関連出願の参照
本願は、参照によって本明細書に組み込まれている、2010年4月30日に出願された米国仮特許出願第61/330120号の利益を主張するものである。
ナノインデンテーションは、試験サンプルの弾性係数及び硬度などの機械的性質を、例えば、小さな力及び高分解能の変位センサを用いて、定量的に測定する方法である。典型的には、ナノインデンテーションにおいて使用される力は、典型的な変位幅が10μmより小さく、ノイズレベルが典型的に1nm rms.より良い状態において、10mNより小さい。ナノインデンテーションでは、負荷の力と変位を測定することができるナノインデンターが使用されている。その力と変位のデータは、サンプルの機械的特性を測定するために使用される。このサンプル特性評価のために、ナノインデンターは、既知の形状及び既知の機械的特性を有する特徴付けられたチップと一体化されていなければならない。2次元の力及び変位の検出を備えたナノインデンターは、摩擦及び摩耗などの追加の機械的特性を測定するためのトライボロジー用途にナノトライボメータとして使用され得る。
ナノインデンテーション計測における重要な構成要素の1つは、電気入力を機械力に変換し、機械的変位を電気信号に変換する変換器である。うまく設計されたナノインデンター変換器は、例えば、力の範囲を拡大し、最大の力を大きくすることを含み、力の分解能及びシステム帯域幅を向上し、システムノイズを低減するなど、ナノインデンター特性の多くの態様を向上させることができる。
新たなナノインデンテーションアプリケーションの1つは、透過型電子顕微鏡(TEM)内の定量的なその場でのナノメカニカル試験である。この試験方法は、定量的な機械データを測定している間、リアルタイムでサンプルの変形を観察することが可能である。そのような試験機能を実現するため、力を加えて変位を測定することが可能で、定量的な変換器が、TEMホルダーと一体化されているべきである。変換器の物理的大きさは、TEMホルダーの大きさによって制限されており、TEMのポールギャップに依存する。例えば、FEI社によって製造されたTEMホルダーは、4mmの最大許容外径を有しており、小さいホルダー直径のいくつかのTEMは、FEI社のTEMとHitachi社のTEMと互換性を保つために、小さい変換器を必要とする。
上記の観点から、トライボメータの物理的大きさは、小さくされなければならない。より小さいトライボメータを作るために重要なことは、TEM市場データから明らかであり、FEI社及びJEOL社がそれぞれ40%の市場シェアを有し、その他が残り20%を有する。より小さいトライボメータを作ることは、FEI社及び他のいくつかのTEMにその場でのナノトライボロジー試験機能の向上を可能にするであろう。MEMS技術は、性能要件を損なうことなくナノトライボメータを小型化することが可能な1つの技術である。
2009年7月6日に出願され、本開示と同じ譲受人へ譲渡された、米国特許出願番号12/497834(米国特許第8161803号)に記載されるように、1次元(1−D)MEMS変換器が開発されており、これらは参照によって本明細書に組み込まれている。しかしながら、そのようなMEMS変換器は、単軸(例えば、1次元)、即ちインデンテーションの軸に沿った駆動及び検出を提供する。
米国特許第8161803号明細書(米国特許出願番号12/497834)
米国特許第5553486号明細書
米国特許第5869751号明細書
一実施形態は、本体と、本体と関連して連結され、可動のプローブであって、取り外しできるインデンターチップを保持するプローブと、第1の微小機械コムドライブと、第2の微小機械コムドライブと、を含む、微小電気機械(MEMS)ナノインデンター変換器を提供する。第1の微小機械コムドライブは、印加されたバイアス電圧に応じて、インデンテーション方向を含む、第1の軸に沿ってプローブを駆動するよう構成された複数の静電容量アクチュエータを備えたアクチュエータと、第1の軸に関連してプローブの位置をともに示す容量レベルを有する複数の差動容量センサを備えた変位センサと、を含む。第2の微小機械コムドライブは、印加されたバイアス電圧に応じて、第1の軸に垂直である、第2の軸に沿ってプローブを駆動するよう構成された複数の静電容量アクチュエータを備えたアクチュエータと、第2の軸に関連してプローブの位置をともに示す容量レベルを有する複数の差動容量センサを備えた変位センサと、を含む。各静電容量アクチュエータ及び各差動容量センサは電極コム対を備え、各電極コム対は本体に連結された固定電極コムとプローブに連結された可動電極コムとを含む。
一実施形態に係る2次元MEMSナノインデンター変換器を用いたナノインデンテーション試験システムのブロック図である。
一実施形態に係る2次元MEMSナノインデンター変換器の透視である。
一実施形態に係る、図2の2次元MEMSナノインデンター変換器の分解図である。
一実施形態に係る、図2の2次元MEMSナノインデンター変換器の上面図である。
一実施形態に係る静電アクチュエータコムの2つのセットを示す。
一実施形態に係る静電駆動コンデンサの詳細な性能説明を示す表1である。
一実施形態に係る検出コンデンサの差動静電容量検出スキームを示す。
一実施形態に係る上下軸、即ちZ軸変位コンデンサの詳細な性能情報を示す表2である。
一実施形態に係るばね及びクラッシュプロテクタを示す図である。
一実施形態に係る2次元MEMS変換器の詳細な静的特性を示す表3である。
一実施形態に係る2次元MEMS変換器の動的特性を詳述する表4である。
一実施形態に係る2次元MEMSナノインデンター変換器の製造工程を一般的に示すフロー図である。
一実施形態に係る制御スキームの模式図である。
以下の詳細な説明では、符号は、発明が実施され得る特定の実施形態の図として示される本明細書の一部を形成する添付図面に作成されている。この点において、方向用語、例えば、“正面”、“下面”、“前面”、“背面”、“先端”、“後端”などは、図の方向を示す参照として使用される。本発明の実施形態の構成要素は、多数の異なった向きに配置でき、方向用語は例示の目的のために使用され、決して限定されるものではない。他の実施形態が利用されてもよいし、構造的変更又は論理的変更が本発明の範囲を逸脱することなく行われてもよいことは理解されるべきである。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味に捉えることなく、本発明の範囲が添付の特許請求の範囲によって定義される。
本明細書で記載された実施形態によると、微小機械コムドライブが、材料の表面特性を測定するためのナノインデンテーション試験を行うために備えられている。一実施形態によると、微小機械コムドライブは、インデンターチップを含む可動プローブの駆動のための静電アクチュエータとして構成された作動コムと、直交する2方向だけでなく角度のある回転方向における変位検出を提供するための変位センサとして構成された4つの検出コムを含む。
図1は、本開示に係る2次元MEMSナノインデンター変換器100を用いたナノメカニカル試験システム30の一実施形態を一般的に示すブロック図である。2次元MEMSナノインデンター変換器100、それに実装されたインデンターチップ205を含んでいることに加えて、システム30は、ナノインデンテーション及びナノスクラッチを経て試験されるため、表面38を有する試験サンプル36を保持するよう構成されたプラットフォーム34と、インターフェイス44を介してコンピュータ42と通信するコントローラ40を含んでいる。試験システム30は、少なくともその場サンプル試験に適している。
一実施形態によると、2次元MEMSナノインデンター変換器100は、水平方向(x及びy次元)に直交する垂直方向(z次元)におけるインデンターチップ205の変位、及びプラットフォーム34に関連する回転動作の変位を示す検出回路60の容量信号50を提供するよう構成されている。一実施形態によると、検出回路60は、容量信号50から電圧信号51に変換する。一実施形態によると、コントローラ40は、電圧信号51をデジタル信号に変換し、デジタル信号をインターフェイス44を介してコンピュータ42に送る。一実施形態によると、これらのデジタル信号に基づいて、応用モジュール(例えば、ソフトウェア)は、デジタル駆動信号をコントローラ40に送り、順番に、インデンターチップ205を駆動する又はプラットフォーム34に関連してz軸に沿ってインデンターチップ205を所望の距離に移動させるため、デジタル駆動信号を微小機械コムドライブ100に送られる駆動電圧信号52に変換する。
一実施形態によると、コンピュータ42の応用モジュール46を通るコントローラ40は、プラットフォーム34に関連してインデンターチップ205の移動を制御するように構成され、最初の参照ポイントからのインデンターチップ205の変位を表す信号をインターフェイス44を介してコンピュータ42に送るよう構成されている。一実施形態によると、コントローラ40は、駆動力を測定し、調整するよう構成されている。
一実施形態によると、応用モジュール46は、プロセッサ48によってアクセス可能で実行可能にされたメモリーシステム47に格納された命令を備える。メモリーシステム47は、例えば、RAM、ハードディスク駆動装置、CD−ROM駆動装置、DVD駆動装置など、揮発性記憶装置及び不揮発性記憶装置のタイプをいくつでも備えてもよい。他の実施形態では、応用モジュール46は、ハードウェアと、ファームウェアと、少なくとも本明細書で記載した機能を実行するよう構成されたソフトウェア要素とのいくつかの組み合わせを備えてもよい。
一実施形態によると、ナノメカニカル試験システム30は、2次元ナノインデンター変換器100及びそれに連結されたインデンターチップ205の3次元位置決めを可能にする、機械的ポジショナー60とピエゾポジショナー62を含む。一実施形態によると、ナノインデンター変換器100及びインデンターチップ205の最初の位置決めは、機械的ポジショナー60とピエゾポジショナーを介して行われ、インデンターチップ205の最後の位置決めと移動は、ナノインデンター変換器100を介して行われる。
一実施形態によると、ナノメカニカル試験システム30は、試験サンプル36の表面38を表示するイメージングデバイス70をさらに含んでいる。一実施形態によると、イメージングデバイス70は、試験領域のプロフィール、即ち形状を記憶又は測定することが可能な機器/デバイス、例えば、光学顕微鏡、表面形状測定装置、走査型プローブ顕微鏡(SPM)、あるいは原子間力顕微鏡(AFM)、を備えており、サンプル36の表面38の画像を提供するように構成されている。
試験システム30と類似し、本開示に係る微小機械コムドライブとインデンターチップとともに使用するよう構成されるのに適したシステムの例が、米国特許第5553486号及び米国特許第5869751号によって記載されており、どちらも本開示と同じ譲受人に譲渡されており、本明細書に参照によって組み込まれている。本開示に係る微小機械コムドライブとインデンターチップとともに使用するよう構成されるのに適したシステムの例が、米国ミネソタ州のミネアポリスのHysitron社から商品名TriboIndenterで市販されている。
図2は、本開示の一実施形態に係る、2次元MEMSナノインデンター変換器100を示す透視図であり、2次元MEMSナノインデンター変換器100に取り付けられるように、取り外し可能なインデンターチップ205を示す。一実施形態によると、2次元ナノインデンター変換器100は、本体102と、1対の前ばね106,108と1対の後ばね110,112によって本体102から支えられる可動プローブ104を含む。ばねは、可動プローブ104が、他の方向、例えば、X軸115に沿うなど、より容易に、インデンテーション方向116(図1の+Z方向)を含んだZ軸(変位軸と呼ばれる)に沿って変位可能なように形成されている。
2次元MEMSナノインデンター変換器100は、第1の、即ちZ軸の、微小機械コムドライブ120(上下コムドライブとも呼ばれる)と、第2の、即ちX軸の、微小機械コムドライブ130(横コムドライブとも呼ばれる)と、をさらに含む。第1の微小機械コムドライブ120は、第1及び第2の駆動コンデンサ122a、122bによって形成される駆動コンデンサ122(Z軸アクチュエータと呼ばれる)と、第1及び第2の検出コンデンサ126a、126bによって形成される第1の変位コンデンサ126(+Z軸センサと呼ばれる)を有する変位センサコンデンサ124と、第3及び第4の検出コンデンサ128a、128bによって形成される第2の変位コンデンサ128(−Z軸センサと呼ばれる)と、を含む。第2の微小機械コムドライブ130は、第1の駆動コンデンサ132a(+X軸アクチュエータと呼ばれる)及び第2の駆動コンデンサ132b(−X軸と呼ばれる)によって形成される駆動コンデンサ132(X軸アクチュエータと呼ばれる)と、第1の変位コンデンサ134a(+X軸センサと呼ばれる)及び第2の変位コンデンサ134b(−X軸センサと呼ばれる)とを有する変位センサコンデンサ134と、を含む。以下でより詳細に説明されるように、各駆動コンデンサ及び各検出コンデンサは、固定された又は可動の指又はコムを複数重ね合わせたコム形のコンデンサである。
また以下でより詳細に説明されるように、2次元MEMSナノインデンター変換器100は、それがなければ可動の指又はコムのオーバートラベルによって生じるかもしれない、コムドライブ120、130のコム型コンデンサへの損傷を防止するため、可動プローブ104の変位を制限するよう構成された4つのクラッシュプロテクタ160,162、164、166をさらに含む。
