JP2016090675A - クリーニングブレード及びクリーニング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】鳴きが発生せず、被クリーニング部材の表面の凹凸や異物への追従性不足によるすり抜けも発生しないクリーニングブレードを提供する。
【解決手段】ウレタンゴムを含む弾性体の部分と、該弾性体の部分を支持する支持部材とを具備し、該弾性体の自由端部分は、その先端側に、該被クリーニング部材の表面に当接する主面から深さ方向にヤング率が漸減する第1の領域と、該第1の領域よりも該支持部材に近い側に、該主面から深さ方向にヤング率が変化しない第2の領域とを有し、第1の領域おいて、該主面、該主面から深さ20μmおよび深さ50μmの各位置におけるヤング率をそれぞれ、Y、Y20およびY50とし、該主面と深さ20μmの位置の間のヤング率の平均変化率をΔY0−20とし、該主面から深さ20μmの位置と深さ50μmの位置の間のヤング率の平均変化率をΔY20−50とし、第2の領域における主面のヤング率をPとしたときに、特定の関係が満たされるクリーニングブレード。
【選択図】図1

Description

本発明はクリーニングブレード及びクリーニング装置に関する。
一般に、電子写真感光体(以下単に「感光体」とも表記する。)の表面(外周面)に形成されたトナー像が転写材または中間転写体に転写された後や、トナー像が中間転写体から転写材にさらに転写された後も、感光体および/または中間転写体の表面には、トナーの一部が残留しやすい。そのため、感光体や中間転写体の表面に残留しているトナーを除去する必要があり、通常、この除去は、クリーニングブレードによって行われている。クリーニングブレードとしては、例えば、0.5mm以上3mm以下の厚さ(幅)を有し、被クリーニング部材(感光体や中間転写体など)と相対する面の長手方向の長さが該厚さよりも長いブレード状(板状)のものが用いられる。
クリーニングブレードは、例えば、電子写真装置内において、金属製のホルダーに取り付けられ、固定されて使用される。また、例えば、クリーニングブレードのエッジ部分(先端稜線部)が被クリーニング部材に当接するように設置される。また、クリーニングブレードには、耐摩耗性や永久歪みの程度などに優れていることから、ウレタンゴム製のものがよく使用される。また、近年の高画質化の要求に応えるべく開発されたトナーとして、小粒径で高球形度の(球形に近い)トナーが知られている。この小粒径で高球形度のトナーは、比較的転写効率が高いという特長があり、高画質化の要求に応えることが可能である。
しかしながら、小粒径で高球形度のトナーは、クリーニングブレードを用いて被クリーニング部材の表面から除去しようとしても、十分に除去することが難しく、クリーニング不良が発生する場合があるという課題を有している。これは、小粒径で高球形度のトナーは、そうではないトナーに比べて、クリーニングブレードと被クリーニング部材との間に形成されるわずかな隙間をすり抜けやすいからである。
このようなトナーのすり抜けを抑制するには、クリーニングブレードと被クリーニング部材との当接圧を高めて、上記隙間を小さくすることが効果的である。
しかしながら、クリーニングブレードと被クリーニング部材との当接圧を高めるほど、クリーニングブレードと被クリーニング部材との間の摩擦力が高まる傾向がある。そして、クリーニングブレードと被クリーニング部材との間の摩擦力が高くなるほど、クリーニングブレードが被クリーニング部材の表面の移動方向に引っ張られやすくなり、クリーニングブレードのエッジ部分が捲れてしまう場合がある。また、クリーニングブレードが、その捲れようとする力に抗して元の状態に戻ろうとする際に、異音(鳴き)が発生する場合がある。特に高温高湿環境下ではクリーニングブレードと被クリーニング部材の間の凝着力が高まってエッジ部分の捲れが大きくなり鳴きが発生し易くなる。
このような鳴きを抑制するためにはクリーニングブレード当接部を高硬度にして、クリーニングブレードと被クリーニング部材との摩擦力を低減させ、微小な振動を抑制することが効果的である。クリーニングブレードの表層の硬度が高いほど、被クリーニング部材表面との真実接触面積が小さくなり、摩擦力は低減する。特許文献1では、クリーニングブレード先端稜線部を1辺に有し、クリーニングブレードの厚み方向に平行な面である先端面に硬い表面層を、クリーニングブレードの長手方向において層厚が不均一になるよう形成する技術が記載されている。
また、特許文献2では、100%モジュラスの異なる2層のクリーニングブレードで、さらにエッジ部に100%モジュラスの高いコート層を設ける技術が記載されている。
特開2010−281974号公報 特開2013−190642号公報
しかしながら、本発明者らの検討の結果、上記の従来技術では、以下のような課題が存在することがわかった。
特許文献1および2に記載されている技術では、トナーや外添剤がクリーニングニップにほとんど供給されないような厳しい条件では低摩擦性を維持することができず、鳴きを完全に抑制することはできなかった。そのような厳しい条件でも低摩擦を維持するためにはクリーニングブレード先端の硬度をより硬くすればよい。しかしながら、そうすると基層との硬度の違いが大きくなり過ぎてクリーニングブレードの表層割れや表層剥がれが発生したり、被クリーニング部材の表面凹凸に対してクリーニングブレードが追従せず、そこに生じた隙間からトナーすり抜けが発生していた。非画像領域にトナーや外添剤を現像し、それらを潤滑剤としてブレードニップに供給して鳴きを抑える手段もあるが、コストや環境の観点からそのような手段を用いない方が好ましい。
本発明の目的は、トナーや外添剤がほとんど供給されないような厳しい条件でも鳴きが発生せず、また、クリーニングブレードの表層剥がれや、被クリーニング部材の表面の凹凸や表面に存在しうる異物への追従性不足によるすり抜けも発生しないクリーニングブレードを提供することにある。
また、本発明の目的は、被クリーニング部材に当接させた弾性体の部分の振動が、支持部材に伝わりにくく、その結果として、弾性体の部分の、被クリーニング部材への当接状態を安定させ得るクリーニングブレードを提供することにある。
更に、本発明の目的は、安定して被クリーニング部材の表面をクリーニングすることのできるクリーニング装置を提供することにある。
