ところが、上記の物理量検出装置としての非接触型表面電位計には、以下のような解決すべき課題が存在している。すなわち、この非接触型表面電位計では、交流増幅回路から出力される増幅された交流信号(検出電極に誘起する交流電圧を増幅した交流信号)を同期検波回路において発振器からの同期信号で同期検波する構成を採用しているが、駆動回路から振動子に供給する駆動信号の周期と、同期検波用の同期信号の周期とが一致する構成となっている。
この場合、発振器から同期検波回路に出力される同期信号と比較して、駆動回路が振動子を振動させるために出力する駆動信号は高パワーの信号であり、このような駆動信号が流れる信号ラインからは、他の信号ラインや電子回路への回り込みが発生し得る程度のパワーのノイズが生じている。このノイズは、主として駆動信号と同じ周期、つまり同期信号と同じ周期の信号成分で構成されている。このため、検出電極に誘起する交流電圧を入力するための信号ラインや、この交流電圧に基づいて信号を生成する回路や、同期検波回路にこのノイズが回り込んだりしたときには、同期検波回路で行う同期検波によってもこのノイズを除去することができない。
したがって、この物理量検出装置としての非接触型表面電位計には、同期検波用の同期信号と同じ周期のノイズに起因して、検出する物理量(検出電極に誘起する交流電圧)のSN比の低下や、この物理量でのDCオフセットの発生といった不具合が発生するおそれがあるという解決すべき課題が存在している。
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、SN比の低下やDCオフセットの発生を低減し得る物理量検出装置および物理量検出方法を提供することを主目的とする。
上記目的を達成すべく請求項1記載の物理量検出装置は、検出対象を含む物理系についての第1物理量を変化させた際に当該物理系に生じる第2物理量に基づいて当該検出対象の検出物理量を検出する物理量検出装置であって、基本波成分で主として構成される電気信号、並びに基本波成分およびその奇数次高調波成分で主として構成される電気信号のうちのいずれかの電気信号に基づいて前記第1物理量を変化させる物理量変化部と、前記検出物理量が振幅に反映され、かつ前記基本波成分に対する偶数次高調波成分のうちの少なくとも1つの偶数次高調波成分と同じ周波数成分で主として構成される検出信号を前記第2物理量として検出する検出部とを備えている。
請求項2記載の物理量検出装置は、請求項1記載の物理量検出装置において、前記物理量変化部は、前記電気信号に基づいて当該電気信号とは異種の物理量を生成し、当該生成した異種の物理量に基づいて前記第1物理量を変化させる。
請求項3記載の物理量検出装置は、請求項2記載の物理量検出装置において、前記物理量変化部は、前記少なくとも1つの偶数次高調波成分と同じ周波数成分で主として構成される波形状に前記第1物理量を変化させる。
請求項4記載の物理量検出装置は、請求項2または3記載の物理量検出装置において、前記検出対象に対向して配置されて前記物理系の一部を構成する検出電極を備え、前記物理量変化部は、前記検出対象と前記検出電極との間の静電容量を前記第1物理量として変化させる。
請求項5記載の物理量検出装置は、請求項2から4のいずれかに記載の物理量検出装置において、前記物理量変化部は、前記電気信号としての駆動電流に基づいて交番磁界を発生させるコイルと、前記交番磁界が作用する領域に配置された磁歪素子とを備え、当該磁歪素子が前記交番磁界によって変形することによって発生する前記異種の物理量としての振動で前記第1物理量を変化させる。
請求項6記載の物理量検出装置は、請求項5記載の物理量検出装置において、前記磁歪素子は、前記交番磁界がゼロのときに変形量がゼロになるように磁気的にバイアスされている。
請求項7記載の物理量検出装置は、請求項1から6のいずれかに記載の物理量検出装置において、前記少なくとも1つの偶数次高調波成分と同じ周波数成分で主として構成される同期信号と前記検出信号との相関をとることで前記検出物理量を検出する相関部を備えている。
請求項8記載の物理量検出装置は、請求項1から7のいずれかに記載の物理量検出装置において、前記少なくとも1つの偶数次高調波成分は、2次高調波成分である。
請求項9記載の物理量検出方法は、検出対象を含む物理系についての第1物理量を変化させた際に当該物理系に生じる第2物理量に基づいて当該検出対象の検出物理量を検出する物理量検出方法であって、基本波成分で主として構成される電気信号、並びに基本波成分およびその奇数次高調波成分で主として構成される電気信号のうちのいずれかの電気信号に基づいて前記第1物理量を変化させる物理量変化ステップと、前記検出物理量が振幅に反映され、かつ前記基本波成分に対する偶数次高調波成分のうちの少なくとも1つの偶数次高調波成分と同じ周波数成分で主として構成される検出信号を前記第2物理量として検出する検出ステップとを実行する。
請求項10記載の物理量検出方法は、請求項9記載の物理量検出方法の前記物理量変化ステップにおいて、前記電気信号に基づいて当該電気信号とは異種の物理量を生成し、当該生成した異種の物理量に基づいて前記第1物理量を変化させる。
請求項11記載の物理量検出方法は、請求項10記載の物理量検出方法の前記物理量変化ステップにおいて、前記少なくとも1つの偶数次高調波成分と同じ周波数成分で主として構成される波形状に前記第1物理量を変化させる。
