JP2016125699A - 恒温容器およびその作製方法 - Google Patents

恒温容器およびその作製方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2016125699A
JP2016125699A JP2014265320A JP2014265320A JP2016125699A JP 2016125699 A JP2016125699 A JP 2016125699A JP 2014265320 A JP2014265320 A JP 2014265320A JP 2014265320 A JP2014265320 A JP 2014265320A JP 2016125699 A JP2016125699 A JP 2016125699A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
temperature
heat
layer
heat exchange
allowable limit
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2014265320A
Other languages
English (en)
Inventor
輝心 黄
Hwisim Hwang
輝心 黄
別所 久徳
Hisatoku Bessho
久徳 別所
浦山 雅夫
Masao Urayama
雅夫 浦山
夕香 内海
Yuka Utsumi
夕香 内海
雄一 上村
Yuichi Uemura
雄一 上村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sharp Corp
Original Assignee
Sharp Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sharp Corp filed Critical Sharp Corp
Priority to JP2014265320A priority Critical patent/JP2016125699A/ja
Publication of JP2016125699A publication Critical patent/JP2016125699A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Air Conditioning Control Device (AREA)

Abstract

【課題】蓄熱材が過度に機能することで、対象物の温度が許容限界温度を超えてオーバーシュートするのを防止できる恒温容器およびその作製方法を提供する。【解決手段】許容限界温度が設定された対象物の温度を維持する温度維持層130および温度維持層130と熱交換する熱交換層120を設計し、その設計では、温度維持層130の温度が初期設定温度から許容限界温度に至るための第1の熱量が、熱交換層120の温度が初期設定温度から許容限界温度に至るまでの第2の熱量以上になるように算出するステップと、少なくとも2層以上の蓄熱層の温度をそれぞれ初期温度に維持するステップと、外部に面した外側断熱層110の内側に、外側断熱層側に熱交換層120を配置し、対象物側に温度維持層130を配置することで2層以上の蓄熱層を設けるステップと、を行なう。【選択図】図1

Description

本発明は、対象物の温度を維持する恒温容器およびその作製方法に関する。
従来、品質保持のために温度管理を要する商品等が輸送される際には、商品に応じた温度範囲に管理されている。例えば、管理温度に冷却された蓄冷材を恒温ボックスに配置し、その恒温ボックスに商品を収容することで、商品の保冷が可能になる。
特許文献1は、長時間にわたって食品や薬品等を保温又は保冷可能な恒温ボックスを開示している。この恒温ボックスは、内箱が、外箱内に設けられ、第1蓄冷材が内箱の外周部に配置されている。そして、第1蓄冷材の外周部には、第2蓄冷材が配置され、外気の温度が所定の範囲内の温度よりも高いか低いかに応じて第1蓄冷材と第2蓄冷材の互いに対する温度の高低が決められている。
特開平9−68376号公報
しかしながら、上記のような複数温度帯の蓄熱材を用いた恒温ボックスにおいては、例えば対象物を保冷しようとする場合、外側に配置した温度の低い蓄熱材の量が多すぎると、対象物の温度が下限温度よりも低くなるおそれがある。一方、対象物を保温しようとする場合には、外側に配置した温度の高い蓄熱材の量が多すぎると、対象物の温度が上限温度よりも高くなるおそれがある。
これらは、内側に配置した蓄熱材の初期設定温度と庫内限界温度から求まる顕熱量と外側に配置した蓄熱材の初期設定温度と庫内限界温度から求まる顕熱量の比較設計不足により庫内温度がオーバーシュート(限界温度突破)することに起因する。図19(a)、(b)のグラフは、それぞれ対象物の温度が下方または上方にオーバーシュートしたときの温度変化を示している。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、蓄熱材が過度に機能することで、対象物の温度が許容限界温度を超えてオーバーシュートするのを防止できる恒温容器およびその作製方法を提供することを目的とする。
(1)上記の目的を達成するため、本発明の恒温容器の作製方法は、対象物の温度を維持する恒温容器の作製方法であって、少なくとも2層以上の蓄熱層として、許容限界温度が設定された対象物の温度を維持する温度維持層および前記温度維持層と熱交換する熱交換層を設計し、前記設計では、前記温度維持層の温度が初期設定温度から許容限界温度に至るための第1の熱量が、前記熱交換層の温度が初期設定温度から許容限界温度に至るまでの第2の熱量以上になるように算出するステップと、前記少なくとも2層以上の蓄熱層の温度をそれぞれ初期温度に維持するステップと、外部に面した外側断熱層の内側に、前記外側断熱層側に前記熱交換層を配置し、前記対象物側に前記温度維持層を配置することで前記2層以上の蓄熱層を設けるステップと、を行なうことを特徴としている。
このように熱交換層および温度維持層が設計されていることで、作製された恒温容器は、対象物の温度が許容限界温度を超えてオーバーシュートするのを防止できる。その一方で、高い温度維持効果が得られるように熱交換層および温度維持層が設計された恒温容器を作製できる。
(2)また、本発明の恒温容器の作製方法は、前記第1の熱量として、初期設定温度と前記許容限界温度との温度差に対応する前記温度維持層の顕熱量を含め、前記第2の熱量として、初期設定温度と前記許容限界温度との温度差に対応する前記熱交換層の顕熱量を含めることを特徴としている。これにより、対象物の温度が許容限界温度を超えてオーバーシュートするのを防止できる。
