JP2016095326A - 画像形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】定着ベルトなどの耐久性をできるだけ低下させることなく記録材の分離性能が向上できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】保持ローラ61とパッド部材62とに張架された定着ベルト63と、定着ベルト63を介してパッド部材62を加圧する加圧ローラ64と、定着ベルト63と加圧ローラ64との間に形成されたニップ部を加熱し、ニップ部に記録材を通過させることで記録材上の未定着トナーを加熱定着する定着装置60を備え、定着装置60は、パッド部材62に設けられて、ニップ部の下流側で定着ベルト63の加圧ローラ64に対する接触面側に突出可能な突出部66と、突出部66の突出量を切り換える切換え手段67と、定着ベルト63の張力を切り換える切換え手段68と、を有する。さらに、プリント時に記録材の分離性に関する情報を検知する分離性検知手段と、制御手段と、を備えている。
【選択図】図2

Description

本発明は、画像形成装置、特に、プリンタや複写機などの電子写真方式による画像形成装置におけるトナー定着部での用紙分離性の向上に関する。
複写機やプリンタなどの電子写真方式による画像形成装置においては、原稿に対応した静電潜像を感光体上に形成し、該静電潜像にトナーを付与することで顕像化し、この顕像化されたトナー像を記録紙上に転写、定着した後、排紙している。モノクロ画像は単一の作像ユニットにて各工程を実行し、カラー画像にあっては並置された四つの感光体上にそれぞれ形成されたY,M,C,Kの各色のトナー像を中間転写体(ベルト)上に1次転写(合成)した後、記録紙上に2次転写し、定着している。
トナー像を記録紙上に定着する定着装置として、熱源を内蔵した加熱ローラと定着ローラとに定着ベルトを無端状に張架し、定着ベルトを介して定着ローラを加圧する加圧ローラを有するものが知られている(以下、定着ベルト張架式と記す)。この定着装置にあっては、定着ベルトと加圧ローラとによって形成されるニップ部で、トナー像が転写された記録紙を挟持・搬送しながら、加熱・加圧して、トナー像を加熱定着する。
前記定着装置においては、省エネの観点より、定着温度をより低くすることが望ましく、このためにニップ部の幅寸法を通紙方向に大きくして加熱時間を長くすることが考えられる。ニップ幅を大きくするために、定着ベルト張架式においては、ゴム製の定着ローラ本体や加圧ローラ本体の肉厚を大きくする、ゴム硬度を下げる、直径を大きくするかの少なくともいずれかが採用されている。
しかしながら、ローラ本体の肉厚を大きくしたり、ゴム硬度を下げた場合、ゴムの耐久性が低下するため、定着装置としての寿命が短くなる。また、ローラ本体の肉厚を大きくした場合、熱容量が増加するためにウォームアップ時間が長くなる。また、ローラの直径を大きくすると、部品コストの上昇や定着装置の大型化につながる。
一方、定着ベルト張架式の定着装置において、定着ローラに代えて定着パッドを用い、加圧ローラを定着ベルトを介して定着パッドに圧接させるものが知られている。このような定着装置では、定着ニップ部が定着パッドの形状によって決まるため、定着パッドの形状を工夫することで、加圧ローラの肉厚、直径やゴム硬度をそれほど大きく変更することなく、ニップ幅を大きくすることができる。これにて、定着温度を低く設定することが可能になり、省エネが実現される。
ところで、定着装置においては、記録紙上の未定着トナーは定着ニップ部を通過する際に加熱されるので、加熱されたトナーが接着剤として作用し、記録材がニップ部を通過した後も定着ベルトから分離せずに定着ベルトの表面に付着したまま定着ベルトに巻き付き、ジャムが発生する(分離不良)という問題点を有している。特に、記録紙として斥量の小さい紙(薄紙)が使用される場合、使用環境が高湿度である場合、画像カバレッジ(用紙全面に対する画像の割合)が大きい場合、定着装置自体が新品に近くて定着ベルト表面の平滑度が高い場合などに、分離性能がより低下する。
