JP2016132837A - インクジェットオパール加工用前処理液及びオパール加工布帛の製造方法 - Google Patents

インクジェットオパール加工用前処理液及びオパール加工布帛の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】セルロース系繊維とポリエステル系繊維とを含む生地からセルロース系繊維を除去するインクジェットオパール加工を、高品位に行うことを可能とするインクジェットオパール加工用の前処理液を提供する。【解決手段】本発明に係る前処理液は、セルロース系繊維とポリエステル系繊維とを含む布帛のセルロース系繊維を抜蝕するインクジェットオパール加工用の前処理液であって、ガラス転移温度が150℃以上であり、耐酸性を有する水溶性高分子化合物と、水と、を含有し、水溶性高分子化合物は、(i)ガラス転移温度が150℃以上(ii)ガラス転移温度が分解温度よりも高い場合は、前記分解温度が150℃以上(iii)ガラス転移温度を有さない場合は、軟化点が150℃以上のうち、いずれか一つの条件を満たす。【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェットオパール加工用前処理液及びオパール加工布帛の製造方法に関する。
従来から、繊維を加工する技術として、生地(布帛)を構成する繊維の一部を破壊溶脱して部分的に透かし模様を作ったり、穴をあけたりする抜蝕加工が知られている。このような抜蝕加工は、インクジェット方式を利用して行うことが可能であり、記録ヘッドのノズルから抜蝕剤を含有する抜蝕インクを吐出して、布帛に付着させることで実施できる。また、互いに異なる複数種の繊維を用いて織られた生地(布帛)において、少なくとも一種の繊維を溶脱して部分的に透かし模様を作る加工はオパール加工と呼ばれ、同様にインクジェット方式を利用して行うことが可能である。
一方、従来のテキスタイルプリントは、版を用いてプリントする方法やスクリーン捺染方法を用いて行われていたが、近年、版が不要で、かつ、少量多品種に対応可能であることから、インクジェット方式を利用した捺染の技術が注目され実用化されている。例えば特許文献1、2には、染料インクをインクジェット方式にて吐出して布帛を捺染する方法が開示されている。
特開平5−311583号公報 特許第4710337号公報
上述の特許文献1、2に開示されたインクジェット捺染では、布帛に対して比較的粘度の低い染料インクを付与している。そのため画像の縁等に染料インクの滲みが生じて模様の縁がぼけやすく、これを抑制するために布帛を糊剤や高吸水性樹脂により前処理している。
一方、抜蝕加工やオパール加工をインクジェット方式で行う場合にも、画像の縁等に抜蝕インクの滲みが生じることが同様に懸念される。このような滲みが生じると、抜蝕と非抜蝕の境界部分が曖昧な外観となり、予定した加工結果が得られないことがある。
そこで、抜蝕加工やオパール加工をインクジェット方式で行う場合にも糊剤や樹脂等によって布帛を前処理することが考えられるが、単純に樹脂等によって布帛を前処理して抜蝕インクの滲みを抑制しようとしても、効果が小さい又は全く得られない場合があった。
このような現象は、通常、抜蝕インクが酸やアルカリであるため、糊剤や樹脂等の分解や溶融等が生じることが一因と考えられる。また、酸やアルカリに強い種の樹脂を前処理に用いたとしても、加工後(洗浄後)の生地に樹脂が残存すると、生地の風合いが損なわれる(例えば、ゴワゴワした感触となる。)。そのため、前処理に樹脂等を用いて、抜蝕を行う場合には、樹脂種、布帛種、抜蝕インク種、洗浄のしやすさ等の多角的な観点から全体の構成を調整する必要がある。
本発明の幾つかの態様に係る目的の一つは、セルロース系繊維とポリエステル系繊維と
を含む生地からセルロース系繊維を除去するインクジェットオパール加工を、高品位に行うことを可能とするインクジェットオパール加工用の前処理液を提供することにある。また、本発明の幾つかの態様に係る目的の一つは、セルロース系繊維とポリエステル系繊維とを含む生地からセルロース系繊維を除去して高品位な生地を製造するインクジェットオパール加工布帛の製造方法を提供することにある。
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
[適用例1]本発明に係る前処理液の一態様は、
セルロース系繊維とポリエステル系繊維とを含む布帛のセルロース系繊維を抜蝕するインクジェットオパール加工用の前処理液であって、
耐酸性を有する水溶性高分子化合物と、水と、を含有し、
前記水溶性高分子化合物は、
(i)ガラス転移温度が150℃以上
(ii)ガラス転移温度が分解温度よりも高い場合は、前記分解温度が150℃以上
(iii)ガラス転移温度を有さない場合は、軟化点が150℃以上
のうち、いずれか一つの条件を満たす。
このような前処理液によれば、セルロース系繊維とポリエステル系繊維とを含む生地からセルロース系繊維を除去するインクジェットオパール加工を、高品位に行うことができる。より具体的には、このような前処理液によれば、生地からのセルロース系繊維の除去、抜蝕部及び非抜蝕部の境界の鋭敏性、及び加工後の生地の風合いが良好なインクジェットオパール加工を行うことができる。また、抜蝕に加えて染色を行う場合には、染色の滲みをも抑制することができ、染色部分の輪郭をシャープ(鋭敏)にすることができる。
[適用例2]適用例1において、
前記水溶性高分子化合物が、ノニオン性高分子化合物、又はアニオン性高分子化合物であってもよい。
このような前処理液によれば、抜蝕部及び非抜蝕部の境界の鋭敏性(及び、抜蝕に加えて染色を行う場合には染色部分の輪郭の鋭敏性)がより高い加工を行うことができる。
[適用例3]適用例1又は適用例2において、
前記水溶性高分子化合物が、ポリビニルピロリドンであってもよい。