(3)また、本発明の恒温容器の作製方法は、前記第1の熱量として、さらに前記熱交換層が初期設定温度から前記許容限界温度になるまで外気との間で交換する熱量を含めることを特徴としている。これにより、外気との交換熱量を考慮して高い温度維持効果が得られ、かつ対象物の温度のオーバーシュートを防止可能な恒温容器を作製できる。
(4)また、本発明の恒温容器の作製方法は、前記第1の熱量として、前記温度維持層が初期設定温度から前記許容限界温度になるまで前記対象物との間で交換する熱量を含めることを特徴としている。これにより、対象物との交換熱量を考慮して高い温度維持効果が得られ、かつ対象物の温度のオーバーシュートを防止可能な恒温容器を作製できる。
(5)また、本発明の恒温容器の作製方法は、前記温度維持層の内側に内部空間に面して設けられた内側断熱層を設けるステップを更に行ない、前記第1の熱量として、前記温度維持層が初期設定温度から前記許容限界温度になるまで前記内側断熱層との間で交換する熱量を含めることを特徴としている。これにより、内側断熱層を設けることで、対象物の温度維持について、更に厳密な管理のできる熱交換層および温度維持層の設計が可能となる。
(6)また、本発明の恒温容器の作製方法は、前記熱交換層と前記温度維持層との間に1以上の中間断熱層を設けるステップを更に行ない、前記第1の熱量として、前記温度維持層が初期設定温度から前記許容限界温度になるまで前記中間断熱層との間で交換する熱量および前記熱交換層が初期設定温度から前記許容限界温度になるまで前記中間断熱層との間で交換する熱量を含めることを特徴としている。これにより、中間断熱層を設けることで、対象物の温度維持について、更に厳密な管理のできる熱交換層および温度維持層の設計が可能となる。
(7)また、本発明の恒温容器の作製方法は、前記熱交換層を形成する蓄熱材および前記温度維持層を形成する蓄熱材は、複数の層を形成し、前記複数の層それぞれの層内の前記蓄熱材のいずれかの隙間の位置のうち一か所以上が隣り合う他の層内の前記蓄熱材の隙間の位置と一致しないようにずらして配置することを特徴としている。これにより、蓄熱材の隙間から熱が漏れるのを防止できる。
(8)また、本発明の恒温容器の作製方法は、前記許容限界温度は、許容される最低の温度であり、前記熱交換層の初期温度は、前記許容限界温度より低く、前記温度維持層の初期温度は、前記許容限界温度より高く設定され、前記対象物の冷蔵のために用いられることを特徴としている。これにより、電力を利用せずに、例えば食材や飲料等の対象物を適切な温度で冷蔵した状態で維持することができる。
(9)また、本発明の恒温容器の作製方法は、前記許容限界温度は、許容される最高の温度であり、前記熱交換層の初期温度は、前記許容限界温度より高く、前記温度維持層の初期温度は、前記許容限界温度より低く設定され、前記対象物の保温のために用いられることを特徴としている。これにより、対象物を適切な温度で保温した状態で維持することができる。
(10)また、本発明の恒温容器は、対象物の温度を維持する恒温容器であって、外部空間に面して設けられた外側断熱層と、少なくとも2層以上の蓄熱層を備え、前記2層以上の蓄熱層には、前記断熱層の内側に設けられた熱交換層と、前記熱交換層の内側に設けられ、許容限界温度が設定された対象物を収容する内部空間の温度を維持する温度維持層と、を含み、前記熱交換層および前記温度維持層は、前記温度維持層の温度が初期設定温度から許容限界温度に至るための第1の熱量が、前記熱交換層の温度が初期設定温度から許容限界温度に至るまでの第2の熱量以上になるように算出されていることを特徴としている。これにより、対象物の温度が許容限界温度を超えてオーバーシュートするのを防止できる。
本発明によれば、恒温容器において蓄熱材が過度に機能することで、対象物の温度が許容限界温度を超えてオーバーシュートするのを防止できる。
第1の実施形態の恒温容器を示す断面図である。 代表的な各蓄熱材の相転移温度を示す表である。 蓄熱材に用いられる各成分の相転移温度を示す表である。 蓄熱材に用いられる各成分の相転移温度を示す表である。 蓄熱材に用いられる各成分の相転移温度を示す表である。 蓄熱材に用いられる各成分の相転移温度を示す表である。 恒温容器を作製する一工程を示す斜視図である。 (a)、(b)、(c)それぞれ第2の実施形態の恒温容器の例を示す断面図である。 (a)、(b)、(c)、(d)それぞれ第3の実施形態の恒温容器の例を示す断面図である。 (a)、(b)、(c)それぞれ第3の実施形態の恒温容器の例を示す断面図である。 実施例1の結果を示すグラフである。 実施例2のシミュレーション結果を示すグラフである。 実施例2の条件における比較例のシミュレーション結果を示すグラフである。 実施例3のシミュレーション結果を示すグラフである。 実施例4のシミュレーション結果を示すグラフである。 実施例5のシミュレーション結果を示すグラフである。 実施例6のシミュレーション結果を示すグラフである。 実施例7のシミュレーション結果を示すグラフである。 (a)、(b)それぞれ対象物の温度がオーバーシュートしたときの温度変化を示すグラフである。
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
[第1の実施形態]
(恒温容器の構成)
図1は、第1の実施形態の恒温容器100を示す断面図である。恒温容器100は、外側断熱層110、熱交換層120および温度維持層130を備え、中央に形成された内部空間S0に温度維持の対象物を収容することで、対象物の温度を維持するために用いられる。対象物は、許容限界温度が設定されている。
外側断熱層110は、外部空間に面して設けられており、熱交換層120が外気と直接に熱交換し難いように、互いを断熱している。断熱材の材料は、輸送ボックス、建築、冷蔵庫等に一般的に用いられる材料であればよく、例えば、真空断熱材、ウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ユリアフォーム、セルロースファイバー、セラミックファイバー、グラスウール、ロックウールなどが望ましい。その他、熱伝導率が0.06W/(m・K)以下であれば、上記の材料以外であってもよい。
熱交換層120は、第1の蓄熱材で形成され、断熱層の内側に設けられている。熱交換層120は、冷却または加熱のために温度維持の対象物の許容限界温度を超えた初期温度に設定される。また、第1の蓄熱材の相転移温度は、そのような初期温度に近い方が好ましい。
