JP2016112796A - ナノパターン構造を有するマイクロパターン体及びその製造方法 - Google Patents

ナノパターン構造を有するマイクロパターン体及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2016112796A
JP2016112796A JP2014253991A JP2014253991A JP2016112796A JP 2016112796 A JP2016112796 A JP 2016112796A JP 2014253991 A JP2014253991 A JP 2014253991A JP 2014253991 A JP2014253991 A JP 2014253991A JP 2016112796 A JP2016112796 A JP 2016112796A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
inclined surface
pattern
wall surface
pattern structure
individual patterns
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2014253991A
Other languages
English (en)
Inventor
奈美子 綾野
Namiko Ayano
奈美子 綾野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kuraray Co Ltd
Original Assignee
Kuraray Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kuraray Co Ltd filed Critical Kuraray Co Ltd
Priority to JP2014253991A priority Critical patent/JP2016112796A/ja
Publication of JP2016112796A publication Critical patent/JP2016112796A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

【課題】マイクロパターンの表面にナノオーダーの凹凸パターンを形成する際、ナノオーダーの凹凸パターン中に欠損を生じることを防止する。【解決手段】傾斜面45及び壁面46を有するマイクロパターンを有する基材40であって、ベース部44、及びベース部44上に形成された複数の個別パターン43を備え、傾斜面45は、各個別パターン43上に形成され、壁面46は、一以上の個別パターン43上に位置する傾斜面45と、他の個別パターン上に位置する傾斜面45との間に形成され、壁面46の斜度は、傾斜面45の斜度よりも大きい、基材40に、ナノパターン構造を付与するために、各傾斜面45上に成膜された金属膜30の外表面35に対し陽極酸化及びエッチングを行う方法であって、ベース部44は、アルミニウム合金からなり、さらにベース部44に通電することで陽極酸化を行うことを特徴とする方法。【選択図】図5

Description

本発明はナノパターン構造を有するマイクロパターン体及びその製造方法に関する。本発明はまた、ナノパターン構造を有するマイクロパターンを備える成形体並びにその原型、鋳型、製造方法及び応用に関する。
ナノオーダーの凹凸パターンから構成されたナノパターン構造を樹脂表面に設ける方法が知られている(特許文献1−3)。特許文献1では合成物質のための型押し具が開示されている。型押し具の型押し面は陽極酸化表面層を有する。陽極酸化表面層は陽極酸化によって生じた開口中空チャンバを有する(第2頁第2−6行目)。
特許文献2では陽極酸化ポーラスアルミナを鋳型として用いることで無反射高分子フィルムを作製する(第3頁第50行目−第4頁第1行目)。特許文献3ではアルミニウム(合金)を陽極酸化する際に形成される細孔を金型表面に形成し、該金型を用いて該細孔をプラスチック材料からなる光学片に転写する(第2頁第42−43行目)。
特表2003−531962号公報 特開2005−156695号公報 特開2005−316393号公報
一方、発明者らは図1に示すように、成形体の原型としてパターン構造体23を作成した。パターン構造体23はナノオーダーの凹凸パターンから構成されたナノパターン構造を有するマイクロパターンを備える。パターン構造体23は絶縁体20及び構造層31を備える。
発明者らは図1に示す絶縁体20のマイクロパターン22上にナノパターン構造を有する酸化層を設けることを試みた。具体的には絶縁体20の傾斜面25上に形成した金属膜を外表面から陽極酸化することで酸化層を形成した。
以下、図1を参照しつつナノパターン構造の形成工程を説明する。その表層にナノパターン構造を設けるべきマイクロパターン22(図1)の一例としてフレネル形状が選択される。すなわち本例では図1に示す断面を有する、フレネルレンズの原型を作成する。
図1に示すレンズ面21上にはマイクロパターン22が形成されている。マイクロパターン22はフレネル面をなす傾斜面25とライズ面をなす壁面26とをそれぞれ複数個備える。レンズ面21は傾斜面25と壁面26とを含む。レンズ面21中、マイクロパターン22よりも外周側のレンズ面21には外周面27が形成されている。
図1に示す構造層31の基礎となる金属膜及び金属膜30は蒸着法などの気相成長法でレンズ面21上に成膜されている。傾斜面25上では、蒸着膜からなる構造層31の基礎となる金属膜及び金属膜30が比較的密に形成する。これは、傾斜面25は絶縁体20全体と平行な面に対して、壁面26よりも傾きが小さいことによるためである。
図1に示すように、外周面27は傾きを有していない。このため傾斜面25と同様に外周面27上に構造層31の基礎となる金属膜が形成される。一方、壁面26は傾斜面25よりも、パターンの傾きが著しく大きい。このため壁面26上では金属膜が実質的に形成されない場合がある。
図1に示すパターン構造体23に通電して陽極酸化を行う。通電はパターン構造体23の最も外周側にある構造層31の基礎となる金属膜より導線29を通じて行う。陽極酸化により構造層31の表面の内、絶縁体20に面していない外表面36側に、酸化物からなる表層37が形成される。表層37はナノパターン構造を有する。内層32は未酸化の金属からなる。
図1に示す最外周の傾斜面25上では構造層31の基礎となる金属膜が比較的密に形成されているので通電状態がよい。一方で、壁面26上では金属膜が実質的に形成されていないため導通が悪い。したがって、壁面26上では電流が流れにくい。
図1に示すように、導線29は構造層31の基礎となる金属膜又は内層32に接する。しかしながら、最外周の傾斜面25以外の傾斜面25は壁面26にて構造層31の基礎となる金属膜と隔てられている。したがってかかる傾斜面25上の金属膜30への通電は不良となる。このため、中心側の外表面35側の表層38を金属酸化物で形成された酸化層とすることは難しい。
