以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明の一態様は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることが可能である。従って、本発明の一態様は以下に示す実施の形態または実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
なお、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明の一態様は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
また、本明細書等において、第1、第2等として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順又は積層順を示すものではない。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」又は「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。また、本明細書等に記載されている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられる序数詞は一致しない場合がある。
また、本明細書等において、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる。
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
また、本明細書等において、イリジウム錯体には、配位子の種類によっては立体異性体等の構造異性体が存在しうる。本明細書等に記載するイリジウム錯体には、イリジウム錯体と、当該イリジウム錯体の構造異性体と、を含めるものとする。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光素子について図1乃至図4を用いて説明する。
<1.発光素子の構成>
図1に、本発明の一態様の発光素子を説明する断面図を示す。図1に示す発光素子は、一対の電極間にEL層を有し、当該EL層にイリジウム錯体を含む発光素子である。
より具体的には、図1に示す発光素子100は、一対の電極(下部電極104と上部電極114)の間にEL層108を有する。また、EL層108は、発光層110を有する。また、EL層108は、発光層110の他に、正孔注入層131、正孔輸送層132、電子輸送層133、及び電子注入層134を含んで形成される。また、電子輸送層133は、電子輸送層133(1)と、電子輸送層133(2)と、を有する。
なお、本実施の形態においては、下部電極104を陽極として用い、上部電極114を陰極として用いる。また、下部電極104は、基板102上に形成される。また、発光層110には、発光物質として、イリジウム錯体が含まれる。
発光素子100に対して電圧を印加することにより、下部電極104側から注入された正孔と、上部電極114側から注入された電子とが、発光層110において再結合し、発光層110に含まれる発光物質を励起状態にする。そして、励起状態の発光物質が基底状態に戻る際に発光する。
発光素子100に求められる特性の一つとして、長期の保存または長期の駆動に伴う発光効率の低下が少ない特性、すなわち長寿命であること、別言すると高い信頼性を有することが求められる。発光素子100が高い信頼性を有するため、EL層108には不純物の含有量が少ない有機化合物を用いると好ましい。当該不純物としては、例えば、有機化合物の合成に用いられる原料中の元素、例えばハロゲン元素等が少ない方が好ましい。
しかしながら、有機化合物中のハロゲン元素を低減させたとしても、発光素子100の信頼性が悪い場合がある。
そこで、本発明の一態様の発光素子100においては、EL層108中の発光層110が有する、イリジウム錯体に起因する不純物を抑制する。より具体的には、発光層110が有するイリジウム錯体は、イリジウム金属と、イリジウム金属に配位結合する配位子と、を有し、発光素子100を液体クロマトグラフィー質量分析(Liquid Chromatography Mass Spectrometry、略称:LC/MS分析)した際に、フォトダイオードアレイ検出器(略称:PDA検出器)のクロマトグラフにおいて、イリジウム錯体のピーク面積に対する、イリジウム金属に配位結合していない配位子のピーク面積の比が10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは1%以下である。なお、イリジウム金属に配位結合していない配位子としては、発光素子100中に含まれていないことが好ましい。したがって、イリジウム金属に配位結合していない配位子のピーク面積の比の下限としては、0(ゼロ)を含む。
または、発光層110が有するイリジウム錯体は、イリジウム金属と、イリジウム金属に配位結合する配位子と、を有し、発光素子100を液体クロマトグラフィー質量分析した際に、イリジウム錯体のプレカーサーイオンと、イリジウム錯体の第1のフラグメントイオンと、イリジウム錯体の第2のフラグメントイオンと、が質量分析検出器(略称:MS検出器)及びフォトダイオードアレイ検出器により検出され、質量分析検出器により検出された、第1のフラグメントイオンは、イリジウム金属を含み、質量分析検出器により検出された、第2のフラグメントイオンは、イリジウム金属を含まず、フォトダイオードアレイ検出器のクロマトグラフは、プレカーサーイオンに対応する第1のピークと、第1のフラグメントイオンに対応する第2のピークと、第2のフラグメントイオンに対応する第3のピークと、を有し、第1のピークに対する、第3のピークの面積の比が10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは1%以下である。
発光層110に用いるイリジウム錯体として、上述の構成のイリジウム錯体を用いることで、発光素子100の信頼性を向上させることが可能となる。
ここで、図1に示す発光素子100に相当する発光素子(試料1及び試料2)を作製し、EL層108を分析し、EL層108中の不純物について解析を行った。なお、本実施の形態においては、EL層108中の不純物として、発光層110が有する発光物質である、イリジウム錯体に起因する不純物に着目した。
本実施の形態で作製した試料1及び試料2の素子構造の詳細を表1に、使用した化合物の構造と略称を以下に示す。
<2.試料1及び試料2の作製方法>
まず、基板102上に下部電極104として、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(略称:ITSO)をスパッタリング法により成膜した。なお、下部電極104の膜厚を100nmとし、下部電極104の面積を4mm2(2mm×2mm)とした。
次に、有機化合物層の蒸着前の前処理として、下部電極104が形成された基板102の下部電極104側を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、下部電極104の表面に対し、UVオゾン処理を370秒行った。
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板102を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で60分間の真空焼成を行った後、基板102を30分程度放冷した。
次に、下部電極104が形成された面が下方となるように、基板102を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定した。本実施の形態では、真空蒸着法により、正孔注入層131、正孔輸送層132、発光層110、電子輸送層133(1)、電子輸送層133(2)、電子注入層134、上部電極114を順次形成した。詳細な作製方法を以下に記す。
まず、真空装置内を10−4Paに減圧した後、下部電極104上に、正孔注入層131として、4,4’,4’’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P−II)と酸化モリブデンとを、DBT3P−II:酸化モリブデン=2:1(重量比)となるように共蒸着した。なお、正孔注入層131の膜厚を20nmとした。
次に、正孔注入層131上に正孔輸送層132を形成した。正孔輸送層132としては、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)を蒸着した。なお、正孔輸送層132の膜厚を20nmとした。
次に、正孔輸送層132上に発光層110を形成した。発光層110として、2−[3’−(ジベンゾチオフェン−4−イル)ビフェニル−3−イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq−II)と、4,4’−ジ(1−ナフチル)−4’’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)と、ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)2(dpm))とを、2mDBTBPDBq−II:PCBNBB:Ir(tppr)2(dpm)=0.7:0.3:0.05(重量比)となるよう共蒸着した。なお、発光層110の膜厚を40nmとした。
なお、発光層110において、2mDBTBPDBq−IIがホスト材料でありPCBNBBがアシスト材料であり、Ir(tppr)2(dpm)がゲスト材料として機能するイリジウム錯体である。なお、ホスト材料とは、キャリア輸送性材料であり、ここでは、電子輸送性材料を用いる。また、アシスト材料とは、キャリア輸送性材料であり、ここでは正孔輸送性材料を用いる。また、ゲスト材料としては、発光性材料(発光物質を含む材料)である。なお、ホスト材料及びアシスト材料の三重項励起エネルギー準位(T1準位)は、ゲスト材料のT1準位よりも高いことが好ましい。ホスト材料及びアシスト材料のT1準位がゲスト材料のT1準位よりも低いと、発光に寄与するゲスト材料の三重項励起エネルギーをホスト材料及びアシスト材料が消光(クエンチ)してしまい、発光効率の低下を招く場合がある。また、ホスト材料と、アシスト材料との混合比によって、キャリアバランスを制御することができる。
次に、発光層110上に電子輸送層133(1)として、膜厚20nmの2mDBTBPDBq−IIを蒸着した。次に、電子輸送層133(1)上に電子輸送層133(2)として、膜厚15nmのバソフェナントロリン(略称:Bphen)を蒸着した。次に、電子輸送層133(2)上に電子注入層134として、膜厚1nmのフッ化リチウム(LiF)を蒸着した。
次に、電子注入層134上に上部電極114として、膜厚200nmのアルミニウム(Al)を蒸着した。
次に、封止基板(図示せず)を準備し、上記により作製した基板102上の各発光素子と、封止基板とを大気に曝されないように窒素雰囲気のグローブボックス内において貼り合わせることにより封止した(シール材を素子の周囲に塗布し、シール材に365nmの紫外光を6J/cm2照射した後に80℃にて1時間熱処理した)。
なお、上述の試料1及び試料2の蒸着過程において、蒸着方法としては抵抗加熱法を用いた。
以上の工程により、試料1及び試料2を作製した。
<試料1及び試料2の信頼性評価>
次に、上記作製した試料1及び試料2の信頼性試験を行った。信頼性試験の測定方法としては、初期輝度を5000cd/m2に設定し、電流密度を一定の条件で試料1及び試料2を駆動した。信頼性試験結果を図2に示す。図2において、縦軸は初期輝度を100%とした場合の相対輝度(%)を、横軸は駆動時間(h)を、それぞれ表す。
図2に示す結果から、試料1の1368時間経過後の相対輝度は74.0%であり、試料2の1342時間経過後の相対輝度は62.2%であった。
<3.EL層中の不純物分析(液体クロマトグラフィー質量分析)>
次に、上記作製した試料1及び試料2のEL層108中の不純物分析を行った。なお、試料1の不純物分析としては、試料1と同じ基板上に作製した試料1とは異なる試料であり、試料2の不純物分析としては、試料2と同じ基板上に作製した試料2とは異なる試料である。また、不純物分析用の試料としては、下部電極104の面積を約12cm2(3.5cm×3.3cm)とした。すなわち、不純物分析用の試料は、試料1及び試料2と材料及び構造等は同一であるが、下部電極104の面積が異なり、且つ駆動させていない素子である。よって、不純物分析の結果については、駆動により生成した劣化物を分析したものではなく、駆動前から含まれる不純物を対象として行ったものである。ここでは、便宜的に試料1と同じ基板上に作製した不純物分析用の試料を試料1として扱う。試料2についても同様である。
なお、試料1及び試料2の不純物分析としては、LC/MS分析によって行った。
LC/MS分析としては、LC分離をウォーターズ社製Acquity UPLCにより行い、PDA検出器と、MS検出器と、を用いて検出した。なお、PDA検出器には、ウォーターズ社製PDA eλ検出器を用い、MS検出器には、ウォーターズ社製Xevo G2 Tof MSを用いた。なお、本分析で用いたMS検出器である、ウォーターズ社製Xevo G2 Tof MSの測定範囲は、m/z=100以上である。
また、LC分離で用いたカラムとしては、Acquity UPLC BEH C8 (2.1×100mm 1.7μm)を用い、カラム温度を40℃とした。移動相としては、移動相Aをアセトニトリル、移動相Bを0.1%ギ酸水溶液とした。
また、LC/MS分析の分析サンプルとしては、試料1及び試料2の上部電極114であるアルミニウムを、カプトンテープを用いて剥がした後、基板102上に残った物質をクロロホルムに溶解しクロロホルム溶液を得た。得られたクロロホルム溶液をアセトニトリルで任意の濃度に希釈し、分析サンプルを作製した。なお、分析サンプルの注入量を5.0μLとして、LC/MS分析を行った。
<4.液体クロマトグラフィー質量分析方法>
上述の分析サンプルのLC分離を行った。LC分離には移動相の組成を変化させるグラジエント法を用いた。組成を変化させる方法としては、測定開始から1分経過後までを、移動相A:移動相B=60:40の組成とし、そのあと組成をリニアに変化させ、測定開始から15分経過後に移動相A:移動相B=95:5の組成となるようにした。つまり、測定時間は15分である。
また、PDA検出器では、210nm乃至800nmの範囲で検出を行い、検出間隔を1.2nmとした。
MS分析では、エレクトロスプレーイオン化法(ElectroSpray Ionization、略称:ESI)によるイオン化を行い、キャピラリー電圧を3.0kV、サンプルコーン電圧を30V、検出をポジティブモードで行った。なお、測定する質量範囲をm/z=100乃至1300とした。
上記の条件でLC分離し、イオン化された成分を衝突室(コリジョンセル)内でアルゴンガスと衝突させた。アルゴンと衝突させる際のエネルギー(コリジョンエネルギー)は6eVとし、プロダクトイオンが観測できる値とした。
試料1及び試料2のLC/MSのPDAクロマトグラムを図3に示す。
なお、分析サンプル作製に用いたクロロホルムを、アセトニトリルで希釈した溶液の分析を行い、ベースライン(または、バックグラウンド:BGともいう)のPDAクロマトグラムを得た。図3において、ベースラインの結果をBGとして示す。
図3に示す結果より、試料1及び試料2のEL層108中には、それぞれa1乃至a5で示されるピークが確認された。a1乃至a5で示されるピークについて、MSスペクトルによる解析を行ったところ、a2は2mDBTBPDBq−II及びBPAFLPに、a3はDBT3P−IIに、a4はPCBNBBに、a5はIr(tppr)2(dpm)に、それぞれ帰属された。なお、BGとの比較によりa1は、溶媒として用いたクロロホルム、当該クロロホルムに含まれる不純物、及びBphenに帰属された。このように、EL層108の作製に用いた材料以外の目立ったピークが認められなかった。
次に、Ir(tppr)2(dpm)に着目してPDAクロマトグラムの解析を行った。なお、PDAクロマトグラムの解析としては、ベースラインを差し引いて行った。試料1及び試料2のLC/MSのIr(tppr)2(dpm)の近傍のクロマトグラムを図4に示す。なお、図4は図3に示すPDAクロマトグラムの吸光度を拡大した図である。
図4において、図3に示すa1乃至a5のピーク以外に、a6のピークが確認された。MSクロマトグラムを用いて解析した結果、a6はIr(tppr)2(dpm)の配位子であるtpprに帰属された。なお、a1乃至a6以外にも小さなピークが多数認められたが、試料1及び試料2でピーク面積比が大きく異なるピークは認められなかった。
すなわち、図4において、Irを含むMSスペクトルが得られたのは、a5の1つのピークであり、Irを含まないがIr(tppr)2(dpm)に由来するa6のピークが確認された。なお、図4において、a5がイリジウム錯体のプレカーサーイオンに相当し、a6がイリジウム錯体のフラグメントイオンに相当する。
<5.試料中に含まれる、イリジウム錯体に起因する不純物解析>
次に、図4に示すLC/MS分析結果を用い、試料1及び試料2に含まれるイリジウム錯体に起因する不純物の濃度を求めた。不純物の濃度の結果を表2に示す。なお、表2は、図4に示すa5及びa6の2つのピーク面積、すなわちイリジウム錯体に起因する物質の合計のピーク面積を100%とした場合の結果である。
表2に示すように、試料1においては、イリジウム錯体であるIr(tppr)2(dpm)に起因する物質の合計のピーク面積を100%とした場合、イリジウム錯体のピーク面積(ここではa5)に対する、イリジウム金属に配位結合していない配位子のピーク面積(ここではa6)の比が0.8%であった。また、試料2においては、イリジウム錯体であるIr(tppr)2(dpm)に起因する物質の合計のピーク面積を100%とした場合、イリジウム錯体のピーク面積(ここではa5)に対する、イリジウム金属に配位結合していない配位子のピーク面積(ここではa6)の比が10.6%であった。
以上のように、試料1と試料2とを比較した場合、発光層110中のイリジウム錯体に起因する不純物として、イリジウム金属に配位結合していない配位子の含有量に差が認められた。イリジウム金属に配位結合していない配位子の含有量の差が、図2に示す試料1と試料2との信頼性の差として表れていると示唆される。したがって、EL層108が有する発光層110中の発光物質である、イリジウム錯体に起因する不純物の内、配位子の濃度を低減することによって、信頼性が高い発光素子を実現することができる。
<材料中に含まれる、イリジウム錯体に起因する不純物分析>
次に、試料1及び試料2中に含まれるイリジウム金属に配位結合していない配位子は、蒸着前の材料であるイリジウム錯体に含まれている、または蒸着中または蒸着後にEL層108中で分解し生成される可能性がある。そこで、蒸着前の材料中に含まれるイリジウム錯体に起因する不純物分析を行った。
LC/MS分析の分析サンプルとしては、蒸着前のイリジウム錯体(材料X1)をクロロホルムに溶解しクロロホルム溶液を得た。得られたクロロホルム溶液をアセトニトリルで任意の濃度に希釈し、分析サンプルを作製した。なお、分析サンプルの注入量を5.0μLとして、LC/MS分析を行った。なお、LC/MS分析方法については、先に示す試料1及び試料2のLC分離条件以外を同じとした。材料X1のLC分離には移動相Aとしてアセトニトリルを、移動相Bとして0.1%ギ酸水溶液を用いた。また、移動相の組成を変化させるグラジエント法を用いた。測定開始から1分経過後までを、移動相A:移動相B=75:25の組成とし、そのあと組成をリニアに変化させ、測定開始から4分経過後に移動相A:移動相B=90:10の組成となるようにし、さらにそのあと組成をリニアに変化させ、測定開始10分経過後に移動相A:移動相B=95:5の組成となるようにした。つまり、測定時間は全部で10分である。
