JP2016081660A - 採光システムおよび天井構造体 - Google Patents

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Abstract

【課題】快適な光環境を提供することができる採光システムを実現する。【解決手段】本発明の採光システム1は、採光装置2と、採光装置2から導光された光を利用して室内を照明する天井構造体3と、を備え、天井構造体3は、採光装置2の近傍に、直下へ向かう光の照度を低下させる照度低下領域4を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、採光システムおよび天井構造体に関する。
建築物の窓等に設置した導光素子を通して太陽光を室内に導入するための導光システムが、下記の特許文献1に開示されている。この導光システムは、側壁に設置された第1の導光素子と、天井に設置された第2の導光素子と、を備える。第2の導光素子は、窓に近い天井の一部に設置されている。第1の導光素子によって側壁から室内に導入された光は、天井の第2の導光素子で反射し、窓に近い位置に置かれたテーブルなどの表面を略真上から照明する。
特開2014−116312号公報
特許文献1の導光システムを用いて太陽光を室内に導入した場合、第2の導光素子の近傍、すなわち窓近傍での照度が非常に高くなることがある。照度は、例えば数千lxに達することもある。ところが、太陽光の照度は、時間、天候などの要因により随時変動するため、太陽光の照度変動に伴って室内の照度も変動する。ここで、照度低下を人工照明で完全に補償しようとすると、数千lxの最大出力を持つ人工照明が必要となる。この種の高出力の人工照明は、設備コストが高騰する要因となる。また、極端に照度が高い環境は、例えばコンピューターによる作業を行う際に画面に光が映り込み、作業効率を低下させる等の問題がある。さらに、窓の近傍が明るくなる一方、窓から遠い位置に光が届きにくく、室内で照度のムラが生じやすい、という問題がある。
本発明の一つの態様は、上記の課題を解決するためになされたものであり、快適な光環境を提供することができる採光システムの実現を目的の一つとする。また、このような採光システムに用いて好適な天井構造体の提供を目的の一つとする。
上記の目的を達成するために、本発明の一つの態様の採光システムは、採光装置と、前記採光装置から導光された光を利用して室内を照明する天井構造体と、を備え、前記天井構造体は、前記採光装置の近傍に、直下へ向かう光の照度を低下させる照度低下領域を有することを特徴とする。
本発明の一つの態様の採光システムにおいて、前記採光装置から前記室内の奥側へ向かう方向へ、複数の前記照度低下領域が互いに間隔をおいて設けられていてもよい。
本発明の一つの態様の採光システムにおいて、前記照度低下領域は、前記採光装置から導光された前記光を、前記採光装置から遠い前記室内の奥側へ正反射させる特性を有していてもよい。
本発明の一つの態様の採光システムにおいて、前記照度低下領域は、前記採光装置から導光された前記光の部屋の幅方向への拡散反射性が、前記部屋の奥行き方向への拡散反射性よりも強い特性を有していてもよい。
本発明の一つの態様の採光システムにおいて、前記照度低下領域は、金属材料もしくは金属膜が表面に設けられた樹脂材料からなる凸部が概ね前記部屋の奥行き方向に延伸された構成を有していてもよい。
本発明の一つの態様の採光システムにおいて、前記照度低下領域は、前記採光装置から導光された前記光を概ね前記採光装置側に反射させる特性を有していてもよい。
本発明の一つの態様の採光システムにおいて、前記照度低下領域は、ビーズスクリーンを含む反射部材を有していてもよい。
本発明の一つの態様の採光システムにおいて、前記照度低下領域は、コーナーキューブもしくは前記コーナーキューブの一部を切り取った形状の反射部材を有していてもよい。
本発明の一つの態様の採光システムにおいて、前記照度低下領域は、三角柱状の反射部材を有し、前記三角柱の延伸方向が部屋の幅方向であってもよい。
本発明の一つの態様の採光システムにおいて、前記反射部材の頂角は、90°±20°の範囲内であってもよい。
本発明の一つの態様の採光システムにおいて、前記反射部材の表面は、微小な凹凸を有していてもよい。
本発明の一つの態様の採光システムにおいて、前記照度低下領域は、光触媒を有していてもよい。
本発明の一つの態様の採光システムにおいて、前記光触媒は、可視光に反応する特性を有していてもよい。
本発明の一つの態様の採光システムにおいて、前記照度低下領域は、前記光の色を補償する色補償用の光吸収材をさらに備えていてもよい。
本発明の一つの態様の採光システムにおいて、前記照度低下領域は、太陽電池を有していてもよい。
本発明の一つの態様の採光システムにおいて、前記照度低下領域は、ルミネセンス材料を有していてもよい。
本発明の一つの態様の採光システムにおいて、前記天井構造体は、非照度低下領域をさらに有しており、前記非照度低下領域は、前記光を拡散させる光拡散特性を有していてもよい。
本発明の一つの態様の採光システムは、人工照明装置と、前記人工照明装置に接続され、前記室内の照度を制御する制御部と、をさらに備えていてもよい。
本発明の一つの態様の天井構造体は、採光装置から導光された光を利用して室内を照明するとともに、前記採光装置の近傍に、直下へ向かう光の照度を低下させる照度低下領域を有することを特徴とする。
本発明の一つの態様によれば、快適な光環境を実現できる採光システムを提供することができる。本発明の一つの態様によれば、上記の採光システムに用いて好適な天井構造体を提供することができる。
