JP2016097881A - バーハンドル車両用ブレーキ制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】異常の判定を精度良く行うことができるバーハンドル車両用ブレーキ制御装置を提供する。
【解決手段】制御部100(バーハンドル車両用ブレーキ制御装置)は、前輪の車輪速度を取得する前輪速取得手段111と、後輪の車輪速度を取得する後輪速取得手段112と、前輪のロックを抑制するアンチロックブレーキ(ABS)制御を実行する前輪ABS制御手段131と、前輪ABS制御手段131がABS制御を実行しているときに、前輪の車輪速度に基づき前輪がロック傾向にあると判定され、かつ、後輪の車輪速度に基づき後輪がロック傾向にあると判定されている状態が第1の時間継続した場合、前輪のブレーキ系統に異常があると判定する第1異常判定を実行する異常判定手段160とを備える。
【選択図】図2

Description

本発明は、車輪のロックを抑制するアンチロックブレーキ制御を実行するバーハンドル車両用ブレーキ制御装置に関する。
車両用ブレーキ制御装置として、例えば、特許文献1には、車輪速度センサの信号に基づいて算出された車体速度が所定車体速度より大きく、かつ、車輪速度が最低車輪速度より小さい状態が、ある時間の間継続された場合に、車輪速度センサが異常であると判定するものが開示されている。
特開2006−327474号公報
ところで、自動二輪車などのバーハンドル車両においては、前輪および後輪のうち一方の車輪(例えば、前輪)に対してのみアンチロックブレーキ制御が実行されるように構成されたものがある。このような構成では、前後両方の車輪に対してブレーキ操作がなされたとき、他方の車輪(例えば、後輪)はロックする可能性があるが、一方の車輪(前輪)はアンチロックブレーキ制御が実行されることでロックが抑制されることになる。しかし、前輪のブレーキ系統に異常が生じた状況において、前後両方の車輪に対してブレーキ操作がなされて後輪がロックした場合に、前輪がロックしたり、前輪の車輪速度センサが故障していたりすると、車体速度の推定精度が低下するため、従来技術のような手法では、異常の判定の精度が低下してしまうおそれがある。
そこで、本発明は、異常の判定を精度良く行うことができるバーハンドル車両用ブレーキ制御装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明のバーハンドル車両用ブレーキ制御装置は、前輪および後輪のうち一方の車輪の車輪速度を取得する第1車輪速度取得手段と、前輪および後輪のうち他方の車輪の車輪速度を取得する第2車輪速度取得手段と、前記一方の車輪のロックを抑制するアンチロックブレーキ制御を実行する第1アンチロックブレーキ制御手段と、前記第1アンチロックブレーキ制御手段がアンチロックブレーキ制御を実行しているときに、前記一方の車輪の車輪速度に基づき前記一方の車輪がロック傾向にあると判定され、かつ、前記他方の車輪の車輪速度に基づき前記他方の車輪がロック傾向にあると判定されている状態が第1の時間継続した場合、前記一方の車輪のブレーキ系統に異常があると判定する第1異常判定を実行する異常判定手段と、を備えることを特徴とする。
このような構成によれば、一方の車輪のロックを抑制するためのアンチロックブレーキ制御を実行しているにも関わらず、一方の車輪と他方の車輪の両方が継続してロック傾向にあるということで、一方の車輪のブレーキ系統に異常があると判定することができる。一方の車輪と他方の車輪の両方がロック傾向になると、従来技術のように車輪速度に基づいて車体速度を推定する場合、車体速度の推定精度が低下するおそれがあるが、第1異常判定は、車体速度に依存しないため、異常の判定を精度良く行うことができる。
前記した装置は、前記一方の車輪の車輪速度が第1閾値以下である場合に前記一方の車輪がロック傾向にあると判定し、前記他方の車輪の車輪速度が第2閾値以下である場合に前記他方の車輪がロック傾向にあると判定する構成とすることができる。
このような構成によれば、一方の車輪と他方の車輪とで異なる閾値を用いることができ、また、車種に応じた好適な閾値を設定することができるので、判定精度を向上させることができる。
