JP2016132283A - ブレーキ制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 故障発生時における制動力低下時間を短くできるブレーキ制御装置を提供する。【解決手段】 異常状態を検出してから故障確定前に液圧制御ユニットHU2によるホイルシリンダへの液圧の発生から踏力ブレーキ液圧発生部(ブレーキペダルBP、マスタシリンダMC、油路1,4)によるホイルシリンダへの液圧の発生へ切り替える。【選択図】 図1

Description

本発明は、ブレーキ制御装置に関する。
特許文献1には、いわゆるブレーキバイワイヤシステムとして、マスタシリンダおよびホイルシリンダ間を遮断し、マスタシリンダとは別の液圧源により運転者のブレーキ操作状態に応じたブレーキ液圧をホイルシリンダに発生させるブレーキ制御装置が開示されている。上記のようなブレーキ制御装置では、システムに故障が発生した場合、マスタシリンダおよびホイルシリンダ間を連通し、運転者のブレーキ操作状態に応じたマニュアルブレーキにより制動力を確保している。
米国特許出願公開第2012/0169112号明細書
しかしながら、上記従来技術にあっては、システム異常を検出してから故障部位を特定し、故障と確定するまでに所定の時間を要するため、マニュアルブレーキによる制動力の確保に遅れが生じ、制動力低下時間が長くなるという問題があった。
本発明の目的は、故障発生時における制動力低下時間を短くできるブレーキ制御装置を提供することにある。
本発明では、異常状態を検出してから故障確定前に液圧制御部によるホイルシリンダへの液圧の発生から踏力ブレーキ液圧発生部によるホイルシリンダへの液圧の発生へ切り替える。
よって、本発明にあっては、故障発生時における制動力低下時間を短くできる。
実施例1のブレーキ制御装置の油圧回路構成図である。 実施例1のコントロールユニットCUにおける異常発生時の動作の流れを示すフローチャートである。 実施例1において制動直後にモータMの動作が故障により停止した場合の動作を示すタイムチャートである。 実施例1においてプライマリ系統が保持不可能(例えば液漏れ発生)となった場合の動作を示すタイムチャートである。
〔実施例1〕
[油圧回路]
図1は、実施例1のブレーキ制御装置の油圧回路構成図である。
ブレーキ制御装置は、操作部材であるブレーキペダルBPに接続されたマスタシリンダMCと、マスタシリンダMCに接続され、マスタシリンダ圧を車両の各車輪FL,FR,RL,RRのホイルシリンダWCに供給する液圧制御ユニット(液圧制御部)HU1,HU2と、コントロールユニットCUと、を備える。液圧制御ユニットHU1は、アクチュエータとしてストロークシミュレータSSおよびストロークシミュレータ弁101を有する。液圧制御ユニットHU2は、アクチュエータとして液圧源としてのポンプPU、後述する複数の電磁弁および圧力センサを有する。両液圧制御ユニットHU1,HU2は、コントロールユニットCUからの制御指令に応じて各アクチュエータを制御することで、マスタシリンダ液圧およびホイルシリンダ液圧を能動制御可能に設けられている。ブレーキペダルBPには、ブレーキペダルBPの変位(ブレーキペダルストローク量)を検出するストロークセンサS1が設けられている。
以下、4輪FL,FR,RL,RRのそれぞれに対応して設けられている構成については、a,b,c,dの記号を添えて区別するものとし、aは前左輪FL、bは前右輪FR、cは後左輪RL、dは後右輪RRにそれぞれ対応する構成を表すこととする。
マスタシリンダMCは、プライマリ室11およびセカンダリ室12から構成され、それぞれリザーバRSVからブレーキ液が供給されている。プライマリ室11からはプライマリピストンPPよりブレーキ液が出力される。プライマリ室11は第1油路としての油路1(1A,1B)を介してプライマリ系統の前左ホイルシリンダWC(FL)および後右ホイルシリンダWC(RR)に接続されている。セカンダリ室12からはセカンダリピストンSPよりブレーキ液が出力される。セカンダリ室12は第1油路としての油路4(4A,4B)を介してセカンダリ系統の前右ホイルシリンダWC(FR)および後左ホイルシリンダWC(RL)に接続されている。ブレーキペダルBP、マスタシリンダMCおよび油路1,4により、マスタシリンダMCからの液圧によりホイルシリンダWCへの液圧を発生可能な状態を有する踏力ブレーキ液圧発生部が構成される。