本発明の第1実施形態の採光システムの断面図である。 (A)採光シートの斜視図、(B)採光部の断面図である。 採光装置を透過する光の光路を示す図である。 天井構造体の第1の例を示す斜視図である。 天井構造体の第2の例を示す斜視図である。 本実施形態の採光システムの作用を説明するための図である。 比較例の採光システムの問題点を説明するための図である。 天井構造体の特性を変えたときの部屋の奥行きと照度との関係を示すグラフである。 (A)〜(C)天井構造体の特性を変えたときの部屋の照度分布を示す図である。 天井構造体の配置の変形例を示す平面図である。 天井構造体の配置の変形例を示す断面図である。 本発明の第2実施形態の採光システムの断面図である。 天井構造体の第1の例を示す断面図である。 天井構造体の第1の例を示す斜視図である。 天井構造体の第2の例を示す断面図である。 天井構造体の第2の例を拡大視した断面図である。 天井構造体の第3の例を示す斜視図である。 (A)、(B)天井構造体の第3の例を示す断面図である。 本発明の第3実施形態の採光システムの断面図である。 本発明の第4実施形態の採光システムの断面図である。 本発明の第5実施形態の採光システムの断面図である。 採光装置の第1変形例を示す図である。 採光装置の第2変形例を示す図である。 (A)、(B)採光装置の第3変形例を示す図である。 採光装置および照明調光システムを備えた部屋モデルを示す図である。 部屋モデルの天井を示す平面図である。 採光装置によって室内に採光された光(自然光)の照度と、室内照明装置による照度(照明調光システム)との関係を示すグラフである。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1〜図7を用いて説明する。
図1は、第1実施形態の採光システムの断面図である。図2(A)は、採光シートの斜視図であり、図2(B)は、採光部の断面図である。図3は、採光装置を透過する光の光路を示す図である。
なお、以下の各図面においては各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
本実施形態の採光システム1は、採光装置2と、天井構造体3と、を備える。天井構造体3は、採光装置2から導光された光を利用して室内を照明する。天井構造体3は、少なくとも採光装置2の近傍に、直下へ向かう光の照度を低下させる照度低下領域4を有する。すなわち、天井構造体3は、必ずしも天井104の全面に設けられる必要はなく、少なくとも窓に近い側の天井部分に設けられていればよい。本発明の採光システムに用いられる採光装置は、特定の形態に限定されることはなく、本実施形態では一つの例を挙げて説明する。
採光装置2は、図1に示すように、採光ユニット5と、装着部6と、を備える。採光ユニット5は、採光シート7と、採光シート7を支持するフレーム8(支持部材)と、を備える。採光ユニット5は、装着部6により窓枠101の下面から吊り下げられた状態で設置されている。図1において、符号102は窓ガラス、符号103は窓サッシである。天井構造体3は、天井104の下面104aに設置されている。
図2(A)に示すように、採光シート7は、基材10と、複数の採光部11と、空隙部12と、を備える。基材10は、光透過性を有する材料で構成されている。複数の採光部11は、光透過性を有する材料で構成され、基材10の第1面10aに設けられている。空隙部12は、複数の採光部11の間に設けられている。
基材10は、熱可塑性ポリマーや熱硬化性樹脂、光重合性樹脂等の光透過性樹脂から構成されている。光透過性樹脂としては、アクリル系ポリマー、オレフィン系ポリマー、ビニル系ポリマー、セルロース系ポリマー、アミド系ポリマー、フッ素系ポリマー、ウレタン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、イミド系ポリマー等からなるものを用いることができる。その中でも、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリイミド(PI)等を好適に用いることができる。基材10の全光線透過率は、JIS K7361−1の規定で90%以上が好ましい。これにより、十分な透明性を得ることができる。
採光部11は、例えば、アクリル樹脂やエポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の光透過性および感光性を有する有機材料で構成されている。これらの有機材料に、重合開始剤、カップリング剤、モノマー、有機溶媒等を混合したものが用いられる。重合開始剤は、安定剤、禁止剤、可塑剤、蛍光増白剤、離型剤、連鎖移動剤、他の光重合性単量体等のように、各種の添加成分を含んでいてもよい。その他、特許第4129991号公報に記載の材料を用いることができる。採光部11の全光線透過率は、JIS K7361−1の規定で90%以上が好ましい。これにより、十分な透明性が得られる。
複数の採光部11は、採光装置2を室内に設置した状態において、水平方向(Y軸方向)に延在し、かつ、鉛直方向(Z軸方向)に並んで設けられている。採光部11は、断面形状が多角形状のプリズム体で構成されている。図2(B)に示すように、採光部11は、例えば長手方向に直交する断面形状において6つの頂部を有し、頂角の全てが180°未満の六角形である。採光部11の各面11A〜11Fのうち、頂部q3を通る第1面11Aに垂直な平面Fよりも下方に位置する第4面11D、第5面11E、第6面11Fが、第2面11B、第3面11Cから入射した光を反射する反射面として機能する。
隣り合う採光部11の間の空間である空隙部12には空気が存在しているため、採光部11の表面は、採光部11を構成する樹脂材料と空気との界面となる。空隙部12は、空気以外の他の低屈折率材料で充填してもよい。しかしながら、採光部11と空隙部12との界面の屈折率差は、空隙部12にいかなる低屈折率材料が存在する場合よりも空気が存在する場合に最大となる。
基材10の屈折率と採光部11の屈折率とは略同等であることが望ましい。その理由は、例えば、基材10の屈折率と採光部11の屈折率とが大きく異なる場合、光が採光部11から基材10に入射したときに、採光部11と基材10との界面で不要な光の屈折や反射が生じることがある。この場合、所望の採光特性が得られない、輝度が低下する、などの不具合が生じる虞があるからである。
採光シート7の製造方法としては、例えば、フォトリソグラフィー技術を用いて基材10の上に複数の採光部11を形成することができる。もしくは、フォトリソグラフィー技術を用いる方法以外にも、溶融押し出し法や型押し出し法、インプリント法などの方法により、採光シート7を製造することができる。溶融押し出し法や型押し出し法などの方法では、基材10と複数の採光部11とは同一の樹脂によって一体に形成される。