材料X1に対して行ったLC/MS分析で得られたMSスペクトルに、m/z=991、m/z=1145、m/z=1023、及びm/z=915のピークが確認された。このピーク面積から材料X1に含まれる、不純物の解析を行った結果を表3に示す。
表3に示す通り、試料1及び試料2の発光層110に用いたイリジウム錯体である材料X1の純度が高く、材料X1中には発光層110中に見られた配位子であるtpprの不純物が確認されなかった。
したがって、試料2の発光層110中に多く存在するIr(tppr)2(dpm)の配位子であるtpprは、蒸着中または蒸着後にEL層108中で生成されたと示唆される。
ここで、図1に示す発光素子100の構成要素について、以下詳細に説明する。
<基板>
基板102は、発光素子100の支持体として用いられる。基板102としては、例えばガラス、石英、又はプラスチックなどを用いることができる。また可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板とは、曲げることができる(フレキシブル)基板のことであり、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォンからなるプラスチック基板等が挙げられる。また、フィルム(ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニル等からなる)、無機蒸着フィルムなどを用いることもできる。
なお、発光素子100の作製工程において支持体として機能するものであれば、上記以外のものでもよい。例えば、様々な基板を用いて発光素子100を形成することが出来る。基板の種類は、特定のものに限定されることはない。基板の一例としては、半導体基板(例えば単結晶基板又はシリコン基板)、SOI基板、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、金属基板、ステンレス・スチル基板、ステンレス・スチル・ホイルを有する基板、タングステン基板、タングステン・ホイルを有する基板、可撓性基板、貼り合わせフィルム、繊維状の材料を含む紙、又は基材フィルムなどがある。ガラス基板の一例としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、又はソーダライムガラスなどがある。可撓性基板、貼り合わせフィルム、基材フィルムなどの一例としては、以下のものがあげられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に代表されるプラスチックがある。または、一例としては、アクリル等の合成樹脂などがある。または、一例としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、又はポリ塩化ビニルなどがある。または、一例としては、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、エポキシ、無機蒸着フィルム、又は紙類などがある。
また、基板として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、発光素子100を形成してもよい。または、基板と発光素子100との間に剥離層を設けてもよい。剥離層は、その上に発光素子100の一部あるいは全部完成させた後、基板より分離し、他の基板に転載するために用いることができる。その際、耐熱性の劣る基板や可撓性の基板にも発光素子100を転載できる。なお、上述の剥離層には、例えば、タングステン膜と酸化シリコン膜との無機膜の積層構造の構成や、基板上にポリイミド等の有機樹脂膜が形成された構成等を用いることができる。
つまり、ある基板を用いて発光素子100を形成し、その後、別の基板に発光素子100を転置し、別の基板上に発光素子100を配置してもよい。発光素子100が転置される基板の一例としては、上述した基板に加え、紙基板、セロファン基板、アラミドフィルム基板、ポリイミドフィルム基板、石材基板、木材基板、布基板(天然繊維(絹、綿、麻)、合成繊維(ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル)若しくは再生繊維(アセテート、キュプラ、レーヨン、再生ポリエステル)などを含む)、皮革基板、又はゴム基板などがある。これらの基板を用いることにより、壊れにくい発光素子100、耐熱性の高い発光素子100、軽量化された発光素子100、または薄型化された発光素子100とすることができる。
<一対の電極>
下部電極104及び上部電極114には、金属、合金、及び電気伝導性化合物、またはこれらの混合物などを用いることができる。具体的には、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、シリコンまたは酸化シリコンを含有した酸化インジウム−酸化スズ(ITSO)、酸化インジウム−酸化亜鉛、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)の他、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびマグネシウム(Mg)、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLi)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金、その他、グラフェン等を用いることができる。なお、下部電極104および上部電極114は、例えばスパッタリング法や蒸着法(真空蒸着法を含む)等により形成することができる。
<発光層>
発光層110は、少なくとも発光物質としてイリジウム錯体を有する。また、発光層110は、発光物質に加えて、電子輸送性材料または正孔輸送性材料の一方または双方を含んで構成される。なお、図1に示す発光素子100においては、発光層110を単層構造について例示したが、これに限定されず、2層以上の積層構造としてもよい。
また、発光層110に用いるイリジウム錯体としては、少なくとも窒素原子を1つ以上有する、芳香族複素環化合物からなる配位子を2つ以上有するイリジウム錯体が挙げられる。
上述の芳香族複素環化合物とは、例えば、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピラジン、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、インダゾール、プリン、キノキサリン、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、トリアジン等が挙げられる。
また、本発明の一態様である発光素子に含まれるイリジウム錯体は、上述の配位子の芳香族複素環化合物の窒素原子と、イリジウム金属とが配位結合している構造を有する。ただし、イリジウム錯体の配位子としては、上述の芳香族複素環化合物を有するものに限定されない。
また、本発明の一態様である発光素子に含まれるイリジウム錯体は、蒸着中に熱分解等によって不純物が生成されると、当該不純物が蒸着後の膜中に混入する場合がある。蒸着中の不純物が蒸着後の膜中に混入した場合、発光素子中のイリジウム錯体の純度が低下する場合がある。とくに、発光素子中に含まれる不純物としては、イリジウム錯体のイリジウム金属と配位結合する配位子が挙げられる。
上述のイリジウム錯体は、配位子の窒素原子とイリジウム金属との配位結合が弱い方が、分解が促進され易い場合がある。イリジウム金属と配位結合する配位子において、芳香族複素環化合物に含まれる窒素原子の数が2つ以上の場合、当該窒素原子が1つの環に比べて環の塩基性が弱まり、配位結合性が弱まることが考えられる。したがって、芳香族複素環化合物のうち、窒素原子が2つ以上の芳香族複素環化合物からなる配位子を有するイリジウム錯体は、蒸着によって純度の低下が起こり易い場合がある。
すなわち、窒素原子が2つ以上の芳香族複素環化合物の配位子を有するイリジウム錯体は、窒素原子が1つの芳香族複素環化合物の配位子を有するイリジウム錯体よりも、発光素子中に配位子が分解して混入されやすい。したがって、窒素原子が2つ以上の芳香族複素環化合物の配位子を有するイリジウム錯体の配位子の混入を抑制することにより、発光素子の長寿命化を実現することができる。
窒素原子が2つ以上の芳香族複素環化合物としては、例えば、ジアジン、トリアジン等が挙げられる。窒素原子の数が2つの芳香族複素環化合物とは、具体的には、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インダゾール、プリン、キノキサリン、フタラジン、ナフチリジン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、フェナントリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、トリアジン等が挙げられる。
本発明の一態様の発光素子に用いることのできるイリジウム錯体としては、例えば、下記の一般式(G1)乃至(G4)で表されるイリジウム錯体が挙げられる。
一般式(G1)乃至(G4)において、R1乃至R4は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、あるいは置換または無置換の環を形成する炭素数が1乃至10のアリール基を表し、Arは置換または無置換の環を形成する炭素数が1乃至10のアリーレン基を表し、Lはモノアニオン性の配位子を表す。また、nは2または3であり、mは0または1であり、nとmの合計は3である。
また、一般式(G1)乃至(G4)において、Lで表されるモノアニオン性の配位子とは、ベータジケトン構造を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、カルボキシル基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、フェノール性水酸基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、または2つの配位元素がいずれも窒素であるモノアニオン性の二座キレート配位子のいずれかが好ましい。
モノアニオン性の配位子としては、例えば、下記の一般式(L1)乃至(L7)で表される配位子が挙げられる。
一般式(L1)乃至(L7)において、R71乃至R109は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1乃至6のアルキル基、ハロゲン基、ビニル基、置換もしくは無置換の炭素数1乃至6のハロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1乃至6のアルコキシ基、または置換もしくは無置換の炭素数1乃至6のアルキルチオ基を表す。また、A1乃至A3は、それぞれ独立に、窒素、水素、または置換基Rと結合する炭素を表し、置換基Rは炭素数1乃至6のアルキル基、ハロゲン基、炭素数1乃至6のハロアルキル基、またはフェニル基を表す。
ただし、本発明の一態様の発光素子に含まれるイリジウム錯体は、一般式(G1)乃至(G4)のイリジウム錯体に限定されない。本発明の一態様である発光素子に含まれるイリジウム錯体は、例えば、トリス(4−メチル−6−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppm)3)、トリス(4−t−ブチル−6−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tBuppm)3)、(アセチルアセトナト)ビス(6−メチル−4−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppm)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(6−tert−ブチル−4−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tBuppm)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[4−(2−ノルボルニル)−6−フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(endo−,exo−混合物)(略称:Ir(nbppm)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[5−メチル−6−(2−メチルフェニル)−4−フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:Ir(mpmppm)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(4,6−ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(dppm)2(acac))、ビス{4,6−ジメチル−2−[5−(2,6−ジメチルフェニル)−3−(3,5−ジメチルフェニル)−2−ピラジニル−κN]フェニル−κC}(2,4−ペンタンジオナト−κ2O,O’)イリジウム(III)(略称:Ir(dmdppr−dmp)2(acac))、ビス{2−[5−(2,6−ジメチルフェニル)−3−(3,5−ジメチルフェニル)−2−ピラジニル−κN]−4,6−ジメチルフェニル−κC}(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト−κ2O,O’)イリジウム(III)(略称:Ir(dmdppr−dmp)2(dpm))のようなピリミジン骨格を有するイリジウム錯体や、(アセチルアセトナト)ビス(3,5−ジメチル−2−フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppr−Me)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(5−イソプロピル−3−メチル−2−フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppr−iPr)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)2(acac))、ビス[2−(3,5−ジフェニル−2−ピラジニル−κN)−フェニル−κC](2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト−κ2O,O’)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)2(dpm))のようなピラジン骨格を有するイリジウム錯体や、トリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy)3)、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)2(acac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)2(acac))、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:Ir(bzq)3)、トリス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(pq)3)、ビス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pq)2(acac))のようなピリジン骨格を有するイリジウム錯体等が挙げられる。
なお、上述したイリジウム錯体は、480nm以上650nm以下に発光のピークを有する。また、上述したイリジウム錯体の中でも、ピリミジン骨格を有するイリジウム錯体を用いると、信頼性や発光効率にも際だって優れるため、特に好ましい。また、上述したイリジウム錯体は、発光素子中の純度低下を防ぐことにより、長寿命化を実現することが可能となる。また、上述したイリジウム錯体は、発光素子中での純度を高くすることでの長寿命化への効果が大きい。
また、発光層110に用いる電子輸送性材料としては、含窒素複素芳香族化合物のようなπ電子不足型複素芳香族化合物が好ましい。当該電子輸送性材料としては、π電子不足型複素芳香族や金属錯体などを用いることができる。具体的には、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8−キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2−(2−ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2−(2−ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体や、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、9−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CO11)、2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm−II)などのアゾール骨格を有する複素環化合物や、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq−II)、2−[3’−(ジベンゾチオフェン−4−イル)ビフェニル−3−イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq−II)、2−[3’−(9H−カルバゾール−9−イル)ビフェニル−3−イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、4,6−ビス[3−(フェナントレン−9−イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mPnP2Pm)、4,6−ビス[3−(4−ジベンゾチエニル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mDBTP2Pm−II)などのジアジン骨格を有する複素環化合物や、2−{4−[3−(N−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)−9H−カルバゾール−9−イル]フェニル}−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン(略称:PCCzPTzn)などのトリアジン骨格を有する複素環化合物や、3,5−ビス[3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)、1,3,5−トリ[3−(3−ピリジル)フェニル]ベンゼン(略称:TmPyPB)などのピリジン骨格を有する複素環化合物が挙げられる。上述した中でも、ジアジン骨格及びトリアジン骨格を有する複素環化合物やピリジン骨格を有する複素環化合物は、信頼性が良好であり好ましい。特に、ジアジン(ピリミジンやピラジン)骨格及びトリアジン骨格を有する複素環化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。
