JP2016128697A - 転がり軸受 - Google Patents

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展希 大江
Hiroki Oe
展希 大江
泰人 藤掛
Yasuhito Fujikake
泰人 藤掛
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Abstract

【課題】 高速回転時のフープ応力を軽減させる転がり軸受を提供する。
【解決手段】 外周面に内輪軌道面4を有する内輪2と、内周面に外輪軌道面5を有する外輪3と、前記両軌道面の間に転動自在に設けられた複数の転動体6と、前記複数の転動体6を保持する保持器7とを備え、前記内輪2と外輪3との間の軌道面4,5の間に流体が通過する環境下において使用される転がり軸受1において、前記保持器7は、その断面形状が前記流体の通過によって中心方向の揚力Lを発生させるような揚力発生形状に構成されている。
【選択図】 図1

Description

この発明は、転がり軸受、特に、ロケットエンジンターボポンプ主軸用軸受など、高速回転が必要とされ、軸受内を流体が通過する環境において使用される転がり軸受に関する。
ロケットエンジン用ターボポンプに使用される転がり軸受は、液体酸素(沸点:−183℃)や液体水素(沸点:−253℃)等の極低温環境下で使用される。また、かかる用途の転がり軸受はdn値(軸回転速度と内輪内径との積)が300万以上に達し、例えば液体酸素を圧縮するターボポンプのアンギュラ玉軸受の回転数は最大で約18000rpm、液体水素を圧縮するターボポンプのアンギュラ玉軸受の回転数は最大で約52000rpmに達する。
また、極低温環境下(例えば−160℃以下)で使用される転がり軸受には、通常の流動性潤滑剤(油やグリースなど)を使用することはできない。そこで、この軸受に使用される保持器には、高速回転時のフープ応力に耐えうる強度を有し、かつ、自己潤滑性と摺動相手材への移着性を付与した樹脂複合材が使用されている。
さらに、今後、開発されるロケットエンジン用ターボポンプの軸回転速度は、更なる高速化が予測されるため、それに対応する軸受の開発は重要な課題となっており、保持器に作用するフープ応力の増大に対応した軸受の開発も重要である。
特許文献1(特公平2−20854号公報)には、ターボポンプ用軸受に使用する保持器として、母材のガラス織布にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を含浸させ、フッ酸処理により表層のガラス繊維を溶解させた一体型の保持器が開示されている。この保持器では、高速回転時に働くフープ応力に対する強度をガラス織布で確保し、含浸させたPTFEで自己潤滑性と摺動相手材への移着性を確保することで、極低温且つ高速回転環境下での軸受の使用を可能にしている。
特公平2−20854号公報
特許文献1の保持器は、現在の回転速度(dn値300万)には十分対応できる強度を有する。しかし、その材質は、ヤング率が5〜40GPa程度であり、一般的な金属材料の208GPaに対して低いため、PTFE複合材は、金属材料と比較すると、更なる高速回転化が進んだ場合、増大するフープ応力に対する強度面で不利になる。したがって、更なる高速回転化を図るには現状の強度を確保した上で保持器に作用するフープ応力を軽減させる対策を講じる必要がある。
そこで、この発明は、高速回転時のフープ応力を軽減させる転がり軸受を提供しようとするものである。
上記の課題を解決するため、この発明の転がり軸受においては、外周面に内輪軌道面を有する内輪と、内周面に外輪軌道面を有する外輪と、前記両軌道面の間に転動自在に設けられた複数の転動体と、前記複数の転動体を保持する保持器とを備え、前記内輪と外輪との間の軌道面の間に流体が通過する環境下において使用される転がり軸受において、
前記保持器は、その断面形状が、前記流体の通過によって中心方向の揚力を発生させるような揚力発生形状に構成されていることを特徴とする。
また、前記保持器は、断面形状が、前記流体の上流側が前縁となるような流線型に構成してもよく、流体の流れ方向に対して迎え角などを調整することでキャンバーを有する翼型に構成させなくても、中心方向の揚力を発生させることができる。
具体的には、前記保持器は、外径面が略平坦面に構成され、内径面が内輪側に膨らんだ曲面となるように構成することができる。また、この場合、前記保持器は、その断面形状が、中心線が翼弦線よりも内輪側となる形状に構成する。
前記保持器は、中心線を翼弦線よりも内輪側となるような断面形状に構成することで、迎角を設けなくても中心向きの揚力を発生させることができる。
