JP2016118441A - 表面プラズモン検出装置および表面プラズモン検出方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡素な構成で測定対象物の濃度を検出可能な表面プラズモン検出装置を提供する。【解決手段】表面プラズモン検出装置は、表面プラズモン素子60と、表面プラズモン素子60に向けて入射光L1を投光する投光部と、表面プラズモン素子60にて反射された反射光L2を受光する受光部と、を備え、表面プラズモン素子60は、主表面を有する誘電体ベース部63、主表面上に形成された金属薄膜65、および金属薄膜65上に形成された誘電体薄膜68を含み、入射光は、誘電体ベース部63側から入射し、誘電体ベース部63と金属薄膜65との界面において反射光L2として反射され、誘電体薄膜68は、入射光L1が入射する界面に対応した部分において膜厚が異なる部分を有する。【選択図】図4
Description
本発明は、導電生物質表面での表面プラズモンの発生を利用して導電生物質表面の測定対象物質を検出する表面プラズモン検出装置および表面プラズモン検出方法に関する。
表面プラズモンとは導電性物質表面における表面電荷密度の波であり、この現象を利用した物質の検出器および検出方法が知られている。一般的に、表面プラズモンを利用した表面プラズモン検出装置は、プリズムと、プリズムの一面に直接またはプリズムの一面に対して所定の間隔をおいて形成された金属薄膜と、上記光ビームをプリズムに通して該プリズムと金属薄膜との界面に対して種々の入射角が得られるように入射させる光学系と、上記の界面で全反射した光ビームの強度を種々の入射角毎に検出可能な光検出手段とを備えている。
上記表面プラズモン検出装置において、金属薄膜表面における表面プラズモンは、金属薄膜とプリズムの誘電条件、および金属薄膜の表面状態で決定する固有の分散関係をもつ。
また、光ビームを金属薄膜に対して全反射角以上の入射角θで入射させると、入射光の一部が金属薄膜の内部を金属薄膜表面に沿って伝達するエバネッセント光と呼ばれる光となる。このエバネッセント光の波数ベクトルは、入射光の波数ベクトルのエバネッセント光の進行方向成分と等しくなる。すなわち、エバネッセント光の波数は、種々の入射各θに対して、sinθに従い異なる値をもつ。
表面プラズマの波数とエバネッセント光の波数とが等しくなる条件を満たす時、表面プラズモン共鳴と呼ばれる現象が発生し、この条件を満たす入射角に対応する光の全反射光に強度の著しい減少が観測される。
表面プラズモンは金属薄膜の表面の状態に対して非常に敏感であるため、金属薄膜表面に物質が付着すると全反射光の強度の減少が観測される光の入射角度にずれが生じる。したがって、この全反射光の強度の減少が観測される光の入射角度のずれを観測することにより、金属薄膜に付着した物質を検出することができる。
このような、全反射光の強度の減少が観測される光の入射角度のずれを観測することにより金属薄膜に付着した物質を検出する表面プラズモン検出装置が開示された文献として、例えば特開平10−239233号公報(特許文献1)および特開2006−47000号公報(特許文献2)が挙げられる。
特許文献1に開示の表面プラズモン検出装置にあっては、平行な光線を、入射角度を変化させながら金属薄膜と誘電体部材の界面に順次入射させ、入射角度の変化に従って反射角度が変化する光線を、その反射角度の変化に同期して移動する小さな1セル型の光受光部や、反射角度の変化方向に沿って延びる1セル型または多セル型の光受光部によって検出する。この場合には、暗線が検出された際の入射角度を全反射減衰角として特定する。
特許文献2に開示の表面プラズモン検出装置にあっては、金属薄膜と誘電体部材の界面に入射する光束線として、該光線束の中心光線の入射平面内において、入射角度に応じてガウシアン分布、あるいは、単調増加または単調減少するビーム断面強度を有するものを用いる。この場合には、反射減衰を受けた光線成分の入射角度を特定して、反射減衰角を求める。
しかしながら、特許文献1に開示の表面プラズモン検出装置にあっては、金属薄膜と誘電体部材の界面に対して、入射角度を変化させながら平行な光線を順次入射させて、全反射光に強度の著しい減少が観測される角度を測定することにより金属薄膜に付着した物質を検出する構成である。
このため、入射角度を変化させる機構が必要となり、構造が煩雑となるとともに、高速処理が困難にある等の問題があった。さらに、機械的な移動機構により入射角度を変化させる場合には、その移動機構の角度設定精度により検出精度が制限される。
特許文献2に開示の表面プラズモン検出装置にあっては、金属薄膜と誘電体部材の界面に対して、種々の入射角度およびその入射角度に応じて変化する強度を有する光線成分からなる光線成分からなる光線束を入射させる。
この方式によれば、種々の入射角度成分を有する光線束のうち、表面プラズモン共鳴の条件を満たす反射光に著しい強度の減少が暗線として検出され、暗線の位置のずれ量を測定することにより金属薄膜に付着した物質を検出することができる。
このため、特許文献1に記載のような入射角度を変化させる機構が不要となる。しかしながら、特許文献2の方式においては、種々の入射角度成分を有する光線束と用いる必要がある。具体的には、レーザ光源によりガウシアン状のビーム断面強度を有する光線を発生させ、その光線を一旦拡大した後、上記の界面に向けて収束させつつこれを界面に入射させる構成が必要となり、このような光線束を入射させるための装置構造が複雑化する。
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、簡素な構成で測定対象物の濃度を検出可能な表面プラズモン検出装置およびこれを用いた表面プラズモン検出方法を提供することにある。
本発明に基づく表面プラズモン検出装置は、表面プラズモン素子と、上記表面プラズモン素子に向けて入射光を投光する投光部と、上記表面プラズモン素子にて反射された反射光を受光する受光部と、を備え、上記表面プラズモン素子は、主表面を有する誘電体ベース部、上記主表面上に形成された金属薄膜、および上記金属薄膜上に形成された誘電体薄膜を含み、上記入射光は、上記誘電体ベース部側から入射し、上記誘電体ベース部と上記金属薄膜との界面において上記反射光として反射され、上記誘電体薄膜は、上記入射光が入射する上記界面に対応した部分において膜厚が異なる部分を有する。
上記本発明に基づく表面プラズモン検出装置にあっては、上記投光部は、上記入射光として平行光を投光することが好ましい。
上記本発明に基づく表面プラズモン検出装置にあっては、上記入射光が入射する上記界面に対応した部分において、上記誘電体薄膜の膜厚は、1μm以下であることが好ましく、上記誘電体薄膜の最大膜厚と上記誘電体薄膜の最小膜厚との膜厚差が10nm以上であることが好ましい。
上記本発明に基づく表面プラズモン検出装置にあっては、上記入射光が入射する上記界面に対応した部分において、上記誘電体ベース部、上記金属薄膜および上記誘電体薄膜が積層する積層方向に直交する平面に平行な第1の方向にのみ上記誘電体薄膜の膜厚が変化してもよい。
上記本発明に基づく表面プラズモン検出装置にあっては、上記入射光が入射する上記界面に対応した部分において、上記誘電体ベース部、上記金属薄膜および上記誘電体薄膜が積層する積層方向に直交する平面に平行な第1の方向および上記第1の方向に交差する第2の方向の両方向に上記誘電体薄膜の膜厚が変化してもよい。
上記本発明に基づく表面プラズモン検出装置にあっては上記入射光が入射する上記界面に対応した部分において、上記誘電体薄膜は、上記誘電体ベース部、上記金属薄膜および上記誘電体薄膜が積層する積層方向に直交する平面に対して傾斜する第1傾斜面および第2傾斜面を有していてもよい。この場合には、上記第1傾斜面と上記第2傾斜面とが上記平面に対して異なる角度で交差することが好ましい。
上記本発明に基づく表面プラズモン検出装置にあっては、上記入射光が入射する上記界面においてプラズモン共鳴現象が発現することにより、上記反射光は、強度分布を有し、上記受光部にて検出した上記反射光の強度分布と、上記受光部にて予め検出した基準状態での上記反射光の強度分布との関係に基づき、測定対象物の濃度を検出することが好ましい。
上記本発明に基づく表面プラズモン検出装置にあっては、上記反射光は、上記入射光が入射する上記界面においてプラズモン共鳴現象が発現することにより生じる暗線を含み、測定対象物を含む気体が上記金属薄膜に付着した測定状態における上記暗線の位置と、上記受光部にて予め検出した基準状態での上記暗線の位置との関係に基づき、上記測定対象物の濃度を検出することが好ましい。
上記本発明に基づく表面プラズモン検出装置にあっては、上記受光部は、上記暗線の位置を検出する撮像素子を含んでいてもよい。
上記本発明に基づく表面プラズモン検出装置にあっては、上記受光部は、上記暗線の位置に応じて異なる光量が検出されるように構成された受光領域を有していてもよい。
上記本発明に基づく表面プラズモン検出装置にあっては、上記受光部は、開口部を有する遮蔽部材と、上記開口部を通過した上記反射光の光量を検出する受光素子とを含むことが好ましく、上記受光領域が上記開口部によって規定されることが好ましい。
