以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
まず、図1〜図8を参照して、本発明の第1実施形態による光音響画像化装置100の構成について説明する。
本発明の第1実施形態による光音響画像化装置100は、図1に示すように、光源部10と、検出部20と、光音響画像化装置本体(以下、装置本体という)30とを備えている。光源部10および検出部20は、装置本体30の外部に設けられ、図示しない配線により装置本体30と接続されている。この配線を介して、光音響画像化装置100は、装置本体30から光源部10への制御信号の出力や、検出部20により検出された光音響波信号の検出部20から装置本体30への出力などの信号の伝達を行うことが可能に構成されている。
図1に示すように、光源部10は、被検体P(図2参照)に光を照射するための光源ユニットである。光音響波AW(図2参照)の測定時には、光源部10は、被検体Pの表面に当接させた状態で用いられる。
また、光源部10は、光源11を含み、光源11から被検体Pに向けて測定のための光を照射するように構成されている。また、光源部10の光源11は、装置本体30の後述する光源駆動部33の制御信号に基づいて、パルス幅ta(図3参照)のパルス光を、発光周期Ta(図3参照)で繰り返し発光させるように構成されている。そして、パルス光の発光後で、次のパルス光の発光前の所定期間の光音響波信号が装置本体30により繰り返し取得される。
光源11は、人体などの被検体P(図2参照)の測定に適した赤外領域の測定波長の光(たとえば、約700nm〜約1000nmに中心波長を有する光)を発生するように構成されている。このような光源11としては、たとえば、発光ダイオード素子、半導体レーザ素子、または、有機発光ダイオード素子を用いることが可能である。この場合、光源部10を小型化することができるので、光源11が設けられた光源部10を被検体Pに直接的に当接させて、光音響波AWの測定を行うことが可能である。なお、光源11の測定波長は、検出を所望する検出対象物Qに応じて適宜決定されればよい。
図1に示すように、検出部20は、光音響波AW(図2参照)の受信を行うためのプローブである。また、検出部20は、光音響波AWの受信に加えて、超音波の送受信を行うように構成することが可能である。光音響波AWの測定時には、検出部20は、被検体Pの表面に当接させた状態で用いられる。
また、検出部20は、複数の検出素子21を含んでいる。複数の検出素子21は、圧電素子を含み、図示しない筐体の内部の先端近傍において、アレイ状に配列されている。この第1実施形態では、複数の検出素子21は、N個(Nch(チャンネル)ともいう)設けられている。検出素子21の数Nとしては、たとえば、64個、128個、192個または256個を用いることが可能である。
また、検出部20は、光源部10から照射された光を吸収した被検体P(図2参照)内の検出対象物Q(図2参照)から発生する光音響波AWによって検出素子21が振動されることにより、光音響波AWを受信して、光音響波信号を検出するように構成されている。また、検出部20は、検出された光音響波信号を、装置本体30に出力するように構成されている。
ここで、第1実施形態では、装置本体30には、信号処理部31が設けられている。信号処理部31は、検出部20から出力された光音響波信号を補正して、整相加算することにより、光音響波信号に基づく光音響波画像を生成するように構成されている。具体的には、信号処理部31は、光音響波AWの減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少を補正するとともに、補正された光音響波信号を整相加算して、光音響波画像を生成するように構成されている。
信号処理部31は、概略的には、光音響波信号の取得、光音響波信号の補正、補正された光音響波信号の整相加算、整相加算された光音響波信号に基づく光音響波画像の生成に係る信号処理を行うように構成されている。以下、信号処理部31の構成について、詳細に説明する。
図1に示すように、信号処理部31は、受信部41と、第1メモリ42と、平均化処理部43と、補正処理部44と、第2メモリ45と、整相加算部46と、第3メモリ47とを含んでいる。この信号処理部31の機能は、たとえば、専用回路や、汎用CPU、FPGA(Field Programmable Gate Array)、不揮発性メモリ、揮発性メモリなどのハードウェア、および、各種プログラムなどのソフトウェアの組み合わせにより実現することができる。
受信部41には、検出部20の複数(N個)の検出素子21にそれぞれ対応する複数(N個)の増幅部51と、複数(N個)のアナログデジタル変換部(以下、A/D変換部という)52とが設けられている。
ここで、図2を参照して、検出部20による光音響波信号の検出から、受信部41による光音響波信号の受信までについて説明する。光源部10(図1参照)により被検体Pに向けてパルス光が照射されると、図2に示すように、被検体P内の検出対象物Qから光音響波AWが発生する。この際、光の照射により一度に広範囲から光音響波AWが発生する。なお、図2では、理解の容易のため、1つの検出対象物Qのみを示している。
そして、検出部20(図1参照)は、N個の検出素子21のそれぞれにより、検出対象物Qから発生した光音響波AWを受信して、光音響波信号を検出する。図2では、各検出素子21により検出される光音響波信号を、光音響波信号L1〜LNとして示している。検出素子21により検出された光音響波信号L1〜LNは、検出部20から装置本体30に出力され、装置本体30の受信部41により受信される。以下では、光音響波信号のことを適宜光音響波信号L1〜LNと記載する。
そして、受信部41は、n(1≦n≦N)番目の増幅部51とこれに対応するn番目のA/D変換部52とにより、n番目の検出素子21により検出された光音響波信号Ln(L1〜LN)を受信するように構成されている。
また、各増幅部51は、受信された光音響波信号L1〜LNをそれぞれ増幅(たとえば、約300倍〜約30000倍)し、A/D変換部52に出力するように構成されている。
各A/D変換部52は、増幅部51により増幅された状態の光音響波信号L1〜LNのそれぞれを、所定のサンプリング周波数および所定のビット分解能で、アナログ信号からデジタル信号に変換するように構成されている。また、各A/D変換部52は、デジタル信号としての光音響波信号L1〜LNを、第1メモリ42に出力するように構成されている。
第1メモリ42は、各A/D変換部52から出力された光音響波信号L1〜LNを格納するように構成されている。また、図4に示すように、第1メモリ42には、光音響波信号L1〜LNがNM座標データとして格納される。
