ところで、特許文献1に開示された表皮一体成形方法においては、インサート成形時には発泡体は未発泡シートであり、成形後に加熱されて発泡するものである。ところが、発泡体は加熱度合等によって発泡状態が変動するため、発泡体の発泡状態を正確に制御することは難しく、製品としてのインサート成形品の全体厚み等の寸法設計が難しいものと解される。また、特許文献2に記載されたインサート成形方法においては、多孔質体を成形時に圧縮し圧縮状態で固定したまま周辺部に樹脂を成形して一体化するものであるから、成形前と成形後の多孔質体そのものの性状が異なる。即ち、得られた成形品における多孔質体の特性は、成形前の圧縮されていない多孔質体の特性と異なることになると考えられる。さらに、特許文献3において前記a)〜c)のように構成されるスペーサは、いずれもスペーサが支持具に支持されており、スペーサ及び支持具を個別に準備し、両者を互いに支持関係にする機構が必要とされる。
本発明は、前記に鑑みなされたもので、優れた断熱性能、防音性能、緩衝性能等を備えた新規な複合成型品と、当該複合成型品を簡易に製造し得る有効な製造方法を提供することを目的としている。
本発明に係る複合成型品は、高分子材料からなる成型体と、前記成型体より弾性を有する発泡体とからなる複合成型品であって、前記発泡体は、少なくともその一部が圧縮された状態を自ら保持可能に構成されており、前記成型体は、前記圧縮された状態の発泡体の少なくとも一部に密着して、前記発泡体の少なくとも一面が露出する状態で前記発泡体と一体成型されてなり、前記圧縮された状態の発泡体は、所定の外的要因が付加されたことを契機として圧縮前の状態に復元する特性を有するものであることを特徴とする。
本発明に係る複合成型品によれば、少なくとも一部が圧縮された状態の発泡体に対して、高分子材料からなる成型体が一体成型されているから、成型時に溶融した高分子材料の流動圧力による発泡体の変形が少なく、発泡体が所定の形状に維持されている。したがって、当該複合成型品は高分子材料の成型体と発泡体との一体成型体ではあるが、寸法精度が高いものとされる。また、圧縮された状態の発泡体が高分子材料による成型体と一体成型されるから、成型時に発泡体に対して高分子材料が含浸することは少ない。したがって、発泡体は、所定の外的要因が付加されると、圧縮前の状態へスムースに復元する。さらに、成型体と発泡体とは、成型によって一体とされているから、両者をクリップ等の機械的手段によって一体とされたものに比べて、密着状態で一体とされており、発泡体が有する断熱性能、防音性能、緩衝性能等が効果的に発揮される。
本発明に係る複合成型品において、前記発泡体は、その圧縮部分が、圧縮前の状態と比較して圧縮方向の厚みが1/2以下となるように圧縮された状態で前記成型体と一体成型されているものとしても良い。
これによれば、発泡体が充分に圧縮された状態で成型体と一体成型されているため、複合成型品の厚みを薄くすることができる。
本発明に係る複合成型品において、前記圧縮された状態の発泡体には、圧縮方向と交差する面に、凹部が形成されているもの、或いは、圧縮方向と交差する面に、凸部が形成されているものとしても良い。
これによれば、発泡体に凹部或いは凸部が形成されていることにより、その表面積が大きくなる。したがって、例えば、当該複合成型品を内燃機関の冷却水流路に配置して冷却水の流れを規制する規制部材に適用する場合、外的要因としての冷却水の吸水速度が増大し、発泡体の全体が圧縮前の状態にスムースに復元する。
本発明に係る複合成型品において、前記成型体は、前記発泡体の圧縮方向と交差する面にのみに密着しているものとしても良い。
これによれば、発泡体の側面には成型体が存在せず発泡体の側端部が成型体により拘束されないので、例えば、当該複合体を前記規制部材に適用すれば、前記復元時に全体が均一に復元され、冷却水の規制面積を大きく確保することができる。
本発明に係る複合成型品において、前記成型体には、前記発泡体の側辺部近傍に、凹所が形成されているものとしても良い。
これによれば、発泡体の側辺部近傍に凹所があるので、例えば、当該複合体を前記規制部材に適用すれば、冷却水の乱流の発生が生じ、或は、水流の剥離損失が増え、これによって水流が弱まり、冷却水の規制効果が向上する。
本発明に係る複合成型品において、前記成型体は、前記圧縮された状態の発泡体の圧縮方向と交差する面に対向する箇所に貫通部が形成されているものとしても良い。
これによれば、例えば、当該複合体を前記規制部材に適用すれば、成型体の貫通部を通じ、冷却水が流れるため、冷却水の吸水が促進されて前記復元が効率的になされる。また、冷却水の交換時における排水の際には排水速度が速くなる。
本発明に係る複合成型品において、前記成型体と前記発泡体とは接着剤を介して結合されているものとしても良い。
これによれば、一体成型による結合に加えて接着剤による結合が付加されるから、成型体と発泡体とはより強固に結合されている。
本発明に係る複合成型品において、前記成型体と前記発泡体とは機械的に結合されているものとしても良い。
これによれば、一体成型による結合に加えて機械的な結合が付加されるから、成型体と発泡体とはより強固に結合されている。
本発明に係る複合成型品において、前記高分子材料は、非水溶性の合成樹脂であり、前記発泡体は、水分と接触することによって圧縮された状態から圧縮前の状態に復元可能なセルロース系スポンジであっても良い。
これによれば、水が前記所定の外的要因として、セルロース系スポンジに作用して、当該セルロース系スポンジからなる発泡体が圧縮前の状態に復元する。したがって、当該複合成型体を水分が接触する場所で用いる場合は、発泡体を復元させるための作業が不要とされる。そして、高分子材料は、非水溶性の合成樹脂であるから、成型体は水による影響を受けずその形状が維持される。
本発明に係る複合成型品において、前記高分子材料は、非水溶性の合成樹脂であり、前記発泡体は、水に溶解するバインダーの含浸によって圧縮状態に保持された発泡ゴムであっても良い。
これによれば、水が前記所定の外的要因として、発泡ゴムに作用してバインダーが溶解し、これによって、当該発泡ゴムからなる発泡体が圧縮前の状態に復元する。したがって、当該複合成型体を水分が接触する場所で用いる場合は、発泡体を復元させるための作業が不要とされる。そして、高分子材料は、非水溶性の合成樹脂であるから、成型体は水による影響を受けずその形状が維持される。
本発明に係る複合成型品において、前記高分子材料は、耐熱性を有する合成樹脂であり、前記発泡体は、熱により軟化又は溶融するバインダーの含浸によって圧縮状態に保持された発泡ゴムであっても良い。
これによれば、熱が前記所定の外的要因として、発泡ゴムに作用してバインダーが軟化又は溶融し、これによって、当該発泡ゴムからなる発泡体が圧縮前の状態に復元する。したがって、当該複合成型体を熱に晒される場所で用いる場合は、発泡体を復元させるための作業が不要とされる。そして、高分子材料は耐熱性を有する合成樹脂であるから、成型体は熱による影響を受けずその形状が維持される。
本発明に係る複合成型品において、前記成型体は、曲面を有する形状に形成されており、前記発泡体は、前記曲面に沿うような状態で前記成型体と一体に成型されているものであっても良い。
これによれば、発泡体は成型時に成型体と一体に成型されているから、成型体が曲面を有する形状であっても、発泡体にしわや変形が生じず、発泡体が成型体の曲面に沿って密着的に一体とされている。
本発明に係る複合成型品において、当該複合成型品は、内燃機関の構成部材であっても良い。
これによれば、内燃機関は発熱や異音の発生源となるから、当該複合成型品を内燃機関の構成部材として用いれば、断熱性能、防音性能、緩衝性能が効果的に発揮される。
そして、内燃機関の構成部材としては、当該内燃機関に設けられる冷却水流路内に配置されて冷却水の流れを規制する規制部材であっても良い。
