JP2016080770A - 可変式電磁波調整方法及び可変式電磁波調整素子 - Google Patents

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成田 武憲
Takenori Narita
武憲 成田
森下 芳伊
Yoshii Morishita
芳伊 森下
智嗣 杉岡
Tomotsugu Sugioka
智嗣 杉岡
幸男 神谷
Yukio Kamiya
幸男 神谷
森 俊介
Shunsuke Mori
俊介 森
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Abstract

【課題】透過状態におけるヘイズが小さく、角度依存性が小さく、充分なコントラストが得られる可変式電磁波調整方法の提供。
【解決手段】電磁波調整粒子4と分散媒6とを含む懸濁液を含有する電磁波調整層8に交流電圧を印加することにより、電磁波調整層8と直交する方向から電磁波調整層を観察したときに、電磁波調整粒子4の凝集体の密度が0.008個/μm以上0.1個/μm以下となるように制御する制御工程を含む可変式電磁波調整方法。
【選択図】図2

Description

本発明は、可変式電磁波調整方法及び可変式電磁波調整素子に関する。
省エネルギー、プライバシー保護、防眩等の観点から、可視光、近赤外線等の電磁波の透過率(電磁波透過率)又は散乱強度を電気的に制御可能な電磁波調整素子への関心が高まっている。これまで、電磁波調整素子としては、エレクトロクロミック、液晶、粒子懸濁液等を用いたタイプのものがそれぞれ実用化されている。このなかで、エレクトロクロミックを用いたタイプは大面積化が困難であるという課題がある。また、液晶を用いたタイプは光の透過状態と散乱状態とを切り替えるものであり、遮光はできないという課題がある。
それに対して粒子懸濁液を用いたタイプは、電磁波透過率を粒子の分散状態と、配向状態又は整列状態との変化で制御するものであり、大面積化が可能であることから、自動車、列車、航空機、建築物の窓等への適用が進んでいる。粒子懸濁液を用いた電磁波調整方式には2種類ある。第一の方式は電圧の印加により、棒状粒子の長手方向を電場方向に配向させることで電磁波透過率を増大させる方式である。また、第二の方式は電圧の印加により、電気粘性流体と同じ原理によって粒子を電場方向に整列させることで電磁波透過率を増大させる方式である。
棒状粒子の配向を制御する第一の方式として、ヨウ素を含む棒状粒子を用いた方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この方式は、透過状態でのヘイズが小さく、角度依存性も比較的弱い等、視覚的に優れている。一方、遮光時の色として濃青色以外の選択肢がない。そのため、自動車、列車、航空機、建築物の窓等に適用する際、内装又は外装との調和が難しい場合があり、適用範囲が限定されるという課題がある。
それに対して、第二の方式である粒子の整列状態と分散状態とを制御する方式は、粒子の選択肢が広く、色の選択肢が広いと言う点で優れている。この方式に用いる粒子としては、無機微粒子及び有機無機複合粒子のほか、金属酸化物からなる無機顔料等が使用可能である(例えば、特許文献2〜4参照)。これらの粒子は一般に、分散媒として用いられる物質と比較して屈折率が大きい。そのため、光が懸濁液を通り抜ける際に、粒子表面における光の散乱又は回折によるヘイズが発生しやすい。透過抑制時のヘイズはある程度許容されるか、又は逆に好ましい場合もある。一方、透過時のヘイズは視界の妨げとなるため、極力低減する必要がある。特に車両の窓等に適用する際は低ヘイズが要求される。しかし、従来の技術では所望の特性を得るのは困難であった。
一方、電磁波調整素子を調光窓に適用する場合、光が透過する面に対してある角度から見たときの電磁波透過率の角度依存性が重要となる。第二の方式では、粒子が電場方向に整列することで透過状態になることから、角度依存性が強い傾向がある。角度依存性は、プライバシー保護の観点からは、斜め方向からの覗き見防止効果を得るため強いほうが好ましい場合もある。一方、広い視界を得たい場合には、角度依存性は弱いほうが好ましい。調光窓としては、必要に応じて角度依存性を制御できることが望ましい。従来の技術では、角度依存性の制御は困難であった。
特許文献2〜4に示される技術では、ヘイズの低減、角度依存性の制御については充分な検討がなされておらず、自動車、列車、航空機、建材、家電、ディスプレイ等の各種用途で要求されるレベルを達成するのは困難である。また、透過時の電磁波透過率と透過抑制時の電磁波透過率との比であるコントラストが大きい方がいずれの用途においても好ましいが、従来の技術では満足できるレベルではなかった。
