以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明に係る移動体識別装置を備えた本実施形態の車両識別システムを搭載する車両の構成例を示す平面図の一例である。
この図1において、車両識別システム100は、第1移動体に相当する自車両Aの車内におけるバックミラー(ルームミラー)101の裏面に設けられたフロントカメラ1と、自車両Aの後方に設けられたバックカメラ2と、右側のドアミラー102に設けられた右斜め後方カメラ3と、の3つの車載カメラ17を有している。各車載カメラ17のぞれぞれの撮像方向は固定されており、フロントカメラ1は自車両Aの正面前方の風景を、バックカメラ2は自車両Aの後方の風景を、右斜め後方カメラ3は自車両Aの右斜め後方の風景をそれぞれ撮像できる。ここではそれぞれを別のカメラとしたが、必要な方向を向いて撮影できる可動式カメラや全周カメラでもよい。また車両識別システム100は、自車両Aの周囲に位置する他車両(1又は複数の移動体に相当)と車々間通信を行うための無線通信アンテナ13を備えている。
図2は、車両識別システム100のハードウェア構成例を示すブロック図の一例である。この図2において、車両識別システム100は、車両識別ユニット11、ディスプレイ12、無線通信アンテナ13、車速センサ14、ブレーキスイッチ15、ウィンカースイッチ16、車載カメラ17、及びGPS18を有している。
車両識別ユニット11は、CPU21、記憶装置22、グラフィックコントローラ23、及び無線通信制御部24を有している。
CPU21は、所定のプログラムの動作によって各種の演算を行うとともに、他の各部との間で情報の交換や各種の制御指示を出力することで、ナビゲーション装置全体を制御する機能を有する。
記憶装置22は、ROM22a、RAM22b、及び記憶媒体22cを有する。ROM22aは、各種の処理プログラムやその他必要な情報が予め書き込まれた情報記憶媒体である。RAM22bは、上記各種のプログラムを実行する上で必要な情報の書き込み及び読み出しが行われる情報記憶媒体である。記憶媒体22cは、例えばフラッシュメモリ、ハードディスクなどの不揮発性の情報記憶媒体である。
グラフィックコントローラ23は、CPU21の制御によってビデオRAM(図示せず)及び上記GPS18などから画像データを取得し、この画像データに基づく画像信号を上記ディスプレイ12に表示させる機能を有する。
無線通信制御部24は、無線通信アンテナ13を介した無線通信による車々間通信で、他車両との情報の送受信を制御する機能を有する。
ディスプレイ12は報知手段に相当し、例えばLCDパネルなどで構成されて、車両識別ユニット11のグラフィックコントローラ23から入力された画像信号に基づいて各種の情報画像を表示する機能を有する。
無線通信アンテナ13は、上記図1に示すように自車両Aの室外に取り付けられ、無線通信制御部24から入力された情報信号の発信と、他車両から受信した情報信号の無線通信制御部24への出力を行う機能を有する。
車速センサ14は状態情報検出手段に相当し、自車両Aの走行速度や加速度、走行方位や転舵方向を検出する機能を有するCPU21は、この車速センサ14の検出信号に基づき、どのくらいの走行速度で走行しているかあるいはどのくらい加速あるいは減速しているか、どの方向に走行しているか、どの方向に転舵しているかを認識できる。
ブレーキスイッチ15は状態情報検出手段に相当し、自車両Aのブレーキが所定量以上踏み込まれて作動状態に入っているか否か、つまり自車両Aが制動操作による減速中の状態であるか否かを検出する機能を有する。
ウィンカースイッチ16は状態情報検出手段に相当し、自車両Aの右方向又は左方向いずれか一方のウィンカー操作の有無を検出する機能を有する。
各車載カメラ17は検知手段及び撮像手段に相当し、例えばCCD撮像素子などを利用して、上述した自車両Aからのそれぞれの撮像方向の風景画像を撮像し、対応する画像信号を車両識別ユニットのCPU21へ出力する機能を有する。
GPS18は測位情報検出手段に相当し、自車両Aの現在地の測位を行い、緯度及び経度で表記した現在位置情報を取得するとともに、予め記憶している地図情報に基づいて所定の経路探索や経路誘導を行う機能を有する。なお、上記車速センサ14が検出した走行速度、加速度、走行方位、及び転舵方向については、当該車速センサ14が全て直接検出する以外にも、そのうちのいずれかについてGPS18で取得した現在位置情報の時間変化から算出してもよい。または後述するように自車両Aが時系列的に発信する車両発信情報を受信した他車両側で、当該車両発信情報に含まれるGPS測位情報の時間変化から自車両Aの上記走行速度、加速度、走行方位、及び転舵方向を算出してもよい。
