JP2016109551A - 流量計測方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】空調用設備、工業用ユーティリティ設備などにおいて、配管の工事後に流体が流れる配管の流量を、超音波流量計等を用いず簡易に、精度高く計測する流量計測方法を提供する。【解決手段】配管外側から一定の加熱を行い、配管の外側表面に取り付けられた第一温度センサと第二温度センサにより得られた配管表面温度の温度差を取得し、これを補正し、流速と前記配管の内径から前記配管内に流れる流体の流量を算出する。【選択図】図1

Description

本発明は、空調用設備、工業用ユーティリティ設備などにおける流体が流れる配管の流量計測の方法及び装置に関する。
従来、予め流量計測が必要な箇所には電磁流量計などを配管に取り付けて計測を行うが、後から工事を伴わないで計測を行う場合は、超音波流量計を使用する場合がほとんどである。
しかし、超音波流量計は計測機器が高価である。近時は量産性を改善する発明も提案されているが(特許文献1など)、依然高価であり、更に多数計測する場合は費用が莫大とならざるを得ない。
また、超音波流量計は、精度が±2%で比較的高精度である反面、使用するための条件が厳しく、例えば配管内に錆が生じていたり、流体に気泡が混入したりすると、測定が全くできなくなるとの問題がある。
そこで、従来から熱式流量計(例えば特許文献2、3)などのより簡易に流量計測することができる装置や方法が提案されている。これらによれば、超音波流量計等に比べ(精度は若干劣るとしても)費用を大幅に抑えることが可能となり、また配管内が上記のような状態(錆の発生等)であっても、ある程度の計測を行うことが可能となる。
しかしながら、これらのより簡易な流量計測装置・方法には、例えば同一の計測装置を用いた場合であっても、測定結果に看過できないばらつきが生じ得るとの問題があることが見出された。
特開2014−095581号 特開2006−105847号 特開平5−107093号
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、熱式流量計など、超音波流量計等よりも簡易に流量計測を行う場合にその計測精度を向上させることを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は、第1の側面として、配管外側表面の任意の箇所(第一箇所)に第一温度センサを取り付け、前記第一箇所よりも流体の流れの下流側における前記配管の外側表面の任意の箇所(第二箇所)にヒータを取り付け、該第二箇所と該ヒータの間に第二温度センサを取り付ける工程と、前記第一箇所の温度(第一温度)を第一温度センサにより計測し、前記第二箇所を前記ヒータにより一定の加熱量で加熱して該第二箇所の温度(第二温度)を第二温度センサにより計測し、前記第一温度と前記第二温度の温度差を算出する工程と、前記温度差から前記配管を流れる流体の流量を算出する工程、を有する流量計測方法であって、前記いずれかの工程の前及び/又は後に、前記第一温度と第二温度の温度差を補正するための工程を一以上有する流量計測方法を提供する。
本発明は、第2の側面として、前記第一温度と第二温度の温度差を補正するための工程の一つは、前記配管における第一温度と第二温度の温度差と前記配管を流れる流体の流量の相関式と、前記配管を流量0m/hの条件下で前記ヒータにより一定時間加熱した場合のヒータ上昇温度と経過時間のヒータ加熱線図を取得し、前記相関式と前記ヒータ加熱線図に基づき補正温度を算出し、前記第一温度と第二温度の温度差から前記補正温度を減じる、ことから構成される上記記載の流量計測方法を提供する。
本発明は、第3の側面として、前記第一温度と第二温度の温度差を補正するための工程の一つは、前記配管を流量0リットル/minの条件下で前記ヒータにより一定時間加熱して前記第一温度と第二温度の温度差の最大値を取得し、該最大値から、流量0リットル/minの条件下で予め取得された前記配管の基準となる第一温度と第二温度の温度差の最大値を減じる、ことから構成される上記記載の流量計測方法を提供する。
