JP2016109030A - バイフューエルエンジンの空燃比制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】組成の異なるガス燃料が使用されても、空燃比を好適に制御することのできるバイフューエルエンジンの空燃比制御装置を提供する。【解決手段】ガス燃料運転と液体燃料運転とを切り換え可能なバイフューエルエンジン10において、メイン制御ユニット34は、酸素濃度センサー25による排気の酸素濃度の検出値が理論空燃比時の値に近づくようにフィードバック補正を行って液体燃料用噴射時間を演算し、サブ制御ユニット35はその液体燃料用噴射時間からガス燃料用噴射時間を演算する。そして、サブ制御ユニット35は、ガス燃料の補給が確認されると、その後のガス燃料運転中に、制御空燃比を理論空燃比とするために必要な噴射時間の想定値である基準噴射時間とガス燃料用噴射時間との比較結果に基づき、同ガス燃料用噴射時間を補正するガス燃料組成学習値の値を設定する。【選択図】図1
Description
本発明は、ガス燃料運転と液体燃料運転とを切り換え可能なバイフューエルエンジンの空燃比制御装置に関する。
周知のように、車載等のエンジンでは、燃焼される混合気の空燃比を理論空燃比とするための空燃比制御が行われる。空燃比制御では、排気の酸素濃度の検出結果から把握される実際の空燃比(制御空燃比)と理論空燃比とのずれに応じたインジェクターの噴射時間のフィードバック調整が、いわゆる空燃比フィードバックが行われる。また、空燃比制御では、そうした空燃比フィードバックの応答を高めるため、制御空燃比と理論空燃比との定常偏差を空燃比学習値として学習する空燃比学習も行われる。
こうした空燃比制御は、圧縮天然ガス(CNG:Compressed Natural Gas)や液化石油ガス(LPG:Liquid Petroleum Gus)などのガス燃料を使用するガス燃料エンジンでも、同様に行われることがある。そして従来、CNGをガス燃料として使用するガス燃料エンジンにおいて、空燃比学習値がしきい値を超えたときに空燃比フィードバックの目標空燃比を理論空燃比から出力空燃比へと切り換えることで、想定よりも単位質量当たりの発熱量の低いCNGが使用される場合の制御空燃比のリーン化を抑える技術が開示されている(特許文献1)。なお、理論空燃比は、噴射した燃料のすべてが過不足なく完全燃焼される空燃比であり、出力空燃比は、エンジン出力が最大となる空燃比である。
ところで、近年には、ガソリンなどの液体燃料を使用する液体燃料運転と、CNG、LPGなどのガス燃料を使用するガス燃料運転とを切り換え可能なバイフューエルエンジンを搭載した車両が実用されている。こうした車両が使用される国や地域では、流通するガス燃料の品質(純度など)に大きなばらつきが存在することがある。
そうした場合、それまで使用していたガス燃料とは異なる組成のガス燃料が補給されると、その補給の前後で、ガス燃料の単位質量当たりの発熱量が、ひいては噴射したガス燃料を完全燃焼させるために必要な空気の量が変化してしまう。そしてその結果、燃料補給後における最初のガス燃料運転の開始直後に、理論空燃比からの制御空燃比のずれが、すなわち制御空燃比の乱れが生じてしまう。
このときの制御空燃比の乱れは、やがては空燃比フィードバックにより補償される。しかしながら、その状態で空燃比学習が行われると、ガス燃料の組成の違いによる制御空燃比のずれ分まで、空燃比学習値に反映されてしまうことになる。こうした場合の空燃比学習値は、ガス燃料運転中には適切な値であっても、ガス燃料の組成とは無関係な液体燃料運転時には、不適切な値となる。そのため、その後にバイフューエルエンジンの運転が液体燃料運転に切り換えられると、その直後に再び制御空燃比が乱れてしまう。
さらに、その液体燃料運転中には、ガス燃料の補給前の値に空燃比学習値が戻される。そのため、液体燃料運転とガス燃料運転とが切り換えられる毎に、制御空燃比の乱れが生じてしまうようになる。
ちなみに、上述の従来のCNGエンジンの技術を、こうしたバイフューエルエンジンにおけるガス燃料運転時の制御に採用しても、より発熱量の低いガス燃料が補給されたときの制御空燃比のリーン化が抑制されるだけで、液体燃料運転とガス燃料運転との切り換え毎の制御空燃比の乱れは避けられない。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、組成の異なるガス燃料が使用されても、空燃比を好適に制御することのできるバイフューエルエンジンの空燃比制御装置を提供することにある。
上記課題を解決するバイフューエルエンジンの空燃比制御装置は、ガス燃料を使用するガス燃料運転と液体燃料を使用する液体燃料運転とを切り換え可能なバイフューエルエンジンに適用されて、そのバイフューエルエンジンで燃焼された混合気の空気と燃料との比である制御空燃比を理論空燃比に近づけるように制御する。また、同空燃比制御装置は、排気の酸素濃度の検出結果に基づき、同酸素濃度が理論空燃比時の値に近づくようにフィードバック補正を行って液体燃料の噴射時間を演算する第1制御部と、その第1制御部が演算した液体燃料の噴射時間から前記ガス燃料の噴射時間を演算する第2制御部と、を備えている。そして、同空燃比制御装置は、液体燃料運転時には、第1制御部が演算した液体燃料の噴射時間に応じて液体燃料の噴射を行い、ガス燃料運転時には、第2制御部が演算したガス燃料の噴射時間に応じてガス燃料の噴射を行っている。
こうした空燃比制御装置では、第1制御部は、排気の酸素濃度の検出結果に基づいて、その酸素濃度が理論空燃比時の値(理論的には0)となるようにフィードバック補正を行いつつ、液体燃料の噴射時間を演算する。これにより、液体燃料運転時の制御空燃比が理論空燃比に近づくように制御される。一方、ガス燃料運転時には、第1制御部が演算した液体燃料の噴射時間から、第2制御部がガス燃料の噴射時間を演算してガス燃料の噴射を行う。このときにも、理論空燃比からの制御空燃比のずれが生じれば、第1制御部の演算する液体燃料の噴射時間がそのずれを補償すべく補正される。そのため、第2制御部自身が制御空燃比の状況を直接確認していなくても、制御空燃比が理論空燃比に近づくようにガス燃料の噴射時間が調整される。
さらに、液体燃料運転とガス燃料運転との切り換え時にも、液体燃料とガス燃料の理論空燃比の比が既知であれば、液体燃料とガス燃料の理論空燃比に違いに関わらず、制御空燃比を乱れさせずに運転を切り換えられる。すなわち、液体燃料の理論空燃比に対するガス燃料の理論空燃比の比率が一定であれば、制御空燃比を理論空燃比とするために必要な両噴射時間の比率は一定となる。そのため、両燃料の理論空燃比の比率に応じて、液体燃料の噴射時間に対するガス燃料の噴射時間の換算比を設定して、液体燃料の噴射時間からガス燃料の噴射時間の演算を行うようにすれば、制御空燃比が理論空燃比となる液体燃料の噴射時間が分かれば、制御空燃比を理論空燃比とするために必要なガス燃料の噴射時間を求めることができる。よって、切り換え前の液体燃料運転に制御空燃比が液体燃料の理論空燃比となっていれば、ガス燃料運転への切り換え後の制御空燃比を直ちにガス燃料の理論空燃比とすることが可能となる。
しかしながら、流通するガス燃料の組成にばらつきがある場合、補給されたガス燃料の組成により、その実質的な理論空燃比が変わってしまうことがある。そうした場合、上記理論空燃比の比が想定とは異なる値となり、上記換算比が不適切な値となってしまうため、液体燃料運転とガス燃料運転とが切り換えられる毎に制御空燃比が乱れるようになる。
そこで、上記課題を解決するバイフューエルエンジンの空燃比制御装置では、第2制御部は、液体燃料の噴射時間の演算値から演算したガス燃料の噴射時間の演算値に対してガス燃料組成学習値による補正を行うとともに、ガス燃料の補給後におけるガス燃料運転中に、下記(1)および(2)と、下記(3)および(4)の少なくとも一方と、を行っている。
(1)液体燃料の噴射量に対する現在のシリンダー流入空気量の比が液体燃料の理論空燃比の想定値となる液体燃料の噴射時間を基準噴射時間として求めること。
(2)第1制御部が演算した液体燃料の噴射時間の演算値と上記(1)で求めた基準噴射時間とを比較すること。
(3)上記(2)での比較の結果、液体燃料の噴射時間の演算値が基準噴射時間よりも長い場合、ガス燃料の噴射時間をより短くするようにガス燃料組成学習値の値を設定すること。
(4)上記(2)での比較の結果、液体燃料の噴射時間の演算値が基準噴射時間よりも短い場合、ガス燃料の噴射時間をより長くするようにガス燃料組成学習値の値を設定すること。
(1)液体燃料の噴射量に対する現在のシリンダー流入空気量の比が液体燃料の理論空燃比の想定値となる液体燃料の噴射時間を基準噴射時間として求めること。
(2)第1制御部が演算した液体燃料の噴射時間の演算値と上記(1)で求めた基準噴射時間とを比較すること。
(3)上記(2)での比較の結果、液体燃料の噴射時間の演算値が基準噴射時間よりも長い場合、ガス燃料の噴射時間をより短くするようにガス燃料組成学習値の値を設定すること。
(4)上記(2)での比較の結果、液体燃料の噴射時間の演算値が基準噴射時間よりも短い場合、ガス燃料の噴射時間をより長くするようにガス燃料組成学習値の値を設定すること。
また、上記課題を解決する、もう一つのバイフューエルエンジンの空燃比制御装置では、液体燃料の噴射時間から演算したガス燃料の噴射時間の演算値に対してガス燃料組成学習値による補正を行うとともに、ガス燃料の補給後におけるガス燃料運転中に、下記(い)および(ろ)と、下記(は)および(に)の少なくとも一方と、を行っている。
(い)ガス燃料の噴射量に対する現在のシリンダー流入空気量の比がガス燃料の理論空燃比の想定値となるガス燃料の噴射時間を基準噴射時間として求めること。
(ろ)ガス燃料組成学習値による補正前のガス燃料の噴射時間の演算値と上記(い)で求めた基準噴射時間とを比較すること。
(は)上記(ろ)での比較の結果、ガス燃料組成学習値による補正前のガス燃料の噴射時間の演算値が基準噴射時間よりも長い場合、同ガス燃料の噴射時間をより短くするように、ガス燃料組成学習値の値を設定すること。
(に)上記(ろ)での比較の結果、ガス燃料組成学習値による補正前のガス燃料の噴射時間の演算値が基準噴射時間よりも短い場合、同ガス燃料の噴射時間をより長くするように、ガス燃料組成学習値の値を設定すること。
(い)ガス燃料の噴射量に対する現在のシリンダー流入空気量の比がガス燃料の理論空燃比の想定値となるガス燃料の噴射時間を基準噴射時間として求めること。
(ろ)ガス燃料組成学習値による補正前のガス燃料の噴射時間の演算値と上記(い)で求めた基準噴射時間とを比較すること。
(は)上記(ろ)での比較の結果、ガス燃料組成学習値による補正前のガス燃料の噴射時間の演算値が基準噴射時間よりも長い場合、同ガス燃料の噴射時間をより短くするように、ガス燃料組成学習値の値を設定すること。
(に)上記(ろ)での比較の結果、ガス燃料組成学習値による補正前のガス燃料の噴射時間の演算値が基準噴射時間よりも短い場合、同ガス燃料の噴射時間をより長くするように、ガス燃料組成学習値の値を設定すること。
使用中のガス燃料の組成の違いにより、その実質的な理論空燃比に想定値との相違が生じれば、空燃比フィードバックが安定し、制御空燃比が理論空燃比となったときのガス燃料の噴射時間にも、それらの比に応じた相違が生じる。よって、ガス燃料運転中の実際の噴射時間の演算値とその想定値である基準噴射時間の比較結果からは、使用中のガス燃料の理論空燃比の想定した値からのずれを確認することができる。そこで、そうした比較結果に応じて、ガス燃料組成学習値の値を設定し、それにより、ガス燃料の噴射時間を予め補正しておけば、ガス燃料の組成の違いに起因した、液体燃料運転とガス燃料運転との切り換えに際しての制御空燃比の乱れを抑えることが可能となる。なお、ガス燃料の組成の変化は、その補給時にのみ生じるため、そうした学習は、ガス燃料が補給されたときにのみ行えばよい。したがって、上記のように構成されたバイフューエルエンジンの空燃比制御装置によれば、組成が想定と異なるガス燃料が使用されても、空燃比を好適に制御することができる。
なお、上記(3)および(4)におけるガス燃料組成学習値の値の設定は、例えば次のように行うことができる。すなわち、上記(3)におけるガス燃料組成学習値の値の設定を、ガス燃料の噴射時間をより短くする側にガス燃料組成学習値の値を徐々に更新することで行うとともに、かつ上記(4)におけるガス燃料組成学習値の値の設定を、ガス燃料の噴射時間をより長くする側に、同ガス燃料組成学習値の値を徐々に更新することで行うようにする。そうした場合、基準噴射時間と液体燃料の噴射時間の演算値との差が規定値以内となった状態が既定時間継続した場合、ガス燃料が再び補給されるまで、そうしたガス燃料組成学習値の値の更新は停止するようにするとよい。
一方、上記(は)及び(に)におけるガス燃料組成学習値の値の設定は、例えば次のように行うことができる。すなわち、上記(は)におけるガス燃料組成学習値の値の設定は、ガス燃料の噴射時間をより短くする側に同ガス燃料組成学習値の値を徐々に更新することで行うとともに、上記(に)におけるガス燃料組成学習値の値の設定は、ガス燃料の噴射時間をより長くする側に同ガス燃料組成学習値の値を徐々に更新することで行うようにする。ガス燃料組成学習値による補正前のガス燃料の噴射時間の演算値が基準噴射時間から規定値以内の値になった状態が規定時間継続した場合、ガス燃料が再び補給されるまで、ガス燃料組成学習値の値の更新を停止するようにするとよい。
ところで、ガス燃料運転と液体燃料運転との切り換えに際しての制御空燃比の乱れは、液体燃料の組成の違いによっても生じることがある。すなわち、液体燃料の組成により、その理論空燃比が変化すれば、液体燃料およびガス燃料の理論空燃比の比が、ひいては液体燃料の噴射時間からのガス燃料の噴射時間の適正な換算比が変わってしまう。その点、液体燃料の補給後の液体燃料運転中に第2制御部が、ガス燃料の噴射時間の演算値に対して液体燃料組成学習値による補正を行うとともに、液体燃料の補給後の液体燃料運転中に、下記(a)および(b)と、下記(c)および(d)の少なくとも一方と、を行うようにすれば、そうした液体燃料の組成の違いに起因した制御空燃比の乱れを好適に抑えられる。
(a)液体燃料の噴射量に対する現在のシリンダー流入空気量の比が液体燃料の理論空燃比の想定値となる液体燃料の噴射時間を基準噴射時間として求めること。
(b)上記(a)で求めた基準噴射時間と第1制御部が演算した液体燃料の噴射時間の演算値と比較すること。