図に示すように、2次元MEMSナノインデンター変換器は、長さ(L)と、幅(W)と、厚さ(T)を有する。一実施形態によると、2次元MEMSナノインデンター変換器100は、7.0mmの長さ(L)、2.8mmの幅(W)、0.30mmの厚さ(T)を有しており、2次元MEMSナノインデンター変換器100が1次元MEMS変換器より50μm薄い以外、寸法は1次元MEMSのものと類似している。2次元MEMSナノインデンター変換器100の外側寸法は、1次元MEMS変換器のものと同じであるかわずかに小さいので、2次元MEMSナノインデンター変換器100は、機械的試験のための1次元MEMSとともに使用する同じTEMホルダー内に適合し得る。一実施形態によると、厚さT(例えば、0.30mm)及び幅W(例えば、2.8mm)は、変換器をTEMに収めるための限界寸法である。FEI社のTEMでは、最大許容厚さ及び最大許容幅は、TEMのポールギャップとTEMホルダーの形状によって制限されており、それぞれ2.0mmと4.0mmである。2次元MEMSナノインデンター変換器100の外側寸法は、そのようなFEI社のTEMにそれを収めることができる。
一実施形態によると、動作の安定性向上のために、2次元MEMSナノインデンター変換器100は、0.1mm×0.1mm×1.5mmのインデンターチップ205を採用している。比較すると、一実施形態によると、1次元変換器は、0.2mm×0.2mm×1.8mmのインデンターチップを取り付けている。2次元MEMSナノインデンター変換器100のインデンターチップ205のさらに小さい寸法は、可動プローブ104の質量を減らすことによって、動的操作におけるその帯域幅を増大している。
図3は、一実施形態に係る、図1の2次元MEMSナノインデンター変換器の分解図であり、インデンターチップ205を含んでいる。図2の態様によると、2次元MEMSナノインデンター変換器100の本体102は、基板204上に、3つの層、金属層201、デバイス層202,酸化層203を含む。
一実施形態によると、基板204は、p型100シリコンで構成される。一実施形態によると、基板204は、厚さ250μmを有し、100μmの直径を有するインデンターチップ205だけでなく、インデンターチップ205を可動プローブ104に固定する数10μmの厚さのエポキシ層を収容するのに適している。
酸化層203は、基板204からデバイス層202を絶縁する。一実施形態によると、酸化層203は、1.5μmの酸化層であって、許容可能なレベル(例えば、1pf)で寄生容量を保持し、製造コストを抑えている。
一実施形態によると、第1及び第2の微小機械コムドライブ120、130と、ばね106,108,110,112と、クラッシュプロテクタ160,162,164,166とは、デバイス層202から形成される。一実施形態によると、デバイス層202は、p型(100)シリコンで構成される。一実施形態によると、デバイス層202は、50μmの厚さである。一実施形態によると、デバイス層202の厚さは、深堀り反応性イオンエッチング(DRIE)製造法の要件に基づいて決定される。一実施形態によると、6μmのフィーチャーがデバイス層上に形成され、これらのフィーチャーとデバイス層202の厚さのアスペクト比は10:1であり、大きな誤差なくDRIEエッチング法を使用することが可能である。以下により詳細に記載するように、複数の電極が、様々なデバイス、例えば、インデンターチップ205、微小機械コムドライブ120,130への電気経路を提供するデバイス層202上に形成されている。
金属層201は、デバイス層202に置かれ、2次元MEMSナノインデンター変換器100の電気配線又は電極と、プリント板(PCB)などの回路基板(図示なし)との電気的接続に使用される。一実施形態によると、金属層201は、金で構成されている。可動プローブ104は、デバイス層202、酸化層203、基板層204から形成される。
一実施形態によると、2次元MEMSナノインデンター変換器100は、シリコンオンインシュレータ(SOI)ウェハを用いて微小機械にされる。一実施形態によると、高電導性を実現するために、高濃度のホウ素がドープされたp型シリコンウェハがデバイス層及び基板層に使用されている。一実施形態によると、ウェハの抵抗率は、0.005−0.02Ω・cmである。一実施形態によると、上述したように、第1及び第2の微小機械コムドライブ120、130は、深堀り反応性イオンエッチング(DRIE)技術を用いて製造される。
一実施形態によると、基板層204は、インデンターチップ205を受け取るよう構成された溝206を形成するため、深くエッチング処理されている。一実施形態によると、基板層204の厚さは、インデンターチップ205だけでなく数10μmのエポキシ層(図示なし)を含めるため必要に応じて選ばれる。一実施形態によると、インデンターチップ205は、例えば、ダイヤモンドチップを備える。一実施形態によると、深堀り溝206は、基板204上に微細加工される。
深堀りで長い溝206は、2次元MEMSナノインデンター変換器100に損傷を与えることなく、インデンターチップ205などのインデンターチップを取り付けることを可能にする。取り付け溝206の長くて細いという特徴は、インデンターチップ205をZ軸114に一致させることに役立つ。一実施形態によると、溝206は開いた側と閉じた側があり、取り付け溝206の開いた側は、インデンターチップ205を取り付け後、エポキシを塗布することが可能である。一実施形態によると、インデンターチップ205は、エポキシを用いて取り付け溝206に取り付けられる。一実施形態によると、インデンターチップ205は、導電性エポキシを用いて取り付け溝206に取り付けられる。
インデンターチップ205と可動プローブ104との間の接触領域は、2次元MEMSナノインデンター変換器100の他の部分から絶縁されており、微小機械コムドライブ120,130を含んでいる。そのような電気的絶縁は、2次元MEMSナノインデンター変換器を電気測定及び電子顕微鏡のその場試験のアプリケーションに使用することができる。ナノインデンテーション中の電気測定は、電気測定変化とナノインデンテーションとの間の相関関係を提供する。電気的に絶縁された導電性インデンターチップ205はまた、その場電子顕微鏡試験に電子を放電するために使用され得る。
電子が充電されたインデンターチップは、大きな引力を引き起こすことができ、それはすぐに接触することをもたらし得る。インデンテーション荷重/無荷重曲線に引力を付加することによって測定データが歪められる理由から、このような蓄積した電子による引力は、望ましくない。したがって、電気的に絶縁された導電性先端を接地することによって電子を放電することは、現場の電子顕微鏡試験におけるアプリケーションのための2次元MEMSナノインデンター変換器100の性能を向上させる。
図4は、本開示の一実施形態に係る、2次元MEMSナノインデンター変換器100の部分を示す上面図である。図4に示すように、及び以下の図5によって詳細に示すように、それぞれの第1及び第2のZ軸駆動コンデンサ122a、122bと、第1及び第2のZ軸検出コンデンサ126a、126bと、第3及び第4のZ軸検出コンデンサ128a、128bと、第1及び第2のX軸駆動コンデンサ132a、132bと、第1及び第2のX軸検出コンデンサ134a、134bとは、複数の対又はセットのコムコンデンサを含み、各対のコムコンデンサの1つのコムは、本体102から延設された静止した固定電極コムであり、もう1つは可動プローブ104から延設された可動電極コムである。
一実施形態によると、図4によって示されるように、第1及び第2のZ軸駆動コンデンサ122a及び122bのそれぞれは、Z軸アクチュエータ122がZ軸114に沿って可動プローブ104を駆動するための電極コム対を合計で24個有するように12個の電極コム対を有しており、第1、第2、第3、第4の検出コンデンサ126a、126b、128a、128bのそれぞれは、Z軸センサコンデンサ124が可動プローブ104のZ軸差動変位検出のための電極コム対を合計で64個有するように13個の電極コム対を有する。また、図4の実施形態によって示されるように、+X軸駆動コンデンサ132a及び−X軸駆動コンデンサ132bのそれぞれは、X軸駆動コンデンサ132が、X軸116に沿って可動プローブ132の横方向駆動のための電極コム対を合計で26個有するように、13個の電極コム対を有しており、+X軸検出コンデンサ134a及び−X軸検出コンデンサ134bのそれぞれは、X軸変位検出コンデンサ134が、可動プローブ104のX軸差動変位検出のための電極コム対を合計で28個有するように、14個の電極コム対を有している。一実施形態によると、図5によって以下に詳細に記述するように、各駆動電極コム対は、130μm×50μmの重ね合わせ領域を有し、各変位検出電極コム対は、330μm×50μmの重ね合わせ領域を有する。
図4にさらに示すように、複数の電極が、第1(Z軸)及び第2(X軸)のコムドライブ120,130とインデンターチップ205との電気経路を提供するため、デバイス層202に形成されている。図4の実施形態によると、電極170は、ばね110、112及び可動プローブ104を介して第1、第2、第3、第4のZ軸検出コンデンサ126a、126b、128a、128bの可動電極コムにまで延長している。電極171a及び171bは、第3及び第4のZ軸検出コンデンサ128a、128bの固定電極コムにまで延長している。電極172a及び172bは、第1及び第2のZ軸検出コンデンサ126a、126bの固定電極コムにまで延長している。電極173a及び173bは、第1及び第2の駆動コンデンサ122a、122bの固定電極コムにまで延長している。電極174a及び174bは、X軸駆動コンデンサ132a、132bの固定電極コムにまで延長している。電極175a及び175bは、X軸検出コンデンサ134a、134bの固定電極コムにまで延長しており、電極176は、ばね106及び可動プローブ104を介して、第1及び第2のX軸駆動コンデンサ132a、132bの可動電極コム、第1及び第2のX軸検出コンデンサ134a、134bの可動電極コムにまで延長している。電極177は、ばね108及び可動プローブ104を介して、インデンターチップ205にまで延長しており、電極178は接地接続の役割をしている。一実施形態によると、図3を参照すると、電極はデバイス層202の厚さ50μmを貫通する溝によって互いに別れている。
図5は、一実施形態に係る、コムドライブ120のZ軸駆動コンデンサ122bの静電駆動コムコンデンサ140及び142の2つのセットを一般的に示す図である。駆動コンデンサ122bは、2つ以上の駆動コムコンデンサのセット(上記の図4を参照)を含んでいるが、説明を容易にするため、2つの駆動コムコンデンサのセット(例えば、140及び142)のみが、図5に示されている。なお、駆動コンデンサ122bに関して記載されているが、以下の記述は、Z軸駆動コンデンサ122a、及びX軸駆動コンデンサ132a、132bに適用することに留意すべきである。
静電駆動コムコンデンサ140及び142のそれぞれは、本体102から延設して固定電極コム144、146と、可動プローブ104の横端にまで延設し、可動プローブ104とともに動く可動電極コム148,150を含んでいる。一実施形態によると、固定電極コム144と可動電極コム148との間の隙間152で示される小さい隙間は、可動電極コム148と固定電極コム146との間のより大きい隙間154より3倍小さい隙間距離を有する。一実施形態によると、固定電極コム144及び可動電極コム148にバイアスがかけられたとき、より小さい隙間152での静電力は、より大きい隙間154での静電力より9倍大きくなり、それによってインデンテーション方向116に可動プローブ104を引っ張る差動力が作成される。一実施形態によると、隙間152は、約10μmの隙間距離であり、隙間154は、約30μmの隙間距離である。
図5において、固定電極コムと可動電極コムとの間の重ね合わせ幅bは、156で示されている。さらに、静電駆動コンデンサ142を通る断面A−Aは、158で示すように、固定電極コム146と可動電極コム150との間の重ね合わせ高さhを示す。
駆動コムコンデンサ140、142にバイアスがかかっておらず、そしてMEMSナノインデンター変換器100が試験サンプルにかみ合っていないとき、駆動コムコンデンサ140,142は、それらの“ホーム”又は“ゼロ”の位置に示されている。そのようなものとして、図5によって示されるように、より大きい隙間154は、より小さい隙間152より3倍大きい隙間距離を有している(例えば、可動電極は、固定された電極間に等距離で配置されていない。)。
上述したように、可動プローブ104及びインデンターチップ205を駆動する、又は変位するため、固定電極と可動電極との間、例えば、固定電極コム144と可動電極コム148との間、に静電力を発生させるように、バイアス電圧が、駆動コンデンサ122bの静電駆動コムコンデンサ(同様に駆動コンデンサ122aの静電駆動コムコンデンサ)に印加される。静電力は、いわゆるホーム位置に可動プローブ104を保持しようとするばね106,108,110、112からの反抗力に対抗して、インデンテーション方向116に可動プローブを動かす。一実施形態によると、バイアス電圧は、固定電極コム、例えば、固定電極コム144、146に印加され、一方、対応する可動電極コム、例えば、可動電極コム148,150は、バイアス電圧に関連して固定電圧、例えば、グランドとなる。
駆動コンデンサ122bは、印加されたバイアス電圧からもたらされる静電駆動コムコンデンサ(例えば、図4における静電駆動コムコンデンサ140、142)の各セットの容量の変化で発生する静電力を利用している。駆動コンデンサ122bの容量は、固定電極と可動電極との間の隙間を変化させることによって、又は固定電極と可動電極(例えば、図4の固定電極コム144及び可動電極コム148)の重ね合わせ領域を変化させることによって、変化させることができる。隙間変化の動作によって、2つの電極コム、例えば、固定電極コム144及び可動電極コム148、との間に発生した静電力は、以下の式1で表わすことができる:
ここで、Fdは方向を変化する隙間への静電力、εは誘電体誘電率、bは電極の重ね合わせ幅(図4参照)を表し、hは電極の重ね合わせ高さ(図4参照)、dは電極間の隙間(図4参照)、Vは印加される電圧又はバイアス電圧である。
