのに適した第3評価値とを用いることができるが、これらの第2評価値、第1評価値及び第3評価値については、評価したい画質に応じて、具体的には、モアレ及び色ノイズの視認性のいずれか一方、若しくは両方かに応じて、いずれかの評価値を用いればよいが、これらの評価値を単独で用いることに限定されず、評価目的や目標に応じて、2つ以上の評価値を組み合わせて用いても良い。
[第1評価値]
先ず、第1評価値について説明する。
第1評価値(面積分布)は、複数個のセルの面積の標準偏差に相当し、色ノイズ強度をモアレより重要視した評価値である。この評価値は、画質評価の中で色ノイズが良好と判断するのに有効な指標となるが、モアレの評価も可能であることは言うまでもない。
第1評価値EV1は、セル22A、22B(あるいは、メッシュ形状)の面積分布のバラツキ程度を定量化した指標である。以下、第1評価値EV1について、図5A〜図7Dを参照しながら説明する。
図5A〜図5Cは、メッシュパターンにおける各セル22A、22Bが有する面積(以下、開口面積という場合がある。)のヒストグラムである。
図5Aは、銀細線20の配置形状の規則性が高いメッシュパターンにおける、開口面積のヒストグラムの典型例である。本ヒストグラムは、平均値をSaveとした、標準偏差σ1のガウス分布を有する。銀細線20の配線形状の規則性が高い場合、セル22A、22Bの開口面積は均一に分布する傾向がある。標準偏差σ1の値が小さい場合、表示装置108(図1参照)上に重ねて配置した位置関係下、モアレが生じやすい傾向がある。
図5Bは、銀細線20の配置形状の規則性が低いメッシュパターンにおける、開口面積のヒストグラムの典型例である。本ヒストグラムは、平均値をSaveとした、標準偏差σ2のガウス分布を有する。銀細線20の配線形状の規則性が低い場合、セル22A、22Bの開口面積は幅広く分布する傾向がある。標準偏差σ2の値が大きい場合、観察者にとってノイズ粒状感(ざらつき感ともいう。)を視認し易い傾向がある。また、各画素を構成する赤色副画素、緑色副画素、青色副画素の存在比率がセル22A、22B毎に異なるため、色ノイズとして顕在化する傾向がある。
図5Cは、銀細線20の配置形状が好適に決定されたメッシュパターンにおける、開口面積のヒストグラムの典型例である。本ヒストグラムは、平均値をSaveとした、標準偏差σのガウス分布を有する。標準偏差σを、σ1<σ<σ2の範囲に定めることで、上記したモアレ、ノイズ粒状感及び色ノイズの発生を両立して抑制できる。
ここで、セル22A、22Bの面積の分布を特徴付ける第1評価値EV1は、各セル22A、22Bが占める面積Sk(k=1,2,‥‥,N)を用いて、次の式(b)で算出される。
上記式(b)から理解されるように、第1評価値EV1は、標準偏差σ1、σ2、σ(図5A〜図5C参照)に対応する。第1評価値EV1は、常に0以上の値を取り、モアレ、ノイズ粒状感及び色ノイズの発生を総合的に考慮して、所定範囲内(σ1<EV1<σ2)にあることが好ましい。
本発明においては、このような第1評価値EV1は、後述する実施例の記載からも明らかなように、前述したような2032dpi換算時において110.2ピクセル(0.017mm2)以上240ピクセル(0.038mm2)以下の範囲内にある必要がある。また、第1評価値EV1は、120ピクセル(0.019mm2)以上170ピクセル(0.027mm2)以下の範囲であることが好ましい。
本発明において、第1評価値EV1を110.2ピクセル(0.017mm2)以上240ピクセル(0.038mm2)以下の範囲に限定する理由は、第1評価値EV1が110.2ピクセル(0.017mm2)未満では、色ノイズのムラのみならず、モアレのようなムラが見えてしまい、第1評価値EV1が240ピクセル(0.038mm2)超では、面積にバラツキが多いため、ストレスマイグレーションを引き起こし易くなるとともに、色ノイズにバラツキが多くなりすぎ、視認性に不利となり、色ノイズがムラとなって、目立つからである。