フレーム8は、例えばアルミニウム製の枠体で構成されている。図1に示すように、フレーム8は、採光シート7の周囲を取り囲み、採光シート7を平坦な状態で保持する。フレーム8の内側に形成された溝部8aに採光シート7の周縁部が挿入されることにより、採光シート7はフレーム8に収容される。フレーム8の開口部8bは、採光シート7の平面視における面積よりも小さい開口面積で形成されている。これにより、採光シート7は、採光シート7の周縁部の全体がフレーム8の溝部8aに挿入された状態で確実に保持される。
採光装置2に入射する光の大部分は太陽から直接入射する光である。そのため、図3に示すように、光は、主に採光シート7の斜め上方から入射する。図1に示す窓ガラス102を通して採光装置2に入射した光Lは、採光シート7の採光部11に入射角θinで入射した後、屈折および反射して、斜め上方に向けて射出角θoutで射出する。具体的に、採光シート7に入射した光は、例えば採光部11の第3面11Cにおいて屈折して第5面11Eに向かって進み、第5面11Eで反射して第1面11A側から室内へ射出され、図1に示す天井104へ向かって進む。
これにより、窓ガラス102を通して室内に入射した光Lのうち、室内に居る人に眩しさを感じさせる光、いわゆるグレアの発生を抑えつつ、天井104に向かう光の輝度を相対的に高めることができる。すなわち、採光装置2の使用により、窓を通して室内に入射した光Lを天井104に向けて効率良く照射することができる。
ところが、従来、この種の採光装置を用いる場合に以下の問題が生じていた。
一般に、オフィスの天井材には、化粧石膏ボード、岩綿吸音板などが広く使われている。これらの天井材の光学的特性は、反射率が例えば70%程度と高く、特に拡散反射性が極めて強い。そのため、図7に示すように、採光装置106によって室内に取り入れた自然光は、天井材107で反射し、拡散光Lsとして執務者の作業面を照射する。オフィスの望ましい光環境としては、室内の照度分布のばらつきが大き過ぎないという点が望まれる。
ところが、採光装置を用いた場合、採光装置の光学特性によって大きな照度ばらつきが生じやすい。自然光が床方向に導光されて執務者の目に入るグレアを抑制するため、光は採光装置から比較的大きい射出角θoutで射出される。その結果、窓際が高い照度になりやすく、例えば数千lx超となることがあった。自然光の照度は雲などの影響で随時変動するため、このような空間で照度低下を人工照明で完全に補償しようとすると、数千lxの最大出力を持つ人工照明が必要となる。このような高出力の人工照明は、オフィスの設備コストを高騰させる要因となる。また、高照度光の下ではディスプレイに映り込む光の輝度が高くなり、作業に適さない環境となる虞がある。そこで、本実施形態の採光システムでは、従来の天井材に代えて、新たな天井構造体が用いられている。
図4は、天井構造体3の第1の例を示す斜視図である。
以下の説明において、オフィスの平面形状を長方形としたとき、窓面に垂直な方向を部屋の奥行き方向と称し、窓面に平行かつ床面に平行な方向を部屋の幅方向と称する。
図4に示すように、天井構造体3Aは、複数のシリンドリカルレンズ部14が規則的に配列されたレンチキュラーレンズ構造体15で構成されている。複数のシリンドリカルレンズ部14は、個々のシリンドリカルレンズ部14が部屋の奥行き方向(X軸方向)に延びる向きに配置され、部屋の幅方向(Y軸方向)に互いに平行に配列されている。天井構造体3Aは、レンチキュラーレンズ構造体15の平面15b側が天井104の下面104aに接触した状態で、天井104に固定されている。
レンチキュラーレンズ構造体15は、アルミニウムなどの金属板に押出加工を施して作製されたものでもよいし、樹脂製の基材表面にアルミニウム、銀などの金属を蒸着して形成された反射膜を有するものでもよい。
シリンドリカルレンズ部14の凸面14aは、部屋の奥行き方向に平行な鉛直面内では曲率を有しておらず、部屋の幅方向に平行な鉛直面内で曲率を有している。したがって、シリンドリカルレンズ部14は、部屋の幅方向の拡散性が部屋の奥行き方向の拡散性よりも強い。逆に言えば、シリンドリカルレンズ部14は、部屋の奥行き方向の拡散性が部屋の幅方向の拡散性よりも弱い。このように、天井構造体3Aは、光の拡散性に異方性を有している。
図5は、天井構造体3の第2の例を示す斜視図である。
図5に示すように、天井構造体3Bは、基材17の第1面17aに、略一方向に延在する複数の凸部18を備えたスジ状の微細構造を有する。天井構造体3Bは、複数の凸部18が部屋の奥行き方向に略平行に並んだ構造、いわゆる疑似ストライプ構造を有する。このように、本実施形態の採光システム1に、部屋の幅方向に強い拡散性を有し、これに直交する部屋の奥行き方向に弱い拡散性を有する疑似ストライプ構造の天井構造体3Bを用いることができる。
図6は、本実施形態の採光システム1の作用を説明するための図である。
採光装置によって窓に近い天井部分が高い照度となっている場合、上述したように、天井材の拡散反射性が強いと、光の多くが下方に進み、高照度領域の直下の作業面の照度が高くなる。これに対し、本実施形態の場合、図6に示すように、部屋の奥行き方向については、光が天井面に対して角度θ1をなす方向から入射した場合、天井面に対して角度θ1と等しい角度θ2で部屋の奥側へ向けて反射される。これにより、天井構造体3は、光を部屋の奥側に導くとともに、天井構造体3の直下へ向かう光の照度を低下させる。その結果、室内の照度は、天井構造体3がない場合と比べて平均化される。
一方で、天井材の正反射性が強くなると、執務者が天井を見上げたときに、一部の天井の輝度が非常に高くなり、グレアとなることが懸念される。その点、本実施形態の天井構造体3は、窓面と垂直な方向(部屋の奥行き方向)に比べて窓面と平行な方向(部屋の幅方向)に強い拡散性を有している。これにより、窓から進入する光が部屋の幅方向に拡散するため、グレアの発生を抑えることができる。
本実施形態の採光システム1によれば、窓の近傍のみが高い照度となる状態が解消され、部屋の全体にわたって照度のムラが少なく、適度な照度が得られる。その結果、例えばコンピューターによる作業を行う場合にもディスプレイ上に輝度の高い光が映り込み、作業効率を低下させる等の問題を改善することができる。また、高出力の人工照明を備える必要がなく、オフィスの設備コストを節減することができる。このようにして、快適な光環境を実現することができる。