本実施形態の車両認識システム100は、上記無線通信アンテナ13の通信可能範囲内に存在する他車両に対して、自車両Aの識別情報や走行状態に関する情報を含めた車両発信情報を発信する。図3は、この車両発信情報に含まれる情報の内容を表す図の一例である。この図3に示す本実施形態の例では、車両発信情報は移動体発信情報に相当し、GPS測位情報と、車両識別情報と、車両状態情報とを備えている。
GPS測位情報は第1の測位情報に相当し、上記GPS18によって検出された自車両Aの現在位置情報であり、この例では緯度と経度で表記された座標情報である。
車両識別情報は移動体識別情報に相当し、自車両Aを所定方向から検知した場合に得られる特徴を示して自車両Aの識別に利用可能な情報である。本実施形態の例では、この車両識別情報には、車両後方画像と、車両前方画像と、車両左斜め前方画像とが含まれている。この車両識別情報については、後の図4で詳しく説明する。
車両状態情報は第1の状態情報に相当し、自車両Aの現在の走行状態に関する情報であり、この例では、上記車速センサ14が検出した車両速度等と、上記ブレーキスイッチ15が検出したブレーキ動作の有無と、上記ウィンカースイッチ16が検出したウィンカー動作の有無などが含まれている。
図4は、上記車両識別情報の内容の一例を表している。上述したように、車両識別情報には車両後方画像と、車両前方画像と、車両左斜め前方画像とが含まれている。
車両後方画像は、予め自車両Aの後方側の外観を撮像した画像である。これはつまり、自車両Aの進行方向に対する前方を上記所定方向として、自車両Aの直後の後続車両がその前方(所定方向)から見て当該自車両Aを撮像した場合に得られる画像とほぼ同じ画像情報である。この車両後方画像は、これを受信した後続車両が、その前方に位置する自車両Aの識別に利用可能な程度に、自車両Aの特徴を表している必要がある。その特徴としては例えば、車種、色、車幅、車高、もしくは所属会社名などの車体に描かれている文字、又は登録ナンバープレートは国内唯一で特定可能な識別情報であるため有用である。なお、ここでは画像情報としたが、画像情報そのものでなくても、自車両Aの直後の後続車両がその前方(所定方向)から見て当該自車両Aを撮像した場合に得られる視覚的情報(画像を画像処理すること)から取得できる情報をなんらか示すものであっても良い。例えば、車種、色、車幅、車高の情報を示す数値情報やコード、もしくは所属会社名などの車体に描かれている文字、又は登録ナンバープレートの情報を示す文字情報(例えばテキスト情報など)などであってもよい。
車両前方画像は、予め自車両Aの前方側の外観を撮像した画像である。これはつまり、自車両Aの進行方向に対する後方を上記所定方向として、自車両Aの直前の先行車両がその後方(所定方向)から見て自車両Aを撮像した場合に得られる画像とほぼ同じ画像情報である。
車両左斜め前方画像は、予め自車両Aの左斜め前方側の外観を撮像した画像である。これはつまり、自車両Aの進行方向に対する右斜め後方を上記所定方向として、自車両Aの左側の走行車線で少し前方を走行している他車両がその右斜め後方(所定方向)から見て自車両Aを撮像した場合に得られる画像とほぼ同じ画像情報である。
なお、以上に示した車両後方画像、車両前方画像、及び車両左斜め前方画像が、第2の移動体を所定方向から見た外観画像に相当する。
本実施形態の車両識別システム100は、以上の内容の車両発信情報を、無線通信可能範囲内に存在する全ての車両に向けてブロードキャストで発信する。なお、上記車両状態情報の変化をリアルタイムで伝達できるよう、所定の短い時間間隔で発信し続ける。受信するほうは、同一車両からの複数の連続する車両発信情報を受信することで、その車両のその後の(その次の)進行位置や車両状態を推定することが可能である。具体的には、加速度や移動方位、それらにより何秒後どの位置に到達するかが推定できる。
そして、本実施形態では、全ての車両が上述したものと同じ車両識別システム100を搭載しており、それぞれが対応する車両識別情報を含んだ車両発信情報を一斉にブロードキャストで発信していることを前提とする。そのような車々間通信の環境において、自車両Aが搭載する車両識別システム100は、上述した自車両Aの車両発信情報を発信するとともに、無線通信アンテナ13の無線通信可能範囲内に存在する全ての車両の車両発信情報(移動体発信情報に相当)を受信する。そして、受信した他車両(第2の移動体に相当)の車両状態情報と、自車両Aの車両状態情報とを比較することで、衝突の危険性や、走行操作の制限とその解除などといった走行環境の変化を判定する。
