JP2016113912A - スクロール型圧縮機 - Google Patents
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Abstract
【課題】スクロール型圧縮機の再運転をスムーズに行うこと。【解決手段】可動スクロール23の自転が阻止された状態で可動スクロール23が固定スクロールに対して正方向へ公転運動するときの公転半径は、可動スクロール23の自転が阻止された状態で可動スクロール23が固定スクロールに対して正方向とは逆方向へ公転運動するときの公転半径よりも大きい。よって、可動スクロール23が正方向とは逆方向へ公転運動したとしても、可動スクロール23の自転が阻止された状態で可動スクロール23が正方向へ公転運動する場合に比べて、可動側渦巻壁と固定側渦巻壁との間の空間が広がる。したがって、可動側渦巻壁と固定側渦巻壁との間に形成される空間の圧力が均圧化され易くなり、可動スクロール23における正方向とは逆方向への公転運動が停止し易くなる。【選択図】図4
Description
本発明は、スクロール型圧縮機に関する。
一般に、スクロール型圧縮機は、ハウジング内に固定された固定スクロールと、固定スクロールに対して公転運動する可動スクロールとを有する。固定スクロールは、固定側基板と、固定側基板から立設された固定側渦巻壁とを有するとともに、可動スクロールは、可動側基板と、可動側基板から立設された可動側渦巻壁とを有する。そして、固定側渦巻壁と可動側渦巻壁とが互いに噛み合わされることで、可動スクロールの公転運動に基づいて容積減少して冷媒を圧縮する圧縮室が区画されている(例えば特許文献1参照)。
ところで、このようなスクロール型圧縮機においては、可動側渦巻壁が固定側渦巻壁から離れ過ぎてしまうと、圧縮室からの冷媒の漏れが多くなってしまい、圧縮性能が低下してしまう。このため、スクロール型圧縮機の運転時では、可動側渦巻壁は、固定側渦巻壁に対して極力離れていない位置で公転運動している状態が好ましい。
一方、スクロール型圧縮機の運転が停止されて、可動スクロールの公転運動が停止したときに、例えば、圧縮室に冷媒が逆流する等して、可動スクロールが、スクロール型圧縮機の運転時とは逆方向へ公転運動し始める場合がある。この場合、可動スクロールが、スクロール型圧縮機の運転時とは逆方向へ公転運動することにより、逆起電力が発生する。この逆起電力が発生している間は、スクロール型圧縮機の再運転を行うことが困難となる。このため、スクロール型圧縮機の再運転を行うためには、可動スクロールにおけるスクロール型圧縮機の運転時とは逆方向への公転運動が停止するまで待つ必要があり、スクロール型圧縮機の再運転をスムーズに行うことができなくなってしまう虞がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、再運転をスムーズに行うことができるスクロール型圧縮機を提供することにある。
上記課題を解決するスクロール型圧縮機は、固定側渦巻壁を有する固定スクロールと、前記固定側渦巻壁と噛み合う可動側渦巻壁を有する可動スクロールとを有し、前記可動スクロールの自転が自転阻止機構によって阻止されるスクロール型圧縮機であって、前記自転阻止機構は、前記可動スクロール、又は前記可動スクロールに対向配置される対向部材のどちらか一方に設けられる複数のピンと、他方に設けられるとともに前記複数のピンが各々挿入される複数の挿入部とを有し、前記可動スクロールの自転が阻止された状態で前記可動スクロールが前記固定スクロールに対して正方向へ公転運動するときの公転半径は、前記可動スクロールの自転が阻止された状態で前記可動スクロールが前記固定スクロールに対して前記正方向とは逆方向へ公転運動するときの公転半径よりも大きい。
これによれば、スクロール型圧縮機の運転停止後、可動スクロールが正方向とは逆方向へ公転運動したとしても、可動スクロールの自転が阻止された状態で可動スクロールが正方向へ公転運動する場合に比べて、可動側渦巻壁と固定側渦巻壁との間の空間を広げることができる。したがって、可動側渦巻壁と固定側渦巻壁との間に形成される空間の圧力が均圧化され易くなり、可動スクロールにおける正方向とは逆方向への公転運動が停止し易くなり、スクロール型圧縮機の再運転をスムーズに行うことができる。
上記スクロール型圧縮機において、前記複数の挿入部は、前記可動スクロールが前記正方向へ自転しながら前記固定スクロールに対して前記正方向へ公転運動した際、前記ピンが接触し得る第1内周面と、前記可動スクロールが前記正方向とは逆方向へ自転しながら前記固定スクロールに対して前記正方向とは逆方向へ公転運動した際、前記ピンが接触し得る第2内周面と、を有し、前記第1内周面を含む第1仮想円の半径は、前記第2内周面を含む第2仮想円の半径よりも大きいことが好ましい。
これによれば、可動スクロールの自転が阻止された状態で可動スクロールが固定スクロールに対して正方向へ公転運動するときの公転半径よりも、可動スクロールの自転が阻止された状態で可動スクロールが固定スクロールに対して正方向とは逆方向へ公転運動するときの公転半径のほうが小さくなる。そして、挿入部の内周面の一部が円弧状に形成されるため、可動スクロールの公転運動に伴うピン及び挿入部の相対移動をスムーズに行い易くすることができる。
上記スクロール型圧縮機において、前記複数のピンは、前記可動スクロールが前記正方向へ自転しながら前記固定スクロールに対して前記正方向へ公転運動した際、前記挿入部と接触し得る第1外周面と、前記可動スクロールが前記正方向とは逆方向へ自転しながら前記固定スクロールに対して前記正方向とは逆方向へ公転運動した際、前記挿入部と接触し得る第2外周面と、を有し、前記第1外周面を含む第1仮想円の半径は、前記第2外周面を含む第2仮想円の半径よりも小さいことが好ましい。
これによれば、可動スクロールの自転が阻止された状態で可動スクロールが固定スクロールに対して正方向へ公転運動するときの公転半径よりも、可動スクロールの自転が阻止された状態で可動スクロールが固定スクロールに対して正方向とは逆方向へ公転運動するときの公転半径のほうが小さくなる。そして、ピンの外周面の一部が円弧状に形成されるため、可動スクロールの公転運動に伴うピン及び挿入部の相対移動をスムーズに行い易くすることができる。