前記構成部材が前記規制部材である場合、冷却水流路に配置する前は発泡体が圧縮された状態としておいて、当該複合成型品を冷却水流路に挿入して配置するようにすれば、挿入抵抗が小さく、容易に挿入することができる。そして、非圧縮状態に復元した発泡体によって冷却水の流通が規制される。
本発明に係る複合成型品の製造方法は、高分子材料からなる成型体と、前記成型体より弾性を有する発泡体とからなる複合成型品の製造方法であって、圧縮された状態を自ら保持可能且つ所定の外的要因が付加されたときに圧縮前の状態に復元可能な発泡体を前記圧縮状態に加工する加工工程と、圧縮された状態の前記発泡体に対して高分子材料を供給して前記発泡体の一部に密着させるとともに、前記発泡体の少なくとも一面が露出する状態となるように前記発泡体と前記高分子材料による成型体とを一体成型する成型工程と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る複合成型品の製造方法によれば、圧縮された状態の発泡体に対して、高分子材料からなる成型体が一体成型されるから、成型時に溶融した高分子材料の流動圧力が作用しても発泡体が変形し難い。したがって、寸法精度が高い複合成型品を製造することができる。また、圧縮された状態の発泡体が高分子材料による成型体と一体成型されるから、成型時の発泡体に対する高分子材料の含浸が少なく、圧縮前の状態に復元可能な発泡体の部分を多く確保することができる。さらに、成型体と発泡体とは、成型によって一体とされるから、両者をクリップ等の機械的手段によって一体とされたものに比べて、両者を密着的に一体とすることがで、発泡体が有する断熱性能、防音性能、緩衝性能等を効果的に発揮させることができる。
本発明に係る複合成型品の製造方法において、前記加工工程と前記成型工程との間に、前記圧縮された状態の発泡体に接着剤を塗布する工程をさらに備えるようにしても良い。
これによれば、成型体と発泡体とをより強固に結合させることができる。
本発明に係る複合成型品の製造方法において、前記高分子材料は、非水溶性の合成樹脂であり、前記発泡体は、水分と接触することによって圧縮された状態から圧縮前の状態に復元可能なセルロース系スポンジであり、前記成型工程の後に、前記発泡体を水分に接触させて圧縮前の状態に復元させる復元工程をさらに備えるようにしても良い。
これによれば、得られた複合成型品は、前記所定の外的要因としての水分に晒すことによって、圧縮前の状態に簡易に復元される。
本発明に係る複合成型品は、優れた断熱性能、防音性能、緩衝性能等を備える。また、その製造方法によれば、このような優れた性能を有する複合成型品が簡易に製造される。
以下に本発明の実施の形態について、図1〜図13を参照して説明する。図1は本発明に係る複合成型品が適用される内燃機関の一例を概略的に示す。図1に示す内燃機関1は、自動車用エンジンであり、大略的に、シリンダブロック2と、シリンダヘッド3と、シリンダヘッドカバー4と、エンジンカバー5と、チェーンカバー6と、オイルパン7とにより構成される。シリンダヘッド3はシリンダブロック2の上面に締結一体に設置され、シリンダヘッドカバー4はシリンダヘッド3の上面に締結一体に設置され、該シリンダヘッドカバー4の上部を覆うようにエンジンカバー(カバー)5が取付けられる。チェーンカバー6はシリンダブロック2及びシリンダヘッド3の一側部に両者に跨るように締結一体に設置される。そして、オイルパン7は、シリンダブロック2及びチェーンカバー6の下に締結一体に取付けられる。本内燃機関1においては、本発明に係る複合成型品が、後記するようにシリンダブロック2の冷却水流路内に配置されるスペーサ、カバー5及びオイルパン7に適用されている。
本発明の複合成型品の第一の実施形態であって、前記シリンダブロック2に形成された冷却水流路内に配置されるスペーサ(規制部材)について、図2〜図4をも参照して説明する。図2は、自動車用エンジン(内燃機関)におけるシリンダブロック2のウォータジャケット21にスペーサ(規制部材、複合成型品)8を挿入した状態を示している。図2に示すシリンダブロック2は、3気筒の自動車用エンジン1を構成するものであり、3個のシリンダボア20…が隣接状態で直列に連なるように設けられている。2a…はシリンダヘッド3(図1参照)をシリンダブロック2に合体締結させるためのボルト(不図示)用挿通孔である。3個のシリンダボア20…の周囲には、オープンデッキタイプのウォータジャケット(冷却水流路)21が一連に形成されている。シリンダブロック2には、このウォータジャケット21に通じる冷却水(不凍液も含む)導入口2bと冷却水排出口2cとが設けられている。冷却水排出口2cは不図示のラジエータに配管接続され、ラジエータのアウトレット側は、ウォータポンプ(不図示)を介して冷却水導入口2bに配管接続される。これによって、ウォータジャケット21とラジエータとの間で冷却水が循環するように構成される。なお、シリンダヘッド3にもウォータジャケット(不図示)が設けられる場合は、シリンダブロック2のウォータジャケット21と、シリンダヘッド3のウォータジャケットとが連通するよう構成される。この場合は、シリンダブロック2には前記冷却水排出口2cがなくても良く、シリンダヘッド3に冷却水排出口が設けられ、これにラジエータに通じる配管が接続される。
ウォータジャケット21における隣接するシリンダボア20,20間の部分には、互いに接近して対をなすくびれ部21a…が形成されている。くびれ部21a…の溝幅はウォータジャケット21の他の円弧部21bの溝幅より大とされている。そして、ウォータジャケット21の側壁面は、シリンダボア20側の内壁面(以下、内側内壁面と言う)21cとシリンダボア20とは反対側の内壁面(以下、外側内壁面と言う)21dとの両内壁面21c,21dにより構成される。本実施形態のスペーサ8は、図3に示すように、ウォータジャケット21内に、その開口部210から挿入されて配置可能な筒状の形状とされたスペーサ本体80と、このスペーサ本体80の内面80aに一体とされた発泡体81とからなる。スペーサ本体80は高分子材料からなる成型体からなり、図例では非水溶性の合成樹脂の成型体からなる。スペーサ本体80は、平面視において円環状の円環状部801と、各円環状部801間を接続するとともに内側に向かって近接するようにくびれたくびれ形状部802とを備えている。また、発泡体81は、スペーサ本体(成型体)80より弾性を有する発泡体からなり、図例では、スペーサ本体80の内面80aの6箇所に一体に固着されている。発泡体81は、前記固着された面以外は露出している。発泡体81は、ウォータジャケット21に冷却水が流通していない状態では、シート状に圧縮された状態を保持している。発泡体81は、曲面状に形成された円環状部801の内面80aに沿うように一体に成型されている。なお、発泡体81を固着する箇所は適宜変更しても良い。つまり、発泡体81を設ける箇所は、本実施形態のようにスペーサ本体80の円環状部801でなくとも良く、例えば、スペーサ本体80のくびれ形状部802の内面80aに発泡体81を固着しても良い。本発明の発泡体81であれば、円環状部801に比べて曲率の大きいくびれ形状部802であっても、くびれ形状部802の内面80aに沿うように一体に成型することができる。