従来では、前記分離不良を解決するために、定着ニップ部の出口側に、複数の爪部材を配置し、該爪部材の先端が定着ベルトと記録紙との隙間に潜り込むことによって、機械的に記録紙を定着ベルトから分離する方式が採用されていた。しかしながら、このような分離爪機構は、部品を追加することからコストが増加する。また、分離爪の先端と定着ベルトの表面との間に僅かな空隙があるか、または分離爪が定着ベルトに軽く接触している状態が望ましいため、定着装置の製造時における分離爪の位置管理、調整が困難であり、かつ、分離爪によって定着ベルトに傷をつけるおそれもある。
特許文献1には、定着ベルトの張力を切り換えることで、定着ニップ部の出口側の曲率半径を小さくする機構を備えた画像形成装置が記載されている。しかし、この機構では、定着ベルトをローラによって保持してニップ部を形成しているため、曲率半径を小さくした場合に、ニップ幅が狭くなることで定着性能が低下するという問題点を有している。
一方、特許文献2では、定着パッドを用いた定着ベルト張架式の定着装置が記載されている。ここでは、ニップ部の出口側で定着パッドを加圧ローラ側に突き出す形状にすることで、定着ベルトの曲率半径を小さくしている。しかしながら、この定着装置では、ニップ部の出口側で定着ベルトが大きく屈曲するため、定着ベルトへの負荷が大きくなり、ベルトの耐久性が低下するという問題点を有している。また、定着ベルトは定着パッドに対して潤滑剤を介して摺動するように構成されており、耐久性の点から、定着ベルトが定着パッドに作用する圧力は小さいほうが望ましい。そのため、定着ベルトの張力も小さく設定することが望ましい。しかし、張力を小さく設定すると、ニップ部の出口のさらに通紙方向下流側では定着ベルトの曲率半径がベルト自体の弾性で大きくなってしまい、分離性能向上の効果が低下してしまう。これに対して、定着ベルトの張力を上げると、曲率半径が小さい状態が保持されるが、定着ベルトと定着パッドとの接触圧が高くなるため、耐久性に支障が生じる。即ち、定着ベルトの張力は、上げると分離性能が向上するが耐久性が低下し、下げると耐久性が向上するが分離性能が低下するというトレードオフの関係にある。
特開2006−235573号公報 特開2014−6317号公報
本発明の目的は、定着ベルトなどの耐久性をできるだけ低下させることなく記録材の分離性能を向上させることのできる定着ベルト張架式の定着装置を備えた画像形成装置を提供することにある。
本発明の一形態である画像形成装置は、
少なくとも一つの保持ローラと、パッド部材と、該保持ローラ及び該パッド部材とに無端状に張架された定着ベルトと、該定着ベルトを介して前記パッド部材を加圧する加圧ローラと、を含み、前記パッド部材に保持された前記定着ベルトと前記加圧ローラとの間に形成されたニップ部を所定の定着温度に加熱し、該ニップ部に記録材を通過させることで該記録材上の未定着トナーを加熱定着する定着装置を備え、
前記定着装置は、前記パッド部材に設けられて、前記ニップ部の記録材通過方向下流側で前記定着ベルトの前記加圧ローラに対する接触面側に突出可能な突出部と、該突出部の突出量を切り換える突出量切換え手段と、前記定着ベルトの張力を切り換える張力切換え手段と、を有し、
さらに、画像プリント時に記録材の前記ニップ部からの分離性に関する情報を検知する分離性検知手段と、制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記分離性検知手段による分離性に関する情報に基づいて、前記突出量切換え手段及び前記張力切換え手段を制御して前記突出量及び前記張力を切り換えること、
を特徴とする。
