図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じであるから説明は繰返さない。
[実施の形態1]
実施の形態1では、被検対象(計測対象)の花の花弁に含有された糖を計測する装置を説明する。計測装置は、被検対象の花の複数の開花段階それぞれに関連付けて、糖の計測処理に適用される分析モデルを格納するための記憶部を有し、ユーザ操作内容が示す開花段階に関連付けされた記憶部の分析モデルと、被検対象の花弁または萼から受光する光の強度情報とに基づき、計測処理を実施するよう構成される。
ここでは、光強度情報には、吸収スペクトルが含まれる。また、計測処理は、後述する受光信号を得るための測定処理と、受光信号が示す受光強度を用いて花の花弁に含有された糖を分析(量、種類を検出)する分析処理を含む。
本実施の形態においては、主に観賞用の花である花卉を対象として計測するが、これに限定されず植物の花全般に適用することができる。また、被検対象を花卉の花弁としているが、花弁に限定されず、萼であってもよい。つまり、花卉の品種によっては萼片など他の器官が花弁として観賞されているものや花弁の役目をしているものもある。こうした場合には、被検対象として花弁の代わりに萼片を用いて、萼片の形状変化を開花段階として扱うことで、萼に含有されている糖を計測することができる。以下では便宜上、萼片のような他の器官が花弁の役割をしている場合も花弁と見なして説明する。
なお、糖は花弁だけでなく葉にも蓄積されるが、被検対象として葉は用いない。つまり、開花に直接関与する糖は葉ではなく花弁に蓄積される。また、葉に蓄積される糖はエネルギーの備蓄のためのものであって開花との相関は小さい。したがって、本実施の形態では、花弁に含有された糖を計測する。
(装置の概略構成)
図1は、実施の形態1に係る表示例を周辺部と関連付けて示す図である。図2は、実施の形態1に係る花卉品質計測装置1(以下、単に計測装置1という)の外観を示す図である。図2を参照して、計測装置1は、本体2および本体2とは別体のプローブ部20を備える。
図1を参照して、本体2は、筐体を有し、筐体の表面に表示部11と入力部12を備えるともに、筐体内部に主制御部31(後述の図6参照)などを内蔵する。表示部11は、液晶などのディスプレイとタッチパッドを組合わせたタッチパネルに相当する。また、入力部12は、ユーザにより操作される各種ボタンおよびスイッチを有する。例えば、入力部12は、電源スイッチ13、校正スイッチ14、計測条件を指定または決定するために操作されるメニューキー15、糖の計測処理の開始を指示するために操作される計測スイッチ16、およびホールドスイッチ17を含む。校正スイッチ14は、吸収スペクトルを校正または算出するための後述するダークスペクトルまたは標準スペクトルを取得するために操作される。ホールドスイッチ17は、計測結果を表示部11に表示した状態を保持するために操作される。
なお、本体2は、ユーザ操作を受付けるために、タッチパネルと入力部12を備えるが、いずれか一方を備えるとしてもよいし、入力部12を備えていない場合、タッチパネルが入力部を兼ねていてもよい。また、ディスプレイは、カラーまたはモノクロのいずれでもよいが、後述するようにディスプレイには花卉の開花段階を表す絵柄などの模式図が表示されるから、カラーであることが好ましい。
(表示例)
図1を参照して、表示部11には、花卉の複数の開花段階を表す情報11Dが、当該花卉の品種データ11Eと関連づけて表示される。また、表示部11には、本体2に内蔵された計時部38(図6参照)により計時された日付および時刻の少なくともいずれかを示す時間情報11A、被検対象である花卉の周囲の温度11Bおよび湿度11C、ならびにユーザが指定した開花段階を示す情報11Fが表示される。情報11Dは、蕾、3分咲き、5分咲き、満開などの4つの開花段階を示す絵柄を含む。なお、ここでは、開花段階は4段階としているが、4段階に限定されない。また、花卉の品種などに応じて情報11Fが示す開花段階の数を変更してもよい。
糖の計測を始めるにあたって、ユーザは、電源スイッチ13を操作し、メニューキー15を操作する。ユーザがメニューキー15を操作することにより、被検対象である花卉の品種が指定されると、表示部11には、時間情報11A、温度11B、湿度11C、情報11D、および指定された品種データ11Eが表示される。ユーザが、被検対象である花卉の実際の開花段階を、表示された情報11Dのうちのいずれかの絵柄をタッチパネルでタッチ(指定)する。これにより、ユーザは開花段階を指定し、指定された開花段階を示す情報11Fが表示部11に表示される。
被検対象の開花段階の指定は、ユーザによる手動指定に限定されない。例えば、本体2は、カメラ(図示せず)により撮影された被検対象の画像を取得し、取得された画像を解析(パターンマッチングを含む)し、解析結果から開花段階を判別するとしてもよい。ここでは、花卉の栽培者(ユーザ)自身が目視で判別した方がより正確であり使い勝手もよいため、ユーザが情報11Dをタッチ操作することにより開花段階が指定されるとする。
なお、開花段階は必ずしも花卉の品種毎に設定しなくとも花弁に含有された糖を計測することができる。しかし、キンギョソウのように沢山の小花からなる多花の場合と、ひとつの蕾からなるバラなどの場合とでは開花状況、計測の条件が大きく異なる。したがって、本実施の形態では、より正確な計測のために、このような花卉の特性を考慮して品種に関連付けて開花段階の情報11Dが表示され、且つ被検対象は品種毎に指定された開花段階に基づき計測される。
また、開花段階は花卉に含まれる糖の含有量および種類、ならびに花の形状変化に強い相関を有するため、被検対象の開花段階を示す情報11Fは、含有された糖の計測処理に適用される分析モデル(後述する)の選択において主要な条件のひとつとして用いられる。したがって、情報11Dのように、開花段階をグラフィカルにユーザに表示することにより、被検対象の開花段階の選択操作においてユーザをサポートすることができ、精度の良い計測が可能となる。
(プローブ部20の構成)
図2〜図5を参照して、プローブ部20の構成を説明する。プローブ部20は、信号を伝送するためのコード30により本体2に接続される。なお、本実施の形態ではコード30を有線としているが、無線で信号を伝送してもよい。プローブ部20は、例えば合成樹脂で形成され外装部材22、23および24を含む筐体を備える。筐体は、外装部材24上に、外装部材22と23が載置された形状を有する。外装部材22はユーザがプローブ部20を保持する時に握りやすい形状に形成されている。プローブ部20と本体2はコード30を介して信号を伝送する。
外装部材23は、内装されたアーム(図示せず)、取付孔を有する取り付けアングル26、およびアームの一方端に取り付けられた押圧部29を有する。取り付けアングル26は、外装部材24に内装されたヒンジなどの支持部(図示せず)に、巻きバネ(図示せず)と共に取り付けられている。押圧部29が押圧されると、外装部材23のアームの他方端が開いた状態となる(図4参照)。ユーザは開いた部分に被検対象の花弁を置き、押圧部29が離される(押圧されなくなる)と、アームは閉じて、花弁は外装部材23と24で挟まれて保持された状態となる(図3参照)。このような保持効果が奏されるように、外装部材23は、取り付けアングル26に設けられた取付孔または巻きバネを介して筐体に取り付けられる。
外装部材23は、上述のように花弁を挟む部分において標準反射板25(図3参照)を有し、同様に、外装部材24は光測定部21を有する。外装部材23の標準反射板25は、光測定部21と相対するように配置される。標準反射板25はプラスチックや硫酸バリウムなどの光を反射しやすい部材からなる。
また、プローブ部20は筐体内部に被検対象の周囲の環境条件を測定する環境測定部33(図示せず)を備える。環境測定部33は、花弁の温度および花弁周囲の湿度を測定する温度センサと湿度センサを含む。このうち温度センサは、外装部材24に内蔵された環境測定部33aとして示される。環境測定部33a(温度センサ)は、上記に述べたように外装部材23が閉じた状態であるとき、挟まれた花弁と接触可能なように配置されている。なお、環境測定部33aの配置態様はこれに限定されない。例えば、外装部材23の中に備えられてもよい。また、接触式の温度センサに限定されず、非接触で温度を測定する方式のセンサを用いてもよい。また、花弁の温度ではなく、花弁の周囲の温度を測定してもよいが、本実施の形態では、花弁自体の温度を測定する。これにより、正確に花弁の状態を検知し、検知に基づき花弁に含まれる糖を正確に計測することができる。
図5を参照して、光測定部21は、載置された花弁に光を照射可能なように6つの照射部27、および花弁からの光を受光する受光部28を備える。なお、本実施の形態では透過光だけでなく拡散反射光も受光するために照射部27および受光部28を同じ外装部材24側に設けている。しかし必ずしもこの構成の通りでなくともよく、例えば透過光のみで計測する場合には照射部と受光部が対向するよう異なる外装部材に設けてもよい。照射部27は6個としているが、これに限定されない。照射部27および受光部28は光を透過する波長特性を有した透明部材のはめ込みカバーで防水されている。透明部材には、例えば石英ガラスまたは合成石英ガラスを用いることができる。図示されるように6つの照射部27は、受光部28を取り囲むように配置される。光測定部21は、図3のように挟まれた状態の花弁に、6つの照射部27からの光を照射すると、受光部28は、花弁からの光、すなわち照射光のうち花弁を透過した光を受光する。なお、花弁と光測定部21の大きさが必ずしも同じである必要はなく、花弁より受光部28が大きかったり花弁の方が照射部27より大きかったりした場合も、花弁の一部に光を照射して放出された光のスペクトルを測定できれば吸収スペクトルを得ることができる。