本発明において、発泡体81としては、冷却水と接触することによって、圧縮された状態から復元可能なセルロース系スポンジからなるものが採用される。ここで、セルロース系スポンジとは、パルプ由来のセルロースと、補強繊維として加えられた天然繊維(例えば、綿等)とからなる天然素材である。セルロース系スポンジは、多孔質の素材であり、言い換えれば連続する気泡を有する素材である。なお、セルロースは、親水基(OH基)を有しており、化学的に水分になじみ易い性質を有する。そして、セルロース系スポンジは、加圧した状態で乾燥させるとセルロース分子間が水素結合して圧縮状態に保持される一方、この状態から水に晒されると水分子がセルロース分子間の水素結合を解離して圧縮状態から復元する特性を有する。また、発泡体81としては、水に溶解するバインダーを含浸させることによって、圧縮状態に固定された発泡ゴムや、熱によって軟化又は溶融するバインダーを含浸させることによって、圧縮状態に固定された発泡ゴム等を採用しても良い。これらの発泡ゴムは、バインダーが水によって溶解し、或いは、熱によって軟化又は溶融すると、バインダーによる固定が解除され、圧縮前の状態に復元するように構成されている。図3において、2点鎖線で示す発泡体81は圧縮された状態を示し、実線で示す発泡体81は非圧縮(圧縮前)の状態に復元した状態を示す。ウォータジャケット21内における発泡体81の状態変化については後記する。発泡体81が復元する側とは反対側に、発泡体81を支持するスペーサ本体80が位置している。
図3は、スペーサ8がシリンダブロック2のウォータジャケット21内に配置された状態を示している。図3は、さらに、シリンダブロック2の上面にシリンダヘッド3が、シリンダブロック2の下面にオイルパン7がそれぞれ一体に締結され、シリンダボア20とオイルパン7間にピストン(作動機構本体)9が組み込まれた状態を示している。スペーサ8は、発泡体81が2点鎖線で示すように圧縮状態に保持された状態でウォータジャケット21内に挿入される。この圧縮状態の発泡体81の厚みとスペーサ本体80の厚みの総和dは、ウォータジャケット21の幅Dより小とされる。したがって、スペーサ8をウォータジャケット21に挿入する際の挿入荷重が小さく、挿入が円滑になされる。シリンダヘッド3は、シリンダヘッドガスケット3aを介してウォータジャケット21の開口部210が閉塞されるようにシリンダブロック2に一体に締結される。この締結状態では、シリンダボア20の上側開口部上に燃焼室3bが位置付けられる。シリンダボア20内には、複数(図例では3個)のピストンリング9a,9b,9cを有するピストン9が、シリンダボア壁20aの内面を摺接してその軸方向に沿って往復動可能に設けられる。このピストン9の往復動は、コンロッド9d及びクランクピン9eを介してクランクシャフト9fの軸回転運動(1点鎖線)に変換される。図3は、ピストン9が上死点にある状態を示している。そして、発泡体81は、ピストン9が上死点にあるときに最も燃焼室3bに近いピストンリング9aの位置よりウォータジャケット21の深さ方向に沿ってクランクシャフト9f側に位置するように設けられている。
前記のように構成されるエンジン(内燃機関)1において、発泡体81が前記セルロース系スポンジからなる場合、シリンダブロック2のウォータジャケット21内に冷却水が流通され、発泡体81が外的要因としての冷却水に晒された状態となる。これによって、発泡体81が2点鎖線で示す圧縮状態から実線で示す非圧縮の状態に復元し、発泡体81のスペーサ本体80に対する固着面(片面)81aとは反対側の面(他面)81a´が、ウォータジャケット21の内側内壁面21cに当接する。この発泡体81の片面81a及び他面81a´は、いずれも圧縮方向と交差する面である。そして、エンジン1の作動に伴い、燃焼室3b内が昇温し、この熱によってシリンダボア壁20aが加熱される。シリンダボア壁20aの温度が高くなり過ぎると、ピストンリング9a,9b,9cに付着するオイルの粘性が下がり、これによってオイルが流出して、ピストン9の前記シリンダボア20内での前記往復摺接運動が円滑になされなくなる。然るに、ウォータジャケット21内には、前記冷却水が流通しているから、シリンダボア壁20aの昇温が抑制され、前記オイルの流出を抑えて、ピストン9の円滑な往復動が維持される。そして、ウォータジャケット21内には、規制部材としてのスペーサ8が配置されているから、ウォータジャケット21内を流通する冷却水の流れ(流量、流速等)を堰き止めるよう規制し、シリンダボア壁20aの温度が適正にコントロールされる。特に、スペーサ8の一部を構成する発泡体81は、スペーサ本体80と内側内壁面21cとの間に介在するから、この部分を流れる冷却水の流通規制が効果的になされる。加えて、発泡体81は、スペーサ本体80に対して前記のような位置関係となるように設けられているから、オイルパン7側のシリンダボア壁20aの過冷却も抑制される。即ち、シリンダボア壁20aにおいて高温になり易い側の冷却性を上げる一方、シリンダボア壁20aにおいて高温になり難い側の冷却性を下げることができ、シリンダボア壁20aを適正に冷却することができる。
発泡体81が発泡ゴムからなり、その発泡ゴムが水に溶解するバインダーの含浸によって圧縮状態に固定されていた場合、ウォータジャケット21内を流通する冷却水が外的要因として発泡体81のバインダーに作用して、バインダーを溶解させる。これによって、バインダーによる固定が解除されて、発泡体81が圧縮前の状態に復元する。また、発泡体81が発泡ゴムからなり、その発泡ゴムが、熱によって軟化又は溶融するバインダーの含浸によって圧縮状態に固定されていた場合、エンジン1の作動に伴うエンジン1の温度上昇による熱が外的要因として発泡体81のバインダーに作用して、バインダーを軟化又は溶融させる。これによって、バインダーによる固定が解除されて、発泡体81が圧縮前の状態に復元する。
なお、発泡体81における前記他面81a´に、図示を省略するゴムシート等の保護シートを貼着しておいても良い。このような保護シートの存在により、ウォータジャケット21内に当該スペーサ8を挿入する際に、ウォータジャケット21の内側内壁面21cの開口縁部による発泡体81の傷つきを防止することができる。また、ウォータジャケット21内に配置された状態における振動による発泡体81の傷つきも防止することができる。
上述のスペーサ(複合成型品)8の製造方法について、図4(a)(b)(c)(d)を参照して説明する。(a)は市場で入手可能な発泡状態のセルロース系スポンジからなる発泡体81を厚み方向に圧縮してシート状態となし、このシート状態に圧縮された発泡体81(2点鎖線)を乾燥する加工工程を示す。この加工工程では、プレス装置100の固定プレス盤101と可動プレス盤102との間に、適宜寸法に裁断された非圧縮状態の発泡体81を配置し、白抜矢印方向に可動プレス盤102を作動させて、固定プレス盤101との間で発泡体81を圧縮する。この圧縮は、圧縮後の発泡体81(2点鎖線)の厚みd1が圧縮前(非圧縮状態)の発泡体81(実線)の厚みd0の1/2以下となるようになされる。また、好適には、発泡体81は、圧縮後の厚みd1が、圧縮前の厚みd0の1/8〜1/12になるように圧縮される。圧縮した状態の発泡体81は、加熱或いは減圧する不図示の乾燥器内で乾燥しても良い。
なお、プレス装置100としては、図例のような固定プレス盤101と可動プレス盤102とからなるものに代えて、プレスローラによるものも採用可能である。この場合、セルロース系スポンジの原材はロール状に巻かれ、プレスローラに連続的に供給して圧縮され、その後適宜寸法に裁断される。
図4(b)は、図4(a)の加工工程で圧縮された発泡体81の片面81aに接着剤82を塗布して(不図示)、発泡体81の表面状態を改質する工程と、この発泡体81と樹脂(高分子材料)rとを一体成型する成型工程を示す。この工程では、発泡体81の片面81aに接着剤(例えば、ホットメルト型接着剤)82を塗布した上で、成型装置200における下型201のキャビティ202の所定位置(発泡体81を位置決め可能な下型201の凹所202a)に配置する。このとき、発泡体81は、接着剤82の塗布面が露出するように配置される。次いで、上型203を型締めし、溶融状態の樹脂rをキャビティ202内に射出してインサート成型する。前記発泡体81の表面状態を改質する工程では、接着剤に代えてプライマーを用いることも可能である。