前記画像形成装置においては、定着ベルトの張力と、ニップ部の通紙方向下流側におけるパッド部材の突出量とを、記録材の分離性に基づいて切り換えるようにしたため、分離性が低下した状態での記録材に対する分離性能が向上するとともに、定着ベルトなどの耐久性の劣化が抑制される。
本発明によれば、定着ベルトなどの耐久性をできるだけ低下させることなく記録材の分離性能を向上させることができる。
一実施例であるカラー画像形成装置を示す概略構成図である。 定着装置を示す断面図であり、(A)は分離性が通常の場合、(B)は分離性が低下した場合を示している。 前記定着装置の平面図である。 前記画像形成装置の制御部を示すブロック図である。 前記定着装置における潤滑剤の状態を示す断面図であり、(A)は分離性が通常の場合、(B)は分離性が低下した場合を示している。
以下、本発明に係る画像形成装置の実施例について、添付図面を参照して説明する。なお、各図において同じ部材、部分には共通する符号を付し、重複する説明は省略する。
(カラー画像形成装置の概略、図1参照)
まず、一実施例である電子写真方式によるカラー画像形成装置1の概略構成について図1を参照して説明する。この画像形成装置1は、上部に画像読取りユニット80を備え、タンデム方式でカラー画像を形成するようにしたものである。即ち、四つの作像ユニット10(イエロー画像を形成するための作像ユニット10y、マゼンタ画像を形成するための作像ユニット10m、シアン画像を形成するための作像ユニット10c、ブラック画像を形成するための作像ユニット10k)が並置されており、各感光体11上に形成された各色のトナー画像を中間転写ベルト31上に転写ローラ32から付与される電界により転写/合成(1次転写)する。その後、合成トナー画像を転写ローラ35から付与される電界により記録材上に2次転写する。
それぞれの感光体11の周囲には、帯電ローラ12、現像ローラ13aを含む現像器13、残留トナーのクリーニングブレード14などが配置されており、さらに、レーザ走査光学ユニット20が配置されている。この種の作像ユニット10によって電子写真方式で感光体11上にトナー画像を形成し、中間転写ベルト31に1次転写し、さらに記録材上に2次転写するプロセスは周知であり、その説明は省略する。
記録材は、給紙カセット50に積載収容されており、給紙ローラ51によって1枚ずつ給紙される。給紙された記録材は、レジストローラ対52を介して2次転写部へ搬送され、トナー画像が2次転写される。その後、記録材は定着装置60でトナーの加熱定着を施され、排出ローラ対56から排出部57へ排出される。
(定着装置、図2及び図3参照)
定着装置60は、図2(A)に示すように、少なくとも一つの保持ローラ61と、パッド部材62と、保持ローラ61及びパッド部材62に無端状に張架された定着ベルト63と、定着ベルト63を介してパッド部材62を加圧する加圧ローラ64と、を含み、保持ローラ61は熱源65を内蔵している。この定着装置60にあっては、パッド部材62に保持された定着ベルト63と加圧ローラ64との間に形成されたニップ部を所定の定着温度に加熱し、該ニップ部に記録材Sを矢印B方向に通過させることで記録材S上の未定着トナーを加熱定着する。
熱源65によって保持ローラ61が加熱され、定着ベルト63は矢印D方向に回転しつつ保持ローラ61との接触部で加熱される。この加熱部分がニップ部に到達したときパッド部材62及び加圧ローラ64を加熱し、ニップ部が必要な定着温度に保持される。
さらに、定着装置60は、パッド部材62に設けられて、ニップ部の記録材通過方向Bの下流側で定着ベルト63の加圧ローラ64に対する接触面側に突出可能な突出部66と、突出部66の突出量を切り換える突出量切換え手段67と、定着ベルト63の張力を切り換える張力切換え手段68と、を有している。