本発明に係る第一の態様によれば、ウレタンゴムを含む弾性体の部分と、該弾性体の部分を支持する支持部材とを備え、該弾性体の部分を被クリーニング部材の表面に当接させることにより、該被クリーニング部材の表面をクリーニングする、クリーニングブレードであって、該弾性体の自由端部分は、その先端側に、該被クリーニング部材の表面に当接する主面から深さ方向にヤング率が漸減する第1の領域と、該第1の領域よりも該支持部材に近い側に、該主面から深さ方向にヤング率が変化しない第2の領域と、を有し、該第1の領域おいて、該主面、該主面から深さ20μmおよび深さ50μmの各位置におけるヤング率をそれぞれ、Y、Y20およびY50とし、該主面と該主面から深さ20μmの位置との間のヤング率の平均変化率ΔY0−20を下記式(5)で表し、該主面から深さ20μmの位置と深さ50μmの位置との間のヤング率の平均変化率ΔY20−50を下記式(6)で表し、該主面と同一平面上にある該第2の領域における表面のヤング率をPとしたときに、下記式(1)、(2)、(3)及び(4)の関係が満たされるクリーニングブレードが提供される。
10mgf/μm≦Y≦400mgf/μm (1)
50/Y≦0.5 (2)
ΔY20−50≦ΔY0−20 (3)
<Y (4)
ΔY0−20={(Y−Y20)/Y}/(20−0)μm (5)
ΔY20−50={(Y50−Y20)/Y20}/(50−20)μm (6)。
また、本発明に係る他の態様によれば、前記のクリーニングブレードを備えたクリーニング装置が提供される。
本発明によれば、トナーや外添剤がほとんど供給されないような厳しい条件でも鳴きが生じにくく、また、表層剥がれや、被クリーニング部材の表面の凹凸や表面に存在しうる異物への追従性不足によるすり抜けも発生し難いクリーニングブレードが提供される。
また、本発明によれば、被クリーニング部材に当接させた弾性体の部分の振動が、支持部材に伝わりにくく、その結果として、弾性体の部分の、被クリーニング部材への当接状態を安定させ得るクリーニングブレードを得ることができる。
さらに、本発明によれば、安定したクリーニング効果を奏するクリーニング装置を得ることができる。
図1は、クリーニングブレードの形状と自由長F及び領域Cの関係を示す図である。 図2は、クリーニングブレードの他の構成例を示す図である。 図3は、各種クリーニングブレードにおける領域Cと支持部材との距離dを示す図である。 図は、実施例1のクリーニングブレードのヤング率の評価結果を示すものである。 図5(a)は実施例2〜8のクリーニングブレードのヤング率の評価結果を示す図であり、図5(b)は比較例1〜3の同評価結果を示す図である。 図6(a)は比較例4〜6のクリーニングブレードのヤング率の評価結果を示す図であり、図6(b)は比較例7および8の同評価結果を示す図である。 図7(a)はクリーニングブレードのヤング率の大きさの違いを色の濃淡で示す模式図であり、図7(b)はクリーニングブレードのヤング率を測定する場所を示す模式図である。 図8は、クリーニングブレードの長手方向において、領域Cが、その幅が異なるように形成されている例を示す図である。 図9(a)は、Yが10mgf/μm未満のときの、図9(b)は、Yが10mgf/μm以上のときの、クリーニングブレードの当接状態を示す模式図である。
本発明に係るクリーニングブレードは、ウレタンゴムを含む弾性体の部分と、該弾性体の部分を支持する支持部材とを備え、該弾性体の部分を被クリーニング部材の表面に当接させることにより、該被クリーニング部材の表面をクリーニングする、クリーニングブレードであって、該弾性体の自由端部分は、その先端側に、該被クリーニング部材の表面に当接する主面から深さ方向にヤング率が漸減する第1の領域と、該第1の領域よりも該支持部材に近い側に、該主面から深さ方向にヤング率が変化しない第2の領域と、を有し、該第1の領域おいて、該主面、該主面から深さ20μmおよび深さ50μmの各位置におけるヤング率をそれぞれ、Y、Y20およびY50とし、該主面と該主面から深さ20μmの位置との間のヤング率の平均変化率ΔY0−20を下記式(5)で表し、該主面から深さ20μmの位置と深さ50μmの位置との間のヤング率の平均変化率ΔY20−50を下記式(6)で表し、該主面と同一平面上にある該第2の領域における表面のヤング率をPとしたときに、下記式(1)、(2)、(3)及び(4)の関係が満たされるクリーニングブレードである。
10mgf/μm≦Y≦400mgf/μm (1)
50/Y≦0.5 (2)
ΔY20−50≦ΔY0−20 (3)
<Y (4)
ΔY0−20={(Y−Y20)/Y}/(20−0)μm (5)
ΔY20−50={(Y50−Y20)/Y20}/(50−20)μm (6)。
尚、本発明のクリーニングブレードにおいて、深さ方向、長手方向及び幅方向とは、それぞれ、図7(a)におけるZ方向、Y方向、及びX方向で表される方向である。「主面」とは、被クリーニング部材の表面に対向する側のクリーニングブレードの表面(XY表面)である。
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、クリーニングブレードにおける被クリーニング部材と対向する主面のうち、当接部(以下「クリーニングブレードの当接部」または単に「当接部」とも表記する。)を含む限定された領域(以下「領域C」とも表記する。)の表面および内部のヤング率を適切に制御することで、クリーニングブレードの振動に起因する鳴きが抑制され、且つ表層剥がれが発生せず、被クリーニング部材の表面の凹凸や表面に存在しうる異物への追従性(以下単に「凹凸・異物への追従性」とも表記する。)に優れたクリーニングブレードが得られることを見出したものである。
〔支持部材〕
本発明のクリーニングブレードにおいて、ウレタンゴムを含む弾性体の部分を支持する支持部材の材質としては、クリーニングブレードの支持部材に必要な剛性を支持部材に与えるものであれば、特に限定されるものではない。具体例としては、ステンレス合金の如き金属が挙げられる。また、支持部材の構造としては、図1、図2(c)に示すような板状体、図2(a)に示すような板を組み合わせて弾性体の部分を挟み込む形状等が挙げられる。
〔被クリーニング部材〕
本発明に係るクリーニングブレードが、クリーニングの対象とする被クリーニング部材としては、電子写真装置における感光体や中間転写体、転写ロールなどが挙げられる。
〔クリーニングブレード〕
本発明に係るクリーニングブレード(以下単に「ブレード」とも表記する。)は、ウレタンゴムを含む弾性体の部分と、該弾性体の部分を支持する支持部材とを備えている。そして、該被クリーニング部材の表面に当接する主面から深さ方向にヤング率が所定の条件で漸減する第1の領域と、該第1の領域よりも該支持部材に近い側に第2の領域とを備えている。
