JP2016130206A - 吹付けセメントモルタル及び吹付けセメントコンクリート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セメントと、水と、細骨材と、凝結遅延剤の石灰硫黄合剤と、カルシウムアルミネートを含有する急硬性混和材とを配合してなる吹付けセメントモルタルであり、石灰硫黄合剤が、セメント100部に対し0.01〜10部である前記吹付けセメントモルタルであり、硫酸アルミニウムを含有する液体急結剤を配合してなる前記吹付けセメントモルタルであり、液体急結剤が、さらに、フッ素原料、ジエタノールアミン、硫酸マグネシウム、シュウ酸、尿素から選ばれた少なくとも1種以上を含有してなる前記吹付けセメントモルタルであり、尿素を液体急結剤100部中、5〜35部含有してなる前記吹付けセメントモルタルであり、前記吹付けセメントモルタルに、粗骨材を配合してなる吹付けセメントコンクリート、である。
【選択図】なし
Description
セメント凝結遅延剤と硬化促進剤とを組合せて用いた技術(特許文献3、特許文献4、及び特許文献5)には、戻りコンクリートの有効利用が記載されている。
近年、吹付け工法において、吹付けコンクリートの物性目標は高まっており、低粉じん、低リバウンドでかつ、硬化直後から高い強度が求められる。また、凝結遅延剤による安定した作業時間の確保と、硬化促進剤などの添加直後の強度発現が同時に求められている。
しかしながら、石灰硫黄合剤を吹付セメントモルタルや吹付セメントコンクリートに適用した例は見当たらない。
なお、本発明における部や% は特に規定しない限り質量基準で示す。
石灰硫黄合剤とは、CaとSと水を主成分とし、成分は多硫化カルシウム(CaSx)が主であり、石灰硫黄合剤を100部としたとき、T−Ca換算で2〜20部、T−S換算で5〜40部、MgO換算で0.1〜4.0部の範囲でMgを含む。石灰硫黄合剤のpHは10.0以上であることを特長とする。また、酸化還元電位も特異的である。石灰硫黄合剤の酸化還元電位(ORP)は−450mv以下である。pHがアルカリ性領域であることは、極めて重要である。pHが10.0未満では、本発明の効果、 すなわち、流動性の保持効果や六価クロムの還元効果、さらには自己収縮の低減効果が十分に得られない場合がある。石灰硫黄合剤の添加量を増やすと、遅延時間が長くなり、状況に応じて硬化時間設定が可能である。
石灰硫黄合剤の各成分は、石灰硫黄合剤を100部としたとき、T−Ca換算で2〜20部が好ましく、5〜15部がより好ましく、2部未満であると優れた遅延効果が確認されない場合があり、20部を超えると、溶液安定性が悪く、液状を保持できない場合がある。また、T−S換算で5〜40部が好ましく、10〜30部がより好ましく、5部未満であると、溶液安定性が悪い場合があり、40部を超えると、遅延効果が強すぎる場合がある。MgOは0.1〜4.0部が好ましく、0.5〜2.0部がより好ましく、MgOが0.1〜4.0部の範囲外であると、溶液安定性が下がり、析出する場合がある。
カルシウムアルミネートのガラス化率は、60%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。ガラス化率60%未満であると、吹付け施工などの吹付けた後に急激な凝結、硬化が必要な場合、その効果が少ない。
カルシウムアルミネートのCaO/Al2O3のモル比は、2.0〜2.5が好ましく、モル比が2.0未満であると、液体急結剤添加後の凝結、硬化が充分でない場合があり、モル比が2.5を超えると、凝結、硬化が早すぎる場合がある。
カルシウムアルミネートの粉末度は、ブレーン比表面積で4000〜10000cm2/gが好ましく、4000cm2/g未満であると、優れた急結性状が得られない場合があり、10000cm2/gを超えると安定した凝結性状が得られない場合がある。
液体急結剤を製造する際、アルミ供給源とイオウ供給源から反応させて硫酸アルミニウムを調製することが可能であり、最終的に硫酸アルミニウムとして存在していれば、出発原料は問わない。
アルミ供給原料は特に限定されるものではないが、明礬類に代表されるアルミニウムの硫酸塩、アルミン酸塩、及びその他の無機アルミニウム化合物、有機アルミニウム化合物、並びにアルミニウム錯体が挙げられる。イオウ供給源は特に限定されるものではないが、アルミニウムの硫酸塩としては、カリウム明礬、ナトリウム明礬、及びアンモニウム明礬等の明礬類、ヒドロキシ硫酸アルミニウム、並びに硫酸アルミニウム等が挙げられる。アルミン酸塩としてはアルミン酸リチウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、及びアルミン酸マグネシウム等が挙げられる。その他の無機アルミニウム化合物としては、ボーキサイト、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、フッ化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、アルミノ−シリカゲル、ケイ酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、及びメタケイ酸アルミニウム等が挙げられる。有機アルミニウム化合物としては、ステアリン酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、及びギ酸アルミニウム等が挙げられる。アルミニウム錯体としては、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム等が挙げられる。これらのアルミニウムの供給原料のうちの1種又は2種以上が使用可能である。本発明では、イオウの供給原料となる硫酸塩が好ましく、また、凝結性状が優れる点から各種明礬がより好ましい。