(c)上記(b)での比較の結果、液体燃料の噴射時間の演算値が基準噴射時間よりも長い場合、同ガス燃料の噴射時間の演算値を補正する液体燃料組成学習値の値をガス燃料の噴射時間をより長くするように設定すること。
(d)上記(b)での比較の結果、液体燃料の噴射時間の演算値が基準噴射時間よりも短い場合、液体燃料組成学習値の値をガス燃料の噴射時間をより短くするように設定すること。
(a)液体燃料の噴射量に対する現在のシリンダー流入空気量の比が液体燃料の理論空燃比の想定値となる液体燃料の噴射時間を基準噴射時間として求めること。
(b)上記(a)で求めた基準噴射時間と第1制御部が演算した液体燃料の噴射時間の演算値と比較すること。
(c)上記(b)での比較の結果、液体燃料の噴射時間の演算値が基準噴射時間よりも長い場合、同ガス燃料の噴射時間の演算値を補正する液体燃料組成学習値の値をガス燃料の噴射時間をより長くするように設定すること。
(d)上記(b)での比較の結果、液体燃料の噴射時間の演算値が基準噴射時間よりも短い場合、液体燃料組成学習値の値をガス燃料の噴射時間をより短くするように設定すること。
なお、上記(c)及び(d)での液体燃料組成学習値の値の設定は、例えば次のように行うことができる。すなわち、上記(c)における液体燃料組成学習値の値の設定を、ガス燃料の噴射時間をより長くする側に、液体燃料組成学習値の値を徐々に更新することで行い、かつ上記(d)における液体燃料組成学習値の値の設定を、ガス燃料の噴射時間をより短くする側に、液体燃料組成学習値の値を徐々に更新することで行うようにすることができる。そうした場合、液体燃料組成学習値の値を液体燃料の噴射時間に換算した値が、液体燃料の噴射時間の演算値に対する基準噴射時間の差から規定値以内の値となった状態が規定時間継続した場合、液体燃料が再び補給されるまで、液体燃料組成学習値の更新を停止するとよい。
(第1実施形態)
以下、バイフューエルエンジンの空燃比制御装置の第1実施形態を、図1〜図6を参照して詳細に説明する。
以下、バイフューエルエンジンの空燃比制御装置の第1実施形態を、図1〜図6を参照して詳細に説明する。
図1に示すバイフューエルエンジン10は、液体燃料であるガソリンを燃料として使用するガソリンエンジンに、ガス燃料供給システムを追加設置したものとなっている。そして、これにより、ガソリンを使用する液体燃料運転とガス燃料を使用するガス燃料運転とを運転中に切り換え可能とされている。
こうしたバイフューエルエンジン10は、燃料と空気との混合気が燃焼される、各気筒の燃焼室11と、燃焼室11に導入される吸気が通る吸気通路12と、燃焼室11での混合気の燃焼により発生した排気が通る排気通路13とを備える。
吸気通路12には、上流側から順に、吸気通路12を通って燃焼室11に送られる吸気の流量(吸入空気量GA)を検出するエアフローメーター14、吸入空気量を調整するスロットルバルブ15、および吸気の脈動を低減するための容積部であるサージタンク16が設けられている。吸気通路12におけるサージタンク16の下流には、吸気を気筒別に分流させる分枝管である吸気マニホールド17が設けられている。そして、この吸気マニホールド17において気筒毎に分岐された吸気通路12は、気筒別に設けられた吸気ポート18を介して各気筒の燃焼室11にそれぞれ接続されている。
各気筒の吸気ポート18には、その内部を流れる吸気中にガソリンを噴射するガソリンインジェクター19がそれぞれ設置されている。また、各吸気ポート18における燃焼室11への接続部分には、吸気バルブ20がそれぞれ設置されている。吸気バルブ20は、その開閉に応じて間欠的に、吸気通路12から燃焼室11に吸気を流入させる。なお、各気筒の燃焼室11には、その内部に導入された吸気と燃料との混合気を火花放電により着火する点火プラグ21がそれぞれ設置されている。
排気通路13は、気筒別の排気ポート22を介して各気筒の燃焼室11に接続されている。各排気ポート22における燃焼室11との接続部分には、排気バルブ23がそれぞれ設置されている。排気バルブ23は、その開閉に応じて間欠的に、燃焼室11から排気通路13に排気を排出させる。また、排気通路13における各排気ポート22の下流には、各気筒の排気を合流する集合管である排気マニホールド24が設けられている。さらに排気通路13における排気マニホールド24の下流側の部分には、排気の酸素濃度に応じた信号を出力する酸素濃度センサー25と、排気を浄化する触媒装置26と、が設けられている。
さらに、バイフューエルエンジン10のガス燃料供給システムは、ガス燃料を貯蔵するガスボンベ27、そのガスボンベ27から供給されたガス燃料を吸気中に噴射する気筒別のガスインジェクター28、およびガスボンベ27から送られたガス燃料を減圧してガスインジェクター28に供給するレギュレーター29を備える。ガスボンベ27とレギュレーター29とは、ガス配管30により接続されている。ガス配管30におけるガスボンベ27との接続部分、およびレギュレーター29との接続部分には、ガスボンベ27からレギュレーター29へのガス燃料の供給を停止/許容するための電磁弁31,32がそれぞれ設置されている。また、各ガスインジェクター28は、吸気マニホールド17における各気筒の分枝通路に、燃料ホース33を介してそれぞれ接続されている。
こうしたバイフューエルエンジン10の制御系には、空燃比制御を行うための制御部として、第1制御部としてのメイン制御ユニット34と、第2制御部としてのサブ制御ユニット35とを備える。メイン制御ユニット34は、ベースとなったガソリンエンジンの燃料噴射制御ユニットそのものであり、サブ制御ユニット35は、ガス燃料供給システムと共に追加設置されたものである。ベースとなったガソリンエンジンでは、噴射指令用の信号線36がメイン制御ユニット34からガソリンインジェクター19に直接接続されているが、このバイフューエルエンジン10では、そうした信号線36が、メイン制御ユニット34からサブ制御ユニット35を経由してガソリンインジェクター19に接続されている。
メイン制御ユニット34には、上述のエアフローメーター14、酸素濃度センサー25に加え、クランク角センサー37、アクセルペダルセンサー38、およびスロットルセンサー39が接続されている。クランク角センサー37は、エンジン回転速度NEの算出に使用されるクランク角信号を出力する。また、アクセルペダルセンサー38は、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル操作量ACCP)を検出し、スロットルセンサー39は、スロットルバルブ15の開度(スロットル開度TA)を検出する。
一方、サブ制御ユニット35には、高圧側ガス圧センサー40、低圧側ガス圧センサー41、およびガス温センサー42が接続されている。高圧側ガス圧センサー40は、レギュレーター29による減圧前のガス燃料の圧力(高圧側ガス圧PH)を検出する。また、低圧側ガス圧センサー41は、レギュレーター29による減圧後のガス燃料の圧力(低圧側ガス圧PL)を、ガス温センサー42は、そのガス燃料の温度(ガス温度THG)をそれぞれ検出する。さらに、サブ制御ユニット35には、ガソリンを使用する液体燃料運転モードとガス燃料を使用するガス燃料運転モードとの、バイフューエルエンジン10の運転モードMODEの切り換えに使用する運転モード切換スイッチ43が接続されている。
なお、エンジン回転速度NEやスロットル開度TA等は、トランスミッションやブレーキなどのエンジン以外の制御にも使用されるため、メイン制御ユニット34は、それらの値を、サブ制御ユニット35を含む、外部の各制御ユニットに送信している。一方、このバイフューエルエンジン10のベースとなったガソリンエンジンでは、酸素濃度センサー25の検出結果は、メイン制御ユニット34の内部での演算処理にのみ使用され、外部には出力されない仕様となっている。そのため、このバイフューエルエンジン10でも、酸素濃度センサー25の検出結果は、サブ制御ユニット35を含む、メイン制御ユニット34の外部には出力されないようになっている。
こうしたバイフューエルエンジン10では、排気浄化性能を確保するため、燃焼室11で燃焼される混合気の空気と燃料の比である制御空燃比を理論空燃比とする、いわゆる空燃比制御が行われている。本実施形態では、液体燃料運転モードおよびガス燃料運転モードにおける制御空燃比をそれぞれ、ガソリンおよびガス燃料の理論空燃比とするように空燃比制御が行われる。以下、本実施形態の空燃比制御装置における空燃比制御の詳細を説明する。
上述したように、本実施形態では、バイフューエルエンジン10のベースとなったガソリンエンジンの燃料噴射制御ユニットがそのままメイン制御ユニット34として使用されている。こうしたメイン制御ユニット34は、空燃比制御に際して、排気の酸素濃度の検出結果に基づき、制御空燃比をガソリンの理論空燃比とするために必要なガソリンインジェクター19の噴射時間を演算して、燃料噴射指令信号を出力する。
すなわち、メイン制御ユニット34は、まず、現状のエンジン回転速度NEおよびエンジン負荷率KLに基づき、ガソリンインジェクター19のベース噴射時間TAUbseを算出する。ベース噴射時間TAUbseは、現状の燃焼室11の吸気の充填率に対して混合気の空燃比をガソリンの理論空燃比とするために必要なガソリンインジェクター19の噴射時間のフィードフォワード値である。ベース噴射時間TAUbseの演算は、メイン制御ユニット34に予め記憶された、エンジン回転速度NEおよびエンジン負荷率KLに基づく2次元の演算マップを用いて行われる。ちなみに、エンジン負荷率KLは、燃焼室11の吸気の充填率の、現時点のエンジン回転速度NEにおける最大値に対する現状値の比率である。メイン制御ユニット34は、そうしたエンジン負荷率KLを、エンジン回転速度NEやアクセル操作量ACCPから演算して求めている。
次に、メイン制御ユニット34は、酸素濃度センサー25による排気の酸素濃度の検出結果に応じて、噴射時間のフィードバック補正値である空燃比フィードバック補正値FAFを算出する。具体的には、メイン制御ユニット34は、酸素濃度センサー25の検出値が、理論空燃比時の値よりもリーン側の値のときには、噴射時間をより長くする側(リッチ側)の値へと空燃比フィードバック補正値FAFの値を徐々に更新する。一方、メイン制御ユニット34は、酸素濃度センサー25の検出値が、理論空燃比時の値よりもリッチ側の値であるときには、噴射時間をより短くする側(リーン側)へと空燃比フィードバック補正値FAFの値を徐々に更新する。そして、こうして更新される空燃比フィードバック補正値FAFにより、ベース噴射時間TAUbseを補正することで、制御空燃比を理論空燃比に徐々に近づけるようにしている。
一方、制御空燃比を理論空燃比とするために必要な噴射時間とベース噴射時間TAUbseとの間には、インジェクターの噴射特性、酸素濃度センサー25の出力特性の個体差や経時変化などに起因して、定常的な偏差(以下、空燃比の定常偏差と記載する)が生じることがある。そこで、本実施形態では、こうした空燃比の定常偏差を空燃比学習値LAFとして学習する、いわゆる空燃比学習制御を行うことで、空燃比フィードバックの応答性の向上を図っている。空燃比学習値LAFの値は、制御空燃比が理論空燃比の近傍の値に安定しているときの空燃比フィードバック補正値FAFに応じて更新される。具体的には、メイン制御ユニット34は、そのときの空燃比フィードバック補正値FAFが、ベース噴射時間TAUbseをリーン側に一定値以上補正する値であるときには、より噴射時間を短くする側(リーン側)の値へと空燃比学習値LAFの値を徐々に更新する。一方、メイン制御ユニット34は、そのときの空燃比フィードバック補正値FAFが、ベース噴射時間TAUbseをリッチ側に一定値以上補正する値であるときには、より噴射時間を長くする側(リッチ側)の値へと空燃比学習値LAFの値を徐々に更新する。
なお、本実施形態では、空燃比フィードバック補正値FAFおよび空燃比学習値LAFはいずれも、ベース噴射時間TAUbseの増大側への補正率としてその値が設定されている。よって、これらによる補正後の噴射時間、すなわちガソリンインジェクター19への噴射時間の指令値である液体燃料用噴射時間TAUmの演算は、下式(1)のように行われる。
サブ制御ユニット35は、バイフューエルエンジン10の運転モードMODEが液体燃料運転モードに設定されているときには、メイン制御ユニット34から受信した液体燃料用噴射時間TAUmをそのままガソリンインジェクター19に出力する。一方、サブ制御ユニット35は、バイフューエルエンジン10の運転モードMODEがガス燃料運転モードに設定されているときには、メイン制御ユニット34から受信した液体燃料用噴射時間TAUmに基づいてガス燃料の噴射時間を演算して、ガスインジェクター28に出力する。
ここで、現状の燃焼室11の吸気の充填率において、制御空燃比をガソリンの理論空燃比Xとするために必要なガソリンの噴射量をQ1とする。このとき、制御空燃比をガス燃料の理論空燃比Yとするために必要なガス燃料の噴射量Q2は、ガソリンの理論空燃比Xに対するガス燃料の理論空燃比Yの比を上記ガソリンの噴射量Q1に乗算した値(Q2=Q1×Y/X)となる。以下の説明では、ガソリンおよびガス燃料の噴射量がそうした関係となるガソリンおよびガス燃料の噴射時間を「等価の噴射時間」と言うこととする。
このバイフューエルエンジン10では、酸素濃度センサー25の検出結果が入力されていないため、サブ制御ユニット35は、制御空燃比の状況を直接確認することができない。そこで、サブ制御ユニット35は、メイン制御ユニット34から受信した液体燃料用噴射時間TAUmと等価のガス燃料の噴射時間を求め、その値を噴射時間の指令値としてガスインジェクター28に出力することで、ガス燃料運転中のガス燃料の噴射制御を行っている。
そうした場合にも、ガス燃料運転中に理論空燃比からの制御空燃比のずれが生じれば、酸素濃度センサー25の検出値はそのずれに応じた値となり、メイン制御ユニット34では、そのずれを縮小すべく空燃比制御が行われる。そのため、サブ制御ユニット35は、現状の排気の酸素濃度を直接確認せずとも、メイン制御ユニット34から受信した液体燃料用噴射時間TAUmと等価のガス燃料の噴射時間を求め、その値をガスインジェクター28に指令することで、ガス燃料運転中の制御空燃比を理論空燃比に制御することが可能となる。