第1の領域においては、主面のヤング率Yは10mgf/μm以上400mgf/μm以下である。領域Cの表面のヤング率Yを10mgf/μm以上にすることでクリーニングブレード当接部の振動を抑制できるが、その理由は2点ある。
第1点目は、表面のヤング率Yを10mgf/μm以上にすることでクリーニングブレードと被クリーニング部材との摩擦に関わる両者の極微視的な接触点(真実接触面積)が少なくなり、ブレードの先端(自由端)を被クリーニング部材の進行方向の下流へと引っ張る摩擦力が小さくなるからである。第2点目は、当接部が高ヤング率であるため、被クリーニング部材の進行方向へのブレードの変形量が小さく抑えられるからである。
図9(a)に示すように、表面のヤング率Yが10mgf/μm未満では、ブレードの先端が被クリーニング部材の進行方向(図中R1)の下流へと引っ張られて変形しやすくなる。または、該変形からの回復を数千Hzの高周波数で繰り返すことによって鳴きが発生し易くなる。一方、表面のヤング率Yが10mgf/μm以上では上記2点の理由により、図9(b)に示すようにブレード先端と被クリーニング部材は、ブレード先端の変形が小さい状態で常に当接しており、ブレード先端の動きが小さく、特に高周波数の鳴きが発生し難い。
第2の領域は、表面(前記主面と同一平面)から深さ方向に向けてヤング率が実質的に変化しない領域である。図1に示すように、領域Cよりも支持部材902に近い側に表面から深さ方向に向けてヤング率がほとんど変化しない低硬度ゴムからなる領域(以下「領域B」とも表記する。)が存在することによって、被クリーニング部材の表面摩擦性のムラ等によりわずかに生じる数百Hz程度の低周波の振動が支持部材902に伝わることを防止し、ブレード鳴きを総合的に抑えることができる。
領域Bにおいては、表面から深さ方向へのヤング率の変化はほとんどないが、製造上、ヤング率のばらつきが生じ得る。従って、本発明においては、深さ方向におけるヤング率の最大値Ymaxに対する最小値Yminの変化率「(Ymax―Ymin)/Ymax×100」が30%以内であれば、「主面から深さ方向に向けてヤング率が変化しない」ものとみなす。領域Bの主面のヤング率Pは、振動を減衰させるために領域Cの表面のヤング率Yよりも低いことが必要であり、5mgf/μm以下であることが好ましい。また、ブレード先端に圧をかけて凹凸・異物への追従性を向上させる観点から、ヤング率Pは1mgf/μm以上であることが好ましい。
領域Cの幅Wcは少なくとも、ブレードが感光ドラムと接触しているニップ幅よりも広いことが必要である。Yが10mgf/μm以上のブレードでは、ニップ幅は耐久試験を通してもせいぜい数十μm以下であるので、領域Cの幅Wcは数十以上〜100μm以上あればよい。また領域Cの幅Wcの上限は、ブレード自由長未満である。領域Bはブレードの長手方向の全域に存在して、当接部から領域Cを伝ってくる低周波の振動を抑制しなくてはならない。ブレードの構成は図1に示す構成以外にもいくつか種類があり、それらの例を図2に示す。
図中の符号Fはブレード自由長を示している。自由長Fは長いほど、ブレードが被クリーニング部材1に対して柔軟に当接できるので、装置のゆがみからくる当接荷重のムラや被クリーニング部材1の位置変動に対して当接圧が安定し易い。一方、自由長Fが長すぎるとブレード先端にかかる当接圧が小さくなり過ぎたり、ブレードがめくれ易くなったりするので、自由長Fは通常4mm〜12mm程度の値に設定される。ブレードの厚みは通常0.5mm〜3mm程度である。図2(a)に示すクリーニングブレードは板状の弾性体の部分901を支持部材902で挟み込むタイプである。図2(b)は、図2(a)の挟み込むタイプの弾性体の部分の背面に、更に金属製の背板903を配置して、自由長Fを短く調整したタイプである。図2(c)は弾性体の部分901と支持部材902を一体的に成形したタイプであり、この構造のブレードの自由長は図中に示したように、支持部材902よりもブレード先端側と定義される。
また、図3はそれぞれのブレード形状について、領域Cの後端と支持部材902との「最短距離d」を示したものである。領域Bが当接部から領域Cを伝ってくる振動を減衰させるためには、領域Bがある程度の幅を持ち、領域Cの後端と支持部材902との最短距離dを確保することが必要である。具体的には最短距離dを4mm以上確保するとより効果的に低周波の振動を抑制することができる。また、領域Cの後端と支持部材902との最短距離dはブレード当接圧を確保するためや、製法上の制約から10mm以下が好ましい。
本発明のクリーニングブレードは、領域Cの表面のヤング率をある程度高くする(10mgf/μm以上400mgf/μm以下)とともに、当接部の表面から内部に向かってヤング率が漸減するように構成されている。具体的には、クリーニングブレードの当接部の表面から深さ50μmの位置のヤング率Y50と表面のヤング率Yとの比「Y50/Y」が0.5以下になるように構成されている。これにより、当接部の表面のヤング率がある程度高くなっていても、被クリーニング部材の凹凸・異物へのクリーニングブレードの追従性は良好である。ヤング率の比「Y50/Y」は0.2以下であることが好ましい。上記ヤング率Yを10mgf/μm以上400mgf/μm以下の範囲内にしつつ、上記比「Y50/Y」を0.5以下にするということは、クリーニングブレードの当接部の表面から深さ方向に向けて、ヤング率を急激に減少させるということを意味する。
本発明者らの検討の結果、クリーニングブレードの表層剥がれは、クリーニングブレードにかかる応力が集中する箇所で発生しやすいことがわかった。また、応力の集中は、クリーニングブレードがヤング率の異なる複数の層で構成されている場合の層同士の界面や、クリーニングブレードにおいて急激にヤング率が変化する部位で生じやすいことがわかった。
そこで、本発明のクリーニングブレードは、上述のように、当接部(及び領域C)の表面から深さ方向に向かってヤング率が急激に減少するように構成されている。その中でも、当接部の表面近傍においては、特に急激にヤング率が減少するように構成されている。具体的には、当接部の表面から深さ20μmの位置までのヤング率の平均変化率ΔY0−20が、深さ20μmの位置から深さ50μmの位置までのヤング率の平均変化率ΔY20−50以上になるように構成されている。即ち、「ΔY20−50≦ΔY0−20」なる関係を満たすように構成されている。これにより、当接部の表面から内部(表面から深さ50μmの位置)に向かってヤング率が急激に小さくなっていても、クリーニングブレードの表層剥がれが生じにくくなる。また、被クリーニング部材の表面の凹凸や表面に存在しうる異物へのクリーニングブレードの追従性もより良好になる。クリーニングブレードの変形による応力が大きい表面近傍でヤング率が急激に減少し、それより内部側では、ヤング率が緩やかに減少する構成とすることで、変形による応力を分散しているためと考えられる。
