JP2016111362A - 電磁波シールド性高分子複合材料及び電磁波シールド材の製造方法 - Google Patents

電磁波シールド性高分子複合材料及び電磁波シールド材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】形成される電磁波シールド材の機械的強度が向上するとともに、電磁波シールド性能が維持され、あるいは向上する電磁波シールド性高分子複合材料及び電磁波シールド材の製造方法を提供する。【解決手段】電磁波シールド性高分子複合材料は、(A)熱可塑性を有する樹脂20〜70質量%、(B)グラファイト化合物15〜60 質量%及び( C )熱重量測定の微分曲線において180〜300℃の温度範囲に実質的にピークを有さない竹粉末15〜60 質量%を主成分として有する。電磁波シールド材は、電磁波シールド性高分子複合材料を溶融成形法により成形することにより得る。【選択図】なし

Description

本発明は、家電・OA機器類、携帯端末、電気配線部材及び自動車部品等に用いられる電磁波シールド性高分子複合材料及び電磁波シールド材の製造方法に関する。
家電・OA機器類、通信関連機器(携帯端末)、電気配線部材及び自動車部品等に要求されてきているのが電磁波シールド性である。電気電子機器は、内部に電子部品を有するために電磁波を発生する。ここで発生する電磁波を機器の外部に漏らさないために、また、外部からの電磁波により誤作動を起こさないために、機器及び部品の筐体が電磁波シールド性を有することが不可欠であり、金属製の筐体やカバー、メッシュ等を用いることで対応している。
近年、通信関連機器、とりわけ携帯端末には、筐体や部品の軽量薄肉化が求められ、また、機器の構造が複雑化している。このため、通信関連機器の作製には、これらの要求を好適に満たすことができる、高分子材料を用いた溶融成形法が採用されている。
しかし、通常、高分子材料はそれ自体が絶縁体であり、電磁波シールド性は全くない。
したがって、電磁波シールド性を付与するために、高分子成形筐体にメッキを施し、あるいは金属の蒸着を行い、又は導電性物質を配合することが行われている。配合する導電性物質は、カーボンブラック、炭素繊維及び金属繊維等多種に及ぶ。導電性物質を配合した高分子材料から電磁波シールド材を成形する方法は、製造プロセスの効率性を考慮して、溶融成形法が選択される。
例えば、各種の有機高分子からなる絶縁性マトリックス中に、結晶質のグラファイトと非晶質のカーボンブラックから成る複合カーボンブラック粒子を分散させた電波吸収体の電気抵抗率を特定する技術や電磁波遮蔽性に関する技術が開示されている(特許文献1、2参照)。また、軟磁性金属の粉末をアクリルゴムのマトリクス中に分散させた電磁波吸収体も開示されている(特許文献3参照)。
ここで、絶縁性マトリックスにおいて、高分子材料の特性である溶融成形性や柔軟性、破壊靭性などの機械的物性は不可欠の要求物性である。
しかし、グラファイトやカーボンブラック、及び金属粉末などを多量に添加すると、絶縁性マトリックスの上記のような特性を低下させてしまうことが問題となる。例えば、グラファイトは、高い電気伝導性を有するため工業材料として広く利用されているが、結晶構造が層状であるために伝導性や機械的強度に異方性があり、特に結晶層間に対して垂直方向の強度は、結晶層方向の数百分の一しかなく、手で引き剥がすことができるほど弱い。また、金属粉末の場合、高分子複合体の溶融成形時において、成形機のシリンダー内表面やスクリュー表面を摩耗させてしまう点が問題となる。
金属粉末を用いる場合に生じる上記の問題を避けるべく、金属以外の導電性物質を用いることも検討されている。
例えば、粉末状の竹炭を含む非導電性材料を可撓性のシート材料に含浸させた非導電性可撓シートと、粉末状の竹炭を含む導電性材料をシート材に含浸させた導電性ボードを交互に積層した電磁波吸収シートが開示されている(特許文献4参照)。この電磁波吸収シートは、竹炭が電磁波遮断について特に優れた性能を発揮でき、他の炭に比べて軽量であるという利点を有するとされている。
ところで、帯電防止技術についてのものであるが、本発明者らは、例えば、竹粉末からなる高分子複合材料用帯電防止剤及びこれを高分子材料に配合した高分子複合材料等を先に開示している(例えば特許文献5参照)。
特開平11−8489号公報 特開2006−147955号公報 特開2001−308583号公報 特開2006−080502号公報 特開2013−127031号公報
解決しようとする問題点は、電磁波シールド性高分子複合材料において、絶縁性マトリックスに配合される導電性物質が、電磁シールド機能の向上を図ることができても絶縁性マトリックスの機能の維持強化には寄与することがなく、あるいは機能の低下を招く点である。
また、解決しようとする他の問題点は、電磁波シールド材を溶融成形法で成形するときに、絶縁性マトリックスに配合される導電性物質が、溶融成形性や柔軟性、破壊靭性などの機械的物性を損なうおそれがある点である(例えば、特許文献2)。
本発明に係る電磁波シールド性高分子複合材料は、(A)熱可塑性を有する樹脂20〜70質量%、(B)グラファイト化合物15〜60 質量%及び( C )熱重量測定の微分曲線において180〜300℃の温度範囲に実質的にピークを有さない竹粉末15〜60 質量%を主成分として有する。
なお、ここで、(C)竹粉末を20〜60質量%、好ましくは20〜50質量%、更に好ましくは20〜40質量%とすることもできる。この場合、(A)熱可塑性を有する樹脂は20〜65質量%となる。以下の説明においても同じ。
また、本発明に係る電磁波シールド性高分子複合材料は、好ましくは、前記竹粉末の少なくとも30質量%が長軸径250〜1000μmの範囲内にあることを特徴とする。
また、本発明に係る電磁波シールド性高分子複合材料は、好ましくは、前記竹粉末の250メッシュ篩通過分が5質量%以下であることを特徴とする。