ここで、例えば図5に示すような片側2車線の道路に、自車両Aが走行している場合を想定する。上述した車々間通信では、無線通信可能範囲31が数十m〜数百mにも及ぶため、並列車線を走行する並行車両はもちろん、対向車線を走行する対向車も含めて多数の他車両から車両発信情報を受信する。上述した自車両Aの周囲の走行環境の変化を判定するには、受信した多数の車両発信情報のうちから自車両Aの前方、後方、及び側方などの近隣に位置する車両B,C,Dから発信された車両発信情報を特定する必要がある。しかし、GPS測位情報では自車両Aの周囲での存在を認識できる程度の概略的な精度はあるが、マルチパス環境の影響などから走行車線の区別や車両の前後関係までを厳密に検出できるほどの精度は期待できない。
そこで本実施形態の車両識別システム100では、受信した多数の車両発信情報のうち、それらに含まれるGPS測位情報に基づいて、自車両Aの現在位置を中心とした所定距離範囲内に存在する周囲車両の車両発信情報だけを絞り込む。なお、この周囲車両を絞り込む範囲を以下において周囲車両抽出範囲32といい、GPS測位情報に含まれる誤差を考慮して少し大きめに設定しておく。さらに自車両Aの車載カメラ17が撮像した撮像画像と、受信した車両発信情報に含まれる車両識別情報の各画像とを照合する。これにより、上記の絞り込んだ周囲車両の車両発信情報のうちから、特に自車両Aの走行環境に直接関係のある前方、後方、及び右斜め後方の相対位置に位置する近隣車両B,C,Dの車両発信情報を特定する。
図6は、上記図5の走行環境にある自車両Aが、その無線通信可能範囲31内に存在する全ての他車両から直近で受信した最新の車両発信情報と、当該自車両Aの車両情報とを記録し管理する最新車両情報管理テーブルの一例を示している。この図6において、最新車両情報管理テーブルは、受信順序を示すNo.と、GPS測位情報と、車両識別情報一致判別と、相対位置と、車両状態情報の項目を有している。GPS測位情報の項目は、No.に対応する車両発信情報に含まれるGPS測位情報を記録しており、この例では上述したように緯度と経度で表記されている。車両識別情報一致判別の項目は、上述した車両識別情報の車両後方画像、車両前方画像、及び車両左斜め前方画像が、それぞれ自車両Aのフロントカメラ1、バックカメラ2、及び右斜め後方カメラ3が撮像した前方撮像画像、後方撮像画像、右斜め後ろ撮像画像との照合で一致しているか否かを記録する。相対位置の項目は、上記車両識別情報一致判別の結果に基づいて、対応する車両発信情報が自車両Aのどの相対位置にある他車両から発信されたものであるかを示す。車両状態情報の項目は、No.に対応する車両発信情報に含まれる車両状態情報を記録しており、この例では上述したように車両速度、ブレーキ作動有無、ウィンカー作動有無が記録される。
本実施形態の車両識別ユニット11は、この最新車両情報管理テーブルを作成した後、自車両AのGPS測位情報(第1の測位情報に相当)と他車両のGPS測位情報(第2の測位情報に相当)に基づいて自車両Aの所定距離範囲内、つまり上記周囲車両抽出範囲32内に存在すると推測される周囲車両の車両発信情報を抽出する。図示する例では、周囲車両の車両発信情報として推測されたものを二重枠で囲んで示している。
次に、それら周囲車両の車両発信情報に含まれる車両識別情報の3つの車両画像と、自車両Aの3つの車載カメラ17がそれぞれ撮像した画像とをそれぞれ対応する方向のものどうしで照合する。この照合により、各撮像画像から得られる車両の特徴(特徴情報に相当)が車両識別情報の各車両画像のものと一致するかを判別し、近隣車両B,C,D(第3の移動体に相当)の識別を行う。なお、この照合は、公知のいわゆる画像認識処理技術を用いて行えばよく、ここではその詳細な説明を省略する。例えば、車両前方画像と前方撮像画像とが照合一致した場合には、対応する車両発信情報が、自車両Aの前方に位置している他車両から発信されたものとみなし、相対位置の項目に「前方」を記録する。図示する例では、近隣車両の車両発信情報として特定されたものを網掛け表示で示している。
次に、それら近隣車両の車両発信情報に含まれる車両状態情報(移動体状態情報に相当)と、自車両Aの車両状態情報(第1の状態情報に相当)とを比較し、またそれらの相対位置を考慮して自車両Aの走行環境の変化を判定する。例えば、上記図5に示すように、自車両Aの右斜め後方に位置する他車両Dが、自車両Aを追い抜くために加速したとする。この場合には、図6に示すように相対位置の項目が「右斜め後ろ」であるNo.=5の車両発信情報の車両速度(図示する例では53km/h)が、自車両Aの車両速度(図示する例では46km/h)よりも速く、つまり自車両Aに対して右斜め後方に位置する他車両Dの相対速度が加速したことが認められる。この場合、自車両Aは右車線への車線変更が制限される走行環境に変化したと判定され、例えば図7に示すようにその旨を報知する走行環境情報をディスプレイ12に表示する。