また、本発明のクリーニングブレードは、上述のとおり、ヤング率の比「Y50/Y」が0.5以下になるように構成されているが、より好ましくは、ヤング率の比「Y20/Y」が0.5以下になるように構成されていることである。これにより、被クリーニング部材の表面の凹凸や表面に存在しうる異物へのクリーニングブレードの追従性がより良好になる。
また、第1の領域において、前記主面からの距離を横軸とし、ヤング率を縦軸としたグラフを描いた場合、該主面から深さ50μmの位置までの範囲における任意の位置(主面からの距離がN[μm]の位置)のヤング率Yが、上記ヤング率Yと上記ヤング率Y50とを結ぶ直線より下方にあることが好ましい。なお、0<N<50[μm]である。
これは、クリーニングブレードの当接部の表面から深さ方向に向かう各位置におけるヤング率の変化のプロファイルが下に凸であるということを意味する。これにより、被クリーニング部材の表面の凹凸や表面に存在しうる異物へのクリーニングブレードの追従性がより良好になる。
図7(a)は、クリーニングブレードのヤング率の大きさの違いを色の濃淡で示す模式図であり、(b)はクリーニングブレードのヤング率を測定する位置を示す模式図である。クリーニングブレードの当接部を変形させる負荷は、クリーニングブレードの被クリーニング部材と相対する面に沿った方向(図7(a)中の矢印Xの方向)の応力となる。図7(a)のクリーニングブレードにおいて、色が濃い箇所ほどヤング率が高いことを示している。当接部近傍のヤング率が高いとX方向へ応力がかかっても変形量が小さくなる。なお、図7(a)では、説明の便宜上、ヤング率が段階的に変化しているように示されているが、本発明において、クリーニングブレードのヤング率の変化は、段階的な変化に限定されず、連続的であってもよい。
クリーニングブレードのヤング率の変化は、段階的であるよりも連続的であることが好ましい。連続的であるということは、剥がれや欠けを生じやすくするヤング率が異なる部分同士の界面がクリーニングブレード内において存在しないということである。
〔ウレタンゴム〕
ウレタンゴムを含む弾性体の部分の当接部のヤング率を高める方法としては、当接部におけるウレタンゴムの分子構造を制御することが有効である。ウレタンゴムは、例えば、ポリイソシアネート、ポリオール、鎖延長剤(例えば、多官能のポリオール)、および、ウレタンゴム合成用触媒を用いて合成することができる。
ウレタンゴムが、ポリエステル系ウレタンゴムである場合、ポリエステル系ウレタンゴムを合成するためには、上記ポリオールとしてポリエステル系ポリオールを用いればよい。また、ポリエステル系ウレタンゴムが脂肪族ポリエステル系ウレタンゴムである場合、脂肪族ポリエステル系ウレタンゴムを合成するためには、上記ポリオールとして脂肪族ポリエステル系ポリオールを用いればよい。
ウレタンゴムを含む弾性体の部分の当接部のヤング率を高めるより具体的方法としては、ウレタンゴムの架橋度を変化させたり、ウレタンゴムの原料の分子量を制御したりする方法がある。また、好適な方法として、ウレタンゴムにイソシアヌレート基を含有させて該イソシアヌレート基の濃度を高める方法がある。イソシアヌレート基は、ウレタンゴムの原料であるポリイソシアネートに由来する基として、ウレタンゴムに含有させることができる。
弾性体の部分は、当接部の表面のヤング率の制御のしやすさの点から、イソシアヌレート基を含有するウレタンゴム製であることが好ましい。その場合、その弾性体の部分の当接部の表面のヤング率を高めるためには、当接部におけるウレタンゴムの表面(およびその近傍)にイソシアヌレート基の含有量を多くすることが好ましい。具体的には、上記ウレタンゴムがポリエステル系ウレタンゴムである場合、まず、当接部におけるポリエステル系ウレタンゴムの表面において、μATR法でIRスペクトルを測定する。そのとき、ポリエステル系ウレタンゴム中のイソシアヌレート基由来のC−Nピークの強度ISIと、ポリエステル系ウレタンゴム中のエステル基由来のC=Oピークの強度ISEとの比「ISI/ISE」が0.50以上であることが好ましい。C−Nピークは、1411cm−1のピークであり、C=Oピークは、1726cm−1のピークである。この比「ISI/ISE」は、イソシアヌレート基の多寡に影響されないエステル基由来のC=Oピークの強度を基準としている。そして、この基準とイソシアヌレート基由来のC−Nピークの強度とを比較することによって、イソシアヌレート基の多寡を定性的に測ることのできるパラメーターである。
ウレタンゴムを含む弾性体の部分を支持する方法としては、例えば、支持部材に弾性体の部分を接着する方法や、複数の支持部材で弾性体の部分を挟み込む方法などが挙げられる。また、弾性体の部分を支持する他の方法としては、例えば、支持部材の先端に弾性体を形成する方法(弾性体の一部を支持部とする方法)なども挙げられる。
本発明に係るクリーニングブレードを構成するウレタンゴムとしては、耐摩耗性などの機械的強度や、当接圧による永久変形のしにくさ(耐クリープ性)の観点から、ポリエステル系ウレタンゴムが好ましい。中でも、脂肪族ポリエステル系ウレタンゴムがより好ましい。
クリーニングブレードの当接部のヤング率を上述のように制御する方法としては、ウレタンゴムの分子構造を制御することが有効である。
ウレタンゴムは、例えば、ポリイソシアネート、高分子量のポリオール、鎖延長剤(例えば、多官能の低分子量のポリオール)、および、ウレタンゴム合成用触媒を用いて合成することができる。ポリエステル系ウレタンゴムを合成するためには、ポリオールとしてポリエステル系ポリオールを用いればよく、脂肪族ポリエステル系ウレタンゴムを合成するためには、ポリオールとして脂肪族ポリエステル系ポリオールを用いればよい。
ウレタンゴムを含む弾性体の部分の当接部のヤング率を上述のように制御する方法としては、具体的には、ウレタンゴムの架橋度を変化させたり、ウレタンゴムの原料の分子量などを制御したりする方法などが挙げられる。これらの方法の中でも、ウレタンゴムの原料であるポリイソシアネートに由来するイソシアヌレート基の濃度がウレタンゴムの表面側ほど高くなるようにする方法が、ヤング率の制御の精度の観点から好ましい。
