JP2016098298A - 精製エチレン高沸点残渣油の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
こうした高沸点成分は、主に分解炉出口の高温ガスを冷却した後、炭素原子数10以下の成分を塔頂から留出する「ガソリン塔」等の名称で呼ばれる蒸留・分離塔の塔底流出分として得られることが多いが、このような塔底流出分から更に蒸留塔や放散塔により低沸点成分を回収した塔底流出分として得られることもある。
しかしながら、そのような高付加価値製品に用いるためには、鉄分を十分低減する必要があるため、鉄分含有量が低い精製EHEの効率的な製造方法が望まれていた。
この方法は「スラリー」を対象としていることから明らかなように、比較的高濃度(3〜18重量%等)の粒子成分を含有する分散液を対象として、鉄分を除去する方法であり、例えば1重量%以下のような低濃度の粒子状成分を分離・除去することは、固形物が少ないためケーキ濾過の効率が低くなったり、また固形分の排出性が不十分となったりしやすく、必ずしも有効な方法とは言えなかった。
であり、特に、カーボンナノチューブや導電性炭素材や電池電極材の原料として好適に使用できる鉄分の含有量が低いEHEの製造方法を提供することである。
即ち、本発明の要旨は、以下の[1]〜[7]に存する。
[1] エチレン製造設備から回収された、鉄分を含む高沸点残渣油(原料EHE)を遠心分離処理する、鉄分含有量が10重量ppm以下に低減された精製エチレン高沸点残渣油の製造方法。
[2] 原料EHEの固形分濃度が10〜50000重量ppmで、固形分の粒径が1〜500μmである上記[1]に記載の精製エチレン高沸点残渣油の製造方法。
[3] 原料EHE中の鉄分の60重量%以上が除去される上記[1]又は[2]に記載の精製エチレン高沸点残渣油の製造方法。
[4] 遠心分離処理を5000〜10000Gで行う上記[1]〜[3]のいずれかに記載の精製エチレン高沸点残渣油の製造方法。
[5] 遠心分離処理をスクリュー型遠心分離機又はディスク型遠心分離機を用いて行う上記[1]〜[4]のいずれかに記載の精製エチレン高沸点残渣油の製造方法。
[6] 遠心分離処理に先立って、目開き100〜300μmの濾過装置を用いて原料EHEから粗粒を除去する上記[1]〜[5]のいずれかに記載の精製エチレン高沸点残渣油の製造方法。
[7] 濾過装置に供給される原料EHEの粘度が10〜150mPa・sである上記[1]〜[6]のいずれかに記載の精製エチレン高沸点残渣油の製造方法。
工業的なエチレン製造設備としては、原料ナフサを熱分解炉(クラッカー)で分解して精製した炭素数が低減された炭化水素混合物を、複数の蒸留塔その他の分離設備を経て、その沸点(範囲)毎に所望の成分を分離する設備が一般的である。
このようなエチレン製造設備において、クラッカーの出口ガスを最初に冷却して沸点が約250℃以下、好ましくは200℃以下の成分を塔頂から回収する分離塔(ガソリン塔)の塔底液から更に低沸点成分を回収した後の高沸点残渣油が本発明において用いられる原料EHE(Ethylene Heavy End)となる。また、上記ガソリン塔において、その中〜上段から、例えば炭素数9〜12程度の、いわゆる「中沸点成分」の抜き出しも行っている
場合は、その抜き出し後の残渣分を上記高沸点残渣液と合わせたものも、本願の原料EHEとして用いられる。
2.原料EHEからの鉄分の除去
EHE中の鉄分は、有機質を除去した上で分析した結果では1〜10μm程度の粒子を形成していると思われる。
3.遠心分離法による鉄分除去
遠心分離法は周知の通り、分散質と分散媒との密度差を用いて両者を分離する方法であり、これに用いる装置として種々の遠心分離機が知られている。本発明においては、中でもスクリュー型遠心分離機又はディスク型遠心分離機を用いることが好ましい。
特に、本発明者による検討に基づけば、遠心分離法において、以下のような条件を用いるとより好ましい結果を得ることができることが判った。
(1)原料EHEの固形分濃度として10〜50000重量ppmのものを用いる。
(2)原料EHEの固形分の粒径が1〜500μmのものを用いる。
(3)遠心分離処理に先立って、原料EHEを目開き100〜300μmの濾過装置を用いて処理する。
(4)濾過装置に供給される原料EHEの粘度を10〜150mPa・sとする。
(5)遠心分離処理を5000〜10000Gで行う。(Gは加速度を意味する。1.0G=9.8m/s2)
(6)遠心分離処理をスクリュー型遠心分離機又はディスク型遠心分離機を用いて行う。
以下、上記の条件について更に詳細に説明する。
4.鉄分の除去のための条件
前述の通り、分析によると鉄分の粒子径は10μm程度以下と考えられる。このような
微細な粒子を遠心分離法で分離することは一般には極めて困難である。
以下、その条件等について説明する。
(1)原料EHEの性状
原料EHEの固形分濃度は10〜50000重量ppmであることが好ましい。