発明者らは上記課題を解決するため図1の経路34に沿って、陽極酸化時にのみ配線部を設けることを発明した。かかる配線部は導線29に導通接続する。さらに経路34は全ての壁面26を跨ぐ。したがって経路34に沿って設けられた配線部は構造層31の基礎となる金属膜だけでなく、壁面26によってこれらと隔てられた中心側の各金属膜30にも導通接続する。
図1に示すように、経路34に沿って設けられた配線部はマイクロパターン22の中心側の通電状態を改善することができる。このためマイクロパターン22の中心側においても表層38を金属酸化物で形成された酸化層とすることができる。
図1に示す技術思想は本願の発明者を含む発明者らによって案出された新規なものである。かかる技術思想はまた特願2013―129453にも記載されている。一方で本願の発明者らは新規な課題を見出した。
すなわち図1に示す経路34に沿って一時的に設けられる配線部は、その直下の構造層31の基礎となる金属膜及び金属膜30の陽極酸化を困難にする。したがって、配線部に覆われる外表面35,36側には酸化層を設けることが出来ない。このため、外表面35,36にナノパターン構造の無い領域、すなわちナノパターン構造の欠損が生ずる。
本発明はマイクロパターンの表面にナノオーダーの凹凸パターンを形成するための技術に関するものである。本発明は特に上記課題を踏まえ、マイクロパターンがフレネル形状のような特定のマイクロオーダーの凹凸形状を有する場合に、ナノオーダーの凹凸パターン中に欠損を生じることを防止するための技術を提供することを目的とする。
かかる技術は、ナノパターン構造を有するマイクロパターン体及びその製造方法、又はナノパターン構造を有するマイクロパターンを備える成形体並びにその原型、鋳型、製造方法及び応用として提供される。
[1] マイクロパターンを有するパターン構造体であって、
傾斜面及び壁面を有する基材、及び前記傾斜面上に設けられた構造層を備え、
前記構造層は、前記マイクロパターンの表面の一部を構成する外表面及び、前記外表面側に位置する表層を有し、
前記表層は、金属酸化物からなるナノパターン構造を有し、
前記基材は、ベース部、及び前記マイクロパターンの基礎を成す複数の個別パターンを有し、
各前記個別パターンは、前記ベース部上に形成され、
前記傾斜面は、前記各前記個別パターン上に形成され、
前記壁面は、一以上の前記個別パターン上に位置する前記傾斜面と、他の前記個別パターン上に位置する前記傾斜面との間に形成され、
前記ベース部はアルミニウム合金からなることを特徴とする、
パターン構造体。
[2] 前記ベース部は、板形状であり、
各前記個別パターンは、前記アルミニウム合金からなり、かつ互いに分離されており、
前記ベース部と各前記個別パターンとは、一体に形成されており、
前記壁面の斜度は、前記傾斜面の斜度よりも大きく、
前記壁面は前記マイクロパターンの表面の一部を構成している、
[1]に記載のパターン構造体。
[3] 前記マイクロパターンの断面は、前記板形状に沿ってのこぎり刃形状を成しており、
前記傾斜面と前記壁面とは、前記板形状に沿って交互に出現し、
前記壁面の斜度は、80度以上、90度以下であり、
前記傾斜面の斜度は、0度以上、80度未満である、
[2]に記載のパターン構造体。
[4] 前記構造層は、工業用純アルミニウムを用いて気相成長法で成膜されたアルミニウム膜より形成され、
前記表層は、前記アルミニウム膜を陽極酸化して形成され、
前記金属酸化物は酸化アルミニウムである、
[1]−[3]のいずれかに記載のパターン構造体。
[5] 前記ナノパターン構造は前記外表面に開口を有し、
隣接する前記開口の中心間距離の平均値が、100nm以上、300nm以下であり、
前記傾斜面に対する、前記開口の占有面積が、30%以上、70%未満であり、
前記開口の深さの平均値が、50nm以上、250nm以下である、
[4]に記載のパターン構造体。
[6] [1]−[5]のいずれかに記載のパターン構造体からなる原型。
[7] [6]に記載の原型を反転してなり、金属及び/又は非金属で形成された鋳型。
[8] [7]に記載の鋳型で成形した樹脂成形体。
[9] 傾斜面及び壁面を有するマイクロパターンを有する基材であって、
ベース部、及び前記ベース部上に形成された複数の個別パターンを備え、
前記傾斜面は、前記各前記個別パターン上に形成され、
前記壁面は、一以上の前記個別パターン上に位置する前記傾斜面と、他の前記個別パターン上に位置する前記傾斜面との間に形成され、
前記壁面の斜度は、前記傾斜面の斜度よりも大きい、基材に、
ナノパターン構造を付与するために、
各前記傾斜面上に成膜された金属膜の外表面に対し陽極酸化及びエッチングを行う方法であって、
前記ベース部は、アルミニウム合金からなり、さらに
前記ベース部に通電することで前記陽極酸化を行うことを特徴とする、
方法。
[10] 前記ベース部は、板形状であり、
前記壁面の斜度は、80度以上、90度以下であり、
前記金属膜は工業用純アルミニウムを用いて気相成長法で成膜され、
各前記個別パターンは、前記アルミニウム合金からなり、かつ互いに分離されており、
前記ベース部及び各前記個別パターンを通じて各前記金属膜に通電することで前記陽極酸化を行うことを特徴とする、
[9]に記載の方法。
本発明により、マイクロパターンの表面にナノオーダーの凹凸パターンを形成する際、マイクロパターンがフレネル形状のような特定のマイクロオーダーの凹凸形状を有する場合に、ナノオーダーの凹凸パターン中に欠損を生じることを防止することができる。
課題にかかるパターン構造体の断面図である。 実施形態にかかる陽極酸化後のパターン構造体の断面図である。 実施形態のかかるパターン構造体の製造方法の流れ図である。 実施形態にかかる基材の断面図である。 実施形態にかかる陽極酸化前のパターン構造体の断面図である。 実施例1にかかる構造層の表層の断面写真である。 実施例1にかかる個別パターンの壁面側の表層の断面写真である。 実施例2にかかる構造層の表層の断面写真である。 実施例2にかかる個別パターンの壁面側の表層の断面写真である。 実施例に係るアルミニウム合金ごとの細孔の深さを表すグラフである。 実施例に係るアルミニウム合金ごとの陽極酸化反応速度を表すグラフである。 実施例に係るアルミニウム合金ごとのエッチング速度を表すグラフである。
以下、図を参照しつつ実施形態を説明する。各図面において同等の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。なお図面において、縮尺及び寸法は説明の便宜のため、適宜改変されている。特にマイクロパターンのピッチ、形状及び数、並びに金属膜等の厚みが他の部位に比べて著しく拡大して描かれていることに注意を要する。