本実施の形態1では照射部27は外装部材24に内蔵された半導体発光素子(LED:Light Emitting Diodeなど)を含み、半導体発光素子による発光は花弁に照射される。受光部28は外装部材24に内蔵された受光素子(PD:Photo Diode)を含み、受光素子は受光した光の強度に応じた大きさの電気信号として電流を出力する。
なお、受光素子はPDに限定されず、フォトトランジスタ、アバランシェフォトダイオード、または光電子倍増管などの受光素子が用いられてもよい。
光測定部21は、上述した測定処理を実施する「測定部」に相当する。測定部では、光源(照射部27)からの光が花弁に照射されたときに、受光部28は花弁からの光を受光し、その受光強度に応じた大きさの電流を示す電気信号を出力する。この電気信号を、以下では、受光信号ともいう。
光測定部21は複数の波長の光を照射および受光できるように、照射部27として、本実施の形態では異なる波長の光を発する複数の半導体発光素子(LED)が用いられる。また、受光部28のPDが光を検知することが可能な波長範囲(すなわち、PDによる光電変換が可能な光の波長範囲)は、照射部27から照射された光の発振波長が存在するように選定される。
なお、LEDまたはPDの個数、波長および出力などの仕様は、計測する花卉の品種、または使用する波長、または計測装置1の仕様などに応じて適宜選択されてよい。また、アームに、例えばパッキンが備えられていれば、花弁を傷めないようにかつ外部からの光が迷光として受光部28に入らない効果を得ることができる。
本実施の形態1では、照射部27から照射される光の波長は、糖の吸収スペクトル(後述する)が得やすい1100nm以上を用いる。なお、1100nm以下の領域の波長であっても、吸収スペクトルを得ることができるが、クロロフィルのような色素による光の反射が強い領域であり、花弁の内部に光が吸収されにくく、戻ってきた光に含まれる情報は花弁の表面の情報が支配的となってしまう。したがって、本実施の形態1では、花弁に含有される糖をより精度よく計測するために、1100nm以上の波長の光を照射する。なお、近赤外光の定義は一般に2500nmまでとされているので本実施の形態でも2500nmまでを想定しているが、計測する花弁の種類によっては必ずしも2500nmまででなくともよく、花弁内部の情報を精度よく得られる波長であれば花弁に含有される糖を計測することができる。
このようにプローブ部20により計測された受光信号、および被検対象(花弁)の周囲の環境条件(温度、湿度)は、コード30を介して本体2に送信される。本体2は、受信した環境条件を温度11Bおよび湿度11Cとして表示部11に表示し、また受信内容を用いて糖の計測処理を実施する。
実施の形態1では、本体2およびプローブ部20は図示しない電池ボックスを備えて、電池から電力が供給されることで、持ち運びに便利である。なお、電力供給源は電池に限定されず、商用電源から供給されてもよい。また、プローブ部20は、コード30を介して本体2から電力信号を受信するとしてもよい。
また、本実施の形態ではプローブ部20は、コード30を介して本体2に接続されることで、本体2とは別個に動かすことができる。したがって、ユーザはプローブ部20を花弁の傍へ持っていきやすく、より精度よく環境条件を測定することができる。
(計測装置の機能)
図6を参照して、計測装置1の本体2は、計測装置1の各部を制御して各種の処理を実行する主制御部31を備える。また、本体2は、主制御部31に、バス(図示せず)を介して接続された表示部11、入力部12、計時部38、プログラムおよびデータを記憶するための記憶部39、および外部記憶媒体72(図2参照)が着脱可能に装着されるI/F(インターフェイス)部73を備える。外部記憶媒体72は、USB(Universal Serial Bus)メモリ、CD−R(Compact Disk-Recordable)/DVD−R(Digital Versatile Disk Recordable)、外付けHDD(Hard disk drive)、SDメモリカード(Secure Digital memory card)などを含む。計測装置1は、プロセッサ(CPU)を備える「コンピュータ」の一実施例である。
主制御部31は、計測装置1の動作を統括的に制御するために図示しないCPU(Central Processing Unit)を含んで構成される。主制御部31は、分析部32、プローブ制御部35および分析モデル判定部37の機能を有する。主制御部31のこれら機能は、記憶部39に格納されたプログラム、またはプログラムと回路の組合せに相当する。CPUは、記憶部39からプログラムを読出し、読出されたプログラムを実行することにより、各部の機能を実現する。ここでは、主制御部31は、糖の計測処理を実施する「処理部」の一実施例である。
また、主制御部31のCPUは、装着された外部記憶媒体72を読み書きするように、I/F部73を制御する。外部記憶媒体72には、データまたはプログラムが格納される。なお、外部記憶媒体72は読み出しのみ可能である構成でもよく、この場合は主制御部31のCPUは、外部記憶媒体72からの読み出しを行うように、I/F部73を制御する。
記憶部39は、過去データ記憶部34および分析モデル記憶部36を含む。分析モデル記憶部36は、主制御部31が実行する各種のプログラム、および、プログラムによって使用されるデータを格納するための記憶装置である。分析モデル記憶部36は、糖の計測処理のためのプログラムがロードされる領域またはプログラムが実行される際に使用される作業領域などを含む。また、分析モデル記憶部36は、プログラムの他に、計測に使用される分析モデルなどのデータ、温度または湿度などの被検対象の周囲の環境条件を含むデータなどを記憶する。
過去データ記憶部34には、計測処理が実施されたとき、当該計測処理に関する情報であって、用いた分析モデルの情報(例えば、後述するID)、開花段階、環境条件、当該計測処理の結果などを含む情報が格納される。計測処理の結果には、測定処理により取得された受光信号、分析処理による受光強度情報、糖の種類および量を含む。過去データ記憶部34は、「結果格納部」の一実施例に相当する。
また、記憶部39には、花卉の品種毎に、当該花卉の複数の開花段階を示す情報11Dが格納される。情報11Dは、主制御部31により読出されて表示部11に表示される。
分析部32は、過去データ記憶部34および分析モデル記憶部36のデータを読み書きする。また、分析部32は、プローブ制御部35および分析モデル判定部37と情報を入出力する。
プローブ制御部35は、光測定部21および環境測定部33を制御する。分析部32は、光測定部21の受光部28が出力する受光信号を入力し、入力した受光信号を光の波長毎の受光強度を示すデータである光スペクトルに変換する。光スペクトルは、光の強度情報に相当する。また、環境測定部33による測定された温度または湿度は、分析部32に出力される。環境測定部33および分析部32は、「環境条件取得部」の一実施例である。また、分析部32は、「光強度取得部」の一実施例である。
なお、実施の形態1では、主制御部31(より特定的には、分析部32)により光スペクトルが取得されるが、主制御部31に代替して光測定部21が、受光信号を光スペクトルに変換し、変換後の光スペクトルを主制御部31に出力してもよい。この場合は、プローブ部20は、光の強度情報を主制御部31に出力する「外部装置」の一実施例に相当する。
分析モデル判定部37は、分析部32を介して入力したユーザの操作内容(被検対象の開花段階、品種)と、分析部32を介して入力した被検対象の周囲の環境条件(温度、湿度)の情報を受け付ける。分析モデル判定部37は、受け付けた情報に基づいて、分析モデル記憶部36から計測処理に適した分析モデルを検索する。検索により読出された分析モデルは、分析部32に出力される。分析モデル記憶部36に格納される分析モデルの詳細は後述する。
記憶領域に相当する分析モデル記憶部36および過去データ記憶部34を有する記憶部39は、例えば、RAM(Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SDRAM(Synchronous DRAM)、DDR−SDRAM(Double Data Rate SDRAM)、RDRAM(Rambus Dynamic Random Access Memory(登録商標))、Direct−RDRAM(Direct Rambus Dynamic Random Access Memory(登録商標))、フラッシュメモリ、ROM(Read Only Memory)、マスクROMやPROM(Programmable Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable PROM)、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)などによって実現される。
