JP2016097591A - 積層塗膜及び塗装物 - Google Patents

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Abstract

【課題】見る角度によって異なった色を見ることができる積層塗膜及び塗装物を提供する。
【解決手段】本発明の積層塗膜は、着色材と光輝材32とを含有する下層塗膜30と、該下層塗膜上に積層されており着色材を含有する上層塗膜20とを備えてなり、上層塗膜は可視光領域において、少なくとも2つの波長域において光透過性を有しており、下層塗膜は、上層塗膜の光透過性を有する少なくとも2つの前記波長域のうち、少なくとも1つの前記波長域において光透過性を有しており、それとは別の少なくとも1つの前記波長域において光吸収性を有しており、上層塗膜の着色材を除く塗膜形成要素の屈折率よりも、下層塗膜の着色材及び光輝材を除く塗膜形成要素の屈折率の方が大きい。
【選択図】図1

Description

本発明は、積層塗膜及び塗装物に関するものである。
自動車の車体等の塗装においては、防錆用の電着塗料によって下塗り塗膜を形成し、その上に下地隠蔽性を有する中塗り塗膜を形成し、さらにその上に上塗り塗膜(ベース塗膜およびクリヤ塗膜)を重ねる塗膜構造が一般に採用されている。また、省資源等の観点から、中塗り塗膜をなくし、下塗り塗膜の上に上塗り塗膜を直接重ねることも試みられている。例えば、カチオン電着塗膜の上に下地隠蔽性を有するベース塗膜を形成し、その上にクリヤ塗膜を形成することがなされている。
ところで、上塗り塗膜においてベース塗膜とクリヤ塗膜の屈折率を調整することによって、自動車塗膜に新たな意匠性を付与する試みは従来より知られている。例えば、特許文献1には、クリヤ塗膜の屈折率を1.522とすること、並びにベース塗膜とクリヤ塗膜との屈折率差を0.015以上とすることによって、塗膜の光輝感が見る角度によって変わるようにすることが記載されている。さらに、特許文献1には、メタクリル酸t−ブチルを50質量%以上使用したアクリル樹脂が低い屈折率を発揮し、スチレンを40質量%以上使用したアクリル樹脂が高い屈折率を発揮することが記載されている。
また、特許文献2には、ZnOナノ粒子を樹脂中に分散させると当該樹脂の高屈折率化が図れること、そのような樹脂を塗料組成物として用いることが記載されている。
特開2006−007006号公報 特開2008−044835号公報
塗装は被塗物に意匠性を付与する側面が強いところ、近年は個人の嗜好が多様化しており、なかには見る角度によって色に変化が出ることが好まれることもある。しかしながら、色の変化を的確に制御する技術は上記の特許文献からは導き出すことができない。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、見る角度によって異なった色を見ることができる積層塗膜及び塗装物を提供することにある。
本発明の積層塗膜は、着色材と光輝材とを含有する下層塗膜と、該下層塗膜上に積層されており着色材を含有する上層塗膜とを備えてなり、前記上層塗膜は可視光領域において、少なくとも2つの波長域において光透過性を有しており、前記下層塗膜は、前記上層塗膜の光透過性を有する少なくとも2つの前記波長域のうち、少なくとも1つの前記波長域において光透過性を有しており、それとは別の少なくとも1つの前記波長域において光吸収性を有しており、前記上層塗膜の着色材を除く塗膜形成要素の屈折率よりも、前記下層塗膜の着色材及び光輝材を除く塗膜形成要素の屈折率の方が大きい構成を備えている。
ここで、「着色材」は、顔料、染料など塗膜に色彩を与える成分をいう。
上記の構成により、上層塗膜と下層塗膜との境界にて反射して積層塗膜から外に出る光と、下層塗膜内で光輝材により反射して積層塗膜から外に出る光とでは色が異なるようになる。
本発明の好ましい態様では、前記下層塗膜の着色材及び光輝材を除く塗膜形成要素の屈折率は、前記上層塗膜の着色材を除く塗膜形成要素の屈折率よりも0.3以上大きい。これにより、上層塗膜と下層塗膜との境界にて反射がされやすくなる。また、下層塗膜に入射したのち上層塗膜へ出射しようとする光が全反射となる角度・領域が広くなり、異なった色を確実に見ることができる。