このような前処理液によれば、抜蝕部及び非抜蝕部の境界の鋭敏性(及び、抜蝕に加えて染色を行う場合には染色部分の輪郭の鋭敏性)がより高い加工を行うことができる。
[適用例4]適用例1ないし適用例3のいずれか1例において、
さらに保湿剤を含有してもよい。
このような前処理液は乾燥が抑制され、長期間保存することができる。
[適用例5]適用例1ないし適用例4のいずれか1例において、
さらに防腐剤を含有してもよい。
このような前処理液は微生物等の繁殖が抑制され、長期間保存することができる。
[適用例6]本発明に係るオパール加工布帛の製造方法の一態様は、
セルロース系繊維とポリエステル系繊維とを含む布帛に、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の前処理液を付与する工程と、
前記布帛に抜蝕インクをインクジェット法により付与する工程と、
前記布帛を加熱する工程と、
前記布帛を洗浄する工程と、
を含む。
このような製造方法によれば、セルロース系繊維とポリエステル系繊維とを含む生地からのセルロース系繊維の除去、抜蝕部及び非抜蝕部の境界の鋭敏性(及び、抜蝕に加えて染色を行う場合には染色部分の輪郭の鋭敏性)及び加工後の生地の風合いが良好なオパール加工布帛を製造することができる。
[適用例7]適用例6において、
さらに前記セルロース系繊維及びポリエステル系繊維の少なくとも一方を染色する工程を含んでもよい。
このような製造方法によれば、染色されたオパール加工布帛を製造することができる。
実施例及び比較例に係るオパール加工布帛の顕微鏡観察結果の例。
以下に本発明の好適な実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。なお以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
1.オパール加工布帛の製造方法
本実施形態のオパール加工布帛は、インクジェット法により製造される。係る製造方法は、布帛に前処理液を付与する工程と、布帛に抜蝕インクを付与する工程と、布帛を加熱する工程と、布帛を洗浄する工程と、を含む。
1.1.布帛
本実施形態に係るオパール加工布帛の製造方法は、布帛に適用される。本実施形態に係る布帛は、セルロース系繊維とポリエステル系繊維とを含む。
セルロース系繊維としては、天然セルロース繊維(例えば、綿、麻等の植物性繊維)、セルロース骨格を有する合成繊維(例えば、レーヨン、リヨセル、キュプラ、アセテート等)及びこれらの変成繊維が挙げられる。また、セルロース系繊維は、複数種が交撚、混紡されていてもよい。
ポリエステル系繊維としては、エステル結合を有する高分子によって形成された繊維であれば限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリトリメチレンテレフタレート、それらの変成体等を例示することができる。また、ポリエステル系繊維は、複数種が交撚、混紡されていてもよいし複合繊維となっていてもよい。
布帛は、織物、編物、不織布等である。「布帛がセルロース系繊維及びポリエステル系繊維を含む」態様としては、(1)布帛を構成する繊維が、セルロース系繊維及びポリエ
ステル系繊維が交撚又は混紡されたものである態様、(2)交織、交編等により複数種の繊維によって布帛が構成され、うち少なくとも1種の繊維がセルロース系繊維であり、少なくとも1種の繊維がポリエステル系繊維である態様、(3)交織、交編等により複数種の繊維によって布帛が構成され、うち少なくとも1種の繊維が(1)の繊維である態様、並びに(4)前記(1)〜(3)の任意の組み合わせである態様等が挙げられる。
また、布帛の厚みや繊維密度等は、特に限定されない。さらに、布帛には、後述する抜蝕インクと接触した場合に反応しない(抜蝕インクを中和しない)繊維が含まれてもよい。そのような繊維としては、酸性の抜蝕剤により溶脱しにくい繊維が挙げられ、例えば、ポリアミド系繊維(ε−カプロラクタム重合体、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の縮合体、絹、羊毛、ナイロン等)や、ポリオレフィン系繊維が挙げられる。
1.2.インクジェットオパール加工
本実施形態のオパール加工布帛は、インクジェット法によりオパール加工されて製造される。ここで、オパール加工とは、上述の布帛において、模様に対応する部分のセルロース系繊維を溶脱破壊して除去し、生地に透かし模様を形成する加工のことを指す。
本実施形態のオパール加工布帛(オパール加工された布帛)は、セルロース系繊維が溶脱された部分に少なくともポリエステル系繊維が残存して布帛の一部を構成するとともに、セルロース系繊維が残存(溶脱されていない)している部分が布帛の一部を構成する。そしてセルロース系繊維が溶脱された部分のほうがセルロース系繊維が残存する部分よりも繊維の量が少ない(或いは厚みが小さい)ため、当該セルロース系繊維が溶脱された部分が、セルロース系繊維が残存する部分に比較して、光を透過しやすく、これにより所定の透かし模様が形成されている。
なお、本実施形態では、抜蝕加工にも適用可能な抜蝕インクを用いるが、係る抜蝕インクは、ポリエステル系繊維を溶脱しない。そのため、本実施形態では、布帛にポリエステル系繊維が含まれることから布帛には孔は形成されない。したがって本明細書では抜蝕インクと称するが、係る布帛に適用されるため、オパール加工布帛が製造される。
セルロース系繊維の溶脱は、布帛に対して、後述する抜蝕インクを、インクジェット方式にて付与することにより行われる。すなわち、本実施形態ではいわゆるインクジェット型の記録装置を用いて、抜蝕インクの液滴を布帛に対して吐出して付着させて行われる。