請求項12記載の物理量検出方法は、請求項10または11記載の物理量検出方法において、前記物理系の一部を構成する検出電極を前記検出対象に対向して配置し、前記物理量変化ステップにおいて、前記検出対象と前記検出電極との間の静電容量を前記第1物理量として変化させる。
請求項13記載の物理量検出方法は、請求項10から12のいずれかに記載の物理量検出方法において、前記電気信号としての駆動電流に基づいてコイルから交番磁界を発生させると共に、当該交番磁界が作用する領域に磁歪素子を配置し、前記物理量変化ステップにおいて、前記磁歪素子が前記交番磁界によって変形することによって発生する前記異種の物理量としての振動で前記第1物理量を変化させる。
請求項14記載の物理量検出方法は、請求項13記載の物理量検出方法において、前記交番磁界がゼロのときに変形量がゼロになるように前記磁歪素子を磁気的にバイアスする。
請求項15記載の物理量検出方法は、請求項9から14のいずれかに記載の物理量検出方法において、前記少なくとも1つの偶数次高調波成分と同じ周波数成分で主として構成される同期信号と前記検出信号との相関をとることで前記検出物理量を検出する相関ステップを実行する。
請求項16記載の物理量検出方法は、請求項9から15のいずれかに記載の物理量検出方法において、前記少なくとも1つの偶数次高調波成分として2次高調波成分を用いる。
請求項1記載の物理量検出装置および請求項9記載の物理量検出方法によれば、第1物理量を変化させるために一般的に高パワーの信号となる電気信号が流れる信号ラインや回路から、回り込みの発生し得る程度のパワーのノイズが発生したとしても、検出部で検出される第2物理量としての検出信号は、このノイズの周波数成分(上記の電気信号の基本波成分、並びにこの電気信号の基本波成分およびその奇数次高調波成分のいずれかで主として構成される成分)とは異なる周波数成分(主として上記の電気信号の基本波成分に対する偶数次高調波成分)で構成されているため、検出部は、この検出信号を上記ノイズの影響の極めて少ない状態で、つまり、SN比の低下やDCオフセットの発生の極めて少ない状態で検出することができる。これにより、この物理量検出装置および物理量検出方法によれば、検出物理量についても、この検出信号に基づいてSN比の低下やDCオフセットの発生の極めて少ない状態で検出することができる。
請求項2記載の物理量検出装置および請求項10記載の物理量検出方法によれば、例えば、回り込み等の原因となるノイズの発生のおそれのない機械的振動(電気信号とは異種の物理量)によって第1物理量を変化させることができるため、この検出信号ひいては検出物理量を上記ノイズの影響の一層少ない状態で、つまり、SN比の低下やDCオフセットの発生の一層少ない状態で検出することができる。
請求項3記載の物理量検出装置および請求項11記載の物理量検出方法によれば、上記の電気信号の基本波成分に対する偶数次高調波成分のうちの少なくとも1つの偶数次高調波成分と同じ周波数成分で主として構成される波形状に上記物理系の第1物理量を変化させるため、この物理系から出力される第2物理量としての検出信号の基本波成分をこの偶数次高調波成分と同じ周波数成分に容易に一致させることができる。したがって、この物理量検出装置および物理量検出方法によれば、検出信号の基本波成分の周波数を上記ノイズの基本波成分(上記電気信号の基本波成分)およびその奇数次高調波成分とは異なる周波数に容易に規定することができるため、検出部は、この検出信号をこのノイズの影響の極めて少ない状態で、つまり、SN比の低下やDCオフセットの発生の極めて少ない状態で確実に検出することができる。これにより、この物理量検出装置および物理量検出方法によれば、検出物理量についても、この検出信号に基づいてSN比の低下やDCオフセットの発生の極めて少ない状態で確実に検出することができる。
請求項4記載の物理量検出装置および請求項12記載の物理量検出方法によれば、物理量変化部が検出電極と検出対象との間の静電容量を第1物理量として変化させるため、検出対象と検出電極との間に絶縁体が存在する場合であっても、検出対象の検出物理量を非接触で検出することができる。また、物理量変化部が検出対象に対向して配置した検出電極に振動を直接供給する構成を採用することもでき、この構成では、検出対象と検出電極との間に絶縁体が存在しないときであっても、検出対象と検出電極との間の静電容量を変化させることができることから、この構成の物理量検出装置および物理量検出方法によれば、検出対象の検出物理量を非接触で検出することができる。
請求項5記載の物理量検出装置および請求項13記載の物理量検出方法によれば、交番磁界によって変形する磁歪素子で発生する振動で上記物理系の第1物理量を変化させるため、この第1物理量を高い周波数で変化させることができることから、第2物理量としての検出信号の周波数についても高い周波数にすることができ、これにより検出物理量を検出する際の応答を速めることができる。
請求項6記載の物理量検出装置および請求項14記載の物理量検出方法によれば、交番磁界がゼロのときに変位量がゼロになるように磁歪素子を磁気的にバイアスしたことにより、変化する第1物理量の基本波成分、ひいては第2物理量として検出される検出信号の基本波成分の周波数を、ノイズの発生要因となる電気信号の基本波成分の2倍(つまり、電気信号の周波数成分とは異なる周波数)に確実にすることができる。このため、この物理量検出装置および物理量検出方法によれば、検出部が検出信号をノイズの影響の極めて少ない状態で検出することができる。これにより、この物理量検出装置および物理量検出方法によれば、検出物理量についても、この検出信号に基づいてSN比の低下やDCオフセットの発生の極めて少ない状態で確実に検出することができる。
