この警報装置は、平常時は消灯し、火災時には間欠的にフラッシュ光を発して火災を報知する光警報装置である。
光警報装置は、火災による煙中を通して視認できるだけの強い光を発生する必要がある(参考文献:1970年消防研究所報告「煙中の視程について(I)」、1971年日本火災学会論文集「煙中の見通し距離について」、等、神忠久の一連の研究論文)。そのため、発光素子は、強烈な閃光を発するストロボ(登録商標)に代表されるエレクトロニック・フラッシュや、大光量のLEDランプ等を用いる。要求される光の強さは設置場所の広さにより異なり、広い設置場所では、より強い光で発光素子を発光させる必要がある。
しかし、このような強い光刺激を繰り返すと、人に光刺激性癲癇などの光過敏性発作を引き起こす場合があることが知られている。また、光警報装置のフラッシュ光を直視することで目にダメージを受けて、速やかな火災からの避難に影響することが懸念されている。
本発明は、強い光による人への刺激を緩和しつつ、光による火災警報の報知を行う、光警報装置を提供することを課題とする。
(1)本発明は、発光素子と、前記発光素子を駆動する発光駆動手段と、前記発光駆動手段を制御する制御手段と、を備え、火災警報の際に、前記制御手段が前記発光駆動手段を制御して、前記発光素子を間欠的にフラッシュ発光させて警報を報知する光警報装置において、前記光警報装置は、前記フラッシュ発光を直視した人に強い刺激を与える危険を予測する危険予測手段を備え、前記制御手段は、前記危険予測手段が前記危険を予測している期間に前記フラッシュ発光が人に与える刺激を軽減するように、前記発光素子の発光態様を制御する、光警報装置である。
(2)また、本発明は、前記(1)において、前記危険予測手段は、撮像手段と、前記撮像手段からの映像信号に基づいて、人の視線、人の顔の向き、人の距離、人の存在、の少なくとも一つを検出する画像処理手段と、前記人の視線又は前記人の顔の向きが前記発光素子の方向を向いているとき、前記人の距離が所定距離以下のとき、あるいは、前記人の存在を検出しているときに、前記危険があると判断する判断手段と、を備える光警報装置である。
(3)また、本発明は、前記(1)または(2)において、前記危険予測手段は、前記光警報装置から所定距離内の人の存在、又は、前記光警報装置からの人の距離を検出する人感センサと、前記人感センサが、所定距離内の人の存在を検出しているときに、前記危険があると判断する判断手段と、を備える、光警報装置である。
(4)また、本発明は、前記発光態様の制御は、前記発光素子のフラッシュ発光の輝度を下げることである、光警報装置である。
(5)また、本発明は、前記(1)乃至(4)のいずれかにおいて、前記発光態様の制御は、間欠的フラッシュ発光の間隔を長くすることである、光警報装置である。
(6)また、本発明は、発光素子と、前記発光素子を駆動する発光駆動手段と、前記発光駆動手段を制御する制御手段と、を備え、火災警報の際に、前記制御手段が前記発光駆動手段を制御して、前記発光素子を間欠的にフラッシュ発光させて警報を報知する光警報装置において、前記光警報装置は、前記警報の報知エリア内の人を検出できる人感センサを備え、前記制御手段は、前記人感センサが人を検出しないときに、前記フラッシュ発光を停止させる、又は、前記フラッシュ発光の輝度を下げる、光警報装置である。
(7)また、本発明は、発光素子と、前記発光素子を駆動する発光駆動手段と、前記発光駆動手段を制御する制御手段と、を備え、火災警報の際に、前記制御手段が前記発光駆動手段を制御して、前記発光素子を間欠的にフラッシュ発光させて警報を報知する光警報装置において、前記光警報装置は、撮像手段と、前記撮像手段からの映像信号に基づいて、消防士を検出する画像認識手段と、を備え、前記制御手段は、前記画像認識手段が消防士を検出したときに、前記フラッシュ発光を停止させる、又は、前記フラッシュ発光の輝度を下げる、光警報装置である。
本発明の請求項1に記載の構成によると、発光素子を間欠的にフラッシュ発光させて警報を報知する光警報装置において、フラッシュ発光を直視した人に強い刺激を与える危険を予測する危険予測手段を備え、前記制御手段は、前記危険予測手段が前記危険を予測している期間に前記フラッシュ発光が人に与える刺激を軽減するように、前記発光素子の発光態様を制御するので、聴覚障害者に警報を報知しながらも、フラッシュ発光の直視により目への刺激を軽減することができる効果を奏する。そして、このことにより、目が眩んで速やかな避難に影響を与えるような危険を避けることができる。