本実施形態で使用可能なインクジェット記録装置は、所定の模様に対応してノズルからの抜蝕インクの吐出タイミング及びノズルと布帛との相対位置を制御して、布帛の所定の位置に抜蝕インクを付着させることができるものであれば、特に限定されない。また、ノズルからの抜蝕インクの吐出方式も限定されず、例えば、静電吸引方式、ピエゾ方式、サーマルジェット方式等を適用できる。また、本実施形態のオパール加工布帛の製造方法においては、ノズルと布帛の相対位置を変化させる方式として、いわゆるシリアル型であってもライン型であってもよい。
なお典型的なインクジェット記録装置としては、インクジェット式記録ヘッド、本体、トレイ、ヘッド駆動機構、及びキャリッジを備えたものを例示できる。インクジェット式記録ヘッドは、複数のノズルを有しており、ノズルは所定のインク(染料インク等)のインクカートリッジに連通して、係るインクを吐出する。そして、例えば少なくとも1つのインクカートリッジに、抜蝕インクを充填して使用してもよいし、抜蝕インク専用のカートリッジ及びこれに連通するノズルを形成して使用してもよい。また、インクジェット記録装置は、抜蝕インクの他に各種のインクを吐出できるように構成してもよい。このようなインクジェット記録装置を用いれば、抜蝕インクを容易に布帛に吐出して付着(付与)
することができ、布帛に対して所定の模様を形成することができる。
1.3.抜蝕インク
本実施形態のオパール加工布帛の製造方法で使用する抜蝕インクは、セルロース系繊維を溶脱することができる。抜蝕インクは、記録ヘッドの有する複数のノズル列のうち、1つのノズル列に供給され吐出されてもよいし、2以上のノズル列に供給されて吐出されてもよい。
抜蝕インクは、抜蝕剤を含有する。抜蝕剤は、布帛を構成する繊維のうち、セルロース系繊維を破壊溶脱(抜蝕)するという機能を備える。抜蝕剤には、水中で酸の性質を示すものを適宜選択して用いることができる。
水中で酸性を示す抜蝕剤(以下、単に「抜蝕剤」ともいう。)としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、ならびにこれらの塩が挙げられ、セルロース系繊維の抜蝕に特に優れるという点から、硫酸および硫酸塩(例えば、硫酸水素ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸アンモニウム、硫酸鉄、硫酸銅、硫酸亜鉛、硫酸錫など)を用いることが好ましく、硫酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸アルミニウムおよび硫酸アンモニウムを用いることがより好ましい。これらの酸性の抜蝕剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
抜蝕インクにおける抜蝕剤の含有量は、抜蝕インクの全質量(100質量%)に対して、10質量%以上であることが好ましく、10質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上30質量%以下であることがさらに好ましい。抜蝕剤の含有量が10質量%以上であることで、セルロース系繊維を溶脱する能力が一層向上する。また、抜蝕剤の含有量が40質量%以下であることで、抜蝕インクの粘度をインクジェット方式に適した範囲にすることが容易になり、記録ヘッドの吐出安定性を良好にすることができる。さらに、併用する溶剤や界面活性剤との共存が容易となる。
抜蝕インクは、水を含有する。水は、抜蝕インクの液媒体である。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水又は超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。水の含有量は、抜蝕インクの全質量に対して、例えば40質量%以上とすることができる。
抜蝕インクは、保湿性を向上できたり、布帛に対する浸透性を向上できるという観点から、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤としては、例えば、1,2−アルカンジオール類、多価アルコール類、グリコールエーテル類、ピロリドン誘導体等が挙げられる。
抜蝕インクは、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、抜蝕インクの表面張力を低下させ布帛との濡れ性を調整するために用い得る。界面活性剤の中でも、アセチレングリコール系界面活性剤、アニオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、およびフッ素系界面活性剤を好ましく用いることができる。
界面活性剤を含有する場合の含有量は、抜蝕インクの全質量に対して、0.05質量%以上1.5質量%以下とすることができる。
抜蝕インクは、必要に応じて、尿素類、糖類、pH調整剤、キレート化剤、防腐剤、防かび剤、防錆剤等の各種の添加剤を含有してもよい。
抜蝕インクは、前述した成分を任意な順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより得られる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法
が好適に用いられる。濾過方法としては、遠心濾過、フィルター濾過等を必要に応じて行なうことができる。
抜蝕インクは、インクジェット用のインクとしての信頼性とのバランスの観点から、20℃における表面張力が20mN/m以上40mN/mであることが好ましく、23mN/m以上38mN/m以下であることがより好ましい。なお、表面張力の測定は、例えば、自動表面張力計CBVP−Z(商品名、協和界面科学株式会社製)を用いて、20℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