本発明に基づく表面プラズモン検出方法は、表面プラズモン素子と、上記表面プラズモン素子に向けて入射光を投光する投光部と、上記表面プラズモン素子にて反射された反射光を受光する受光部と、を備えた表面プラズモン検出装置を用いた表面プラズモン検出方法であって、上記表面プラズモン素子として、主表面を有する誘電体ベース部、上記主表面上に形成された金属薄膜、および上記金属薄膜上に形成された誘電体薄膜を含み、上記誘電体ベース部側から入射した上記入射光を上記誘電体ベース部と上記金属薄膜との界面において上記反射光として反射させ、上記誘電体薄膜が、上記入射光が入射する上記界面に対応した部分において膜厚が異なる部分を有するものを用いる。
本発明によれば、簡素な構成で測定対象物の濃度を検出可能な表面プラズモン検出装置およびこれを用いた表面プラズモン検出方法を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置の構成を示す概略図である。図1を参照して、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置1について説明する。
図1は、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置の構成を示す概略図である。図1を参照して、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置1について説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置1は、投光部2、受光部3、表面プラズモン素子60および演算処理部90を備える。投光部2は、表面プラズモン素子60に向けて入射光L1を投光する。受光部3は、表面プラズモン素子60から反射された反射光L2を受光する。
投光部2は、光源10、コリメートレンズ20および偏光子30を含む。光源10としては、たとえば半導体レーザを採用することができる。光源10から出射された出射光は、コリメートレンズ20によって略平行光に変換される。
コリメートレンズ20を透過した出射光は、全ての光が平行で同じ方向を向いており拡散することがなければ最も好ましいが、完全に平行でなくてもよい。つまり、略平行光とは、コリメートレンズ20を透過した出射光がコリメートレンズ20の光軸に対して完全に平行である場合を含み、また、コリメートレンズ20を透過した出射光が当該光軸に対して完全には平行でないが平行に近くなっている場合を含むものとする。
偏光子30は、光源10から出射された出射光から表面プラズモンを引き起こすp偏光を抽出するためのものである。略平行光に変換された出射光は、偏光子30によってp偏光にされ、入射光L1として表面プラズモン素子60に入射する。
表面プラズモン素子60は、後述する誘電体ベース部63と後述する金属薄膜65との界面にて表面プラズモン現象を発現させることにより、略平行光から成る入射光L1を、強度分布を有する反射光L2として反射する。
受光部3は、遮蔽部材70および受光素子80を含む。表面プラズモン素子60によって反射された反射光L2は、遮蔽部材70に設けられた開口部71を通過して受光素子80にて受光される。
開口部71は、受光部3の受光領域を規定する。受光素子80としては、たとえばフォトダイオードを採用することができる。フォトダイオードにより、受光した反射光L2の光量を検出することができる。受光素子80は、演算処理部90に接続されている。
演算処理部90は、受光素子80が検出した反射光L2の光量に基づいて、揮発性有機物等の測定対象物の濃度等を算出する。演算処理部90は、後述する処理部91、記憶部92、テーブル記憶部93、温湿度計94を含む。演算処理部90は、受光部3の一部を構成する。
図2は、図1に示す表面プラズモン検出装置の表面プラズモン素子の構成を示す概略断面図である。図2を参照して、表面プラズモン素子60について説明する。
表面プラズモン素子60は、プリズム61、透明基板62、金属薄膜65および誘電体薄膜68を含む。プリズム61および透明基板62によって誘電体ベース部63が構成される。
プリズム61の材質は、光透過性が高く、真空との誘電率の違いが大きい物質が好ましい。プリズム61としては、例えば、透光性樹脂、ガラス等を採用することができる。本実施の形態においては、プリズム61としてガラスを採用している。
透明基板62は、接着剤を用いて隙間なくプリズム61に貼り合わされる。屈折率の違いによる光損失を抑制するために、接着剤としては、プリズム61および透明基板62とほぼ同一の屈折率を有する部材を用いることが好ましい。プリズム61側と反対側に位置する主面62b上には、金属薄膜65および誘電体薄膜68がこの順で積層されている。これらの層が主面62b上に積層された後に、主面62bと反対側に位置する透明基板62の主面62aが、プリズム61の底面61aに上記の接着剤を用いて貼り合わされる。
金属薄膜65は、誘電体ベース部63上に設けられている。より具体的には、透明基板62の主面62b上に設けられている。金属薄膜65としては、金、銀、銅、白金、アルミニウムなどを採用することができる。本実施の形態においては、金を採用している。金属薄膜65として金を採用した場合における金属薄膜65の厚さは、表面プラズモン共鳴による反射強度の減衰効果が最も得られる範囲内に収まることが好ましく、たとえば40〜55nmであることが好ましい。
なお、金属薄膜65と透明基板62の主面62bとの密着性を高めるために、金属薄膜65と透明基板62の主面62bと第1密着層(不図示)が設けられていてもよい。第1密着層としては、透明基板62と金属薄膜65とに良好な密着性を有する材料が用いられる。たとえば、金属薄膜65が金、銀等の貴金属で構成される場合には、第1密着層としては、チタン、ニッケル、クロム、モリブデン等の材料を採用することができる。
また、第1密着層は、金属薄膜65への入射光L1の到達を阻害しないように、密着性が得られる限度において可能な限り薄く形成されることが好ましい。具体的には、第1密着層の厚さは、1nm程度であることが好ましい。このように第1密着層が形成される場合には、当該第1密着層は、金属薄膜65の一部を構成する。
誘電体薄膜68は、金属薄膜65上に設けられている。誘電体薄膜68は、膜厚分布を有するように設けられている。誘電体薄膜68は、入射光L1が入射される誘電体ベース部63と金属薄膜65との界面に対応する部分において膜厚が異なる部分を有する。誘電体薄膜68の詳細な形状については、図4を用いて後述する。
誘電体薄膜68は、測定対象物を含む気体を一時的に金属薄膜65に滞留させる。誘電体薄膜68は、ポーラス形状を有する。これにより、誘電体薄膜68が有する多孔内に上記気体を滞留させることができる。
誘電体薄膜68の材質としては、二酸化ケイ素を採用することができる。この場合には、ポーラス形状を有する二酸化ケイ素膜を形成するために、まず、水と表面活性剤を混合してpHを調整した後にTEOS(Tetraethyl orthosilicate)を混合した溶液を準備する。この際、TEOSと表面活性剤(CTAB)と水との重量比を1:0.22:2とすることが好ましい。
続いて、金属薄膜65上にスピンコート法を用いて当該溶液を塗布する。具体的には、溶液を塗布しながら、500rpmの回転速度で5秒間回転させた後、8000rpmの回転速度で40秒間回転させる。次に、120℃で15分間乾燥させ、450℃で60分間焼成する。これにより、入射光L1が入射される誘電体ベース部63と金属薄膜65との界面に対応する部分において表面の膜厚差が5nm以下の均一な薄膜が形成される。
続いて、この薄膜上に均一な膜厚でフォトレジストを塗布する。フォトレジストに対して、ハーフトーンマスク等を用いて露光量に分布を持たせて露光を行なう。これによりフォトレジストの厚さに面内分布を持たせ、その状態でエッチングを行なう。この結果、膜厚分布を有する誘電体薄膜68を形成することができる。なお、エッチングは、ドライエッチング法を用いることが好ましい。
なお、スピンコート法の条件等を適宜変更することにより、誘電体薄膜68の膜厚を適宜変更することができる。膜厚分布を有する誘電体薄膜68の全体における最大の膜厚は、1μm以下であることが好ましい。
プラズモン共鳴は、金属薄膜65の表面に近いほど誘電体薄膜68の膜厚の変化に敏感に反応するため、入射光が入射される誘電体ベース部63と金属薄膜65との界面に対応する部分において、誘電体薄膜の膜厚が1μmよりも大きくなる場合には、膜厚の変化の影響を受けにくくなる。膜厚の変化の影響を大きくするために、上記界面に対応する部分における誘電体薄膜68の膜厚は、230nm以上830nm以下であることがより好ましい。
なお、誘電体薄膜68と金属薄膜65との密着性を向上させるために、金属薄膜65と誘電体薄膜68との間に第2密着層が(不図示)が設けられていてもよい。第2密着層としては、チタン、ニッケル、クロム、モリブデン等の材料を採用することができる。
第2密着層が形成される場合には、揮発性有機物等の測定対象物が金属薄膜65に付着することが可能となるように、第2密着層は、密着性が得られる限度において可能な限り薄く形成されることが好ましい。具体的には、第2密着層の厚さは、1nmであることが好ましい。