一実施形態によると、上述した図3を参照すると、微小機械コムドライブ120、130の駆動コムコンデンサ及び検出コムコンデンサの電極コムは、デバイス層202を貫通するように形成された深溝によって電気的に絶縁される。一実施形態によると、以下の図4を参照すると、駆動コンデンサ120のコムコンデンサのプレート又は電極と検出コンデンサ130,132,134,136との間の重ね合わせ領域を調整するため、デバイス層202の厚さが調整される。例えば、重ね合わせ領域を増大させるため、デバイス層202の厚さを増大させてもよい。
一実施形態によると、微小機械コムドライブ120,130の駆動コンデンサ122,132は、上述したように、隙間閉鎖スキームによって、もしくは重ね合わせ領域変化スキーム(横操作とも呼ばれる)によって、操作できる。隙間閉鎖スキームに合致するように操作されたとき、駆動コンデンサ122,132は、隙間変化に関して大きい容量の変化を作ることによって、比較的大きな力を発生させることができるが、電極間の制限された隙間によって比較的小さい移動範囲となる。反対に、重ね合わせ領域変化スキームは、電極隙間によって移動が制限されないため、大きな移動範囲を有することができるが、隙間閉鎖駆動スキームと比較すると、大きな力を提供していない。ナノインデンテーションアプリケーションは、大きな移動範囲(例えば、1μmの移動)を要求しないが、大きなインデンテーション力(例えば、500μN)を要求することに留意する。そのようなものとして、一実施形態によると、2次元MEMSナノインデンター変換器100は、上述した隙間閉鎖駆動スキームを採用している。
一実施形態によると、2次元MEMSナノインデンター変換器は、上述したように、上下軸、即ちZ軸静電駆動コンデンサ122(第1及び第2の駆動コンデンサ122a、122bによって形成される)と、横方向軸、即ちX軸静電駆動コンデンサ132(第1及び第2の駆動コンデンサ132a、132bによって形成される)を採用している。一実施形態によると、駆動コンデンサ122によって提供される最大横力(例えば、インデンテーション方向114のZ方向)は、552μNと推定され、1次元変換器によって提供される最大インデンテーション力の約半分である。一実施形態によると、第1及び第2のX軸駆動コンデンサ132a、132bによって可動プローブ104の各側面に提供される最大横力は、229μNと推定される。この横力は、最大インデンテーション力が適用されているときでさえ、2次元MEMSナノインデンター変換器が側面摩擦係数を測定できるようにしている。
一実施形態によると、以下に詳細に記載されるように(図12参照)、大きな移動距離は要求されないように、2次元MEMSナノインデンター変換器は、閉ループフィードバック制御スキームを使用して、ナル先端位置(インデンターチップが本体102に関連して可動プローブ104を“ホーム”位置に保って静止している)に操作している。一実施形態によると、2次元MEMSナノインデンター変換器の移動制限は、ソフトウェア制御によって1μm以内に制限される(図1及び図12参照)。
図6は、駆動コンデンサ122a、122bを介してZ軸114に沿って上下駆動又は移動するよう提供される静電駆動コンデンサ122と、駆動コンデンサ132a、132bを介してX軸115に沿って横駆動又は移動するよう提供される静電駆動コンデンサ132の詳細な性能記述を示す表1である。表1において、公称隙間の絶縁破壊電圧は、パッシェンの法則を使用して推定されており、絶縁破壊電圧とは隙間と圧力の関数として説明される。推定された値は、周囲の条件の場合によるもので、2次元MEMSナノインデンター変換器が高真空中で操作されているとき、より高くなり得る。最大静電力は、絶縁破壊電圧に近い300Vが印加されたときの場合に見積もられる。移動制限に関して、104の移動がクラッシュプロテクタを介して物理的に制限されることに留意する。
一実施形態によると、図7に関して以下に記載されるように、差動容量検出スキームが、Z軸114に沿って可動プローブ104とインデンターチップ205のインデント、即ち上下変位とX軸115に沿った横変位を測定するように採用されている。可動プローブ104の移動は、本体102から延設される、静止、即ち固定電極コムと可動プローブ104から延設される可動電極コムとの間の容量変化と一致する。一般的に、可動プローブ104のナル、即ちホーム位置からの変位における変化は、可動電極コムと静止電極コムとの間の容量比に比例するセンサ電子機器の信号出力から測定される。
図7は、一実施形態に係る、微小機械コムドライブ120の検出コンデンサ124の検出コンデンサ126a、126b、128a、128bの構成及び電気的動作を一般的に示す概略図である。微小機械コムドライブ120の駆動コンデンサ122の静電駆動コムコンデンサ122a、122bと同様に、図5によって上記に示すように、検出コンデンサ126a、126b、128a、128bのそれぞれは、固定及び可動電極コムのセットを複数含んでいる。微小機械コムドライブ120の微小機械の検出コンデンサ124のZ軸検出コンデンサ126a、126b、128a、128bに関して記載されているが、以下の記載は、微小機械コムドライブ130のX軸検出コンデンサ134のX軸検出コンデンサ134a、134bにも同様に適用するのに留意する。
図の場合、各検出コンデンサ126a、126b、128a、128bは、コムコンデンサが3セットのみ有するものとして、図6に示されており(図4に示されるように13セットではなく)、それぞれのセットは、本体に連結された固定された電極と可動プローブに連結され、共に変位可能な可動電極を有する。図6において、可動電極180は、検出コンデンサ126a、128aによって分けられていることに留意し、そして可動電極182が検出コンデンサ126b、128bによって分けられていることに留意する。
一実施形態によると、2次元MEMSナノインデンター変換器100は、可動プローブ104の変位を検出して測定する差動容量検出スキームを採用している。可動プローブ104が、例えば、バイアス電圧のアプリケーションから駆動コンデンサの固定電極コムに変位したとき、固定電極コムと各検出コンデンサ126a、126b、128a、128bの可動電極コムとの間の隙間は変化し、順番に各検出コンデンサ126a、126b、128a、128bの容量が変化する。
図6における各検出コンデンサ126a、126b、128a、128bの容量(例えば、各電極コム対の容量の合計)は、それぞれCA、CB、CC,CDで表される。容量値CA、CB、CC,CDは、検出回路60に提供される容量値CA、CB、CC,CDを表す電気信号50である(図1参照)。可動プローブ104がバイアスのかかっていない状態で、試験サンプルにかかっていないとき(例えば、可動プローブ104が“ホーム”位置にある)、これらの容量の既知の基準値に対する容量CA、CB、CC,CDの値変化に基づいて、インデンテーション方向116(例えば、z軸)、横方向(x軸)、y軸についての可動電極104の回転にける可動電極104の変位が測定され得る。
インデンテーション方向116における可動電極104の変位は、以下の式2で表される容量組み合わせ率(CCRI)に基づいて決定される:
可動電極104がインデンテーション方向116に移動したとき、(C
A+C
D)の合計は増加する一方、(C
B+C
C)の合計は減少し、{(C
A+C
D)−(C
B+C
C)}の増加をもたらす。したがって、CCR
Iの値は、インデンテーション方向116(例えば、z軸)における可動プローブ104の変位に比例した量によって、C
A、C
B、C
C,C
Dに対する既知の基準値を使用して決定されたCCR
Iの基準値に関連して増加する。
横方向(例えば、x軸)の可動電極104の変位は、以下のように式3によって表される容量組み合わせ率(CCRL)に基づいて決定される。
可動プローブ104が横方向(x軸)に移動するとき、(CA+CB)の合計が増加する一方、固定及び可動電極コムの重ね合わせ領域の変化によって(CC+CD)の合計が減少し、{(CA+CB)−(CC+CD)}の増加をもたらすように、検出コンデンサ126a、126b、128a、128bの可動電極コムは、固定電極コムに関連して横方向に移動する。したがって、CCRLの値は、横方向(例えば、x軸)における可動プローブ104の変位に比例した量によって、CA、CB、CC,CDに対する既知の基準値を使用して決定されるCCRLの基準値に関連して増加する。
184で表される、y軸についての可動電極104の回転移動は、以下の式4によって表される容量組み合わせ率(CCRR)に基づいて決定される:
可動プローブ104が時計回りの方向に回転するとき、(CB+CD)の合計が増加する一方、回転動作によって(CA+CC)の合計が減少し、{(CB+CD)−(CA+CC)}の増加をもたらす。したがって、CCRRの値が、可動プローブ104の角回転に比例した量によって、CA、CB、CC,CDに対する既知の基準値を使用して決定される、CCRLの基準値に関連して増加する。
単純な2極静電容量センサとは違って、上述した差動容量センサは、温度変化及び湿度変化などの周囲の変化にかかわらず、より正確な変位測定を提供する。これは、様々な環境条件におけるナノスケールで測定するアプリケーションのための差動検出スキームを活用することの大きな利点である。
図8は、第1の微小機械コムドライブ120の上下軸、即ちZ軸変位コンデンサ126a、126b、128a、128bと、第2の微小機械コムドライブ130の横軸、即ちX軸変位コンデンサ132a、132bの詳細な性能情報を示す表2である。1pFの寄生容量が変位検出コンデンサの非線形動作を推定するのに使用されているのに留意する。
上述したように、2次元MEMSナノインデンター変換器100は、可動プローブ104のZ軸の移動とX軸の移動の両方を検出する。上述したように、可動プローブ104は、ナル又はホーム位置で操作されるため、変位検出コンデンサ126a、126b、128a、128b、132a、132bは、ロングレンジの直線性を要求していない。これは、電極コム対間の隙間を減らし、それによって変位検出コンデンサ126a、126b、128a、128b、132a、132bの変位検出感度を上げている。一実施形態によると、2次元MEMSナノインデンター変換器100は、検出コンデンサ126a、126b、128a、128b、132a、132b間に6μmの隙間距離を有している。この隙間は、1次元MEMS変換器の一実施形態によって採用されている10μmの隙間距離より小さい。したがって、実際は操作方向への容量勾配である変位感度は、上下方向、即ちZ方向が、10fF/μmの感度である1次元MEMS変換器のものより2倍感度が良いことを示している。一実施形態によると、横移動変位検出は、1次元MEMS変換器の上下移動検出のものより50%感度が良い。そのような感度値は、各変位センサの変位スケール係数(検出回路からの信号出力に対する変位)に比例する。2次元MEMSナノインデンター変換器100の高感度は、1次元MEMS変換器の電極コム間の隙間距離10μmに比べて、より小さい6μmの隙間距離を用いて達成される。
図9は、一実施形態に係る後ばね110、112及び後ばねに最も近いクラッシュプロテクタ160を一般的に示す図である。一実施形態によると、ばね110,112によって示されるように、各ばね106,108,110,112は、インデンテーション方向116(Z軸)における変位に対する剛性に比べて、横方向(X軸及びY軸)における変位に対してより大きい剛性を有する。したがって、各ばねは、X軸方向に沿って横方向に厚くて長い部分190と、インデンテーション方向に薄くて短い部分192を有する。そのようなばね設計は、そうでないとインデンテーション手順中の摩擦によって発生するであろうX軸方向及びY軸方向における変位軸114からの可動プローブ104のインデンターチップ205の転位を実質的に制限する。そのようなばね特性は、その場のTEMナノインデンテーションにとって、特に、試験表面がインデンテーション方向に垂直でないときに重要である。
前述の通り、クラッシュプロテクタは、それがなければ操作ミスまたは手違いによって生じるかもしれない変換器及びコントローラ機器に対しての永久的な損傷をもたらし得る、微小機械コムドライブ120、130の固定電極コムと可動電極コムとの間で生じる接触を防止している。上述したように、一実施形態によると、クラッシュプロテクタ160,162,164,166は、デバイス層202に作成される(図3参照)。
一実施形態によると、図9におけるクラッシュプロテクタ160によって示されるように、隙間194が本体102と可動プローブ104との間のZ軸(例えば、変位軸114の方向における図2参照)に沿って形成され、隙間196が本体102と可動プローブ104との間のX軸(横方向)に沿って形成される。一実施形態によると、隙間194、196は、駆動コンデンサ120の固定及び可動電極コムと検出コンデンサ130,132,134,136との間の隙間距離(例えば、図4に示す隙間152)より小さい隙間距離を有する。一実施形態によると、クラッシュプロテクタ160,162,164,166は、可動電極104の移動を、固定及び可動電極コム対との間で”クラッシュ”が生じる可能性がないように、電極コム対の最小隙間6μmより小さい、3μmに制限する。クラッシュプロテクタ間の接触は、クラッシュプロテクタの接触部が同じ電極であるとき、変換器に電気的影響を与えない。
2次元MEMSナノインデンター変換器100の静的特性は、有限要素解析 を用いて評価される。一実施形態によると、上下(Z軸)及び横(X軸)移動に対する剛性は、約200N/mに決定されている。その剛性の値は、1次元変換器の経験に基づいて望ましいものである。ばねの剛性が大きすぎると、力の感度が下がるであろう。さらに、ばねの剛性が小さすぎることは、ばねの細い部分を製造するためのオーバーエッチングに起因するその場製作を減らしている。
