以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施形態)
図1に、本実施形態の通話装置10、および通話システム1のブロック構成図を示す。通話装置10は、相手端末20側にいるユーザとの通話を行うための装置であり、通話システム1は、通話装置10と相手端末20とを備えて構成されている。
本実施形態では、マンション等の集合住宅に設けられるいわゆるインターホンシステムを通話システム1の例として説明する。また、通話装置10は、集合住宅の住戸内に設けられたいわゆるインターホン親機であり、通話装置10側のユーザを住人として説明する。また、相手端末20は、集合住宅の共用部(例えばロビー等)に設けられたいわゆるロビーインターホンであり、相手端末20側のユーザを来訪者として説明する。
なお、図1では、1つの相手端末20に対して、信号線30を介して電気的に接続された1つの通話装置10のみを図示しているが、実際は集合住宅の各住戸に通話装置10が設けられており、1つの相手端末20に対して複数の通話装置10が接続される。また、本実施形態における通話装置10と相手端末20との間の通信方式は、信号線30を用いた有線方式であるが、この方式に限定せず、電波を伝送媒体に用いる無線方式、または有線方式と無線方式とを組み合わせた方式であってもよい。
以下に、本実施形態の通話装置10、および通話システム1の詳細な構成について説明する。
まず、本実施形態における相手端末20(ロビーインターホン)の構成について説明する。相手端末20は、ロビーにいる来訪者が住戸内の住人を呼び出し、この住人と通話を行うための装置である。本実施形態の相手端末20は、接続部21、操作部22、通話部23、カメラ24、制御部25、記憶部26、および電源部27を備えている。
接続部21は、通信インターフェースであり、電気的に接続された信号線30を介して通話装置10(インターホン親機)との間で電気信号の授受(通信)を行う。
操作部22は、押しボタンスイッチ、タッチパネル等で構成されており、来訪者は、この操作部22を用いて住戸の部屋番号などを入力する住人の呼び出し操作を行う。
通話部23は、相手端末20側の音(来訪者の音声)を電気信号に変換するマイク231と、電気信号に変換された通話装置10側の音(住人の音声)を再生(電気信号を音に変換)するスピーカ232とを備えている。さらに、通話部23は、マイク231で生成された電気信号、およびスピーカ232に出力する電気信号を信号処理する信号処理部233を備えている。信号処理部233は、第1処理部234と第2処理部235とを備えている。第1処理部234は、マイク231で生成された電気信号をアナログ信号からデジタル信号に変換(A/D変換)し、このデジタル信号で搬送波を変調したデジタル変調信号を生成する。そして、第1処理部234は、デジタル変調信号を、信号線30を介して通話装置10に送信する。第2処理部235は、信号線30を介して受信したデジタル変調信号を復調し、デジタル信号をアナログ信号に変換(D/A変換)する。そして、第2処理部235は、アナログの電気信号をスピーカ232に出力する。すなわち、通話部23は、音(音声)と、信号線30を介して授受される電気信号とを相互変換することで、来訪者と住人との通話(ハンズフリー通話)を可能にする。なお、本実施形態では、通話装置10と相手端末20との間で送受信される電気信号の形態としてデジタル変調信号を用いているが、この形態に限定しない。例えば、電気信号の形態として、AM(Amplitude Modulation)変調、FM(Frequency Modulation)変調などを用いたアナログ変調信号、または無変調のアナログ信号であってもよい。
カメラ24は、来訪者の姿、ロビーの様子などを撮影しており、撮影した映像を信号線30を介して通話装置10に出力する。
制御部25は、CPU(Central Processing Unit)で構成されており、記憶部26(メモリ)に格納されたプログラムを実行することで、相手端末20が備える各構成要素の機能を実現する。
電源部27は、商用電源と電気的に接続されており、商用電源からの供給電力を用いて、相手端末20を稼働させる電力を生成する。
来訪者は、このように構成された相手端末20を用いて、住戸内の住人を呼び出し、この呼び出しに応答した住人との通話を行う。
次に、本実施形態における通話装置10(インターホン親機)の構成について説明する。通話装置10は、住戸内の壁などに設けられており、相手端末20(ロビーインターホン)からの呼び出しに応答して、相手端末20側にいる来訪者と通話を行うための装置である。本実施形態の通話装置10は、接続部11、操作部12、通話部13、表示部14、制御部15、記憶部16、および電源部17を備えている。
接続部11は、通信インターフェースであり、電気的に接続された信号線30を介して相手端末20との間で電気信号の授受(通信)を行う。