このようにして、本実施形態の車両識別システム100は、多数の他車両から受信する車両発信情報のうちから、自車両Aの所定方向に位置する近隣車両から発信されたものを特定し、その近隣車両の車両状態情報に基づいて走行環境の変化を自動的に判定できる。
図8は、以上説明した動作態様を実現するために、車両識別ユニット11のCPU21が実行する制御内容を表すフローチャートの一例である。なお、このフローは、当該車両識別システム100に電源が入っている間に、例えば適宜の時間間隔で呼び出されて実行を開始する。
図8において、まずステップS5において、上記GPS18により自車両Aの現在地の測位を行って現在位置情報を取得し、これをGPS測位情報として検出する。
次にステップS10へ移り、上記の車速センサ14、ブレーキスイッチ15、及びウィンカースイッチ16から、それぞれ車両速度、ブレーキ作動有無、及びウィンカー作動有無を検出し、これらをまとめて自車両Aの車両状態情報として検出する。
次にステップS15へ移り、上記ステップS5、S10で検出したGPS測位情報、車両状態情報とともに、上記記憶媒体22cなどに記憶していた当該自車両Aの車両識別情報も併せて自車両Aの車両発信情報とし、これを無線通信アンテナ13から発信する。なお、このステップS15の手順が、発信手段に相当する。
次にステップS20へ移り、今度は逆に無線通信アンテナ13を介してその無線通信可能範囲31内に存在する他車両から発信された全ての車両発信情報を受信する。なお、このステップS20の手順が、受信手段に相当する。
次にステップS25へ移り、上記ステップS15で発信した自車両Aの車両発信情報と、上記ステップS20で受信した全ての他車両の車両発信情報に基づいて、上記図6に示した最新車両情報管理テーブルを作成する。
次にステップS30へ移り、最新車両情報管理テーブルに記録されている自車両Aと他車両のGPS測位情報を比較して、自車両Aを中心とした周囲車両抽出範囲32内に存在すると推測される周囲車両の車両発信情報(図6中の二重枠表示)のみを抽出する。なお、このステップS30の手順が、抽出手段に相当する。
次にステップS100へ移り、他車両の車両識別情報の各車両画像と、自車両Aの各車載カメラ17が撮像した撮像画像とを照合することで、上記ステップS30で抽出された周囲車両の車両発信情報のうちのどれが、どの相対位置の近隣車両から発信されたものであるかを識別する近隣車両識別処理を行う(後述の図9参照)。なお、このステップS100の手順が、識別手段に相当する。
次にステップS35へ移り、上記ステップS100で識別した近隣車両と自車両Aの車両状態情報を比較し、その相対位置も考慮して自車両Aの走行環境に変化が生じたか否かを判定する。なお、このステップS35の手順が、判定手段に相当する。
次にステップS40へ移り、上記ステップS35の判定結果でユーザに報知する必要があるほど重要であるか否かを判定する。報知の必要がない場合、判定は満たされず、ステップS5へ戻って同様の手順を繰り返す。
一方、報知の必要がある場合、判定が満たされ、ステップS45へ移る。
ステップS45では、ディスプレイ12での表示や、特に図示しないスピーカなどを介した音声の発音などにより、上記ステップS35で判定した走行環境の変化を報知する。そしてステップS5に戻り、同様の手順を繰り返す。
図9は、上記ステップS100の近隣車両識別処理で行われる制御内容の詳細を表すフローチャートの一例である。
図9において、まずステップS105において、フロントカメラ1で前方撮像画像を撮像し、バックカメラ2で後方撮像画像を撮像し、右斜め後方カメラ3で右斜め後方撮像画像を撮像する。
次にステップS110へ移り、上記ステップS30で抽出した全ての周囲車両の車両発信情報に含まれる車両識別情報の車両後方画像と、上記ステップS105で撮像した前方撮像画像とを照合する。具体的には、車両後方画像と前方撮像画像のそれぞれから特徴情報を検知して、それらがどの程度一致しているかを照合する。
次にステップS115へ移り、上記ステップS110の照合において前方撮像画像と特徴が一致する車両後方画像があったか否かを判定する。前方撮像画像と一致する車両後方画像がなかった場合、判定は満たされず、ステップS125へ移る。この場合は、自車両Aの前方に他車両が存在しないとみなされる。