以下に、定着ベルト63やローラ61,64などの構成、材料、サイズを詳細に説明するが、それらに限定しないことは勿論である。定着ベルト63は、厚さ70μmのポリイミド樹脂などの耐熱性基体の外周面を厚さ200μmの耐熱性シリコンゴムで被覆し、さらに、その外周面に離型層として厚さ30μmのパーフルオロアルコキシチューブで被覆したものを使用している。定着ベルト63の外径寸法は80mm、幅寸法は340mm(図3参照)である。
保持ローラ61は、アルミニューム製の肉厚2mmの円筒状の中空回転体であり、その外周面を耐熱性の樹脂チューブで被覆したハードローラとして構成されており、外径寸法は47mmである。熱源65としてはハロゲンランプが使用されている。なお、熱源65は必ずしも保持ローラ61に内蔵されている必要はなく、定着ベルト63を外部から直接的に加熱するヒータや励磁コイルを用いた誘導加熱発熱体を用いてもよい。また、定着ベルト63の表面温度を検知する温度センサ(図示せず)が設けられている。
パッド部材62は、加圧ローラ64と対向してニップ部を形成する接触面を有し、液晶ポリマーやポリフェニレンサルファイドなどの耐熱性樹脂基体からなり、ニップ部(接触面)を厚み100μmのポリテトラフルオロエチレンで被覆したものである。
突出部66は、ニップ部の通紙方向Bの下流側で定着ベルト63の加圧ローラ64に対する接触面側に突出可能なように通紙方向Bに対して直交する方向に移動自在に設けられている。突出量切換え手段67は、突出部66の背後を押圧するアクチュエータ67aとカム67bと図示しない駆動源とで構成されている。駆動源は、ソレノイド、モータとクラッチとの組合せなどであり、カム67bの回転角度を変化させることでアクチュエータ67aを介して突出部66をニップ部に対して進退させる。これにて、突出部66の突出量が切り換えられる。図2(A)は、記録紙Sの分離性が通常の場合である突出部66の位置を示し、図2(B)は分離性が低下した場合(後に詳述する)の位置を示している。
パッド部材62は、高さ方向(通紙方向B)に30mmであり、幅寸法は370mm(図3参照)である。図3に示すように、突出部66は幅寸法がパッド部材62よりも大きく設定されている。突出部66の幅寸法を定着ベルト63やパッド部材62よりも大きく設定することで、定着ベルト63及びパッド部材62よりも外側に出ている部分をアクチュエータ67aで押圧して突出部66を進退させる。
パッド部材62と定着ベルト63との間には潤滑剤70(図5参照)が塗布されている。潤滑剤70は、ジメチルシリコンオイル、フッ素グリスを好適に用いることができ、パッド部材62と定着ベルト63との間に油膜を形成する程度の少量が保持されているか、定着ベルト63の内周面に保持されている。この潤滑剤70は、定着ベルト63の回転に伴ってパッド部材62の接触面に少量ずつ侵入することで、定着ベルト63とパッド部材62との間に油膜として保持される。
加圧ローラ64は、金属製の芯金64aの周囲を厚さ3mmの耐熱性シリコンゴム64bで被覆し、シリコンゴム64bの外周面に厚さ30μmのパーフルオロアルコキシチューブ64cで被覆したソフトローラとして構成されており、外径寸法は50mmである。
定着ベルト63の張力切換え手段68は引っ張りばね68aを備えている。即ち、保持ローラ61の図示しない支軸は図2(A)中矢印E方向に移動自在に配置されている。引っ張りばね68aの先端は該支軸に係止され、後端は駆動源に接続されている。駆動源は、ソレノイドやモータなどであり、引っ張りばね68aによる支軸への付勢力を変化させることで、定着ベルト63の張力が切り換えられる。
保持ローラ61は、パッド部材62に対して若干下方に配置されているほうが、ニップ部の通紙方向出口側で定着ベルト63をより引っ張り、出口側の定着ベルト63の曲率半径を小さくできるので分離性能の点で好ましい。