操作部12は、押しボタンスイッチ、タッチパネル等で構成されている。住人は、この操作部12を用いて相手端末20からの呼び出しの応答操作、通話の終了操作、さらには通話装置10の設定の入力操作などを行う。
通話部13は、通話装置10側の音(住人の音声)を電気信号に変換するマイク131と、電気信号に変換された相手端末20側の音(来訪者の音声)を再生(電気信号を音に変換)するスピーカ132とを備えている。さらに、通話部13は、マイク131で生成された電気信号、およびスピーカ132に出力する電気信号を信号処理する信号処理部133を備えている。信号処理部133は、第1処理部134と第2処理部135とを備えている。第1処理部134は、マイク131で生成された電気信号をアナログ信号からデジタル信号に変換(A/D変換)し、このデジタル信号で搬送波を変調したデジタル変調信号を生成する。そして、第1処理部134は、信号線30を介して相手端末20に送信する。第2処理部135は、信号線30を介して受信したデジタル変調信号を復調し、デジタル信号をアナログ信号に変換(D/A変換)する。そして、第2処理部135は、アナログの電気信号をスピーカ132に出力する。すなわち、通話部13は、音(音声)と、信号線30を介して授受される電気信号とを相互変換することで、住人と来訪者との通話(ハンズフリー通話)を可能にする。さらに、通話部13は、送話と受話とを切り替えるボイススイッチ、受話音声からエコーを除去するエコーキャンセラを備えている。また、相手端末20からの呼び出しが発生した場合、この呼び出しを住人に知らせる呼び出し音がスピーカ132から出力される。
表示部14は、液晶ディスプレイなどで構成されている。相手端末20からの呼び出しが発生した場合、表示部14には、相手端末20に設けられたカメラ24で撮影された映像、住人の呼び出しを示すメッセージなどが表示される。また、表示部14は、通話装置10の設定項目、設定状態などを表示するためにも用いられる。
制御部15は、CPU(Central Processing Unit)で構成されており、記憶部16(メモリ)に格納されたプログラムを実行することで、通話装置10が備える各構成要素の機能を実現する。
電源部17は、商用電源と電気的に接続されており、商用電源からの供給電力を用いて、通話装置10を稼働させる電力を生成する。
住人は、このように構成された通話装置10を用いて、来訪者の姿を確認し、相手端末20からの呼び出しに応答して来訪者との通話を行う。
ここで、相手端末20(ロビーインターホン)の周囲の環境(設置環境)に応じて、相手端末20の通話部23の入出力特性(スピーカ232の出力特性、マイク231の入力特性)、相手端末20の周囲における音響特性、騒音などの音環境が異なる。本実施形態における相手端末20の周囲の環境とは、相手端末20が設置されている空間の環境、相手端末20の取付環境などを示す。
相手端末20が設置されている空間の環境とは、相手端末20が設置されている空間が、扉の内側の閉ざされた空間であるか、あるいは扉の外側の開放された空間であるか、さらにはその空間の大きさ、空間を形成する材質などを示す。例えば、相手端末20がロビーに設置されている場合、ロビーの形状、広さ、天井の高さ、さらには天井、壁、床の材質などが、相手端末20が設置されている空間の環境を示す情報の1つとして扱われる。さらに、相手端末20の周囲における騒音の有無、騒音の大きさなどの情報も、相手端末20が設置されている空間の環境を示す情報の1つとして扱われる。
また、相手端末20の取付環境とは、相手端末20が設置される場所、相手端末20の設置方法、相手端末20が有する化粧パネルの種類、モール配線の有無などを示す。相手端末20が設置される場所の例として、壁の他、壁や床に対して傾斜した傾斜面を有し、この傾斜面に相手端末20が来訪者の顔と対向するように設置される斜め台座などがある。また、相手端末20の設置方法として、相手端末20が壁などに埋め込まれ相手端末20の正面のみが露出するように設置される埋込設置、相手端末20の全体が壁などから露出するように設置される露出設置などがある。これらの壁への設置方法、および壁の材質、さらには壁が中空か中実であるかを示す壁の状態などの情報が、相手端末20の取付環境を示す情報の1つとして扱われる。また、相手端末20を埋込設置する場合、壁と相手端末20とを固定する埋込ボックスの使用の有無も、相手端末20の取付環境を示す情報の1つとして扱われる。
なお、上述した相手端末20の周囲の環境は一例であり、相手端末20の通話部23の入出力特性、相手端末20の周囲における音環境に影響を及ぼす要素が含まれていればよく、上記に限定しない。
上述したように、相手端末20の周囲の環境(設置環境)には様々な状態がある。そして、相手端末20の周囲の環境毎に、相手端末20の通話部23の入出力特性、相手端末20の周囲における音響特性、騒音などの音環境が異なる。例えば、相手端末20が屋内に設置されている場合と、屋外に設置されている場合とでは、相手端末20の周囲における音響特性が異なる。また、相手端末20が壁に埋込設置されている場合と、露出設置されている場合とでは、相手端末20のスピーカ232の出力特性が異なる。さらには、相手端末20の周囲における騒音が大きい場合、通話装置10からの送話音量が小さいと来訪者は住人の声が聞こえづらくなる。このように、相手端末20の周囲に環境が、通話装置10と相手端末20との通話品質に影響を及ぼす。
