JP2016100057A - 電気化学素子電極用複合粒子 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高密度な電極を形成することができる電気化学素子電極用複合粒子を提供する。【解決手段】 電極活物質、結着剤、導電材(A)を含み、かつ、滑材(B)を内包した電気化学素子電極用複合粒子であって、前記滑材(B)の3軸径を長径L、厚さt、幅bとしたとき、前記長径Lが0.1〜10μm、前記幅bと前記厚さtとの比(b/t)が、2以上100未満であり、前記導電材(A)と前記滑材(B)との重量比(A)/(B)が、0.5以上10以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、電気化学素子電極用複合粒子に関するものである。
小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、繰り返し充放電が可能なリチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタなどの電気化学素子は、環境対応からも今後の需要の拡大が見込まれている。リチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が大きく携帯電話やノート型パーソナルコンピュータなどの分野で利用されており、電気二重層キャパシタは、急激な充放電が可能でパソコン等のメモリバックアップ小型電源として利用されている。また、金属酸化物や導電性高分子の表面の酸化還元反応(疑似電気二重層容量)を利用するリチウムイオンキャパシタもその容量の大きさから注目を集めている。これら電気化学素子は、用途の拡大や発展に伴い、低抵抗化、大容量化等、より一層の性能向上が求められている。
これら電気化学素子への期待が高まる一方で、これら電気化学素子には、用途の拡大や発展に伴い、低抵抗化、高容量化、機械的特性や生産性の向上など、より一層の改善が求められている。このような状況において、電気化学素子用電極に関してもより生産性の高い製造方法が求められている。
電気化学素子用電極は、通常、電極活物質と、必要に応じて用いられる導電材とを結着剤で結着することにより形成された電極活物質層を集電体上に積層してなるものである。電気化学素子用電極には、電極活物質、結着剤、導電材等を含む塗布電極用スラリーを集電体上に塗布し、溶剤を熱などにより除去する方法で製造される塗布電極があるが、結着剤などのマイグレーションにより、均一な電気化学素子の製造が困難であった。また、この方法はコスト高で作業環境が悪くなり、また、製造装置が大きくなる傾向があった。
これに対して、電気化学素子用電極の製造方法として、電極活物質、導電材及び結着剤を含む電極組成物のスラリーをスプレードライ乾燥して粉体とし、粉体を加圧成形して電極とする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、特許文献1においては複合粒子中の導電材が凝集するため電極の密度を上げることが難しく、電気化学素子の作製のために電極を巻くと、ひび割れや剥がれが生じる虞があった。また、電極の密度を上げることができないため、この複合粒子を用いて内部抵抗の低い電気化学素子を作製することが困難であった。
特開2004−247249号公報
本発明の目的は、高密度な電極を形成することができる電気化学素子電極用複合粒子を提供することである。
本発明者は、鋭意検討の結果、複合粒子の材料として特定の形状を有する滑材を用いることで、導電材の凝集を抑制することができ、高密度な電極を形成することができる電気化学素子電極用複合粒子を得られることを見出した。
即ち、本発明によれば、
(1) 電極活物質、結着剤、導電材(A)を含み、かつ、滑材(B)を内包した電気化学素子電極用複合粒子であって、前記滑材(B)の3軸径を長径L、厚さt、幅bとしたとき、前記長径Lが0.1〜10μm、前記幅bと前記厚さtとの比(b/t)が、2以上100未満であり、前記導電材(A)と前記滑材(B)との重量比(A)/(B)が、0.5以上10以下であることを特徴とする電気化学素子電極用複合粒子、
(2) 前記滑材(B)は、遷移金属元素を含まない(1)の電気化学素子電極用複合粒子、
(3) 非水溶性多糖高分子繊維を含むことを特徴とする(1)または(2)の電気化学素子電極用複合粒子、
(4) 前記導電材(A)として炭素繊維を含むことを特徴とする(1)〜(3)の何れかの電気化学素子電極用複合粒子
が提供される。
本発明によれば、高密度な電極を形成することができる電気化学素子電極用複合粒子が提供される。
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の電気化学素子電極用複合粒子(以下、「複合粒子」ということがある。)は、電極活物質、結着剤、導電材(A)を含み、かつ、滑材(B)を内包した電気化学素子電極用複合粒子であって、前記滑材(B)の3軸径を長径L、厚さt、幅bとしたとき、前記長径Lが0.1〜10μm、前記幅bと前記厚さtとの比(b/t)が、2以上100未満であり、前記導電材(A)と前記滑材(B)との重量比(A)/(B)が、0.5以上10以下であることを特徴とする。
なお、以下において、さらに、「正極活物質」とは正極用の電極活物質を意味し、「負極活物質」とは負極用の電極活物質を意味する。また、「正極活物質層」とは正極に設けられる電極活物質層を意味し、「負極活物質層」とは負極に設けられる電極活物質層を意味する。
(電極活物質)
本発明に用いる電極活物質は、電気化学素子の種類によって適宜選択される。本発明の複合粒子は正極に用いることが好ましい。本発明の複合粒子をリチウムイオン二次電池の電極材料として用いる場合、正極活物質としては、リチウムイオンをドープ及び脱ドープ可能な活物質が用いられ、無機化合物からなるものと有機化合物からなるものとに大別される。
無機化合物からなる正極活物質としては、遷移金属酸化物、遷移金属硫化物、リチウムと遷移金属とのリチウム含有複合金属酸化物などが挙げられる。上記の遷移金属としては、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo等が使用される。
遷移金属酸化物としては、MnO、MnO2、V25、V613、TiO2、Cu223、非晶質V2O−P25、MoO3、V25、V613等が挙げられ、中でもサイクル安定性と容量からMnO、V25、V613、TiO2が好ましい。遷移金属硫化物としては、TiS2、TiS3、非晶質MoS2、FeS等が挙げられる。リチウム含有複合金属酸化物としては、層状構造を有するリチウム含有複合金属酸化物、スピネル構造を有するリチウム含有複合金属酸化物、オリビン型構造を有するリチウム含有複合金属酸化物などが挙げられる。
層状構造を有するリチウム含有複合金属酸化物としてはリチウム含有コバルト酸化物(LiCoO2)、リチウム含有ニッケル酸化物(LiNiO2)、Co−Ni−Mnのリチウム複合酸化物(以下、「NMC」ということがある。)、Ni−Mn−Alのリチウム複合酸化物、Ni−Co−Alのリチウム複合酸化物等が挙げられる。スピネル構造を有するリチウム含有複合金属酸化物としてはマンガン酸リチウム(LiMn24)やMnの一部を他の遷移金属で置換したLi[Mn3/21/2]O4(ここでMは、Cr、Fe、Co、Ni、Cu等)等が挙げられる。オリビン型構造を有するリチウム含有複合金属酸化物としてはLiXMPO4(式中、Mは、Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Mg,Zn,V,Ca,Sr,Ba,Ti,Al,Si,B及びMoから選ばれる少なくとも1種、0≦X≦2)であらわされるオリビン型燐酸リチウム化合物が挙げられる。