以上の構成からなる定着装置60において、加圧ローラ64が図示しない駆動手段によって矢印C方向に回転駆動されると、定着ベルト63及び保持ローラ61がそれぞれの摩擦力によって矢印D方向に回転する。また、定着ベルト63は熱源65によって間接的に加熱される。加圧ローラ64は図示しない付勢手段によって定着ベルト63を介してパッド部材62に弾性的に圧接する。これにて、加圧ローラ64のシリコンゴム64b、チューブ64cが内方に部分的に撓み、定着ニップ部を形成する。このニップ部を記録材Sがトナー画像形成面をパッド部材62に向けた状態で矢印B方向に通過することにより、トナーが加熱定着される。
(制御部、図4参照)
画像形成装置1には前記定着装置60に関して、画像プリント時に記録材の定着ニップ部からの分離性を検知する分離性検知手段と、制御手段と、を備えている。制御手段は、分離性検知手段による分離性に関する情報に基づいて、突出量切換え手段67及び張力切換え手段68を制御して突出部66の突出量及び引っ張りばね68aの張力を切り換える。
詳しくは、図4に示すように、制御部100を構成するCPU101には分離性検知手段からの分離性に関する各種情報が入力される。分離性に関する情報とは、記録材情報部111からの記録材の種類(普通紙か薄紙かなど)、耐久状態情報部112からの定着装置60の耐久状態、画像パターン情報部113からのプリントされる画像パターンのカバレッジ、使用環境情報部114からの環境湿度である。なお、分離性に関する情報はこれら以外にも種々のものがあり得る。また、CPU101は突出量切換え手段67及び張力切換え手段68を制御する。
記録材情報部111からは、記録材の斥量や種類が入力される。記録材は斥量が小さく薄い紙ほど分離性が悪いので、CPU101は、例えば、斥量が60g/m2以下は分離性が悪いと判別する。また、コート紙のように表面が平滑であるものは分離性が悪いと判別する。耐久状態情報部112からは、定着ベルト63の使用期間(プリント枚数に換算した値)が入力される。定着ベルト63は使用期間が短いほどその表面が平滑であるため、CPU101は新品からプリント枚数が1000枚以内であれば分離性が悪いと判別する。
画像パターン情報部113からは、プリント画像のカバレッジが入力される。高濃度の画像パターンが通紙方向Bの先端近くに配置されているほど分離性が悪くなる。そこで、CPU101は80%以上の画像カバレッジが通紙方向Bの先端から3mm以内の領域に存在する場合は分離性が悪いと判別する。使用環境情報部114からは、定着装置60の周囲の湿度が入力される。湿度が高くなると記録材の腰が弱くなり、分離性が悪くなるので、CPU101は湿度が70%以上であれば分離性が悪いと判別する。
(分離性と突出量及び張力の設定)
突出部66の突出量は、分離性が不利でない通常の場合、屈曲による定着ベルト63へ大きなダメージを与えない範囲で設定される。本実施例において、分離性が通常の場合、突出部66はその先端がパッド部材62の接触面から0.2mm突出した位置に設定されている。なお、突出量はゼロまたはマイナスであってもよい。分離性が低下した場合、突出部66はその先端がパッド部材の接触面から0.5mm突出した位置に設定される。
引っ張りばね68aの張力は、パッド部材62と定着ベルト63との間の圧力を両者の摩擦によって耐久性に悪影響を与えない範囲で上限が設定され、定着ベルト63と保持ローラ61との間の密着状態が低下して定着ベルト63の加熱に悪影響を与えない範囲で下限が設定される。本実施例において、張力は、分離性が通常の場合は40Nに設定され、分離性が低下した場合は60Nに設定される。
CPU101は、前記情報部111〜114からの情報の一つ又は複数を組み合わせて分離性が不利であると判別した場合、突出量切換え手段67及び張力切換え手段68を制御して突出部66の突出量を大きくし、かつ、引っ張りばね68aの張力を大きくする。図2(B)はこの状態を示している。即ち、突出部66の突出量を大きく設定すると定着ベルト63の通紙方向下流側での突出し量が大きくなり、かつ、定着ベルト63の張力を大きく設定するとニップ部の出口側において定着ベルと63がより大きく曲げられる(曲率半径が小さくなる)ことで、記録材の腰の強さによって分離性が向上する。