イオウ供給原料は特に限定されるものではないが、イオウ又は硫黄華のような元素状態のイオウの他に、硫化物、硫酸又は硫酸塩、亜硫酸又は亜硫酸塩、チオ硫酸又はチオ硫酸塩、及び有機イオウ化合物等が挙げられる。硫化物としては、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化鉄、及び五硫化リン等が挙げられる。硫酸塩としては、アンモニウム明礬、カリ明礬、及びナトリウム明礬に代表される各種明礬類、硫酸アニリン、硫酸アルミニウム、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、硫酸ナトリウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、並びに硫酸ヒドロキシルアミン等が挙げられる。亜硫酸塩としては、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、及び亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。チオ硫酸塩としては、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、及びチオ硫酸バリウム等が挙げられる。有機イオウ化合物としては、スルホン酸誘導体又はその塩、メルカプタン、チオフェン又はその誘導体、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、及びポリフェニレンサルファイド等の樹脂が挙げられる。本発明では、これらのイオウの供給原料の1種又は2種以上が使用可能である。上記イオウ化合物の中では水への溶解性が高く、製造コストが安く、かつ凝結性状が優れる点から硫酸又は硫酸塩が好ましく、硫酸塩のうちアルミニウムの供給原料となる明礬類がより好ましい。
フッ素原料は、フッ素またはフッ素化合物が好ましく、フッ化水素、氷晶石、珪フッ化物などフッ素化合物が使用可能である。アミン原料は、ジエタノールアミン、硫酸塩は、硫酸マグネシウム、錯体形成剤は、カルボン酸、ジカルボン酸、オキシカルボン酸、及びこれらの塩などが使用可能であり、特にシュウ酸の使用が好ましい。
本発明の液体急結剤の使用量は、吹付けに求められる性状が得られれば、特に限定されるものではないが、セメント100部に対して6〜10部が好ましい。6部未満であると、優れた強度発現性が得られない場合があり、10部を超えると、液体急結剤による初期強度発現性効果が頭打ちとなる場合がある。
セメント800g、水480g、細骨材2000g、表1に示す種類と量の遅延剤、カルシウムアルミネートAからなる急硬性混和材80gからなるセメントモルタルを混練してから120分経過後のモルタルフローを測定し、測定後、さらに、液体急結剤ア80gを添加して、プロクター貫入抵抗値、圧縮強度、六価クロム残存濃度を測定した。
セメント:普通ポルトランドセメント、ブレーン比表面積3500cm2/g、密度3.15g/cm3、市販品
水:上水道水、密度1.00g/cm3
細骨材:新潟県姫川水系川砂、密度2.62g/cm3
遅延剤α:石灰硫黄合剤、市販品、pH10.5、酸化還元電位(ORP)が−500mv、MgO含有量1.0%、T−Ca量10%、T−S量22%
遅延剤β:無水クエン酸、試薬、密度1.67g/cm3
カルシウムアルミネートA:CaO/Al2O3モル比2.3、ガラス化率80%、ブレーン比表面積5800cm2/g、密度2.60g/cm3
液体急結剤ア:硫酸アルミニウム27%、水73%の液体急結剤、液状、密度1.34g/cm3
モルタルフロー:JIS R5201に準じて測定した。
プロクター貫入抵抗値測定:JSCE D−102−1999に準じて始発時間、終結時間をそれぞれ測定し
た。尚、プロクター貫入抵抗値は急硬性混和材添加からの時間(分)で表記。
圧縮強度測定:JSCE D−102−1999に準じて圧縮強度を測定した。
材齢は10分、24時間、28日とした。
六価クロム残存濃度:セメントモルタルの六価クロム低減能力を確認するために、六価クロム標準溶液を希釈して、六価クロム濃度が100mg/lの溶液を調製し、この六価クロム溶液50ccに各セメントモルタル1000gを入れて攪拌し、7日後に固液分離して液相中の残存六価クロム濃度を測定することによって評価した。ただし、六価クロムの残存濃度は、JISK 0102に準じ、ICP発光分光分析法により測定した。
実験例1と同様にセメント800g、水480g、細骨材2000g、凝結遅延剤αがセメント100部中1.0部、表2に示す種類のカルシウムアルミネートからなる急硬性混和材80gからなるセメントモルタルを混練してから120分経過後のモルタルフローを測定し、測定後、さらに、液体急結剤ア80gを添加して、プロクター貫入抵抗値、圧縮強度、六価クロム残存濃度を測定した。