図4(c)は成型後の脱型工程を示している。この脱型工程を経た後、樹脂によるスペーサ本体(成型体)80に、圧縮状態の発泡体81が一体に形成されたスペーサ(複合成型品)8が得られる。このスペーサ8の発泡体81は、接着剤82が塗布された面以外の面が露出した状態となっている。このスペーサ8においては、スペーサ本体80と、発泡体81とが、一体成型による結合に加えて、接着剤82を介して強固に密着した状態で一体とされる。また、成型時に、圧縮状態の発泡体81には、溶融した樹脂rの流動圧力が作用するが、発泡体81の変形は少なく、発泡体81が所定の形状に維持されている。したがって、当該スペーサ8は樹脂の成型体であるスペーサ本体80とセルロース系スポンジからなる発泡体81との一体成型体ではあるが、寸法精度が高いものとされる。
図4(d)は、圧縮状態の発泡体81を非圧縮前の状態に復元させる復元工程を示す。本実施形態では、この復元工程は、スペーサ8をシリンダブロック2のウォータジャケット21内に挿入して配置し、冷却水をウォータジャケット21内に流通させたときになされる。即ち、冷却水がウォータジャケット21に冷却水導入口2bから導入されて、冷却水がウォータジャケット21を流通すると、スペーサ8のセルロース系スポンジからなる発泡体81が、外的要因としての冷却水に晒され、水分子がセルロース分子間の水素結合を解離して圧縮状態から復元する。この復元によって、発泡体81の片面81aが、ウォータジャケット21内のシリンダボア壁20a側内壁面21cに当接する。スペーサ8をシリンダブロック2のウォータジャケット21に挿入する際には、前記厚みの総和dがウォータジャケット21の幅Dよりも小さくされていることにより、当該スペーサ8の挿入荷重を小さくすることができる。前記一体成型時には、圧縮された状態の発泡体81が樹脂rによるスペーサ本体80と一体成型されるから、発泡体81に対する樹脂rの含浸が少なく、発泡体81の大半部分には樹脂が含浸していない状態とされる。したがって、復元時における含浸樹脂rの影響が少なく、発泡体81は、圧縮前の状態にほぼ近い状態にスムースに復元する。そして、発泡体81として用いられるセルロース系スポンジは天然素材からなるから、安価に入手することができる上に、自然環境に悪影響を及ぼすことなく、廃棄処理等も焼却等によって容易に行うことができる。
前記スペーサ8の製造方法の説明では、発泡体81がセルロース系スポンジからなる例を示したが、発泡体81の材質はセルロース系スポンジに限らない。例えば、発泡体81は、水に溶解するバインダーの含浸によって、圧縮状態に固定された発泡ゴムであっても良い。また、発泡体81は、熱に反応して軟化又は溶融するバインダーの含浸によって、圧縮状態に固定された発泡ゴムであっても良い。前者の場合、スペーサ8が前記と同様にウォータジャケット21内に配置され、冷却水がウォータジャケット21内を流通すると、外的要因としての冷却水によってバインダーが溶解し、バインダーによる固定が解除されて、発泡ゴムが圧縮前の状態に復元する。また、後者の場合、スペーサ8が前記と同様にウォータジャケット21内に配置され、エンジン1が作動すると、バインダーは外的要因としての熱によって軟化又は溶融する。その結果、バインダーによる固定が解除されて、発泡ゴムが圧縮前の状態に復元する。これらのスペーサ8も、図4に示す製造方法と同じ方法で製造され、得られたスペーサ8も、前記例と同様の作用・効果を奏する。そして、これら例に用いられるバインダーには、成型時の金型温度で軟化又は溶融しないものが採用される。
なお、前記製造方法では、接着剤等の塗布により圧縮状態の発泡体81の表面を改質する工程を備えた例について述べたが、インサート成型によって、スペーサ本体(成型体)80と発泡体81とが強固に一体化される場合は、この工程を省略しても良い。つまり、スペーサ本体80と発泡体81とを接着剤を介さずに結合してスペーサ8を構成しても良い。
図1は、本発明に係る複合成型品の他の適用例も示している。即ち、エンジンカバー5は、樹脂の成型体である箱形のカバー本体50と、該カバー本体50の内面に固着一体とされた発泡体51とからなる。カバー本体50は耐熱性樹脂の成型体からなり、発泡体51は熱によって軟化又は溶融するバインダーの含浸によって圧縮状態に固定された発泡ゴムからなる。また、オイルパン7は、樹脂の成型体である箱形のオイルパン本体70と、該オイルパン本体70の外面に固着一体とされた発泡体71とからなる。オイルパン本体70は耐熱性樹脂の成型体からなり、発泡体71は、熱に反応して軟化又は溶融するバインダーの含浸によって、圧縮状態に固定された発泡ゴムからなる。これらエンジンカバー5及びオイルパン7も、図4に示す製造方法と同様の方法で製造される。この場合も、バインダーとして、成型時の金型温度で軟化又は溶融しないものが用いられる。
エンジンカバー5及びオイルパン7は、図4に示す製造方法と同様の方法で製造されるが、復元工程は、次のような方法が考えられる。例えば、脱型時に金型温度を上げることにより、金型を用いて発泡体を加熱し、発泡体を復元しても良い。また、脱型後、発泡体を加熱することにより、発泡体を復元しても良い。さらには、エンジンカバー5及びオイルパン7をエンジン1に組付け後、エンジン1の作動に伴う温度上昇により、発泡体を加熱し、発泡体を復元する工程を実行しても良い。これらの場合、復元工程は、いずれも熱が外的要因として発泡体(発泡ゴム)51,71のバインダーに作用して実行される。エンジン1の作動に伴う温度上昇により復元を行う場合には、エンジンカバー5及びオイルパン7は、エンジン1に組付けるまでは嵩低い状態であるから、保管及び搬送性に優れる。また、発泡体を復元させるために、昇温・加熱処理を実行することも不要とされる。このような適用例においては、エンジン1の軽量化に寄与するとともに、エンジンカバー5或いはオイルパン7に断熱性、緩衝性及び防音性が付与されて、極めて有益である。このような適用例は、エンジンに限らず、断熱性、緩衝性及び防音性が求められる産業機械等の構成部材にも広く採用可能である。
以下、本発明に係る複合成型品の他の実施形態を図5〜図18を参照して説明する。図5〜図12に示す複合成型品8は、前記のような内燃機関の構成部材はもとより、他の産業機械等の構成部材にも適用される。図5は、本発明に係る複合成型品の第二の実施形態を示す。本実施形態の複合成型品8では、圧縮状態の発泡体81が厚み方向に貫通する複数の貫通孔81bを有している。当該複合成型品8は、発泡体81の片面81a及び貫通孔81bの内面に接着剤82を塗布した状態で溶融状態の高分子材料を供給してインサート成型し、発泡体81の片面81aに高分子材料からなる成型体80を一体形成したものである。この場合、成型体80が、発泡体81の貫通孔81bの内面及び片面81aに接着剤82を介して強固に一体とされる。特に、貫通孔81b内にも成型体80の一部が侵入して柱状突部80bを形成するから、成型体80と発泡体81とは、一体成型による結合力に加えて、この柱状突部80bのアンカー効果と、接着剤82の結合力とが相俟って、より強固に一体とされる。そして、発泡体81が、前記と同様の水や熱などの外的要因の作用を受けると、右図に示すように、貫通孔81bが形成された部分を除いて圧縮前の状態に復元する。
図6は、本発明に係る複合成型品の第三の実施形態を示す。本実施形態の複合成型品8では、圧縮状態の発泡体81の片面81aに凹凸81cが形成されている。この凹凸81cは、一方のプレス面に凹凸が面域方向に繰り返すよう形成されたプレス装置(不図示)によって圧縮する際に形成される。当該複合成型品8は、この凹凸81cが形成された片面81aに接着剤82を塗布した状態で溶融状態の高分子材料を供給してインサート成型し、発泡体81の片面81aに高分子材料からなる成型体80を形成したものである。この場合、成型体81が、発泡体81の凹凸81cが形成された片面81aに接着剤82を介して強固に一体とされる。特に、発泡体81の片面81aの表面積は、凹凸81cが形成されていることによって増大するから、成型体80と発泡体81とは、一体成型による結合力に加えて、凹凸81c部分で噛み合うようにして、接着剤82の結合力とも相俟って、より強固に一体とされる。そして、発泡体81が、前記と同様の水や熱などの外的要因の作用を受けると、右図に示すように、圧縮前の状態に復元する。