また、本発明の請求項2に記載の構成によると、撮像手段によって人の視線又は人の顔の向きが発光素子の方向を向いているとき、人の距離が所定距離以下のとき、あるいは、人の存在を検出しているときに、危険があると判断する判断手段を備えるため、フラッシュ発光を直視する可能性がある場合や、直視すると刺激が大きい場合を判断することができ、そのことにより、聴覚障害者に警報を報知しながらも、フラッシュ発光の直視により目への刺激を軽減することができる効果を奏する。そして、このことにより、目が眩んで速やかな避難に影響を与えるような危険を避けることができる。
また、本発明の請求項3に記載の構成によると、人感センサが、所定距離内の人の存在を検出しているときに、危険があると判断する判断手段を備えるため、フラッシュ発光を直視する可能性がある場合や、直視すると刺激が大きい場合を判断することができ、そのことにより、聴覚障害者に警報を報知しながらも、フラッシュ発光の直視により目への刺激を軽減することができる効果を奏する。そして、このことにより、目が眩んで速やかな避難に影響を与えるような危険を避けることができる。
また、本発明の請求項4に記載の構成によると、発光態様の制御は、前記発光素子のフラッシュ発光の輝度を下げるようにするため、フラッシュ発光は停止しないので、聴覚障害者に警報を報知しながらも、フラッシュ発光の直視による目への刺激を軽減することができる効果を奏する。そして、このことにより、目が眩んで速やかな避難に影響を与えるような危険を避けることができる。
また、本発明の請求項5に記載の構成によると発光態様の制御は、間欠的フラッシュ発光の間隔を長くするため、フラッシュ発光は停止しないので、聴覚障害者に警報を報知しながらも、フラッシュ発光の直視による目への刺激を軽減することができる効果を奏する。そして、このことにより、目が眩んで速やかな避難に影響を与えるような危険を避けることができる。
また、本発明の請求項6に記載の構成によると、警報の報知エリア内が無人のときに、フラッシュ発光を停止する、又は、フラッシュ発光の輝度を下げるので、無駄な電力消費を抑えることができる。ひいては、停電した場合に所定時間動作可能とするために設けられている、二次電池から成る予備電源の動作可能時間を延ばすことが可能となる。そして、大規模災害が発生して停電が長時間続いた場合でも、予備電源で動作できる時間を延ばすことが可能となる。
また、本発明の請求項7に記載の構成によると、画像認識手段が消防士を検出すると、フラッシュ発光を停止する、又は、フラッシュ発光の輝度を下げるので、光警報装置のフラッシュ発光が消防活動の妨げとならないようにすることができる。
以下に、本発明による光警報装置の実施例を示す。発光素子としては、高輝度白色LEDやキセノン管などが使用され得るが、高輝度であれば他の発光素子でもよい。高輝度白色LEDの発光態様としては、駆動電流を下げることにより発光輝度を下げることができ、キセノン管は、トリガ後に流れる電荷量を減らすなどして発光期間を短くすることにより人の目が認識する発光輝度を下げることができる。
火災感知器の一例として煙感知器による自動火災報知設備による実施例を説明するが、火災感知器は煙感知器に限らず炎感知器や熱感知器等でもよい。
まず、本発明の実施例1に係る光警報装置を説明する。図1は、実施例1の光警報装置を設けた、自動火災報知設備の構成を表す。1は光警報装置、2は受信機、3は火災感知器としての煙感知器である。複数の光警報装置1は受信機2と接続され、受信機2は複数の煙感知器3に接続されている。光警報装置1における1aは発光素子、1bはブザー、1cは撮像手段、1dは遮光壁を示す。遮光壁1dは、発光素子1aの光が撮像手段1cに直接あたらないようにするためのものである。