本実施形態では、部屋の幅方向に強い拡散性を有し、部屋の奥行き方向に弱い拡散性を有する天井構造体3を備えた採光システム1の例を挙げたが、方向に依らずに入射角と反射角とが等しい反射を示す天井構造体を備えた採光システムを用いることもできる。すなわち、天井構造体は、光の拡散性に異方性を有していてもよいし、グレアの程度が特に問題とならない場合には正反射性を有していてもよい。具体的に、天井構造体は、図4、図5で示したレンチキュラーレンズ構造体、略一方向に延びる複数の凸部などの構造体を有しておらず、平坦な反射面を有していてもよい。
本発明者らは、本実施形態の採光システムの効果を実証するため、光線追跡シミュレーションを行い、室内の照度分布を評価した。
以下、その結果について説明する。
本発明者らは、光線追跡シミュレーションにおいて、特定の配光分布を有する採光装置を設定し、その採光装置と以下に述べる3種類の天井構造体とを組合せ、従来例の採光システム、実施例1の採光システム、および実施例2の採光システムを設定した。
従来例、実施例1、および実施例2の採光システムの天井構造体の反射率は、全て70%とした。
従来例の採光システムには、完全拡散反射の天井構造体を用いた。
実施例1の採光システムには、正反射性を有する天井構造体を用いた。正反射した光の輝度分布は正規分布に従い、標準偏差は5°とした。
実施例2の採光システムには、異方性拡散性を有する天井構造体を用いた。具体的な構成としては、表面に反射膜が形成された、半径が50μmの半円柱状のシリンドリカルレンズ部が部屋の奥行き方向に延伸し、部屋の幅方向に複数配列された天井構造体を用いた。この天井構造体では、部屋の奥行き方向に拡散性がなく、部屋の幅方向には強い拡散性を示す。
シミュレーション結果を、図8および図9(A)〜(C)に示す。
図8は、各採光システムにおける部屋の奥行き方向の距離と照度との関係を示すグラフである。グラフの横軸は、窓を基準とした部屋の奥行き方向の距離(m)であり、グラフの縦軸は、照度(lx)である。従来例の採光システムのグラフを破線で示し、実施例1の採光システムのグラフを1点鎖線で示し、実施例2の採光システムのグラフを実線で示す。
従来例の採光システムの場合、距離が0.5mのときの照度が約10000lxを示し、距離が1mのときでも照度が約6000lxを示し、窓の近傍での照度が非常に高くなった。これに対し、実施例1,実施例2の採光システムの場合、距離が1〜4m付近での照度が3000〜5000lxとなり、従来例に比べて照度が下がり、照度分布の勾配がなだらかになることが確認された。
図9(A)〜(C)は、各採光システムにおける室内の照度分布を示すコンター図である。
図の横軸は部屋の幅方向の距離W(mm)であり、図の縦軸は部屋の奥行き方向の距離L(mm)である。すなわち、コンター図は、部屋を真上から見たイメージである。
符号Aは800lx以上の照度を示す領域であり、符号Bは300lx以上で800lx未満の照度を示す領域であり、符号Cは150lx以上で300lx未満の照度を示す領域であり、符号Dは150lx未満の照度を示す領域である。
図9(A)〜(C)に示すように、従来例、実施例1、実施例2の順に800lx以上の照度を示す領域Aが部屋の奥側に延びるとともに、照度が全体的に平均化されていることが判った。
なお、天井構造体が設置される領域は、必ずしも連続している必要はない。
図10は、天井構造体の設置形態の変形例を示す平面図である。図11は、図10の断面図である。
図10および図11に示すように、複数の天井構造体21は、等間隔で天井に設けられている。この場合、複数の天井構造体21は、個々の天井構造体21の長手方向が窓面102aおよび採光装置2の表面に平行な方向に延びる向きで、窓面102aに垂直な方向に互いに間隔をおいて設けられている。さらに、天井構造体21は、窓面102aに平行な方向についても複数に分割されていてもよい。また、複数の天井構造体21を等間隔で配置することに代えて、必要な効果が得られさえすれば、複数の天井構造体21の配置密度を場所によって変化させてもよい。このような設置形態の変形例は、第1実施形態の天井構造体に限らず、以下の実施形態の天井構造体にも適用が可能である。
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について、図12〜図18を用いて説明する。
本実施形態の採光システムの基本構成は第1実施形態と同様であり、天井構造体の構成が第1実施形態と異なる。
図12は、第2実施形態の採光システムの断面図である。
図12〜図18において、第1実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
窓近傍の天井部分の照度を低下させる手段として、第1実施形態の採光システムは、天井への入射光を部屋の奥行き方向に正反射させる天井構造体を備えていた。これに対して、図12に示すように、第2実施形態の採光システム24は、採光装置2から導光された光を概ね採光装置2側に反射させる特性の照度低下領域25を有する天井構造体26を備える。天井構造体26以外の構成は、第1実施形態と同様である。
一般に、特定の入射方向から入射した光を厳密に入射方向に戻るように反射させる特性のことを再帰反射性と称するが、特定の入射方向から入射した光を概ね入射方向に戻るように反射させる特性のことを、以下の説明では、弱再帰反射性と称する。すなわち、本実施形態の採光システム24は、弱再帰反射性を有する天井構造体26を備える。ただし、天井構造体26は、必ずしも弱再帰反射性を有していなくてもよく、再帰反射性を有していてもよい。
以下、弱再帰反射性を有する天井構造体26の3つの例を挙げる。
図13は、第1例の天井構造体26Aを示す断面図である。図14は、第1例の天井構造体26Aを示す斜視図である。
図13に示すように、第1例の天井構造体26Aは、複数のコーナーキューブ28が設けられたプリズム層29と、封止材30と、空気層31と、を備えている。
図14に示すように、コーナーキューブ28は、3枚の反射面を互いに直角に組み合わせ、3つの反射面が立方体の頂点を構成する形態の反射体である。コーナーキューブ28に入射した光は、3つの反射面で3回反射し、入射方向に戻る。もしくは、天井構造体は、コーナーキューブの一部を切り取った形状の反射部材を有していてもよい。再帰反射性を弱めるためには、3枚の反射面の角度を直角からずらす、反射面を荒らして微小な凹凸を形成する、反射面に僅かな散乱性を付与する、などの手法を用いればよい。