図7は、本発明に係る複合成型品の第四の実施形態を示す。本実施形態の複合成型品8では、圧縮状態の発泡体81の片面81aに、外的要因としての水や熱などを事前に作用させて発泡薄層81dを形成する。この複合成型品8は、発泡薄層81dが形成された片面81aに高分子材料からなる成型体80をインサート成型したものである。この発泡薄層81dの形成は表面状態の改質に相当する。この場合、成型体80が、発泡体81の片面81aに発泡薄層81dを介して強固に一体とされる。特に、発泡薄層81dは他の部分よりポーラスとなるから、この部分に成型時の高分子材料が含浸する。成型体80と発泡体81とは、一体成型による結合力に加えて、この発泡薄層81dにおける含浸部分のアンカー効果と、接着剤82の結合力とが相俟って、より強固に結合一体とされる。そして、発泡体81が、前記と同様の外的要因の作用を受けると、右図に示すように、圧縮前の状態に復元する。
図8は、本発明に係る複合成型品の第五の実施形態を示す。本実施形態の複合成型品8は、圧縮状態の発泡体81に厚み方向に貫通する複数の貫通孔81bを有している。当該複合成型品8は、図5に示す例と同様に、発泡体81の片面81a及びこの貫通孔81bの内面に接着剤82を塗布した状態で溶融状態の高分子材料を供給してインサート成型し、発泡体81の片面81aに高分子材料からなる成型体80を形成したものである。この場合、下金型201におけるキャビティ202(いずれも、図4参照)の貫通孔81bに臨む部分には貫通孔81bより径大の空所を設けておき、成型時には、貫通孔81bに侵入した高分子材料はこの径大部分にまで拡散し、成型体80に茸状突起80cが形成される。成型体80と発泡体81とは、一体成型による結合力に加えて、この茸状突部80cのアンカー効果と、接着剤82の結合力とが相俟って、より強固に一体とされる。そして、発泡体81が、前記と同様の水や熱などの外的要因の作用を受けると、右図に示すように、貫通孔81bが形成された部分を除いて圧縮前の状態に復元する。
図9は、本発明に係る複合成型品の第六の実施形態を示す。本実施形態の複合成型品8は、圧縮状態の発泡体81の四周部を、高分子材料からなる成型体80が鉤型枠部80dによって取り囲むように、発泡体81と成型体80とがインサート成型により一体とされている。成型時には圧縮状態の発泡体81の片面81aに接着剤82を塗布した状態で溶融状態の高分子材料を供給してインサート成型し、発泡体81の片面81aに高分子材料からなる成型体80を形成したものである。この場合、下金型201におけるキャビティ202(いずれも、図4参照)には鉤型枠部80dに相当する空所を設けておき、成型時には、溶融状態の高分子材料が当該空所に侵入して鉤型枠部80dが形成される。鉤型枠部80dは、発泡体81の四周部を抱持するように取り囲み、成型体80と発泡体81とは、一体成型による結合力に加えて、この鉤型枠部80dによる発泡体81の四周部を取り囲む抱持力と、接着剤82の結合力とが相俟って、より強固に一体とされる。そして、発泡体81が、前記と同様の水や熱などの外的要因の作用を受けると、右図に示すように、鉤型枠部80dにより把持された部分を除いて圧縮前の状態に復元する。なお、鉤型枠部80dによる抱持は、発泡体81の対向する2辺部において行うようにしても良い。
図10〜図12は、本発明に係る複合成型品の第七乃至第九の実施形態を示し、これらの実施形態の複合成型品8は、高分子材料からなる成型体80と発泡体81とが、前記接着剤82によって結合される代わりに、機械的な結合部材を介して結合されていることで共通する。
図10に示す複合成型品8では、金属製或いは樹脂製の断面L形の複数の結合部材10が、圧縮状態の発泡体81の片面81aに固着されている。当該結合部材10の一部片10aは発泡体81の片面81aから垂直に舌片状に突出している。そして、成型体80はこの結合部材10の一部片10aを含む全体を包摂するように発泡体81の片面81aにインサート成型により固着一体とされている。成型体80と発泡体81とは、一体成型による結合力に加えて、前記一部片10aの成型体80に対するアンカー効果によって、より強固に一体とされる。そして、発泡体81が、前記と同様の水や熱などの外的要因の作用を受けると、右図に示すように、圧縮前の状態に復元する。
図11に示す複合成型品8では、図10に示す結合部材10の一部片10aより長い(圧縮状態の発泡体81の厚みより長い)一部片11aを有した断面L形の複数の結合部材11が用いられている。この結合部材11は、圧縮状態の発泡体81に対し、一部片11aが当該発泡体81の他面81a´より片面81a側に突き抜けるように一体に取付けられている。そして、成型体80は、この結合部材11の一部片11aにおける発泡体81の片面81aより突出する部分を包摂するように、発泡体81の片面81aにインサート成型により固着一体とされている。成型体80と発泡体81とは、一体成型による結合力に加えて、前記一部片11aの成型体80に対するアンカー効果によって、より強固に一体とされる。そして、発泡体81が、前記と同様の水や熱などの外的要因の作用を受けると、右図に示すように、結合部材11が取付けられている部分を除いて圧縮前の状態に復元する。
図12に示す複合成型品8では、成型体80と発泡体81との周辺部の適所に、両者に跨るように一体とされ、成型体80と発泡体81をサンドイッチ状態に挟み込む結合部材12が用いられている。結合部材12は、所定幅の板状体であって、両端が同じ方向に折り曲げられた形状(かすがい形状)になっている。成型体80と発泡体81とのインサート成型に際しては、まず、圧縮状態の発泡体81の周辺部の適所に沿うように結合部材12を位置付けた状態で、下金型201におけるキャビティ202(いずれも、図4参照)内に配置する。次いで、高分子材料を発泡体81の片面81aに供給して、成型体80を発泡体81の片面81aに固着一体に成型する。得られた複合成型品8においては、結合部材12が成型体80及び発泡体81の周辺部に両者に跨るように一体とされているから、成型体80及び発泡体81が、一体成型による結合力に加えて、より強固に一体とされる。そして、発泡体81が、前記と同様の水や熱などの外的要因の作用を受けると、右図に示すように、結合部材12が取付けられている部分を除いて圧縮前の状態に復元する。
図13(a)(b)は、本発明に係る複合成型品の第十の実施形態を示す。そして、図13(a)は発泡体が圧縮状態に維持された状態を示し、図13(b)は発泡体が外的要因の作用を受けて圧縮前の状態に復元した状態を示す。この例の複合成型品8を構成する発泡体81も、前記例と同様に、セルロース系スポンジからなるもの、水に溶解するバインダーの含浸によって圧縮状態に固定された発泡ゴムからなるもの、熱により軟化又は溶融するバインダーの含浸によって圧縮状態に固定された発泡ゴムからなるものが採用される。複合成型品8は、図2及び図3に示すエンジン1のウォータジャケット21内に配置され、ウォータジャケット21内を流通する冷却水の流れを規制する規制部材として機能する。当該複合成型品8は、ウォータジャケット21における冷却水導入口2bから冷却水排出口2cまでの最短経路部分に配置されて、この部分での冷却水の流通を堰き止めるべく機能するものである。当該複合成型品8においては、成型体80は、ウォータジャケット21の深さ方向に沿って下向きに先細状で、ウォータジャケット21の深さとほぼ同じ長さの樹脂(高分子材料)製の板状体からなる。成型体80は、長手方向(ウォータジャケット21の深さ方向)に直交する断面視において、矩形状に形成されるとともに、その幅寸法t1が厚みより大きく形成されている。この成型体80の幅方向両側部には圧縮状態の発泡体81,81が一体とされている。本実施形態の複合成型品8も、凹字形に形成された圧縮状態の発泡体81,81を、成型金型のキャビティ内に対向関係で配置し、両発泡体81,81間に溶融状態の樹脂(高分子材料)を供給してインサート成型することによって得られる。凹字形に形成された発泡体81は、両プレス面の一方に凹が、他方のプレス面に凸が、互いに噛み合うように形成されたプレス装置(不図示)によって圧縮する際に形成される。なお、成型体80は、長手方向に直交する断面視において矩形状に限らず、例えば、多角形状でも良いし、円形状でも良い。