主制御部31は、分析モデル記憶部36に記憶されているプログラムを実行することによって、各種の演算を行なう。このプログラムは、被検対象に含まれる糖の量または種類の分析を行なうためのプログラム、各部の制御プログラム、サブルーチン、分析モデルの精度管理プログラム、通信処理用のプログラム、分析結果の精度があらかじめ設定された基準を満足しているか判断するためのプログラム、過去データ記憶部34に記憶された過去データと今回取得されたデータとの比較または経時変化のグラフ化を行うためのプログラム、それらの判断基準の設定等が含まれる。
主制御部31は、さらに、入力部12または表示部11のタッチパネルにおけるユーザの操作内容を受付ける操作受付部31Aと、表示部11の表示動作を制御する表示制御部31Bを、さらに備える。表示制御部31Bは、例えばDSP(Digital Signal Processor)を含む。表示制御部31Bは、図1に示した情報と、計測結果、計測日時、計測処理完了までの残り時間、計測処理終了の通知、および計測エラーの報知などの情報を表示するように、表示部11を制御する。
(データベース)
分析モデル記憶部36は、図7のデータベース1021aを有する。図7を参照してデータベース1021aは、リレーショナルデータベースであって、花卉の品種毎に、複数の開花段階それぞれに関連付けて、分析部32による糖の計測処理に適用される分析モデルの識別子であるID(Identification)を格納する。さらに、分析モデルの情報は、花卉の周囲の環境条件を表す温度および湿度毎に格納される。
分析モデルは、花弁に含有された糖を計測するために、多変量解析や判別分析、パターン認識など、糖の量または種類の分析に必要なプログラムと分析モデルを含む。分析モデルとはスペクトルデータから成分値や成分の特性を算出するためのモデル(演算式等)としての役割を有するものを示す。より具体的には、含まれる糖の量を計測するための定量分析および含まれる糖の成分(種類)を計測するための定性分析におけるデータ解析またはデータ処理のような演算に使用されるものを含む。例えば、多変量解析であれば検量線またはキャリブレーションモデル、回帰分析であれば回帰式、定性分析であれば分類基準、パターン認識であればパターンモデルなどが該当する。本実施の形態では、便宜上、これらを分析モデルと。総称し、各IDに対応した分析モデルのデータ(演算式等)は記憶部39の予め定めた領域に格納される。したがって、データベース1021aのIDに基づき、記憶部39の予め定めた領域が検索されることにより、対応の分析モデルが読出される。
図7のデータベース1021aは、例えば、品種:バラおよび開花段階:2の分析モデルのID群と、品種:キクおよび開花段階:1の分析モデルのID群が示される。当該バラのID群は、複数の環境条件(温度と湿度の組合せ)のそれぞれに対応したIDを含む。同様に、キクの分析モデル群は、複数の環境条件(温度と湿度の組合せ)のそれぞれに対応したIDを含む。なお、データベース1021aに登録される花卉の品種として、ここでは、市場での取引量が比較的多い品種であるバラ、キク、ガーベラ、トルコギキョウ、およびカーネーションなどの中からキクとバラを例示したが、被検対象の花卉はこれらに限定されない。
データベース1021aの分析モデルのIDは、開花段階に分類されて登録されることにより、開花段階の変化に伴い花弁が含有する糖の量または種類が変化したとしても、データベース1021aから開花段階毎に応じた分析モデルのIDを検索することができる。さらに、計測時の環境条件が変化したとしても、環境条件に応じた分析モデルのIDを検索することができる。
分析モデル判定部37は、ユーザが指定した条件(以下、ユーザ入力条件と称する)と環境測定部33が測定した温度または湿度を含むデータ(以下、環境条件とする)とに基づき、分析モデル記憶部36のデータベース1021aを検索し、検索結果に基づき分析モデルのIDを決定し、決定されたIDに対応する分析モデルを読出す。読出された分析モデルは分析部32に出力される。
分析部32は、花弁について取得された光スペクトルと、分析モデル記憶部36から読出された分析モデルとに基づいて、花弁に含まれる糖の種類または量を計測する。これにより、花弁に含まれる糖の種類または量についての分析処理が実施される。
具体的には、光測定部21は、照射部27に1100nm以上の波長の光を照射させる。照射された光は、花弁内部で吸収されながら透過あるいは散乱(多重散乱を含む)を経て、受光部28により受光される。このとき後方散乱光、正反射光、花弁を透過して標準反射板25に反射されて戻ってきた光なども花弁を介して出力される。このように、照射部27が花弁に光を照射したとき、花弁からの光には、花弁内部を経た光成分、すなわち花弁内部の情報が含まれる。光測定部21は、受光部28からの受光信号を分析部32に出力する。分析部32は、光測定部21からの受光信号に基づき光スペクトルを取得し、これを吸収スペクトルに変換する。分析部32は、データベース1021aから読出された分析モデルと、吸収スペクトルを用いて演算を含む分析処理を実施することで、花弁に含まれる糖の量または種類を計測する。
分析部32は、計測処理した結果を内部のメモリに格納する。分析部32は、計測処理の結果を出力する。出力の態様には、表示部11に計測結果を表示させる、または、外部記憶媒体72に計測結果を格納する、または、外部の機器(図示せず)に計測結果を送信するなどの態様が含まれる。なお、ユーザは、入力部12を操作することによって計測結果の出力態様を選択的に切替えることができる。
また、分析部32は、計測処理を実行して得た計測結果、当該計測処理に用いた環境条件および分析モデルの情報などを含む過去データを生成し、生成された過去データを過去データ記憶部34に格納する。過去データ記憶部34の情報は表示部11に表示可能である。また、分析部32はこれらの過去データを糖の分析に使用することもできる。
(計測処理)
図8は、本実施の形態1に係る計測処理のフローチャートである。このフローチャートは、予めプログラムとして記憶部39に格納される。主制御部31のCPUは、記憶部39からプログラムを読出し、読出されたプログラムを実行する。
まず、ユーザによって計測装置1が起動される。例えば、電源スイッチ13が操作されることにより、計測装置1の各部に電力が供給されると、図8のプログラムが実行される。
まずステップS110では、分析部32は、ユーザが選択すべき項目である開花段階を含む各種条件を入力するための画面を表示部11に表示する。換言すれば、分析部32は、入力部12を介して、ユーザから開花段階などの計測や分析におけるオプションの条件を決定するユーザ入力条件の命令を受け付ける状態になる。
ステップS111では、分析部32は、被検対象の花卉の開花段階を含む入力条件を受付ける。具体的には、ユーザは、表示部11のタッチパネルまたは入力部12のメニューキー15などを操作して、被検対象の花卉の品種を指定する。分析部32は、入力部12から操作受付部31Aを介して受付けた操作内容(花卉の品種)に基づき、記憶部39を検索する。検索により、当該花卉の品種に対応した開花段階を表す情報11Dが読出されて、読出された情報11Dは、表示制御部31Bを介して表示部11に表示される(図1参照)。このとき、ユーザが入力した品種データ11Eも表示される。ユーザは、入力部12を操作して、表示部11に表示された情報11Dが表す開花段階のうちから、被検対象の花卉の開花段階を指定する。また、このとき、ユーザは、入力部12を操作して、開花段階以外の計測条件、計測方法、分析項目のオプションなどの条件を入力することができる。例えば、糖の定量分析を行うかそれとも定性分析を行うかといった選択をすることができる。
分析部32は、入力部12から操作受付部31Aを介して受付けたユーザ操作内容に基づき、選択された開花段階の情報11Fまたは入力条件を、表示制御部31Bを介して表示部11に表示する。ユーザは、表示内容を確認した場合はメニューキー15の決定操作を行う。なお、ユーザは、表示内容(入力内容)を訂正したい場合には、入力部12を操作して訂正することができる。
ステップS112では、分析部32はステップS111で受付けた入力条件に基づき、分析を実施するためのプログラムを、分析モデル記憶部36から読出す。定量分析のためのプログラムおよび定性分析のためのプログラムのいずれかが読出される。
分析部32は分析モデル記憶部36からプログラムを読出すと、校正準備ができた旨を、表示制御部31Bを介して表示部11に報知(表示)して、処理をステップS113に進める。
ステップS113では、分析部32は、校正用の光スペクトルと湿度Hを取得する。具体的には、ユーザは、表示部11の報知に従って、光測定部21と標準反射板25の間に花弁を挟んでいない状態で外装部材23と外装部材24とが閉じていることを確認して校正スイッチ14を操作する。分析部32は、操作内容に基づく校正開始の指示を、プローブ制御部35に出力する。プローブ制御部35は、校正開始の指示に基づき、環境測定部33に空気中の湿度Hを測定させる。また、光測定部21に、照射部27からの光を照射しない場合と照射した場合との受光信号をそれぞれ測定させ、測定された受光信号を分析部32に送信させる。このとき、花弁が光測定部21にセットされていないブランクの状態であるので、分析部32は、光測定部21からの受光信号に基づくスペクトル(光を照射していない場合の光スペクトル)を、ダークカウントを差し引くためのダークスペクトルとして取得する。また、分析部32は、光測定部21から、光を照射した場合に入力するする受光信号(標準反射板25に反射された光の受光信号)からのスペクトルを、吸光度算出用の標準スペクトルとして取得する。