前記した装置は、車体速度を取得する車体速度取得手段を備え、前記異常判定手段は、前記車体速度が所定速度以上であり、かつ、前記一方の車輪の車輪速度に基づき前記一方の車輪がロック傾向にあると判定されている状態が第2の時間継続した場合、前記一方の車輪のブレーキ系統に異常があると判定する第2異常判定を実行する構成とすることができる。
このような構成によれば、例えば、一方の車輪に対してのみブレーキ操作された場合などにおいて、一方の車輪が継続してロック傾向にあるときは、一方の車輪のブレーキ系統に異常があると判定することができる。
前記した装置は、前記他方の車輪のロックを抑制するアンチロックブレーキ制御を実行する第2アンチロックブレーキ制御手段と、前記第1アンチロックブレーキ制御手段および前記第2アンチロックブレーキ制御手段の両方が作動する第1モードと、前記第1アンチロックブレーキ制御手段だけが作動する第2モードとを切り替える切替手段と、を備え、前記異常判定手段は、前記第1モードの実行中に、前記第2異常判定のみを実行するとともに、前記第2モードの実行中に、前記第1異常判定および前記第2異常判定を実行する構成とすることができる。
このような構成によれば、路面状況などに応じて、前後両方の車輪に対してアンチロックブレーキ制御が可能となるモードと、一方の車輪に対してだけアンチロックブレーキ制御が可能となるモードとを切り替えることができる。また、第2モードのときには、例えば、前後両方の車輪に対してブレーキ操作がなされて一方の車輪に対してアンチロックブレーキ制御が実行されているときに、前後両方の車輪がロックする可能性があるが、この場合は、第1異常判定によって一方の車輪のブレーキ系統に異常があると精度良く判定することができる。
本発明によれば、異常の判定を精度良く行うことができる。
実施形態に係るバーハンドル車両用ブレーキ制御装置を備えたバーハンドル車両の構成を示す図である。 制御部の構成を示すブロック図である。 制御部による処理を示すフローチャートである。 第1の異常の判定処理を示すフローチャートである。 第2の異常の判定処理を示すフローチャートである。 両輪ABSモードの実行中において前輪と後輪の両方のブレーキが操作された場合の異常の判定を説明するタイムチャートである。 片輪ABSモードの実行中において前輪のブレーキだけが操作された場合の異常の判定を説明するタイムチャートである。 片輪ABSモードの実行中において前輪と後輪の両方のブレーキが操作された場合の異常の判定を説明するタイムチャートである。
以下、実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るバーハンドル車両の一例としての自動二輪車は、前輪WFのブレーキ系統BFと、後輪WRのブレーキ系統BRと、バーハンドル車両用ブレーキ制御装置の一例としての制御部100とを備えている。なお、本実施形態においては、前輪WFが「前輪および後輪のうち一方の車輪」に相当し、後輪WRが「前輪および後輪のうち他方の車輪」に相当する。
ブレーキ系統BFは、マスタシリンダMFと、液圧ユニット10(10F)と、車輪ブレーキ20と、マスタシリンダMFと液圧ユニット10の入口ポート10aを繋ぐ配管30と、液圧ユニット10の出口ポート10bと車輪ブレーキ20を繋ぐ配管40と、前輪WFの車輪速度(前輪速)WS1を検出する前輪速センサ51とを主に有して構成されている。また、ブレーキ系統BRは、ブレーキ系統BFと同様に、マスタシリンダMRと、液圧ユニット10(10R)と、車輪ブレーキ20と、マスタシリンダMRと液圧ユニット10を繋ぐ配管30と、液圧ユニット10と車輪ブレーキ20を繋ぐ配管40と、後輪WRの車輪速度(後輪速)WS2を検出する後輪速センサ52とを主に有して構成されている。
マスタシリンダMFは、運転者が右手で操作するブレーキレバーLFの操作量に応じた液圧を出力する装置であり、マスタシリンダMRは、運転者が左手で操作するブレーキレバーLRの操作量に応じた液圧を出力する装置である。
車輪ブレーキ20は、それぞれ、ブレーキロータ21と、図示しないブレーキパッドと、マスタシリンダMF,MRから出力された液圧によりブレーキパッドをブレーキロータ21に押し当ててブレーキ力(制動力)を発生するホイールシリンダ23とを主に備えている。
液圧ユニット10(10F,10R)は、入口弁1、チェック弁1a、出口弁2、リザーバ3、ポンプ4、吸入弁4a、吐出弁4b、オリフィス5a、ダンパ5b、モータ6を主に備え、通常時は入口ポート10aから出口ポート10bまでが連通した油路となっていることで、マスタシリンダMF,MRから出力された液圧が車輪ブレーキ20に伝達されるようになっている。なお、液圧ユニット10Rは、液圧ユニット10Fと同様の構成であるので、内部構造の図示は省略している。