ポリイソシアネートとしては、例えば以下のものが挙げられる。4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(1,5−NDI)、p−フェニレンジイソシアネート(PPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、カルボジイミド変性MDI、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(PAPI)など。これらの中でも、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
高分子量のポリオール(脂肪族ポリエステル系ポリオール)としては、例えば以下のものが挙げられる。エチレンブチレンアジペートポリエステルポリオール、ブチレンアジペートポリエステルポリオール、ヘキシレンアジペートポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオールなど。また、これらの2種以上を併せて用いてもよい。また、これらの脂肪族ポリエステル系ポリオールの中でも、結晶性が高い点で、ブチレンアジペートポリエステルポリオール、ヘキシレンアジペートポリエステルポリオールが好ましい。脂肪族ポリエステル系ポリオールの結晶性が高いほど、得られるポリエステル系ウレタンゴムの硬度が高くなり、クリーニングブレードの耐久性を高めることができる。
また、高分子量のポリオールの数平均分子量は、1500以上4000以下であることが好ましく、2000以上3500以下であることがより好ましい。ポリオールの数平均分子量が大きいほど、得られるウレタンゴム(従ってクリーニングブレード)の硬度、弾性率および引っ張り強度が高くなる。また、数平均分子量が小さいほど、粘度が低くなり、ハンドリングが容易になる。
鎖延長剤(多官能の低分子量のポリオール)としては、例えば以下に示すグリコールが挙げられる。エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール(DPG)、1,4−ブタンジオール(1,4−BD)、1,6−ヘキサンジオール(1,6−HD)、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール(テレフタリルアルコール)、トリエチレングリコールなど。また、グリコール以外の鎖延長剤としては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど3価以上の多価アルコールが挙げられる。尚、これらの2種以上を併せて用いてもよい。
ウレタンゴム合成用触媒としては、ゴム化(樹脂化)や泡化を促進するためのウレタン化触媒(反応促進触媒)と、イソシアヌレート化触媒(イソシアネート三量化触媒)とに大別される。尚、これらの2種以上を併せて用いてもよい。
ウレタン化触媒としては、例えば以下のものが挙げられる。ジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエートなどのスズ系のウレタン化触媒や、トリエチレンジアミン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ジメチルイミダゾール、テトラメチルプロパンジアミン、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミンなどのアミン系のウレタン化触媒などが。尚、これらの2種以上を併せて用いてもよい。これらのウレタン化触媒の中でも、ウレタン反応を特に促進する点で、トリエチレンジアミンが好ましい。
イソシアヌレート化触媒としては、例えば以下のものが挙げられる。LiO、(BuSn)Oなどの金属酸化物;NaBHなどのハイドライト化合物;NaOCH、KO−(t−Bu)、ホウ酸塩などのアルコキシド化合物;N(C、N(CHCH、N12などのアミン化合物;HCONa、CO(Na)、PhCONa/DMF、CHCOK、(CHCOCa、アルカリ石鹸、ナフテン酸塩などのアルカリ性カルボキシレート塩化合物;アルカリ性蟻酸塩化合物や、((R−NROH)−OOCRなどの四級アンモニウム塩化合物など。また、イソシアヌレート化触媒として用いられる組み合わせ触媒(共触媒)として、例えば、アミン/エポキシド、アミン/カルボン酸、アミン/アルキレンイミドなどが挙げられる。尚、これらの2種以上を併せて用いてもよい。
ウレタンゴム合成用触媒の中でも、単独でウレタン化触媒としての作用に加えてイソシアヌレート化触媒の作用も示す、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミンが好ましい。
また、必要に応じて、顔料、可塑剤、防水剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などの添加剤を併せて用いることもできる。
〔クリーニングブレードの製造〕
本発明者らは、次のような方法でウレタンゴムを合成することで、イソシアヌレート基の分布を上述したように制御できることを見出した。すなわち、脂肪族ポリエステル系ポリオールを用い、イソシアヌレート化触媒を金型の内表面に塗布し、この金型内にポリイソシアネートと脂肪族ポリエステル系ポリオールの比率が特定範囲内にある原料を入れ、ウレタンゴムを合成する方法である。
金型の内表面にイソシアヌレート化触媒を塗布することによって、ウレタンゴム合成用原料のうち、特に金型の内表面の触媒塗布部分に接する原料のイソシアヌレート化反応が促進される。そのため、脂肪族ポリエステル系ポリオールに対して過剰のポリイソシアネートを使用することが好ましい。さらに、過剰のポリイソシアネートに対して、金型の内表面に塗布されたイソシアヌレート化触媒および金型の温度が作用して、イソシアヌレート基の分布が上述したように制御されたウレタンゴムが合成される。金型の内表面のうちの特定の箇所に、部分的にイソシアヌレート化触媒を塗布することによって、ウレタンゴムの成形品(クリーニングブレード)内においてイソシアヌレート化する部分の範囲や形状を制御することができる。
ポリイソシアネートに対する脂肪族ポリエステル系ポリオールの使用量(モル数)は、ポリイソシアネートのモル数に対して30モル%以上40モル%以下であることが好ましい。脂肪族ポリエステル系ポリオールが少ないほど、ポリイソシアネートを過剰にした効果が得られやすく、クリーニングブレードの当接部の表面のヤング率Yを10mgf/μm以上に制御しやすくなる。一方、ポリイソシアネートの過剰の程度を抑えることによって、クリーニングブレードの当接部の表面のヤング率Yを400mgf/μm以下に制御しやすくなる。