また、分析部32は、環境測定部33から湿度を取得する。校正用の光スペクトルと湿度とが取得されると、計測準備ができた旨が表示部11に報知(表示)される。そして、処理はステップS114に進む。
ステップS114では、分析部32は、図3の状態における花弁からの光スペクトルと、環境測定部33により測定された温度を取得する。具体的には、表示部11の報知に従ってユーザは、被検対象の花卉の花弁をプローブ部20にセットし、計測スイッチ16を操作する。具体的には、ユーザは押圧部29を押してプローブ部20のアームを開き、光測定部21と標準反射板25の間に花弁を挟んでアームを閉じ、計測スイッチ16を操作する。分析部32は、計測スイッチ16の操作内容に基づき、計測開始の指示信号をプローブ制御部35に出力する。プローブ制御部35は、指示に応じて、光測定部21を花弁からの受光信号を検出するように制御するとともに、環境測定部33を花弁の温度を測定するように制御する。プローブ部20から、受光信号および測定された温度のデータが、分析部32に送信される。分析部32は、受光信号および温度Tを受信する。その後、処理はステップS115に進む。
ステップS115では、分析モデル判定部37はデータベース1021aに、該当する分析モデルのIDが登録されているかを判定する。具体的には、分析部32はS113とS114で取得した環境条件(温度Tと湿度H)と、S111で取得しユーザ入力条件とを分析モデル判定部37に出力する。分析モデル判定部37は、分析部32からの入力内容に基づき分析モデル記憶部36のデータベース1021aを検索し、検索結果に基づき、該当するIDが登録されている否かを判定する。
ステップS115において、検索結果に基づき、環境条件(温度Tと湿度H)とユーザ入力条件に関連付けされたID(すなわち分析モデル)が登録されていないと判定されると(ステップS115でNO)、分析モデル判定部37は、分析モデル未登録の通知を分析部32に出力する。処理はステップS120に進む。ステップS120では、分析部32は、分析モデル未登録の通知に基づき、メッセージを表示部11に表示する。その後、処理は終了する。ステップS120の表示メッセージには、検索に用いた環境条件(温度Tと湿度H)およびユーザ入力条件、ならびに計測処理が不可能である旨のメッセージが含まれる。なお、検索に使用した条件の全てを満たす分析モデルが登録されていない場合には、全てではなくとも条件のいくつかを満たすような近いモデルを選択できるようにしてもよい。近いモデルを選択することができた場合は、処理はステップS115におけるYESと判定される。
なお、ステップS120では、検索に用いた環境条件およびユーザ入力条件の全てを表示するようにしたが、ヒットしなかった一部の検索条件のみを表示してもよい。例えば、ユーザ入力条件(品種および開花段階)に対応した分析モデルは登録されていたが、当該分析モデルに、環境条件(温度Tまたは湿度H)に合致したものが含まれていなかった場合には、ステップS120では、この環境条件のみを表示するようにしてもよい。
一方、ステップS115において、検索結果に基づき、分析モデルが登録されていると判定されると(ステップS115でYES)、分析モデル判定部37は、検索結果に基づき、記憶部39から分析モデルを読出し、読出された分析モデルを分析部32に出力する(ステップS116)。その後、処理はステップS117に進む。
ステップS117では、分析部32は、ステップS114で光測定部21からの受光信号に基づき取得した被検対象の光スペクトルを、吸収スペクトルに換算する。具体的には、分析部32は、光スペクトルからステップS113で取得したダークスペクトルを用いてダークカウントを除去し、除去後の光スペクトルから、標準スペクトルを用いてランベルト・ベールの法則またはクベルカ−ムンクの式に基づき、吸収スペクトルを算出する。この吸収スペクトルの算出方法は公知であるから、ここでは説明を繰返さない。
なお、本実施の形態では連続的なスペクトルではなく発振波長の異なる複数のLEDからの光を花弁に照射した場合に計測されたそれぞれの波長の光の強度から、吸収スペクトルを離散的に算出したが、この場合においても適切な発振波長を使用することで精度よく糖を計測するための吸収スペクトルを取得することができる。
計測装置1はS112で読出したプログラムによって糖の定量分析または定性分析を行うことができる。本実施の形態では、これら分析プログラムを用いて糖の含有量を求める。この場合、花弁に照射されて受光部28に到達する光には花弁の中で拡散反射を起こしている光などが含まれることに鑑みて、クベルカ−ムンクの公式に従って、標準スペクトルとS114の光スペクトルとの対数をとれば、疑似的な吸収スペクトルが得られる。すると糖の吸収に帰属する波長における花弁の光の吸収の強さ、つまり吸収スペクトルの値が糖の含有量と比例する効果が得られる。実際の吸収スペクトルでは、糖以外に含有される成分が様々に重なり合うため、単純に光強度と糖の量が比例するわけではないが、多変量解析または重回帰分析のような一般的な分析手法を用いることで吸収スペクトルから糖の含有量を算出することができる。
本実施の形態では照射部27から照射する光の波長は花弁の内部に到達しやすい波長である1100nm以上の波長を用いる。花弁の内部の情報を含む吸収スペクトルを用いるので、植生指標などで一般的に用いられるような花弁の表面から反射される光の反射率を測定する反射スペクトルを用いるよりも、糖を精度よく計測することができる。本実施の形態においても分析プログラムなどを対応させていれば反射率を用いた糖の計測も可能であるが、この場合、計測の精度は落ちる。
ステップS118では、分析部32は、分析モデル判定部37からの分析モデルを、ステップS117で得た吸収スペクトルに適用して分析処理を実施し、糖の種類を特定し、または含有量を算出(計測)する。
分析プログラムに従った計測結果が得られると、分析部32は計測結果と分析の情報を表示部11に表示させる(ステップS119)。このときユーザは、結果の保存を、入力部12を操作して命令することができる。例えば命令を受けた分析部32は、使用したプログラム(定性分析または定量分析のプログラム)、分析モデルのID、ステップS111で入力したユーザ入力条件、ステップS113およびS114で取得した環境条件、および今回得られた計測結果(糖の種類および量)を関連付けて、過去データ記憶部34に格納する。その後、処理は終了する。
(実施の形態1の変形例)
主制御部31は、計測装置1の動作状態、その他ユーザへのお知らせなどを示すテキストあるいは画像を表示部11に表示させてもよい。
また、主制御部31は、ユーザが入力した内容、計時部38は計時する現在時間または計測日時を、表示部11に表示させてもよい。これにより、ユーザに対して計測するときに補助となる情報を与えることができる。
補助となる情報には、例えば、過去データ記憶部34に格納されているデータが含まれる。この場合に、ユーザが朝に計測を実施した花弁について、夕方に、計測を再度実施する時に、過去データ記憶部34から朝の計測結果を検索し、検索された計測結果を表示部11に表示させる。ユーザは、表示部11において、夕方の計測結果と過去(朝)の計測結果とを比較し、含まれている糖の変化(種類または量)を確認することができる。また、主制御部31は、含まれている糖の変化をグラフなどで模式的に表示させてもよい。これにより、朝に花卉に与えた糖が夕方になってどの程度吸収されたかを、ユーザは表示部11の表示情報から知ることができる。
データベース1021aは計測装置1の製造時に分析モデル記憶部36に格納される。また、データベース1021aのデータは、ユーザにより適宜、変更され得る。例えば、ユーザが入力部12を操作することにより、または、外部記憶媒体72からのデータにより、または、通信ネットワーク(図示せず)を介して外部装置(図示せず)からダウンロードされるデータにより、データベース1021aの分析モデルが変更(追加、削除を含む)されてもよい。
なお、本体2に、メーカが後から追加した条件や分析モデルのバリエーションに対応したデータも記憶してIDを新たに付加できるように記憶領域とプログラムを備えてもよい。この場合には、分析モデル判定部37は、追加された条件に応じてユーザ毎に最適な分析モデルを検索することができる。
図7に示したデータベース1021aには、花卉の品種と開花段階と環境条件(温度と湿度)の項目からなる各組に関連付けたIDに対応して分析モデルが格納されており、品種と開花段階と環境条件の組に対応するIDが検索に用いられる。このような関連付けを行っておけば検索の補助となるので、検索時間の短縮や、計測処理に関する負荷の軽減が可能となる。なお、IDに対応する各組に含まれる項目は、品種、開花段階および環境条件に限定されず、他の種類の項目が含まれてもよい。