特開2002−189123号公報 特開平6−250236号公報 特開2004−054165号公報 特開2008−107740号公報
粒子懸濁液の電気粘性流体挙動を利用した可変式電磁波調整方法は、低コストで、大面積に対応可能であり、粒子の選択肢が広く、色目の調整、近赤外線制御等、幅広い用途に対応可能であるという利点がある。一方、粒子懸濁液の電気粘性流体挙動を利用した可変式電磁波調整方法では、電磁波透過状態におけるヘイズが大きく、角度依存性が強く、角度依存性の制御はできず、コントラストが不充分という課題があった。
本発明の第1の目的は、電気粘性流体挙動を利用した可変式電磁波調整方法において、電磁波透過状態におけるヘイズが小さく、角度依存性が小さく、充分なコントラストが得られる可変式電磁波調整方法及びそれを適用した可変式電磁波調整素子を提供することである。
また、本発明の第2の目的は、電気粘性流体挙動を利用した可変式電磁波調整方法において、電磁波透過状態における角度依存性の制御が可能な可変式電磁波調整方法及びそれを適用した可変式電磁波調整素子を提供することである。
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 電磁波調整粒子と分散媒とを含む懸濁液を含有する電磁波調整層に交流電圧を印加することにより、前記電磁波調整層と直交する方向から前記電磁波調整層を観察したときに、前記電磁波調整粒子の凝集体の密度が0.008個/μm以上0.1個/μm以下となるように制御する制御工程を含む可変式電磁波調整方法。
<2> 電磁波調整粒子と分散媒とを含む懸濁液を含有する電磁波調整層に、第1の周波数から前記第1の周波数よりも周波数の高い第2の周波数にかけて、交流電圧を、周波数を連続的又は段階的に変化させながら印加する印加工程を含む可変式電磁波調整方法。
<3> 電磁波調整粒子と分散媒とを含む懸濁液を含有する電磁波調整層と、
前記電磁波調整層に対して交流電圧を印加する印加手段と、
前記電磁波調整層と直交する方向から前記電磁波調整層を観察したときに、前記電磁波調整粒子の凝集体の密度が0.008個/μm以上0.1個/μm以下となるように前記印加手段により印加される交流電圧を制御する制御手段と、
を備える可変式電磁波調整素子。
<4> 電磁波調整粒子と分散媒とを含む懸濁液を含有する電磁波調整層と、
前記電磁波調整層に対して交流電圧を印加する印加手段と、
前記印加手段により印加される交流電圧の周波数を、第1の周波数から前記第1の周波数よりも周波数の高い第2の周波数にかけて連続的又は段階的に変化させる制御手段と、
を備える可変式電磁波調整素子。
<5> 電磁波調整粒子と分散媒とを含む懸濁液を含有する電磁波調整層に交流電圧を印加することにより、前記電磁波調整層と直交する方向から前記電磁波調整層を観察したときに、前記電磁波調整粒子の凝集体の密度が0.008個/μm以上0.1個/μm以下となるように制御する第1の制御工程と、
前記電磁波調整粒子の凝集体の密度が0.09個/μm以上0.15個/μm以下であって前記第1の制御工程よりも前記電磁波調整粒子の凝集体の密度が高くなるように制御する第2の制御工程と、を有し、
前記第1の制御工程と前記第2の制御工程とが任意に選択される可変式電磁波調整方法。
<6> 電磁波調整粒子と分散媒とを含む懸濁液を含有する電磁波調整層に、第1の周波数から前記第1の周波数よりも周波数の高い第2の周波数にかけて、交流電圧を、周波数を連続的又は段階的に変化させながら印加する第1の印加工程と、
前記電磁波調整層に、前記第2の周波数よりも周波数の高い第3の周波数の交流電圧を印加する第2の印加工程と、を有し、
前記第1の印加工程と前記第2の印加工程とが任意に選択される可変式電磁波調整方法。
<7> 電磁波調整粒子と分散媒とを含む懸濁液を含有する電磁波調整層と、
前記電磁波調整層に対して交流電圧を印加する印加手段と、
前記電磁波調整層と直交する方向から前記電磁波調整層を観察したときに、前記電磁波調整粒子の凝集体の密度が0.008個/μm以上0.1個/μm以下の第1の状態、又は前記電磁波調整粒子の凝集体の密度が0.09個/μm以上0.15個/μm以下であって前記第1の状態よりも高い第2の状態となるように前記印加手段により印加される交流電圧を制御する制御手段と、
を備える可変式電磁波調整素子。
<8> 電磁波調整粒子と分散媒とを含む懸濁液を含有する電磁波調整層と、