煙感知器3で火災による煙を感知すると感知信号線4を通じて火災感知信号が受信機2に伝えられ、火災感知信号を受信した受信機2は図示しない蓄積機能等の火災判断手段により火災判断を行う。受信機2が火災と判断したときには警報信号線5を通じて火災警報信号が光警報装置1の送受信手段9に伝えられ、発光素子1aが間欠的にフラッシュ発光する。間欠的フラッシュ発光は0.5〜2Hz程度の周波数であることが好ましい。発光素子1aは、大光量のLED等である。発光素子1aをフラッシュ発光させるとき、ブザー1bを鳴動させてもよい。ブザー1bは自動火災報知設備の地区音響装置として機能させてもよい。また、ブザー1bは音声メッセージによって警報を発する音声警報装置であってもよい。他に地区音響装置がある場合は光警報装置1に備えられなくてもよい。
図2は光警報装置1の内部構成である。発光素子1a、ブザー1bは、それぞれ発光駆動手段6a、ブザー駆動手段6bにより駆動される。発光素子1aがLEDの場合には、発光駆動手段6aは電流駆動手段である。そして、これらの駆動手段を、制御手段8により制御する。
光警報装置1は、フラッシュ光を配光する方向、例えば、光警報装置1背面の取付面の反対側の面に備えた撮像手段1cを備える。撮像手段1cは危険を予測するために設けられ、危険予測手段7の一部を構成する。そして、危険予測手段7は、撮像手段1cの映像信号からフラッシュ発光を直視した人に強い刺激を与える危険を予測すると、制御手段8に危険予測信号を出力し、制御手段8は刺激を軽減するように発光素子1aの発光態様を制御する。撮像手段1cは、フラッシュ光が配光される広い範囲を視野とするように、広角な視野を得るレンズを備えるようにしてもよいし、凸面鏡を備えるようにしてもよいし、複数の視野を有するカメラを用いてもよいし、複数のカメラを組み合わせて用いるようにしてもよい。あるいは、避難経路に設けられた光警報装置1の視野を、非常口から遠い方向の避難経路に向け、非常口に向かって移動する人の正面側だけを捉えるようにしてもよい。避難中の人の背後からフラッシュ発光させても、その人の目に強い刺激を与えることはないので、その刺激を軽減する必要はない。この場合、撮像手段1cを回動可能とし、設置場所に応じて視野方向を適宜変更可能としておくとよい。
次に、図3により実施例1の光警報装置1の動作を説明する。図3(a)は発光素子1aによる発光タイミングと発光輝度、図3(b)は光警報装置1が送受信手段9で受信する火災警報信号、図3(c)は危険予測手段7の出力である危険予測信号をあらわす。撮像手段1cから得られた映像には、例えば、危険予測手段7の画像認識手段でViola−Jones法などを適用して顔検出を行う。顔が検出されて、光警報装置1の方向を向いている人がいると判断した場合には、危険予測手段7内の判断手段(図示せず)で危険と予測されて、危険予測信号を出力する。顔が検出されず、光警報装置の方向を向いている人がいないと判断した場合には、判断手段で危険と予測されずに危険予測信号を出力しない。そして、危険予測信号は危険予測手段7の出力信号として制御手段8に送られる。
図3(b)のAの時点で火災警報信号が得られると図3(a)のように、制御手段8は発光素子1aを間欠的にフラッシュ発光させるように発光駆動手段6aを制御する。そして、危険予測手段7が、フラッシュ発光を直視した人に強い刺激を与える危険があると予測して、Dsの時点で図3(c)の危険予測信号を出力すると、図3(a)のようにフラッシュ発光の輝度を下げて人に与える刺激を軽減するような発光態様とする。その後、Deの時点で危険は予測されずに危険予測信号が出力されなくなると、再び元の輝度に戻る。すなわち、光警報装置1の方向を向く人がいると発光輝度が下がり、他の方向を向くなどして顔が検出されなくなると再び発光輝度が上がるように発光駆動を変化させる。
このように、発光駆動を変化させることにより、輝度の高いフラッシュ発光を人が直視することがなくなり、フラッシュ発光が人に与える刺激を軽減する。実施例1では、危険予告信号により発光輝度を下げたが、光が人に与える刺激を軽減する発光態様としては、危険予告信号がある間だけ一時的にフラッシュ発光を停止してもよい。
なお、実施例1では、遮光壁1dを設けて、発光素子1aの光が撮像手段1cに直接あたらないようにしたが、遮光壁1dは必ずしも設けねばならないというものではなく、発光素子1aからの発光タイミングで撮像手段1cの出力をマスキングしたり、撮像手段1cの動作を停止したりするようにしてもよい。また、実施例1では、発光素子1aは、間欠的なフラッシュ発光を行うときに発光させるようにしたが、撮像手段1cを撮像可能とするための照明として、間欠的なフラッシュ発光の間に、撮像可能とする程度の輝度で発光素子1aを点灯させるようにしてもよい。このとき、発光素子1aに代えて、図示しない他の発光素子を点灯させるようにしてもよいし、フラッシュ発光時も含めて火災警報信号を受信している間に前記他の発光素子を点灯させるようにしてもよい。