上記課題を解決するスクロール型圧縮機は、固定側渦巻壁を有する固定スクロールと、前記固定側渦巻壁と噛み合う可動側渦巻壁を有する可動スクロールとを有し、前記可動スクロールの自転が自転阻止機構によって阻止されるスクロール型圧縮機であって、前記自転阻止機構は、前記可動スクロール、又は前記可動スクロールに対向配置される対向部材のどちらか一方に設けられる複数のピンと、他方に設けられるとともに前記複数のピンが各々挿入される複数の挿入部とを有し、前記複数のピンは、リング部材に挿入された状態で当該リング部材と共に前記挿入部に挿入され、前記複数の挿入部は、前記可動スクロールが正方向へ自転しながら前記固定スクロールに対して前記正方向へ公転運動した際、前記リング部材が接触し得る第1内周面と、前記可動スクロールが前記正方向とは逆方向へ自転しながら前記固定スクロールに対して前記正方向とは逆方向へ公転運動した際、前記リング部材が接触し得る第2内周面と、を有し、前記第1内周面を含む第1仮想円の半径は、前記第2内周面を含む第2仮想円の半径よりも大きい。
これによれば、可動スクロールの自転が阻止された状態で可動スクロールが固定スクロールに対して正方向へ公転運動するときの公転半径よりも、可動スクロールの自転が阻止された状態で可動スクロールが固定スクロールに対して正方向とは逆方向へ公転運動するときの公転半径のほうが小さくなる。よって、スクロール型圧縮機の運転停止後、可動スクロールが正方向とは逆方向へ公転運動したとしても、可動スクロールが正方向へ公転運動している場合に比べて、可動側渦巻壁と固定側渦巻壁との間の空間を広げることができる。したがって、可動側渦巻壁と固定側渦巻壁との間に形成される空間の圧力が均圧化され易くなり、可動スクロールにおける正方向とは逆方向への公転運動が停止し易くなり、スクロール型圧縮機の再運転をスムーズに行うことができる。
上記スクロール型圧縮機において、前記第1仮想円の中心と前記第2仮想円の中心とは一致することが好ましい。
これによれば、挿入部又はピンの製造を容易なものとすることができる。
これによれば、挿入部又はピンの製造を容易なものとすることができる。
この発明によれば、スクロール型圧縮機の再運転をスムーズに行うことができる。
以下、スクロール型圧縮機を具体化した一実施形態を図1〜図5にしたがって説明する。なお、本実施形態のスクロール型圧縮機は、車両に搭載されるとともに車両空調装置に用いられる。
図1に示すように、スクロール型圧縮機10のハウジング11は金属材料製(本実施形態ではアルミニウム製)であるとともに、一端(図1の左端)に開口12hが形成された有底筒状をなすモータハウジング12と、モータハウジング12の一端に連結された有底筒状をなす吐出ハウジング13とから構成されている。モータハウジング12内には、冷媒を圧縮するための圧縮部14と、圧縮部14を駆動させる電動モータ15とが収容されている。
モータハウジング12の開口12h寄りには、円板状の軸支部材21が固定されている。軸支部材21の中央部には、挿通孔21aが形成されている。そして、この軸支部材21とモータハウジング12とにより電動モータ15が収容されるモータ室12aが区画されている。モータハウジング12内には回転軸20が収容されている。回転軸20におけるモータハウジング12の開口12h寄りに位置する一端は、軸支部材21の挿通孔21aの内側に位置するとともに軸受B1を介して軸支部材21に回転可能に支持されている。回転軸20におけるモータハウジング12の底壁12e寄りに位置する他端は軸受B2を介してモータハウジング12の底壁12eに回転可能に支持されている。
電動モータ15は、回転軸20と一体的に回転するロータ16(回転子)と、ロータ16を取り囲むようにモータハウジング12の内周面に固定されたステータ17(固定子)とから構成されている。
圧縮部14は、固定スクロール22及び可動スクロール23により構成されている。固定スクロール22は、円板状をなす固定側基板22aと、固定側基板22aから立設される固定側渦巻壁22bとから構成されている。可動スクロール23は、円板状をなす可動側基板23aと、可動側基板23aから固定側基板22aへ向かって立設される可動側渦巻壁23bとから構成されている。
固定スクロール22と可動スクロール23とは対向配置されている。固定側渦巻壁22bと可動側渦巻壁23bとは互いに噛み合わされている。固定側渦巻壁22bの先端面は可動側基板23aに接触しているとともに、可動側渦巻壁23bの先端面は固定側基板22aに接触している。そして、固定側基板22a及び固定側渦巻壁22bと、可動側基板23a及び可動側渦巻壁23bとによって圧縮室25が区画されている。
軸支部材21は、可動スクロール23における固定スクロール22とは反対側に配置されている。よって、本実施形態において、軸支部材21は、可動スクロール23における固定スクロール22とは反対側に対向配置される対向部材である。
回転軸20における開口12h寄りの端面には、回転軸20の回転軸線Lに対して偏心した位置から突出する偏心軸20aが設けられている。偏心軸20aには、バランスウェイト24aが一体化されたブッシュ24が嵌合されている。バランスウェイト24aは、可動スクロール23が公転運動する際に可動スクロール23に作用する遠心力を相殺する。ブッシュ24には、ブッシュ24の中心L1に対して偏心した位置に偏心穴24hが形成されている。そして、偏心軸20aが偏心穴24hに嵌合されることによって、ブッシュ24は、偏心軸20aの周りを回動(スイング)可能になっている。