油路1は、遮断弁100pによって油路1A,1Bに分離される。遮断弁100pは常開型の比例電磁弁である。油路1Aにはマスタシリンダ圧力センサP1が設置され、マスタシリンダ圧を監視可能である。また、油路1Aから分離して油路2が構成され、ストロークシミュレータSSの正圧室14に接続されている。ストロークシミュレータSSはピストン13によって正圧室14と背圧室15に隔てられ、正圧室14と背圧室15において互いのブレーキ液の行き来はできない構成となっている。背圧室15にはストロークシミュレータスプリング16が設けられ、ピストン13のストロークに応じて反力を発生可能である。
ストロークシミュレータSSの背圧室15は油路3(3A,3B)によって低圧部(リザーバRSV)に接続されている。油路3はストロークシミュレータ弁101によって油路3A,3Bに分離される。ストロークシミュレータ弁101は常閉型の電磁弁である。油路4は、遮断弁100sによって油路4A,4Bに分離される。遮断弁100sは常開型の電磁弁である。油路1B,4Bには、プライマリ系統圧力センサP2、セカンダリ系統圧力センサP3が設置され、油路1B,4Bの圧力を監視可能である。ここで、油路1B,4Bの圧力は後述のソレノイドイン弁103が開いている場合はホイルシリンダ液圧とみなすことができる。
油路1Bと油路4Bは連通路としての油路5によって連通するように構成されている。油路1Bと油路5は連通弁106pによって連通と遮断を切り替え可能である。連通弁106pは常閉型の電磁弁である。油路4Bと油路5は連通弁106sによって連通と遮断を切り替え可能である。連通弁106sは常閉型の電磁弁である。油路5は一方向弁108を介して液圧源であるポンプPUの吐出側に接続されている。油路5にはポンプ吐出圧センサ(液圧検出部)P4が設置され、ポンプ吐出圧を監視可能である。ポンプPUの吸入側は油路6に接続され、油路6はリザーバRSVと接続されている。ポンプPUはモータMによって駆動され、リザーバRSVからブレーキ液を吸入し、油路5に出力可能である。また、油路5は調圧弁109を介して油路6と接続し、油路5のブレーキ液は調圧弁109を介してリザーバRSVに戻すことが可能である。調圧弁109は常開型の比例電磁弁である。
ホイルシリンダWC(FL),WC(RR)は、ソレノイドイン弁103a,103dを介して油路1Bと接続されている。ソレノイドイン弁103a,103dは常開型の比例電磁弁である。ソレノイドイン弁103a,103dを閉弁することによりホイルシリンダWC(FL),WC(RR)へのブレーキ液の流入を遮断可能である。また、ソレノイドイン弁103a,103dと並列にチェック弁104a,104dが設けられ、ホイルシリンダWC(FL),WC(RR)の圧力が油路1Bの圧力よりも高いときのブレーキ液の流出を許可している。同様に、ホイルシリンダWC(FR),WC(RL)は、ソレノイドイン弁103b,103cを介して油路4Bと接続されている。ソレノイドイン弁103b,103cは常開型の比例電磁弁である。ソレノイドイン弁103b,103cと並列にチェック弁104b,104cが設けられ、ホイルシリンダWC(FR),WC(RL)の圧力が油路4Bの圧力よりも高いときのブレーキ液の流出を許可している。
さらに、それぞれのホイルシリンダWC(FL),WC(FR),WC(RL),WC(RR)はソレノイドアウト弁105a,105b,105c,105dを介して油路6に接続され、ソレノイドアウト弁105a,105b,105c,105dを開弁することでホイルシリンダWC(FL),WC(FR),WC(RL),WC(RR)の圧力を減圧可能である。ソレノイドアウト弁105a,105b,105c,105dは常閉型の電磁弁である。
[通常制御時の動作]