また、同様の観点から、抜蝕インクの20℃における粘度は、1.5mPa・s以上10mPa・s以下であることが好ましく、2mPa・s以上8mPa・s以下であることがより好ましい。なお、粘度の測定は、例えば、粘弾性試験機MCR−300(商品名、Pysica社製)を用いて、20℃の環境下での粘度を測定することができる。
1.4.前処理液
本実施形態のオパール加工布帛の製造方法は、布帛に前処理液を付与する工程を有し、係る工程において、以下に説明する前処理液を上述の布帛に対して付与する。前処理液は、上述のセルロース系繊維とポリエステル系繊維とを含む布帛のセルロース系繊維を抜蝕するインクジェットオパール加工用の前処理液である。
前処理液は、上述の抜蝕インクが布帛に付与される前(オパール加工の前)に布帛に対して付与される。前処理液は、布帛に対して塗布して付与してもよいし、前処理液に布帛を浸漬して付与してもよい。前処理液が付与された後、抜蝕インクが付与される前に、布帛は、乾燥及び/又は加熱されてもよい。
前処理液が布帛に付与されていると、抜蝕インクがインクジェット法により付与された際に、当該付与された部分の縁における滲みが抑制される。また、抜蝕に加えて染色を行う場合には、染色の滲みも抑制される。これにより、形成されるオパール加工の模様(画像)のエッジや、染色部分の輪郭をシャープ(鋭敏)にすることができ、高品位なオパール加工を行うことができる。
以下、前処理液の成分について説明する。前処理液は、高分子化合物と、水と、を含有する。水は、上述の抜蝕インクに含まれる水と同様であるため、説明を省略する。
1.4.1.高分子化合物
前処理液に含有される高分子化合物は、水溶性を有する。ここで水溶性とは水に溶解する性質のことを指し、水に飽和濃度以下の濃度で溶解させた場合に均質な水溶液を形成する性質のことを指す。したがって、水溶性高分子化合物は、水に飽和濃度以下の濃度で溶解させた場合に、固体やゲル等の成分を生じない。ただし、水溶性高分子化合物は、水に溶解させた場合に、ミセル等の分子会合体を形成して、より巨視的な視点で均質な分散体を形成するものでもよい。
また、前処理液に含有される高分子化合物は、上述の抜蝕インクによって化学変化を生じにくい種を用いる。換言すると前処理液に含有される高分子化合物は、酸性の抜蝕インクを中和しにくい種の、耐酸性を有する高分子化合物である。より具体的には、耐酸性は、水溶性高分子化合物を純水に溶解させて水溶性高分子化合物の水溶液を調製し、硫酸アルミニウムを該水溶液に加えて、硫酸アルミニウムの添加前後の水溶液の粘度の変化を測定することにより評価することができる。
耐酸性を有する水溶性の高分子化合物の種類としては、ノニオン性高分子化合物、アニオン性高分子化合物、これらの共重合体、及びこれらの混合物がより好適に用いられる。水溶性高分子化合物が、カチオン性を有すると、抜蝕インクと接触した場合に抜蝕インクとの中和反応を生じることがあり、これにより抜蝕インクの機能を低下(酸性度を低下)させたり、前処理液による滲み抑制効果が損なわれたりする場合があるからである。しかし、カチオン性の高分子化合物であっても、抜蝕インクが失活しない程度のものであれば使用しても差し支えない。
水溶性のノニオン性高分子化合物としては、例えばポリビニルピロリドン、ポリビニルカプロラクタム、ビニルピロリドン(VP)/メタクリルアミド/ビニルイミダゾール共重合体等であり、これらの市販品としては、ルビスコールK30(Tg=175℃,BASF社製)、PVPK−60(Tg=170℃,アイエスピー・ジャパン社製)、ルビスコールK90(Tg=180℃,BASF社製)、PVPK−90(Tg=174℃,アイエスピー・ジャパン社製)、PVPK−120(Tg=176℃,アイエスピー・ジャパン社製)、ルビスコールPlus(Tg=165℃,BASF社製)、ルビセットClear(Tg=218℃,BASF社製)等が挙げられる。
水溶性のアニオン性高分子化合物としては、例えばビニルピロリドン/アクリレート/ラウリルメタアクリレートコポリマー(共重合体)等であり、これらの市販品としては、STYLIZE2000(Tg=165℃,アイエスピー・ジャパン社製)等が挙げられる。
水溶性のカチオン性高分子化合物としては、例えば塩化メチルビニルイミダゾリウム・ビニルピロリドン共重合体、(ビニルピロリドン/メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド)コポリマー、(ビニルピロリドン/アクリル酸DMAPA)コポリマー、ポリクオタニウム−11、ポリクオタニウム−28等であり、これらの市販品としては、ルビカットFC370(Tg=189℃,BASF社製)、ルビカットFC550(Tg=207℃,BASF社製)、ルビカットExcellence(BASF社製)、ルビカットSTYLE(Tg=205℃,BASF社製)、GAFQUATHS−100(Tg=182℃,アイエスピー・ジャパン社製)、STYLEZECC−10(Tg=167℃,アイエスピー・ジャパン社製)等が挙げられる。
さらに、水溶性のノニオン性高分子化合物又はアニオン性高分子化合物としては、グアーガム、ローカストビーンガム等の天然ガム類、澱粉類、かんてん、ふのり等の海草類、ペクチン酸等の植物皮類、メチル繊維素、エチル繊維素、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素誘導体、焙焼澱粉、アルファ澱粉、カルボキシメチル澱粉、カルボキシエチル澱粉、ヒドロキシエチル澱粉等の加工澱粉、シラツガム系、ローストビーンガム系等の加工天然ガム、等の天然高分子又は天然高分子の変性体、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸、等の合成高分子、及び上記高分子化合物の骨格を複数種有する共重合体(コポリマー)を用いてもよい。