また、発光層110に用いる正孔輸送性材料としては、π電子過剰型複素芳香族化合物や芳香族アミン化合物が好ましい。当該正孔輸送性材料としては、π電子過剰型複素芳香族又は芳香族アミンなどを好適に用いることができる。具体的には、2−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]スピロ−9,9’−ビフルオレン(略称:PCASF)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4−フェニル−3’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’−ジフェニル−4’’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4−(1−ナフチル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’−ジ(1−ナフチル)−4’’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、9,9−ジメチル−N−フェニル−N−[4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)フェニル]フルオレン−2−アミン(略称:PCBAF)、N−フェニル−N−[4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)フェニル]スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−アミン(略称:PCBASF)、N−(1,1’−ビフェニル−4−イル)−N−[4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)フェニル]−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン(略称:PCBBiF)などの芳香族アミン骨格を有する化合物や、1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、3,6−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)−9−フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、9−フェニル−9H−3−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)カルバゾール(略称:PCCP)などのカルバゾール骨格を有する化合物や、4,4’,4’’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P−II)、2,8−ジフェニル−4−[4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP−III)、4−[4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル]−6−フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP−IV)などのチオフェン骨格を有する化合物や、4,4’,4’’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3P−II)、4−{3−[3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi−II)などのフラン骨格を有する化合物が挙げられる。上述した中でも、芳香族アミン骨格を有する化合物やカルバゾール骨格を有する化合物は、信頼性が良好であり、また、正孔輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与するため好ましい。
また、発光層110に用いる正孔輸送性材料として、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)などの高分子化合物を用いることもできる。
また、発光層110に用いる、上述の電子輸送性材料、及び正孔輸送性材料としては、励起錯体(Exciplexともいう)を形成する組み合わせが好ましい。例えば、発光層110に用いる、電子輸送性材料が電子を受け取り、正孔輸送性材料が正孔を受け取る。この時、電子輸送性材料と正孔輸送性材料とが近接することで、速やかに励起錯体を形成する。したがって、発光層110における励起子のほとんどが励起錯体として存在する。励起錯体は、電子輸送性材料及び正孔輸送性材料の双方よりもバンドギャップが小さくなるため、発光素子100の駆動電圧を下げることが可能となる。
また、上記励起錯体から、本発明の一態様の発光素子に含まれるイリジウム錯体へのエネルギー授受があると好ましい。具体的には、励起錯体の一重項励起状態の最も低い準位(SE)と、励起錯体の三重項励起状態の最も低い準位(TE)との双方のエネルギーを、イリジウム錯体の三重項励起状態の最も低い準位へ移動させることで発光させると、高い発光効率を得られるため好適である。
<正孔注入層、正孔輸送層>
正孔注入層131は、正孔輸送性の高い正孔輸送層132を介して発光層110に正孔を注入する層であり、正孔輸送性材料とアクセプター性物質を含む層である。正孔輸送性材料とアクセプター性物質を含むことで、アクセプター性物質により正孔輸送性材料から電子が引き抜かれて正孔が発生し、正孔輸送層132を介して発光層110に正孔が注入される。なお、正孔輸送層132は、正孔輸送性材料を用いて形成される。
正孔注入層131及び正孔輸送層132に用いる正孔輸送性材料としては、先に示す発光層110に用いることのできる、正孔輸送性材料と同様の材料を用いればよい。
また、正孔注入層131に用いるアクセプター性物質としては、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化モリブデンが特に好ましい。
<電子輸送層>
電子輸送層133としては、先に示す発光層110に用いることのできる、電子輸送性材料と同様の材料を用いればよい。なお、図1に示す発光素子100においては、電子輸送層133を電子輸送層133(1)と、電子輸送層133(2)との、積層構造について例示したが、これに限定されず、単層構造または3層以上の積層構造としてもよい。
<電子注入層>
電子注入層134は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層134には、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)、リチウム酸化物(LiOx)等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウム(ErF3)のような希土類金属化合物を用いることができる。また、電子注入層134にエレクトライドを用いてもよい。該エレクトライドとしては、例えば、カルシウムとアルミニウムの混合酸化物に電子を高濃度添加した物質等が挙げられる。
また、電子注入層134に、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発生するため、電子注入性および電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電子輸送層133を構成する物質(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができる。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的には、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることもできる。
以上、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成、または他の実施例に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光素子について図5を用いて説明する。なお、図5は、本発明の一態様の発光素子150を説明する断面模式図である。
発光素子150は、下部電極104と、上部電極114との間に、複数の発光ユニット(図5においては、第1の発光ユニット141及び第2の発光ユニット142)を有する。第1の発光ユニット141及び第2の発光ユニット142のいずれか一方または双方は、図1に示すEL層108と同様な構成を有する。つまり、図1で示した発光素子100は、1つの発光ユニットを有し、発光素子150は、複数の発光ユニットを有する。
また、図5に示す発光素子150において、第1の発光ユニット141と第2の発光ユニット142が積層されており、第1の発光ユニット141と第2の発光ユニット142との間には電荷発生層143が設けられる。なお、第1の発光ユニット141と第2の発光ユニット142は、同じ構成でも異なる構成でもよい。
電荷発生層143には、有機化合物と金属酸化物の複合材料が含まれている。該複合材料には、先に示す正孔注入層111に用いることができる複合材料を用いればよい。有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール化合物、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、有機化合物としては、正孔移動度が1×10−6cm2/Vs以上であるものを適用することが好ましい。ただし、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。有機化合物と金属酸化物の複合材料は、キャリア注入性、キャリア輸送性に優れているため、低電圧駆動、低電流駆動を実現することができる。なお、発光ユニットの陽極側の面が電荷発生層143に接している場合は、電荷発生層143が発光ユニットの正孔輸送層の役割も担うことができるため、発光ユニットは正孔輸送層を設けなくとも良い。
なお、電荷発生層143は、有機化合物と金属酸化物の複合材料を含む層と他の材料により構成される層を組み合わせた積層構造として形成してもよい。例えば、有機化合物と金属酸化物の複合材料を含む層と、電子供与性物質の中から選ばれた一の化合物と電子輸送性の高い化合物とを含む層とを組み合わせて形成してもよい。また、有機化合物と金属酸化物の複合材料を含む層と、透明導電膜とを組み合わせて形成してもよい。
なお、第1の発光ユニット141と第2の発光ユニット142に挟まれる電荷発生層143は、下部電極104と上部電極114に電圧を印加したときに、一方の発光ユニットに電子を注入し、他方の発光ユニットに正孔を注入するものであれば良い。例えば、図5において、下部電極104の電位の方が上部電極114の電位よりも高くなるように電圧を印加した場合、電荷発生層143は、第1の発光ユニット141に電子を注入し、第2の発光ユニット142に正孔を注入するものであればよい。
また、図5においては、2つの発光ユニットを有する発光素子について説明したが、3つ以上の発光ユニットを積層した発光素子についても、同様に適用することが可能である。発光素子150のように、一対の電極間に複数の発光ユニットを電荷発生層で仕切って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度発光を可能とし、さらに長寿命な素子を実現できる。また、低電圧駆動が可能で消費電力が低い発光装置を実現することができる。
なお、複数のユニットのうち、少なくとも一つのユニットに、実施の形態1に示すEL層108または発光層110を有することによって、信頼性の高い発光素子とすることができる。
また、第1の発光ユニット141及び第2の発光ユニット142のいずれか一方に、発光物質として蛍光材料を用いてもよい。例えば、第1の発光ユニット141及び第2の発光ユニット142のいずれか一方の発光層は、ホスト材料と蛍光材料とを有する。
第1の発光ユニット141及び第2の発光ユニット142のいずれか一方の発光層において、ホスト材料が重量比で最も多く存在し、蛍光材料はホスト材料中に分散される。ホスト材料のS1準位は、蛍光材料のS1準位よりも大きく、ホスト材料のT1準位は、蛍光材料のT1準位よりも小さいことが好ましい。
上記ホスト材料としては、アントラセン誘導体、あるいはテトラセン誘導体が好ましい。これらの誘導体はS1準位が大きく、T1準位が小さいからである。具体的には、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)、3−[4−(1−ナフチル)−フェニル]−9−フェニル−9H−カルバゾール(略称:PCPN)、9−[4−(10−フェニル−9−アントラセニル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、7−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−7H−ジベンゾ[c,g]カルバゾール(略称:cgDBCzPA)、6−[3−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン(略称:2mBnfPPA)、9−フェニル−10−{4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)ビフェニル−4’−イル}アントラセン(略称:FLPPA)などが挙げられる。あるいは、5,12−ジフェニルテトラセン、5,12−ビス(ビフェニル−2−イル)テトラセンなどが挙げられる。
蛍光材料としては、ピレン誘導体、アントラセン誘導体、トリフェニレン誘導体、フルオレン誘導体、カルバゾール誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾキノキサリン誘導体、キノキサリン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、フェナントレン誘導体、ナフタレン誘導体などが挙げられる。特にピレン誘導体は発光量子収率が高いので好ましい。ピレン誘導体の具体例としては、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス[3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル]ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)、N,N’−ビス[4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)、N,N’−ビス(ジベンゾフラン−2−イル)−N,N’−ジフェニルピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FrAPrn)、N,N’−ビス(ジベンゾチオフェン−2−イル)−N,N’−ジフェニルピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6ThAPrn)などが挙げられる。
なお、上記構成は、他の実施の形態や本実施の形態中の他の構成と適宜組み合わせることが可能である。
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光装置を有する表示装置について、図6を用いて説明を行う。
なお、図6(A)は、本発明の一態様の表示装置を説明するブロック図であり、図6(B)は、本発明の一態様の表示装置が有する画素回路を説明する回路図である。
図6(A)に示す表示装置は、表示素子の画素を有する領域(以下、画素部802という)と、画素部802の外側に配置され、画素を駆動するための回路を有する回路部(以下、駆動回路部804という)と、素子の保護機能を有する回路(以下、保護回路806という)と、端子部807と、を有する。なお、保護回路806は、設けない構成としてもよい。
駆動回路部804の一部、または全部は、画素部802と同一基板上に形成されていることが望ましい。これにより、部品数や端子数を減らすことが出来る。駆動回路部804の一部、または全部が、画素部802と同一基板上に形成されていない場合には、駆動回路部804の一部、または全部は、COGやTAB(Tape Automated Bonding)によって、実装することができる。
画素部802は、X行(Xは2以上の自然数)Y列(Yは2以上の自然数)に配置された複数の表示素子を駆動するための回路(以下、画素回路801という)を有し、駆動回路部804は、画素を選択する信号(走査信号)を出力する回路(以下、ゲートドライバ804aという)、画素の表示素子を駆動するための信号(データ信号)を供給するための回路(以下、ソースドライバ804b)などの駆動回路を有する。
ゲートドライバ804aは、シフトレジスタ等を有する。ゲートドライバ804aは、端子部807を介して、シフトレジスタを駆動するための信号が入力され、信号を出力する。例えば、ゲートドライバ804aは、スタートパルス信号、クロック信号等が入力され、パルス信号を出力する。ゲートドライバ804aは、走査信号が与えられる配線(以下、走査線GL_1乃至GL_Xという)の電位を制御する機能を有する。なお、ゲートドライバ804aを複数設け、複数のゲートドライバ804aにより、走査線GL_1乃至GL_Xを分割して制御してもよい。または、ゲートドライバ804aは、初期化信号を供給することができる機能を有する。ただし、これに限定されず、ゲートドライバ804aは、別の信号を供給することも可能である。
ソースドライバ804bは、シフトレジスタ等を有する。ソースドライバ804bは、端子部807を介して、シフトレジスタを駆動するための信号の他、データ信号の元となる信号(画像信号)が入力される。ソースドライバ804bは、画像信号を元に画素回路801に書き込むデータ信号を生成する機能を有する。また、ソースドライバ804bは、スタートパルス、クロック信号等が入力されて得られるパルス信号に従って、データ信号の出力を制御する機能を有する。また、ソースドライバ804bは、データ信号が与えられる配線(以下、データ線DL_1乃至DL_Yという)の電位を制御する機能を有する。または、ソースドライバ804bは、初期化信号を供給することができる機能を有する。ただし、これに限定されず、ソースドライバ804bは、別の信号を供給することも可能である。
ソースドライバ804bは、例えば複数のアナログスイッチなどを用いて構成される。ソースドライバ804bは、複数のアナログスイッチを順次オン状態にすることにより、画像信号を時分割した信号をデータ信号として出力できる。また、シフトレジスタなどを用いてソースドライバ804bを構成してもよい。
複数の画素回路801のそれぞれは、走査信号が与えられる複数の走査線GLの一つを介してパルス信号が入力され、データ信号が与えられる複数のデータ線DLの一つを介してデータ信号が入力される。また、複数の画素回路801のそれぞれは、ゲートドライバ804aによりデータ信号のデータの書き込み及び保持が制御される。例えば、m行n列目の画素回路801は、走査線GL_m(mはX以下の自然数)を介してゲートドライバ804aからパルス信号が入力され、走査線GL_mの電位に応じてデータ線DL_n(nはY以下の自然数)を介してソースドライバ804bからデータ信号が入力される。
図6(A)に示す保護回路806は、例えば、ゲートドライバ804aと画素回路801の間の配線である走査線GLに接続される。または、保護回路806は、ソースドライバ804bと画素回路801の間の配線であるデータ線DLに接続される。または、保護回路806は、ゲートドライバ804aと端子部807との間の配線に接続することができる。または、保護回路806は、ソースドライバ804bと端子部807との間の配線に接続することができる。なお、端子部807は、外部の回路から表示装置に電源及び制御信号、及び画像信号を入力するための端子が設けられた部分をいう。