コントロールユニットCUは、通常制御時、ストロークセンサS1、各圧力センサP1,P2,P3,P4から入力される各検出値、および車両側から入力される走行状態に関する各種情報に基づき、内蔵されたプログラムに従って情報処理を行う。また、処理結果に従って液圧制御ユニットHU1,HU2の各電磁弁およびモータMに制御指令を出力し、これらを制御するブレーキバイワイヤにより、各車輪のホイルシリンダ液圧を運転者のブレーキ操作(ブレーキペダルストローク量やマスタシリンダ圧力)に応じて制御する。具体的には、コントロールユニットCUは、通常制御時、遮断弁100p,100sを閉弁方向、ストロークシミュレータ弁101を開弁方向、連通弁106p,106sを開弁方向、調圧弁109を閉弁方向にそれぞれ制御すると共に、ポンプPUを作動させる。このように制御することで、所望のブレーキ液をリザーバRSV⇒油路6⇒ポンプPU⇒油路5⇒油路1B、油路4B⇒各ホイルシリンダWCに送ることが可能である。このとき、圧力センサP2,P3,P4の検出値をフィードバックすることで、ポンプPUの回転数(吐出流量)および調圧弁109を運転者のブレーキ操作に応じた目標圧力となるように制御し、所望の制動力を得ることができる。目標圧力は、ストロークセンサS1やマスタシリンダ圧力センサP1の検出値などから演算される、運転者が所望する圧力である。このとき、同時にマスタシリンダMCのプライマリ室11から送られるブレーキ液は、ストロークシミュレータSSの正圧室14に導かれ、ストロークシミュレータSSのピストン13が移動することにより、ストロークシミュレータスプリング16に反力が作用し、ブレーキペダル操作に応じたペダル反力が創生される。したがって、制動操作時に適切な制動力およびペダル反力を発生させることが可能である。
[異常発生時の動作]
コントロールユニットCUは、通常制御中、液圧制御ユニットHU1,HU2の異常状態を検出し、故障か否かの判定を行い、故障か否かを確定する異常監視部7を有する。コントロールユニットCUは、異常監視部7により異常が検出されてから故障確定前に液圧制御ユニットHU1,HU2の各アクチュエータの駆動によりホイルシリンダ液圧を発生させるブレーキバイワイヤによる制動から、運転者の制動操作に応じて立ち上がるマスタシリンダ液圧によりホイルシリンダ液圧を発生させるマニュアルブレーキによる制動へ切り替える。液圧制御ユニットHU1,HU2において、遮断弁100p,100sを開弁し、ストロークシミュレータ弁101を閉弁し、連通弁106p,106sを閉弁することにより、マスタシリンダMCの圧力により各ホイルシリンダ液圧を発生可能な状態となり、マニュアルブレーキによる制動を実現できる。以下、図2のフローチャートに基づき、異常発生時におけるコントロールユニットCUの動作を説明する。
図2は、実施例1のコントロールユニットCUにおける異常発生時の動作の流れを示すフローチャートである。
ステップS001では、制動操作中であるか否かを判定する。YESの場合はステップS002へ進み、NOの場合はステップS003へ進む。制動操作中であるか否かは、ストロークセンサS1や各圧力センサP1,P2,P3,P4の検出値と所定の制動操作判定閾値とを比較し、検出値が閾値を超えている場合には制動操作中であると判定する。制動操作判定閾値は、制動操作中であることを認識できる
ステップS002では、制動中の目標圧力と発生圧力との差を監視し、その圧力差が所定圧ΔP以上であるか否かを判定する。YESの場合はステップS004へ進み、NOの場合はステップS003へ進む。発生圧力は、各圧力センサP2,P3,P4の検出値を監視する。通常制御動作中、連通弁106p,106sは開弁されているため、各圧力センサP2,P3,P4の値は一致しているはずであり、全ての検出値を監視することで判定精度を高めることができる。所定圧ΔPは、目標圧力の比率で表してもよいし、差圧で表してもよいが、少なくとも制動力が不足していることを認識可能な値とする。
ステップS003では、第1タイマ、第2タイマおよび第3タイマの値を全てリセットする。
ステップS004では、第2タイマの値をカウントアップする。
ステップS005では、目標圧力と発生圧力の差が所定圧ΔP以上となってから所定時間ΔT1が経過したか否かを第1タイマの値から判定する。YESの場合はステップS006へ進み、NOの場合はステップS002へ進む。
ステップS006では、連通弁106p,106sを閉弁、遮断弁100p,100sを開弁、調圧弁109を閉弁、ストロークシミュレータ弁101を閉弁する。