そこで、本実施形態の通話装置10は、相手端末20の周囲の環境に基づいた通話パラメータを通話部13に適用することで、相手端末20の周囲の環境による通話品質の低下の抑制を図る。ここでいう通話パラメータとは、ボイススイッチの切り替えの音量レベル閾値、トータルゲイン、アイドル時ゲイン、送受話音量の補正値、エコーキャンセラの適応フィルタの次数などを示す。
本実施形態の通話装置10は、相手端末20の周囲の環境による通話品質の低下の抑制を図るために、以下の構成を備えている。本実施形態の通話装置10は、図1、図2に示すように、信号生成部18、推定部151、環境取得部154、選択部155をさらに備え、相手端末20の周囲の環境(設置環境)に基づいて、通話部13に適用する通話パラメータを選択する。
信号生成部18は、所定のテスト信号を生成しており、信号線30を介して相手端末20にテスト信号を送信し、このテスト信号を受信した相手端末20のスピーカ232から所定のテスト音を出力させる。本実施形態では、インパルス信号をテスト信号に用いている。
推定部151は、比較部152と処理部153とを備えており、相手端末20のスピーカ232から出力されマイク231に回り込む音(テスト音)である回り込み音に基づいて、相手端末20の周囲の環境を推定する推定処理を行う。なお、図2において、破線矢印Y1は、相手端末20のスピーカ232から出力されマイク231に回り込む回り込み音を示し、実線矢印Y2,Y3は、音声信号の伝達方向を示している。
比較部152は、信号生成部18が生成したテスト信号と、相手端末20のマイク231に入力されたテスト音を電気信号に変換した回り込み信号とを比較する。すなわち、相手端末20のスピーカ232から出力されるテスト音と、マイク231に回り込むテスト音(回り込み音)とを比較する。そして、比較部152は、相手端末20のスピーカ232とマイク231との間における音響結合の利得(音響結合利得)、およびインパルス応答時間を求める。さらに、比較部152は、相手端末20のマイク231に入力された音からテスト音を除去することで、相手端末20の周囲における騒音(周囲雑音)を抽出し、この騒音の音量レベルを求める。具体的には、比較部152は、相手端末20のマイク231に入力された音が変換された電気信号から、回り込み信号を除去した信号のピーク値に基づいて、相手端末20の周囲における騒音の音量レベルを求める。
処理部153は、比較部152の比較結果(音響結合利得、インパルス応答時間、騒音の音量レベル)に基づいて、相手端末20の周囲の環境を推定する推定処理を実行する。具体的には、処理部153は、音響結合利得に基づいて、相手端末20の通話部23の入出力特性にどのような影響を及ぼす環境であるかを推定する。例えば、音響結合利得の値が閾値以上である場合、処理部153は、相手端末20の周囲における環境が、回り込み音が生じやすい環境であると推定する。また、処理部153は、インパルス応答時間に基づいて、相手端末20の周囲における音響特性にどのような影響を及ぼす環境であるかを推定する。例えば、インパルス応答時間の値が閾値以上である場合、処理部153は、相手端末20の周囲における環境が、残響が大きい環境であると推定する。また、処理部153は、騒音の音量レベルに基づいて、相手端末20の周囲において、どのような大きさの騒音が発生している環境であるかを推定する。
環境取得部154は、上記推定処理によって推定された相手端末20の周囲の環境を表す環境情報(相手端末20の通話部23の入出力特性、相手端末20の周囲における音響特性、騒音の大きさなど)を取得する。
また、本実施形態の記憶部16は、相手端末20の周囲における様々な環境に対応した複数の通話パラメータを格納している。
選択部155は、環境取得部154が取得した環境情報に基づいて、記憶部16に格納された複数の通話パラメータの中から相手端末20の周囲の環境に適した通話パラメータを選択する。そして、選択部155が選択した通話パラメータが通話部13に適用される。
また、通話部13に適用中の通話パラメータを、表示部14に表示することができる。すなわち、本実施形態の表示部14は、通話部13に適用されている通話パラメータを提示する提示部としても機能する。例えば、ユーザが操作部12を用いて、通話パラメータの確認操作を行うことで、現在適用中の通話パラメータが表示部14に表示される。これにより、ユーザは、通話パラメータの選択に誤りがないかを確認することができる。このとき、相手端末20の周囲の環境を表す環境情報も合わせて表示されることが望ましい。なお、通話パラメータの提示方法は、上記に限定せず、例えば音声を用いて、通話部13に適用されている通話パラメータが提示される構成であってもよい。