ここで、NM座標データとは、検出部20の幅方向に関する情報と、被検体Pの表面からの深さ方向に関する情報とをマトリクス状に構成したデータである。具体的には、NM座標データは、検出素子21の数(検出素子数)Nと、サンプリング数Mとのマトリクスにより構成されている。ここで、サンプリング数Mは、各光音響波信号L1〜LNにおける、画像化を所望する深さまでの信号のサンプリング数である。たとえば、画像化を所望する深さを被検体Pの表面から6cm(0.06m)とし、人体内の音速を1530(m/s)とし、A/D変換部52の所定のサンプリング周波数を20×106Hzとする場合には、サンプリング数Mは、M=(0.06/1530)×20×106=約800となる。このサンプリング数Mは、深さ方向の画素数を示しており、たとえば、上記の計算例の場合には、深さ方向に約800個の画素数を有することとなる。
また、NM座標データでは、M座標の各点は、サンプリング時間pに対応する時間間隔で配列されている。サンプリング時間pは、A/D変換部52の所定のサンプリング周波数の1周期に対応する時間である。たとえば、A/D変換部52の所定のサンプリング周波数を20×106Hzとする場合には、サンプリング時間pは、0.05μsとなる。つまり、NM座標データでは、M座標は、検出された光音響波信号L1〜LNにおける検出時間tに対応する。たとえば、M座標がm(1≦m≦M)である場合には、検出時間tは、下式で求められる。つまり、t=m×pとなる。したがって、このNM座標データは、各検出素子21により検出された光音響波信号L1〜LNの各検出時間tにおける情報を有するデータであるといえる。たとえば、NM座標データの座標点(n,m)は、光音響波信号Lnの検出時間t(=m×p)における信号値Xnmの情報を有する。このNM座標データは、光源部10の光源11による1回のパルス発光につき、1つ得られる。
平均化処理部43(図1参照)は、図3に示すように、複数(P回)のパルス光に基づき受信され、第1メモリ42に格納される複数(P組)の光音響波信号L1〜LNのそれぞれに対応する、複数(P個)のNM座標データを平均化処理するように構成されている。これにより、平均化処理により光音響波信号L1〜LNのS/N比(シグナル/ノイズ比)を向上させた状態で、光音響波画像(画像データ)を生成することができるので、被検体P内の状態が正確に反映された光音響波画像を生成することが可能である。そして、平均化処理部43は、平均化処理されたNM座標データを第1メモリ42に格納するように構成されている。また、第1メモリ42は、格納されたNM座標データを補正処理部44に出力可能に構成されている。
ここで、第1実施形態では、補正処理部44は、検出時間tおよび信号周波数fに基づいて、光音響波AWの減衰に起因する光音響波信号L1〜LNの信号強度の減少を補正するように構成されている。検出時間tは、光源部10によるパルス光の照射時点から、光音響波信号L1〜LNが検出部20により検出される検出時点までの間の時間である。なお、検出時間tの始点は、厳密に光源部10によるパルス光の照射時点である必要はない。たとえば、図3に示すように、光源部10によるパルス光の照射時点後、光音響波信号L1〜LNのサンプリング開始時点であってもよい。この第1実施形態では、検出時間tは、上記のように、NM座標データのM座標mとサンプリング時間pとを乗算した値が用いられる。また、信号周波数fは、光音響波信号L1〜LNの有する信号周波数である。この第1実施形態では、信号周波数fは、NM座標データにおける所定の座標点の信号周波数が用いられる。このような信号周波数fは、たとえば、光音響波信号L1〜LNをフーリエ変換法などにより解析することにより、求めることが可能である。
また、第1実施形態では、補正処理部44は、検出時間t(μs マイクロ秒)および信号周波数f(MHz メガヘルツ)に関する定数をk1とした場合に、以下の式(1)で表される補正係数Z1を、光音響波信号L1〜LNに乗じることによって、検出時間tおよび信号周波数fの値が大きくなるのに応じて、光音響波信号の信号強度を増加させるように構成されている。
Z1=10k1×t×f ・・・(1)
ここで、定数k1は、検出時間tおよび信号周波数fに関して被検体P内で生じた光音響波AWの減衰(信号強度の減少)を補正するための定数であり、被検体P(人体またはその他の動物など)や被検体Pの測定部位などの測定条件に応じて適宜決定することが可能である。この点に鑑みると、定数k1としては、0.002以上0.009以下であることが好ましい。
たとえば、生体(人体)軟部を測定する場合の定数k1は、一例として次のように求められる。まず、生体軟部における減衰を−0.6dB/(cm×MHz)とし、生体軟部内で1cmの距離を音(光音響波AW)が進む時間を6.536μs(=0.01m/1530(m/s)=1cm/音速)とした場合に、生体軟部における減衰は、10−0.00459×t×f(=10^((−0.6/20)/6.536)×t×f))で表すことができる。そして、この式と対応して、定数k1は、k1=((0.6/20)/6.536)=0.00459(1/(μs×MHz))として求められる。つまり、定数k1は、検出時間tおよび信号周波数fあたりに生じた光音響波AWの減衰(信号強度の減少)を補正するための定数であるといえる。そして、上記の式(1)による補正係数Z1は、被検体P内で生じた光音響波AWの減衰(信号強度の減少)分を増加させるための補正係数であるといえる。したがって、光音響波信号に補正係数Z1を乗じることによって、被検体P(図2参照)内で発生した光音響波AW(図2参照)が検出部20の検出素子21に到達するまでに減衰したとしても、この光音響波AWの減衰に起因する光音響波信号L1〜LNの信号強度の減少を補正することが可能である。
具体的な光音響波信号L1〜LNの光音響波AWの減衰に起因する補正処理として、補正処理部44は、第1メモリ42に格納されたNM座標データを取得するとともに、取得されたNM座標データにおける各座標点の信号値(信号強度)に対して、補正係数Z1を乗じるように構成されている。これにより、補正処理部44は、検出時間tおよび信号周波数fの値が大きくなるのに応じて、光音響波信号L1〜LNの信号強度を増加させるように構成されている。たとえば、図4および図5に示すように、NM座標データにおける座標点(n,m)の信号値Xnmに対して、座標点(n,m)における補正係数Z1を乗じることによって、座標点(n,m)における補正後の信号値Ynm(=Z1×Xnm)が得られる。同様に、座標点(1,1)から座標点(N,M)までのNM座標データの全ての座標点において、各座標点における信号値に対して、各座標点における補正係数Z1が乗算されて、図5に示す補正後のNM座標データが補正処理部44により取得される。そして、図1に示すように、補正処理部44は、取得された補正後のNM座標データを第2メモリ45に出力するように構成されている。