ちなみに、分離性が低下した場合、突出部66の突出量は、短期的な使用において、屈曲による定着ベルト63の折れといったダメージを与えないような範囲に設定され、引っ張りばね68aの張力は、ニップ部の出口側での定着ベルト63の弾性によるふくらみが小さくなる又は解消されるように設定される。これにて、分離性が低下した場合は、分離性が通常の場合よりも定着ベルト63のニップ部の出口側での曲率半径が小さくなり、分離性が向上する。
一方、定着ベルト63の曲率半径が小さくなることで、定着ベルト63のダメージが大きくなる。また、張力が大きくなることで、パッド部材62と定着ベルト63との間の接触圧力が高まることになり、両者の間に介在する潤滑剤の油膜が薄くなって磨耗が促進する。それゆえ、分離性を向上させた状態で定着装置60を長期に稼動することは耐久性の点から望ましくない。本実施例では、分離性が不利な場合にのみ突出量及び張力を切り換えて稼動させることで、分離性の向上と耐久性の維持を両立させることを可能としている。
(潤滑剤の供給、図5参照)
前述のように、パッド部材62と定着ベルト63との間には潤滑剤70が介在されており、摩擦による両者の磨耗を抑制している。しかし、パッド部材62と定着ベルト63の磨耗は全体として均一に進行するのではなく、接触圧が大きい部分が局所的に形成され、その部分で潤滑剤70の油膜が薄くなって磨耗が促進する。
突出量及び張力が通常設定の場合、図5(A)に示すように、突出部66の突出量はゼロか小さいため、接触圧Pはパッド部材62の端部、即ち、ニップ部の入口側と出口側で高くなる分布を示す。ニップ部の入口側や出口側の接触圧Pが高い部分では、潤滑剤70の保持量が少なく、磨耗が促進されるので耐久性では不利になる。潤滑剤70は、その多くが定着ベルト63がパッド部材62に巻き掛かる直前に保持されているか、または、定着ベルト63のパッド部材62とは対向しない内面に保持されており、パッド部材62の接触面に少量ずつ侵入することでパッド部材62と定着ベルト63との間に油膜を形成する。但し、通常設定の場合は定着ベルト63の張力が小さくかつ曲率半径が大きいため、侵入部でのパッド部材62と定着ベルト63との間の角度αが大きく、パッド部材62への潤滑剤70の侵入量が比較的小さい。また、ニップ部の入口側での接触圧Pが高いことにより、油膜の保持量も小さくなり、潤滑剤70が不足する傾向にある。
一方、分離性が低下して突出量及び張力を大きく設定した場合、図5(B)に示すように、接触圧Pは突出部66の部分で増加するとともに、ニップ部の入口側や出口側で低下した分布を示す。ニップ部の入口側や出口側の接触圧Pが低下することで、この部分での潤滑剤70の保持量が増加する。また、定着ベルト63の張力が高くなることによって、侵入部でのパッド部材62と定着ベルト63との間の角度αが小さくなり、いわゆるくさび効果により、パッド部材62への潤滑剤70の侵入量が増加する。それらによって、ニップ部、特に、ニップ部の入口側において潤滑剤70の侵入量及び保持量が増加し、油膜の形成状態が改善される。分離性が不利な条件でプリント処理を行った後、不利な条件が解消されて通常の設定に戻った場合、接触圧Pは高い状態になるため、潤滑剤70の油膜は徐々に薄くなる。しかし、分離性が不利な状態での稼動時に一時的に潤滑剤70が増加することで、潤滑剤70が交換され、かつ、ベルト63やパッド部材62の削れによる廃棄物が少なくなる。つまり、分離性が不利であるために、突出量や張力を大きくした状態での稼動を適度に実行することで、潤滑剤70の油膜状態が改善された効果が継続される。
