JP2016098298A - 精製エチレン高沸点残渣油の製造方法 - Google Patents

精製エチレン高沸点残渣油の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 エチレン製造設備から高沸点成分として回収される高沸点残渣油から、カーボンナノチューブや炭素繊維の原料として好適に使用できる鉄分の含有量が低い精製されたエチレン高沸点残渣油を製造する方法の提供。【解決手段】 エチレン製造設備から回収された、鉄分を含む高沸点残渣油を遠心分離処理して、鉄分含有量が10重量ppm以下に低減された精製エチレン高沸点残渣油を製造する。遠心分離処理はスクリュー型又はディスク型の遠心分離機を用いて5000〜10000Gで行うことが好ましい。【選択図】 なし

Description

本発明はエチレン製造設備から高沸点成分として回収される鉄分を含有するエチレン高沸点残渣油(以下「原料エチレン高沸点残渣油」又は「原料EHE(Ethylene Heavy End)」と略記することがある)中に含まれる、粒子状の鉄分の含有量を低減し、有価成分としてのエチレン高沸点残渣油(以下「EHE」と記すことがある)の応用範囲を広げることができる、精製エチレン高沸点残渣油(以下「精製EHE」と記すことがある)を製造する方法に関するものである。
本発明の対象となるエチレン高沸点残渣油とは、エチレン製造設備の分解炉から、ガソリンやエチレン、プロピレン等の炭素原子数10以下のオレフィン類等の有用成分を回収した後の残留高沸点成分である。
こうした高沸点成分は、主に分解炉出口の高温ガスを冷却した後、炭素原子数10以下の成分を塔頂から留出する「ガソリン塔」等の名称で呼ばれる蒸留・分離塔の塔底流出分として得られることが多いが、このような塔底流出分から更に蒸留塔や放散塔により低沸点成分を回収した塔底流出分として得られることもある。
エチレン高沸点残渣油(EHE)は、カーボンブラック等の原料として用いられることが多いが、例えば電子材料用のカーボンナノチューブや半導体基板に用いられる導電性炭素材や電池電極材の原料として、より価値の高い製品としての応用も検討されている。
しかしながら、そのような高付加価値製品に用いるためには、鉄分を十分低減する必要があるため、鉄分含有量が低い精製EHEの効率的な製造方法が望まれていた。
原料EHE中の鉄分は、通常10μm程度又はそれ以下の微細な粒子状の形態で存在していると考えられ、そのため通常の分離方法、例えば、磁選機(マグネチック・セパレータ)のような鉄分が有する磁性を利用する分離方法や、濾過法(ストレーナ、フィルター等)のような濾材の開口径に応じて粒子成分を分離する方法では効率的に分離・除去することが困難であった。
そこで、比重差を利用する分離方法、例えばサイクロンや遠心分離法が注目され、例えは、製鉄ダストのスラリーから製鉄ダストを特定の遠心力で分離する遠心分離方法が提案されている(特許文献1)。
この方法は「スラリー」を対象としていることから明らかなように、比較的高濃度(3〜18重量%等)の粒子成分を含有する分散液を対象として、鉄分を除去する方法であり、例えば1重量%以下のような低濃度の粒子状成分を分離・除去することは、固形物が少ないためケーキ濾過の効率が低くなったり、また固形分の排出性が不十分となったりしやすく、必ずしも有効な方法とは言えなかった。
特開2008−212809号公報
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものである。即ち、本発明の課題は、エチレン製造設備から高沸点成分として回収される高沸点残渣油(EHE)中に含まれる、鉄分の含有量を低減した精製エチレン高沸点残渣油の製造方法を提供すること
であり、特に、カーボンナノチューブや導電性炭素材や電池電極材の原料として好適に使用できる鉄分の含有量が低いEHEの製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、エチレン製造設備から回収された、鉄分を含む原料EHEを遠心分離処理することにより、鉄分含有量が10重量ppm以下と、著しく低減された精製エチレン高沸点残渣油が得られることを見出して、本発明を完成した。
即ち、本発明の要旨は、以下の[1]〜[7]に存する。
[1] エチレン製造設備から回収された、鉄分を含む高沸点残渣油(原料EHE)を遠心分離処理する、鉄分含有量が10重量ppm以下に低減された精製エチレン高沸点残渣油の製造方法。