請求項7記載の物理量検出装置および請求項15記載の物理量検出方法によれば、電気信号の基本波成分の周波数に対する偶数次高調波成分のうちの少なくとも1つの偶数次高調波成分と同じ周波数成分で主として構成される信号である同期信号と検出信号との相関をとることで検出物理量を検出するため、外乱の影響が少ない状態で検出物理量を検出することができる。
請求項8記載の物理量検出装置および請求項16記載の物理量検出方法によれば、電気信号の基本波成分に対する偶数次高調波成分のうちの最も高レベルの2次高調波成分で主として構成される検出信号を第2物理量として検出することにより、2次高調波成分以外の偶数次高調波成分で主として構成される検出信号を第2物理量として検出する構成と比較して、SN比の低下の一層少ない状態で検出物理量を検出することができる。また、この物理量検出装置および物理量検出方法によれば、電気信号の基本波成分に対する偶数次高調波成分のうちの最も高レベルの2次高調波成分の周波数で第1物理量を変化させるようにしたことにより、この物理系から出力される第2物理量の基本波成分のレベルも高めることができることから、SN比の低下の一層少ない状態で検出物理量を検出することができる。
以下、物理量検出装置および物理量検出方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
最初に、物理量検出方法を実行する物理量検出装置の構成について、図面を参照して説明する。
この物理量検出装置は、検出対象を含む物理系についての第1物理量を変化させた際にこの物理系に生じる第2物理量に基づいてこの検出対象の検出物理量を検出する装置であり、以下の例ではこの物理量検出装置の一例として、検出対象の検出物理量としての電圧を検出する電圧検出装置を例に挙げて、物理量検出方法としての電圧検出方法と併せて説明する。
図1に示す物理量検出装置としての電圧検出装置1は、非接触型の電圧検出装置であって、一例として、検出電極11、発振回路12、振動体13、電流電圧変換回路14、バッファアンプ15、検波回路16、位相調整回路17、出力回路18、分周回路19および駆動回路20を備え、絶縁体51で被覆された検出対象52に生じている検出物理量としての電圧V1を非接触で(検出電極11を検出対象52に直接接触させることなく)検出可能に構成されている。
本例では、絶縁体51および検出対象52は、検出電極11と共に物理系を構成する。この場合、検出対象52は、図1に示すように、その表面における一部の部位が絶縁体51で被覆されていてもよいし、図3,4,5に示すように、表面全域が絶縁体51で被覆されていてもよい(例えば、検出対象52は、外周面全域が絶縁被覆で覆われた被覆電線の芯線でもよい)。また、絶縁体51は、1種類の絶縁材料で構成された単層構造であってもよいし、それぞれ異なる種類の絶縁材料で構成された複数の層が積層されてなる多層構造であってもよい。
検出電極11は、検出対象52を被覆する絶縁体51の表面に直接的に接触、またはこの表面に接(密着)して配設された他の絶縁体(空気などの気体以外の絶縁体)を介在させた状態で間接的に接触させ得る形状に構成されている。この場合、検出電極11は、絶縁体51の表面に密着により近い状態で接触させるのが好ましい。このため、例えば、絶縁体51の表面が平面状のときには、これに対応して、絶縁体51の表面との接触面が平面状に形成された形状に構成され、絶縁体51の表面が円筒状のときには、これに対応して、絶縁体51の表面との接触面が凹面状に形成された形状に構成されている。また、このようにして配設された検出電極11は、検出対象52に対して対向した状態で配置される。
発振回路12は、例えば、数kHz〜数MHz程度の一定の周波数(所定周波数)の基準信号S1を生成して出力する。この場合、発振回路12は、この基準信号S1を作動中において連続的に出力する構成を採用することもできるし、一定時間ずつ断続して周期的に出力する構成を採用することもできるし、測定時にのみ単発的に一定時間だけ出力する構成を採用することもできる。また、発振回路12は、例えば、矩形波信号、三角波信号、または正弦波信号などを基準信号S1として出力する。
分周回路19は、発振回路12で生成される基準信号S1を入力すると共にN分周(Nは偶数)することにより、分周信号S3を生成する。本例では一例として、分周回路19は、基準信号S1を2分周(N=2)して分周信号S3を生成する。また、分周回路19は、例えば、矩形波信号、三角波信号、または正弦波信号などを分周信号S3として出力する。
駆動回路20は、物理量変化部の一部として機能して、分周回路19で生成される分周信号S3を入力すると共に、分周信号S3に基づいて分周信号S3と同じ周波数の駆動信号Sdvを生成する。後述するように、振動体13は一例として、磁歪素子13aおよびコイル(有芯・空芯を問わない)13bを備えて構成されている。このため、本例では駆動回路20は、コイル13bに供給するための駆動電流Idvを駆動信号Sdvとして生成する。