保護回路806は、自身が接続する配線に一定の範囲外の電位が与えられたときに、該配線と別の配線とを導通状態にする回路である。
図6(A)に示すように、画素部802と駆動回路部804にそれぞれ保護回路806を設けることにより、ESD(Electro Static Discharge:静電気放電)などにより発生する過電流に対する表示装置の耐性を高めることができる。ただし、保護回路806の構成はこれに限定されず、例えば、ゲートドライバ804aに保護回路806を接続した構成、またはソースドライバ804bに保護回路806を接続した構成とすることもできる。あるいは、端子部807に保護回路806を接続した構成とすることもできる。
また、図6(A)においては、ゲートドライバ804aとソースドライバ804bによって駆動回路部804を形成している例を示しているが、この構成に限定されない。例えば、ゲートドライバ804aのみを形成し、別途用意されたソースドライバ回路が形成された基板(例えば、単結晶半導体膜、多結晶半導体膜で形成された駆動回路基板)を実装する構成としても良い。
また、図6(A)に示す複数の画素回路801は、例えば、図6(B)に示す構成とすることができる。
図6(B)に示す画素回路801は、トランジスタ852、854と、容量素子862と、発光素子872と、を有する。
トランジスタ852のソース電極及びドレイン電極の一方は、データ信号が与えられる配線(以下、信号線DL_nという)に電気的に接続される。さらに、トランジスタ852のゲート電極は、ゲート信号が与えられる配線(以下、走査線GL_mという)に電気的に接続される。
トランジスタ852は、オン状態またはオフ状態になることにより、データ信号のデータの書き込みを制御する機能を有する。
容量素子862の一対の電極の一方は、電位が与えられる配線(以下、電位供給線VL_aという)に電気的に接続され、他方は、トランジスタ852のソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続される。
容量素子862は、書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
トランジスタ854のソース電極及びドレイン電極の一方は、電位供給線VL_aに電気的に接続される。さらに、トランジスタ854のゲート電極は、トランジスタ852のソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続される。
発光素子872のアノード及びカソードの一方は、電位供給線VL_bに電気的に接続され、他方は、トランジスタ854のソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続される。
発光素子872としては、実施の形態1に示す発光素子100を用いることができる。
なお、電位供給線VL_a及び電位供給線VL_bの一方には、高電源電位VDDが与えられ、他方には、低電源電位VSSが与えられる。
図6(B)の画素回路801を有する表示装置では、例えば、図6(A)に示すゲートドライバ804aにより各行の画素回路801を順次選択し、トランジスタ852をオン状態にしてデータ信号のデータを書き込む。
データが書き込まれた画素回路801は、トランジスタ852がオフ状態になることで保持状態になる。さらに、書き込まれたデータ信号の電位に応じてトランジスタ854のソース電極とドレイン電極の間に流れる電流量が制御され、発光素子872は、流れる電流量に応じた輝度で発光する。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
また、画素回路に、トランジスタのしきい値電圧等の変動の影響を補正する機能を持たせてもよい。図7(A)(B)及び図8(A)(B)に画素回路の一例を示す。
図7(A)に示す画素回路は、6つのトランジスタ(トランジスタ303_1乃至303_6)と、容量素子304と、発光素子305と、を有する。また、図7(A)に示す画素回路には、配線301_1乃至301_5、並びに配線302_1及び配線302_2が電気的に接続されている。なお、トランジスタ303_1乃至303_6については、例えばP型の極性のトランジスタを用いることができる。
図7(B)に示す画素回路は、図7(A)に示す画素回路に、トランジスタ303_7を追加した構成である。また、図7(B)に示す画素回路には、配線301_6及び配線301_7が電気的に接続されている。ここで、配線301_5と配線301_6とは、それぞれ電気的に接続されていてもよい。なお、トランジスタ303_7については、例えばP型の極性のトランジスタを用いることができる。
図8(A)に示す画素回路は、6つのトランジスタ(トランジスタ308_1乃至308_6)と、容量素子304と、発光素子305と、を有する。また、図8(A)に示す画素回路には、配線306_1乃至306_3、並びに配線307_1乃至307_3が電気的に接続されている。ここで配線306_1と配線306_3とは、それぞれ電気的に接続されていてもよい。なお、トランジスタ308_1乃至308_6については、例えばP型の極性のトランジスタを用いることができる。
図8(B)に示す画素回路は、2つのトランジスタ(トランジスタ309_1及びトランジスタ309_2)と、2つの容量素子(容量素子304_1及び容量素子304_2)と、発光素子305と、を有する。また、図8(B)に示す画素回路には、配線311_1乃至配線311_3、配線312_1、及び配線312_2が電気的に接続されている。また、図8(B)に示す画素回路の構成とすることで、例えば、発光素子305を定電圧定電流(Constant Voltage Constant Current:CVCC)駆動することができる。なお、トランジスタ309_1及び309_2については、例えばP型の極性のトランジスタを用いることができる。
また、本発明の一態様の発光素子は、表示装置の画素に能動素子を有するアクティブマトリクス方式、または、表示装置の画素に能動素子を有しないパッシブマトリクス方式のそれぞれの方式に適用することができる。
アクティブマトリクス方式では、能動素子(アクティブ素子、非線形素子)として、トランジスタだけでなく、さまざまな能動素子(アクティブ素子、非線形素子)を用いることが出来る。例えば、MIM(Metal Insulator Metal)、又はTFD(Thin Film Diode)などを用いることも可能である。これらの素子は、製造工程が少ないため、製造コストの低減、又は歩留まりの向上を図ることができる。または、これらの素子は、素子のサイズが小さいため、開口率を向上させることができ、低消費電力化や高輝度化をはかることが出来る。
アクティブマトリクス方式以外のものとして、能動素子(アクティブ素子、非線形素子)を用いないパッシブマトリクス型を用いることも可能である。能動素子(アクティブ素子、非線形素子)を用いないため、製造工程が少ないため、製造コストの低減、又は歩留まりの向上を図ることができる。または、能動素子(アクティブ素子、非線形素子)を用いないため、開口率を向上させることができ、低消費電力化、又は高輝度化などを図ることが出来る。
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態においては、本発明の一態様の発光装置を有する表示パネル、及び該表示パネルに入力装置を取り付けた電子機器について、図9乃至図13を用いて説明を行う。
<タッチパネルに関する説明1>
なお、本実施の形態において、電子機器の一例として、表示パネルと、入力装置とを合わせたタッチパネル2000について説明する。また、入力装置の一例として、タッチセンサを用いる場合について説明する。なお、本発明の一態様の発光装置を表示パネルの画素に用いることができる。
図9(A)(B)は、タッチパネル2000の斜視図である。なお、図9(A)(B)において、明瞭化のため、タッチパネル2000の代表的な構成要素を示す。
タッチパネル2000は、表示パネル2501とタッチセンサ2595とを有する(図9(B)参照)。また、タッチパネル2000は、基板2510、基板2570、及び基板2590を有する。なお、基板2510、基板2570、及び基板2590はいずれも可撓性を有する。ただし、基板2510、基板2570、及び基板2590のいずれか一つまたは全てが可撓性を有さない構成としてもよい。
表示パネル2501は、基板2510上に複数の画素及び該画素に信号を供給することができる複数の配線2511を有する。複数の配線2511は、基板2510の外周部にまで引き回され、その一部が端子2519を構成している。端子2519はFPC2509(1)と電気的に接続する。
基板2590は、タッチセンサ2595と、タッチセンサ2595と電気的に接続する複数の配線2598とを有する。複数の配線2598は、基板2590の外周部に引き回され、その一部は端子を構成する。そして、該端子はFPC2509(2)と電気的に接続される。なお、図9(B)では明瞭化のため、基板2590の裏面側(基板2510と対向する面側)に設けられるタッチセンサ2595の電極や配線等を実線で示している。
タッチセンサ2595として、例えば静電容量方式のタッチセンサを適用できる。静電容量方式としては、表面型静電容量方式、投影型静電容量方式等がある。
投影型静電容量方式としては、主に駆動方式の違いから自己容量方式、相互容量方式などがある。相互容量方式を用いると同時多点検出が可能となるため好ましい。
なお、図9(B)に示すタッチセンサ2595は、投影型静電容量方式のタッチセンサを適用した構成である。
なお、タッチセンサ2595には、指等の検知対象の近接または接触を検知することができる、様々なセンサを適用することができる。
投影型静電容量方式のタッチセンサ2595は、電極2591と電極2592とを有する。電極2591は、複数の配線2598のいずれかと電気的に接続し、電極2592は複数の配線2598の他のいずれかと電気的に接続する。
電極2592は、図9(A)(B)に示すように、一方向に繰り返し配置された複数の四辺形が角部で接続される形状を有する。
電極2591は四辺形であり、電極2592が延在する方向と交差する方向に繰り返し配置されている。
配線2594は、電極2592を挟む二つの電極2591と電気的に接続する。このとき、電極2592と配線2594の交差部の面積ができるだけ小さくなる形状が好ましい。これにより、電極が設けられていない領域の面積を低減でき、透過率のバラツキを低減できる。その結果、タッチセンサ2595を透過する光の輝度のバラツキを低減することができる。
なお、電極2591及び電極2592の形状はこれに限定されず、様々な形状を取りうる。例えば、複数の電極2591をできるだけ隙間が生じないように配置し、絶縁層を介して電極2592を、電極2591と重ならない領域ができるように離間して複数設ける構成としてもよい。このとき、隣接する2つの電極2592の間に、これらとは電気的に絶縁されたダミー電極を設けると、透過率の異なる領域の面積を低減できるため好ましい。
なお、電極2591、電極2592、配線2598などの導電膜、つまり、タッチパネルを構成する配線や電極に用いることのできる材料として、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛等を有する透明導電膜(例えば、ITOなど)が挙げられる。また、タッチパネルを構成する配線や電極に用いることのできる材料として、例えば、抵抗値が低い方が好ましい。一例として、銀、銅、アルミニウム、カーボンナノチューブ、グラフェン、ハロゲン化金属(ハロゲン化銀など)などを用いてもよい。さらに、非常に細くした(例えば、直径が数ナノメール)複数の導電体を用いて構成されるような金属ナノワイヤを用いてもよい。または、導電体を網目状にした金属メッシュを用いてもよい。一例としては、Agナノワイヤ、Cuナノワイヤ、Alナノワイヤ、Agメッシュ、Cuメッシュ、Alメッシュなどを用いてもよい。例えば、タッチパネルを構成する配線や電極にAgナノワイヤを用いる場合、可視光において透過率を89%以上、シート抵抗値を40Ω/cm2以上100Ω/cm2以下とすることができる。また、上述したタッチパネルを構成する配線や電極に用いることのできる材料の一例である、金属ナノワイヤ、金属メッシュ、カーボンナノチューブ、グラフェンなどは、可視光において透過率が高いため、表示素子に用いる電極(例えば、画素電極または共通電極など)として用いてもよい。
<表示パネルに関する説明>
次に、図10(A)を用いて、表示パネル2501の詳細について説明する。図10(A)は、図9(B)に示す一点鎖線X1−X2間の断面図に相当する。
表示パネル2501は、マトリクス状に配置された複数の画素を有する。該画素は表示素子と、該表示素子を駆動する画素回路とを有する。
基板2510及び基板2570としては、例えば、水蒸気の透過率が10−5g/(m2・day)以下、好ましくは10−6g/(m2・day)以下である可撓性を有する材料を好適に用いることができる。または、基板2510の熱膨張率と、基板2570の熱膨張率とが、およそ等しい材料を用いると好適である。例えば、線膨張率が1×10−3/K以下、好ましくは5×10−5/K以下、より好ましくは1×10−5/K以下である材料を好適に用いることができる。
なお、基板2510は、発光素子への不純物の拡散を防ぐ絶縁層2510aと、可撓性基板2510bと、絶縁層2510a及び可撓性基板2510bを貼り合わせる接着層2510cと、を有する積層体である。また、基板2570は、発光素子への不純物の拡散を防ぐ絶縁層2570aと、可撓性基板2570bと、絶縁層2570a及び可撓性基板2570bを貼り合わせる接着層2570cと、を有する積層体である。
接着層2510c及び接着層2570cとしては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミド等)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、もしくはシロキサン結合を有する樹脂を含む材料を用いることができる。
また、基板2510と基板2570との間に封止層2560を有する。封止層2560は、空気より大きい屈折率を有すると好ましい。また、図10(A)に示すように、封止層2560側に光を取り出す場合は、封止層2560は光学素子を兼ねることができる。
また、封止層2560の外周部にシール材を形成してもよい。当該シール材を用いることにより、基板2510、基板2570、封止層2560、及びシール材で囲まれた領域に発光素子2550Rを有する構成とすることができる。なお、封止層2560として、不活性気体(窒素やアルゴン等)を充填してもよい。また、当該不活性気体内に、乾燥材を設けて、水分等を吸着させる構成としてもよい。また、上述のシール材としては、例えば、エポキシ系樹脂やガラスフリットを用いるのが好ましい。また、シール材に用いる材料としては、水分や酸素を透過しない材料を用いると好適である。
また、表示パネル2501は、画素2502を有する。また、画素2502は発光モジュール2580を有する。
画素2502は、発光素子2550Rと、発光素子2550Rに電力を供給することができるトランジスタ2502tとを有する。なお、トランジスタ2502tは、画素回路の一部として機能する。また、発光モジュール2580は、発光素子2550Rと、着色層2567Rとを有する。
発光素子2550は、下部電極と、上部電極と、下部電極と上部電極の間にEL層とを有する。発光素子2550として、例えば、実施の形態1に示す発光素子100を適用することができる。なお、図面においては、発光素子2550を1つしか図示していないが、2つ以上の発光素子を有する構成としてもよい。
また、封止層2560が光を取り出す側に設けられている場合、封止層2560は、発光素子2550と着色層2567Rに接する。
着色層2567Rは、発光素子2550と重なる位置にある。これにより、発光素子2550が発する光の一部は着色層2567Rを透過して、図中に示す矢印の方向の発光モジュール2580の外部に射出される。
また、表示パネル2501には、光を射出する方向に遮光層2567BMが設けられる。遮光層2567BMは、着色層2567Rを囲むように設けられている。
着色層2567Rとしては、特定の波長帯域の光を透過する機能を有していればよく、例えば、赤色の波長帯域の光を透過するカラーフィルタ、緑色の波長帯域の光を透過するカラーフィルタ、青色の波長帯域の光を透過するカラーフィルタ、黄色の波長帯域の光を透過するカラーフィルタなどを用いることができる。各カラーフィルタは、様々な材料を用いて、印刷法、インクジェット法、フォトリソグラフィ技術を用いたエッチング方法などで形成することができる。
また、表示パネル2501には、絶縁層2521が設けられる。絶縁層2521はトランジスタ2502tを覆う。なお、絶縁層2521は、画素回路に起因する凹凸を平坦化するための機能を有する。また、絶縁層2521に不純物の拡散を抑制できる機能を付与してもよい。これにより、不純物の拡散によるトランジスタ2502t等の信頼性の低下を抑制できる。
また、発光素子2550Rは、絶縁層2521の上方に形成される。また、発光素子2550Rが有する下部電極には、該下部電極の端部に重なる隔壁2528が設けられる。なお、基板2510と、基板2570との間隔を制御するスペーサを、隔壁2528上に形成してもよい。
走査線駆動回路2503gは、トランジスタ2503tと、容量素子2503cとを有する。なお、駆動回路を画素回路と同一の工程で同一基板上に形成することができる。
また、基板2510上には、信号を供給することができる配線2511が設けられる。また、配線2511上には、端子2519が設けられる。また、端子2519には、FPC2509(1)が電気的に接続される。また、FPC2509(1)は、ビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を供給する機能を有する。なお、FPC2509(1)にはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。
また、表示パネル2501には、様々な構造のトランジスタを適用することができる。図10(A)においては、ボトムゲート型のトランジスタを適用する場合について、例示しているが、これに限定されず、例えば、図10(B)に示す、トップゲート型のトランジスタを表示パネル2501に適用する構成としてもよい。
また、トランジスタ2502t及びトランジスタ2503tの極性については、特に限定はなく、N型およびP型のトランジスタを有する構造、N型のトランジスタまたはP型のトランジスタのいずれか一方のみからなる構造を用いてもよい。また、トランジスタ2502t及び2503tに用いられる半導体膜の結晶性についても特に限定はない。例えば、非晶質半導体膜、結晶性半導体膜を用いることができる。また、半導体材料としては、13族の半導体(例えば、ガリウムを有する半導体)、14族の半導体(例えば、ケイ素を有する半導体)、化合物半導体(酸化物半導体を含む)、有機半導体等を用いることができる。トランジスタ2502t及びトランジスタ2503tのいずれか一方または双方に、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、さらに好ましくは3eV以上の酸化物半導体を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができるため好ましい。当該酸化物半導体としては、In−Ga酸化物、In−M−Zn酸化物(Mは、Al、Ga、Y、Zr、La、Ce、Sn、またはNdを表す)等が挙げられる。