有機化合物としては、例えば、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレンなどの導電性高分子を用いることもできる。電気伝導性に乏しい、鉄系酸化物は、還元焼成時に炭素源物質を存在させることで、炭素材料で覆われた正極用活物質として用いてもよい。また、これら化合物は、部分的に元素置換したものであってもよい。正極活物質は、上記の無機化合物と有機化合物の混合物であってもよい。
正極活物質の体積平均粒子径は、電気化学素子用電極の他の構成要素との兼ね合いで適宜選択されるが、負荷特性、サイクル特性等の電気化学素子の特性向上の観点から、好ましくは1〜50μm、より好ましくは2〜30μmである。
(結着剤)
本発明に用いる結着剤としては、上述の電極活物質を相互に結着させることができる物質であれば特に限定はない。結着剤としては、溶媒に分散する性質のある分散型の結着剤が好ましい。分散型の結着剤として、例えば、シリコン系重合体、フッ素含有重合体、共役ジエン系重合体、アクリレート系重合体、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン等の高分子化合物が挙げられ、フッ素含有重合体、共役ジエン系重合体およびアクリレート系重合体が好ましく、アクリレート系重合体がより好ましい。これらの重合体は、それぞれ単独で、または2種以上混合して、分散型の結着剤として用いることができる。
フッ素含有重合体は、フッ素原子を含む単量体単位を含有する重合体である。フッ素含有重合体の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体、パーフルオロエチレン・プロペン共重合体が挙げられる。
共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体の単独重合体もしくは共役ジエン系単量体を含む単量体混合物を重合して得られる共重合体、またはそれらの水素添加物である。共役ジエン系単量体として、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換および側鎖共役ヘキサジエン類などを用いることが好ましく、電極とした際における柔軟性を向上させることができ、割れに対する耐性を高いものとすることができる点で1,3−ブタジエンを用いることがより好ましい。また、単量体混合物においてはこれらの共役ジエン系単量体を2種以上含んでもよい。
共役ジエン系重合体が、上述した共役ジエン系単量体と、これと共重合可能な単量体との共重合体である場合、かかる共重合可能な単量体としては、たとえば、α,β−不飽和ニトリル化合物や酸成分を有するビニル化合物などが挙げられる。
共役ジエン系重合体の具体例としては、ポリブタジエンやポリイソプレンなどの共役ジエン系単量体単独重合体;カルボキシ変性されていてもよいスチレン・ブタジエン共重合体(SBR)などの芳香族ビニル系単量体・共役ジエン系単量体共重合体;アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(NBR)などのシアン化ビニル系単量体・共役ジエン系単量体共重合体;水素化SBR、水素化NBR等が挙げられる。
共役ジエン系重合体中における共役ジエン系単量体単位の配合量は、好ましくは20〜60重量%であり、より好ましくは30〜55重量%である。共役ジエン系単量体単位の配合量が多すぎると、結着剤を含む複合粒子を用いて電極を製造した場合に、耐電解液性が低下する傾向がある。共役ジエン系単量体単位の配合量が少なすぎると、複合粒子と集電体との十分な密着性が得られない傾向がある。
アクリレート系重合体は、一般式(1):CH2=CR1−COOR2(式中、R1は水素原子またはメチル基を、R2はアルキル基またはシクロアルキル基を表す。R2はさらにエーテル基、水酸基、リン酸基、アミノ基、カルボキシル基、フッ素原子、またはエポキシ基を有していてもよい。)で表される化合物〔(メタ)アクリル酸エステル〕由来の単量体単位を含む重合体、具体的には、一般式(1)で表される化合物の単独重合体、または前記一般式(1)で表される化合物を含む単量体混合物を重合して得られる共重合体である。一般式(1)で表される化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソボニル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、および(メタ)アクリル酸トリデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等のエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸等のカルボン酸含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル等のフッ素基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸リン酸エチル等のリン酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル;等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」を意味する。
これら(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、および(メタ)アクリル酸n―ブチルやアルキル基の炭素数が6〜12である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。これらを選択することにより、電解液に対する膨潤性を低くすることが可能となり、サイクル特性を向上させることができる。
また、アクリレート系重合体が、上述した一般式(1)で表される化合物と、これと共重合可能な単量体との共重合体である場合、かかる共重合可能な単量体としては、たとえば、2つ以上の炭素−炭素二重結合を有するカルボン酸エステル類、芳香族ビニル系単量体、アミド系単量体、オレフィン類、ジエン系単量体、ビニルケトン類、及び複素環含有ビニル化合物などのほか、α,β−不飽和ニトリル化合物や酸成分を有するビニル化合物が挙げられる。
上記共重合可能な単量体の中でも、電極を製造した際に変形しにくく強度が強いものとすることができ、また、電極活物質層と集電体との十分な密着性が得られる点で、芳香族ビニル系単量体を用いることが好ましい。芳香族ビニル系単量体としては、スチレン等が挙げられる。
なお、芳香族ビニル系単量体の配合量が多すぎると電極活物質層と集電体との十分な密着性が得られない傾向がある。また、芳香族ビニル系単量体の配合量が少なすぎると、電極を製造した際に耐電解液性が低下する傾向がある。
アクリレート系重合体中における(メタ)アクリル酸エステル単位の配合量は、電極とした際における柔軟性を向上させることができ、割れに対する耐性を高いものとする観点から、好ましくは50〜95重量%であり、より好ましくは60〜90重量%である。
結着剤を構成する重合体に用いられる、前記α,β−不飽和ニトリル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、及びα−ブロモアクリロニトリルなどが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。
結着剤中におけるα,β−不飽和ニトリル化合物単位の配合量は、好ましくは0.1〜40重量%、より好ましくは0.5〜30重量%、さらに好ましくは1〜20重量%である。結着剤中にα,β−不飽和ニトリル化合物単位を含有させると、電極を製造した際に変形しにくく強度が強いものとすることができる。また、結着剤中にα,β−不飽和ニトリル化合物単位を含有させると、複合粒子を含む電極活物質層と集電体との密着性を十分なものとすることができる。