[2] 原料EHEの固形分濃度が10〜50000重量ppmで、固形分の粒径が1〜500μmである上記[1]に記載の精製エチレン高沸点残渣油の製造方法。
[3] 原料EHE中の鉄分の60重量%以上が除去される上記[1]又は[2]に記載の精製エチレン高沸点残渣油の製造方法。
[4] 遠心分離処理を5000〜10000Gで行う上記[1]〜[3]のいずれかに記載の精製エチレン高沸点残渣油の製造方法。
[5] 遠心分離処理をスクリュー型遠心分離機又はディスク型遠心分離機を用いて行う上記[1]〜[4]のいずれかに記載の精製エチレン高沸点残渣油の製造方法。
[6] 遠心分離処理に先立って、目開き100〜300μmの濾過装置を用いて原料EHEから粗粒を除去する上記[1]〜[5]のいずれかに記載の精製エチレン高沸点残渣油の製造方法。
[7] 濾過装置に供給される原料EHEの粘度が10〜150mPa・sである上記[1]〜[6]のいずれかに記載の精製エチレン高沸点残渣油の製造方法。
なお、本明細書において、数値範囲を「x〜y」のように表記する場合、その上限値(y)及び下限値(x)は、当該数値範囲に含まれる、即ち「x以上、y以下」であることを示すものとする。
本発明方法を用いることにより、鉄分含有量が低減された高純度のEHEが効率的に得られる工業的に有利な製造方法が提供される。
原料EHEの固形分の加重粒径分布を示すグラフである。 精製EHEの固形分の加重粒径分布を示すグラフである。 原料EHE中に含まれる固形分中の鉄分のみの粒子径分布を示すグラフである。
1.高沸点残渣油(原料EHE)
工業的なエチレン製造設備としては、原料ナフサを熱分解炉(クラッカー)で分解して精製した炭素数が低減された炭化水素混合物を、複数の蒸留塔その他の分離設備を経て、その沸点(範囲)毎に所望の成分を分離する設備が一般的である。
このようなエチレン製造設備において、クラッカーの出口ガスを最初に冷却して沸点が約250℃以下、好ましくは200℃以下の成分を塔頂から回収する分離塔(ガソリン塔)の塔底液から更に低沸点成分を回収した後の高沸点残渣油が本発明において用いられる原料EHE(Ethylene Heavy End)となる。また、上記ガソリン塔において、その中〜上段から、例えば炭素数9〜12程度の、いわゆる「中沸点成分」の抜き出しも行っている
場合は、その抜き出し後の残渣分を上記高沸点残渣液と合わせたものも、本願の原料EHEとして用いられる。
このEHE中には、クラッカーから取り出される高沸点成分が集約されるため、クラッカーの出口ガスに同伴して排出される鉄分が含まれている。このような鉄分は、原料ナフサに由来するものや、熱分解炉で混入するものなどがあり、EHE中には、一般に鉄分が10〜100重量ppm程度含まれている。また、その粒径は通常1〜500μm程度である。
EHEは各種の炭素源として利用されているが、例えば半導体用途向けのカーボンナノチューブや半導体基板に用いられる導電性炭素材、あるいは電池電極材の原料等に用いるためには、EHEに含まれる鉄分を10重量ppm以下のように低減する必要がある。
2.原料EHEからの鉄分の除去
EHE中の鉄分は、有機質を除去した上で分析した結果では1〜10μm程度の粒子を形成していると思われる。
このような微細粒子として存在する鉄分を除去するための汎用的な方法は「背景技術」において述べた通りであるが、このような方法について本発明者らが予備的に検討したところでは、磁選機(マグネチック・セパレータ)では、EHEの性状(粘度、鉄分濃度)に起因すると思われる理由で十分な分離効果を得ることができず、また濾過(ストレーナ、フィルター等)による方法では、EHEの粘度が高い上に、鉄分の粒子径が小さいためか、やはり望ましい効果を得ることができなかった。
そこで、本発明者らは比重差による鉄分の除去を試みたところ、原料EHEを遠心分離処理することにより、鉄分含有量が10重量ppm以下の精製されたエチレン高沸点残渣油を安定して得ることができることを見出した。
3.遠心分離法による鉄分除去
遠心分離法は周知の通り、分散質と分散媒との密度差を用いて両者を分離する方法であり、これに用いる装置として種々の遠心分離機が知られている。本発明においては、中でもスクリュー型遠心分離機又はディスク型遠心分離機を用いることが好ましい。