図10は、一実施形態に係る、2次元MEMS変換器100の詳細な静的特性を示す表3である。横の剛性は、可動プローブ104ではなく、インデンターチップ205の変位とインデンターチップ205に加えられる力に基づいて推定されていることに留意する。横の剛性は、インデンターチップ205の長さ次第で変化する。表3に示された値は、インデンターチップ205が可動プローブ104から0.5mmまで延設された配置を表す。
一実施形態によると、ばね106,108,110,112の応力解析が変位方向116におけるZ軸114に沿って1μmまで変位された可動プローブ104を用いて行われる。後ばね110、112上の1μmの上下移動の最大応力は、24MPaであると測定されている。X軸115に沿って1μmの横移動のため、前ばね106,108の最大応力は、20MPaであると測定されている。そのような応力は、7GPaの単結晶シリコンの降伏強度よりはるかに小さい。そのような小さい応力は、1μmの移動範囲で、2次元MEMS変換器100が損傷を受けず、あらゆる塑性変形をせず、かつ、ばねが弾性変形を伴って直線性を維持することができることを示している。
MEMSナノインデンター変換器100の動的特性はまた、有限要素解析 を用いて調べられる。一実施形態によると、上下(Z軸)方向に対する2次元MEMSナノインデンター変換器の共振周波数は、3.2kHzであると測定されている。対応する動的モードは、上下方向に対する並進発振である。一実施形態によると、横方向に対する共振周波数は、4.1kHzであると測定されている。対応する動的モードは、横方向に対する回転発振である。
そのような共振周波数は、一般的に1kHzより低い共振周波数を有する他の既知の市販のMEMSではないトライボメータより高い。これらの高共振周波数は、同等の剛性を有しつつ、上下変換モードのためのより小さい質量と、横回転モードのためのより小さい慣性モーメントを使用することによって達成される。この高共振周波数又は高変換帯域幅は、より速い整定及びより良い制御性に寄与している。整定時間は、共振周波数に反比例して、
として表されることができ、tsは整定時間、Qはシステム品質係数、fnは共振周波数である。式によって示されるように、高周波数は整定時間をより短くする。
一実施形態によると、図12を参照して以下に詳細に記載されるように、2次元MEMSトライボメータ100は、ナル位置で閉ループフィードバック制御を調整するインデンターチップ250を操作するように構成されている。この操作において、閉ループ制御における追従誤差は、測定誤差に追加される。より高い帯域幅及びより良い制御を有することは、制御追従誤差によって引き起こされる測定誤差を減らすための操作に重要である。
図11は、一実施形態に係る、2次元MEMS変換器100の詳細な動的特性である表4を示す。機械的品質係数は、1次元MEMS変換器の動的特性に基づいて作成される仮定値である。
一実施形態によると、100μNの摩擦力及び138μNのバランス力(差動横センサ134がバランス力でゼロにされる)が2次元MEMSナノインデンター変換器100に加えられるとき、変位分布が測定される。評価結果は、横変位センサ134がバランスをとっているとき(例えば、センサはゼロを読んでいる)、インデンターチップ205が13nmの変位を有することを示している。横変位センサ134とインデンターチップ205の実際の移動との相違は、摩擦力とバランス力(制御力)とともにインデンターチップ205に負荷されるモーメントによって引き起こされる。この13nm変位は、摩擦推定に対するばね力を負荷することによって、2.1μNの摩擦過大評価(2.1%摩擦係数測定誤差)をもたらす。
TEMホルダーを回転することは、使用者が、より興味深く明確な材料構造形状及び動きを得るために異なる視野角で試験サンプルを調べることを可能にしている。最初の軸(アルファ傾斜)に沿った、そのような回転は、材料の調査には役に立つが、これは重力に起因する可動電極変位によって性能低下を引き起こし得る。この問題は、重い可動部品及び重力によって引き起こされる大きな変位を有するプローブにとってより深刻である。
2次元MEMSトライボメータには、それは質量が小さく、重力によって引き起こされる変位が小さいので、アルファ傾斜操作が有利である。一実施形態によると、インデンターチップ105を含む可動電極の総推定質量は、0.5mgである。30度のアルファ傾斜で、トライボメータ上の重力は、先端をX軸に対して約10nm移動させる。それをナル先端位置に引き戻すため、X軸アクチュエータは、2.4μNのバランス力のみを加える必要がある。この2.4μNのバランス力は、最大X軸力299μNの1%より小さい。
図13は、シリコンマイクロマシニング技術を用いて2次元MEMSナノインデンター変換器100の製造工程220の一実施形態を一般的に示す工程フロー図である。工程220は、出発原料222で開始する。一実施形態によると、出発原料は、シリコンオンインシュレータ(SOI)ウェハで構成される。一実施形態によると、上述したように、高電導性を達成するため重ホウ素ドープp型シリコンウェハがデバイス層202及び基板層203に使用されていた。一実施形態によると、ウェハの抵抗率は、0.005−0.02Ω・cmの範囲である。
224で、酸化物が基板層204の前面又は背面側に堆積される。226で、224に堆積した酸化物が、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)によって、望ましい形状及び寸法の可動プローブ104を含んだパターンを有するマスク(フォトレジスト)を使用して、削られる。
228で、金属がデバイス層202に堆積され、望まれたパターンを有するマスクの形成及び深堀り反応性イオンエッチング(DRIE)によるデバイス層202のエッチングによって230に続く。232で、基板層204がそれらの背面側にパターン化された酸化物を介してエッチング(例えば、DRIE)される。234では、224で堆積された酸化層が取り除かれ、すでにエッチングされた基板層204を介して絶縁層203がエッチングされる。
図13は、ナノトライボロジー試験中にナル又はホーム位置でインデンターチップ205を調整する及び保持するフィードバック制御モードを使用する2次元MEMSナノインデンター変換器100の操作のため、一実施形態に係る、閉ループ制御スキーム300を一般的に示す概略図である。一実施形態によると、図示されるように、閉ループ制御スキーム300は、X軸及びZ軸PIDコントローラ302,304及びX軸及びZ軸Q−コントローラ306,308を含んでいる。
一実施形態によると、インデンターチップ205のナル位置を保持するため、X軸及びZ軸の両方がゼロ基準入力310、312とともに閉ループ制御によってバランスの取れた位置に調整される。一実施形態によると、既定のX軸ピエゾ駆動、314で示されるように、開ループ操作とともにインデンターチップを横方向(例えば、X軸)に移動する。ピエゾ駆動中、インデンターチップ205の位置は、X軸アクチュエータ132及びX軸変位センサ134(図2参照)とともに、PIDコントローラ302を経由して、PID制御することによってゼロに調整される。
一実施形態によると、Q−制御は、TEM内部の小さいダンピングによって引き起こされる先端の振動を抑制するために実行される。Q−制御は、3つの命令によってシステムダンピングを増加するデジタルダンピング制御アルゴリズムである。2次元MEMSナノインデンター変換器100で使用するために適したそのようなQ−制御の例は、本出願と同じ譲受人に譲渡され、参照として本明細書に組み込まれている米国特許出願番号12/498238によって記載されている。一実施形態によると、Q−制御アルゴリズムは、周波数に依存する可変時間遅延を出力信号に提供する位相シフトの伝達関数を利用して統合されている。位相シフト信号は、適切なゲインとともにシステム入力に加えられる。システムダンピングは、ダンピングコントローラのゲインを調整することによって操作される。ダンピング制御の明らかな証拠及びTEM内部のより良い振動制御がダンピング制御された反応から観察される。実行されたQ−制御は、様々な条件においてシステムダンピングを効果的に操作できる。このダンピング制御はまた、PID制御におけるサブシステムとして安定して機能する。
一実施形態によると、ゼロ位置のZ軸変位調整は、Z軸ピエゾアクチュエータ閉ループ制御によって行われる。既定のZ軸変換器負荷216が、垂直力としてトライボロジー試験中に加えられる。また、Z軸の振動を抑制するためのQ−制御も実行される。サンプル(図1におけるサンプル36)のスクラッチ試験のため、横力と等しいX軸変換器力と、垂直力と等しいZ軸変換器力とを比較した値は、摩擦係数の値を提供する。2次元MEMSトライボメータに加えられる力は、サンプルの反応と同じなので(ナル位置でばね力が加えられないと仮定して)、変換器力はZ軸及びX軸に対するサンプル反応として記録される。一実施形態によると、図示されるように、2つのQ−コントローラ208、208は、2つの異なった方向に実装され、同時に操作される。この同時のQ−コントローラ操作は、それらの方向及び操作に対する振動モードが独立しており、互いに連結されていないことから、可能である。
一実施形態によると、キャリブレーションセットアップは、Hysitron社のナノインデントシステムを用いて構築されており、ステッピングモータ、ピエゾスキャナー、変換器、及びそれらのコントローラ機器と駆動ソフトウェアを有する。最も一般的なナノインデンテーション操作スキームである垂直操作の代わりに、システムは、TEMを配置するための空間を作るため水平操作に変更される。一実施形態によると、2次元トライボメータは、基準変換器でインデンターチップを押すことによって調整される。一実施形態によると、基準変換器は、レーザ干渉計較正ナノDMA変換器で構成される。先端を2つの中央プレートに維持することによって、それが水平に操作されるとき、ナノDMA変換器は、1つの中央プレートのみを有する変換器より良い安定性を有する。一実施形態によると、1mmの直径のサファイア先端は、実行可能な接触領域を増やし、圧子の貫通によってキャリブレーション誤差を最小化するため、DMA上に取り付けられる。
一実施形態によると、TEMホルダーには3軸のマイクロマニピュレータが取り付けられており、2次元MEMSトライボメータはマニピュレータとともに変換器に大まかに近づけられている。一実施形態によると、一度、2次元MEMSトライボメータの先端が基準変換器の先端(例えば、サファイア先端)から1mmの距離内に配置されると、自動接近機構(例えば、Hysitron社の自動接近機構)が実行される。Hysitron社の自動接近機構は、ほんの数μNの接触力で先端を安全に接触させることができる。接触させた後、基準変換器は、2次元MEMSトライボメータを駆動する。両方の変換器からのセンサ出力は、そのときに記録される。上下及び横方向の変位センサと剛性の両方が、この方法で較正され得る。2次元MEMSトライボメータは、周囲のノイズに対して比較的反応せず、それが小さな質量であり、重力で誘発される変位が小さいことから、そのようなキャリブレーションに非常に適している。
要約すれば、微小機械コムドライブを利用した微小2次元MEMSナノインデンター変換器、例えば、微小機械コムドライブ119を利用した2次元MEMSナノインデンター変換器100(図2参照)が記載されている。本開示によって記載されたMEMSナノインデンター変換器は、電子顕微鏡だけでなく周囲条件にも使用され得る。ナノインデンターとその場TEMナノメカニカル試験器としてのすべての要件は、設計及び製造を通して考慮されており、開発された2次元MEMSナノインデンター変換器は、例えば、物理的寸法、最大力、ばね剛性、力感度、動的帯域幅、移動範囲、及び材料制限などの要求仕様を満たす。MEMSナノインデンター変換器及びHysitron社の機器での実験結果は、優れた機器の互換性及び汎用性の高い機械的な試験機能を示している。インデンテーション、トポグラフィースキャン、及び動的試験機能は、繰り返し可能で頑丈なナノインデンター操作から証明されている。MEMSナノインデンター変換器100はまた、様々なTEMホルダーと物理的に統合でき、定量的なその場TEMナノメカニカル試験アプリケーションを大きい変換器のサイズによって妨げられる様々なTEMに拡張する。本開示に係るMEMSナノインデンター変換器、例えば、2次元MEMSナノインデンター変換器100はまた、その場の機械的試験アプリケーションのためのSEM(走査型電子顕微鏡 )に組み込むこともできる。
これらのアプリケーションに加えて、本開示に係る2次元MEMSナノインデンター変換器は、様々な機器と統合されることによって、様々なアプリケーションに活用することができる。例えば、その高帯域幅の動的特性とともに、MEMSナノインデンター変換器は、高速撮影及び高速モジュラスマッピングのために使用できる。高帯域幅特性は、また、高周波数DMA試験機能を提供する。高い機械的品質係数とともに小さいダンピング特性は、MEMSナノインデンター変換器が共振周波数近傍に操作されたとき、サンプルの相互作用に対する動的応答を敏感にし、サンプル表面に損傷を与えずにトポグラフィー測定のために使用できる。これは、柔らかいサンプル上のインデントの測定精度を高めるために特に有利である。
別の可能なアプリケーションは、その場の電気計測である。先端用の分割された電極線は、インデンテーションをしている間、電気的特性を測定するために使用できる。定量的なその場機械的試験におけるアプリケーションに加えて、その小さなサイズを利用して、MEMSナノインデンター変換器は、様々な精密機械、例えば、小型マニピュレータ、と統合でき、小さいスペースにおいて、機械的特性の検査及び表面改質ができる。
本明細書では特定の実施形態が図示され、記載されているが、本発明の範囲から逸脱せず、様々な代替および/または同等の機器が図示及び記載された特定の実施形態と置き換えられることは、当業者にとって理解できるであろう。この出願は、本明細書で述べられた特定の実施形態のあらゆる改変もしくは変形をカバーしようとしている。したがって、この発明は、特許請求の範囲及びそれと同等のものによってのみ制限されるものではない。