次に、テスト信号の送信から通話パラメータの選択までの処理(通話パラメータの選択処理)の一例を、図3、図4に示すフローチャートを用いて説明する。
まず、図3に示すフローチャートを用いて、通話パラメータの選択処理の第1の例について説明する。
本実施形態では、ユーザによる操作部12の操作によって、通話パラメータの選択処理が開始される。なお、操作部12の操作の例として、表示部14に設定画面を表示させ、この設定画面から「通話パラメータの選択」という項目を選択するという操作によって、通話パラメータの選択処理が開始される。または、操作部12を構成する所定の複数のボタンを同時押しすることで、通話パラメータの選択処理が開始されるように構成されていてもよい。
通話パラメータの選択処理が開始されると、まず信号生成部18からテスト信号が送信され、相手端末20のスピーカ232からテスト音が出力される(S1)。そして、相手端末20のスピーカ232から出力されたテスト音がマイク231に回り込む。
次に、推定部151の比較部152が、テスト信号と回り込み信号とを比較する(S2)。そして、処理部153が、比較部152の比較結果に基づいて、相手端末20の周囲の環境を推定する推定処理を実行する。本例では、処理部153は、回り込み信号の振幅、すなわち音響結合利得の値と所定の閾値とを比較することで、相手端末20の周囲の環境が、相手端末20の通話部23の入出力特性にどのような影響を及ぼす環境であるかを推定する(S3)。
回り込み信号の振幅が閾値以上である場合(S3のYes)、処理部153は、相手端末20の周囲の環境が、回り込み音が生じやすい環境であると推定する。環境取得部154は、推定部151によって推定された相手端末20の周囲の環境を表す情報(環境情報)を取得する。
そして、選択部155は、環境取得部154が取得した環境情報に基づいて、記憶部16に格納された複数の通話パラメータの中から相手端末20の周囲の環境に適した通話パラメータを選択する。本例では、選択部155は、通話部13が備えるボイススイッチの受話側の感度が現在よりも下がる、言い換えれば、ボイススイッチが受話側の経路に損失を挿入する音量レベルの閾値が現在よりも高くなる通話パラメータを選択する(S4)。すなわち、選択部155は、回り込み音が生じやすい環境に適した通話パラメータを、記憶部16に格納された複数の通話パラメータの中から選択する。そして、通話部13に適用される通話パラメータが、選択部155が選択した通話パラメータに更新される。これにより、相手端末20のスピーカ232から出力される住人の音声の回り込みによって、通話部13のボイススイッチが送話側の経路に損失を挿入、すなわち通話装置10が送話モードから受話モードに切り替わることが防止される。したがって、通話が途切れる受話ブロッキングを抑制することができ、通話品質の低下を抑制することができる。
また、ステップS3において、回り込み信号の振幅が閾値未満である場合(S3のNo)、処理部153は、相手端末20の周囲の環境が、相手端末20の通話部23の入出力特性が所望レベルを満足する環境であると推定する。そのため、通話パラメータの更新が行われず、現在適用されている通話パラメータが維持される。
次に、図4に示すフローチャートを用いて、通話パラメータの選択処理の第2の例について説明する。
通話パラメータの選択処理が開始されると、まず信号生成部18からテスト信号が送信され、相手端末20のスピーカ232からテスト音が出力される(S11)。そして、相手端末20のスピーカ232から出力されたテスト音が、マイク231に回り込む。
次に、推定部151の比較部152が、テスト信号と回り込み信号とを比較する(S12)。そして、処理部153が、比較部152の比較結果に基づいて、相手端末20の周囲の環境を推定する推定処理を実行する。本例では、処理部153は、比較部152の比較結果の1つであるインパルス応答時間を所定の閾値とを比較することで、相手端末20の周囲の環境が、相手端末20の音響特性にどのような影響を及ぼす環境であるかを推定する(S13)。
インパルス応答時間が閾値以上である場合(S13のYes)、処理部153は、相手端末20の周囲の環境が、残響が大きい環境であると推定する。環境取得部154は、推定部151によって推定された相手端末20の周囲の環境を表す情報(環境情報)を取得する。
そして、選択部155は、環境取得部154が取得した環境情報に基づいて、記憶部16に格納された複数の通話パラメータの中から相手端末20の周囲の環境に適した通話パラメータを選択する。本例では、選択部155は、通話部13が備えるエコーキャンセラの適応フィルタの次数が現在よりも大きい通話パラメータを選択する(S14)。すなわち、選択部155は、残響が大きい環境に適した通話パラメータを、記憶部16に格納された複数の通話パラメータの中から選択する。そして、通話部13に適用される通話パラメータは、選択部155が選択した通話パラメータに更新される。これにより、相手端末20の周囲の環境が、残響が大きい環境であっても、通話音声の残響を効果的に除去することができ、通話品質の低下を抑制することができる。