また、駆動回路20は、正側半サイクルの波形と負側半サイクルの波形とが対称となっている交流電流(正側および負側の波形が対称となっている矩形波電流、三角波電流または正弦波電流などの直流電流成分を含まない電流)を駆動電流Idvとして生成する。この場合、駆動電流Idvは、正側および負側の波形が対称となっている矩形波電流または三角波電流として生成される構成のときには、分周信号S3の基本波成分を含む奇数次成分で主として構成される電流(理論上は、この基本波成分を含む奇数次成分のみで構成される電流)となり、正弦波電流として生成される構成のときには、分周信号S3の基本波成分で主として構成される電流(理論上は、基本波成分のみで構成される電流)となる。
振動体13は、物理量変化部の一部として機能して、駆動回路20において生成される駆動電流Idvで駆動されて振動する。したがって、振動体13は、駆動電流Idvという電気信号としての物理量から機械的振動(変位量)という異種の物理量を生成して、直接的または間接的に接触する部材(本例では、上記の物理系を構成する検出電極11や絶縁体51)にこの生成した振動を伝達(供給)する(つまり、検出電極11や絶縁体51を振動させる)。また、検出電極11と検出対象52との間に形成される静電容量(物理系についての第1物理量の一例)は、この振動によってその容量値が変化させられる。
本例では振動体13は、図1に示すように、磁歪素子(超磁歪素子)13aおよびコイル13bを備えた磁歪振動子で構成されている。磁歪素子13aは、発生する機械的振動を伝達させる部位(図1では絶縁体51)に密着して配設されている。また、磁歪素子13aは磁気的にバイアスされていない構成(具体的には直流磁界でバイアスされていない構成)となっている。コイル13bは、上記の駆動電流Idvの供給を受けて、交番磁界を発生させる。磁歪素子13aは、この交番磁界が作用する領域に配置されて、この交番磁界によって変形(振動)する。
本例では、上記したように、磁歪素子13aは直流磁界でバイアスされていない構成で、交番磁界の作用する領域内に配設されている。言い換えれば、磁歪素子13aは、図2に示すように、駆動磁界として印加される交番磁界がセロのときに変位量(変形量)がゼロ(またはほぼゼロ)になるように磁気的にバイアスされて、交番磁界に対して変位量が同図に示すように変化する特性を有している。このため、同図に示すように、磁歪素子13aは、交番磁界が作用する状態において、この交番磁界の周波数の2倍の周波数(振動周波数。基準信号S1と同じ周波数)で振動する。つまり、本例の電圧検出装置1では、振動体13は、駆動電流Idvの基本波成分に対する偶数次高調波成分のうちの少なくとも1つの偶数次高調波成分(この例では2次高調波成分)と同じ周波数成分で主として構成される波形状に絶縁体51(および検出電極11)を振動させることで、検出電極11と検出対象52との間に形成される静電容量の容量値を変化させる。
この場合、振動体13は、検出電極11と検出対象52との間に形成される静電容量を、駆動電流Idvとして供給される交流電流の波形状に変化させる。つまり、振動体13は、駆動電流Idvが正弦波電流(基本波成分のみで構成される電流)のときには、図2に示すように、交番磁界も時間と共に正弦波状に(基本波成分のみで構成される交流磁界として)変化し、それに伴い振動も時間と共に交番磁界の2倍の周波数で正弦波状に(基本波成分のみで構成される交流振動として)変化することから、容量値が時間と共に2倍の周波数(駆動電流Idvの基本波成分に対する偶数次高調波成分のうちの少なくとも1つの周波数。本例では2次高調波成分と同じ周波数)で正弦波状に変化するように静電容量を変化させる。同様にして、振動体13は、図示はしないが、駆動電流Idvが三角波電流(基本波成分およびその奇数次高調波成分で構成される電流)のときには、容量値が時間と共に上記したような2倍の周波数で三角波状に変化するように静電容量を変化させ、駆動電流Idvが矩形波電流(基本波成分およびその奇数次高調波成分で構成される電流)のときには、容量値が時間と共に上記したような2倍の周波数で矩形波状に変化するように静電容量を変化させる。
以上の構成により、駆動回路20および振動体13で構成される物理量変化部は、分周信号S3の基本波成分(基準信号S1の1/2の周波数の基本波成分)で主として構成される電気信号である駆動電流Idv、または分周信号S3の基本波成分およびその奇数次高調波成分で主として構成される電気信号である駆動電流Idvに基づいて電気信号とは異種の物理量である振動を、上記したような2倍の周波数で生成し、この振動に基づいて上記物理系についての第1物理量としての上記の静電容量を変化させる(物理量変化ステップの実行)。
なお、この振動体13は、駆動回路20で生成される駆動信号Sdvに基づいて、この駆動信号Sdvの基本波成分に対する偶数次高調波成分のうちの少なくとも1つの偶数次高調波成分(例えば、上記の例のように2次高調波成分)と同じ周波数成分で主として構成される波形状に絶縁体51(および検出電極11)を振動させ得る構成である限り、磁歪振動子以外の振動子(例えば、超音波振動子、圧電振動子、セラミック振動子、電磁誘導型振動子、または回転子を用いた振動子など)で構成することができる。
電流電圧変換回路14は、一例として、演算増幅器14aおよび帰還回路としての帰還抵抗14bを備えて構成されて、検出部の一部として機能する。演算増幅器14aは、非反転入力端子が基準電位(グランド)に接続されて基準電圧(ゼロボルト)に規定され、反転入力端子が検出電極11に接続され、かつ反転入力端子と出力端子との間に帰還抵抗14bが接続されている。なお、本例では一例として、1個の帰還抵抗14bで帰還回路を構成しているが、複数の抵抗の直列回路または並列回路や、直列回路および並列回路を組み合わせた直並列回路で帰還回路を構成することもできる。