ところで、図4の例に示すように、多角形状を敷き詰めたメッシュパターンの場合、セル22A、22Bの各形状(あるいは、各メッシュ形状)が一意に画定されるので、これらの開口面積及び第1評価値EV1を算出することは容易である。しかし、メッシュ形状に変形等を施すことで、セル22A、22Bの開口面積は一意に画定されない場合がある。そこで、本出願に係る特許請求の範囲及び明細書中では、第1評価値EV1の定義を明確にするため、開口面積を次のように定義する。
図6A〜図6Dは、トポロジー的に閉じたセル22aの領域内に他の要素を付加した事例(第1〜第3事例)についての概略説明図である。これらの事例の場合、各閉領域を形成する要素(線素)を予め抽出し、抽出された線素以外の要素を除外した上で、セル22aの開口面積を計算する。
図6Aに示すように、トポロジー的に閉じたセル22aに関し、その開口面積は、ハッチングを付した領域の面積として計算される。セル22aは幾何学的に完全な四角形状を有しているので、その開口面積は一意に計算される。
第1事例として図6Bに示すように、図6Aに示すセル22aの一部(例えば中央部)に点素400が形成されたセル22bについて考察する。この場合、セル22bの開口面積は、点素400を除外した領域の面積として計算される。すなわち、セル22bは、セル22a(図6A参照)と等価に取り扱われる。
第2事例として図6Cに示すように、図6Aに示すセル22aの一部に環状の線素402が形成されたセル22cについて考察する。この場合、セル22cの開口面積は、線素402を除外した領域の面積として計算される。すなわち、セル22cは、セル22a(図6A参照)と等価に取り扱われる。
第3事例として図6Dに示すように、図6Aに示すセル22aの境界線(本図例では、四角形の一辺)と交差し、その内側に向けて突出する線素404(いわゆるヒゲ)を有するセル22dについて考察する。この場合、セル22dの開口面積は、線素404を除外した領域の面積として計算される。すなわち、セル22dは、セル22a(図6A参照)と等価に取り扱われる。
図7A〜図7Dは、トポロジー的に開いておりメッシュ形状を構成しない事例(第4〜第6事例)についての概略説明図である。これらの事例の場合、セル22A、22Bを囲繞する各線に対して最短の仮想線を補足することで閉領域(以下、仮領域という。)を画定し、この仮領域の面積を、セル22A、22Bの開口面積として計算する。
ただし、補足した仮想線の長さの総和が、仮領域を画定する境界線の全長の20%以下である場合に限り、開口面積の計算が可能であると定義する。なぜならば、補足した仮想線の長さの総和が、仮領域を画定する境界線の全長の20%を超える場合、各セル22A、22Bをもはや特定できないからである。
第4事例として図7Aに示すように、セル22eを囲繞する線は、セル22a(図6A参照)の境界線の一部が欠損した形状を有する。この場合、図7Bに示すように、第1端点406と第2端点408との間を最短経路(すなわち直線状の仮想線410)で補うことで、セル22a(図6A参照)と同じ形状を有する仮領域412が画定される。従って、セル22eの開口面積は、仮領域412の面積として計算される。すなわち、セル22eは、セル22a(同図参照)と等価に取り扱われる。
第5事例として図7Cに示すように、セル22fを囲繞する線は、円周の一部が欠損した円弧形状を有する。この場合、第1端点414と第2端点416との間を最短距離(すなわち直線状の仮想線418)で補うことで、仮領域420が画定される。従って、セル22fの開口面積は、仮領域420の面積として計算される。
第6事例として図7Dに示すように、セル22gは、一対の平行線に挟まれた開領域であるとする。この場合、各平行線の端点をそれぞれ連結する仮想線422、424を補うことで、矩形状の仮領域426が画定される。しかし、補足した仮想線422、424の長さの総和が、仮領域426を画定する境界線の全長の20%を超えているので、開口面積の計算が可能でないとし、第1評価値EV1の算出から除外される。