また、ステップS13において、インパルス応答時間が閾値未満である場合(S13のNo)、処理部153は、相手端末20の周囲の環境が、音響特性が所望レベルを満足する環境であると推定する。そのため、通話パラメータの更新が行われず、現在適用されている通話パラメータが維持される。
このように、本実施形態の通話装置10は、上述した通話パラメータの選択処理によって、相手端末20の周囲の環境に適した通話パラメータが、複数の通話パラメータの中から選択されて通話部13に適用される。したがって、相手端末20の周囲の環境による通話品質の低下を抑制することができる。
なお、上述した通話パラメータの選択処理は一例であり、上記に限定されない。例えば、相手端末20の周囲における騒音の大きさが閾値以上である場合、送話音量を増加させる通話パラメータが選択される。これにより、相手端末20のスピーカ232から出力される住人の音声が大きくなり、来訪者は、住人の声を聞きやすくなる。
また、上述した通話パラメータの選択処理では、1つの環境情報に基づいて通話パラメータが選択されているが、この構成に限定されない。選択部155は、推定部151の推定処理により得られる複数の環境情報(例えば、相手端末20の通話部23の入出力特性、相手端末20の周囲における音響特性、騒音の大きさなど)を総合的に判断し、通話パラメータを選択するように構成されていてもよい。
また、本実施形態では、通話パラメータの選択処理は、ユーザによる操作部12の操作によって開始されるように構成されているが、自動的に開始されるように構成されていてもよい。例えば、タイマー機能、時計機能などを用いて、所定の周期、または所定の時刻に通話パラメータの選択処理が実行されるように構成する。これにより、相手端末20の周囲の環境に変化が生じた場合であっても、この変化後の環境に適した通話パラメータが通話部13に適用され、通話品質の低下を抑制することができる。
また、通話部13は、所定の通話パラメータが初期値として予め適用されていることが好ましい。この初期値は、相手端末20の周囲の環境に関わらず標準的な通話品質が確保される通話パラメータである。これにより、通話パラメータの選択処理が未実行である場合においても、標準的な通話品質を確保することができる。そして、上述した通話パラメータの選択処理が実行されることによって、通話部13に適用される通話パラメータが初期値から選択部155が選択した通話パラメータに変更され、通話品質を向上させることができる。なお、通話パラメータの選択処理の実行後においても、初期値を再設定が可能、言い換えれば通話部13に適用される通話パラメータのリセット処理が実行可能に構成されることが好ましい。
なお、本実施形態では通話装置10がインターホン親機を構成し、相手端末20がロビーインターホンを構成する場合を例に説明したが、この構成に限定しない。例えば、相手端末20が、玄関の壁や門柱に設けられる玄関子機、集合住宅の管理人室に設けられる管理室親機、またはインターホン親機とは別室に設けられる副親機を構成していてもよい。さらには、通話装置10が、ロビーインターホン、玄関子機、管理室親機、副親機を構成していてもよい。
また、通話装置10に複数の相手端末20が接続される場合、例えば、インターホン親機である通話装置10に、ロビーインターホン、玄関子機、管理室親機それぞれが相手端末20として接続される場合、相手端末20ごとにその周囲の環境が大きく異なる。このように通話装置10と複数の相手端末20とを備えた通話システム1を構成する場合、通話装置10は、通話先の相手端末20ごとに適用する通話パラメータを変更するように構成される。
通話装置10は、相手端末20の周囲の環境を表す環境情報を相手端末20ごとに取得し、それぞれの相手端末20の周囲の環境に適した通話パラメータを選択し、この通話パラメータと相手端末20とを対応付けて記憶部16に格納する。そして、通話先の相手端末20に応じて、この相手端末20に対応付けられた通話パラメータを記憶部16から取得して通話部13に適用する。例えば、通話装置10(インターホン親機)の通話先の相手端末20がロビーインターホンである場合、ロビーインターホンの周囲の環境に適した通話パラメータが通話部13に適用される。また、通話装置10(インターホン親機)の通話先の相手端末20がドアホン子機である場合、ドアホン子機の周囲の環境に適した通話パラメータが通話部13に適用される。このように、通話装置10は、通話先の相手端末20ごとに相手端末20の周囲の環境に適した通話パラメータに変更することで、通話先の相手端末20がいずれであっても、その周囲の環境による通話品質の低下を抑制することができる。
また、本実施形態では、通話装置10、通話システム1が、集合住宅に設けられる構成を例に説明したが、通話装置10、通話システム1は、戸建住宅に設けられる構成であってもよい。また、通話システム1の利用は、インターホンシステムに限定せず、他のシステム(例えば、構内の内線通話システムなど)にも適用可能である。