このような遠心分離機を用いることにより、粒径が極めて小さい鉄分を効率的に除去して、鉄分含有量が10重量ppm以下の精製エチレン高沸点残渣油(精製EHE)の製造方法が提供される。
特に、本発明者による検討に基づけば、遠心分離法において、以下のような条件を用いるとより好ましい結果を得ることができることが判った。
(1)原料EHEの固形分濃度として10〜50000重量ppmのものを用いる。
(2)原料EHEの固形分の粒径が1〜500μmのものを用いる。
(3)遠心分離処理に先立って、原料EHEを目開き100〜300μmの濾過装置を用いて処理する。
(4)濾過装置に供給される原料EHEの粘度を10〜150mPa・sとする。
(5)遠心分離処理を5000〜10000Gで行う。(Gは加速度を意味する。1.0G=9.8m/s
(6)遠心分離処理をスクリュー型遠心分離機又はディスク型遠心分離機を用いて行う。
上記(1)〜(6)の方法を組み合わせて用いることで、原料EHE中の鉄分の60重量%以上が除去された精製エチレン高沸点残渣油を製造することが可能となった。
以下、上記の条件について更に詳細に説明する。
4.鉄分の除去のための条件
前述の通り、分析によると鉄分の粒子径は10μm程度以下と考えられる。このような
微細な粒子を遠心分離法で分離することは一般には極めて困難である。
本発明者らは、原料として用いるEHEの性状と遠心分離法の操作条件とを総合的に検討して、前述のような条件を特定することにより、原料EHE中に含まれる鉄分を効率的に除去することが可能であることを見出したものである。
以下、その条件等について説明する。
(1)原料EHEの性状
原料EHEの固形分濃度は10〜50000重量ppmであることが好ましい。
より好ましい固形分濃度は100〜30000重量ppm、さらに好ましくは200〜5000重量ppmである。
この濃度が10重量ppm以下の場合は、鉄分含有量も十分低いものと考えられるので、あえて鉄分を除去するまでもないと考えられる。通常得られる原料EHE中の鉄分は50重量ppm以上、多くは200重量ppm以上と思われる。
固形分濃度の上限は特に制限されないが、例えば50000重量ppm以下であることが好ましい。固形分濃度が50000重量ppmを超えて高いような原料EHEは、粘度が著しく高くなり、移送するのに時間を要したり、また移送設備として特殊な装置を用いる必要があったりするため好ましくない。また、このような高い固形分濃度では固形分が配管内で滞留・付着して、配管を閉塞させる恐れも大きくなり、やはり好ましくない。
原料EHE中の固形分濃度は、定常運転時にはあまり大きく変動しないが、運転レートの変更やライン切替等によって予想外に変動することがあるので、随時濃度を監視して運転することが好ましい。なお、上記範囲を超過しそうな場合は、例えば処理済みのEHE(精製EHE)を用いて希釈する等によって調整することが好ましい。
なお上記原料EHE中の固形物濃度は所定の目開きのフィルターを用いる濾過法やレーザー測定法などにより測定できる。
また、原料EHE中の固形分の平均粒径は1〜500μmであることが好ましい。1μm未満のような極めて微細な粒子は、本発明の方法を用いても効率的な除去は困難であり、別の分離方法を用いる必要があると考えられる。
また、500μmを超えるような粒子径の固形分であれば、あえて本発明の方法を用いるまでもなく、例えば沈降法や一般的な濾過法などのような、より簡便な固液分離方法により分離することが可能である。
なお、この固形分の平均粒径は例えばレーザー回折・散乱式粒度分布測定法によって測定することができる。
(2)原料EHEの前処理
本発明においては、鉄分を除去するために遠心分離処理を行うが、この遠心分離処理の前に、原料EHEの粘度を10〜150mPa・sとし、かつ目開き100〜300μmの濾過装置を用いて前処理しておくことが好ましい。このような前処理を行うことにより、より効率的に鉄分を除去することが可能となる。
粘度を上記範囲とすることで、遠心分離処理の際に滞留や装置への付着を抑制しつつ、効率的に鉄分を分離・除去することが可能となる。
粘度が150mPa・sを超えて高い場合は、処理済みのEHEの一部を用いて希釈したり、粘度の低い原料EHEと混合したりして使用すればよい。
なお、粘度が10mPa・s未満のように低い原料EHEはあまり入手できず、また、このような原料EHEは通常固形分濃度も鉄分濃度も低いので、本発明方法を用いる必要性もあまり高くないものと思われる。