なお、間欠的なフラッシュ発光の間の上記照明は、撮像手段1cの撮像を可能とさせるのみならず、周囲が暗い場合に人が避難することを容易にする照明として作用させてもよい。また、実施例1では顔検出により人の顔の向きが発光素子1aの方向を向いている場合に危険であると予測して危険予測信号を出力したが、より詳細に危険予測手段7で人の視線を検出して、その視線が発光素子1aの方向を向いているときに判断手段が危険であると予測し、危険予測信号を出力するようにしてもよい。また、次の実施例で後述するように、人との距離、人の存在を検出し、人との距離が所定距離以下のとき、あるいは、人の存在を検出しているときに、判断手段が危険であると予測し、危険予測信号を出力するようにしてもよい。
実施例1では撮像手段1cを設けてその映像から危険予測信号を得たが、危険予測手段7として人感センサを用い、人との距離や人の存在を検出して危険予測信号を出力しても良い。人との距離の場合は、所定距離以下の場合に危険予測信号を出力する。また、人の存在の場合は、人の存在が認識されると危険予測信号を出力する。人感センサは赤外線、超音波、電波などを用いたものでも良いが、撮像手段1cの映像信号を解析して人との距離や人の存在を検出しても良い。
さらに、危険予測手段7に撮像手段1cと人感センサ1e(図示せず)を設け、危険予測を行っても良い。この実施例では、図2の危険予測手段7は撮像手段1cに加えて人感センサ1eを内部構成として備える。図4により、人感センサ1eを用いて発光輝度を制御する実施例2を説明する。人感センサ1eは、人の動き等を検出することによって人の存在を検出センサである。図4(a)は発光素子1aによる発光タイミングと発光輝度、図4(b)は火災警報信号、図4(c)は顔検出信号をあらわす。顔検出信号は、実施例1における図3(c)の危険予測信号と同様に、撮像手段1cから得られた映像を用いて顔検出を行い、顔が検出されて、光警報装置1の方向を向いていると判断した場合には、危険予測手段7の内部で顔検出信号が出力される。また、人感センサ1eは人を検出したときに図4(e)の人感信号を危険予測手段7の内部で出力し、検出していないときに出力しない。
Aの時点で図4(b)のように火災警報信号が得られると図4(a)のように高い輝度でフラッシュ発光を開始する。図4(c)の顔検出信号はFsからFeまで顔検出して出力状態であり、図4(e)の人感信号はMs以降に人を検出して出力状態となっているが、顔検出信号と人感信号が同時に出力状態である図4(f)のDsからDeの期間に危険予測手段7から危険予測信号が出力され、制御手段8により図4(a)のようにフラッシュ発光が低輝度化される。
矢印のフラッシュ発光の際には図4(c)の顔検出信号は出力されているが、図4(d)の人感信号は出力されていない。この場合には判断手段が、人が強い刺激を受ける距離にまでは接近していない、あるいは、顔が誤検出されているのと判断し、発光輝度は下げないようにすることができる。
なお、顔検出信号と人感信号が両方とも出力されていない場合には、警報の報知エリアに人がいないものとして、間欠的なフラッシュ発光を停止しても良いし、発光輝度を下げるようにしても良い。この場合、撮像手段1cと人感センサ1eとは、フラッシュ発光で警報する範囲の人を検出できるものであればよい。また、人感センサ1eは撮像手段1cとは別途に設けても良いが、撮像手段1cから得られる映像信号を解析して人の検出を行っても良い。その場合には、映像中の人間らしい形状や動き等を判別して人感信号を出力する。また、人感センサの検出範囲が警報する範囲の人を検出できる場合は、人感センサの検出情報を、送受信手段9を介して他の光警報装置1に伝えて、地区内の全ての人感センサ1eで人を検出しないときに無人であると判断し、間欠的なフラッシュ発光を停止するようにしても良いし、発光輝度を下げるようにしても良い。