以上説明したように、本実施形態の通話装置10は、通話部13と、環境取得部154と、選択部155とを備える。通話部13は、相手端末20との通話機能を有する。環境取得部154は、相手端末20の周囲の環境を表す環境情報を取得する。選択部155は、環境情報に基づいて、複数の通話パラメータの中から通話部13に適用する通話パラメータを選択する。
また、本実施形態の通話システム1は、上記通話装置10と、通話装置10との通話機能を有する相手端末20とを備える。
すなわち、本実施形態の通話装置10、通話システム1は、相手端末20の周囲の環境を表す環境情報に基づいて、相手端末20の周囲の環境に適した通話パラメータが、複数の通話パラメータの中から選択されて通話部13に適用される。したがって、本実施形態の通話装置10、通話システム1では、相手端末20の周囲の環境による通話品質の低下を抑制することができる。
また、本実施形態の通話システム1において、通話装置10は、インターホン親機であり、相手端末20は、集合住宅の共用スペースに設けられるロビーインターホン、または玄関に設けられる玄関子機、または管理室に設けられる管理室親機である。相手端末20の周囲の環境は、設置される集合住宅の形態、さらには相手端末20の種類によって様々な状態が考えられるが、インターホン親機である通話装置10は、相手端末20の周囲の環境に適した通話パラメータが通話部13に適用される。したがって、本実施形態の通話システム1では、集合住宅の形態、相手端末20の種類に関わらず、通話品質の低下を抑制することができる。
また、本実施形態の通話装置10は、選択部155に通話パラメータの選択を実行させる操作部12を備えている。すなわち、ユーザによる操作部12の操作によって、通話パラメータの選択処理が実行される。この構成によって、ユーザは、任意のタイミング(例えば、通話装置10および相手端末20を設置する施工時)で、通話パラメータの選択処理を実行させることができる。
また、本実施形態の通話装置10は、通話部13に適用されている通話パラメータを提示する提示部(表示部14)を備えている。この構成によって、ユーザは、通話パラメータの選択に誤りがないかを確認することができる。
また、本実施形態の通話部13は、所定の通話パラメータが初期値として予め適用されており、選択部155は、選択した通話パラメータに変更する。この構成によって、通話装置10は、通話パラメータの選択処理が未実行である場合においても、標準的な通話品質を確保することができる。そして、通話パラメータの選択処理が実行されることで、通話品質を向上させることができる。
また、本実施形態の通話装置10は、相手端末20のスピーカ232から出力されて相手端末20のマイク231に回り込む回り込み音に基づいて、相手端末20の周囲の環境を推定する推定処理を行う推定部151を備える。そして、環境取得部154は、推定部151から環境情報を取得する。この構成によって、通話装置10は、相手端末20の周囲の環境を推定して環境情報を取得するので、ユーザが環境情報を入力する必要がない。したがって、ユーザの手間を省き、容易に相手端末20の周囲の環境に適した通話パラメータを通話部13に適用することができる。
さらに、相手端末20のスピーカ232から出力されて相手端末20のマイク231に回り込む回り込み音は、所定のテスト音である。すなわち、推定部151は、既知のテスト信号(本実施形態では、インパルス信号)を用いて、相手端末20の周囲の環境を推定する推定処理を行う。したがって、テスト信号と回り込み信号との比較処理が容易となり、相手端末20の周囲の環境を推定する精度を向上させることができる。
次に、本実施形態の通話装置10の変形例について説明する。
推定部151は、複数回のテスト音に基づいて、推定処理を行うように構成されていてもよい。例えば、推定部151は、テスト音と回り込み音との比較を複数回行い、音響結合利得の平均値が閾値以上である場合に、相手端末20の周囲の環境が、回り込み音が生じやすい環境であると推定する。または、推定部151は、テスト音と回り込み音との比較を複数回行い、音響結合利得が閾値以上である回数が所定回数以上である場合に、相手端末20の周囲の環境が、回り込み音が生じやすい環境であると推定する。このような構成によって、テスト音と回り込み音との比較を複数回行われるので、推定部151による相手端末20の環境を推定する推定処理の精度を向上させることができる。さらに、推定部151は、相手端末20の周囲における騒音の時間変化も推定することができ、騒音の発生が一時的であるか、定常的であるかも把握することができる。
