JP2016108600A - 摺動部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】 荷重を加えた場合において、樹脂組成物を用いた摺動層の変形量を抑制することが可能な摺動部材を提供する。【解決手段】 多孔質焼結層4は、断面視において裏金層2の表面に複数個積層された金属粒相6と、金属粒相6どうし及び金属粒相6と裏金層2とをつなぐバインダとして機能するロウ材相7と、からなり、ロウ材相7を構成するロウ材は、ヤング率が120GPa以上であり、金属粒相6を構成する金属粒は、ロウ材よりも高いヤング率を有するようにした。このように、金属粒相6どうしをつなぐロウ材相7を構成するロウ材のヤング率を120GPa以上とすることで、金属粒相6どうしの接合部が硬質で変形し難くなり、摺動部材1に負荷が加えられた場合に、多孔質焼結層4の変形を抑制し、摺動層3の変形量を少なくすることができる。【選択図】 図1

Description

本発明は、荷重を加えた場合において、樹脂組成物を用いた摺動層の変形量を抑制することが可能な摺動部材に関する。
従来、裏金の表面に金属粉末を焼結することにより多孔質焼結層を形成し、その多孔質焼結層の孔隙に合成樹脂が含浸された摺動層を有する摺動部材が知られている。このような多孔質焼結層を形成するための金属粉末としては、特許文献1に示すように球形のCu合金粉末を使用したり、特許文献2に示すように平均粒径を25〜100μmとした球形のCu合金粉末を使用したり、特許文献3に示すように球形及び異形(不規則形状)から構成されるCu合金粉末を使用したりするものが提案されている。
また、特許文献4の図3には、多孔質焼結層を形成するためにCu合金粉末を使用し、その多孔質焼結層を用いた摺動部材における青銅相露出率と焼付面圧との関係が開示されている。具体的には、青銅相露出率が50%を変曲点として、青銅相露出率が高いほど、すなわち多孔質焼結層の空孔率が低いほど、摺動層の耐焼付性が低下していることが開示されている。このため、摺動部材の使用により摺動層の樹脂が摩耗した場合、摺動層の表面に多孔質焼結層を構成するCu合金が露出するようになるが、予め、裏金の表面に空孔率が高い多孔質焼結層を形成することで、そのCu合金が露出した摺動層の表面における樹脂の占める割合が大きくなり、摺動層の耐焼付性を高くすることができる。
特開2003−247546号公報 特開2001−140893号公報 特開2002−12903号公報 特許第3823325号公報
ところで、近年、摺動部材を用いた装置の高速、高性能化に伴い、軸受にかかる負荷が増加している。特に、摺動部材を用いた装置の小型化により軸受サイズが小さくなり、軸受にかかる負荷が増加している。このような状況下で、特許文献1〜4に示すように、多孔質焼結層を形成するためにいずれの形状のCu合金粉末を使用した場合であっても、Cu合金粉末どうしの接合部の径が細いため、その接合部での強度が低い。このため、摺動部材に高負荷が加えられた場合には、Cu合金粉末どうしの接合部を起点として多孔質焼結層が塑性変形し、摺動層の変形量が多くなってしまう。そして、特許文献1〜4に示す摺動部材を、装置内部で油の圧力を高めるためのポンプなどに使用した場合には、摺動層の変形量が多いことに起因して、使用時の負荷により軸と軸受間のクリアランスが増加し、油がリークしてしまい、装置内部での油の圧縮の効率が低下する。また、軸と軸受間のクリアランスを最適に保つことができず、軸が振動などを起こし、軸受にさらなる負荷を与えてしまう場合がある。
本発明は、上記した事情に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、荷重を加えた場合において、樹脂組成物を用いた摺動層の変形量を抑制することが可能な摺動部材を提供することにある。
上記した目的を達成するために、請求項1に係る発明においては、裏金層と摺動層とからなり、前記摺動層は、前記裏金層の表面に形成された多孔質焼結層と該多孔質焼結層の空孔部及び表面に含浸被覆された樹脂組成物とからなる摺動部材であって、前記多孔質焼結層の摺動面側である上層部は、前記多孔質焼結層の前記裏金層との界面側である下層部よりも空孔率が高い摺動部材において、前記多孔質焼結層は、断面視において前記裏金層の表面に複数個積層された金属粒相と、前記金属粒相どうし及び前記金属粒相と前記裏金層とをつなぐバインダとして機能するロウ材相と、からなり、前記ロウ材相を構成するロウ材は、ヤング率が120GPa以上であり、前記金属粒相を構成する金属粒は、前記ロウ材よりも高いヤング率を有することを特徴とする。
