JP2016105408A - 非水系電池用の電極リード線部材 - Google Patents
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Abstract
Description
ところで、リチウムイオン電池の電解液は水分や光に弱いという性質を有している。そのため、リチウムイオン電池用の外装材料には、ポリアミドやポリエステルからなる基材層とアルミニウム箔とが積層された、防水性や遮光性に優れた電池外装用積層体が使用されている。
また、リチウムイオン電池の内部に水分が侵入した場合、電解液が水分で分解して、強酸が発生する。この場合、電池外装用の積層体の内側から発生した強酸が浸透し、その結果としてアルミ箔が強酸で腐食して劣化してしまい、電解液の液漏れが発生し、電池性能が低下するだけでなく、リチウムイオン電池が発火する恐れがあるという問題があった。
電極リード線部材の、断面で見た両端部が押し潰されて、断面中央部よりも厚みが薄くされていると、電極リード線部材とラミネートフィルム積層体との密着が良くなり空隙部が少なくなり、電解液の外部への漏洩や大気中の水分が内部に浸入するのが低減される。
図1に示すように、本発明の電極リード線部材18及びリチウムイオン電池17は、電池外装用積層体10を折り重ねて作成された電池用外装容器20に内包されている。
さらに、電池用外装容器20の三方の側縁部19は、ヒートシールして袋状に製袋されたものである。電極リード線部材18は、図1の様に電池用外装容器20から引き出されている。なお、本発明に係わる電極リード線部材18を用いて製造したリチウムイオン電池の電池用収納容器における収納方法は、図3に示した。
図4に示すように、電極リード線部材18は、アルミニウム製あるいはニッケルメッキ銅板製の導出部21を備え、該導出部21の表面上に、シーラント層23が、水酸基を含有するポリビニルアルコールの骨格を有する樹脂又はその共重合樹脂からなる耐蝕性の薄膜コーティング層22を介して、積層されている。
薄膜コーティング層22には、フッ化金属又はその誘導体からなり、水酸基を含有するポリビニルアルコールの骨格を有する樹脂又はその共重合樹脂からなる薄膜コーティング層を架橋させ、且つ、金属表面を活性化させる物質が含有されている。但し、フッ化金属又はその誘導体が含まれていなくても、薄膜コーティング層の耐蝕性は向上している。
薄膜コーティング層22は、導出部21の表面に印刷によりパターン状に形成されている。
導出部21の表面に形成されている薄膜コーティング層22は、熱処理により、架橋または非晶化することにより耐水化されている。
また、フッ化金属のように、水溶液の状態では遊離して酸性になる物質を、薄膜コーティング層に含有させて使用することにより、金属表面が活性化されて、金属表面と薄膜コーティング層の皮膜とが強く接着される。
ところで、ポリビニルアルコールの骨格を有する樹脂又はその共重合樹脂からなる薄膜コーティング層は、一般的にガスバリヤ性が良いことが知られている。薄膜コーティング層を構成する樹脂内部は、空隙が少なく、特に湿度の低い雰囲気下では、水素ガスのような分子径の小さなガス分子に対してもガスバリヤ性があることから、リチウム電池やキャパシタのような非水系電解液を用いた電池において、水分の存在しない電池内部の構成部材に薄膜コーティング層が使用される場合は、電解液や水分に対するバリヤ性が高いと考えられる。従って、フッ酸等の金属表面を腐食させる物質に対するバリヤ性も高いので腐食防止の効果があると予想される。このように、水酸基を含有する物質の中から選定された、ポリビニルアルコールの骨格を有する樹脂又はその共重合樹脂からなる薄膜コーティング層は、架橋させることにより、耐蝕性の向上を図ることができる。
もし、導出部21の表層に耐蝕性の薄膜コーティング層22を形成させていないと電解液の浸透により、導出部21の表層で、水分と電解液とが反応してフッ酸が発生し、導出部21が腐食することにより、その接着を劣化させるとされている。よって、少なくとも導出部21の電池側の表層面を、水酸基を含有するポリビニルアルコールの骨格を有する樹脂又はその共重合樹脂からなる薄膜コーティング層22が積層されてなることが好ましい。図4(b)に示すように、外装材との接合部分においては、導出部21の断面の外周部全体に、薄膜コーティング層22を積層する必要がある。