当該複合成型品8が配置されるウォータジャケット21の両内壁面21c,21dには、それぞれが対向関係の凹部21ca,21daが形成されており、複合成型品8はこの凹部21ca,21daに嵌り込むようにして、ウォータジャケット21内に位置付けられる。この場合、成型体80の幅寸法t1は、ウォータジャケット21の溝幅寸法t2より大とされ、圧縮状態のセルロース系シポンジ81を含む幅寸法t3は、凹部21ca,21da間の最大幅t4より小とされている。これにより、複合成型品8は、凹部21ca,21da間に嵌り込むように安定した状態で配置される。そして、ウォータジャケット21に冷却水が流通され、或いは、エンジン1の作動に伴いウォータジャケット21内の温度が上昇すると、図13(b)に示すように、冷却水或いは熱が外的要因として発泡体81に作用し、発泡体81が圧縮状態から復元する。この復元によって発泡体81,81が凹部21ca,21daの内面に当接する。これにより、冷却水導入口2bから最短経路で冷却水排出口2cに向かおうとする冷却水の流通が規制される。そのため、冷却水導入口2bから導入された冷却水は矢印aに示すようにウォータジャケット21の略全周を一方向に略一周した後、冷却水排出口2cから排出されることになる。
図14(a)(b)(c)は第十一の実施形態の複合成型品の製造方法を示し、(a)は圧縮状態の発泡体を成型型に配置する工程を、(b)は同発泡体と樹脂とを一体成型する工程を、(c)は脱型して得られた複合成型品を、それぞれ示す。本実施形態の複合成型品は、図2に示すようなシリンダブロック2のウォータジャケット21内の適所に挿入されて配置される部分的な(図2に示すような環状体ではない)スペーサ8を示しており、その平面形状は、ウォータジャケット21の円弧部21bに略沿うような円弧形状とされている。そして、本実施形態のスペーサ8は、図14(c)に示すように、平面形状が円弧形状の樹脂製のスペーサ本体(成型体)80と、その内面(ウォータジャケット21の内側内壁面21cに対向する面)80aに一体とされた前記と同様の圧縮状態の発泡体81とからなる。発泡体81の略中心には、凹部として透孔81eが形成され、また、スペーサ本体80における発泡体81の圧縮方向と交差する面(片面)81aに対向する箇所であって、発泡体81の透孔81eと整合する位置に同径の貫通部80eが形成されている。
このようなスペーサ8は、図14(a)(b)に示すような成型装置200によって製造される。本実施形態の成型装置200を構成する下型201及び上型203は、型締めしたときに円弧形状のキャビティ202を形成するように構成される。即ち、キャビティ202は、スペーサ本体80の四周部を成型する部分202aa及び発泡体81を受容する凹段部分202abを含む凸曲状の下型キャビティ202aと、スペーサ本体80の外面(ウォータジャケット21の外側内壁面21dに対向する面)80a´側部分を成型する上型キャビティ202bとからなる。下型キャビティ202aにおける凹段部分202abは、発泡体81を所望の円弧形状にしたときに受容し得る大きさ及び形状とされている。この凹段部分202abの略中心部(凸曲部の最頂部)には、発泡体81の前記透孔81eに挿通し得る突起202acが形成されている。また、上型キャビティ202bの略中心部(凹曲部の最底部)には、下型201における前記突起202acの先端部を受容し得る穴部202baが形成されている。さらに、上型203には、キャビティ202に樹脂を射出するためのゲート部204が、前記凹段部分202abに対向する位置の上型キャビティ202bに臨むように形成されている。
前記成型装置200を用いて図14(c)に示すスペーサ(複合成型品)8を製造する場合、まず、下型201上に、予め所定大きさに裁断され、且つ、所定位置に透孔81eが形成された方形の発泡体81を配置する。ついで、下型201の前記突起202acに発泡体81の透孔81eを嵌め合せて発泡体81の位置決めをした上で、上型203を下型201に型締めする。突起202acは、この上型203の型締めの際にその先端部が上型203の前記穴部202baに没入し得るように構成されている。そして、上型203の型締めの際、上型キャビティ202bが下型キャビティ202a上に位置付けされている発泡体81の左右側部に作用して、発泡体81を円弧状に変形させる。この状態で、ゲート部204より溶融状態の樹脂rをキャビティ202内に射出してインサート成型する。ゲート部204からの樹脂rの射出の際、発泡体81は樹脂rの射出圧によってさらに円弧状に変形され、これにより発泡体81は前記凹段部202ab内に嵌め入れられ、この状態で前記インサート成型がなされる。
このインサート成型においては、ゲート部204は、前記凹段部分202abに対向する位置の上型キャビティ202bに臨むように形成されているから、樹脂rの射出圧は発泡体81の片面81aに直接作用し、発泡体81の凹段部202ab内への嵌め入れが的確になされる。しかも、発泡体81は、透孔81eと突起202acとの嵌め合せによって位置決めがなされているから、樹脂rのキャビティ202内での流動圧によって位置ずれを生じる懸念がない。さらに、この実施形態では、スペーサ本体(成型体)80が、発泡体81の圧縮方向と交差する面(片面)81aのみに密着するように成型装置200が構成されているから、前記樹脂rの射出圧や流動圧が発泡体81の側部に作用せず、これによっても発泡体81の位置ずれが生じる懸念がない。
なお、この場合も、発泡体81の片面81aに、前記と同様の接着剤82を塗布し、或いは図7に示すような発泡薄層81dを形成することにより、表面状態を改質しておくことはもとより可能である。また、図例では発泡体81が前記と同様にセルロース系スポンジからなることを示しているが、前記した他の発泡体も採用可能である。これは、以下の実施形態でも同様である。
成型が終了し、脱型がなされると、図14(c)に示すように、スペーサ本体80に対し発泡体81が所定の位置に確実に一体化されたスペーサ8が得られる。符号80fはゲートカット残りであり、図では誇張して示しているが、実際の製品では、ほとんど視覚されないように仕上げ加工がなされる。得られたスペーサ8は、図2及び図3に示すようなシリンダブロック2に設けられるウォータジャケット21の円弧部21bの適所に配置される。そして、冷却水がウォータジャケット21に流通されると、前記と同様に発泡体81が圧縮前の状態に復元して、他面81a´がウォータジャケット21の内側内壁面21cに当接し、スペーサ本体80と共にウォータジャケット21内を流通する冷却水の規制を行う。本実施形態では、発泡体81に形成された透孔81eとスペーサ本体80に成型時に突起202acによって形成された貫通部80eとが連通しているので、発泡体81の吸水速度が増大し、発泡体81の全体が圧縮前の状態にスムースに復元し易くなる。また、透孔81e及び貫通部80eを通じて冷却水が流れるため、冷却水の発泡体81による吸水が促進されて前記復元が効率的になされる。さらに、冷却水の交換時における排水の際には排水速度が速くなり、メンテナンス上の利点も得られる。また、スペーサ本体80は、発泡体81の圧縮方向と交差する面(片面)81aのみに密着しているため、発泡体81は圧縮前の状態に復元する際、その全体が均一に復元し、冷却水の規制面積を大きく確保することができる。