本発明は、第4の側面として、前記第一温度と第二温度の温度差を補正するための工程の一つは、前記第一温度センサ、前記第二温度センサ及び前記ヒータを固定具により前記配管へ固定するものとし、前記配管を流量0リットル/minの条件下で前記ヒータにより加熱した状態で、前記固定具を、流量0リットル/minの条件下で予め取得された前記配管の基準となる第一温度と第二温度の温度差の最大値となるように調整しながら前記配管へ固定する、ことから構成される上記記載の流量計測方法を提供する。
本発明は、第5の側面として、前記第一温度センサ及び前記第二温度センサにおいて熱電対を使用して温度差を計測し、重複させることで出力を増幅する上記記載の流量計測方法を提供する。
本発明は、第6の側面として、前記ヒータの出力が段階的に制御される上記記載の流量計測方法を提供する。
本発明によれば、熱式流量計など、超音波流量計等よりも簡易に流量計測を行う場合にその計測精度を向上させるとの効果を得ることができる。
本発明に係る流量計測の一実施形態を示す図である。 本発明に係る伝熱理論を説明するための配管及び流量計測装置の断面図である。 本発明による流量計測(温度差補正を除く)の一実施形態のフローチャートを示す図である。 本発明に係る流量計測の一実施形態におけるグラフであり、配管内流体を水とし、送水温度7℃、SGP-W、80A配管の条件で、温度差ΔTと流量Qの相関を測定した測定結果を示すグラフである。 図4と同じ実施形態に関するグラフであり、流量計測装置の取り付けごとの温度差ΔTと流量Qの相関を測定した測定結果を示すグラフである。 図4と同じ実施形態に関するグラフであり、流量0m/hにおける加熱時の、ヒータ(ヒータ部)上昇温度の推移を表したヒータ加熱線図を示すグラフである。 図4と同じ実施形態に関するグラフであり、図5の相関を補正した後の各相関を示すグラフである。 本発明に係る流量計測の他の実施形態におけるグラフであり、配管内流体を水とし、送水温度10℃、SGP80Aの条件で流量0[L/min]において加熱し、基準となる温度差を得た際の温度差の推移を表した加熱線図を示すグラフである。 図8と同じ実施形態に関するグラフであり、基準となる取付(温度センサ、ヒータの取付)について、配管内流体を水とし、送水温度10℃、SGP80Aの条件で、温度差ΔTと流量Qの相関を測定した測定結果を示すグラフである。 図8と同じ実施形態に関するグラフであり、取付状態2及び3において配管内流体を水とし、送水温度10℃、SGP80Aの条件で流量0[L/min]において加熱し、温度差を得て、基準となる温度差とともにその推移を表した加熱線図を示すグラフである。 図8と同じ実施形態に関するグラフであり、取付状態2及び3において配管内流体を水とし、送水温度10℃、SGP80Aの条件で、温度差ΔTと流量Qの相関を測定した測定結果を、基準となる取付の測定結果と共に示すグラフである。 図10で示される温度差の補正値を説明する図である。 図11で示される温度差の補正値を説明する図である。 本発明に係る流量計測の更に他の実施形態におけるグラフであり、第1回目の取付に関するグラフである。 図14と同じ実施形態に関するグラフであり、第2回目の取付に関するグラフである。 本発明に係る流量計測の他の実施形態を示す図である。 本発明に係る流量計測の更に他の実施形態を示す図である。 本発明に係る流量計測の更に他の実施形態を示す図である。 本発明に係る流量計測の更に他の実施形態を示す図である。 本発明に係る流量計測の更に他の実施形態を示す図である。
以下、本発明の流量計測方法及び流量計測装置に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
(実施例1)