以下の実施形態は、上記課題にかかる目的を達成するのに適した一手段を表す。本実施形態はナノパターン構造を有するマイクロパターン体及びその製造方法に関する。また本実施形態は、ナノパターン構造を有するマイクロパターンを備える成形体並びにその原型、鋳型、製造方法及び応用に関する。
[パターン構造体]
<全体>
マイクロパターン体の一例は、図2に示すマイクロパターン52を有するパターン構造体50である。マイクロパターン52はパターン面51を有する。パターン構造体50はさらに基材40及び構造層31を備える。基材40は傾斜面45及び壁面46を有する。傾斜面45及び壁面46の個数は限定されない。
<構造層>
(構成)
図2に示すように構造層31は傾斜面45上に設けられている。構造層31の個数は限定されない。構造層31は外表面36を有する。外表面36は構造層31中の傾斜面45に対向する面に対して反対側にある。外表面36はパターン面51の一部を構成している。
図2に示す構造層31は表層37及び内層32を有する。表層37は外表面36側に位置する。表層37はナノパターン構造を有する。ナノパターン構造は金属酸化物からなる。一方、内層32は傾斜面45に対向する側に位置する。内層32は未酸化の金属からなる。構造層31は内層32を有さないものであってもよい。
図2に示す構造層31はアルミニウム膜より形成される。アルミニウム膜は例えば工業用純アルミニウムを用いて気相成長法で傾斜面45上に成膜することができる。表層37は例えば陽極酸化法により形成される。上述の金属酸化物は酸化アルミニウムでもよい。表層37は陽極酸化アルミナ層でもよい。
図2に示す表層37のナノパターン構造は、例えばパターン構造体50を鋳型、又は原型として作られた成形体の傾斜面に、モスアイ構造のような反射防止構造を付与することができる。かかる反射防止構造は、成形体の表面反射光量を抑制する。かかる成形体はフレネルレンズを初めとする光学素子に好適である。反射防止構造は特にフレネルレンズにおいて集光効率の向上をもたらす。
ナノパターン構造は外表面36に開口を有する。開口は陽極酸化アルミナ層中に形成される細孔(ホール)、又はセルに相当する。隣接する開口の中心間距離の平均値は細孔間のピッチに相当する。
細孔間のピッチは、50nm以上、500nm以下であることが好ましく、100nm以上、300nm以下であることがさらに好ましい。
図2に示す傾斜面45に対する、開口の占有面積は、30%以上、70%未満であることが好ましい。開口の孔径、すなわち細孔径は10nm以上、450nm以下であることが好ましい。開口の深さの平均値は50nm以上、250nm以下であることが好ましい。
開口の間隔や形状がかかる範囲にあることで、上述のナノパターン構造の各効果は、さらに高まる。また上記ナノパターン構造は、成形体の表面にロータス効果をもたらす場合がある。このため成形体は超撥水性部材として好適である。
<基材>
図2に示すように基材40は、ベース部44及び複数の個別パターン43を有する。
(個別パターン)
図2に示す個別パターン43はマイクロパターン52の基礎を成している。各個別パターン43は互いに分離されている。各個別パターン43はベース部44上に形成される。ベース部44と各個別パターン43とは、一体に形成されていることが好ましい。係る事項の詳細については後述する。
図2に示すように傾斜面45は各個別パターン43上に位置する。一方、壁面46の位置しない個別パターン43があってもよい。傾斜面45と壁面46とは、基材40の板形状に沿って交互に存在する。
すなわち図2に示す壁面46は、一以上の個別パターン43上に位置する傾斜面45と、他の個別パターン43上に位置する傾斜面45との間に位置する。かかる壁面46はマイクロパターン52の表面の一部を構成している。
個別パターン43中において壁面46の斜度は、傾斜面45の斜度よりも大きい。または各壁面46の斜度は、各傾斜面45の斜度よりも大きい。ここで斜度とは一例としてパターン面51の全体の成す平面に対する角度をいう。一例として壁面46の斜度は、80度以上、90度以下である。これに対し、傾斜面45の斜度は、0度以上、80度未満である。
図2に示すマイクロパターン52が方向57を外周側、方向58を中心側とする、フレネル形状に係るものである場合、次の効果が得られる。すなわち、パターン構造体50を原型として得られるフレネルレンズにおいて、壁面46から得られる壁面を通過する光の量を減らすことができる。このため係るフレネルレンズによって、より光の欠損の少ない、明るい像を結ぶことができる。
なお傾斜面45は中心側(方向58)から外周側(方向57)に向かって高くなる傾斜を有してもよく、これに応じて壁面46は外周側(方向57)から中心側(方向58)に向かって高くなる傾斜を有してもよい。また傾斜面45は外周側(方向57)から中心側(方向58)に向かって高くなる傾斜を有してもよく、これに応じて壁面46は中心側(方向58)から外周側(方向57)に向かって高くなる傾斜を有してもよい。
(ベース部)
図2に示すようにベース部44は板形状である。マイクロパターン52の断面は、ベース部44の板形状に沿ってのこぎり刃形状を成している。傾斜面45と壁面46とは、ベース部44の板形状に沿って交互に出現する。
図1に示すように、個別パターン43よりも外周側(方向57)には外周面47が形成されていてもよい。外周面47は傾きを有していない。このため傾斜面45と同様に外周面47上にも構造層31が形成されていてもよい。
(材料)
図2に示すベース部44及び複数の個別パターン43はアルミニウム合金からなることが好ましい。アルミニウム合金は50%以上99%未満のアルミニウムを含有することが好ましい。
アルミニウム合金は圧延用合金でもよく、鋳造用合金でもよく、非熱処理合金でもよく、熱処理合金でもよい。ただしアルミニウム合金は、純アルミニウム(JIS1000系アルミニウム)以外のものが好ましい。鋳造用合金は砂型・金型鋳物用合金又はダイカスト用合金でもよい。
アルミニウム合金の材種は2000(Al−Cu―Mg系合金)、3000(Al−Mn系合金)、4000(Al−Si系合金)、5000(Al−Mg系合金)、6000(Al−Mg−Si系合金)、及び7000(Al−Zn−Mg系合金)のいずれかであることが好ましい。上記四桁の番号は国際合金記号化制度(The International Alloy Designation System)を準用するJIS(Japanese Industrial Standards)における合金記号中の番号を表す。切削性の観点からアルミニウム合金の材種は5000(Al−Mg系合金)が望ましい。
壁面46にナノパターン構造の開口が形成されにくいことから、アルミニウム合金はマンガン又はマグネシウムを含有することが好ましい。開口の形成をさらに強く抑制できることから、マグネシウムを含有するアルミニウム合金はさらに銅又は亜鉛を含有することが好ましい。なおアルミニウム合金はこれらの添加元素に加えて、かかる添加元素より添加量の少ない、マンガン、マグネシウム、銅、亜鉛、及び他の添加元素を含有してもよい。