温度維持層130は、第2の蓄熱材で形成され、熱交換層120の内側に設けられ、温度維持の対象物の許容限界温度範囲内に初期温度が設定される。温度維持層130は、熱交換層120と熱交換しつつ、対象物を収容する内部空間S0の温度を維持する。第2の蓄熱材は対象物を管理したい狙いの温度に相転移温度を有するものが好ましい。
なお、図1では、熱交換層120および温度維持層130がそれぞれ連続した一体の層として表示されているが、実際には必ずしも一体である必要はない。図8についても同様である。
(蓄熱材の材料)
熱交換層120および温度維持層130には、求められる機能に応じてそれぞれに適した蓄熱材を用いてもよいし、互いに同じ蓄熱材を用いてもよい。図2は、代表的な各蓄熱材の相転移温度を示す表である。例えば、温度維持層130には、対象物の管理温度範囲に相転移温度を有する蓄熱材を用い、熱交換層120には、冷蔵用であれば温度維持層130より低い相転移温度を有する蓄熱材、保温用であれば温度維持層130より高い相転移温度を有する蓄熱材を用いることができる。
図3〜6は、蓄熱材に用いられる各成分の相転移温度を示す表である。蓄熱材は、図2に示すような代表的なものに限らず、管理温度に応じた成分の組合せで設計されたものであってもよい。
(対象物の許容限界温度)
温度維持の対象物には、電気的な温度制御に適さず、一定量に対して個別に管理が必要になるものが好ましく、輸送物が適している。輸送時に恒温容器を用いることで、それぞれの許容限界温度の範囲を有する対象物を個別の温度管理が可能な恒温容器に収容し、輸送先まで温度管理することができる。
そのような輸送物には、生鮮食品、乳製品、飲料、医療用の臓器などが挙げられる。生鮮食品の鮮度を保持するためには、輸送時の厳密な温度管理が有効であり、さらに野菜や果物はその種類ごと、肉や魚にもそれぞれ最適な温度帯がある。例えば、野菜では、ほうれん草は0〜5℃、レタスは0〜4℃、インゲンは2〜8℃、トマト(完熟)は4〜8℃、が最適とされている。
果物では、イチゴは−1〜2℃、バナナは12〜13℃、桃は0〜7℃、アンズは0〜3℃、スイカは2〜4℃、サクランボは0〜4℃、マンゴーは7〜10℃が最適とされ、肉(非冷凍)であれば0〜5℃、魚(非冷凍)は−7〜0℃の温度管理が必要とされる。
また、生鮮食品に限らず、乳製品であれば0〜4℃、ワインや日本酒(冷酒)であれば4〜15℃での輸送が品質劣化を防ぐために必要である。さらに、医療関係であれば、さらに厳密な温度管理による輸送が必須であり、たとえば臓器は1〜4℃、血液(非凍結)であれば2〜6℃、薬やワクチンであれば、0〜10℃、さらに厳密に2〜8℃の温度管理が必要な場合がある。
これらの温度帯を必要とするものに共通するのは、温度管理の下限域、または上限域を超えてしまうと品質が劣化し、飲食物は商品にならず損失を生み、医療関係では人の生命にかかわる問題になることである。例えば、温度管理の下限を超えて凍結するのは防がなくてはならない。
一方、冷凍食品や凍結保存している薬やワクチンの場合は、上限温度のみが問題であり、冷凍食品では一般に−18℃以下、後者は−20℃以下であることが必要とされることが多い。薬の例では、凍結保存されている倉庫から手術室まで一時たりとも−20℃を超えてはならないものもある。
(熱交換層および温度維持層の設計)
熱交換層120および温度維持層130のそれぞれの量は、それぞれの蓄熱材の機能により対象物の温度がオーバーシュートしないように設計(調節、決定)されている。以下、それぞれの方法について説明する。
(1)熱交換層および温度維持層のみを考慮した場合
熱交換層120および温度維持層130の量は、初期設定温度Tinと許容限界温度Tminとの温度差に対応する温度維持層130の顕熱量Cin・Min(Tin−Tmin)が、初期設定温度Toutと許容限界温度Tminとの温度差に対応する熱交換層120の顕熱量Cout・Mout(Tmin−Tout)以上になるように設計されている。
なお、対象物との熱交換量は、温度維持層130の温度が対象物の温度よりも低くなる場合には、最も内側に配置された温度維持層130が熱交換層120を通して対象物から吸熱する熱量、逆に温度維持層130の温度が対象物の温度よりも高くなる場合には、放熱する熱量である。
例えば、外気温に対して対象物を低温に維持したい場合には、初期設定温度Tinと許容限界温度Tminとの温度差に対応する温度維持層130の顕熱量Cin・Min(Tin−Tmin)、熱交換層120が初期設定温度Toutから許容限界温度Tminになるまで外気との間で交換する熱量および温度維持層130が初期設定温度Toutから許容限界温度Tminになるまで対象物との間で交換する熱量の和が、初期設定温度Toutと許容限界温度Tminとの温度差に対応する熱交換層120の顕熱量Cout・Mout(Tmin−Tout)以上になるように設計される。
ここで、Cinは、温度維持層を構成する蓄熱材の比熱を表し、Coutは、熱交換層を構成する蓄熱材の比熱を表している。また、初期設定温度とは、対象物の温度維持のために蓄熱材を断熱性容器内に配置するときの温度をいう。Minは、温度維持層の重量、Moutは、熱交換層の重量を表す。
(2)外気との熱交換を考慮した場合
熱交換層120および温度維持層130の量は、初期設定温度Tinと許容限界温度Tminとの温度差に対応する温度維持層130の顕熱量Cin・Min(Tin−Tmin)および熱交換層120が初期設定温度Toutから許容限界温度Tminになるまで外気との間で交換する熱量の和が、初期設定温度Toutと許容限界温度Tminとの温度差に対応する熱交換層120の顕熱量Cout・Mout(Tmin−Tout)以上になるように設計されていることが好ましい。
これにより、外気との交換熱量も考慮したときの、オーバーシュートを防ぐとともに、高い効果が得られる量に熱交換層120および温度維持層130が設計された恒温容器を構成できる。
(3)外気、対象物との熱交換を考慮した場合
外気、対象物との熱交換を考慮し、熱交換層120および温度維持層130のそれぞれの量を設計することができる。外気との熱交換量は、外気温度が熱交換層120の温度よりも高い場合には、熱交換層120が外側断熱層110を通して外気から吸熱する量である。外気温度が熱交換層120の温度よりも低い場合には、外気へ放熱する量である。
このように熱交換層120および温度維持層130が設計されていることで、恒温容器100の機能により対象物の温度が許容限界温度Tminを超えてオーバーシュートするのを防止できる。その結果、外気や対象物との交換熱量も考慮したときの、オーバーシュートを防ぐとともに、高い効果が得られる量に熱交換層120および温度維持層130が設計された恒温容器100を構成できる。