よって、定着装置60を分離性が不利な条件で駆動することは、その駆動を長期にわたって実行するとパッド部材62や定着ベルト63の耐久性が劣化することになる。しかし、突出量及び張力を大きくするように切り換えて短期的に駆動することは、通常の状態での駆動のみの場合に比べて、パッド部材62の磨耗に不利な部分への潤滑剤70の供給が多くなることにより、パッド部材62や定着ベルト63の磨耗を抑制する効果を生じる。
それゆえ、所定の駆動期間内に突出量及び張力の切換えが行われなかった場合であっても、前記のような潤滑剤70の供給による油膜の改善効果(磨耗抑制効果)を見込んで、一定の間隔で、定着装置60が動作している状態で突出量及び張力の切換えを実行することが好ましい。例えば、プリント枚数が10000枚に達するごとに、1分間程度、分離性が不利な状態への切換えを行う。この場合、切換え動作中は定着装置60を加熱状態で駆動することが好ましい。
(他の実施例)
なお、本発明に係る、画像形成装置は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
特に、画像形成装置としては、プリント機能のみを備えたもの以外に、通信機能やファクシミリ機能などを備えた複合機であってもよい。また、定着装置などの細部の構成は任意である。
以上のように、本発明は、画像形成装置に有用であり、特に、定着ベルトなどの耐久性をできるだけ低下させることなく記録材の分離性能が向上する点で優れている。
1…画像形成装置
60…定着装置
61…保持ローラ
62…パッド部材
63…定着ベルト
64…加圧ローラ
65…熱源
66…突出部
67…突出量切換え手段
68…張力切換え手段
101…CPU(制御手段)
111…記録材情報部
112…耐久状態情報部
113…画像パターン情報部
114…使用環境情報部

Claims (4)

  1. 少なくとも一つの保持ローラと、パッド部材と、該保持ローラ及び該パッド部材とに無端状に張架された定着ベルトと、該定着ベルトを介して前記パッド部材を加圧する加圧ローラと、を含み、前記パッド部材に保持された前記定着ベルトと前記加圧ローラとの間に形成されたニップ部を所定の定着温度に加熱し、該ニップ部に記録材を通過させることで該記録材上の未定着トナーを加熱定着する定着装置を備え、
    前記定着装置は、前記パッド部材に設けられて、前記ニップ部の記録材通過方向下流側で前記定着ベルトの前記加圧ローラに対する接触面側に突出可能な突出部と、該突出部の突出量を切り換える突出量切換え手段と、前記定着ベルトの張力を切り換える張力切換え手段と、を有し、
    さらに、画像プリント時に記録材の前記ニップ部からの分離性に関する情報を検知する分離性検知手段と、制御手段と、を備え、
    前記制御手段は、前記分離性検知手段による分離性に関する情報に基づいて、前記突出量切換え手段及び前記張力切換え手段を制御して前記突出量及び前記張力を切り換えること、
    を特徴とする画像形成装置。
  2. 前記制御手段は、前記分離性検知手段の情報に基づいて分離性の低下を判別すると、前記突出量及び前記張力を大きくすること、を特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
  3. 前記制御手段は、記録材の種類、使用環境、プリントされる画像パターン及び前記定着装置の耐久状態のうち少なくとも一つの情報に基づいて分離性を判別すること、を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
  4. 前記制御手段は、所定の駆動期間内に、前記分離性検知手段からの情報に基づく前記突出量及び前記張力の切換えが行われなかったときに、前記定着装置が動作している状態で、前記突出量及び前記張力の切換えを行うこと、を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の画像形成装置。
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