一方、前方撮像画像と一致する車両後方画像があった場合、判定が満たされ、ステップS120へ移る。
ステップS120では、一致した車両後方画像を含む車両発信情報が、前方車両に対応するものとして登録する。具体的には、上記図6の最新車両情報管理テーブルにおいて当該車両発信情報(図6中の網掛け表示)の相対位置の項目に、「前方」に相当するコードなどを記録する。
次にステップS125へ移り、上記ステップS30で抽出した全ての周囲車両の車両発信情報に含まれる車両識別情報の車両前方画像と、上記ステップS105で撮像した後方撮像画像とを照合する。
次にステップS130へ移り、上記ステップS125の照合において後方撮像画像と特徴が一致する車両前方画像があったか否かを判定する。後方撮像画像と一致する車両前方画像がなかった場合、判定は満たされず、ステップS140へ移る。この場合は、自車両Aの後方に他車両が存在しないとみなされる。
一方、後方撮像画像と一致する車両前方画像があった場合、判定が満たされ、ステップS135へ移る。
ステップS135では、一致した車両前方画像を含む車両発信情報が、後方車両に対応するものとして登録する。具体的には、上記図6の最新車両情報管理テーブルにおいて当該車両発信情報(図6中の網掛け表示)の相対位置の項目に、「後方」に相当するコードなどを記録する。
次にステップS140へ移り、上記ステップS30で抽出した全ての周囲車両の車両発信情報に含まれる車両識別情報の車両左斜め前方画像と、上記ステップS105で撮像した右斜め後方撮像画像とを照合する。
次にステップS145へ移り、上記ステップS140の照合において右斜め後方撮像画像と特徴が一致する車両左斜め前方画像があったか否かを判定する。右斜め後方撮像画像と一致する車両左斜め前方画像がなかった場合、判定は満たされず、そのままこのフローを終了する。この場合は、自車両Aの右斜め後方に他車両が存在しないとみなされる。
一方、右斜め後方撮像画像と一致する車両左斜め前方画像があった場合、判定が満たされ、ステップS150へ移る。
ステップS150では、一致した車両左斜め前方画像を含む車両発信情報が、右斜め後方車両に対応するものとして登録する。具体的には、上記図6の最新車両情報管理テーブルにおいて当該車両発信情報(図6中の網掛け表示)の相対位置の項目に、「右斜め後方」に相当するコードなどを記録する。そして、このフローを終了する。
以上説明したように、上記車両識別システム100においては、車両(移動体に相当)の識別を行う車両識別システム100(移動体識別装置に相当)であって、当該車両識別システム100が搭載される自車両A(第1の移動体に相当)とは異なる1又は複数の車両からそれぞれ発信されて、それを発信した前記1又は複数の車両に含まれる他車両(第2移動体に相当)を所定方向から検知して得られる特徴であり当該他車両の識別に利用可能な車両識別情報(移動体識別情報に相当)を含む車両発信情報(移動体発信情報に相当)を受信するステップS20の手順(受信手段に相当)と、前記自車両Aから前記所定方向へ向けて前記1又は複数の車両に含まれる近隣車両(第3の移動体に相当)の識別に利用可能な特徴情報を検知する車載カメラ17(検知手段に相当)と、前記ステップS20の手順で受信した前記車両識別情報と前記車載カメラ17が検知した前記特徴情報とを照合して一致した場合に、前記自車両Aから前記所定方向に位置する前記近隣車両が、当該車両識別情報を含む前記車両発信情報を発信した前記他車両であることを識別するステップS100の手順(識別手段に相当)と、を有する。
このようにすると、自車両Aがその無線通信可能範囲31に存在する多数の他車両からそれぞれ車両発信情報を受信する。これら各車両発信情報に含まれる車両識別情報と、自車両Aから所定方向に向けて車載カメラ17が検知した他車両の特徴情報とを照合して一致した場合には、当該車両識別情報を含んだ車両発信情報が当該近隣車両が発信したものであることを特定できる。言い換えると、所定方向に位置する近隣車両がどの車両発信情報を発信した車両であるかを識別できる。これにより、当該車両発信情報に含まれる他の情報を参照することで、当該近隣車両に関する各種状態を目視以外で迅速かつ詳細に知ることができ、走行の安全性や快適性の支援に利用できる。なお、車両識別システム100(移動体識別装置に相当)が搭載される自車両A(第1の移動体に相当)とは異なる他車両(第2の移動体に相当)から発信され、他車両を所定方向から見た外観画像を含む車両発信情報(移動体発信情報に相当)を受信するステップS20の手順(受信手段に相当)と、自車両Aから複数の所定方向へ向けて近隣車両(第3の移動体に相当)を撮像した撮像画像を取得する車載カメラ17(撮像手段に相当)と、外観画像と撮像画像に基づいて、車両発信情報を発信した車両(移動体に相当)を識別するステップS100の手順(識別手段に相当)と、を備える構成でも、外観画像と撮像画像に基づいて車両発信方向の送信元を識別できる。