図1は本発明に係る流量計測の一実施形態を示す。本発明の流量計測のための装置は、配管を流れる流体の流量を計測するための要素として、第一温度センサ(TP)と、ヒータと、第二温度センサ(TH)と、演算処理部とを備える。第一温度センサは、配管の外側表面の任意の箇所(第一箇所)に取付けられ、この第一箇所の温度(第一温度T0)を計測する。ヒータは、前記第一箇所よりも流体の流れの下流側における前記配管の外側表面の任意の箇所(第二箇所)に取付けられ、この第二箇所を一定の加熱量で加熱する。第二温度センサは、前記第二箇所と前記ヒータの間に取付けられ、前記第二箇所の温度(第二温度T1)を計測する。
第一温度センサ、ヒータ及び第二温度センサは、固定具により配管に固定するのが好ましい。固定具は、計測精度を向上させるため、断熱性を有するものとするのが好適である。
演算処理部は、前記第一温度センサと前記第二温度センサに電気的に接続されており、第一温度センサにより計測された第一温度と前記第二温度センサにより計測された第二温度の温度差に基づいて前記配管を流れる流体の流量を算出する。なお、理論上は温度差から流速が算出されこれと配管の内径とに基づき流量が算出される。
ヒータで配管外側の第二箇所を加熱すると、熱は配管材を熱伝導、管内壁から流体に熱伝達で移動する。この際の管内壁から流体への熱伝達による伝熱量は流速と相関関係があり、加熱量が一定の場合、熱伝達率の違いは第二温度センサ(TH)の温度となって現れる。これによれば、流体の温度にかかわらず、第一温度センサ(TP)と第二温度センサ(TH)の温度差との相関から流量を算出することが可能となる。
かかる伝熱理論の詳細につき、図2を参照して説明する。まず、ヒータから配管内流体への熱抵抗Rは、次式により表すことができる。
R=1/πr1h+1/πλ・ln(r2/r1)
よって、単位長さ当たりの熱通過量Qは、次式で表される。
Q=(T0−T1)/R
ここで、熱伝導率λは物性値であるが、熱伝達率hは次式で表されるように、管内流速により変化する。
h=Nu×λ/2r1
Nu:ヌセルト数
ここで、Nuは乱流域において次式で表される。
Nu=0.023×Re^0.8×Pr^0.4
Re:レイノルズ数
Re=V×2r1/ν
ν:動粘性係数(m2/s)
Pr:プラントル数
Pr=ν/α
α:温度拡散率
α=λ/ρCp
ρ:密度(kg/m3)
Cp:定圧比熱(J/kgk)
従って、加熱量Qを一定として、T0とT1を計測することにより、流速を求めることができる。なお、本発明において、T0は第一温度センサ(TP)により計測し、T1は第二温度センサ(TH)により計測することができる。
流量は、流速と配管内径から算出することが可能である。
以上による流量計測の手順の概要としては、計測装置の電源を入れ、TP、THによる測定を開始する。測定条件を設定し、ヒータの電源を入れ、THによる第二温度(T1)が過熱防止温度(TC)よりも低い場合、流量演算処理が行われ、流量が算出される。かかる流量計測の手順詳細を図3にフローチャートで示す。
ところで、実際の流量測定においては、配管表面状態や、温度センサ、ヒータの取り付け方により、計測温度にばらつきが生じてしまう。上記のとおり、本発明の流量測定装置は、計測精度を向上させるために配管表面に温度センサ及びヒータを、固定具を介して固定することができるが、その場合も同様である。これは、主として配管表面と温度センサやヒータとの間の接触抵抗による。かかる接触抵抗が大きいと温度は高く、接触抵抗が小さいと温度は低く計測される。
すなわち、前述のヒータから配管内流体への熱抵抗Rも、配管表面と温度センサとの間に接触抵抗があるため、実際には次式で表されるべきこととなる。
R=1/πr1h+1/πλ・ln(r2/r1)+R1
R1: 配管表面と温度センサとの間の接触抵抗
このように、理論計算値と実測値は一致しない。