ところが、こうしたバイフューエルエンジン10の搭載車両が使用される国や地域によっては、流通するガス燃料の品質(純度など)に大きなばらつきが存在することがある。そうした場合、補給したガス燃料の組成により、その実質的な理論空燃比が変化することがある。例えば、ガス燃料の品質が低く、ガス燃料中の不活性ガス(二酸化炭素など)の濃度が高い場合には、ガスインジェクター28の噴射時間が同じでも、噴射されたガス燃料に含まれる可燃成分(メタンなど)の量はより少なくなる。そうした場合、制御空燃比を理論空燃比とするためには、噴射時間をより長くする必要がある。
一方、サブ制御ユニット35は、設計時に想定した標準的な組成のガス燃料の使用を前提に、液体燃料およびガス燃料の噴射時間の換算比を設定して、液体燃料用噴射時間TAUmからのガス燃料の噴射時間を演算している。そのため、想定と異なる組成のガス燃料がバイフューエルエンジン10に補給されたときには、演算したガス燃料の噴射時間と液体燃料用噴射時間TAUmとの等価性が崩れてしまい、空燃比制御を適切に行うことができなくなる虞がある。
図2に、可燃成分濃度が想定よりも高いガス燃料、すなわち高発熱量のガス燃料が補給された場合に、メイン制御ユニット34から受信した液体燃料用噴射時間TAUmと等価のガス燃料の噴射時間をそのままガス燃料運転中のガスインジェクター28の噴射時間に設定して制御を行った場合の空燃比制御の結果の一例を示す。同図では、高発熱量のガス燃料が補給された後、しばらくは、液体燃料運転モードでバイフューエルエンジン10が運転されている。そして、時刻t1において、その補給後において始めての、ガス燃料運転への切り換えが行われている。なお、この時刻t1における空燃比学習値LAFの値は、それまでの液体燃料運転モードでのバイフューエルエンジン10の運転においては、適切な値となっている。
時刻t1において、液体燃料運転からガス燃料運転に切り換えられると、ガソリンインジェクター19からのガソリンの噴射に代えて、ガスインジェクター28からのガス燃料の噴射が開始される。このときに噴射されるガス燃料の組成が想定通りのものであれば、液体燃料用噴射時間TAUmと等価のガス燃料の噴射時間をガスインジェクター28に指令するだけで、ガソリンの理論空燃比からガス燃料の理論空燃比へと制御空燃比を円滑に推移させられる。すなわち、切り換え後にも、理論空燃比に対する制御空燃比の比率λafを1.0の近傍に維持することが可能となる。しかしながら、このときに噴射されるガス燃料には、想定よりも多い比率の可燃成分が含まれており、その実質的な理論空燃比は、想定値よりもリッチ側にずれている。そのため、ガス燃料運転モードへの切り換え直後に、使用中のガス燃料の理論空燃比が想定値であるとしてガス燃料の噴射時間を設定すれば、制御空燃比がガス燃料の理論空燃比よりもリッチ側にずれてしまう。
こうした制御空燃比のずれが生じると、そのずれを補償するための空燃比フィードバックが行われ、制御空燃比はやがて、使用中のガス燃料の理論空燃比の近傍に収束される。そして、空燃比フィードバックが収束して、制御空燃比が安定すると、そのときの空燃比フィードバック補正値FAFの値に応じて空燃比学習値LAFが更新される。
その結果、このときのガス燃料運転中に、空燃比学習値LAFの値は、液体燃料運転における適正値よりもリーン側にずれた値となってしまう。したがって、その後の時刻t2に、バイフューエルエンジン10の運転モードMODEがガス燃料運転モードから液体燃料運転モードに再び切り換えられると、今度は、制御空燃比がガソリンの理論空燃比よりもリーン側にずれてしまう。
このように、想定よりも高発熱量のガス燃料が補給された場合、運転モードMODEの切り換え毎に、制御空燃比に乱れが発生してしまう。ちなみに、想定よりも低発熱量のガス燃料が補給された場合には、そのガス燃料の実質的な理論空燃比は想定値よりもリーン側の値となるため、これとは逆の現象が生じる。すなわち、このときの制御空燃比は、ガス燃料運転モードへの切り換えの直後には使用中のガス燃料の理論空燃比よりもリーン側にずれ、液体燃料運転モードへの切り換えの直後にはガソリンの理論空燃比よりもリッチ側にずれてしまう。
ここで、空燃比学習値LAFの学習が適切に行われているとすれば、上記のようなガス燃料運転への切り換え直後における、理論空燃比からの制御空燃比のずれは、補給したガス燃料の組成の違いに起因するものと考えられる。そこで、サブ制御ユニット35は、ガス燃料の補給後のガス燃料運転の開始直後に生じた、理論空燃比からの制御空燃比のずれ分をガス燃料組成学習値LCALとして学習するようにしている。そして、その学習の結果をガス燃料の噴射時間に反映することで、上記のような運転モードMODEの切り換え時の制御空燃比のずれを抑制している。以下、こうしたガス燃料組成学習値LCALの学習およびその学習結果の噴射時間への反映にかかる制御を、ガス燃料組成学習制御と記載する。
ただし、上述のようにサブ制御ユニット35には、酸素濃度センサー25の検出結果が入力されていないため、ガス燃料運転の開始直後に生じた、理論空燃比からの制御空燃比のずれを直接確認する術はない。そこで、サブ制御ユニット35は、ガス燃料組成学習を以下の態様で行うようにしている。すなわち、ガス燃料運転の開始直後に、ガス燃料の組成の違いによる制御空燃比のずれが生じた場合にも、メイン制御ユニット34の空燃比制御によって、制御空燃比はやがて、使用中のガス燃料の理論空燃比の近傍の値で安定する。このときのガス燃料の噴射時間は、使用中のガス燃料の可燃成分の濃度が高ければ、より短くなり、低ければ、より長くなる。したがって、ガス燃料運転中、空燃比フィードバックが安定した状態となったときのガス燃料の噴射時間は、使用中のガス燃料の組成に応じた値となる。
一方、燃焼室11内の吸気量(シリンダー流入空気量)、ガスインジェクター28の噴射特性、および使用中のガス燃料の理論空燃比が既知であれば、制御空燃比を理論空燃比とするために必要なガス燃料の噴射時間を演算により求めることができる。そこで、ガス燃料の噴射量に対する現状のシリンダー流入空気量の比が理論空燃比の想定値となるガス燃料の噴射時間(基準噴射時間TAUS1)を求めて、現在のガス燃料の噴射時間と比較すれば、ガス燃料の組成の違いに起因した制御空燃比のずれの度合を確認することができる。そこで、本実施形態では、そうした基準噴射時間TAUS1と現在のガス燃料の噴射時間の演算値との比較結果に基づき、両者の差分に相当する値となるようにガス燃料組成学習値LCALの値を更新している。そしてこれにより、ガス燃料の組成の違いによる制御空燃比のずれ分の学習、すなわちガス燃料の組成学習を行うようにしている。
図3に、そうした組成学習制御のために実行される組成学習制御ルーチンのフローチャートを示す。同ルーチンの処理は、バイフューエルエンジン10のガス燃料運転中に、サブ制御ユニット35によって規定の制御周期毎に繰り返し実行される。
なお、本ルーチンにおいては、演算処理を簡単とするため、演算過程では、ガス燃料の噴射時間を等価のガソリン噴射時間(以下、「ガス燃料用噴射時間TAUG」と記載する)として求めている。そして、サブ制御ユニット35は、噴射時間の演算の最終段階で、ガス燃料用噴射時間TAUGを等価のガス燃料の噴射時間に換算して、ガスインジェクター28への指令している。ちなみに、このときの換算は、設定時に想定された標準的な組成のガス燃料が使用されているものとして行われる。また、その換算に際しては、ガスインジェクター28に供給されるガス燃料の圧力、温度がその噴射特性に与える影響を考慮して、低圧側ガス圧PLおよびガス温度THGの検出値が参照される。
さて、本処理が開始されると、まずステップS100において、ガス燃料の補給が行われたか否かが判定される。この判定は、高圧側ガス圧PHに基づいて行われる。すなわち、この判定においては、高圧側ガス圧センサー40から取得した現在の高圧側ガス圧PHの検出値(現在値)と、イグニッションオフ時にも記憶を保持する不揮発性のメモリーに記憶された以前の高圧側ガス圧PHの検出値(RAM値)とが読み込まれる。そして、現在値からRAM値を引いた値が既定の判定値以上であれば、すなわち高圧側ガス圧PHが以前よりも判定値以上上昇していれば、ガス燃料の補給が行われたと判定される。なお、ここでの判定後、高圧側ガス圧PHのRAM値は、現在値に書き換えられる。
ここで、ガス燃料の補給が行われていれば(YES)、ステップS101において、学習完了フラグFLAG1がクリア(OFF)された後、ステップS102に処理が進められ、行われていなければ(NO)、そのままステップS102に処理が進められる。なお、学習完了フラグFLAG1の状態は、上記不揮発性メモリーに記憶され、エンジン停止中も保持される。
ステップS102に処理が進められると、そのステップS102において、メイン制御ユニット34から受信した液体燃料用噴射時間TAUmをガス燃料組成学習値LCALに応じて補正した値が、ガス燃料用噴射時間TAUGの値に設定される。このときのガス燃料用噴射時間TAUGの設定は、下式(2)に従って行われる。
(イ)エンジン回転速度NEが、規定値α1よりも高く、規定値α2よりも低いこと。
(ロ)スロットル開度TAが、規定値β1よりも大きく、規定値β2よりも小さいこと。
(ハ)学習完了フラグFLAG1がクリア(OFF)されていること。
なお、上記条件(イ)は、制御空燃比に乱れが比較的生じにくい回転速度域にあるか否かを確認するためのものである。一方、燃焼室11の吸気の充填率は、一定のスロットル開度TAまでは、その開度が大きくなるほど増加するが、ある開度を超えると飽和して、それ以上開度を大きくしても増加しなくなる。上記条件(ロ)は、スロットル開度が、そうした吸気の充填率の飽和域にあるか否かを確認するためのものである。さらに、上記条件(ハ)は、ガス燃料の補給後に、ガス燃料組成学習が既に完了しているか否かを確認するためのものである。
ここで、ガス燃料組成学習値LCALの更新条件が成立していれば(YES)、ステップS104に処理が進められ、成立していなければ(NO)、そのまま今回の本ルーチンの処理が終了される。
ステップS104に処理が進められると、そのステップS104において、上述の基準噴射時間TAUS1の演算が行われる。なお、本実施形態では、ガス燃料組成学習値LCALの更新が、燃焼室11内の吸気の充填率が飽和するスロットル開度域にあるときに限定されており、エンジン回転速度NEからシリンダー流入空気量が一義的に定まるため、基準噴射時間TAUS1の演算は、エンジン回転速度NEにのみ基づいて行われる。
図4は、このときの基準噴射時間TAUS1の演算に使用される演算マップにおける、エンジン回転速度NEと基準噴射時間TAUS1との関係を示している。この演算マップは、エンジン回転速度NEに基づく1次元マップとして構成され、予めサブ制御ユニット35に記憶されている。
なお、充填率が飽和するスロットル開度域以外でも、ガス燃料組成学習値LCALの更新を行いたい場合、すなわち更新条件における要件(ロ)を省きたい場合には、次のように基準噴射時間TAUS1を演算するとよい。すなわち、現在のシリンダー流入空気量は、エンジン回転速度NEおよびエンジン負荷から求めることが可能なため、基準噴射時間TAUS1の演算を、エンジン回転速度NEおよびエンジン負荷に基づき行うようにするとよい。この場合のエンジン負荷の指標値としては、吸入空気量GAやスロットル開度TA、燃料噴射量などを用いることができる。
図5は、そうした場合の基準噴射時間TAUS1の演算に使用する演算マップの一例における、エンジン回転速度NEおよびスロットル開度TAと、基準噴射時間TAUS1との関係を示している。
基準噴射時間TAUS1が演算されると、続くステップS105において、この基準噴射時間TAUS1に対するガス燃料用噴射時間TAUGの比が、噴射時間比DCALの値として設定される。
ここで、ガス燃料運転中の制御空燃比のずれがガス燃料の組成の違いのみによって生じるとすると、制御空燃比が理論空燃比となったときの噴射時間比DCALは、ガス燃料の理論空燃比の想定値に対する現在値の比となる。この場合には、ガス燃料組成学習値LCALによる補正前のガス燃料の噴射時間と同補正後のガス燃料の噴射時間の比が噴射時間比DCALとなるようにガス燃料組成学習値LCALの値を設定すれば、ガス燃料運転時の制御空燃比を当初から理論空燃比とすることが可能となる。すなわち、ガス燃料組成学習値LCALは、噴射時間比DCALから「1」を引いた値に設定すれば良いことになる。
ただし、サブ制御ユニット35は、制御空燃比の状況を直接確認できないため、ここでは、次のようにガス燃料組成学習値LCALの更新を行っている。すなわち、サブ制御ユニット35は、噴射時間比DCALからガス燃料組成学習値LCALを引いた値が「1」に近づくように、ガス燃料組成学習値LCALの値を徐々に更新している。そして、サブ制御ユニット35は、噴射時間比DCALからガス燃料組成学習値LCALを引いた値が「1」近傍の値となった状態が十分な時間継続していれば、制御空燃比も安定した状態にあるとして、その時点の値をもってガス燃料組成学習を完了する。このようにすれば、噴射時間比DCALの値が大きく変動しても、ガス燃料組成学習値LCALの値は直ちに変化しないため、制御空燃比の一時の乱れでガス燃料組成学習値LCALに不適切な値が設定されないようにすることができる。
もっとも、実際には、ガス燃料の組成の違い以外の要因によっても、制御空燃比のずれが生じることがある。そこで、本実施形態では、最終的に、噴射時間比DCALからガス燃料組成学習値LCALを引いた値が「1」から規定値γ以内の値(1−γ≦DCAL−LCAL≦1+γ)となるように、ガス燃料組成学習値LCALの更新を行っている。このときの規定値γには、想定される空燃比学習値LAFの値の振れ幅(例えばγ=0.05)が設定されている。
すなわち、噴射時間比DCALから現在のガス燃料組成学習値LCALを引いた値が、「1」に上記γを加えた値よりも大きいときには(S106:YES)、ガス燃料組成学習値LCALの値がそれまでの値よりも規定値δだけ小さい値に更新される(S107)。また、噴射時間比DCALから現在のガス燃料組成学習値LCALを引いた値が、「1」から上記γを引いた値よりも小さいときには(S108:YES)、ガス燃料組成学習値LCALの値がそれまでの値よりも上記δだけ大きい値に更新される(S109)。そして、ガス燃料組成学習値LCALの更新後、今回の本ルーチンの処理が終了される。なお、更新されたガス燃料組成学習値LCALの値は、不揮発性メモリーに記憶され、エンジン停止中も保持される。