請求項2に係る発明においては、請求項1記載の摺動部材において、前記多孔質焼結層は、前記上層部の空孔率が50%以上であり、且つ、前記下層部の空孔率が40%以下であることを特徴とする。
請求項3に係る発明においては、請求項1又は請求項2記載の摺動部材において、前記金属粒相を構成する金属粒の平均粒径は、45〜180μmであることを特徴とする。
請求項4に係る発明においては、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の摺動部材において、前記ロウ材相は、Niがベースであることを特徴とする。
請求項5に係る発明においては、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の摺動部材において、前記多孔質焼結層における前記ロウ材相の割合は、前記多孔質焼結層の100質量部に対して前記ロウ材相が5〜40質量部であることを特徴とする。
請求項1に係る発明においては、多孔質焼結層は、断面視において裏金層の表面に複数個積層された金属粒相と、金属粒相どうし及び金属粒相と裏金層とをつなぐバインダとして機能するロウ材相と、からなり、ロウ材相を構成するロウ材は、ヤング率が120GPa以上であり、金属粒相を構成する金属粒は、ロウ材よりも高いヤング率を有するようにした。このように、金属粒相どうしをつなぐロウ材相を構成するロウ材のヤング率を120GPa以上とすることで、金属粒相どうしの接合部が硬質で変形し難くなり、摺動部材に負荷が加えられた場合に、多孔質焼結層の変形を抑制し、摺動層の変形量を少なくすることができる。また、仮に、金属粒相を構成する金属粒とロウ材相を構成するロウ材とのいずれもが同一のヤング率である多孔質焼結層を形成すると、金属粒相どうしの接合部が硬くなり過ぎ、摺動部材に負荷が加えられた場合に、多孔質焼結層が全く変形しないため、樹脂組成物のみが変形してしまい、樹脂組成物が過度に変形すると、多孔質焼結層と樹脂組成物との界面での破断が起き易くなる。しかしながら、請求項1に係る発明では、金属粒相を構成する金属粒がロウ材よりも高いヤング率を有することで、摺動部材に負荷が加えられた場合に、多孔質焼結層は、主に金属粒相どうしの接合部が僅かに変形することで樹脂組成物の変形に追従し、且つ金属粒相の変形を回避することで、樹脂組成物との界面での破断が起きることを抑制することができる。そして、荷重が除荷された際には、多孔質焼結層の変形と樹脂組成物の変形とが元に戻る。一方、仮に、金属粒相を構成する金属粒のヤング率がロウ材相を構成するロウ材のヤング率よりも低いと、摺動部材に負荷が加えられた場合に、金属粒相の表面が塑性変形し、金属粒相の表面と樹脂組成物との界面に隙間が生じ易くなる。
裏金層の表面に摺動層を形成した摺動部材の断面を示す模式図である。
本実施形態に係る摺動部材1について、図1を参照して説明する。図1は、裏金層2の表面に、金属粒相6とロウ材相7とからなる多孔質焼結層4と、樹脂組成物5と、からなる摺動層3を形成した摺動部材1の断面を示す模式図である。
図1に示すように、摺動部材1は、裏金層2と摺動層3とからなり、摺動層3は、裏金層2上に形成された多孔質焼結層4と該多孔質焼結層4の空孔部および表面に含浸被覆された樹脂組成物5とからなる。また、多孔質焼結層4は、金属粒相6とロウ材相7とからなる。この金属粒相6は、摺動部材1の摺動面に対して垂直方向の断面視において、裏金層2の表面に複数個(図1では2個)積層されている。また、ロウ材相7は、金属粒相6の粒どうし、あるいは、金属粒相6の粒と裏金層2の表面とをつなぐバインダとして機能し、金属粒相6の粒どうし、あるいは、金属粒相6の粒と裏金層2の表面とは、ロウ材相7を介して接合している。なお、金属粒相6の粒どうし、あるいは、金属粒相6の粒と裏金層2の表面とは、直接、接触、あるいは、焼結により接合している部分が形成されていてもよい。また、金属粒相6の粒は、表面の一部がロウ材相7により覆われていない部分が形成されているが、金属粒相6の粒の表面の全てがロウ材相7により覆われていてもよい。