例えば、上記測定装置を用い、配管内流体を水とし、送水温度7℃、SGP-W、80A配管の条件で、温度差ΔT(デルタT)と流量Qを測定したところ、図4に示すような温度差ΔTと流量Qの相関Aが得られた。次に、本測定装置の取り付け箇所を3か所変更し、温度差ΔTと流量Qの相関を測定すると、図5のように最初に測定された相関Aと異なる相関B〜Dが得られた。これは、温度センサ及びヒータが配管に密着する圧力の違いにより、ヒータと配管間の熱抵抗が変化し、ヒータから流体までの熱移動量とヒータ出力が釣り合う温度T´が変化することから、本測定装置を取り付ける毎に温度差ΔTと流量Qの相関が変わってしまうためである。すなわち、相関Aの相関式を用いて別の取り付け箇所の温度差ΔTから流量を算出してしまうと、実際の流量とは大きく異なった流量を算出してしまうこととなる。例えば、相関Dの取り付け状態で温度差が25℃を測定した場合、実際の流量は25m/h流れているのに対し、相関Aの相関式を用いて計算してしまうと、流量は8m/hで算出されてしまう。そのため、実際の流量に対する精度としては、30%に悪化する。
このように、温度センサ及びヒータの配管への取り付け毎の密着圧力の違いを考慮し、相関を補正する必要がある。本発明においては、上記のような接触抵抗により生じる誤差を考慮のうえ、校正を行うことで流量計測の精度を向上させる。具体的には以下のとおりである。
上記の流量測定のための装置を配管に取り付けた後、配管内の流体が流れていない状態(循環ポンプを停止したり、バルブを閉じたりした状態)で、一定時間ヒータ加熱を行う。接触抵抗に差があると、この際の温度上昇(温度上昇速度や、収束温度)に違いが生じる。これを例えば加熱開始後一定時間経過した際の温度センサ計測温度と、換算式を求めた時の基準温度との差を用いて流量換算式の補正を行う。
すなわち、流量が0m/hの条件でヒータにより一定時間加熱を行い、ヒータ加熱線図を取得すると、図6に示すようにヒータの加熱経過時間によってヒータ(ヒータ部)上昇温度に差が見られる。これは、ヒータ及び温度センサの配管への密着圧力の違いによる。
一方、図5に示す温度差ΔTと流量Qの相関A〜Dは、密着圧力によって左右にシフトしているのみである。
そこで、温度差ΔTと流量Qの相関の左右へのシフトを、流量が0m/hの条件の密着圧力によるヒータ加熱線図の違いに基づき補正する。具体的な補正手順は以下のとおりである。
[手順1: 基準相関式及び基準加熱線図の取得]
基準とする温度差ΔTと流量Qの相関式、及び流量0m/h時の基準ヒータ加熱線図を取得する。基準相関式を取得する際のみ、電磁流量計もしくは超音波流量計等を用いて温度差ΔTと流量Qの相関式を取得し、それ以外は本発明にかかる流量計を用いる。図4及び図5、図7の相関Aを基準相関式、図6のAを基準加熱線図とする。基準ヒータ加熱線図取得時の加熱時間は任意とし、本例では120[s]とした。基準ヒータ加熱線図Aの120[s]後のヒータ部上昇温度は36.7℃である。
[手順2: 流量測定配管の加熱線図の取得]
流量を測定したい配管に流量計を取り付け、流量0m/h時のヒータ加熱線図を取得する。図6のB〜Dをそれぞれ流量を測定したい配管のヒータ加熱線図とし、120[s]のヒータ部上昇温度は、Bが39.7℃、Cが40.8℃、Dが42.8℃であった。
[手順3: 補正温度の算出]
図6に示すヒータ加熱線図において、基準ヒータ加熱線図Aの120[s]のヒータ部上昇温度A36.7℃と、流量を測定する配管のヒータ加熱線図B〜Dの120[s]のヒータ部上昇温度B=39.7℃、C=40.8℃、D=42.8℃の差に、それぞれ補正係数0.57を乗じた値を補正温度とする。従って、補正温度B=1.7℃、補正温度C=2.3℃、補正温度D=3.5℃となる。
なお、補正係数0.57は、送水温度7℃、SGP-W、80A配管に対し、温度差ΔTと流量Qの相関及びヒータ加熱線図の取得を繰返し実施し、ヒータ加熱線図の120[s]の温度で補正する際に必要な掛け率を平均して算出したものである。そのため、ヒータ加熱線図の参照時間を異なる時間にする場合や配管の測定条件(送水温度及び材質、口径)を変更する場合は、別途基準相関式及び基準ヒータ加熱線図、補正係数を算出する。
[手順4: 流量の算出]
それぞれの取り付け状態B〜Dにおいて測定された温度差ΔTに補正温度を減じ、図6に示す相関Aの相関式:流量Q=10^[-4.01825*ln(ΔT)3+39.4356*ln(ΔT)2-131.882*ln(ΔT)+150.885]に代入する。
補正後の温度差ΔTと流量Qの相関B〜Dを図7に示す。図6の補正前の相関に対して、密着圧力によるバラつきが改善されていることが分かる。