上記の粘度範囲の原料EHEは、上記の通り本発明の遠心分離法により処理する前に、目開き100〜300μmの濾過装置を用いて粗大な粒子を除去しておくことが好ましい。ここで用いる濾過装置は、特に限定されないが、汎用的な濾過器、いわゆるストレーナ等を用いればよい。濾材としては通常はメッシュ(金網)が用いられるが、高圧ラインに設置する場合等は焼結金属(シンタードメタル)等の濾材を用いてもよい。
このような濾過装置を用いて予め粗大な粒子を除去することにより、本発明の遠心分離処理に用いられる遠心分離機の目詰まりを防止でき、装置への負担を軽減できて、長期間安定して運転を継続することが可能となる。
(3)遠心分離処理
本発明方法において、原料EHEから鉄分を遠心分離して除去するために用いる装置としては特に限定されないが、分離効率や保守の簡便性などを考慮すると、スクリュー型遠心分離機又はディスク型遠心分離機が好ましい。
これらの遠心分離機は、本発明において原料EHEから除去すべき鉄分の粒径範囲での分離・除去の効率が例えば60%以上のように優れており、また分離した粗大粒子の除去・排出も比較的容易であるため好ましい。
特に遠心分離機としてディスク型遠心分離機を用いると、分離した高濃度の鉄分を含むスラリーの排出が簡便で、かつ本発明が対象とする微細粒径の固形分の除去効率が高いことから、特に好ましい。
遠心分離機の運転条件としては、5000〜10000G、好ましくは7000〜9500Gとすることが、安定な運転を維持しつつ分離効率を高くできるので好ましい。
遠心分離処理を行う被処理液は、前述の通りの前処理をされたものを用いることが好ましい。
また、本発明方法の対象となる原料EHE中の鉄分の平均粒子径は前述の通り1〜10μm程度であるが、本発明方法を用いることにより、通常10μm以下の粒子状成分を分離することが困難な条件での遠心分離処理においても、鉄分の除去効率として60重量%以上のような優れた効率を得ることができる。
これは、以下のような理由ではないかと推定される。
即ち、原料EHE中の含鉄微粒子は、粒径10μm以下の鉄分粒子そのものではなく、EHE中の炭素質や有機成分の粒子と相互作用することで、これらに鉄分粒子が付着した、10〜30μm程度の(会合)粒子のような状態で存在しているものと推定される。
このような粒子は、いわゆる「濾過」では目詰まりを引き起こし、「磁選法」では粒子が大きいために移動性(易動度)が低くなり、いずれも分離が困難になりやすいものが、本発明方法で好ましく用いられる遠心分離法においては、むしろ鉄分を含む粒子の見掛け重量が増加する方向となるために、本来であれば分離困難であるはずの粒子径の鉄分まで分離することができるようになっているものではないかと思われる。
即ち、本発明方法により、通常の方法では分離できないと予想されるような含鉄粒子が、効率的に分離できることとなったものと考えられる。
5.本発明方法を適用した工業的プロセスの一例
汎用のナフサ熱分解法によるエチレン・プロピレン等の低級オレフィン製造設備に、本発明方法に基づく遠心分離機を組み込むことにより、この製造設備から副生する原料EHEを処理して、高品位の精製EHEを製造することが可能となる。
従来の設備では、ナフサ熱分解炉(クラッカー)から回収される重質油成分と、ナフサクラッカーのガス状成分からガソリン塔で軽沸分を回収された重質油分とから、更に低沸
点成分を回収して高沸点残渣油(EHE)が得られ、EHEタンクにまとめて保管されて燃料その他の炭素源として使用されていた。
このEHEをタンクの手前に、本発明方法の遠心分離処理装置を設けることにより、精製されたEHEを得ることができ、このような精製EHEは、前述のように鉄分含有量が低減されているため、半導体用途向けのカーボンナノチューブや半導体基板に用いられる導電性炭素材、あるいは電池電極材の原料等として好適に使用でき、より高品位の製品として有効に活用することが可能となる。
なお、遠心分離処理装置から排出される鉄分を含む濃縮スラリーは、他の中〜高沸点の副生油と合わせて、従来同様に汎用的な炭素源として使用することができる。
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例によって限定されるものではない。
1.原料及び装置
(1)原料EHE