関連出願の参照
本願は、参照によって本明細書に組み込まれている、2010年4月30日に出願された米国仮特許出願第61/330120号の利益を主張するものである。
ナノインデンテーションは、試験サンプルの弾性係数及び硬度などの機械的性質を、例えば、小さな力及び高分解能の変位センサを用いて、定量的に測定する方法である。典型的には、ナノインデンテーションにおいて使用される力は、典型的な変位幅が10μmより小さく、ノイズレベルが典型的に1nm rms.より良い状態において、10mNより小さい。ナノインデンテーションでは、負荷の力と変位を測定することができるナノインデンターが使用されている。その力と変位のデータは、サンプルの機械的特性を測定するために使用される。このサンプル特性評価のために、ナノインデンターは、既知の形状及び既知の機械的特性を有する特徴付けられたチップと一体化されていなければならない。2次元の力及び変位の検出を備えたナノインデンターは、摩擦及び摩耗などの追加の機械的特性を測定するためのトライボロジー用途にナノトライボメータとして使用され得る。
ナノインデンテーション計測における重要な構成要素の1つは、電気入力を機械力に変換し、機械的変位を電気信号に変換する変換器である。うまく設計されたナノインデンター変換器は、例えば、力の範囲を拡大し、最大の力を大きくすることを含み、力の分解能及びシステム帯域幅を向上し、システムノイズを低減するなど、ナノインデンター特性の多くの態様を向上させることができる。
新たなナノインデンテーションアプリケーションの1つは、透過型電子顕微鏡(TEM)内の定量的なその場でのナノメカニカル試験である。この試験方法は、定量的な機械データを測定している間、リアルタイムでサンプルの変形を観察することが可能である。そのような試験機能を実現するため、力を加えて変位を測定することが可能で、定量的な変換器が、TEMホルダーと一体化されているべきである。変換器の物理的大きさは、TEMホルダーの大きさによって制限されており、TEMのポールギャップに依存する。例えば、FEI社によって製造されたTEMホルダーは、4mmの最大許容外径を有しており、小さいホルダー直径のいくつかのTEMは、FEI社のTEMとHitachi社のTEMと互換性を保つために、小さい変換器を必要とする。
上記の観点から、トライボメータの物理的大きさは、小さくされなければならない。より小さいトライボメータを作るために重要なことは、TEM市場データから明らかであり、FEI社及びJEOL社がそれぞれ40%の市場シェアを有し、その他が残り20%を有する。より小さいトライボメータを作ることは、FEI社及び他のいくつかのTEMにその場でのナノトライボロジー試験機能の向上を可能にするであろう。MEMS技術は、性能要件を損なうことなくナノトライボメータを小型化することが可能な1つの技術である。
2009年7月6日に出願され、本開示と同じ譲受人へ譲渡された、米国特許出願番号12/497834(米国特許第8161803号)に記載されるように、1次元(1−D)MEMS変換器が開発されており、これらは参照によって本明細書に組み込まれている。しかしながら、そのようなMEMS変換器は、単軸(例えば、1次元)、即ちインデンテーションの軸に沿った駆動及び検出を提供する。
米国特許第8161803号明細書(米国特許出願番号12/497834)
米国特許第5553486号明細書
米国特許第5869751号明細書
一実施形態は、本体と、本体と関連して連結され、可動のプローブであって、取り外しできるインデンターチップを保持するプローブと、第1の微小機械コムドライブと、第2の微小機械コムドライブと、を含む、微小電気機械(MEMS)ナノインデンター変換器を提供する。第1の微小機械コムドライブは、印加されたバイアス電圧に応じて、インデンテーション方向を含む、第1の軸に沿ってプローブを駆動するよう構成された複数の静電容量アクチュエータを備えたアクチュエータと、第1の軸に関連してプローブの位置をともに示す容量レベルを有する複数の差動容量センサを備えた変位センサと、を含む。第2の微小機械コムドライブは、印加されたバイアス電圧に応じて、第1の軸に垂直である、第2の軸に沿ってプローブを駆動するよう構成された複数の静電容量アクチュエータを備えたアクチュエータと、第2の軸に関連してプローブの位置をともに示す容量レベルを有する複数の差動容量センサを備えた変位センサと、を含む。各静電容量アクチュエータ及び各差動容量センサは電極コム対を備え、各電極コム対は本体に連結された固定電極コムとプローブに連結された可動電極コムとを含む。
一実施形態に係る2次元MEMSナノインデンター変換器を用いたナノインデンテーション試験システムのブロック図である。
一実施形態に係る2次元MEMSナノインデンター変換器の透視である。
一実施形態に係る、図2の2次元MEMSナノインデンター変換器の分解図である。
一実施形態に係る、図2の2次元MEMSナノインデンター変換器の上面図である。
一実施形態に係る静電アクチュエータコムの2つのセットを示す。
一実施形態に係る静電駆動コンデンサの詳細な性能説明を示す表1である。
一実施形態に係る検出コンデンサの差動静電容量検出スキームを示す。
一実施形態に係る上下軸、即ちZ軸変位コンデンサの詳細な性能情報を示す表2である。
一実施形態に係るばね及びクラッシュプロテクタを示す図である。
一実施形態に係る2次元MEMS変換器の詳細な静的特性を示す表3である。
一実施形態に係る2次元MEMS変換器の動的特性を詳述する表4である。
一実施形態に係る2次元MEMSナノインデンター変換器の製造工程を一般的に示すフロー図である。
一実施形態に係る制御スキームの模式図である。
以下の詳細な説明では、符号は、発明が実施され得る特定の実施形態の図として示される本明細書の一部を形成する添付図面に作成されている。この点において、方向用語、例えば、“正面”、“下面”、“前面”、“背面”、“先端”、“後端”などは、図の方向を示す参照として使用される。本発明の実施形態の構成要素は、多数の異なった向きに配置でき、方向用語は例示の目的のために使用され、決して限定されるものではない。他の実施形態が利用されてもよいし、構造的変更又は論理的変更が本発明の範囲を逸脱することなく行われてもよいことは理解されるべきである。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味に捉えることなく、本発明の範囲が添付の特許請求の範囲によって定義される。
本明細書で記載された実施形態によると、微小機械コムドライブが、材料の表面特性を測定するためのナノインデンテーション試験を行うために備えられている。一実施形態によると、微小機械コムドライブは、インデンターチップを含む可動プローブの駆動のための静電アクチュエータとして構成された作動コムと、直交する2方向だけでなく角度のある回転方向における変位検出を提供するための変位センサとして構成された4つの検出コムを含む。
図1は、本開示に係る2次元MEMSナノインデンター変換器100を用いたナノメカニカル試験システム30の一実施形態を一般的に示すブロック図である。2次元MEMSナノインデンター変換器100、それに実装されたインデンターチップ205を含んでいることに加えて、システム30は、ナノインデンテーション及びナノスクラッチを経て試験されるため、表面38を有する試験サンプル36を保持するよう構成されたプラットフォーム34と、インターフェイス44を介してコンピュータ42と通信するコントローラ40を含んでいる。試験システム30は、少なくともその場サンプル試験に適している。
一実施形態によると、2次元MEMSナノインデンター変換器100は、水平方向(x及びy次元)に直交する垂直方向(z次元)におけるインデンターチップ205の変位、及びプラットフォーム34に関連する回転動作の変位を示す検出回路60の容量信号50を提供するよう構成されている。一実施形態によると、検出回路60は、容量信号50から電圧信号51に変換する。一実施形態によると、コントローラ40は、電圧信号51をデジタル信号に変換し、デジタル信号をインターフェイス44を介してコンピュータ42に送る。一実施形態によると、これらのデジタル信号に基づいて、応用モジュール(例えば、ソフトウェア)は、デジタル駆動信号をコントローラ40に送り、順番に、インデンターチップ205を駆動する又はプラットフォーム34に関連してz軸に沿ってインデンターチップ205を所望の距離に移動させるため、デジタル駆動信号を微小機械コムドライブ100に送られる駆動電圧信号52に変換する。
一実施形態によると、コンピュータ42の応用モジュール46を通るコントローラ40は、プラットフォーム34に関連してインデンターチップ205の移動を制御するように構成され、最初の参照ポイントからのインデンターチップ205の変位を表す信号をインターフェイス44を介してコンピュータ42に送るよう構成されている。一実施形態によると、コントローラ40は、駆動力を測定し、調整するよう構成されている。
一実施形態によると、応用モジュール46は、プロセッサ48によってアクセス可能で実行可能にされたメモリーシステム47に格納された命令を備える。メモリーシステム47は、例えば、RAM、ハードディスク駆動装置、CD−ROM駆動装置、DVD駆動装置など、揮発性記憶装置及び不揮発性記憶装置のタイプをいくつでも備えてもよい。他の実施形態では、応用モジュール46は、ハードウェアと、ファームウェアと、少なくとも本明細書で記載した機能を実行するよう構成されたソフトウェア要素とのいくつかの組み合わせを備えてもよい。
一実施形態によると、ナノメカニカル試験システム30は、2次元ナノインデンター変換器100及びそれに連結されたインデンターチップ205の3次元位置決めを可能にする、機械的ポジショナー60とピエゾポジショナー62を含む。一実施形態によると、ナノインデンター変換器100及びインデンターチップ205の最初の位置決めは、機械的ポジショナー60とピエゾポジショナーを介して行われ、インデンターチップ205の最後の位置決めと移動は、ナノインデンター変換器100を介して行われる。
一実施形態によると、ナノメカニカル試験システム30は、試験サンプル36の表面38を表示するイメージングデバイス70をさらに含んでいる。一実施形態によると、イメージングデバイス70は、試験領域のプロフィール、即ち形状を記憶又は測定することが可能な機器/デバイス、例えば、光学顕微鏡、表面形状測定装置、走査型プローブ顕微鏡(SPM)、あるいは原子間力顕微鏡(AFM)、を備えており、サンプル36の表面38の画像を提供するように構成されている。
試験システム30と類似し、本開示に係る微小機械コムドライブとインデンターチップとともに使用するよう構成されるのに適したシステムの例が、米国特許第5553486号及び米国特許第5869751号によって記載されており、どちらも本開示と同じ譲受人に譲渡されており、本明細書に参照によって組み込まれている。本開示に係る微小機械コムドライブとインデンターチップとともに使用するよう構成されるのに適したシステムの例が、米国ミネソタ州のミネアポリスのHysitron社から商品名TriboIndenterで市販されている。
図2は、本開示の一実施形態に係る、2次元MEMSナノインデンター変換器100を示す透視図であり、2次元MEMSナノインデンター変換器100に取り付けられるように、取り外し可能なインデンターチップ205を示す。一実施形態によると、2次元ナノインデンター変換器100は、本体102と、1対の前ばね106,108と1対の後ばね110,112によって本体102から支えられる可動プローブ104を含む。ばねは、可動プローブ104が、他の方向、例えば、X軸115に沿うなど、より容易に、インデンテーション方向116(図1の+Z方向)を含んだZ軸(変位軸と呼ばれる)に沿って変位可能なように形成されている。
2次元MEMSナノインデンター変換器100は、第1の、即ちZ軸の、微小機械コムドライブ120(上下コムドライブとも呼ばれる)と、第2の、即ちX軸の、微小機械コムドライブ130(横コムドライブとも呼ばれる)と、をさらに含む。第1の微小機械コムドライブ120は、第1及び第2の駆動コンデンサ122a、122bによって形成される駆動コンデンサ122(Z軸アクチュエータと呼ばれる)と、第1及び第2の検出コンデンサ126a、126bによって形成される第1の変位コンデンサ126(+Z軸センサと呼ばれる)を有する変位センサコンデンサ124と、第3及び第4の検出コンデンサ128a、128bによって形成される第2の変位コンデンサ128(−Z軸センサと呼ばれる)と、を含む。第2の微小機械コムドライブ130は、第1の駆動コンデンサ132a(+X軸アクチュエータと呼ばれる)及び第2の駆動コンデンサ132b(−X軸と呼ばれる)によって形成される駆動コンデンサ132(X軸アクチュエータと呼ばれる)と、第1の変位コンデンサ134a(+X軸センサと呼ばれる)及び第2の変位コンデンサ134b(−X軸センサと呼ばれる)とを有する変位センサコンデンサ134と、を含む。以下でより詳細に説明されるように、各駆動コンデンサ及び各検出コンデンサは、固定された又は可動の指又はコムを複数重ね合わせたコム形のコンデンサである。
また以下でより詳細に説明されるように、2次元MEMSナノインデンター変換器100は、それがなければ可動の指又はコムのオーバートラベルによって生じるかもしれない、コムドライブ120、130のコム型コンデンサへの損傷を防止するため、可動プローブ104の変位を制限するよう構成された4つのクラッシュプロテクタ160,162、164、166をさらに含む。