さらに、これらの水溶性高分子化合物は、前処理液に1種又は複数種含有されることができる。これらの中でも、ポリビニルピロリドンは、ノニオン性高分子化合物であって耐酸性を有し、水溶性が高く前処理液への含有量を高めることができるため特に好ましい。
高分子化合物が水溶性を有するため、抜蝕インクによる処理の後、オパール加工布帛(生地)を洗浄すれば、高分子化合物が布帛に残存しにくく、いわゆるゴワゴワ感を低減でき、これによりオパール加工布帛の風合いを良好にすることができる。
また、前処理液に含まれる水溶性高分子化合物の少なくとも1種としては、以下の(i)、(ii)及び(iii)のうち、いずれか一つの条件を満たすものを用いる。
(i)ガラス転移温度が150℃以上
(ii)ガラス転移温度が分解温度よりも高い場合は、前記分解温度が150℃以上
(iii)ガラス転移温度を有さない場合は、軟化点が150℃以上
ガラス転移温度が150℃以上の水溶性高分子化合物としては、ポリビニルピロリドン(Tg=170℃〜180℃)、ビニルピロリドン/メタアクリルアミド/ビニルイミダゾール共重合体(Tg〜218℃)等が挙げられる。ここでガラス転移温度とは、非晶質高分子において主鎖の運動性に起因するゴム状態及びガラス状態の相転移が生じる温度であり、単にTgと記されることもある。高分子の種類によっては、Tgが分解温度よりも高い場合があり、そのような高分子の場合には、分解温度が150℃以上であるものを用いる。
なお、前処理液に含まれる水溶性高分子化合物の少なくとも1種が明確なガラス転移温度を有しない場合には、軟化点を指標とすることができ、前処理液に含まれる水溶性高分子化合物の少なくとも1種は、軟化点が150℃以上のものを用いる。
前処理液に含まれる水溶性高分子化合物の少なくとも1種のガラス転移温度(もしくは分解温度、もしくは軟化点)は、160℃以上であることがより好ましく、170℃以上であることがさらに好ましい。
ガラス転移温度、熱分解温度は、例えばJIS(日本工業規格)K7121に従って測定することができ、軟化点は、例えばJIS(日本工業規格)K7206に従って測定することができる。
前処理液に含まれる水溶性高分子化合物の少なくとも1種が、上記(i)、(ii)及び(iii)のうち、いずれか一つの条件を満たすことで、抜蝕インクによる溶脱工程における蒸熱処理の温度において、当該水溶性高分子化合物の流動、変形を抑制することができ、形成されるオパール加工の模様(画像)のエッジをシャープ(鋭敏)にすることができる。
前処理液における水溶性高分子化合物の含有量は、前処理液の全量に対して、固形分換算で0.5質量%以上50質量%が好ましく、より好ましくは1質量%以上35質量%である。水溶性高分子化合物の含有量がこの範囲にあれば、抜蝕インクの滲みを充分に抑制することができ、また、前処理液を布帛に浸透させるために好適な粘度となる。
前処理液によって、布帛に上述の水溶性高分子が付与されることにより、抜蝕インクの滲みを抑制することができるが、この現象は、抜蝕インクが付与される際の布帛の繊維間に水溶性高分子化合物が配置されることで、繊維の隙間における毛細管作用が抑制できることが一因となっていると考えられる。
このような前処理液によれば、セルロース系繊維とポリエステル系繊維とを含む生地からセルロース系繊維を除去するインクジェットオパール加工を、高品位に行うことができる。より具体的には、このような前処理液によれば、生地からのセルロース系繊維の除去、抜蝕部及び非抜蝕部の境界の鋭敏性、及び加工後の生地の風合いが良好なインクジェットオパール加工を行うことができる。
1.4.2.その他の成分
前処理液は、必要に応じて保湿剤、防腐剤、界面活性剤等の添加剤を添加することがで
きる。
保湿剤としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等の多価アルコール;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の複素環化合物;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド等が挙げられる。これらの保湿剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
前処理液中における保湿剤の含有量は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%である。前処理液に保湿剤が含有されると、乾燥が抑制され、前処理液をより長期間保存することができる。
防腐剤の好ましい具体例としては、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンゾイソチアゾリン−3−オン(ゼネカ社のプロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL2、プロキセルTN、プロキセルLV)、4−クロロ−3−メチルフェノール(バイエル社のプリベントールCMK等)などが挙げられる。
前処理液中における防腐剤の含有量は、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.3〜3質量%である。前処理液に防腐剤が含有されると、微生物等の繁殖が抑制され、前処理液をより長期間保存することができる。
浸透剤としては、例えばエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類が挙げられる。これらの浸透剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
前処理液中における浸透剤の含有量は、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%である。