一方、噴射時間比DCALからガス燃料組成学習値LCALを引いた値が、「1」からγ以内の値であるときには(S106:NO、かつS108:NO)、ステップS110に処理が進められる。ステップS110に処理が進められると、そのステップS110において、ガス燃料組成学習安定カウンターCOUNT1がインクリメントされ、続くステップS111において、その値が規定値εを超えるか否かが判定される。そして、ガス燃料組成学習安定カウンターCOUNT1の値が規定値εを超える場合には(YES)、ステップS112において、学習完了フラグFLAG1がセット(ON)された後、今回の本ルーチンの処理が終了される。
なお、上記噴射時間比DCALからガス燃料組成学習値LCALを引いた値が「1」となるときには、液体燃料用噴射時間TAUmが基準噴射時間TAUS1と等しくなる。すなわち、本ルーチンでは、液体燃料用噴射時間TAUmが基準噴射時間TAUS1よりも長いときにはガス燃料の噴射時間をより短くする側に、液体燃料用噴射時間TAUmが基準噴射時間TAUS1よりも短いときにはガス燃料の噴射時間をより長くする側に、ガス燃料組成学習値LCALの値を徐々に更新している。そして、液体燃料用噴射時間TAUmが基準噴射時間TAUS1から規定値γ以内の状態が規定時間継続した場合には、ガス燃料が再び補給されるまで、ガス燃料組成学習値LCALの値の更新を停止している。なお、液体燃料用噴射時間TAUmの値は、ガス燃料組成学習値LCALによる補正前のガス燃料用噴射時間TAUGの値に相当している。
次に、こうした組成学習制御ルーチンの処理がバイフューエルエンジン10の空燃比制御の実行結果に与える作用を説明する。
図6に、本実施形態の空燃比制御の実行結果の一例を示す。同図のタイムチャートは、想定よりも高発熱量のガス燃料が、すなわち実質的な理論空燃比が想定値よりもリッチ側の値であるガス燃料が補給された後、液体燃料運転がしばらく行われた後の期間における空燃比制御の実行結果が示されている。
図6に、本実施形態の空燃比制御の実行結果の一例を示す。同図のタイムチャートは、想定よりも高発熱量のガス燃料が、すなわち実質的な理論空燃比が想定値よりもリッチ側の値であるガス燃料が補給された後、液体燃料運転がしばらく行われた後の期間における空燃比制御の実行結果が示されている。
同図の時刻t10には、上記ガス燃料が行われてから始めて、運転モードMODEがガス燃料運転モードに切り換えられている。この時刻t10までの液体燃料運転中に空燃比学習は完了している。そのため、切換後に使用されるガス燃料が標準的な組成のガス燃料であれば、制御空燃比はガソリンの理論空燃比から使用中のガス燃料の理論空燃比へと円滑に推移することになる。すなわち、理論空燃比に対する制御空燃比の比率λafの値は、運転モードMODEの切り換え後も、「1.0」近傍に保持される。
ただし、このときには、標準よりも高発熱量のガス燃料が使用されている。そのため、ガス燃料運転モードへの切り換えと共に、使用中のガス燃料の実際の理論空燃比に対して制御空燃比がリッチ側にずれてしまう。
こうした制御空燃比のずれが生じると、そのずれを補償すべく、空燃比フィードバック補正値FAFの更新が行われて、制御空燃比が現状のガス燃料の理論空燃比に近づけられる。そして、制御空燃比が安定すると、そのときの空燃比フィードバック補正値FAFの値に応じて、空燃比学習値LAFが更新される。その結果、このガス燃料運転中に、空燃比学習値LAFは、そのガス燃料運転の開始前よりもリーン側の値とされる。
その後の時刻t11において、アクセルペダルの踏み込み(アクセル操作量ACCPの増大)に応じてスロットル開度TAが拡大されると、ガス燃料組成学習値LCALの更新が開始される。このときのガス燃料用噴射時間TAUGは、ガス燃料運転開始時の制御空燃比のリッチ側へのずれを補償するための空燃比フィードバックにより、基準噴射時間TAUS1よりも短くなっている。そのため、このときのガス燃料組成学習値LCALは、リーン側の値へと更新される。
ガス燃料組成学習値LCALがリーン側に更新されると、ガス燃料用噴射時間TAUGは短縮される。ただし、ガス燃料用噴射時間TAUGの短縮により、制御空燃比がリーン側に変化すると、メイン制御ユニット34での空燃比フィードバックにより直ちに液体燃料用噴射時間TAUmがその分増大される。そのため、ガス燃料組成学習値LCALが更新されても、ガス燃料用噴射時間TAUGは直ちに元の値に戻る。一方、メイン制御ユニット34の演算する液体燃料用噴射時間TAUmは、上記のような空燃比フィードバックの結果、ガス燃料組成学習値LCALの更新に応じて増大される。
ガス燃料組成学習値LCALの更新が完了して、空燃比フィードバック補正値FAFが安定すると、空燃比学習値LAFが更新される。その結果、空燃比学習値LAFは、ガス燃料運転の開始前と同程度の値に戻される。
その後の時刻t12には、バイフューエルエンジン10の運転モードMODEが液体燃料運転モードへと切り換えられる。このときの空燃比学習値LAFは、補給されたガス燃料の組成の違いにより生じた制御空燃比のずれの影響を受けていない値となっている。そのため、制御空燃比は、ガス燃料の理論空燃比からガソリンの理論空燃比へと円滑に移行される。
さらにその後の時刻t13には、バイフューエルエンジン10の運転モードMODEが液体燃料運転モードから再びガス燃料運転モードに切り換えられる。このときのガスインジェクター28の噴射時間には、先に学習したガス燃料組成学習値LCALが反映されるため、制御空燃比は、このときにも、ガソリンの理論空燃比からガス燃料の理論空燃比へと円滑に移行される。
なお、こうした本実施形態では、液体燃料用噴射時間TAUmが、第1制御部としてのメイン制御ユニット34の液体燃料の噴射時間の演算値に相当する。また、ガス燃料用噴射時間TAUGが、第2制御部としてのサブ制御ユニット35のガス燃料の噴射時間の演算値に相当する。また、本実施形態では、液体燃料用噴射時間TAUmが、第1制御部が演算した液体燃料の噴射時間の演算値に、ガス燃料用噴射時間TAUGが、第2制御部が演算したガス燃料の噴射時間の演算値にそれぞれ相当する。
以上説明した本実施形態のバイフューエルエンジンの空燃比制御装置によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施形態のバイフューエルエンジンの空燃比制御装置は、空燃比制御のための制御ユニットとして、メイン制御ユニット34とサブ制御ユニット35との2つの制御ユニットを備える。メイン制御ユニット34は、排気の酸素濃度の検出結果に基づき、同排気の酸素濃度が理論空燃比時の値に近づくようにフィードバック補正を行って液体燃料の噴射時間(液体燃料用噴射時間TAUm)を演算する。サブ制御ユニット35は、メイン制御ユニット34が演算した液体燃料用噴射時間TAUmからガス燃料の噴射時間(ガス燃料用噴射時間TAUG)を演算する。また、サブ制御ユニット35は、ガス燃料用噴射時間TAUGに対してガス燃料組成学習値LCALによる補正を行うとともに、ガス燃料の補給後におけるガス燃料運転中に、下記(い)〜(に)を行う。
(い)ガス燃料の噴射量に対する現在のシリンダー流入空気量の比がガス燃料の理論空燃比となるガス燃料の噴射時間を基準噴射時間TAUS1として求めること。なお、本実施形態では、ガス燃料噴射時間の演算過程では、ガス燃料噴射時間を等価な液体燃料噴射時間として扱っているため、基準噴射時間TAUS1も、上記ガス燃料の噴射時間と等価な液体燃料の噴射時間として求められている。
(ろ)ガス燃料組成学習値LCALによる補正前のガス燃料用噴射時間TAUG(液体燃料用噴射時間TAUm)と上記(い)で求めた基準噴射時間TAUS1とを比較すること。
(は)上記(ろ)での比較の結果、液体燃料用噴射時間TAUmが基準噴射時間TAUS1よりも長い場合、ガス燃料の噴射時間をより短くするように、ガス燃料組成学習値LCALの値を設定すること。
(に)上記(ろ)での比較の結果、液体燃料用噴射時間TAUmが基準噴射時間TAUS1よりも短い場合、ガス燃料の噴射時間をより長くするように、ガス燃料組成学習値LCALの値を設定すること。
(1)本実施形態のバイフューエルエンジンの空燃比制御装置は、空燃比制御のための制御ユニットとして、メイン制御ユニット34とサブ制御ユニット35との2つの制御ユニットを備える。メイン制御ユニット34は、排気の酸素濃度の検出結果に基づき、同排気の酸素濃度が理論空燃比時の値に近づくようにフィードバック補正を行って液体燃料の噴射時間(液体燃料用噴射時間TAUm)を演算する。サブ制御ユニット35は、メイン制御ユニット34が演算した液体燃料用噴射時間TAUmからガス燃料の噴射時間(ガス燃料用噴射時間TAUG)を演算する。また、サブ制御ユニット35は、ガス燃料用噴射時間TAUGに対してガス燃料組成学習値LCALによる補正を行うとともに、ガス燃料の補給後におけるガス燃料運転中に、下記(い)〜(に)を行う。
(い)ガス燃料の噴射量に対する現在のシリンダー流入空気量の比がガス燃料の理論空燃比となるガス燃料の噴射時間を基準噴射時間TAUS1として求めること。なお、本実施形態では、ガス燃料噴射時間の演算過程では、ガス燃料噴射時間を等価な液体燃料噴射時間として扱っているため、基準噴射時間TAUS1も、上記ガス燃料の噴射時間と等価な液体燃料の噴射時間として求められている。
(ろ)ガス燃料組成学習値LCALによる補正前のガス燃料用噴射時間TAUG(液体燃料用噴射時間TAUm)と上記(い)で求めた基準噴射時間TAUS1とを比較すること。
(は)上記(ろ)での比較の結果、液体燃料用噴射時間TAUmが基準噴射時間TAUS1よりも長い場合、ガス燃料の噴射時間をより短くするように、ガス燃料組成学習値LCALの値を設定すること。
(に)上記(ろ)での比較の結果、液体燃料用噴射時間TAUmが基準噴射時間TAUS1よりも短い場合、ガス燃料の噴射時間をより長くするように、ガス燃料組成学習値LCALの値を設定すること。
これにより、ガス燃料の組成の違いによる制御空燃比のずれ分を予め補正しておくことが可能となり、ガス燃料運転および液体燃料運転の切り換えに際しての制御空燃比の乱れを抑えられる。したがって、組成の異なるガス燃料が使用されても、空燃比を好適に制御することができる。
(2)ガス燃料組成学習値LCALの値が一時に大きく変更されれば、ガス燃料用噴射時間TAUGが急変して制御空燃比に一時的な乱れが生じる。その点、本実施形態では、上記(は)におけるガス燃料組成学習値LCALの値の設定を、ガス燃料の噴射時間をより短くする側に同ガス燃料組成学習値LCALの値を徐々に更新することで行っている。また、上記(に)におけるガス燃料組成学習値LCALの値の設定を、ガス燃料の噴射時間をより長くする側に同ガス燃料組成学習値LCALの値を徐々に更新することで行っている。そのため、制御空燃比に乱れを生じさせることなく円滑にその値の設定を行うことができる。
(3)ガス燃料組成学習値LCALを適正に学習するには、制御空燃比が理論空燃比となっているときの基準噴射時間TAUS1とガス燃料用噴射時間TAUGとの比較結果に基づきその値の設定を行う必要がある。しかしながら、サブ制御ユニット35は、現状の制御空燃比を直接確認できないため、その値の設定に適切なタイミングを知ることができない。その点、本実施形態では、ガス燃料組成学習値LCALの値の設定を、ガス燃料組成学習値LCALによる補正前のガス燃料用噴射時間TAUG(液体燃料用噴射時間TAUm)と基準噴射時間TAUS1との比較結果に応じて同ガス燃料組成学習値LCALの値を徐々に更新することで行っている。制御空燃比は、空燃比フィードバックにより、理論空燃比に収束されるため、上記のように更新を行っていけば、ガス燃料組成学習値LCALの値はやがて適正な値となる。したがって、制御空燃比を直接確認しなくても、ガス燃料組成学習値LCALを適正な値に設定することができる。
(4)本実施形態では、サブ制御ユニット35は、ガス燃料組成学習値LCALによる補正前のガス燃料噴射時間の演算値(液体燃料用噴射時間TAUm)が基準噴射時間TAUS1から規定値γ以内の状態が規定時間継続した場合には、ガス燃料が再び補給されるまでガス燃料組成学習値LCALの値の更新を停止している。そのため、現状の制御空燃比を直接確認することができなくても、制御空燃比が理論空燃比となっているときの基準噴射時間TAUS1とガス燃料用噴射時間TAUGとの比較結果に基づく適正な値をガス燃料組成学習値LCALとして学習することができる。また、一旦、適正な値が学習された後は、再びガス燃料が補給されるまで、その値が固定されるため、ガス燃料の組成以外の要因による制御空燃比のずれ分のガス燃料組成学習値LCALへの反映を好適に抑えることが可能となる。
(第2実施形態)
続いて、バイフューエルエンジンの空燃比制御装置の第2実施形態を、図7を併せ参照して詳細に説明する。なお、本実施形態にあって、上記第1実施形態と共通する構成については、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
続いて、バイフューエルエンジンの空燃比制御装置の第2実施形態を、図7を併せ参照して詳細に説明する。なお、本実施形態にあって、上記第1実施形態と共通する構成については、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
第1実施形態の組成学習制御ルーチンでは、ガス燃料用噴射時間TAUGと基準噴射時間TAUS1との比較結果に基づき、ガス燃料組成学習値LCALを更新していた。なお、ガス燃料用噴射時間TAUGは、メイン制御ユニット34が演算した液体燃料用噴射時間TAUmをガス燃料組成学習値LCALにより補正した値であるため、液体燃料用噴射時間TAUmと基準噴射時間TAUS1との比較結果に基づいても、ガス燃料組成学習値LCALの更新を同様に行うことが可能である。本実施形態では、ガス燃料組成学習値LCALの更新を、液体燃料用噴射時間TAUmと基準噴射時間TAUS1との比較結果に基づいて行う場合の処理の手順を説明する。
なお、本実施形態においても基準噴射時間TAUS1の値は、第1実施形態と同じ態様で設定され、その演算に使用される演算マップも同じものを使用しており、条件が同じであれば、本実施形態でも第1実施形態の場合と設定される値は同じとなる。しかしながら、その値の持つ意味合いには、次の違いがある。すなわち、第1実施形態での基準噴射時間TAUS1は、ガス燃料の噴射量に対する現在のシリンダー流入空気量の比が、ガス燃料の理論空燃比の想定値となるガス燃料の噴射時間を等価な液体燃料の噴射時間に換算した値として求められている。これに対して、本実施形態での基準噴射時間TAUS1は、液体燃料の噴射量に対する現在のシリンダー流入空気量の比が液体燃料の理論空燃比の想定値となる液体燃料の噴射時間として求められている。