ブッシュ24には、可動側基板23aが軸受B3を介してブッシュ24と相対回転可能に支持されている。ブッシュ24の中心L1は、回転軸20の回転軸線Lよりも回転軸20の径方向外側に位置している。可動側基板23aの中心は、ブッシュ24の中心L1と一致しており、ブッシュ24の中心L1と回転軸20の回転軸線Lとの距離が、可動スクロール23の公転半径となる。そして、ブッシュ24が偏心軸20aの周りでスイングすることにより、ブッシュ24の中心L1と回転軸20の回転軸線Lとの距離が変化するため、可動スクロール23の公転半径が可変する。このように、偏心軸20a、ブッシュ24及び軸受B3は、可動スクロール23の公転半径を可変させる、所謂、従動クランク機構26を構成している。このような従動クランク機構26は既に公知である。
モータハウジング12には吸入口12sが形成されている。また、モータ室12aと圧縮室25とは、軸支部材21及び可動側基板23aを貫通する吸入通路28により連通している。さらに、吐出ハウジング13と固定側基板22aとにより吐出室13aが区画されている。また、吐出ハウジング13には吐出口13dが形成されている。
固定側基板22aの中央には吐出ポート22hが形成されている。吐出ポート22hは圧縮室25と吐出室13aとを連通する。また、固定側基板22aには吐出弁22vが吐出ポート22hを覆うように取り付けられている。
モータハウジング12の底壁12eにはカバー18が取り付けられている。カバー18とモータハウジング12の底壁12eとによって区画される空間には、電動モータ15を駆動させるためのモータ駆動回路19(図1において破線で示す)が収容されている。本実施形態では、回転軸20の回転軸線Lが延びる方向(軸方向)に沿って、圧縮部14、電動モータ15及びモータ駆動回路19がこの順序で並設されている。
図2に示すように、固定側基板22aには、インジェクションポート29が二つ形成されている。各インジェクションポート29は円孔状に形成されている。各インジェクションポート29は、固定側基板22aにおいて、吐出ポート22hよりも径方向外側に位置している。図1に示すように、各インジェクションポート29にはインジェクション導入部29aが接続されている。
可動側基板23aと軸支部材21との間には、自転阻止機構30が配設されている。自転阻止機構30は、可動側基板23aにおける可動側渦巻壁23bとは反対側の端面の外周部に設けられた複数(本実施形態では六つ)の円孔状の凹部31と、軸支部材21における可動側基板23aと対向する側の端面の外周部に突設された複数(本実施形態では六つ)のピン32と、各凹部31に嵌着されたリング部材33とから構成されている。
図3に示すように、複数の凹部31は、可動側基板23aの周方向に一定の間隔を置いて配置されている。各リング部材33内には各ピン32が挿入されている。よって、本実施形態において、リング部材33は、ピン32が挿入される挿入部である。ピン32とリング部材33との間には隙間34が設けられている。
図4(a)及び(b)に示すように、リング部材33は、可動スクロール23が正方向へ自転しながら固定スクロール22に対して正方向へ公転運動した際、ピン32が接触し得る第1内周面33aを有する。また、リング部材33は、可動スクロール23が正方向とは逆方向へ自転しながら固定スクロール22に対して正方向とは逆方向へ公転運動した際、ピン32が接触し得る第2内周面33bを有する。第1内周面33a及び第2内周面33bは、円弧状に形成されている。第1内周面33aを含む第1仮想円C1の中心と第2内周面33bを含む第2仮想円C2の中心とは一致している。第1内周面33a及び第2内周面33bは、第1仮想円C1の半径r1が第2仮想円C2の半径r2よりも大きくなるように形成されている。
また、リング部材33は、第1内周面33aの両端と第2内周面33bの両端とをそれぞれ繋ぐ接続部33cを有する。各接続部33cは直線状に延びている。よって、リング部材33は異形をなしている。なお、本実施形態において、凹部31の形状も、リング部材33の外形に沿った異形をなしている。そして、リング部材33は、凹部31に嵌め込まれることで、凹部31に対して位置決めされている。なお、本実施形態では、可動スクロール23が固定スクロール22に対して正方向へ公転運動する場合、可動側渦巻壁23bが固定側渦巻壁22bに接触した後で、複数のピン32のうちの少なくとも一つが第1内周面33aに接触するように、各ピン32及びリング部材33の寸法や配置位置が設定されている。また、可動スクロール23が固定スクロール22に対して正方向とは逆方向へ公転運動する場合、可動側渦巻壁23bが固定側渦巻壁22bに接触する前に、複数のピン32のうちの少なくとも二つが第2内周面33bと接触するように、各ピン32及びリング部材33の寸法や配置位置が設定されている。
図5に示すように、上記構成のスクロール型圧縮機10は、冷暖房回路50に組み込まれている。冷暖房回路50は、スクロール型圧縮機10、配管切換弁51、第1熱交換器52、第2熱交換器53、第1膨張弁54、第2膨張弁55及び気液分離器56から構成されている。
配管切換弁51は、第1〜第4口51a,51b,51c,51dを有している。そして、配管切換弁51は、第1口51aと第2口51bとを連通させると同時に、第3口51cと第4口51dとを連通させる第1状態(図5において実線で示す状態)と、第1口51aと第3口51cとを連通させると同時に、第2口51bと第4口51dとを連通させる第2状態(図5において破線で示す状態)とに切換可能になっている。
吐出口13dには吐出配管57の一端が接続されるとともに、吐出配管57の他端は配管切換弁51の第1口51aに接続されている。配管切換弁51の第2口51bには第1配管58の一端が接続されるとともに、第1配管58の他端は第1熱交換器52に接続されている。第1熱交換器52には第2配管59の一端が接続されるとともに、第2配管59の他端は第1膨張弁54に接続されている。
第1膨張弁54には第3配管60の一端が接続されるとともに、第3配管60の他端は気液分離器56に接続されている。気液分離器56には第4配管61の一端が接続されるとともに、第4配管61の他端は第2膨張弁55に接続されている。第2膨張弁55には第5配管62の一端が接続されるとともに、第5配管62の他端は第2熱交換器53に接続されている。第2熱交換器53には第6配管63の一端が接続されるとともに、第6配管63の他端は配管切換弁51の第3口51cに接続されている。配管切換弁51の第4口51dには吸入配管64の一端が接続されるとともに、吸入配管64の他端は吸入口12sに接続されている。