本発明の好ましい態様では、前記上層塗膜の着色材を除く塗膜形成要素は、主成分である樹脂に該樹脂よりも低屈折率のナノ粒子が添加されてなっている。これにより、アクリル樹脂等の汎用樹脂を採用しながら、上層塗膜の塗膜形成要素の屈折率を所定の低い値に設定することが容易になる。
本発明の好ましい態様では、前記下層塗膜の着色材及び光輝材を除く塗膜形成要素は、主成分である樹脂に該樹脂よりも高屈折率のナノ粒子が添加されてなっている。これにより、アクリル樹脂等の汎用樹脂を採用しながら、下層塗膜の塗膜形成要素の屈折率を所定の高い値に設定することが容易になる。
本発明の好ましい態様では、前記上層塗膜の上に保護塗膜が設けられており、前記保護塗膜の塗膜形成要素の屈折率は、前記下層塗膜の着色材及び光輝材を除く塗膜形成要素の屈折率よりも小さい。これにより、上層塗膜を傷等から保護することができる。
本発明の好ましい態様では、前記保護塗膜の塗膜形成要素の屈折率は、前記上層塗膜の着色材を除く塗膜形成要素の屈折率と略同等である。これにより、異なる色の見え方を保護塗膜が妨げない。
本発明の塗装物は、被塗物に上記のいずれかの積層塗膜を備えている。
本発明の積層塗膜によれば、上層塗膜は可視光領域において、少なくとも2つの波長域において光透過性を有しており、下層塗膜は、少なくとも2つの前記波長域のうち、少なくとも1つの波長域において光透過性を有しているとともに、それとは別の少なくとも1つの波長域において光吸収性を有しており、上層塗膜の塗膜形成要素の屈折率よりも、下層塗膜の塗膜形成要素の屈折率の方が大きいので、上層塗膜と下層塗膜との境界にて反射して積層塗膜から外に出る光と、下層塗膜内で光輝材により反射して積層塗膜から外に出る光とでは色が異なり、塗膜を見る角度を変えると異なる色を観察することができる。
実施形態に係る積層塗膜の断面模式図である。 実施形態に係る上層塗膜の透過光スペクトルを模式的に示した図である。 実施形態に係る下層塗膜の透過光スペクトルを模式的に示した図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。
(実施形態1)
図1に示すように、実施形態1に係る積層塗膜は上から順に、保護塗膜10、上層塗膜20、及び下層塗膜30の三層構造を有している。保護塗膜10は無色透明であり、例えば合成樹脂からなっている。上層塗膜20は有色透明であり、例えば合成樹脂に着色材を含有させてなっている。下層塗膜30は有色透明であるとともに光を反射する光輝材32を含有しており、例えば合成樹脂に着色材を含有させてなっている。
本実施形態においては、上層塗膜20の着色材を除く塗膜構成要素の屈折率は、図1に示すように1.3であり、保護塗膜10の塗膜構成要素の屈折率も同じく1.3であり、空気の屈折率1.0よりも大きい。このため、保護塗膜10と上層塗膜20との境界では光はほとんど反射せず、通過していく。一方、下層塗膜30の着色材及び光輝材32を除く塗膜構成要素の屈折率は上層塗膜20の塗膜構成要素の屈折率よりも大きければよく、本実施形態では1.8である。
このような屈折率とするために、本実施形態では保護塗膜10の塗膜構成要素と上層塗膜20の塗膜構成要素を同じものとしている。具体的にはアクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の合成樹脂に、屈折率の大きさを制御するために無機のナノ粒子を加えている。下層塗膜30の塗膜構成要素もアクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の合成樹脂に、屈折率の大きさを制御するために無機のナノ粒子を加えている。屈折率を小さくする無機のナノ粒子としては、SiO、CaF、MgF等を挙げることができる。また、屈折率を大きくする無機のナノ粒子としては、ZrO、ZnO、TiO等を挙げることができる。添加するナノ粒子の種類や量などで塗膜構成要素の屈折率の大きさを制御することができる。
ナノ粒子の粒子径は、ナノレベルといえるものであれば特に制限されないが、通常は20nm以下である。20nmを超えると、例えば樹脂に分散させたときに透明性が低くなる可能性がある。より好ましくは1nm以上、19nm以下であり、さらに好ましくは2nm以上、18nm以下である。