原料EHEとしては、三菱化学株式会社鹿島事業所のエチレン製造設備から採取したEHEを用いた。用いたEHEの物性の概要を表1に、またその固形分の粒径分布を図1に、それぞれ示す。
Figure 2016098298
(2)遠心分離装置
遠心分離装置として、遠心力が5000〜10000Gの範囲で調節可能なディスク型遠心分離機(三菱化工機(株)製、SJ−150G)を使用した。
2.分析・評価方法
(1)原料EHE及び精製EHE
(1−1)固形分濃度、粒径分布
原料EHE中の固形分濃度は、メンブレンフィルター(孔径0.2μm)を用いて、予め70℃に加熱した所定量のEHEを減圧濾過した後、トルエンを用いてフィルターを洗浄して、残存するEHEを洗い流す。フィルターを100℃×1時間減圧乾燥して、濾過前後の重量より、固形分の重量を求める。これと、用いた原料EHEの量(高粘度であるため、濾過用にEHEを供給する前と後のサンプル容器の重量差から原料EHEの使用量を逆算する)とから、原料EHE中の固形分濃度を重量%として求める。
(1−2)粒径分布
レーザー回折・散乱式粒径分布測定装置(日機装、MT3300EX−II)を用いて、水又はトルエンを分散媒として使用し、試料を分散媒に加えて5分間超音波で分散処理した上で測定を行い、溶媒屈折率1.33(水)、1.50(トルエン)、粒子屈折率1.
81として、体積ベースで粒径を算出した。
なお、鉄分の粒子径は、上記(1−1)と同様にメンブレンフィルター上に固形分を収集し、これをメンブレンフィルターごと600℃の電気炉中で、空気流通下3時間処理して有機成分を除去したものを、粒径測定用の試料として粒径を求めた。
(2)鉄分濃度
試料約10gを精秤した後、白金ルツボ中に移し、アセトン10mlを加えて撹拌する。このルツボを電熱器上にセットし、着火棒で点火してアセトンを燃焼させた上、更に電熱器で加熱して炎が消えるまで燃焼させる。
この白金ルツボを775±10℃に設定された電気炉に移し、4時間加熱・灰化させた後、デシケータ中で放冷する。これに塩酸2ml、水5mlを加えた後、内液が1ml程度になるまでホットプレート上で加熱する。その後放冷し、全量を25mlメスフラスコに移し、ルツボの洗液も加えた上で定容し、試料液とした。(JIS K0101−1998に準拠)
この試料液を、(株)島津製作所製、誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP−8100)を用いて、鉄の発光波長である259.940nmにおける発光強度から鉄分濃度を測定した。
3.実施例及び比較例
<実施例1、2>
原料EHEを目開き150μmの濾過装置を用いて濾過した上で、ディスク型遠心分離機(三菱化工機(株)製)を用いて、試料流量4〜5トン/hr、温度75℃、供給圧力0.02〜0.05MPa、装置の回転数5800rpm(8500G)の条件で遠心分離処理を実施した。
実施時のEHEの物性および鉄分除去率を表2および表3に示す。
Figure 2016098298
Figure 2016098298
図1、2に実施例1における、それぞれ原料EHE及び精製EHEの固形分の加重粒径分布を示す。なお、いずれも横軸は粒径(μm)、縦軸は粒径分布に固形分濃度を乗じた値を示している。
また図3には、前述の方法で原料EHE中に含まれる固形分から有機性成分を燃焼除去して得られた鉄分のみの粒径分布を示す。
図1及び図2を対比すれば明らかな通り、本発明方法の遠心分離処理によって、粒径10μm以上の粒子がほぼ完全に除去されていることが判る。
また図3から、原料EHE中において、鉄分単独の粒子はほとんどが10μm以下の粒子であることが判る。
<実施例3>
上記の実施例1の条件で、遠心分離装置を約2ヶ月半連続して運転したところ、表4に示す通り、鉄分の除去率は60〜95%と安定して高い成績を示していた。(鉄分除去率の数値が振れるのは、供給される原料EHE(原液)中の鉄分がエチレン製造設備の運転条件等により増減することが原因と思われる。)
Figure 2016098298
<比較例1〜3>
下記の表5の原料EHEを用いて比較例1〜3を実施した
Figure 2016098298
上記表5に示す原料EHEを用いて、350メッシュの金網(濾過面積約125cm)を用い、50℃に保温して加圧濾過を行った。
比較例1として、原料EHEをそのまま供給したところ、約50〜100mLの通液ですぐに目詰まりした。このため、比較例2、3では濾過助剤として珪藻土を原料EHEに対して0.2重量%添加して濾過を行い、所定量の原料EHEを濾過した際に得られた濾液中の鉄分濃度を測定した。