図3は、異なる膜厚を有する各誘電体薄膜における入射角度と反射率との関係を示す図である。図3においては、各誘電体薄膜の膜厚が380nm、400nm、420nmである場合を例示している。図3を参照して、誘電体薄膜の各膜厚における入射角度と反射率との関係について説明する。
図3に示すように、誘電体薄膜の膜厚が380nmである場合に、入射角度を変化させながら略平行光を入射させた場合には、入射角が略52°近傍において、金属薄膜65の内部を金属薄膜65の主表面65aに沿って伝達するエバネッセント光の波数と表面プラズマの波数とが等しくなり、金属薄膜65と誘電体ベース部63との界面にて表面プラズモン共鳴現象が発現する。これにより、膜厚が380nmとなる場合には、52°近傍の入射角で入射された光の反射強度(反射率)が減衰する。
また、誘電体薄膜の膜厚が400nmである場合に、入射角度を変化させながら略平行光を入射させた場合には、入射角が略54°近傍において上述同様の理由により表面プラズモン共鳴現象が発現する。これにより、膜厚が400nmとなる場合には、54°近傍の入射角で入射された光の反射強度(反射率)が減衰する。
また、誘電体薄膜の膜厚が420nmである場合に、入射角度を変化させながら略平行光を入射させた場合には、入射角が略56°近傍において上述同様の理由により表面プラズモン共鳴現象が発現する。これにより、膜厚が420nmとなる場合には、56°近傍の入射角で入射された光の反射強度(反射率)が減衰する。
このように、表面プラズモンの分散関係(周波数と波数の関係)は、金属薄膜の表面状態に敏感であり、金属薄膜表面上に誘電体薄膜を形成した場合には、その膜厚によって変化する。これにより、表面プラズモン共鳴現象が発現する入射角度は、誘電体薄膜の膜厚によって変化する。
このため、略平行光が入射される金属薄膜65と誘電体ベース部63との界面に対応する部分において、誘電体薄膜68が異なる膜厚を有する部分を含むように構成されている場合にあっては、各膜厚での反射率が異なることにより、上記界面において反射される反射光が強度分布を有することとなる。
たとえば、略平行光が入射される上記界面に対応する部分において誘電体薄膜の膜厚が380nmから400nmまで変化するように誘電体薄膜が形成されている場合であって、略52°の入射角を有する略平行光が入射された場合には、膜厚が380nmの部分では反射率が大きく減衰し、膜厚が400nmの部分では反射率は高くなる。これにより、反射光は、強度分布を有することとなる。
なお、略平行光が入射される上記界面に対応する部分において、誘電体薄膜68の最大膜厚と最少膜厚との膜厚差があまりにも小さい場合には、膜厚差に起因する反射光の強度の変位も微小となる。この場合には、反射光の強度が著しく減少する部分が現れず、この部分を暗線として認識できなくなる。
このため、略平行光が入射される上記界面に対応する部分において、誘電体薄膜68の最大膜厚と最少膜厚との膜厚差は、10nm以上であることが好ましい。10nm以上の膜厚差があれば、反射光の強度が著しく減少する部分が現れ、この部分を暗線として認識することができる。
図4は、図1に示す表面プラズモン素子によって入射光が反射される様子を模式的に示す図である。図4を参照して、表面プラズモン素子60に具備される誘電体薄膜68の形状およびこれに基づいて表面プラズモン素子60によって入射光が反射される様子について説明する。
図4に示すように、誘電体薄膜68は、断面視五角形状を有する。誘電体薄膜68は、頂辺部681、第1傾斜面682、第2傾斜面683、側面部684,685および底面部686を含む。
頂辺部681は、誘電体薄膜68の略中央に設けられている。頂辺部681は、第1傾斜面682と第2傾斜面683と交差する部分に設けられている。底面部686は、誘電体ベース部63、金属薄膜65および誘電体薄膜68が積層される積層方向に垂直な平面と略平行である。
第1傾斜面682および第2傾斜面683は、上述の積層方向に垂直な平面に対して傾斜するように設けられている。第1傾斜面682および第2傾斜面683は、上述の積層方向に垂直な平面に対して略同一の角度で傾斜するように設けられている。第1傾斜面682および第2傾斜面683は、頂辺部681に対して線対称となるように設けられている。
このように、第1傾斜面682および第2傾斜面683が設けられることにより、誘電体薄膜68の膜厚は、積層方向に直交する平面に平行な第1の方向にのみ変化する。具体的には、誘電体薄膜68の膜厚は、側面部684側から側面部685側に向かうにつれて変化する。
側面部684は、第1傾斜面682と底面部686とを接続する。具体的には、側面部684は、投光部2側に位置する第1傾斜面682の端部側と投光部2側に位置する底面部686の端部側とを接続する。
側面部685は、第2傾斜面683と底面部686とを接続する。具体的には、側面部685は、受光部3側に位置する第2傾斜面683の端部側と受光部3側に位置する底面部686の端部側とを接続する。
入射光L1は、所定の幅を持って金属薄膜65と誘電体ベース部63との界面に入射する。入射光L1は、上述の積層方向からみた場合に、頂辺部681を跨ぐように入射する。
上述のように誘電体薄膜68の膜厚が変動することにより、入射光L1が入射される範囲A1において、誘電体薄膜68は、プラズモン共鳴現象が発現する部分R1,R2を有する。
誘電体ベース部63と金属薄膜65との界面に入射した入射光L1は、プラズモン共鳴現象が発現する部分R1,R2にて反射率が大幅に減衰した状態で当該界面にて反射光L2として反射される。
図5は、図1に示す表面プラズモン素子によって反射された反射光の光束断面図である。図5を参照して、表面プラズモン素子60によって反射された反射光L2の光束断面について説明する。
図5に示すように、プラズモン共鳴現象が発現することにより、反射光L2の光束断面には、他の部分よりも光強度が低下する部分に複数の暗線DL1,DL2が形成される。複数の暗線DL1,DL2は、プラズモン共鳴現象が発現する部分R1,R2に対応する位置に形成される。このように、暗線DL1,DL2が形成されることにより、反射光L2は、光強度の低い部分と光強度の高い部分とを含み、強度分布を有することとなる。
なお、図5は、金属薄膜65に測定対象物が付着していない状態(基準状態)における暗線DL1,DL2を示している。金属薄膜65に測定対象物が付着した場合には、暗線DL1,DL2の位置は移動することとなる。これは、表面プラズモンの分散関係(周波数と波数の関係)が、金属薄膜の表面状態の影響を受けやすく、金属表面に付着した物質の影響によって変動するからである。
図6は、図1に示す受光部に含まれる遮蔽部材の平面図である。図6を参照して、図1に示す受光部に含まれる遮蔽部材70について説明する。
図6に示すように、遮蔽部材70は、開口部71を有する。開口部71は、受光部3の受光領域を規定する。開口部71は、上述の基準状態における暗線DL1に対応する位置に設けられている。開口部71の幅W1は、当該暗線DL1の幅W(図5参照)とほぼ同一となるように設けられている。なお、開口部71の幅方向は、誘電体薄膜68の膜厚が変化する第1の方向に対応している。また、受光領域は、後述するように暗線DL1の位置に応じて異なる光量が検出されるように構成されている。
図7は、基準状態において遮蔽部材の開口部を介して見える反射光を示す図である。図8は、測定状態において遮蔽部材の開口部を介して見える反射光を示す図である。図7および図8を参照して、表面プラズモン検出方法について説明する。この場合においては、測定対象物である揮発性有機物の濃度を測定する方法について説明する。
ここで、表面プラズモン現象によって形成される暗線DL1の位置は、測定対象物である揮発性有機物の濃度だけでなく、温度、湿度により変化する。このため、金属薄膜65に測定対象物を含む気体が付着していない状態(基準状態)で、各温湿度における反射光L2の光量を予め受光部3にて検出する。予め検出された各光量は、各温湿度における基準量として記憶部92(図1参照)に記憶されている。また、基準量からの変動量に基づいてガス濃度を算出するための換算テーブルもテーブル記憶部93(図1参照)に記憶されている。
基準量を決定するために、まず、温湿度計94(図1参照)を用いて基準状態で測定時における装置内の温湿度を測定する。測定された温湿度に関する情報に基づき、処理部91は、記憶部92に記憶された情報から測定時に必要な基準量を決定する。
図7に示すように、基準状態においては、反射光L2のうち暗線DL1の部分のみが開口部71を通過し、暗線DL2を含むその他の部分については、遮蔽部材70によって遮蔽される。このため、基準量は比較的低い値を示すこととなる。
続いて、測定対象物を含む気体を金属薄膜65の主表面65bに接触させた測定状態で金属薄膜65と誘電体ベース部63との界面にて反射された反射光L2の光量を受光部3にて検出する。なお、誘電体薄膜68は、上述のようにポーラス状に設けられている。このため、誘電体薄膜68の周囲に測定対象物を含む気体を配置することにより、当該気体が誘電体薄膜68の連通孔を通って金属薄膜65に付着することとなる。