なお、補正処理部44により補正される光音響波信号L1〜LNは、RF(Radio Frequency)信号(高周波信号)または元のRF信号を検波することにより得られたRF信号のいずれでもよい。つまり、補正処理部44による補正処理は、RF信号または検波されたRF信号のいずれに対して行われてもよい。また、検波されたRF信号に対して補正処理する場合には、補正処理部44よりも前段に検波処理部を設けることにより、検波されたRF信号に対して補正処理を行うことが可能である。
第2メモリ45は、補正処理部44から出力された補正後のNM座標データ(図5参照)を格納するように構成されている。また、第2メモリ45は、格納されたNM座標データを整相加算部46に出力可能に構成されている。
整相加算部46は、補正後のNM座標データに基づいて整相加算を行い、KL座標データ(図8参照)を生成するように構成されている。以下、図6〜図8を参照して、整相加算部46の整相加算によるKL座標データの生成について説明する。
図6〜図8に示すように、整相加算部46は、補正後のNM座標データに基づいて整相加算を行うことにより、被検体P内と対応する画像化領域ARをK×L分割したKL座標データ(図8参照)を生成するように構成されている。図8に示すように、KL座標データは、NM座標データと同様に、検出部20の幅方向に関する情報と、被検体Pの表面からの深さ方向に関する情報とをマトリクス状に構成したデータである。KL座標データは、検出素子数Nと同一であるK(つまり、N=K)と、装置本体30の後述するモニタ32の深さ方向の画素数(モニタ画素数)Lとのマトリクスにより構成されている。
詳細には、整相加算部46は、補正後のNM座標データに基づいて、KL座標データの各座標点の信号値(信号強度)を、整相加算により取得するように構成されている。たとえば、図8に示すように、KL座標における座標点(k,l)の信号値Aklを取得する場合には、まず、整相加算部46は、画像化領域AR(図6参照)における座標点(k,l)から各検出素子21まで光音響波AW(図2参照)が到達すると想定した到達時間Tkl1〜TklN(図6参照)を取得する。到達時間Tkl1〜TklNは、たとえば、座標点(k,l)から各検出素子21までの距離を音速により除算して求めることが可能である。そして、図7に示すように、整相加算部46は、NM座標データにおいて、取得された各到達時間Tkl1〜TklNと各検出素子21(1〜N)とに対応する座標点の信号値Ykl1〜YklNを取得する。そして、整相加算部46は、取得された信号値Ykl1〜YklNを加算することにより、座標点(k,l)の信号値Akl(=Ykl1+Ykl2+・・・+Ykln+・・・+YklN)を取得する。このようにして、整相加算部46は、座標点(k,l)の信号値を整相加算により取得する。そして、整相加算部46は、同様に、座標点(1,1)から座標点(K,L)までのKL座標データの全ての座標点において、整相加算により信号値を取得する。これにより、KL座標データ(図8参照)が生成される。そして、生成されたKL座標データに基づいて、光音響波画像が構築(生成)される。つまり、構築された光音響波画像は、補正処理部44により補正された信号値を整相加算することにより得られた画像である。そして、図1に示すように、整相加算部46は、第3メモリ47にKL座標データに基づく光音響波画像(画像データ)を出力するように構成されている。
第3メモリ47は、整相加算部46から出力された光音響波画像(画像データ)を格納するように構成されている。また、第3メモリ47は、格納された光音響波画像をモニタ32に出力可能に構成されている。この結果、モニタ32では、信号強度の減少が補正された光音響波信号に基づく鮮明な光音響波画像が表示される。なお、第3メモリ47とモニタ32との間には、さらに階調調整などの画像処理を行う画像処理部を設けることが可能である。
装置本体30には、一般的な液晶モニタを含む、モニタ32が設けられている。モニタ32は、光音響波画像や、各種操作画面などを表示可能に構成されている。
また、装置本体30には、光源駆動部33が設けられている。光源駆動部33は、装置本体30の外部に設けられる光源部10の光源11をパルス発光させる制御を行うように構成されている。具体的には、光源駆動部33は、光源部10の光源11により、パルス幅taのパルス光を、発光周期Taで繰り返し発光させる制御を行うように構成されている。また、光源駆動部33は、装置本体30の制御部34による制御信号に基づいて、パルス幅ta、発光周期Taおよび光源11を駆動する電流値を調整可能に構成されている。つまり、この光音響画像化装置100は、光源駆動部33の設定を変更することにより、光源部10による光の照射条件を変更することが可能に構成されている。
また、装置本体30には、制御部34が設けられている。制御部34は、CPUを含み、装置本体30の各構成要素を制御するように構成されている。制御部34は、たとえば、光源駆動部33による光源部10の照射条件や、信号処理部31による信号処理の条件を制御するように構成されている。
次に、図9を参照して、装置本体30の信号処理部31による光音響波画像構築処理についてフローチャートに基づいて説明する。
まず、ステップS1において、光音響波信号が取得される。具体的には、受信部41(図1参照)により受信され、第1メモリ42(図1参照)に格納されることにより、光音響波信号L1〜LN(図4参照)が信号処理部31により取得される。この際、第1メモリ42には、光音響波信号L1〜LNが補正前のNM座標データとして格納される。
そして、ステップS2において、複数(P組)の光音響波信号の平均化処理が行われる。具体的には、第1メモリ42に格納される複数(P組)の光音響波信号L1〜LNのそれぞれに対応する、複数(P個)のNM座標データが平均化処理部43により平均化処理される。
そして、ステップS3において、光音響波AWの減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少が補正される。具体的には、第1メモリ42に格納されたNM座標データの取得と、取得されたNM座標データにおける各座標点の信号値(信号強度)に対して、補正係数Z1を乗じる補正が補正処理部44により行われる。これにより、光音響波AWの減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少が補正されたNM座標データが得られる。