また、金型の温度は、80℃以上150℃以下の範囲に設定することが好ましく、100℃以上130℃以下の範囲に設定することがより好ましい。金型内において原料を反応させてウレタンゴムを合成するためには、反応の速度の観点から、金型の温度はある程度高いことが好ましいが、金型の温度が高くなるほど、クリーニングブレードの当接部の表面と内部のヤング率の差が小さくなる傾向がある。
なお、クリーニングブレード用のウレタンゴムを製造する方法としては、上述の方法以外に、遠心成形法及びキャストプレス法などが挙げられる。遠心成形法はドラム状の型の内側にウレタンゴム合成用原料を投入し、遠心力をかけて製造する方法である。キャストプレス法は、ベルトもしくは溝状の型にウレタンゴム合成用原料を投入して成形する方法である。
〔クリーニング装置〕
本発明のクリーニングブレードは、該クリーニングブレードを備えたクリーニング装置として使用することができる。クリーニング装置の構成としては、クリーニングブレードの先端を被クリーニング部材の表面に対しばねの力で一定荷重で押し付ける定荷重方式、クリーニングブレードがクリーニング装置の枠体に固定されて位置が変動しない定変位方式が挙げられる。
以下に実施例を挙げて本発明を説明する。なお、本実施例において、「部」は「質量部」を意味する。尚、評価方法は以下の通りである。
〔1.ヤング率の測定〕
クリーニングブレードのヤング率の測定は、(株)エリオニクス製の微小押し込み硬さ試験機ENT−1100(商品名)を使用して行った。クリーニングブレードの当接部の表面から内部に向かって適宜な点において、下記の条件で負荷−除荷試験を行い、同試験機の計算結果としてヤング率(複合弾性率)は得られる。
試験モード:負荷−除荷試験。
荷重レンジ:A。
試験荷重:100[mgf]。
分割数:1000[回]。
ステップインターバル:10[m秒]。
荷重保持時間:2[秒]。
図7(b)は、クリーニングブレードのヤング率を測定する場所を示す模式図である。
まず、クリーニングブレードを長手方向の3か所において切断して、その長手方向を4等分した。そして、3つの切断面904における、領域C(図7(b)の下側の図中の灰色の領域)の任意の箇所において、当接部の表面から内部に向かう方向(図7(b)中のZ方向)で、上述した測定および計算を行った。具体的には、当接部の表面から内部に向かって、表面から60μmの位置までは2μm刻み、60μmから100μmの位置まで10μm刻み、100μmから300μmの位置までは20μm刻みで上述した測定および計算を行った。そして、各測定位置において、上記3つの切断面における測定値を平均した値を、その位置におけるヤング率の値として用いた。なお、原理上、ヤング率は0より大きい値となる。また、領域Bの部分においても、同様にヤング率(P)の測定を行った。
〔2.μATR法でIRスペクトルの測定〕
μATR法でIRスペクトルの測定は、パーキンエルマー社製のフーリエ変換赤外分光装置(商品名:Perkin Elmer Spectrum One/Spotlight300)を使用して行った(ダイヤモンドクリスタルのユニバーサルATR)。ISI/ISEを求めた。
〔3.鳴き及びすり抜けの評価〕
評価機としては、キヤノン(株)製の複写機(商品名:iR−ADVC5255)を用いた。クリーニング部分に関しては上述の挟み込みタイプのブレードを取り付けられるように改造した。そして、該複写機用のドラム形状の感光体(以下「感光ドラム」とも表記する。)と同じ寸法で、直径40μm、深さ2.5μmの凹部を面積率50%で表面に形成した感光ドラム(以下「凹感光ドラム」とも表記する。)、および表面を平滑にした感光ドラム(以下「平滑感光ドラム」とも表記する。)の2種類の感光ドラムを用意した。
〔3−1.鳴きの評価〕
平滑感光ドラムを上記複写機に搭載し、上述のようにして得られたクリーニングブレードを、その当接面(金型の内表面の触媒液が塗布された面に相対していた面)が感光ドラムにカウンター方向に当接するように設置した。感光ドラムに対するブレード当接条件としては、設定角22°、当接圧28gf/cmとした。そして、温度30℃、相対湿度80%の高温高湿環境下で、現像せずに放電電流100μAで50000枚の耐久試験を行い、クリーニングブレードの鳴きを評価した。
評価基準は下記のとおりである。
A:50000枚を通して鳴きは無い。
B:20000枚までは鳴きは無いが、それ以降停止時または駆動開始時に微小な鳴きが生じる場合がある。
C:20000枚までに停止時および駆動開始時に実用上問題無い程度の微小な鳴きが生じる場合がある。
D:20000枚までに停止時および駆動開始時に鳴きが生じる。
E:耐久試験開始後すぐに常時鳴きが生じる。または、ブレード捲れが生じる。
〔3−2.すり抜けの評価〕
温度15℃、相対湿度10%の低温低湿環境下で、凹感光ドラムを上記複写機に搭載し、メラミン樹脂粒子(商品名:オプトビーズ、直径3.5μm、日産化学工業(株)製)を感光ドラムの表面に塗布した。そして、クリーニング性の評価として、メラミン樹脂粒子(トナーの代用)のすり抜けを評価した。感光ドラムの表面凹部や表面に存在するメラミン樹脂粒子に対してクリーニングブレードの追従性が良好であるほど、メラミン樹脂粒子のすり抜けは生じにくくなる。すり抜け易さはブレード先端の凹凸追従性で決まるため、ブレード先端1mmをイソシアヌレート化処理したブレードのみについて評価を行った。評価結果を表4に示す。
評価基準は下記のとおりである
A:メラミン樹脂粒子のすり抜けは無い。
B:クリーニングブレードの下流側の面(感光ドラムに相対する面)にすり抜けたメラミン樹脂粒子が見られる。
C:感光ドラムの表面の一部において、目視で判別できる程度の、メラミン樹脂粒子のスジ状のすり抜けが生じる。
D:感光ドラムの表面全体において、目視で判別できる程度の、メラミン樹脂粒子のすり抜けが生じる。
〔実施例1〕
〔1.第一の組成物を得る工程〕
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下「4,4’−MDI」とも表記する。)299部および数平均分子量2600のブチレンアジペートポリエステルポリオール(以下「BA2600」とも表記する。)767.5部を80℃で3時間反応させて、NCO基を7.2質量%含む第一の組成物(プレポリマー)を得た。
〔2.第二の組成物を得る工程〕
数平均分子量2000のヘキシレンアジペートポリエステルポリオール(以下「HA2000」とも表記する。)300部に、ウレタンゴム合成用触媒としてのN,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン(以下「ETA」とも表記する。)0.25部を加え、60℃で1時間撹拌して、第二の組成物を得た。