気液分離器56には、インジェクション導入部29aの一端が接続されるとともに、インジェクション導入部29aの他端側は、各インジェクションポート29に向かって分岐されて各インジェクションポート29に接続されている。インジェクション導入部29aには逆止弁66が配設されている。
次に、冷暖房回路50の作用について説明する。
ロータ16が正回転すると、回転軸20を介して可動スクロール23が正方向へ公転運動する。すると、圧縮部14において圧縮動作及び吐出動作が行われて、冷媒が冷暖房回路50を循環する。そして、冷媒が吸入口12sを介してモータ室12aに吸入される。モータ室12aに吸入された冷媒は、吸入通路28を経由して圧縮室25に吸入される。圧縮室25に吸入された低圧の冷媒は、可動スクロール23の公転運動(吐出動作)によって、圧縮されながら吐出ポート22hから吐出弁22vを押し退けて、吐出ハウジング13内の吐出室13aへ吐出される。吐出室13a内に吐出された高圧の冷媒は吐出口13dを介して吐出配管57に吐出される。
ロータ16が正回転すると、回転軸20を介して可動スクロール23が正方向へ公転運動する。すると、圧縮部14において圧縮動作及び吐出動作が行われて、冷媒が冷暖房回路50を循環する。そして、冷媒が吸入口12sを介してモータ室12aに吸入される。モータ室12aに吸入された冷媒は、吸入通路28を経由して圧縮室25に吸入される。圧縮室25に吸入された低圧の冷媒は、可動スクロール23の公転運動(吐出動作)によって、圧縮されながら吐出ポート22hから吐出弁22vを押し退けて、吐出ハウジング13内の吐出室13aへ吐出される。吐出室13a内に吐出された高圧の冷媒は吐出口13dを介して吐出配管57に吐出される。
冷房運転時には、配管切換弁51は、第1口51aと第2口51bとを連通させると同時に、第3口51cと第4口51dとを連通させる第1状態に切り換えられている。これにより、吐出配管57に吐出された冷媒は、第1口51a、第2口51b及び第1配管58を経由して第1熱交換器52に流れ込む。第1熱交換器52に流れ込んだ冷媒は、第1熱交換器52において外気と熱交換されて凝縮する。第1熱交換器52において凝縮された冷媒は、第2配管59を経由して第1膨張弁54に流れ込む。第1膨張弁54に流れ込んだ冷媒は、第1膨張弁54により減圧されて、吐出圧力(高圧)と吸入圧力(低圧)との間の中間の圧力(中間圧)となるとともに、第3配管60を経由して気液分離器56に流れ込む。気液分離器56に流れ込んだ冷媒は、気液分離器56によりガス冷媒と液冷媒とに分離される。
気液分離器56により分離された液冷媒は、第4配管61を経由して第2膨張弁55に流れ込むとともに第2膨張弁55により減圧される。第2膨張弁55により減圧された液冷媒は、第5配管62を経由して第2熱交換器53に流れ込むとともに、第2熱交換器53により室内の空気と熱交換されて蒸発することで、室内の空気が冷却される。第2熱交換器53により蒸発された冷媒は、第6配管63、第3口51c、第4口51d及び吸入配管64を経由して吸入口12sを介してモータ室12aに還流される。
気液分離器56により分離されたガス冷媒は、インジェクション導入部29aに流れ込む。ここで、室内の空気が冷却されるとき(冷房運転時)は、モータ室12aに吸入される冷媒の温度及び圧力が高い。このため、スクロール型圧縮機10側と気液分離器56側との圧力差によって逆止弁66がインジェクション導入部29aを閉鎖する。これにより、インジェクション導入部29aから各インジェクションポート29を介した圧縮室25へのガス冷媒の導入が規制されている。
暖房運転時には、配管切換弁51は、第1口51aと第3口51cとを連通させると同時に、第2口51bと第4口51dとを連通させる第2状態に切り換えられている。これにより、吐出配管57に吐出された冷媒は、第1口51a、第3口51c及び第6配管63を介して第2熱交換器53に流れ込む。第2熱交換器53に流れ込んだ冷媒は、第2熱交換器53において室内の空気と熱交換されて凝縮することで、室内の空気が加熱される。第2熱交換器53において凝縮された冷媒は、第5配管62を経由して第2膨張弁55に流れ込む。第2膨張弁55に流れ込んだ冷媒は、第2膨張弁55により減圧されて、吐出圧力と吸入圧力との間の中間の圧力(中間圧)となるとともに、第4配管61を経由して気液分離器56に流れ込む。気液分離器56に流れ込んだ冷媒は、気液分離器56によりガス冷媒と液冷媒とに分離される。
気液分離器56により分離された液冷媒は、第3配管60を経由して第1膨張弁54に流れ込むとともに第1膨張弁54により減圧される。第1膨張弁54により減圧された液冷媒は、第2配管59を経由して第1熱交換器52に流れ込むとともに、第1熱交換器52において外気と熱交換されて蒸発する。第1熱交換器52により蒸発された冷媒は、第1配管58、第2口51b、第4口51d及び吸入配管64を経由して吸入口12sを介してモータ室12aに還流される。
気液分離器56により分離されたガス冷媒は、インジェクション導入部29aに流れ込む。ここで、室内の空気が加熱されるとき(暖房運転時)は、モータ室12aに吸入される冷媒の温度及び圧力が低い。このため、スクロール型圧縮機10側と気液分離器56側との圧力差によって逆止弁66がインジェクション導入部29aを開放する。これにより、インジェクション導入部29aから各インジェクションポート29を介した圧縮室25へのガス冷媒の導入が許容されている。
そして、各インジェクションポート29を介して圧縮室25に中間圧のガス冷媒が導入されることで、圧縮室25に導入されるガス冷媒の流量が増え、暖房運転時のような高負荷運転時におけるスクロール型圧縮機10の性能が向上する。
次に、本実施形態の作用を説明する。