[第2評価値]
次に、第2評価値について説明する。
第2評価値は、モアレ強度を色ノイズより重要視した評価値であり、この評価値は画質評価の中でモアレが良好(視認され難い)と判断するのに有効な指標となるが、色ノイズの評価も可能であることは言うまでもない。
第2評価値EV2は、銀細線20の配線形状における空間周波数特性のバラツキ程度を定量化した指標である。以下、第2評価値EV2について、図8A〜図9Bを参照しながら説明する。
図8Aは、メッシュパターンの模様を表す画像データImgを可視化した概略説明図である。先ず、画像データImgに対してフーリエ変換(例えば、FFT;Fast Fourier Transformation)を施す。これにより、メッシュパターンの形状について、空間周波数分布として把握できる。
図8Bは、図8Aの画像データImgに対してFFTを施して得られる二次元パワースペクトル(以下、単にスペクトルSpcという。)の分布図である。ここで、当該分布図の横軸はX軸方向に対する空間周波数(Ux)を示し、その縦軸はY軸方向に対する空間周波数(Uy)を示す。また、空間周波数帯域毎の表示濃度が薄いほど強度レベル(スペクトルの値)が小さくなり、表示濃度が濃いほど強度レベルが大きくなっている。本図の例では、このスペクトルSpcの分布は、等方的であるとともに環状のピークを2個有している。
ここで、原点Oからの距離に相当する動径空間周波数r{=(Ux2+Uy2)1/2}、偏角θ{=tan-1(Uy/Ux)}をそれぞれ変数とする、極座標で表されるスペクトルSpcのスペクトル強度分布関数SPC(r,θ)(以下、動径スペクトルともいう)を算出し、これらの統計的なバラツキ量を算出する。
なお、図8Cは、図8Bに示すパワースペクトル分布の原点−VIIIC線に沿うスペクトル強度(Power:スペクトルの値)を示すものであり、偏角θが0度(θ=0)の時のスペクトル強度分布関数SPC(r,0)を示す。
図9Aに示す例では、動径空間周波数(r)が一定値の下、偏角(θ)は0〜360度の間で、各偏角における動径スペクトル{SPC(r,θ)}の分散を算出し、その値を動径スペクトル{SPC(r,θ)}の二乗で割った値を異方性{AI(r)}と定義する。横軸を動径空間周波数(r)、縦軸に異方性{AI(r)}の常用対数を用いた場合の、標準偏差を第2評価値(偏差量)EV2と定義し、次の式(c)で表される。
すなわち、下記式(c)に示すように、メッシュパターンのパワースペクトルSpcにおける角度方向(偏角θ=0〜360度)に沿った標準偏差は、動径空間周波数をr、偏角をθとする時、異方性{AI(r)}で表され、異方性{AI(r)}の、常用対数で表される値の動径方向にわたる標準偏差は、第2評価値となる偏差量EV2で表される。なお、パワー(スペクトル強度)を計算するスペクトルSpcのサンプリング数(サンプル数)nは、極座標における一定の動径空間周波数(r=r0の円周)上のピクセル数となる。
図9Bは、各動径空間周波数rに対する異方性AI(r)のグラフである。本図例では、約22cycle/mm近傍の空間周波数帯域で、1つの鋭いピークが存在している。その他の空間周波数帯域では、概ね平坦な特性を有している。
ここで、AI(r)は、動径空間周波数rにおける動径スペクトルの異方性を表し、SPC(r、θ)は、スペクトルSpcの動径スペクトル(スペクトル強度分布関数)、SPCave(r)は、スペクトルSpcの動径スペクトルSPCの角度方向に沿った(偏角θ=0〜360度にわたる)平均値、nは、動径スペクトルSPCの角度方向に沿った(偏角θ=0〜360度にわたる)サンプル数、AIaveは、異方性AIの動径方向に沿った(動径空間周波数r=0〜nyq(ナイキスト周波数)にわたる)平均値、mは、異方性AIの動径方向に沿った(動径空間周波数r=0〜nyq(ナイキスト周波数)にわたる)サンプル数である。上記式(c)中、偏角θ=0〜2πに亘るサメーションΣは、θ=(2π/n)jとした時のj=1〜nに亘るサメーションΣを表し、動径空間周波数r=0〜nyqに亘るサメーションΣは、r=(nyq/m)kとした時のk=1〜mに亘るサメーションΣを表す。