界面活性剤としては、例えばシリコン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、アニオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は、「1.3.抜蝕インク」の項で説明したと同様であり説明を省略する。
前処理液中における界面活性剤の含有量は、好ましくは0.1〜1.5質量%、より好ましくは0.1〜1.0質量%である。
前処理液は、抜蝕インクの機能を損なわない限り、さらに、アルカリ剤、水分誘導剤、還元防止剤等を含んでもよい。
1.5.工程
本実施形態に係るオパール加工布帛の製造方法は、上述の布帛に上述の前処理液を付与する工程(前処理工程)と、前処理液が付与された布帛に上述の抜蝕インクをインクジェット法により付与する工程と、該布帛を加熱する工程と、該布帛を洗浄する工程と、を含む。
1.5.1.前処理工程
本実施形態に係るオパール加工布帛の製造方法は、抜蝕インクを付与する工程に先立って布帛に前処理液を付与する前処理工程を有する。前処理工程では、滲み(にじみ)の低減を目的の一つとして、上述の水溶性高分子を含む前処理液を付与する。
前処理液の付与は、例えば、パッド法、コーティング法、スプレー法、インクジェット法等のいずれの方法も使用できる。
本実施形態に係るオパール加工布帛の製造方法は、布帛に付与した前処理液を乾燥させる前処理液乾燥工程を有していてもよい。前処理液乾燥工程は、例えば、布帛に熱を加える手段、風を吹きつける手段、さらにそれらを組み合わせる手段等を用いて行うことができる。具体的には、強制空気加熱、輻射加熱、電導加熱、高周波乾燥、マイクロ波乾燥等が好ましく用いられる。
1.5.2.抜蝕インクを付与する工程
本実施形態に係るオパール加工布帛の製造方法は、上述した抜蝕インクを用いて布帛に含まれるセルロース系繊維を抜蝕(溶脱)する工程を有する。抜蝕インクを付与する工程は、係る工程のうちの一工程である。具体的には、抜蝕インクを付与する工程は、上述した抜蝕インクをインクジェット記録装置の記録ヘッドのノズル列から吐出させて、布帛の所定の位置に抜蝕インクの液滴を付着させる工程である。
本実施形態に係るオパール加工布帛の製造方法における抜蝕インクの付与は、インクジェット記録方式を用いて、布帛の所望の位置に抜蝕インクを付着させて行う。これにより、繊維を除去(溶脱)する位置のずれが低減され、精度の高いオパール加工を行うことができる。
なお、抜蝕インクを付与する工程は、スクリーン印刷法等のインクジェット法以外の方法で付与することもできる。しかし、インクジェット法では他の方法に比較して使用する抜蝕インクの粘度が低いため、模様の縁の滲みがより生じやすいので、本実施形態の前処理液による滲み抑制効果がより顕著に現れる。
ノズル列から吐出される抜蝕インクの液滴1滴あたりの量は、1ng以上40ng以下であることが好ましく、5ng以上30ng以下であることがより好ましい。液滴1滴あたりの量が上記範囲内であることで、布帛に付着した際の液滴の面積が適切な範囲になるので、抜蝕したい領域をきれいに抜蝕することができる。
1.5.3.布帛を加熱する工程
本実施形態に係るオパール加工布帛の製造方法は、布帛を加熱する工程(加熱工程)を含む。加熱工程は、布帛に付着させた抜蝕インクに対して加熱処理を行う工程である。これにより、抜蝕インクを付着した箇所に存在するセルロース系繊維の溶脱が進行して、繊維の灰化が生じる。抜蝕インクを付与した後、加熱工程を行う前に、簡易的に乾燥する工程を設けてもよい。加熱工程は、例えば、布帛に熱を加える手段、風を吹きつける手段、さらにそれらを組み合わせる手段等を用いて行うことができる。具体的には、強制空気加熱、輻射加熱、電導加熱、高周波乾燥、マイクロ波乾燥等が好ましく用いられる。
加熱工程の温度や時間は、溶脱の進行および布帛のダメージの低減を両立可能な範囲に設定される。加熱工程の温度や時間は、布帛に含まれる繊維の種類、抜蝕剤の種類、抜蝕剤の添加量等によって適宜に調節され得る。
布帛を加熱する工程(加熱工程)は、布帛を水蒸気に曝す処理を含んで、湿熱処理工程としてもよい。例えば、布帛を反応染料や分散染料等で染色する場合に、加熱工程を湿熱処理工程としてもよい。湿熱処理工程は、従来公知の方法を用いることができ、例えば、HT法(高温スチーミング法)、HP法(高圧スチーミング法)等にて行うことができる。湿熱処理工程の温度や時間は、溶脱の進行および布帛のダメージの低減を両立可能な範囲に設定される。また湿熱処理工程の温度や時間は、布帛に含まれる繊維の種類、染料の種類、添加量等によって適宜に調節され得る。
1.5.4.布帛を洗浄する工程
本実施形態に係るオパール加工布帛の製造方法は、加熱工程の後に、布帛を洗浄する洗浄工程を有する。洗浄工程では灰化した繊維を除去することができる。また、染色を行う場合には、洗浄工程で未染着の染料の洗浄を兼ねてもよい。洗浄工程は、水を用いて行ってもよいし(以下、「水洗処理」ともいう。)、水および界面活性剤(熱石鹸等)を含有する水溶液を用いて行ってよいし(以下、「ソーピング処理」ともいう。)、両処理を併用してもよい。
また、洗浄工程は、溶脱した繊維を一層効果的に除去することを目的として、ウォータージェット処理を含んでもよい。ウォータージェット処理は、水圧で強制的に溶脱した繊維を除去するものであって、公知の方法で実施できる。
本実施形態に係るオパール加工布帛の製造方法では、洗浄工程の後に、布帛を乾燥させる布帛乾燥工程を有していてもよい。布帛乾燥工程は、上述した前処理液乾燥工程で例示した手段を用いて行うことができるので、その説明を省略する。