図8に示すように、測定状態においては、暗線DL1の位置が、誘電体薄膜68の膜厚が変化する方向に対応する方向に沿って移動する。暗線DL1の位置が移動することにより、反射光L2の強度分布も変化する。また、暗線DL1の位置が移動することにより、受光領域内を占める暗線DL1の面積の割合が変化する。このため、受光部3が検出する反射光の光量は、暗線DL1の位置に応じて変動することになる。
処理部91は、受光部3にて検出した反射光L2の強度分布と、受光部3にて予め検出した基準状態での反射光L2の強度分布との関係に基づき、測定対象物の濃度を算出する。具体的には、処理部91は、測定時に検出された反射光L2の光量と上記基準量との差分(変動量)を算出するとともに、上記換算テーブルを用いて、測定対象物の濃度を算出する。
以上のように、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置1は、入射光L1が入射される範囲において、誘電体ベース部63と金属薄膜65との界面にてプラズモン共鳴現象が発現するように膜厚が異なる部分を誘電体薄膜68が有する構成である。
このような構成とし、プラズモン共鳴が起きる共鳴角度が誘電体薄膜68の膜厚に依存することを利用することにより、誘電体ベース部63と金属薄膜65との界面に略平行光を入射した場合であっても、プラズモン共鳴現象を発現させて、強度分布を有する反射光を得ることができる。
このため、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置1にあっては、膜厚が一定である平坦な誘電体薄膜を有する表面プラズモン素子を具備する表面プラズモン検出装置と比較して、入射角度を順次変化させる機構や入射角度成分を有する光線束を生成させるための光学系が不要となる。
また、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置1の受光部3は、誘電体薄膜68を介して金属薄膜65に付着する測定対象物の濃度に応じて異なる反射光L2の強度分布を検出可能に構成されている。これにより、受光部3にて検出した反射光L2の強度分布と、受光部3にて予め検出した基準状態での反射光L2の強度分布との関係、具体的には、測定状態における暗線DL1の位置と、基準状態での暗線の位置との関係に基づき、測定対象物の濃度を検出することができる。
これらの結果、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置1およびこれを用いた表面プラズモン検出方法にあっては、簡素な構成で測定対象物の濃度を検出することができる。
また、本実施の形態においては、開口部71は、第1の方向に対応する方向に垂直な方向に延在する矩形形状を有する。これにより、反射光が投影される平面において第1の方向に対応する方向に垂直方向に延在する受光領域の長さが第1の方向に対応する方向に平行な方向に沿って一定となる。
このため、暗線DL1の初期位置が受光領域内のどの位置にあっても暗線DL1の移動量が同じであれば、受光領域内の暗線DL1の面積の変化量が一定となり、受光部3が検出する反射光の光量の変化量も一定となる。
暗線DL1の初期位置の調整の方法としては、開口部71内に暗線DL1の初期位置が入るように遮蔽部材の位置を調整するだけで、容易に初期調整をすることができる。なお、上記のように遮蔽部材の位置を調整する方法以外に、開口部71内に暗線DL1の初期位置が入るように、受光部3に入射する入射角度を調整することにより初期調整を行ってもよい。
いずれにせよ、暗線DL1の初期位置が少なくとも受光領域内に入るように調整すればよく、暗線DL1の初期位置を完全に所定の位置にあわせるような高精度の調整を要しないので、初期調整の手間やコストを削減することができる。特に遮蔽部材の位置を調整する方法においては、ゴニオメータ等を用いて入射角度を厳密に調整する必要がないため、作業的に負担を減らし、また調整のための部品点数を減らすことができる。
なお、開口部71の形状は、矩形形状に限定されず、第1の方向に対応する方向に垂直な方向に平行な底辺を有する三角形状や、第1の方向に対応する方向に垂直な方向に平行な1組の対辺を有する台形形状であってもよい。開口部71がこのような形状を有する場合には、反射光が投影される平面において第1の方向に対応する方向に垂直方向に延在する受光領域の長さは、第1の方向に対応する方向に平行な方向に沿って一定の変化率で漸次的に変化する。
このような場合においても、暗線が受光領域内のどの位置にあっても暗線DLの移動量が同じであれば、暗線DLの面積の変化量が一定となる。このため、上述同様の理由により、暗線の初期位置を所定の位置にするようための投光部2および受光部3の微調整を伴う組立作業を必要とせず、また微調のための部材も必要としないため部品点数を減らし、コストを削減することができる。
(実施の形態2)
図9は、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置に具備される受光部によって測定対象物を検出する場合を示す図である。図9を参照して、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置およびこれを用いて表面プラズモン検出方法について説明する。
図9は、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置に具備される受光部によって測定対象物を検出する場合を示す図である。図9を参照して、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置およびこれを用いて表面プラズモン検出方法について説明する。
図9に示すように、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置は、実施の形態1に係る表面プラズモン検出装置1と比較して受光部3の構成が相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。
受光部3は、上述のように測定対象物を含む気体が金属薄膜65に付着することに起因して変化する暗線の位置を検出する撮像素子によって構成されている。このため、本実施の形態に係る受光部3においては、実施の形態1に係る遮蔽部材70が不要となる。
撮像素子としては、たとえば、多セル型のラインセンサーを用いることができる。撮像素子は、たとえばn×m個(n、mは任意の正の整数)の画素gを有する測定範囲D1を有する。撮像素子は、測定対象物が基準状態での暗線DL1の初期位置と、測定対象物が金属薄膜65に付着した測定状態での暗線DL1の位置を検出する。図9においては、基準状態での暗線DL1の位置を一点鎖線で示し、測定状態での暗線DL1の位置を斜線部で示している。撮像素子は、暗線が何画素移動したかを検出する。
本実施の形態においては、予め検出された基準状態での暗線DL1の位置は、各温湿度における基準位置として記憶部92に記憶されている。また、基準位置からの移動量に基づいてガス濃度を算出するための換算テーブルもテーブル記憶部93に記憶されている。
処理部91は、測定時に検出された暗線DL1の位置と基準位置との差分(移動量)を算出するとともに、上記換算テーブルを用いて、測定対象物の濃度を算出する。
以上のように、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置にあっても、測定状態における暗線DL1の位置と、基準状態での暗線DL1の位置との関係に基づき、測定対象物の濃度を検出することができる。また、プラズモン共鳴が起きる共鳴角度が誘電体薄膜68の膜厚に依存することを利用することにより、誘電体ベース部63と金属薄膜65との界面に略平行光を入射した場合であっても、プラズモン共鳴現象を発現させて、強度分布を有する反射光を得ることができる。
これらの結果、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置およびこれを用いた表面プラズモン検出方法にあっては、実施の形態1とほぼ同様の効果が得られる。
(実施の形態3)
図10は、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置に具備される表面プラズモン素子の概略断面図である。図10を参照して、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置1Aについて説明する。
図10は、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置に具備される表面プラズモン素子の概略断面図である。図10を参照して、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置1Aについて説明する。
図10に示すように、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置1Aは、実施の形態1に係る表面プラズモン検出装置と比較して、表面プラズモン素子60Aの構成が相違し、その他の構成は、ほぼ同様である。