なお、nyqは、画像データImgに対するナイキスト周波数である。自然数であるk(k=1,2,‥,m)は、零周波数からナイキスト周波数までを等間隔にプロットする変数に相当する。すなわち、第2評価値EV2は、異方性AI(r)の、動径方向にわたる標準偏差を表す。
第2評価値EV2は、二次元周波数空間上の各角度方向に沿ってスペクトルSpcの値がばらつく場合、メッシュパターンの異方性が高くなる。この場合、異方性AI(r)は、特定の空間周波数Uで大きなピークを有するため、上記式(c)の第2評価値EV2の値は大きくなる。
一方、図8B例のように、各角度方向に沿ってスペクトルSpcの値が均一である場合、メッシュパターンの異方性が低くなる。この場合、異方性AI(r)の値は動径周波数rによらず小さくなり、上記式(c)の第2評価値EV2の値は小さくなる。
すなわち、第2評価値EV2は、メッシュパターンのパワースペクトルSpcの角度方向のバラツキを表す異方性AI(r)の動径方向のバラツキを表す。
本発明においては、このように表される第2評価値EV2は、0.965以上1.065以下の範囲であることが好ましい。第2評価値EV2が0.965未満では、異方性AIのバラツキが小さく、特定周波数成分が多いため、モアレが目立つ傾向がある。一方、第2評価値EV2が1.065超では、異方性AIのバラツキが大きく、種々の周波数成分が多数混在し、モアレのみならず、色ノイズ成分がムラとなって視認されることがある。第2評価値EV2の一層好ましい範囲は、0.97以上1.06以下である。
[第3評価値]
次に、第3評価値について説明する。
第3評価値(重心位置)はモアレと色ノイズ(周波数成分)をほぼ等価的に評価するのに適していて、この評価値はモアレ、色ノイズが共に良好と判断するのに有効な指標となる。
第3評価値EV3は、セル22Aの重心位置のバラツキ程度を定量化した評価値である。以下、第3評価値EV3について、図10〜図13を参照しながら説明する。
図10に示すように、図6Bと同様の平面領域120に対し、ボロノイ図を用いて多角形状の各領域V1〜V8が画定されているものとする。なお、各領域V1〜V8内にそれぞれ属する各点C1〜C8は、各領域の幾何学的な重心位置を表している。
図11は、本実施の形態に係るメッシュパターンと、各セル22Aの重心位置との関係を示す概略説明図である。
図12Aは、図11のメッシュパターンが有する各セル22Aの重心位置の分布(以下、「重心位置分布C」という。)を表す画像データ(以下、「重心画像データImgc」という。)を可視化した概略説明図である。本図から理解されるように、重心位置分布Cは、各重心位置が互いに重複することなく適度に分散している。
図12Bは、図12Aの重心画像データImgcに対してFFTを施して得られる二次元パワースペクトル(以下、「重心スペクトルSpcc」という。)の分布図である。ここで、当該分布図の横軸はX軸方向に対する空間周波数(Ux)を示し、その縦軸はY軸方向に対する空間周波数(Uy)を示す。また、空間周波数帯域毎の表示濃度が薄いほど強度レベル(スペクトルの値)が小さくなり、表示濃度が濃いほど強度レベルが大きくなっている。本図の例では、この重心スペクトルSpccの分布は、等方的であるとともに環状のピークを1個有している。