以上の(1)〜(3)の各条件は、温度維持層の温度が初期設定温度から許容限界温度に至るための第1の熱量が、熱交換層の温度が初期設定温度から許容限界温度に至るまでの第2の熱量以上になると表現することができる。
このように、熱交換層120と温度維持層130との間の熱交換を考慮して設計されているため、そのような考慮がない場合より、熱交換層120を増やす設計を行なうことができ、かつ対象物の温度のオーバーシュートを防止できる。なお、本来の恒温容器として熱交換層120の冷却または加熱の機能を確保することを考慮すると、(熱交換層120の重量)/(温度維持層130の重量)が1/5以上であることが好ましい。
(保冷または保温)
上記のように、対象物を外気温より低温で維持する場合(保冷)には、許容限界温度は、許容される最低の温度Tminとなる。また、熱交換層120の初期設定温度Toutは、許容限界温度Tminより低く、温度維持層130の初期設定温度Tinは、許容限界温度Tminより高く設定され、恒温容器100は、対象物の冷蔵のために用いられる。これにより、電力を利用せずに、例えば食材や飲料等の対象物を適切な温度で冷蔵した状態で維持することができる。
一方、対象物を外気温より高温で維持する場合(保温)には、許容限界温度は、許容される最高の温度Tmaxとなる。そして、熱交換層120の初期設定温度Toutは、許容限界温度Tmaxより高く、温度維持層130の初期設定温度Tinは、許容限界温度Tmaxより低く設定され、対象物の保温のために用いられる。これにより、対象物を管理すべき温度で保温して維持できる。
なお、上記の例では、蓄熱材を用いる熱交換層120および温度維持層130には、それぞれ1種類ずつ合わせて2種類の蓄熱材が用いられているが、いずれか単一の層に複数種類の蓄熱材を用い、合わせて3種類以上の蓄熱材を用いてもよい。
(恒温容器の作製方法)
上記のように構成された恒温容器100の作製方法を説明する。図7は、恒温容器100を作製する一工程を示す斜視図である。まず、熱交換層120および温度維持層130の温度をそれぞれ初期設定温度に調整する。そして、図7に示すように、外側断熱層110を構成する断熱容器110aの内側に、熱交換層120を設ける。そして、熱交換層120の内側に、温度維持層を重ねて設ける。なお、断熱容器110aは、側面の壁部だけでなく、底部、蓋部も断熱層となっており、蓋を閉じることで内部は隙間なく断熱層に覆われる構造を有する。
対象物を内部空間に収容する。熱交換層120は、例えば蓄熱材をパックに封入した本体部120aとその温度を表示する温度タグ120bとで構成されている。温度維持層130も同様の構成とすることができる。なお、温度タグ120bは、必ずしも必要ない。
このとき、外気、対象物との熱交換を考慮し、熱交換層120および温度維持層130のそれぞれの量を設計できる。例えば、外気温に対して対象物を低温に維持する場合には、初期設定温度Tinと許容限界温度Tminとの温度差に対応する温度維持層130の顕熱量Cin・Min(Tin−Tmin)、熱交換層120が初期設定温度Toutから許容限界温度Tminになるまで外気との間で交換する熱量および温度維持層130が初期設定温度Toutから許容限界温度Tminになるまで対象物との間で交換する熱量の和が、初期設定温度Toutと許容限界温度Tminとの温度差に対応する熱交換層120の顕熱量Cout・Mout(Tmin−Tout)以上になるように設計する。これにより、対象物の温度が許容限界温度Tminを超えてオーバーシュートするのを防止できる。
[第2の実施形態]
上記の実施形態では、温度維持層130の内側に内部空間S0が設けられているが、温度維持層130の内側には、内側断熱層が設けられ、内側断熱層が内部空間S0に面していてもよい。図8(a)は、内側断熱層241を有する恒温容器201の例を示す断面図である。
恒温容器201は、外側断熱層110、熱交換層120、温度維持層130および内側断熱層241を備え、中央に内部空間S0が形成されている。内側断熱層241は、温度維持層130の内側に内部空間に面して設けられており、対象物と蓄熱材とが直接に熱交換しないように熱の移動を緩和している。内側断熱層241を設けることで、対象物の温度のオーバーシュートを防止する温度維持について、更に厳密な熱交換層120および温度維持層130の設計が可能となる。
なお、内側断熱層241を設ける場合には、第1の熱量として、温度維持層130が初期設定温度から許容限界温度になるまで内側断熱層241との間で交換する熱量を含めて、熱交換層120および温度維持層130の量を設計することができる。
上記の例では、温度維持層130の内側に内側断熱層241が設けられているが、熱交換層120と温度維持層130との間に1以上の中間断熱層242を設けてもよい。中間断熱層242を設けることで、対象物の温度維持について、更に厳密な熱交換層120および温度維持層130の設計が可能となる。
中間断熱層242を設ける場合に、第1の熱量として、温度維持層130が初期設定温度から許容限界温度になるまで中間断熱層242との間で交換する熱量および熱交換層120が初期設定温度から許容限界温度になるまで中間断熱層242との間で交換する熱量を含めて、熱交換層120および温度維持層130の量を設計することができる。
図8(b)は、中間断熱層242を有する恒温容器202の例を示す断面図である。また、図8(c)は、内側断熱層241および中間断熱層242を有する恒温容器203の例を示す断面図である。なお、中間断熱層242は、複数設けられていても良く、互いに素材や厚さが同じである必要はない。
[第3の実施形態]
上記の実施形態では、熱交換層と温度維持層を構成する蓄熱材の配置までは特定されていないが、効果的な配置となるようにそれらを特定してもよい。図9(a)、(b)、(c)、(d)および図10(a)、(b)、(c)は、それぞれ効果的に蓄熱材を配置した恒温容器301〜307の例を示す断面図である。以下の例に示すように、熱交換層を形成する蓄熱材および温度維持層を形成する蓄熱材は、複数の層を形成し、複数の層それぞれの層内の蓄熱材のいずれかの隙間の位置のうち一か所以上が隣り合う他の層内の蓄熱材の隙間の位置と一致しないようにずらして配置されていることが好ましい。すなわち隣り合う層間の蓄熱材同士の隙間のうち少なくとも一組は層厚み方向に位置が重ならない。隣り合う層内の蓄熱材の隙間の位置のうちすべてが、隣り合う他の層内の蓄熱材の隙間の位置と一致しないことがさらに好ましい。