表面プラズモン素子60Aは、実施の形態1に係る表面プラズモン素子60と比較した場合に、誘電体薄膜68Aの構成が相違する。
誘電体薄膜68Aは、断面視四角形状を有する。誘電体薄膜68Aは、頂辺部681A、傾斜面683A、側面部684,685および底面部686を含む。
頂辺部681Aは、投光部2側に位置する誘電体薄膜68Aの端部側に設けられている。頂辺部681Aは、傾斜面683Aと側面部684とが交差する部分に設けられている。
傾斜面683Aは、金属薄膜65および誘電体薄膜68が積層される積層方向に垂直な平面に対して傾斜するように設けられている。傾斜面683Aは、側面部685側から側面部684側に向かうにつれて一定の割合で膜厚が増加するように設けられている。
傾斜面683Aが設けられることにより、本実施の形態においても誘電体薄膜68Aの膜厚は、上述の積層方向に直交する平面に平行な第1の方向にのみ変化する。このように誘電体薄膜68Aの膜厚が変動することにより、入射光L1が入射される範囲A1において、誘電体薄膜68Aは、プラズモン共鳴現象が発現する部分R1を有する。
誘電体ベース部63と金属薄膜65との界面に入射した入射光L1は、プラズモン共鳴現象が発現する部分R1にて反射率が大幅に減衰した状態で当該界面にて反射光L2として反射される。
図11は、図10に示す表面プラズモン素子によって反射された反射光の光束断面図である。図11を参照して、表面プラズモン素子60Aによって反射された反射光の光束断面について説明する。
図11に示すように、プラズモン共鳴現象が発現することにより、反射光L2の光束断面には、他の部分よりも光強度が低下する部分に単数の暗線DL1が形成される。単数の暗線DL1は、プラズモン共鳴現象が発現する部分R1に対応する位置に形成される。このように、暗線DL1が形成されることにより、反射光L2は、光強度の低い部分と光強度の高い部分とを含み、強度分布を有することとなる。
本実施の形態においても、実施の形態1と同様の遮蔽部材70を用いる。また、実施の形態1に係る表面プラズモン検出方法に準じた検出方法を用いて、測定時に検出された反射光L2の光量と上記基準量との差分(変動量)を算出することにより、測定対象物の濃度を検出することができる。
このように、本実施の形態においても、プラズモン共鳴が起きる共鳴角度が誘電体薄膜68Aの膜厚に依存することを利用することにより、誘電体ベース部63と金属薄膜65との界面に略平行光を入射した場合であっても、プラズモン共鳴現象を発現させて、強度分布を有する反射光を得ることができる。また、測定状態における暗線DL1の位置と、基準状態での暗線の位置との関係に基づき、測定対象物の濃度を検出することができる。これらの結果、本実施の形態においても、実施の形態1とほぼ同様の効果が得られる。
(実施の形態4)
図12は、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置に具備される表面プラズモン素子の概略断面図である。図12を参照して、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置1Bについて説明する。
図12は、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置に具備される表面プラズモン素子の概略断面図である。図12を参照して、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置1Bについて説明する。
図12に示すように、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置1Bは、実施の形態1に係る表面プラズモン検出装置と比較して、表面プラズモン素子60Bの構成が相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。
表面プラズモン素子60Bは、実施の形態1に係る表面プラズモン素子60と比較して、誘電体薄膜68Bの構成が相違する。
誘電体薄膜68Bは、複数の頂辺部681B、複数の第1傾斜面691、複数の連結面692、側面部684,685および底面部686を含む。
複数の頂辺部681Bは、略同一の高さとなるように設けられている。複数の頂辺部681Bは、複数の第1傾斜面691と複数の連結面692とが交差する部分のうち底面部686から遠い側に位置する部分に形成されている。複数の頂辺部681Bは、複数の第1傾斜面691および複数の連結面692は、誘電体薄膜68Bのうち底面部686に対向する面に設けられている。
複数の第1傾斜面691は、誘電体ベース部63、金属薄膜65および誘電体薄膜68Bが積層する積層方向に直交する平面に対して傾斜するように設けられている。複数の第1傾斜面691のそれぞれは、略同一の角度で積層方向に直交する平面に交差する。
複数の第1傾斜面691は、積層方向に直交する平面に平行な第1方向に配列されている。たとえば、複数の第1傾斜面691は、受光部3側に位置する誘電体薄膜68Bの端部側から投光部2側に位置する誘電体薄膜68Bの端部側に向かう方向に沿って配列されている。
複数の連結面692のそれぞれは、互いに隣り合う第1傾斜面691を連結するように設けられている。複数の連結面692は、積層方向に平行となるように設けられている。
このように複数の第1傾斜面691が設けられる場合であっても、誘電体薄膜68の膜厚は、積層方向に直交する平面に平行な第1の方向にのみ変化する。また、複数の第1傾斜面691が設けられることにより、入射光L1が入射される範囲A1(入射光L1が入射する誘電体ベース部63と誘電体薄膜68との界面に対応する部分)において、誘電体薄膜68Bは、プラズモン共鳴現象が発現する複数の部分R1,R2,R3を有する。
誘電体ベース部63と金属薄膜65との界面に入射した入射光L1は、プラズモン共鳴現象が発現する複数の部分R1,R2,R3にて反射率が大幅に減衰した状態で当該界面にて反射される。
図13は、図12に示す表面プラズモン素子によって反射された反射光の光束断面図である。図13を参照して、表面プラズモン素子60Bによって反射された反射光の光束断面について説明する。
図13に示すように、プラズモン共鳴現象が発現することにより、反射光L2の光束断面には、他の部分よりも光強度が低下する部分に複数の暗線DL1,DL2,DL3が形成される。複数の暗線DL1,DL2,DL3は、プラズモン共鳴現象が発現する複数の部分R1,R2,R3に対応する位置に形成される。また、複数の第1傾斜面691のそれぞれが略同一の角度で積層方向に直交する平面に交差することにより、複数の暗線DL1,DL2,DL3は、ほぼ同一の幅で形成される。
このように、複数の暗線DL1,DL2,DL3が形成されることにより、反射光L2は、光強度の低い部分と光強度の高い部分とを含み、強度分布を有することとなる。
図14は、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置に具備される受光部に含まれる遮蔽部材の平面図である。図14を参照して、受光部に含まれる遮蔽部材70Bについて説明する。
図14に示すように、遮蔽部材70Bは、複数の開口部71,72,73を有する。複数の開口部71,72,73は、受光部の受光領域を規定する。複数の開口部71,72,73は、基準状態における暗線DL1,DL2,DL3に対応する位置に設けられている。複数の開口部71,72,73は、上述の第1の方向に対応する方向に間隔を開けて並んでいる。
図15は、基準状態において遮蔽部材の開口部を介して見える反射光を示す図である。図16は、測定状態において遮蔽部材の開口部を介して見える反射光を示す図である。図15および図16を参照して、表面プラズモン検出方法について説明する。この場合においては、測定対象物である揮発性有機物の濃度を測定する方法について説明する。
図15に示すように、基準状態においては、反射光L2のうち暗線DL1,DL2,DL3の部分のみが開口部71,72,73を通過し、暗線DL2を含むその他の部分については、遮蔽部材70Bによって遮蔽される。このため、基準状態で予め検出された光量(基準量)は比較的低い値を示す。
図16に示すように、測定状態においては、暗線DL1,DL2,DL3の位置が、上述の第1の方向に対応する方向に沿って移動する。暗線DL1の位置が移動することにより、反射光L2の強度分布も変化する。また、暗線DL1の位置が移動することにより、受光領域内を占める暗線DL1,DL2,DL3の面積の割合が変化する。このため、受光部3が検出する反射光の光量は、暗線DL1,DL2,DL3の位置に応じて変動することになる。
本実施の形態においても、実施の形態1に係る表面プラズモン検出方法に準じて、処理部91が、測定時に検出された反射光L2の光量と上記基準量との差分(変動量)を算出するとともに、上記換算テーブルを用いて、測定対象物の濃度を算出する。