さて、ガス燃料運転中の制御空燃比のずれがガス燃料の組成の違いのみによって生じるとすると、ガス燃料組成学習値LCALが適正な値に学習されたときの液体燃料用噴射時間TAUmは、基準噴射時間TAUS1と一致する筈である。よって、この場合には、基準噴射時間TAUS1に対する液体燃料用噴射時間TAUmの比が「1」に近づくように、そして最終的に「1」から規定値γ以内の値となるように、ガス燃料組成学習値LCALの更新を行えば良いことになる。
図7に、そうした本実施形態における組成学習制御ルーチンのフローチャートを示す。同ルーチンの処理は、バイフューエルエンジン10のガス燃料運転中に、サブ制御ユニット35によって規定の制御周期毎に繰り返し実行される。
本ルーチンの処理が開始されると、まずステップS200において、ガス燃料の補給が行われたか否かが判定される。この判定は、第1実施形態の場合と同様に行うことができる。ここで、ガス燃料の補給が行われていれば(YES)、ステップS201において、学習完了フラグFLAG1がクリア(OFF)された後、ステップS202に処理が進められ、行われていなければ(NO)、そのままステップS202に処理が進められる。
ステップS202に処理が進められると、そのステップS202において、ガス燃料組成学習値LCALの更新条件の成立の有無が判定される。ここで、更新条件が成立していれば(YES)、ステップS203に、成立していなければ(NO)、ステップS212に、それぞれ処理が進められる。なお、ガス燃料組成学習値LCALの更新条件は、第1実施形態の場合と同じである。
更新条件の成立により、ステップS203に処理が進められると、そのステップS203において、基準噴射時間TAUS1が演算される。そして、次のステップS204において、この基準噴射時間TAUS1に対する液体燃料用噴射時間TAUmの比(=TAUm/TAUS1)が、噴射時間比DCAL’の値として設定される。
次に、こうした噴射時間比DCAL’に基づき、ガス燃料組成学習値LCALの更新が行われる。すなわち、噴射時間比DCAL’が、「1」に上記γを加えた値よりも大きいときには(S205:YES)、ガス燃料組成学習値LCALの値がそれまでの値よりも規定値δだけ小さい値に更新された後(S206)、ステップS212に処理が進められる。また、噴射時間比DCALが、「1」から上記γを引いた値よりも小さいときには(S207:YES)、ガス燃料組成学習値LCALの値がそれまでの値よりも規定値δだけ大きい値に更新された後(S208)、ステップS212に処理が進められる。
一方、噴射時間比DCAL’が「1」からγ以内の値のときには(S205:NOかつS207:NO)、ガス燃料組成学習安定カウンターCOUNT1がインクリメントされた後(S209)、その値が規定値εを超えるか否かが判定される(S210)。ここで、ガス燃料組成学習安定カウンターCOUNT1が規定値εを超えていれば(YES)、ステップS211において学習完了フラグFLAG1がセット(ON)された後、ステップS212に処理が進められ、超えていなければ(NO)、そのままステップS212に処理が進められる。
ステップS212に処理が進められると、そのステップS212において、液体燃料用噴射時間TAUmをガス燃料組成学習値LCALにより補正した値が、ガス燃料用噴射時間TAUGの値に設定された後、今回の本ルーチンの処理が終了される。なお、このときのガス燃料用噴射時間TAUGの設定は、上述の式(2)に従って行われる。
なお、上記噴射時間比DCAL’の値は、液体燃料用噴射時間TAUmの値が基準噴射時間TAUS1と等しいときに「1」となる。すなわち、上記ルーチンでは、液体燃料用噴射時間TAUmの値が基準噴射時間TAUS1よりも長いときにはガス燃料の噴射時間をより短くする側に、短いときにはガス燃料の噴射時間をより長くする側に、ガス燃料組成学習値LCALの値を徐々に更新している。そして、液体燃料用噴射時間TAUmの値が基準噴射時間TAUS1から規定値γ以内の状態が規定時間継続した場合には、ガス燃料が再び補給されるまで、ガス燃料組成学習値LCALの値の更新を停止している。
こうした本実施形態では、ガス燃料の補給後におけるガス燃料運転中に、サブ制御ユニット35によって下記(1)〜(4)が行われる。
(1)液体燃料の噴射量に対する現在のシリンダー流入空気量の比が液体燃料の理論空燃比の想定値となる液体燃料の噴射時間を基準噴射時間TAUS1として求めること。
(2)メイン制御ユニット34が演算した液体燃料用噴射時間TAUmと上記(1)で求めた基準噴射時間TAUS1とを比較すること。
(3)上記(2)での比較の結果、液体燃料用噴射時間TAUmが基準噴射時間TAUS1よりも長い場合、ガス燃料の噴射時間をより短くするようにガス燃料組成学習値LCALの値を設定すること。
(4)上記(2)での比較の結果、液体燃料用噴射時間TAUmが基準噴射時間TAUS1よりも短い場合、ガス燃料の噴射時間をより長くするようにガス燃料組成学習値LCALの値を設定すること。
(1)液体燃料の噴射量に対する現在のシリンダー流入空気量の比が液体燃料の理論空燃比の想定値となる液体燃料の噴射時間を基準噴射時間TAUS1として求めること。
(2)メイン制御ユニット34が演算した液体燃料用噴射時間TAUmと上記(1)で求めた基準噴射時間TAUS1とを比較すること。
(3)上記(2)での比較の結果、液体燃料用噴射時間TAUmが基準噴射時間TAUS1よりも長い場合、ガス燃料の噴射時間をより短くするようにガス燃料組成学習値LCALの値を設定すること。
(4)上記(2)での比較の結果、液体燃料用噴射時間TAUmが基準噴射時間TAUS1よりも短い場合、ガス燃料の噴射時間をより長くするようにガス燃料組成学習値LCALの値を設定すること。
こうした本実施形態においても、ガス燃料組成学習値LCALの値は、第1実施形態の場合と同様に設定される。すなわち、本実施形態によっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
(第3実施形態)
続いて、バイフューエルエンジンの空燃比制御装置の第3実施形態を、図8〜図13を併せ参照して詳細に説明する。なお、本実施形態にあって、上述の各実施形態と共通する構成については、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
続いて、バイフューエルエンジンの空燃比制御装置の第3実施形態を、図8〜図13を併せ参照して詳細に説明する。なお、本実施形態にあって、上述の各実施形態と共通する構成については、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
上記各実施形態の空燃比制御装置は、ガソリンを液体燃料として使用するバイフューエルエンジン10に適用されていた。一方、近年には、純粋なガソリンに加え、ガソリンとエタノールとの混合燃料、および純粋なエタノールを液体燃料として使用可能なエンジンが実用されている。なお、以下では、それらすべてを混合燃料と記載する。すなわち、純粋なガソリンは、エタノール濃度が0%の混合燃料として、純粋なエタノールは、エタノール濃度が100%の混合燃料として扱う。ちなみに、こうした混合燃料エンジンのハード構成は、燃料配管やインジェクターが混合燃料に対応したものとなっている以外、ガソリンエンジンとほぼ同じとなっている。
一方、ガソリンとエタノールとでは理論空燃比が異なるため、混合燃料の理論空燃比は、そのエタノール濃度により変化する。そこで、こうした混合燃料エンジンでは、混合燃料の補給後に生じた制御空燃比のずれ分をエタノール濃度学習値として学習し、その結果を混合燃料の噴射時間に反映することで、エタノール濃度の違いに関わらず、好適な空燃比制御を可能としている。具体的には、混合燃料の補給が確認されたときには、空燃比学習値LAFの更新を一時停止し、その代わりにエタノール濃度学習値LCONを更新することで、補給された混合燃料のエタノール濃度の違いより生じた制御空燃比のずれ分をエタノール濃度学習値LCONに学習させている。
そして、液体燃料用噴射時間TAUmの演算に際し、その学習したエタノール濃度学習値LCONによる補正を適用するようにしている。このときの液体燃料用噴射時間TAUmの演算は、下式(3)に従って行われる。
図8に、そうした場合の空燃比制御の実行結果の一例を示す。なお、同図には、想定よりもエタノール濃度が高い混合燃料と、想定よりも高発熱量のガス燃料とが補給された後の空燃比制御の実行結果が示されている。
上記混合燃料およびガス燃料の補給後、液体燃料運転モードでのバイフューエルエンジンの運転が開始されると、その開始直後に、液体燃料運転に使用される混合燃料のエタノール濃度の想定との相違に起因した制御空燃比の乱れが発生する。エタノールの単位質量当たりの発熱量は、ガソリンよりも小さく、理論空燃比もガソリンより小さいため、混合燃料の理論空燃比は、そのエタノール濃度が高いほどリーン側の値となる。よって、エタノール濃度が想定よりも高い混合燃料が使用されるこのときには、液体燃料運転の開始直後に、リーン側への制御空燃比のずれが発生する。
メイン制御ユニット34は、このずれに応じてエタノール濃度学習値LCONの学習を行う。その結果、エタノール濃度学習値LCONは、混合燃料のエタノール濃度の違いによる制御空燃比のずれを補償する値に設定され、空燃比学習値LAFは、それ以外の要因による制御空燃比のずれを補償する値とされる。
時刻t30に、液体燃料運転からガス燃料運転に切り換えられると、制御空燃比のずれが発生する。この場合、補給されたガス燃料の組成の違いだけでなく、補給された液体燃料の組成の違いも、このときの制御空燃比のずれの要因となる。すなわち、混合燃料の噴射時間の指令値である液体燃料用噴射時間TAUmには、エタノール濃度学習値LCONによる補正が適用されているが、この補正は、ガス燃料を使用するガス燃料運転では、その補正は本来不要な補正である。一方、ガス燃料用噴射時間TAUGは、液体燃料用噴射時間TAUmをガス燃料組成学習値LCALで補正して求められているため、その値には、エタノール濃度学習値LCONによる補正の結果が反映されてしまっている。そのため、ガス燃料運転への切り換え直後には、ガス燃料の組成の違いによる分と、混合燃料の組成(エタノール濃度)の違いによる分とを足した分の制御空燃比のずれが発生することになる。ちなみに、このときには、想定よりも高発熱量のガス燃料が使用されており、また、エタノール濃度学習値LCONは制御空燃比をリッチ側に補正する値となっているため、いずれの要因によってもリッチ側への制御空燃比のずれが生じる。
その後の空燃比フィードバックにより、制御空燃比は、ガス燃料の理論空燃比に制御される。そして、制御空燃比が安定すると、空燃比学習値LAFが更新される。このときの空燃比学習値LAFは、ガス燃料運転への切り換え直後に発生した制御空燃比のずれの大きさに応じた量だけ更新される。
ここで、混合燃料の組成の違いにより生じる制御空燃比のずれの補償に必要な噴射時間の補正値を「Δ1」、ガス燃料の組成の違いにより生じる制御空燃比のずれの補償に必要な噴射時間の補正値を「Δ2」、それ以外の要因により生じる制御空燃比のずれの補償に必要な補正値を「Δ3」とする。このとき、上記の空燃比学習値LAFの更新は、Δ1とΔ2との合計の分、その値をリーン側に変化させるものとなる。なお、同図は、Δ3が「0」の場合、すなわち空燃比学習値LAFの適正値が「0」の場合を示している。
さらにその後の時刻t31に、アクセルペダルの踏み込みによりスロットル開度TAが増大されると、ガス燃料組成学習値LCALの更新が開始される。このときのガス燃料組成学習値LCALは、リーン側にΔ2だけ、その値が更新される。
一方、ガス燃料組成学習値LCALが更新されると、それに併せて空燃比学習値LAFの値も更新される。これにより、空燃比学習値LAFの値は、ガス燃料組成学習値LCALの更新量分、すなわちΔ2だけ、リッチ側に変化する。したがって、このガス燃料運転中に空燃比学習値LAFは、最終的に、その開始時の値よりもΔ1だけ、すなわちエタノール濃度学習値LCONの分だけリーン側に変化した値となる。すなわち、このときの液体燃料用噴射時間TAUmには、空燃比学習値LAFによるリーン側へのΔ1分の補正と、エタノール濃度学習値LCONによるリッチ側へのΔ1分の補正とが行われることに、すなわちエタノール濃度学習値LCONによる補正が空燃比学習値LAFによる補正により相殺されてしまうことになる。ガス燃料運転中に限れば、エタノール濃度学習値LCONによる補正は本来不要であるため、この結果は妥当なものである。
しかしながら、時刻t32に、ガス燃料運転から再び液体燃料運転に切り換えられると、このときには必要なエタノール濃度学習値LCONによる補正が実質的に行われないことになる。そのため、液体燃料運転の開始直後に、混合燃料のエタノール濃度の違いに応じたリーン側への制御空燃比のずれが再び発生してしまう。しかも、この液体燃料運転の間には、空燃比学習値LAFが本来の適正値に戻されるため、その後の時刻t33におけるガス燃料運転への切り換え時には、エタノール濃度学習値LCONによる補正が有効となり、その分が過補正となって、リッチ側への制御空燃比のずれが発生してしまう。すなわち、液体燃料運転の開始時には、必要なエタノール濃度学習値LCONによる補正が行われず、ガス燃料運転の開始時には、不要なエタノール濃度学習値LCONによる補正が有効となるという、ちぐはぐな結果となる。
この結果を回避するには、エタノール濃度学習の状況を考慮して上述の組成学習制御を行う必要がある。しかしながら、エタノール濃度学習値LCONは、空燃比フィードバック補正値FAFや空燃比学習値LAFと同様に、メイン制御ユニット34の内部での演算処理で使用されるだけで、外部には出力されないため、サブ制御ユニット35には、その現在の値を確認する術はない。そこで、本実施形態では、サブ制御ユニット35は、混合燃料運転中に、メイン制御ユニット34から受信した液体燃料用噴射時間TAUmから、エタノール濃度学習値LCONの現在値を独自に推定し、その結果を組成学習制御に反映することで、上述のような運転モードMODEの切り換え毎の制御空燃比のずれを抑えるようにしている。
図9および図10は、そうした本実施形態における組成学習制御ルーチンのフローチャートを示す。同ルーチンの処理は、バイフューエルエンジンの運転中、サブ制御ユニット35によって規定の制御周期毎に繰り返し実行される。