この電流電圧変換回路14は、後述するようにして、振動体13からの振動によって検出対象52と検出電極11との間に位置する絶縁体51の静電容量の容量値(つまり、検出対象52と検出電極11との間の容量値)が変化しているときに、検出対象52の電圧V1と検出電極11の電圧(演算増幅器14aの各入力端子間がバーチャルショート状態のため、基準電圧)との電位差Vdi(本例では基準電圧はゼロボルトのため、電圧V1)に起因して、この電位差Vdiの大きさに応じた電流値(振幅)で検出対象52から検出電極11を経由して基準電位に流れる検出電流I(物理系についての第1物理量としての静電容量を変化させた際にこの物理系に生じる第2物理量の一例)を検出信号として検出すると共に検出電圧信号V2に変換して出力する(検出ステップの実行)。
つまり、この電流電圧変換回路14では、検出対象52の電圧V1と、検出電極11の電圧(基準電圧)との間の電位差Vdi(本例では電圧V1)に応じて振幅が変調された振動体13の振動に同期する検出電流Iを検出して検出電圧信号V2として出力する。この検出電圧信号V2も、電位差Vdi(本例では電圧V1)に応じて振幅が変調された信号であるため、検出電流Iと同様に、物理系についての第1物理量としての静電容量を変化させた際にこの物理系に生じる第2物理量としての検出信号である。
この場合、検出電流Iは、振動体13の振動周波数で絶縁体51の静電容量の容量値が変化することに起因して発生するため、振動周波数と同じ周波数(基準信号S1と同じ周波数)の交流信号(駆動電流Idvの基本波成分に対する偶数次高調波成分のうちの少なくとも1つの偶数次高調波成分(この例では2次高調波成分)と同じ周波数成分で主として構成される物理量)であって、その振幅が上記した電位差Vdi(本例では電圧V1)に応じたレベルに変調された(つまり、電圧V1が振幅に反映された)交流信号として発生する。このため、検出電圧信号V2もまた、振動周波数と同じ周波数(基準信号S1と同じ周波数)の交流信号であって、その振幅が電位差Vdi(本例では電圧V1)に応じたレベルに変調された交流信号として電流電圧変換回路14から出力される。
なお、電流電圧変換回路14は、一例として上記したように、演算増幅器14aおよび帰還抵抗14bを有する構成として、一般的にその振幅が極めて小さな(微弱な)検出電流Iを感度よく検出して検出電圧信号V2に変換し得るようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、より簡易な構成で電流電圧変換回路14を実現することが望まれる場合には、上記の構成に代えて、図示はしないが、検出電極11に一端が接続されると共に他端が基準電位(グランド)に接続された抵抗を有する構成を採用することもできる。この構成の電流電圧変換回路14では、この抵抗が、検出対象52から検出電極11を経由して基準電位(基準電圧)に流れる検出電流Iを検出電圧信号V2に変換する。そして、この抵抗の一端において変換された検出電圧信号V2が、後述するバッファアンプ15に出力される。
バッファアンプ15は、高入力インピーダンス、かつ低出力インピーダンスのアンプで構成されて検出部の一部として機能して、電流電圧変換回路14から出力される検出電圧信号V2を入力して低インピーダンスで出力する。
検波回路16は、バッファアンプ15から入力した検出電圧信号V2(基準信号S1と同じ周波数成分で主として構成される信号)と、位相調整回路17から入力した同期信号S2(基準信号S1と同じ周波数成分で主として構成される信号)との相関をとることで、検出電圧信号V2の振幅成分(電圧V1)を検出(抽出)して、直流成分で構成される検波出力(電圧信号)V3として出力する(相関ステップを実行する)相関部として機能する。この検波回路16は、一例として、乗算器、アナログスイッチで構成された切替スイッチ(マルチプレクサ)、および相関器のいずれかを備えて、同期検波回路として構成されている。したがって、検波回路16は、具体的には、検出電圧信号V2を同期信号S2で同期検波して、検波出力V3を出力する。
位相調整回路17は、発振回路12からの基準信号S1を入力すると共に遅延させて同期信号S2として出力する。位相調整回路17は、この基準信号S1に対する同期信号S2の遅延量を調整することが可能に構成されている。また、この遅延量は、検波回路16に入力される交流信号としての検出電圧信号V2の位相と、同期信号S2の位相とが一致するように予め調整されている。
出力回路18は、例えば、検波出力V3の電圧値を検出して表示する電圧計や、検波出力V3を入力して低インピーダンスで出力するバッファ回路や、検波出力V3をA/D変換してその電圧値を示す電圧データを出力するA/D変換器などで構成されている。
次いで、電圧検出装置1による検出対象52の電圧V1についての検出動作について説明する。なお、電圧V1は、直流電圧であってもよいし、交流電圧であってもよい。本例では一例として、電圧V1は直流電圧であるものとする。