またこの場合、車載カメラ17は、自車両Aの周囲の異なる撮像方向にそれぞれ対応して複数設けられることで、複数の所定方向を撮像できる。またこの場合、ステップS100の手順で、外観画像と撮像画像とを照合して一致した場合に、車両発信情報を発信した車両を識別することで、外観画像と撮像画像との一致により車両を識別できる。またこの場合、ステップS100の手順で、車載カメラ17により取得された所定方向に位置する近隣車両が、車両発信情報を発信した他車両であることを識別することで、車載カメラ17の所定方向を用いて車両発信情報の発信元を識別できる。
また、例えば自車両Aの直前に位置する前方車両が、そのバックカメラ2で撮像した自車両Aの前方撮像画像を車両発信情報に添付して発信する方式もある。この場合には、それを受信した自車両Aが、添付の前方撮像画像が自車両Aの前方部分を撮像したものであると認識できた場合、当該前方撮像画像が添付された車両発信情報がすなわち前方車両から発信されたものであると特定できる。このように、近隣車両間で相互に撮像した画像を添付して車両発信情報を発信して、相手の車両に対する自車両Aの相対位置を自ら提示する手法も有用である。
また、上記車両識別システム100においては、前記車両発信情報は、それを発信する前記他車両の現在位置を示すGPS測位情報(第2の測位情報に相当)を含んでおり、前記車両識別システム100は、自車両Aの現在位置に関するGPS測位情報(第1の測位情報に相当)を検出するGPS18(測位情報検出手段に相当)を有する。
このようにすると、自車両Aと他車両との間の配置関係を概略的に認識できる。
また、上記車両識別システム100においては、前記ステップS20の手順で受信した複数の前記車両発信情報のうちから、それらに含まれるGPS測位情報が示す現在位置が、前記GPS18が検出した自車両AのGPS測位情報が示す現在位置から周囲車両抽出範囲32(所定距離範囲に相当)内に位置する車両発信情報だけを抽出するステップS30の手順(抽出手段に相当)と、を有し、前記ステップS100の手順は、前記ステップS30の手順で抽出した前記車両発信情報の前記車両識別情報に対してのみ前記車載カメラ17が検知した前記特徴情報と照合する。
このようにすると、車々間通信のために自車両Aの無線通信可能範囲31が広く設定された場合でも、そこから受信した多くの車両発信情報のうちから自車両Aの周囲車両抽出範囲32内に位置して近隣車両の識別候補となり得る周囲車両に対応した車両発信情報だけを抽出できる。これにより、ステップS100の近隣車両識別処理において、処理負荷の大きい画像認識処理を利用して行う照合の対象を削減できるため、車両識別処理全体の処理効率を向上できる。
なお、車両発信情報に当該車両の個体を特定可能な車両ID(例えば登録車両ナンバー情報などの識別ID)が含まれる場合には、一度近隣車両を識別した以降で同一の車両IDを含む車両発信情報だけを抽出することにより、さらに迅速な処理が可能となる。交差点などで近隣車両が変わったことを検出した際に、また初めから近隣車両の識別を始めればよい。
また、上記車両識別システム100においては、前記車両発信情報は、それを発信する前記他車両の走行状態を示す車両状態情報(第2の状態情報に相当)を含んでおり、前記車両識別システム100は、自車両Aの走行状態に関する車両状態情報(第1の状態情報に相当)を検出する車速センサ14、ブレーキスイッチ15、及びウィンカースイッチ16(状態情報検出手段に相当)と、前記車速センサ14、ブレーキスイッチ15、及びウィンカースイッチ16が検出した自車両Aの前記車両状態情報と、前記ステップS20の手順で受信した近隣車両の前記車両状態情報と、前記ステップS100の手順で識別した近隣車両が位置する前記所定方向とに基づいて自車両Aの走行環境の変化を判定するステップS35の手順(判定手段に相当)と、前記ステップS35の判定結果を報知するディスプレイ12(報知手段に相当)と、を有する。
このようにすると、ユーザ、特に運転者は、主に自車両Aの進行方向を目視していても、進行方向以外の各方向における走行環境の変化を自動的に知ることができる。例えば上記図5に示した状況以外にも、自車両Aと後続車両との車両速度を比較して相対速度が大きい場合には、自車両Aが後続車両に追突される可能性の発生を走行環境の変化として判定し、これを自動的にユーザ又は運転者に報知できる。また、この走行環境の変化とは、このような車両間の接触の可能性ばかりでなく、例えばそれまで並列車線で並走していた他車両が減速したことで当該並列車線への車線変更が可能になるといった走行制限の解除なども含まれる。