更に、他の発明に係る電磁波シールド性高分子複合材料は、(A)熱可塑性を有する樹脂20〜70質量%、(B)グラファイト化合物15〜60 質量%及び( C )熱重量測定の微分曲線において180〜300℃の温度範囲に実質的にピークを有さない竹粉末15〜60 質量%を主成分として有する高分子複合材料に対して、(D)導電性高分子を0.5〜10質量%を添加してなる。
また、本発明に係る電磁波シールド材の製造方法は、上記の電磁波シールド性高分子複合材料を溶融成形法により成形することを特徴とする。
本発明に係る電磁波シールド性高分子複合材料は、(A)熱可塑性を有する樹脂20〜70質量%、(B)グラファイト化合物15〜60 質量%及び( C )熱重量測定の微分曲線において180〜300℃の温度範囲に実質的にピークを有さない竹粉末15〜60 質量%を主成分として有するため、この材料で形成される電磁波シールド材の機械的強度が向上するとともに、電磁波シールド性能が維持され、あるいは向上する。
また、本発明に係る電磁波シールド材の製造方法は、上記の電磁波シールド性高分子複合材料を溶融成形法により成形するため、絶縁性マトリックスに配合される導電性物質による溶融成形性や機械的物性の低下を引き起こすことなく電磁波シールド材の軽量薄肉化や複雑な構造部品の製造を実現することができる。
図1Aは、竹粉末の製造例1で製造した過熱水蒸気処理後の竹粉末の熱重量測定結果及びその微分曲線を示す図である。 図1Bは、図1Aと比較するためのものであり、過熱水蒸気処理をしていない竹粉末の熱重量測定結果及びその微分曲線を示す図である。 図2は、実施例1〜4及び比較例1〜3で製造した高分子複合材料の電磁波シールド機能を示す図である。 図3は、実施例4及び比較例1、2で製造した高分子複合材料の機械的強度物性を示す図である。 図4は、実施例5〜7及び比較例1、2で製造した高分子複合材料の電磁波シールド機能を示す図である。 図5は、実施例8、9及び比較例3、4、5で製造した高分子複合材料の電磁波シールド機能を示す図である。 図6は、実施例10及び比較例6で製造した高分子複合材料の電磁波シールド機能を示す図である。 図7は、実施例8、9で製造した高分子複合材料の高波数領域での電磁波シールド機能を示す図である。
本発明の実施の形態(以下、本実施の形態例という。)について、以下に説明する。
本実施の形態例に係る電磁波シールド性高分子複合材料は、(A)熱可塑性を有する樹脂20〜70質量%、(B)グラファイト化合物15〜60 質量%及び( C )熱重量測定の微分曲線において180〜300℃の温度範囲に実質的にピークを有さない竹粉末15〜60 質量%を主成分として有する。
熱可塑性樹脂は、グラファイト化合物及び竹粉末と複合化が可能なものあれば何ら制限無く用いることが可能である。
好適に用いられる熱可塑性樹脂を例示すると、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン類;ポリスチレンやアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン(MBS)樹脂などのスチレン系樹脂類;ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)などの芳香族ポリエステル類;ポリ乳酸やポリカプロラクトン、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)、ポリテトラメチルグリコリド、ポリグリコール酸などの脂肪族ポリエステル類等を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂の中でも、成形性の容易さから、ポリオレフィン類が特に好適である。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよく、あるいは2種以上を用いてもよい。
熱可塑性である熱硬化性樹脂のプレポリマーとしては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シラン架橋ポリエチレン、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン、架橋ゴムなどのプレポリマーを用いることができる。これらのプレポリマーの中でも、竹粉末との複合化の容易さの観点からは、エポキシ樹脂、ポリウレタン、不飽和ポリエステル樹脂などのプレポリマーが好適である。
グラファイト化合物は、グラファイト構造を含有する化合物であれば、何ら制限なく用いることができる。ここで、グラファイト構造を有するというのは、X線回折図形において、2θ=25.5〜26.5°の範囲に(002)面の回折ピークが確認されるものをいう。得られた回折図における(002)面に対応するピーク面積より結晶質のグラファイトの存在比率(グラファイト化率)を算出することができる。
グラファイト構造を含有する化合物として、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンピコチュープ、カーボンブラック、木炭、竹炭、及びアブラヤシや稲、麦、エリアンサス、サトウキビなどの農林産物由来のバイオマスを高温で燃焼して得られるグラファイト構造を含有する炭などが好適に用いられる。これらのグラファイト化合物の中でも、導電性や入手の容易さから、グラファイト及びグラファイト構造を含有する木炭や竹炭がより好ましく、汎用の溶融成形への適用性から、そのサイズが250μm以下の成分を80重量%以上含有するグラファイト及びグラファイト構造を含有する木炭や竹炭がさらに好ましく用いられる。
竹粉末は、竹を粉砕することにより得られる。
竹は、広義には、イネ目イネ科タケ亜科のうち、木本のように茎が木質化する種の総称である。日本に生育する竹は600種あるといわれており、そのうちの代表的なものとして、マダケ、モウソウチク(孟宗竹)、ハチク等が挙げられる。本実施の形態において用いる竹の種類を限定するものではない。また、本実施の形態において、竹とは幹、枝、葉、及び根からなる総体的なものを意味するが、とりわけ、セルロース繊維成分が豊富な維管束鞘を大量に含む幹部が好適である。