入口弁1は、マスタシリンダMF,MRと車輪ブレーキ20との間に設けられた常開型の電磁弁である。入口弁1は、通常時に開いていることで、マスタシリンダMF,MRから車輪ブレーキ20へ液圧が伝達するのを許容する。また、入口弁1は、車輪WF,WRがロックしそうになったときに制御部100により閉塞されることで、マスタシリンダMF,MRから車輪ブレーキ20へ液圧が伝達するのを遮断する。
出口弁2は、車輪ブレーキ20とリザーバ3との間に設けられた常閉型の電磁弁である。出口弁2は、通常時に閉塞されているが、車輪WF,WRがロックしそうになったときに制御部100により開放されることで、車輪ブレーキ20に加わる液圧をリザーバ3に逃がす。
チェック弁1aは、車輪ブレーキ20側からマスタシリンダMF,MR側へのブレーキ液の流入のみを許容する弁であり、入口弁1に並列に接続されている。チェック弁1aは、マスタシリンダMF,MRからの液圧の入力が解除された場合に、入口弁1を閉じていても、車輪ブレーキ20側からマスタシリンダMF,MR側へのブレーキ液の流れを許容する。
リザーバ3は、出口弁2が開放されることによって逃がされるブレーキ液を一時的に貯溜する。ポンプ4は、リザーバ3とマスタシリンダMF,MRとの間に設けられ、モータ6の回転駆動によって駆動することでリザーバ3に貯溜されているブレーキ液を吸入してマスタシリンダMF,MRに戻す。オリフィス5aおよびダンパ5bは、液圧の変動を吸収する。
液圧ユニット10は、制御部100により入口弁1と出口弁2の開閉状態が制御されることで、制動力、具体的には、ホイールシリンダ23の液圧を調整する。例えば、入口弁1が開、出口弁2が閉となる通常状態では、ブレーキレバーLF,LRを操作していれば、マスタシリンダMF,MRの液圧がそのままホイールシリンダ23に伝達されて制動力が増加する増圧状態となる。また、入口弁1が閉、出口弁2が開となる状態では、ホイールシリンダ23からリザーバ3側へブレーキ液が流出して制動力が減少する減圧状態となる。さらに、入口弁1と出口弁2が共に閉となる状態では、ホイールシリンダ23の液圧が保持されて制動力が保持される保持状態となる。
制御部100は、主に、前輪WFおよび後輪WRのブレーキ系統BF,BRに設けられた液圧ユニット10を制御することで、車輪WF,WRのロックを抑制するアンチロックブレーキ(以下、「ABS」という。)制御を実行する装置である。制御部100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、入出力回路などを備えて構成されており、各センサ51,52からの入力や、ROMに記憶されたプログラム、データなどに基づいて各種演算処理を行うことによって制御を実行する。
図2に示すように、制御部100は、第1車輪速度取得手段の一例としての前輪速取得手段111と、第2車輪速度取得手段の一例としての後輪速取得手段112と、車体速度取得手段120と、第1アンチロックブレーキ制御手段の一例としての前輪ABS制御手段131と、第2アンチロックブレーキ制御手段の一例としての後輪ABS制御手段132と、切替手段140と、前輪ロック判定手段151と、後輪ロック判定手段152と、異常判定手段160と、記憶手段190とを主に備えている。
前輪速取得手段111は、前輪速センサ51から、前輪速WS1の情報を取得する手段である。前輪速取得手段111は、前輪速WS1の情報を、車体速度取得手段120、前輪ABS制御手段131および前輪ロック判定手段151に出力する。
後輪速取得手段112は、後輪速センサ52から、後輪速WS2の情報を取得する手段である。後輪速取得手段112は、後輪速WS2の情報を、車体速度取得手段120、後輪ABS制御手段132および後輪ロック判定手段152に出力する。
車体速度取得手段120は、車輪速度WS1,WS2の情報に基づいて車体速度Vを算出して取得する手段である。具体的に、本実施形態では、車体速度取得手段120は、公知の手法により、前輪速WS1に基づいて車体速度V1を算出するとともに、後輪速WS2に基づいて車体速度V2を算出する。そして、車体速度V1,V2のうち、大きい方を車体速度Vに設定する。車体速度取得手段120は、車体速度Vの情報を、前輪ABS制御手段131、後輪ABS制御手段132および異常判定手段160に出力する。