このように、本実施の形態においても、プラズモン共鳴が起きる共鳴角度が誘電体薄膜68Bの膜厚に依存することを利用することにより、誘電体ベース部63と金属薄膜65との界面に略平行光を入射した場合であっても、プラズモン共鳴現象を発現させて、強度分布を有する反射光を得ることができる。また、測定状態における暗線DL1の位置と、基準状態での暗線の位置との関係に基づき、測定対象物の濃度を検出することができる。これらの結果、本実施の形態においても、実施の形態1とほぼ同様の効果が得られる。
なお、本実施の形態においては、誘電体薄膜68Bが複数の第1傾斜面691を有することにより、複数の暗線DL1,DL2,DL3を形成し、複数の開口部71,72,73を設けた遮蔽部材70Bを用いて複数の暗線DL1,DL2,DL3の移動に伴う光量の変化量を検出している。このため、本実施の形態においては、実施の形態1,3のように単数の開口部71を設けて、暗線DL1の移動に伴う光量の変化量を検出する場合と比較して、受光量の変化量を大きくすることができる。
このため、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置1Bおよびこれを用いた表面プラズモン検出方法にあっては、実施の形態1,3に係る表面プラズモン検出装置1,1Aと比較して、検出感度を高めて測定対象物の濃度を検出することができる。
なお、本実施の形態においては、複数の連結面692が、上記積層方向に平行である場合を例示して説明したが、上記積層方向に垂直な平面に傾斜するように設けられていてもよい。
(実施の形態5)
図17は、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置に具備される表面プラズモン素子の平面図である。図18は、図17に示す表面プラズモン素子の概略断面図である。図17および図18を参照して、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置1Cについて説明する。
図17は、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置に具備される表面プラズモン素子の平面図である。図18は、図17に示す表面プラズモン素子の概略断面図である。図17および図18を参照して、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置1Cについて説明する。
図17および図18に示すように、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置1Cは、実施の形態1に係る表面プラズモン検出装置と比較して、表面プラズモン素子60Cの構成が相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。
表面プラズモン素子60Cは、実施の形態1に係る表面プラズモン素子60と比較して、誘電体薄膜68Cの構成が相違する。
誘電体薄膜68Cは、複数の傾斜面69a,69b,69c,69d、側面部684,685および底面部686を有する。誘電体薄膜68Cのうち底面部686に対向する面は、正四角錐69Cがマトリクス状に配列させた部分を有する。たとえば、正四角錐69Cが5行×5列で配列されている。
複数の傾斜面69aおよび複数の傾斜面69cは、断面視二等辺三角形を形成するように交互に並んで配列されている。複数の傾斜面69aおよび複数の傾斜面69cは、誘電体ベース部63、金属薄膜65および誘電体薄膜68が積層する積層方向に直交する平面に平行な第1の方向に並んで配列されている。
複数の傾斜面69bおよび複数の傾斜面69dは、断面視二等辺三角形を形成するように交互に並んで配列されている。複数の傾斜面69bおよび複数の傾斜面69dは、上記積層方向に直交する平面に平行な第2の方向に並んで配置されている。第2の方向は、第1方向に対して交差する。具体的には、第2の方向は、第1の方向に直交する。
このように、複数の傾斜面69a,69b,69c,69dが設けられることにより、誘電体薄膜68Cの膜厚は、上記積層方向に直交する平面に平行な第1の方向および当該第1の方向に交差する第2の方向の両方向に変化する。
入射光L1は、たとえば、上記積層方向から見た場合に、たとえば略中央に位置する3行×3列の正四角錐の全てに重なるように入射する。
複数の傾斜面69a,69cが設けられ、第1の方向に誘電体薄膜68Cの膜厚が変化することにより、入射光L1が入射される範囲A1(入射光L1が入射する誘電体ベース部63と誘電体薄膜68との界面に対応する部分)において、誘電体薄膜68Cは、第1の方向に沿ってプラズモン共鳴現象が発現する複数の部分R1,R2を有する。プラズモン共鳴現象が発現する複数の部分R1,R2は、第1の方向に間隔をあけて正四角錐69C毎に形成される。
複数の傾斜面69b,69dが設けられ、第2の方向に誘電体薄膜68Cの膜厚が変化することにより、入射光L1が入射される範囲A1において、誘電体薄膜68Cは、第2の方向に沿ってプラズモン共鳴現象が発現する複数の部分を有する。当該プラズモン共鳴現象が発現する複数の部分は、第2の方向に間隔をあけて正四角錐69C毎に形成される。
図19は、図18に示す表面プラズモン素子によって反射された反射光の光束断面図である。図19を参照して、表面プラズモン素子60Cによって反射された反射光の光束断面について説明する。
図19に示すように、第1の方向に沿って間隔をあけてプラズモン共鳴現象が発現するとともに、第2の方向に沿って間隔をあけてプラズモン共鳴現象が発現することにより、反射光L2の光束断面には、複数の枠状の暗線DLが形成される。
枠状の暗線DLは、上記積層方向から見た場合に入射光L1内に含まれる各正四角錐69Cに対応して形成される。複数の枠状の暗線DLは、3行×3列のマトリクス状に形成される。このように、複数の暗線DLが形成されることにより、反射光L2は、光強度の低い部分と光強度の高い部分とを含み、強度分布を有することとなる。
図20は、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置に具備される受光部に含まれる遮蔽部材の平面図である。図20を参照して、表面プラズモン検出装置1Cに具備される遮蔽部材70Cについて説明する。
図20に示すように、遮蔽部材70Cは、複数の開口部71Cを有する。複数の開口部71Cは、略L字形状を有する。複数の開口部71Cのそれぞれは、第1の方向に対応する方向に沿って延在する部分と第2の方向に対応する方向に沿って延在する部分とを有する。複数の開口部71Cは、基準状態における複数の暗線DLに対応する位置に設けられている。複数の開口部71Cは、3行×3列のマトリクス状に形成されている。
図21は、基準状態において遮蔽部材の開口部を介して見える反射光を示す図である。図22は、測定状態において遮蔽部材の開口部を介して見える反射光を示す図である。図21および図22を参照して、表面プラズモン検出方法について説明する。
図21に示すように、基準状態においては、反射光L2のうち複数の暗線DLのみが複数の開口部71Cを通過し、その他の部分については、遮蔽部材70Cによって遮蔽される。このため、基準状態で予め検出された光量(基準量)は比較的低い値を示す。
図22に示すように、測定状態においては、暗線DLの位置が、たとえば第1の方向に対応するおよび第2の方向に対応する方向に交差する方向に移動する。暗線DLの位置が移動することにより、反射光L2の強度分布も変化する。また、暗線DLの位置が移動することにより、受光領域内を占める暗線DLの面積の割合が変化する。このため、受光部3が検出する反射光の光量は、暗線DLの位置に応じて変動することになる。
本実施の形態においても、実施の形態1に係る表面プラズモン検出方法に準じて、処理部91が、測定時に検出された反射光L2の光量と上記基準量との差分(変動量)を算出するとともに、上記換算テーブルを用いて、測定対象物の濃度を算出する。
このように、本実施の形態においても、プラズモン共鳴が起きる共鳴角度が誘電体薄膜68Cの膜厚に依存することを利用することにより、誘電体ベース部63と金属薄膜65との界面に略平行光を入射した場合であっても、プラズモン共鳴現象を発現させて、強度分布を有する反射光を得ることができる。また、測定状態における暗線DLの位置と、基準状態での暗線DLの位置との関係に基づき、測定対象物の濃度を検出することができる。これらの結果、本実施の形態においても、実施の形態1とほぼ同様の効果が得られる。
なお、本実施の形態においては、誘電体薄膜68Cの膜厚が第1の方向および第2の方向に変化することにより、これら第1の方向および第2の方向のそれぞれに対応する方向に延在する暗線DLを形成することができる。これにより、第1の方向に対応する方向にのみ延在する暗線を移動させる場合と比較して、暗線DLの移動に伴う光量の変化量を大きくすることができる。
さらに、誘電体薄膜68Cの表面を複数の正四角錐69Cをマトリクス状に配列して構成することにより、複数の暗線DLを形成することができる。測定状態において、複数の暗線DLが移動することにより、さらに受光量の変化を大きくすることができる。
これにより、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置1Cおよびこれを用いた表面プラズモン検出方法にあっては、実施の形態1,3に係る表面プラズモン検出装置1,1Aと比較して、検出感度をさらに高めて測定対象物の濃度を検出することができる。