まず、図1に示すように、検出対象52を被覆する絶縁体51の表面に検出電極11および振動体13(具体的には磁歪素子13a)を接触(密着)させる。この際には、同図に示すように、絶縁体51における検出対象52との接触面に対する背面側の表面に、検出電極11および振動体13の双方を離間させて接触させてもよいし、図2に示すように、絶縁体51の表面に接触させた検出電極11に振動体13を接触(密着)させてもよい。なお、図3に示すように、検出電極11に振動体13を接触させる構成を採用したときには、振動体13において発生する電気信号の検出電極11への影響を軽減するため、同図に示すように、検出電極11と振動体13との間にシールドシート(例えば、電界や磁界をシールドするシート)53を介在させる構成が好ましい。また、これらの部材間(絶縁体51と検出電極11との間、絶縁体51と振動体13との間、検出電極11(またはシールドシート53)と振動体13との間)の密着性を向上させるため、部材間に他の絶縁体(例えば、絶縁シートやジェル状の絶縁体)を介在させてもよい。
また、図4に示すように、検出対象52の外周が全域に亘って絶縁体51に覆われている構成のときには、絶縁体51における検出電極11を接触させた表面の背面側に振動体13を接触させるようにすることもできる。
この状態において、発振回路12から基準信号S1が出力されると、分周回路19がこの基準信号S1を2分周して分周信号S3を生成し、駆動回路20が分周信号S3に基づいて分周信号S3と同じ周波数の駆動信号Sdv(本例では駆動電流Idv)を生成する。振動体13は、この駆動電流Idvで駆動されて、駆動電流Idvの2倍の周波数(基準信号S1と同じ周波数)で振動する。一方、位相調整回路17は、基準信号S1を入力すると共に遅延させることにより、同期信号S2を出力する。
この振動体13の振動(機械的振動)は振動体13と接触している絶縁体51に伝わるため、絶縁体51も、振動体13の振動周波数と同じ周波数(基準信号S1の2倍の周波数)で振動する。この場合、検出対象52と検出電極11との間の距離または密度(絶縁体51の密度)が振動体13の振動周波数と同じ周波数で変化するため、検出対象52と検出電極11との間の静電容量の容量値もこの振動周波数と同じ周波数で変化する(物理用変化ステップ)。また、この静電容量の容量値が変化するのに伴い、振幅が電位差Vdi(電圧V1)に応じたレベルに変調され、かつ振動周波数と同じ周波数の交流信号である検出電流Iが、検出対象52、検出電極11および電流電圧変換回路14の帰還抵抗14bを含む経路に流れる。
電流電圧変換回路14は、この検出電流Iを検出電圧信号V2に変換して出力し、バッファアンプ15が、電流電圧変換回路14から出力されるこの検出電圧信号V2を入力して低インピーダンスで出力する(検出ステップ)。検波回路16は、バッファアンプ15から出力されるこの検出電圧信号V2を、位相調整回路17から出力される同期信号S2で同期検波することにより、検出電圧信号V2の振幅成分(電圧V1)を外乱の影響が少ない状態で検出して検波出力(電圧信号)V3として出力回路18に出力する(相関ステップ)。
また、振動体13のコイル13bを駆動するために駆動回路20で生成される駆動信号Sdv(駆動電流Idv)は、一般的に高パワーの信号であり、このため、この駆動電流Idvが流れる信号ラインやコイル13bからは、他の信号ラインや他の電子回路への回り込みが発生し得る程度のパワーのノイズが発生することがある。しかしながら、この電圧検出装置1では、この駆動信号Sdv(駆動電流Idv)の周波数は、検波回路16に入力される検出電圧信号V2および同期信号S2の周波数とは異なる。このため、検波回路16は、このノイズの影響についても極めて少ない状態で検波出力(電圧信号)V3を出力する。
出力回路18は、この検波出力(電圧信号)V3を入力して、例えば、アナログ電圧計で構成されているときには、検波出力V3の電圧値(電位差Vdi(電圧V1)と比例する電圧値)に基づいて、電位差Vdi(電圧V1)の電圧値を示す数値まで指針を移動させることで、電位差Vdi(電圧V1)の電圧値を目視し得る状態で出力する。また、出力回路18は、例えば、バッファ回路で構成されているときには、検波出力V3を入力して低インピーダンスで外部に出力する(外部の計測器などに対して、検波出力V3に基づいて、電位差Vdi(電圧V1)の電圧値を検出できるように出力する)。また、出力回路18は、例えば、A/D変換器で構成されているときには、検波出力V3を入力してその電圧値を示す電圧データ(電位差Vdi(電圧V1)の電圧値を示す電圧データでもある)を、内部に設けられた処理部(不図示)や外部の処理装置に出力する。
このように、この物理量検出装置としての電圧検出装置1では、物理量変化部として機能する振動体13が、駆動回路20で生成される駆動電流Idv(分周信号S3の基本波成分を含む奇数次成分で主として構成される(理論上は、この基本波成分を含む奇数次成分のみで構成される)電気信号)に基づいて、物理系(検出電極11、絶縁体51および検出対象52を含む系)についての第1物理量(本例では静電容量)を変化させる。また、検出部として機能する電流電圧変換回路14およびバッファアンプ15がこの際に物理系に生じる検出電流I(第2物理量)、すなわち、検出物理量としての電圧V1が振幅に反映され、駆動電流Idvの基本波成分に対する偶数次高調波成分のうちの少なくとも1つの偶数次高調波成分(2次高調波成分)と同じ周波数成分で主として構成される検出信号としての検出電流Iを検出して検出電圧信号V2に変換して出力する。また、相関部として機能する検波回路16が、検出電圧信号V2と同期信号S2とから、検出電圧信号V2の振幅成分(電圧V1)を示す検波出力V3を検出する。