金属粒相6としては、一般市販される、亜共析鋼、共析鋼、過共析鋼、鋳鉄、高速度鋼、工具鋼、オーステナイト系ステンレス、フェライト系ステンレス等の金属粒や銅合金、タングステン合金等の金属粒を用いることができる。また、金属粒相6を構成する金属粒の組成は限定されない。なお、金属粒相6を構成する金属粒は、ロウ材相7を構成するロウ材よりも高いヤング率を有するが、ヤング率が150GPa以上の金属粒がより望ましい。
また、金属粒相6を構成する金属粒は、平均粒径が45〜180μmであればよい。このような平均粒径の金属粒相6の粒を用いることで、多孔質焼結層4には、樹脂組成物5を含浸させるために好適な空孔が形成される。金属粒相6の粒の平均粒径が45μm未満であると、多孔質焼結層4に形成される各空孔部のサイズが小さくなり、樹脂組成物5を含浸させ難くなる。また、金属粒相6の粒の形状は、異形よりも球形がより望ましい。球形の金属粒相6の粒を用いた場合には、異形よりも金属粒相6の粒どうしの接合部の径が太くなるため、その接合部の強度を高くすることができる。なお、異形の粒の形状の詳細については、特許文献3の段落[0020]に開示されている。
ロウ材相7としては、ヤング率が125GPa以上のロウ材を用いることができる。具体的には、Niロウであり、Niをベースとし、Cu、B、Si、Cr、Pなどの成分を1種以上含有させた組成であり、液相化する温度が870〜1150℃である。
なお、ロウ材相7としてNi−P合金を用いる場合、そのNi−P合金の組成は、9〜13質量%のPと残部Niおよび不可避不純物からなることが望ましい。このNi−P合金の組成は、Ni−P合金の融点が低くなる組成範囲である。なお、Ni−P合金の組成は、10〜12質量%のPと残部Niおよび不可避不純物からなることがより望ましい。裏金層2上に多孔質焼結層4を焼結するときの昇温過程では、ロウ材相7であるNi−P合金成分の全てを液相化させ、金属粒相6の粒の表面にNi−P合金が濡れ広がるようにする。このように、金属粒相6の粒の表面には、Ni−P合金が濡れ広がることで、摺動層3の樹脂組成物5あるいはNi−P合金との接合を強くすることができる。また、Ni−P合金の組成において、Pの含有量が9質量%未満、あるいは13質量%を超えると、Ni−P合金の融点が高くなる。これにより、焼結時、Ni−P合金の液相の発生量が減少し、金属粒相6の粒の表面にNi−P合金が濡れ広がり難くなる。
また、ロウ材相7としてNi−P合金を用いる場合、そのNi−P合金は、前記組成に、さらに、選択成分として1〜4質量%のB、1〜12質量%のSi、1〜12質量%のCr、1〜3質量%のFe、0.5〜5質量%のSn、0.5〜5質量%のCuから選択される1種以上を含有させて、Ni−P合金のヤング率を調整してもよい。また、これら選択成分を含有するNi−P合金は、Ni素地部が必須成分であるP及び選択成分であるB、Si、Cr、Fe、Sn、Cuを固溶した形態の組織が好ましいが、Ni素地部が含有成分による2次相(析出物、晶出物)を含んだ形態の組織であってもよい。
多孔質焼結層4におけるロウ材相7の割合は、多孔質焼結層4の100質量部に対してロウ材相7が5〜40質量部であり、より好ましくは、15〜25質量部である。このロウ材相7の割合は、金属粒相6の粒どうし、あるいは、金属粒相6の粒と裏金層2の表面とを結びつけるバインダとなる形態の多孔質焼結層4を形成するために好適な範囲である。ロウ材相7の割合が5質量部未満であると、多孔質焼結層4の強度や、多孔質焼結層4と裏金層2との接合が不十分となる。一方、ロウ材相7の割合が40質量部を超えると、焼結時、空孔となるべき部分がロウ材相7で充填されてしまうので、多孔質焼結層4の空孔率が小さくなりすぎるようになる。