図12Cは、図12Bに示す重心スペクトルSpccの分布の原点−XIIC線に沿った断面図である。重心スペクトルSpccは等方的であるので、図12Cはあらゆる角度方向に対する動径方向分布に相当する。本図から理解されるように、低空間周波数帯域での強度レベルが小さくなり、中間の空間周波数帯域には幅が広いピークを有している。さらに、低空間周波数帯域に対して、高空間周波数帯域での強度レベルが高くなるいわゆるハイパス型の特性を有する。すなわち、図12Aに示す重心画像データImgcは、画像工学分野の技術用語によれば、「ブルーノイズ」の特性を有する模様を表すものといえる。
なお、導電シート10A、10Bにおける重心位置分布Cを決定するためには、セル22A、22Bの各領域を画定する必要がある。ここでは、第1評価値EV1の算出(図6A〜図7D参照)と同様の定義に沿って各領域を画定する。
図13A及び図13Bは、所定方向に沿って配置された各重心位置についての、所定方向の垂直方向に対する位置の標準偏差の算出方法を模式的に表す説明図である。
図13Aに示すように、先ず、重心位置分布Cの中から初期位置としての重心位置Pc1を任意に選択する。そして、重心位置Pc1からの距離が最も近い重心位置Pc2を選択する。そして、既に選択された重心位置Pc1を除く残余の重心位置分布Cの中から、重心位置Pc2に最も近い重心位置Pc3を選択する。以下、同様にして、統計学的に十分に多いN個の重心位置(本図例では、説明の便宜のため、9点の重心位置Pc1〜Pc9)をそれぞれ選択する。その後、重心位置Pc1〜Pc9の回帰直線を求め、この直線を基準軸430として定義する。この回帰直線は、最小2乗法を含む種々の公知の分析手法を用いて、決定してもよい。
図13Bに示すように、基準軸(本図では、X’軸と表記する)及びこれに直交する交差軸(本図では、Y’軸と表記する)をそれぞれ設定する。そして、X’軸方向(所定方向)に沿って配置された重心位置Pc1〜Pc9についての、Y’軸方向(直交方向)に対する位置の標準偏差を算出する。
以下、重心位置分布Cの中から重心位置Pc1(初期位置)を無作為に選択し、標準偏差を算出する試行をM回繰り返す。以下、m(m=1,2,‥‥,M)回目の試行で得られた標準偏差の値をSTD(m)と表記する。STD(m)は、次の式(d)で算出される。
ここで、Y’mkは、m回目の試行において、X’Y’座標系で表現した場合におけるk番目の重心位置PckのY’座標に相当する。Y’aveは、m回目の試行における重心位置PckのY’座標の平均値、Nは、サンプリング数である。上記式(d)から理解されるように、STD(m)は、常に0以上の値を取り、0に近づくほどノイズ特性が良好であるといえる。
そして、第3評価値EV3は、試行毎に得られたSTD(m)及びこれらの平均値STDaveを用いて、次の式(e)で算出される。
上記式(e)から理解されるように、第3評価値EV3は、常に0以上の値を取り、0に近づくほど重心位置分布Cの規則性が高いといえる。重心位置分布Cが規則的(例えば、周期的)である場合、STDの値は、初期位置Pc1の選択結果によらず略一定になる。その結果、試行毎のSTD(m)のバラツキが小さくなり、第3評価値EV3の値は小さくなる。この場合、重心位置分布Cの規則性が高いので、各セル22A、22Bの配置位置と、各画素(赤色副画素、緑色副画素及び青色副画素)との配置位置との同期(干渉)が発生し、モアレとして顕在化する傾向があり、ノイズ粒状感や色ノイズも顕在化する恐れがある。
一方、図12A例のように、適度に分散された重心位置分布Cを有する場合、標準偏差の値は、初期位置Pc1の選択結果に依存して変化する。その結果、試行毎のSTD(m)の値がバラツキ、第3評価値EV3の値は大きくなる。この場合、重心位置分布Cの規則性が低いので、各セル22A、22Bの配置位置と、各画素(赤色副画素、緑色副画素及び青色副画素)との配置位置との同期(干渉)が発生しなくなり、モアレや色ノイズが抑制される。
本発明においては、このような第3評価値EV3は、後述する実施例の記載からも明らかなように、前述したような2032dpi換算時において1.2ピクセル(15.0μm)以上である必要がある。また、第3評価値EV3は、4.37ピクセル(54.62μm)以上であることが好ましい。