前輪ABS制御手段131は、前輪WFのロックを抑制するABS制御を実行する手段である。一例として、前輪ABS制御手段131は、前輪WFの加速度が0以下となり、かつ、車体速度Vと車輪速度WS1の差(スリップ量)を車体速度Vで割ったスリップ率が閾値よりも大きくなった場合、液圧ユニット10Fに制動力の減少(減圧)の指示を出力して入口弁1を閉じ、出口弁2を開く。また、減圧後、前輪WFの加速度が0よりも大きくなった場合、液圧ユニット10Fに制動力の保持の指示を出力して入口弁1と出口弁2を共に閉じる。さらに、保持後、前輪WFの加速度が0以下となり、かつ、スリップ率が閾値以下となった場合、液圧ユニット10Fに制動力の増加(増圧)の指示を出力して入口弁1を開き、出口弁2を閉じる。前輪ABS制御手段131は、ABS制御を開始したとき、前輪ABSフラグFFを0(非実行中)から1(実行中)に変更して、その旨の情報を異常判定手段160に出力する。
また、前輪ABS制御手段131は、異常判定手段160が後述するように前輪WFのブレーキ系統BFに異常があると判定した場合、暫定制御を実行する。具体的に、前輪ABS制御手段131は、暫定制御において、予め設定された第3の時間T3の間、液圧ユニット10Fに保持の指示と増圧の指示を交互に出力する。
後輪ABS制御手段132は、後輪WRのロックを抑制するABS制御を実行する手段である。具体的なABS制御の手法(液圧ユニット10Rに出力する指示)については、前輪ABS制御手段131の場合と同様であるので、詳細な説明は省略する。後輪ABS制御手段132は、ABS制御を開始したとき、後輪ABSフラグFRを0(非実行中)から1(実行中)に変更する。
切替手段140は、前輪ABS制御手段131および後輪ABS制御手段132の両方が作動することで前輪WFおよび後輪WRの両方に対してABS制御が可能となる両輪ABSモード(第1モード)と、前輪ABS制御手段131だけが作動することで前輪WFだけに対してABS制御が可能となる片輪ABSモード(第2モード)とを切り替える手段である。具体的に、切替手段140は、自動二輪車のハンドルなどに設けられたモード切替スイッチ53を運転者が操作してモードを選択することで、後輪ABS制御手段132を作動させる両輪ABSモードと、後輪ABS制御手段132の作動を停止させる片輪ABSモードとを切り替える。切替手段140は、現在選択されているモードの情報を、異常判定手段160に出力する。
前輪ロック判定手段151は、前輪速WS1に基づき前輪WFがロック傾向にあるか否かを判定する手段である。具体的に、前輪ロック判定手段151は、前輪速WS1が予め設定した第1閾値WSth1以下である場合に前輪WFがロック傾向にあると判定する。前輪ロック判定手段151は、前輪WFがロック傾向にあるか否かの情報を、異常判定手段160に出力する。
後輪ロック判定手段152は、後輪速WS2に基づき後輪WRがロック傾向にあるか否かを判定する手段である。具体的に、後輪ロック判定手段152は、後輪速WS2が予め設定した第2閾値WSth2以下である場合に後輪WRがロック傾向にあると判定する。後輪ロック判定手段152は、後輪WRがロック傾向にあるか否かの情報を、異常判定手段160に出力する。
本実施形態において、第1閾値WSth1と第2閾値WSth2は、異なる値であって、第1閾値WSth1が第2閾値WSth2よりも小さい値に設定されている。なお、第1閾値WSth1と第2閾値WSth2は、同じ値であってもよい。
異常判定手段160は、前輪WFのブレーキ系統BFの異常(例えば、液圧ユニット10Fの異常や前輪速センサ51の異常など)の有無を判定する手段である。具体的に、異常判定手段160は、片輪ABSモードの実行中に第1異常判定を実行し、両輪ABSモードの実行中であるか片輪ABSモードの実行中であるかに関わらず第2異常判定を実行する。言い換えれば、異常判定手段160は、両輪ABSモードの実行中に、第2異常判定のみを実行し、片輪ABSモードの実行中に、第1異常判定および第2異常判定を実行する。