(実施例2)
本発明の流量計測のための装置を配管に取り付け、流量0リットル/minの条件でヒータにより加熱し、加熱時間及び配管における第一温度T0(上流)と第2温度T1(下流)との温度差の加熱線図を取得したところ、一定時間経過後、第一温度と第二温度の温度差の最大値が現れることが見出された(一例として、SGP80Aにつき図8、図10参照)。すなわち、流量0リットル/minの条件で配管を加熱したとき、第一温度センサ(TP)と第二温度センサ(TH)の距離が一定範囲にある場合、第二温度センサ(TH)のみならず、第一温度センサ(TP)にも温度上昇がみられた。
これは、以下に基づくものと考えられる。ヒータ直下にある第二温度センサ(TH)はヒータ加熱の影響を瞬時に受け、温度が上昇し、温度が定常状態へ移行するのに対し、第一温度センサ(TP)は、第二温度センサ(TH)よりもヒータから離れており、配管表面の熱伝導を介して温度が上昇し、定常状態へ移行するため、時間遅れが生じる。ここで、ヒータ加熱開始直後は、第一温度センサ(TP)の温度上昇量より第二温度センサ(TH)の上昇量が大きいため、第一温度と第二温度の温度差が大きくなる。その後、まず第二温度センサ(TH)の温度が定常化に達するが、このときも、第一温度センサ(TP)は、時間遅れにより温度の定常化まで達しておらず、温度上昇を続ける。そのため、第二温度センサ(TH)が定常化に達した後は、第一温度と第二温度の温度差が縮まることとなる。結果として、第二温度センサ(TH)が定常化に達した時点で、第一温度と第二温度の温度差に最大値が現れる。なお、その後、第一温度センサ(TP)の温度が定常化することで、第一温度と第二温度の温度差は定常化する。
温度差を補正する手段として、かかる現象を用いる。すなわち、予め基準となる最大値(第一温度と第二温度の温度差の最大値)を取得(測定・算出)しておき、実際の流量計測の際に、同様の条件(流量0リットル/min)で、流量計測する配管の第一温度と第二温度の温度差の最大値を取得(測定・算出)し、基準となる最大値(ピーク時の温度差)と比較して両者の差を補正することが可能である。
まず、基準となる温度差(第一温度と第二温度の温度差)の最大値(基準加熱補正値)を上記条件下で加熱して取得する。その際に得られた加熱線図は図8に示されるとおりであり、この場合の温度差の最大値は31.5℃であった。併せて、基準となる相関(流量及び、第一温度と第二温度の温度差の相関)を取得する。その結果(相関図)を図9に示す。
次に、実際の流量計測の際に、同様の条件(流量0リットル/min)で加熱して温度差(第一温度と第二温度の温度差)の最大値を取得する。実際の流量計測の場合として本実施例では2つの取付状態における数値を計測・算出した(図における「取付状態2」「取付状態3」)。その際に得られた加熱線図は図10に示されるとおりであり、取付状態2の温度差の最大値は34℃、取付状態3の温度差の最大値は37.3℃であった。併せて、基準となる相関(流量及び、第一温度と第二温度の温度差の相関)を取得する。その結果(相関図)を図11に示す。
以上から、基準となる温度差の最大値と、取付状態2・取付状態3の温度差の最大値との差は、それぞれ2.5℃、5.8℃となる(図12)。よって、図13に示すように、取付状態2は相関図において2.5℃、取付状態3は相関図において5.8℃、それぞれシフトするように補正する。これにより、簡易流量計測装置においても、計測の精度を向上させることができる。
なお、第一温度センサ(TP)と第二温度センサ(TH)の距離が近過ぎると、流量0リットル/minの条件で加熱を行った場合、第一温度センサ(TP)にも温度上昇が発生してしまい、配管内流体の温度を測定することが困難となる。そのため、流量測定時は、第一温度センサ(TP)にヒータの影響が生じない流量で測定するように、流量計測が可能な下限流量を設けるのが好適である。
(実施例3)
実施例1や2は、流量計測のための温度センサやヒータを取り付けた後に温度差を補正する例であるが、本実施例は、これらを取り付ける際に温度差を予め得た基準に一致・統一するように補正する。