本発明において、第3評価値EV3を1.2ピクセル(15.0μm)以上の範囲に限定する理由は、第3評価値EV3が1.2ピクセル(15.0μm)未満では、重心位置分布の規則性が高いので、各セル22A、22Bの配置位置と、各画素との配置位置との同期(干渉)が発生し、モアレ成分が強くなり、モアレとして顕在化するからであり、ノイズ粒状感や色ノイズも顕在化する恐れがあるからである。
なお、本発明では、第3評価値EV3の上限値は、特に制限的ではないが、実用性の点から、50ピクセル(625μm)以下であることが好ましい。
このようにして、第1評価値EV1{上記式(b)参照}、第2評価値EV2{上記式(c)参照}及び第3評価値EV3{上記式(d)及び上記式(e)参照}を用いて、第1導電シート10A、第2導電シート10Bのノイズ特性を種々定量化でき、第1導電シート10A、第2導電シート10Bを透過する画像の画質を適切に評価できる。従って、第1評価値EV1、第2評価値EV2及び第3評価値EV3は、いずれも画質評価値ということができる。
本発明は、上記した実施の形態に特に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、積層導電シート12は、図2及び図3に示すように、第1透明基体14Aの一主面に第1導電部16Aを形成し、第2透明基体14Bの一主面に第2導電部16Bを形成して積層するようにしたが、図14に示すように、第1透明基体14Aの一主面に第1導電部16Aを形成し、第1透明基体14Aの他主面に第2導電部16Bを形成するようにしてもよい。この場合、第2透明基体14Bが存在せず、第2導電部16B上に第1透明基体14Aが積層され、第1透明基体14A上に第1導電部16Aが積層された形態となる。
また、第1導電部16Aと第2導電部16Bは、OCA30を介して互いに対向するように配置されてもよい。さらに、第1導電部16Aと第2導電部16Bは、透明基体の同一主面上に形成されてもよい。この場合、第1導電部16Aと第2導電部16Bとは、スペースやダミーパターンを介して互いに絶縁された形態となる。
以下、本発明につき実施例を挙げてさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[OCA]
図15の記載に従い、各主成分、及び光重合開始剤として、イルガキュア651(チバ・ジャパン社製の2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンの商標。以下、「Irg651」と表記する)を0.04質量部秤量してガラス容器中でよく混合し、窒素ガスにて溶存酸素を置換した後、低圧水銀ランプで数分間紫外線を照射して部分的に重合させ、粘度1500cP程度の粘性液体を得た。得られた組成物に追加の重合開始剤(Irg651)0.15質量部を加え、十分に撹拌した。この混合物を真空脱泡した後、剥離処理をした50μm厚のポリエステルフイルム(剥離フイルム)の上に、乾燥後の膜厚が100μm厚となるように塗工し、重合を阻害する酸素を除去するためにさらに上記剥離フイルムを被せ、両面から低圧水銀ランプを約4分間照射し、透明粘着シートを得た。下記方法に従い、得られたシートのtanδ、貯蔵弾性率を測定した。測定結果を図15に示す。
[貯蔵弾性率及びtanδ(損失正接)(動的粘弾性特性)の測定方法]
(サンプルの作成)
上記方法で作製した透明粘着シートを積層した約3mm厚のシートを7.9mmφの抜き刃で打ち抜いて、円柱状のサンプルを得た。
(測定)
動的粘弾性特性は、Rheometric Scientific社製Advanced Rheometric Expansion System (ARES)を用いた。サンプル固定用治具は、7.9mmφのパラレルプレートを用い、上記の方法で作製したサンプルをプレートの間に配し、テンションを調整した。動的粘弾性特性の測定は空気中で行い、せん断モード、周波数1.0Hzにおいて、−50〜200℃で昇温速度5℃/分で測定し、25℃における貯蔵弾性率G’(Pa)、及び140℃におけるtanδ(損失正接)を求めた。