図15は、第2例の天井構造体26Bを示す断面図である。図16は、第2例の天井構造体26Bを拡大視した断面図である。
図15に示すように、第2例の天井構造体26Bは、基材33と、ビーズスクリーン34を含む反射部材35と、を備える。反射部材35は、反射膜36と複数のガラスビーズ37とからなるビーズスクリーン34を備えている。反射膜36は、ガラスビーズ37の表面の一部に沿って設けられている。
図16に示すように、ガラスビーズ37に入射した光は、入射時に屈折し、球面上の一点で焦点を結び、ガラスビーズ37の表面の反射膜36により反射する。光は、ガラスビーズ37を射出する際に再度屈曲し、入射方向に戻る。再帰反射性を弱めるためには、反射膜36の表面を荒らして微小な凹凸を形成する、反射膜36に僅かな散乱性を付与する、などの手法を用いればよい。
図17は、第3例の天井構造体26Cを示す斜視図である。図18(A)は、第3例の天井構造体26Cを部屋の奥行き方向に平行な鉛直平面で切断した断面図であり、図18(B)は、第3例の天井構造体26Cを部屋の幅方向に平行な鉛直平面で切断した断面図である。
図17および図18(A)、(B)に示すように、第3例の天井構造体26Cは、互いに平行に並んだ長尺の複数の反射部材39を有する。部屋の奥行き方向に平行な鉛直面で切断した反射部材39の断面は、二等辺三角形である。すなわち、反射部材39の長手方向は、部屋の幅方向(窓面に平行な方向)を向いている。反射部材39の断面形状をなす二等辺三角形の頂角は、90°である。反射部材39は、2つの反射面39a,39bを有する。
図18(A)に示すように、反射部材39に対して部屋の奥行き方向に平行な鉛直面内で入射した光L1は、部屋の幅方向から見ると、2つの反射面39a,39bで反射し、入射方向に戻る。一方、図18(B)に示すように、反射部材39に対して部屋の奥行き方向に平行でない鉛直面内、例えば部屋の奥行き方向に垂直な鉛直面内(部屋の幅方向に平行な鉛直面内)で入射した光L1は、部屋の奥行き方向から見ると、正反射する。再帰反射性を弱めるためには、反射部材39の断面形状をなす二等辺三角形の頂角を90°±20°の範囲内でずらす、反射面39a,39bを荒らして微小な凹凸を形成する、反射面39a,39bに僅かな散乱性を付与する、などの手法を用いればよい。
天井構造体26の再帰反射性が非常に強い場合、天井構造体26に入射した自然光は、通ってきた光路を逆行し、採光装置2、窓ガラス102を経て太陽の方向へ戻っていく。これにより、天井構造体26の直下の作業面の照度を低下させることができる。また、天井構造体26が弱再帰反射性を有する場合、図12に示すように、部屋の奥行き方向の断面で見ると、天井構造体26に入射した自然光は、完全には窓に戻らず、一部の光は窓近傍のサッシや壁に戻る。このとき、執務者が窓側を見ると、窓近傍の背景の輝度が向上していることによりグレアが緩和される効果が生じる。グレアの強弱は、背景の輝度に影響を受けるからである。
本実施形態の採光システム24においても、窓近傍のみが高い照度となる状態が解消されることで快適な光環境を実現できる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。さらに、天井構造体26が弱再帰反射性を有する場合、グレアを緩和することができる。
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態について、図19を用いて説明する。
本実施形態の採光システムの基本構成は第1実施形態と同様であり、天井構造体の構成が第1実施形態と異なる。
図19は、第3実施形態の採光システムの断面図である。
図19において、第1実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
窓近傍の天井部分の照度を低下させる手段として、第1実施形態の採光システムは、天井への入射光を部屋の奥行き方向に正反射させる天井構造体を備えていた。第2実施形態の採光システムは、天井への入射光を概ね窓側に反射させる天井構造体を備えていた。これに対して、第3実施形態および第4実施形態の採光システムは、天井への入射光を吸収する天井構造体を備えている。
図19に示すように、第3実施形態の採光システム41は、光触媒45を含む照度低下領域42を有する天井構造体43を備える。天井構造体43は部屋の奥側まで連続して設けられているが、部屋の奥側は照度低下領域42となっていない。すなわち、部屋の奥側の天井構造体43は、光触媒45が含まれない非照度低下領域44となっている。具体的には、照度低下領域42は、光触媒45を含む溶液が天井構造体43の表面に塗布されることにより形成される。
光触媒45は、光が照射された際にその光を吸収し、酸化還元作用を生じる。本実施形態においては、光触媒45の酸化作用を利用して空気中の有害物質、汚染物質などを分解することにより、空気清浄機能を有する天井構造体43を実現する。部屋全体にわたって空気清浄効果を得るために、室内に矢印Fで示すように、照度低下領域42の直下から部屋の奥側に向かう空気の対流があることが望ましい。
天井構造体43以外の構成は、第1実施形態と同様である。
光触媒45は、例えば酸化チタンのように、紫外光で励起される紫外光応答型光触媒であってもよいし、可視光で励起される可視光応答型光触媒であってもよい。ただし、紫外光は窓ガラス102や採光装置2に付帯する各種フィルムにより吸収され、天井構造体43に照射されない可能性が高い。その観点では、可視光応答型光触媒を用いることがより望ましい。可視光応答型光触媒としては、窒素をドープした酸化チタン、貴金属が担持された酸化タングステンなどが挙げられる。
一般の可視光応答型光触媒は、可視光波長域の全てが吸収波長となるわけではなく、500nm以下の波長域が吸収波長となるものが多い。そのため、昼光を採り込んだ場合、光触媒を含有する天井からの反射光は黄色味を帯び、色温度が低下する。反射光の色味によっては、室内の執務者が違和感を持つおそれがある。反射光が黄色味を帯びる問題が許容できない場合には、可視光応答型光触媒が吸収しない可視光領域が吸収領域である吸収材、換言すると、黄色光を吸収する吸収材を適切な密度で配置すればよい。すなわち、天井構造体43は、射出光の色を補償する色補償用の光吸収材をさらに備えていてもよい。