[製造方法]
<概要>
本実施形態に係るパターン構造体の製造方法を以下に説明する。図3は製造方法の全体の流れを表す。製造方法は成形工程S11、成膜工程S12、印加工程S13及びエッチング工程S14を有する。本項ではマイクロパターン上に上述のナノパターン構造を付与する方法を重点的に説明する。
<成形工程>
(概要)
図3に示す成形工程S11では、アルミニウム合金を材料として図4に示す基材40を成形する。予め基材40を準備することで、成形工程S11を省略することも出来る。
(マイクロパターン)
図4に示すように基材40はパターン面41にマイクロパターン42を有する。マイクロパターン42は傾斜面45及び壁面46を有する。基材40はベース部44及び複数の個別パターン43を備える。各個別パターン43はベース部44上に形成されている。各個別パターン43はアルミニウム合金からなる。各個別パターン43は互いに分離されている。
図4に示すように傾斜面45は、各前記個別パターン43上に形成されている。壁面46は、一以上の個別パターン43上に位置する傾斜面45と、他の個別パターン43上に位置する傾斜面45との間に形成されている。
図4に示す個別パターン43中において壁面46の斜度は、傾斜面45の斜度よりも大きい。または各壁面46の斜度は、各傾斜面45の斜度よりも大きい。傾斜面45及び壁面46の斜度の好ましい値は上述の通りである。
(ベース部)
図4に示すベース部44は板形状である。ベース部44はアルミニウム合金からなる。各個別パターン43とベース部44とはアルミニウム合金のブロック又は板より一体に成形されることが好ましい。アルミニウム合金の好ましい材種は上述の通りである。
(加工方法)
図4に示すマイクロパターン42をパターン面41に形成する。すなわちベース部44上に各個別パターン43を形成する。その加工方法としてはプレス加工、鋳造、切削加工が挙げられる。転写性を加味せずに、かつフレネルパターンのようなマイクロレベルの微細形状を確実に再現できるという理由から、加工方法として切削加工が好ましい。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
<成膜工程>
(気相成長法)
図3に示す成膜工程S12では、図5に示すように各傾斜面45上に金属膜30を成膜する。基材40に金属膜30が積層されることで、陽極酸化前のパターン構造体49となる。パターン構造体49はマイクロパターン42を反映したマイクロパターンを有する。金属膜30はアルミニウム膜であることが好ましい。アルミニウム膜は工業用純アルミニウムを用いて気相成長法で成膜されることが好ましい。
気相成長法による成膜は真空成膜法で行ってもよい。真空成膜法は蒸着又はスパッタであってもよい。真空蒸着法では抵抗加熱方式の他に、電子ビーム(EB)方式、またスパッタ法を用いてもよい。
例えば図5に示す金属膜30は、99.9%以上の純度のアルミニウムワイヤーを用いて、抵抗加熱による真空蒸着法で作製することができる。この場合、成膜厚みは陽極酸化アルミナ(AAO, Anodic Aluminum Oxide)層を得るために10nm以上が好ましい。
例えば、図4に示すマイクロパターン42がフレネル形状を有するものであれば、傾斜面45、すなわちフレネル面に沿ってアルミニウム膜等の金属膜30を成膜することができる。成膜工程S12は、別の観点から言えば、フレネル形状等のマイクロパターンを有し、アルミニウム膜等からなる金属膜30を形成する工程である。
(材料の投射方向)
図5に示すように、成膜される材料はパターン面41の全体が拡がる平面に対して実質的に直角な方向39を目標として投射されることが好ましい。気相成長法及びこれに用いられる装置の特性上、全ての粒子が厳密に同一の方向に投射されるとは限らない。このため材料を投射する方向を当業者の知識に基づいて適宜調整できる。
例えば図5に示すパターン面41が、成膜される材料が飛来する方向と常に対面するように基材40の向きを固定してもよい。また向きを固定した上で、基材40を一軸で回転させることは制限されない。真空蒸着法を実施する際には、自公転式のステージ上に基板を設置して蒸着を行うことが好ましい。これにより、金属膜30の膜厚均一性を向上させることができる。
上記の通り気相成長法を実施することで、図5に示す傾斜面45上では、アルミニウムの蒸着膜等からなる金属膜30が比較的密に形成する。一方、壁面46上では金属膜が形成されない、又は金属膜30よりも比較的疎に形成する。これは壁面46が、蒸着される粒子の飛行方向に対して、陰となる傾向が高いことに起因する。
一方で図5に示す壁面46への材料の付き周りを向上させることは特に必要としない。壁面46上に、ナノパターン構造が形成されると、パターン構造体50(図2)を原型として成形体を成形した時、鋳型に対する離型抵抗が大きくなるからである。
<印加工程>
(電圧印加方法)
図3に示す印加工程S13では、図5に示す外周側(方向57)の金属膜30に導線29を通じて通電し、外表面35の陽極酸化を行う。ベース部44は最外周の金属膜30と、直接に、又は最外周の個別パターン43を介して接している。このためベース部44にも通電される。
図5に示すベース部44が通電されることで中心側(方向58)の金属膜30まで通電される。好ましくは、ベース部44及び中心側(方向58)の各個別パターン43を通じて各金属膜30に通電する。すなわち基材40を通じ、外周側(方向57)から中心側(方向58)まで配置された各金属膜30に電圧を印加する。
図3に示す印加工程S13では、図5に示す金属膜30を電解液に浸漬する。電圧の印加により、金属膜30を外表面35側から陽極酸化する。これにより、金属膜30中、傾斜面45と接していない側に、金属酸化物からなる表層37を生ずる(図2)。表層37にはナノパターン構造が形成される。
図3に示す印加工程S13では、図5に示す金属膜30(陽極)に対する対向電極(陰極)として電解液中に白金(Pt)電極等を配置することが好ましい。電解液としては硫酸水溶液、シュウ酸水溶液、リン酸水溶液、またはその混合溶液からなる酸溶液が好ましい。
上記酸溶液の濃度は0.01M以上、0.5M以下、好ましくは、0.02M以上、0.3M以下が好ましい。電解液の液温は5℃以上、17℃以下が好ましい。印加電圧は10V以上、80V以下が好ましい。
(陽極酸化法の詳細)
図5に示す、パターン面41を陽極酸化し、さらに後述するエッチング工程S14を経て、図2に示すパターン構造体50を形成する。陽極酸化法は、アルミニウムを初めとする金属材料を電解液に浸漬し、これを陽極として電圧を印加する方法である。かかる金属材料としては、アルミニウムが好適である。浸漬は、酸性電解液または塩基性電解液中で行う。
アルミニウムを陽極酸化することで陽極酸化アルミナホールアレイを得ることができる。陽極酸化法により、図2に示す表層37にナノオーダーの円柱状の細孔、微細な凹部、セル又は開口を有する多孔質構造体を作成できる。特にアルミニウムにおいては、規則性の高いナノホールパターン構造を得ることができる。