恒温容器301では、熱交換層321が、4つの蓄熱材で隙間なく連続して構成され、外側断熱層110の内隅部は、それぞれ4つの蓄熱材で覆われるように配置されている。また、温度維持層331は、4つの蓄熱材で隙間なく連続して構成され、それぞれの蓄熱材は、外側に配置された蓄熱材と隙間の位置が一致しないようにずらして配置されている。これにより、蓄熱材の隙間から熱が漏れるのを防止している。なお、熱交換層321および温度維持層331のそれぞれを構成する蓄熱材の全量は、それぞれの蓄熱材の機能により対象物の温度がオーバーシュートしないように設計されている。
恒温容器302では、熱交換層322が、8つの蓄熱材で隙間なく連続して構成され、外側断熱層110の内隅部は、それぞれ4つの蓄熱材で覆われるように配置されている。また、温度維持層332は、一体の蓄熱材で隙間なく構成されている。熱交換層322および温度維持層332のそれぞれを構成する蓄熱材の全量は、それぞれの蓄熱材の機能により対象物の温度がオーバーシュートしないように設計されている。
恒温容器303では、熱交換層322が、8つの蓄熱材で隙間なく連続して構成され、外側断熱層110の内隅部は、それぞれ4つの蓄熱材で覆われるように配置されている。また、温度維持層333は、6つの蓄熱材で隙間なく連続して構成され、それぞれの蓄熱材は、外側に配置された熱交換層322の蓄熱材と隙間の位置が一致しないようにずらして配置されている。熱交換層322および温度維持層333のそれぞれを構成する蓄熱材の全量は、それぞれの蓄熱材の機能により対象物の温度がオーバーシュートしないように設計されている。
恒温容器304では、熱交換層321が、4つの蓄熱材で隙間なく連続して構成され、外側断熱層110の内隅部は、それぞれ4つの蓄熱材で覆われるように配置されている。また、温度維持層334は、8つの蓄熱材で隙間なく連続して構成され、それぞれの蓄熱材は、外側に配置された熱交換層322の蓄熱材と隙間の位置が一致しないようにずらして配置されている。熱交換層321および温度維持層334のそれぞれを構成する蓄熱材の全量は、それぞれの蓄熱材の機能により対象物の温度がオーバーシュートしないように設計されている。
恒温容器305では、熱交換層321が、4つの蓄熱材で隙間なく連続して構成され、外側断熱層110の内隅部は、それぞれ4つの蓄熱材で覆われるように配置されている。また、温度維持層333は、4つの蓄熱材で隙間なく連続して構成され、それぞれの蓄熱材は、外側に配置された熱交換層321の蓄熱材と隙間の位置が一致しないようにずらして配置されている。熱交換層321および温度維持層333のそれぞれを構成する蓄熱材の全量は、それぞれの蓄熱材の機能により対象物の温度がオーバーシュートしないように設計されている。
恒温容器306では、熱交換層321が、4つの蓄熱材で隙間なく連続して構成され、外側断熱層110の内隅部は、それぞれ4つの蓄熱材で覆われるように配置されている。また、温度維持層334は、8つの蓄熱材で隙間なく連続して構成され、それぞれの蓄熱材は、外側に配置された熱交換層321の蓄熱材と隙間の位置が一致しないようにずらして配置されている。熱交換層321および温度維持層334のそれぞれを構成する蓄熱材の全量は、それぞれの蓄熱材の機能により対象物の温度がオーバーシュートしないように設計されている。
恒温容器307では、熱交換層322が、6つの蓄熱材で隙間なく連続して構成され、外側断熱層110の内隅部は、それぞれ4つの蓄熱材で覆われるように配置されている。また、温度維持層337は、2つの蓄熱材で隙間なく連続して構成され、それぞれの蓄熱材は、外側に配置された熱交換層322の蓄熱材と隙間の位置が一致しないようにずらして配置されている。熱交換層322および温度維持層337のそれぞれを構成する蓄熱材の全量は、それぞれの蓄熱材の機能により対象物の温度がオーバーシュートしないように設計されている。
このように、本実施形態では、外側の蓄熱材は少なくとも1ヶ所以上の外側断熱層の隅部に配置され、それより内側の蓄熱材は一つ外側に配置された蓄熱材と隙間のうち一か所以上の位置が一致しないようにずらして配置させている。
[実施例1]
一例として保管対象物の許容温度範囲を0〜15℃として90時間以上保温することを目的とした恒温容器を作製し、機能を検証した。まず、以下の工程により、蓄熱材を準備した。
第1の蓄熱材(熱交換層用)として、水ゲル蓄熱材(融解温度:0℃)を用いた。撹拌中の水にゲル化剤としてアガロースを1.5%添加し、カルボキシメチルセルロースを3.0%添加した。得られた混合液は、5分以上、煮沸した。そして、煮沸された混合液をパックに封入し、25℃になるまで静置した。静置された混合液は、冷凍庫(−18℃)で凍結させた。
第2の蓄熱材(温度維持層用)としては、TBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド、融解温度:12℃)を用いた。10〜12℃で相転移温度を示すTBAB40%溶液を調整した。この溶液を撹拌しながら、ゲル化剤としてアガロースを1.5%添加し、カルボキシメチルセルロースを3.0%添加した。このようにして、得られた溶液を5分以上、煮沸した。煮沸後の溶液をパックに封入し、25℃になるまで静置した。静置後、得られた溶液を冷凍庫(−18℃)で凍結させた。凍結後、冷蔵庫(5℃)に入れ、凍結状態で5℃まで加熱した。
なお、第2の蓄熱材の比熱(顕熱)を2.22kJ/kg・K、搭載量を12.2kgとし、初期設定温度は5℃(冷蔵庫内温度)とした。また、第1の蓄熱材(氷)の比熱は2.09kJ/kg・K、初期設定温度を−18℃とし、第1の蓄熱材の搭載可能な最大重量maxを計算した。このようにして得られたmaxにより、第2の蓄熱材の搭載重量を3.2kgとした。
断熱層として560×390×400mmの真空断熱材が用いられている容器を採用した。外気温度条件は、例えば、日本から中国へ空輸すると仮定し恒温槽内で(1)30℃で27時間、(2)5℃で3時間、(3)28℃で60時間、合計で90時間、静置した。
図11は、実施例1の結果を示すグラフである。図11に示すように、一旦は第1の蓄熱材の影響を受け、内部空間の温度が低下するものの、許容下限温度に達することなく、提案する恒温容器は目標である0℃〜15℃の範囲内で90時間以上保持可能であった。このように、設計時に各蓄熱材の顕熱量を比較し、第1の蓄熱材(水ゲル)の搭載量を決定したことにより、保管の対象物の温度がオーバーシュートせず、恒温容器の恒温性能を確保できることが実証できた。
[実施例2]
次に、熱交換層と外気との熱交換を考慮した場合のシミュレーションを行なった。外部温度を30℃と設定し、断熱層の初期設定温度を5℃、温度維持層の初期設定温度を5℃、熱交換層の初期設定温度を−18℃に設定した。内部空間の許容温度範囲を下限0℃、上限15℃で特定した。内部空間の温度は、その中心位置の温度を用いた。