なお、α,β−不飽和ニトリル化合物単位の配合量が多すぎると電極活物質層と集電体との十分な密着性が得られない傾向がある。また、α,β−不飽和ニトリル化合物単位の配合量が少なすぎると、電極を製造した際に耐電解液性が低下する傾向がある。
前記酸成分を有するビニル化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、及びフマル酸などが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、およびイタコン酸が好ましく、メタクリル酸及びイタコン酸がより好ましく、接着力が良くなる点で特に、イタコン酸が好ましい。
分散型の結着剤中における酸成分を有するビニル化合物単位の配合量は、複合粒子用スラリーとした際における安定性が向上する観点から、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは1〜8重量%、さらに好ましくは2〜7重量%である。
なお、酸成分を有するビニル化合物単位の配合量が多すぎると、複合粒子用スラリーの粘度が高くなり、取扱いが困難になる傾向がある。また、酸成分を有するビニル化合物単位の配合量が少なすぎると複合粒子用スラリーの安定性が低下する傾向がある。
本発明に用いる結着剤は、粒子状であることにより、結着性が良く、また、作製した電極の容量の低下や充放電の繰り返しによる劣化を抑えることができる。結着剤としては、例えば、ラテックスのごとき結着樹脂の粒子が水に分散した状態のものや、このような分散液を乾燥して得られる粉末状のものが挙げられる。
結着剤の平均粒子径は、複合粒子用スラリーとした際における安定性を良好なものとしながら、得られる電極の強度及び柔軟性が良好となる点から、好ましくは0.001〜100μm、より好ましくは10〜1000nm、さらに好ましくは50〜500nmである。
また、本発明に用いる結着剤の製造方法は特に限定されず、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法または溶液重合法等の公知の重合法を採用することができる。中でも、乳化重合法で製造することが、結着剤の粒子径の制御が容易であるので好ましい。また、本発明に用いる結着剤は、2種以上の単量体混合物を段階的に重合することにより得られるコアシェル構造を有する粒子であっても良い。
本発明の電気化学素子電極用複合粒子中の結着剤の配合量は、得られる電極活物質層と集電体との密着性が充分に確保でき、かつ、電気化学素子の内部抵抗を低くすることができる観点から、電極活物質100重量部に対して、乾燥重量基準で好ましくは0.1〜50重量部、より好ましくは0.5〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部である。
(導電材(A))
本発明に用いられる導電材(A)としては、導電性を有する材料であればよく、特に限定されないが、炭素繊維を用いることが好ましい。
導電材(A)として用いることができる炭素繊維は、石油、石炭、コールタールおよび炭化水素等の原料を高温で炭化することで微細な黒鉛結晶構造をもつ繊維状の炭素物質で、非局在化したπ電子の存在によって高い導電性を有する。具体的には、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相法炭素繊維、カーボンナノチューブなどが挙げられ、気相法炭素繊維、カーボンナノチューブが好ましく用いられる。
炭素繊維の短軸数平均径は、好ましくは0.001〜50μm、さらに好ましくは0.005〜10μm、特に好ましくは0.01〜5μmである。炭素繊維の短軸数平均径がこの範囲にあるときは、複合粒子中の炭素繊維が高充填され、高導電性が得られる。ここで、短軸数平均径は、透過型電子顕微鏡写真で無作為に選んだ炭素繊維100個の短軸径を測定し、算術平均値として算出される個数平均粒子径である。
炭素繊維のアスペクト比は、好ましくは5〜100000、さらに好ましくは10〜50000、特に好ましくは15〜10000である。ここで、アスペクト比は(短軸数平均径)/(長軸数平均径)で表される値である。長軸数平均径は、透過電子顕微鏡写真で無作為に選んだ炭素繊維100個の長軸径を測定し、その算術平均として算出される個数平均粒子径とする。
また、導電材(A)として、ファーネスブラック、アセチレンブラック、及びケッチェンブラック等のカーボンブラック;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛等を用いても良い。これらの中では、アセチレンブラックが好ましい。カーボンブラック及び黒鉛の平均粒子径は、特に限定されないが、電極活物質の平均粒子径よりも小さいものが好ましく、より少ない使用量で十分な導電性を発現させる観点から、通常0.001〜10μm、好ましくは0.05〜5μm、より好ましくは0.01〜1μmである。導電材(A)は、1種のみを単独で使用することもできるし、2種以上を混合して使用することもできる。
(滑材(B))
本発明に用いられる滑材(B)としては、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、雲母、グラファイト、フッ化グラファイト、銀−セレン化ニオブ、塩化カルシウム−グラファイト、滑石、ポリフッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素化重合体、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、パルミチン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩、板状ベーマイト等の板状セラミック等が挙げられる。滑材(B)は、1種のみを単独で使用することもできるし、2種以上を混合して使用することもできる。これらの中でも導電性が比較的高いグラファイトが好適である。
滑材(B)の形状としては、滑材(B)の3軸径を長径L、厚さt、幅bとしたとき、幅bと厚さtとの比(b/t)は、2以上100未満、好ましくは5以上50未満、より好ましくは10以上30未満である。なお、幅bと厚さtとの比(b/t)が大きすぎると、充填を阻害してしまい、幅bと厚さtとの比(b/t)が小さすぎると、滑材としての効果が得られない。
滑材(B)の長径Lは、0.1〜10μmであり、好ましくは0.5〜8μm、より好ましくは1〜5μmである。長径Lが大きすぎると、滑材としての効果が得られず、長径Lが小さすぎると、凝集してしまうため効果が薄い。
また、滑材(B)の幅bは、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.5〜8μm、さらに好ましくは1〜5μmである。幅bが大きすぎると、滑材としての効果が得られず、幅bが小さすぎると、凝集してしまうため効果が薄い。
また、滑材(B)の厚さtは、好ましくは0.02〜5μm、より好ましくは0.05〜3μm、さらに好ましくは0.1〜2μmである。厚さtが大きすぎると、滑材としての効果が得られず、厚さtが小さすぎると、強度が十分でないため滑材の効果が得られない。
本発明の電気化学素子電極用複合粒子中における、滑材(B)の配合量は、電極活物質100重量部に対して、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは0.7〜10重量部、さらに好ましくは1〜5重量部である。滑材(B)の配合量が多すぎると、得られる電気化学素子の内部抵抗が大きくなる。滑材(B)の配合量が少なすぎると、滑材としての効果がなくなる。