電圧印加中、図5に示す金属膜30の表面で酸化と溶解が同時に進行させることが好ましい。電圧印加により、外表面35側に、開口を有する金属酸化膜を形成することが好ましい。かかる金属酸化膜はエッチングにより図2に示す表層37となる。
上記開口は、図2に示す表層37の広がる面に対して垂直に配向していることが好ましい。電圧、電解液の種類、又は温度を所定の条件下におくことで、ナノオーダーの凹凸パターンに自己組織的な規則性を与えることが好ましい。
また所定の条件下で陽極酸化を行い、陽極酸化アルミナ層に周期性を有する配列を与えることが好ましい。かかる配列としては、外表面36(図2)に対して垂直な方向から見たときに、実質的に正六角形の開口(セル)が二次元的に高密度で充填されているものが好ましい。開口(セル)が最も高密度で充填されているものが特に好ましい。
所定の条件下で陽極酸化を行い、局所的な皮膜の溶解及び成長を経て、配列中に、開口(セル)を生ずることが好ましい。特にバリア層と呼ばれる開口底部で、皮膜の溶解と成長とが同時に進行することが好ましい。
所定の条件下で陽極酸化を行うことで、開口(セル)の大きさすなわちピッチの大きさは、陽極酸化時の電圧にほぼ比例するようになる。一例としてピッチ(nm)=印加電圧(V)×2.5(nm/V)となる。このため、陽極酸化時の電圧を制御して、所望のピッチの大きさを得ることが好ましい。
電解液の種類、濃度、温度等を所定の条件下におくことで、所望の開口の直径を得ることが好ましい。さらに開口が、高い規則性、又は周期性を有する配列を形成するよう、特定の条件下において制御することが好ましい。また特定の条件下におくことで、開口が、ある程度規則性の乱れた配列、あるいは不規則な配列、又は周期性を有さない配列を形成するよう、制御してもよい。
陽極酸化により図2に示す表層37としてAAO層を形成することが好ましい。この際形成するAAO層の最適な形状や高さに関しては、パターン構造体50を原型又は鋳型として使用して製造される成形体の用途による。
<エッチング工程>
図3に示すエッチング工程S14では、表層37に対しエッチングを行い所望のナノパターン構造を形成する(図2)。本工程では外表面36を酸性溶液に浸漬し、表層37を構成する陽極酸化アルミナ層を局所的に、化学的に溶解させる。酸性溶液は、開口の大きさ(細孔径)を拡大させ、開口に所望の孔径を生じる。陽極酸化アルミナ中の孔径は10nm〜450nmであることが好ましい。
酸性溶液は濃度が1wt%以上、10wt%以下のリン酸水溶液が好ましい。浸漬時間は所望の孔径を得ることができるよう適宜決めることができる。所望の孔径を得るため、浸漬時間は5分以上、1時間以下であることが好ましい。1時間を超えて浸漬を行うことも可能である。
[本実施形態の効果]
<ベース部の効果>
図5に示す傾斜面45上では金属膜30が比較的密に形成しているので通電状態がよい。一方で、壁面46では金属膜がほとんど形成されていないため通電状態が悪い。このため、傾斜面45では金属膜30に向かって電流が流れるが、壁面46近傍ではもっぱらベース部44のアルミニウム合金に向かって電流が流れる。
上述の通り成膜工程S12では気相成長法を用いて金属膜30を成膜した。このため図5に示すように、壁面46上で、金属膜30が傾斜面45から連続して形成されることがない。また各個別パターン43は互いに分離されている。
したがって、図5に示すように、一以上の個別パターン43上に位置する傾斜面45と、他の個別パターン43上に位置する傾斜面45との間では、ベース部44以外に、金属膜30間の導通手段は確保されていない。
一方で図5に示すベース部44は、ベース部44と接続する各個別パターン43上の金属膜30に導通することが好ましい。かかる導通を確保するため成形工程S11においてベース部44と各個別パターン43と一体に成形することが好ましい(図4)。
上記により図5に示す金属膜30がフレネル形状を反映した形状を有していても、これを陽極酸化することが出来る。また、マイクロパターンがフレネル形状のような特定のマイクロオーダーの凹凸形状を有していても、ナノパターン構造中に欠損を生じることを防止することができる。
図5に示すパターン構造体49はフレネル形状のパターン構造体に限定されない。ただしフレネル形状は上述の通り、通常の方法ではナノパターンを付与しがたい形状であり、図5に示すベース部44を用いることによる効果は非常に高いものであると言える。
<基材をアルミニウム由来の材料とすることの効果>
(アルミニウム合金以外の導電体を用いた場合)
比較形態として、図4に示す基材40をアルミニウム合金以外の導電体で形成した場合を以下に考察する。陽極酸化時にマイクロパターン42を構成する導電体の表面(壁面46)が電解液と直に接触する。
かかる接触部では電子の受け渡しが活発になる。このため電解液中の水の電気分解が起こり、酸素が発生する。したがって図5に示す金属膜30に電圧を印加しても所定の電圧まで上昇しにくい。このため図6に示す表層37に所望のナノパターンを形成することができない。
また図5に示す傾斜面45と金属膜30との密着性が不十分な場合がある。この場合、傾斜面45と金属膜30との間からも上記酸素が発生する結果、金属膜30は、陽極酸化反応中に傾斜面45から、局所的に剥離する。このため、図2に示すマイクロパターン52を有するパターン面51において金属膜30の欠損が生ずる。
(本実施形態の奏する効果)
一方で、図4に示すマイクロパターン42はアルミニウム合金で構成されている。アルミニウム合金はアルミニウムを主とする材質である。このため、図5に示す金属膜30が陽極酸化されるのと同時に、壁面46を初めとする基材40の表面も陽極酸化される。
上記の場合、図5に示す基材40の表面にはナノパターン構造を有しない酸化皮膜も形成される。したがって、壁面46において電子の受け渡しが行われにくくなるため、図3に示す印加工程S13において印加電圧を所定の値まで上昇させることができる。このため、傾斜面45上に所望のナノパターン構造を形成することができる。
<基材をアルミニウム合金とすることの効果>
(純アルミニウムを用いた場合)
比較形態として、図4に示す基材40を純度99%以上のアルミニウムのバルク体で形成した場合を以下に考察する。純アルミニウムは柔らかい金属であるため、加工時にバリが発生し易い。
また、アルミニウムの純度が高いことにより、図4に示す壁面46上にも陽極酸化によるナノパターン構造が形成される。ナノパターン構造は細孔を有するため、パターン構造体を原型として成形した時に離型抵抗を増加させる。このため成形体の離型不良を生じやすい。
(本実施形態の奏する効果)
一方で、図4に示すマイクロパターン42はアルミニウム合金で構成されている。このため、図2に示す壁面46に形成された開口の深さは、純アルミニウムの表面に形成される開口の深さに比べ小さい。パターン構造体50を原型として成形体を成形しても、離型不良を生じにくい。上記については実施例でも詳述する。