粒子径の測定方法としては、一般的な方法を用いることができる。例えば粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)、電界放射型透過電子顕微鏡(FE−TEM)、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)などで拡大観察し、無作為に100個の粒子を選択してその長軸方向の長さを測定し、その平均値を粒子径とする。粒子の形状としては球状、楕円球状、立方体状、直方体状、ピラミッド状、針状、柱状、棒状、筒状、りん片状、板状、薄片状などが考えられるが、粒子径を測定する場合はそれぞれの長軸方向長さを測定するものとする。
図1において、上層塗膜20と下層塗膜30との境界において反射する第1反射光80と、下層塗膜30中の光輝材32により反射される第2反射光90とが主たる反射光になる。下層塗膜30の塗膜構成要素の屈折率は1.8であるが、上層塗膜20の塗膜構成要素の屈折率は1.3なので、第2反射光90は上層塗膜20と下層塗膜30との境界で全反射してしまう場合がある。従って、人がこの積層塗膜を見ると、見る位置や角度によって第1反射光80と第2反射光90の両方が目に入る場合と、第1反射光80のみが目に入る場合との2つのケースがでてくる。
図2に示すように上層塗膜20においては、上層塗膜20に加えられている着色材によって青色の波長域(例えば440−500nm)及び赤色の波長域(例えば610−750nm)以外の波長域の光は吸収されてしまう。従って上層塗膜20のみを通過する白色光は、出射した際には青色の波長域の光と赤色の波長域の光とだけになって人の目には赤紫色(マゼンダ)に見える。つまり、第1反射光80は赤紫色に見える。
一方、図3に示すように下層塗膜30においては、下層塗膜30に加えられている着色材によって青色の波長域以外の波長域の光は吸収されてしまう。従って下層塗膜30のみを通過する(上層塗膜20は通過しない)白色光は、出射した際には青色の波長域の光だけになって人の目には青色に見える。そして、上層塗膜20を通過した光が下層塗膜30に入射すると、上層塗膜20においては青色の波長域及び赤色の波長域以外の波長域の光は消失しており、上層塗膜20を通過した青色の波長域の光と赤色の波長域の光のうち、下層塗膜30は青色の波長域の光を透過させ、赤色の波長域の光を吸収する。また、第2反射光90は上層塗膜20を通過してから人の目に入るが、上層塗膜20は青色波長域の光を通過させるので、上層塗膜20を通過した第2反射光90は青色に見える。
以上より、第1反射光80と第2反射光90の両方が目に入る場合は青紫色に見え、第1反射光80のみが目に入る場合は赤紫色に見える。積層塗膜を見る角度(積層塗膜からの光の出射角)によってこの2つの色のいずれかが見えるかが変わる。このように上層塗膜20と下層塗膜30との間の光透過波長域および屈折率差を上述のように設定することによって、見る角度により異なる色が見える塗膜とすることができる。保護塗膜10は上層塗膜20が傷つくことを防止するが、上述の異なる色の見え方を妨げることはない。
<実施例>
実施例1に係る積層塗膜として、図1に示す構造を有しており、各層の塗膜の構成は表1に示す通りの積層塗膜を作製した。
Figure 2016097591
表1において「アクリル系樹脂」とあるのは、日本ペイント株式会社製アクリル樹脂(酸価:20mgKOH/g、水酸基価:75mgKOH/g、数平均分子量:5000、固形分60質量%)である。保護塗膜10及び上層塗膜20に含有されているナノ粒子として、SiOナノ粒子(シーアイ化成社製Nano Tek Slurry(SiO固形分20質量%))を採用した。下層塗膜30に含有されているナノ粒子として、住友大阪セメント社製ZrOナノ粒子分散液(ZrO固形分20質量%)を採用した。上層塗膜20に含有されている顔料として、ペリレン(BASF社製パリオゲンマルーンL3920)を採用した。また、下層塗膜30に含有されている顔料として、フタロシアニン(大日精化工業株式会社製クロモファイン)を採用した。下層塗膜30に含有されている光輝材として、アルミフレーク(東洋アルミニウム株式会社製76シリーズ)を採用した。屈折率は、保護塗膜10が1.3、上層塗膜20が1.3、下層塗膜30が1.8であった。