第1異常判定では、異常判定手段160は、前輪ABS制御手段131が前輪WFに対してABS制御を実行しているときに、前輪WFがロック傾向にあると判定され、かつ、後輪WRがロック傾向にあると判定されている状態が、予め設定した第1の時間T1継続した場合、前輪WFのブレーキ系統BFに異常があると判定する。また、第2異常判定では、異常判定手段160は、車体速度Vが予め設定された所定速度Vth以上(走行中)であり、かつ、前輪WFがロック傾向にあると判定されている状態が、予め設定した第2の時間T2継続した場合、前輪WFのブレーキ系統BFに異常があると判定する。なお、片輪ABSモードの実行中には、第1異常判定と第2異常判定が並行して実行されることになるが、異常判定手段160は、第1異常判定および第2異常判定のうちいずれかで判定条件を満たした場合に、前輪WFのブレーキ系統BFに異常があると判定する。
本実施形態において、第1の時間T1と第2の時間T2は、異なる値であって、第1の時間T1が第2の時間T2よりも小さい値(短い時間)に設定されている。なお、第1の時間T1と第2の時間T2は、同じ値であってもよい。
異常判定手段160は、前輪WFのブレーキ系統BFに異常があると判定した場合、判定フラグFAを初期値の0(正常)から1(異常)に変更し、その旨の情報を前輪ABS制御手段131に出力するとともに、警告灯60を点灯する。判定フラグFAが1である場合、前輪ABS制御手段131は、前述した暫定制御を実行し、その後は前輪WFに対するABS制御を実行しない。
記憶手段190は、制御部100の動作に必要なプログラムや閾値などのデータ、計算結果などを適宜記憶する手段である。
次に、制御部100での処理について説明する。
図3に示すように、異常判定手段160は、前輪WFのブレーキ系統BFの異常の判定の処理を実行する(S100,S200)。
具体的には、図4に示すように、片輪ABSモードの実行中(S110,Yes)、異常判定手段160は、第1異常判定として、まず、前輪WFにABS制御を実行しているか否か(前輪ABSフラグFFが1か否か)を判定する(S120)。そして、前輪ABSフラグFFが1である場合(S120,Yes)、異常判定手段160は、前輪WFがロック傾向にあるか否か(前輪速WS1が第1閾値WSth1以下か否か)(S130)、および、後輪WRがロック傾向にあるか否か(後輪速WS2が第2閾値WSth2以下か否か)(S140)を判定する。
前輪速WS1が第1閾値WSth1以下であり(S130,Yes)、かつ、後輪速WS2が第2閾値WSth2以下である(S140,Yes)場合、異常判定手段160は、前輪ABSフラグFFが1のときに、前輪速WS1が第1閾値WSth1以下であり、かつ、後輪速WS2が第2閾値WSth2以下である状態が第1の時間T1継続しているか否かを判定する(S150)。
ステップS120〜S140の条件を満たす状態が第1の時間T1継続している場合(S150,Yes)、異常判定手段160は、前輪WFのブレーキ系統BFに異常があると判定し、判定フラグFAを0から1に変更して(S160)、図4に示す処理を終了する。一方、各ステップS120〜S150において、Noであった場合、異常判定手段160は、判定フラグFAを0に維持して(S170)、図4に示す処理を終了する。
また、図5に示すように、異常判定手段160は、第2異常判定として、まず、走行中であるか否か(車体速度Vが所定速度Vth以上か否か)を判定する(S210)。そして、車体速度Vが所定速度Vth以上である場合(S210,Yes)、異常判定手段160は、前輪速WS1が第1閾値WSth1以下か否かを判定する(S220)。前輪速WS1が第1閾値WSth1以下である場合(S220,Yes)、異常判定手段160は、車体速度Vが所定速度Vth以上であり、かつ、前輪速WS1が第1閾値WSth1以下である状態が第2の時間T2継続しているか否かを判定する(S230)。
ステップS210,S220の条件を満たす状態が第2の時間T2継続している場合(S230,Yes)、異常判定手段160は、前輪WFのブレーキ系統BFに異常があると判定し、判定フラグFAを0から1に変更して(S240)、図5に示す処理を終了する。一方、各ステップS210〜S230において、Noであった場合、異常判定手段160は、判定フラグFAを0に維持して(S250)、図5に示す処理を終了する。