前記保持器は、外輪案内方式の保持器であることが好ましく、内径面側に流体を高速で通過させることで揚力を発生させることができる。
この発明は、軸受側面から高速で通過する流体を利用して、遠心力に対抗する形で保持器に中心方向の揚力を発生させてフープ応力を軽減することができる。
本発明の第1実施形態の転がり軸受の断面図である。 図1の転がり軸受に用いられる保持器の構成を示す斜視図である。 図2のIII−III線における断面図である。 図2の保持器に迎え角を持たせた変形例にかかる転がり軸受の構成を示す断面図である。 本発明の他の実施形態にかかる転がり軸受の構成を示す断面図である。 本発明のさらなる他の実施形態にかかる転がり軸受の構成を示す断面図である。 本発明の実施形態にかかる転がり軸受が使用されるロケットエンジン用ターボポンプを模式的に示す断面図である。
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図7は、本発明の実施形態に係る転がり軸受(アンギュラ軸受1)を組み込んだ液体ロケットエンジンのターボポンプの構成を模式的に示す部分断面図である。図7に示すターボポンプ100は、液体水素/液体酸素2段燃焼式ロケットエンジンの液体酸素側を圧縮するものである。ターボポンプ100は、タービン室101、主ポンプ室102およびプリバーナポンプ室103を備えている。なお、図示は省略するが、液体水素/液体酸素2段燃焼式ロケットエンジンには、液体水素側を圧縮する略同様に構成されたターボポンプも設けられている。
遠心型ポンプとしての役割を有する主ポンプ室102には、案内羽根104および羽根車105を備えており、これらが回転する軸135を、その軸に対向するように配置される部材に対して回転自在に支持するアンギュラ玉軸受1が備えられている。液体酸素は、主ポンプ入口136から主ポンプ室102の内部に流入し、インデューサ137を経て案内羽根104および羽根車105に達する。そして、案内羽根104および羽根車105の回転による遠心力により、流入した液体酸素は圧縮され、一旦、主ポンプ出口106からターボポンプの外部へ流出する。
主ポンプ出口106からターボポンプの外部へ流出した液体酸素は、ガス入口107からタービン室101およびプリバーナポンプ室103の内部へ流入する。タービン室101においては、ガス入口107からガス出口108へ流れるプリバーナからの一次燃焼ガスによりタービン動翼109が駆動され、約18000rpmの高速回転に達する。そのタービン軸110は、各アンギュラ玉軸受1により支持されており、そのdn値は最大82万で程度になる。なお、図示しない液体水素側を圧縮するターボポンプのアンギュラ玉軸受1のdn値はさらに高く、最大172万の超高速回転になる。また、プリバーナポンプ室103側のアンギュラ玉軸受1には、高速回転にともなう発熱の冷却及びポンプの小型化のためにプリバーナポンプ入口111から液体酸素が流入し、プリバーナポンプ出口112から排出される。
このようなターボポンプに使用されるアンギュラ玉軸受(転がり軸受)1は、図1に示すように、外周面に軌道面4が形成された内輪2と、内周面に軌道面5が形成された外輪3と、この内輪2の外周面と外輪3の内周面との間(以下、軌道空間という。)に介装される転動体6と、この転動体6を保持する保持器7とを備えている。転動体6としてボールが用いられる。
ところで、アンギュラ玉軸受1は、転動体6と内輪2及び外輪3との接触点を結ぶ直線が、所定の角度を持っているものであり、ラジアル荷重と一方のアキシアル荷重を負荷することができる。また、ラジアル荷重が作用すると、アキシアル分力が生じる。このため、図1に示すように、軸受1を2個対向させて用いている。
内輪2、外輪3、及び転動体6は、通常の軸受材料を使用することができ、例えば、マルテンサイト系ステンレス鋼を用いることができる。なお、転動体6としては、セラミックスボールであってもよい。セラミックスを使用する場合、窒化珪素(Si34)、炭化珪素(SIC)、アルミナ(AI23)、ジルコニア(ZrO2)、サイアロン等が挙げられる。
内輪2の外周面には、軌動面4と、軌動面4の軸方向両側に設けられた肩部8,9が設けられる。軌動面4は、転動体6と略同一径の円弧状断面を有し、内輪2の外周全周にわたり連続している。軸方向一方(図中左側)の肩部8は、軌動面4の最小径部よりも大径な円筒面であり、軌動面4の軸方向一方の端部と連続している。軸方向他方(図中右側)の肩部9は、軌動面4の最小径部と略同径の外径を有し、軸方向他方側を僅かに縮径させた円すい面であり、軌動面4の最小径部から内輪2の軸方向他方の端面10まで延びている。