この濃度が10重量ppm以下の場合は、鉄分含有量も十分低いものと考えられるので、あえて鉄分を除去するまでもないと考えられる。通常得られる原料EHE中の鉄分は50重量ppm以上、多くは200重量ppm以上と思われる。
なお上記原料EHE中の固形物濃度は所定の目開きのフィルターを用いる濾過法やレーザー測定法などにより測定できる。
また、500μmを超えるような粒子径の固形分であれば、あえて本発明の方法を用いるまでもなく、例えば沈降法や一般的な濾過法などのような、より簡便な固液分離方法により分離することが可能である。
(2)原料EHEの前処理
本発明においては、鉄分を除去するために遠心分離処理を行うが、この遠心分離処理の前に、原料EHEの粘度を10〜150mPa・sとし、かつ目開き100〜300μmの濾過装置を用いて前処理しておくことが好ましい。このような前処理を行うことにより、より効率的に鉄分を除去することが可能となる。
粘度が150mPa・sを超えて高い場合は、処理済みのEHEの一部を用いて希釈したり、粘度の低い原料EHEと混合したりして使用すればよい。
なお、粘度が10mPa・s未満のように低い原料EHEはあまり入手できず、また、このような原料EHEは通常固形分濃度も鉄分濃度も低いので、本発明方法を用いる必要性もあまり高くないものと思われる。
(3)遠心分離処理
本発明方法において、原料EHEから鉄分を遠心分離して除去するために用いる装置としては特に限定されないが、分離効率や保守の簡便性などを考慮すると、スクリュー型遠心分離機又はディスク型遠心分離機が好ましい。
特に遠心分離機としてディスク型遠心分離機を用いると、分離した高濃度の鉄分を含むスラリーの排出が簡便で、かつ本発明が対象とする微細粒径の固形分の除去効率が高いことから、特に好ましい。
遠心分離処理を行う被処理液は、前述の通りの前処理をされたものを用いることが好ましい。
また、本発明方法の対象となる原料EHE中の鉄分の平均粒子径は前述の通り1〜10μm程度であるが、本発明方法を用いることにより、通常10μm以下の粒子状成分を分離することが困難な条件での遠心分離処理においても、鉄分の除去効率として60重量%以上のような優れた効率を得ることができる。
即ち、原料EHE中の含鉄微粒子は、粒径10μm以下の鉄分粒子そのものではなく、EHE中の炭素質や有機成分の粒子と相互作用することで、これらに鉄分粒子が付着した、10〜30μm程度の(会合)粒子のような状態で存在しているものと推定される。
このような粒子は、いわゆる「濾過」では目詰まりを引き起こし、「磁選法」では粒子が大きいために移動性(易動度)が低くなり、いずれも分離が困難になりやすいものが、本発明方法で好ましく用いられる遠心分離法においては、むしろ鉄分を含む粒子の見掛け重量が増加する方向となるために、本来であれば分離困難であるはずの粒子径の鉄分まで分離することができるようになっているものではないかと思われる。
5.本発明方法を適用した工業的プロセスの一例
汎用のナフサ熱分解法によるエチレン・プロピレン等の低級オレフィン製造設備に、本発明方法に基づく遠心分離機を組み込むことにより、この製造設備から副生する原料EHEを処理して、高品位の精製EHEを製造することが可能となる。
点成分を回収して高沸点残渣油(EHE)が得られ、EHEタンクにまとめて保管されて燃料その他の炭素源として使用されていた。
このEHEをタンクの手前に、本発明方法の遠心分離処理装置を設けることにより、精製されたEHEを得ることができ、このような精製EHEは、前述のように鉄分含有量が低減されているため、半導体用途向けのカーボンナノチューブや半導体基板に用いられる導電性炭素材、あるいは電池電極材の原料等として好適に使用でき、より高品位の製品として有効に活用することが可能となる。
1.原料及び装置
(1)原料EHE
原料EHEとしては、三菱化学株式会社鹿島事業所のエチレン製造設備から採取したEHEを用いた。用いたEHEの物性の概要を表1に、またその固形分の粒径分布を図1に、それぞれ示す。
遠心分離装置として、遠心力が5000〜10000Gの範囲で調節可能なディスク型遠心分離機(三菱化工機(株)製、SJ−150G)を使用した。
2.分析・評価方法
(1)原料EHE及び精製EHE
(1−1)固形分濃度、粒径分布
原料EHE中の固形分濃度は、メンブレンフィルター(孔径0.2μm)を用いて、予め70℃に加熱した所定量のEHEを減圧濾過した後、トルエンを用いてフィルターを洗浄して、残存するEHEを洗い流す。フィルターを100℃×1時間減圧乾燥して、濾過前後の重量より、固形分の重量を求める。これと、用いた原料EHEの量(高粘度であるため、濾過用にEHEを供給する前と後のサンプル容器の重量差から原料EHEの使用量を逆算する)とから、原料EHE中の固形分濃度を重量%として求める。
レーザー回折・散乱式粒径分布測定装置(日機装、MT3300EX−II)を用いて、水又はトルエンを分散媒として使用し、試料を分散媒に加えて5分間超音波で分散処理した上で測定を行い、溶媒屈折率1.33(水)、1.50(トルエン)、粒子屈折率1.