また、上記車両識別システム100においては、自車両Aから前記所定方向へ向けて近隣車両の外観画像を撮像する車載カメラ17を有し、前記車載カメラ17が撮像した外観画像から画像認識処理によって近隣車両の特徴情報を検知する。
このようにすると、車両の車種、色、車幅、車高、車体に描かれている文字や図形、登録車両ナンバーなどの詳細な特徴情報を検知することができ、識別精度を向上できる。なお、本発明では車載カメラ17に限られず、例えばソナーやレーダーを利用して車幅や車高などを特徴情報として検知してもよい。
また、上記車両識別システム100においては、前記車両識別情報は、前記他車両を前記所定方向から見た外観画像であり、前記ステップS100の手順では、前記車載カメラ17が撮像した前記近隣車両の撮像画像から検知した特徴情報と、前記ステップS20の手順で受信した前記車両識別情報の外観画像とを照合する。
このようにすると、車両識別情報の外観画像と撮像画像の両方の特徴情報をそれぞれ具体的かつ詳細に検知して照合できるため、識別精度を向上できる。
なお、車両識別情報としては上記外観画像以外にも、特徴情報そのものをコードや数値などの抽象情報で構成してもよい。この場合には、車両識別情報に対する画像識別処理を省略できるため、処理全体の負荷を軽減できる。
また、車両識別情報として、当該車両の走行の挙動に関する情報を特徴情報として構成してもよい。たとえば、「いまブレーキを踏んだ」という特徴情報に対して、自車両Aのカメラで同じタイミングでブレーキランプが点灯した車両を当該車両と識別するようにしてもよい。
また、上記車両識別システム100においては、車両(移動体に相当)に搭載されて情報を発信する車両識別システム100であって、当該車両識別システム100が搭載される自車両A(第1の移動体に相当)を所定方向から検知して得られる特徴であり自車両Aの識別に利用可能な車両識別情報(移動体識別情報に相当)を含んだ車両発信情報(移動体発信情報に相当)を発信するステップS15の手順(発信手段に相当)を有する。
このようにすると、自車両Aからも車両発信情報を発信するため、自車両Aから見た近隣車両からも相互に車両発信情報の特定と車両の識別が可能となる。
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
(1)他車両から受信したGPS測位情報を補正する場合
上述したように、自車両Aも含む全ての車両がそれぞれ検出するGPS測位情報には厳密な精度が期待できず、程度の差はあるもののそれぞれ多少の誤差が含まれていると考えられる。このため、自車両Aと近隣車両との間における接触可能性の判定にGPS測位情報をそのまま用いることができない。そこで例えば、前出の近隣車両識別処理において近隣車両を車載カメラ17で撮像した際に同時にそれぞれの自車両Aとの相対的な配置関係を画像処理などで正確に検出し、その検出した配置関係に基づいて前出の近隣車両識別処理を行った各近隣車両に対応するGPS測位情報を補正してもよい。このようにして補正された近隣車両のGPS測位情報は、自車両AのGPS18で取得した当該自車両Aの測位情報を基準として上記の相対的な配置関係を反映させて補正される。自車両Aは、これら補正された近隣車両のGPS測位情報と、自車両Aの測位情報に基づいて自車両Aと各近隣車両との間の接触可能性を正確に判定できる。
この場合、例えば上記図3に対応する図10のように、車両発信情報に車両IDの情報を追加して構成させる。この車両IDは、当該車両発信情報を発信する車両の個体を一意に識別可能な情報であり、本変形例では登録ナンバーを用いている。
そして、上記図6の最新車両情報管理テーブルとはまた別に、図11に一例として示すような車両別車両情報管理テーブルを作成してもよい。この車両別車両情報管理テーブルは、同一の他車両からその時点までに受信した全ての車両発信情報、つまり同一の車両IDを含む車両発信情報をまとめて時系列的に並べて管理するテーブルである。図示する例の車両別車両情報管理テーブルは、上記図6の例におけるNo.2の前方車両(図5中の近隣車両B)から発信された車両発信情報をまとめたものを示しているが、この他にも少なくとも各近隣車両を含めた他車両にそれぞれ対応して同様の車両別車両情報管理テーブルが作成される(図示省略)。