図に示すように、2次元MEMSナノインデンター変換器は、長さ(L)と、幅(W)と、厚さ(T)を有する。一実施形態によると、2次元MEMSナノインデンター変換器100は、7.0mmの長さ(L)、2.8mmの幅(W)、0.30mmの厚さ(T)を有しており、2次元MEMSナノインデンター変換器100が1次元MEMS変換器より50μm薄い以外、寸法は1次元MEMSのものと類似している。2次元MEMSナノインデンター変換器100の外側寸法は、1次元MEMS変換器のものと同じであるかわずかに小さいので、2次元MEMSナノインデンター変換器100は、機械的試験のための1次元MEMSとともに使用する同じTEMホルダー内に適合し得る。一実施形態によると、厚さT(例えば、0.30mm)及び幅W(例えば、2.8mm)は、変換器をTEMに収めるための限界寸法である。FEI社のTEMでは、最大許容厚さ及び最大許容幅は、TEMのポールギャップとTEMホルダーの形状によって制限されており、それぞれ2.0mmと4.0mmである。2次元MEMSナノインデンター変換器100の外側寸法は、そのようなFEI社のTEMにそれを収めることができる。
一実施形態によると、動作の安定性向上のために、2次元MEMSナノインデンター変換器100は、0.1mm×0.1mm×1.5mmのインデンターチップ205を採用している。比較すると、一実施形態によると、1次元変換器は、0.2mm×0.2mm×1.8mmのインデンターチップを取り付けている。2次元MEMSナノインデンター変換器100のインデンターチップ205のさらに小さい寸法は、可動プローブ104の質量を減らすことによって、動的操作におけるその帯域幅を増大している。
図3は、一実施形態に係る、図1の2次元MEMSナノインデンター変換器の分解図であり、インデンターチップ205を含んでいる。図2の態様によると、2次元MEMSナノインデンター変換器100の本体102は、基板204上に、3つの層、金属層201、デバイス層202,酸化層203を含む。
一実施形態によると、基板204は、p型100シリコンで構成される。一実施形態によると、基板204は、厚さ250μmを有し、100μmの直径を有するインデンターチップ205だけでなく、インデンターチップ205を可動プローブ104に固定する数10μmの厚さのエポキシ層を収容するのに適している。
酸化層203は、基板204からデバイス層202を絶縁する。一実施形態によると、酸化層203は、1.5μmの酸化層であって、許容可能なレベル(例えば、1pf)で寄生容量を保持し、製造コストを抑えている。
一実施形態によると、第1及び第2の微小機械コムドライブ120、130と、ばね106,108,110,112と、クラッシュプロテクタ160,162,164,166とは、デバイス層202から形成される。一実施形態によると、デバイス層202は、p型(100)シリコンで構成される。一実施形態によると、デバイス層202は、50μmの厚さである。一実施形態によると、デバイス層202の厚さは、深堀り反応性イオンエッチング(DRIE)製造法の要件に基づいて決定される。一実施形態によると、6μmのフィーチャーがデバイス層上に形成され、これらのフィーチャーとデバイス層202の厚さのアスペクト比は10:1であり、大きな誤差なくDRIEエッチング法を使用することが可能である。以下により詳細に記載するように、複数の電極が、様々なデバイス、例えば、インデンターチップ205、微小機械コムドライブ120,130への電気経路を提供するデバイス層202上に形成されている。
金属層201は、デバイス層202に置かれ、2次元MEMSナノインデンター変換器100の電気配線又は電極と、プリント板(PCB)などの回路基板(図示なし)との電気的接続に使用される。一実施形態によると、金属層201は、金で構成されている。可動プローブ104は、デバイス層202、酸化層203、基板層204から形成される。
一実施形態によると、2次元MEMSナノインデンター変換器100は、シリコンオンインシュレータ(SOI)ウェハを用いて微小機械にされる。一実施形態によると、高電導性を実現するために、高濃度のホウ素がドープされたp型シリコンウェハがデバイス層及び基板層に使用されている。一実施形態によると、ウェハの抵抗率は、0.005−0.02Ω・cmである。一実施形態によると、上述したように、第1及び第2の微小機械コムドライブ120、130は、深堀り反応性イオンエッチング(DRIE)技術を用いて製造される。
一実施形態によると、基板層204は、インデンターチップ205を受け取るよう構成された溝206を形成するため、深くエッチング処理されている。一実施形態によると、基板層204の厚さは、インデンターチップ205だけでなく数10μmのエポキシ層(図示なし)を含めるため必要に応じて選ばれる。一実施形態によると、インデンターチップ205は、例えば、ダイヤモンドチップを備える。一実施形態によると、深堀り溝206は、基板204上に微細加工される。
深堀りで長い溝206は、2次元MEMSナノインデンター変換器100に損傷を与えることなく、インデンターチップ205などのインデンターチップを取り付けることを可能にする。取り付け溝206の長くて細いという特徴は、インデンターチップ205をZ軸114に一致させることに役立つ。一実施形態によると、溝206は開いた側と閉じた側があり、取り付け溝206の開いた側は、インデンターチップ205を取り付け後、エポキシを塗布することが可能である。一実施形態によると、インデンターチップ205は、エポキシを用いて取り付け溝206に取り付けられる。一実施形態によると、インデンターチップ205は、導電性エポキシを用いて取り付け溝206に取り付けられる。
インデンターチップ205と可動プローブ104との間の接触領域は、2次元MEMSナノインデンター変換器100の他の部分から絶縁されており、微小機械コムドライブ120,130を含んでいる。そのような電気的絶縁は、2次元MEMSナノインデンター変換器を電気測定及び電子顕微鏡のその場試験のアプリケーションに使用することができる。ナノインデンテーション中の電気測定は、電気測定変化とナノインデンテーションとの間の相関関係を提供する。電気的に絶縁された導電性インデンターチップ205はまた、その場電子顕微鏡試験に電子を放電するために使用され得る。
電子が充電されたインデンターチップは、大きな引力を引き起こすことができ、それはすぐに接触することをもたらし得る。インデンテーション荷重/無荷重曲線に引力を付加することによって測定データが歪められる理由から、このような蓄積した電子による引力は、望ましくない。したがって、電気的に絶縁された導電性先端を接地することによって電子を放電することは、現場の電子顕微鏡試験におけるアプリケーションのための2次元MEMSナノインデンター変換器100の性能を向上させる。
図4は、本開示の一実施形態に係る、2次元MEMSナノインデンター変換器100の部分を示す上面図である。図4に示すように、及び以下の図5によって詳細に示すように、それぞれの第1及び第2のZ軸駆動コンデンサ122a、122bと、第1及び第2のZ軸検出コンデンサ126a、126bと、第3及び第4のZ軸検出コンデンサ128a、128bと、第1及び第2のX軸駆動コンデンサ132a、132bと、第1及び第2のX軸検出コンデンサ134a、134bとは、複数の対又はセットのコムコンデンサを含み、各対のコムコンデンサの1つのコムは、本体102から延設された静止した固定電極コムであり、もう1つは可動プローブ104から延設された可動電極コムである。
一実施形態によると、図4によって示されるように、第1及び第2のZ軸駆動コンデンサ122a及び122bのそれぞれは、Z軸アクチュエータ122がZ軸114に沿って可動プローブ104を駆動するための電極コム対を合計で24個有するように12個の電極コム対を有しており、第1、第2、第3、第4の検出コンデンサ126a、126b、128a、128bのそれぞれは、Z軸センサコンデンサ124が可動プローブ104のZ軸差動変位検出のための電極コム対を合計で64個有するように13個の電極コム対を有する。また、図4の実施形態によって示されるように、+X軸駆動コンデンサ132a及び−X軸駆動コンデンサ132bのそれぞれは、X軸駆動コンデンサ132が、X軸116に沿って可動プローブ132の横方向駆動のための電極コム対を合計で26個有するように、13個の電極コム対を有しており、+X軸検出コンデンサ134a及び−X軸検出コンデンサ134bのそれぞれは、X軸変位検出コンデンサ134が、可動プローブ104のX軸差動変位検出のための電極コム対を合計で28個有するように、14個の電極コム対を有している。一実施形態によると、図5によって以下に詳細に記述するように、各駆動電極コム対は、130μm×50μmの重ね合わせ領域を有し、各変位検出電極コム対は、330μm×50μmの重ね合わせ領域を有する。
図4にさらに示すように、複数の電極が、第1(Z軸)及び第2(X軸)のコムドライブ120,130とインデンターチップ205との電気経路を提供するため、デバイス層202に形成されている。図4の実施形態によると、電極170は、ばね110、112及び可動プローブ104を介して第1、第2、第3、第4のZ軸検出コンデンサ126a、126b、128a、128bの可動電極コムにまで延長している。電極171a及び171bは、第3及び第4のZ軸検出コンデンサ128a、128bの固定電極コムにまで延長している。電極172a及び172bは、第1及び第2のZ軸検出コンデンサ126a、126bの固定電極コムにまで延長している。電極173a及び173bは、第1及び第2の駆動コンデンサ122a、122bの固定電極コムにまで延長している。電極174a及び174bは、X軸駆動コンデンサ132a、132bの固定電極コムにまで延長している。電極175a及び175bは、X軸検出コンデンサ134a、134bの固定電極コムにまで延長しており、電極176は、ばね106及び可動プローブ104を介して、第1及び第2のX軸駆動コンデンサ132a、132bの可動電極コム、第1及び第2のX軸検出コンデンサ134a、134bの可動電極コムにまで延長している。電極177は、ばね108及び可動プローブ104を介して、インデンターチップ205にまで延長しており、電極178は接地接続の役割をしている。一実施形態によると、図3を参照すると、電極はデバイス層202の厚さ50μmを貫通する溝によって互いに別れている。
図5は、一実施形態に係る、コムドライブ120のZ軸駆動コンデンサ122bの静電駆動コムコンデンサ140及び142の2つのセットを一般的に示す図である。駆動コンデンサ122bは、2つ以上の駆動コムコンデンサのセット(上記の図4を参照)を含んでいるが、説明を容易にするため、2つの駆動コムコンデンサのセット(例えば、140及び142)のみが、図5に示されている。なお、駆動コンデンサ122bに関して記載されているが、以下の記述は、Z軸駆動コンデンサ122a、及びX軸駆動コンデンサ132a、132bに適用することに留意すべきである。
静電駆動コムコンデンサ140及び142のそれぞれは、本体102から延設して固定電極コム144、146と、可動プローブ104の横端にまで延設し、可動プローブ104とともに動く可動電極コム148,150を含んでいる。一実施形態によると、固定電極コム144と可動電極コム148との間の隙間152で示される小さい隙間は、可動電極コム148と固定電極コム146との間のより大きい隙間154より3倍小さい隙間距離を有する。一実施形態によると、固定電極コム144及び可動電極コム148にバイアスがかけられたとき、より小さい隙間152での静電力は、より大きい隙間154での静電力より9倍大きくなり、それによってインデンテーション方向116に可動プローブ104を引っ張る差動力が作成される。一実施形態によると、隙間152は、約10μmの隙間距離であり、隙間154は、約30μmの隙間距離である。
図5において、固定電極コムと可動電極コムとの間の重ね合わせ幅bは、156で示されている。さらに、静電駆動コンデンサ142を通る断面A−Aは、158で示すように、固定電極コム146と可動電極コム150との間の重ね合わせ高さhを示す。
駆動コムコンデンサ140、142にバイアスがかかっておらず、そしてMEMSナノインデンター変換器100が試験サンプルにかみ合っていないとき、駆動コムコンデンサ140,142は、それらの“ホーム”又は“ゼロ”の位置に示されている。そのようなものとして、図5によって示されるように、より大きい隙間154は、より小さい隙間152より3倍大きい隙間距離を有している(例えば、可動電極は、固定された電極間に等距離で配置されていない。)。
上述したように、可動プローブ104及びインデンターチップ205を駆動する、又は変位するため、固定電極と可動電極との間、例えば、固定電極コム144と可動電極コム148との間、に静電力を発生させるように、バイアス電圧が、駆動コンデンサ122bの静電駆動コムコンデンサ(同様に駆動コンデンサ122aの静電駆動コムコンデンサ)に印加される。静電力は、いわゆるホーム位置に可動プローブ104を保持しようとするばね106,108,110、112からの反抗力に対抗して、インデンテーション方向116に可動プローブを動かす。一実施形態によると、バイアス電圧は、固定電極コム、例えば、固定電極コム144、146に印加され、一方、対応する可動電極コム、例えば、可動電極コム148,150は、バイアス電圧に関連して固定電圧、例えば、グランドとなる。
駆動コンデンサ122bは、印加されたバイアス電圧からもたらされる静電駆動コムコンデンサ(例えば、図4における静電駆動コムコンデンサ140、142)の各セットの容量の変化で発生する静電力を利用している。駆動コンデンサ122bの容量は、固定電極と可動電極との間の隙間を変化させることによって、又は固定電極と可動電極(例えば、図4の固定電極コム144及び可動電極コム148)の重ね合わせ領域を変化させることによって、変化させることができる。隙間変化の動作によって、2つの電極コム、例えば、固定電極コム144及び可動電極コム148、との間に発生した静電力は、以下の式1で表わすことができる:
ここで、Fdは方向を変化する隙間への静電力、εは誘電体誘電率、bは電極の重ね合わせ幅(図4参照)を表し、hは電極の重ね合わせ高さ(図4参照)、dは電極間の隙間(図4参照)、Vは印加される電圧又はバイアス電圧である。