光触媒45を窓からどの位置まで配置するかは、採光システム41の設計者が個別に検討する必要がある。光触媒45を含む照度低下領域42が小さすぎると、部屋全体の空気清浄効果が不足するおそれがある。逆に、光触媒45を含む照度低下領域42が大きすぎると、本来の採光性能が大きく低下する。
本実施形態の採光システム41においても、窓近傍のみが高い照度となる状態が解消されることで快適な光環境を実現できる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。さらに、室内の空気を清浄することができる。
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態について、図20を用いて説明する。
本実施形態の採光システムの基本構成は第1実施形態と同様であり、天井構造体の構成が第1実施形態と異なる。
図20は、第4実施形態の採光システムの断面図である。
図20において、第1実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
図20に示すように、第4実施形態の採光システム48は、太陽電池49を含む照度低下領域50を有する天井構造体51を備える。天井構造体51は部屋の奥側まで連続して設けられているが、部屋の奥側は照度低下領域50となっていない。すなわち、部屋の奥側の天井構造体51は、太陽電池49を含まない非照度低下領域52となっている。採光システム48は、太陽電池49、蓄電池53およびパワーコンディショナー54を含む太陽光発電装置55を備える。太陽電池49には、蓄電池53およびパワーコンディショナー54が接続されている。また、人工照明装置56は、天井構造体51の下面に設けられている。パワーコンディショナー53は、制御部57、インバーター(図示略)、保護装置(図示略)などを備える。
太陽電池49は、光が照射された際にその光を吸収し、光エネルギーを電力に変換する。太陽電池49の形態、方式などは特に限定されない。蓄電池53は、太陽電池49により得られた電力を蓄える。制御部57は、人工照明装置56に接続され、採光の状況に応じて人工照明装置56を制御することにより室内の照度を制御する。
採光装置2を含むその他の構成は、第1実施形態と同様である。
本実施形態の採光システム48においても、窓近傍のみが高い照度となる状態が解消されることで快適な光環境を実現できる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
さらに本実施形態の場合、窓近傍の天井構造体51に入射した光を単に吸収するだけでなく、入射光を利用して発電を行うことができる。数万lxの照度がある屋外に比べて数千lx下での発電であるため、大きな出力は期待できない。しかしながら、太陽電池49と蓄電池53とを組み合わせることにより、例えば停電時などに人工照明装置56を自立運転するなどの利用が可能となり、災害に対応した採光システムを実現できる。その他、例えば天気が晴れ時々曇りの日のように、照度変動が大きい日には、人工照明装置56の補助電力源とすることができる。
[第5実施形態]
以下、本発明の第5実施形態について、図21を用いて説明する。
本実施形態の採光システムの基本構成は第1実施形態と同様であり、天井構造体の構成が第1実施形態と異なる。
図21は、第5実施形態の採光システムの断面図である。
図21において、第1実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
図21に示すように、第5実施形態の採光システム60は、ルミネセンス材料を含む照度低下領域61を有する天井構造体62を備える。天井構造体62は部屋の奥側まで連続して設けられているが、部屋の奥側は照度低下領域61となっていない。部屋の奥側の天井構造体62は、ルミネセンス材料が含まれない非照度低下領域63となっている。
ルミネセンス材料は、光が照射された際にその光によって励起され、入射光と異なる波長域の光を発する作用を生じる。ルミネセンス材料として、例えば蛍光体を用いることができる。ルミネセンス材料は蛍光もしくは燐光を射出するが、これらの光の輝度は天井構造体62に照射される太陽光の輝度に比べて充分に低い。したがって、ルミネセンス材料から光が発せられたとしても、天井構造体62の直下の照度を低下させることができる。
天井構造体62以外の構成は、第1実施形態と同様である。
本実施形態の採光システム60においても、窓近傍のみが高い照度となる状態が解消されることで快適な光環境を実現できる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
さらに、ルミネセンス材料として蛍光体を用いれば、蛍光体の種類を適宜選択することで天井構造体62から射出される光を所望の色に着色することができる。これにより、室内空間のデザイン性を高めることができる。また、ルミネセンス材料として長時間残光タイプの蓄光体を用いれば、災害時の照明として利用できる、日没後の一定時間、室内を明るくすることができる、等の効果が得られる。蓄光体は青色域〜緑色域の光を発することが多い。そのため、白色光を得るためには、人工照明装置の色温度を調整して色を調整することが望ましい。
[採光装置の変形例]
以上、第1〜第5実施形態の採光システムについて説明したが、採光装置の構成は上記実施形態で例示したものに限られない。
例えば、以下の第1〜第3変形例の採光装置を用いることができる。
図22に示すように、第1変形例の採光装置66は、第1実施形態の採光装置2と、ブラインド67と、を備える。ブラインド67は、採光装置2の下方に設置されている。これにより、採光装置2の持つ採光機能に、ブラインド67の持つ遮光機能が付加されている。
図23に示すように、第2変形例の採光装置69は、ロールカーテン70の一部に採光シート7が組み合わされている。これにより、採光シート7の持つ採光機能に、ロールカーテン70の持つ遮光機能が付加されている。また、ロールカーテン70および採光シート7の全体を巻き取ることができる。
図24(A)、(B)に示すように、第3変形例の採光装置72は、ブラインドを構成する複数のスラットのうち、一部のスラットが採光スラット73に置き換えられている。採光スラット73は、第1実施形態の採光シートと同様の複数の採光部を備え、他の遮光スラット74と同様の形状および寸法に加工されたものである。図24(A)に示すように、複数のスラットを閉じた状態とすることもできるし、図24(B)に示すように、複数のスラットを開いた状態とすることもできる。