[応用]
図2に示すパターン構造体50を成形体の鋳型又は原型とすることができる。パターン構造体50を金属及び/又は非金属に反転することで、金属及び/又は非金属から形成された鋳型とすることが出来る。係る鋳型で樹脂を成形することで、樹脂成形体を得ることが出来る。
成形体の鋳型の一例として以下のニッケルスタンパを作成することが出来る。図2に示すパターン構造体50の表面にニッケルを成膜する。係るニッケル膜にニッケルメッキすることでニッケルスタンパを得る。真空蒸着法によるニッケル成膜方法としては、抵抗加熱方式の他に、電子ビーム(EB)方式を用いてもよい。またスパッタ法を用いてもよい。
その後、パターン構造体50を除去してナノパターン構造を有する鋳型(ニッケルスタンパ)を得る。かかるナノパターン構造が、成形体に対し、上述の優れた反射防止構造又は表面特性を与える。成形体はフレネルレンズとしてもよく、反射防止構造を有するフレネルレンズ上にさらに反射防止材を塗布することもできる。
上記鋳型を用いて、樹脂成形体として製造することができる。樹脂成形体の成形方法としては、射出成形、プレス成形などが上げられる。射出成形、プレス成形に用いられる樹脂としては、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。重合法としては光硬化、熱硬化が挙げられる。
光硬化又は熱硬化する樹脂としては、例えば分子中にラジカル重合性結合またはカチオン重合性結合を有するモノマー、オリゴマー、反応性ポリマーを適宜混合したものが好ましい。
ラジカル重合性結合を有するモノマーとしては、特に限定されることなく使用することができるが、例えば、メチル(メタ) アクリレート、エチル(メタ) アクリレート、プロピル(メタ) アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
カチオン重合性結合を有するモノマーとしては、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルオキシ基を有するモノマーなどが挙げられ、これらの中でも特にエポキシ基を有するモノマーが好ましい。
上記成形体は、反射防止物、レンズ、光導波路、偏光分離素子などの光学品、超撥水性部材などの用途に好適である。
[実施例1]
<概要>
以下の実施例では実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本実施例では、図4に示す基材40として、アルミニウム合金の表面をフレネル形状に精密切削加工したもの用いた。アルミニウム合金はJISにおいて5000系に分類されるA5052(アルミニウム合金5052)を用いた。
<成膜工程>
図4に示す傾斜面45上に、厚さが約3.0×10nmのアルミニウム膜(金属膜30)を抵抗加熱方式の真空蒸着装置で形成した(図5)。真空蒸着装置はシンクロン製のBMC−850−Sg060016であった。
蒸着条件は、到達真空度を8×10−4Pa、蒸着速度を10Å/s、アルミニウムワイヤーの純度を99.999重量%とした。1バッチあたり厚さ30nmとして、10バッチにわたり真空蒸着を行った。
<印加工程>
図5に示す基材40に導電し、金属膜30の陽極酸化を行った(印加工程S13、図3)。陽極酸化の条件は次の通りである。電解液は濃度0.63重量%、液温17℃のシュウ酸水溶液であった。印加電圧を80V、電圧印加時間を55秒とした。
<エッチング工程>
所望の細孔径を得るために、図2に示す外表面36(エッチング前)をエッチング液に55分間浸漬した(エッチング工程S14、図3)。エッチング液は5.0重量%のリン酸水溶液であった。エッチング液の液温は30℃とした。ナノパターン構造を付与したい表層37の全体に所望のパターンサイズのナノ構造体を形成した。
<ナノパターン構造の評価>
図6は表層37(図2)の電子顕微鏡による観察像を表す。傾斜面45上の表層37に形成されたナノパターン構造を観察した。表層37の外表面36側には、細孔深さが約136nm、細孔径が約120nm、細孔周期が約195nmの開口(細孔)が形成されていた。
図7は個別パターン43の壁面46側の表層(図2)の電子顕微鏡による観察像を表す。壁面46側の表層には、細孔深さ:約80nm、細孔径:約165nm、細孔周期:192nmの開口(細孔)が確認された。係る開口の深さは、図6に示す表層37中の開口の深さより小さかった。
<ニッケルスタンパ作製>
図2に示すパターン構造体50を原型として成形体を作成することとした。このためマイクロパターン52を反転させたニッケルスタンパを作成した。この前処理として、ナノパターン構造を有する外表面36上に蒸着にてニッケル膜を成膜した。
さらに、図2に示すパターン構造体50(図2)の表面及びニッケル膜の表面にニッケルメッキをした。メッキ後、原型として用いたパターン構造体50を溶解除去してニッケルスタンパを得た。
図2に示す基材40を構成するアルミニウム合金は50wt%の水酸化ナトリウム水溶液で溶解した。構造層31を構成する純アルミニウム及び表層37を構成する酸化アルミニウムは50wt%水酸化ナトリウム水溶液を用いて化学溶解にて除去した。実施例2〜6においても同様にニッケルスタンパ(ニッケル金型)を作製した。
<成形体>
上記ニッケル金型にアクリル樹脂を射出プレスした。射出プレスにより断面がのこぎり刃形状のアクリル射出成形体を得た。電子顕微鏡により成形体のマイクロパターンの断面を観察したところ、成形体の表面全体に沿ってナノパターン構造(アルミナホールアレイ)が観察された。
[実施例2]
<パターン構造体の形成>
基材40を構成するアルミニウム合金はJISにおいて7000系に分類されるA7075(アルミニウム合金7075)を用いた。以降の加工及び処理は実施例1と同様である。
<ナノパターン構造の評価>
図8は表層37(図2)の電子顕微鏡による観察像を表す。傾斜面45上の表層37に形成されたナノパターン構造を観察した。表層37の外表面36側には、細孔深さが約145nm、細孔径が約140nm、細孔周期が約185nmの開口(細孔)が形成されていた。
図9は個別パターン43の壁面46側の表層(図2)の電子顕微鏡による観察像を表す。壁面46側の表層には、目立った開口(細孔)は確認できなかった。
<成形体>
実施例1と同様に成形体を得て、マイクロパターンの断面を観察したところ、成形体の表面全体に沿ってナノパターン構造(アルミナホールアレイ)が観察された。このため、上記実施例1,2の方法により、フレネル形状のようなマイクロパターン上にナノパターン構造を有するアクリル成形体(フレネルレンズ)を得られることが分かった。
以上より上記実施形態は、マイクロパターンがフレネル形状のような特定のマイクロオーダーの凹凸形状を有する場合であっても、ナノパターン構造中に欠損を生じることを防止できることが分かった。