上記のようにフラッシュ発光を停止したりフラッシュ発光の輝度を下げたりすると、光警報装置1の消費電力を低減させることができる。ひいては、停電した場合に所定時間動作可能とするために設けられている、二次電池から成る予備電源(図示せず)の動作可能時間を延ばすことが可能となる。そして、大規模災害が発生して停電が長時間続いた場合でも、予備電源で動作できる時間を延ばすことが可能となる。なお、予備電源は、一般には受信機2に設けられて、停電時に自動火災報知設備全体へ電力を供給するが、光警報装置1専用の電源装置(図示せず)を設け、そこに予備電源を備えて停電時に光警報装置1に電力を供給するようにしても良い。
さらに、撮像手段1cからの映像信号を解析して、撮像された人が公設消防隊の装備を装着した消防士であると判断すると、自機又は地区内の全ての光警報装置1の間欠的なフラッシュ発光を停止するようにしても良いし、発光輝度を下げるようにしても良い。すなわち、撮像手段1cからの映像信号に基づいて、消防士を検出する画像認識手段を危険予測手段7等に備え、この画像認識手段が消防士を検出すると、制御手段は、フラッシュ発光を停止させるように、あるいは、フラッシュ発光の輝度を下げるように、発光素子1aを制御する。このようにすることにより、光警報装置の発光が消防活動の妨げとならないようにすることもできる。画像認識手段が検出する者は、消火活動に当たる者に限るものではなく、レスキュー隊等、救助活動に当たる者を検出するようにしてもよい。また、画像認識手段は、装備に設けられた蛍光テープに光(例えば紫外線)を照射し、その反射光を捉えることによって検出するようにしてもよい。また、画像認識手段に代えて、RFタグ等の標識手段の接近を検出するようにしてもよい。
実施例2では、人との距離が所定値より近いと危険予測信号を出力する例を示したが、危険予測信号を、光警報装置1から人までの距離情報を有する危険予測信号として、発光輝度を変えることができる。実施例3では、実施例2の人感センサ1eに代えて、距離測定が可能な人感センサ1f(図示せず)を光警報装置1に設けて人との距離を測定し、距離情報を有する危険予測信号を危険予測手段7に入力して、距離が近い場合には判断手段が危険であると予測して距離に応じて発光輝度を抑制し、遠い場合には危険でないと予測して距離に応じて発光輝度を上げ、光警報装置1の近くにいる人への影響を少なくする。図5により距離測定が可能な人感センサ1fを用いた発光輝度の制御を説明する。
図5(a)は発光素子1aによる発光タイミングと発光輝度、図5(b)は火災警報信号、図5(e)は人感センサ1fにより得られた、光警報装置1から人までの距離を、図5(f)は距離情報を有する危険予測信号として、連続的な危険度を予測する危険度予測信号を示す。
実施例3では、図5(e)の人感センサ1fにより得られた距離に比例して図5(f)の危険度予測信号の値が得られる。実施例3での危険度予測信号の値は、小さいほど危険度が高い。そして、図5(a)の発光素子1aの発光輝度は、図5(f)の危険度予測信号の値に比例したものとする。その結果、発光素子1aの発光輝度は、図5(e)に矢印で示す距離が近いときに、図5(a)のように発光輝度が低くなり、人への刺激を低減することができる。
実施例1乃至3では、危険予測信号により間欠的なフラッシュ発光の輝度により発光態様を変化させたが、これに代えて間欠的フラッシュ発光の周期の長さにより発光態様を変化させて、人に与える刺激を軽減してもよい。この例を実施例4として説明する。実施例4は、内部構成や自動火災報知設備に設けた際の構成は先に示した実施例と同様であり、制御手段8による発光態様の制御が異なる。図6は、実施例4に係る光警報装置の動作を説明するための図である。これにより、危険予測信号が出力されている際に間欠的なフラッシュ発光の周期を長くするように発光態様を変化させる動作を説明する。
図6(a)は発光素子1aによる発光タイミングと発光輝度、図6(b)は光警報装置1に送受信手段9を介して伝えられる火災警報信号、図6(c)は危険予測信号、図6(d)は制御手段8が図示しない機能的構成として備え、フラッシュ発光の周期を決定するタイマのカウント値をあらわし、カウント値が上がって所定値になるとリセットする。顔検出は、実施例1と同様にViola−Jones法などにより行う。顔検出した場合は危険予測信号が出力される。