樹脂組成物5は、多孔質焼結層4の空孔部および表面に含浸被覆される。図1に示すように、樹脂組成物5は、多孔質焼結層4における金属粒相6の表面、あるいは、ロウ材相7の表面と接している。樹脂組成物5としては、一般的な摺動用の樹脂組成物を用いることができる。具体的には、フッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、 ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール、エポキシ、フェノール、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリフェニレンサルファイドのいずれか一種以上の樹脂に、さらに、固体潤滑剤としてグラファイト、グラフェン、フッ化黒鉛、二硫化モリブデン、フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリオレフィン、窒化ホウ素、二硫化錫のいずれか一種以上を含む樹脂組成物を用いることができる。また、樹脂組成物5には、さらに充填剤として、粒状、あるいは、繊維状の金属、金属化合物、セラミック、無機化合物、有機化合物のいずれか一種以上を含有させることができる。なお、樹脂組成物5を構成する樹脂、固体潤滑剤、充填剤は、ここで例示したものに限定されない。
図1に示すように、多孔質焼結層4の摺動面側である上層部の空孔率は、多孔質焼結層4の裏金層2との界面側である下層部の空孔率よりも高くなっており、また、多孔質焼結層4の上層部の空孔率が50%以上、且つ、下層部の空孔率が40%以下となっている。多孔質焼結層4の上層部の空孔率が50%以上であることが望ましいのは、段落[0003]で前述した通りであり、下層部の空孔率が40%以下であることが望ましいのは、多孔質焼結層4と裏金層2との接合を確保するためである。なお、摺動部材1の摺動面に対して垂直方向の断面視において、多孔質焼結層4の表面側(摺動部材1の摺動面側の多孔質焼結層4の表面であって、図1において上側)に配置された複数の金属粒相6のうち、金属粒相6の粒の表面が、最も上側に位置している金属粒相6の粒の表面(摺動面に最も近い表面の頂部)を基準点Pとし、この基準点Pを通り摺動面に対して平行な仮想線(図1の破線で示す線)を多孔質焼結層4の高さとする。上記した多孔質焼結層4の上層部は、多孔質焼結層4の高さのうち、摺動面側となる半分の高さの範囲内に属する多孔質焼結層4の領域であり、一方、上記した多孔質焼結層4の下層部は、多孔質焼結層4の高さのうち、裏金層2との界面側となる半分の高さの範囲内に属する多孔質焼結層4の領域である。
次に、本実施形態に係る摺動部材1の作製方法について説明する。まず、金属粒相6の粉末とロウ材の粉末との混合粉を準備する。また、ロウ材の粉末は、金属粒相6の粉末の平均粒径に対して10〜30%の平均粒径であるものを用いる必要がある。なお、混合粉におけるロウ材の粉末の割合は、混合粉の100質量部に対してロウ材の粉末を5〜40質量部とすることが好ましい。
そして、室温で、準備した混合粉を裏金上に散布し、粉末散布層を形成する。粉末散布層中では、金属粒相6の粉末は、裏金層2の表面に複数個(図1では2個)積層されている。なお、金属粒相6の粉末は、裏金層2の表面に3個以上積層されてもよい。また、ロウ材の粉末は、金属粒相6の粉末の平均粒径に対して10〜30%の平均粒径であるものを用いると、金属粒相6の粉末どうしの間の隙間や金属粒相6の粉末と裏金層2の表面の間の隙間に多く存在するようになり、多孔質焼結層4の表面となる粉末散布層の表面側(多孔質焼結層4の上層部側)では、裏金層2の表面との界面側(多孔質焼結層4の下層部側)に比べてロウ材の粉末が少なくなる。これは、混合粉を裏金層2の表面に散布している際に、粉末散布層の表面側(多孔質焼結層4の上層部側)に散布されたロウ材の粉末が、重力や散布時の振動の影響を受けて金属粒相6の粉末どうしの間の隙間を通り、裏金層2の表面との界面側(多孔質焼結層4の下層部側)へ向かって流動しやいように、金属粒相6の粉末の平均粒径とロウ材の粉末の平均粒径とを選択しているからである。
次いで、粉末散布層を加圧することなく焼結炉を用いて、ロウ材の液相温度以上(例えば、Ni−P合金からなるロウ材の場合、930〜1000℃)の還元雰囲気中で焼結する。なお、裏金層2は、従来から一般的な炭素鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、Ni合金等の板や条を用いることができるが、これらに限定されないで他の組成の金属の裏金を用いてもよい。焼結時において、昇温途中のロウ材の液相温度になると、ロウ材の粒が溶融を始める。その液相は、金属粒相6の粉末どうしや、金属粒相6の粉末と裏金層2の表面との間で流動し、裏金層2の表面上に多孔質焼結層4の形成が開始される。例えば、9〜13質量%のPと残部Niの組成からなるNi−P合金のロウ材の粒は、950℃で完全に液相となり、Pの含有量範囲を少なくした10〜12質量%のPと残部Niの組成からなるNi−P合金のロウ材の粒は、930℃で完全に液相となる。