また、上記実施形態の方法はパターン構造体のマイクロパターンの傾斜面の全体にナノパターン構造を形成するのに好適であることが分かった。また上記実施形態のパターン構造体はこれを原型とする成形体のマイクロパターンの傾斜面の全体にナノパターン構造を形成するのに好適であることが分かった。
[陽極酸化耐性試験]
他の合金においても実施例1,2と同様にパターン構造体50(図2)及び成形体を形成できることを確認した。具体的には図5に示す壁面46では、開口を有するナノパターン構造を形成しにくい条件下でも、外表面35に対し選択的にナノパターン構造を形成できることを確認した。
具体的には2000系、3000系、4000系、5000系、6000系、7000系のアルミニウム合金について陽極酸化反応に対する耐性を試験し、純アルミニウム(1000系)と比較した。
[細孔の深さについて]
図3に示す印加工程S13及びエッチング工程S14と同等の処理を経て、形成した開口(細孔)の深さを図10のグラフに示す。蒸着アルミニウム(純アルミニウム)の表面には細孔が形成された。
一方、すべての合金において、純アルミニウムに比較して、それらの表面の細孔は浅いか、又はその存在が確認できなかった。2000系及び7000系の合金においては、細孔の形成が確認できなかった。
また図11に示すように4000系以外の合金の表面での陽極酸化反応速度は、純アルミニウムよりも小さかった。このことは図10に示すように、各アルミニウム合金における細孔の深さが、純アルミニウムよりも小さかったことと符合する。
一方、図12に示すように4000系の合金の酸化表面がエッチングされる速度は、他の合金に比べ小さかった。このことは図10に示すように、4000系のアルミニウム合金における細孔の深さが、他の合金と同様に、純アルミニウムより小さかったことと矛盾しない。
以上より、純アルミニウム(蒸着アルミニウム)とアルミニウム合金との間における、陽極酸化に対する耐性の差を利用できることが分かった。かかる観察結果を実施形態に則して説明する。
図5に示す、陽極酸化前のパターン構造体49はのこぎり刃形状を有する。のこぎり刃形状においては、傾斜面45に純アルミニウムからなる金属膜30が成膜されている。また壁面46にアルミニウム合金が露出している。
図5に示す外表面35と、壁面46との間には上述の耐性の差が存在する。外表面35に対し選択的にナノパターン構造を形成し、一方で、壁面46にはナノパターン構造を形成しにくくすることが可能である。このため、上述の通り、パターン構造体50は、これを成形体の原型としたときに、成形体の離型不良を生じにくい。
なお、本発明は上記実施の形態又は実施例に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
20 絶縁体 21 レンズ面
22 マイクロパターン 23 パターン構造体
25 傾斜面 26 壁面
27 外周面 29 導線
30 金属膜 31 構造層
32 内層 34 経路
35,36 外表面 37,38 表層
39 方向 40 基材
41 パターン面 42 マイクロパターン
43 個別パターン 44 ベース部
45 傾斜面 46 壁面
47 外周面 49 パターン構造体
50 パターン構造体 51 パターン面
52 マイクロパターン 57 方向
58 方向

Claims (11)

  1. マイクロパターンを有するパターン構造体であって、
    傾斜面及び壁面を有する基材、及び前記傾斜面上に設けられた構造層を備え、
    前記構造層は、前記マイクロパターンの表面の一部を構成する外表面及び、前記外表面側に位置する表層を有し、
    前記表層は、金属酸化物からなるナノパターン構造を有し、
    前記基材は、ベース部、及び前記マイクロパターンの基礎を成す複数の個別パターンを有し、
    各前記個別パターンは、前記ベース部上に形成され、
    前記傾斜面は、前記各前記個別パターン上に形成され、
    前記壁面は、一以上の前記個別パターン上に位置する前記傾斜面と、他の前記個別パターン上に位置する前記傾斜面との間に形成され、
    前記ベース部はアルミニウム合金からなることを特徴とする、
    パターン構造体。
  2. 前記ベース部は、板形状であり、
    各前記個別パターンは、前記アルミニウム合金からなり、かつ互いに分離されており、
    前記ベース部と各前記個別パターンとは、一体に形成されており、
    前記壁面の斜度は、前記傾斜面の斜度よりも大きく、
    前記壁面は前記マイクロパターンの表面の一部を構成している、
    請求項1に記載のパターン構造体。
  3. 前記アルミニウム合金はAl−Mg系合金である、
    請求項1,2に記載のパターン構造体。
  4. 前記マイクロパターンの断面は、前記板形状に沿ってのこぎり刃形状を成しており、
    前記傾斜面と前記壁面とは、前記板形状に沿って交互に出現し、
    前記壁面の斜度は、80度以上、90度以下であり、
    前記傾斜面の斜度は、0度以上、80度未満である、
    請求項2又は3に記載のパターン構造体。
  5. 前記構造層は、工業用純アルミニウムを用いて気相成長法で成膜されたアルミニウム膜より形成され、
    前記表層は、前記アルミニウム膜を陽極酸化して形成され、
    前記金属酸化物は酸化アルミニウムである、
    請求項1−4のいずれかに記載のパターン構造体。
  6. 前記ナノパターン構造は前記外表面に開口を有し、
    隣接する前記開口の中心間距離の平均値が、100nm以上、300nm以下であり、
    前記傾斜面に対する、前記開口の占有面積が、30%以上、70%未満であり、
    前記開口の深さの平均値が、50nm以上、250nm以下である、
    請求項5に記載のパターン構造体。
  7. 請求項1−6のいずれかに記載のパターン構造体からなる原型。
  8. 請求項7に記載の原型を反転してなり、金属及び/又は非金属で形成された鋳型。
  9. 請求項8に記載の鋳型で成形した樹脂成形体。
  10. 傾斜面及び壁面を有するマイクロパターンを有する基材であって、
    ベース部、及び前記ベース部上に形成された複数の個別パターンを備え、
    前記傾斜面は、前記各前記個別パターン上に形成され、
    前記壁面は、一以上の前記個別パターン上に位置する前記傾斜面と、他の前記個別パターン上に位置する前記傾斜面との間に形成され、
    前記壁面の斜度は、前記傾斜面の斜度よりも大きい、基材に、
    ナノパターン構造を付与するために、
    各前記傾斜面上に成膜された金属膜の外表面に対し陽極酸化及びエッチングを行う方法であって、
    前記ベース部は、アルミニウム合金からなり、さらに
    前記ベース部に通電することで前記陽極酸化を行うことを特徴とする、
    方法。
  11. 前記ベース部は、板形状であり、
    前記壁面の斜度は、80度以上、90度以下であり、