本実施の形態においては、分析モデルを格納するデータベースは、図7に示される構成に限定されない。分析のための演算を精度よく行なえるのであればIDを用いなくともよい。しかし、迅速な検索を実現するために、上述のように、分析に用いる各情報が項目ごとに整理されて分類され、分析モデルにIDによって関連付けられていることが望ましい。特に開花の様子は品種によって全く異なるので、品種別に整理されていることが望ましい。なお、IDは必ずしもデータベース1021aのように数字でなくとも、数字以外の文字や記号、コードなどを用いても検索が可能である。
また、本実施の形態では、データベース1021aのIDを温度と湿度によって分類したが、必ずしも温度と湿度で分類する態様に限定されず、ユーザの入力内容に基づき分類してもよい。しかし、花卉のように水分が多く含まれる被検対象の場合には、光スペクトルの計測は温度と湿度に影響され、これら条件は分析モデルの選択にも大きく影響する。そのため、データベース1021aは、計測時の温度と湿度の環境条件によって分析モデルを検索できる構成であることが望ましい。
また、本実施の形態1では、計時部38によって得られる日付および時刻の少なくともいずれかの情報を分析に反映してもよい。つまり、データベース1021aにおいて、時節(時候・季節)の時間情報に関連付けて分析モデルのIDが格納される。計測時には、計時部38の計時情報から時節を判定し、判定に基づきデータベース1021aを検索する。これにより、データベース1021aから、時節および環境条件(温度または湿度)に適合した分析モデルのIDを検索することができるので、当該分析モデルを用いる計測処理により、正確な計測結果を得ることができる。また、過去データ記憶部34に計測結果の情報を格納する場合には、計測日時と関連付けて格納してもよい。これにより、ユーザは、過去データ記憶部34から、時節に基づき過去の計測結果を検索することができる。
また、花卉の品種によっては午前と午後で光合成の状態が大きく異なる。そのような品種に対してはデータベース1021aのIDは、時間帯等の時間情報(日付および時刻の少なくともいずれか)に関連付けて格納される。計測時には、データベース1021aから計時部38の計時情報に関連付けされた分析モデルのIDが検索される。これにより、時間帯に応じた花卉の状態を反映した計測結果を得ることができる。
なお、本実施の形態では、図6に示すように、主制御部31は、分析部32とプローブ制御部35と分析モデル判定部37とは別体(個別のモジュールなど)として備えるが、計測処理のための演算を精度よく行なえるのであれば、一体として備えてもよい。または、分析部32とプローブ制御部35と分析モデル判定部37の各部を、複数のブロックに分割してもよい。
また、本実施の形態においては、出力デバイスとして表示部11を含むが、これに限定されずプリンタ、音声出力部(スピーカ)が含まれてもよい。
また、本実施の形態においては、計測装置1では本体2とプローブ部20は別体として構成されるが、花弁の光スペクトルを精度よく計測できるなら必ずしも別体とせず両者を一体化してもよい。一体化する場合に、プローブ部20が本体2に脱着可能に取付けられる態様であってもよい。
本体2とプローブ部20とを別体に備える場合には、プローブ部20を花弁の位置または形状に応じて容易に引き回すことができる。例えば、多様な形状の花弁または葉に遮られた位置にある花弁であっても、プローブ部20を好適な場所に引き回すことができ、計測が容易となる。また、また計測結果を、手元の本体2の表示部11で確認することができ利便性に優れる。
なお、本実施の形態では計測結果を過去データ記憶部34に記憶するとしたが、外部記憶媒体72に格納してもよい。これにより、計測に際して、最適な分析モデルがデータベース1012aに登録されているか否かを、過去データ記憶部34の検索の結果から、判断することができる。主制御部31は、過去データ記憶部34の情報に基づき、例えば、同一品種であっても、開花段階および環境条件の変化に応じた計測結果の変化を示す時系列の情報を取得し表示部11に表示させてもよい。ユーザは、表示情報から、含有される糖の種類または量の経時変化を確認することができる。また、花卉の健康状態を把握することもできる。また、主制御部31は、過去データ記憶部34が記憶する計測装置1の使用形態(使用回数、故障履歴等)の情報に基づき、メンテナンスのための情報を生成し、表示部11に表示させてもよい。ユーザは、表示情報から、計測装置1のメンテナンスの要否を判断することができる。
<本実施の形態1の効果>
本実施の形態によれば、花卉に含まれる糖を分析する機能を備えた計測装置1において精度よく糖の量または種類を計測することができる。
一般に光を用いた成分分析においては分析対象物の形状や状態や周辺環境といった成分以外の要因が計測データに大きく影響するため、分析モデルに予め設定された条件と、実際の被検対象の状態との差異が大きいほど分析精度が落ちてしまう。
このような課題に対し、従来、果実においては品種毎にモデルを作成することで対応しているが、花卉の場合は対応が容易ではなかった。つまり、花弁の場合は、同じ品種であっても様々な形状・色をしており、さらに蕾の状態から開花が進むに従って形状が大きく変化し、それに伴って糖の量や種類も大きく変化していく。また前述のように温度や湿度などの環境条件によって糖の量や種類が大きく左右される。さらに花卉は形状や糖の量や種類が開花の進行に伴って大きく変化するために吸収係数の変動範囲が広くなってしまい、花卉の糖の分析モデルの精度が低くなってしまうという問題があった。
この問題に対処するために、本実施の形態の計測装置1は、花卉の形状変化や糖の量や種類の変化と密接に結びついている開花段階に応じた分析モデルが準備されることで、高い計測精度を得ることができる。
また、本実施の形態においては、図7のデータベース1021aは、花卉の品種毎に、複数の開花段階それぞれに関連付けて分析モデルのID群が格納され、さらに、ID群では環境条件(温度および湿度)毎にIDが格納される。したがって、データベース1021aから、被検対象により最適な分析モデルを検索することができる。
特に近赤外分光法などの光を用いた成分分析では、花卉の品種、開花段階および環境条件などによってスペクトル形状および用いるべき分析モデルが異なる。したがって、分析モデルに、近赤外分光法などの光を用いた成分分析のための条件を含めることで、より精密に分析を行なうことができる。
以上説明したように本実施の形態の計測装置1では、花卉の品質を左右する開花のメカニズムに直接関わる糖が蓄積される花弁を被検対象として計測が実施される。計測処理では、花弁からの光による吸収スペクトルが取得される。また、計測処理のために適用される分析モデルは、被検対象の品種および開花段階、ならびに計測時の環境条件(温度または湿度)に基づき決定される。また、被検対象の開花段階は、表示部11において情報11Dのように、選択のために、グラフィカルにユーザに提示される。
したがって、開花に伴って形状、糖の量または種類が変化するために、吸収係数と拡散係数の対応が近似できなくなるなどで分析モデルの精度が低下する場合であっても、計測処理のために適用される分析モデルは、被検対象の品種および開花段階、ならびに計測時の環境条件(温度または湿度)に基づき決定することができる。これにより、精度よく糖の量または種類を非破壊で計測することができる。
[実施の形態2]
実施の形態2は、実施の形態1の変形例を示す。発明者は、実験により、花卉の品種によっては、含水率(水分量を示す情報)(単位:%)に応じた分析モデルを用いることで、より正確に糖の量または種類を計測することができるとの知見を得た。そこで、実施の形態2では、花弁の含水率に応じた分析モデルが用いられる。
図9は、実施の形態2に係る計測装置1Aの機能構成図である。図9の構成と図6の構成とを比較し異なる点は、図9の計測装置1Aは、図6の本体2およびプローブ部20のそれぞれに代替して、本体2Aおよびプローブ部20Aを備える点にある。
図9の本体2Aと図6の本体2とを比較し異なる点は、本体2Aは、分析モデル記憶部36に代替して、データベース1021aと図10のデータベース1021bを格納するための分析モデル記憶部36Aを備える点にある。本体2Aの他の構成は、本体2と同様であるので、説明は繰返さない。
図9のプローブ部20Aと図6のプローブ部20とを比較し異なる点は、プローブ部20Aは、花弁に含まれる水分の量を測定し、測定結果から含水率を検出するための水分量測定部33bを追加して備える点にある。プローブ部20Aの他の構成は、プローブ部20と同様であるので、説明は繰返さない。
水分量測定部33bは、図3のように挟まれた状態の花弁の含水率を測定するための静電容量式または光測定式の水分センサを有する。図10を参照して、データベース1021bには、品種と開花段階と環境条件(温度)と含水率の各組に関連付けて分析モデルのIDが格納される。ここでは、データベース1021bの環境条件は、温度としているが、湿度であってもよく、または温度と湿度の組合わせであってもよい。
実施の形態2では、図8の計測処理が開始されると、ステップS115において、分析モデル判定部37は、予め定められた品種が入力された場合は、ユーザ入力条件(品種、開花段階)、環境条件(温度、湿度)および水分量測定部33bにより測定された含水率に基づき、データベース1021bを検索する。検索結果により読出されたIDに対応の分析モデルを用いて、花弁に含有された糖の量または種類が計測される。