そして、ロウ材の液相温度以上で焼結すると、ロウ材が全て液相化し、一部の液相化したロウ材は金属粒相6の粒の表面を覆い、一部の液相化したロウ材は金属粒相6の粒の表面を伝って裏金層2まで流れ落ちる。これにより、焼結前に多孔質焼結層4の上層部に固体として存在していたロウ材の部位は、焼結後に空孔となり、多孔質焼結層4の上層部の空孔率を確保することができる。なお、多孔質焼結層4の上層部の空孔率は、金属粒相6の粉末とロウ材の粉末との混合割合や、焼結時におけるロウ材の液相の発生量を変えることで制御することができる。
次に、本実施形態に係る摺動部材1を用いた実施例1〜4及び比較例1〜5の作製方法について説明する。まず、実施例1〜3は、球形の過共析鋼の粉末と、Ni−11mass%P合金のロウ材の粉末とを使用し、実施例4は、異形の過共析鋼の粉末と、Ni−11mass%P合金のロウ材の粉末とを所定量混合した混合粉を使用した。また、比較例1,2は、球形のリン青銅粉末(Cu−10mass%Sn−0.2mass%P)を使用し、比較例3は、球形のリン青銅粉末と、異形のリン青銅粉末とを50mass%ずつ混合した混合粉を使用した。また、比較例4は、球形の過共析鋼の粉末を使用した。また、比較例5は、球形の純銅の粉末と、Ni−11mass%P合金のロウ材の粉末とを使用した。ヤング率の測定方法は、ステンレス鋼を母材とした円柱状の丸棒を2本用意し、円柱状の丸棒の上面と円柱状の丸棒の下面とを所定のロウ材にてロウ付けを行い、ロウ材で接合したステンレス鋼を引っ張ることで応力−ひずみ曲線を求め、その曲線の直線部の傾きをヤング率として算出した。なお、引張弾性係数は、圧縮弾性係数として代用されることが知られている。この測定方法において、Ni−11mass%P合金のヤング率は125GPa、リン青銅(Cu−10mass%Sn−0.2mass%P)のヤング率は90GPa、過共析鋼のヤング率は180GPa、純銅のヤング率は110GPaであった。そして、実施例1〜4及び比較例5は、混合粉を裏金上に散布し、ロウ材の液相温度以上(930〜1000℃)の還元雰囲気中で焼結し、裏金層2の表面に多孔質焼結層4を形成した。また、比較例1〜3は、粉末および混合粉を裏金上に散布し、焼結温度以上(800〜900℃)の還元雰囲気中で焼結し、裏金層2の表面に多孔質焼結層4を形成した。また、比較例4は、粉末を裏金上に散布し、焼結温度以上(1200〜1300℃)の還元雰囲気中で焼結し、裏金層2の表面に多孔質焼結層4を形成した。
また、裏金層2の表面に多孔質焼結層4が形成された部材には、樹脂組成物5(有機溶剤にて希釈してもよい)が、多孔質焼結層4の空孔部を充填し、多孔質焼結層4の表面を被覆するように含浸され、裏金層2の表面に多孔質焼結層4と樹脂組成物5とからなる摺動層3を形成した。なお、実施例1〜4及び比較例1〜5では、樹脂組成物5としてポリエーテルエーテルケトンを使用しているが、その他の樹脂組成物5を用いる場合には、下記の方法を用いてもよい。すなわち、樹脂組成物5を有機溶剤にて希釈して、多孔質焼結層4の空孔部を充填し、多孔質焼結層4の表面を被覆するように含浸させ、その後、樹脂組成物5の乾燥、焼成のための加熱が施され、裏金層2の表面に多孔質焼結層4と樹脂組成物5とからなる摺動層3を形成してもよい。
実施例1〜4及び比較例1〜5について、多孔質焼結層4の摺動面側である上層部の空孔率と、多孔質焼結層4の裏金層2との界面側である下層部の空孔率と、の測定結果を表1に示す。多孔質焼結層4の摺動面側である上層部の空孔率と、多孔質焼結層4の裏金層2との界面側である下層部の空孔率と、の測定は、まず、電子顕微鏡を用いて摺動部材1の厚さ方向に対して平行方向に切断された断面組織を倍率100倍で電子像を撮影し、その画像を一般的な画像解析手法(解析ソフト:Image−Pro Plus(Version4.5);(株)プラネトロン製)を用いて二値化処理し、多孔質焼結層4(A1)と樹脂組成物5(A2)との区分けを行う。そして、多孔質焼結層4の摺動面側である上層部と、多孔質焼結層4の裏金層2との界面側である下層部と、における面積率((A2)/(A1+A2))を測定し、それぞれの空孔率とした。