さて、本ルーチンの処理が開始されると、まずステップS300において、現在のバイフューエルエンジンが液体燃料運転中であるか、ガス燃料運転中であるかが判定される。ここで、液体燃料運転中であれば(YES)、ステップS301に、ガス燃料運転中であれば(NO)、図10のステップS100に、それぞれ処理が進められる。
液体燃料運転中であって、処理がステップS301に進められると、そのステップS301において、混合燃料の補給が行われたか否かが判定される。この判定は、混合燃料が貯留される燃料タンクの液面レベルを検出する燃料ゲージの検出結果に基づき、液面レベルの上昇が確認されたか否かによって行われる。
ここで、燃料タンクの液面レベルの上昇が確認され、混合燃料の補給が行われたと判定されれば(YES)、ステップS302に処理が進められ、そのステップS302において、液体燃料組成学習値LCON’用の学習完了フラグFLAG2がクリア(OFF)された後、ステップS303に処理が進められる。一方、液面レベルの上昇が確認されず、混合燃料の補給が行われていないと判定されれば(NO)、そのままステップS303に処理が進められる。
ステップS303に処理が進められると、そのステップS303において、液体燃料組成学習値LCON’の更新条件が成立しているか否かが判定される。そして、更新条件が成立していれば(YES)、ステップS304に処理が進められ、成立していなければ(NO)、そのまま今回の本ルーチンの処理が終了される。なお、液体燃料組成学習値LCON’は、メイン制御ユニット34が空燃比制御に使用するエタノール濃度学習値LCONの現在値を、サブ制御ユニット35が推定した値である。また、その更新条件は、下記要件(イ)、(ロ)、(ニ)のすべてが満たされるときに成立する。なお、要件(イ)、(ロ)は、ガス燃料組成学習値LCALの更新条件と共通の要件となっている。
(イ)エンジン回転速度NEが、規定値α1よりも高く、規定値α2よりも低いこと。
(ロ)スロットル開度TAが、規定値β1よりも大きく、規定値β2よりも小さいこと。
(ニ)学習完了フラグFLAG2がクリア(OFF)されていること。
(イ)エンジン回転速度NEが、規定値α1よりも高く、規定値α2よりも低いこと。
(ロ)スロットル開度TAが、規定値β1よりも大きく、規定値β2よりも小さいこと。
(ニ)学習完了フラグFLAG2がクリア(OFF)されていること。
ステップS304に処理が進められると、そのステップS304において、基準噴射時間TAUS2が演算される。基準噴射時間TAUS2は、設定時に想定した標準的な組成の混合燃料の使用時に、混合燃料の噴射量に対する現在のシリンダー流入空気量の比が上記混合燃料の理論空燃比の想定値となる混合燃料の噴射時間として演算される。こうした基準噴射時間TAUS2は、現在のシリンダー流入空気量さえ確認できれば、演算で求めることができる。本実施形態では、液体燃料組成学習値LCON’の更新が、燃焼室11内の吸気の充填率が飽和するスロットル開度域にあるときに限定されており、このときには、エンジン回転速度NEにより、シリンダー流入空気量が一義に定まる。そのため、ここでは、基準噴射時間TAUS2を、エンジン回転速度NEに基づき演算している。
図11は、このときの基準噴射時間TAUS2の演算に使用される演算マップにおける、エンジン回転速度NEと基準噴射時間TAUS2との関係を示している。この演算マップは、エンジン回転速度NEに基づく1次元マップとして構成され、予めサブ制御ユニット35に記憶されている。
なお、燃焼室11内の吸気の充填率が飽和するスロットル開度域以外でも、液体燃料組成学習値LCON’の更新を行いたい場合、すなわちその更新条件における要件(ロ)を省きたい場合には、次のように基準噴射時間TAUS2を演算するとよい。すなわち、シリンダー流入空気量は、エンジン回転速度NEおよびエンジン負荷から求めることが可能なため、基準噴射時間TAUS1の演算を、エンジン回転速度NEとエンジン負荷とに基づき行うようにするとよい。この場合のエンジン負荷の指標値としては、吸入空気量GAやスロットル開度TA、燃料噴射量などを用いることができる。
図12は、そうした場合の基準噴射時間TAUS2の演算に使用する演算マップの一例における、エンジン回転速度NEおよびスロットル開度TAと基準噴射時間TAUS1との関係を示している。ちなみに、図11および図12には、図4および図5に示した基準噴射時間TAUS1についての同様の関係が点線で併せ示されている。本実施形態では、標準的な組成のガス燃料として低発熱量のガス燃料を想定しているのに対して、標準的な組成の混合燃料としては高エタノール濃度の混合燃料を想定している。そのため、基準噴射時間TAUS2は、基準噴射時間TAUS1よりも全体的に長い時間となっている。
続いて、ステップS305において、こうした基準噴射時間TAUS2に対する液体燃料用噴射時間TAUmの比が、噴射時間比DCONの値として設定される。液体燃料運転中の制御空燃比のずれが液体燃料の組成の違いのみによって生じるとすると、制御空燃比が理論空燃比となったときの噴射時間比DCONの値は、液体燃料の理論空燃比の想定値と現状値との比となる。この場合、液体燃料組成学習値LCON’を、噴射時間比DCONから「1」を引いた値に設定すれば、その値をエタノール濃度学習値LCONと概ね一致させられる。ただし、サブ制御ユニット35は、制御空燃比が理論空燃比となっているかどうかを直接確認することはできないため、どの時点の噴射時間比DCONの値を液体燃料組成学習値LCON’に設定して良いのかの判断を行えない。
そのため、サブ制御ユニット35は、上述のガス燃料組成学習値LCALの場合と同様の態様で液体燃料組成学習値LCON’を更新することで、その値の設定を行っている。すなわち、噴射時間比DCONから液体燃料組成学習値LCON’を引いた値が、上記γを「1」に加えた値よりも大きいときには(S306:YES)、液体燃料組成学習値LCON’の値がそれまでの値よりも規定値ιだけ小さい値に更新された後(S307)、今回の本ルーチンの処理が終了される。また、噴射時間比DCONから液体燃料組成学習値LCON’を引いた値が、上記γを「1」から引いた値よりも小さいときには(S308:YES)、液体燃料組成学習値LCON’の値がそれまでの値よりも規定値ιだけ大きい値に更新された後(S309)、今回の本ルーチンの処理が終了される。なお、更新された液体燃料組成学習値LCON’の値は、不揮発性メモリーに記憶され、エンジン停止中も保持される。
一方、噴射時間比DCONの値が、「1」から上記γ以内の値のときには(S306:NO、かつS308:NO)、推定液体燃料組成学習安定カウンターCOUNT2がインクリメントされ(S310)、その値が規定値ξを超えるか否かが判定される(S311)。ここで、推定液体燃料組成学習安定カウンターCOUNT2が規定値ξを超えていれば(YES)、ステップS312において学習完了フラグFLAG2がセット(ON)された後、超えていなければ(NO)、そのまま、今回の処理が終了される。
なお、上記噴射時間比DCONの値は、液体燃料用噴射時間TAUmの値が基準噴射時間TAUS2と等しいときに「1」となる。すなわち、本ルーチンでは、液体燃料用噴射時間TAUmと液体燃料組成学習値LCON’との和が基準噴射時間TAUS2よりも長いときにはガス燃料の噴射時間をより長くする側に、それらの和が基準噴射時間TAUS2よりも短いときにはガス燃料の噴射時間をより短くする側に、液体燃料組成学習値LCON’の値を徐々に更新している。そして、液体燃料用噴射時間TAUmと液体燃料組成学習値LCON’との和が基準噴射時間TAUS2から規定値γ以内の状態が規定時間継続した場合には、混合燃料が再び補給されるまで、液体燃料組成学習値LCON’の値の更新を停止している。
これに対して、ガス燃料運転中であるときには、図10のステップS100以降の処理が実行される。なお、図10のステップS100〜ステップS112の処理は、図3に示した第1実施形態の組成学習制御ルーチンのステップS100〜ステップS112の処理と概ね同じとなっている。すなわち、本ルーチンにおいても、ガス燃料組成学習値LCALの更新が、第1実施形態の場合と同様に行われる。
ただし、本ルーチンでは、図2のステップS102の処理に替えて、次のステップS102’の処理が行われる。このステップS102’では、メイン制御ユニット34の液体燃料用噴射時間TAUmを、ガス燃料組成学習値LCALと液体燃料組成学習値LCON’とにより補正した値が、ガス燃料用噴射時間TAUGの値に設定される。ここでのガス燃料用噴射時間TAUGの設定は、下式(4)に従って行われる。
以上のように本実施形態では、液体燃料運転中の液体燃料用噴射時間TAUmから、メイン制御ユニット34が設定したエタノール濃度学習値LCONをサブ制御ユニット35側で推定している。そして、その推定した値(液体燃料組成学習値LCON’)をガス燃料用噴射時間TAUGから予め差し引いておくようにしている。そして、これにより、ガス燃料用噴射時間TAUGの演算時に、液体燃料用噴射時間TAUmに適用されたエタノール濃度学習値LCONによる補正分を相殺して、ガス燃料用噴射時間TAUGにエタノール濃度学習値LCONが反映されないようにしている。
次に、こうした本実施形態の組成学習制御ルーチンの処理がバイフューエルエンジンの空燃比制御の実行結果に与える作用を説明する。
図13に、本実施形態のバイフューエルエンジンの空燃比制御装置による空燃比制御の実行結果の一例を示す。なお、同図には、想定よりもエタノール濃度が高い混合燃料と、想定よりも高発熱量のガス燃料とが補給された後の空燃比制御の実行結果が示されている。
図13に、本実施形態のバイフューエルエンジンの空燃比制御装置による空燃比制御の実行結果の一例を示す。なお、同図には、想定よりもエタノール濃度が高い混合燃料と、想定よりも高発熱量のガス燃料とが補給された後の空燃比制御の実行結果が示されている。
混合燃料のエタノール濃度が想定よりも高い場合、液体燃料運転中の制御空燃比を理論空燃比とするため、より長い噴射時間が必要となる。このときのメイン制御ユニット34では、エタノール濃度学習値LCONがリッチ側の値に、すなわち液体燃料用噴射時間TAUmを増大側に補正する値に設定される。
こうした液体燃料運転中の時刻t40において、アクセルペダルの踏み込み(アクセル操作量ACCPの増大)により、スロットル開度TAが拡大されると、サブ制御ユニット35により、液体燃料組成学習値LCON’の更新が行われる。このときの液体燃料用噴射時間TAUmは、上記のように増大側に補正されているため、液体燃料組成学習値LCON’の更新はリッチ側に行われ、最終的には、現状のエタノール濃度学習値LCONとほぼ同じ値とされる。
その後の時刻t41には、運転モードMODEがガス燃料運転モードに切り換えられる。このときには、想定よりも高発熱量のガス燃料が使用されているため、理論空燃比に対する制御空燃比のリッチ側へのずれが生じる。ただし、このときのガス燃料用噴射時間TAUGには、先に更新された液体燃料組成学習値LCON’によるリーン側への補正が適用されており、それにより、液体燃料用噴射時間TAUmへのエタノール濃度学習値LCONのリッチ側への補正分が相殺される。そしてその結果、ガス燃料運転時には不要なエタノール濃度学習値LCONによってガス燃料用噴射時間TAUGが過補正された状態とならないようになる。そのため、このときの制御空燃比のずれは、ガス燃料の組成の違いに起因するもののみとなり、比較的小さなものに留まる。
その後、このときに制御空燃比のずれを補償すべく、空燃比フィードバックが行われ、液体燃料用噴射時間TAUmが、ひいてはガス燃料用噴射時間TAUGがリーン側に補正される。そして、制御空燃比が安定すると、空燃比学習値LAFがリーン側に更新される。
こうしたガス燃料運転中の時刻t42において、アクセルペダルの踏み込み(アクセル操作量ACCPの増大)により、スロットル開度TAが拡大されると、基準噴射時間TAUS1に対するガス燃料用噴射時間TAUGの比(噴射時間比DCAL)に応じてガス燃料組成学習値LCALの更新が行われる。
このときのガス燃料用噴射時間TAUGは、高発熱量のガス燃料の使用による制御空燃比のリッチ側へのずれを補償するため、リーン側に補正されている。そのため、このときのガス燃料組成学習値LCALは、リーン側の値に更新される。なお、このときの空燃比フィードバック補正値FAFは、更新の結果、ガス燃料組成学習値LCALの値がリーン側に変化した分、その値がリッチ側に変化する。そして、ガス燃料組成学習値LCALの更新が完了して、空燃比フィードバック補正値FAFの値が安定すると、その値の分、空燃比学習値LAFがリッチ側に更新される。
なお、この場合には、ガス燃料運転の開始時に発生する制御空燃比のずれは、ガス燃料の組成の違いよるもののみとなっている。そのため、その制御空燃比のずれを補償するための空燃比フィードバックに応じた空燃比学習値LAFのリーン側への更新量と、ガス燃料組成学習値LCALの更新に応じた空燃比学習値LAFのリッチ側への更新量とは、ほぼ同じ量となる。したがって、ガス燃料運転中に空燃比学習値LAFの値は、ガス燃料運転の開始前とほぼ同じ値に戻ることになる。
したがって、その後の時刻t43において運転モードMODEが液体燃料運転モードに再び切り換えられたときには、空燃比学習値LAFは、液体燃料運転における適正な値となっている。そのため、このときの制御空燃比は、ガス燃料の理論空燃比から混合燃料の理論空燃比へと円滑に移行される。さらに、その後の時刻t44において運転モードMODEが再びガス燃料運転モードに切り換えられたときにも、ガス燃料組成学習値LCALの学習が完了しているため、ガス燃料の理論空燃比から混合燃料の理論空燃比へと制御空燃比が円滑に移行される。
なお、本実施形態では、ガス燃料用噴射時間TAUGの値は、ガスインジェクター28に指令されるガス燃料噴射時間と等価となる混合燃料の噴射時間として演算されている。こうしたガス燃料用噴射時間TAUGの値を、実際にガスインジェクター28に指令されるガス燃料噴射時間として演算する場合には、上記組成学習制御ルーチンにおける液体燃料組成学習値LCON’の値の更新の仕方を次のように変更する必要がある。すなわち、そうした場合には、液体燃料組成学習値LCON’の値を等価の混合燃料の噴射時間に換算した値を用いてステップS306およびステップS308での判定を行うようにする必要がある。こうした場合には、液体燃料組成学習値LCON’の値を混合燃料(液体燃料)の噴射時間に換算した値が、液体燃料用噴射時間TAUmに対する基準噴射時間TAUS2の差から規定値γ以内の値となった状態が規定時間継続した場合、混合燃料が再び補給されるまで、液体燃料組成学習値LCON’の更新が停止されることになる。