なお、花弁の含水率に応じた分析モデルを使用するように予め定められた品種とは異なる品種が入力された場合には、含水率に応じたデータベース1021bではなくデータベース1021aが検索されて、検索により読出されたIDに対応の分析モデルを用いた計測処理が実施される。
図8の他の処理は、実施の形態1と同様であるから説明は繰返さない。
実施の形態2では、実施の形態1の構成に追加して水分量測定部33bを備えるが、水分量測定部33bに光測定式の水分センサを用いた場合には、糖を計測するための波長と同じ波長の光を用いて含水率を検出することが可能となる。したがって、水分量測定部33bを追加したとしても、部品点数の増加と製造コスト上昇とを抑えることができる。
[実施の形態3]
実施の形態3は、実施の形態1の変形例を示す。実施の形態3では色素に応じた分析モデルを用いることで、より正確に糖の量または種類を計測することができる。
図11は、実施の形態3に係る計測装置1Bの機能構成図である。図11の構成と図6の構成とを比較し異なる点は、図11の計測装置1Bは、図6の本体2およびプローブ部20のそれぞれに代替して、本体2Bおよびプローブ部20Bを備える点にある。
図11の本体2Bと図6の本体2とを比較し異なる点は、本体2Bは、分析モデル記憶部36に代替して、データベース1021cを格納するための分析モデル記憶部36Bを備える点にある。本体2Bの他の構成は、本体2と同様であるので説明は繰返さない。
図11のプローブ部20Bと図6のプローブ部20とを比較し異なる点は、プローブ部20Bは、花弁に含まれる色素含有量を光測定法に従い測定する色素測定部33cを追加して備える点にある。プローブ部20Bの他の構成は、プローブ部20と同様であるので説明は繰返さない。
色素測定部33cは、図3に示した挟まれた状態の花弁の色素含有量を測定するためのセンサを有する。データベース1021cは、詳細は図示しないが、花卉の品種と開花段階と環境条件(例えば、温度)と色素含有量の各組に関連付けて分析モデルのIDが格納される。
実施の形態3では、図8の計測処理が開始されると、ステップS115において、分析モデル判定部37は、ユーザ入力条件(品種、開花段階)、環境条件(温度、湿度)および色素測定部33cのセンサ出力に基づく色素含有量(色素の量を示す情報)に基づき、データベース1021cを検索する。検索結果により読出されたIDに対応の分析モデルを用いて、花弁に含有された糖の量または種類の計測処理が実施される。実施の形態3における図8の他の処理は、実施の形態1と同様であるから説明は繰返さない。なお、本実施の形態では色素としてクロロフィルを想定する。
色素が特定の波長を反射することにより、吸収スペクトルの形状が色素の含有量に大きく左右される可能性があるために、色素の含有量を計測処理に反映させた方が、より精度よく糖の含有量または種類を計測することができる。例えばクロロフィルは近赤外の波長領域に近い波長で光を強く反射してスペクトル形状に大きな影響を及ぼすことが知られている。開花の初期には花弁にクロロフィルが多く含まれている場合が多いが、開花と共に減少していく。また、品種によっては開花した後もクロロフィルが残ることがある。したがって、実施の形態3のように、色素の含有量に応じた分析モデルを用いることで、より正確に計測処理を実施することができる。
[実施の形態4]
実施の形態4は、実施の形態1の変形例を示す。本実施の形態4では、花弁の周囲の照度に応じた分析モデルを用いて糖の計測が実施される。
図12は、実施の形態4に係る計測装置1Cの機能構成図である。図12の構成と図6の構成とを比較し異なる点は、図12の計測装置1Cは、図6の本体2およびプローブ部20のそれぞれに代替して、本体2Cおよびプローブ部20Cを備える点にある。
図12の本体2Cと図6の本体2とを比較し異なる点は、分析モデル記憶部36に代替して、データベース1021dを格納するための分析モデル記憶部36Cを備える点にある。本体2Cの他の構成は、本体2と同様であり、説明は繰返さない。データベース1021dは、詳細は図示しないが、花卉の品種と開花段階と環境条件(例えば、温度、湿度、照度)の各組に関連付けて分析モデルのIDが格納される。
図12のプローブ部20Cと図6のプローブ部20とを比較し異なる点は、プローブ部20Cは、図6の環境測定部33に代替して環境測定部33dを含む点にある。プローブ部20Cの他の構成は、プローブ部20と同様であるので、説明は繰返さない。
環境測定部33dは、実施の形態1で説明した温度センサおよび湿度センサ、ならびに図3のように挟まれた状態の花弁の周囲の照度(明るさ)を測定するための照度センサを有する。
実施の形態4では、図8の計測処理が開始されると、ステップS115において、分析モデル判定部37は、ユーザ入力条件(品種、開花段階)、および環境測定部33dにより測定された環境条件(温度、湿度、照度)に基づき、データベース1021dを検索する。検索結果により、データベース1021dから読出されたIDに対応の分析モデルを用いて、計測処理が実施される。図8の他の処理は、実施の形態1と同様であるから説明は繰返さない。
実施の形態4によれば、花弁周囲の照度に応じた分析モデルを用いることで、照射部27以外の光源からの光(太陽光等)によって、計測処理のための波長帯のスペクトルに影響が及ぶのを回避することができる。これにより、花弁に含まれる糖の量または種類を正確に計測することができる。
[実施の形態5]
実施の形態5は、実施の形態1の変形例を示す。実施の形態1では、光測定部21に光照射のための光源を備えたが、実施の形態5では、当該光源を本体側に備える。図13は、実施の形態5に係る計測装置1Dの機能構成図である。
図13の計測装置1Dと図6の計測装置1とを比較し異なる点は、計測装置1Dは、図6の本体2、プローブ部20およびコード30に代替して、本体2D、プローブ部20Dおよびコード30Dを備える。
本体2Dは、図6の本体2のプローブ制御部35に代替して、プローブ制御部35dを備える。プローブ制御部35dは、投光および受光のための投受光部35eと電気的に接続されている。投受光部35eは投光部と受光部を含む。投光部は、照射波長が連続した光源であるハロゲンランプ(図示せず)を有する。受光部は、ハロゲンランプからの光のうち、計測処理に使用する波長を選択的に透過するための分光素子である干渉フィルタなどの波長フィルタ50、および光の強度を取得する受光器としてのCCD(Charge Coupled Device:図示しない)を備える。プローブ制御部35dの他の構成は、プローブ制御部35と同様であるので説明は繰返さない。
プローブ部20Dは、図6のプローブ部20の光測定部21に代替して光測定部21dを備える。本体2Dとプローブ部20とを接続するコード30Dは、本体2Dとプローブ部20Dとの間で制御のための信号を送受信するためのケーブルと、照射用と受光用の光ファイバをまとめたバンドルファイバからなるケーブルとを含む。なお、これらのケーブルは一本にまとめてもかまわない。
投受光部35eとバンドルファイバは光コネクタ(図示せず)を介して接続される。さらにバンドルファイバは投受光部35eからの光と光測定部21dからの光を互いに導光できるよう光学的に接続されている。プローブ部20Dの他の構成は、プローブ部20と同様であるので説明は繰返さない。
図14は、実施の形態5に係る光測定部21dの構成図である。図14を参照して光測定部21dは、コード30Dのバンドルファイバの一方端と接続される複数の照射部27dおよび受光部28dを有する。複数の照射部27dは、受光部28dを中心に取り囲むようにして配置される。
光測定部21dの照射部27dと受光部28dは、バンドルファイバの先端に、光を透過する波長特性を有した透明部材のカバーを設けたものとして構成される。すなわち、照射部27dは、本体2Dの投受光部35eのハロゲンランプから照射された光がバンドルファイバを通ってきた光の出口に相当する。
CCDには波長フィルタ50によって波長選択された光が受光される。波長フィルタ50は干渉フィルタからなり、光を透過することが可能な波長範囲内に、糖の分析に用いる波長(すなわち、CCDによる光電変換が可能な光の波長)が存在するように選定される。
また、受光部28dは、花弁からの光の入射口に相当し、花弁からの光は受光部28dおよびバンドルファイバを通って、本体2Dの投受光部35eの波長フィルタ50を介してCCDにより受光される。
このように、投受光部35eのCCDは、波長フィルタ50によって選択された波長の光を受光する。波長フィルタ50は、糖の計測に用いる波長(すなわち、CCDによる光電変換が可能な光の波長)が存在するように透過可能な波長の範囲が設定される。
投受光部35eのCCDは受けた光を電気信号に変換し、変換後の電気信号を分析部32に出力する。分析部32は、投受光部35eからの受光信号に基づき吸収スペクトルを取得(生成)する。
なお、本実施の形態では、波長フィルタ50に干渉フィルタを用いるがこれに限るものではなく、糖の計測に用いる波長の光を選択的に透過できる分光素子であればよく、例えば液晶チューナブルフィルターなど他の構成であってもよい。