一実施形態によると、上述した図3を参照すると、微小機械コムドライブ120、130の駆動コムコンデンサ及び検出コムコンデンサの電極コムは、デバイス層202を貫通するように形成された深溝によって電気的に絶縁される。一実施形態によると、以下の図4を参照すると、駆動コンデンサ120のコムコンデンサのプレート又は電極と検出コンデンサ130,132,134,136との間の重ね合わせ領域を調整するため、デバイス層202の厚さが調整される。例えば、重ね合わせ領域を増大させるため、デバイス層202の厚さを増大させてもよい。
一実施形態によると、微小機械コムドライブ120,130の駆動コンデンサ122,132は、上述したように、隙間閉鎖スキームによって、もしくは重ね合わせ領域変化スキーム(横操作とも呼ばれる)によって、操作できる。隙間閉鎖スキームに合致するように操作されたとき、駆動コンデンサ122,132は、隙間変化に関して大きい容量の変化を作ることによって、比較的大きな力を発生させることができるが、電極間の制限された隙間によって比較的小さい移動範囲となる。反対に、重ね合わせ領域変化スキームは、電極隙間によって移動が制限されないため、大きな移動範囲を有することができるが、隙間閉鎖駆動スキームと比較すると、大きな力を提供していない。ナノインデンテーションアプリケーションは、大きな移動範囲(例えば、1μmの移動)を要求しないが、大きなインデンテーション力(例えば、500μN)を要求することに留意する。そのようなものとして、一実施形態によると、2次元MEMSナノインデンター変換器100は、上述した隙間閉鎖駆動スキームを採用している。
一実施形態によると、2次元MEMSナノインデンター変換器は、上述したように、上下軸、即ちZ軸静電駆動コンデンサ122(第1及び第2の駆動コンデンサ122a、122bによって形成される)と、横方向軸、即ちX軸静電駆動コンデンサ132(第1及び第2の駆動コンデンサ132a、132bによって形成される)を採用している。一実施形態によると、駆動コンデンサ122によって提供される最大インデンテーション力(例えば、インデンテーション方向114のZ方向)は、552μNと推定され、1次元変換器によって提供される最大インデンテーション力の約半分である。一実施形態によると、第1及び第2のX軸駆動コンデンサ132a、132bによって可動プローブ104の各側面に提供される最大横力は、229μNと推定される。この横力は、最大インデンテーション力が適用されているときでさえ、2次元MEMSナノインデンター変換器が側面摩擦係数を測定できるようにしている。
一実施形態によると、以下に詳細に記載されるように(図12参照)、大きな移動距離は要求されないように、2次元MEMSナノインデンター変換器は、閉ループフィードバック制御スキームを使用して、ナル先端位置(インデンターチップが本体102に関連して可動プローブ104を“ホーム”位置に保って静止している)に操作している。一実施形態によると、2次元MEMSナノインデンター変換器の移動制限は、ソフトウェア制御によって1μm以内に制限される(図1及び図12参照)。
図6は、駆動コンデンサ122a、122bを介してZ軸114に沿って上下駆動又は移動するよう提供される静電駆動コンデンサ122と、駆動コンデンサ132a、132bを介してX軸115に沿って横駆動又は移動するよう提供される静電駆動コンデンサ132の詳細な性能記述を示す表1である。表1において、公称隙間の絶縁破壊電圧は、パッシェンの法則を使用して推定されており、絶縁破壊電圧とは隙間と圧力の関数として説明される。推定された値は、周囲の条件の場合によるもので、2次元MEMSナノインデンター変換器が高真空中で操作されているとき、より高くなり得る。最大静電力は、絶縁破壊電圧に近い300Vが印加されたときの場合に見積もられる。移動制限に関して、104の移動がクラッシュプロテクタを介して物理的に制限されることに留意する。
一実施形態によると、図7に関して以下に記載されるように、差動容量検出スキームが、Z軸114に沿って可動プローブ104とインデンターチップ205のインデント、即ち上下変位とX軸115に沿った横変位を測定するように採用されている。可動プローブ104の移動は、本体102から延設される、静止、即ち固定電極コムと可動プローブ104から延設される可動電極コムとの間の容量変化と一致する。一般的に、可動プローブ104のナル、即ちホーム位置からの変位における変化は、可動電極コムと静止電極コムとの間の容量比に比例するセンサ電子機器の信号出力から測定される。
図7は、一実施形態に係る、微小機械コムドライブ120の検出コンデンサ124の検出コンデンサ126a、126b、128a、128bの構成及び電気的動作を一般的に示す概略図である。微小機械コムドライブ120の駆動コンデンサ122の静電駆動コムコンデンサ122a、122bと同様に、図5によって上記に示すように、検出コンデンサ126a、126b、128a、128bのそれぞれは、固定及び可動電極コムのセットを複数含んでいる。微小機械コムドライブ120の検出コンデンサ124のZ軸検出コンデンサ126a、126b、128a、128bに関して記載されているが、以下の記載は、微小機械コムドライブ130のX軸検出コンデンサ134のX軸検出コンデンサ134a、134bにも同様に適用するのに留意する。
図の場合、各検出コンデンサ126a、126b、128a、128bは、コムコンデンサが3セットのみ有するものとして、図7に示されており(図4に示されるように13セットではなく)、それぞれのセットは、本体に連結された固定された電極と可動プローブに連結され、共に変位可能な可動電極を有する。図7において、可動電極180は、検出コンデンサ126a、128aによって分けられていることに留意し、そして可動電極182が検出コンデンサ126b、128bによって分けられていることに留意する。
一実施形態によると、2次元MEMSナノインデンター変換器100は、可動プローブ104の変位を検出して測定する差動容量検出スキームを採用している。可動プローブ104が、例えば、バイアス電圧のアプリケーションから駆動コンデンサの固定電極コムに変位したとき、固定電極コムと各検出コンデンサ126a、126b、128a、128bの可動電極コムとの間の隙間は変化し、順番に各検出コンデンサ126a、126b、128a、128bの容量が変化する。
図7における各検出コンデンサ126a、126b、128a、128bの容量(例えば、各電極コム対の容量の合計)は、それぞれCA、CB、CC,CDで表される。容量値CA、CB、CC,CDは、検出回路60に提供される容量値CA、CB、CC,CDを表す電気信号50である(図1参照)。可動プローブ104がバイアスのかかっていない状態で、試験サンプルにかかっていないとき(例えば、可動プローブ104が“ホーム”位置にある)、これらの容量の既知の基準値に対する容量CA、CB、CC,CDの値変化に基づいて、インデンテーション方向116(例えば、z軸)、横方向(x軸)、y軸についての可動電極104の回転にける可動電極104の変位が測定され得る。
インデンテーション方向116における可動電極104の変位は、以下の式2で表される容量組み合わせ率(CCRI)に基づいて決定される:
可動電極104がインデンテーション方向116に移動したとき、(C
A+C
D)の合計は増加する一方、(C
B+C
C)の合計は減少し、{(C
A+C
D)−(C
B+C
C)}の増加をもたらす。したがって、CCR
Iの値は、インデンテーション方向116(例えば、z軸)における可動プローブ104の変位に比例した量によって、C
A、C
B、C
C,C
Dに対する既知の基準値を使用して決定されたCCR
Iの基準値に関連して増加する。
横方向(例えば、x軸)の可動電極104の変位は、以下のように式3によって表される容量組み合わせ率(CCRL)に基づいて決定される。
可動プローブ104が横方向(x軸)に移動するとき、(CA+CB)の合計が増加する一方、固定及び可動電極コムの重ね合わせ領域の変化によって(CC+CD)の合計が減少し、{(CA+CB)−(CC+CD)}の増加をもたらすように、検出コンデンサ126a、126b、128a、128bの可動電極コムは、固定電極コムに関連して横方向に移動する。したがって、CCRLの値は、横方向(例えば、x軸)における可動プローブ104の変位に比例した量によって、CA、CB、CC,CDに対する既知の基準値を使用して決定されるCCRLの基準値に関連して増加する。
184で表される、y軸についての可動電極104の回転移動は、以下の式4によって表される容量組み合わせ率(CCR R )に基づいて決定される:
可動プローブ104が時計回りの方向に回転するとき、(CB+CD)の合計が増加する一方、回転動作によって(CA+CC)の合計が減少し、{(CB+CD)−(CA+CC)}の増加をもたらす。したがって、CCRRの値が、可動プローブ104の角回転に比例した量によって、CA、CB、CC,CDに対する既知の基準値を使用して決定される、CCRLの基準値に関連して増加する。
単純な2極静電容量センサとは違って、上述した差動容量センサは、温度変化及び湿度変化などの周囲の変化にかかわらず、より正確な変位測定を提供する。これは、様々な環境条件におけるナノスケールで測定するアプリケーションのための差動検出スキームを活用することの大きな利点である。
図8は、第1の微小機械コムドライブ120の上下軸、即ちZ軸変位コンデンサ126a、126b、128a、128bと、第2の微小機械コムドライブ130の横軸、即ちX軸変位コンデンサ134a、134bの詳細な性能情報を示す表2である。1pFの寄生容量が変位検出コンデンサの非線形動作を推定するのに使用されているのに留意する。
上述したように、2次元MEMSナノインデンター変換器100は、可動プローブ104のZ軸の移動とX軸の移動の両方を検出する。上述したように、可動プローブ104は、ナル又はホーム位置で操作されるため、変位検出コンデンサ126a、126b、128a、128b、134a、134bは、ロングレンジの直線性を要求していない。これは、電極コム対間の隙間を減らし、それによって変位検出コンデンサ126a、126b、128a、128b、134a、134bの変位検出感度を上げている。一実施形態によると、2次元MEMSナノインデンター変換器100は、検出コンデンサ126a、126b、128a、128b、134a、134b間に6μmの隙間距離を有している。この隙間は、1次元MEMS変換器の一実施形態によって採用されている10μmの隙間距離より小さい。したがって、実際は操作方向への容量勾配である変位感度は、上下方向、即ちZ方向が、10fF/μmの感度である1次元MEMS変換器のものより2倍感度が良いことを示している。一実施形態によると、横移動変位検出は、1次元MEMS変換器の上下移動検出のものより50%感度が良い。そのような感度値は、各変位センサの変位スケール係数(検出回路からの信号出力に対する変位)に比例する。2次元MEMSナノインデンター変換器100の高感度は、1次元MEMS変換器の電極コム間の隙間距離10μmに比べて、より小さい6μmの隙間距離を用いて達成される。
図9は、一実施形態に係る後ばね110、112及び後ばねに最も近いクラッシュプロテクタ160を一般的に示す図である。一実施形態によると、ばね110,112によって示されるように、各ばね106,108,110,112は、インデンテーション方向116(Z軸)における変位に対する剛性に比べて、横方向(X軸及びY軸)における変位に対してより大きい剛性を有する。したがって、各ばねは、X軸方向に沿って横方向に厚くて長い部分190と、インデンテーション方向に薄くて短い部分192を有する。そのようなばね設計は、そうでないとインデンテーション手順中の摩擦によって発生するであろうX軸方向及びY軸方向における変位軸114からの可動プローブ104のインデンターチップ205の転位を実質的に制限する。そのようなばね特性は、その場のTEMナノインデンテーションにとって、特に、試験表面がインデンテーション方向に垂直でないときに重要である。
前述の通り、クラッシュプロテクタは、それがなければ操作ミスまたは手違いによって生じるかもしれない変換器及びコントローラ機器に対しての永久的な損傷をもたらし得る、微小機械コムドライブ120、130の固定電極コムと可動電極コムとの間で生じる接触を防止している。上述したように、一実施形態によると、クラッシュプロテクタ160,162,164,166は、デバイス層202に作成される(図3参照)。
一実施形態によると、図9におけるクラッシュプロテクタ160によって示されるように、隙間194が本体102と可動プローブ104との間のZ軸(例えば、変位軸114の方向における図2参照)に沿って形成され、隙間196が本体102と可動プローブ104との間のX軸(横方向)に沿って形成される。一実施形態によると、隙間194、196は、駆動コンデンサ120の固定及び可動電極コムと検出コンデンサ130,132,134,136との間の隙間距離(例えば、図4に示す隙間152)より小さい隙間距離を有する。一実施形態によると、クラッシュプロテクタ160,162,164,166は、可動電極104の移動を、固定及び可動電極コム対との間で”クラッシュ”が生じる可能性がないように、電極コム対の最小隙間6μmより小さい、3μmに制限する。クラッシュプロテクタ間の接触は、クラッシュプロテクタの接触部が同じ電極であるとき、変換器に電気的影響を与えない。
2次元MEMSナノインデンター変換器100の静的特性は、有限要素解析 を用いて評価される。一実施形態によると、上下(Z軸)及び横(X軸)移動に対する剛性は、約200N/mに決定されている。その剛性の値は、1次元変換器の経験に基づいて望ましいものである。ばねの剛性が大きすぎると、力の感度が下がるであろう。さらに、ばねの剛性が小さすぎることは、ばねの細い部分を製造するためのオーバーエッチングに起因するその場製作を減らしている。