そして、ステップS4において、補正された光音響波信号が整相加算される。つまり、ステップS4では、ステップS3の処理により得られた補正後のNM座標データに基づいて、整相加算部46により整相加算が行われる。この結果、図8に示すKL座標データが生成されるとともに、KL座標データに基づく光音響波画像が構築される。
そして、ステップS5において、整相加算により構築された光音響波画像が第3メモリ47からモニタ32に出力される。この結果、補正処理により得られる鮮明な光音響波画像がモニタ32に表示される。そして、ステップS1に戻り、次の光音響波信号の取得が行われる。
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第1実施形態では、上記のように、光音響波AWの減衰に起因する光音響波信号(L1〜LN)の信号強度の減少を補正するとともに、補正された光音響波信号を整相加算して、光音響波画像を生成する信号処理部31を設ける。これにより、被検体P内で発生した光音響波AWが検出部20に到達するまでに減衰したとしても、光音響波AWの減衰に起因する光音響波信号(L1〜LN)の信号強度の減少を補正することができる。その結果、信号強度の減少が補正された光音響波信号を整相加算することができるので、整相加算により鮮明な光音響波画像を得ることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、光音響波信号が検出部20により検出されるまでの検出時間t、および、光音響波信号の有する信号周波数fの両方に基づいて、光音響波AWの減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少を補正するように信号処理部31を構成する。これにより、光音響波AWの減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少(減少量)に基づいて、確実に、光音響波AWの減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少を補正することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、検出時間t、および、信号周波数fの両方の値が大きくなるのに応じて、光音響波信号の信号強度を増加させることにより、光音響波AWの減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少を補正するように信号処理部31を構成する。これにより、検出時間tまたは信号周波数fの値が大きくなるのに従って大きくなる信号強度の減少(減少量)に応じて、光音響波AWの減衰に起因する光音響波信号の信号強度を増加させることができる。その結果、光音響波AWの減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少(減少量)に応じて、より確実に、光音響波AWの減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少を補正することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、検出時間tの単位をμsとし、信号周波数fの単位をMHzとし、定数k1を0.002以上0.009以下とした場合に、上記の式(1)で表される補正係数Z1を、光音響波信号に乗じることによって、検出時間tおよび信号周波数fの値が大きくなるのに応じて、光音響波信号の信号強度を増加させるように信号処理部31を構成する。これにより、上記の式(1)を用いることにより、検出時間tおよび信号周波数fの両方に応じて、光音響波信号の信号強度を増加させることができる。その結果、光音響波AWの減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少(減少量)に応じて、より一層確実に、光音響波AWの減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少を補正することができる。また、定数k1を0.002以上0.009以下とすることによって、補正係数Z1を適切に取得することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、光源部10の光源11を、発光ダイオード素子、半導体レーザ素子および有機発光ダイオード素子のうち少なくともいずれか1つにより構成する。これにより、固体レーザ光源を用いる場合と比べて、光源11の消費電力の低減および光源部10の小型化などの利点を得ることができる。ここで、発光ダイオード素子、半導体レーザ素子または有機発光ダイオード素子を光源11として用いる場合には、固体レーザ光源を用いる場合と比べて、光源11から照射される光の出力が小さくなるため、検出部20により検出される光音響波信号の信号強度がより一層小さくなる。したがって、発光ダイオード素子、半導体レーザ素子または有機発光ダイオード素子を光源11として用いる場合に、信号強度の減少を補正して、鮮明な光音響波画像を得ることができるという上記第1実施形態の構成は特に有効である。
(第2実施形態)
次に、図1および図10〜図14を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、上記第1実施形態の構成に加えて、さらに光源部10からの光の減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少を補正する例について説明する。なお、上記第1実施形態と同一の構成については、同じ符号を付してその説明を省略する。
本発明の第2実施形態による光音響画像化装置200は、図1に示すように、光源部10と、検出部20と、光音響画像化装置本体(以下、装置本体という)130とを備えている。装置本体130には、信号処理部131が設けられている。信号処理部131は、補正処理部144が設けられていることを除いて、上記第1実施形態の信号処理部31と同様の構成である。
第2実施形態では、補正処理部144は、光音響波AWの減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少を補正するのに加えて、光源部10からの光の減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少を補正するように構成されている。つまり、第2実施形態では、被検体P(図10参照)内で発生し、検出部20の検出素子21に到達するまでの間の光音響波AWの減衰と、光源部10から照射され、被検体P内の検出対象物Q(図10参照)に到達するまでの光の減衰との両方を考慮して、補正処理部144による補正処理が行われる。