〔3.混合物を得る工程〕
上記第一の組成物を80℃に加温し、これに60℃に加温した上記第二の組成物を加え、撹拌して、第一の組成物と該第二の組成物との混合物を得た。第二の組成物中のポリオールのモル数は、第一の組成物中のポリイソシアネートのモル数に対して17モル%であった。以下、この割合を「M(OH/NCO)」とも表記する。本例では、M(OH/NCO)=17モル%である。
〔4.ウレタンゴム製のクリーニングブレードを得る工程〕
クリーニングブレード製造用の金型の内表面の一部分(幅5mm、長手方向全域)に厚さ10ミクロンのポリ塩化ビニリデンシートを被せた。そして、エタノール100部にETA100部を混合して調製した触媒液を、金型の内表面にスプレー塗布した。その後、ウレタンゴム製のブレードで金型の内表面に触媒液を拭き延した。
その後、金型を110℃に加熱した後、シートを剥がし、金型の内表面のうち触媒液を塗布していない面(シートを被せていた部分を含む)に離型剤を塗布し、再度、金型を110℃に加熱し、その温度で安定させた。
その後、上記混合物を、金型の内部(キャビティ内)に注入した。注入後、110℃(成型温度)で30分間加熱し、硬化反応させた後に、脱型し、「ウレタンゴム板a」を得た。得られたウレタンゴム板aのイソシアヌレート化した部分(幅2mm、長さ345mm)を含むようにウレタンゴム板を切断機で切断し、エッジ部分を形成して、クリーニングブレード用の「ウレタンゴム板b」を得た。得られたウレタンゴム板bは、厚さ2mm、幅13mm、長さ345mmであり、エッジ近辺の先端2mmだけイソシアヌレート化していた。
同様にして、ETAを塗る範囲や切断する場所を変えることによってイソシアヌレート化処理した部分の幅を変えたウレタンゴム板bを全部で4種類作成した。イソシアヌレート化処理部の幅は、それぞれ1mm、2mm、4mm、6mmである。それぞれのウレタンゴム板(弾性体の部分)901を図2(a)のようにブレード支持部材902で挟み込んで固定し、クリーニング装置とした。自由長Fは8mmなので、領域Cと支持部材902との距離はそれぞれ7mm、6mm、4mm、2mmであった。
製造条件およびM(OH/NCO)を表1および表2に示す。
得られた4種類のクリーニングブレードについて、ヤング率及びIRペスクトルを測定した。得られた結果(ヤング率及びISI/ISEの平均値)を図4および表3に示す。
図4(a)中、ヤング率Yとヤング率Y50を結んだ直線をL0−50と表記し、ヤング率Yとヤング率Y20を結んだ直線をL0−20と表記し、ヤング率Y20とヤング率Y50を結んだ直線をL20−50と表記した。実施例1のクリーニングブレードのヤング率Yは41.8mgf/μmであり、Y50/Yは0.18であり、Y20/Yは0.48であった。ΔY0−20≧ΔY20−50であることは、L0−20とL20−50の傾きから見て取れる。また、ヤング率YはL0−50より下にあり、当接部の表面から内部に向かっていったときのヤング率の変化のプロファイルが下に凸であることがわかる。ISI/ISEは0.50であった。また、鳴きの評価結果及びすり抜けの評価の結果を表4に示す。
〔実施例2〜8並びに比較例1及び2〕
実施例1において、第一の組成物の組成、第二の組成物の組成、成型温度、及び触媒液の組成の、いずれかまたは全てを、表1及び表2に示す条件に変更した。それら以外は、実施例1と同様にして、イソシアヌレート化の処理幅の異なる4種類のクリーニングブレードを製造し、各評価を行った。各製造条件および各評価結果を図5(a)、図5(b)、表3および表4に示す。
尚、触媒液の調製において使用したDABCO−TMRは、下記化学式(D)で示される化合物(商品名:DABCO−TMR、三共エアプロダクツ社製)である。また、UCAT−18Xは、特殊アミン(商品名:UCAT−18X、サンアプロ(株)製)であり、POLYCAT46は、CHCOOK(商品名:POLYCAT46、エアプロダクツ社製)である。
〔比較例3〕
実施例1において、金型の内表面に触媒液を塗布しなかった以外は、実施例1と同様にしてウレタンゴム板を製造した。すなわち、実施例1の〔4.ウレタンゴム製のクリーニングブレードを得る工程〕における金型内表面の触媒液塗布を行わず、金型内表面の全面に離型剤を塗布して成型した。
次に、製造したウレタンゴム板を80℃に加温した4,4’−MDIに30分浸漬し、引き上げた。ウレタンゴム板を浸漬する幅をその先端から、それぞれ1mm、2mm、4mm、6mmと変えた4種類のブレードを作成した。その後、ウレタンゴム板の表面に付着している4,4’−MDIをエタノールで拭き取った。その後、温度25℃、相対湿度90%の高湿環境下で2日間放置して、拭き取れきれなかったウレタンゴム板の表面に浸み込んでいる4,4’−MDIを加水処理させ、これを比較例3のクリーニングブレードとした。製造条件および評価結果を図5(b)、表3および表4に示す。
〔比較例4〕
メチルイソブチルケトン(MIBK)100部にDABCO−TMR(商品名)0.1部(1000ppm相当)を添加し、さらに、これに4,4’−MDIを200部添加して触媒液を調製した。調製した触媒液を、130℃に加熱した金型の内表面にスプレー塗布して、イソシアヌレートと未反応MDIを含有する厚さ50μmのポリイソシアネート膜を金型の内表面に形成した。次に、実施例1と同様にして得た第一の組成物と第二の組成物の混合物を上記の金型の内部(キャビティ内)に注入した。注入後、130℃(成型温度)で30分間加熱し、該混合物を硬化反応させてウレタンゴムを生成させた後に、脱型し、ウレタンゴム板を得た。得られたウレタンゴム板を切断機で切断し、エッジ部分を形成して、ウレタンゴム製のクリーニングブレードを製造した。得られたウレタンゴム板は、厚さ2mm、幅20mm、長さ345mmであった。ポリイソシアネート膜の幅をウレタンゴム板の先端から、それぞれ1mm、2mm、4mm、6mmと変えた4種類のブレードを作成した。得られたクリーニングブレードに対して、実施例1と同様にして各評価を行った。各製造条件および評価結果を図6(a)、表3および表4に示す。
〔比較例5〕
実施例1において、金型の内表面に触媒液を塗布しなかった以外は、実施例1と同様にして厚さ2mm、幅20mm、長さ345mmのウレタンゴム板を製造した。次に、製造したウレタンゴム板の当接部(に対応する部分)に厚さ40μmのナイロンコートを施し、これを比較例5のクリーニングブレードとした。ナイロンコートを施した幅をウレタンゴム板の先端から、それぞれ1mm、2mm、4mm、6mmと変えた4種類のブレードを作成した。評価結果を図6(a)、表3および表4に示す。