図3に戻り、判定フラグFAが1である場合(S310,Yes)、異常判定手段160は、警告灯60を点灯し(S320)、運転者に異常を報知する。また、前輪ABS制御手段131は、第3の時間T3の間、液圧ユニット10Fに保持の指示と増圧の指示を交互に出力する暫定制御を実行する(S330)。暫定制御の実行後、制御部100は、前輪WFに対するABS制御の実行を禁止し、図3に示す処理を終了する。なお、判定フラグFAが1でない場合(0である場合)(S310,No)は前輪WFのブレーキ系統BFに異常はないため、異常判定手段160は、図3に示す処理を終了する。
次に、前輪WFのブレーキ系統BFの異常の判定について、図6〜図8を参照して説明する。図6〜図8では、前輪WFのブレーキ系統BFの故障によりマスタシリンダMFの液圧がそのままホイールシリンダ23に伝達される状況を想定する。
図6は、両輪ABSモードの実行中において、時刻t11で両方のブレーキレバーLF,LRが操作された場合である。この場合、時刻t12において前輪WFおよび後輪WRのスリップ率が閾値よりも大きくなると、前輪ABS制御手段131が前輪ABSフラグFFを0から1に変更して前輪WFに対してABS制御を実行し、後輪ABS制御手段132が後輪ABSフラグFRを0から1に変更して後輪WRに対してABS制御を実行する。
これにより、後輪WRは、ホイールシリンダ23の液圧が減圧、保持または増圧されることで、後輪速WS2が車体速度Vから乖離することが抑制され、ロック傾向になることが抑制される。一方、前輪WFは、マスタシリンダMFの液圧がそのままホイールシリンダ23に伝達されることで減速し続け、時刻t13において、前輪速WS1が第1閾値WSth1以下となってロック傾向となる。このとき、車体速度Vは、所定速度Vth以上である。
異常判定手段160は、時刻t13の時点から、車体速度Vが所定速度Vth以上であり、かつ、前輪速WS1が第1閾値WSth1以下である状態が第2の時間T2継続した場合、時刻t14の時点において判定フラグFAを0から1に変更する(前輪WFのブレーキ系統BFに異常があると判定する)。また、前輪ABS制御手段131は、前輪ABSフラグFFを1から0にリセットして前輪WFに対するABS制御の実行を中止し、暫定制御を実行する。
図7は、片輪ABSモードの実行中において、時刻t21でブレーキレバーLF(前輪WFのブレーキ)だけが操作された場合である。この場合、時刻t22において前輪WFのスリップ率が閾値よりも大きくなると、前輪ABS制御手段131が前輪WFに対してABS制御を実行する。しかし、前輪WFは、マスタシリンダMFの液圧がそのままホイールシリンダ23に伝達されることで減速し続け、時刻t23において、前輪速WS1が第1閾値WSth1以下となってロック傾向となる。一方、後輪WRは、前輪WFに制動力が作用することで、徐々に減速はするが、ロックすることはなく、車体速度Vは、所定速度Vth以上である。
そして、図6の場合と同様に、異常判定手段160は、時刻t23の時点から、車体速度Vが所定速度Vth以上であり、かつ、前輪速WS1が第1閾値WSth1以下である状態が第2の時間T2継続した場合、時刻t24の時点において判定フラグFAを0から1に変更する。また、前輪ABS制御手段131は、前輪WFに対するABS制御の実行を中止し、暫定制御を実行する。
図8は、片輪ABSモードの実行中において、時刻t31で両方のブレーキレバーLF,LRが操作された場合である。この場合、時刻t32において前輪WFのスリップ率が閾値よりも大きくなると、前輪ABS制御手段131が前輪WFに対してABS制御を実行する。しかし、前輪WFは、マスタシリンダMFの液圧がそのままホイールシリンダ23に伝達されることで減速し続け、時刻t34において、前輪速WS1が第1閾値WSth1以下となってロック傾向となる。一方、後輪WRも、マスタシリンダMRの液圧がそのままホイールシリンダ23に伝達されるので減速し続け、時刻t33において、後輪速WS2が第2閾値WSth2以下となってロック傾向となる。
異常判定手段160は、前輪ABSフラグFFが1のときに、前輪速WS1が第1閾値WSth1以下であり、かつ、後輪速WS2が第2閾値WSth2以下である状態が、時刻t34の時点から第1の時間T1継続した場合、時刻t35の時点において判定フラグFAを0から1に変更する。また、前輪ABS制御手段131は、前輪WFに対するABS制御の実行を中止し、暫定制御を実行する。