なお、本実施の形態においては、誘電体薄膜68Cの表面が複数の正四角錐69Cをマトリクス状に配列した形状を含む場合を例示して説明したが、これに限定されず、正四角錐ではなく、複数の四角錐をマトリクス状に配列した形状を含んでいてもよい。また、正四角錐69あるいは四角錐の個数は、単数であってもよい。
(実施の形態6)
図23は、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置に具備される表面プラズモン素子の概略断面図である。図23を参照して、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置1Dについて説明する。
図23は、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置に具備される表面プラズモン素子の概略断面図である。図23を参照して、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置1Dについて説明する。
図23に示すように、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置1Dは、実施の形態1と比較して、表面プラズモン素子60Dおよび受光部の構成が相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。
表面プラズモン素子60Dは、実施の形態1に係る表面プラズモン素子60と比較した場合に誘電体薄膜68Dの構成が相違する。
誘電体薄膜68Dは、断面視五角形状を有する。誘電体薄膜68Dは、頂辺部681D、第1傾斜面682D、第2傾斜面683D、側面部684,685および底面部686を含む。
頂辺部681Dは、投光部2側に位置する誘電体薄膜68Dの端部寄りの位置に設けられている。頂辺部681Dは、第1傾斜面682Dと第2傾斜面683Dと交差する部分に設けられている。底面部686は、誘電体ベース部63、金属薄膜65および誘電体薄膜68が積層される積層方向に垂直な平面と略平行である。
第1傾斜面682Dおよび第2傾斜面683Dは、上記積層方向に垂直な平面に対して傾斜するように設けられている。第1傾斜面682Dと第2傾斜面683Dとは、上記積層方向に垂直な平面に対して異なる角度で交差する。
このように、第1傾斜面682Dと第2傾斜面683Dとの傾斜角が相違することにより、誘電体薄膜68Dのうち第1傾斜面682Dを含む部分と第2傾斜面683Dとで膜厚の変化具合が相違する。
具体的には、上記積層方向に垂直な平面に対する第1傾斜面682Dの傾斜角は、上記積層方向に垂直な平面に対する第2傾斜面683Dの傾斜角よりも大きい。これにより、誘電体薄膜68Dのうち第1傾斜面682Dを含む部分の第1の方向に沿った膜厚変化は、誘電体薄膜68Dのうち第2傾斜面683Dを含む部分の第1の方向に沿った膜厚変化よりも大きくなる。
これにより、誘電体薄膜68Dのうち第1傾斜面682Dを含む部分が有するプラズモン共鳴現象が発現する部分R1の幅は、誘電体薄膜68Dのうち第2傾斜面683Dを含む部分が有するプラズモン共鳴現象が発現する部分R2の幅よりも小さくなる。
入射光L1は、所定の幅を持って金属薄膜65と誘電体ベース部63との界面に入射する。入射光L1は、上述の積層方向からみた場合に、頂辺部681Dを跨ぐように入射する。
誘電体ベース部63と金属薄膜65との界面に入射した入射光L1は、プラズモン共鳴現象が発現する部分R1,R2にて反射率が大幅に減衰した状態で当該界面にて反射光L2として反射される。
図24は、図23に示す表面プラズモン素子によって反射された反射光の光速断面図である。図24を参照して、表面プラズモン素子60Dによって反射された反射光の光束断面について説明する。
図24に示すように、プラズモン共鳴現象が発現する部分R1では、上述のように膜厚変化が大きいため、プラズモン共鳴現象が発現することにより細い暗線DL1が形成される。一方、プラズモン共鳴現象が発現する部分R2では、上述のように膜厚変化が小さいため、プラズモン共鳴現象が発現することにより太い暗線DL2が形成される。すなわち、第1の方向に対応する方向に沿った暗線DL1の幅は、第1の方向に対応する方向に沿った暗線DL2の幅よりも小さい。
図25は、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置に具備される受光部に含まれる遮蔽部材の平面図である。図25を参照して、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置1Dに具備される遮蔽部材70D1,70D2について説明する。
遮蔽部材70D1,70D2は、開口部71D1,71D2を有する。なお、本実施の形態においては、開口部71D1,71D2が分離した遮蔽部材70D1,70D2に設けられる場合を例示しているが、1つの遮蔽部材に設けられていてもよい。
開口部71D1,71D2は、基準状態における暗線DL1,DL2に対応する位置に設けられている。開口部71D1の幅は、開口部71D2の幅よりも小さい。
本実施の形態における受光部は、開口部71D1,71D2を通過する光をそれぞれ独立して受光できるように複数設けられている。
図26は、基準状態において遮蔽部材の開口部を介して見える反射光を示す図である。図27および図28は、測定状態において遮蔽部材の開口部を介して見える反射光の第1例および第2例を示す図である。図26から図28を参照して、表面プラズモン検出方法について説明する。
図26に示すように、基準状態においては、反射光L2のうち暗線DL1,DL2の部分のみが開口部71D1,71D2を通過する。このため、基準状態で複数の受光部のそれぞれで予め検出された光量(基準量)は比較的低い値を示す。
図27に示すように、測定状態において遮蔽部材の開口部を介して見える反射光の第1例にあっては、測定対象物の濃度が微小である場合を示す。測定対象物の濃度が微小である場合には、暗線DL1,DL2はわずかに移動する。
暗線DL1側においては、誘電体薄膜68Dの膜厚変化が大きい。このため、暗線DL1の境界部の外側と内側では、光量の変化量も大きい。これにより、暗線DL1がわずかに移動した場合であっても、開口部71D1によって規定される受光領域内での受光量の変化は十分に大きくなる。この結果、開口部71D1側に位置する受光部では、測定対象物の濃度を測定することができる。
一方で、暗線DL2側においては、誘電体薄膜68Dの膜厚変化が小さい。このため、暗線DL2の境界部の外側と内側では、光量の変化も小さい。これにより、暗線DL2がわずかに異動した場合では、開口部71D2によって規定される受光領域内での受光量の変化は大きく変動しない。この結果、開口部71D2側に位置する受光部では、測定対象物の濃度を測定できない場合が起こり得る。
図28に示すように、測定状態において遮蔽部材の開口部を介して見える反射光の第2例にあっては、測定対象物の濃度が比較的大きい場合を示す。測定対象物の濃度が比較的大きい場合には、暗線DL1,DL2は大きく移動する。
暗線DL1側においては、開口部71D1の幅は、暗線DL1に対応して小さく構成されている。このため、暗線DL1が大きく移動した場合には、開口部71D1の幅を超えてしまい、常に暗線DL1以外の部分の比較的明るい光が開口部71D1を通過することとなる。この結果、検出範囲を超えてしまい測定対象物の濃度を測定できない場合が起こり得る。
一方で、暗線DL2側においては、開口部71D2の幅は、暗線DL2に対応して大きく構成されている。このため、暗線DL2が大きく移動した場合であっても、開口部71D2内に暗線DL2の一部を収めることができ、開口部71D2によって規定される受光領域内での受光量の変化を十分に検出することができる。この結果、開口部71D2側に位置する受光部では、測定対象物の濃度を測定することができる。
本実施の形態においても、プラズモン共鳴が起きる共鳴角度が誘電体薄膜68Dの膜厚に依存することを利用することにより、誘電体ベース部63と金属薄膜65との界面に略平行光を入射した場合であっても、プラズモン共鳴現象を発現させて、強度分布を有する反射光を得ることができる。また、測定状態における暗線DL1または暗線DL2の位置と、基準状態での暗線の位置との関係に基づき、測定対象物の濃度を検出することができる。これらの結果、本実施の形態においても、実施の形態1とほぼ同様の効果が得られる。
さらに、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置1Dは、誘電体薄膜68Dが傾斜角の異なる第1傾斜面682Dおよび第2傾斜面683Dを有することにより幅の異なる暗線DL1,DL2を形成し、これらの移動に伴う光量の変化を独立した受光部で検出する。これにより、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置1およびこれを用いた表面プラズモン検出方法にあっては、上述のように広範囲に測定対象物の濃度を測定することができる。