竹は、その主要な構成成分として、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンからなる。ヘミセルロースはセルロースとリグニン、あるいはセルロース同士を結合させる接着剤の役割を担っている。
熱重量測定の微分曲線において180〜300℃の温度範囲に実質的にピークを有さない竹粉末は、この温度範囲で分解するヘミセルロース成分を分解除去した竹粉末であることを意味する。
竹粉末を用いることにより、本実施の形態例に係る電磁波シールド性高分子複合材料を用いて形成される電磁波シールド材の機械的強度が向上するだけではなく、さらに、電磁波シールド性能が向上する。竹粉末の添加により、高分子材料の剛性が向上することは既に知られており、とりわけ、竹繊維による強度向上は顕著である。しかしながら、本来、電磁波シールド機能を全く示さない竹粉末が、グラファイト化合物と共存することにより、高分子複合材料全体の電磁波シールド機能を著しく向上させることは、これまで全く知られていない効果である。
竹粉末は、溶融成形性の観点から、少なくとも90質量%、より好ましくは95質量%以上が60メッシュ(目開き250μm)の篩を通過する成分であることが好ましい。また、250メッシュ(目開き63μm)の篩を通過する成分の竹粉末の含有量が5質量%以下であると、電磁波シールド材としたときの電磁波シールド効果がより向上するため、好ましい。
また、竹粉末は、長軸径が250〜1000μmの範囲にあるものを30質量%以上、好ましくは50質量%以上含有することが好ましい。
ここで長軸径とは、竹粉末粒子の最大径、即ち、粒の外側輪郭線上の任意の2点を、その間の長さが最大になるように選んだ時の長さをいい、繊維状粒子の場合、長軸方向の長さ、すなわち繊維長をいう。長軸径が所定の範囲内にある粉末の質量比率は、倍率を調整可能な顕微鏡観察で得られた1cm×1cm画像中の粉末粒子について直接測定し、繊維長と質量が実質的に比例関係にあることに基づいて、繊維長の累積頻度%を測定して、これを質量%と置き換える方法により得る。
なお、長軸径が所定の範囲内にある粉末の質量比率の概略値は、篩い分け法により簡便に得ることもできる。
竹粉末が上記の長軸径範囲にあることにより、竹粉末と熱可塑性樹脂及びグラファイト化合物とをブレンドし、溶融成形しても、成形機内のスクリーンや、ダイスの出口、金型のスプルーやランナーなどの狭窄部で閉塞を起こさず、かつ十分な電磁波シールド機能と機械的強度の向上を発現する。
また、竹粉末は、水分含有量が5質量%以下であることが好ましい。これにより、電磁波シールド材を溶融成形法により形成する前に過剰の水分を取り去るのに必要なエネルギーと時間が著しく低減され、熱可塑性樹脂及びグラファイト化合物との複合体の溶融成形を容易に行うことができる。
また、竹粉末は、平均アスペクト比が5〜100の範囲にあることが好ましく、10〜80の範囲であることがより好ましい。
ここでアスペクト比は、長軸径/短軸径の比として表わされる。短軸径とは、竹粉末粒子の最小径、即ち、粒の外側輪郭線上の任意の2点を、その間の長さが最小になるように選んだ時の長さをいい、繊維状粒子の場合、繊維の太さ、すなわち繊維径をいう。なお、長軸径/短軸径の比は、繊維長/繊維径の比といってもよい。アスペクト比が大きいということは、より細長い繊維状の形態であることを意味している。
平均アスペクト比が所定の範囲内にある粉末の質量比率は、上記した長軸径が所定の範囲内にある粉末の質量比率の測定方法に準じて測定する。
一般に、竹中の維管束鞘に多く含まれるセルロース成分は繊維状の形態をとる。そのため、長軸径の大きいバイオマス粉末は、セルロース由来の繊維状成分をより多く含んでおり、アスペクト比が大きい。アスペクト比が大きいバイオマス粉末である竹粉末は、熱可塑性樹脂及びグラファイトとともに溶融成形された際に、強化繊維としての機能を発現し、形成される電磁波シールド材の機械的強度を向上させることができる。
このとき、竹粉末の平均アスペクト比が100を超えると、熱可塑性樹脂とグラファイト化合物との溶融成形の際に、その溶融流動性を阻害するおそれがある。また、平均アスペクト比が5未満の場合、得られる成形体の繊維強化の発現が十分でないばかりでなく、電磁波シールド性能も高くならないおそれがある。
竹粉末は、平均アスペクト比が5〜100の範囲にあることにより、竹粉末の繊維同士間や繊維とグラファイト間での接触が起こりやすくなることで、伝導パスが形成されやすくなり、帯電防止性能を向上させることもできる。
本実施の形態例に係る電磁波シールド性高分子複合材料は、(A)熱可塑性を有する樹脂20〜70質量%、(B)グラファイト化合物15〜60 質量%及び( C )竹粉末15〜60 質量%を主成分として有する。
熱可塑性を有する樹脂が20質量%未満では、電磁波シールド材を形成するときの溶融成形性が不十分となるおそれがあり、70質量%を超える範囲では、電磁波シールド材の電磁波シールド機能が十分に発現しないおそれがある。グラファイト化合物が15質量%未満では、電磁波シールド材の電磁波シールド効果が十分でなくなるおそれがあり、60質量%を超える範囲では、電磁波シールド材の機械的な物性が損なわれるおそれがある。
竹粉末が15質量%未満では電磁波シールド材の電磁波シールド性能の向上効果も機械的強度の向上効果も有意に発現しないおそれがあり、60質量%を超える割合では、電磁波シールド材の成形性の低下をまねくおそれがある。
本実施の形態例に係る電磁波シールド性高分子複合材料は、(A)熱可塑性を有する樹脂20〜70質量%、(B)グラファイト化合物15〜60 質量%及び( C )竹粉末15〜60 質量%を主成分として有する高分子複合材料に対して、さらに(D)導電性高分子0.5〜10質量%を添加することにより、さらに好ましい電磁波シールド性能を発揮することができる。