ステップS007では、ポンプ吐出圧センサP4の検出値が所定圧p1以上であるか否かを判定する。YESの場合はステップS011へ進み、NOの場合はステップS008へ進む。
ステップS008では、第2タイマの値をカウントアップする。
ステップS009では、ポンプ吐出圧センサP4の検出値が所定圧p1以上となってから所定時間ΔT2が経過したか否かを、第2タイマの値から判定する。YESの場合はステップS010へ進み、NOの場合はステップS007へ進む。
ステップS010では、運転者に対し増圧不可の警告を行う。
ステップS011では、プライマリ系統の連通弁106pを開弁、遮断弁100pを閉弁すると共に第2タイマの値をリセットする。なお、セカンダリ系統では、少なくとも連通弁106sは閉弁のままとする。
ステップS012では、プライマリ系統圧力センサP2の検出値が所定圧p2以上であるか否かを判定する。YESの場合はステップS013へ進み、NOの場合はステップS017へ進む。
ステップS013では、第3タイマの値をカウントアップする。
ステップS014では、プライマリ系統圧力センサP2の検出値が所定圧P2以上となってから所定時間ΔT3が経過したか否かを第3タイマの値から判定する。YESの場合はステップS015へ進み、NOの場合はステップS012へ進む。
ステップS015では、プライマリ系統の連通弁106pを閉弁、遮断弁100pを開弁すると共に、セカンダリ系統の連通弁106sを開弁、遮断弁100sを閉弁する。
ステップS016では、運転者に対しプライマリ系統の失陥を警告する。
ステップS017では、運転者に対しセカンダリ系統の失陥を警告する。
(異常状態検出)
上記のフローチャートにおいて、ステップS001、ステップS002、ステップS004およびステップS005は、液圧制御ユニットHU1,HU2の異常を検出するステップである。具体的には、運転者の制動操作中に目標圧力と発生圧力の差が所定圧ΔP以上である状態が所定時間ΔT1経過した場合、すなわち、目標圧力と発生圧力とが一定時間乖離している場合は、液圧制御ユニットHU1,HU2に何らかの異常が生じていると判定する。この場合は、ステップS006において、プライマリ系統およびセカンダリ系統共にブレーキバイワイヤによる制動からマニュアルブレーキによる制動への切り替えが行われる。
しかしながら、この時点では、故障部位の絞り込みが十分ではなくプライマリ系統およびセカンダリ系統を共にマニュアルブレーキとすることが最善とは限らない。以下、その理由を説明する。ブレーキバイワイヤにおいて、制動力が発生しない原因としては、「増圧が不可能である場合」、「ホイルシリンダWCの圧力保持ができない」場合の2通りが考えられる。前者の場合の具体的な故障例としては、モータMの不作動や調圧弁109の開固定等が考えられる。また、後者の場合の具体的な故障例としては、ホイルシリンダWC(もしくは配管)からの油漏れやエア混入等が考えられる。前者の場合はプライマリ系統およびセカンダリ系統は共にブレーキバイワイヤによる制動を継続できないため、両系統をマニュアルブレーキに切り替えることが最善である。一方、後者の場合、失陥していない系統ではブレーキバイワイヤによる倍力制御が可能であるため、失陥している系統のみマニュアルブレーキによる制動とし、失陥していない系統はブレーキバイワイヤによる制動へ戻す方がより必要な制動力を確保できる。したがって、続くステップS007以降では、より安全な状態とするために、故障部位を確定する。このとき、少なくとも一方のブレーキ系統はマニュアルブレーキによる制動を維持し、必要最小限の安全状態を確保する。
(増圧不可故障判定)
ステップS006の処理を完了した時点で、連通弁106p,106sおよび調圧弁109は閉弁されるため、油路5はホイルシリンダWCにつながる油路1Bや油路4Bからは独立している。また、制動指令状態であるため、モータMには作動を続ける指令が出力されている。油路5の液圧はポンプ吐出圧センサP4で監視可能であることから、油路5に圧力を発生できれば、ポンプPU(モータM)の不作動や調圧弁109の開固定等の疑いがなくなる。ステップS007、ステップS008およびステップS009は、増圧不可故障を判定するステップである。ポンプ吐出圧センサP4の検出値が所定圧p1以上である状態が所定時間ΔT2経過した場合、すなわち、一定時間ポンプ吐出圧が立ち上がらない場合は、増圧不可故障と確定し、警告を行う。増圧が不可能な場合には、プライマリ系統およびセカンダリ系統共にマニュアルブレーキを継続することで、安全状態が確保される。