[照明調光システム]
図25は、採光装置および照明調光システムを備えた部屋モデル2000であり、図26のA−A’線に沿う断面図である。
図26は、部屋モデル2000の天井を示す平面図である。
図25および図26に示すように、部屋2003の天井2003aのうち、窓2002に近い領域には、上記の実施形態で例示したような照度低下領域2003Aが設けられている。照度低下領域2003Aは、窓2002に設置された採光装置2010からの外光を室内の奥側に導入することを促進する。照度低下領域2003Aは、窓際の天井2003aに設けられている。具体的には、天井2003aの所定の領域E(窓2002から約3mの領域)に設けられている。
照度低下領域2003Aは、先に述べたように、採光装置2010(上述したいずれかの実施形態の採光装置)が設置された窓2002を介して室内に導入された外光を室内の奥の方まで効率良く導く機能を有する。採光装置2010から室内の天井2003aへ向けて導入された外光は、照度低下領域2003Aで反射され、向きを変えて室内の奥に置かれた机2005の机上面2005aを照らすことになり、当該机上面2005aを明るくする効果を発揮する。
照度低下領域2003Aは、異方性拡散性を有していてもよいし、正反射性を有していてもよい。室内の奥に置かれた机2005の机上面2005aを明るくする効果と、室内に居る人とって不快なグレアを抑える効果と、を両立するために、両者の特性が適度にミックスされたものであってもよい。
採光装置2010によって室内に導入された光の多くは、窓2002の付近の天井に向かうが、窓2002の近傍は光量が十分である場合が多い。そのため、上記のような照度低下領域2003Aを併用することによって、窓付近の天井(領域E)に入射した光を、窓際に比べて光量の少ない室内の奥の方へ振り分けることができる。
照度低下領域2003Aは、例えば、アルミニウムのような金属板に数十μm程度の凹凸によるエンボス加工を施したり、同様の凹凸を形成した樹脂基板の表面にアルミニウムのような金属薄膜を蒸着したりして作成することができる。あるいは、エンボス加工によって形成される凹凸がより大きな周期の曲面で形成されていてもよい。
さらに、照度低下領域2003Aに形成するエンボス形状を適宜変えることによって、光の配光特性や室内における光の分布を制御することができる。例えば、室内の奥側に延在するストライプ状にエンボス加工を施した場合は、照度低下領域2003Aで反射した光が、窓2002の左右方向(凹凸の長手方向に交差する方向)に拡がる。部屋2003の窓2002の大きさや向きが限られているような場合は、このような性質を利用して、照度低下領域2003Aにより光を水平方向に拡散させるとともに、室内の奥側に向けて反射させることができる。
採光装置2010は、部屋2003の照明調光システムの一部として用いられる。照明調光システムは、例えば、採光装置2010と、複数の人工照明装置2007と、窓に設置された日射調整装置2008と、これらの制御系と、天井2003aに設置された照度低下領域2003Aと、を含む部屋全体の構成部材から構成される。
部屋2003の窓2002には、上部側に採光装置2010が設置され、下部側に日射調整装置2008が設置されている。ここでは、日射調整装置2008として、ブラインドが設置されているが、これに限らない。
部屋2003には、複数の人工照明装置2007が、窓2002の幅方向(Y方向)および室内の奥行き方向(X方向)に格子状に配置されている。これら複数の人工照明装置2007は、採光装置2010と併せて部屋2003の全体の照明システムを構成している。
図25および図26に示すように、例えば、窓2002の幅方向(Y方向)の長さLが18m、部屋2003の奥行方向(X方向)の長さLが9mのオフィスの天井2003aを示す。ここでは、人工照明装置2007は、天井2003aの幅方向(Y方向)および奥行方向(X方向)に、それぞれ1.8mの間隔Pをおいて格子状に配置されている。より具体的には、50個の人工照明装置2007が10行(Y方向)×5列(X方向)に配列されている。
人工照明装置2007は、室内照明器具2007aと、明るさ検出部2007bと、制御部2007cと、を備え、室内照明器具2007aに明るさ検出部2007bおよび制御部2007cが一体化されて構成されている。
人工照明装置2007は、室内照明器具2007aおよび明るさ検出部2007bをそれぞれ複数ずつ備えていてもよい。ただし、明るさ検出部2007bは、各室内照明器具2007aに対して1個ずつ設けられる。明るさ検出部2007bは、室内照明器具2007aが照明する被照射面の反射光を受光して、被照射面の照度を検出する。ここでは、明るさ検出部200bにより、室内に置かれた机2005の机上面2005aの照度を検出する。
各人工照明装置2007に1個ずつ設けられた制御部2007cは、互いに接続されている。各人工照明装置2007は、互いに接続された制御部2007cにより、各々の明るさ検出部2007bが検出する机上面2005aの照度が一定の目標照度L0(例えば、平均照度:750lx)になるように、それぞれの室内照明器具2007aのLEDランプの光出力を調整するフィードバック制御を行っている。
図27は、採光装置によって室内に採光された光(自然光)の照度と、室内照明装置による照度(照明調光システム)との関係を示すグラフである。図27において、縦軸は机上面の照度(lx)を示し、横軸は窓からの距離(m)を示す。また、図中の破線は、室内の目標照度を示す。(●:採光装置による照度、△:室内照明装置による照度、◇:合計照度)
図27に示すように、採光装置2010により採光された光に起因する机上面照度は、窓近傍ほど明るく、窓から遠くなるに従ってその効果は小さくなる。採光装置2010を適用した部屋では、昼間において窓からの自然採光によりこのような部屋奥方向への照度分布が生じる。そこで、採光装置2010は、室内の照度分布を補償する室内照明装置2007と併用して用いられる。室内天井に設置された室内照明装置2007は、それぞれの装置の下の平均照度を明るさ検出部2007bによって検出し、部屋全体の机上面照度が一定の目標照度L0になるように調光制御されて点灯する。したがって、窓近傍に設置されているS1列、S2列はほとんど点灯せず、S3列、S4列、S5列と部屋奥方向に向かうに従って出力を上げながら点灯される。結果として、部屋の机上面は自然採光による照度と室内照明装置2007による照明の合計で照らされ、部屋全体にわたって執務をする上で十分とされる机上面照度である750lx(「JIS Z9110 照明総則」の執務室における推奨維持照度)を実現することができる。