また、本実施の形態では連続光源としてハロゲンランプを用いるがこれに限るものではなく、分析に用いる波長の光を照射できる連続光源であればよい。また、本実施の形態では受光器としてCCDを用いるがこれに限るものではない。例えば、糖の計測に必要な波長を検知することが可能であれば、リニアアレイ型のマルチチャンネル検出器、あるいは撮像素子を用いた構成でもよい。
なお、ハロゲンランプの出力、波長フィルタ50が透過する波長および分光器の構成などは、被検対象である花卉の品種、計測に使用する光の波長、計測装置1Dの仕様などに応じて適宜選択されてよい。
また、本実施の形態では波長フィルタ50を花弁とCCDの間に設置しているがこれに限るものではなく、連続光源と花弁の間に設置してもよいし、あるいは連続光源または分光器と一体型としてもよい。
本実施の形態の場合、ハロゲンランプを用いることにより、近赤外光源として使用されるLEDまたはLD(Laser Diode)からの出射光には含まれない波長の光も計測に使用することができる。これにより、精度よく糖の量または種類を計測することができる。
[実施の形態6]
実施の形態6は、実施の形態1の変形例を示す。図15は、実施の形態6に係る光測定部21eの構成図である。実施の形態6では、実施の形態1の光測定部21に代替して、図15の光測定部21eを備えるが、他の構成は実施の形態1と同様であるから説明は繰返さない。
図15を参照して、光測定部21eは複数の照射部27eと受光部28とを備える。照射部27eは、光源としてLEDと、LEDに関連して設けられた蛍光体発光部60(図示せず)とを有する。このLEDから出射された励起光としての光によって蛍光体発光部60に含まれる蛍光体粒子が励起されることにより、照射部27eから蛍光が発せられる。蛍光体発光部60には、近赤外域の波長の蛍光を発する蛍光体粒子が含有されている。すなわち、蛍光体発光部60はLEDからの光を受光して、LEDの光とは異なる波長の蛍光に変換して出力する。従って、蛍光体発光部60は、LEDの光の波長を変換する機能を有する部材であると理解されてもよい。それゆえ、蛍光体発光部60は、波長変換部材とも称される。照射部27eからの光、すなわち蛍光体発光部60が発した光は、花弁に照射される。
本実施の形態の場合、近赤外光源に使用できるLEDやLDの出射光に存在しない波長の光を使用することができる一方で、煩雑な機構や高価なデバイスを必要としない。そのため、簡潔な構成でより精度よく糖の量および種類を計測することができる。
なお、LEDの出力や蛍光体微粒子の種類は、計測する花卉の品種、計測に使用する波長、計測装置の仕様などに応じて適宜選択されてよい。また、LEDの代わりにLDなど他の励起光源を使用することもできる。
[実施の形態7]
実施の形態7は、実施の形態5の変形例を示す。実施の形態7では、実施の形態5の波長フィルタ50に代替して受光のための分光器を用いるが、他の構成は、実施の形態5と同様であるので説明は繰返さない。
実施の形態7では、受光部28dは、透明部材のカバーを有するが、当該カバーの材料は、投受光部35eのCCDによる光電変換が可能な範囲の波長の光を透過する特性を有する。当該波長範囲には、花弁に照射される光の発振波長が含まれる。
分光器は、波長毎に光の強度を取得する受光器であって、本実施の形態では分光器は、回折格子とスリットを含む。
なお、本実施の形態では回折格子を用いているがこれに限るものではなく、糖の計測に用いる波長の光を選択的に透過できる分光素子であれば、例えば音響光学素子なども用いることができる。
また、本実施の形態では、投受光部35eの光源としてハロゲンランプを用いるがこれに限るものではなく、分析に用いる波長の光を照射できる連続光源であればよい。
本実施の形態の場合、分光器を用いて連続スペクトルを計測することで、多くの波長を用いて糖の量および種類を計測することができる。これにより、より精度よく糖の量および種類を算出することができる。
なお、光源または分光器の構成は、計測する花卉の品種や使用する波長や計測装置の仕様などに応じて適宜選択されてよい。
上述した実施の形態1〜7の計測装置の構成は、個別に実施し、または2つ以上を組合わせて1個の装置で実施することができる。
[実施の形態8]
実施の形態8は、計測装置1Eを備えるネットワークシステムが示される。図16は、実施の形態8に係るネットワークシステムの構成図である。図16を参照して、ネットワークシステムは、計測装置1E、ネットワーク70を介して計測装置1Eと通信するサーバ装置を備える。サーバ装置は計測用の分析モデルを格納する。ここでは、計測装置1Eは1台としているが2台以上であってよい。また、サーバ装置40は、データベースサーバまたはシステムを管理するための管理サーバを含む。ここでは、サーバ装置40は、1台としているが、2台以上であってもよい。ネットワーク70は有線または無線の各種通信線を含み得る。
図17を参照して、計測装置1Eは、計測装置1の構成に追加して通信I/F(インターフェイス)71を備える。他の構成は、計測装置1と同様であるので説明は繰返さない。また、図16を参照して、サーバ装置40は、ネットワーク70と通信するための通信I/F(インターフェイス)41、計測装置1Eの記憶部39の分析モデルまたはプログラムなどを変更または追加するための管理データを記憶するメモリ42、およびCPU43を備える。CPU43は、メモリ42に格納された管理用プログラムに従い、通信I/F41を介して計測装置1Eから受信した計測結果に基づいて管理データを変更するための変更部の機能を有する。CPU43は、計測結果と管理データとに基づいて変更データを生成し、通信I/F41を介して変更データを計測装置1Eへ送信する。変更データは、最新の分析モデル、または計測装置1Fの格納された分析モデルを変更するためのデータを含む。計測装置1Eは、通信I/F71を介して計測処理の結果をサーバ装置40へ送信する。また、サーバ装置40から受信する変更データに基づいて記憶部39に記憶された分析モデルなどのデータを変更する。変更データが、最新の分析モデルを示す場合には、最新分析モデルにより元の分析モデルが更新(変更)される。以下、具体的に説明する。
計測装置1Eは、サーバ装置40から送信された分析モデルを受信し、受信された分析モデルを用いて、被検対象に含まれる糖の計測処理を実施する。ここでは、サーバ装置40のメモリ42に最新の分析モデルが格納されることで、計測装置1Eは最新の分析モデルを用いて計測処理を実施することができる。また、サーバ装置40が、ネットワーク70を介して計測装置1Eに格納されたデータベースを更新することができる。また、サーバ装置は、メンテナンス処理により計測装置1Eの故障を検知した場合に、計測装置1Eに対し、その旨の通知を送信する。計測装置1Eは、受信した通知内容を表示部11を介して出力する。また、主制御部31は、受信した通知内容に含まれる変更データに基づき、記憶部39のプログラムまたは分析モデルを変更する。これにより、計測装置1Eの計測精度を維持することができる。
実施の形態8によれば、分析モデルとして検量線などの回帰モデルを用いる場合には、次の効果が奏される。一般に、分析モデルにおいて検量線などの回帰モデルを用いる場合、装置が故障しなくても時間の経過とともに自然に回帰モデルがずれて精度が低下していってしまうことが知られており、定期的に計測精度をチェックして、回帰モデルを補正する、または新たな回帰モデルに変更することが望ましいが、ユーザが自主的に分析モデルを補正することは煩雑であり手間がかかる。よって、実施の形態8のように、ネットワーク70を介してサーバ装置40が計測装置1Eの分析モデルを管理することにより、変更データを用いてオンラインで分析モデルが変更される。この変更は、変更データによる分析モデルの修正、または最新の分析モデルへの変更を含む。これにより、ユーザの負担の少ない方法で計測精度を維持することができる。
さらに、ユーザの許可に基づいて、計測装置1Eの計測結果を、サーバ装置40に送信することで、計測結果の情報をサーバ装置40で集約してメモリ42に格納することができる。つまりユーザの分析結果を管理サーバに送信することで、分析情報を計測装置1Eのメーカ側で集約し情報を蓄積することで得た新たなプログラムや分析モデルをユーザに提供し、ユーザの計測精度を向上するためにフィードバックすることができる。具体的にはサーバ装置40は新たな計測用のプログラムまたは分析モデルを計測装置1Eに送信することができる。
また、冷夏や日照りなどの突発的な異常気象が発生し、計測装置1Eに予め格納された分析モデルまたはプログラムの想定範囲を超えて花弁の形状または糖の含有量が変化するような場合であっても、この変化に追従して計測処理を実現するための分析モデルまたはプログラムをサーバ装置40から計測装置1Eに配信して提供する。これにより、異常気象時にも計測精度を維持することができる。
なお、計測装置1Eは、実施の形態1の計測装置1に通信I/F71を備えて構成されるが、実施の形態1の計測装置1に限定されず、実施の形態2〜7のいずれの計測装置であっても、実施の形態8のネットワークシステムに適用することができる。
[実施の形態9]