図10は、一実施形態に係る、2次元MEMS変換器100の詳細な静的特性を示す表3である。横の剛性は、可動プローブ104ではなく、インデンターチップ205の変位とインデンターチップ205に加えられる力に基づいて推定されていることに留意する。横の剛性は、インデンターチップ205の長さ次第で変化する。表3に示された値は、インデンターチップ205が可動プローブ104から0.5mmまで延設された配置を表す。
一実施形態によると、ばね106,108,110,112の応力解析が変位方向116におけるZ軸114に沿って1μmまで変位された可動プローブ104を用いて行われる。後ばね110、112上の1μmの上下移動の最大応力は、24MPaであると測定されている。X軸115に沿って1μmの横移動のため、前ばね106,108の最大応力は、20MPaであると測定されている。そのような応力は、7GPaの単結晶シリコンの降伏強度よりはるかに小さい。そのような小さい応力は、1μmの移動範囲で、2次元MEMS変換器100が損傷を受けず、あらゆる塑性変形をせず、かつ、ばねが弾性変形を伴って直線性を維持することができることを示している。
MEMSナノインデンター変換器100の動的特性はまた、有限要素解析 を用いて調べられる。一実施形態によると、上下(Z軸)方向に対する2次元MEMSナノインデンター変換器の共振周波数は、3.2kHzであると測定されている。対応する動的モードは、上下方向に対する並進発振である。一実施形態によると、横方向に対する共振周波数は、4.1kHzであると測定されている。対応する動的モードは、横方向に対する回転発振である。
そのような共振周波数は、一般的に1kHzより低い共振周波数を有する他の既知の市販のMEMSではないトライボメータより高い。これらの高共振周波数は、同等の剛性を有しつつ、上下変換モードのためのより小さい質量と、横回転モードのためのより小さい慣性モーメントを使用することによって達成される。この高共振周波数又は高変換帯域幅は、より速い整定及びより良い制御性に寄与している。整定時間は、共振周波数に反比例して、
として表されることができ、tsは整定時間、Qはシステム品質係数、fnは共振周波数である。式によって示されるように、高周波数は整定時間をより短くする。
一実施形態によると、図12を参照して以下に詳細に記載されるように、2次元MEMSトライボメータ100は、ナル位置で閉ループフィードバック制御を調整するインデンターチップ205を操作するように構成されている。この操作において、閉ループ制御における追従誤差は、測定誤差に追加される。より高い帯域幅及びより良い制御を有することは、制御追従誤差によって引き起こされる測定誤差を減らすための操作に重要である。
図11は、一実施形態に係る、2次元MEMS変換器100の詳細な動的特性である表4を示す。機械的品質係数は、1次元MEMS変換器の動的特性に基づいて作成される仮定値である。
一実施形態によると、100μNの摩擦力及び138μNのバランス力(差動横センサ134がバランス力でゼロにされる)が2次元MEMSナノインデンター変換器100に加えられるとき、変位分布が測定される。評価結果は、横変位センサ134がバランスをとっているとき(例えば、センサはゼロを読んでいる)、インデンターチップ205が13nmの変位を有することを示している。横変位センサ134とインデンターチップ205の実際の移動との相違は、摩擦力とバランス力(制御力)とともにインデンターチップ205に負荷されるモーメントによって引き起こされる。この13nm変位は、摩擦推定に対するばね力を負荷することによって、2.1μNの摩擦過大評価(2.1%摩擦係数測定誤差)をもたらす。
TEMホルダーを回転することは、使用者が、より興味深く明確な材料構造形状及び動きを得るために異なる視野角で試験サンプルを調べることを可能にしている。最初の軸(アルファ傾斜)に沿った、そのような回転は、材料の調査には役に立つが、これは重力に起因する可動電極変位によって性能低下を引き起こし得る。この問題は、重い可動部品及び重力によって引き起こされる大きな変位を有するプローブにとってより深刻である。
2次元MEMSトライボメータには、それは質量が小さく、重力によって引き起こされる変位が小さいので、アルファ傾斜操作が有利である。一実施形態によると、インデンターチップ105を含む可動電極の総推定質量は、0.5mgである。30度のアルファ傾斜で、トライボメータ上の重力は、先端をX軸に対して約10nm移動させる。それをナル先端位置に引き戻すため、X軸アクチュエータは、2.4μNのバランス力のみを加える必要がある。この2.4μNのバランス力は、最大X軸力299μNの1%より小さい。
図12は、シリコンマイクロマシニング技術を用いて2次元MEMSナノインデンター変換器100の製造工程220の一実施形態を一般的に示す工程フロー図である。工程220は、出発原料222で開始する。一実施形態によると、出発原料は、シリコンオンインシュレータ(SOI)ウェハで構成される。一実施形態によると、上述したように、高電導性を達成するため重ホウ素ドープp型シリコンウェハがデバイス層202及び基板層204に使用されていた。一実施形態によると、ウェハの抵抗率は、0.005−0.02Ω・cmの範囲である。
224で、酸化物が基板層204の前面又は背面側に堆積される。226で、224に堆積した酸化物が、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)によって、望ましい形状及び寸法の可動プローブ104を含んだパターンを有するマスク(フォトレジスト)を使用して、削られる。
228で、金属がデバイス層202に堆積され、望まれたパターンを有するマスクの形成及び深堀り反応性イオンエッチング(DRIE)によるデバイス層202のエッチングによって230に続く。232で、基板層204がそれらの背面側にパターン化された酸化物を介してエッチング(例えば、DRIE)される。234では、224で堆積された酸化層が取り除かれ、すでにエッチングされた基板層204を介して絶縁層203がエッチングされる。
図13は、ナノトライボロジー試験中にナル又はホーム位置でインデンターチップ205を調整する及び保持するフィードバック制御モードを使用する2次元MEMSナノインデンター変換器100の操作のため、一実施形態に係る、閉ループ制御スキーム300を一般的に示す概略図である。一実施形態によると、図示されるように、閉ループ制御スキーム300は、X軸及びZ軸PIDコントローラ302,304及びX軸及びZ軸Q−コントローラ306,308を含んでいる。
一実施形態によると、インデンターチップ205のナル位置を保持するため、X軸及びZ軸の両方がゼロ基準入力310、312とともに閉ループ制御によってバランスの取れた位置に調整される。一実施形態によると、既定のX軸ピエゾ駆動、314で示されるように、開ループ操作とともにインデンターチップを横方向(例えば、X軸)に移動する。ピエゾ駆動中、インデンターチップ205の位置は、X軸アクチュエータ132及びX軸変位センサ134(図2参照)とともに、PIDコントローラ302を経由して、PID制御することによってゼロに調整される。
一実施形態によると、Q−制御は、TEM内部の小さいダンピングによって引き起こされる先端の振動を抑制するために実行される。Q−制御は、3つの命令によってシステムダンピングを増加するデジタルダンピング制御アルゴリズムである。2次元MEMSナノインデンター変換器100で使用するために適したそのようなQ−制御の例は、本出願と同じ譲受人に譲渡され、参照として本明細書に組み込まれている米国特許出願番号12/498238によって記載されている。一実施形態によると、Q−制御アルゴリズムは、周波数に依存する可変時間遅延を出力信号に提供する位相シフトの伝達関数を利用して統合されている。位相シフト信号は、適切なゲインとともにシステム入力に加えられる。システムダンピングは、ダンピングコントローラのゲインを調整することによって操作される。ダンピング制御の明らかな証拠及びTEM内部のより良い振動制御がダンピング制御された反応から観察される。実行されたQ−制御は、様々な条件においてシステムダンピングを効果的に操作できる。このダンピング制御はまた、PID制御におけるサブシステムとして安定して機能する。
一実施形態によると、ゼロ位置のZ軸変位調整は、Z軸ピエゾアクチュエータ閉ループ制御によって行われる。既定のZ軸変換器負荷316が、垂直力としてトライボロジー試験中に加えられる。また、Z軸の振動を抑制するためのQ−制御も実行される。サンプル(図1におけるサンプル36)のスクラッチ試験のため、横力と等しいX軸変換器力と、垂直力と等しいZ軸変換器力とを比較した値は、摩擦係数の値を提供する。2次元MEMSトライボメータに加えられる力は、サンプルの反応と同じなので(ナル位置でばね力が加えられないと仮定して)、変換器力はZ軸及びX軸に対するサンプル反応として記録される。一実施形態によると、図示されるように、2つのQ−コントローラ306、308は、2つの異なった方向に実装され、同時に操作される。この同時のQ−コントローラ操作は、それらの方向及び操作に対する振動モードが独立しており、互いに連結されていないことから、可能である。
一実施形態によると、キャリブレーションセットアップは、Hysitron社のナノインデントシステムを用いて構築されており、ステッピングモータ、ピエゾスキャナー、変換器、及びそれらのコントローラ機器と駆動ソフトウェアを有する。最も一般的なナノインデンテーション操作スキームである垂直操作の代わりに、システムは、TEMを配置するための空間を作るため水平操作に変更される。一実施形態によると、2次元トライボメータは、基準変換器でインデンターチップを押すことによって調整される。一実施形態によると、基準変換器は、レーザ干渉計較正ナノDMA変換器で構成される。先端を2つの中央プレートに維持することによって、それが水平に操作されるとき、ナノDMA変換器は、1つの中央プレートのみを有する変換器より良い安定性を有する。一実施形態によると、1mmの直径のサファイア先端は、実行可能な接触領域を増やし、圧子の貫通によってキャリブレーション誤差を最小化するため、DMA上に取り付けられる。
一実施形態によると、TEMホルダーには3軸のマイクロマニピュレータが取り付けられており、2次元MEMSトライボメータはマニピュレータとともに変換器に大まかに近づけられている。一実施形態によると、一度、2次元MEMSトライボメータの先端が基準変換器の先端(例えば、サファイア先端)から1mmの距離内に配置されると、自動接近機構(例えば、Hysitron社の自動接近機構)が実行される。Hysitron社の自動接近機構は、ほんの数μNの接触力で先端を安全に接触させることができる。接触させた後、基準変換器は、2次元MEMSトライボメータを駆動する。両方の変換器からのセンサ出力は、そのときに記録される。上下及び横方向の変位センサと剛性の両方が、この方法で較正され得る。2次元MEMSトライボメータは、周囲のノイズに対して比較的反応せず、それが小さな質量であり、重力で誘発される変位が小さいことから、そのようなキャリブレーションに非常に適している。
要約すれば、微小機械コムドライブを利用した微小2次元MEMSナノインデンター変換器、例えば、微小機械コムドライブ120を利用した2次元MEMSナノインデンター変換器100(図2参照)が記載されている。本開示によって記載されたMEMSナノインデンター変換器は、電子顕微鏡だけでなく周囲条件にも使用され得る。ナノインデンターとその場TEMナノメカニカル試験器としてのすべての要件は、設計及び製造を通して考慮されており、開発された2次元MEMSナノインデンター変換器は、例えば、物理的寸法、最大力、ばね剛性、力感度、動的帯域幅、移動範囲、及び材料制限などの要求仕様を満たす。MEMSナノインデンター変換器及びHysitron社の機器での実験結果は、優れた機器の互換性及び汎用性の高い機械的な試験機能を示している。インデンテーション、トポグラフィースキャン、及び動的試験機能は、繰り返し可能で頑丈なナノインデンター操作から証明されている。MEMSナノインデンター変換器100はまた、様々なTEMホルダーと物理的に統合でき、定量的なその場TEMナノメカニカル試験アプリケーションを大きい変換器のサイズによって妨げられる様々なTEMに拡張する。本開示に係るMEMSナノインデンター変換器、例えば、2次元MEMSナノインデンター変換器100はまた、その場の機械的試験アプリケーションのためのSEM(走査型電子顕微鏡 )に組み込むこともできる。
これらのアプリケーションに加えて、本開示に係る2次元MEMSナノインデンター変換器は、様々な機器と統合されることによって、様々なアプリケーションに活用することができる。例えば、その高帯域幅の動的特性とともに、MEMSナノインデンター変換器は、高速撮影及び高速モジュラスマッピングのために使用できる。高帯域幅特性は、また、高周波数DMA試験機能を提供する。高い機械的品質係数とともに小さいダンピング特性は、MEMSナノインデンター変換器が共振周波数近傍に操作されたとき、サンプルの相互作用に対する動的応答を敏感にし、サンプル表面に損傷を与えずにトポグラフィー測定のために使用できる。これは、柔らかいサンプル上のインデントの測定精度を高めるために特に有利である。
別の可能なアプリケーションは、その場の電気計測である。先端用の分割された電極線は、インデンテーションをしている間、電気的特性を測定するために使用できる。定量的なその場機械的試験におけるアプリケーションに加えて、その小さなサイズを利用して、MEMSナノインデンター変換器は、様々な精密機械、例えば、小型マニピュレータ、と統合でき、小さいスペースにおいて、機械的特性の検査及び表面改質ができる。
本明細書では特定の実施形態が図示され、記載されているが、本発明の範囲から逸脱せず、様々な代替および/または同等の機器が図示及び記載された特定の実施形態と置き換えられることは、当業者にとって理解できるであろう。この出願は、本明細書で述べられた特定の実施形態のあらゆる改変もしくは変形をカバーしようとしている。したがって、この発明は、特許請求の範囲及びそれと同等のものによってのみ制限されるものではない。