また、推定部151は、相手端末20のマイク231に入力される回り込み音以外の音の音量レベルが閾値未満である場合、推定処理を行うように構成されていてもよい。このように構成する場合、図5に示すように、通話装置10は、騒音抽出部156を備えることが好ましい。騒音抽出部156は、相手端末20のマイク231に入力された音からテスト音を除去することで、相手端末20の周囲における騒音(周囲雑音)を抽出し、この騒音の音量レベルを求める。そして、騒音抽出部156は、求めた騒音の音量レベルと閾値とを比較する。推定部151は、騒音の音量レベルが閾値未満である場合、相手端末20の周囲の環境を推定する推定処理を実行し、騒音の音量レベルが閾値以上である場合、推定処理を実行しない。この構成によって、相手端末20の周囲における騒音の音量レベルが低い比較的静かな状況で推定処理が実行されるので、推定部151による相手端末20の環境を推定する推定処理の精度を向上させることができる。
さらに、騒音の音量レベルが閾値未満である場合に、通話パラメータの選択処理が実行されるように構成されていてもよい。例えば、所定の周期で騒音抽出部156は、相手端末20の周囲における騒音の音量レベルを求め、この騒音の音量レベルが閾値未満である場合にのみ、通話パラメータの選択処理が実行される。このように構成することによって、相手端末20の周囲のおける騒音が小さいときにのみ通話パラメータの選択処理が自動的に実行され、相手端末20のスピーカ232からテスト音が不要に出力されることを防止できる。
また、本実施形態では、信号生成部18が生成したインパルス信号からなるテスト信号をスピーカ232で再生した音をテスト音として用いるが、テスト音は、呼び出し音またはバックトーンであってもよい。例えば、住人を呼び出し中であることを知らせるための音であるバックトーンをテスト音として用いる場合、推定部151は、相手端末20のスピーカ232から出力されマイク231に回り込むバックトーンに基づいて、相手端末20の周囲の環境を推定する。すなわち、通話装置10は、住人の呼び出し中に、環境情報を取得して通話部13に適用する通話パラメータを選択する。これにより、通話の開始直前における相手端末20の周囲の環境に適した通話パラメータを選択することができる。
また、例えば、通話装置10をインターホン親機、相手端末20を通話装置10とは別室に設けられる副親機で構成した場合、通話装置10から相手端末20の呼び出しを行うことができる。このような構成の場合、推定部151は、相手端末20のスピーカ232から出力される呼び出し音をテスト音として、推定処理を行うことができる。なお、このように構成する場合、通話装置10は、相手端末20のスピーカ232から出力される呼び出し音の音データを保持し、この音データと回り込み信号とを比較する必要がある。
このように、相手端末20の周囲の環境を推定する推定処理に用いるテスト音に、呼び出し音またはバックトーンを用いることによって、通話の開始直前における相手端末20の周囲の環境に適した通話パラメータを選択することができる。これにより、通話品質の低下をより抑制することができる。
また、相手端末20のスピーカ232から出力されて相手端末20のマイク231に回り込む回り込み音は、通話音声であってもよい。通話中において、相手端末20と話者である来訪者との距離によって、相手端末20のスピーカ232とマイク231との間の音響結合利得が変化する。すなわち、相手端末20と来訪者との距離も、通話品質に影響を与える相手端末20の周囲の環境の1つとなる。そこで、通話音声の回り込みを用いて推定処理を行うことで、通話中における相手端末20の周囲の環境に適した通話パラメータを選択することができ、通話品質の低下をより抑制することができる。
また、本実施形態では、通話装置10が備える記憶部16に、複数の通話パラメータが格納されているが、変形例として、相手端末20が備える記憶部26に、複数の通話パラメータが格納された構成であってもよい。このような構成の場合、図6に示すように、通話装置10は、相手端末20の記憶部26に格納された複数の通話パラメータの中から選択部155が選択した通話パラメータを取得するパラメータ取得部157をさらに備えることが好ましい。選択部155は、相手端末20の記憶部26に格納された複数の通話パラメータを参照し、この複数の通話パラメータの中から相手端末20の環境に適した通話パラメータを選択する。そして、パラメータ取得部157は、選択部155が選択した通話パラメータを相手端末20に要求して取得し、この取得した通話パラメータが通話部13に適用される。このような構成によって、通話装置10は、相手端末20の周囲の環境に適した通話パラメータを保持していない場合であっても、相手端末20から取得して通話部13に適用することができる。なお、上記例では、パラメータ取得部157は、選択部155が選択した通話パラメータのみを相手端末20から取得するように構成されているが、相手端末20が保持しているすべての通話パラメータを取得して記憶部16に予め格納しておいてもよい。そして、選択部155は、相手端末20の周囲の環境に適した通話パラメータを、相手端末20から取得した通話パラメータと、元から記憶部16に格納されていた通話パラメータとを合わせた複数の通話パラメータの中から選択する。