(1)オーバーシュートしない場合のシミュレーション結果
搭載した温度維持層の重量を熱交換層の5倍として計算した。また、熱交換層および温度維持層の比熱は同じと仮定した。その結果、内部空間の温度の低下は低くても0℃までであった。図12は、実施例2のシミュレーション結果を示すグラフである。
図12に示す結果により、初期設定温度と許容限界温度との温度差に対応する温度維持層の顕熱量および熱交換層が初期設定温度から許容限界温度になるまで外気との間で交換する熱量の和が初期設定温度と許容限界温度との温度差に対応する熱交換層の顕熱量以上であるという関係が成り立つように温度維持層および熱交換層を設計すれば、対象物の温度のオーバーシュートを防止できることが実証された。
(2)オーバーシュートする場合のシミュレーション結果
熱交換層および温度維持層として搭載するそれぞれ蓄熱材の重量を同量とし、いずれの蓄熱材の比熱も同じと仮定した。熱交換層および温度維持層の比熱をいずれもCとし、各重量をMとすると、温度維持層の顕熱量は、5CM=(5℃(初期設定温度)−0℃(下限温度))×CMとなり、熱交換層の顕熱量18CM=(0℃(下限温度)−(−18℃)(初期設定温度))×CMとなる。
そして、熱交換層と外気の交換熱量≦18CM−5CMであるため、内部空間の温度はオーバーシュートした。図13は、このような実施例2の条件における比較例のシミュレーション結果を示すグラフである。このように、熱交換層の搭載量が過剰な場合、温度と時間において、どの程度オーバーシュートするかも予測可能となる。
[実施例3]
本実施例では、熱交換層の重量Mと温度維持層の重量Mの重量比M:M=1:3の条件でシミュレーションを行なった。実施例1にならって顕熱量を比較すると、初期設定温度と許容限界温度との温度差に対応する温度維持層の顕熱量は、5CM=(5℃(初期設定温度)−0℃(下限温度))×CMとなり、初期設定温度と許容限界温度との温度差に対応する熱交換層の顕熱量は、18CM=(0℃(下限温度)−(−18℃)(初期設定温度))×CMとなる。
オーバーシュートしない条件は、初期設定温度と許容限界温度との温度差に対応する温度維持層の顕熱量≧初期設定温度と許容限界温度との温度差に対応する熱交換層の顕熱量であり、本実施例では、5CM≧18CMとなることから温度維持層と熱交換層の重量の関係はM>3.6Mとなる必要がある。
逆にいえば、M≦3.6Mの場合には、実施例1の設計では、オーバーシュートすることになる。したがって、本実施例の重量比条件(M:M=1:3)ではオーバーシュートすることになる。しかし、実際には熱交換層の顕熱は全て温度維持層を冷やすために費やされるのではなく、断熱層を介して外部の熱を吸収することで温度維持層を冷やすための顕熱が消費される。
よって、熱交換層と温度維持層の重量比がM:M=1:3であっても図14に示すように内部空間の温度はオーバーシュートしなかった。なお、図14は、実施例3のシミュレーション結果を示すグラフである。このように、熱交換層と外気の交換熱量を考慮することで、実施例1に比べて、より多くの熱交換層を搭載することが可能となる。
以上のように本実施例では、外気との交換熱量を考慮しない実施例1では対象物の温度がオーバーシュートする結果となるが、外気との交換熱量を考慮する場合に対象物の温度がオーバーシュートしないような熱交換層の搭載量を設計できる。すなわち、熱交換層の搭載量を根拠に基づいて増やすことが可能となる。
外部温度を30℃に設定し、断熱性容器の初期設定温度を5℃、温度維持層の初期設定温度を5℃、熱交換層の初期設定温度を−18℃に設定した。内部空間の許容温度範囲を下限0℃、上限15℃と特定した。内部空間の温度は、その中心位置の温度を用いた。熱交換層および温度維持層の蓄熱材の重量比がM:M=1:3のときに、内部空間の温度がオーバーシュートしないことを確認できた。
[実施例4]
次に、内側断熱層を有する場合のシミュレーションを行なった。内側断熱層を追加することで、実施例2と比較して、どの程度オーバーシュートが抑えられるかを検証した。
外部温度を30℃に設定し、外側断熱層の初期設定温度を5℃、温度維持層の初期設定温度を5℃、熱交換層の初期設定温度を−18℃に設定した。内部空間の許容温度範囲を下限0℃、上限15℃で特定した。内部空間の温度は、その中心位置の温度を用いた。
熱交換層および温度維持層の蓄熱材の重量比がM:M=1:1.5のときに、内側断熱層なしの場合には、内部空間の温度が大きくオーバーシュートし、マイナス2℃まで低下した。内側断熱層ありの場合には、内部空間の温度は−0.5℃までの低下にとどまり、内部空間の温度のオーバーシュートが軽減されることを確認できた。図15は、実施例4のシミュレーション結果を示すグラフである。このように、内側断熱層は熱交換層と内部空間との熱のやり取りを緩和させるため、温度の急激な変化を軽減する効果がある。
[実施例5]
内側断熱層を考慮しない場合に、対象物の温度がオーバーシュートする結果が得られるが、内側断熱層を考慮すれば、オーバーシュートしないような熱交換層の搭載量を設計できる。すなわち、内側断熱層を考慮することで、更に厳密に蓄熱材量を設計できる。
外部温度を30℃に設定し、断熱性容器の初期設定温度を5℃、温度維持層の初期設定温度を5℃、熱交換層の初期設定温度を−18℃に設定した。内部空間の許容温度範囲を下限0℃、上限15℃で特定した。内部空間の温度は、その中心位置の温度を用いた。
熱交換層および温度維持層の蓄熱材の重量比がM:M=1:2のときに、内側断熱層なしの場合には、内部空間の温度がオーバーシュートし、マイナス−0.5℃まで低下した。内側断熱層ありの場合には、内部空間の温度はオーバーシュートせず、0℃までの低下にとどまることを確認できた。図16は、実施例5のシミュレーション結果を示すグラフである。内側断熱層を考慮することで、内側断熱層がない場合、または内側断熱層があっても考慮せずに蓄熱材の量を設計する実施例2と比較して、より多くの熱交換層を搭載可能となる。
[実施例6]
温度維持層と熱交換層の間に中間断熱層がある場合についてシミュレーションを行なった。一例として実施例2および実施例1の設計方法では対象物の温度は、オーバーシュートするが、本実施例ではオーバーシュートしない場合を検証した。
外部温度を30℃に設定し、断熱性容器の初期設定温度を5℃、温度維持層の初期設定温度を5℃、熱交換層の初期設定温度を−18℃に設定した。内部空間の許容温度範囲を下限0℃、上限15℃で特定した。内部空間の温度は、その中心位置の温度を用いた。