本実施例の積層塗膜を太陽光の下において見てみると、積層塗膜を見る位置及び見る角度によって青紫色か、赤紫色のどちらかに見えた。積層塗膜を大きな面積(例えば1m以上)にすると、積層塗膜の一部は赤紫色に見え、他の部分は青紫色に見えて、見る角度を変えるとこれらの色が見える部分が変わっていき、ユニークな印象を受けた。
(その他の実施形態)
上述の実施形態は本願発明の例示であって、本願発明はこれらの例に限定されず、これらの例に周知技術や慣用技術、公知技術を組み合わせたり、一部置き換えたりしてもよい。また当業者であれば容易に思いつく改変発明も本願発明に含まれる。
実施形態1における保護塗膜はなくてもよい。すなわち、下層塗膜と上層塗膜だけで二層構造の積層塗膜を構成してもよい。
図1では下層塗膜の下側に存している被塗物を図示することを省略しているが、被塗物の表面に別の塗膜(例えば防錆塗膜)が形成されていてもよい。
上層塗膜において光透過性を有している波長域は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。上層塗膜での光透過性の波長域が3つ以上の場合は、下層塗膜での光透過性の波長域が2つ以上であってもよい。光透過性を有している複数の波長域において、隣接する波長域のピーク波長同士は、50nm以上の差があることが好ましい。これにより目に見える色の違いが明確になるからである。光透過性を有している波長域は、赤、青の光の波長域に限られず、黄や緑、紫など、どのような色の波長域であってもよい。
上層塗膜における光透過性を有している波長域を少なくとも2つとする手段は着色材に限定されず、例えば塗膜構成要素自身の光吸収特性を利用してもよく、それと着色材との組み合わせであってもよい。
実施形態1では上層塗膜の塗膜構成要素は下層塗膜の塗膜構成要素よりも屈折率が0.5小さかったが、屈折率差は0.3以上であることが好ましい。屈折率差が大きいほど下層塗膜から上層塗膜へ光が入射する際に全反射となる領域が広くなり、第1反射光のみが見える角度の領域が広くなって異なる色の見え方がはっきりする。
光輝材は公知のものを用いればよいが、金属箔片、例えばアルミニウムや銅のフレークが好ましい。
10 保護塗膜
20 上層塗膜
30 下層塗膜
32 光輝材

Claims (7)

  1. 着色材と光輝材とを含有する下層塗膜と、該下層塗膜上に積層されており着色材を含有する上層塗膜とを備えてなる積層塗膜において、
    前記上層塗膜は可視光領域において、少なくとも2つの波長域において光透過性を有しており、
    前記下層塗膜は、前記上層塗膜の光透過性を有する少なくとも2つの前記波長域のうち、少なくとも1つの前記波長域において光透過性を有しており、それとは別の少なくとも1つの前記波長域において光吸収性を有しており、
    前記上層塗膜の着色材を除く塗膜形成要素の屈折率よりも、前記下層塗膜の着色材及び光輝材を除く塗膜形成要素の屈折率の方が大きい、積層塗膜。
  2. 前記下層塗膜の着色材及び光輝材を除く塗膜形成要素の屈折率は、前記上層塗膜の着色材を除く塗膜形成要素の屈折率よりも0.3以上大きい、請求項1に記載されている積層塗膜。
  3. 前記上層塗膜の着色材を除く塗膜形成要素は、主成分である樹脂に該樹脂よりも低屈折率のナノ粒子が添加されてなる、請求項1又は2に記載されている積層塗膜。
  4. 前記下層塗膜の着色材及び光輝材を除く塗膜形成要素は、主成分である樹脂に該樹脂よりも高屈折率のナノ粒子が添加されてなる、請求項1から3のいずれか一つに記載されている積層塗膜。
  5. 前記上層塗膜の上に保護塗膜が設けられており、
    前記保護塗膜の塗膜形成要素の屈折率は、前記下層塗膜の着色材及び光輝材を除く塗膜形成要素の屈折率よりも小さい、請求項1から4のいずれか一つに記載されている積層塗膜。
  6. 前記保護塗膜の塗膜形成要素の屈折率は、前記上層塗膜の着色材を除く塗膜形成要素の屈折率と略同等である、請求項5に記載されている積層塗膜。
  7. 被塗物に請求項1乃至6のいずれか一つに記載の積層塗膜を備える、塗装物。
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