<タッチセンサに関する説明>
次に、図10(C)を用いて、タッチセンサ2595の詳細について説明する。図10(C)は、図9(B)に示す一点鎖線X3−X4間の断面図に相当する。
タッチセンサ2595は、基板2590上に千鳥状に配置された電極2591及び電極2592と、電極2591及び電極2592を覆う絶縁層2593と、隣り合う電極2591を電気的に接続する配線2594とを有する。
電極2591及び電極2592は、透光性を有する導電材料を用いて形成する。透光性を有する導電性材料としては、酸化インジウム、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛などの導電性酸化物を用いることができる。なお、グラフェンを含む膜を用いることもできる。グラフェンを含む膜は、例えば膜状に形成された酸化グラフェンを含む膜を還元して形成することができる。還元する方法としては、熱を加える方法等を挙げることができる。
例えば、透光性を有する導電性材料を基板2590上にスパッタリング法により成膜した後、フォトリソグラフィ法等の様々なパターニング技術により、不要な部分を除去して、電極2591及び電極2592を形成することができる。
また、絶縁層2593に用いる材料としては、例えば、アクリル、エポキシなどの樹脂、シロキサン結合を有する樹脂の他、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウムなどの無機絶縁材料を用いることもできる。
また、電極2591に達する開口が絶縁層2593に設けられ、配線2594が隣接する電極2591と電気的に接続する。透光性の導電性材料は、タッチパネルの開口率を高めることができるため、配線2594に好適に用いることができる。また、電極2591及び電極2592より導電性の高い材料は、電気抵抗を低減できるため配線2594に好適に用いることができる。
電極2592は、一方向に延在し、複数の電極2592がストライプ状に設けられている。また、配線2594は電極2592と交差して設けられている。
一対の電極2591が1つの電極2592を挟んで設けられる。また、配線2594は一対の電極2591を電気的に接続している。
なお、複数の電極2591は、1つの電極2592と必ずしも直交する方向に配置される必要はなく、0度を超えて90度未満の角度をなすように配置されてもよい。
また、配線2598は、電極2591または電極2592と電気的に接続される。また、配線2598の一部は、端子として機能する。配線2598としては、例えば、アルミニウム、金、白金、銀、ニッケル、チタン、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、またはパラジウム等の金属材料や、該金属材料を含む合金材料を用いることができる。
なお、絶縁層2593及び配線2594を覆う絶縁層を設けて、タッチセンサ2595を保護してもよい。
また、接続層2599は、配線2598とFPC2509(2)を電気的に接続させる。
接続層2599としては、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)や、異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic Conductive Paste)などを用いることができる。
<タッチパネルに関する説明2>
次に、図11(A)を用いて、タッチパネル2000の詳細について説明する。図11(A)は、図9(A)に示す一点鎖線X5−X6間の断面図に相当する。
図11(A)に示すタッチパネル2000は、図10(A)で説明した表示パネル2501と、図10(C)で説明したタッチセンサ2595と、を貼り合わせた構成である。
また、図11(A)に示すタッチパネル2000は、図10(A)及び図10(C)で説明した構成の他、接着層2597と、反射防止層2567pと、を有する。
接着層2597は、配線2594と接して設けられる。なお、接着層2597は、タッチセンサ2595が表示パネル2501に重なるように、基板2590を基板2570に貼り合わせている。また、接着層2597は、透光性を有すると好ましい。また、接着層2597としては、熱硬化性樹脂、または紫外線硬化樹脂を用いることができる。例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、またはシロキサン系樹脂を用いることができる。
反射防止層2567pは、画素に重なる位置に設けられる。反射防止層2567pとして、例えば円偏光板を用いることができる。
次に、図11(A)に示す構成と異なる構成のタッチパネルについて、図11(B)を用いて説明する。
図11(B)は、タッチパネル2001の断面図である。図11(B)に示すタッチパネル2001は、図11(A)に示すタッチパネル2000と、表示パネル2501に対するタッチセンサ2595の位置が異なる。ここでは異なる構成について詳細に説明し、同様の構成を用いることができる部分は、タッチパネル2000の説明を援用する。
着色層2567Rは、発光素子2550Rと重なる位置にある。また、図11(B)に示す発光素子2550Rは、トランジスタ2502tが設けられている側に光を射出する。これにより、発光素子2550Rが発する光の一部は、着色層2567Rを透過して、図中に示す矢印の方向の発光モジュール2580の外部に射出される。
また、タッチセンサ2595は、表示パネル2501の基板2510側に設けられている。
接着層2597は、基板2510と基板2590の間にあり、表示パネル2501とタッチセンサ2595を貼り合わせる。
図11(A)(B)に示すように、発光素子から射出される光は、基板の上面及び下面のいずれか一方または双方に射出されればよい。
<タッチパネルの駆動方法に関する説明>
次に、タッチパネルの駆動方法の一例について、図12を用いて説明を行う。
図12(A)は、相互容量方式のタッチセンサの構成を示すブロック図である。図12(A)では、パルス電圧出力回路2601、電流検出回路2602を示している。なお、図12(A)では、パルス電圧が与えられる電極2621をX1−X6として、電流の変化を検知する電極2622をY1−Y6として、それぞれ6本の配線で例示している。また、図12(A)は、電極2621と、電極2622とが重畳することで形成される容量2603を示している。なお、電極2621と電極2622とはその機能を互いに置き換えてもよい。
パルス電圧出力回路2601は、X1−X6の配線に順にパルスを印加するための回路である。X1−X6の配線にパルス電圧が印加されることで、容量2603を形成する電極2621と電極2622との間に電界が生じる。この電極間に生じる電界が遮蔽等により容量2603の相互容量に変化を生じさせることを利用して、被検知体の近接、または接触を検出することができる。
電流検出回路2602は、容量2603での相互容量の変化による、Y1−Y6の配線での電流の変化を検出するための回路である。Y1−Y6の配線では、被検知体の近接、または接触がないと検出される電流値に変化はないが、検出する被検知体の近接、または接触により相互容量が減少する場合には電流値が減少する変化を検出する。なお電流の検出は、積分回路等を用いて行えばよい。
次に、図12(B)には、図12(A)で示す相互容量方式のタッチセンサにおける入出力波形のタイミングチャートを示す。図12(B)では、1フレーム期間で各行列での被検知体の検出を行うものとする。また図12(B)では、被検知体を検出しない場合(非タッチ)と被検知体を検出する場合(タッチ)との2つの場合について示している。なおY1−Y6の配線については、検出される電流値に対応する電圧値とした波形を示している。
X1−X6の配線には、順にパルス電圧が与えられ、該パルス電圧にしたがってY1−Y6の配線での波形が変化する。被検知体の近接または接触がない場合には、X1−X6の配線の電圧の変化に応じてY1−Y6の波形が一様に変化する。一方、被検知体が近接または接触する箇所では、電流値が減少するため、これに対応する電圧値の波形も変化する。
このように、相互容量の変化を検出することにより、被検知体の近接または接触を検知することができる。
<センサ回路に関する説明>
また、図12(A)ではタッチセンサとして配線の交差部に容量2603のみを設けるパッシブ型のタッチセンサの構成を示したが、トランジスタと容量とを有するアクティブ型のタッチセンサとしてもよい。アクティブ型のタッチセンサに含まれるセンサ回路の一例を図13に示す。
図13に示すセンサ回路は、容量2603と、トランジスタ2611と、トランジスタ2612と、トランジスタ2613とを有する。
トランジスタ2613はゲートに信号G2が与えられ、ソースまたはドレインの一方に電圧VRESが与えられ、他方が容量2603の一方の電極およびトランジスタ2611のゲートと電気的に接続する。トランジスタ2611は、ソースまたはドレインの一方がトランジスタ2612のソースまたはドレインの一方と電気的に接続し、他方に電圧VSSが与えられる。トランジスタ2612は、ゲートに信号G1が与えられ、ソースまたはドレインの他方が配線MLと電気的に接続する。容量2603の他方の電極には電圧VSSが与えられる。
次に、図13に示すセンサ回路の動作について説明する。まず、信号G2としてトランジスタ2613をオン状態とする電位が与えられることで、トランジスタ2611のゲートが接続されるノードnに電圧VRESに対応した電位が与えられる。次に、信号G2としてトランジスタ2613をオフ状態とする電位が与えられることで、ノードnの電位が保持される。
続いて、指等の被検知体の近接または接触により、容量2603の相互容量が変化することに伴い、ノードnの電位がVRESから変化する。
読み出し動作は、信号G1にトランジスタ2612をオン状態とする電位を与える。ノードnの電位に応じてトランジスタ2611に流れる電流、すなわち配線MLに流れる電流が変化する。この電流を検出することにより、被検知体の近接または接触を検出することができる。
トランジスタ2611、トランジスタ2612、及びトランジスタ2613としては、酸化物半導体層をチャネル領域が形成される半導体層に用いることが好ましい。とくにトランジスタ2613にこのようなトランジスタを適用することにより、ノードnの電位を長期間に亘って保持することが可能となり、ノードnにVRESを供給しなおす動作(リフレッシュ動作)の頻度を減らすことができる。
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光装置を有する表示モジュール及び電子機器について、図14及び図15を用いて説明を行う。
図14に示す表示モジュール8000は、上部カバー8001と下部カバー8002との間に、FPC8003に接続されたタッチセンサ8004、FPC8005に接続された表示パネル8006、フレーム8009、プリント基板8010、バッテリ8011を有する。
本発明の一態様の発光装置は、例えば、表示パネル8006に用いることができる。
上部カバー8001及び下部カバー8002は、タッチセンサ8004及び表示パネル8006のサイズに合わせて、形状や寸法を適宜変更することができる。
タッチセンサ8004は、抵抗膜方式または静電容量方式のタッチパネルを表示パネル8006に重畳して用いることができる。また、表示パネル8006の対向基板(封止基板)に、タッチセンサ機能を持たせるようにすることも可能である。また、表示パネル8006の各画素内に光センサを設け、光学式のタッチセンサとすることも可能である。
フレーム8009は、表示パネル8006の保護機能の他、プリント基板8010の動作により発生する電磁波を遮断するための電磁シールドとしての機能を有する。またフレーム8009は、放熱板としての機能を有していてもよい。
プリント基板8010は、電源回路、ビデオ信号及びクロック信号を出力するための信号処理回路を有する。電源回路に電力を供給する電源としては、外部の商用電源であっても良いし、別途設けたバッテリ8011による電源であってもよい。バッテリ8011は、商用電源を用いる場合には、省略可能である。
また、表示モジュール8000は、偏光板、位相差板、プリズムシートなどの部材を追加して設けてもよい。
図15(A)乃至図15(G)は、電子機器を示す図である。これらの電子機器は、筐体9000、表示部9001、スピーカ9003、操作キー9005、接続端子9006、センサ9007、マイクロフォン9008、等を有することができる。
図15(A)乃至図15(G)に示す電子機器は、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチセンサ機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、無線通信機能を用いて様々なコンピュータネットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信または受信を行う機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出して表示部に表示する機能、等を有することができる。なお、図15(A)乃至図15(G)に示す電子機器が有することのできる機能はこれらに限定されず、様々な機能を有することができる。また、図15(A)乃至図15(G)には図示していないが、電子機器には、複数の表示部を有する構成としてもよい。また、該電子機器にカメラ等を設け、静止画を撮影する機能、動画を撮影する機能、撮影した画像を記録媒体(外部またはカメラに内蔵)に保存する機能、撮影した画像を表示部に表示する機能、等を有していてもよい。
図15(A)乃至図15(G)に示す電子機器の詳細について、以下説明を行う。
図15(A)は、携帯情報端末9100を示す斜視図である。携帯情報端末9100が有する表示部9001は、可撓性を有する。そのため、湾曲した筐体9000の湾曲面に沿って表示部9001を組み込むことが可能である。また、表示部9001はタッチセンサを備え、指やスタイラスなどで画面に触れることで操作することができる。例えば、表示部9001に表示されたアイコンに触れることで、アプリケーションを起動することができる。
図15(B)は、携帯情報端末9101を示す斜視図である。携帯情報端末9101は、例えば電話機、手帳又は情報閲覧装置等から選ばれた一つ又は複数の機能を有する。具体的には、スマートフォンとして用いることができる。なお、携帯情報端末9101は、スピーカ9003、接続端子9006、センサ9007等を省略して図示しているが、図15(A)に示す携帯情報端末9100と同様の位置に設けることができる。また、携帯情報端末9101は、文字や画像情報をその複数の面に表示することができる。例えば、3つの操作ボタン9050(操作アイコンまたは単にアイコンともいう)を表示部9001の一の面に表示することができる。また、破線の矩形で示す情報9051を表示部9001の他の面に表示することができる。なお、情報9051の一例としては、電子メールやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)や電話などの着信を知らせる表示、電子メールやSNSなどの題名、電子メールやSNSなどの送信者名、日時、時刻、バッテリの残量、受信信号の強度などがある。または、情報9051が表示されている位置に、情報9051の代わりに、操作ボタン9050などを表示してもよい。
図15(C)は、携帯情報端末9102を示す斜視図である。携帯情報端末9102は、表示部9001の3面以上に情報を表示する機能を有する。ここでは、情報9052、情報9053、情報9054がそれぞれ異なる面に表示されている例を示す。例えば、携帯情報端末9102の使用者は、洋服の胸ポケットに携帯情報端末9102を収納した状態で、その表示(ここでは情報9053)を確認することができる。具体的には、着信した電話の発信者の電話番号又は氏名等を、携帯情報端末9102の上方から観察できる位置に表示する。使用者は、携帯情報端末9102をポケットから取り出すことなく、表示を確認し、電話を受けるか否かを判断できる。
図15(D)は、腕時計型の携帯情報端末9200を示す斜視図である。携帯情報端末9200は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。また、表示部9001はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、携帯情報端末9200は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。また、携帯情報端末9200は、接続端子9006を有し、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また接続端子9006を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は接続端子9006を介さずに無線給電により行ってもよい。
図15(E)(F)(G)は、折り畳み可能な携帯情報端末9201を示す斜視図である。また、図15(E)が携帯情報端末9201を展開した状態の斜視図であり、図15(F)が携帯情報端末9201を展開した状態または折り畳んだ状態の一方から他方に変化する途中の状態の斜視図であり、図15(G)が携帯情報端末9201を折り畳んだ状態の斜視図である。携帯情報端末9201は、折り畳んだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では、継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。携帯情報端末9201が有する表示部9001は、ヒンジ9055によって連結された3つの筐体9000に支持されている。ヒンジ9055を介して2つの筐体9000間を屈曲させることにより、携帯情報端末9201を展開した状態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させることができる。例えば、携帯情報端末9201は、曲率半径1mm以上150mm以下で曲げることができる。
本実施の形態において述べた電子機器は、何らかの情報を表示するための表示部を有することを特徴とする。ただし、本発明の一態様の発光装置は、表示部を有さない電子機器にも適用することができる。また、本実施の形態において述べた電子機器の表示部においては、可撓性を有し、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる構成、または折り畳み可能な表示部の構成について例示したが、これに限定されず、可撓性を有さず、平面部に表示を行う構成としてもよい。
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光装置について、図16を用いて説明する。
本実施の形態で示す、発光装置3000の斜視図を図16(A)に、図16(A)に示す一点鎖線E−F間に相当する断面図を図16(B)に、それぞれ示す。なお、図16(A)において、図面の煩雑さを避けるために、構成要素の一部を破線で表示している。
図16(A)(B)に示す発光装置3000は、基板3001と、基板3001上の発光素子3005と、発光素子3005の外周に設けられた第1の封止領域3007と、第1の封止領域3007の外周に設けられた第2の封止領域3009と、を有する。
また、発光素子3005からの発光は、基板3001及び基板3003のいずれか一方または双方から射出される。図16(A)(B)においては、発光素子3005からの発光が下方側(基板3001側)に射出される構成について説明する。