電動モータ15によって回転軸20が正方向へ回転駆動されると、ブッシュ24が偏心軸20a周りで正方向へスイングし、可動スクロール23が正方向へ自転しながら固定スクロール22に対して正方向へ公転運動する。このとき、ブッシュ24が正方向へスイングするため、可動スクロール23の公転半径が大きくなっていく。そして、可動側渦巻壁23bが固定側渦巻壁22bに接触し、その後、複数のピン32のうちの少なくとも一つが第1内周面33aと接触する。
電動モータ15によって回転軸20が正方向へ回転駆動されると、ブッシュ24が偏心軸20a周りで正方向へスイングし、可動スクロール23が正方向へ自転しながら固定スクロール22に対して正方向へ公転運動する。このとき、ブッシュ24が正方向へスイングするため、可動スクロール23の公転半径が大きくなっていく。そして、可動側渦巻壁23bが固定側渦巻壁22bに接触し、その後、複数のピン32のうちの少なくとも一つが第1内周面33aと接触する。
以上のように、可動側渦巻壁23bが固定側渦巻壁22bと接触し、且つピン32が第1内周面33aに接触することにより、ブッシュ24の偏心軸20a周りのスイングが規制され、可動スクロール23の公転半径が固定される。また、この時点で、可動スクロール23の自転が阻止される。すなわち、可動側渦巻壁23bと固定側渦巻壁22bとの接触、及び複数のピン32のうちの少なくとも一つとリング部材33との接触が行われることにより、可動スクロール23の自転が阻止されるとともに可動スクロール23の公転半径が固定される。そして、その後、可動スクロール23が固定スクロール22に対して、固定された公転半径で公転運動することで、圧縮室25が容積減少し、冷媒が圧縮される。このとき、本実施形態においては、可動スクロール23は、可動側渦巻壁23bが固定側渦巻壁22bに接触しながら公転運動するため、圧縮室25からの冷媒の漏れが抑制される。
なお、可動スクロール23が公転運動していく過程では、各ピン32が、各リング部材33の第1内周面33aに順次接触していく。すなわち、固定スクロール22に対する可動スクロール23の相対位置に伴って、六つのリング部材33のうち、ピン32と第1内周面33aとが接触しているリング部材33と、ピン32と第1内周面33aとが接触していないリング部材33とが存在する。ピン32と第1内周面33aとが接触していないリング部材33においては、第2内周面33bもピン32とは接触していない。
一方、スクロール型圧縮機10の運転が停止されて、可動スクロール23の公転運動が停止したときに、インジェクション導入部29aからの中間圧のガス冷媒の残りが各インジェクションポート29を介して圧縮室25に導入されると、可動スクロール23が正方向とは逆方向へ自転しながら固定スクロール22に対して正方向とは逆方向へ公転運動する。
図4(b)に示すように、可動スクロール23が正方向とは逆方向へ自転しながら固定スクロール22に対して正方向とは逆方向へ公転運動すると、複数のピン32のうちの少なくとも二つが第2内周面33bと接触する。ここで、第2仮想円C2の半径r2は、第1仮想円C1の半径r1よりも小さい。よって、可動側渦巻壁23bが固定側渦巻壁22bに接触する前に、複数のピン32が第2内周面33bと接触し、ブッシュ24における偏心軸20a周りのスイングが規制され、可動スクロール23の公転半径が固定される。なお、この時点で、可動スクロール23の自転が阻止される。
以上のように、本実施形態のスクロール型圧縮機10によれば、可動スクロール23の自転が阻止された状態(可動側渦巻壁23bが固定側渦巻壁22bと接触し、且つピン32が第1内周面33aに接触した状態)で可動スクロール23が固定スクロール22に対して正方向へ公転運動するときの公転半径よりも、可動スクロール23の自転が阻止された状態(可動側渦巻壁23bが固定側渦巻壁22bに接触せずに、複数のピン32が第2内周面33bに接触した状態)で可動スクロール23が固定スクロール22に対して正方向とは逆方向へ公転運動するときの公転半径のほうが小さくなる。
つまり、第2仮想円C2の半径r2は、可動スクロール23が正方向とは逆方向へ自転しながら固定スクロール22に対して正方向とは逆方向へ公転運動するときに、可動側渦巻壁23bが固定側渦巻壁22bに接触する前に、複数のピン32と第2内周面33bとが接触することが可能となるように設定されている。したがって、スクロール型圧縮機10の運転停止後、可動スクロール23が正方向とは逆方向へ公転運動したとしても、可動スクロール23の自転が阻止された状態で可動スクロール23が正方向へ公転運動する場合の可動側渦巻壁23bと固定側渦巻壁22bとの間の空間に比べて、可動側渦巻壁23bと固定側渦巻壁22bとの間の空間を広げることができる。このため、可動側渦巻壁23bと固定側渦巻壁22bとの間に形成される空間の圧力が均圧化され易くなり、可動スクロール23における正方向とは逆方向への公転運動が停止し易くなる。
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)可動スクロール23の自転が阻止された状態で可動スクロール23が固定スクロール22に対して正方向へ公転運動するときの公転半径は、可動スクロール23の自転が阻止された状態で可動スクロール23が固定スクロール22に対して正方向とは逆方向へ公転運動するときの公転半径よりも大きい。よって、スクロール型圧縮機10の運転停止後、可動スクロール23が正方向とは逆方向へ公転運動したとしても、可動スクロール23の自転が阻止された状態で可動スクロール23が正方向へ公転運動する場合に比べて、可動側渦巻壁23bと固定側渦巻壁22bとの間の空間を広げることができる。したがって、可動側渦巻壁23bと固定側渦巻壁22bとの間に形成される空間の圧力が均圧化され易くなり、可動スクロール23における正方向とは逆方向への公転運動が停止し易くなり、スクロール型圧縮機10の再運転をスムーズに行うことができる。