〔比較例6〕
実施例1において、第一の組成物の組成、第二の組成物の組成、成型温度、及び触媒液の組成を、表1及び表2に示す条件に変更した。即ち、触媒液は、POLYCAT46(商品名)と4級アンモニウム塩(商品名:TOYOCAT−TRV、東ソー(株)製)との3:2(質量比)の混合品100部とした。それら以外は、実施例1と同様にしてイソシアヌレート化の処理幅の異なる4種類のクリーニングブレードを製造し、各評価を行った。製造条件および評価結果を図6(a)、表3および表4に示す。
〔比較例7〕
本比較例では全体が均質なヤング率を持つウレタンゴム板を作成した。実施例1において、触媒液の調製に用いたETAをUCAT−18X(商品名)とDABCO−TMR(商品名)との1:1(質量比)の混合物に変更し、これを金型の内表面には塗布せずに、この混合物0.25部を第二の組成物に混合して使用した。また、成型温度を110℃から90℃に変更した。それら以外は、実施例1と同様にしてクリーニングブレードを製造し、各評価を行った。製造条件および評価結果を図6(b)、表3および表4に示す。
〔比較例8〕
実施例1において、第二の組成物の組成、成型温度、及び触媒液の組成を、表1及び表2に示す条件に変更した。即ち、触媒液は、POLYCAT46(商品名)とTOYOCAT−TRV(商品名)との1:1(質量比)の混合物100部とした。それら以外は、実施例1と同様にしてイソシアヌレート処理幅の異なる4種類のクリーニングブレードを製造し、各評価を行った。製造条件および評価結果を図6(b)、表3および表4に示す。
〔比較例9〜16〕
比較例9〜16は、それぞれ、実施例1〜8に対応する比較例である。実施例1〜8において、被覆用のポリ塩化ビニリデンシートを使用せずに、各触媒液を、一方の金型の内表面全域に塗布した。それ以外は、実施例1と同様にして、ウレタンゴム板の片側表面を全面的にイソシアヌレート化したブレードを製造し、各評価を行った。評価結果を表5に示す。
〔考察〕
数式(1)、(2)、(3)及び(4)の関係を満たし、さらにイソシアヌレート化された部分の幅が限定的な実施例1〜8では、クリーニングブレードの鳴きが抑制されている。特にイソシアヌレート化された部分の幅が4mm以下であり、該部分と支持部材との最短距離dが4mm以上のときに鳴きは完全に抑制されている。また、これらのクリーニングブレードは、感光ドラムの表面凹凸に対して良く追従するため、凹感光ドラムに対するすり抜け評価結果も良好である。
また、本実施例ではブレードの長手方向においてイソシアヌレート化した部分(領域C)の幅が均一(一定)なブレードでの結果を示した。更に、図8に示すように、領域Cが、その幅が、ブレードの長手方向において異なるように形成されてなるブレードを使用し、低周波鳴きの共振周波数を分散させることによって鳴き抑制効果をさらに発揮できる場合もある。この場合でも同様にブレード支持部材902と領域Cとの間に領域Bが介在し、支持部材902と領域Cとの「最短距離d」を4mm以上にすることによって本発明の効果はより発揮される。
また、本実施例では図2(a)に示したような挟み込みタイプのブレードを使用したが、図1や図2(b)、(c)のようなその他の構成のブレードにおいても同様の効果が発揮される。
また、本実施例では電子写真感光体を被クリーニング部材として記述したが、中間転写体や転写ローラ等を被クリーニング部材としても本発明の効果は発揮される。
1・・・・・被クリーニング部材
901・・・弾性体の部分
902・・・支持部材
903・・・背板
904・・・弾性体の部分の切断面
B・・・第2の領域
C・・・第1の領域
d・・・領域Cの後端と支持部材との最短距離
F・・・クリーニングブレードの自由長
R1・・被クリーニング部材の移動方向
X・・・被クリーニング部材がクリーニングブレード先端部を押す方向

Claims (6)

  1. ウレタンゴムを含む弾性体の部分と、該弾性体の部分を支持する支持部材とを備え、該弾性体の部分を被クリーニング部材の表面に当接させることにより、該被クリーニング部材の表面をクリーニングする、クリーニングブレードであって、
    該弾性体の自由端部分は、その先端側に、該被クリーニング部材の表面に当接する主面から深さ方向にヤング率が漸減する第1の領域と、
    該第1の領域よりも該支持部材に近い側に、該主面から深さ方向にヤング率が変化しない第2の領域と、を有し、
    該第1の領域おいて、該主面、該主面から深さ20μmおよび深さ50μmの各位置におけるヤング率をそれぞれ、Y、Y20およびY50とし、該主面と該主面から深さ20μmの位置との間のヤング率の平均変化率ΔY0−20を下記式(5)で表し、該主面から深さ20μmの位置と深さ50μmの位置との間のヤング率の平均変化率ΔY20−50を下記式(6)で表し、
    該主面と同一平面上にある該第2の領域における表面のヤング率をPとしたときに、
    下記式(1)、(2)、(3)及び(4)の関係が満たされるクリーニングブレード:
    10mgf/μm≦Y≦400mgf/μm (1)
    50/Y≦0.5 (2)
    ΔY20−50≦ΔY0−20 (3)
    <Y (4)
    ΔY0−20={(Y−Y20)/Y}/(20−0)μm (5)
    ΔY20−50={(Y50−Y20)/Y20}/(50−20)μm (6)。
  2. 前記ヤング率Pが1mgf/μm以上、5mgf/μm以下である請求項1に記載のクリーニングブレード。
  3. 該前記第1の領域と前記支持部材との最短距離dが4mm以上、10mm以下である請求項1又は2に記載のクリーニングブレード。
  4. 前記第1の領域が、その幅が、クリーニングブレードの長手方向において異なるように形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のクリーニングブレード。
  5. 前記第1の領域において、前記主面からの距離を横軸とし、ヤング率を縦軸としたグラフを描いた場合、該主面から深さ50μmの位置までの範囲における任意の位置(主面からの距離がN[μm]の位置)のヤング率Y(ただし、0<N<50[μm]である。)が、前記ヤング率Yと前記ヤング率Y50とを結ぶ直線より下方にある請求項1〜4のいずれか1項に記載のクリーニングブレード。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のクリーニングブレードを備えたクリーニング装置。
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