以上述べたように、採光装置2010と照明調光システム(室内照明装置2007)とを併用することにより、室内の奥の方まで光を届けることが可能となり、室内の明るさをさらに向上させることができるとともに、部屋全体にわたって執務をする上で十分とされる机上面照度を確保することができる。したがって、季節や天気による影響を受けずに、より一層安定した明るい光環境が得られる。
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば上記実施形態では、天井構造体として、正反射性を有する天井構造体、異方性拡散性を有する天井構造体、入射光を反射させて概ね採光装置側に戻す特性を有する天井構造体、入射光を吸収して特定の作用を生じる天井構造体を例示した。この種の天井構造体に代えて、特定の作用を生じることなく、入射光を単に吸収するのみの天井構造体を用いてもよい。具体的には、少なくとも窓に近い側の領域に例えばグレー等の色を呈する塗装を施した天井構造体を用いてもよい。また、天井構造体のうち、部屋の奥側に位置する非照度低下領域は、入射光を拡散させる光拡散特性を有していてもよい。
上記実施形態では、1枚の窓ガラスの室内側に採光装置を設置する構成の例を挙げたが、例えば窓ガラスを複層ガラスで構成し、複層ガラスの内部空間に採光装置を収容してもよい。その他、採光システムを構成する各構成要素の数、配置、形状、寸法、材料などに関する具体的な構成は、適宜変更することができる。
本発明は、太陽光などの外光を室内に採り入れるための採光システムに利用が可能である。
1,24,41,48,60…採光システム、2,66,69,72…採光装置、3,3A,3B,21,26,26A,26B,26C,43,51,62…天井構造体、4,25,42,50,61…照度低下領域、28…コーナーキューブ、34…ビーズスクリーン、35,39…反射部材、45…光触媒、49…太陽電池、56…人工照明装置、57…制御部。

Claims (19)

  1. 採光装置と、
    前記採光装置から導光された光を利用して室内を照明する天井構造体と、を備え、
    前記天井構造体は、前記採光装置の近傍に、直下へ向かう光の照度を低下させる照度低下領域を有することを特徴とする採光システム。
  2. 前記採光装置から前記室内の奥側へ向かう方向へ、複数の前記照度低下領域が互いに間隔をおいて設けられていることを特徴とする請求項1に記載の採光システム。
  3. 前記照度低下領域は、前記採光装置から導光された前記光を、前記採光装置から遠い前記室内の奥側へ正反射させる特性を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の採光システム。
  4. 前記照度低下領域は、前記採光装置から導光された前記光の部屋の幅方向への拡散反射性が、前記部屋の奥行き方向への拡散反射性よりも強い特性を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の採光システム。
  5. 前記照度低下領域は、金属材料もしくは金属膜が表面に設けられた樹脂材料からなる凸部が概ね前記部屋の奥行き方向に延伸された構成を有することを特徴とする請求項4に記載の採光システム。
  6. 前記照度低下領域は、前記採光装置から導光された前記光を反射して概ね前記採光装置側に戻す特性を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の採光システム。
  7. 前記照度低下領域は、ビーズスクリーンを含む反射部材を有することを特徴とする請求項6に記載の採光システム。
  8. 前記照度低下領域は、コーナーキューブもしくは前記コーナーキューブの一部を切り取った形状の反射部材を有することを特徴とする請求項6に記載の採光システム。
  9. 前記照度低下領域は、三角柱状の反射部材を有し、前記三角柱の延伸方向が部屋の幅方向であることを特徴とする請求項6に記載の採光システム。
  10. 前記反射部材の頂角が90°±20°の範囲内であることを特徴とする請求項9に記載の採光システム。
  11. 前記反射部材の表面が微小な凹凸を有することを特徴とする請求項6から請求項10までのいずれか一項に記載の採光システム。
  12. 前記照度低下領域は、光触媒を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の採光システム。
  13. 前記光触媒は、可視光に応答する特性を有することを特徴とする請求項12に記載の採光システム。
  14. 前記照度低下領域は、前記光の色を補償する色補償用の光吸収材をさらに備えたことを特徴とする請求項13に記載の採光システム。
  15. 前記照度低下領域は、太陽電池を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の採光システム。
  16. 前記照度低下領域は、ルミネセンス材料を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の採光システム。
  17. 前記天井構造体は、非照度低下領域をさらに有しており、
    前記非照度低下領域は、前記光を拡散させる光拡散特性を有することを特徴とする請求項1から請求項16までのいずれか一項に記載の採光システム。
  18. 人工照明装置と、
    前記人工照明装置に接続され、前記室内の照度を制御する制御部と、
    を備えたことを特徴とする請求項1から請求項17までのいずれか一項に記載の採光システム。
  19. 採光装置から導光された光を利用して室内を照明するとともに、前記採光装置の近傍に、直下へ向かう光の照度を低下させる照度低下領域を有することを特徴とする天井構造体。
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