導電性高分子とは、その分子内に、二重結合が存在することにより、共役系が発達し、電子が可動状態にある高分子である。このような導電性高分子は、竹粉末やグラファイト化合物の表面及び界面に存在することにより、相互に電子が移動することを補助する。
本発明において、導電性高分子としては、公知の導電性高分子が何ら制限なく用いられるが、竹粉末やグラファイト化合物表面との親和性が高いものがより好ましく用いられる。好適に用いられる導電性高分子としては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンであり、ポリピロールが特に好適に用いられる。
導電性高分子(例えば、ポリピロール)が、(A)熱可塑性を有する樹脂20〜70質量%、(B)グラファイト化合物15〜60 質量%及び( C )竹粉末15〜60 質量%を主成分として有する高分子複合材料に対して、0.5質量%未満である場合、電磁波シールド効果の促進効果はあまり認められず、10質量%を超える範囲では、高分子複合材料の機械的物性などに好ましくない影響を与える場合がある。
本実施の形態例に係る電磁波シールド性高分子複合材料は、上記の主成分とともに、必要に応じて、適宜の添加剤を配合することができる。
添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、成形加工助剤、相溶化剤、着色剤、顔料、耐衝撃改良剤、無期充填剤等が挙げられる。特に、無水マレイン化ポリエチレンや無水マレイン化ポリプロピレンのような相溶化剤の添加は、本実施の形態例に係る電磁波シールド性高分子複合材料の機械的性質を向上させることができるため、好適に添加される。これらの添加剤は、本実施の形態例に係る電磁波シールド性高分子複合材料の電磁波シールド特性を阻害しない範囲で、それぞれ、一般公知の方法に従って添加することができる。
既に説明したように、本実施の形態例における竹粉末は、高分子-グラファイト複合材料の電磁波シールド性能をより向上させる働きを持つ。これは、従来、知られていない効果である。このため、熱可塑性樹脂及びグラファイトとコンポジット化することにより、熱可塑性樹脂及びグラファイト複合材料の場合には避けられない機械的強度の低減を抑制する効果を有し、及び電磁波シールド性能を維持しつつグラファイトの添加量を低減することで、高分子複合材料の機械的強度を保持することができる。
ここで、電磁波シールド性能の評価方法について説明する。電磁波シールド性能の評価方法は、電磁波の減衰能を評価できる方法であれば、いかなる方法も適用可能である。好適に用いられる方法としては、ASTM D4935に準拠して、シールド効果を平面波で精度良く測定する同軸管タイプの電磁波シールド効果測定法や、上下又は左右対称に分割したシールドボックスに試験片を挟み込んで、スペクトラムアナライザーにて電磁波の減衰度として電磁波シールド性を測定するKEC法、さらに自由空間測定法などが適用される。
電磁波シールド性能は、dB(デシベル)を使って表現される。電磁波がどの程度減衰したかを相対的に表現する数字で、シールド前の電界強度とシールド後の電界強度の比(減衰量)を対数で表現したものである。すなわち、下記の式で現される。
シールド性能 (dB)=20×log(シールド後の電界強度/シールド前の電界強度)
例えば、シールドによって電磁波が1/3.16になった場合−10dB(シールド率:68%)、1/10になった場合−20dB(シールド率:90%)である。電磁波吸収体の電磁波吸収損失は大きいほどよいが、10dB以上、好ましくは15dB(シールド率:82%)以上であれば、十分に実用的な効果を認める事ができる。
吸収電磁波の特定周波数は、当該電磁波シールド性複合材料の使用目的、用途により適宜決められるが、一般には、特定周波数は100MHz〜3GHzの範囲内で選択することができる。
電磁波吸収体の厚さは、実用性、取扱性の点で厚さが0.5〜5mm、好ましくは1〜2mmとするのがよい。
以上説明した本実施の形態例に係る電磁波シールド性高分子複合材料を得るのに好適な、電磁波シールド性高分子複合材料の製造方法について説明する。
熱可塑性を有する樹脂及びグラファイト化合物は、周知の方法で得ることができ、あるいは市販品を使用することができる。
竹粉末は、竹を170〜250℃の加熱水蒸気を用いて加熱処理した後、目的の短/長軸径分布になるまで粉砕することによって得られる。
加熱水蒸気を用いた加熱処理とは、170〜250℃に加熱された水蒸気を竹に接触させることである。加熱水蒸気の温度が170℃未満では、竹の水蒸気処理効果が小さく、処理に長時間を要する。さらに、後段で述べるように170℃は逆転移温度であるため、その温度以上では乾燥処理も同時に実施可能である。一方、250℃を超える温度では、竹の分解が必要以上に進行しやすく、セルロース成分の炭化が起こりやすくなってしまい、コンポジットの強度への寄与が低下してしまうので好ましくない。加熱水蒸気処理温度としては、最大でも300℃、より好ましくは190〜240℃、さらに好ましくは、200〜230℃の範囲である。
ここで、170〜250℃に加熱された水蒸気とは、飽和圧力から常圧の範囲にある水蒸気である。このような加熱水蒸気として、加圧飽和水蒸気と常圧過熱水蒸気とがある。
常圧過熱水蒸気とは、定容積状態で加熱して得られる加圧飽和水蒸気と異なり、膨張できる状態で100℃の水蒸気をさらに加熱して得られる、標準気圧下で100℃以上の水蒸気をいう。
加熱処理後の竹由来のバイオマスは、易分解性のヘミセルロース成分が優先的に分解され、部分的に揮発・除去されているため、セルロース繊維とリグニン構造間の接着組織を解かれたバイオマス組織は、容易に粉砕することができる。また、加熱処理後の竹由来のバイオマスは、水分含有量が5%以下となる。
破砕及び粉砕は、適宜、一般公知の破砕・粉砕装置を用いて行うことができる。また、このとき、粗粉砕後に微粉砕を行う2段粉砕処理を行ってもよい。好適に用いられる破砕・粉砕装置を例示すれば、例えば、ハンマーミル、カッターミル、ピンミル、クラッシャーミル、ボールミル、ロッドミル、バーミル、ディスクミル、ブレードミル、振動ミル、及びこれらの方法を2種以上組み合わせた複合粉砕方法である。
粉砕された竹粉末は、そのままでも使用できるが、より高度な電磁波シールド向上作用を発現させるために、分級操作によって、粒度分布を制御することも好適に行われる。分級操作に用いる方法としては、一般公知の分級方法が何ら制限なく使用できる。好適に用いられる分級方法を例示すれば、例えば、篩分級、気流式分級、渦遠心式分級、静電分離型分級などであり、これらに超音波や縦及び横振動などの負荷を様々に組み合わせた分級方法がある。具体的には、振動篩装置、サイクロン、風力分級装置、及び回転ドラム型静電分離装置などが好適な分級装置である。これらの装置を用いて、竹粉末を得ることができる。
つぎに、本実施の形態例に係る電磁波シールド材の製造方法について説明する。
本実施の形態例に係る電磁波シールド材の製造方法は、本実施の形態例に係る電磁波シールド性高分子複合材料を溶融成形法により成形する。
溶融成形法は、周知の適宜の方法を用いることができる。
例えば、熱可塑性樹脂を熱溶融させて、グラファイト化合物と竹粉末にせん断応力をかけながら練り込む溶融混練法、熱可塑性樹脂を溶剤に溶解し、グラファイト化合物と竹粉末を加えて分散させた後に、溶剤を気化除去する溶液混合法、熱したロール上で熱可塑性樹脂を柔らかくし、その上にグラファイト化合物と竹粉末を添加し、熱ロールによって圧着しながら練り込むカレンダー成形法などがある。これらの方法の中でも、効率性と汎用性の点で溶融混練法が最も好適である。
溶融混練法としては、具体的には、射出成形機を用いた射出成形法、押出成形機を用いた押出成形法、ブロー成形機を用いたブロー成形法等があり、さらに押出成形法によって作製したシート状の成形体を原料に、真空成形機を用いた真空成形法や圧縮成形機を用いた圧縮成形法による深絞り成形が好適に用いられる。これらの成形法の中でも、汎用性と拡張性等の点から、射出成形法と押出成形法がより好適に用いられる。
射出成形とは、加熱溶融させた高分子材料を金型キャビティー内に射出注入し、冷却・固化させる事によって、成形品を得る方法であり、スプルー及びランナーと呼ばれる部分を通って、成形体の金型キャビティー内に溶融したグラファイト化合物及び竹粉末含有樹脂溶融物が充填される。ここで、グラファイト化合物及び竹粉末は溶融しないので、高い溶融流動性を必要とする複雑で大型の形状の部材の射出成形を実施する際には、流動性に優れた熱可塑性樹脂が選択される。
押出成形とは、加熱されたシリンダーの中でスクリューの回転に伴うせん断応力と発熱により溶融・混合した材料をダイスの押出口から一定速度で押し出しながら冷却固化させる成形法である。射出成形のような高い流動性は必要としないので、押出口から押し出された後、変形しないような粘性の高い高分子量の熱可塑性樹脂が選択される。さらに、押出成形においては、スクリューによる混練が効果的に行われる。スクリューの形状及び回転方向は様々にあり、用途目的に応じて選択可能である。グラファイト及び竹粉末コンボジットの製造においては、より混練度を高めるために、二軸同方向回転スクリューによる混練がより好適な方法である。
例えば、射出成形機を用いて成形する場合、高い溶融流動性が要求され、また、金型内に充填する前にスクリーンを通してサイズの大きい不融物を濾取するため、グラファイト化合物のサイズや竹粉末の長軸径が比較的小さい方に多く分布している方が成形性には有効である。一方、押出成形機を用いて成形する場合、長い繊維状の竹粉末成分は、溶融した熱可塑性樹脂の中で配向して流動する。そのため、結果として配向した繊維状の竹粉末を含む成形体が得られ、繊維強化による機械的物性の向上が発現しやすい。
上記した熱可塑性樹脂の溶融流動性は、高分子複合材料からなる溶融成形体を得るうえで、重要であり、熱可塑性樹脂のメルトフローレートが1〜60g/10分の範囲であることが好ましい態様である。メルトフローレートが1g/10分未満では粘性が高すぎ、複雑な成形が困難となる恐れがあり、60g/10分を超える範囲で、溶融粘性が低すぎて、得られた高分子複合材料からなる成形体の冷却固化速度が十分でなくなる場合がある。
以上説明した本実施の形態例に係る電磁波シールド材の製造方法により、溶融成形性、機械的性質、及び電磁波シールド性能に優れ、また、軽量薄肉化や複雑な構造部品の製造を実現することができる電磁波シールド材を効率的に得ることができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明の範囲を制限するものではない。
(竹粉末の製造例1)
孟宗竹を以下の仕様の直本工業社製過熱水蒸気処理装置に入れ、210℃で3時間(2〜4時間)、過熱水蒸気処理を行った。処理した孟宗竹を取り出し、下記の粗粉砕装置を用いて一次破砕した後、微粉砕装置を用いて7000rpmで粉砕を行った。ここで作製された竹粉末の水分含有量は、下記の水分測定装置を用いて評価した結果、3.9%であった。この粉砕物を60メッシュ(目開き250μm)の篩を用いて、下記の篩装置で篩分けした結果、篩パス分が98.5%の回収率で得られた。さらに、140メッシュ(目開き106μm)と250メッシュ(目開き63μm)の篩を用いて分級処理することによって250〜140メッシュ間成分の竹粉末を作製した。
竹粉末の熱重量測定結果及びその微分曲線を図1Aに示す。また、比較として、過熱水蒸気処理していない竹粉末の熱重量測定結果及びその微分曲線も図1Bに示す。
過熱水蒸気処理装置の仕様:
蒸気発生部: ヒーター容量 6.3kW
換算蒸発量 9.45kg/h
最高使用圧力 0.11MPa
処理槽: ヒーター容量 8kW
庫内寸法 W590xD385xH555 mm
粉砕装置の仕様:
粗破砕 : 株式会社フジテックス製木材粉砕機
微粉砕 : 奈良機械製作所製 自由粉砕機M-2型
水分測定装置の仕様: 島津製作所製水分計MOC-120H
篩装置の仕様: レッチェ社、ふるい振とう機AS200ベーシック
<竹粉末の長軸径分布及び平均アスペクト比の測定>
長軸径の測定及び平均アスペクト比の測定を、下記の光学顕微鏡を用いて行った。光学顕微鏡の倍率は、竹粉末の長軸径のサイズに合わせて変化させた。
光学顕微鏡: キーエンス社製VH-5000型
表1に、光学顕微鏡観察により得られた竹粉末の長軸径分布測定結果を示す。これらの結果から、長軸径範囲が250〜1000μmの成分は57質量%であった。さらに、その平均アスペクト比は9.4であった。
(高分子複合材料の製造実施例1〜4、比較例1〜3)
製造例1で得られた竹粉末(250〜140メッシュ間成分、アスペクト比9.4)とグラファイト粉末(粒度45μm通過分:95質量%以上、含量:98.0質量%以上)、及びポリプロピレン(日本ポリプロピレン株式会社製ノバテックPP FY-6、メルトフローレート2.5g/10分)を、表2に示した割合で混合し、これを井本製作所製ベント付2軸混練押出機160B型(同方向回転2軸フルフライトスクリュー、スクリュー直径:15mm、L/D:25、ベント口数:1)を用いて溶融混練し、ストランド状の高分子複合材料を作製した。溶融混練条件は、ホッパー下温度100℃、バレル上流側温度190℃、バレル下流側温度190℃、出口ダイス温度190℃、スクリュー回転数20rpm、スクリュー内滞留時間 約5〜7分で溶融成形し、ストランド状に押出した。
尚、比較として、ポリプロピレン(PP)のみ(比較例1)、PPにグラファイト40%添加したもの(比較例2)、竹粉末のみをPPに50%添加したもの(比較例3)を同様の方法で作製した。
押出機を用いて製造したストランド状の高分子複合材料は、ペレタイザーを用いて、ペレットにした後、井元製作所製熱プレス装置IMC-180Cを用いて、圧縮成形を行った。ペレット状の高分子複合材料を薄い鉄板で作った枠に入れ、ポリエチレンテレフタレートシートで挟み込み、さらに鉄板で挟み込み、熱プレス装置により圧縮成形を行った。成形条件は、溶融温度を190℃とし、プレス圧力10MPa、溶融時間3分、つづいて、プレス圧力40MPa、プレス時間7分で行った。熱プレス後、冷却を行い、圧縮成形体を型枠より取り出し10cm四方で厚さ約0.5〜1.1mmのシート状成形体サンプルを得た(表2)。
電磁シールド特性の評価は、上記のシート状成形体サンプルから、直径49mmに切り出して、ネットワークアナライザー(アンリツ社製、MS2027C VNA Master)とシールド効果測定キット(キーコム株式会社製45MHz−3GHz、S-39)を使用して行った。得られた結果は、厚さ1mmに規格化して、図2に示した。
図2の結果より、比較例2のグラファイトが40質量%存在するだけで、約−10dB/mm(電磁波遮蔽倍率3.16倍、遮蔽率68.38%)の電磁波シールド効果が確認された。さらに、グラファイト40質量%存在下に、PP:竹粉末の質量%比を45:15〜30:30の範囲で変化させた場合、実施例1の竹粉末15質量%添加の時は、電磁波シールド効果がグラファイト40%存在下の比較例2と同程度に止まるものの、実施例2〜4の20質量%以上の添加では、添加量と共に、電磁波シールド機能が向上し、実施例4の竹粉末30%質量添加で、−28dB/mm(電磁波遮蔽倍率25.12倍、遮蔽率96.02%)まで達することが確認された。電磁波シールド効果はシートの厚みに比例するため、この値は、シート状成形体を1.1mmの厚さとすることにより、−30dB(電磁波遮蔽倍率31.62倍、遮蔽率99.00%)以上の電磁波シールド効果を発現可能であることを示している。
また、比較例3は、グラファイトを配合することなく竹粉末のみをポリプロピレンに配合したものであるが、図2に示すように、電磁波シールド効果はほとんどない。先に説明したように、竹粉末を高分子材料に配合したものは帯電防止性を有するものの、電磁波シールド性能は、電場と磁場の反射や吸収によって発現するものであるため、単に帯電防止性能に優れた物質の配合では、電磁波シールド性は発現することが難しいことが分かる。
押出機を用いて製造したストランド状の高分子複合材料は、ペレタイザーを用いてペレットにした後、得られたペレットを井元製作所製のIMC-18D1型簡易射出成形機(成形温度210℃)を用いて短冊状試験片(長さ:20mm, 幅:5mm, 厚さ:2mm)とした。作製した試験片は、井元製作所製のIMC-18E0型引張圧縮試験機を用いて、JIS K 7171を参考とし曲げ試験(試験速度:5 mm/min)を行い、機械的強度物性として曲げ弾性率の測定を行った。
測定は5回行い、その平均値と標準偏差の値を図3に示した。
図3の結果から、PP(1.28±0.25GPa)にグラファイトを40%添加すると、高分子複合材料の曲げ弾性率が向上(3.65±0.48GPa)することが確認された。これに対し、さらに竹粉末の添加により、曲げ弾性率の著しい向上(7.70±0.41GPa)が図られた。
(竹粉末の製造例2)
製造例1に準じた方法で、竹の過熱水蒸気処理及び粉砕処理を行った。ここで作製された竹粉末の水分含有量は、製造例1で記載した水分測定装置を用いて評価した結果、3.8%であった。この粉砕物を60メッシュ(目開き250μm)、140メッシュ(目開き106μm)、及び250メッシュ(目開き63μm)の篩を用いて分級処理することによって250メッシュパス分(目開き63μmパス分)、250〜140メッシュ間成分(目開き63〜106μm間成分)、140〜60メッシュ間成分(目開き106〜250μm間成分)の竹粉末を作製した。
<竹粉末の長軸径分布及び平均アスペクト比の測定>
長軸径の測定及び平均アスペクト比の測定を、下記の光学顕微鏡を用いて行った。光学顕微鏡の倍率は、竹粉末の長軸径のサイズに合わせて変化させた。
光学顕微鏡: キーエンス社製VH-5000型
表3に、光学顕微鏡観察により得られた竹粉末の長軸径分布測定結果を示す。これらの結果から、長軸径範囲が250〜1000μmの成分は75〜88%の範囲であった。さらに、その平均アスペクト比は6.1〜16.9の範囲であった。
(高分子複合材料の製造実施例5〜7)
製造例2で得られた表3に示した竹粉末60〜140メッシュ間成分(目開き250〜106μm間成分)、140〜250メッシュ間成分(目開き106〜63μm間成分)、250メッシュパス分(目開き63μmパス分)の竹粉末とグラファイト粉末(粒度45μm通過分:95質量%以上、含量:98.0質量%以上)、及びポリプロピレン(日本ポリプロピレン株式会社製ノバテックPP FY-6、メルトフローレート2.5g/10分)を、表4に示した割合で混合し、これを井本製作所製ベント付2軸混練押出機160B型(同方向回転2軸フルフライトスクリュー、スクリュー直径:15mm、L/D:25、ベント口数:1)を用いて溶融混練し、ストランド状の高分子複合材料を作製した。溶融混練条件は、ホッパー下温度100℃、バレル上流側温度190℃、バレル下流側温度190℃、出口ダイス温度190℃、スクリュー回転数20rpm、スクリュー内滞留時間 約5〜7分で溶融成形し、ストランド状に押出した。
尚、比較として、製造例1で作製したポリプロピレン(PP)のみ(比較例1)、PPにグラファイト40%添加したもの(比較例2)を同様の方法で作製した。
押出機を用いて製造したストランド状の高分子複合材料は、ペレタイザーを用いて、ペレットにした後、井元製作所製熱プレス装置IMC-180Cを用いて、圧縮成形を行った。ペレット状の高分子複合材料を薄い鉄板で作った枠に入れ、ポリエチレンテレフタレートシートで挟み込み、さらに鉄板で挟み込み、熱プレス装置により圧縮成形を行った。成形条件は、溶融温度を190℃とし、プレス圧力10MPa、溶融時間3分、つづいて、プレス圧力40MPa、プレス時間7分で行った。熱プレス後、冷却を行い、圧縮成形体を型枠より取り出し10cm四方で厚さ約1.5〜1.6mmのシート状成形体サンプルを得た(表4)。
電磁シールド特性の評価は、上記のシート状成形体サンプルから、直径49mmに切り出して、ネットワークアナライザー(アンリツ社製、MS2027C VNA Master)とシールド効果測定キット(キーコム株式会社製45MHz−3GHz、S-39)を使用して行った。得られた結果は、厚さ1mmに規格化して、図4に示した。
図4の結果より、高分子複合材料の電磁波シールド機能における竹粉末の分級の効果が顕著に表れた。実施例7の60〜140メッシュ間成分(目開き250〜106μm間成分)がきわめて高い電磁波シールド促進効果を示し、実施例6の140〜250メッシュ間成分(目開き106〜63μm間成分)が、それに続き、実施例5の250メッシュパス分(目開き63μmパス分)は、比較例2と同等の電磁波シールド性を示すに止まった。
(高分子複合材料の製造実施例8、9)
製造例2で得られた表3に示した竹粉末60〜140メッシュ間成分(目開き250〜106μm間成分)の竹粉末とグラファイト粉末(粒度45μm通過分:95質量%以上、含量:98.0質量%以上)、ポリプロピレン(日本ポリプロピレン株式会社製ノバテックPP FY-6、メルトフローレート2.5g/10分)、及びポリピロール(SIGMA−ALDRICH製、ポリマー成分20質量%+カーボンブラック80質量%)を、表5に示した割合で混合し、これを井本製作所製ベント付2軸混練押出機160B型(同方向回転2軸フルフライトスクリュー、スクリュー直径:15mm、L/D:25、ベント口数:1)を用いて溶融混練し、ストランド状の高分子複合材料を作製した。溶融混練条件は、ホッパー下温度100℃、バレル上流側温度190℃、バレル下流側温度190℃、出口ダイス温度190℃、スクリュー回転数20rpm、スクリュー内滞留時間 約5〜7分で溶融成形し、ストランド状に押出した。ここで用いたポリピロールはポリマー含有率が20%であり、残りの80%はカーボンブラック(グラファイト化合物)である。また、実施例8で作成した試料は、実施例7で作成した試料の再現性の確認である。
尚、比較として、ポリプロピレン(PP)のみにポリピロール5質量%を添加したもの(比較例3)、ポリプロピレン(PP)70質量%に製造例2で得られた表3に示した竹粉末60〜140メッシュ間成分(目開き250〜106μm間成分)30質量%、及びポリピロール(PPy)5質量%を添加したもの(比較例4)、PP60質量%、グラファイト40質量%にさらにポリピロール5質量%を添加したもの(比較例5)を同様の方法で作製した。
押出機を用いて製造したストランド状の高分子複合材料は、ペレタイザーを用いて、ペレットにした後、井元製作所製熱プレス装置IMC-180Cを用いて、圧縮成形を行った。ペレット状の高分子複合材料を薄い鉄板で作った枠に入れ、ポリエチレンテレフタレートシートで挟み込み、さらに鉄板で挟み込み、熱プレス装置により圧縮成形を行った。成形条件は、溶融温度を190℃とし、プレス圧力10MPa、溶融時間3分、つづいて、プレス圧力40MPa、プレス時間7分で行った。熱プレス後、冷却を行い、圧縮成形体を型枠より取り出し10cm四方で厚さ約1〜1.1mmのシート状成形体サンプルを得た(表5)。
電磁シールド特性の評価は、上記のシート状成形体サンプルから、直径49mmに切り出して、ネットワークアナライザー(アンリツ社製、MS2027C VNA Master)とシールド効果測定キット(キーコム株式会社製45MHz−3GHz、S-39)を使用して行った。得られた結果は、厚さ1mmに規格化して、図5に示した。
図5の結果より、ポリプロピレン単体やポリプロピレンと竹の複合体にポリピロールを添加しても、電磁波シールドの向上はあまり見られなかった。表4及び図4のPP−Gにポリピロール5質量%添加した比較例5の電磁波シールド機能については、一定の向上(−10dB(電磁波遮蔽倍率3.16倍、遮蔽率68.38%)→−17dB(電磁波遮蔽倍率7.08倍、遮蔽率85.87%))が見られたものの、実施例8と実施例9の向上度合(−27dB(電磁波遮蔽倍率22.39倍、遮蔽率95.53%)→−42dB(電磁波遮蔽倍率125.89倍、遮蔽率99.21%))が著しく、高分子複合材料の電磁波シールド機能におけるグラファイトに竹粉末及び導電性ポリマーの共存による相乗効果が顕著に示された。
押出機を用いて製造したストランド状の高分子複合材料(実施例8及び9)は、ペレタイザーを用いてペレットにした後、得られたペレットを井元製作所製のIMC-18D1型簡易射出成形機(成形温度210℃)を用いて短冊状試験片(長さ:20mm, 幅:5mm, 厚さ:2mm)とした。作製した試験片は、井元製作所製のIMC-18E0型引張圧縮試験機を用いて、JIS K 7171を参考とし曲げ試験(試験速度:5 mm/min)を行い、機械的強度物性として引張強度及び引張弾性率の測定を行った。測定は5回行い、その平均値と標準偏差の値を求めた。
引張強度及び引張弾性率の結果から、PP-BP-Gr(実施例8)(引張強度13.9±0.8MPa、引張弾性率1.93±0.22GPa)にポリピロール5質量%を添加したPP-BP-Gr-PPy(実施例9)では、引張強度17.2±0.8MPa、引張弾性率2.25±0.06GPaと著しく向上することが確認された。このことから、ポリピロールの添加効果が機械的強度でも現れることが確認された。
(高分子複合材料の製造実施例10)
製造例2で得られた表3に示した竹粉末60〜140メッシュ間成分(目開き250〜106μm間成分)の竹粉末とグラファイト粉末(粒度45μm通過分:95質量%以上、含量:98.0質量%以上)、及びポリプロピレン(日本ポリプロピレン株式会社製ノバテックPP FY-6、メルトフローレート2.5g/10分)を、表6に示した割合で混合し、これを井本製作所製ベント付2軸混練押出機160B型(同方向回転2軸フルフライトスクリュー、スクリュー直径:15mm、L/D:25、ベント口数:1)を用いて溶融混練し、ストランド状の高分子複合材料を作製した。溶融混練条件は、ホッパー下温度100℃、バレル上流側温度190℃、バレル下流側温度190℃、出口ダイス温度190℃、スクリュー回転数20rpm、スクリュー内滞留時間 約5〜7分で溶融成形し、ストランド状に押出した。
尚、比較として、ポリプロピレン(PP)のみにグラファイト15質量%を添加したもの(比較例6)を同様の方法で作製した。
押出機を用いて製造したストランド状の高分子複合材料は、ペレタイザーを用いて、ペレットにした後、井元製作所製熱プレス装置IMC-180Cを用いて、圧縮成形を行った。ペレット状の高分子複合材料を薄い鉄板で作った枠に入れ、ポリエチレンテレフタレートシートで挟み込み、さらに鉄板で挟み込み、熱プレス装置により圧縮成形を行った。成形条件は、溶融温度を190℃とし、プレス圧力10MPa、溶融時間3分、つづいて、プレス圧力40MPa、プレス時間7分で行った。熱プレス後、冷却を行い、圧縮成形体を型枠より取り出し10cm四方で厚さ約1.0〜1.2mmのシート状成形体サンプルを得た(表6)。
電磁シールド特性の評価は、上記のシート状成形体サンプルから、直径49mmに切り出して、ネットワークアナライザー(アンリツ社製、MS2027C VNA Master)とシールド効果測定キット(キーコム株式会社製45MHz−3GHz、S-39)を使用して行った。得られた結果は、厚さ5mmに規格化して、図6に示した。
比較例6の結果より、ポリプロピレンにグラファイト15質量%をブレンドしても、電磁波シールド効果(−8dB、電磁波遮蔽率60.19%)の向上はあまり見られなかった。一方、実施例10において、竹粉末60質量%を添加すると、グラファイト15質量%で十分な電磁波シールド機能(−24dB、電磁波遮蔽率93.69%)が発現することが示された。
(高波数領域での電磁波シールド効果の評価)
実施例8と9と同様の組成と方法で製造した高分子複合材料のシート状成形体サンプルの高波数領域(0.5〜18GHz)での電磁波シールド効果を評価した。
電磁シールド特性の評価は、上記のシート状成形体サンプルから、直径13mm、内孔径3mmに切り出して、ネットワークアナライザー(アンリツ社製、MS46122A)とGPC7-ES7タイプ測定治具を使用して行った。得られた結果は、厚さ1mmに規格化して、図7に示した。
図7の結果より、ポリプロピレンと竹とグラファイトの複合体(PP:BP:Gr = 30:30:40)及びこれにポリピロールを添加した系(もの)(PP:BP:Gr:PPy = 30:30:40:5)のいずれも、高周波数側、とりわけ15.5GHz付近でさらに優れた電磁波シールド機能を発現することが確認された。また、導電性高分子のポリピロールの添加は、電磁波シールド機能をさらに向上させることが確認された。

Claims (5)

  1. (A)熱可塑性を有する樹脂20〜70質量%、(B)グラファイト化合物15〜60 質量%及び( C )熱重量測定の微分曲線において180〜300℃の温度範囲に実質的にピークを有さない竹粉末15〜60 質量%を主成分として有する電磁波シールド性高分子複合材料。
  2. 前記竹粉末の少なくとも30質量%が長軸径250〜1000μmの範囲内にあることを特徴とする請求項1記載の電磁波シールド性高分子複合材料。
  3. 前記竹粉末の250メッシュ篩通過分が5質量%以下であることを特徴とする請求項1記載の電磁波シールド性高分子複合材料。
  4. (A)熱可塑性を有する樹脂20〜70質量%、(B)グラファイト化合物15〜60 質量%及び( C )熱重量測定の微分曲線において180〜300℃の温度範囲に実質的にピークを有さない竹粉末15〜60 質量%を主成分として有する高分子複合材料に対して、(D)導電性高分子を0.5〜10質量%を添加してなる電磁波シールド性高分子複合材料。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の電磁波シールド性高分子複合材料を溶融成形法により成形することを特徴とする電磁波シールド材の製造方法。

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