カルシウムアルミネートB:CaO/Al2O3モル比2.0、ガラス化率85%、ブレーン比表面積5500cm2/g、密度2.60g/cm3
カルシウムアルミネートC:CaO/Al2O3モル比2.5、ガラス化率60%、ブレーン比表面積6700cm2/g、密度2.60g/cm3
カルシウムアルミネートD:CaO/Al2O3モル比1.9、ガラス化率99%、ブレーン比表面積5800cm2/g、密度2.60g/cm3
カルシウムアルミネートE:CaO/Al2O3モル比2.65、ガラス化率50%、ブレーン比表面積7200cm2/g、密度2.60g/cm3
カルシウムアルミネートF:CaO/Al2O3モル比2.80、ガラス化率0%、ブレーン比表面積8600cm2/g、密度2.60g/cm3
実験例1、2と同様にセメント800g、水480g、細骨材2000g、遅延剤αがセメント100部に対して1.0部、カルシウムアルミネートAからなる急硬性混和材80gからなるセメントモルタルを混練し、さらに、表3に示す種類の液体急結剤80gに尿素を表3に示す量を加えた液体急結剤を添加して、プロクター貫入抵抗値、圧縮強度、六価クロム残存量、長さ変化を測定した。
尚、尿素は配合した分、水に置き換えている。
液体急結剤イ:硫酸アルミニウム27%、フッ化水素2%、水71%の水溶液
液体急結剤ウ:硫酸アルミニウム27%、フッ化水素2%、ジエタノールアミン1.5%、水69.5%
の水溶液
液体急結剤エ:硫酸アルミニウム27%、硫酸マグネシウム2%、フッ化水素2%、ジエタノールアミン1.5%、水67.5%の水溶液
液体急結剤オ:硫酸アルミニウム35%、しゅう酸1%、フッ化水素1%、水63%の水溶液
尿素:試薬、市販品
長さ変化試験:JIS A1129−3に準じて測定した。尚、材齢は28日とした。
セメント400kg/m3、細骨材1058kg/m3、粗骨材673kg/m3、水200kg/m3、高性能減水剤4kg/m3のコンクリートに、実験例1で使用した表4に示す種類の遅延剤0.5kgと実験例1で使用したカルシウムアルミネートAからなる急硬性混和材40kgをセメントモルタルに混合、練り混ぜし、練り混ぜ直後と120分経過後のスランプを測定した。
スランプ試験終了後、このコンクリートを吹付け圧力4MPa、吹付け速度10m3/hの条件下で、コンクリート圧送機「MKW−25SMT」(シンテック社製)によりポンプ圧送した。一方、セメントに対して液体急結剤が6部になるように、圧送圧力5MPaの条件下で、実験例3と同様に、尿素が液体急結剤100部中、表4に示す種類と量を配合した種々の液体急結剤を有光工業社製「TA−3DX」を用いてポンプ圧送し、この液体急結剤をY字管のもう一方からポンプ圧送されたコンクリートに混合合流し、吹付けセメントコンクリートとした。
この吹付けセメントコンクリートについて、実験例1と同様に、セメントコンクリート中のセメントモルタルの六価クロム残存量を測定し、さらに、長さ変化、圧縮強度、リバウンド率、及び粉塵量を測定した。
高性能減水剤:グレースケミカルズ社製、商品名FTN−30、市販品
長さ変化試験:JIS A1129−3に準じて測定した。尚、材齢は28日とした。
コンクリート圧縮強度:材齢3時間、1日の圧縮強度は、幅25cm×長さ25cmのプルアウト型枠に設置したピンを、プルアウト型枠表面から吹付け材料で被覆し、型枠の裏側よりピンを引き抜き、その時の引き抜き強度を求め、(圧縮強度)=(引き抜き強度)×4/(供試体接触面積)の式から圧縮強度を算出した。材齢28日以降の圧縮強度は、幅50cm×長さ50cm×厚さ20cmの型枠に吹付け材料を吹付け、採取した直径5cm×長さ10cmの供試体を20トン耐圧機で測定し、圧縮強度を求めた。
リバウンド率:6分間吹付けた時の跳ね返りをブルーシートに採取し、吹付けセメントコンクリートの使用量からブルーシートに採取した量から、リバウンド率を算出した。
粉塵量:吹付け位置から5m後方で粉塵測定器P−5L(柴田科学社製)を用いて粉塵量を測定した。尚、表4に示す粉塵量は、6分間吹付けた1分間当りの平均値を示している。
Claims (6)
- セメントと、水と、細骨材と、凝結遅延剤の石灰硫黄合剤と、カルシウムアルミネートを含有する急硬性混和材とを配合してなる吹付けセメントモルタル。
- 石灰硫黄合剤が、セメント100部に対し0.01〜10部である請求項1に記載の吹付けセメントモルタル。
- 硫酸アルミニウムを含有する液体急結剤を配合してなる請求項1又は2に記載の吹付けセメントモルタル。
- 液体急結剤が、さらに、フッ素原料、ジエタノールアミン、硫酸マグネシウム、シュウ酸、尿素から選ばれた少なくとも1種以上を含有してなる請求項3に記載の吹付けセメントモルタル。
- 尿素を液体急結剤100部中、5〜35部含有してなる請求項4記載の吹付けセメントモルタル。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の吹付けセメントモルタルに、粗骨材を配合してなる吹付けセメントコンクリート。
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