(1)可動スクロール23の自転が阻止された状態で可動スクロール23が固定スクロール22に対して正方向へ公転運動するときの公転半径は、可動スクロール23の自転が阻止された状態で可動スクロール23が固定スクロール22に対して正方向とは逆方向へ公転運動するときの公転半径よりも大きい。よって、スクロール型圧縮機10の運転停止後、可動スクロール23が正方向とは逆方向へ公転運動したとしても、可動スクロール23の自転が阻止された状態で可動スクロール23が正方向へ公転運動する場合に比べて、可動側渦巻壁23bと固定側渦巻壁22bとの間の空間を広げることができる。したがって、可動側渦巻壁23bと固定側渦巻壁22bとの間に形成される空間の圧力が均圧化され易くなり、可動スクロール23における正方向とは逆方向への公転運動が停止し易くなり、スクロール型圧縮機10の再運転をスムーズに行うことができる。
(2)第1内周面33aを含む第1仮想円C1の半径r1は、第2内周面33bを含む第2仮想円C2の半径r2よりも大きい。これによれば、可動スクロール23の自転が阻止された状態で可動スクロール23が固定スクロール22に対して正方向へ公転運動する際の公転半径よりも、可動スクロール23の自転が阻止された状態で可動スクロール23が固定スクロール22に対して正方向とは逆方向へ公転運動する際の公転半径のほうが小さくなる。そして、リング部材33の内周面の一部が円弧状に形成されるため、可動スクロール23の公転運動に伴うピン32及びリング部材33の相対移動をスムーズに行い易くすることができる。
(3)第1仮想円C1の中心と前記第2仮想円の中心とは一致する。これによれば、リング部材33の製造を容易なものとすることができる。すなわち、リング部材33の内周面の形状を容易に形成することができる。
(4)本実施形態によれば、スクロール型圧縮機10の運転停止後、可動スクロール23が正方向とは逆方向へ公転運動したとしても、可動側渦巻壁23bと固定側渦巻壁22bとが接触しない状態で固定スクロール22に対して正方向とは逆方向へ公転運動させることができる。このため、スクロール型圧縮機10の運転が停止しているにも拘わらず、可動側渦巻壁23bと固定側渦巻壁22bとの接触による異音が生じてしまうことを防止することができる。また、可動側渦巻壁23bと固定側渦巻壁22bとが摩耗してしまうことを防止することができ、耐久性を向上させることができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 図6(a)及び(b)に示すように、例えば、凹部31及びリング部材33が真円状であるとともに、ピン32が異形であってもよい。ピン32は、可動スクロール23が正方向へ自転しながら固定スクロール22に対して正方向へ公転運動した際、リング部材33と接触し得る第1外周面32aを有する。また、ピン32は、可動スクロール23が正方向とは逆方向へ自転しながら固定スクロール22に対して正方向とは逆方向へ公転運動した際、リング部材33と接触し得る第2外周面32bを有する。第1外周面32a及び第2外周面32bは、円弧状に形成されている。第1外周面32aを含む第1仮想円C11の中心と第2外周面32bを含む第2仮想円C12の中心とは一致している。第1外周面32a及び第2外周面32bは、第1仮想円C11の半径r11が第2仮想円C12の半径r12よりも小さくなるように形成されている。また、ピン32は、第1外周面32aの両端と第2外周面32bの両端とをそれぞれ繋ぐ接続部32cを有する。各接続部32cは直線状に延びている。よって、ピン32は異形をなしている。
○ 図6(a)及び(b)に示すように、例えば、凹部31及びリング部材33が真円状であるとともに、ピン32が異形であってもよい。ピン32は、可動スクロール23が正方向へ自転しながら固定スクロール22に対して正方向へ公転運動した際、リング部材33と接触し得る第1外周面32aを有する。また、ピン32は、可動スクロール23が正方向とは逆方向へ自転しながら固定スクロール22に対して正方向とは逆方向へ公転運動した際、リング部材33と接触し得る第2外周面32bを有する。第1外周面32a及び第2外周面32bは、円弧状に形成されている。第1外周面32aを含む第1仮想円C11の中心と第2外周面32bを含む第2仮想円C12の中心とは一致している。第1外周面32a及び第2外周面32bは、第1仮想円C11の半径r11が第2仮想円C12の半径r12よりも小さくなるように形成されている。また、ピン32は、第1外周面32aの両端と第2外周面32bの両端とをそれぞれ繋ぐ接続部32cを有する。各接続部32cは直線状に延びている。よって、ピン32は異形をなしている。
図6の実施形態では、電動モータ15によって回転軸20が正方向へ回転駆動されると、可動側渦巻壁23bが固定側渦巻壁22bと接触し、且つピン32の第1外周面32aがリング部材33に接触する。これにより、ブッシュ24の偏心軸20a周りのスイングが規制され、可動スクロール23の公転半径が固定される。なお、この時点で、可動スクロール23の自転が阻止される。すなわち、可動側渦巻壁23bと固定側渦巻壁22bとの接触、及び複数のピン32のうちの少なくとも一つとリング部材33との接触が行われることにより、可動スクロール23の自転が阻止されるとともに可動スクロール23の公転半径が固定される。
一方、可動スクロール23が正方向とは逆方向へ自転しながら固定スクロール22に対して正方向とは逆方向へ公転運動したとき、可動側渦巻壁23bと固定側渦巻壁22bとが接触する前に複数のピン32のうちの少なくとも二つの第2外周面32bがリング部材33と接触する。ここで、第2仮想円C12の半径r12は、第1仮想円C11の半径r11よりも大きい。よって、可動スクロール23の自転が阻止された状態(可動側渦巻壁23bが固定側渦巻壁22bと接触し、且つピン32の第1外周面32aがリング部材33に接触した状態)で可動スクロール23が固定スクロール22に対して正方向へ公転運動するときの公転半径よりも、可動スクロール23の自転が阻止された状態(可動側渦巻壁23bが固定側渦巻壁22bに接触せずに、複数のピン32の第2外周面32bがリング部材33に接触した状態)で可動スクロール23が固定スクロール22に対して正方向とは逆方向へ公転運動するときの公転半径のほうが小さくなる。そして、ピン32の外周面の一部が円弧状に形成されるため、可動スクロール23の公転運動に伴うピン32及びリング部材33の相対移動をスムーズに行い易くすることができる。