以上説明した本実施形態のバイフューエルエンジンの空燃比制御装置によれば、上記(1)〜(4)の効果に加え、更に次の効果を奏することができる。
(5)本実施形態では、サブ制御ユニット35は、ガス燃料の噴射時間の演算値に対して液体燃料組成学習値LCON‘による補正を行うとともに、液体燃料(混合燃料)の補給後の液体燃料運転中に、下記(a)〜(d)を行っている。
(a)液体燃料の噴射量に対する現在のシリンダー流入空気量の比が液体燃料の理論空燃比の想定値となる液体燃料の噴射時間を基準噴射時間TAUS2として求めること。
(b)上記(a)で求めた基準噴射時間TAUS2とメイン制御ユニット34が演算した液体燃料の噴射時間の演算値(液体燃料用噴射時間TAUm)と比較すること。
(c)上記(b)での比較の結果、液体燃料用噴射時間TAUmが基準噴射時間TAUS2よりも長い場合、ガス燃料の噴射時間をより長くするように液体燃料組成学習値LCON’の値を設定すること。
(d)上記(b)での比較の結果、液体燃料用噴射時間TAUmが基準噴射時間TAUS2よりも短い場合、ガス燃料の噴射時間をより短くするように液体燃料組成学習値LCON’の値を設定すること。
(5)本実施形態では、サブ制御ユニット35は、ガス燃料の噴射時間の演算値に対して液体燃料組成学習値LCON‘による補正を行うとともに、液体燃料(混合燃料)の補給後の液体燃料運転中に、下記(a)〜(d)を行っている。
(a)液体燃料の噴射量に対する現在のシリンダー流入空気量の比が液体燃料の理論空燃比の想定値となる液体燃料の噴射時間を基準噴射時間TAUS2として求めること。
(b)上記(a)で求めた基準噴射時間TAUS2とメイン制御ユニット34が演算した液体燃料の噴射時間の演算値(液体燃料用噴射時間TAUm)と比較すること。
(c)上記(b)での比較の結果、液体燃料用噴射時間TAUmが基準噴射時間TAUS2よりも長い場合、ガス燃料の噴射時間をより長くするように液体燃料組成学習値LCON’の値を設定すること。
(d)上記(b)での比較の結果、液体燃料用噴射時間TAUmが基準噴射時間TAUS2よりも短い場合、ガス燃料の噴射時間をより短くするように液体燃料組成学習値LCON’の値を設定すること。
これにより、液体燃料の組成の違いによる制御空燃比のずれの影響のガス燃料用噴射時間TAUGへの反映が抑制され、その影響によるガス燃料運転および液体燃料運転の切り換えに際しての制御空燃比の乱れを好適に抑えられる。したがって、組成の異なる液体燃料が使用されても、空燃比を好適に制御することができる。
(6)本実施形態では、上記(c)における液体燃料組成学習値LCON’の値の設定を、ガス燃料の噴射時間をより長くする側に、同液体燃料組成学習値LCON’の値を徐々に更新することで行っている。また、上記(d)における液体燃料組成学習値LCON’の値の設定を、ガス燃料の噴射時間をより短くする側に、同液体燃料組成学習値LCON’の値を徐々に更新することで行っている。そして、液体燃料用噴射時間TAUmと液体燃料組成学習値LCON’との和が基準噴射時間TAUS2から規定値γ以内の状態が規定時間継続した場合には、混合燃料が再び補給されるまで、液体燃料組成学習値LCON’の値の更新を停止している。すなわち、液体燃料組成学習値LCON’の値を液体燃料の噴射時間に換算した値が、液体燃料用噴射時間TAUmの演算値に対する基準噴射時間TAUS2の差から規定値以内の値となった状態が規定時間継続した場合、混合燃料が再び補給されるまで、液体燃料組成学習値LCON’の更新を停止している。そのため、現状の制御空燃比を直接確認することができなくても、制御空燃比が理論空燃比となっているときの噴射時間比DCONに基づく適正な値を液体燃料組成学習値LCON’として学習することができる。また、一旦、適正な値が学習された後は、再び液体燃料(混合燃料)が補給されるまで、その値が固定されるため、混合燃料の組成以外の要因による制御空燃比のずれ分の液体燃料組成学習値LCON’への反映を好適に抑えることが可能となる。
(他の実施形態)
上記各実施形態では、ガス燃料組成学習値LCALや液体燃料組成学習値LCON’の更新を、基準噴射時間TAUS1,TAUS2に対する噴射時間の演算値(ガス燃料用噴射時間TAUG、液体燃料用噴射時間TAUm)の比に基づいて行うようにしていた。なお、それらの更新は、基準噴射時間TAUS1,TAUS2に対する噴射時間の演算値(ガス燃料用噴射時間TAUG、液体燃料用噴射時間TAUm)の差に基づいても同様に行うことが可能である。
上記各実施形態では、ガス燃料組成学習値LCALや液体燃料組成学習値LCON’の更新を、基準噴射時間TAUS1,TAUS2に対する噴射時間の演算値(ガス燃料用噴射時間TAUG、液体燃料用噴射時間TAUm)の比に基づいて行うようにしていた。なお、それらの更新は、基準噴射時間TAUS1,TAUS2に対する噴射時間の演算値(ガス燃料用噴射時間TAUG、液体燃料用噴射時間TAUm)の差に基づいても同様に行うことが可能である。
図14は、第1実施形態でのガス燃料組成学習値LCALの更新を、基準噴射時間TAUS1とガス燃料用噴射時間TAUGとの差(噴射時間差ΔCAL)に基づき行うようにした場合の、先の図3の組成学習制御ルーチンのフローチャートの変更部分を示している。この場合、最終的にガス燃料組成学習値LCALが、噴射時間差ΔCALを基準噴射時間TAUS1で割った値の近傍の値となるように、その更新が行われる。
この場合、先の図3の組成学習制御ルーチンのステップS104において基準噴射時間TAUS1が演算された後、同図14のステップS150に処理が進められる。そして、そのステップS150において、基準噴射時間TAUS1とガス燃料用噴射時間TAUGとの差が、噴射時間差ΔCALの値として設定される。
ここで、噴射時間差ΔCALが、ガス燃料組成学習値LCALに規定値γを加えた値に基準噴射時間TAUS1を乗算した値(=(LCAL+γ)×TAUS1)よりも大きければ(S151:YES)、ガス燃料組成学習値LCALの値がそれまでの値よりも規定値δだけ小さい値に更新された後(S152)、今回の本ルーチンの処理が終了される。また、噴射時間差ΔCALが、ガス燃料組成学習値LCALから規定値γを引いた値に基準噴射時間TAUS1を乗算した値(=(LCAL−γ)×TAUS1)よりも小さければ(S153:YES)、ガス燃料組成学習値LCALの値がそれまでの値よりも上記δだけ大きい値に更新された後(S154)、今回の本ルーチンの処理が終了される。一方、噴射時間差ΔCALを基準噴射時間TAUS1で割った値が、そのときのガス燃料組成学習値LCALから規定値γ以内の値であるときには(S151:NO、かつS153:NO)、先の図3のステップS110に処理が進められる。
図15は、第2実施形態でのガス燃料組成学習値LCALの更新を、基準噴射時間TAUS1と液体燃料用噴射時間TAUmとの差(噴射時間差ΔCAL’)に基づき行うようにした場合の、先の図7の組成学習制御ルーチンのフローチャートの変更部分を示している。この場合、最終的に噴射時間差ΔCAL’が「0」の近傍の値となるように、ガス燃料組成学習値LCALの更新が行われる。
この場合、先の図7の組成学習制御ルーチンのステップS203において基準噴射時間TAUS1が演算された後、同図15のステップS250に処理が進められる。そして、そのステップS250において、基準噴射時間TAUS1と液体燃料用噴射時間TAUmとの差が噴射時間差ΔCAL’の値として設定される。
ここで、噴射時間差ΔCAL’が上記γよりも大きければ(S251:YES)、ガス燃料組成学習値LCALの値がそれまでの値よりも規定値δだけ小さい値に更新された後(S252)、先の図7のステップS212に処理が進められる。また、噴射時間差ΔCAL’が−γよりも小さければ(S253:YES)、ガス燃料組成学習値LCALの値がそれまでの値よりも上記δだけ大きい値に更新された後(S254)、先の図7のステップS212に処理が進められる。一方、噴射時間差ΔCALが「0」からγ以内の値のときには(S251:NO、かつS253:NO)、先の図7のステップS209に処理が進められる。
図16は、第3実施形態での液体燃料組成学習値LCON’を、基準噴射時間TAUS2と液体燃料用噴射時間TAUmとの差(噴射時間差ΔCON)に基づき行うようにした場合の、先の図9の組成学習制御ルーチンのフローチャートの変更部分を示している。この場合、最終的に液体燃料組成学習値LCON’が、噴射時間差ΔCONを基準噴射時間TAUS2で割った値の近傍の値となるように、その更新が行われる。
この場合、先の図9のステップS304において基準噴射時間TAUS2が演算された後、同図16のステップS350に処理が進められる。そして、そのステップS350において、基準噴射時間TAUS2と液体燃料用噴射時間TAUmとの差が、噴射時間差ΔCONの値として設定される。
ここで、噴射時間差ΔCONが、液体燃料組成学習値LCON’に規定値γを加えた値に基準噴射時間TAUS2を乗算した値(=(LCON’+γ)×TAUS2)よりも大きければ(S351:YES)、液体燃料組成学習値LCON’の値がそれまでの値よりも規定値δだけ小さい値に更新される(S352)。また、噴射時間差ΔCONが、液体燃料組成学習値LCON’から規定値γを引いた値に基準噴射時間TAUS2を乗算した値(=(LCON’−γ)×TAUS2)よりも小さければ(S353:YES)、液体燃料組成学習値LCON’の値がそれまでの値よりも上記δだけ大きい値に更新される(S354)。これらの場合、液体燃料組成学習値LCON’の更新後、今回の本ルーチンの処理が終了される。一方、噴射時間差ΔCONを基準噴射時間TAUS2で割った値が、そのときの液体燃料組成学習値LCON’から規定値γ以内の値であるときには(SS351:NO、かつS353:NO)、先の図9のステップS310に処理が進められる。
これらのように、噴射時間差ΔCAL,ΔCAL’や噴射時間差ΔCONに基づき、ガス燃料組成学習値LCALや液体燃料組成学習値LCON’の更新を行った場合にも、最終的に得られる結果は、噴射時間比DCAL,DCAL’や噴射時間比DCONに基づく場合と同じである。したがって、これらのように更新を行った場合にも、上記各実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
さらに、上記各実施形態は以下のように変更して実施することもできる。
・第1実施形態においてサブ制御ユニット35は、上記(い)〜(に)を行って、ガス燃料組成学習値LCALの値を使用中のガス燃料の組成に応じた適切な値へと更新するようにしていた。以下のように処理を行えば、上記(は)および(に)のいずれかを行わずに、同様のガス燃料組成学習値LCALの値の更新を行うことができる。すなわち、ガス燃料組成学習値LCALが取り得る値の範囲の最大値または最小値のいずれかを、同ガス燃料組成学習値LCALの初期値に設定する。ガス燃料の補給が確認されたときに、ガス燃料組成学習値LCALの値を初期値に設定する。ガス燃料組成学習値LCALによる補正前のガス燃料用噴射時間TAUG(液体燃料用噴射時間TAUm)と上記(い)で求めた基準噴射時間TAUS1とを比較し、液体燃料用噴射時間TAUmの値が基準噴射時間TAUS1の値に十分近づくまで、ガス燃料組成学習値LCALの値を初期値から減少(初期値に最大値を設定した場合)または増大(初期値に最小値を設定した場合)させる。こうした場合、上記(い)および(ろ)を行うとともに、上記(は)および(に)のいずれかを行うことで、ガス燃料の組成の違いに起因した、ガス燃料運転および液体燃料運転の切り換えに際しての制御空燃比の乱れを抑えられる。
・第1実施形態においてサブ制御ユニット35は、上記(い)〜(に)を行って、ガス燃料組成学習値LCALの値を使用中のガス燃料の組成に応じた適切な値へと更新するようにしていた。以下のように処理を行えば、上記(は)および(に)のいずれかを行わずに、同様のガス燃料組成学習値LCALの値の更新を行うことができる。すなわち、ガス燃料組成学習値LCALが取り得る値の範囲の最大値または最小値のいずれかを、同ガス燃料組成学習値LCALの初期値に設定する。ガス燃料の補給が確認されたときに、ガス燃料組成学習値LCALの値を初期値に設定する。ガス燃料組成学習値LCALによる補正前のガス燃料用噴射時間TAUG(液体燃料用噴射時間TAUm)と上記(い)で求めた基準噴射時間TAUS1とを比較し、液体燃料用噴射時間TAUmの値が基準噴射時間TAUS1の値に十分近づくまで、ガス燃料組成学習値LCALの値を初期値から減少(初期値に最大値を設定した場合)または増大(初期値に最小値を設定した場合)させる。こうした場合、上記(い)および(ろ)を行うとともに、上記(は)および(に)のいずれかを行うことで、ガス燃料の組成の違いに起因した、ガス燃料運転および液体燃料運転の切り換えに際しての制御空燃比の乱れを抑えられる。
・第2実施形態においてサブ制御ユニット35は、上記(1)〜(4)を行って、ガス燃料組成学習値LCALの値を使用中のガス燃料の組成に応じた適切な値へと更新するようにしていた。この場合にも、以下のように処理を行えば、上記(3)および(4)のいずれかを行わずに、同様のガス燃料組成学習値LCALの値の更新を行うことができる。すなわち、ガス燃料組成学習値LCALが取り得る値の範囲の最大値または最小値のいずれかを、同ガス燃料組成学習値LCALの初期値に設定する。ガス燃料の補給が確認されたときに、ガス燃料組成学習値LCALの値を初期値に設定する。そして、液体燃料用噴射時間TAUmと上記(1)で求めた基準噴射時間TAUS1とを比較し、液体燃料用噴射時間TAUmの値が基準噴射時間TAUS1の値に十分近づくまで、ガス燃料組成学習値LCALの値を初期値から減少(初期値に最大値を設定した場合)または増大(初期値に最小値を設定した場合)させる。こうした場合、上記(1)および(2)を行うとともに、上記(3)および(4)のいずれかを行うことで、ガス燃料の組成の違いに起因した、ガス燃料運転および液体燃料運転の切り換えに際しての制御空燃比の乱れを抑えられる。