従来技術による、電極リード線部材に用いられるアルミ製の導出部21についての電解液に対する腐食防止対策としては、クロメート処理が広く用いられているが、アルミ製の導出部21と比較して、銅にニッケルメッキを施した導出部21に対しては、クロメート処理の効果が少ない。ところが、本発明による電極リード線部材18は、銅にニッケルメッキを施した導出部21についても電解液に対する腐食防止の効果があることが解った。
このことから、本発明の薄膜コーティング層22による電解液に対する腐食防止は、腐食防止のメカニズムが、従来技術のクロメート処理と異なっていると考えられる。
シーラント層23は、図5に示すように、正極と負極の双方にまたがるように積層しても良い。これにより、正極と負極とが一体化した電極リード線部材を得ることができる。また、薄膜コーティング層22の腐食防止効果は、アルミ板やニッケルメッキ銅板など各種金属板に対して得られるので、薄膜コーティング層22を正極と負極の双方の導出部21に設けることが好ましい。
また、薄膜コーティング層22にはフッ化金属又はその誘導体からなり、水酸基を含有するポリビニルアルコールの骨格を有する樹脂又はその共重合樹脂からなる薄膜コーティング層を架橋させる物質を含有することが好ましい。フッ化金属又はその誘導体としては、例えばフッ化クロム、フッ化鉄、フッ化ジルコニウム、フッ化チタン、フッ化ハフニウム、ジルコンフッ化水素酸およびそれらの塩、チタンフッ化水素酸およびそれらの塩、等のフッ化物が挙げられる。これらのフッ化金属又はその誘導体は、水酸基を含有するポリビニルアルコールの骨格を有する樹脂又はその共重合樹脂を架橋させる物質であると同時に、不動態であるアルミニウムのフッ化物を形成するF−イオンを含む物質でもあるので、導出部21がアルミニウム製である場合には、導出部21の表面を不動態化して、腐食防止の効果を高めることができると考えられる。
図6に、水酸基を含有するポリビニルアルコールの骨格を持つ非結晶ポリマー(日本合成化学(株)製)を3wt%、及びフッ化クロム(III)を1wt%溶かした水溶液を用いて乾燥後の厚みが3μmとなるように塗布し、更に200℃のオーブンにて加熱乾燥の処理をした薄膜コーティング層を示差熱分析装置で測定した結果の一例を示す。融点を確認したところ、融点のピークが無いことから架橋していることが解った。
更に、微量の水分が電池内部に浸入し、電解液と水分とが反応して電解液が分解することによりフッ酸が発生した場合にも、導出部21の表層面に積層された水酸基を含有するポリビニルアルコールの骨格を有する樹脂又はその共重合樹脂からなる薄膜コーティング層22は、フリーボリュームが少ないので、ガスバリヤ性が高く、シーラント層に沿って、外部へ拡散すること、及び微量のフッ酸が導出部21であるアルミ板の表面に接触しても、アルミ板の表面に形成されている不動態化膜により導出部21の腐食が防止されて、導出部21とシーラント層23との層間接着強度が保たれ、耐圧強度保持が高くなり、電池の液漏れ等の問題も発生しない。
水酸基を含有するポリビニルアルコールの骨格を有する樹脂又はその共重合樹脂からなる薄膜コーティング層22の厚みは、0.1〜5.0μmが望ましく、更に望ましくは0.5〜3μmであり、このような薄膜コーティング層の厚みであると、防湿性や接着強度の性能が増加する。
事前に電極リード線部材に接合しておくシーラント層23は、アルミラミネートフィルム10の最内層に用いられる樹脂フィルム13と同一または類似の樹脂フィルムを用いるのが好ましく、樹脂フィルム13が一般的に使用されているポリプロピレンの場合、シーラント層23は、無延伸ポリプロピレン(CPP)、無水マレイン酸変性プロピレン単独のフィルムもしくは、グリシジルメタクリレート等のエポキシ官能基を有するモノマーで変性されたポリプロピレンの単独フィルムであるか、これとポリプロピレンとの多層フィルムであっても良い。樹脂フィルム13がポリエチレンの場合も、シーラント層23は、ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリエチレンもしくは、グリシジルメタクリレート等のエポキシ官能基を有するモノマーで変性されたポリエチレン単体であってもよく、さらに、これとポリエチレン及びその共重合体との多層フィルムでもよい。この場合は、電解液と接触する面に、無水マレイン酸やアクリル酸の共重合体、グリシジルメタクリレート等で変性されたポリエチレンなどであっても良い。