また、電圧検出装置1が実行する物理量検出方法では、駆動電流Idv(分周信号S3の基本波成分を含む奇数次成分で主として構成される(理論上は、この基本波成分を含む奇数次成分のみで構成される)電気信号)に基づいて、上記の物理系についての第1物理量(本例では静電容量)を変化させる物理量変化ステップと、検出物理量としての電圧V1が振幅に反映され、かつ分周信号S3の基本波成分(駆動電流Idvの基本波成分でもある)に対する偶数次高調波成分のうちの少なくとも1つの偶数次高調波成分(2次高調波成分)と同じ周波数成分で主として構成される検出信号としての検出電流Iを第2物理量として検出する検出ステップとを実行して、電圧V1を示す検波出力V3を検出する。
したがって、この物理量検出装置としての電圧検出装置1および物理量検出方法によれば、一般的に高パワーの信号である駆動電流Idvが流れる信号ラインやコイル13bから、回り込みの発生し得る程度のパワーのノイズが発生したとしても、検出部として機能する電流電圧変換回路14で検出される検出電流Iは、このノイズの周波数成分(主として駆動電流Idvの基本波成分を含む奇数次成分)とは異なる周波数成分(主として駆動電流Idvの基本波成分に対する偶数次高調波成分)で構成されているため、電流電圧変換回路14は、この検出電流Iを上記ノイズの影響の極めて少ない状態で、つまり、SN比の低下やDCオフセットの発生の極めて少ない状態で検出することができる。これにより、この電圧検出装置1および物理量検出方法によれば、この検出電流Iに基づいて検出物理量としての電圧V1についても、SN比の低下やDCオフセットの発生の極めて少ない状態で検出することができる。
また、この物理量検出装置としての電圧検出装置1および物理量検出方法では、物理量変化部として機能する振動体13が、電気信号である分周信号S3とは異種の物理量である機械的振動(変位量)を生成し、この機械的振動に基づいて上記物理系の第1物理量(本例では静電容量)を変化させることで、検出電流Iを検出する。したがって、この物理量検出装置としての電圧検出装置1および物理量検出方法によれば、回り込み等の原因となるノイズの発生のおそれのない機械的振動によって第1物理量を変化させることができるため、この検出電流I、ひいては検出電流Iに基づいて検出される電圧V1を上記ノイズの影響の一層少ない状態で、つまり、SN比の低下やDCオフセットの発生の一層少ない状態で検出することができる。
また、この物理量検出装置としての電圧検出装置1および物理量検出方法によれば、分周信号S3の基本波成分に対する偶数次高調波成分のうちの少なくとも1つの偶数次高調波成分(2次高調波成分)と同じ周波数成分で主として構成される波形状に上記物理系の第1物理量(本例では静電容量)を変化させるため、この物理系から出力される第2物理量としての検出電流Iの基本波成分をこの偶数次高調波成分(2次高調波成分)と同じ周波数成分に容易に一致させることができる。したがって、この物理量検出装置としての電圧検出装置1および物理量検出方法によれば、検出電流Iの基本波成分の周波数をノイズの基本波成分(駆動電流Idvの基本波成分)およびその奇数次高調波成分とは異なる周波数に容易に規定することができるため、電流電圧変換回路14は、この検出電流Iをこのノイズの影響の極めて少ない状態で、つまり、SN比の低下やDCオフセットの発生の極めて少ない状態で確実に検出することができる。これにより、この電圧検出装置1および物理量検出方法によれば、この検出電流Iに基づいて検出物理量としての電圧V1についても、SN比の低下やDCオフセットの発生の極めて少ない状態で確実に検出することができる。
また、この物理量検出装置としての電圧検出装置1および物理量検出方法によれば、物理量変化部として機能する振動体13が検出電極11と検出対象52との間の静電容量を第1物理量として変化させるため、検出対象52と検出電極11との間に絶縁体51が存在する場合であっても、検出対象52の電圧V1を非接触で検出することができる。なお、図示はしないが、検出対象52に対向して配置した検出電極11に対して振動体13から振動を直接供給する構成を採用することもできる。この構成では、検出対象52と検出電極11との間に絶縁体51が存在しないときであっても、検出電極11を振動させることができ、検出対象52と検出電極11との間の容量値を変化させることができる。したがって、振動体13から振動を検出電極11に直接供給する構成の電圧検出装置1および物理量検出方法によれば、検出対象52と検出電極11との間に絶縁体51が存在しないときであっても、検出対象52の電圧V1を非接触で検出することができる。
また、この物理量検出装置としての電圧検出装置1および物理量検出方法によれば、交番磁界によって変形する磁歪素子13aで発生する振動で上記物理系の第1物理量(本例では静電容量)を変化させるため、この第1物理量を高い周波数で変化させることができることから、第2物理量としての検出電流Iを検出する際の応答を速めることができる。
また、この物理量検出装置としての電圧検出装置1および物理量検出方法によれば、交番磁界がゼロのときに変位量がゼロになるように磁歪素子13aを磁気的にバイアスしたことにより、変化する第1物理量(本例では静電容量)の基本波成分、ひいては第2物理量として検出される検出電流Iの基本波成分の周波数を、ノイズの発生要因となる駆動電流Idvの基本波成分の2倍(つまり、駆動電流Idvの周波数成分(分周信号S3の基本波成分およびその奇数次高調波成分と同じ)とは異なる周波数)に確実にすることができる。このため、この物理量検出装置としての電圧検出装置1および物理量検出方法によれば、電流電圧変換回路14が検出電流Iをノイズの影響の極めて少ない状態で検出することができる。