本実施形態に係るオパール加工布帛の製造方法は、括りインク付与工程を有していてもよい。括りインク付与工程とは、括りバインダーを含有する括りインクを付与する工程であり、抜蝕工程の後に行われる。これにより、抜蝕した箇所の繊維のほつれを抑制することができる。括りバインダーとしては、従来公知の成分を用いることができる。括りインクの付与は、パッド法、コーティング法、スプレー法、インクジェット法等のいずれの方法も使用できる。
1.5.5.その他の工程
本実施形態に係るオパール加工布帛の製造方法は、カラーインクを用いて布帛を染色する染色工程を有していてもよい。染色工程では、カラーインクの液滴を記録ヘッドのノズル列(ノズル開口部)から吐出させて布帛に付着させることで、布帛の所定の位置に存在する繊維の少なくとも一種を染色する。また、染色工程では、セルロース系繊維及びポリエステル系繊維の少なくとも一方を染色してもよい。これにより、布帛の所定の位置に画像(模様、絵柄)を形成することができる。本実施形態に係るオパール加工布帛の製造方法では、上記(i)、(ii)、及び(iii)のうちいずれか1つの条件を満たす水溶性高分子化合物を用いているため、染色の滲みをも抑制することができ、染色部分の輪郭をもシャープ(鋭敏)にすることができる。
染色工程は、上述した抜蝕工程の前、上述した抜蝕工程と同時、あるいは抜蝕工程の後、のいずれのタイミングでも実施することができる。カラーインクの液滴は、抜蝕された領域(抜蝕工程前に行う場合には抜蝕が予定されている領域)、あるいは抜蝕されない領域(非抜蝕領域)のいずれの位置に付着させてもよい。
本実施形態に係るオパール加工布帛の製造方法は、染色工程を含むことにより、染色されたオパール加工布帛を製造することができる。染色工程におけるインクジェット記録方式は、上述した抜蝕インクを付与する工程で説明した方式と同様であるので、その説明を省略する。
本実施形態に係るオパール加工布帛の製造方法が染色工程を含む場合、染色工程にて使用するカラーインクとしては、例えば、分散染料インク、反応染料インク、顔料インクを例示できる。染色工程で反応染料インクや分散染料インクを用いる場合には、加熱工程でスチームを使用して湿熱処理を行うようにすれば、染色と溶脱とを兼ねて行うことができる。
2.実施例
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例、比較例中の「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準である。
2.1.前処理液の調製
表1に示す配合の前処理液A〜Fを調整した。具体的には、ビーカーに、表1に記載した高分子化合物、2−ピロリドン(保湿剤)、プロキセルXL2(防腐剤)を投入し、マグネチックスターラーで撹拌しながら、イオン交換水を徐々に入れて表1の組成となるようにした。前処理液A〜Eについては、各成分が完全に溶解していることを確認した後、水溶液を濾過して、前処理液A〜Eとした。前処理液Fについては、十分に撹拌した後、水溶液を濾過せずに、前処理液Fとした。
表1には、高分子化合物の商品名、入手先、ガラス転移温度(Tg)、酸耐性及び水溶性の有無を併記した。
2.2.抜蝕インクの調製
表2に示す材料および組成となるように、各材料を十分に混合撹拌した後、孔径5.0μmのメンブレンフィルターでろ過することにより、表2に示す抜蝕インクを調製した。
なお、表1、表2中、化合物名で記載した成分は、試薬として入手し、表1、表2中の商品名は、それぞれ下記の通りである。
・オルフィンE1010(日信化学工業株式会社製、アセチレングリコール系界面活性剤)
・プロキセルXL2(ゼネカ社製、1,2−ジベンゾイソチアゾリン−3−オン)
酸耐性(耐酸性)の評価は、次のように行った。100gの各前処理液を取り分け、マグネチックスターラーで撹拌しつつ、粘度を超音波粘度測定装置にて測定した。次いで10gの重硫酸を添加して、1時間経過した際の粘度を測定した。1時間経過した際の粘度が、重硫酸を添加する直前の粘度の70%未満となったものを、酸耐性無し、70%以上を維持したものを、酸耐性有り、として結果を表1に記載した。
なお、高分子化合物の水溶性は、調製時の目視にて判断し、前処理液A〜Eは透明であったため、水溶性有りとし、前処理液Fは白濁していたため、水溶性無しとした。
次に、表3に、上記で得られた各前処理液と抜蝕インクを用いて、実施例1〜3および比較例1〜3を構成した。また、上記で得られた各前処理液を用いずに抜蝕インクを用いた例を比較例4とした。
2.3.評価試料
評価試験は、以下のように行った。まず、表1に示す各例の前処理液を、それぞれ布帛に、ピックアップ率が180%〜220%になるようにバーコーターにて塗布し、一晩乾
燥させた。布帛は、商品名「オパールサテンNo.9017」(蝶理株式会社製、素材:ポリエステル45%、レーヨン55%)を用いた。
次に、表2に示す抜蝕インクをインクジェットプリンターPX−G930(商品名、セイコーエプソン株式会社製)の専用カートリッジのインク室に充填して、前処理液が付与された各例の生地に対してテストパターンを印刷した。テストパターンは、画像解像度を縦1440dpi×横720dpi、Duty200%の条件で行った。なお、抜蝕対象繊維は、抜蝕インクが酸性の抜蝕剤を含有するため、セルロース系繊維であるレーヨンである。
印刷が終了したら30分程度室温にて乾燥し、170℃で10分間、家庭用アイロンを用いて布帛を湿熱処理した(湿熱工程)。その後、界面活性剤(商品名「ラッコールSTA」、明成化学工業株式会社製)を0.2質量%含む水溶液を用いて90℃で10分間洗浄して(洗浄工程)、60℃で30分間乾燥させて、評価サンプルを得た。
2.4.試料の評価
セルロース系繊維(レーヨン)の除去性は、各試料の表面及び裏面を光学顕微鏡にて観察して目視にて評価した。抜蝕部(抜蝕インクを付与した部分)に、ポリエステル系繊維のみが残っている場合を○とし、レーヨン繊維が観察された場合を×として、表3に記載した。