また、図16(A)(B)に示すように、発光装置3000は、発光素子3005が第1の封止領域3007と、第2の封止領域3009とに、囲まれて配置される二重封止構造である。二重封止構造とすることで、発光素子3005側に入り込む外部の不純物(例えば、水、酸素など)を、好適に抑制することができる。ただし、第1の封止領域3007及び第2の封止領域3009を、必ずしも設ける必要はない。例えば、第1封止領域3007のみの構成としてもよい。
なお、図16(B)において、第1の封止領域3007及び第2の封止領域3009は、基板3001及び基板3003と接して設けられる。ただし、これに限定されず、例えば、第1の封止領域3007及び第2の封止領域3009の一方または双方は、基板3001の上方に形成される絶縁膜、あるいは導電膜と接して設けられる構成としてもよい。または、第1の封止領域3007及び第2の封止領域3009の一方または双方は、基板3003の下方に形成される絶縁膜、あるいは導電膜と接して設けられる構成としてもよい。
基板3001及び基板3003としては、それぞれ先の実施の形態1に記載の基板102と、基板152と同様の構成とすればよい。発光素子3005としては、先の実施の形態に記載の発光素子のいずれか一つと同様の構成とすればよい。
第1の封止領域3007としては、ガラスを含む材料(例えば、ガラスフリット、ガラスリボン等)を用いればよい。また、第2の封止領域3009としては、樹脂を含む材料を用いればよい。第1の封止領域3007として、ガラスを含む材料を用いることで、生産性や封止性を高めることができる。また、第2の封止領域3009として、樹脂を含む材料を用いることで、耐衝撃性や耐熱性を高めることができる。ただし、第1の封止領域3007と、第2の封止領域3009とは、これに限定されず、第1の封止領域3007が樹脂を含む材料で形成され、第2の封止領域3009がガラスを含む材料で形成されてもよい。
また、上述のガラスフリットとしては、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化セシウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ホウ素、酸化バナジウム、酸化亜鉛、酸化テルル、酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化鉛、酸化スズ、酸化リン、酸化ルテニウム、酸化ロジウム、酸化鉄、酸化銅、二酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化タングステン、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化リチウム、酸化アンチモン、ホウ酸鉛ガラス、リン酸スズガラス、バナジン酸塩ガラス又はホウケイ酸ガラス等を含む。赤外光を吸収させるため、少なくとも一種類以上の遷移金属を含むことが好ましい。
また、上述のガラスフリットとしては、例えば、基板上にフリットペーストを塗布し、これに加熱処理、またはレーザ照射などを行う。フリットペーストには、上記ガラスフリットと、有機溶媒で希釈した樹脂(バインダとも呼ぶ)とが含まれる。また、ガラスフリットにレーザ光の波長の光を吸収する吸収剤を添加したものを用いても良い。また、レーザとして、例えば、Nd:YAGレーザや半導体レーザなどを用いることが好ましい。また、レーザ照射の際のレーザの照射形状は、円形でも四角形でもよい。
また、上述の樹脂を含む材料としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミド等)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、もしくはシロキサン結合を有する樹脂を含む材料を用いることができる。
なお、第1の封止領域3007及び第2の封止領域3009のいずれか一方または双方にガラスを含む材料を用いる場合、当該ガラスを含む材料と、基板3001との熱膨張率が近いことが好ましい。上記構成とすることで、熱応力によりガラスを含む材料または基板3001にクラックが入るのを抑制することができる。
例えば、第1の封止領域3007にガラスを含む材料を用い、第2の封止領域3009に樹脂を含む材料を用いる場合、以下の優れた効果を有する。
第2の封止領域3009は、第1の封止領域3007よりも、発光装置3000の外周部に近い側に設けられる。発光装置3000は、外周部に向かうにつれ、外力等による歪みが大きくなる。よって、歪みが大きくなる発光装置3000の外周部側、すなわち第2の封止領域3009に、樹脂を含む材料によって封止し、第2の封止領域3009よりも内側に設けられる第1の封止領域3007にガラスを含む材料を用いて封止することで、外力等の歪みが生じても発光装置3000が壊れにくくなる。
また、図16(B)に示すように、基板3001、基板3003、第1の封止領域3007、及び第2の封止領域3009に囲まれた領域は、第1の領域3011となる。また、基板3001、基板3003、発光素子3005、及び第1の封止領域3007に囲まれた領域は、第2の領域3013となる。
第1の領域3011及び第2の領域3013としては、例えば、希ガスまたは窒素ガス等の不活性ガスが充填されていると好ましい。なお、第1の領域3011及び第2の領域3013としては、大気圧状態よりも減圧状態であると好ましい。
また、図16(B)に示す構成の変形例を図16(C)に示す。図16(C)は、発光装置3000の変形例を示す断面図である。
図16(C)は、基板3003の一部に凹部を設け、該凹部に乾燥剤3018を設ける構成である。それ以外の構成については、図16(B)に示す構成と同じである。
乾燥剤3018としては、化学吸着によって水分等を吸着する物質、または物理吸着によって水分等を吸着する物質を用いることができる。例えば、乾燥剤3018として用いることができる物質としては、アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物(酸化カルシウムや酸化バリウム等)、硫酸塩、金属ハロゲン化物、過塩素酸塩、ゼオライト、シリカゲル等が挙げられる。
次に、図16(B)に示す発光装置3000の変形例について、図17(A)(B)(C)(D)を用いて説明する。なお、図17(A)(B)(C)(D)は、図16(B)に示す発光装置3000の変形例を説明する断面図である。
図17(A)に示す発光装置は、第2の封止領域3009を設けずに、第1の封止領域3007とした構成である。また、図17(A)に示す発光装置は、図16(B)に示す第2の領域3013の代わりに領域3014を有する。
領域3014としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミド等)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、もしくはシロキサン結合を有する樹脂を含む材料を用いることができる。
領域3014として、上述の材料を用いることで、いわゆる固体封止の発光装置とすることができる。
また、図17(B)に示す発光装置は、図17(A)に示す発光装置の基板3001側に、基板3015を設ける構成である。
基板3015は、図17(B)に示すように凹凸を有する。凹凸を有する基板3015を、発光素子3005の光を取り出す側に設ける構成とすることで、発光素子3005からの光の取出し効率を向上させることができる。なお、図17(B)に示すような凹凸を有する構造の代わりに、拡散板として機能する基板を設けてもよい。
また、図17(C)に示す発光装置は、図17(A)に示す発光装置が基板3001側から光を取り出す構造であったのに対し、基板3003側から光を取り出す構造である。
図17(C)に示す発光装置は、基板3003側に基板3015を有する。それ以外の構成は、図17(B)に示す発光装置と同様である。
また、図17(D)に示す発光装置は、図17(C)に示す発光装置の基板3003、3015を設けずに、基板3016を設ける構成である。
基板3016は、発光素子3005の近い側に位置する第1の凹凸と、発光素子3005の遠い側に位置する第2の凹凸と、を有する。図17(D)に示す構成とすることで、発光素子3005からの光の取出し効率をさらに、向上させることができる。
したがって、本実施の形態に示す構成を実施することにより、水分や酸素などの不純物による発光素子の劣化が抑制された発光装置を実現することができる。または、本実施の形態に示す構成を実施することにより、光取出し効率の高い発光装置を実現することができる。
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態、または実施例に示す構成と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光装置を様々な照明装置及び電子機器に適用する一例について、図18を用いて説明する。
本発明の一態様の発光装置を、可撓性を有する基板上に作製することで、曲面を有する発光領域を有する電子機器、照明装置を実現することができる。
また、本発明の一態様を適用した発光装置は、自動車の照明にも適用することができ、例えば、ダッシュボードや、フロントガラス、天井等に照明を設置することもできる。
図18(A)は、多機能端末3500の一方の面の斜視図を示し、図18(B)は、多機能端末3500の他方の面の斜視図を示している。多機能端末3500は、筐体3502に表示部3504、カメラ3506、照明3508等が組み込まれている。本発明の一態様の発光装置を照明3508に用いることができる。
照明3508は、本発明の一態様の発光装置を用いることで、面光源として機能する。したがって、LEDに代表される点光源と異なり、指向性が少ない発光が得られる。例えば、照明3508とカメラ3506とを組み合わせて用いる場合、照明3508を点灯または点滅させて、カメラ3506により撮像することができる。照明3508としては、面光源としての機能を有するため、自然光の下で撮影したような写真を撮影することができる。
なお、図18(A)、(B)に示す多機能端末3500は、図15(A)乃至図15(G)に示す電子機器と同様に、様々な機能を有することができる。
また、筐体3502の内部に、スピーカ、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン等を有することができる。また、多機能端末3500の内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、多機能端末3500の向き(縦か横か)を判断して、表示部3504の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
表示部3504は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部3504に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部3504に近赤外光を発光するバックライト又は近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。なお、表示部3504に本発明の一態様の発光装置を適用してもよい。
図18(C)は、防犯用のライト3600の斜視図を示している。ライト3600は、筐体3602の外側に照明3608を有し、筐体3602には、スピーカ3610等が組み込まれている。本発明の一態様の発光装置を照明3608に用いることができる。
ライト3600としては、例えば、照明3608を握持する、掴持する、または保持することで発光することができる。また、筐体3602の内部には、ライト3600からの発光方法を制御できる電子回路を備えていてもよい。該電子回路としては、例えば、1回または間欠的に複数回、発光が可能なような回路としてもよいし、発光の電流値を制御することで発光の光量が調整可能なような回路としてもよい。また、照明3608の発光と同時に、スピーカ3610から大音量の警報音が出力されるような回路を組み込んでもよい。
ライト3600としては、あらゆる方向に発光することが可能なため、例えば、暴漢等に向けて光、または光と音で威嚇することができる。また、ライト3600にデジタルスチルカメラ等のカメラ、撮影機能を有する機能を備えてもよい。
以上のようにして、本発明の一態様の発光装置を適用して照明装置及び電子機器を得ることができる。なお、適用できる照明装置及び電子機器は、本実施の形態に示したものに限らず、あらゆる分野の照明装置及び電子機器に適用することが可能である。
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態、または実施例に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
本実施例では、本発明の一態様である発光素子の作製例を示す。なお、本実施例においては、本発明の一態様である発光素子(発光素子1及び発光素子2)、並びに比較用の発光素子(発光素子3)を作製した。
発光素子1乃至発光素子3の断面模式図を図19に、発光素子1乃至発光素子3の素子構造の詳細を表4に、使用した化合物の構造と略称を以下に示す。なお、以下に示す化合物以外については、実施の形態1に示す化合物と同様の材料を用いた。
<1−1.発光素子1乃至発光素子3の作製方法>
まず、基板502上に下部電極504として、ITSOをスパッタリング法により成膜した。なお、下部電極504の膜厚を100nmとし、下部電極504の面積を4mm2(2mm×2mm)とした。
次に、有機化合物層の蒸着前の前処理として、下部電極504が形成された基板502の下部電極504側を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、下部電極504の表面に対し、UVオゾン処理を370秒行った。
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板502を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で60分間の真空焼成を行った後、基板502を30分程度放冷した。
次に、下部電極504が形成された面が下方となるように、基板502を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定した。本実施例では、真空蒸着法により、正孔注入層531、正孔輸送層532、発光層510(1)、発光層510(2)、電子輸送層533(1)、電子輸送層533(2)、電子注入層534、上部電極514を順次形成した。詳細な作製方法を以下に記す。
まず、真空装置内を10−4Paに減圧した後、下部電極504上に、正孔注入層531として、DBT3P−IIと酸化モリブデンとを、DBT3P−II:酸化モリブデン=2:1(重量比)となるように共蒸着した。なお、正孔注入層531の膜厚を20nmとした。
次に、正孔注入層531上に正孔輸送層532を形成した。正孔輸送層532としては、BPAFLPを蒸着した。なお、正孔輸送層532の膜厚を20nmとした。
次に、正孔輸送層532上に発光層510(1)を形成した。発光層510(1)として、2mDBTBPDBq−IIと、N−(1,1’−ビフェニル−4−イル)−9,9−ジメチル−N−[4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)フェニル]−9H−フルオレン−2−アミン(略称:PCBBiF)と、(アセチルアセトナト)ビス[5−メチル−6−(2−メチルフェニル)−4−フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:Ir(mpmppm)2(acac))とを、2mDBTBPDBq−II:PCBBiF:Ir(mpmppm)2(acac)=0.7:0.3:0.05(重量比)となるよう共蒸着した。なお、発光層510(1)の膜厚を20nmとした。
次に、発光層510(1)上に発光層510(2)を形成した。発光層510(2)として、2mDBTBPDBq−IIと、PCBBiFと、Ir(mpmppm)2(acac)とを、2mDBTBPDBq−II:PCBBiF:Ir(mpmppm)2(acac)=0.8:0.2:0.05(重量比)となるよう共蒸着した。なお、発光層510(2)の膜厚を20nmとした。
なお、発光層510(1)及び発光層510(2)において、2mDBTBPDBq−IIがホスト材料であり、PCBBiFがアシスト材料であり、Ir(mpmppm)2(acac)がゲスト材料として機能するイリジウム錯体である。
なお、発光素子1乃至発光素子3の発光層は、それぞれ純度が異なるイリジウム錯体を用いて蒸着した。発光素子1の発光層の蒸着の際には材料Y1のイリジウム錯体を用い、発光素子2の蒸着の際には材料Y2のイリジウム錯体を用い、発光素子3の蒸着の際には材料Y3のイリジウム錯体を用いた。材料Y1乃至Y3のイリジウム錯体の純度を表5に示す。
なお、表5に示す、材料Y1乃至Y3の純度は、LC/MS分析によって分析した結果である。LC/MS分析としては、LC分離条件以外は、実施の形態1に示す方法と同様とした。材料Y1乃至Y3のLC分離には、移動相の組成を変化させるグラジエント法を用いた。組成を変化させる方法としては、測定開始から1分経過後までを、移動相A:移動相B=60:40の組成とし、そのあと組成をリニアに変化させ、測定開始から30分経過後に移動相A:移動相B=95:5の組成となるようにした。つまり、測定時間は30分である。
LC/MS分析の結果、材料Y1乃至Y3中には、表5に示すm1乃至m8のピークが確認された。なお、m1乃至m3はm/z=811に相当し、m4及びm5はm/z=797に相当し、m6はm/z=783に相当し、m7はm/z=711、752に相当し、m8はm/z=697、738に相当した。また、MSクロマトグラフを用いて解析した結果、m1はIr(mpmppm)2(acac)に、m2及びm3はIr(mpmppm)2(acac)の構造異性体に、帰属された。
表5に示すように、材料Y1は、イリジウム錯体であるm1乃至m3を除く物質のピーク面積の比の合計が9.4%であり、材料Y2は、イリジウム錯体であるm1乃至m3を除く物質のピーク面積の合計が20.8%であり、材料Y3は、イリジウム錯体であるm1乃至m3を除く物質のピーク面積の合計が29%であった。
次に、発光層510(2)上に電子輸送層533(1)として、膜厚5nmの2mDBTBPDBq−IIを蒸着した。次に、電子輸送層533(1)上に電子輸送層533(2)として、膜厚10nmのBphenを蒸着した。次に、電子輸送層533(2)上に電子注入層534として、膜厚1nmのLiFを蒸着した。
次に、電子注入層534上に上部電極514として、膜厚200nmのAlを蒸着した。
次に、封止基板552を準備した。
上記により作製した基板502上の各発光素子と、封止基板552とを大気に曝されないように窒素雰囲気のグローブボックス内において貼り合わせることにより封止した。封止方法としては、シール材を素子の周囲に塗布し、シール材に365nmの紫外光を6J/cm2照射し、その後80℃にて1時間熱処理した。
以上の工程により、発光素子1乃至発光素子3を作製した。
なお、上述の発光素子1乃至発光素子3の蒸着過程において、蒸着方法としては抵抗加熱法を用いた。
<1−2.発光素子1乃至発光素子3の初期特性>
発光素子1乃至発光素子3の輝度−電流密度特性を図20(A)に示す。また、発光素子1乃至発光素子3の輝度−電圧特性を図20(B)に示す。また、発光素子1乃至発光素子3の電流効率−輝度特性を図21(A)に示す。なお、各発光素子の測定環境としては、室温(25℃に保たれた雰囲気)とした。また、1000cd/m2付近における発光素子1乃至発光素子3の素子特性を表6に示す。