なお、図6の実施形態において、回転軸20が正方向へ回転駆動される際、可動側渦巻壁23bが固定側渦巻壁22bに接触する前に、複数のピン32のうちの少なくとも二つの第1外周面32aがリング部材33に接触するようにしてもよい。すなわち、可動スクロール23の自転が阻止された状態で可動スクロール23が固定スクロール22に対して正方向へ公転運動するときの公転半径よりも、可動スクロール23の自転が阻止された状態で可動スクロール23が固定スクロール22に対して正方向とは逆方向へ公転運動するときの公転半径のほうが小さくなれば、可動側渦巻壁23bと固定側渦巻壁22bとが接触しない状態で可動スクロール23の正方向への自転が阻止されるようにしてもよい。
○ 図7に示すように、リング部材33は、第1内周面33aの両端と第2内周面33bとの両端とをそれぞれ繋ぐ接続凹部33Cを有していてもよい。要は、リング部材33の形状は特に限定されるものではない。
○ 実施形態において、凹部31が真円状に形成されており、その凹部31内にリング部材33が挿入されていてもよい。この場合、リング部材33が凹部31内で移動しないように位置決めされている必要がある。
○ 実施形態において、リング部材33を削除してもよい。また、図8(a)及び(b)に示すように、凹部31をリング部材33のような異形に形成するとともに、凹部31が第1内周面31a及び第2内周面31bを有するようにしてもよい。この場合、凹部31は、ピン32が挿入される挿入部である。さらに、このような実施形態において、凹部31とピン32との間に真円状のリング部材33Aを介在させてもよい。すなわち、ピン32は、リング部材33Aに挿入された状態でリング部材33Aと共に凹部31に挿入されていてもよい。この場合、第1内周面31aには、可動スクロール23が正方向へ自転した際、リング部材33Aが接触し得る。また、第2内周面31bには、可動スクロール23が正方向とは逆方向へ自転した際、リング部材33Aが接触し得る。
電動モータ15によって回転軸20が正方向へ回転駆動し、可動スクロール23が正方向へ自転しながら固定スクロール22に対して正方向へ公転運動した場合、可動側渦巻壁23bが固定側渦巻壁22bと接触し、且つリング部材33Aが第1内周面31aに接触することにより、ブッシュ24の偏心軸20a周りのスイングが規制され、可動スクロール23の公転半径が固定される。なお、この時点で、可動スクロール23の自転が阻止される。すなわち、可動側渦巻壁23bと固定側渦巻壁22bとの接触、及び複数のリング部材33Aのうちの少なくとも一つと凹部31との接触が行われることにより、可動スクロール23の自転が阻止されるとともに可動スクロール23の公転半径が固定される。
一方、可動スクロール23が正方向とは逆方向へ自転しながら固定スクロール22に対して正方向とは逆方向へ公転運動した場合、複数のリング部材33Aのうちの少なくとも二つが第2内周面31bと接触する。ここで、第2仮想円C2の半径r2は、第1仮想円C1の半径r1よりも小さい。よって、可動側渦巻壁23bが固定側渦巻壁22bに接触する前に、複数のリング部材33Aと第2内周面31bとが接触し、ブッシュ24における偏心軸20a周りのスイングが規制され、可動スクロール23の公転半径が固定される。なお、この時点で、可動スクロール23の自転が阻止される。
これによれば、可動スクロール23の自転が阻止された状態(可動側渦巻壁23bが固定側渦巻壁22bと接触し、且つリング部材33Aが第1内周面31aに接触した状態)で可動スクロール23が固定スクロール22に対して正方向へ公転運動するときの公転半径よりも、可動スクロール23の自転が阻止された状態(可動側渦巻壁23bが固定側渦巻壁22bに接触せずに、複数のリング部材33Aが第2内周面31bに接触した状態)で可動スクロール23が固定スクロール22に対して正方向とは逆方向へ公転運動するときの公転半径のほうが小さくなる。
なお、図8の実施形態において、回転軸20が正方向へ回転駆動される際、可動側渦巻壁23bが固定側渦巻壁22bに接触する前に、複数のリング部材33Aのうちの少なくとも二つが第1内周面31aに接触するようにしてもよい。すなわち、可動スクロール23の自転が阻止された状態で可動スクロール23が固定スクロール22に対して正方向へ公転運動するときの公転半径よりも、可動スクロール23の自転が阻止された状態で可動スクロール23が固定スクロール22に対して正方向とは逆方向へ公転運動するときの公転半径のほうが小さくなれば、回転軸20が正方向へ回転駆動される際、可動側渦巻壁23bと固定側渦巻壁22bとが接触しないようにしてもよい。
○ 実施形態において、スクロール型圧縮機10には、圧縮室25に中間圧の冷媒を導入するインジェクションポート29が設けられていなくてもよい。この場合であっても、スクロール型圧縮機10の運転が停止されて、可動スクロール23の公転運動が停止したときに、例えば、圧縮室25に冷媒が逆流する等して、可動スクロール23が、スクロール型圧縮機10の運転時とは逆方向へ公転運動し始める場合がある。このような場合においても、上記構成のスクロール型圧縮機10によれば、可動スクロール23が正方向へ自転しながら固定スクロール22に対して正方向へ公転運動している場合に比べて、可動側渦巻壁23bと固定側渦巻壁22bとの間の空間を広げることができる。したがって、可動側渦巻壁23bと固定側渦巻壁22bとの間に形成される空間の圧力が均圧化し易くなり、可動スクロール23における正方向とは逆方向への公転運動が停止し易くなり、スクロール型圧縮機10の再運転をスムーズに行うことができる。
○ 実施形態において、可動スクロール23に複数のピン32が一体的に設けられるとともに、軸支部材21に各ピン32が各々遊嵌される複数の凹部31が設けられていてもよい。