主成分、開始剤ないし架橋剤、マイグレーション防止剤の各具体的物質名とその配合割合、損失係数tanδ及び貯蔵弾性率を図15に纏めて示す。合成例No.5及びNo.6が、25℃でのtanδが0.13未満のものであり、合成例No.7が、140℃での貯蔵弾性率が8.9×104Paを上回るものである。
また、2EHA、IOA、BA、ICA、IBXA、AA、DAAM、V♯190、HEA、HPAは、それぞれ、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソセチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、アクリル酸、ダイアセトンアクリルアミド、エトキシエトキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートを表す。また、Irg651、V−65は、BASFジャパン社製、和光純薬社製の重合開始剤であり、HDDA(1,6−ヘキサンジオールアクリレート)、L−45(イソシアネート系)は架橋剤である。
さらに、化合物aはDL−α−トコフェロールであり、その還元電位は0.56Vである。また、化合物b、化合物cは、それぞれ、構造式が以下の式(6)、式(7)に示される物質であり、各々の還元電位は、1.09V、1.17Vである。
[評価用基材の作製1−Vモード]
図16に示すPET基板50、52上のそれぞれに、特表2012−519329号公報の段落[0104]に記載された手順に従って、マイクロコンタクト印刷パターニング法によって銀細線をパターニングすることで長尺なメッシュ状の陽極54、陰極56を形成し、導電シート58、60を作製した。メッシュパターン(セル形状)は、規則性(統一性)のないランダムとした。
そして、導電シート58の一主面(陽極54が形成されている面)に対し、図15に示す合成例No.1〜No.24のいずれかの100μm厚のOCA62を貼り合わせた後、図17に示すように、陰極56と陽極54が互いに直交した状態で対向するようにして、OCA62上に導電シート60を載置した。これにより、Vモード評価用基材64を得た。なお、陰極56、陽極54には、それぞれ、直流電源66(電圧15V)の負極68、正極70を電気的に接続した。
陽極54と陰極56との交差箇所における重なり部分A(太線で囲繞した部分)の面積は、9mm2であった。
[評価用基材の作製2−Hモード]
図18に示すPET基板72上に、特表2012−519329号公報の段落[0104]に記載された手順に従って、マイクロコンタクト印刷パターニング法によって銀細線をパターニングすることで、長尺で且つ互いに平行に並列配置されたメッシュ状の陽極54、ダミー電極74及び陰極56を形成し、導電シート76を作製した。セルはランダム形状とした。また、陽極54及び陰極56の幅方向寸法は3mm、ダミー電極74の幅方向寸法は2mm、陽極54とダミー電極74との間のクリアランス、及びダミー電極74と陰極56との間のクリアランスは50μmとした。
そして、該導電シート76の一主面(陽極54、ダミー電極74及び陰極56が形成されている面)に対し、図19に示すように、図15中の合成例No.1〜No.24のいずれかの100μm厚のOCA62を貼り合わせた後、該OCA62上にPET基板78を載置した。これにより、Hモード評価用基材80を得た。Vモード評価用基材64と同様に、陰極56、陽極54には、それぞれ、直流電源66(電圧15V)の負極68、正極70を電気的に接続した。