81として、体積ベースで粒径を算出した。
(2)鉄分濃度
試料約10gを精秤した後、白金ルツボ中に移し、アセトン10mlを加えて撹拌する。このルツボを電熱器上にセットし、着火棒で点火してアセトンを燃焼させた上、更に電熱器で加熱して炎が消えるまで燃焼させる。
この試料液を、(株)島津製作所製、誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP−8100)を用いて、鉄の発光波長である259.940nmにおける発光強度から鉄分濃度を測定した。
<実施例1、2>
原料EHEを目開き150μmの濾過装置を用いて濾過した上で、ディスク型遠心分離機(三菱化工機(株)製)を用いて、試料流量4〜5トン/hr、温度75℃、供給圧力0.02〜0.05MPa、装置の回転数5800rpm(8500G)の条件で遠心分離処理を実施した。
また図3には、前述の方法で原料EHE中に含まれる固形分から有機性成分を燃焼除去して得られた鉄分のみの粒径分布を示す。
また図3から、原料EHE中において、鉄分単独の粒子はほとんどが10μm以下の粒子であることが判る。
<実施例3>
上記の実施例1の条件で、遠心分離装置を約2ヶ月半連続して運転したところ、表4に示す通り、鉄分の除去率は60〜95%と安定して高い成績を示していた。(鉄分除去率の数値が振れるのは、供給される原料EHE(原液)中の鉄分がエチレン製造設備の運転条件等により増減することが原因と思われる。)
下記の表5の原料EHEを用いて比較例1〜3を実施した
比較例1として、原料EHEをそのまま供給したところ、約50〜100mLの通液ですぐに目詰まりした。このため、比較例2、3では濾過助剤として珪藻土を原料EHEに対して0.2重量%添加して濾過を行い、所定量の原料EHEを濾過した際に得られた濾液中の鉄分濃度を測定した。
金網に代えて、バッグフィルターを用いた濾過を行った。フィルターの材質はポリプロピレンであり、目開きは25μm、有効濾過面積は2.14cm2である。
40℃に加熱したEHE(鉄分4.5重量ppm)を1回あたり10mLずつ注加し、減圧濾過(真空ポンプにより濾液側を減圧)した。10mLを濾過するのに要する時間が、最初の濾過所要時間(3.3秒)の10倍に達したところが実機での取り扱いを想定した事実上のフィルターの寿命として実験を行ったところ、15回目に濾過時間が50.1秒となった。
<比較例5>
バッグフィルターを目開き100μmのポリエステル製フィルターに変更したこと以外は、上記比較例4と同様にして減圧濾過を行った。最初の濾過時間は2.6秒であったが、45回目に濾過時間が26.3秒となり、フィルターの寿命と判断した。
4.結果の評価
(1)上記実施例と比較例とを対比すれば明らかな通り、本願発明の構成を用いることにより、原料EHEから効率よく鉄分を含む固形分を除去することができるとともに、長期間継続して安定的に高い除去効率を維持することができる。
(2)また、粒径としては10μm以下のような微細な粒径がほとんどの含鉄粒子(図3)も、本願の方法を用いることで、他の固形分との相互作用があるのか、表2、3及び図1,2に示すように、極めて効率的に除去されている。
(3)連続運転においても、表4に見られる通り、安定して効率的に鉄分が除去できている。
Claims (7)
- エチレン製造設備から回収された、鉄分を含む高沸点残渣油(以下「原料EHE」と記す)を遠心分離処理することを特徴とする、鉄分含有量が10重量ppm以下に低減された精製エチレン高沸点残渣油の製造方法。
- 原料EHEの固形分濃度が10〜50000重量ppmで、固形分の粒径が1〜500μmであることを特徴とする請求項1に記載の精製エチレン高沸点残渣油の製造方法。
- 原料EHE中の鉄分の60重量%以上が除去されることを特徴とする請求項1又は2に記載の精製エチレン高沸点残渣油の製造方法。
- 遠心分離処理を5000〜10000Gで行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の精製エチレン高沸点残渣油の製造方法。
- 遠心分離処理をスクリュー型遠心分離機又はディスク型遠心分離機を用いて行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の精製エチレン高沸点残渣油の製造方法。
- 遠心分離処理に先立って、目開き100〜300μmの濾過装置を用いて原料EHEから粗粒を除去することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の精製エチレン高沸点残渣油の製造方法。
- 濾過装置に供給される原料EHEの粘度が10〜150mPa・sであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の精製エチレン高沸点残渣油の製造方法。
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