また、複合粒子中における導電材(A)と滑材(B)との重量比(A)/(B)は、0.5以上10以下、好ましくは0.7以上7以下、より好ましくは1以上5以下である。重量比(A)/(B)が大きすぎると、滑材としての効果がなくなる。重量比(A)/(B)が小さすぎると、得られる電気化学素子の内部抵抗が大きくなる。
本発明において滑材(B)は、電気化学素子電極用複合粒子に内包される。滑材(B)が複合粒子に内包されていることにより、複合粒子を含む電極活物質層を集電体上にプレスする際に、導電材(A)の凝集体に入り込んだ滑材(B)が凝集体を一部破壊することができる。そのため、同じ圧力でプレスした場合であっても、滑材(B)を内包した複合粒子を用いた方が、滑材(B)を内包しない複合粒子を用いた場合と比較して、得られる電極の密度が上がりやすい。その結果、滑材(B)を内包した複合粒子を用いる場合は、得られる電気化学素子の内部抵抗の上昇を抑制することができる。
本発明に用いられる滑材(B)は、遷移金属元素を含まないことが好ましい。滑材(B)中に遷移金属元素が含まれる場合には、得られる電気化学素子中において、遷移金属元素が内部短絡の原因や性能劣化の原因となる虞がある。
(非水溶性多糖高分子繊維)
本発明に用いる非水溶性多糖高分子繊維は、機械的せん断力によりフィブリル化させた繊維(短繊維)である。なお、本発明に用いる非水溶性多糖高分子繊維とは、25℃において、多糖高分子繊維0.5gを100gの水に溶解した際に、不溶分が90重量%以上となる多糖高分子繊維をいう。
非水溶性多糖高分子繊維としては、多糖高分子のナノファイバーを用いることが好ましく、多糖高分子のナノファイバーのなかでも柔軟性を有し、かつ、高い強度を有するため複合粒子の補強効果が高い観点から、セルロースナノファイバー、キチンナノファイバー、キトサンナノファイバーなどの生物由来のバイオナノファイバーから選ばれる単独又は任意の混合物を使用するのが好ましい。
これらの非水溶性多糖高分子繊維に機械的せん断力を加えてフィブリル化(短繊維化)する方法としては、非水溶性多糖高分子繊維を水に分散させた後に、叩解させる方法、オリフィスを通過させる方法などが挙げられる。また、非水溶性多糖高分子繊維は、各種繊維径の短繊維が市販されており、これらを水中分散させて用いてもよい。
本発明に用いる非水溶性多糖高分子繊維の平均繊維径は、複合粒子および電極の強度を十分なものとする観点、および、均一な電極活物質層が形成できるため得られる電気化学素子の電気化学特性に優れる観点から、好ましくは5〜3000nm、より好ましくは5〜2000nm、さらに好ましくは5〜1000nm、特に好ましくは5〜100nmである。非水溶性多糖高分子繊維の平均繊維径が大きすぎると複合粒子内に非水溶性多糖高分子繊維が十分に存在することができないため、複合粒子の強度を十分なものとすることができない。また、複合粒子の流動性が悪くなり、均一な電極活物質層の形成が困難となる。
なお、非水溶性多糖高分子繊維は、単繊維が引き揃えられることなく十分に離隔して存在するものより成ってもよい。この場合、平均繊維径は単繊維の平均径となる。また、非水溶性多糖高分子繊維は、複数本の単繊維が束状に集合して1本の糸条を構成しているものであってもよい。この場合、平均繊維径は1本の糸条の径の平均値として定義される。
また、非水溶性多糖高分子繊維の重合度は、複合粒子および電極の強度を十分なものとする観点、および、均一な電極活物質層が形成できるため得られる電気化学素子の電気化学特性に優れる観点から、好ましくは50〜1000、より好ましくは100〜600である。非水溶性多糖高分子繊維の重合度が大きすぎると、得られる電気化学素子の内部抵抗が上昇する。また、均一な電極活物質層の形成が困難となる。また、非水溶性多糖高分子繊維の重合度が小さすぎると複合粒子の強度が不十分となる。
非水溶性多糖高分子繊維の配合量は、複合粒子100重量部に対して、好ましくは0. 2〜4重量部、より好ましくは0.5〜4重量部、さらに好ましくは1〜3重量部、特に好ましくは1〜2重量部である。非水溶性多糖高分子繊維の配合量が多すぎると、得られる電気化学素子の内部抵抗が上昇する。また、均一な電極層(電極活物質層)の形成が困難となる。また、非水溶性多糖高分子繊維の配合量が少なすぎると複合粒子の強度が不十分となる。なお、非水溶性多糖高分子繊維の配合量を増やすことで複合粒子用スラリーの粘度が上昇する場合には、下記分散剤の配合量を減らすことにより粘度を適宜調整することができる。
(分散剤)
複合粒子には、必要に応じて分散剤を用いてもよい。分散剤の具体例としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマー、ならびにこれらのアンモニウム塩またはアルカリ金属塩、アルギン酸プロピレングリコールエステルなどのアルギン酸エステル、ならびにアルギン酸ナトリウムなどのアルギン酸塩、ポリアクリル酸、およびポリアクリル酸(またはメタクリル酸)ナトリウムなどのポリアクリル酸(またはメタクリル酸)塩、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリカルボン酸、酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼイン、各種変性デンプン、キチン、キトサン誘導体などが挙げられる。これらの分散剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。中でも、セルロース系ポリマーが好ましく、カルボキシメチルセルロースまたはそのアンモニウム塩もしくはアルカリ金属塩が特に好ましい。これらの分散剤の配合量は、本発明の効果を損ねない範囲であれば格別な限定はないが、電極活物質100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部、より好ましくは0.8〜2重量部である。
(複合粒子の製造)
複合粒子は、電極活物質、結着剤、導電材(A)、滑材(B)、および必要に応じ添加される非水溶性多糖高分子等他の成分を用いて造粒することにより得られる。複合粒子は、少なくとも電極活物質、結着剤、導電材(A)及び滑材(B)を含んでなるが、これらの成分のそれぞれが個別に独立した粒子として存在するのではなく、これらの構成成分(電極活物質、結着剤等)を含む2成分以上によって一粒子を形成するものである。例えば、前記2成分以上の個々の粒子が実質的に形状を維持した状態で複数個が結合して二次粒子を形成し、複数個(好ましくは数個〜数千個)の電極活物質が、結着剤によって結着されて粒子を形成する。
複合粒子の形状は、流動性の観点から実質的に球形であることが好ましい。すなわち、複合粒子の短軸径をLs、長軸径をLl、La=(Ls+Ll)/2とし、(1−(Ll−Ls)/La)×100の値を球形度(%)としたとき、球形度が80%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。ここで、短軸径Lsおよび長軸径Llは、走査型電子顕微鏡写真像より測定される値である。
複合粒子の平均粒子径は、所望の厚みの電極活物質層を容易に得ることができる観点から、通常0.1〜200μm、好ましくは1〜150μm、より好ましくは10〜100μmの範囲である。
なお、本発明において平均粒子径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置(たとえば、SALD−3100;島津製作所製)にて測定し、算出される体積平均粒子径である。
複合粒子の製造方法は特に限定されないが、噴霧乾燥造粒法、転動層造粒法、圧縮型造粒法、撹拌型造粒法、押出し造粒法、破砕型造粒法、流動層造粒法、流動層多機能型造粒法、および溶融造粒法などの製造方法によって複合粒子を得ることができる。