なお、前輪WFのブレーキ系統BFの異常が、例えば、前輪速センサ51の故障などであって、液圧ユニット10Fは正常に作動するという状況では、前輪ABS制御手段131が暫定制御で第3の時間T3の間、保持の指示と増圧の指示を交互に出力することで、前輪WFのホイールシリンダ23の液圧を、第3の時間T3をかけて保持と増圧を繰り返しながら徐々に増加させることができる。これにより、制動力の急激な増加によって前輪WFがロックすることを抑制することができる。
以上説明した本実施形態によれば、次のような作用効果を得ることができる。
前輪WFにABS制御を実行しているときに、前輪WFおよび後輪WRがロック傾向にあると判定されている状態が第1の時間T1継続した場合は、前輪WFのロックを抑制するためのABS制御を実行しているにも関わらず、前輪WFと後輪WRの両方が継続してロック傾向にあるということなので、前輪WFのブレーキ系統BFに異常があると判定することができる。前輪WFおよび後輪WRの両方がロック傾向になると、車輪速度WS1,WS2から推定される車体速度Vの推定精度が低下するおそれがあるが、第1異常判定は、従来技術のように、判定に車輪速度から推定する車体速度を必要としないため、言い換えれば、車体速度に依存しないため、前輪WFのブレーキ系統BFの異常の判定を精度良く行うことができる。
また、前輪速WS1が第1閾値WSth1以下である場合に前輪WFがロック傾向にあると判定し、後輪速WS2が第2閾値WSth2以下である場合に後輪WRがロック傾向にあると判定するので、前輪WFと後輪WRとで異なる閾値を用いることができ、また、車種に応じた好適な閾値を設定することができる。これにより、判定の精度を向上させることができる。
また、車体速度Vが所定速度Vth以上であり、かつ、前輪WFがロック傾向にあると判定されている状態が第2の時間T2継続した場合は、走行中であるにも関わらず、前輪WFが継続してロック傾向にあるということなので、この場合にも前輪WFのブレーキ系統BFに異常があると判定することができる。なお、この場合は、図6や図7に示すように、後輪WRはロック傾向にはないので(後輪速WS2が第2閾値WSth2以下ではないので)、車体速度Vの推定精度は保たれることから、車体速度Vを用いても判定精度が低下するおそれはない。図6,図7では、所定速度Vthと第2閾値WSth2が等しい値に設定されている例を示しているが、これに限定されず、所定速度Vthと第2閾値WSth2は異なる値に設定されていてもよい。
また、前輪ABS制御手段131および後輪ABS制御手段132の両方が作動するモードと、前輪ABS制御手段131だけが作動するモードを切り替えることができるので、路面状況などに応じて、両輪ABSモードと片輪ABSモードとを切り替えることができる。また、片輪ABSモードのときには、図8を参照して説明したように、前輪WFおよび後輪WRの両方がロック傾向となる可能性があるが、この場合は、第1異常判定によって前輪WFのブレーキ系統BFに異常があると精度良く判定することができる。
以上、実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、下記のように発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
前記実施形態では、前輪WFがロック傾向にあるか否かを前輪ロック判定手段151(第1ロック判定手段)で判定し、後輪WRがロック傾向にあるか否かを後輪ロック判定手段152(第2ロック判定手段)で判定する構成を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、前輪がロック傾向にあるか否かを前輪のスリップ率(スリップ量)を算出する前輪ABS制御手段で判定し、後輪がロック傾向にあるか否かを後輪のスリップ率(スリップ量)を算出する後輪ABS制御手段で判定する構成としてもよい。
前記実施形態では、自動二輪車は、前輪WFのブレーキ系統BFと後輪WRのブレーキ系統BRの両方に液圧ユニット10が設けられ、両輪ABSモードと片輪ABSモードとを切り替えることができるように構成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、自動二輪車は、前輪のブレーキ系統だけに液圧ユニットが設けられ、前輪に対してのみABS制御が実行されるように構成されていてもよい(両輪ABSモードと片輪ABSモードを切り替えることができない構成であってもよい)。なお、前輪のブレーキ系統だけに液圧ユニットが設けられる構成においては、後輪のブレーキ装置は、例えば、機械式のブレーキ装置などであってもよい。