境界部のキレ(抜蝕部及び非抜蝕部の境界の鋭敏性)は、各試料の抜蝕部及び非抜蝕部の境界を光学顕微鏡にて観察して目視にて評価した。境界部分にレーヨン繊維の量が少ない領域がほとんど確認できない場合を○、境界部分にレーヨン繊維の量が少ない領域が確認できる場合を△、境界部分にレーヨン繊維の量が少ない領域が顕著に確認できる場合を×として、表3に記載した。
加工後の生地の風合いについては、オパール加工後(洗浄して乾燥後)の非抜蝕部の手触りを、前処理液を塗布する前の布帛の状態と比較した。前処理液を塗布する前の布帛の手触りとあまり差を感じない場合を○とし、前処理液を塗布する前の布帛に比べて明らかにゴワゴワ感がある場合を×として、表3に記載した。
2.5.評価結果
表3の実施例1〜3の結果から明らかなように、ガラス転移温度が150℃以上であり、耐酸性を有する水溶性高分子化合物を含有する前処理液A〜Cを用いた場合、セルロース系繊維とポリエステル系繊維とを含む生地からのセルロース系繊維の除去、抜蝕部及び非抜蝕部の境界の鋭敏性(シャープ性、鮮明性)及び加工後の生地の風合いが良好なオパール加工布帛を製造することができることが判明した。
一方、比較例1では、耐酸性を有しない水溶性高分子化合物を含有する前処理液Dを使用したため、セルロース系繊維の除去性が不良となった。これは水溶性高分子化合物とが抜蝕インクとが反応し(水溶性高分子化合物によって抜蝕インクが消費され)、セルロース系繊維の溶脱が不十分となったものと考えられる。また、比較例1は、境界部のキレが不良であり、これはセルロース系繊維が除去しきれていないためと考えられる。
比較例2では、ガラス転移温度が90℃以下である水溶性高分子化合物を含有する前処理液Eを用いたため、境界部のキレが不十分となった。これは高分子化合物のTgが低いため、加熱処理の際に高分子化合物が軟化してブロック性能が低下し、境界部において抜蝕剤が滲んでしまったことが一因であると考えられる。
比較例3では、ガラス転移温度が20℃で、水溶性を有さない高分子化合物を含有する前処理液Fを用いたため、境界部のキレが不十分で生地の風合いが不良となった。これは高分子化合物のTgが低いため、加熱処理の際に高分子化合物が軟化してブロック性能が低下し、境界部において抜蝕剤が滲んでしまったこと、及び、洗浄工程で高分子化合物を除去しきれていないためと考えられる。
比較例4では、前処理液を使用していないため、境界部のキレが不良であった。これは抜蝕インクの滲みが生じたためと考えられる。
図1は、前処理液を付与せずにオパール加工を行った布帛(比較例4に相当する)及び前処理液を付与してオパール加工を行った布帛(実施例1に相当する)の光学顕微鏡写真である。図1から明らかなように、ガラス転移温度が150℃以上であり、耐酸性を有する水溶性高分子化合物を含有する前処理液を用いて前処理を行うと、抜蝕インクが付与された領域の縁(抜蝕部と非抜蝕部の境界)が鮮鋭となっており、あたかもレーヨン繊維(セルロース系繊維)が物理的に切断されたように観測されることが分かった。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

Claims (7)

  1. セルロース系繊維とポリエステル系繊維とを含む布帛のセルロース系繊維を抜蝕するインクジェットオパール加工用の前処理液であって、
    耐酸性を有する水溶性高分子化合物と、水と、を含有し、
    前記水溶性高分子化合物は、
    (i)ガラス転移温度が150℃以上
    (ii)ガラス転移温度が分解温度よりも高い場合は、前記分解温度が150℃以上
    (iii)ガラス転移温度を有さない場合は、軟化点が150℃以上
    のうち、いずれか一つの条件を満たす、インクジェットオパール加工用の前処理液。
  2. 請求項1において、
    前記水溶性高分子化合物が、ノニオン性高分子化合物、又はアニオン性高分子化合物である、前処理液。
  3. 請求項1又は請求項2において、
    前記水溶性高分子化合物が、ポリビニルピロリドンである、前処理液。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
    さらに保湿剤を含有する、前処理液。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
    さらに防腐剤を含有する、前処理液。
  6. セルロース系繊維とポリエステル系繊維とを含む布帛に、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の前処理液を付与する工程と、
    前記布帛に抜蝕インクをインクジェット法により付与する工程と、
    前記布帛を加熱する工程と、
    前記布帛を洗浄する工程と、
    を含む、オパール加工布帛の製造方法。
  7. 請求項6において、
    さらに前記セルロース系繊維及びポリエステル系繊維の少なくとも一方を染色する工程を含む、オパール加工布帛の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
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CN107059300A (zh) * 2017-05-25 2017-08-18 苏州市职业大学 一种丝绸纹样的非接触式处理装置及方法
US20210040684A1 (en) * 2019-08-07 2021-02-11 Prism Inks, Inc. Pretreating natural fiber fabrics for dye sublimation ink printing

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