具体的には、補正処理部144は、上記第1実施形態と同様に、式(1)による補正係数Z1により、光音響波の減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少を補正するように構成されている。そして、第2実施形態では、補正処理部144は、さらに、被検体Pに対する光源部10による光の照射位置から被検体P内の所定の位置までの距離dに基づいて、光源部10からの光の減衰に起因する光音響波信号の減少を補正するように構成されている。この第2実施形態では、距離dは、NM座標データに対応して求められる。たとえば、図10に示す被検体P内の所定の位置Poまでの距離dは、図11に示すように、NM座標データにおける座標点(1,m)の検出時間t=m×pに対して、音速cを乗算することにより、d=m×p×cとして求められる。つまり、光源部10による光の照射位置から被検体P内の所定の位置までの距離dは、検出素子21から被検体P内の所定の位置までの距離に置き換えて求められる。その他の座標点についても、同様の計算により距離dを求めることが可能である。
また、このように距離dを求める構成において、図10および図12に示すように、複数の検出素子21が配列される配列方向の光源部10の光源11の幅W1は、複数の検出素子21全体の配列方向の幅W2よりも大きくなるように構成されている。これにより、光源部10による光の照射位置から被検体P内の所定の位置までの距離dを、検出素子21から被検体P内の所定の位置までの距離に置き換えて求めたとしても、光源11の幅W1が複数の検出素子21の配列方向の幅W2よりも大きいので、光源部10による光の照射位置と検出素子21との位置関係を確実に対応させることが可能である。
また、第2実施形態では、補正処理部144は、光源部10による光の照射位置に関する定数をk2とした場合に、以下の式(2)で表される補正係数Z2を、光音響波信号に乗じることによって、光源部10による光の照射位置から被検体P内の所定の位置までの距離dが大きくなるのに応じて、光源部10からの光の減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少を補正するように構成されている。
Z2=10k2×d ・・・(2)
具体的には、補正処理部144は、上記第1実施形態の補正係数Z1の場合と同様に、第1メモリ42に格納されたNM座標データにおける各座標点の信号値(信号強度)に対して、Z2を乗じることによって、光源部10による光の照射位置から被検体P内の所定の位置までの距離dが大きくなるのに応じて、光源部10からの光の減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少を補正するように構成されている。つまり、第2実施形態では、補正係数Z1およびZ2の両方が、第1メモリ42に格納されたNM座標データにおける各座標点の信号値(信号強度)に対して乗算される。たとえば、図11に示すように、NM座標データにおける座標点(n,m)の信号値Xnmに対して、座標点(n,m)における補正係数Z1およびZ2の両方を乗じることによって、座標点(n,m)における補正後の信号値Ynm(=Z1×Z2×Xnm)が得られる。同様に、座標点(1,1)から座標点(N,M)までのNM座標データの全ての座標点において、各座標点における信号値に対して、各座標点における補正係数Z1およびZ2の両方が乗算されて、図11に示す補正後のNM座標データが補正処理部144により取得される。そして、補正後のNM座標データが補正処理部144から第2メモリ45に出力される。以降は、上記第1実施形態と同様に、整相加算部46により整相加算が行われて、光音響波画像が構築(生成)される。
ここで、定数k2は、上記のように、光源部10による光の照射位置に関する定数である。詳細には、定数k2は、被検体Pに対する光源部10による光の照射位置から被検体P内の所定の位置までの距離dに関する定数である。つまり、距離dに関して被検体P内で生じた光の減衰(光強度の減少)を補正するための定数である。そして、距離dに関して被検体P内で生じた光の減衰(光強度の減少)を補正することにより、光の減衰に起因して生じる光音響波信号の信号強度の減少を補正することが可能である。
また、定数k2は、被検体P(人体またはその他の動物など)や被検体Pの測定部位などの測定条件に応じて適宜決定することが可能である。この点に鑑みると、図10に示すように、光源部10による光の照射位置が検出部20側である場合(言い換えると、光源部10が検出部20に隣接して配置され、光源部10による光の照射位置が検出部20に隣接している場合)で、距離d(=m×p×c)の単位をcmとした場合には、定数k2としては、0.2以上0.8以下であることが好ましい。なお、定数k2が正の値である場合には、補正係数Z2は、1よりも大きくなる。この場合、光源部10による光の照射位置から被検体P内の所定の位置までの距離dが大きくなるのに応じて、光音響波信号の信号強度を増加させることにより、光源部10からの光の減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少が補正される。つまり、この場合には、光音響波信号の信号強度を増加させることにより、光源部10からの光の減衰に起因して生じた光音響波信号の信号強度の減少によるNM座標データの各座標点における相対的な信号強度の差が縮まるように補正される。
また、図12に示すように、光源部10による光の照射位置が検出部20とは反対側である場合(言い換えると、光源部10が検出部20に対向して配置され、光源部10による光の照射位置が検出部20に対向している場合)で、距離dの単位をcmとした場合には、定数k2としては、−0.8以上−0.2以下であることが好ましい。なお、光源部10の照射位置が検出部20とは反対側である場合にも、光源部10による光の照射位置が検出部20側である場合における仮想的な照射位置から被検体P内の所定の位置までの距離をd(=m×p×c)とする。また、定数k2が負の値である場合には、補正係数Z2は、1未満になる。この場合、仮想的な光の照射位置から被検体P内の所定の位置までの距離dが大きくなるのに応じて、光音響波信号の信号強度を減少させることにより、光源部10からの光の減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少が補正される。言い換えると、実際の光源部10による光の照射位置からの距離が大きくなるのに応じて、光音響波信号の信号強度の減少量が小さくなるように光音響波信号の信号強度を減少させることにより、光源部10からの光の減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少が補正される。これにより、この場合には、光音響波信号の信号強度を減少させることにより、光源部10からの光の減衰に起因して生じた光音響波信号の信号強度の減少によるNM座標データの各座標点における相対的な信号強度の差が縮まるように補正される。