(実施の形態7)
図29は、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置に具備される受光部によって測定対象物を検出する場合を示す図である。図29を参照して、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置について説明する。
図29は、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置に具備される受光部によって測定対象物を検出する場合を示す図である。図29を参照して、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置について説明する。
本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置は、実施の形態1に係る表面プラズモン検出装置1と比較して、遮蔽部材70Eの開口部71Eの形状が相違する。その他の構成は、ほぼ同様である。
開口部71Eは、円形状を有する。これにより、反射光が投影される平面において第1の方向に対応する方向に垂直方向に延在する受光領域の長さd1が第1の方向に対応する方向に平行な方向に沿って漸次的に変化するように形成されている。
このように開口部71Eが設けられている場合であっても、測定対象物が金属薄膜65に付着して暗線DLの位置が変化することにより、受光領域内を占める暗線DLの面積の割合が変化する。これにより、受光部3が検出する反射光の光量は、暗線DLの位置に応じて変動することになる。
処理部91は、測定時に検出された反射光L2の光量と上記基準量との差分(変動量)を算出するとともに、上記換算テーブルを用いて、測定対象物の濃度を算出する。
本実施の形態においては、暗線DLの移動方向に対して、開口部の面積の変化率が一定でない。これにより、暗線DLの初期位置にずれが生じると、暗線DLの移動量が同じであっても、暗線DLの面積の変化量が異なる。この結果、上述のような換算テーブルを用いることにより確実に測定対象物の濃度を算出することができる。
また、たとえば測定対象物の濃度が低く、暗線DLがわずかにしか動かない場合には、暗線DLの初期位置が中心線C1から離れた部分に位置するように設定することが好ましい。開口部の長さd1の変化率は、中心線C1から離れるほど大きくなる。このため、初期位置が中心線C1から離れた位置に設定されている場合には、初期位置が中心線近傍に設定されている場合と比較して、暗線DLがわずかに移動した場合であっても、暗線DLの面積の変化量が大きくなる。この結果、検出される光量と基準量との差分が大きくなり検出感度を高くすることができる。
本実施の形態においても、プラズモン共鳴が起きる共鳴角度が誘電体薄膜の膜厚に依存することを利用することにより、誘電体ベース部63と金属薄膜65との界面に略平行光を入射した場合であっても、プラズモン共鳴現象を発現させて、強度分布を有する反射光を得ることができる。また、測定状態における暗線DLの位置と、基準状態での暗線DLの位置との関係に基づき、測定対象物の濃度を検出することができる。これらの結果、本実施の形態においても、実施の形態1とほぼ同様の効果が得られる。
また、基準量を検出する際の暗線の位置(暗線の初期位置)を適宜設定することにより、特に高い感度が必要な場合にも対応することできる。このため、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置は、使用環境により感度を最適化することもできる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
1,1A,1B,1C,1D 表面プラズモン検出装置、2 投光部、3 受光部、10 光源、20 コリメートレンズ、30 偏光子、60,60A,60B,60C,60D 表面プラズモン素子、61 プリズム、61a 底面、62 透明基板、62a,62b 主面、63 誘電体ベース部、65 金属薄膜、65a,65b 主表面、68,68A,68B,68C,68D 誘電体薄膜、69,69C 正四角錐、69a,69b,69c,69d 傾斜面、70,70B,70C,70D1,70D2,70E 遮蔽部材、71,71C,71D1,71D2,71E,72,73 開口部、80 受光素子、90 演算処理部、91 処理部、92 記憶部、93 テーブル記憶部、94 温湿度計、681,681A,681B,681D 頂辺部、682,682D 第1傾斜面、683,683D 第2傾斜面、683A 傾斜面、684,685 側面部、686 底面部、691 第1傾斜面、692 連結面。
Claims (12)
- 表面プラズモン素子と、
前記表面プラズモン素子に向けて入射光を投光する投光部と、
前記表面プラズモン素子にて反射された反射光を受光する受光部と、を備え、
前記表面プラズモン素子は、主表面を有する誘電体ベース部、前記主表面上に形成された金属薄膜、および前記金属薄膜上に形成された誘電体薄膜を含み、
前記入射光は、前記誘電体ベース部側から入射し、前記誘電体ベース部と前記金属薄膜との界面において前記反射光として反射され、
前記誘電体薄膜は、前記入射光が入射する前記界面に対応した部分において膜厚が異なる部分を有する、表面プラズモン検出装置。 - 前記投光部は、前記入射光として平行光を投光する、請求項1に記載の表面プラズモン検出装置。
- 前記入射光が入射する前記界面に対応した部分において、前記誘電体薄膜の膜厚は、1μm以下であり、前記誘電体薄膜の最大膜厚と前記誘電体薄膜の最小膜厚との膜厚差が10nm以上である、請求項1または2に記載の表面プラズモン検出装置。
- 前記入射光が入射する前記界面に対応した部分において、前記誘電体ベース部、前記金属薄膜および前記誘電体薄膜が積層する積層方向に直交する平面に平行な第1の方向にのみ前記誘電体薄膜の膜厚が変化する、請求項1から3のいずれか1項に記載の表面プラズモン検出装置。
- 前記入射光が入射する前記界面に対応した部分において、前記誘電体ベース部、前記金属薄膜および前記誘電体薄膜が積層する積層方向に直交する平面に平行な第1の方向および前記第1の方向に交差する第2の方向の両方向に前記誘電体薄膜の膜厚が変化する、請求項1から3のいずれか1項に記載の表面プラズモン検出装置。
- 前記入射光が入射する前記界面に対応した部分において、前記誘電体薄膜は、前記誘電体ベース部、前記金属薄膜および前記誘電体薄膜が積層する積層方向に直交する平面に対して傾斜する第1傾斜面および第2傾斜面を有し、
前記第1傾斜面と前記第2傾斜面とが前記平面に対して異なる角度で交差する、請求項1から5のいずれか1項に記載の表面プラズモン検出装置。 - 前記入射光が入射する前記界面においてプラズモン共鳴現象が発現することにより、前記反射光は、強度分布を有し、
前記受光部にて検出した前記反射光の強度分布と、前記受光部にて予め検出した基準状態での前記反射光の強度分布との関係に基づき、測定対象物の濃度を検出する、請求項1から6のいずれか1項に記載の表面プラズモン検出装置。 - 前記反射光は、前記入射光が入射する前記界面においてプラズモン共鳴現象が発現することにより生じる暗線を含み、
測定対象物を含む気体が前記金属薄膜に付着した測定状態における前記暗線の位置と、前記受光部にて予め検出した基準状態での前記暗線の位置との関係に基づき、前記測定対象物の濃度を検出する、請求項1から7のいずれか1項に記載の表面プラズモン検出装置。 - 前記受光部は、前記暗線の位置を検出する撮像素子を含む、請求項8に記載の表面プラズモン検出装置。
- 前記受光部は、前記暗線の位置に応じて異なる光量が検出されるように構成された受光領域を有する、請求項8に記載の表面プラズモン検出装置。
- 前記受光部は、開口部を有する遮蔽部材と、前記開口部を通過した前記反射光の光量を検出する受光素子とを含み、
前記受光領域が前記開口部によって規定される、請求項10に記載の表面プラズモン検出装置。 - 表面プラズモン素子と、前記表面プラズモン素子に向けて入射光を投光する投光部と、前記表面プラズモン素子にて反射された反射光を受光する受光部と、を備えた表面プラズモン検出装置を用いた表面プラズモン検出方法であって、
前記表面プラズモン素子として、主表面を有する誘電体ベース部、前記主表面上に形成された金属薄膜、および前記金属薄膜上に形成された誘電体薄膜を含み、前記誘電体ベース部側から入射した前記入射光を前記誘電体ベース部と前記金属薄膜との界面において前記反射光として反射させ、前記誘電体薄膜が、前記入射光が入射する前記界面に対応した部分において膜厚が異なる部分を有するものを用いる、表面プラズモン検出方法。
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JP2014257505A JP2016118441A (ja) | 2014-12-19 | 2014-12-19 | 表面プラズモン検出装置および表面プラズモン検出方法 |
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