このような条件で、内側断熱層および中間断熱層を設け、その効果を考慮した場合には、熱交換層および温度維持層の蓄熱材の重量比がM:M=1.5:1のときでも、対象物の温度がオーバーシュートしないことを確認できた。中間断熱層を考慮することで熱交換層の蓄熱材の量が温度維持層の蓄熱材の量よりも多くても、オーバーシュートを抑制する設計が可能となる。なお、M=0.67M<3.6Mなので実施例1の設計条件では、上記の構造ではオーバーシュートすることになる。
図17は、実施例6のシミュレーション結果を示すグラフである。内側断熱層および中間断熱層のいずれも考慮しない場合、または実施例2のように内側断熱層のみを考慮し中間断熱層を考慮しない設計の場合もグラフのようにオーバーシュートする。しかし、本実施例のように、中間断熱層を構成に追加し、温度維持層と熱交換層の熱のやり取りを考慮することでオーバーシュートしないことが分かる。その結果、より多くの熱交換層を搭載可能となる。ただし、中間断熱層無しで内側断熱層のみ設ける場合であっても、その断熱性が高ければ上記と同様に、熱交換層が温度維持層よりも多くてもオーバーシュートを抑制することは可能である。
[実施例7]
中間断熱層が無く、厚い内側断熱層がある場合についてシミュレーションを行なった。一例として、実施例6における中間断熱層および内側断熱層のいずれも無い場合、中間断熱層が無く、内側断熱層がある場合の設計方法では、対象物の温度はオーバーシュートするが、中間断熱層が無くても実施例6における厚さの3倍の厚さの内側断熱層を設けた場合にはオーバーシュートしないことを検証した。
外部温度を30℃に設定し、断熱性容器の初期設定温度を5℃、温度維持層の初期設定温度を5℃、熱交換層の初期設定温度を−18℃に設定した。内部空間の許容温度範囲を下限0℃、上限15℃で特定した。内部空間の温度は、その中心位置の温度を用いた。
このような条件で、実施例6における厚さの3倍の厚さの内側断熱層を設け、その効果を考慮した場合には、熱交換層および温度維持層の蓄熱材の重量比がM:M=1.5:1のときでも、対象物の温度がオーバーシュートしないことを確認できた。
図18は、実施例7のシミュレーション結果を示すグラフである。内側断熱層および中間断熱層のいずれも考慮しない場合、または実施例6における厚さで内側断熱層のみを考慮した設計の場合のいずれもグラフのようにオーバーシュートする。しかし、本実施例のように、実施例6での内側断熱層の3倍の厚さの内側断熱層を考慮することでオーバーシュートしないことが分かる。
このように、中間断熱層および内側断熱層のうち内側断熱層のみであっても、本実施例のように断熱材の厚さを厚くするか、あるいは同じ厚さであっても断熱性の高い(熱伝導率の低い)断熱材を採用することで熱交換層の方が温度維持層よりも多くても、オーバーシュートを抑制することが可能となる。
100、201〜203、301〜307 恒温容器
110 外側断熱層
120 熱交換層
130 温度維持層
S0 内部空間
110a 断熱容器
120a 本体部
120b 温度タグ
201〜203 恒温容器
241 内側断熱層
242 中間断熱層
301〜307 恒温容器
321、322 熱交換層
331、332、333、334、337 温度維持層

Claims (10)

  1. 対象物の温度を維持する恒温容器の作製方法であって、
    少なくとも2層以上の蓄熱層として、許容限界温度が設定された対象物の温度を維持する温度維持層および前記温度維持層と熱交換する熱交換層を設計し、前記設計では、前記温度維持層の温度が初期設定温度から許容限界温度に至るための第1の熱量が、前記熱交換層の温度が初期設定温度から許容限界温度に至るまでの第2の熱量以上になるように算出するステップと、
    前記少なくとも2層以上の蓄熱層の温度をそれぞれ初期温度に維持するステップと、
    外部に面した外側断熱層の内側に、前記外側断熱層側に前記熱交換層を配置し、前記対象物側に前記温度維持層を配置することで前記2層以上の蓄熱層を設けるステップと、を行なうことを特徴とする恒温容器の作製方法。
  2. 前記第1の熱量として、初期設定温度と前記許容限界温度との温度差に対応する前記温度維持層の顕熱量を含め、
    前記第2の熱量として、初期設定温度と前記許容限界温度との温度差に対応する前記熱交換層の顕熱量を含めることを特徴とする請求項1記載の恒温容器の作製方法。
  3. 前記第1の熱量として、さらに前記熱交換層が初期設定温度から前記許容限界温度になるまで外気との間で交換する熱量を含めることを特徴とする請求項2記載の恒温容器の作製方法。
  4. 前記第1の熱量として、前記温度維持層が初期設定温度から前記許容限界温度になるまで前記対象物との間で交換する熱量を含めることを特徴とする請求項3記載の恒温容器の作製方法。
  5. 前記温度維持層の内側に内部空間に面して設けられた内側断熱層を設けるステップを更に行ない、
    前記第1の熱量として、前記温度維持層が初期設定温度から前記許容限界温度になるまで前記内側断熱層との間で交換する熱量を含めることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の恒温容器の作製方法。
  6. 前記熱交換層と前記温度維持層との間に1以上の中間断熱層を設けるステップを更に行ない、
    前記第1の熱量として、前記温度維持層が初期設定温度から前記許容限界温度になるまで前記中間断熱層との間で交換する熱量および前記熱交換層が初期設定温度から前記許容限界温度になるまで前記中間断熱層との間で交換する熱量を含めることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の恒温容器の作製方法。
  7. 前記熱交換層を形成する蓄熱材および前記温度維持層を形成する蓄熱材は、複数の層を形成し、前記複数の層それぞれの層内の前記蓄熱材のいずれかの隙間の位置のうち一か所以上が隣り合う他の層内の前記蓄熱材の隙間の位置と一致しないようにずらして配置することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の恒温容器の作製方法。
  8. 前記許容限界温度は、許容される最低の温度であり、
    前記熱交換層の初期温度は、前記許容限界温度より低く、前記温度維持層の初期温度は、前記許容限界温度より高く設定され、
    前記対象物の冷蔵のために用いられることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の恒温容器の作製方法。
  9. 前記許容限界温度は、許容される最高の温度であり、