・電極リード線部材の導出部とシーラント層との接着強度の測定方法:シーラント層の上にアルミラミネートフィルムをヒートシールした測定サンプルを用いて、JIS C6471「フレキシブルプリント配線板用銅張積層板試験方法」に規定された測定方法により測定した。
・電解液強度保持率の測定方法:電池外装用積層体を用いて、50×50mm(ヒートシール幅が5mm)の4方袋に製袋して、その中にLiPF6を1mol/リットル添加したPC/DEC電解液に純水を0.5wt%添加して、それを2cc計量し、充填して包装した。この4方袋の中に、電極リード線部材の導出部表面の一部に薄膜コーティング層をディスペンサー方式にて印刷し、その薄膜コーティング層の上にヒートシールによりシーラント層が積層された電極リード線部材を入れて、60℃のオーブンに100時間保管後、電極リード線部材の薄膜コーティング層とシーラント層との層間接着強度(k2)を測定する。
ここで、事前に測定しておいた、電解液に暴露する前の薄膜コーティング層とシーラント層であるポリプロピレン(PP)フィルムとの層間接着強度(k1)と、電解液に暴露した後の層間接着強度(k2)との比率を電解液強度保持率K=(k2/k1)×100(%)とした。
(測定装置)
・接着強度の測定装置:島津製作所製、型式:AUTOGRAPH AGS‐100A引張試験装置
リチウム電池用の電極リード線部材の導出部として、厚みが200μmのアルミ板を50mm×60mmの寸法に切断したアルミ片を用いた。脱脂洗浄したこのアルミ片の表面に、水酸基を含有するポリビニルアルコールの骨格を持つ非結晶ポリマー(日本合成化学(株)製)を3wt%、及びフッ化クロム(III)を1wt%溶かした水溶液を用いて1μmの厚みで10mm幅型ディスペンサーにて両面塗布し、薄膜コーティング層を積層し、更に200℃のオーブンにて加熱乾燥し、薄膜コーティング層の樹脂を焼き付けると同時に架橋化させた。この時に、導出部の裏表の表層だけでなく、導出部の両端面にも薄膜コーティング層が塗布されていることを確認した。
さらに、この導出部表面の薄膜コーティング層の上に、無水マレイン酸変性ポリプロピレンフィルムの単層フィルム(三井化学製ポリプロピレン系樹脂、品名/アドマーQE060をフィルム製膜機で100μmに製膜したフィルムを使用)をヒートシールにて両面接合し、実施例1の電極リード線部材を得た。
実施例1の電極リード線部材のシーラント層の上にアルミ箔(厚み20μm)/無水マレイン酸変性ポリプロピレンフィルム(厚み100μm)からなる、厚みが120μmのアルミラミネートフィルムをヒートシールして、実施例1の電極リード線部材を用いた測定サンプルを作製した。
この実施例1の測定サンプルから接着強度測定用の試験片を採取し、導出部とシーラント層との接着強度を測定したところ、46N/inchの接着強度を示した。
また、実施例1の測定サンプルについて、電解液強度保持率Kを測定した結果は、K=88%であった。
リチウム電池用の電極リード線部材の導出部として、厚みが200μmの銅板片(寸法50mm×60mm)の表面にニッケルスルファミン酸メッキを2〜5μmの厚みでメッキして、その一部に水酸基を含有するポリビニルアルコールの骨格を持つ非結晶ポリマー(日本合成化学(株)製)を3wt%、及びフッ化クロム(III)を1wt%溶かした水溶液を用いて1μmの厚みで塗布し、薄膜コーティング層を積層し、更に200℃のオーブンにて加熱乾燥し、薄膜コーティング層の樹脂を焼き付けると同時に架橋化させた。
さらに、この導出部表面の薄膜コーティング層の上に、無水マレイン酸変性ポリプロピレンフィルム単層(三井化学製ポリプロピレン系樹脂、品名/アドマーQE060をフィルム製膜機で100μmに製膜したフィルムを使用)をヒートシールにより両面熱接合して、実施例2の電極リード線部材を得た。
実施例2の電極リード線部材を用いて、実施例1と同様にアルミラミネートフィルムをヒートシールして実施例2の測定サンプルを得て、導出部とシーラント層との接着強度を測定したところ、44N/inchの接着強度を示した。
また、実施例2の電池収納容器の一部分について、電解液強度保持率Kを測定した結果は、K=78%であった。
アルミ板に薄膜コーティング層を積層しない以外は実施例1と同様にして、比較例1の電極リード線部材及び測定サンプルを得て、導出部とシーラント層との接着強度を測定したところ、54N/inchの接着強度を示した。また、比較例1の測定サンプルについて、電解液強度保持率Kを測定した結果は、K=10%以下であった。