図15(a)(b)(c)は第十二の実施形態の複合成型品の製造方法を示し、(a)は圧縮状態の発泡体を成型型に配置する工程を、(b)は同発泡体と樹脂とを一体成型する工程を、(c)は脱型して得られた複合成型品を、それぞれ示す。本実施形態の複合成型品も、図14に示す例と同様に部分的なスペーサ8であり、その平面形状は、ウォータジャケット21の円弧部21bに略沿うような円弧形状とされている。そして、本実施形態では、発泡体81の他面81a´から厚み方向に凹む凹穴81fが凹部として形成されている。また、成型装置200における下型キャビティ202aの凹段部分202abには、この凹穴81e´に嵌り込み得る小突起202adが形成されている。さらに、上型キャビティ202bには、図14の穴部202baに代え、型締め脱型方向に沿った複数の突起202bbが形成されている。この突起202bbの突出高さは、スペーサ本体80の前記型締め脱型方向に沿った厚みと略等しくなるように設定されている。その他の構成は図14に示す例と同様であるので、以下では、図14に示す例と共通する部分に同一の符号を付してその説明は割愛し、異なる部分について説明する。
本実施形態の成型装置200を用いて図15(c)に示すスペーサ(複合成型品)8を製造する場合、まず、下型201上に、凹穴81fが形成された方形の発泡体81を配置する。ついで、下型201の前記小突起202adに発泡体81の凹穴81fを嵌め合せて発泡体81の位置決めをした上で、上型203を下型201に型締めする。この上型203の型締めの過程で、上型キャビティ202bに形成された複数の突起202bbが下型キャビティ202a上に位置付けされている発泡体81に当接する。上型203の型締め完了時点では、突起202bbの作用を受けて発泡体81が円弧状に変形されつつ前記凹段部202ab内に押し込まれるようにして嵌め入れられる。このようにして、発泡体81が凹段部202abに完全に嵌め入れられ、突起202bbが発泡体81の片面81aに押し付けられた状態で前記と同様に樹脂rのインサート成型がなされる。したがって、発泡体81は前記凹段部202abにしっかりと固定された状態で、樹脂rの射出圧及びキャビティ202内での流動圧によってもずれることなく、前記インサート成型が的確になされる。
成型が終了し、脱型がなされると、図15(c)に示すように、スペーサ本体80に対し発泡体81が所定の位置に確実に一体化されたスペーサ8が得られる。得られたスペーサ8は、前記同様にウォータジャケット21の円弧部21bの適所に配置され、発泡体81が圧縮前の状態に復元して他面81a´がウォータジャケット21の内側内壁面21cに当接し、スペーサ本体80と共にウォータジャケット21内を流通する冷却水の規制を行う。本実施形態では、発泡体81に形成された凹穴81fにより、発泡体81の表面積が大きくなり、これにより吸水速度が増大し、発泡体81の全体が圧縮前の状態にスムースに復元し易くなる。また、上型キャビティ202bに形成された複数の突起202bbによって、スペーサ本体80に前記厚み方向に貫く貫通部80gが形成されるから、この貫通部80gを通じて冷却水が流れるため、冷却水の発泡体81による吸水が促進されて前記復元が効率的になされる。さらに、冷却水の交換時における排水の際には排水速度が速くなり、メンテナンス上の利点も得られる。
なお、本実施形態における上型キャビティ202bに形成された突起202bbの形成位置や個数は図例に限られるものではない。また、この突起202bbは、図14や、後記する図16及び図17に示す例にも適用可能である。
図16(a)(b)(c)は第十三の実施形態の複合成型品の製造方法を示し、(a)は圧縮状態の発泡体を成型型に配置する工程を、(b)は同発泡体と樹脂とを一体成型する工程を、(c)は脱型して得られた複合成型品を、それぞれ示す。本実施形態の複合成型品も、図14に示す例と同様に部分的なスペーサ8であり、その平面形状は、ウォータジャケット21の円弧部21bに略沿うような円弧形状とされている。そして、本実施形態では、発泡体81の他面81a´から突出する凸部81gが形成され、成型装置200における下型キャビティ202aの凹段部分202abには、この凸部81gを受容する穴部202aeが形成されている。その他の構成は図14に示す例と同様であるので、以下では、図14に示す例と共通する部分に同一の符号を付してその説明は割愛し、異なる部分について説明する。
本実施形態の成型装置200を用いて図16(c)に示すスペーサ(複合成型品)8を製造する場合、まず、下型201上に、凸部81gが形成された方形の発泡体81を配置する。ついで、下型201の前記穴部202aeに発泡体81の凸部81gを嵌め入れて発泡体81の位置決めをした上で、上型203を下型201に型締めする。そして、上型203の型締めの際、上型キャビティ202bが下型キャビティ202a上に位置付けされている発泡体81の左右側部に作用して、発泡体81を円弧状に変形させる。この状態で、ゲート部204より溶融状態の樹脂rをキャビティ202内に射出してインサート成型する。ゲート部204から樹脂rの射出の際、発泡体81は樹脂rの射出圧によってさらに円弧状に変形され、これにより発泡体81は前記凹段部202ab内に嵌め入れられ、この状態で前記インサート成型がなされる。
成型が終了し、脱型がなされると、図16(c)に示すように、スペーサ本体80に対し発泡体81が所定の位置に確実に一体化されたスペーサ8が得られる。得られたスペーサ8は、前記同様にウォータジャケット21の円弧部21bの適所に配置され、発泡体81が圧縮前の状態に復元して、スペーサ本体80と共にウォータジャケット21内を流通する冷却水の規制を行う。本実施形態では、発泡体81に形成された凸部81gにより、発泡体81の表面積が大きくなり、これにより吸水速度が増大し、発泡体81の全体が圧縮前の状態にスムースに復元し易くなる。
図17(a)(b)(c)は第十四の実施形態の複合成型品の製造方法を示し、(a)は圧縮状態の発泡体を成型型に配置する工程を、(b)は同発泡体と樹脂とを一体成型する工程を、(c)は脱型して得られた複合成型品を、それぞれ示す。本実施形態の複合成型品も、図14に示す例と同様に部分的なスペーサ8であるが、円弧状のスペーサ本体80の外面(図2及び図3におけるウォータジャケット21の外側内壁面21dに対向する面)80a´に発泡体81が一体とされる。発泡体81の略中心には、凹部としての透孔81eが形成され、また、スペーサ本体80における発泡体81の圧縮方向と交差する面(片面)81aに対向する箇所であって、発泡体81の透孔81eと整合する位置に同径の貫通部80eが形成されている。この場合、成型装置200の下型201及び上型203によって構成されるキャビティ202の基本的形状が図14〜図16に示す例と異なる。即ち、下型201には、凹曲状の下型キャビティ202aが形成され、この下型キャビティ202aは、スペーサ本体80の四周部を成型する部分202aa及び発泡体81を受容する凹段部分202abを含む。また、上型203にはスペーサ本体80の外面側部分を成型する凸曲状の上型キャビティ202bが形成されている。下型201の凹段部分202abの略中心部(凹曲部の最底部)には、発泡体81の前記透孔81eに挿通し得る突起202afが形成されている。また、凸曲状上型キャビティ202bの略中心部(凸曲部の最頂部)には、下型201の前記突起202afの先端部を受容し得る穴部202baが形成されている。さらに、上型203には、キャビティ202に樹脂を射出するためのゲート部204が、前記凹段部分202abに対向する位置の上型キャビティ202bに臨むように形成されている。その他の構成は、図14に示す例と同様であるから、図14の例と共通する部分には同一の符号を付してその説明は割愛し、以下では異なる部分について説明する。