(ブレーキ系統失陥判定)
一方、一定時間の間にポンプ吐出圧が立ち上がった場合は、少なくともポンプPUや調圧弁109に異常がないと判定し、次にホイルシリンダWCの圧力保持ができない場合を疑う。ステップS011、ステップS012、ステップS013およびステップS014は、ブレーキ系統別に故障を判定するステップである。まずステップS011では、連通弁106pを開弁、遮断弁100pを閉弁し、少なくとも連通弁106sは閉弁のままとする。このとき、ポンプPUから吐出されたブレーキ液は油路5を通って油路1Bに流れ込み、プライマリ系統のホイルシリンダWC(FL),WC(RR)にのみ送られる。仮に、セカンダリ系統のホイルシリンダWC(FR),WC(RL)に圧力保持ができない故障が発生した場合は、プライマリ系統のホイルシリンダWC(FL),WC(RR)の圧力は上昇する。逆に、プライマリ系統のホイルシリンダWC(FL),WC(RR)に圧力保持ができない故障が発生した場合は、プライマリ系統のホイルシリンダWC(FL),WC(RR)の圧力は上昇しない。したがって、続くステップS012において、プライマリ系統圧力センサP2の検出値が所定圧p2以上となるか否かを判定する。所定圧p2は、目標圧力等から制動力が妥当に発生できる圧力として任意に設定できる。ステップS012において、プライマリ系統圧力センサP2の検出値が所定圧p2以上である場合は、セカンダリ系統の故障と確定し、警告を行う。セカンダリ系統の故障と確定した場合には、セカンダリ系統のみマニュアルブレーキによる制動を継続する一方、プライマリ系統はブレーキバイワイヤによる制動へ戻すため、倍力制御が可能であり、安全状態が確保される。
一方、プライマリ系統圧力センサP2の検出値が所定圧p2よりも小さい状態が一定時間継続した場合は、プライマリ系統の故障と確定し、警告を行う。同時に、連通弁106pを閉弁、遮断弁100pを開弁、連通弁106sを開弁、遮断弁100sを閉弁する。ポンプPUから吐出されたブレーキ液は油路5を通って油路4Bに流れ込み、セカンダリ側のホイルシリンダWC(FR),WC(RL)にのみ送られる。プライマリ系統の故障と確定した場合には、プライマリ系統のみマニュアルブレーキによる制動を継続する一方、セカンダリ系統はブレーキバイワイヤによる制動へ戻すため、倍力制御が可能であり、安全状態が確保される。
[故障発生時における制動力の早期確保]
制動力を電子制御する、いわゆるブレーキバイワイヤシステムにおいて、システムの正常時には、マスタシリンダおよびホイルシリンダ間のブレーキ液の伝達を遮断弁により遮断し、運転者のブレーキ操作に応じたブレーキ液圧をマスタシリンダとは別の液圧源であるポンプを用いて発生させる。一方、システムが故障した場合には、遮断弁を開いてマスタシリンダおよびホイルシリンダ間の遮断を解除し、マニュアルブレーキによる制動を可能としている。
上記のようなブレーキバイワイヤシステムでは、例えばポンプに故障が発生した場合、ポンプに関連する信号や発生油圧状態から異常状態を検出し、異常状態が継続した場合に故障と判定し、ブレーキバイワイヤによる制動からマニュアルブレーキによる制動へ切り替えるのが一般的である。ところが、ポンプを動作、制御するためには、ポンプ(モータを含む)自体の機械的構成はもちろんのこと、電源、駆動装置、センサ等のさまざまな要素があり、いずれの故障により異常が発生しているかを瞬時に判定することは現実的に困難である。また、ホイルシリンダ側のエア侵入や液漏れといったポンプ以外の故障においても、制動力の低下が発生し、ポンプ故障時と同様の影響を示す場合があることから判別が難しいこともある。このように、異常検出から故障部位を特定し、故障と確定するまでには所定の時間を要するが、実際に制動力が極端に低い場合には、制動力の早期確保により、より安全な状態へ遷移させ、同時に故障部位の特定を行う必要がある。