これらの結果、光源部10による光の照射位置が検出部20側である場合と、光源部10による光の照射位置が検出部20とは反対側である場合とにおいて、同様の式により距離dを得る構成において、確実に、NM座標データの各座標点における相対的な信号強度の差が縮まるように補正することが可能である。
ここで、図13を参照して、定数k2を決定するために行った実験結果について説明する。図13には、横軸を厚さ(cm)とし、縦軸を光の透過率(%)として、縦軸を対数表示とした片対数グラフを示す。実験は、空気(空気層)、寒天、鶏肉および豚肉について行った。また、実験には、近赤外光(850nmの中心波長の光)の光を使用した。図13に示すように、空気の場合が最も透過率の減少(光の減衰)の度合いが小さく、豚肉の場合が最も透過率の減少(光の減衰)の度合いが大きい。豚肉の場合、厚さ3cmで、透過率は1.5%であった。したがって、定数k2は、豚肉の場合の1cmあたりの光の減衰に換算して、k2=−Log(1.5/100)/3=約0.6(cm−1)となる。また、空気の場合、厚さ3cmで、透過率は33%であった。したがって、定数k2は、空気の場合の1cmあたりの光の減衰に換算して、k2=−Log(33/100)/3=約0.2(cm−1)となる。人体などの被検体Pでの光の減衰を考慮した場合には、定数k2は、0.2以上0.6以下(図10に示す光源部10による光の照射位置が検出部20側である場合)、または、−0.6以上−0.2以下(図12に示す光源部10による光の照射位置が検出部20とは反対側である場合)であることがより好ましい。
次に、図14を参照して、第2実施形態の装置本体130の信号処理部131による光音響波画像構築処理についてフローチャートに基づいて説明する。
まず、ステップS1において、光音響波信号が取得され、次に、ステップS2において、複数(P組)の光音響波信号の平均化処理が行われる。ステップS1およびS2の処理は、上記第1実施形態と同様である。
そして、ステップS3aにおいて、光音響波AWの減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少の補正と、光源部10からの光の減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少の補正との両方が行われる。具体的には、第1メモリ42に格納されたNM座標データの取得と、取得されたNM座標データにおける各座標点の信号値(信号強度)に対して、補正係数Z1およびZ2の両方を乗じる補正が補正処理部144により行われる。これにより、光音響波AWの減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少と、光源部10からの光の減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少との両方が補正されたNM座標データが得られる。
そして、ステップS4において、補正された光音響波信号が整相加算される。その後、上記第1実施形態と同様に、ステップS5の処理が行われる。この結果、第2実施形態においては、2つの補正処理によってより鮮明な光音響波画像がモニタ32に表示される。そして、ステップS1に戻り、次の光音響波信号の取得が行われる。
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第2実施形態では、上記のように、光音響波AWの減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少を補正するのに加えて、被検体Pに対する光源部10による光の照射位置から被検体P内の所定の位置(Po)までの距離dが大きくなるのに応じて、光源部10からの光の減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少を補正するように信号処理部131を構成する。これにより、光源部10からの光が被検体P内の検出対象物Qに到達するまでに減衰したとしても、光源部10からの光の減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少を補正することができる。その結果、光音響波AWの減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少を補正するのに加えて、光源部10からの光の減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少をも補正することができる。したがって、光音響波信号の信号強度の減少をより適切に補正することができる。したがって、この第2実施形態においては、整相加算によってより鮮明な光音響波画像を得ることができる。
また、第2実施形態では、上記のように、上記の式(2)で表される補正係数Z2を、光音響波信号に乗じることによって、照射位置から被検体P内の所定の位置までの距離dが大きくなるのに応じて、光源部10からの光の減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少を補正するように信号処理部131を構成する。これにより、上記の式(2)を用いることにより、光源部10からの光の減衰に起因する信号強度の減少(減少量)に応じて、確実に、光源部10からの光の減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少を補正することができる。
また、第2実施形態では、上記のように、光源部10の照射位置が検出部20側である場合には、照射位置から被検体P内の所定の位置までの距離dの単位をcmとした場合に、定数k2を0.2以上0.8以下とする。また、光源部10の照射位置が検出部20とは反対側である場合には、光源部10の照射位置が検出部20側である場合における照射位置から被検体P内の所定の位置までの距離をdとし、かつ、照射位置から被検体P内の所定の位置までの距離dの単位をcmとした場合に、定数k2を−0.8以上−0.2以下とする。これにより、光源部10による光の照射位置に応じて、補正係数Z2を適切に取得することができる。その結果、光源部10からの光の減衰に起因する光音響波信号の信号強度を適切に増加させることができる。