外輪3の内周面には、軌動面5と、軌動面5の軸方向両側に設けられた肩部11,12が設けられる。軌動面5は、転動体6と略同一径の円弧状断面を有し、外輪3の内周全周にわたり連続している。肩部11,12は、軌動面5の最大径部よりも小径な円筒面であり、軌動面5の軸方向両側の端部とそれぞれ連続している。
内輪2の軌動面4及び肩部8,9と外輪3の軌動面5及び肩部11,12には、固体潤滑膜として例えばPTFE被膜が形成され、本実施形態では軌動面5及び肩部11,12にPTFE被膜が形成される。
複数の転動体6は、内輪2の軌動面4と外輪3の軌動面5との間に配され、本実施形態では,図2に示すように、例えば20個の転動体6が配される。転動体6を金属材料で形成する場合、転動体6の表面には固体潤滑膜として例えばPTFE被膜が形成される。一方、転動体6をセラミックス材料で形成する場合は、軌道輪や保持器などの相手材との凝着が起こりにくいため、通常、転動体6の表面に固体潤滑膜を設けなくてもよい。
保持器7は、ガラス繊維強化プラスチックで構成され、図2に示すように、転動体6が1つずつ収容される複数のポケット13を有し、図示例では20個のポケット13が円周方向等間隔に設けられる。転動体6は、各ポケット13のポケット面13aで接触支持されて、ポケット13内に保持される。本実施形態にかかる転がり軸受1に使用される保持器7は、径方向の位置が、外輪3の内径面によって案内される外輪案内方式の保持器となっている。
ロケットエンジンターボポンプ主軸用軸受は高速回転で使用されるため、保持器7には遠心力によりフープ応力が作用する。例えば、ガラス繊維強化プラスチック製の保持器7で内径φ50、外径φ80、幅20の大きさの軸受で、dn値350万を想定した場合、作用するフープ応力は100MPa以上となる。このため、本実施形態では、保持器7の材料強度と比較して十分な安全性を確保するために、保持器7軸方向の断面形状を、軸受側面から高速で通過する極低温燃料の流れvを利用して、遠心力に対抗する中心方向の揚力を発生させることができる揚力発生形状にすることにより、フープ応力を軽減させている。
図3は、本発明の第1実施形態にかかる転がり軸受に使用される保持器7の軸方向の断面図である。図3に示すように、本実施形態にかかる転がり軸受では、ターボポンプ100で圧送された冷却流体を利用して、保持器を翼形状にすることで保持器に作用するフープ応力を低減する揚力を発生させることとしている。
図3に示すように、保持器7の断面形状は、保持器7の外径面7aが略直線状となる翼型であり、流体の流動方向上流側に前縁14が位置するように軌道空間内に配置される。したがって、図1に示すように対向配置される2つのアンギュラ玉軸受1は、径方向の面に対して対称に配置されるが、保持器7は同じ方向になるように配置される。
また、中心線17(保持器7の外径面7aと内径面7bから等しい距離にある点を前縁14から後縁15まで繋いだ線)が、前縁14と後縁15を結ぶ翼弦16よりも内輪に位置するように構成することにより、非圧縮性流体であるターボポンプ100による極低温燃料が保持器7を通過して流れることによって、内径方向に揚力Lが発生し、フープ応力を軽減する。
本実施形態にかかる保持器7では、保持器7の外径面7a側の外縁線が略直線状となるように構成することにより、外輪案内方式の保持器7において、外径面が平坦面となって両肩案内が可能となり、保持器の軌道空間内での位置が安定する。
上記構成の保持器に発生する揚力Lは、極低温燃料が保持器を通過して流れることで、クッタ・ジューコフスキーの定理により、内径方向に発生する。また、翼型の単位幅あたりの揚力は、以下の式(1)により算出でき、極低温燃料が保持器を通過している限り、揚力が発生しフープ応力を軽減することができる。
Figure 2016128697
ここで式(1)において、ρは流体である極低温燃料の密度、Uは保持器と流体の相対速度、Γは翼型を囲む循環強さ、Lは発生する揚力をそれぞれ示している。
なお、翼型を囲む循環強さΓは、以下の式(2)に変換される。
Figure 2016128697
ここで式(2)において、aは翼弦長の1/4、bはキャンバーの1/2、αは迎え角、βはキャンバーによる迎え角、dは0.15×aをそれぞれ示している。
なお、上記式(2)に示すように、図3に示す翼弦長(4a)を大きくするほど揚力は大きくなるが、転がり軸受の軸方向寸法よりも小さくし、保持器7の前縁14と後縁15が内輪及び外輪の外側に突出しないように、保持器7が軌道空間内に完全に収納されるようにすることが好ましい。
本実施形態にかかる転がり軸受が、一例として、極低温燃料の密度ρは70.8kg/m3、保持器と流体の相対速度Uは、3500mm/s、翼型を囲む循環強さΓは2×105mm2/sの使用条件で運転される場合について、理論上の揚力を試算する。