複合粒子の製造方法は、粒子径制御の容易性、生産性、粒子径分布の制御の容易性などの観点から、複合粒子の成分等に応じて最適な方法を適宜選択すればよいが、以下に説明する噴霧乾燥造粒法は、複合粒子を比較的容易に製造することができるため、好ましい。以下、噴霧乾燥造粒法について説明する。
まず、電極活物質、結着剤、導電材(A)、及び滑材(B)を含有する複合粒子用スラリー(以下、「スラリー」ということがある。)を調製する。複合粒子用スラリーは、電極活物質、結着剤、導電材(A)、及び滑材(B)ならびに必要に応じて添加される非水溶性多糖高分子繊維、分散剤等他の成分を、溶媒に分散又は溶解させることにより調製することができる。なお、この場合において、結着剤が溶媒としての水に分散されたものである場合には、水に分散させた状態で添加することができる。
複合粒子用スラリーを得るために用いる溶媒としては、水を用いることが好ましいが、水と有機溶媒との混合溶媒を用いてもよく、有機溶媒のみを単独または数種組み合わせて用いてもよい。この場合に用いることができる有機溶媒としては、たとえば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のアルキルケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライム等のエーテル類;ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類;等が挙げられる。有機溶媒を用いる場合には、アルコール類が好ましい。水と、水よりも沸点の低い有機溶媒とを併用することにより、噴霧乾燥時に、乾燥速度を速くすることができる。また、これにより、複合粒子用スラリーの粘度や流動性を調整することができ、生産効率を向上させることができる。
また、複合粒子用スラリーの粘度は、噴霧乾燥造粒工程の生産性を向上させる観点から、室温において、好ましくは10〜3,000mPa・s、より好ましくは30〜1,500mPa・s、さらに好ましくは50〜1,000mPa・sである。
また、本発明においては、複合粒子用スラリーを調製する際に、必要に応じて、界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、ノニオニックアニオン等の両性の界面活性剤が挙げられるが、アニオン性又はノニオン性界面活性剤で熱分解しやすいものが好ましい。界面活性剤の配合量は、電極活物質100重量部に対して、好ましくは50重量部以下であり、より好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部である。
スラリーを調製する際に使用する溶媒の量は、スラリー中に結着剤を均一に分散させる観点から、スラリーの固形分濃度が、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは10〜40重量%となる量である。
電極活物質、結着剤、導電材(A)、及び滑材(B)ならびに必要に応じて添加される非水溶性多糖高分子繊維や分散剤等の他の成分を溶媒に分散又は溶解する方法又は順番は、特に限定されず、例えば、溶媒に電極活物質、結着剤、導電材(A)、滑材(B)、非水溶性多糖高分子繊維、及び分散剤を添加し混合する方法、溶媒に分散剤を溶解した後、電極活物質、導電材(A)、滑材(B)および非水溶性多糖高分子繊維を添加して混合し、最後に溶媒に分散させた結着剤(例えば、ラテックス)を添加して混合する方法、溶媒に分散させた結着剤および非水溶性多糖高分子繊維に電極活物質、導電材(A)および滑材(B)を添加して混合し、この混合物に溶媒に溶解させた分散剤を添加して混合する方法等が挙げられる。
また、混合装置としては、たとえば、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、顔料分散機、らい潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等を用いることができる。混合は、好ましくは室温〜80℃で、10分〜数時間行う。
次いで、得られた複合粒子用スラリーを噴霧乾燥して造粒する。噴霧乾燥は、熱風中にスラリーを噴霧して乾燥する方法である。スラリーの噴霧に用いる装置としてアトマイザーが挙げられる。アトマイザーとしては、回転円盤方式と加圧方式との二種類の装置が挙げられ、回転円盤方式は、高速回転する円盤のほぼ中央にスラリーを導入し、円盤の遠心力によってスラリーが円盤の外に放たれ、その際にスラリーを霧状にする方式である。回転円盤方式において、円盤の回転速度は円盤の大きさに依存するが、好ましくは5,000〜30,000rpm、より好ましくは15,000〜30,000rpmである。円盤の回転速度が低いほど、噴霧液滴が大きくなり、得られる複合粒子の平均粒子径が大きくなる。回転円盤方式のアトマイザーとしては、ピン型とベーン型が挙げられるが、好ましくはピン型アトマイザーである。ピン型アトマイザーは、噴霧盤を用いた遠心式の噴霧装置の一種であり、該噴霧盤が上下取付円板の間にその周縁に沿ったほぼ同心円上に着脱自在に複数の噴霧用コロを取り付けたもので構成されている。複合粒子用スラリーは噴霧盤中央から導入され、遠心力によって噴霧用コロに付着し、コロ表面を外側へと移動し、最後にコロ表面から離れ噴霧される。一方、加圧方式は、複合粒子用スラリーを加圧してノズルから霧状にして乾燥する方式である。
噴霧される複合粒子用スラリーの温度は、好ましくは室温であるが、加温して室温より高い温度としてもよい。また、噴霧乾燥時の熱風温度は、好ましくは25〜250℃、より好ましくは50〜200℃、さらに好ましくは80〜150℃である。噴霧乾燥法において、熱風の吹き込み方法は特に限定されず、たとえば、熱風と噴霧方向が横方向に並流する方式、乾燥塔頂部で噴霧され熱風と共に下降する方式、噴霧した滴と熱風が向流接触する方式、噴霧した滴が最初熱風と並流し次いで重力落下して向流接触する方式等が挙げられる。
(電気化学素子電極)
本発明の電気化学素子電極用複合粒子を含む電極活物質層を集電体上に積層することにより、電気化学素子電極を得ることができる。集電体の材料としては、たとえば、金属、炭素、導電性高分子などを用いることができ、好適には金属が用いられる。金属としては、通常、銅、アルミニウム、白金、ニッケル、タンタル、チタン、ステンレス鋼、その他の合金等が使用される。これらの中で導電性、耐電圧性の面から、銅、アルミニウム又はアルミニウム合金を使用するのが好ましい。また、高い耐電圧性が要求される場合には特開2001−176757号公報等で開示される高純度のアルミニウムを好適に用いることができる。集電体は、フィルム又はシート状であり、その厚みは、使用目的に応じて適宜選択されるが、好ましくは1〜200μm、より好ましくは5〜100μm、さらに好ましくは10〜50μmである。
電極活物質層を集電体上に積層する際には、複合粒子をシート状に成形し、次いで集電体上に積層してもよいが、集電体上で複合粒子を直接加圧成形する方法が好ましい。加圧成形する方法としては、例えば、一対のロールを備えたロール式加圧成形装置を用い、集電体をロールで送りながら、スクリューフィーダー等の供給装置で複合粒子をロール式加圧成形装置に供給することで、集電体上に電極活物質層を成形するロール加圧成形法や、複合粒子を集電体上に散布し、複合粒子をブレード等でならして厚みを調整し、次いで加圧装置で成形する方法、複合粒子を金型に充填し、金型を加圧して成形する方法などが挙げられる。これらのなかでも、ロール加圧成形法が好ましい。特に、本発明の複合粒子は、高い流動性を有しているため、その高い流動性により、ロール加圧成形による成形が可能であり、これにより、生産性の向上が可能となる。