また、実施例1〜4及び比較例1〜5の摺動部材1は、縦10mm×横10mm×厚さ1.5mmの試験片に加工し、圧縮試験を行った。具体的には、摺動部材1の試験片を、AG100kNX(島津製作所製)にて荷重50MPaで1時間加圧した。圧縮試験の前後の厚さを測定することで変形量を求めた。その測定結果を表1に示す。なお、摺動部材1においては、裏金層2の厚さを1.10mmとし、多孔質焼結層4の厚さを0.25mmとし、樹脂組成物5の厚さ(多孔質焼結層4の厚さを除く)を0.15mmとした。ただし、比較例2のみ、裏金層2の厚さを1.23mmとし、多孔質焼結層4の厚さを0.12mmとし、樹脂組成物5の厚さ(多孔質焼結層4の厚さを除く)を0.15mmとした。
実施例1〜4及び比較例4,5は、摺動部材1に荷重を加えた後において、いずれも摺動部材1の変形量が比較例1〜3に対して少ない。これは、多孔質焼結層4を構成する金属粒相6の粒どうしの接合部において、ヤング率が高く、硬質で変形し難いためである。また、圧縮試験後の試験片の断面組織を確認したところ、リン青銅を用いた比較例1〜3は、金属粒相6の粒どうしの接合部が塑性変形しているのに加え、多孔質焼結層4の最上部に位置する金属粒相6の表面が平坦面となる塑性変形が起きていた。また、金属粒相6を構成する金属粒とロウ材相7を構成するロウ材とのいずれもが同一のヤング率である比較例4からは、樹脂組成物5と多孔質焼結層4の表面との界面に沿った割れが発見された。これは、摺動部材1に荷重を加えた際、多孔質焼結層4における金属粒相6や金属粒相6の粒どうしの接合部が全く変形しないため、樹脂組成物5のみが過度に変形してしまい、樹脂組成物5が破壊されたと推定される。このことから、金属粒相6の粒どうしの接合部のヤング率は、180GPa未満が望ましいと考えられる。また、金属粒相6を構成する金属粒のヤング率がロウ材相7を構成するロウ材のヤング率よりも低い比較例5からは、多孔質焼結層4の最上部に位置する金属粒相6の表面が塑性変形し、樹脂組成物5と金属粒相6の表面との界面に隙間が発見された。これは、摺動部材1に荷重を加えた際、金属粒相6に対してヤング率が高い金属粒相6の粒どうしの接合部での変形量が少なくなる一方、ヤング率が低く軟らかい金属粒相6での変形量が多くなり、金属粒相6の表面での塑性変形が起こった推定される。なお、金属粒相6を構成する金属粒のヤング率がロウ材相7を構成するロウ材のヤング率よりも高い実施例1〜3からは、樹脂組成物5と多孔質焼結層4との界面に割れや隙間が確認されなかった。
1 摺動部材
2 裏金層
3 摺動層
4 多孔質焼結層
5 樹脂組成物
6 金属粒相
7 ロウ材相

Claims (5)

  1. 裏金層と摺動層とからなり、前記摺動層は、前記裏金層の表面に形成された多孔質焼結層と該多孔質焼結層の空孔部及び表面に含浸被覆された樹脂組成物とからなる摺動部材であって、
    前記多孔質焼結層の摺動面側である上層部は、前記多孔質焼結層の前記裏金層との界面側である下層部よりも空孔率が高い摺動部材において、
    前記多孔質焼結層は、断面視において前記裏金層の表面に複数個積層された金属粒相と、前記金属粒相どうし及び前記金属粒相と前記裏金層とをつなぐバインダとして機能するロウ材相と、からなり、
    前記ロウ材相を構成するロウ材は、ヤング率が120GPa以上であり、前記金属粒相を構成する金属粒は、前記ロウ材よりも高いヤング率を有することを特徴とする摺動部材。
  2. 前記多孔質焼結層は、前記上層部の空孔率が50%以上であり、且つ、前記下層部の空孔率が40%以下であることを特徴とする請求項1記載の摺動部材。
  3. 前記金属粒相を構成する金属粒の平均粒径は、45〜180μmであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の摺動部材。
  4. 前記ロウ材相は、Niがベースであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の摺動部材。
  5. 前記多孔質焼結層における前記ロウ材相の割合は、前記多孔質焼結層の100質量部に対して前記ロウ材相が5〜40質量部であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の摺動部材。
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