    前記金属膜は工業用純アルミニウムを用いて気相成長法で成膜され、
    各前記個別パターンは、前記アルミニウム合金からなり、かつ互いに分離されており、
    前記ベース部及び各前記個別パターンを通じて各前記金属膜に通電することで前記陽極酸化を行うことを特徴とする、
    請求項10に記載の方法。
JP2014253991A 2014-12-16 2014-12-16 ナノパターン構造を有するマイクロパターン体及びその製造方法 Pending JP2016112796A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014253991A JP2016112796A (ja) 2014-12-16 2014-12-16 ナノパターン構造を有するマイクロパターン体及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014253991A JP2016112796A (ja) 2014-12-16 2014-12-16 ナノパターン構造を有するマイクロパターン体及びその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2016112796A true JP2016112796A (ja) 2016-06-23

Family

ID=56140473

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014253991A Pending JP2016112796A (ja) 2014-12-16 2014-12-16 ナノパターン構造を有するマイクロパターン体及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2016112796A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN111188011A (zh) * 2020-02-17 2020-05-22 陕西师范大学 一种具有高度差的三维手性圆锥金属纳米壳及制备方法
CN116423942A (zh) * 2023-04-12 2023-07-14 南京大学 一种金属树脂复合体、表面处理方法以及用于高频高速信号传输电路板基材

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN111188011A (zh) * 2020-02-17 2020-05-22 陕西师范大学 一种具有高度差的三维手性圆锥金属纳米壳及制备方法
CN111188011B (zh) * 2020-02-17 2021-12-24 陕西师范大学 一种具有高度差的三维手性圆锥金属纳米壳及制备方法
CN116423942A (zh) * 2023-04-12 2023-07-14 南京大学 一种金属树脂复合体、表面处理方法以及用于高频高速信号传输电路板基材
CN116423942B (zh) * 2023-04-12 2024-01-26 南京大学 一种金属树脂复合体、表面处理方法以及用于高频高速信号传输电路板基材

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5642850B2 (ja) 多孔性高分子膜の製造方法
US20070116934A1 (en) Antireflective surfaces, methods of manufacture thereof and articles comprising the same
Ting et al. Low cost fabrication of the large-area anti-reflection films from polymer by nanoimprint/hot-embossing technology
Zhang et al. Advances in precision micro/nano-electroforming: a state-of-the-art review
US6641767B2 (en) Methods for replication, replicated articles, and replication tools
JP2647410B2 (ja) フィルターの製造法
CN101248219A (zh) 多孔性高分子膜及其制造方法以及该制造中所使用的压模的制造方法
EP2489764B1 (en) Die and method for manufacturing die, and anti-reflection coating
JP2006124827A (ja) ナノ構造体の製造方法
JP5698916B2 (ja) 表面凹凸パターンを有する樹脂材の製造方法
CN103459680B (zh) 模具的制造方法
JP5276830B2 (ja) インプリント用モールドの製造方法
Kikuchi et al. Fabrication of a meniscus microlens array made of anodic alumina by laser irradiation and electrochemical techniques
TWI465759B (zh) 模具及模具之製造方法
KR101165396B1 (ko) 금속 나노 링 패턴을 이용한 나노 구조물의 제조 방법
JP2016112796A (ja) ナノパターン構造を有するマイクロパターン体及びその製造方法
Yanagishita et al. Nanoimprinting using Ni molds prepared from highly ordered anodic porous alumina templates
JP4617402B2 (ja) 型の製造方法およびそれに用いられる電極構造
JP2017539092A (ja) コンデンサ用の電極フィルムを製造するための方法、電極フィルムおよびこの電極フィルムを用いたコンデンサ
KR101049220B1 (ko) 임프린트 리소그래피용 스탬프의 제조 방법
JP5824399B2 (ja) ナノインプリント用樹脂モールドおよびその製造方法
Oh et al. Fabrication of aluminum nano-scale structures using direct-embossing with a nickel template
TW561089B (en) Method for manufacturing mold inserts of light guide plates
WO2010114358A1 (en) Method for producing an ecm tool and use thereof as a cathode in electrochemical machining of a workpiece
JP2015004781A (ja) パターン構造体及びその製造方法