ロール加圧成形を行う際のロール温度は、電極活物質層と集電体との密着性を十分なものとすることができる観点から、好ましくは25〜200℃、より好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは80〜120℃である。また、ロール加圧成形時のロール間のプレス線圧は、電極活物質層の厚みの均一性を向上させることができる観点から、好ましくは10〜1000kN/m、より好ましくは200〜900kN/m、さらに好ましくは300〜600kN/mである。また、ロール加圧成形時の成形速度は、好ましくは0.1〜20m/分、より好ましくは4〜10m/分である。
また、成形した電気化学素子電極の厚みのばらつきを無くし、電極活物質層の密度を上げて高容量化を図るために、必要に応じてさらに後加圧を行ってもよい。後加圧の方法は、ロールによるプレス工程が好ましい。ロールプレス工程では、2本の円柱状のロールをせまい間隔で平行に上下にならべ、それぞれを反対方向に回転させて、その間に電極をかみこませることにより加圧する。この際においては、必要に応じて、ロールは加熱又は冷却等、温度調節してもよい。電極活物質層の厚みは、特に制限されないが、通常は5〜1000μm、好ましくは20〜500μm、より好ましくは30〜300μmである。
(電気化学素子)
上述のようにして得られる電気化学素子電極を正極として用い、さらに負極、セパレーターおよび電解液を備えることにより、電気化学素子を得ることができる。電気化学素子としては、例えば、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ等が挙げられる。
(負極)
電気化学素子の負極は、負極活物質層を集電体上に積層してなる。電気化学素子の負極は、負極活物質、負極用結着剤、負極の作製に用いる溶媒、必要に応じて用いられる分散剤、導電材等のその他の成分を含む負極用スラリーを集電体の表面に塗布し、乾燥させることにより得ることができる。即ち、負極用スラリーを集電体の表面に塗布し、乾燥させることにより集電体に負極活物質層が形成される。
(負極活物質)
電気化学素子がリチウムイオン二次電池である場合の負極活物質としては、例えば、アモルファスカーボン、グラファイト、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、ピッチ系炭素繊維等の炭素質材料;ポリアセン等の導電性高分子;ケイ素、錫、亜鉛、マンガン、鉄、ニッケル等の金属又はこれらの合金;前記金属又は合金の酸化物又は硫酸塩;金属リチウム;Li−Al、Li−Bi−Cd、Li−Sn−Cd等のリチウム合金;リチウム遷移金属窒化物;シリコン等が挙げられる。また、負極活物質として、当該負極活物質の粒子の表面に、例えば機械的改質法によって導電材を付着させたものを用いてもよい。また、負極活物質は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
負極活物質の粒子の粒子径は、通常、電気化学素子の他の構成要素との兼ね合いで適宜選択される。中でも、初期効率、負荷特性、サイクル特性等の電池特性の向上の観点から、負極活物質の粒子の50%体積累積径は、好ましくは1〜50μm、より好ましくは3〜30μmである。
負極活物質層における負極活物質の含有量は、リチウムイオン二次電池の容量を大きくでき、また、負極の柔軟性、及び、集電体と負極活物質層との結着性を向上させることができる観点から、好ましくは90〜99.9重量%、より好ましくは95〜99重量%である。
(負極用結着剤)
負極用結着剤としては、例えば、複合粒子の製造に用いる上記結着剤と同様のものを用いることができる。また、例えば、ポリエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリアクリル酸誘導体、ポリアクリロニトリル誘導体などの樹脂;アクリル系軟質重合体、ジエン系軟質重合体、オレフィン系軟質重合体、ビニル系軟質重合体等の軟質重合体等を用いても良い。なお、負極用結着剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
(その他の成分)
負極用スラリーに必要に応じて用いられる分散剤、導電材としては、上述の複合粒子に用いることができる分散剤および導電材(A)をそれぞれ使用することができる。
(負極の作製に用いる溶媒)
負極の作製に用いる溶媒としては、水及び有機溶媒のいずれを使用してもよい。有機溶媒としては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン等の環状脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等のエステル類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のアルキルニトリル類;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類:メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;などが挙げられるが、中でもN−メチルピロリドン(NMP)が好ましい。なお、溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、溶媒としては水を用いることが好ましい。
溶媒の量は、負極用スラリーの粘度が塗布に好適な粘度になるように調整すればよい。具体的には、負極用スラリーの固形分濃度が、好ましくは30〜90重量%、より好ましくは40〜80重量%となるように調整して用いられる。
(集電体)
負極に用いる集電体は、上述の電気化学素子電極(正極)に用いる集電体と同様の集電体を用いることができる。
(負極の製造方法)
負極用スラリーを集電体の表面に塗布する方法は特に限定されない。例えば、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、およびハケ塗り法などの方法が挙げられる。
乾燥方法としては、例えば、温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線などの照射による乾燥法などが挙げられる。乾燥時間は好ましくは5分〜30分であり、乾燥温度は好ましくは40〜180℃である。
また、集電体の表面に負極用スラリーを塗布及び乾燥した後で、必要に応じて、例えば金型プレス又はロールプレスなどを用い、負極活物質層に加圧処理を施すことが好ましい。負極活物質層の厚みは、特に制限されないが、通常は5〜1000μm、好ましくは20〜500μm、より好ましくは30〜300μmである。
(セパレーター)
セパレーターとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂や、芳香族ポリアミド樹脂を含んでなる微孔膜または不織布;無機セラミック粉末を含む多孔質の樹脂コート;などを用いることができる。具体例を挙げると、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)、及びこれらの混合物あるいは共重合体等の樹脂からなる微多孔膜;ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルスルフォン、ポリアミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアラミド、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂からなる微多孔膜;ポリオレフィン系の繊維を織ったもの又はその不織布;絶縁性物質粒子の集合体等が挙げられる。これらの中でも、セパレーター全体の膜厚を薄くすることができ、リチウムイオン二次電池内の活物質比率を上げて体積あたりの容量を上げることができるため、ポリオレフィン系の樹脂からなる微多孔膜が好ましい。