また、発光素子1乃至発光素子3に、それぞれ2.5mA/cm2の電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを図21(B)に示す。図20、図21、及び表6に示す通り、本発明の一態様である発光素子1及び発光素子2と、比較用の発光素子である発光素子3と、で初期特性に明確な差が認められなかった。この結果から、発光層510(1)及び発光層510(2)の燐光材料である、イリジウム錯体の純度が異なる材料を用いても、初期特性に大きな影響がないと示唆される。
<1−3.発光素子1乃至発光素子3の信頼性評価>
次に、発光素子1乃至発光素子3の信頼性試験を行った。信頼性試験の測定方法としては、初期輝度を5000cd/m2に設定し、電流密度を一定の条件で発光素子1乃至発光素子3を駆動した。信頼性試験結果を図22に示す。図22において、縦軸は初期輝度を100%とした場合の相対輝度(%)を、横軸は駆動時間(h)を、それぞれ表す。
図22に示す結果から、発光素子2の562時間経過後の相対輝度は89.8%であり、発光素子1の562時間経過後の相対輝度は87.3%であり、発光素子3の562時間経過後の相対輝度は82.8%であった。
図22に示す結果から、本発明の一態様である発光素子1及び発光素子2は、比較用の発光素子3と比べ長寿命な発光素子であった。
<1−4.発光素子1乃至発光素子3の液体クロマトグラフィー質量分析>
次に、本発明の一態様である発光素子1及び発光素子2と、比較用の発光素子である発光素子3とで、信頼性に差が認められたため、発光素子1、発光素子2、及び発光素子3の分析を行った。当該分析方法としては、LC/MS分析を用いて、各発光素子中に含まれる不純物分析を行った。
なお、発光素子1の不純物分析としては、発光素子1と同じ基板上に作製した発光素子1とは異なる発光素子であり、発光素子2の不純物分析としては、発光素子2と同じ基板上に作製した発光素子2とは異なる発光素子であり、発光素子3の不純物分析としては、発光素子3と同じ基板上に作製した発光素子3とは異なる発光素子である。また、不純物分析用の発光素子としては、下部電極504の面積を約12cm2(3.5cm×3.3cm)とした。すなわち、不純物分析用の発光素子は、発光素子1乃至発光素子3と、それぞれ材料及び構造等は同一であるが、下部電極504の面積が異なり、且つ駆動させていない素子である。よって、不純物分析の結果については、駆動により生成した劣化物を分析したものではなく、駆動前から含まれる不純物を対象として行ったものである。ここでは、便宜的に発光素子1と同じ基板上に作製した不純物分析用の発光素子を発光素子1として扱う。発光素子2及び発光素子3についても同様である。
なお、LC/MS分析の分析サンプルとしては、発光素子1乃至発光素子3の上部電極514であるアルミニウムを、カプトンテープを用いて剥がした後、基板502上に残った物質をクロロホルムに溶解しクロロホルム溶液を得た。得られたクロロホルム溶液をアセトニトリルで任意の濃度に希釈し、分析サンプルを得た。なお、分析サンプルの注入量を5.0μLとして、LC/MS分析を行った。
LC/MS分析方法としては、実施の形態1に示す方法と同様とした。ただし、測定時間を、移動相A:移動相B=95:5の組成となったあと15分とした。つまり、測定時間は30分である。
発光素子1乃至発光素子3の分析結果を図23に示す。なお、図23は、発光素子1乃至発光素子3のLC/MSのPDAクロマトグラムである。
また、分析サンプル作製と同様に、サンプル作製に用いたクロロホルムを、アセトニトリルで希釈した溶液の分析を行い、ベースライン(または、バックグラウンド:BGともいう)のクロマトグラムを得た。図23において、ベースラインの結果をBGとして示す。
図23に示す結果より、発光素子1乃至発光素子3に、それぞれb1乃至b6で表されるピークが確認された。b1乃至b6のピークについて、MSスペクトルを用いて解析した結果、b2はBphenに、b3はIr(mpmppm)2(acac)、b4はBPAFLPと2mDBTBPDBq−IIに、b5はDBT3P−IIに、b6はPCBBiFに、それぞれ帰属された。また、BGとの比較によりb1は溶媒として用いたクロロホルム及び当該クロロホルムに含まれる不純物に帰属された。
図23に示すように、素子作製に用いた物質以外の目立った不純物ピークは認められなかった。
次に、Ir(mpmppm)2(acac)に着目してPDAクロマトグラムの解析を行った。なお、PDAクロマトグラムの解析としては、ベースラインを差し引いて行った。発光素子1乃至発光素子3のIr(mpmppm)2(acac)に着目した解析結果を図24に示す。なお、図24は、図23のb3近傍である分析時間5乃至20分を拡大した図である。
図24に示す結果より、発光素子1乃至発光素子3には、それぞれb7乃至b12で表されるピークと、b3で表されるピークとが確認された。なお、b3で表されるピークは、図23のb3と同じピークであり、Ir(mpmppm)2(acac)に帰属される。なお、図24において、b3、b7、及びb8がイリジウム錯体のプレカーサーイオンに相当し、b9乃至b12がイリジウム錯体のフラグメントイオンに相当する。
また、b7乃至b12のピークについて、MSクロマトグラフを用いて解析した結果、b7はIr(mpmppm)2(acac)の構造異性体(便宜的に、構造異性体1とする)に、b8はIr(mpmppm)2(acac)の構造異性体(便宜的に、構造異性体2とする)に、b9はIr(mpmppm)2(acac)の配位子であるmpmppm骨格から1つのMe基が外れた構造の物質に、b10はIr(mpmppm)2(acac)の配位子であるmpmppm骨格から1つのMe基が外れた構造の構造異性体に、b11はIr(mpmppm)2(acac)からacac配位子が外れたIr(mpmppm)2構造を有する物質に、b12はIr(mpmppm)2(acac)の配位子であるmpmppmに、それぞれ帰属された。
なお、上述のIr(mpmppm)2構造を有する物質は、LC/MS分析において質量電荷比(m/z)が753のMSスペクトルを示した。Ir(mpmppm)2にアセトニトリルが配位した構造のプロトン付加体の質量数が、753と一致する。したがって、Ir(mpmppm)2は、LC分離中にアセトニトリルが配位した構造となっている事が示唆された。
また、本分析で用いたウォーターズ社製Xevo G2 Tof MS検出器の測定範囲は、m/z=100以上となっている。そのため、配位子であるacacは、MS検出器の測定範囲外となっているため検出されなかった。また、PDA検出器においても、配位子であるacacは、検出されなかった。
次に、図24に示すLC/MS分析結果を用い、発光素子1乃至発光素子3に含まれるIr(mpmppm)2(acac)の純度を求めた。分析結果を表7に示す。なお、表7は、図24に示すb3及びb7乃至b12の7つのピーク面積、すなわちイリジウム錯体に起因する物質の合計のピーク面積を100%とした場合の結果である。したがって、発光素子1乃至発光素子3に含まれるIr(mpmppm)2(acac)以外の材料については、純度検定に用いていない。
表7に示すように、発光素子1においては、イリジウム錯体であるIr(mpmppm)2(acac)に起因する物質の合計のピーク面積を100%とした場合、イリジウム錯体のピーク面積(ここではb3、b7及びb8)に対する、イリジウム金属に配位結合していない配位子のピーク面積(ここではb12)の比が1.0%であった。また、発光素子2においては、イリジウム錯体であるIr(mpmppm)2(acac)に起因する物質の合計のピーク面積を100%とした場合、イリジウム錯体のピーク面積(ここではb3、b7及びb8)に対する、イリジウム金属に配位結合していない配位子のピーク面積(ここではb12)の比が0.8%であった。また、発光素子3においては、イリジウム錯体であるIr(mpmppm)2(acac)に起因する物質の合計のピーク面積を100%とした場合、イリジウム錯体のピーク面積(ここではb3、b7及びb8)に対する、イリジウム金属に配位結合していない配位子のピーク面積(ここではb12)の比が6.7%であった。
よって、本発明の一態様である発光素子1及び発光素子2は、比較用の発光素子3と比べ、イリジウム錯体に起因する物質の合計のピーク面積を100%とした場合、イリジウム金属に配位結合していない配位子のピーク面積の比が5%以下であるため、長寿命な発光素子であった。
また、本発明の一態様の発光素子1及び発光素子2は、イリジウム錯体に起因する物質の合計のピーク面積を100%とした場合、イリジウム金属に配位結合していない配位子のピーク面積の比が1%以下であった。なお、発光素子1と発光素子2とを比較した場合、発光素子2は、イリジウム錯体に起因する物質の合計のピーク面積を100%とした場合、イリジウム金属に配位結合していない配位子のピーク面積の比が発光素子1よりも小さいため、発光素子1よりも長寿命な発光素子であった。したがって、イリジウム錯体に起因する物質の合計のピーク面積を100%とした場合、イリジウム金属に配位結合していない配位子のピーク面積の比が小さいほど、信頼性が向上すると示唆される。
以上のように、本発明の一態様の発光素子は、発光層510(1)、510(2)中の発光物質である、イリジウム錯体に起因する不純物濃度を抑制することによって、信頼性が高い発光素子を実現することができた。
また、表7に示す結果から、Ir(mpmppm)2(acac)は、蒸着中に分解し配位子であるacacが外れた物質が蒸着されていることが示唆された。また、蒸着後の膜は、主成分としてIr(mpmppm)2(acac)を最も含有しており、また、mpmppm配位子の向き違いと示唆される構造異性体1及び構造異性体2が含まれていた。Me基が外れた不純物の割合は、蒸着の前後で増えていないため、蒸着中に分解してMe基が外れているという可能性は低いことが考えられる。蒸着後に増加する分解物としては、配位子であるmpmppmと、配位子であるacacが外れたIr(mpmppm)2が確認された。
また、図22に示す信頼性試験の結果と、表7に示す各発光素子中のIr(mpmppm)2(acac)に由来する物質のみから求めた純度検定結果から、配位子であるmpmppmの含有量が多い素子ほど信頼性試験において輝度劣化が加速されている。また、構造異性体1、構造異性体2、Me基外れの不純物、及び分解生成物であるIr(mpmppm)2については、素子中の含有量と信頼性試験との結果に相関は認められなかったため、輝度劣化を加速する主な原因物質では無いと示唆される。ただし、配位子である、mpmppmの含有量が極めて少ない場合は、これらの物質が輝度劣化を加速する主な原因物質となりえる可能性がある。
以上、本実施例に示す構成は、他の実施例及び実施の形態と適宜組み合わせて用いる事ができる。
本実施例では、本発明の一態様である発光素子の作製例を示す。なお、本実施例においては、本発明の一態様である発光素子(発光素子4及び発光素子5)を作製した。
発光素子4及び発光素子5の断面模式図を図19に、発光素子4及び発光素子5の素子構造の詳細を表8に、それぞれ示す。なお、使用した化合物については、実施例1と同様である。
<2−1.発光素子4及び発光素子5の作製方法>
まず、基板502上に下部電極504として、ITSOをスパッタリング法により成膜した。なお、下部電極504の膜厚を100nmとし、下部電極504の面積を4mm2(2mm×2mm)とした。
次に、有機化合物層の蒸着前の前処理として、下部電極504が形成された基板502の下部電極504側を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、下部電極504の表面に対し、UVオゾン処理を370秒行った。
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板502を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で60分間の真空焼成を行った後、基板502を30分程度放冷した。
次に、下部電極504が形成された面が下方となるように、基板502を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定した。本実施例では、真空蒸着法により、正孔注入層531、正孔輸送層532、発光層510(1)、発光層510(2)、電子輸送層533(1)、電子輸送層533(2)、電子注入層534、上部電極514を順次形成した。詳細な作製方法を以下に記す。
まず、真空装置内を10−4Paに減圧した後、下部電極504上に、正孔注入層531として、DBT3P−IIと酸化モリブデンとを、DBT3P−II:酸化モリブデン=2:1(重量比)となるように共蒸着した。なお、正孔注入層531の膜厚を20nmとした。
次に、正孔注入層531上に正孔輸送層532として、BPAFLPを蒸着した。なお、正孔輸送層532の膜厚を20nmとした。
次に、正孔輸送層532上に発光層510(1)を形成した。発光層510(1)として、2mDBTBPDBq−IIと、PCBBiFと、Ir(mpmppm)2(acac)とを、2mDBTBPDBq−II:PCBBiF:Ir(mpmppm)2(acac)=0.7:0.3:0.05(重量比)となるよう共蒸着した。なお、発光層510(1)の膜厚を20nmとした。
次に、発光層510(1)上に発光層510(2)を形成した。発光層510(2)として、2mDBTBPDBq−IIと、PCBBiFと、Ir(mpmppm)2(acac)とを、2mDBTBPDBq−II:PCBBiF:Ir(mpmppm)2(acac)=0.8:0.2:0.05(重量比)となるよう共蒸着した。なお、発光層510(2)の膜厚を20nmとした。
なお、発光層510(1)及び発光層510(2)において、2mDBTBPDBq−IIがホスト材料であり、PCBBiFがアシスト材料であり、Ir(mpmppm)2(acac)が燐光材料(ゲスト材料)である。
なお、発光素子4と、発光素子5の発光層とは、それぞれ純度の異なるイリジウム錯体を用いて蒸着した。発光素子4の発光層の蒸着の際には材料Z1のイリジウム錯体を用い、発光素子5の発光層の蒸着の際には材料Z2のイリジウム錯体を用いた。材料Z1及び材料Z2のイリジウム錯体の純度を表9に示す。
なお、材料Z1及び材料Z2の純度としては、LC/MS分析によって分析した。LC/MS分析としては、実施例1に示す方法と同様とした。LC/MS分析の結果、材料Z1及び材料Z2中には、表9に示すm1、m2、及びm4乃至m8のピークが確認された。なお、m1乃至m8に示すピークとしては、実施例1の材料Y1乃至Y3と同じである。
また、表9に示すように、材料Z1は、イリジウム錯体であるm1及びm2を除く物質のピーク面積の比の合計が20.8%であり、材料Z2は、イリジウム錯体であるm1及びm2を除く物質のピーク面積の比の合計が7.8%であった。
次に、発光層510(2)上に電子輸送層533(1)として、膜厚5nmの2mDBTBPDBq−IIを蒸着した。次に、電子輸送層533(1)上に電子輸送層533(2)として、膜厚10nmのBphenを蒸着した。次に、電子輸送層533(2)上に電子注入層534として、膜厚1nmのLiFを蒸着した。
次に、電子注入層534上に上部電極514として、膜厚200nmのAlを蒸着した。
次に、封止基板552を準備した。
上記により作製した基板502上の各発光素子と、封止基板552とを大気に曝されないように窒素雰囲気のグローブボックス内において貼り合わせることにより封止した。封止方法としては、実施例1の発光素子1乃至発光素子3と同様とした。
以上の工程により、発光素子4及び発光素子5を作製した。
なお、上述の発光素子4及び発光素子5の蒸着過程において、蒸着方法としては抵抗加熱法を用いた。
<2−2.発光素子4及び発光素子5の初期特性>
発光素子4及び発光素子5の輝度−電流密度特性を図25(A)に示す。また、発光素子4及び発光素子5の輝度−電圧特性を図25(B)に示す。また、発光素子4及び発光素子5の電流効率−輝度特性を図26(A)に示す。なお、各発光素子の測定環境としては、室温(25℃に保たれた雰囲気)とした。また、1000cd/m2付近における発光素子4及び発光素子5の素子特性を表10に示す。
また、発光素子4及び発光素子5に、それぞれ2.5mA/cm2の電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを図26(B)に示す。図25、図26、及び表10に示す通り、発光素子4と発光素子5とで初期特性に明確な差が認められなかった。発光層510(1)及び発光層510(2)の燐光材料として用いたイリジウム錯体の純度が異なる材料を用いても、初期特性に大きな影響がないと示唆される。
<2−3.発光素子4及び発光素子5の信頼性評価>
次に、発光素子4及び発光素子5の信頼性試験を行った。信頼性試験の測定方法としては、初期輝度を5000cd/m2に設定し、電流密度を一定の条件で発光素子4及び発光素子5を駆動した。信頼性試験結果を図27に示す。図27において、縦軸は初期輝度を100%とした場合の相対輝度(%)を、横軸は駆動時間(h)を、それぞれ表す。
図27に示す結果から、発光素子4の444時間経過後の相対輝度は93.2%であり、発光素子5の444時間経過後の相対輝度は87.3%であった。
図27に示す結果から、発光素子4及び発光素子5は、概ね同等の劣化曲線であり、高い信頼性を有する発光素子であった。
<2−4.発光素子4及び発光素子5の液体クロマトグラフィー質量分析>
次に、発光素子4及び発光素子5の分析を行った。当該分析方法としては、LC/MS分析を用いて、各発光素子中に含まれる不純物分析を行った。
なお、発光素子4の不純物分析としては、発光素子4と同じ基板上に作製した発光素子4とは異なる発光素子であり、発光素子5の不純物分析としては、発光素子5と同じ基板上に作製した発光素子5とは異なる発光素子である。また、不純物分析用の発光素子としては、下部電極504の面積を12cm2(3.5cm×3.3cm)とした。すなわち、不純物分析用の発光素子は、発光素子4及び発光素子5と、それぞれ材料及び構造等は同一であるが、下部電極504の面積が異なり、且つ駆動させていない素子である。よって、不純物分析の結果については、駆動により生成した劣化物を分析したものではなく、駆動前から含まれる不純物を対象として行ったものである。ここでは、便宜的に発光素子4と同じ基板上に作製した不純物分析用の発光素子を発光素子4として扱う。発光素子5についても同様である。
LC/MS分析方法としては、実施例1に示す方法と同様とした。
発光素子4及び発光素子5の分析結果を図28に示す。なお、図28は、発光素子4及び発光素子5のLC/MSのPDAクロマトグラムである。
また、分析サンプル作製と同様に、分析サンプル作製に用いたクロロホルムを、アセトニトリルで希釈した溶液の分析を行い、ベースライン(または、バックグラウンド:BGともいう)のクロマトグラムを得た。図28において、ベースラインの結果をBGとして示す。
図28に示す結果より、発光素子4及び発光素子5に、それぞれc1乃至c6で表されるピークが確認された。c1乃至c6のピークについて、MSスペクトルを用いて解析した結果、c2はBphenに、c3はIr(mpmppm)2(acac)、c4はBPAFLPと2mDBTBPDBq−IIに、c5はDBT3P−IIに、c6はPCBBiFに、それぞれ帰属された。また、BGとの比較によりc1は溶媒として用いたクロロホルム及び当該クロロホルムに含まれる不純物に帰属された。
図28に示すように、素子作製に用いた物質以外の目立った不純物ピークは認められなかった。