Aの時点で図6(b)のように火災警報信号が得られると図6(a)のようにフラッシュ発光を開始する。発光素子1aの発光トリガ信号は、タイマのカウント値が所定値Nになったときに発生し、同時にタイマのカウント値がリセットされる。実施例4では、図6(d)に示すように危険予測信号が出力されていないときには所定値はNであるが、危険予測信号が出力されたときには所定値を増し、例えば2Nにしている。したがって、危険予測信号が出力されているときの発光周期は、所定値が2Nとなるため危険予測信号が出力されていないときの倍になる。この所定値は、危険予測信号の出力の有無によって、それぞれに適切な発光周期に応じて適宜選択される。
Aの時点で図6(b)のように火災警報信号が得られると、図6(d)のようにタイマのカウントが始まる。タイマがNになると図6(a)の発光素子1aのフラッシュ発光が行われるとともに、タイマのカウント値がリセットされる。図6(a)では最初、3回フラッシュ発光した後に、4回目のフラッシュ発光のための図6(d)のカウントの途中であるDsの時点で、図6(c)の危険予測信号が出力されている。そうすると所定値が例えば2Nに変更されて、図6(d)に示すようにそのままカウントアップされる。カウント値が2Nになるとフラッシュ発光が行われるとともに、タイマのカウント値がリセットされる。このようにして、危険が予測されると、この場合は発光周期が2倍になり、危険予測信号が出力されていない場合よりも長い間隔で間欠的なフラッシュ発光が行われる。実施例4では、もう1回、図6(d)に示すように2Nまでカウントして、発光とリセットの後、次のカウントの途中であるDeの時点で図6(c)の危険予測信号が出力されないようになる。そうすると所定値が再びNに戻るが、カウント値はN以上であるため、フラッシュ発光とタイマのカウント値のリセットが行われる。その後は所定値がNであるために発光周期は危険予測信号が出力される前の周期であり、短い間隔で間欠的なフラッシュ発光が行われる。危険予測信号が出力されなくなったタイミングDeでカウント値がN未満である場合は、そのままカウントアップされてカウント値がNになると、フラッシュ発光とリセットが行われる。なお、フラッシュ発光の周期を変化させる場合は、光刺激性発作を防止するために、1人が同時に視認できる光警報装置が他に無いことが望ましい。仮に、1人が同時に視認できる他の光警報装置が存在する場合、危険予測信号が出力されていないときのフラッシュ発光を同期させるようにして、光刺激性発作を防止することが望ましい。例えば、発光周期を決定するタイマを1人が同時に視認できる範囲にある光警報装置同士で同期運転するようにすればよい。さらに、危険予測信号が出力されたときの発光周期を、危険予測信号が出力されていないときの発光周期の整数倍とすることが望ましい。このようにすることにより、複数の光警報装置が異なるタイミングでフラッシュ発光する頻度を低減することができ、光過敏性発作を防止することができる。
以上のようにして、発光駆動を変化させることにより、火災警報の際に光警報装置の近くにいる人が輝度の高いフラッシュ発光を直視する頻度が減り、フラッシュ発光が人に与える刺激を軽減することができる。
上述した各実施例の光警報装置1を煙感知器3に一体化した光警報装置10の例を実施例5として示す。図7は、実施例5に係る光警報装置10の外観図である。図7(a)は、天井設置状態で光警報装置を側方から見た図であり、図7(b)は、下方から見た図である。発光素子10aは高輝度白色LEDであり、煙感知器と一体化した光警報装置10の周りにリング状に配列している。間欠的なフラッシュ発光の際には、同時に発光しても良く、順次発光して複数回を回転した後に停止する動作を繰り返してもよい。撮像手段10cは全方位撮像手段である。光警報装置10の内部構成は、光警報装置として機能する部分は実施例1と同様であり、煙感知器として機能する部分は通常の煙感知器と同様である。また、自動火災報知設備に設けた際には、図1において感知信号線4と警報信号線5を共通化しても良い。実施例5のように光警報装置を煙感知器と一体化することにより、光警報装置の設置場所を煙感知器と共通化することができる。また、煙感知器は建築物の各所に配設される為、煙感知器と一体化していない光警報装置を設置する箇所を減らすことができる。