・第3実施形態においてサブ制御ユニット35は、上記(a)〜(d)を行って、液体燃料組成学習値LCON’の値を使用中の液体燃料の組成に応じた適切な値へと更新するようにしていた。以下のように処理を行えば、上記(c)および(d)のいずれかを行わずに、同様の液体燃料組成学習値LCON’の値の更新を行うことができる。すなわち、液体燃料組成学習値LCON’が取り得る値の範囲の最大値または最小値のいずれかを、同液体燃料組成学習値LCON’の初期値に設定する。液体燃料の補給が確認されたときに、液体燃料組成学習値LCON’の値を初期値に設定する。基準噴射時間TAUS2と液体燃料用噴射時間TAUmとを比較し、両者が十分近づくまで、液体燃料組成学習値LCON’の値を初期値から減少(初期値に最大値を設定した場合)または増大(初期値に最小値を設定した場合)させる。こうした場合、上記(a)および(b)を行うとともに、上記(c)および(d)のいずれかを行うことで、液体燃料の組成の違いに起因した、ガス燃料運転および液体燃料運転の切り換えに際しての制御空燃比の乱れを抑えられる。
・上記実施形態では、実際にガスインジェクター28に指令する噴射時間と等価のガソリンの噴射時間として求められたガス燃料用噴射時間TAUGを用いてガス燃料組成学習値LCALの値を設定していたが、ガスインジェクター28に実際に指令する噴射時間を用いてその設定を行うようにしてもよい。その場合、基準噴射時間TAUS1は、想定した組成のガス燃料の使用時における、現在の燃焼室11の吸気の充填率での制御空燃比を理論空燃比とするために必要なガス燃料の噴射時間として求める必要がある。
・第3実施形態では、メイン制御ユニット34が学習したエタノール濃度学習値LCONを、サブ制御ユニット35がその推定値として液体燃料組成学習値LCON’を学習してガス燃料用噴射時間TAUGを補正するようにしていた。なお、メイン制御ユニット34がエタノール濃度学習を行わない場合にも、こうした液体燃料組成学習値LCON’の学習は、同様の効果を発揮する。すなわち、メイン制御ユニット34がエタノール濃度学習を行っていなくても、液体燃料の組成の違いに起因した制御空燃比のずれが生じれば、エタノール濃度学習値LCON分が空燃比学習値LAFに取り込まれる。そして、ガス燃料運転時には、その取り込まれた分の補正が過補正となるため、ガス燃料運転と液体燃料運転の切り換え毎に制御空燃比にその分ずれが生じる。その点、液体燃料組成学習値LCON’の学習を行えば、そうした過補正となる分を予めガス燃料用噴射時間TAUGから差し引いておくことが可能となり、運転切り換え時の制御空燃比の乱れが抑えられる。
・第3実施形態では、ガス燃料組成学習値LCALの学習に使用する基準噴射時間TAUS1と、液体燃料組成学習値LCON’の学習に使用する基準噴射時間TAUS2を別々の演算マップを用いてそれぞれ演算するようにしていたが、これらを共通の演算マップから求めるようにしてもよい。要は、基準噴射時間TAUS1,TAUS2は、燃料の組成の違いによる制御空燃比のずれを計るための噴射時間の基準値であれば良く、それがどの様な組成の燃料を想定した値であっても、基準噴射時間TAUS1や液体燃料組成学習値LCON’の学習を好適に行うことが可能である。ただし、初回の学習をより速やかに行うためには、基準噴射時間TAUS1,TAUS2は、使用される可能性が最も高い組成の燃料を想定した値とすることが望ましい。
・上記各実施形態でのガス燃料組成学習値LCALや液体燃料組成学習値LCON’の更新完了の条件(学習完了フラグFLAG1,FLAG2のセット条件)は、適宜変更してもよい。例えば、更新の開始からの経過時間が規定値に達することや、運転の切り換えからの経過時間が既定値に達することをもって、更新を完了するようにしてもよい。また、液体燃料用噴射時間TAUmやガス燃料用噴射時間TAUGの変動量が規定値以内の状態が規定時間継続していることなどから、空燃比フィードバックの安定を確認して、更新を完了することも可能である。
・上記各実施形態での燃料補給の判定を、他の方法で行うようにしてもよい。例えば、バイフューエルエンジンの始動後における最初の液体燃料運転、ガス燃料運転の開始直後に、液体燃料用噴射時間TAUmの変化量が規定値を超えていることをもって、液体燃料、ガス燃料の補給が行われたと判定するようにすることも可能である。
・上記各実施形態では、基準噴射時間TAUS1,TAUS2とガス燃料用噴射時間TAUG、液体燃料用噴射時間TAUmとの比較結果に基づいて、ガス燃料組成学習値LCALや液体燃料組成学習値LCON’の値を徐々に更新することでそれらの学習を行っていた。空燃比フィードバックの安定を確認できるのであれば、その時点の基準噴射時間TAUS1,TAUS2やガス燃料用噴射時間TAUG、液体燃料用噴射時間TAUmの値に基づいて、ガス燃料組成学習値LCALや液体燃料組成学習値LCON’を一時に更新するようにしてもよい。ただし、ガス燃料組成学習値LCALの値が一時に大きく変化されると、制御空燃比が乱れてしまう。そうした場合にも、ガス燃料組成学習値LCALの値は一時に変化しても、それによるガス燃料用噴射時間TAUGに対する補正量を徐々に変化させるようにすれば、制御空燃比の乱れを抑えることが可能となる。
・上記各実施形態でのガス燃料組成学習値LCALや液体燃料組成学習値LCON’の更新が一旦完了すると、該当燃料が再度補給されるまで、その更新を停止するようにしていたが、完了条件を設定せず、更新を終始継続するようにしてもよい。
・上記各実施形態でのガス燃料組成学習値LCALや液体燃料組成学習値LCON’の更新条件は、適宜変更してもよい。ガス燃料組成学習値LCALや液体燃料組成学習値LCON’の更新は、空燃比フィードバックの実施中であれば行うことが可能であり、更新条件は、空燃比フィードバックの実施中であることが保証されるような条件であればよい。もっとも、学習の精度を求めるのであれば、空燃比フィードバックに対する外乱が少ない条件に更新条件を設定することが望ましい。
・上記実施形態では、運転モード切換スイッチ43による運転者の手動操作により、液体燃料運転とガス燃料運転とが切り替えられるようになっていたが、こうした運転の切り換えをサブ制御ユニット35が自動で行うようにしてもよい。例えば低負荷時にはガス燃料運転を行い、アクセルペダルが踏み込まれるなどにより負荷が高まったときには、発熱量がより高く、より高い出力が得られる液体燃料運転を行うように、サブ制御ユニット35が運転モードMODEの自動切換を行うことが考えられる。
10…バイフューエルエンジン、11…燃焼室、12…吸気通路、13…排気通路、14…エアフローメーター、15…スロットルバルブ、16…サージタンク、17…吸気マニホールド、18…吸気ポート、19…ガソリンインジェクター、20…吸気バルブ、21…点火プラグ、22…排気ポート、23…排気バルブ、24…排気マニホールド、25…酸素濃度センサー、26…触媒装置、27…ガスボンベ、28…ガスインジェクター、29…レギュレーター、30…ガス配管、31…電磁弁、32…電磁弁、33…燃料ホース、34…メイン制御ユニット(第1制御部)、35…サブ制御ユニット(第2制御部)、36…信号線、37…クランク角センサー、38…アクセルペダルセンサー、39…スロットルセンサー、40…高圧側ガス圧センサー、41…低圧側ガス圧センサー、42…ガス温センサー、43…運転モード切換スイッチ。
Claims (9)
- ガス燃料を使用するガス燃料運転と液体燃料を使用する液体燃料運転とを切り換え可能なバイフューエルエンジンに適用されて、そのバイフューエルエンジンで燃焼される混合気中の空気と燃料との比である制御空燃比を理論空燃比に近づけるように制御するバイフューエルエンジンの空燃比制御装置において、
排気の酸素濃度の検出結果に基づき、同酸素濃度が理論空燃比時の値に近づくようにフィードバック補正を行って液体燃料の噴射時間を演算する第1制御部と、
前記第1制御部が演算した液体燃料の噴射時間からガス燃料の噴射時間を演算する第2制御部と、
を備えて、液体燃料運転時には前記第1制御部が演算した液体燃料の噴射時間に応じて液体燃料の噴射を行い、ガス燃料運転時には前記第2制御部が演算したガス燃料の噴射時間に応じてガス燃料の噴射を行うとともに、
前記第2制御部は、液体燃料の噴射時間から演算したガス燃料の噴射時間の演算値に対してガス燃料組成学習値による補正を行うとともに、ガス燃料の補給後におけるガス燃料運転中に、
(1)液体燃料の噴射量に対する現在のシリンダー流入空気量の比が液体燃料の理論空燃比の想定値となる液体燃料の噴射時間を基準噴射時間として求めること、
(2)前記第1制御部が演算した液体燃料の噴射時間の演算値と上記(1)で求めた基準噴射時間とを比較すること、
を行うとともに、
(3)上記(2)での比較の結果、液体燃料の噴射時間の演算値が前記基準噴射時間よりも長い場合、ガス燃料の噴射時間をより短くするように前記ガス燃料組成学習値の値を設定すること、
(4)上記(2)での比較の結果、液体燃料の噴射時間の演算値が前記基準噴射時間よりも短い場合、ガス燃料の噴射時間をより長くするように前記ガス燃料組成学習値の値を設定すること、
の少なくとも一方を行う、バイフューエルエンジンの空燃比制御装置。 - 当該空燃比制御装置は、前記(3)及び(4)の双方を行うものであって、
前記(3)における前記ガス燃料組成学習値の値の設定は、ガス燃料の噴射時間をより短くする側に前記ガス燃料組成学習値の値を徐々に更新することで行われ、
前記(4)における前記ガス燃料組成学習値の値の設定は、ガス燃料の噴射時間をより長くする側に、同ガス燃料組成学習値の値を徐々に更新することで行われる、
請求項1に記載のバイフューエルエンジンの空燃比制御装置。 - 前記第2制御部は、前記基準噴射時間と液体燃料の噴射時間の演算値との差が規定値以内となった状態が既定時間継続した場合、ガス燃料が再び補給されるまで、前記ガス燃料組成学習値の値の更新を停止する、
請求項2に記載のバイフューエルエンジンの空燃比制御装置。 - ガス燃料を使用するガス燃料運転と液体燃料を使用する液体燃料運転とを切り換え可能なバイフューエルエンジンに適用されて、そのバイフューエルエンジンで燃焼される混合気中の空気と燃料との比である制御空燃比を理論空燃比に近づけるように制御するバイフューエルエンジンの空燃比制御装置において、
排気の酸素濃度の検出結果に基づき、同酸素濃度が理論空燃比時の値に近づくようにフィードバック補正を行って液体燃料の噴射時間を演算する第1制御部と、
前記第1制御部が演算した液体燃料の噴射時間からガス燃料の噴射時間を演算する第2制御部と、
を備えて、液体燃料運転時には前記第1制御部が演算した液体燃料の噴射時間に応じて液体燃料の噴射を行い、ガス燃料運転時には前記第2制御部が演算したガス燃料の噴射時間に応じてガス燃料の噴射を行うとともに、
前記第2制御部は、液体燃料の噴射時間から演算したガス燃料の噴射時間の演算値に対してガス燃料組成学習値による補正を行うとともに、ガス燃料の補給後におけるガス燃料運転中に、
(い)ガス燃料の噴射量に対する現在のシリンダー流入空気量の比がガス燃料の理論空燃比の想定値となるガス燃料の噴射時間を基準噴射時間として求めること、
(ろ)前記ガス燃料組成学習値による補正前のガス燃料の噴射時間の演算値と上記(い)で求めた基準噴射時間とを比較すること、
を行うとともに、
(は)上記(ろ)での比較の結果、前記ガス燃料組成学習値による補正前のガス燃料の噴射時間の演算値が前記基準噴射時間よりも長い場合、ガス燃料の噴射時間をより短くするように、前記ガス燃料組成学習値の値を設定すること、
(に)上記(ろ)での比較の結果、前記ガス燃料組成学習値による補正前のガス燃料の噴射時間の演算値が前記基準噴射時間よりも短い場合、ガス燃料の噴射時間をより長くするように、前記ガス燃料組成学習値の値を設定すること、
の少なくとも一方を行う、バイフューエルエンジンの空燃比制御装置。 - 当該空燃比制御装置は、前記(は)及び(に)の双方を行うものであって、
前記(は)における前記ガス燃料組成学習値の値の設定は、ガス燃料の噴射時間をより短くする側に同ガス燃料組成学習値の値を徐々に更新することで行われ、
前記(に)における前記ガス燃料組成学習値の値の設定は、ガス燃料の噴射時間をより長くする側に同ガス燃料組成学習値の値を徐々に更新することで行われる、
請求項4に記載のバイフューエルエンジンの空燃比制御装置。 - 前記第2制御部は、前記ガス燃料組成学習値による補正前のガス燃料の噴射時間の演算値が前記基準噴射時間から規定値以内の値になった状態が規定時間継続した場合、ガス燃料が再び補給されるまで、前記ガス燃料組成学習値の値の更新を停止する、
請求項5に記載のバイフューエルエンジンの空燃比制御装置。 - 前記第2制御部は、ガス燃料の噴射時間の演算値に対して液体燃料組成学習値による補正を行うとともに、液体燃料の補給後の液体燃料運転中に、
(a)液体燃料の噴射量に対する現在のシリンダー流入空気量の比が液体燃料の理論空燃比の想定値となる液体燃料の噴射時間を基準噴射時間として求めること、
(b)上記(a)で求めた基準噴射時間と前記第1制御部が演算した液体燃料の噴射時間の演算値と比較すること、
を行うとともに、
(c)上記(b)での比較の結果、液体燃料の噴射時間の演算値が前記基準噴射時間よりも長い場合、ガス燃料の噴射時間をより長くするように前記液体燃料組成学習値の値を設定すること、
(d)上記(b)での比較の結果、液体燃料の噴射時間の演算値が前記基準噴射時間よりも短い場合、ガス燃料の噴射時間をより短くするように前記液体燃料組成学習値の値を設定すること、
の少なくとも一方を行う、請求項1〜6のいずれか1項に記載のバイフューエルエンジンの空燃比制御装置。 - 当該空燃比制御装置は、前記(c)及び(d)の双方を行うものであって、
前記(c)における前記液体燃料組成学習値の値の設定は、ガス燃料の噴射時間をより長くする側に、前記液体燃料組成学習値の値を徐々に更新することで行われ、
前記(d)における前記液体燃料組成学習値の値の設定は、ガス燃料の噴射時間をより短くする側に、前記液体燃料組成学習値の値を徐々に更新することで行われる、
請求項7に記載のバイフューエルエンジンの空燃比制御装置。 - 前記第2制御部は、前記液体燃料組成学習値の値を液体燃料の噴射時間に換算した値が、液体燃料の噴射時間の演算値に対する前記基準噴射時間の差から規定値以内の値となった状態が規定時間継続した場合、液体燃料が再び補給されるまで、前記液体燃料組成学習値の更新を停止する、
請求項8に記載のバイフューエルエンジンの空燃比制御装置。
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