次に、Ir(mpmppm)2(acac)に着目してPDAクロマトグラムの解析を行った。なお、PDAクロマトグラムの解析としては、ベースラインを差し引いて行った。発光素子4及び発光素子5のIr(mpmppm)2(acac)に着目した解析結果を図29に示す。なお、図29は、図28のc3近傍である分析時間5乃至20分を拡大した図である。
図29に示す結果より、発光素子4及び発光素子5には、それぞれc3及びc7乃至c12で表されるピークが確認された。なお、c3で表されるピークは、図28のc3と同じピークであり、Ir(mpmppm)2(acac)に帰属される。なお、図29において、c3、c7、及びc8がイリジウム錯体のプレカーサーイオンに相当し、c9乃至c12がイリジウム錯体のフラグメントイオンに相当する。
また、c7乃至c12のピークについて、MSクロマトグラフを用いて解析した結果、c7はIr(mpmppm)2(acac)の構造異性体(便宜的に、構造異性体1とする)に、c8はIr(mpmppm)2(acac)の構造異性体(便宜的に、構造異性体2とする)に、c9はIr(mpmppm)2(acac)の配位子であるmpmppm骨格から1つのMe基が外れた構造の物質に、c10はIr(mpmppm)2(acac)から配位子であるacacが外れた、Ir(mpmppm)2構造を有する物質に、c11はIr(mpmppm)2(acac)から配位子であるacacと、Me基が外れた構造の物質に、c12はIr(mpmppm)2(acac)の配位子であるmpmppmに、それぞれ帰属された。
なお、上述のIr(mpmppm)2構造を有する物質は、LC/MS分析において質量電荷比(m/z)が753のMSスペクトルを示した。Ir(mpmppm)2にアセトニトリルが配位した構造のプロトン付加体の質量数が、753と一致する。したがって、Ir(mpmppm)2は、LC分離中にアセトニトリルが配位した構造となっている事が示唆された。
また、本分析で用いたウォーターズ社製Xevo G2 Tof MS検出器の測定範囲は、m/z=100以上となっている。そのため、配位子であるacacは、MS検出器の測定範囲外となっているため検出されなかった。また、PDA検出器においても、配位子であるacacは、検出されなかった。
次に、図29に示すLC/MS分析結果を用い、発光素子4及び発光素子5に含まれる不純物の濃度を求めた。分析結果を表11に示す。なお、表11は、図29に示すc3及びc7乃至c12の7つのピーク面積、すなわちイリジウム錯体に起因する物質の合計のピーク面積を100%とした場合の結果である。したがって、発光素子4及び発光素子5に含まれるIr(mpmppm)2(acac)以外の材料については、純度検定に用いていない。また、表11中において、図29でみられなかったm/z=261に相当する、c13を便宜的に記載してある。
表11に示すように、発光素子4及び発光素子5においては、イリジウム金属に配位結合していない配位子のピーク面積(ここではc13)の比が検出下限の0.1%未満(表11中においては、「−」で表記)であった。
よって、本発明の一態様である発光素子4及び発光素子5は、イリジウム錯体に起因する物質の合計のピーク面積を100%とした場合、イリジウム金属に配位結合していない配位子のピーク面積の比が1%以下であるため、長寿命な発光素子であった。
以上のように、本発明の一態様の発光素子は、発光層510(1)、510(2)中の発光物質である、イリジウム錯体に起因する不純物の内、配位子であるmpmppmの濃度を抑制することによって、信頼性が高い発光素子を実現することができた。
また、表11に示す結果から、Ir(mpmppm)2(acac)は、蒸着中に分解し配位子であるacacが外れた物質が蒸着されていることが示唆された。また、蒸着後の膜は、主成分としてIr(mpmppm)2(acac)を最も含有しており、また、mpmppm配位子の向き違いと示唆される構造異性体1及び構造異性体2が含まれていた。Me基が外れた不純物の割合は、蒸着の前後で増えていないため、蒸着中に分解してMe基が外れているという可能性は低いことが考えられる。蒸着後に増加する分解物としては、配位子であるacacが外れたIr(mpmppm)2が確認された。また、配位子であるacacは、検出されなかった。
図27に示す信頼性試験の結果と、表11に示す各発光素子中のIr(mpmppm)2(acac)に由来する物質のみから求めた純度検定結果から、発光素子4及び発光素子5はIr(mpmppm)2(acac)の素子中の純度が違うにもかかわらず、駆動寿命は同等であった。一方、表11に示した結果から、発光素子4及び発光素子5はどちらも配位子であるmpmppmは含有していなかった。したがって、mpmppmの含有が認められなかったため、どちらの発光素子も長寿命であることが明らかとなった。また、構造異性体1、構造異性体2、Me基外れの不純物、及び分解生成物であるIr(mpmppm)2については、素子中の含有量と信頼性試験との結果に相関は認められなかったため、輝度劣化を加速する主な原因物質では無いと示唆される。
以上、本実施例に示す構成は、他の実施例及び実施の形態と適宜組み合わせて用いる事ができる。
本実施例では、本発明の一態様である発光素子の作製例を示す。なお、本実施例においては、本発明の一態様である発光素子(発光素子6及び発光素子7)を作製した。
発光素子6及び発光素子7の断面模式図を図19に、発光素子6及び発光素子7の素子構造の詳細を表12に、それぞれ示す。なお、使用した化合物については、実施例1及び実施例2と同様である。
<3−1.発光素子6及び発光素子7の作製方法>
まず、基板502上に下部電極504として、ITSOをスパッタリング法により成膜した。なお、下部電極504の膜厚を100nmとし、下部電極504の面積を4mm2(2mm×2mm)とした。
次に、有機化合物層の蒸着前の前処理として、下部電極504が形成された基板502の下部電極504側を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、下部電極504の表面に対し、UVオゾン処理を370秒行った。
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板502を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で60分間の真空焼成を行った後、基板502を30分程度放冷した。
次に、下部電極504が形成された面が下方となるように、基板502を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定した。本実施例では、真空蒸着法により、正孔注入層531、正孔輸送層532、発光層510(1)、発光層510(2)、電子輸送層533(1)、電子輸送層533(2)、電子注入層534、上部電極514を順次形成した。詳細な作製方法を以下に記す。
まず、真空装置内を10−4Paに減圧した後、下部電極504上に、正孔注入層531として、DBT3P−IIと酸化モリブデンとを、DBT3P−II:酸化モリブデン=2:1(重量比)となるように共蒸着した。なお、正孔注入層531の膜厚を20nmとした。
次に、正孔注入層531上に正孔輸送層532として、BPAFLPを蒸着した。なお、正孔輸送層532の膜厚を20nmとした。
次に、正孔輸送層532上に発光層510(1)を形成した。発光層510(1)として、2mDBTBPDBq−IIと、PCBBiFと、Ir(mpmppm)2(acac)とを、2mDBTBPDBq−II:PCBBiF:Ir(mpmppm)2(acac)=0.7:0.3:0.05(重量比)となるよう共蒸着した。なお、発光層510(1)の膜厚を20nmとした。
次に、発光層510(1)上に発光層510(2)を形成した。発光層510(2)として、2mDBTBPDBq−IIと、PCBBiFと、Ir(mpmppm)2(acac)とを、2mDBTBPDBq−II:PCBBiF:Ir(mpmppm)2(acac)=0.8:0.2:0.05(重量比)となるよう共蒸着した。なお、発光層510(2)の膜厚を20nmとした。
なお、発光層510(1)及び発光層510(2)において、2mDBTBPDBq−IIがホスト材料であり、PCBBiFがアシスト材料であり、Ir(mpmppm)2(acac)が燐光材料(ゲスト材料)である。
なお、発光素子6と、発光素子7の発光層とは、それぞれ純度の異なるイリジウム錯体を用いて蒸着した。発光素子6の発光層の蒸着の際には材料Z1のイリジウム錯体を用い、発光素子7の発光層の蒸着の際には材料Z3のイリジウム錯体を用いた。材料Z1及び材料Z3のイリジウム錯体の純度を表13に示す。なお、材料Z1は、実施例2に示す材料Z1と同一の材料である。
なお、表13に示す、材料Z1及び材料Z3の純度としては、LC/MS分析によって分析した。LC/MS分析としては、実施例1に示す方法と同様とした。LC/MS分析の結果、材料Z1及び材料Z3中には、表13に示すm1乃至m8のピークが確認された。なお、m1乃至m8に示すピークとしては、実施例1の材料Y1乃至Y3と同じである。
表13に示すように、材料Z1は、イリジウム錯体であるm1及びm2を除く物質のピーク面積の比の合計が20.8%であり、材料Z3は、イリジウム錯体であるm1乃至m3を除く物質のピーク面積の比の合計が29%であった。
次に、発光層510(2)上に電子輸送層533(1)として、膜厚5nmの2mDBTBPDBq−IIを蒸着した。次に、電子輸送層533(1)上に電子輸送層533(2)として、膜厚10nmのBphenを蒸着した。次に、電子輸送層533(2)上に電子注入層534として、膜厚1nmのLiFを蒸着した。
次に、電子注入層534上に上部電極514として、膜厚200nmのAlを蒸着した。
次に、封止基板552を準備した。
上記により作製した基板502上の各発光素子と、封止基板552とを大気に曝されないように窒素雰囲気のグローブボックス内において貼り合わせることにより封止した。封止方法としては、実施例1と同様とした。
以上の工程により、発光素子6及び発光素子7を作製した。
なお、上述の発光素子6及び発光素子7の蒸着過程において、蒸着方法としては抵抗加熱法を用いた。
<3−2.発光素子6及び発光素子7の初期特性>
発光素子6及び発光素子7の輝度−電流密度特性を図30(A)に示す。また、発光素子6及び発光素子7の輝度−電圧特性を図30(B)に示す。また、発光素子6及び発光素子7の電流効率−輝度特性を図31(A)に示す。なお、各発光素子の測定環境としては、室温(25℃に保たれた雰囲気)とした。また、1000cd/m2付近における発光素子6及び発光素子7の素子特性を表14に示す。
また、発光素子6及び発光素子7に、それぞれ2.5mA/cm2の電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを図31(B)に示す。図30、図31、及び表14に示す通り、発光素子6と発光素子7とで初期特性に明確な差が認められなかった。発光層510(1)及び発光層510(2)の燐光材料として用いたイリジウム錯体の純度が異なる材料を用いても、初期特性に大きな影響がないと示唆される。
<3−3.発光素子6及び発光素子7の信頼性評価>
次に、発光素子6及び発光素子7の信頼性試験を行った。信頼性試験の測定方法としては、初期輝度を5000cd/m2に設定し、電流密度を一定の条件で発光素子6及び発光素子7を駆動した。信頼性試験結果を図32に示す。図32において、縦軸は初期輝度を100%とした場合の相対輝度(%)を、横軸は駆動時間(h)を、それぞれ表す。
図32に示す結果から、発光素子6の205時間経過後の相対輝度は95.1%であり、発光素子7の205時間経過後の相対輝度は93.3%であった。
図32に示す結果から、発光素子6及び発光素子7は、概ね同等の劣化曲線であり、高い信頼性を有する発光素子であった。
<3−4.発光素子6及び発光素子7の液体クロマトグラフィー質量分析>
次に、発光素子6及び発光素子7の分析を行った。当該分析方法としては、LC/MS分析を用いて、各発光素子中に含まれる不純物分析を行った。
なお、発光素子6の不純物分析としては、発光素子6と同じ基板上に作製した発光素子6とは異なる発光素子であり、発光素子7の不純物分析としては、発光素子7と同じ基板上に作製した発光素子7とは異なる発光素子である。また、不純物分析用の発光素子としては、下部電極504の面積を12cm2(3.5cm×3.3cm)とした。すなわち、不純物分析用の発光素子は、発光素子6及び発光素子7と、それぞれ材料及び構造等は同一であるが、下部電極504の面積が異なり、且つ駆動させていない素子である。よって、不純物分析の結果については、駆動により生成した劣化物を分析したものではなく、駆動前から含まれる不純物を対象として行ったものである。ここでは、便宜的に発光素子6と同じ基板上に作製した不純物分析用の発光素子を発光素子6として扱う。発光素子7についても同様である。
LC/MS分析方法としては、実施例1に示す方法と同様とした。
発光素子6及び発光素子7の分析結果を図33に示す。なお、図33は、発光素子6及び発光素子7のLC/MSのPDAクロマトグラムである。
また、分析サンプル作製と同様に、分析サンプル作製に用いたクロロホルムを、アセトニトリルで希釈した溶液の分析を行い、ベースライン(または、バックグラウンド:BGともいう)のクロマトグラムを得た。図33において、ベースラインの結果をBGとして示す。
図33に示す結果より、発光素子6及び発光素子7に、それぞれd1乃至d6で表されるピークが確認された。d1乃至d6のピークについて、MSスペクトルによる解析を行ったところ、d2はBphenに、d3はIr(mpmppm)2(acac)に、d4はBPAFLP及び2mDBTBPDBq−IIに、d5はDBT3P−IIに、d6はPCBBiFに、それぞれ帰属された。また、BGとの比較によりd1は溶媒として用いたクロロホルム及び当該クロロホルムに含まれる不純物に帰属された。
図33に示すように、素子作製に用いた物質以外の目立った不純物ピークは認められなかった。
次に、Ir(mpmppm)2(acac)に着目してPDAクロマトグラムの解析を行った。なお、PDAクロマトグラムの解析としては、ベースラインを差し引いて行った。発光素子6及び発光素子7のIr(mpmppm)2(acac)に着目した解析結果を図34に示す。なお、図34は、図33のd3近傍である分析時間5乃至20分を拡大した図である。
図34に示す結果より、発光素子6及び発光素子7には、それぞれd3及びd7乃至d13で表されるピークが確認された。なお、d3で表されるピークは、図33のd3と同じピークであり、Ir(mpmppm)2(acac)に帰属される。なお、図34において、d3、d7、及びd8がイリジウム錯体のプレカーサーイオンに相当し、d9乃至d13がイリジウム錯体のフラグメントイオンに相当する。
また、d7乃至d13のピークについて、MSクロマトグラフを用いて解析した結果、d7はIr(mpmppm)2(acac)の構造異性体(便宜的に、構造異性体1とする)に、d8はIr(mpmppm)2(acac)の構造異性体(便宜的に、構造異性体2とする)に、d9及びd10はIr(mpmppm)2(acac)の配位子であるmpmppm骨格から1つのMe基が外れた構造の物質に、d11はIr(mpmppm)2(acac)から配位子であるacacが外れたIr(mpmppm)2構造を有する物質に、d12はIr(mpmppm)2(acac)から配位子であるacacと、Me基が外れた構造の物質に、d13はIr(mpmppm)2(acac)の配位子であるmpmppmに、それぞれ帰属された。
なお、上述のIr(mpmppm)2構造を有する物質は、LC/MS分析において質量電荷比(m/z)が753のMSスペクトルを示した。Ir(mpmppm)2にアセトニトリルが配位した構造のプロトン付加体の質量数が、753と一致する。したがって、Ir(mpmppm)2は、LC分離中にアセトニトリルが配位した構造となっている事が示唆された。
また、本分析で用いたウォーターズ社製Xevo G2 Tof MS検出器の測定範囲は、m/z=100以上となっている。そのため、配位子であるacacは、MS検出器の測定範囲外となっているため検出されなかった。また、PDA検出器においても、配位子であるacacは、検出されなかった。
次に、図34に示すLC/MS分析結果を用い、発光素子6及び発光素子7に含まれる不純物の濃度を求めた。分析結果を表15に示す。なお、表15は、図34に示すd3及びd7乃至d13の8つのピーク面積、すなわちイリジウム錯体に起因する物質の合計のピーク面積を100%とした場合の結果である。したがって、発光素子6及び発光素子7に含まれるIr(mpmppm)2(acac)以外の材料については、純度検定に用いていない。
表15に示すように、発光素子6においては、イリジウム金属に配位結合していない配位子のピーク面積(ここではd13)が検出されなかった。また、発光素子7においては、イリジウム錯体であるIr(mpmppm)2(acac)に起因する物質の合計のピーク面積を100%とした場合、イリジウム錯体のピーク面積(ここではd3、d7及びd8)に対する、イリジウム金属に配位結合していない配位子のピーク面積(ここではd13)の比が0.4%であった。
よって、本発明の一態様である発光素子6及び発光素子7は、イリジウム錯体に起因する物質の合計のピーク面積を100%とした場合、イリジウム金属に配位結合していない配位子のピーク面積の比が1%以下であるため、長寿命な発光素子であった。また、発光素子6は、イリジウム金属に配位結合していない配位子のピーク面積(ここではd13)の比が、検出下限である0.1%未満であったため、図32に示すように発光素子7よりも信頼性が高い結果であった。したがって、発光層510(1)、発光層510(2)においては、イリジウム金属に配位結合していない配位子としては、含まれない、または検出下限未満が好ましい。
以上のように、本発明の一態様の発光素子は、発光層510(1)、510(2)中の発光物質である、イリジウム錯体に起因する不純物濃度を抑制することによって、信頼性が高い発光素子を実現することができた。
また、表15に示す結果から、Ir(mpmppm)2(acac)は、蒸着中に分解し配位子であるacacが外れた物質が蒸着されていることが示唆された。また、蒸着後の膜は、主成分としてIr(mpmppm)2(acac)を最も含有しており、また、mpmppm配位子の向き違いと示唆される構造異性体1及び構造異性体2が含まれていた。Me基が外れた不純物の割合は、蒸着の前後で増えていないため、蒸着中に分解してMe基が外れているという可能性は低いことが考えられる。蒸着後に増加する分解物としては、配位子であるacacが外れたIr(mpmppm)2が確認された。また、配位子であるacacは、検出されなかった。
図32に示す信頼性試験の結果と、表15に示す各発光素子中のIr(mpmppm)2(acac)に由来する物質のみから求めた純度検定結果から、発光素子6及び発光素子7はIr(mpmppm)2(acac)の素子中の純度が違うにもかかわらず、駆動寿命にはわずかな差しか認められなかった。一方、表15に示した結果から、発光素子6及び発光素子7はどちらも配位子であるmpmppmのIr(mpmppm)2(acac)に対する面積比は1%未満であった。したがって、mpmppmのIr(mpmppm)2(acac)に対する面積比が1%未満であったため、どちらの発光素子も長寿命であることが明らかとなった。ただし、発光素子6と発光素子7において、配位子の含有量のわずかな差により、信頼性にわずかに差が生じた。したがって、イリジウム金属に配位結合していない配位子としては、発光素子中に含まれないまたは検出下限未満が好ましい。
以上、本実施例に示す構成は、他の実施例及び実施の形態と適宜組み合わせて用いる事ができる。