図11において、車両別車両情報管理テーブルは、車両IDと、受信順と、受信したままのGPS測位情報と、相対位置と、車間距離と、補正測位情報と、車両状態情報の項目を有している。なお、車両状態情報においては、車両速度のみを示し、他のブレーキとウィンカーの作動有無に関する情報は図示を省略している。このうち車間距離の項目については、車載カメラ17(相対配置検出手段に相当;この場合フロントカメラ1)で前方の近隣車両Bを撮像した際に画像処理によって検出した自車両Aとの間の車間距離(相対配置関係に相当)を記録している。このような車両別車両情報管理テーブルを作成することで、対応する他車両の加減速、走行方位、及び転舵方向を自車両Aで検出できる。
本変形例では、自車両AのGPS18で取得した当該自車両Aの測位情報(図6中の自車のGPS測位情報を参照)と、上記車間距離とに基づいて、近隣車両BのGPS測位情報を補正する。この補正を行う処理手順が、補正手段に相当する。なお、このとき自車両AのGPS18で取得した当該自車両の走行方位と上記相対位置も考慮してより正確に補正してもよいし、さらに上記画像処理において近隣車両Bの車幅方向のズレも検出して補正に加味してもよい。また、車載カメラ17での撮像と画像処理によって検出する以外にも、別途備えたレーダーやソナーなどによって車間距離等を検出してもよい。
近隣車両Bから車両発信情報を受信するたびにこのようなGPS測位情報の補正を行い、車両別車両情報管理テーブルの補正測位情報の項目に記録する。そして、自車両Aの測位情報と他車両の補正された測位情報とを比較することで、当該2車両間における接触などの走行環境の変化を正確に判定できる。この判定を行う処理手順が、判定手段に相当する。
以上説明したように、本変形例の車両識別システム100においては、ステップS100の手順で識別した近隣車両の自車両Aに対する車間距離(相対配置関係に相当)を直接的に検出する車載カメラ17(相対配置検出手段に相当)と、GPS18が検出した自車両AのGPS測位情報(第1の測位情報に相当)と、車載カメラ17が検出した車間距離とに基づいて、前記近隣車両から受信した車両発信情報に含まれるGPS測位情報(第2の測位情報)を、自車両AのGPS測位情報を基準に補正する処理手順を実行する。
このようにすると、自車両AのGPS測位情報を基準として近隣車両のGPS測位情報を補正するため、これら2つのGPS測位情報は相互に車載カメラ17で検出した車間距離を反映した正しい配置関係を示す。つまり、本来、近隣車両のGPS測位情報と自車両Aの測位情報とはそれぞれ異なるGPSで検出されたためにそれぞれ異なる態様の誤差を含んでいたところ、それらの誤差の態様を統一できる。これにより、2車両間の相対的な配置関係を正確に検出できる。
なお、近隣車両から車両発信情報を受信するたびに車載カメラ17で車間距離を検出して対応するGPS測位情報を補正する以外にも、同じ近隣車両(同じ車両ID)に対応するGPS測位情報に対しては最初に検出した車間距離に基づく補正を適用し続けてもよい。
また、本変形例の車両識別システム100においては、前記GPS18が検出した自車両AのGPS測位情報と、補正した近隣車両のGPS測位情報とに基づいて当該自車両Aの走行環境の変化を判定する処理手順(判定手段に相当)と、その判定結果を報知するディスプレイ12(報知手段に相当)と、を有する。
このようにすると、例えば近隣車両との接触の可能性の発生などといった自車両Aの走行環境の変化を、車載カメラ17で検出した車間距離も反映させて正確に検出し報知できる。
なお、車載カメラ17としてフロントカメラ1、バックカメラ2、及び右斜め後方カメラ3の3つを備えていたが、これらに限られない。例えば、左斜め後方カメラを備えて自車両Aが追い越し車線を走行しているときに左斜め後方を撮像してもよいし、自車両Aの走行状態や挙動状態に応じて安全確認の必要な方向で撮像可能な可動式カメラや全方位カメラを備えてもよい。
また、上記実施形態では車両間で直接情報を送受信する車々間通信を前提としていたが、本発明はこれに限られない。例えば、基地局やサーバーなどのインフラを介した、いわゆる車路車間通信に適用しても同様の効果が得られる。また、通信手段は無線通信に限られず、光学的手段による通信を介してもよい。また、車載カメラ17で自車両Aが走行中の車線を識別する車線識別情報を車両発信情報に含めてもよく、この場合にはGPS測位情報の誤差を補償できる。また、車両に限られず、バイクや自転車、さらには人や動物なども移動体と解釈してそれぞれが装備・携帯する装置に本発明を適用してもよい。
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。