リチウム電池用の電極リード線部材の導出部として、厚みが200μmの銅板片(寸法50mm×60mm)の表面に2〜5μm程度のスルファミン酸ニッケルメッキを施し、その一部に、水酸基を含有するポリビニルアルコールの骨格を持つ非結晶ポリマー(日本合成化学(株)製)を3wt%、及びフッ化クロム(III)を1wt%混ぜた塗料を用いて1μmの厚みで塗布し、薄膜コーティング層を積層した。その積層後に加熱乾燥の処理をしなかった以外は、実施例1と同様にして比較例2の電極リード線部材及び測定サンプルを得た。
比較例2の電極リード線部材及び測定サンプルについて、導出部とシーラント層との接着強度を測定したところ、46N/inchの接着強度を示した。また、比較例2の測定サンプルについて、電解液強度保持率Kを測定した結果は、K=10%以下であった。電解液強度保持率の測定後には、電解液への暴露のため、電極リード線部材の導出部とシーラント層とが剥離現象(デラミ)を起した。
一方、比較例1は、電極リード線部材に薄膜コーティング層を積層しなかった場合であるが、電極リード線部材の導出部とシーラント層との接着強度は、54N/inchと高い値であるが、電解液強度保持率Kが10%以下であり電解液耐性が無い。
また、比較例2は、電極リード線部材に薄膜コーティング層を塗布してもその加熱乾燥をしなかった場合であるが、電極リード線部材の導出部とシーラント層との接着強度は、46N/inchであるが、電解液強度保持率Kが10%以下であり電解液耐性が無い。
Claims (8)
- 非水系電池用収納容器から引き出される電極リード線部材であって、
金属製の導出部を備え、該導出部の表面上に、水酸基を含有するポリビニルアルコールの骨格を有する樹脂又はその共重合樹脂が架橋していて耐水化されている耐蝕性の薄膜コーティング層が積層されていて、
前記薄膜コーティング層には、フッ化金属又はその誘導体からなり、前記薄膜コーティング層に含まれる水酸基を含有するポリビニルアルコールの骨格を有する樹脂又はその共重合樹脂を架橋させる物質が含まれていることを特徴とする電極リード線部材。 - 前記薄膜コーティング層が、前記導出部の必要な部分の表面に印刷により形成されていて、前記薄膜コーティング層の厚みが、0.1〜5.0μmであることを特徴とする請求項1に記載の電極リード線部材。
- 前記薄膜コーティング層が、前記導出部の表面に印刷により、前記導出部の長手方向に交差する方向に沿った、帯状のパターンに形成されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の電極リード線部材。
- 前記薄膜コーティング層において、前記水酸基を含有するポリビニルアルコールの骨格を有する樹脂又はその共重合樹脂が、前記フッ化金属又はその誘導体により架橋されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電極リード線部材。
- 前記フッ化金属又はその誘導体が、アルミニウムのフッ化物を形成できるF−イオンを含む物質であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電極リード線部材。
- 前記導出部の、断面で見た両端部が押し潰されて、断面中央部よりも厚みが薄くされていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電極リード線部材。
- さらに、前記薄膜コーティング層の上に、シーラント層が積層されていて、前記シーラント層の厚みが、50μm以上300μm以下であり、前記薄膜コーティング層が形成された導出部と前記薄膜コーティング層の上に積層されたシーラント層との層間剥離強度が、JIS C6471に規定された引き剥がし測定方法Aにより測定し、40N/inch以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電極リード線部材。
- 前記シーラント層が、無水マレイン酸変性のポリオレフィン系樹脂フィルム、又は、エポキシ官能基で変性されたポリオレフィン系樹脂フィルムであることを特徴とする請求項7に記載の電極リード線部材。
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