また、第2実施形態では、上記のように、複数の検出素子21が配列される配列方向の光源部10の幅W1は、複数の検出素子21の配列方向の幅W2よりも大きい。これにより、複数の検出素子21の配列方向の全域にわたって、光源部10からの光を確実に照射することができる。その結果、複数の検出素子21により検出可能な範囲内における光の照射量が少ないことに起因して、複数の検出素子21により検出可能な範囲内における検出対象物Qから光音響波AWを十分に発生させることができないのを抑制することができる。これにより、複数の検出素子21により検出可能な範囲内における検出対象物Qの検出が複数の検出素子21により適切に行われないのを抑制することができる。
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
(第3実施形態)
次に、図1、図7および図15〜図17を参照して、第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、上記第1実施形態の構成に加えて、さらに検出素子21の感度に起因する光音響波信号の信号強度の減少を補正する例について説明する。なお、上記第1実施形態と同一の構成については、同じ符号を付してその説明を省略する。
本発明の第3実施形態による光音響画像化装置300は、図1に示すように、光源部10と、検出部20と、光音響画像化装置本体(以下、装置本体という)230とを備えている。装置本体230には、信号処理部231が設けられている。信号処理部231は、整相加算部246が設けられていることを除いて、上記第1実施形態の信号処理部31と同様の構成である。
図15に示すように、検出素子21は、光音響波がいずれの方向から入射されたか(入射方向)により、感度(検出感度)が異なる。たとえば、図15に示す矩形状の検出素子21は、検出素子21の検出面に対して垂直方向から光音響波が入射した場合に、最も感度が大きい。そして、検出面に対する垂直方向と光音響波の入射方向との成す角度である入射角θが大きくなるに従い、感度が小さくなる。図15では、1番目の検出素子21の入射角θに対する感度の大きさを概念的に矢印の長さで表している。
第3実施形態では、図1に示すように、整相加算部246は、補正後のNM座標データ(図7参照)に基づいて、KL座標データ(図16参照)の各座標点の信号値(信号強度)を整相加算により取得する際、検出素子21の感度に起因する光音響波信号の信号強度の減少を補正するように構成されている。
具体的には、整相加算部246は、まず、KL座標データにおける各座標点の信号値を整相加算により取得する際、信号値を取得する座標点に対する各検出素子21の入射角θを取得するように構成されている。そして、整相加算部246は、取得された入射角θに基づいて、各検出素子21の感度補正係数Sklを取得するように構成されている。感度補正係数Sklは、たとえば、予め設定しておき、予め設定された値を入射角θに応じて用いることが可能である。なお、入射角θに対する検出素子21の感度の大きさは、検出素子21の形状によっても異なるため、検出素子21の形状を考慮して設定することが好ましい。そして、整相加算部246は、取得された各検出素子21の感度補正係数Sklを、整相加算の際における各検出素子21に対応する座標点の信号値に乗じるように構成されている。これにより、整相加算部246は、KL座標データの各座標点の信号値(信号強度)を整相加算により取得する際、検出素子21の感度に起因する光音響波信号の信号強度の減少を補正するように構成されている。
たとえば、図16に示すように、座標点(k,l)の信号値Aklを取得する場合には、整相加算部246は、座標点(k,l)に対する各検出素子21の入射角θ1〜θKを取得する。そして、整相加算部246は、取得された入射角θ1〜θKに基づいて、各入射角θ1〜θKに対応する補正係数Skl1〜SklKを取得する。そして、整相加算部246は、各検出素子21に対応する座標点の信号値Ykl1〜YklNに対して、対応する補正係数Skl1〜SklKを乗算して、加算することにより、座標点(k,l)の信号値Akl(=Skl1×Ykl1+Skl2×Ykl2+・・・+Skln×Ykln+・・・+SklN×YklN)を取得する。このようにして、整相加算部246は、座標点(k,l)の信号値を整相加算により取得する際、検出素子21の感度に起因する光音響波信号の信号強度の減少を補正する。そして、整相加算部246は、同様に、座標点(1,1)から座標点(K,L)までのKL座標データの全ての座標点において、整相加算により信号値を取得する。これにより、検出素子21の感度に起因する光音響波信号の信号強度の減少を補正されたKL座標データ(図16参照)が生成されるとともに、KL座標データに基づく光音響波画像が構築される。以降は、上記第1実施形態と同様に、KL座標データに基づく光音響波画像が第3メモリ47に格納される。
つまり、第3実施形態では、式(1)による補正係数Z1を用いて、光音響波の減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少が補正処理部44により補正されるのに加えて、検出素子21の感度に起因する光音響波信号の信号強度の減少が整相加算部246により補正される。
次に、図17を参照して、第3実施形態の装置本体230の信号処理部231による光音響波画像構築処理についてフローチャートに基づいて説明する。
まず、ステップS1において、光音響波信号が取得され、次に、ステップS2において、複数(P組)の光音響波信号の平均化処理が行われる。そして、ステップS3において、光音響波の減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少の補正が補正処理部44により行われる。ステップS1〜S3の処理は、上記第1実施形態と同様である。
そして、ステップS4aにおいて、検出素子21に対する入射方向に起因する感度を考慮した整相加算が整相加算部246により行われる。具体的には、第2メモリ45に格納された補正処理部44による補正後のNM座標データの取得と、取得されたNM座標データに基づいてKL座標データの各座標点の信号値(信号強度)を整相加算により取得する際に、各検出素子21の感度補正係数Sklを、各検出素子21に対応する座標点の信号値に乗じる補正とが整相加算部246により行われる。ステップS3およびS4aの処理の結果、光音響波の減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少と、検出素子21の感度に起因する光音響波信号の信号強度の減少との両方が補正されたKL座標データが得られる。