その結果は下記の表6に示す通りである。
Figure 2016098298
比較例に用いた原料EHEの鉄分が4.8ppmと低いためか、この方法でも鉄分除去は可能であったが、比較例の方法で運転を継続するためには濾過助剤を使い続ける必要があり、そのためのコストだけでなく、油分と鉄分とを吸着した膨大な量の濾過助剤の廃棄物処理が必要となり、環境面でも問題となる懸念があると思われ、必ずしも好ましい方法とは言えないと考えられる。
<比較例4>
金網に代えて、バッグフィルターを用いた濾過を行った。フィルターの材質はポリプロピレンであり、目開きは25μm、有効濾過面積は2.14cmである。
40℃に加熱したEHE(鉄分4.5重量ppm)を1回あたり10mLずつ注加し、減圧濾過(真空ポンプにより濾液側を減圧)した。10mLを濾過するのに要する時間が、最初の濾過所要時間(3.3秒)の10倍に達したところが実機での取り扱いを想定した事実上のフィルターの寿命として実験を行ったところ、15回目に濾過時間が50.1秒となった。
15回目までの濾液を合わせた鉄分含量は2.9重量ppmで、平均鉄分除去率は36%であった。
<比較例5>
バッグフィルターを目開き100μmのポリエステル製フィルターに変更したこと以外は、上記比較例4と同様にして減圧濾過を行った。最初の濾過時間は2.6秒であったが、45回目に濾過時間が26.3秒となり、フィルターの寿命と判断した。
45回目までの濾液の鉄分含量は4.2重量ppm、平均鉄分除去率は7%であった。
4.結果の評価
(1)上記実施例と比較例とを対比すれば明らかな通り、本願発明の構成を用いることにより、原料EHEから効率よく鉄分を含む固形分を除去することができるとともに、長期間継続して安定的に高い除去効率を維持することができる。
(2)また、粒径としては10μm以下のような微細な粒径がほとんどの含鉄粒子(図3)も、本願の方法を用いることで、他の固形分との相互作用があるのか、表2、3及び図1,2に示すように、極めて効率的に除去されている。
(3)連続運転においても、表4に見られる通り、安定して効率的に鉄分が除去できている。
上記の結果より、本発明方法の効果は明らかである。
本発明方法を用いることにより、原料EHE中の鉄分を低減することができるので、単なる炭素源として使用すること以外に、例えは、電子材料用のカーボンナノチューブや半導体基板に用いられる導電性炭素材、あるいは電池電極材などの原料として使用することが可能になり、より付加価値の高い製品を得ることができるので、その効果は極めて大きい。

Claims (7)

  1. エチレン製造設備から回収された、鉄分を含む高沸点残渣油(以下「原料EHE」と記す)を遠心分離処理することを特徴とする、鉄分含有量が10重量ppm以下に低減された精製エチレン高沸点残渣油の製造方法。
  2. 原料EHEの固形分濃度が10〜50000重量ppmで、固形分の粒径が1〜500μmであることを特徴とする請求項1に記載の精製エチレン高沸点残渣油の製造方法。
  3. 原料EHE中の鉄分の60重量%以上が除去されることを特徴とする請求項1又は2に記載の精製エチレン高沸点残渣油の製造方法。
  4. 遠心分離処理を5000〜10000Gで行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の精製エチレン高沸点残渣油の製造方法。
  5. 遠心分離処理をスクリュー型遠心分離機又はディスク型遠心分離機を用いて行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の精製エチレン高沸点残渣油の製造方法。
  6. 遠心分離処理に先立って、目開き100〜300μmの濾過装置を用いて原料EHEから粗粒を除去することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の精製エチレン高沸点残渣油の製造方法。
  7. 濾過装置に供給される原料EHEの粘度が10〜150mPa・sであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の精製エチレン高沸点残渣油の製造方法。
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