なお、上記の例ではマイクロコンタクト法で評価用基材を作製するようにしているが、銀塩法によって作製することも可能である。すなわち、後述する実施例37は、メッシュ電極を銀塩法によって作製したことを除いては実施例30と同様にして得られたものである。
[評価1−銀のマイグレーション]
Vモード評価用基材64については、陰極56と陽極54間の抵抗値の変化で銀のマイグレーションの度合いを評価した。具体的には、80℃、相対湿度85%、1気圧の環境下で該抵抗値が1×105Ωに低下するまでの時間を測定し、40時間を超えたものを良好(○)、30〜40時間の範囲内であったものを許容範囲(△)、30時間未満であったものを不足(×)と評価した。
一方、Hモード評価用基材80では、陽極54の抵抗変化率で銀のマイグレーションの度合いを評価した。すなわち、Hモード評価用基材80を80℃、相対湿度85%、1気圧の環境下で駆動して100時間経過した際の陽極54の抵抗変化率を測定し、初期からの抵抗変化率が5%未満であるものを良好(○)、5%以上10%未満であるものを許容範囲(△)、10%以上であるものを不足(×)と評価した。
[評価2−モアレ及び色ノイズ]
Vモード評価用基材64又はHモード評価用基材80を、11.6型、1366×768ドット、画素ピッチ194μmのカラー液晶ディスプレイ上に配置し、前記カラー液晶ディスプレイを白色表示させ、モアレ及び色ノイズに関する官能評価を行い、非常に良好(◎)、良好(○)、視認されるが許容範囲(△)、モアレ又は色ノイズの顕在化(×)の4段階で評価した。
[評価3−白化]
図20に示すように、ガラス基板82の一主面上に、図15の合成例No.1〜No.24のいずれかのOCA62を介して、厚み50μmのPET基板84を載置することで白化評価試験用基材86を得た。その後、65℃、相対湿度95%の環境下に72時間暴露し、さらに、23℃、相対湿度50%の環境下に暴露して、ヘイズが3%以下に達するまでの時間を測定した。この測定には、村上色彩技術研究所社製のHR−100を用いた。
なお、ヘイズ(%)は、上記のようにして得られた透明両面粘着シートの一方の片面上の剥離PETフイルムを剥がして、粘着性を示す一方の表面を光学PETフイルム(東レ製コスモシャイン)に張り合わせ、他方の剥離PETフイルムを剥がしてガラス(ダウコーニング製 EAGLE XG)に貼り合わせ、50℃、5気圧条件に30分曝した後、25℃、50%条件に24時間静置した後、東京電色社製ヘイズメーターMODEL TC−H3を用いて測定した。
そして、ヘイズが3%以下に達するまでの時間が6時間未満であるものを良好(○)、6〜12時間の範囲内であるものを許容範囲(△)、12時間を超えるものを不良(△)と評価した。
[評価結果]
以上の評価結果を、セルのEV1、EV2、EV3、線幅、用いたOCA62の合成例No.及び物性値、総合評価とともに、実施例1〜21及び比較例1〜3として図21に一括して示す。この図21から、ランダムパターンであり且つ面積の標準偏差が0.017mm2〜0.038mm2であるメッシュ電極と、損失係数(tanδ)が0.13以上であり、且つ貯蔵弾性率が8.9×104Pa以下であるOCA62とを採用することにより、マイグレーションが起こることを防止することができるとともに、モアレや色ノイズが抑制されたタッチパネルが得られることが分かる。
また、合成例No.20、No.8又はNo.7のOCA62を用いる一方でセルのEV2〜EV3(セル面積の標準偏差)、又は線幅等を種々変更し、上記の評価を行った。各々を実施例22〜36、比較例4〜9として図22に一括して示す。この図22から、セル面積の標準偏差を0.017mm2〜0.038mm2の範囲内とすることにより、マイグレーション、モアレ、色ノイズ、白化の全てが良好又は許容範囲であるタッチパネルが得られることが理解される。
さらに、実施例37より、メッシュ電極を銀塩法で形成した場合でも、マイクロコンタクト印刷パターニング法で形成したものと同様の効果が得られることが明らかである。