その後、上記第1実施形態と同様に、ステップS5の処理が行われる。この結果、第3実施形態においても、2つの補正処理によってより鮮明な光音響波画像がモニタ32に表示される。そして、ステップS1に戻り、次の光音響波信号の取得が行われる。
なお、第3実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第3実施形態では、上記のように、光音響波の減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少を補正するのに加えて、検出素子21に対する光音響波の入射方向に起因する感度に基づいて、検出素子21の感度に起因する光音響波信号の信号強度の減少を補正するように信号処理部231を構成する。これにより、検出素子21に対する光音響波の入射方向に起因する検出素子21の感度の相違により、検出された光音響波信号の信号強度が減少していたとしても、検出素子21の感度に起因する光音響波信号の信号強度の減少を補正することができる。その結果、光音響波の減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少を補正するのに加えて、検出素子21の感度に起因する光音響波信号の信号強度の減少をも補正することができる。したがって、光音響波信号の信号強度の減少をより適切に補正することができる。その結果、この第3実施形態においても、整相加算によってより鮮明な光音響波画像を得ることができる。
なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
たとえば、上記第1〜第3実施形態では、信号処理部31(131、231)とは別個に制御部34を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、信号処理部の機能の一部を、制御部により行うように構成してもよい。
また、上記第2実施形態では、光音響波AWの減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少の補正と、光源部10からの光の減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少の補正との2つの補正を行い、第3実施形態では、光音響波AWの減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少の補正と、検出素子21の感度に起因する光音響波信号の信号強度の減少の補正との2つの補正を行った例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、光音響波の減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少の補正と、光源部からの光の減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少の補正と、検出素子の感度に起因する光音響波信号の信号強度の減少の補正との3つの補正を行ってもよい。これにより、より一層鮮明な画像を整相加算により得ることができる。
また、上記第1〜第3実施形態では、光音響波AWの減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少の補正を、検出時間tおよび信号周波数fの両方に基づいて行った例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、光音響波の減衰に起因する光音響波信号の信号強度の減少の補正を、検出時間または信号周波数の少なくとも一方に基づいて行ってもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、受信部41に、検出部20の複数(N個)の検出素子21に対応して、複数(N個)の増幅部51と、複数(N個)のA/D変換部52とを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、受信部に、検出部の複数の検出素子よりも少ない数で、増幅部とA/D変換部とを設けてもよい。この場合、検出部の複数の検出素子により検出されたN個の光音響波信号を、複数回に分割して受信すればよい。これにより、受信部の構成を簡素にすることができるので、その分、光音響画像化装置の構成を簡素にすることができる。
また、上記第1〜第3実施形態では、光源部10に1つの光源11を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、光源部に、複数の光源を設けるとともに、複数の光源それぞれを互いに異なる複数の波長の光を発光可能に構成してもよい。この場合、複数の波長の光によるそれぞれの光音響波信号、または、複数の波長の光によるそれぞれの光音響波信号を合成した合成後の光音響波信号を補正して、整相加算により光音響波画像を生成するように構成してもよい。これにより、複数の波長の光により複数の光音響波信号を得る構成においても、整相加算により鮮明な光音響波画像を得つつ、単一波長の光による光音響波信号に基づいて光音響波画像を得る場合と比べて、被検体内のより多様な情報を含む光音響波画像を得ることができる。
また、上記第1実施形態では、式(1)により示す補正係数Z1を補正に用い、上記第2実施形態では、式(2)により示す補正係数Z2を補正に用いた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、補正係数Z1およびZ2の式を、簡略化して用いてもよい。たとえば、上記第1実施形態の場合には、補正係数Z1を、Z1=2.3×(1+(k1×t×f))に簡略化して用いてもよい。また、上記第2実施形態の場合には、補正係数Z1×Z2を、Z1×Z2=2.3×(1+(k1×t×f)+(k2×d))に簡略化して用いてもよい。これにより、補正係数を簡略化した分、補正処理に係る処理の時間を短縮することができる。
また、上記第1〜第3実施形態では、説明の便宜上、本発明の信号処理部31(131、231)の処理を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、信号処理部31(131、231)の処理動作を、イベントごとに処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。