そこで、実施例1では、異常状態を検出(ステップS005でYES判定)してから故障確定(ステップS010、ステップS017またはステップS016)前にブレーキバイワイヤによる制動からマニュアルブレーキによる制動へ切り替える。異常検出後直ちにマニュアルブレーキによる制動へ切り替えることにより、制動力低下時間を短くできる。
また、マニュアルブレーキの切り替え後は、少なくとも一方のブレーキ系統(セカンダリ系統)でマニュアルブレーキを維持しつつ、ポンプPUを駆動してポンプ吐出圧および各ブレーキ系統(プライマリ系統,セカンダリ系統)のホイルシリンダWCの圧力から故障部位を特定する。これにより、安全な状態を維持しつつ、故障検出の信頼性を高めることができる。以下、故障部位別の動作例を示す。
図3は、実施例1において制動直後にモータMの動作が故障により停止した場合の動作を示すタイムチャートである。
まず、時刻t0で目標圧力が発生するため、連通弁106p,106sを開弁、遮断弁100p,100sを閉弁、調圧弁109を閉弁方向に比例制御、モータMを作動、ストロークシミュレータ弁101を開弁する。このとき、モータMが作動直後に故障すると、ポンプPUからブレーキ液が送られなくなり、ホイルシリンダWCの増圧が不可能となり、目標圧力に対して、各圧力センサP2,P3,P4の検出値が解離する。時刻t1において差圧ΔPが発生した時点で、異常を検出し第1タイマが作動を開始する。
時刻t1から所定時間ΔT1経過後の時刻t2において、制動力不足を確定し、マニュアルブレーキに変更する。すなわち、連通弁106p,106sを閉弁、遮断弁100p,100sを開弁、ストロークシミュレータ弁101を閉弁する。目標圧力は、例えばマスタシリンダ圧力センサP1の検出値に再設定するなどして通常制御時よりも低く変更しておく。このときに調圧弁109の比例制御は終了し、完全に閉弁(全閉)する。また、このときモータMには作動指令を出し続ける。モータMや調圧弁109が正常であれば、ポンプ吐出圧センサP4の検出値が上昇するはずであるが、モータMが故障しているため、ポンプ吐出圧センサP4の検出値は増加しない。時刻t2から所定時間ΔT2経過後の時刻t3において、ポンプ吐出圧センサP4の検出値が所定圧p1を超えられない時間が長いことから、増圧不可能と判定して故障を確定する。プライマリ系統およびセカンダリ系統でマニュアルブレーキはそのまま継続し、安全状態が確保される。
次に、図4は、実施例1においてプライマリ系統が保持不可能(例えば液漏れ発生)となった場合の動作を示すタイムチャートである。
まず、時刻t4で目標圧力が発生するため、連通弁106p,106sを開弁、遮断弁100p,100sを閉弁、調圧弁109を閉弁方向に比例制御、モータMを作動、ストロークシミュレータ弁101を閉弁する。このとき、プライマリ系統が液漏れを起こしており、ホイルシリンダWCに適切にブレーキ液を送れないため、増圧ができず、目標圧力に対して各圧力センサP2,P3,P4の検出値が乖離する。時刻t5において差圧ΔPが発生した時点で、異常を検出しタイマが作動を開始する。時刻t5からΔT1経過後の時刻t6において、制動力不足を確定し、マニュアルブレーキに変更する。すなわち、連通弁106p,106sを閉弁、遮断弁100p,100sを開弁、ストロークシミュレータ弁101を閉弁する。目標圧力は、例えばマスタシリンダ圧力P1に再設定するなどして通常制御時よりも低く変更しておく。このときに調圧弁109の比例制御は終了し、完全に閉弁(全閉)する。また、このときモータMには作動指令を出し続ける。ここで、モータMおよび109は正常であることにより、ポンプ吐出圧センサP4の検出値は上昇する。このとき、油路5は剛性が非常に高く、短時間で増圧する。時刻t7でポンプ吐出圧センサP4の検出値が所定圧p1を上回り、モータMや調圧弁109の故障の可能性が除外される。同時刻t7において、プライマリ系統の連通弁106pを開弁、遮断弁100pを閉弁し、ポンプPUの吐出したブレーキ液をプライマリ系統のみに流入させる。しかし、プライマリ系統は液漏れにより増圧しないことから、プライマリ系統の失陥が確定される。このとき、プライマリ系統の連通弁106pを閉弁、遮断弁100pを開弁、セカンダリ系統の遮断弁100sを閉弁し、ポンプPUの吐出したブレーキ液をセカンダリ系統のみに流入させる。これにより、正常なセカンダリ系統は増圧する。時刻t9において、セカンダリ系統圧力センサP3の検出値が目標値を達成したところで、調圧弁109の比例制御を再開する。