○ 実施形態において、凹部31及びピン32の数は特に限定されるものではない。
○ 実施形態において、対向部材は、軸支部材21とは別部材のものであってもよい。
○ 実施形態において、回転軸20が正方向へ回転駆動し、可動スクロール23が正方向へ自転しながら固定スクロール22に対して正方向へ公転運動した場合、可動側渦巻壁23bが固定側渦巻壁22bに接触する前に、複数のピン32のうちの少なくとも二つが第1内周面33aに接触するようにしてもよい。すなわち、回転軸20が正方向へ回転駆動される際、可動側渦巻壁23bと固定側渦巻壁22bとが接触しないようにしてもよい。
○ 実施形態において、対向部材は、軸支部材21とは別部材のものであってもよい。
○ 実施形態において、回転軸20が正方向へ回転駆動し、可動スクロール23が正方向へ自転しながら固定スクロール22に対して正方向へ公転運動した場合、可動側渦巻壁23bが固定側渦巻壁22bに接触する前に、複数のピン32のうちの少なくとも二つが第1内周面33aに接触するようにしてもよい。すなわち、回転軸20が正方向へ回転駆動される際、可動側渦巻壁23bと固定側渦巻壁22bとが接触しないようにしてもよい。
○ 実施形態において、可動スクロール23が固定スクロール22に対して正方向へ公転運動する場合、可動側渦巻壁23bが固定側渦巻壁22bに接触したと同時に、複数のピン32のうちの少なくとも一つが第1内周面33aに接触するように、各ピン32及びリング部材33の寸法や配置位置が設定されていてもよい。
○ 実施形態において、カバー18がモータハウジング12の周壁に固設されており、モータハウジング12の周壁とカバー18とによって区画される空間にモータ駆動回路19が収容されていてもよい。
○ 実施形態において、スクロール型圧縮機10は、車両空調装置に用いられなくてもよく、その他の空調装置に用いられてもよい。
○ 実施形態において、スクロール型圧縮機10は、電動モータ15ではなくエンジン等の駆動源によって直接駆動されるタイプであってもよい。
○ 実施形態において、スクロール型圧縮機10は、電動モータ15ではなくエンジン等の駆動源によって直接駆動されるタイプであってもよい。
C1,C11…第1仮想円、C2,C12…第2仮想円、10…スクロール型圧縮機、21…対向部材である軸支部材、22…固定スクロール、22b…固定側渦巻壁、23…可動スクロール、23b…可動側渦巻壁、30…自転阻止機構、31a,33a…第1内周面、31b,33b…第2内周面、32…ピン、32a…第1外周面、32b…第2外周面、33…挿入部であるリング部材。
Claims (5)
- 固定側渦巻壁を有する固定スクロールと、前記固定側渦巻壁と噛み合う可動側渦巻壁を有する可動スクロールとを有し、前記可動スクロールの自転が自転阻止機構によって阻止されるスクロール型圧縮機であって、
前記自転阻止機構は、前記可動スクロール、又は前記可動スクロールに対向配置される対向部材のどちらか一方に設けられる複数のピンと、他方に設けられるとともに前記複数のピンが各々挿入される複数の挿入部とを有し、
前記可動スクロールの自転が阻止された状態で前記可動スクロールが前記固定スクロールに対して正方向へ公転運動するときの公転半径は、前記可動スクロールの自転が阻止された状態で前記可動スクロールが前記固定スクロールに対して前記正方向とは逆方向へ公転運動するときの公転半径よりも大きいことを特徴とするスクロール型圧縮機。 - 前記複数の挿入部は、前記可動スクロールが前記正方向へ自転しながら前記固定スクロールに対して前記正方向へ公転運動した際、前記ピンが接触し得る第1内周面と、前記可動スクロールが前記正方向とは逆方向へ自転しながら前記固定スクロールに対して前記正方向とは逆方向へ公転運動した際、前記ピンが接触し得る第2内周面と、を有し、
前記第1内周面を含む第1仮想円の半径は、前記第2内周面を含む第2仮想円の半径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のスクロール型圧縮機。 - 前記複数のピンは、前記可動スクロールが前記正方向へ自転しながら前記固定スクロールに対して前記正方向へ公転運動した際、前記挿入部と接触し得る第1外周面と、前記可動スクロールが前記正方向とは逆方向へ自転しながら前記固定スクロールに対して前記正方向とは逆方向へ公転運動した際、前記挿入部と接触し得る第2外周面と、を有し、
前記第1外周面を含む第1仮想円の半径は、前記第2外周面を含む第2仮想円の半径よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のスクロール型圧縮機。 - 固定側渦巻壁を有する固定スクロールと、前記固定側渦巻壁と噛み合う可動側渦巻壁を有する可動スクロールとを有し、前記可動スクロールの自転が自転阻止機構によって阻止されるスクロール型圧縮機であって、
前記自転阻止機構は、前記可動スクロール、又は前記可動スクロールに対向配置される対向部材のどちらか一方に設けられる複数のピンと、他方に設けられるとともに前記複数のピンが各々挿入される複数の挿入部とを有し、
前記複数のピンは、リング部材に挿入された状態で当該リング部材と共に前記挿入部に挿入され、
前記複数の挿入部は、前記可動スクロールが正方向へ自転しながら前記固定スクロールに対して前記正方向へ公転運動した際、前記リング部材が接触し得る第1内周面と、前記可動スクロールが前記正方向とは逆方向へ自転しながら前記固定スクロールに対して前記正方向とは逆方向へ公転運動した際、前記リング部材が接触し得る第2内周面と、を有し、
前記第1内周面を含む第1仮想円の半径は、前記第2内周面を含む第2仮想円の半径よりも大きいことを特徴とするスクロール型圧縮機。 - 前記第1仮想円の中心と前記第2仮想円の中心とは一致することを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか一項に記載のスクロール型圧縮機。
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