前記実施形態では、スリップ率に基づいてABS制御を行う例を示したが、これに限定されず、例えば、スリップ量に基づいてABS制御を行ってもよい。
前記実施形態では、制御部100(バーハンドル車両用ブレーキ制御装置)が、ブレーキ液を利用した液圧ブレーキ装置を制御するように構成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、バーハンドル車両用ブレーキ制御装置は、ブレーキ液を利用せずに電動モータによりブレーキ力を発生させる電動ブレーキ装置を制御するように構成されていてもよい。
前記実施形態では、前輪WF(一方の車輪)のブレーキと後輪WR(他方の車輪)のブレーキの両方をブレーキレバーLF,LRで操作する構成を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、一方の車輪のブレーキをブレーキレバーで操作し、他方の車輪のブレーキをブレーキペダルで操作する構成としてもよい。
前記実施形態では、「一方の車輪」が前輪であり、「他方の車輪」が後輪であったが、これに限定されず、「一方の車輪」が後輪であり、「他方の車輪」が前輪であってもよい。
前記実施形態では、本発明が適用されるバーハンドル車両として、自動二輪車を例示したが、これに限定されず、例えば、バーハンドル車両は、自動三輪車やバギーカーなどであってもよい。
100 制御部
111 前輪速取得手段
112 後輪速取得手段
120 車体速度取得手段
131 前輪ABS制御手段
132 後輪ABS制御手段
140 切替手段
151 前輪ロック判定手段
152 後輪ロック判定手段
160 異常判定手段
BF ブレーキ系統
WF 前輪
WR 後輪

Claims (4)

  1. 前輪および後輪のうち一方の車輪の車輪速度を取得する第1車輪速度取得手段と、
    前輪および後輪のうち他方の車輪の車輪速度を取得する第2車輪速度取得手段と、
    前記一方の車輪のロックを抑制するアンチロックブレーキ制御を実行する第1アンチロックブレーキ制御手段と、
    前記第1アンチロックブレーキ制御手段がアンチロックブレーキ制御を実行しているときに、前記一方の車輪の車輪速度に基づき前記一方の車輪がロック傾向にあると判定され、かつ、前記他方の車輪の車輪速度に基づき前記他方の車輪がロック傾向にあると判定されている状態が第1の時間継続した場合、前記一方の車輪のブレーキ系統に異常があると判定する第1異常判定を実行する異常判定手段と、を備えることを特徴とするバーハンドル車両用ブレーキ制御装置。
  2. 前記一方の車輪の車輪速度が第1閾値以下である場合に前記一方の車輪がロック傾向にあると判定し、
    前記他方の車輪の車輪速度が第2閾値以下である場合に前記他方の車輪がロック傾向にあると判定することを特徴とする請求項1に記載のバーハンドル車両用ブレーキ制御装置。
  3. 車体速度を取得する車体速度取得手段を備え、
    前記異常判定手段は、前記車体速度が所定速度以上であり、かつ、前記一方の車輪の車輪速度に基づき前記一方の車輪がロック傾向にあると判定されている状態が第2の時間継続した場合、前記一方の車輪のブレーキ系統に異常があると判定する第2異常判定を実行することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバーハンドル車両用ブレーキ制御装置。
  4. 前記他方の車輪のロックを抑制するアンチロックブレーキ制御を実行する第2アンチロックブレーキ制御手段と、
    前記第1アンチロックブレーキ制御手段および前記第2アンチロックブレーキ制御手段の両方が作動する第1モードと、前記第1アンチロックブレーキ制御手段だけが作動する第2モードとを切り替える切替手段と、を備え、
    前記異常判定手段は、前記第1モードの実行中に、前記第2異常判定のみを実行するとともに、前記第2モードの実行中に、前記第1異常判定および前記第2異常判定を実行することを特徴とする請求項3に記載のバーハンドル車両用ブレーキ制御装置。
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