上記のとおり、第一温度と第二温度の温度差のばらつきの大きな原因は、流量計測のための温度センサやヒータの配管への取り付け状態(密着の程度など)の違いに存する。とすれば、温度センサ・ヒータを統一した状態で取り付けることにより、かかる温度差のばらつきを低下させることが可能となる。すなわち、流量計測時の温度差のばらつきの影響を予め補正することができる。
具体的には、まず、実施例2と同じく配管を流量0リットル/minの条件下で加熱し基準となる温度差(第一温度と第二温度の温度差)の最大値(基準加熱補正値)を取得する。この場合の温度差の最大値は31.5℃である。
本実施例においては、実際の流量計測時、温度センサやヒータを、固定具を用いて配管に固定するものとする。そして、この固定具による固定の際に、第一温度と第二温度の温度差が基準となる温度差の最大値(本実施例では31.5℃)と一致するように調整しながら固定具を配管に固定する。
上記調整は、例えば固定具における固定手段をボルトナットとし、これの締め付けを調整することで行うことが可能である。
固定具の締め付けを強めると温度が低下するので、第一温度と第二温度を確認しながらそれらの温度差が基準値(本実施例では31.5℃)となるまで締め付ける。
図14、図15は、温度センサ及びヒータを、固定具を用いて温度差が基準値である31.5℃となるように取り付けた際の経過を経過時間と温度から表したグラフである。図14と図15は別々の取り付け時についてのものを夫々表しており、図14が1回目、図15が2回目である。なお、これらのグラフから、第一回目は開始から約270秒後、第2回目は開始から約140秒後にそれぞれ温度差が基準値とほぼ一致したことが確認できる。
(実施例4)
誤差の原因となる温度センサの接触抵抗は、上記のとおり取付時の設置圧力に強い相関がある。従って、流量計測のための装置を配管に取り付ける際に、圧力センサを用いて温度センサ設置圧を均一にすることで精度を向上する。図16にその一例を示す。
(実施例5)
接触抵抗を小さくするため、配管外側表面と温度センサの間に、熱伝導率の高いペースト材を介して取り付ける。このペースト材は、例えばアルミ等の熱伝導性の高い材質の粉を練り込んだグリスとすることができる。図17にその一例を示す。
(実施例6)
本発明の流量計測のための装置に用いることができる温度センサとしては、測温抵抗体、熱電対、サーミスタなどが挙げられる。一般に、流量計測装置には、測温抵抗体が最も精度が高く、温度測定センサとして良く使用されている。一方、熱電対は、測温抵抗体に比べ安価であるが、精度が低い。ここで、本発明における流量計測のための装置は、2カ所の配管表面温度差と流量との相関関係を利用しているため、重要なのは絶対温度ではなく温度差である。2個の温度センサの温度差を計算する場合、公差が2倍となるので注意が必要である。しかし、温度差の計測であれば、熱電対を用いて熱起電力として直接計測することが可能である。また、熱電対を何重にも折り返すことにより熱起電力を増幅することが可能であり、温度差の分解能を向上させることにより計測精度も向上する。表1にT型熱電対の熱起電力を、図18に重複による出力増幅イメージを示す。
熱起電力表(T熱電対規準熱起電力表)
Figure 2016109551
備考1:基準接点の温度は0℃とする。
2:単位 mV
(実施例7)
本流量計測方法において流量の分解能を向上させるためには、温度差が大きくなるように加熱量を大きくすることが効果的である。ここで、流量が大きくなると、管内流体が持ち去る熱量が大きくなることから、表面温度が低くなり、温度差が小さくなるため、加熱量が大きくなる。しかし、流量の小さい場合に同じ熱量で加熱すると、温度が高くなりすぎて逆に温度にばらつきが生じる。従って、小流量から大流量まで精度良く計測するためには、加熱量を変化させることが有効である。
そこで、計測温度が一定になるように加熱量を制御し、加熱量(ヒータ出力)から流量に換算することが考えられる。しかしながら、ヒータ出力の計測には電流および電圧の計測が必要とならざるを得ない。また、それによりコスト(装置価格)も上昇することとなる。