セパレーターの厚さは、リチウムイオン二次電池においてセパレーターによる内部抵抗を小さくすることができる観点、および、リチウムイオン二次電池を製造する際の作業性に優れる観点から、好ましくは0.5〜40μm、より好ましくは1〜30μm、さらに好ましくは1〜25μmである。
(電解液)
リチウムイオン二次電池用の電解液としては、例えば、非水溶媒に支持電解質を溶解した非水電解液が用いられる。支持電解質としては、リチウム塩が好ましく用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF6、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlCl4、LiClO4、CF3SO3Li、C49SO3Li、CF3COOLi、(CF3CO)2NLi、(CF3SO22NLi、(C25SO2)NLiなどが挙げられる。中でも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すLiPF6、LiClO4、CF3SO3Liが好ましい。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。解離度の高い支持電解質を用いるほど、リチウムイオン伝導度が高くなるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
電解液における支持電解質の濃度は、支持電解質の種類に応じて、0.5〜2.5モル/Lの濃度で用いることが好ましい。支持電解質の濃度が低すぎても高すぎても、イオン伝導度が低下する可能性がある。
非水溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されない。非水溶媒の例を挙げると、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルエチルカーボネート(MEC)などのカーボネート類;γ−ブチロラクトン、ギ酸メチルなどのエステル類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシドなどの含硫黄化合物類;支持電解質としても使用されるイオン液体などが挙げられる。中でも、誘電率が高く、安定な電位領域が広いので、カーボネート類が好ましい。非水溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。一般に、非水溶媒の粘度が低いほどリチウムイオン伝導度が高くなり、誘電率が高いほど支持電解質の溶解度が上がるが、両者はトレードオフの関係にあるので、溶媒の種類や混合比によりリチウムイオン伝導度を調節して使用するのがよい。また、非水溶媒は全部あるいは一部の水素をフッ素に置き換えたものを併用あるいは全量用いてもよい。
また、電解液には添加剤を含有させてもよい。添加剤としては、例えば、ビニレンカーボネート(VC)などのカーボネート系;エチレンサルファイト(ES)などの含硫黄化合物;フルオロエチレンカーボネート(FEC)などのフッ素含有化合物が挙げられる。添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
(電気化学素子の製造方法)
リチウムイオン二次電池やリチウムイオンキャパシタ等の電気化学素子の具体的な製造方法としては、例えば、正極と負極とをセパレーターを介して重ね合わせ、これを電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口する方法が挙げられる。さらに、必要に応じてエキスパンドメタル;ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子;リード板などを入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電を防止してもよい。リチウムイオン二次電池の形状は、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。電池容器の材質は、電池内部への水分の侵入を阻害するものであればよく、金属製、アルミニウムなどのラミネート製など特に限定されない。
本発明の電気化学素子電極用複合粒子によれば、導電材の凝集を抑制することにより高密度な電極を形成することができる。また、この電極は屈曲性及びピール強度に優れる。さらにこの電極を電気化学素子に用いると、内部抵抗が低い電気化学素子を得ることができる。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨及び均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。なお、以下の説明において量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、重量基準である。
実施例及び比較例において、電極密度、ピール強度及び屈曲性の評価はそれぞれ以下のように行った。
<電極密度>
実施例及び比較例で得られた電極を、30mm幅に切りだし、ロールプレス機にて、線圧2t/cmでプレスした。プレスした電極を直径20mmで打ち抜き、目付量と厚さを測定し、密度を算出した。結果を表1に示した。
<ピール強度>
得られた電極を、それぞれ、幅1cm×長さ10cmの矩形に切って試験片とし、電極活物質層面を上にして固定した。試験片の電極活物質層表面にセロハンテープを貼り付けた後、試験片の一端からセロハンテープを50mm/分の速度で180℃方向に引き剥がしたときの応力を測定した。測定を10回行い、その平均値を求めて、これをピール強度とし、下記基準にて評価した。結果を表1に示した。ピール強度が大きいほど、極板の密着強度が大きいことを示す。
A:6N/m以上
B:4N/m以上6N/m未満
C:2N/m以上4N/m未満
D:2N/m未満
<屈曲性試験>
得られた電極を、JIS K5600−5−1に記載の方法に準じて測定した。試験装置はタイプ1の装置を用い、円筒状マンドレルの直径を10、8、6、5、4、3、2mmと変えて試験を行い、ルーペで電極を観察し、割れもしくは剥がれが起こる最小のマンドレル直径を測定した。結果を表1に示した。マンドレルの直径が小さいときに割れや剥がれが見られないほど、電極が屈曲性に優れることを示す。
A:マンドレルの直径が2mm以上で割れ又は剥がれが見られない
B:マンドレルの直径が3mm以上で割れ又は剥がれが見られない
C:マンドレルの直径が5mm以上で割れ又は剥がれが見られない
D:マンドレルの直径が8mm以上で割れ又は剥がれが見られない
[実施例1]
(結着剤の製造)
撹拌機、還流冷却管及び温度計を備えた容量1LのSUS製セパラブルフラスコに、イオン交換水を130部加え、更に重合開始剤として過硫酸アンモニウムを0.8部、イオン交換水を10部加え、80℃に加温した。
また別の撹拌機付き容器に、(メタ)アクリル酸エステル単量体として2−エチルヘキシルアクリレートを76部、α,β−不飽和ニトリル単量体としてアクリロニトリルを20部、酸性官能基含有単量体としてイタコン酸を4.0部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを2.0部、イオン交換水を377部加え、十分に撹拌してエマルションを調製した。
上記で得られたエマルションを、前記セパラブルフラスコに3時間かけて連続的に添加した。更に2時間反応した後、冷却して反応を停止した。ここに10%アンモニア水を添加してpH7.5に調整し、粒子状の結着剤(アクリレート系重合体)の水分散液を得た。重合転化率は98%であった。
(複合粒子用スラリーの製造)