保持器7の単位長さ当りに作用する遠心力は30Nとなるが、クッタ・ジューコフスキーの定理により遠心力に対抗する方向(軸受中心方向)に揚力Lとして0.3N作用することとなる。したがって、力の相殺効果により保持器に作用するフープ応力としては、10%軽減することができる。
また、適用される軸受設計及び使用条件においては、およそ5〜20%程度のフープ応力軽減が可能となる。
本実施形態では、保持器の迎え角αは、流体の流れに沿った方向、すなわち0°となっているが、保持器の径方向の動きを転動体によって案内する転動体案内方式の保持器を構成する軸受においては、図4に示す変形例のように、保持器18を、図3と同じ外形とし迎え角αを持たせるような断面形状に構成してもよい。このように構成することにより、より大きい揚力を発生させることができる。
なお、迎え角αを大きくすると、軌道空間を閉塞させ、流体の流動断面積を狭めることとなるため、所定の範囲内にとどめることが好ましい。また、保持器7の最大厚み寸法も同様の理由により、軌道空間の幅に対して、80%程度までにとどめておくことが好ましい。一方で、保持器の軸方向に厚みが変化することにより、部分的に強度のバラツキが生じるため、転がり軸受の用途に応じた強度を確保できるようにしておくことが求められる。
図5及び図6は、さらなる変形例にかかる転がり軸受の部分断面図である。図5の変形例では、揚力発生形状として流体の上流側が前縁となるような流線型の断面形状を有する保持器19、図6の例では、揚力発生形状としてキャンバーがない形状の保持器20としている。これらの例では、保持器は、翼弦と中心線が一致しており、キャンバーが0の断面形状であるため、揚力を発生させるために迎え角αを持つように内輪2と外輪3の間の軌道空間に配置させている。
以上、本実施形態にかかる転がり軸受によれば、軸受側面から高速で通過する極低温燃料の流れvを利用して、遠心力に対抗する中心方向の揚力を発生させることができ、遠心力により発生するフープ応力を軽減することができる。
なお、以上の実施形態は正面あわせのアンギュラ玉軸受について述べたが、本発明はアンギュラ玉軸受に限らず、内輪と外輪との間の軌道面の間に流体が通過する環境下において使用される、保持器を有するあらゆる軸受にも適用可能である。
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
1 :転がり軸受
2 :内輪
3 :外輪
4 :内輪軌道面
5 :外輪軌道面
6 :転動体
7,18,19,20 :保持器
7a :保持器外径面
8,9 :内輪肩部
10 :内輪端面
11,12:外輪肩部
13a :ポケット
14 :前縁
15 :後縁
16 :翼弦
17 :中心線
100 :ターボポンプ

Claims (7)

  1. 外周面に内輪軌道面を有する内輪と、内周面に外輪軌道面を有する外輪と、前記両軌道面の間に転動自在に設けられた複数の転動体と、前記複数の転動体を保持する保持器とを備え、前記内輪と外輪との間の軌道面の間に流体が通過する環境下において使用される転がり軸受において、
    前記保持器は、その断面形状が前記流体の通過によって中心方向の揚力を発生させるような揚力発生形状に構成されていることを特徴とする、転がり軸受。
  2. 前記保持器は、断面形状が、前記流体の上流側が前縁となるような流線型に構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の転がり軸受。
  3. 前記保持器は、外径面が略平坦面に構成され、内径面が内輪側に膨らんだ曲面となるように構成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の転がり軸受。
  4. 前記保持器は、中心線を翼弦線よりも内輪側となるような断面形状に構成されている、請求項1から3のいずれか1つに記載の転がり軸受。
  5. 前記保持器は、外輪案内方式の保持器であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1つに記載の転がり軸受。
  6. 転がり軸受は、アンギュラ玉軸受であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1つに記載の転がり軸受。
  7. 用途が液体ロケットエンジン用ターボポンプ軸受であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の転がり軸受。
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