上述した図8のフローチャートに従うプログラムは、各実施の形態の計測装置に付属する外部記憶媒体72などのように、主制御部31のCPUが外部I/F73を介して読取り可能な記録媒体に非一時的に記録させて、プログラム製品として計測装置に提供することもできる。あるいは、ネットワーク70を介して通信I/F71により受信し記憶部39の予め定めた記憶領域へのダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。提供されるプログラム製品は、プログラム自体と、プログラムが非一時的に記録された記録媒体とを含む。
また、本実施の形態では、実施の形態1の図8に示す方法を、コンピュータを用いて実行するプログラムが提供されるとともに、当該プログラムを記録した機械読取り可能な記録媒体が提供される。
[各実施の形態の効果]
各実施の形態によれば、非破壊計測の原理上の課題を解消することができる。つまり、花弁に光を照射し、その反射光から得られるスペクトルには花卉による各種の反射および散乱された光が含まれる。そのため、このようなスペクトルから吸光度を求めるには、物質の吸収係数と散乱係数との対応を線形に近似する必要がある。果実の形状または糖度は変動範囲が比較的狭くてほぼ近似することができるが、花卉は形状または糖の量または種類が開花の進行に伴って大きく変化するために線形近似が困難になり、また微分処理のような演算だけでも対応することができない。
これに対し、各実施の形態では、複数の開花段階それぞれに関連付けて、糖の分析処理に適用される分析モデルを記憶部に格納し、被検対象の花の開花段階に関連付けされた記憶部の分析モデルと、被検対象の花から取得された光の強度情報とに基づき、計測処理が実施される。したがって、開花段階に応じて形状が多様に変化するとともに含まれる糖の量または種類も変化する花卉の場合であっても、花弁の糖のより正確な非破壊計測を実現することができる。
(実施の形態の構成)
各実施の形態では、花の花弁または萼に含有された糖の計測処理を実施する計測装置は、花の花弁または萼に光を照射する光源と、光源から被検対象の花に光を照射することによって花弁または萼から放出された光の測定処理を実施するための測定部と、花の花弁または萼が含有する糖を分析するために用いる分析モデルを格納するための記憶部と、花弁または萼に含有された糖の分析処理を実施する処理部と、を備え、処理部は、測定部で測定された光の強度情報を取得する光強度取得部を含み、処理部は、分析モデルと、取得された光の強度情報とに基づき、分析処理を実施するよう構成される。
したがって、花の花弁または萼に含まれる糖を非破壊で測定することが可能である。
また、記憶部は、花の品種毎に、花弁または萼の複数の開花段階それぞれに関連付けた分析モデルを格納し、処理部は、被検対象の花の開花段階を取得し、取得された開花段階に関連付けされた記憶部の分析モデルと、取得された光の強度情報とに基づき、分析処理を実施するよう構成される。したがって、品種ごとに、花の花弁または萼に含まれる糖を開花段階に基づき非破壊で測定することが可能である。
また、処理部は、情報を表示するように表示部を制御する表示制御部と、計測装置に対するユーザ操作を受付けるための操作受付部と、をさらに含み、表示制御部は、複数の開花段階を表す情報を、表示部に表示させ、操作受付部により受付けられる操作内容は、複数の開花段階のうちの1つを選択する操作を含む。
したがって、ユーザは表示された複数の開花段階を表す情報のうちから、被検対象の花の開花段階を選択する操作をして指定することができる。
また、計測装置は、被検対象の花の周囲の環境条件を取得する環境条件取得部を、さらに備え、記憶部は、複数の開花段階それぞれに関連付けて、環境条件毎に分析モデルを格納し、処理部は、さらに、開花段階に関連付けされた記憶部の分析モデルのうち、環境条件取得部により取得された環境条件に対応の分析モデルと、取得された光の強度情報とに基づき、分析処理を実施する。
したがって、花の花弁または萼に含まれる糖を、さらに花の周囲の環境条件に基づき非破壊で測定することが可能である。
好ましくは、環境条件は、被検対象の花の周囲の温度、湿度および照度の少なくとも1つの条件を含む。したがって、花の花弁または萼に含まれる糖を、さらに花の周囲の環境条件(温度、湿度および照度の少なくとも1つ)に基づき非破壊で測定することが可能である。
また、測定処理と分析処理が実施されたとき、当該処理に関する情報であって、分析モデルと、開花段階と、環境条件と、当該測定処理と分析処理の結果とを含む情報を格納するための結果格納部を備える。
したがって、測定処理と分析処理の結果は、当該処理に適用された分析モデルと、開花段階と、環境条件とともに格納される。
また、記憶部は、複数の開花段階それぞれに関連付けて、水分の量毎に測定用データを格納し、計測装置は、さらに、被検対象の花の花弁または萼に含まれる水分の量の情報を取得し、処理部は、さらに、開花段階に関連付けされた記憶部の測定用データのうち、取得された情報が示す水分の量に対応の測定用データと、取得された光の強度情報とに基づき、分析処理を実施する。
したがって、花の花弁または萼に含まれる糖を、さらに、そこに含まれる水分の量に基づき非破壊で計測することが可能である。
また、記憶部は、複数の開花段階それぞれに関連付けて、色素の量毎に測定用データを格納し、計測装置は、被検対象の花の花弁または萼に含まれる色素の量の情報を取得し、処理部は、さらに、開花段階に関連付けされた記憶部の測定用データのうち、取得された情報が示す色素の量に対応の測定用データと、取得された光の強度情報とに基づき、分析処理を実施する。
したがって、花の花弁または萼に含まれる糖を、さらに、そこに含まれる色素の量に基づき非破壊で計測することが可能である。
また、計測装置は、さらに、日付および時刻の少なくともいずれかを取得するための計時部をさらに備え、記憶手段は、分析モデルを日付および時刻の少なくともいずれかに対応付けて格納し、処理部は、さらに、記憶部の分析モデルのうち、計時部による計時情報に対応の分析モデルと、取得された光の強度情報とに基づき、分析処理を実施する。
したがって、花の花弁または萼に含まれる糖を、さらに、計測時の日付および時刻の少なくともいずれかに基づき非破壊で計測することが可能である。
また、光強度取得部は、被検対象の花の花弁または萼に光が照射されたときに、当該花弁または萼から受光する光の強度情報を取得する。したがって、被検対象の花の花弁または萼に光が照射されたときに取得される光の強度情報に基づき、計測処理を実施することができる。
また、光源は、半導体発光素子を含み、被検対象の花の花弁または萼に照射される光は、半導体発光素子から照射された光を含む。したがって、被検対象の花の花弁または萼に照射する光として、半導体発光素子からの光を用いることができる。
また、被検対象の花の花弁または萼に照射される光は、波長が連続した光を含み、計測装置はさらに、測定処理のための波長の光を透過する波長フィルタと、被検対象の花の花弁または萼に波長が連続した光が照射されたときに、当該花弁または萼からの光を、波長フィルタを介して受光する受光素子を備え、光強度取得部は、受光素子により受光された光の強度情報を取得する。したがって、被検対象の花の花弁または萼に照射する光として、波長が連続した光を用いることができる。
また、光源は波長が連続した光を照射する連続光源を含み、計測装置は、波長が連続した光を照射する連続光源と、連続光源により被検対象の花の花弁または萼に光が照射されたときに、当該花弁または萼からの光の強度を、波長毎に取得する分光器を含む。したがって、被検対象の花の花弁または萼に照射する光として、波長が連続した光を用いることができる。
また、計測装置は、当該計測装置とは別に外部装置を備え、光源または測定部は、外部装置に含まれる。したがって、計測装置は、外部装置から光の強度情報を取得することができる。
また、光源は、励起光源と、当該励起光源からの光の波長を変換する蛍光体とを含む。
また、被検対象の花の花弁または萼への照射光は、1100nm以上の波長を有し、光の強度情報は、1100nm以上の波長の光の吸光度を含む。したがって、光の強度情報として、1100nm以上の波長の光の吸光度を用いることができる。
また、分析モデルを格納するための記憶部は、書き換え可能である。
また、計測装置は、当該計測装置の外部から分析モデルを取得し、取得された分析モデルを記憶部に格納する。したがって、記憶部の分析モデルを、計測装置の外部から取得された分析モデルを用いて、変更することができる。
また、ネットワークシステムは、上記に述べた計測装置と、サーバ装置とを含む。計測装置は、さらに、端末通信インターフェイスを、備え、端末通信インターフェイスを介して計測処理の計測結果をサーバ装置へ送信し、サーバ装置から受信する変更データに基づいて記憶部に記憶された分析モデルを変更し、サーバ装置は、サーバ通信インターフェイスと、記憶部の分析モデルを変更または追加するための管理データを記憶するためのサーバメモリと、を備え、サーバ通信インターフェイスを介して計測装置から受信した計測結果に基づいて変更データを生成し、サーバ通信インターフェイスを介して当該変更データを計測装置へ送信する。
したがって、計測装置の分析データは、サーバ装置からの変更データにより変更されるが、この変更データは、計測装置から予め受信した過去の分析データに基づき生成されたものである。これにより、計測装置に格納される分析データを、過去の計測処理の結果を反映した内容に変更することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。