また、この物理量検出装置としての電圧検出装置1および物理量検出方法によれば、駆動回路20で生成される駆動電流Idvの基本波成分の周波数に対する偶数次高調波成分のうちの少なくとも1つの偶数次高調波成分(本例では2次高調波成分)と同じ周波数成分で主として構成される信号である同期信号S2と検出信号としての検出電流I(具体的にはこの検出電流Iを電圧に変換して得られる検出電圧信号V2)との相関をとる(つまり、検出電圧信号V2を同期信号S2で同期検波する)ことで検波出力(電圧信号)V3、さらには検波出力V3に基づいて電圧V1を検出するため、外乱の影響が少ない状態で電圧V1を検出することができる。
また、この物理量検出装置としての電圧検出装置1および物理量検出方法によれば、駆動電流Idvの基本波成分に対する偶数次高調波成分のうちの最も高レベルの2次高調波成分で主として構成される検出信号としての検出電流Iを第2物理量として検出することにより、2次高調波成分以外の偶数次高調波成分で主として構成される検出信号を第2物理量として検出する構成と比較して、SN比の低下の一層少ない状態で検波出力(電圧信号)V3、ひいては電圧V1を検出することができる。また、この物理量検出装置としての電圧検出装置1および物理量検出方法によれば、駆動電流Idvの基本波成分に対する偶数次高調波成分のうちの最も高レベルの2次高調波成分で主として構成される振動を発生させて、この振動で上記物理系の第1物理量を変化させるようにしたことにより、この物理系から出力される第2物理量(本例では検出電流I)の基本波成分のレベルも高めることができることから、SN比の低下の一層少ない状態で検波出力(電圧信号)V3、ひいては電圧V1を検出することができる。
また、上記の電圧検出装置1および物理量検出方法では、駆動電流Idvの基本波成分に対する偶数次高調波成分として、最も好ましい2次高調波成分を用いる構成を採用しているが、偶数次高調波成分として4次以上の高調波成分を用いることもできる。
なお、上記の例では、検出対象52を被覆している絶縁体51に検出電極11を直接接触させる構成を採用しているが、上記したように、絶縁体51は多層構造でもよいことに着目して、図5に示すように、電圧検出装置1を絶縁材料で形成されたケース21内に収納(配設)して、検出電極11および振動体13を露出させない構成を採用することもできる。この構成では、同図に示すように、ケース21を構成する複数の壁部のうちの外面が絶縁体51と接触させられる他の絶縁体としての壁部21aの内面に検出電極11を配設する。なお、振動体13については、その振動をケース21を介して絶縁体51に伝えることができる限り、ケース21を構成するいずれの壁部に配設してもよいが、検出電極11と共に共通の壁部21aに配置することで、その振動を最も効率的に絶縁体51に伝えることが可能となる。また、この図5では、検出電極11および振動体13以外の構成要素については図示を省略している。
このように、電圧検出装置1を絶縁材料で形成されたケース21内に収納(配設)して、検出電極11および振動体13を露出させない構成とすることにより、検出電極11および振動体13を個別に絶縁体51に接触させる手間が省けることから、電圧V1の検出作業をより効率よく実施することができる。
また、上記したように、電圧検出装置1を絶縁材料で形成されたケース21内に収納する構成を採用したときには、図5に示すように、ケース21にシールド部材(例えば、ケース21の内面へのシールド部材54や、ケース21の外面へのシールド部材55)を配設する構成を採用することもできる。この場合、検出電極11と検出対象52との間にシールド部材が介在しないようにする。また、図5において、ケース21における検出電極11と振動体13とが配置される壁部(絶縁体51に接触させられる上壁)のみを絶縁材料として、シールド部材54やシールド部材55が配置される壁部(側壁および下壁)をシールド材で構成して、この壁部自体をシールド部材とする構成を採用することもできる。また、このシールド部材は、電圧検出装置1を構成する上記の各回路(検出電極11、発振回路12、振動体13、電流電圧変換回路14、バッファアンプ15、検波回路16、位相調整回路17および出力回路18)の基準電位(図1に示される演算増幅器14aの非反転入力端子が接続された基準電位)に電気的に接続される。
この構成によれば、このシールド部材によって電圧検出装置1が覆われるため、電圧検出装置1を構成する上記の各回路(検出電極11、発振回路12、振動体13、電流電圧変換回路14、バッファアンプ15、検波回路16、位相調整回路17および出力回路18)への外乱(外部磁界や外部電界など)の影響を低減することができるため、外乱の影響が一層少ない状態で検波出力V3を検出して出力することが可能になる。
また、物理量検出装置および物理量検出方法の一例として、検出対象の検出物理量としての電圧を検出する電圧検出装置および電圧検出方法を例に挙げて説明したが、検出対象の検出物理量としては、電圧以外に電流や磁界など種々の物理量でもよいし、物理系についての変化させる第1物理量としては、磁界や透磁率など種々の物理量でもよい。また、物理系についての検出する第2物理量としては、電流、電圧および変位など種々の物理量でもよい。