実施例1にあっては、以下の作用効果を奏する。
(1) マスタシリンダMCとは別に設けられ、運転者のブレーキ操作状態に応じたブレーキ液圧をホイルシリンダWCに発生させるポンプPUを備えた液圧制御ユニットHU1,HU2と、マスタシリンダMCからの液圧によりホイルシリンダWCへの液圧を発生可能な状態を有する踏力ブレーキ液圧発生部(ブレーキペダルBP、マスタシリンダMC、油路1,4)と、液圧制御ユニットHU1,HU2の異常状態を検出し、故障か否かの判定を行い、故障か否かを確定する異常監視部7と、を有するコントロールユニットCUを備え、コントロールユニットCUは、異常監視部7により異常状態を検出してから故障確定前に液圧制御ユニットHU1,HU2によるホイルシリンダWCへの液圧の発生から踏力ブレーキ液圧発生部によるホイルシリンダWCへの液圧の発生へ切り替えることを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、各ブレーキ系統において、故障確定前にブレーキバイワイヤによる制動からマニュアルブレーキによる制動へ切り替えることで、故障発生時における制動力低下時間を短くでき、安全性を向上できる。
(2) (1)に記載のブレーキ制御装置において、コントロールユニットCUは、異常監視部7により故障ではないと確定されると踏力ブレーキ液圧発生部によるホイルシリンダWCへの液圧の発生から液圧制御ユニットHU1,HU2によるホイルシリンダWCへの液圧の発生へ戻すことを特徴とするブレーキ制御装置。
つまり、故障していないブレーキ系統ではマニュアルブレーキによる制動からブレーキバイワイヤによる制動へ戻すことで、ブレーキバイワイヤによる倍力制御が可能となるため、マニュアルブレーキによる制動を継続する場合と比較して非故障時の制動力を確保できる。
(3) (1)に記載のブレーキ制御装置において、マスタシリンダMCとホイルシリンダWCとの間に設けられた油路1(1A,1B)と、油路1に設けられ、開弁時にマスタシリンダMCとホイルシリンダWCを連通する遮断弁100と、ポンプPUにより発生したブレーキ液圧を油路1へ伝達するか否かを選択可能な連通弁106と、を備え、コントロールユニットCUは、異常監視部7により異常状態を検出すると遮断弁100を開弁方向、連通弁106を閉弁方向にそれぞれ駆動し、異常監視部7により故障ではないと確定されると遮断弁100を閉弁方向、連通弁106を開弁方向にそれぞれ駆動して踏力ブレーキ液圧発生部によるホイルシリンダWCへの液圧の発生から液圧制御ユニットHU1,HU2によるホイルシリンダWCへの液圧の発生へ戻すことを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、各ブレーキ系統において、故障発生時における制動力低下時間を短くできると共に、非故障時の制動力を確保できる。
(4) (3)に記載のブレーキ制御装置において、ポンプPUが発生する液圧を検出するポンプ吐出圧センサP4を備え、コントロールユニットCUは、異常監視部7により異常状態を検出した後にポンプ吐出圧センサP4によって所定の液圧が検出されると踏力ブレーキ液圧発生部によるホイルシリンダWCへの液圧の発生から液圧制御ユニットHU1,HU2によるホイルシリンダWCへの液圧の発生へ戻すことを特徴とするブレーキ制御装置。
つまり、ポンプPUによる増圧が可能な場合には、故障していないブレーキ系統をマニュアルブレーキによる制動からブレーキバイワイヤによる制動へ戻すことで、非故障時の制動力を確保できる。
(5) (4)に記載のブレーキ制御装置において、油路1、遮断弁100および連通弁106は車両のブレーキ系統毎に設けられ、コントロールユニットCUは、異常監視部7により異常状態を検出した後にポンプ吐出圧センサP4によって所定の液圧が検出されると一方のブレーキ系統(プライマリ系統)を踏力ブレーキ液圧発生部によるホイルシリンダWCへの液圧の発生から液圧制御ユニットHU1,HU2によるホイルシリンダWCへの液圧の発生へ戻すことを特徴とするブレーキ制御装置。