前記成型装置200を用いて図17(c)に示すスペーサ(複合成型品)8を製造する場合、まず、下型201における下型キャビティ202a上に発泡体81を配置し、発泡体81を下向きの円弧状に変形させながら、前記突起202afに発泡体81の透孔81eを嵌め合せる。ついで、発泡体81を凹段部分202abに押し込むようにして、発泡体81を凹段部分202abに位置決めをした上で、上型203を下型201に型締めする。突起202afは、この上型203の型締めの際にその先端部が上型203の前記穴部202bbに没入し得るように構成されている。この状態で、ゲート部204より溶融状態の樹脂rをキャビティ202内に射出してインサート成型する。ゲート部204からの樹脂rの射出の際、発泡体81は射出圧によって凹段部分202ab内に安定的に嵌め入れられ、この状態で前記インサート成型がなされる。
このインサート成型においては、ゲート部204は、前記凹段部分202abに対向する位置の上型キャビティ202bに臨むように形成されているから、樹脂rの射出圧は発泡体81の片面81aに直接作用し、発泡体81の凹段部202ab内への嵌め入れがより安定した状態とされる。しかも、発泡体81は、透孔81eと突起202afとの嵌め合せによって位置決めがなされているから、樹脂rのキャビティ202内での流圧によって位置ずれを生じる懸念がない。さらに、この実施形態でも、スペーサ本体(成型体)80が、発泡体81の圧縮方向と交差する面(片面)81aにのみに密着するように成型装置200が構成されているから、前記樹脂rの射出圧や流動圧が発泡体81の側部に作用せず、これによっても発泡体81の位置ずれが生じる懸念がない。
成型が終了し、脱型がなされると、図17(c)に示すように、スペーサ本体80に対し発泡体81が所定の位置に確実に一体化されたスペーサ8が得られる。得られたスペーサ8は、図2及び図3に示すようなシリンダブロック2に設けられるウォータジャケット21の円弧部21bの適所に配置される。この場合、発泡体81は前記ウォータジャケット21の外側内壁面21dに対向するように位置付けられる。そして、冷却水がウォータジャケット21に流通されると、発泡体81が圧縮前の状態に復元して他面81a´が前記外側内壁面21dに当接し、スペーサ本体80と共にウォータジャケット21内を流通する冷却水の規制を行う。本実施形態では、発泡体81に形成された透孔81eとスペーサ本体80に成型時に突起202afによって形成された貫通部80eとが連通しているので、発泡体81の吸水速度が増大し、発泡体81の全体が圧縮前の状態にスムースに復元し易くなる。また、透孔81e及び貫通部80eを通じて冷却水が流れるため、冷却水の発泡体81による吸水が促進されて前記復元が効率的になされる。さらに、冷却水の交換時における排水の際には排水速度が速くなり、メンテナンス上の利点も得られる。
図18(a)(b)(c)(d)は、図14(a)における矢視Y−Y線断面図に対応する変形例をそれぞれ示す。これらの例のスペーサ8は、樹脂射出用のゲート部204(図14等参照)からの樹脂の射出圧が発泡体81に直接作用しないようにして成型されたものである点で共通する。(a)(b)(c)の例のスペーサ8は、それぞれのゲートカット残り部80fからも理解されるように、スペーサ本体80の側辺部に位置し、且つ、発泡体81の片面81aに平行に向くように位置付けられたゲート部204より樹脂を射出して得たものである。また、(d)の例のスペーサ8は、そのゲートカット残り部80fからも理解されるように、スペーサ本体80の側辺部外面80a´に直交し発泡体81の外側に位置付けられたゲート部204より樹脂を射出して得たものである。これらの例では、樹脂の射出圧が発泡体81に直接作用しないので、発泡体81にダメージが生じ難く、その形状が維持される。
また、図18(a)(b)の例では、スペーサ本体80における内面80aであって、発泡体81の側辺部近傍に、厚み方向に凹む凹所80hが形成されている。(a)の例の凹所80hは凹段部状に、(b)の例の凹所80hは凹溝状に、それぞれ形成されている。そして、これらの例では、前記ゲート部204が、スペーサ本体80における凹所80hが形成されている部分の側辺部に位置するように設けられている。(a)(b)の例では、発泡体81の側辺部近傍のスペーサ本体80に凹所80hがあるので、ウォータジャケット21内に配置された状態では、冷却水の乱流の発生が生じ、或は、水流の剥離損失が増え、これによって水流が弱まり、冷却水の規制効果が向上する。また、(a)(b)の例のスペーサ8を成型する過程では、ゲート部204が設けられる位置とも相俟って、樹脂の射出圧や流動圧が発泡体81によりかかり難くなり、発泡体81にダメージが生じ難く、その形状がより安定的に維持される。また、図18(a)(b)の例では、凹所80hは、発泡体81を間に挟んで上側及び下側に、スペーサ本体80の左右方向に沿って凹溝状に形成されているが、これに限らない。例えば、発泡体81を間に挟んでスペーサ本体80の左右両側(冷却水流路の流れ方向両側)に、凹所80hを形成しても良い。この場合、凹所80hは、上下方向に沿った凹溝状に形成される。
なお、発泡体81を構成するセルロース系スポンジとして、種々の種類のものが挙げられるが、特に限定されない。例えば、気泡の大きさが非常に小さい微粒品、気泡の大きさが小程度の小粒品、気泡の大きさが中程度の中粒品のいずれを用いても良い。具体的には、気泡の大きさ(径)が0.1〜5mm程度のセルロース系スポンジを用いても良い。これらの気泡の大きさはセルロース系スポンジの作製過程で使用される結晶ぼう硝の粒度によって決定される。また、セルロース系スポンジは、セルロースと補強繊維とからなるものに限らず、セルロース単独で構成されるものであっても良い。また、セルロース系スポンジとは、セルロース自体からなるスポンジの他、圧縮状態を保持できる程度にセルロースの水酸基を残したセルロース誘導体、例えば、セルロースエ−テル類、セルロースエステル類等からなるスポンジ、あるいはこれらの混合物からなるスポンジのいずれかから選ばれるものであっても良い。さらに、セルロース系スポンジからなる発泡体81の片面81aとは反対側の面に、樹脂、金属或いはゴムからなる保護材(不図示)を全面或いは部分的に被着一体に設けても良い。
また、実施形態では、発泡体81が成型体80の片面に一体に形成されている例について述べたが、成型体80の両面に発泡体81を一体に設けても良い。さらに、成型体80の形状も図例のものに限らず、曲面や平坦面等を含む種々の形状が採用される。発泡体81は、成型体80の形状に沿うように一体とされる。複合成型品8の適用例として、エンジンのウォータジャケット内に配置される冷却水の規制部材、エンジンカバー、オイルパンを例示したが、他の産業機械、電子機器、建築資材等において、断熱性、緩衝性及び防音性が求められる構成部材にも好ましく採用される。さらに、圧縮された状態の発泡体を復元する外的要因は、熱、水に限らない。例えば、ある特定の液体や気体にだけ反応して、圧縮された状態から復元する発泡体であれば、所定の外的要因は特定の液体や気体となる。さらに、圧縮された状態の発泡体の復元度合いは、100%でなくても良く、複合成型品に求められる寸法や性能に応じて、発泡体の復元度合いを変更しても良い。さらに、成型体80を構成する高分子材料としては、樹脂以外にゴムも用いられる。さらにまた、本発明の複合成型品の第一の実施形態であるスペーサが適用される内燃機関として、3気筒のエンジンを例示したが、これに限らず他の気筒数のエンジンにも適用可能である。