    前記熱交換層の初期温度は、前記許容限界温度より高く、前記温度維持層の初期温度は、前記許容限界温度より低く設定され、
    前記対象物の保温のために用いられることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の恒温容器の作製方法。
  10. 対象物の温度を維持する恒温容器であって、
    外部空間に面して設けられた外側断熱層と、
    少なくとも2層以上の蓄熱層を備え、
    前記2層以上の蓄熱層には、前記断熱層の内側に設けられた熱交換層と、
    前記熱交換層の内側に設けられ、許容限界温度が設定された対象物を収容する内部空間の温度を維持する温度維持層と、を含み、
    前記熱交換層および前記温度維持層は、前記温度維持層の温度が初期設定温度から許容限界温度に至るための第1の熱量が、前記熱交換層の温度が初期設定温度から許容限界温度に至るまでの第2の熱量以上になるように算出されていることを特徴とする恒温容器。
JP2014265320A 2014-12-26 2014-12-26 恒温容器およびその作製方法 Pending JP2016125699A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014265320A JP2016125699A (ja) 2014-12-26 2014-12-26 恒温容器およびその作製方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014265320A JP2016125699A (ja) 2014-12-26 2014-12-26 恒温容器およびその作製方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2016125699A true JP2016125699A (ja) 2016-07-11

Family

ID=56359180

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014265320A Pending JP2016125699A (ja) 2014-12-26 2014-12-26 恒温容器およびその作製方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2016125699A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2018143468A1 (ja) * 2017-02-06 2018-08-09 シャープ株式会社 保冷具、物流梱包容器、物流システムおよび物流方法
WO2018181096A1 (ja) * 2017-03-28 2018-10-04 シャープ株式会社 保温具、保冷具、物流梱包容器、物流システムおよび物流方法
JP2021185524A (ja) * 2017-02-21 2021-12-09 大日本印刷株式会社 情報処理装置及びプログラム

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2018143468A1 (ja) * 2017-02-06 2018-08-09 シャープ株式会社 保冷具、物流梱包容器、物流システムおよび物流方法
JPWO2018143468A1 (ja) * 2017-02-06 2019-12-12 シャープ株式会社 保冷具、物流梱包容器、物流システムおよび物流方法
JP7015254B2 (ja) 2017-02-06 2022-02-02 シャープ株式会社 保冷具、物流梱包容器、物流システムおよび物流方法
JP2021185524A (ja) * 2017-02-21 2021-12-09 大日本印刷株式会社 情報処理装置及びプログラム
JP7279752B2 (ja) 2017-02-21 2023-05-23 大日本印刷株式会社 情報処理装置及びプログラム
WO2018181096A1 (ja) * 2017-03-28 2018-10-04 シャープ株式会社 保温具、保冷具、物流梱包容器、物流システムおよび物流方法
JPWO2018181096A1 (ja) * 2017-03-28 2019-11-07 シャープ株式会社 保温具、保冷具、物流梱包容器、物流システムおよび物流方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5558415B2 (ja) 冷蔵庫
US7299652B2 (en) Self-contained gel insulated container
US9624022B2 (en) Storage container utilizing two different heat insulating materials in combination with a temperature control unit and a heat storage material placed within the container
CN105051470B (zh) 保冷库
WO2014118821A1 (ja) 断熱函
JP5800575B2 (ja) 冷蔵庫
JP2016125699A (ja) 恒温容器およびその作製方法
WO2018189777A1 (ja) 冷蔵庫
US20170307278A1 (en) Segmented container with multiple temperature zones
TW201641904A (zh) 冷卻裝置
US6666044B2 (en) Self-contained silicone-gel insulated container
JP6653603B2 (ja) 蓄冷熱材の使用方法、包装体、及び蓄冷熱材
JP2014020775A (ja) 保冷設備
JP2017053545A (ja) 蓄冷熱材の使用方法、包装体、及び蓄冷熱材
JP4316408B2 (ja) 省スペース型冷蔵庫
KR102226253B1 (ko) 직냉식 냉장고
JP5800576B2 (ja) 冷蔵庫
WO2015063820A1 (ja) 断熱箱
JP2010120673A (ja) 保冷・保温用通い箱及び貯蔵箱及び該箱による被保冷体又は被保温体の保冷又は保温方法
CN207346413U (zh) 一种蓄冷型保温箱
JP2020008254A (ja) 冷蔵庫
CN206695470U (zh) 一种移动冷库
JP2020106157A (ja) 冷蔵庫
WO2020004477A1 (ja) 保冷具包材、梱包容器及び保冷対象物の輸送方法
JP2018204876A (ja) 冷蔵庫