正極活物質として層状構造を有するニッケルマンガンコバルト酸リチウム(NMC(111))を90.8部と、上記結着剤を固形分換算量で1.5部、導電材(A)としてアセチレンブラック(以下、「AB」と略記することがある。)を4部、滑材(B)として鱗片状黒鉛(SLP−6、長径L:3.5μm、幅b:3μm、厚さt:0.2μm、幅bと厚さtとの比(b/t):15)を2部、分散剤としてカルボキシメチルセルロースの1%水溶液(BSH−12;第一工業製薬社製)を固形分換算量で1.2部、及び非水溶性多糖高分子繊維としてセルロースナノファイバーの2%水分散液(BiNFi−s(NMa−10002)、原料:針葉樹、重合度:500;スギノマシン社製)を固形分換算量で0.5部混合し、さらにイオン交換水を固形分濃度が50%となるように加え、プラネタリーミキサーで混合して複合粒子用スラリーを得た。
(複合粒子の製造)
上記複合粒子用スラリーをスプレー乾燥機(大川原化工機社製)において、回転円盤方式のアトマイザ(直径65mm)を用い、回転数25,000rpm、熱風温度150℃、粒子回収出口の温度を90℃として、噴霧乾燥造粒を行い、滑材(B)が内包された複合粒子を得た。この複合粒子の平均体積粒子径は40μmであった。
(リチウムイオン二次電池用正極の製造)
上記で得られた複合粒子を、定量フィーダ(ニッカ社製「ニッカスプレーK−V))を用いてロールプレス機(ヒラノ技研工業社製「押し切り粗面熱ロール」)のプレス用ロール(ロール温度100℃、プレス線圧500kN/m)に供給した。プレス用ロール間に、厚さ20μmのアルミニウム箔を挿入し、定量フィーダから供給された上記複合粒子をアルミニウム箔上に付着させ、成形速度1.5m/分で加圧成形し、リチウムイオン二次電池用正極を得た。
[実施例2]
滑材(B)として、形状の異なる鱗片状黒鉛(KS−4、長径L:2.5μm、幅b:1.6μm、厚さt:0.2μm、幅bと厚さtとの比(b/t):8)を用いたこと以外は、実施例1と同様に複合粒子用スラリーの製造、複合粒子の製造、リチウムイオン二次電池用正極の製造を行った。
[実施例3]
滑材(B)として、形状の異なる鱗片状黒鉛(SLP−10、長径L:6μm、幅b:4μm、厚さt:0.2μm、幅bと厚さtとの比(b/t):20)を用いたこと以外は、実施例1と同様に複合粒子用スラリーの製造、複合粒子の製造、リチウムイオン二次電池用正極の製造を行った。
[実施例4]
滑材(B)の量を1部に変更したこと以外は、実施例1と同様に複合粒子用スラリーの製造、複合粒子の製造、リチウムイオン二次電池用正極の製造を行った。
[実施例5]
滑材(B)の量を4部に変更したこと以外は、実施例1と同様に複合粒子用スラリーの製造、複合粒子の製造、リチウムイオン二次電池用正極の製造を行った。
[実施例6]
滑材(B)の種類を板状ベーマイト(セラシュールBMT;長径L:4μm、幅b:2.7μm、厚さt:0.18μm、幅bと厚さtとの比(b/t):15)に変更したこと以外は、実施例1と同様に複合粒子用スラリーの製造、複合粒子の製造、リチウムイオン二次電池用正極の製造を行った。
[実施例7]
滑材(B)の種類を板状ベーマイト(セラシュールBMF;長径L:4μm、幅b:2.5μm、厚さt:0.0625μm、幅bと厚さtとの比(b/t):40)に変更したこと以外は、実施例1と同様に複合粒子用スラリーの製造、複合粒子の製造、リチウムイオン二次電池用正極の製造を行った。
[実施例8]
導電材(A)として、短軸数平均径が0.15μm、アスペクト比10000の気相法炭素繊維(VGCF;昭和電工製)を4部用いたこと以外は、実施例1と同様に複合粒子用スラリーの製造、複合粒子の製造、リチウムイオン二次電池用正極の製造を行った。
[比較例1]
複合粒子用スラリーを得る際に、滑材(B)を用いなかったこと以外は、実施例1と同様に複合粒子用スラリーの製造、複合粒子の製造、リチウムイオン二次電池用正極の製造を行った。
[比較例2]
滑材(B)として、形状の異なる鱗片状黒鉛(長径L:15μm、幅b:10μm、厚さt:1μm、幅bと厚さtとの比(b/t):10)を用いたこと以外は、実施例1と同様に複合粒子用スラリーの製造、複合粒子の製造、リチウムイオン二次電池用正極の製造を行った。
[比較例3]
滑材(B)の種類を球状黒鉛(長径L:7μm、幅b:7μm、厚さt:7μm、幅bと厚さtとの比(b/t):1)に変更したこと以外は、実施例1と同様に複合粒子用スラリーの製造、複合粒子の製造、リチウムイオン二次電池用正極の製造を行った。
[比較例4]
滑材(B)の量を0.2部に変更したこと以外は、実施例1と同様に複合粒子用スラリーの製造、複合粒子の製造、リチウムイオン二次電池用正極の製造を行った。
[比較例5]
滑材(B)の量を10部に変更したこと以外は、実施例1と同様に複合粒子用スラリーの製造、複合粒子の製造、リチウムイオン二次電池用正極の製造を行った。
[比較例6]
(複合粒子用スラリーの製造)
正極活物質として層状構造を有するニッケルマンガンコバルト酸リチウム(NMC(111))を90.8部と、上記結着剤を固形分換算量で1.5部、導電材(A)としてアセチレンブラックを4部、分散剤としてカルボキシメチルセルロースの1%水溶液(BSH−12;第一工業製薬社製)を固形分換算量で1.2部、及び非水溶性多糖高分子繊維としてセルロースナノファイバーの2%水分散液(BiNFi−s(NMa−10002)、原料:針葉樹、重合度:500;スギノマシン社製)を固形分換算量で0.5部混合し、さらにイオン交換水を固形分濃度が50%となるように加え、プラネタリーミキサーで混合して滑材(B)を含まない複合粒子用スラリーを得た。
(複合粒子の製造)
上記複合粒子用スラリーをスプレー乾燥機(大川原化工機社製)において、回転円盤方式のアトマイザ(直径65mm)を用い、回転数25,000rpm、熱風温度150℃、粒子回収出口の温度を90℃として、噴霧乾燥造粒を行い、複合粒子を得た。この複合粒子の平均体積粒子径は40μmであった。
得られた複合粒子98部、および外添剤としての鱗片状黒鉛(SLP−6、長径L:3.5μm、幅b:3μm、厚さt:0.2μm、幅bと厚さtとの比(b/t):15)2部を、ヘンシェルミキサー(三井三池社製)を用いて10分間混合し、複合粒子に外添剤を付着させた粒子(外添粒子)を得た。
上記で得られた外添粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様にリチウムイオン二次電池用正極の製造を行った。
Figure 2016100057
以上より、電極活物質、結着剤、導電材(A)を含み、かつ、滑材(B)を内包した電気化学素子電極用複合粒子であって、前記滑材(B)の3軸径を長径L、厚さt、幅bとしたとき、前記長径Lが0.1〜10μm、前記幅bと前記厚さtとの比(b/t)が、2以上100未満であり、前記導電材(A)と前記滑材(B)との重量比(A)/(B)が、0.5以上10以下であると、電極密度、ピール強度及び屈曲性の何れもが良好であることが示された。

Claims (4)

  1. 電極活物質、結着剤、導電材(A)を含み、かつ、滑材(B)を内包した電気化学素子電極用複合粒子であって、
    前記滑材(B)の3軸径を長径L、厚さt、幅bとしたとき、前記長径Lが0.1〜10μm、前記幅bと前記厚さtとの比(b/t)が、2以上100未満であり、
    前記導電材(A)と前記滑材(B)との重量比(A)/(B)が、0.5以上10以下であることを特徴とする電気化学素子電極用複合粒子。
  2. 前記滑材(B)は、遷移金属元素を含まない請求項1記載の電気化学素子電極用複合粒子。
  3. 非水溶性多糖高分子繊維を含むことを特徴とする請求項1または2記載の電気化学素子電極用複合粒子。
  4. 前記導電材(A)として炭素繊維を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の電気化学素子電極用複合粒子。
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