つまり、プライマリ系統をマニュアルブレーキによる制動からブレーキバイワイヤによる制動へ戻し、セカンダリ系統はマニュアルブレーキによる制動を継続することで、必要最小限の安全状態を確保しつつ、プライマリ系統圧力センサP2の検出値からどちらのブレーキ系統が失陥しているのかを検出できる。
〔他の実施例〕
以上、本発明を実施するための形態を実施例に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は実施例に示した構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、異常を検出し両ブレーキ系統をブレーキバイワイヤによる制動からマニュアルブレーキによる制動へ切り替えた後、セカンダリ系統のみをブレーキバイワイヤによる制動へ戻してブレーキ系統失陥を判定してもよい。
1 油路(踏力ブレーキ液圧発生部)
4 油路(踏力ブレーキ液圧発生部)
7 異常監視部
BP ブレーキペダル(踏力ブレーキ液圧発生部)
CU コントロールユニット
HU1 液圧制御ユニット(液圧制御部)
HU2 液圧制御ユニット(液圧制御部)
MC マスタシリンダ(踏力ブレーキ液圧発生部)
PU ポンプ(液圧源)
WC ホイルシリンダ

Claims (5)

  1. マスタシリンダとは別に設けられ、運転者のブレーキ操作状態に応じたブレーキ液圧をホイルシリンダに発生させる液圧源を備えた液圧制御部と、
    前記マスタシリンダからの液圧により前記ホイルシリンダへの液圧を発生可能な状態を有する踏力ブレーキ液圧発生部と、
    前記液圧制御部の異常状態を検出し、故障か否かの判定を行い、故障か否かを確定する異常監視部と、
    を有するコントロールユニットを備え、
    前記コントロールユニットは、前記異常監視部により異常状態を検出してから故障確定前に前記液圧制御部による前記ホイルシリンダへの液圧の発生から前記踏力ブレーキ液圧発生部による前記ホイルシリンダへの液圧の発生へ切り替えることを特徴とするブレーキ制御装置。
  2. 請求項1に記載のブレーキ制御装置において、
    前記コントロールユニットは、前記異常監視部により故障ではないと確定されると前記踏力ブレーキ液圧発生部による前記ホイルシリンダへの液圧の発生から前記液圧制御部による前記ホイルシリンダへの液圧の発生へ戻すことを特徴とするブレーキ制御装置。
  3. 請求項1に記載のブレーキ制御装置において、
    前記マスタシリンダと前記ホイルシリンダとの間に設けられた第1油路と、
    前記第1油路に設けられ、開弁時に前記マスタシリンダと前記ホイルシリンダを連通する遮断弁と、
    前記液圧源により発生したブレーキ液圧を前記第1油路へ伝達するか否かを選択可能な連通弁と、
    を備え、
    前記コントロールユニットは、前記異常監視部により異常状態を検出すると前記遮断弁を開弁方向、前記連通弁を閉弁方向にそれぞれ駆動し、前記異常監視部により故障ではないと確定されると前記遮断弁を閉弁方向、前記連通弁を開弁方向にそれぞれ駆動して前記踏力ブレーキ液圧発生部による前記ホイルシリンダへの液圧の発生から前記液圧制御部による前記ホイルシリンダへの液圧の発生へ戻すことを特徴とするブレーキ制御装置。
  4. 請求項3に記載のブレーキ制御装置において、
    前記液圧源が発生する液圧を検出する液圧検出部を備え、
    前記コントロールユニットは、前記異常監視部により異常状態を検出した後に前記液圧検出部によって所定の液圧が検出されると前記踏力ブレーキ液圧発生部による前記ホイルシリンダへの液圧の発生から前記液圧制御部による前記ホイルシリンダへの液圧の発生へ戻すことを特徴とするブレーキ制御装置。
  5. 請求項4に記載のブレーキ制御装置において、
    前記第1油路、遮断弁および連通弁は車両のブレーキ系統毎に設けられ、
    前記コントロールユニットは、前記異常監視部により異常状態を検出した後に前記液圧検出部によって所定の液圧が検出されると1つのブレーキ系統を前記踏力ブレーキ液圧発生部による前記ホイルシリンダへの液圧の発生から前記液圧制御部による前記ホイルシリンダへの液圧の発生へ戻すことを特徴とするブレーキ制御装置。
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