また、通話装置10が、電気通信回線(例えばインターネット回線)を介して外部のサーバと通信可能に構成される場合、パラメータ取得部157は、この外部のサーバから選択部155が選択した通話パラメータを取得するように構成されていてもよい。このような構成によって、より多くの通話パラメータの中から、相手端末20の環境により適した通話パラメータを選択することができ、通話品質の低下をより抑制することができる。さらに、通話装置10が備える記憶部16に格納する通話パラメータの情報量を削減することができ、記憶部16に低容量のメモリを用いることができる。
また、本実施形態では、相手端末20の周囲の環境に適した通話パラメータを選択するように構成されているが、変形例として、相手端末20と自装置(通話装置10)との両方の環境に適した通話パラメータを選択するように構成されていてもよい。このような構成の場合、図7に示すように、通話装置10の環境取得部154は、第1取得部158と第2取得部159とを有することが好ましい。第1取得部158は、相手端末20の周囲の環境を表す環境情報である第1環境情報を取得する。第2取得部159は、自装置(通話装置10)の周囲の環境を表す第2環境情報を取得する。そして、選択部155は、第1環境情報および第2環境情報の両方に基づいて、複数の通話パラメータの中から通話部13に適用する通話パラメータを選択する。
本変形例における推定部151は、相手端末20のスピーカ232から出力されてマイク231に回り込む回り込み音に基づいて相手端末20の周囲の環境を推定する。さらに、推定部151は、通話装置10のスピーカ132から出力されてマイク131に回り込む回り込み音に基づいて通話装置10の周囲の環境を推定する。すなわち、推定部151は、相手端末20の周囲の環境と、通話装置10の周囲の環境を推定する推定処理を行う。なお、推定部151による通話装置10の周囲の環境を推定する推定処理は、上述した相手端末20の周囲の環境を推定する推定処理と同様の処理であるので説明を省略する。
そして、第1取得部158は、推定部151によって推定された相手端末20の周囲の環境を表す第1環境情報を取得し、第2取得部159は、推定部151によって推定された自装置(通話装置10)の周囲の環境を表す第2環境情報を取得する。選択部155は、第1取得部158が取得した第1環境情報と、第2取得部159が取得した第2環境情報との両方に基づいて通話パラメータを選択する。このような構成によって、相手端末20の周囲の環境と自装置(通話装置10)の周囲の環境との両環境に適した通話パラメータが選択されるので、通話品質の低下をより抑制することができる。
また、本実施形態では、環境取得部154は、相手端末20の周囲の環境を推定する推定部151から環境情報を取得するように構成されているが、変形例としてユーザが入力した環境情報を取得するように構成されていてもよい。このように構成する場合、通話装置10は、相手端末20の周囲の環境を表す環境情報を入力するための操作を受け付ける操作部12を備え、環境取得部154は、操作部12が操作されることで入力された環境情報を取得することが望ましい。上記構成により、ユーザが操作部12を用いて、通話装置10に相手端末20の周囲の環境を表す環境情報を入力することができるので、通話装置10の構成を簡略化することができる。また、操作部12を用いた環境情報の入力方法として以下の例がある。操作部12は、相手端末20の周囲における音響特性、音響結合利得、回り込み音の大きさ、騒音の大きさなどの項目ごとに例えばdB表記の数値、あるいは現在の値に対して所定値を増加または減少させる入力が可能に構成される。または、操作部12は、相手端末20の周囲の環境を表す環境情報の項目(例えば相手端末20の設置場所が屋内であるか屋外であるか、相手端末20の設置方法が埋込設置であるか露出設置であるかなど)が選択式に入力可能に構成される。このように操作部12が環境情報の項目を選択式に入力可能に構成されることによって、ユーザは予め設定された選択項目を選択するのみで環境情報を入力することができるので、環境情報の入力操作を簡易化することができる。
また、上述した例では、専用の装置であるインターホン親機が通話装置10として構成されているが、この形態に限定せず、コンピュータを上述した通話装置10として機能させるためのプログラムを用いて実現される形態であってもよい。例えば、スマートフォンやタブレット端末などのコンピュータに、上述した通話装置10の機能を実現させるためのアプリケーションプログラム(いわゆるアプリ)をインストールする。これにより、スマートフォンやタブレット端末などのコンピュータを、通話装置10として機能させることができ、相手端末20の周囲の環境による通話品質の低下を抑制することができる。なお、プログラムは、ROM(Read Only Memory)に格納された状態、コンピュータで読取可能な記録媒体に格納された状態などで提供、あるいはインターネットのような電気通信回線を介して提供される。
なお、上述した実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることはもちろんのことである。