JP2016110944A - 有機el素子の製造方法及びインクジェット装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】低分子又は樹状高分子の有機発光材料を含む有機発光層を、湿式法により形成する良好な有機EL素子の製造方法を提供する。【解決手段】低分子材料又は樹状高分子材料である有機発光材料14aが有機溶媒14bに溶解したインク14iの塗布により有機発光層14を形成する有機EL素子10の製造方法であって、有機溶媒14bが、第1有機溶媒14cと、第1有機溶媒14cよりも有機発光材料14aの溶解度が大きい第2有機溶媒14dと、を含み、インク14iの塗布温度が、インク14iから有機発光材料14aが析出しない温度であり、有機発光材料14a及び有機溶媒14bを、第1有機溶媒14cと、有機発光材料14aが第2有機溶媒14dに溶解した溶液14sと、に分離させた状態で、塗布温度より低い温度において低温保管し、塗布の前に、第1有機溶媒14c及び溶液14sの加熱混合により、塗布温度以上のインク14iを生成する。【選択図】図6

Description

本発明は、有機EL素子の製造方法及びインクジェット装置に関し、特に、湿式法による有機発光層の形成技術に関する。
有機EL(Electroluminescence:電界発光)表示パネルや有機EL照明などに利用される有機EL素子は、有機発光材料を含む有機発光層を一対の電極で挟んだ構造を有し、電極から供給された正孔及び電子が有機発光層で再結合することにより発光する。
有機発光層の形成方法は、真空蒸着法などの乾式法と、インクジェット法などの湿式法とに大別される。湿式法は、有機発光材料が有機溶媒に溶解したインクを塗布することにより有機発光層を形成する方法であり、乾式法と比べコスト面や大面積における形成精度などに優れる。湿式法には、スピンコート法やディスペンス法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、インクジェット法などがあり、特に、インクを微小な液滴として吐出することにより塗布を行うインクジェット法の研究開発が行われている(例えば、特許文献1参照)。
湿式法では、有機溶媒への溶解性やインクの粘度などの取扱性から、有機発光材料に、単量体が直鎖状に重合した直鎖状高分子材料を用いることが一般的である(例えば、特許文献2参照)。
特開2007−69140号公報 特開2008−77958号公報
有機発光材料のうち、重合体ではない低分子材料は、精製法が確立されていることから、高純度で得ることができるため、良好な発光寿命を有する。しかし、低分子材料や樹状高分子材料などのインクの粘度制御が困難な材料である有機発光材料を含む有機発光層を、湿式法で形成した知見は少なく、適切な製造方法や製造装置が確立されていない。
そこで、本発明の目的は、湿式法によって、低分子材料又は樹状高分子材料である有機発光材料を含む有機発光層を形成する良好な有機EL素子の製造方法及びそれに適したインクジェット装置を提供することにある。
本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法は、有機発光材料が有機溶媒に溶解したインクを塗布することにより有機発光層を形成する有機EL素子の製造方法であって、有機発光材料が低分子材料又は樹状高分子材料であり、有機溶媒が、第1有機溶媒と、第1有機溶媒よりも有機発光材料の溶解度が大きい第2有機溶媒と、を含み、塗布の際のインクの温度である塗布温度が、インクから有機発光材料が析出しない温度であり、有機発光材料及び有機溶媒を、第1有機溶媒と、有機発光材料が第2有機溶媒に溶解した溶液と、に分離させた状態で、それぞれ塗布温度より低い保管温度において低温保管し、塗布の前に、低温保管された第1有機溶媒及び溶液の加熱混合により、塗布温度以上の温度を有するインクを生成する。
上記態様に係る有機EL素子の製造方法では、低温保管によって、インクの経時的劣化を抑制することができる。また、当該製造方法では、塗布の前に、加熱混合により塗布温度以上の高い温度のインクを生成することができ、塗布の際の有機発光材料の析出を抑制することで、必要なインク中の有機発光材料の濃度を確保できる。したがって、当該製造方法は、湿式法によって、低分子材料又は樹状高分子材料である有機発光材料を含む有機発光層を形成する良好な有機EL素子の製造方法である。
有機EL素子10の構成を示す模式断面図である。 有機EL素子10の製造過程を示す模式断面図であって、(a)は第1電極及び正孔注入層形成における材料層形成を示す図であり、(b)は第1電極及び正孔注入層形成におけるパターニングを示す図であり、(c)は隔壁層形成における材料層形成を示す図である。 有機EL素子10の製造過程を示す模式断面図であって、(a)は隔壁層形成におけるパターニングを示す図であり、(b)は正孔輸送層形成における塗布を示す図であり、(c)は正孔輸送層形成における乾燥を示す図である。 有機EL素子10の製造過程を示す模式断面図であって、(a)は有機発光層形成を示す図であり、(b)は電子輸送層形成を示す図であり、(c)は第2電極形成を示す図である。 インクジェット装置100を示す模式斜視図である。 インク生成部110におけるインクの生成方法を説明するための模式図である。 インク生成部210におけるインクの生成方法を説明するための模式図である。 経過時間に対する有機EL素子の発光強度の変化を示すグラフである。 有機EL素子の発光効率の差を示すグラフである。
<本発明の一態様に至った経緯>
低分子材料である有機発光材料は、昇華、再結晶、クロマトグラフィーなどの精製法が確立されていることから、高純度で得ることができ、良好な発光材料を有する。
しかし、低分子材料である有機発光材料を湿式法に用いるには、課題が存在する。例えば、湿式法では、有機発光層の膜厚制御を、塗布するインクの液面の高さと、インク中の有機発光材料の濃度(以下、「インクの濃度」とする。)との調整によって行う。ところが、低分子材料では、直鎖状高分子材料のような分子鎖の絡み合いが発生せず、分子間の相互作用が小さいため、低分子材料が溶解したインクの粘度は低く、塗布するインクの液面を高くすることが困難である。
特に隔壁層が区画する塗布領域にインクを塗布する湿式法では、隔壁層の高さよりもインクの液面を高くして有機発光層の膜厚を確保する方法が用いられる場合があるが、低粘度のインクでは、このような方法に限りがある。また、例えば、高精細化が進む有機EL表示パネルなどでは、隔壁層及び塗布領域はともに小さくなる傾向にあり、隣接する塗布領域間の距離や塗布されたインクの立体形状などの面から、インクの液面高さを確保することがさらに難しくなっている。
そこで、必要な有機発光層の膜厚を確保するためには、インクの濃度を高める必要があるが、本願の発明者(以下、「本発明者」とする。)は、低分子材料において、インクの濃度を高めた場合に問題が発生することを発見した。
まず、低分子材料は、一般的に有機溶媒への溶解度が小さく、インクの濃度を高めることが難しい。よって、低分子材料を用いる場合は、必要なインクの濃度を確保するために、インクを高温にし、低分子材料の有機溶媒への溶解度を向上させる必要がある。しかし、本発明者は、一度低分子材料を有機溶媒へ溶解させたインクを長期間、具体的には一か月半保管した後に、当該インクを用いて有機EL素子を製造した所、発光状態が不安定になることを発見した。これは、保管中に、有機発光材料の部分的な析出が発生することで、形成した有機発光層が不均一な状態になったためと考えられる。
そこで、本発明者は、上記析出を防ぐべく、インクを高温状態で保管することを検討したが、この場合も、次のような問題があることが分かった。
本発明者は、湿式法により有機発光層を形成した有機EL素子A、Bを製造し、その発光寿命及び発光効率を確認した。ここで、有機EL素子Aは、インクを生成した後、時間をおかずにインクを塗布して製造したものである。また、有機EL素子Bは、インクを生成した後、45℃で1か月間保管した後に、当該インクを塗布して製造したものである。上記点を除いては、有機EL素子A、Bは、同一材料を用いて同一製法で製造した。
図8は、経過時間に対する有機EL素子の発光強度の変化を示すグラフである。図8において、横軸は有機EL素子の製造後の経過時間(単位:hour)を示し、縦軸は、各有機EL素子において製造直後の発光強度を1とした場合の発光強度の相対値を示している。有機EL素子Aでは、製造後の経過時間に対して安定した発光強度を示しているのに対し、有機EL素子Bでは、製造後10時間経過した際に、発光強度が約25%低下するなど、製造直後から発光強度が急激に低下していることが分かる。
また、図9は有機EL素子の発光効率の差を示すグラフである。図9では、製造直後において、有機EL素子Aの発光効率を1とした場合の有機EL素子Bの発光効率を相対値で示している。図に示すように、有機EL素子Bでは、有機EL素子Aに対して約6割程度の発光効率となっていることが分かる。
以上のように、インクを生成した後、塗布までに高温状態で一定期間おく高温保管を行うと、有機EL素子の発光寿命及び発光効率が低下することが分かる。これは、インクが塗布までの期間において経時的に劣化することを意味する。
このインクの経時的劣化の一因は、高温保管による有機発光材料を触媒とした有機溶媒の経時的酸化の発生であることが、本発明者により発見されている。酸化された有機溶媒は、インクの特性を変化させて製造条件をばらつかせるだけでなく、製造時に除去しきれず有機EL素子中に残留し、有機発光層などを劣化させることで、有機EL素子の特性を悪化させる。また、用いる材料によっては、有機発光材料自体の劣化反応や、有機溶媒や有機発光材料の劣化生成物による連鎖的劣化反応なども、インクの経時的劣化の原因となりうる。
インクの経時的劣化は、このようにインクを構成する有機溶媒や有機発光材料の劣化反応によるものであり、当該劣化反応は、劣化速度とインク生成後の時間との積に比例して発生すると考えられる。また、劣化速度は、インクにおける有機溶媒や有機発光材料の反応確率、すなわちインク中の分子の衝突確率に比例することから、インクの温度とインクの濃度とに依存する。したがって、低分子材料である有機発光材料を用いた湿式法において、膜厚を確保するために、インクを高温にし、インクの濃度を高める方法を用いると、相乗効果的にインクの経時的劣化が促進されてしまう。
また通常、インクに用いられる有機溶媒は、粘性、溶解性、揮発性など複数の物性を望ましい程度とするために、複数の有機溶媒を含む混合溶媒となっている。これら複数の有機溶媒の間では、温度変化に対する揮発速度の変化量が異なる。よって、インクを低温状態で保管する場合はインクの組成比が安定する場合であっても、インクを高温状態で保管する場合はインクの組成比が大きく変化し、有機発光層の形成品質を低下させる場合がある。つまり、インクを高温保管すると、インクの組成比の変化という、新たな経時的劣化の一因が発生する。
以上のことから、湿式法において、比較的低濃度で必要な粘度を確保可能な直鎖状高分子材料である有機発光材料を用いた場合は、インクの濃度が低いため問題とならないインクの保管期間であっても、使用に際し高濃度化する必要がある低分子有機発光材料を用いた場合はインクが劣化する可能性がある。また、量産工程においては、製造効率の観点から、大容量のインクタンクが使用され、インクがインクタンク中に数日など長期間保管される場合が多い。つまり、低分子材料におけるインクの経時的劣化は、研究開発段階における実験室レベルでは発見されず、量産段階で問題となる場合がある。
また、上記の問題は、低分子材料である有機発光材料のみに発生するものではなく、低分子材料と同様に、インクの粘度の制御が困難な材料、例えば樹状高分子材料である有機発光材料などであっても発生する。なお、樹状高分子材料とは、単量体が三次元状に重合した高分子材料である。
そこで、湿式法によって、低分子材料又は樹状高分子材料である有機発光材料を含む有機発光層を形成する良好な有機EL素子の製造方法として、インクの経時的劣化を抑制しつつ、高い温度のインクを塗布できる方法が望まれる。このような経緯から、本発明者は、以下に説明する有機EL素子の製造方法及びそれに適切なインクジェット装置に想到した。
<本発明の態様の概要>
本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法は、有機発光材料が有機溶媒に溶解したインクを塗布することにより有機発光層を形成する有機EL素子の製造方法であって、有機発光材料が低分子材料又は樹状高分子材料であり、有機溶媒が、第1有機溶媒と、第1有機溶媒よりも有機発光材料の溶解度が大きい第2有機溶媒と、を含み、塗布の際の前記インクの温度である塗布温度が、前記インクから有機発光材料が析出しない温度であり、有機発光材料及び有機溶媒を、第1有機溶媒と、有機発光材料が第2有機溶媒に溶解した溶液と、に分離させた状態で、それぞれ塗布温度より低い保管温度において低温保管し、塗布の前に、低温保管された第1有機溶媒及び溶液の加熱混合により、塗布温度以上の温度を有するインクを生成する。
当該製造方法では、低温保管によって、インクの経時的劣化を抑制することができる。また、当該製造方法では、塗布の前に、加熱混合により塗布温度以上の高い温度のインクを生成することができ、塗布の際の有機発光材料の析出を抑制することで、必要なインク中の有機発光材料の濃度を確保できる。
また、本発明の別態様に係る有機EL素子の製造方法は、上記態様のインクについて、加熱混合から塗布までの期間を、当該インクのフォトルミネセンス強度が初期値の95%以上である期間とする。これにより、経時的に劣化したインクの使用を抑制することができる。また、より確実なインク管理を行うことができる。
また、本発明の別態様に係る有機EL素子の製造方法は、上記態様の加熱混合において、低温保管された第1有機溶媒と、溶液と、をそれぞれ塗布温度よりも高い温度に加熱し、加熱後の第1有機溶媒及び溶液を混合する。これにより、混合時において、インクの温度が、過渡的に塗布温度を下回ることを防ぐことができ、インクの生成中に、インクから有機発光材料が析出することを確実に抑制することができる。
また、本発明の別態様に係る有機EL素子の製造方法は、上記態様の第1有機溶媒及び溶液について、加熱から塗布までの期間を、1日以内とする。
また、本発明の別態様に係る有機EL素子の製造方法は、上記態様のインクについて、加熱混合から塗布までの期間を半日以内とする。
上記有機EL素子の製造方法では、どのようなインクの組成及び保管環境であっても、経時的に劣化したインクの使用を抑制することができる。
また、本発明の別態様に係る有機EL素子の製造方法は、上記態様において、加熱混合により、有機発光材料のモル濃度が1mol/m3以上であるインクを生成する。これにより、高精細の有機EL表示パネル用などのインクの塗布領域が限られた有機EL素子であっても、必要な膜厚を確保することができる。
また、本発明の別態様に係る有機EL素子の製造方法は、上記態様において、低温保管における保管温度が、溶液から有機発光材料が析出しない温度である。これにより、溶液の濃度ばらつきや、配管詰まりによる有機発光層の形成品質の低下を抑制することができる。
また、本発明の別態様に係る有機EL素子の製造方法は、上記態様において、低温保管における保管温度が室温である。これにより、低温保管を実現するにあたって、特別な装置を必要とせず、簡易かつ低コストで低温保管を実現できる。
また、本発明の別態様に係る有機EL素子の製造方法は、上記態様において、第1有機溶媒及び第2有機溶媒のうち、少なくとも一方がヘテロ原子を含む有機化合物からなる。これにより、低温保管における保管温度をより低下させることができ、インクの経時的劣化の抑制効果を高めることができる。また、これにより、同じ塗布温度におけるインクの濃度を高めることができ、膜厚制御の自由度が向上する。
また、本発明の別態様に係る有機EL素子の製造方法は、上記態様において、低温保管の際、有機発光材料の正孔移動度及び電子移動度のうち、低い方のキャリア移動度について、当該キャリア移動度が有機発光材料よりも高い有機機能性材料を、第1有機溶媒及び第2有機溶媒のうち、溶解度が大きい方に溶解させる。これにより、バイポーラ性を有する有機発光層を形成することができる。
また、本発明の別態様に係る有機EL素子の製造方法は、上記態様において、有機発光材料が、燐光金属錯体を含む。これにより、三重項状態の励起子を発光に利用できるため、発光効率を向上させることができる。また、当該製造方法によるインクの劣化抑制効果を顕著に発揮することができる。
また、本発明の別態様に係る有機EL素子の製造方法は、上記態様において、低温保管は、暗所にて行う。これにより、外部からの光エネルギーによるインクを構成している材料の活性化を抑制することができ、インクの劣化抑制効果を向上させることができる。
また、本発明の別態様に係るインクジェット装置は、低分子材料又は樹状高分子材料である有機発光材料が、第1有機溶媒及び第1有機溶媒よりも有機発光材料の溶解度が大きい第2有機溶媒を含む有機溶媒に溶解したインクを吐出するノズルヘッドと、第1有機溶媒が保管された第1タンクと、有機発光材料が第2有機溶媒に溶解した溶液が保管された第2タンクと、第1タンク、第2タンク及びノズルヘッドに接続され、加熱装置及び撹拌装置を有する加熱混合部と、を備え、ノズルヘッドが、インクを、当該インクから有機発光材料が析出しない塗布温度で吐出し、第1タンク内及び第2タンク内の温度が、塗布温度より低く、加熱混合部において、第1タンクから供給された第1有機溶媒と、第2タンクから供給された溶液と、が加熱装置及び撹拌装置により加熱混合されることで、塗布温度以上の温度を有するインクが生成される。
当該インクジェット装置では、内部の温度が塗布温度より低い第1タンク及び第2タンクに、有機発光材料及び有機溶媒を保管することにより、インクの経時的な劣化を抑制することができる。また、当該インクジェット装置では、加熱混合部により塗布温度以上の高い温度のインクを生成することができ、塗布の際の有機発光材料の析出を抑制することで、必要なインク中の有機発光材料の濃度を確保できる。
また、本発明の別態様に係るインクジェット装置は、上記態様において、加熱混合部が、第1タンクに接続され加熱装置を有する第3タンクと、第2タンクに接続され加熱装置を有する第4タンクと、第3タンク、第4タンク及びノズルヘッドに接続され、撹拌装置を有する混合タンクと、を有し、第3タンクにおいて、第1タンクから供給された第1有機溶媒が、加熱装置により、塗布温度よりも高い温度に加熱され、第4タンクにおいて、第2タンクから供給された溶液が、加熱装置により塗布温度よりも高い温度に加熱され、混合タンクにおいて、第3タンクから供給された第1有機溶媒と、第4タンクから供給された溶液と、が撹拌装置により混合される。
当該インクジェット装置では、加熱混合部において、加熱箇所と混合箇所とを分離し、加熱を先に行うことができる。これにより、インクの温度が、過渡的に塗布温度を下回ることを防ぐことができ、インクの生成中に、インクから有機発光材料が析出することを確実に抑制することができる。
また、本発明の別態様に係るインクジェット装置は、上記態様において、さらに、加熱混合後の経過時間を計時する計時装置を備える。
また、本発明の別態様に係るインクジェット装置は、上記態様において、さらに、加熱混合部で生成されたインクを試料採取する試料採取装置を備える。
また、本発明の別態様に係るインクジェット装置は、上記態様において、さらに、加熱混合部で生成されたインクを廃棄する排液装置を備える。
当該インクジェット装置では、経時的に劣化したインクの使用を抑制することができ、より確実なインク管理を行うことができる。
また、本発明の別態様に係るインクジェット装置は、上記態様において、第2タンク内の温度が、溶液から有機発光材料が析出しない温度である。これにより、溶液の濃度ばらつきや、配管詰まりによる有機発光層の形成品質の低下を抑制することができる。
また、本発明の別態様に係るインクジェット装置は、上記態様において、第1タンク及び第2タンク内の温度が室温である、これにより、低温保管を実現するにあたって、特別な装置を必要とせず、簡易かつ低コストで低温保管を実現できる。
また、本発明の別態様に係るインクジェット装置は、上記態様において、第1タンク及び第2タンクが、遮光性を有する材料からなる。これにより、例えば、高モル濃度の溶液で有機発光材料の物質量が増加した場合であっても、外部からの光エネルギーによるインクの活性化の確率を低下することができ、インクの劣化抑制効果を向上させることができる。
なお、本願において、「低分子材料」とは、重合体ではない有機材料を意味し、具体的には、分子量が多くとも数万以下である有機材料を指す。
<実施の形態>
以下では、本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法及びインクジェット装置について、図面を参照しながら説明する。なお、図面は模式的なものを含んでおり、各部材の縮尺や縦横の比率などが実際とは異なる場合がある。また、以下において「上」とは、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)を指すものではなく、基板に積層される積層構造の積層順を基に、相対的な位置関係により規定されるものである。具体的には、基板の主面に垂直な方向であって、基板から積層物側に向かう側を上方向とする。さらに、例えば「基板上」と表現した場合は、基板に直接接する上方の領域のみを指すのではなく、積層物を介した基板の上方の領域も含めるものとする。
1.有機EL素子10の構成
まず、本実施の形態に係る製造方法で製造される有機EL素子10の構成について先に説明する。
(1)全体構成
図1は、有機EL素子10の構成を示す模式断面図である。有機EL素子10は、例えば、有機EL表示パネルや有機EL照明に利用される有機発光ダイオードである。有機EL素子10は、基板SB上に積層された複数の層を備え、具体的には、第1電極11と、正孔注入層12と、正孔輸送層13と、有機発光層14と、電子輸送層15と、第2電極16と、をこの順に備える。このうち、正孔輸送層13及び有機発光層14は、湿式法により形成されており、基板SB上に配置された隔壁層BNが区画する領域に形成されている。
なお、有機EL素子10は、例えば、第1電極11側を光の出射方向とするボトムエミッション型であってもよいし、第2電極16側を光の出射方向とするトップエミッション型であってもよい。また、有機EL素子10は、例えば、パッシブマトリクス方式で駆動されてもよいし、アクティブマトリクス方式で駆動されてもよい。
(2)各部の説明
a.基板SB
基板SBは、有機EL素子10の支持部材である。基板SBの形状は特に限定されないが、例えば長方形の平板状である。基板SBには、例えば、電気絶縁性を有する材料が用いられる。このような材料の例としては、無アルカリガラス、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラス、石英ガラスなどのガラス材料や、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂などの樹脂材料、酸化アルミニウムなどの金属酸化物材料などが挙げられる。また、基板SBは、アルミニウムやステンレスなどの金属材料の層上に、電気絶縁性を有する材料の層が積層された多層構造であってもよい。
なお、有機EL素子は一般に水分や酸素などと反応して劣化しやすいため、基板SBの水分透過度は低いことが好ましい。また、有機EL素子10がボトムエミッション型である場合は、基板SBは、高い光透過率を有することが好ましい。
また、有機EL素子10がアクティブマトリクス方式で駆動される場合は、基板SBは、電気絶縁性材料上に形成されたTFT(Thin Film Transistor)層を有する。TFT層は、有機EL素子10への電力供給を制御する電子回路が形成された層である。TFT層には、半導体の層、導電体の層、電気絶縁体の層などが積層され、TFT素子、コンデンサ素子、配線などの電子回路素子が構成される。また、基板SBがTFT層を有する場合は、TFT層上に樹脂材料などを用いて層間絶縁層を形成し、基板SBの上面を平坦化することが好ましい。また、この際、TFT層と層間絶縁層との間に、絶縁性材料や低水分透過度の材料などを用いてパッシベーション層を形成してもよい。
b.第1電極11
第1電極11は、基板SB上に形成された電極であり、例えば有機発光層14に正孔を供給する陽極としての役割を有する。第1電極11には、例えば、導電性を有する材料が用いられる。このような材料の例としては、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)などの金属材料が挙げられる。また、第1電極11には、例えば、複数の金属を組み合わせた合金材料や、酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛(IZO)などの導電性酸化物材料、黒鉛、カーボンナノチューブなどの導電性炭素材料を用いてもよい。
さらに、第1電極11は、上記に例示した材料の層を複数積層した多層構造であってもよい。特に、金属材料や合金材料の層上に透明導電性酸化物材料の層を積層することにより、金属材料や合金材料の酸化防止、正孔注入層12との接合性向上などを図ることができる。また、第1電極11の最下層に、酸化タングステンなどの金属酸化物材料を用いてバリアメタル層を形成することにより、ウェットエッチングによる下地層の浸食や、下地層への水素の拡散などを抑制することができる。
なお、第1電極11が陽極である場合は、第1電極11には仕事関数の高い材料を用いることが好ましい。また、有機EL素子10がトップエミッション型である場合は、第1電極11は高い光反射率を有することが好ましく、有機EL素子10がボトムエミッション型である場合は、第1電極11は高い光透過率を有することが好ましい。
また、図示は省略するが、第1電極11はTFT層の配線と接続されるか、基板SBに沿って有機EL素子10の外側に引き出されており、外部電源との接続が可能となっている。
c.正孔注入層12
正孔注入層12は、第1電極11上に形成された層であって、第1電極11から有機発光層14への正孔の供給(正孔注入)におけるエネルギー障壁を低下させ、正孔注入の効率を向上させる役割を有する。正孔注入層12には、例えば、適切なイオン化エネルギーを有する材料が用いられる。このような材料の例としては、Ag、Mo、Cr、W、Ni、バナジウム(V)、イリジウム(Ir)などの酸化物である金属酸化物材料や、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの有機材料が挙げられる。また、正孔注入層12は、上記材料と他の材料との混合層であってもよい。
d.隔壁層BN
隔壁層BNは、第1電極11及び正孔注入層12の上方を区画する壁状の層であって、正孔輸送層13や有機発光層14を形成する際に、当該層の材料を含むインクが有機EL素子10の形成領域の外側に流出することを抑制する層である。また、隔壁層BNは、正孔輸送層13や有機発光層14の側面方向を電気的に絶縁する役割も有する。
隔壁層BNには、例えば、電気絶縁性を有し、フォトリソグラフィ法によりパターニングが可能な感光性レジスト材料が用いられる。感光性レジスト材料の例としては、例えばアクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂などの有機材料が挙げられる。感光性レジスト材料は、感光によって現像液に対する溶解性が低下するネガ型、感光によって現像液に対する溶解性が増加するポジ型のいずれであってもよいが、ネガ型であることが好ましい。一般的に、上方から露光した場合の感光性レジスト材料の感光領域は、光の減衰により上方が広く、下方が狭い逆テーパー形状となりやすい。したがって、感光領域が残るネガ型では、現像処理後の感光性レジスト材料が逆テーパーに近い形状となり、インクが隔壁層BNを超えて流出しにくくなる。また、隔壁層BNは、感光性レジスト材料と他の材料との混合層であってもよいし、隔壁層BNに、パターニング可能な無機材料を用いても良い。また、隔壁層BNは上記に例示した層を複数積層した多層構造であってもよい。
なお、隔壁層BNは、有機溶媒や熱に対する耐性を有することが好ましい。さらに、インクの流出を抑制するために、隔壁層BNの表面は撥液性を有することが好ましく、例えば、隔壁層BNに撥液性を有する材料を用いるか、隔壁層BNに撥液性を付与する表面処理を行うことが好ましい。
e.正孔輸送層13
正孔輸送層13は、正孔注入層12上に形成された層であって、第1電極11から供給された正孔の有機発光層14への輸送性を向上させる役割を有する。なお有機EL素子10では、正孔輸送層13は、湿式法によって形成され、隔壁層BNが区画する領域に形成される。
正孔輸送層13には、例えば、正孔の移動度が高い有機材料が用いられる。このような材料の例としては、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポリフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、ブタジエン化合物、ポリスチレン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、テトラフェニルベンジン誘導体(いずれも特開平5−163488号公報に記載)などが挙げられる。また、正孔輸送層13は、上記材料と他の材料との混合層であってもよい。
なお、正孔輸送層13の材料は、低分子材料、高分子材料のいずれであってもよいが、低分子材料又は樹状高分子材料である場合は、後述する有機発光層14の形成方法と同様の方法を用いることが好ましい。
f.有機発光層14
有機発光層14は、正孔輸送層13上に形成された層であって、第1電極11及び第2電極16から供給された正孔及び電子の再結合による発光(電界発光現象)が行われる部位であり、電界発光現象によって発光する有機発光材料を含む。また、有機発光層14は、後述する湿式法によって形成され、隔壁層BNが区画する領域に形成される。
有機EL素子10において、有機発光層14が含む有機発光材料は、低分子材料又は樹状高分子材料である。有機発光材料の例としては、オキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物、アザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体等の蛍光物質(いずれも特開平5−163488号公報に記載)などの公知の蛍光物質、燐光物質であって、低分子又は樹状高分子であるものである。
また、有機発光層14は、有機発光材料と他の材料との混合層であってもよい。例えば、有機発光材料がバイポーラ性を有さず、正孔移動度及び電子移動度のいずれかが低い場合がある。この場合、正孔移動度及び電子移動度のうち、低い方のキャリア移動度について、当該キャリア移動度が有機発光材料よりも高い有機機能性材料(正孔輸送性材料又は電子輸送性材料など)を含有することが好ましい。この構成により、正孔及び電子の両方が効率的に有機発光層14内を移動でき、再結合が促進され、発光効率が向上する。
なお、有機発光材料は、燐光金属錯体を含むことが好ましい。この場合、三重項状態の励起子を発光に利用できるため、発光効率を向上させることができる。
g.電子輸送層15
電子輸送層15は、有機発光層14上に形成された層であって、第2電極16から供給された電子の有機発光層14への輸送性を向上させる役割を有する。なお、図1では電子輸送層15は、有機発光層14上だけではなく、有機発光層14の周囲の隔壁層BN上にも形成されている。
電子輸送層15には、例えば、電子の移動度が高い有機材料が用いられる。このような材料の例としては、ニトロ置換フルオレノン誘導体、チオピランジオキサイド誘導体、ジフェキノン誘導体、ペリレンテトラカルボキシル誘導体、アントラキノジメタン誘導体、フレオレニリデンメタン誘導体、アントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリノン誘導体、キノリン錯体誘導体(いずれも特開平5−163488号公報に記載)、リンオキサイド誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、シロール誘導体、ジメシチルボロン誘導体、トリアリールボロン誘導体などが挙げられる。また、電子輸送層15は、上記材料と他の材料との混合層であってもよい。
h.第2電極16
第2電極16は、電子輸送層15上に形成された電極であって、例えば、有機発光層14に電子を供給する陰極としての役割を有する。なお、図1では第2電極16は、電子輸送層15と同様に、電子輸送層15上だけではなく、電子輸送層15の周囲の隔壁層BN上にも形成されている。
第2電極16には、例えば、導電性を有する材料が用いられる。このような材料の例としては、第1電極11において例示した材料が挙げられる。なお、電子を供給する観点からは、第2電極16には仕事関数の低い材料を用いることが好ましい。また、有機EL素子10がトップエミッション型である場合は、第2電極16は高い光透過率を有することが好ましく、有機EL素子10がボトムエミッション型である場合は、第2電極16は高い光反射率を有することが好ましい。また、第1電極11及び第2電極16の両方に光反射性を付与し、共振器構造を形成すれば、出射する光の波長選択性が向上し、有機EL素子10の発光色の色純度を向上させることができる。
i.その他
上記説明した有機EL素子10の積層構成は、あくまで一例であって、上記で説明した層の他に、電子注入層、阻止層、バッファ層などが追加されてもよいし、以上の各層の一部が省略されていてもよい。さらに、電子注入輸送層のように、物理的に一つの層であって、複数の機能を有する層が形成されていてもよい。これらの層を適切に組み合わせることにより、有機EL素子10の発光効率や、発光寿命などを向上させることができる。
また、第2電極16上に酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコンなどの無機材料からなる封止層を形成してもよいし、第2電極16上をガラス材料などからなる封止板で覆ってもよい。これらの構成を適切に用いることにより、有機EL素子10の水分封止性の向上、屈折抑制による光取出効率の向上、外圧などに対する耐久性の向上などを図ることができる。なお、封止板を用いる場合は、第2電極16又は上記封止層上に樹脂などの有機材料からなる充填層を形成してもよく、この場合、有機EL素子10と封止板との密着性を向上させることができる。
また、第2電極16上にカラーフィルタやブラックマトリクスを配置してもよく、この場合、出射光の色純度の向上、外光の反射抑制などを図ることができる。
また、第1電極11や正孔注入層12上の周縁部に隔壁層BNよりも低い絶縁層を形成してもよく、この場合上記周縁部における上層の形成不良による短絡を防ぐことができる。
また、正孔輸送層13及び有機発光層14以外の層が湿式法により、隔壁層BNが区画する領域に形成されてもよいし、正孔輸送層13が乾式法により、隔壁層BNが区画する領域外に形成されてもよい。
また、有機EL素子10では、第1電極11を陽極、第2電極16を陰極としたが、これに限られず、第1電極を陰極、第2電極を陽極とする逆構造であってもよい。この場合、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層などの積層順も適宜修正される。
また、有機EL素子10は、有機EL表示パネルなどの利用形態に応じて、基板SB上に複数形成されていてもよく、この際、例えば各層の形状が、複数の有機EL素子10で共有されるような形状であってもよい。
2.有機EL素子10の製造方法
次に本実施の形態に係る有機EL素子10の製造方法(以下、「本製造方法」とする。)について説明する。
(1)全体工程
図2、図3及び図4は、有機EL素子10の製造過程を示す模式断面図である。なお、図2、図3及び図4に示す断面は図1に示す断面に相当する。
a.基板準備
最初に、基板SBを準備する。例えば、パッシブマトリクス方式を採用する場合は、電気絶縁性材料を平板状に成形したものを基板SBとする。また、例えば、アクティブマトリクス方式を採用する場合は、電気絶縁性材料を平板状に成形したものを基板本体として、基板本体上にTFT層、パッシベーション層、層間絶縁層を順に形成したものを基板SBとする。
具体的には、例えば、まず、基板本体上に半導体材料の層、導電体材料の層又は電気絶縁体材料の層を形成する。これらの層の形成方法には、各層の材料に応じて、例えば、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、気相成長法などの乾式法や、印刷法、スピンコート法、インクジェット法、ディスペンス法、ダイコート法などの湿式法を用いることができる。
この際、必要に応じてパターニングを行い、上記の層を所定の形状にする。パターニングには、例えば、メタルマスク法やプリントマスク法など、必要な箇所にのみ上記の層を形成する方法を用いることができる。また、パターニングには、ドライエッチングやウェットエッチングなどを組み合わせたフォトリソグラフィ法など、一旦上記の層を形成した後に、不要な箇所を除去する方法を用いてもよい。さらに、必要に応じて、形成した層にプラズマ注入、イオン注入、ベーキングなどの処理を行ってもよい。
上記の層の形成を繰り返し、所定の電子回路となるように積層構造を形成すればTFT層を形成することができる。さらに、TFT層を覆うように、基板本体上にパッシベーション層、層間絶縁層を順に形成する。パッシベーション層及び層間絶縁層の形成には、各層の材料に応じて、上記に例示した乾式法や湿式法などを用いることができる。また、TFT層のTFT素子と第1電極11とを電気的に接続するため、パッシベーション層及び層間絶縁層の所定の位置に開口(コンタクトホール)を形成する。コンタクトホールの形成には、上記に例示したパターニング法などを用いることができる。
b.第1電極及び正孔注入層形成
次に、図2(a)に示すように、基板SB上に、第1電極11及び正孔注入層12の材料からなる材料層11m及び12mを形成する。具体的には、例えば、スパッタリング法で基板SB上に金属材料からなる材料層11mを形成した後に、続けて反応性スパッタリング法で材料層11m上に金属酸化物材料からなる材料層12mを形成すればよい。
次に、図2(b)に示すように、材料層11m及び12mをパターニングする。具体的には、例えば、まず材料層12m上にダイコート法でフォトレジスト材料を塗布する。そして、フォトマスクを通じた露光及び現像により、第1電極11及び正孔注入層12を形成する領域の上方以外に配置されたフォトレジスト材料を除去する。さらに、材料層12mに対してはドライエッチング法、材料層11mに対してはウェットエッチング法を用い、フォトレジスト材料が除去された箇所をエッチングする。最後に、超純水などによる洗浄により、基板SB上のフォトレジスト材料及び残渣を除去すればよい。
以上の方法により、基板SB上に所定の形状の第1電極11及び正孔注入層12を形成することができる。なお、上記のように第1電極11及び正孔注入層12を連続してエッチングすることで、製造プロセスを効率化することができる。また、第1電極11及び正孔注入層12を同一のフォトレジストによりパターニングするため、これらの形成精度が向上する。また、第1電極11の最下層としてバリアメタル層を配置する場合は、材料層11mの成膜前に金属酸化物の薄膜を形成しておき、材料層11mをウェットエッチングした後に、さらに金属酸化物の薄膜をドライエッチングすればよい。
c.隔壁層形成
次に、図2(c)に示すように、第1電極11及び正孔注入層12を含めた基板SB上に、隔壁層BNの材料層BNmを形成する。具体的には、例えば、ダイコート法により基板SB上の全面に感光性レジスト材料を塗布すればよい。
次に、図3(a)に示すように、材料層BNmをパターニングする。具体的には、例えば、フォトマスクを通じた露光及び現像により、正孔注入層12が積層された第1電極11上の材料層BNmを除去すればよい。
以上の方法により、第1電極11上を区画する壁状の隔壁層BNを形成することができる。
d.正孔輸送層形成
次に、図3(b)に示すように、隔壁層BNが区画する第1電極11上の領域に、インク13iを塗布する。インク13iは、正孔輸送層13の材料が有機溶媒に溶解したものである。具体的には、例えば、インクジェット法により隔壁層BNが区画する領域にインク13iを塗布すればよい。
次に、図3(c)に示すように、インク13iを乾燥させる。具体的には、例えば、インク13iを塗布した基板SBを真空チャンバーなどの真空環境におき、適宜加熱することによって、インク13iの有機溶媒を蒸発させればよい。
以上の方法により、隔壁層BNが区画する第1電極11上の領域に、正孔輸送層13を形成することができる。
e.有機発光層形成
次に、図4(a)に示すように、正孔輸送層13が積層された第1電極11上に有機発光層14を形成する。この際、正孔輸送層13と同様に、有機発光材料が有機溶媒に溶解したインクを塗布し、当該インクを乾燥させることにより、有機発光層14を形成する。具体的なインクの塗布方法については後述する。インクの乾燥方法は、正孔輸送層13と同様の方法を用いることができる。
f.電子輸送層形成
次に、図4(b)に示すように、有機発光層14上に電子輸送層15を形成する。具体的には、例えば、メタルマスクを用いた真空蒸着法により、有機発光層14上とその周囲の隔壁層BN上に電子輸送層15を形成すればよい。なお、有機発光層14上だけでなくその周囲にも電子輸送層15を形成することにより、電子輸送層15の形成位置のずれがある程度許容され、製造効率が向上する。
g.第2電極形成
次に、図4(c)に示すように、電子輸送層15が積層された有機発光層14上に第2電極16を形成する。具体的には、例えば、メタルマスクを用いた真空蒸着法により、電子輸送層15上とその周囲の隔壁層BN上に第2電極16を形成すればよい。なお、電子輸送層15上だけでなくその周囲にも第2電極16を形成することにより、第2電極16の形成位置のずれがある程度許容され、製造効率が向上する。
上記a.からg.までの方法により、図1に示す断面構成を有する有機EL素子10を製造することができる。ただし、上記の方法は、あくまで例示であり、各部材の形成方法においては、他の乾式法、湿式法、パターニング法、乾燥法などを用いてもよい。また、有機EL素子10において、異なる積層構成を取る場合は、その変化に応じて適宜形成方法を追加、削除、変更すればよい。
(2)有機発光層形成におけるインク塗布方法
有機発光層14の形成におけるインクの塗布方法について詳細に説明する。なお、有機発光層14の形成に用いる湿式法の例として、インクジェット法によるインクの塗布方法を説明する。
a.インクジェット装置100
まず、インク塗布に用いるインクジェット装置100の構成について説明する。図5は、インクジェット装置100を示す模式斜視図である。インクジェット装置100は、低分子材料又は樹状高分子材料である有機発光材料を含むインク14iを吐出するノズルヘッド101と、インク14iを生成するインク生成部110とを備える。
さらに、インクジェット装置100は、装置の土台となる基台102を備える。基台102は上面が長方形状であり、当該上面にはレール103及びガントリ104が配置されている。なお、図5に示すように、以下においては、基台102上面の長辺方向をX方向、短辺方向をY方向、基台102上面と垂直な方向をZ方向とする。また、図5に示すZ方向の向きを上とする。
レール103は、X方向に沿って延伸する形状であり、基台102上面のY方向中央部に配置される。また、レール103上にはスライド部105が配置されている。スライド部105は、レール103との接触部にリニアモータ(不図示)を有し、レール103に沿ってX方向に移動可能となっている。また、スライド部105上には、直方体状のテーブル106が固定されている。テーブル106は、インク14iが塗布される基板SBを配置する台座であり、上面側に吸気口(不図示)を有し、配置された基板SBを負圧で吸着固定することができる。
ガントリ104は、基台102上面のY方向両端部においてZ方向上側に延伸する一対の橋脚部104aと、橋脚部104aに架け渡され、Y方向に延伸する橋梁部104bとを有する。ここで、橋梁部104bの下部には、ノズルヘッド101が固定されている。
ノズルヘッド101は、下部側にY方向に沿って並んだ複数のノズル(不図示)を有し、各ノズルからインク14iを下方に吐出することができる。インク14iの吐出は、例えば圧電素子などを用いることにより、ノズルごとに独立して電子制御される。また、ノズルヘッド101は、下部側に例えば撮像装置などのセンサ(不図示)を有し、ノズルヘッド101下方の状態を検出することができる。
ノズルヘッド101には、ガントリ104内部を通って輸液チューブ107の一端が接続されている。輸液チューブ107の他端は、インクタンク108と接続されている。インクタンク108には、インク生成部110と繋がる輸液チューブ109が接続され、インク生成部110から供給されたインク14iが保管されている。なお、ノズルヘッド101からインクタンク108までの経路は密封されており、ノズルヘッド101がインク14iを吐出すると、ノズル内に発生する負圧により、インクタンク108からノズルヘッド101に新たなインク14iが供給されるようになっている。
b.インクジェット装置100の基本動作
インクジェット装置100では、テーブル106に基板SBが固定配置されると、スライド部105のリニアモータが駆動し、基板SBがY方向に沿って移動しながら、ノズルヘッド101(各ノズル)の下方を通過する。ノズルヘッド101は、センサによって通過する基板SB上面の状態を検出し、適切な箇所(隔壁層BNが区画する領域)に対して、インクタンク108から供給されたインク14iをノズルから吐出する。これにより、インクジェット装置100では、基板SBの所定の箇所に対して、インク14iを塗布することができる。
なお、本製造方法では、塗布の際のインク14iの温度である塗布温度は、インク14iから有機発光材料が析出しない温度である。すなわち、インクジェット装置100では、ノズルヘッド101が、インクタンク108から供給されたインク14iを、インク14iから有機発光材料が析出しない塗布温度で吐出する。言い換えると、塗布の際、必要なインク14iの濃度に対して、インク14iから有機発光材料14aが析出しないような塗布温度が確保されている。
これは、後述するようにインク生成部110において、塗布温度以上の温度を有するインク14iを生成することによって実現される。なお、厳密には、生成後のインク14iについて、ノズルヘッド101から吐出されるまでの期間の温度低下も考慮する必要がある。ただし、当該期間における温度低下は、例えば、当該期間の最短化、輸液チューブ107、インクタンク108及び輸液チューブ109への断熱性の付与、インクタンク108への加熱装置の設置などによって無視できる場合がある。したがって、インク14iの生成後の温度は、最低限塗布温度以上の温度であればよい。
なお、塗布温度は、インク14iから有機発光材料が析出しない温度をあらかじめ実験によって測定し、それ以上の温度で設定すればよい。特に、インク14iから有機発光材料が析出しない温度の下限値は、インク14iの物性、すなわち使用する有機溶媒や有機発光材料の物性と、インク14iの濃度とによって一意に定まり、このように設定することは可能である。
c.インクの生成方法
本製造方法では、塗布の前に、インク生成部110において塗布温度以上の温度を有するインク14iが生成される。図6は、インク生成部110におけるインクの生成方法を説明するための模式図である。なお、インク生成部110において生成されるインク14iは、低分子材料又は樹状高分子材料である有機発光材料14aが、有機溶媒14bに溶解したものである。また、インク14iについて望ましい物性を得るために、有機溶媒14bは混合溶媒となっており、第1有機溶媒14c及び第1有機溶媒14cよりも有機発光材料14aの溶解度が大きい第2有機溶媒14dを含む。一般に、異なる有機溶媒では、有機発光材料14aの溶解度も異なるため、複数の有機溶媒を含む混合溶媒である有機溶媒14bにおいて、このように第1有機溶媒14c、第2有機溶媒14dを選択することは可能である。
なお、混合溶媒中に、有機発光材料14aの溶解性に問題がない有機溶媒が複数ある場合は、溶解度の大きい有機溶媒ではなく、有機発光材料14aの溶解による劣化が発生しにくい有機溶媒を、第2有機溶媒14dとしてもよい。
インク生成部110は、具体的な構成として、第1有機溶媒14cが保管された第1タンク111と、有機発光材料14aが第2有機溶媒14dに溶解した溶液14sが保管された第2タンク112と、を備える。また、インク生成部110は、第1タンク111に接続され加熱装置113hを有する第3タンク113と、第2タンク112に接続され加熱装置114hを有する第4タンク114と、を備える。加熱装置113h、114hは、例えば、抵抗加熱式、誘導加熱式、誘電加熱式、マイクロ波加熱式、赤外加熱式、ヒートポンプ式などの加熱装置である。
さらに、インク生成部110は、第3タンク113、第4タンク114及び輸液チューブ109に接続され、撹拌装置115mを有する混合タンク115を備える。すなわち、混合タンク115は、輸液チューブ109、インクタンク108及び輸液チューブ107を介してノズルヘッド101に接続されている。
なお、図6では図示を省略するが、上記タンク間及び輸液チューブ109には、バルブやポンプなどが配置されており、第1有機溶媒14c、溶液14s、インク14iの供給は制御可能となっている。
インク生成部110では、第1タンク111内及び第2タンク112内の温度は、前述の塗布温度よりも低い。したがって、第1タンク111及び第2タンク112に保管される第1有機溶媒14c及び溶液14sは、塗布温度よりも低温となっている。
また、インク生成部110では、例えば塗布を行う前日など、塗布の前の適切なタイミングで、第1タンク111から第3タンク113へ第1有機溶媒14cが、第2タンク112から第4タンク114へ溶液14sが供給される。そして、第3タンク113において、第1タンク111から供給された第1有機溶媒14cが、加熱装置113hにより、塗布温度よりも高い温度に加熱される。同様に、第4タンク114において、第2タンク112から供給された溶液14sが、加熱装置114hにより、塗布温度よりも高い温度に加熱される。
次に、インク生成部110では、例えばインク塗布を開始する直前など、塗布の前の適切なタイミングで、第3タンク113から第1有機溶媒14cが、第4タンク114から溶液14sが、それぞれ混合タンク115へ供給される。そして、混合タンク115において、第3タンク113から供給された第1有機溶媒14cと、前記第4タンク114から供給された溶液14sと、が撹拌装置115mにより混合されることにより、インク14iが生成される。この際、混合される第1有機溶媒14c及び溶液14sの温度は塗布温度よりも高いため、混合後のインク14iは、塗布温度以上の温度を有する。混合タンク115で生成されたインク14iは、輸液チューブ109を通じてインクタンク108に供給される。
なお、上記において第1有機溶媒14c、溶液14s、インク14iの供給を開始するタイミングはあくまで例示であって、インク14iの組成、濃度、使用量、保管環境などに応じて適宜決定される。また、第3タンク113及び第4タンク114での加熱と、混合タンク115における混合との間に期間を設けることは必須ではなく、加熱と混合が連続的に行われてもよい。
(3)効果
a.低温保管の効果
インクジェット装置100では、第1タンク111内及び第2タンク112内の温度は、塗布温度より低い。すなわち、本製造方法では、インク14iについて、有機発光材料14a及び有機溶媒14bを、第1有機溶媒14cと、溶液14sとに分離させた状態で、それぞれ塗布温度より低い保管温度において低温保管する。
前述のとおり、インクは経時的に劣化し、さらに当該劣化は温度に比例して促進される。一方、本製造方法では、有機溶媒14b及び有機発光材料14aが、塗布温度よりも低い保管温度において低温保管されるため、上記劣化を抑制することができる。
なお、本製造方法では、低温保管において、有機発光材料14aが、第1有機溶媒14cよりも有機発光材料14aの溶解度が大きい第2有機溶媒14dに溶解している。すなわち、第2有機溶媒14dでは、第1有機溶媒14c及び第2有機溶媒14dの混合溶媒である有機溶媒14bよりも、有機発光材料14aの溶解度が大きいため、低温保管において溶液14sから有機発光材料14aが析出しにくい。これにより、有機発光材料14aの析出による溶液14sの濃度ばらつきや、配管詰まりの発生を抑制でき、インク14iの生成品質の向上及びインクジェット装置100の動作安定性の確保により、有機発光層14の形成品質を向上できる。
b.加熱混合の効果
インクジェット装置100では、塗布の前の適切なタイミングで、第3タンク113、第4タンク114及び混合タンク115において、第1タンク111から供給された第1有機溶媒14cと、第2タンク112から供給された溶液14sとが、加熱装置113h、114h及び撹拌装置115mにより加熱混合されることで、塗布温度以上の温度を有するインク14iが生成される。すなわち、第3タンク113、第4タンク114及び混合タンク115は、加熱混合部の一態様に相当する。
また、上記は、本製造方法において、インク14iの塗布の前に、低温保管された第1有機溶媒14c及び溶液14sの加熱混合により、塗布温度以上の温度を有するインク14iを生成することに相当する。
すなわち、本製造方法では、加熱混合により、高い温度のインク14iを生成することができる。これにより、前述のとおり、塗布の際、必要なインク14iの濃度に対して、インク14iから有機発光材料14aが析出しないような塗布温度を確保できる。つまり、本製造方法では、用いる有機発光材料がインクの粘度制御が困難な低分子材料又は樹状高分子材料であっても、必要な有機発光層14の膜厚を確保することができる。
また、本製造方法では、有機発光材料14aの析出による、インク14iの濃度ばらつきや、配管詰まりの発生を抑制でき、インク14iの生成品質の向上及びインクジェット装置100の動作安定性の確保により、有機発光層14の形成品質を向上できる。
c.まとめ
本製造方法では、低温保管によって、インク14iの経時的劣化を抑制することができる。また、本製造方法では、塗布の前に、加熱混合により塗布温度以上の高い温度のインク14iを生成することができ、塗布の際の有機発光材料の析出を抑制することで、必要なインク14iの濃度を確保できる。したがって、本製造方法は、湿式法によって、インクの粘度制御が困難な低分子材料又は樹状高分子材料である有機発光材料を含む有機発光層を形成する場合に良好な有機EL素子の製造方法である。また、インクジェット装置100は本製造方法に適切なインクジェット装置である。
3.備考
(1)加熱混合タンクの構成
インクジェット装置100では、加熱混合部が、第3タンク113と、第4タンク114と、混合タンク115とを有する。すなわち、本製造方法では、加熱混合において、低温保管された第1有機溶媒14cと、溶液14sとをそれぞれ塗布温度よりも高い温度に加熱し、加熱後の第1有機溶媒14c及び溶液14sを混合する。本製造方法では、このように加熱と混合とを分離し、加熱を先に行うことが好ましい。
これにより、混合時において、インク14iの温度が、過渡的に塗布温度を下回ることを防ぐことができ、混合タンク115におけるインク14iの生成中に、インク14iから有機発光材料14aが析出することを確実に抑制することができる。したがって、この場合、インク14iの濃度ばらつきや、配管詰まりの発生を抑制でき、インク14iの生成品質の向上及びインクジェット装置100の動作安定性の確保により、有機発光層14の形成品質を向上できる。
(2)インクの管理
加熱混合において生成されたインク14iは、塗布温度以上の温度を有するため、経時的に変化する可能性がある。つまり、加熱混合によって生成されたインク14iの加熱混合後の期間により、インク14iが劣化する場合や、インク14iの温度が塗布温度よりも低温となる場合がある。したがって、本製造方法では、生成されたインク14iを管理することが好ましい。
例えば、インクジェット装置100は、インク14iの管理のために、混合タンク115に、混合後の経過時間を計時する計時装置115tと、インク14iを廃棄する排液装置115dと備える。加熱混合後のインク14iについて、劣化するまでの期間や、温度が塗布温度よりも低温となるまでの期間は、インク14iの組成、生成後のインク14iの保管環境によって一定に定まる。したがって、当該期間をあらかじめ測定しておき、計時装置115tが計時する経過時間が、当該期間を超えた場合に、排液装置115dによってインク14iを廃棄すれば、経時的劣化したインク14iや塗布温度より低温となったインク14iの使用を防止できる。
なお、インクジェット装置100では、混合タンク115に計時装置115t及び排液装置115dを備えたが、インクタンク108においてインク14iを長期間保管する場合は、同様の構成及び管理をインクタンク108に適用することが好ましい。また、上記の観点からは、異なる時間に生成したインク14iを混ぜないことが好ましい。これは、例えば、インクタンク108においてインク14iの継ぎ足しを行わず、インクタンク108のインク14iを使い切ってから、インク生成部110からインクタンク108に新たなインク14iを供給すればよい。
また、第1有機溶媒14c及び溶液14sについては、加熱から塗布までの期間を1日以内とすることが、インク14iについては、加熱混合から塗布までの期間を半日以内とすることが、それぞれ好ましい。どのようなインク14iの組成及び保管環境であっても、概ね上記の期間内であればインク14iの劣化は発生せず、経時的に劣化したインク14iの使用を抑制することができる。
また、インク14iについて、第1タンク111及び第2タンク112における低温保管や、第3タンク113及び第4タンク114における加熱後の保管、混合タンク115における混合後の保管は、暗所にて行うことが好ましい。この場合、例えば、高モル濃度の溶液で有機発光材料の物質量が増加した場合であっても、外部からの光エネルギーによるインク14iを構成している材料の活性化の確率を低下することができ、インク14iの劣化抑制効果を向上させることができる。なお、暗所にて保管を行う方法としては、遮光性を有する材料からなる第1タンク111や、第2タンク112、第3タンク113、第4タンク114、混合タンク115などを用いればよい。
(3)インク中の有機発光材料の濃度
本製造方法では、加熱混合により、有機発光材料のモル濃度が1mM、すなわち1mol/m3以上であるインク14iを生成することが好ましい。これにより、高精細の有機EL表示パネル用などのインク14iの塗布領域が限られた有機EL素子10であっても、必要な膜厚を確保することができる。なお、インク14iの濃度を高める方法としては、例えば、第3タンク113及び第4タンク114で保管される第1有機溶媒14c及び溶液14sの温度を上げればよい。また、この際、上記モル濃度は、100mol/m3以内であることが好ましく、これは実用的に使用できる範囲のインク14iの温度において達成できるモル濃度である。また、上記モル濃度は、1mol/m3以上10mol/m3以下であることが、インク14iの品質上、特に好ましい。
(4)低温保管における保管温度
本製造方法では、低温保管における保管温度はできるだけ低い温度である方が好ましく、低温になればなるほど、有機発光材料14a及び有機溶媒14bの経時的劣化の抑制効果が高まる。ただし、過度に低温にすると、溶液14sから有機発光材料14aが析出する。当該析出は、溶液14sの濃度ばらつきや、配管詰まりの原因となり、有機発光層14の形成品質を低下させる。したがって、低温保管における保管温度、特に第2タンク112内の温度は、溶液14sから有機発光材料14aが析出しない温度であることが好ましい。
また、本製造方法では、低温保管における保管温度、すなわち、第1タンク111内及び第2タンク112内の温度が室温であることが好ましい。この場合、低温保管を実現するにあたって、特別な装置を必要とせず、簡易かつ低コストで低温保管を実現できる。
(5)有機溶媒の好適例
本製造方法では、第1有機溶媒14c及び第2有機溶媒14dのうち、少なくとも一方がヘテロ原子を含む有機化合物からなることが好ましい。ヘテロ原子を含む有機化合物からなる有機溶媒は、一般的に極性が高いため、有機発光材料が極性を有する場合、当該有機溶媒を第2有機溶媒14dとすることで、第2有機溶媒14dにおける有機発光材料の溶解度を向上させることができる場合が多い。この場合、低温保管における保管温度をより低下させることができ、インク14iの経時的劣化の抑制効果を高めることができる。また、この場合、同じ塗布温度におけるインク14iの濃度を高めることができ、膜厚制御の自由度が向上する。
なお、有機発光材料が極性を有さない場合は、ヘテロ原子を含む有機化合物からなる有機溶媒を第1有機溶媒14cとし、ヘテロ原子を含まないなど極性の低い有機化合物からなる有機溶媒を第2有機溶媒14dとすることが好ましい。この場合も、第2有機溶媒14dにおける有機発光材料の溶解度を向上させることができる。
また、本製造方法では、有機発光材料14aが、燐光金属錯体を含むことが好ましい。燐光金属錯体は、光による活性が高く、インク14iの劣化が発生しやすい。したがって、本製造方法における、インク14iの劣化抑制効果を顕著に発揮することができる。
また、有機発光材料14aが燐光金属錯体を含む場合、第2有機溶媒14dがヘテロ原子を含む有機化合物からなることで、有機発光材料14aが第2有機溶媒14dに溶解しやすくなり、さらに低温保管における保管温度を下げることができる。これにより、インクの経時的劣化の抑制効果の向上や、膜厚制御の自由度の向上を図ることができる。
(6)その他
インク生成部110では、第1有機溶媒14cと溶液14sとを分離させた状態で保管する。したがって、第1有機溶媒14cに、有機発光材料14aや第2有機溶媒14dとの反応性が高い有機溶媒を用いることができる。すなわち、本製造方法では、材料選択の自由度が向上する。
インクジェット装置100では、インク生成部110の混合タンク115とは別に、インク14iを保管するインクタンク108を備えることが好ましい。これにより、インク14iの生成箇所と、保管箇所とを分離できる。本製造方法では、前述のように、インク14iの継ぎ足しを行わない方が好ましく、この場合、インク14iを使い切った後、次の塗布を開始するまでの生産停止が発生する。そこで、インク14iの生成箇所と保管箇所とを分離すれば、インクジェット装置100の稼働中にインク14iの生成を行うことができ、インクタンク108が空になった際にすぐにインク14iを補充できるため、生産停止期間を短縮できる。さらに、この構成では、インク14iを少量ずつ生成しても生産効率が低下しないため、インク14iを大量に生成して保管する必要がなく、劣化しやすいインク14iであってもインク14iの廃棄量を低減することができる。
また、第3タンク113、第4タンク114における加熱においては、低温保管の温度と、加熱後の温度との差が、例えば1度であっても良い。温度が1度でも変化することにより、低温保管におけるインク14iの劣化抑制効果や、塗布におけるインク14iの濃度向上効果を得ることができる。
また、本製造方法では、塗布温度を積極的に制御することが好ましい。具体的には、ノズルヘッド101から吐出されたインク14iが基板SBに塗布されるまでの有機溶媒14bの揮発量を、塗布温度によって制御することで、塗布時のインク14iの濃度を変化させることができる。したがって、塗布時に最適なインク14iの濃度となるよう、塗布温度を設定すれば、平坦性の高い有機発光層14を形成することができる。
なお、有機発光材料14aは、分子構造によって溶解性は大きく変わり、比較的低温で有機溶媒14bへの溶解性が十分確保できる場合は、低温保管及び塗布の前の加熱は不要となる。一方、上記の場合であっても、保管時に、第1有機溶媒14cと、溶液14sとに分離して保管する意義はある。つまり、有機発光材料14aの有機溶媒14bへの溶解性が十分であっても、長期間の保管において、有機発光材料14aが一部析出する可能性はあり、保管時に溶液14s状態とし、有機発光材料14aの溶解性を少しでも向上させることで、より析出の可能性を低減しておくことが好ましい。また、上記のように分離しておくことで、保管時に有機発光材料14aと第1有機溶媒14cとの化学的な劣化反応を抑制することが可能となる。したがって、有機発光材料14aの有機溶媒14bへの溶解性が十分である場合であっても、本製造方法及びインクジェット装置100の意義はある。
4.変形例
以上、本発明の一態様として、有機EL素子10の製造方法及びインクジェット装置100について説明したが、本発明は、その本質的な特徴的構成要素を除き、以上の説明に何ら限定を受けるものではない。以下では、本発明の他の態様例である変形例を説明する。なお、以下において、上記説明に記載されたものと同じものについては、同じ符号を付して説明を簡略化又は省略する。
(1)インク生成部
インクジェット装置100では、インク生成部110を備えたが、インク生成部の構成はこれに限られず、様々な変更が可能である。例えば、図7は、インク生成部210によるインクの生成方法を説明するための模式図である。以下、図7に示すインク生成部210について、インク生成部110との差異を中心に説明する。
a.インクの組成
まず、インク生成部210では、第1タンク111において、有機機能性材料24aが、第1有機溶媒14cに溶解した溶液24sを保管している。有機機能性材料24aは、有機発光材料14aの正孔移動度及び電子移動度のうち、低い方のキャリア移動度について、当該キャリア移動度が有機発光材料14aよりも高い。これにより、インク24i、引いては形成する有機発光層14に有機機能性材料24aを含ませることができ、バイポーラ性を有する有機発光層14を形成することができる。
なお、有機機能性材料24aの添加方法は、第1有機溶媒14cに溶解させる方法に限られず、第1有機溶媒14c及び第2有機溶媒14dのうち、溶解度が大きい方に溶解させればよい。例えば、有機機能性材料24aが、有機発光材料14aとともに、第2有機溶媒14dに溶解していてもよい。
また、有機機能性材料24aは、低分子材料、樹状高分子材料又は直鎖状高分子材料のいずれであってもよい。また、有機発光材料14a、有機機能性材料24aは、2種類以上の有機材料から構成されていてもよい。
以上のように、インク生成部が生成するインクは、有機発光材料以外の材料を含んでいてもよく、当該材料は、低温保管の際、第1有機溶媒14c、第2有機溶媒14dに含まれていてもよい。
b.加熱混合部
インク生成部210は、インク生成部110における第3タンク113、第4タンク114及び混合タンク115に代えて加熱混合タンク215を備える。加熱混合タンク215は、第1タンク111、第2タンク112及び輸液チューブ109に接続され、撹拌装置115m及び加熱装置215hを有する。すなわち加熱混合タンク215は、輸液チューブ107、インクタンク108及び輸液チューブ109を介してノズルヘッド101に接続されている。また、加熱装置215hは加熱装置113hや114hと同じものである。
ここで、インク生成部210では、インク生成部110と同じく、第1タンク111内及び第2タンク112内の温度は、塗布温度よりも低い。したがって、第1タンク111及び第2タンク112に保管される溶液24s、溶液14sが、塗布温度よりも低温となっている。
また、インク生成部210では、インク24i塗布の前に、第1タンク111から溶液24sが、第2タンクから溶液14sが、それぞれ加熱混合タンク215に供給される。そして、加熱混合タンク215において、第1タンク111から供給された溶液24sと、第2タンク112から供給された溶液14sとが、加熱装置215h及び撹拌装置115mにより加熱混合されることで、塗布温度以上の温度を有するインク24iが生成される。加熱混合タンク215で生成されたインク24iは、輸液チューブ109を通じてインクタンク108に供給される。
インク生成部210を用いた場合においても、インク24iについて、有機発光材料14a及び有機溶媒14bを、第1有機溶媒14c(溶液24s)と、溶液14sとに分離させた状態で、それぞれ塗布温度より低い保管温度において低温保管する。また、インク24iの塗布の前に、低温保管された第1有機溶媒14c(24s)及び溶液14sの加熱混合により、塗布温度以上の温度を有するインク24iを生成する。したがって、インク生成部210を用いても、インク24iの経時的劣化を抑制しつつ、高い温度のインクを塗布できる良好な有機EL素子10の製造方法を実現できる。
以上のように、加熱混合部では、インク生成部110のように加熱と混合とを別の箇所(タンク)で行う必要はなく、インク生成部210のように加熱及び混合を同じタンクで行ってもよい。なお、加熱混合タンク215において、インク24iからの有機発光材料14aの析出をより確実に抑制するためには、例えば、先に加熱混合タンク215に溶液24sのみを供給し、溶液24sを加熱装置215hで加熱した後に、溶液14sを供給すればよい。
c.インクの管理
インク生成部210では、排液装置215dと、計時装置115tに代わる試料採取装置215sと、を備える。排液装置215dは、排液装置115dに、試料採取装置215sへの分岐配管を設置したものである。試料採取装置215sは、あらかじめ定められた期間ごと又は不定期に、加熱混合タンク215内のインク24iを試料採取し、インク24iのフォトルミネセンス強度を測定する。なお、フォトルミネセンス強度とは、インクに特定波長の光を吸収させ、有機発光材料を励起することにより、発光を生じさせた場合の発光強度のことである。なお、フォトルミネセンス強度の測定の際は、インク24iの濃度と発光強度に比例関係がある濃度領域まで希釈して測定を行うことが好ましい。
インク生成部210の構成であっても、インク24iを管理することができる。具体的には、試料採取装置215sによって採取したインク24iについて、所定のエネルギーを有する光に対するフォトルミネセンス強度が、一定程度低下した場合、インク24iが劣化したと見なし、排液装置215dによりインク24iを廃棄すればよい。これにより、経時的に劣化したインク24iの使用を抑制することができる。なお、図9に示すように、劣化したインクでは、有機発光材料の発光効率が低下することから、インクの劣化と、フォトルミネセンス強度との間には一定の相関関係が存在すると考えてよい。
また、試料採取装置215sを用いたインクの管理方法として、具体的には、例えば、インク24iについて、加熱混合から塗布までの期間を、フォトルミネセンス強度が初期値の95%以上である期間とすることが好ましい。すなわち、試料採取装置215sによって採取したインク24iのフォトルミネセンス強度が初期値の95%を下回った場合は、排液装置215dによりインク24iを廃棄すればよい。フォトルミネセンス強度の測定は一定の誤差を含むことが考えられるため、上記のように、5%のマージンを考慮して、劣化を検出することで、より確実なインク管理を行うことができる。なお、上記フォトルミネセンス強度のしきい値は、測定装置の誤差に応じて適宜変更してもよい。
また、インク生成部210では、加熱混合タンク215において、加熱混合により生成されたインク24iが温度低下した場合であっても、加熱装置215hにより、塗布温度以上の温度に加熱することができ、計時装置115tによる管理を不要とできる。
(2)その他
インク生成部110では、混合タンク115に、計時装置115tを備えたが、計時装置115tの配置箇所はこれに限られず、任意の箇所であってもよい。また、排液装置115d、215dや試料採取装置215sについても、混合タンク115、加熱混合タンク215以外のインク14i、24iを放出可能な箇所、例えば輸液チューブ107、109やインクタンク108に設置してもよい。
また、インクの管理方法は、インク生成部110及びインク生成部210で説明した方法以外であってもよい。例えば、計時装置と試料採取装置とを組み合わせることにより、まず、インクについて、加熱混合からフォトルミネセンス強度が95%を下回るまでの期間を測定し、以降は、計時装置と排液装置を組み合わせることにより、加熱混合から当該期間を経過したインクを廃棄する方法を用いてもよい。また、例えば、上記の方法などにより、インクの経時的劣化が発生する期間や、インクの温度が塗布温度より低温となるまでの期間を測定し、加熱混合により生成するインクの生成量を、当該期間内におけるインクの使用量以下にする方法を用いてもよい。さらに、この方法では、インクの経時的劣化が発生する前にインクを使い切れるため、インクの継ぎ足しを行ってもよい。また、この方法では、インクジェット装置自体に計時装置115tや試料採取装置215s、排液装置115d、215dなどの装置を備える必要はなくなる。
また、インク生成部110及びインク生成部210では、低温保管において、いずれも有機発光材料を有機溶媒に溶解させた溶液状態で保管したが、これに限られず、有機発光材料単体と、有機溶媒とを分離した状態で保管してもよい。ただし、有機発光材料を有機溶媒に溶解させた溶液状態は、輸送や品質管理などを行いやすく、取扱上、溶液状態で保管することが好ましい。
また、インクジェット装置100では、インク生成部110又は210とは別に、インクタンク108を備える構成であったが、これに限定されず、混合タンク115又は加熱混合タンク215を直接輸液チューブ107に接続してもよい。
また、本製造方法では、一例として、インクジェット法による形成方法を説明したが、有機発光層14の形成方法はこれに限られず、その他の湿式法を用いても良い。この場合であっても、例えば、インク生成部110やインク生成部210によって生成されたインク14i、24iを用いることにより、インクの経時的劣化を抑制しつつ、高い温度のインクを塗布できる。
本発明に係る有機EL素子の製造方法及びインクジェット装置は、テレビ、パーソナルコンピュータ、携帯端末、業務用ディスプレイなど様々な電子機器に用いられる有機EL表示パネルや、有機EL照明の製造方法として広く利用することができる。
10 有機EL素子
14 有機発光層
14a 有機発光材料
14b 有機溶媒
14c 第1有機溶媒
14d 第2有機溶媒
14i、24i インク
14s、24s 溶液
24a 有機機能性材料
100 インクジェット装置
101 ノズルヘッド
111 第1タンク
112 第2タンク
113 第3タンク
114 第4タンク
114h、115h、215h 加熱装置、
115 混合タンク
115d、215d 排液装置
115m、215m 撹拌装置
115t 計時装置
215 加熱混合タンク
215s 試料採取装置

Claims (20)

  1. 有機発光材料が有機溶媒に溶解したインクを塗布することにより有機発光層を形成する有機EL素子の製造方法であって、
    前記有機発光材料が低分子材料又は樹状高分子材料であり、
    前記有機溶媒が、第1有機溶媒と、前記第1有機溶媒よりも前記有機発光材料の溶解度が大きい第2有機溶媒と、を含み、
    前記塗布の際の前記インクの温度である塗布温度が、前記インクから前記有機発光材料が析出しない温度であり、
    前記有機発光材料及び前記有機溶媒を、前記第1有機溶媒と、前記有機発光材料が前記第2有機溶媒に溶解した溶液と、に分離させた状態で、それぞれ前記塗布温度より低い保管温度において低温保管し、
    前記塗布の前に、前記低温保管された前記第1有機溶媒及び前記溶液の加熱混合により、前記塗布温度以上の温度を有する前記インクを生成する、
    有機EL素子の製造方法。
  2. 前記インクについて、前記加熱混合から前記塗布までの期間を、当該インクのフォトルミネセンス強度が初期値の95%以上である期間とする、
    請求項1の有機EL素子の製造方法。
  3. 前記加熱混合において、
    前記低温保管された前記第1有機溶媒と、前記溶液と、をそれぞれ前記塗布温度よりも高い温度に加熱し、
    前記加熱後の前記第1有機溶媒及び前記溶液を混合する、
    請求項1の有機EL素子の製造方法。
  4. 前記第1有機溶媒及び前記溶液について、前記加熱から前記塗布までの期間を、1日以内とする、
    請求項3に記載の有機EL素子の製造方法。
  5. 前記インクについて、前記加熱混合から前記塗布までの期間を半日以内とする、
    請求項1に記載の有機EL素子の製造方法。
  6. 前記加熱混合により、前記有機発光材料のモル濃度が1mol/m3以上である前記インクを生成する、
    請求項1の有機EL素子の製造方法。
  7. 前記低温保管における保管温度が、前記溶液から前記有機発光材料が析出しない温度である、
    請求項1の有機EL素子の製造方法。
  8. 前記低温保管における保管温度が室温である、
    請求項1の有機EL素子の製造方法。
  9. 前記第1有機溶媒及び前記第2有機溶媒のうち、少なくとも一方がヘテロ原子を含む有機化合物からなる、
    請求項1の有機EL素子の製造方法。
  10. 前記低温保管の際、前記有機発光材料の正孔移動度及び電子移動度のうち、低い方のキャリア移動度について、当該キャリア移動度が前記有機発光材料よりも高い有機機能性材料を、前記第1有機溶媒及び前記第2有機溶媒のうち、溶解度が大きい方に溶解させる、
    請求項1に記載の有機EL素子の製造方法。
  11. 前記有機発光材料が、燐光金属錯体を含む、
    請求項1に記載の有機EL素子の製造方法。
  12. 前記低温保管は、暗所にて行う、
    請求項1の有機EL素子の製造方法。
  13. 低分子材料又は樹状高分子材料である有機発光材料が、第1有機溶媒及び前記第1有機溶媒よりも前記有機発光材料の溶解度が大きい第2有機溶媒を含む有機溶媒に溶解したインクを吐出するノズルヘッドと、
    前記第1有機溶媒が保管された第1タンクと、
    前記有機発光材料が前記第2有機溶媒に溶解した溶液が保管された第2タンクと、
    前記第1タンク、前記第2タンク及び前記ノズルヘッドに接続され、加熱装置及び撹拌装置を有する加熱混合部と、
    を備え、
    前記ノズルヘッドが、前記インクを、当該インクから前記有機発光材料が析出しない塗布温度で吐出し、
    前記第1タンク内及び前記第2タンク内の温度が、前記塗布温度より低く、
    前記加熱混合部において、前記第1タンクから供給された前記第1有機溶媒と、前記第2タンクから供給された前記溶液と、が前記加熱装置及び前記撹拌装置により加熱混合されることで、前記塗布温度以上の温度を有する前記インクが生成される、
    インクジェット装置。
  14. 前記加熱混合部が、前記第1タンクに接続され前記加熱装置を有する第3タンクと、前記第2タンクに接続され前記加熱装置を有する第4タンクと、前記第3タンク、前記第4タンク及び前記ノズルヘッドに接続され、前記撹拌装置を有する混合タンクと、を有し、
    前記第3タンクにおいて、前記第1タンクから供給された前記第1有機溶媒が、前記加熱装置により、前記塗布温度よりも高い温度に加熱され、
    前記第4タンクにおいて、前記第2タンクから供給された前記溶液が、前記加熱装置により前記塗布温度よりも高い温度に加熱され、
    前記混合タンクにおいて、前記第3タンクから供給された前記第1有機溶媒と、前記第4タンクから供給された前記溶液と、が前記撹拌装置により混合される、
    請求項13のインクジェット装置。
  15. さらに、前記加熱混合後の経過時間を計時する計時装置を備える、
    請求項13のインクジェット装置。
  16. さらに、前記加熱混合部で生成された前記インクを試料採取する試料採取装置を備える、
    請求項13のインクジェット装置。
  17. さらに、前記加熱混合部で生成された前記インクを廃棄する排液装置を備える、
    請求項13のインクジェット装置。
  18. 前記第2タンク内の温度が、前記溶液から前記有機発光材料が析出しない温度である、
    請求項13のインクジェット装置。
  19. 前記第1タンク及び前記第2タンク内の温度が室温である、
    請求項13のインクジェット装置。
  20. 前記第1タンク及び前記第2タンクが、遮光性を有する材料からなる、
    請求項13のインクジェット装置。
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JP2020501324A (ja) * 2016-12-06 2020-01-16 メルク パテント ゲーエムベーハー 電子デバイスの調製方法
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