以上に鑑み、本発明においては、ヒータ出力を段階的に制御し、予め求めておいた各ヒータ出力と温度差との相関関係から流量を算出することにより、ヒータ出力の計測に電流・電圧の計測を必要とせずに計測精度を向上させるものとする。これにより、コスト(装置価格)の上昇も抑えることが可能となる。
具体的には、図19に示すようにヒータを複数枚重ねるなどで段階的な出力制御を行ったり、図20に示すようにヒータ回路に抵抗を切り換えて出力を段階的に制御したりすることが可能である。
上記のとおり、超音波流量計は、錆の発生その他配管内の状態が悪いと使用することができず、また、これが使用できる場合でも高価であり、必ずしも使用し易いものではない。一方、熱式流量計等、流量計測のためのより簡易な装置や方法は、精度が必ずしも安定しないものであった。本発明によれば、錆などにより管内状態が劣悪であったり、流体に気泡が混入していたりする場合であっても、流量の計測が可能であることはもとより、簡易な流量計測においてその精度を向上させることができ、よって、流量計測をより行い易いものとすることができる。このように、本発明の産業上の利用可能性は極めて高い。
TP: 第一温度センサ
TH: 第二温度センサ
T0: 第一温度
T1: 第二温度
TC: 過熱防止温度

Claims (6)

  1. 配管外側表面の任意の箇所(第一箇所)に第一温度センサを取り付け、前記第一箇所よりも流体の流れの下流側における前記配管の外側表面の任意の箇所(第二箇所)にヒータを取り付け、該第二箇所と該ヒータの間に第二温度センサを取り付ける工程と、
    前記第一箇所の温度(第一温度)を第一温度センサにより計測し、前記第二箇所を前記ヒータにより一定の加熱量で加熱して該第二箇所の温度(第二温度)を第二温度センサにより計測し、前記第一温度と前記第二温度の温度差を算出する工程と、
    前記温度差から前記配管を流れる流体の流量を算出する工程、を有する流量計測方法であって、
    前記いずれかの工程の前及び/又は後に、前記第一温度と第二温度の温度差を補正するための工程を一以上有する流量計測方法。
  2. 前記第一温度と第二温度の温度差を補正するための工程の一つは、
    前記配管における第一温度と第二温度の温度差と前記配管を流れる流体の流量の相関式と、前記配管を流量0m/hの条件下で前記ヒータにより一定時間加熱した場合のヒータ上昇温度と経過時間のヒータ加熱線図を取得し、
    前記相関式と前記ヒータ加熱線図に基づき補正温度を算出し、
    前記第一温度と第二温度の温度差から前記補正温度を減じる、ことから構成される請求項1に記載の流量計測方法。
  3. 前記第一温度と第二温度の温度差を補正するための工程の一つは、
    前記配管を流量0リットル/minの条件下で前記ヒータにより一定時間加熱して前記第一温度と第二温度の温度差の最大値を取得し、該最大値から、流量0リットル/minの条件下で予め取得された前記配管の基準となる第一温度と第二温度の温度差の最大値を減じる、ことから構成される請求項1又は2に記載の流量計測方法。
  4. 前記第一温度と第二温度の温度差を補正するための工程の一つは、
    前記第一温度センサ、前記第二温度センサ及び前記ヒータを固定具により前記配管へ固定するものとし、前記配管を流量0リットル/minの条件下で前記ヒータにより加熱した状態で、前記固定具を、流量0リットル/minの条件下で予め取得された前記配管の基準となる第一温度と第二温度の温度差の最大値となるように調整しながら前記配管へ固定する、ことから構成される請求項3に記載の流量計測方法。
  5. 前記第一温度センサ及び前記第二温度センサにおいて熱電対を使用して温度差を計測し、重複させることで出力を増幅する請求項1〜4のいずれか一項に記載の流量計測方法。
  6. 前記ヒータの出力が段階的に制御される請求項1〜5のいずれか一項に記載の流量計測方法。
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