前記電磁波調整層に対して交流電圧を印加する印加手段と、
前記印加手段により印加される交流電圧の周波数を、第1の周波数から前記第1の周波数よりも周波数の高い第2の周波数にかけて連続的又は段階的に変化させるか、又は前記第2の周波数よりも周波数の高い第3の周波数にする制御手段と、
を備える可変式電磁波調整素子。
本発明によれば、電磁波透過状態におけるヘイズが小さく、角度依存性が小さく、充分なコントラストが得られる可変式電磁波調整方法及びそれを適用した可変式電磁波調整素子が提供される。
また、本発明によれば、電磁波透過状態における角度依存性の制御が可能な可変式電磁波調整方法及びそれを適用した可変式電磁波調整素子が提供される。
本発明の可変式電磁波調整素子の一実施形態の断面を示す概略構成図である。 電界方向に沿って互いに連なった整列状態(整列状態A)の電磁波調整粒子を示す図である。 電界方向に沿って互いに連なった整列状態(整列状態B)の電磁波調整粒子を示す図である。 視野角特性測定評価装置の概略図である。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。更に、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。また、本明細書において「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構成に加え、一部に形成されている形状の構成も包含される。
本発明の可変式電磁波調整方法は、電磁波調整粒子(以下、単に「粒子」ともいう)と分散媒とを含む懸濁液を含有する電磁波調整層に交流電圧を印加することにより、電磁波調整層の電磁波透過率を調整する方法である。
電磁波調整層に交流電圧を印加して電磁波調整層を電磁波透過抑制状態から電磁波透過状態に制御する際に、電磁波調整層と直交する方向から電磁波調整層を観察したときに、粒子の凝集体の密度が0.008個/μm以上0.1個/μm以下となるように交流電圧を制御することで、電磁波透過状態におけるヘイズを低減し、角度依存性を低減し、十分なコントラストを得ることが可能になる。
粒子の凝集体の密度が0.008個/μm以上0.1個/μm以下となるように交流電圧を制御する方法の一つとして、第1の周波数から第1の周波数よりも周波数の高い第2の周波数にかけて、交流電圧を、周波数を連続的又は段階的に変化させながら印加する印加方法が挙げられる。
以下、電磁波調整粒子の凝集体の密度が0.008個/μm以上0.1個/μm以下となるように交流電圧の印加を制御する制御工程を含む可変式電磁波調整方法及びそれを用いた可変式電磁波調整素子を、第1の本発明と称することがある。
また、電磁波調整層に交流電圧を印加して電磁波調整層を電磁波透過抑制状態から電磁波透過状態に制御する際に、電磁波調整層と直交する方向から電磁波調整層を観察したときに、粒子の凝集体の密度が0.008個/μm以上0.1個/μm以下となるように交流電圧を制御する第1の制御工程と、粒子の凝集体の密度が0.09個/μm以上0.15個/μm以下であって第1の制御工程よりも粒子の凝集体の密度が高くなるように交流電圧を制御する第2の制御工程と、を任意に選択することで、第1の制御工程を経た電磁波調整素子では角度依存性が小さい一方、第2の制御工程を経た電磁波調整素子では角度依存性が大きい状態とされる。その結果、電磁波透過状態における角度依存性の制御が可能となる。
粒子の凝集体の密度が0.09個/μm以上0.15個/μm以下であって第1の制御工程よりも粒子の凝集体の密度が高くなるように交流電圧を制御する方法の一つとして、第2の周波数よりも周波数の高い第3の周波数の交流電圧を印加する印加方法が挙げられる。
以下、粒子の凝集体の密度が0.008個/μm以上0.1個/μm以下となるように交流電圧を制御する第1の制御工程と、粒子の凝集体の密度が0.09個/μm以上0.15個/μm以下であって第1の制御工程よりも粒子の凝集体の密度が高くなるように交流電圧を制御する第2の制御工程とを含む可変式電磁波調整方法及びそれを用いた可変式電磁波調整素子を、第2の本発明と称することがある。
粒子の凝集体の密度は、光学顕微鏡にて電磁波調整層と直交する方向から電磁波調整層を倍率50倍で観察することで計測される。凝集体の密度は、光学顕微鏡による観察画像から画像解析ソフトを用いて計測されてもよい。
ヘイズは、全光線透過光に対する拡散透過光の割合で定義される。ヘイズが大きいほど曇りが強くなるため、小さいほうが好ましい。
角度依存性は、電磁波調整層と直交する方向から見た光度を100%とし、電磁波調整層と直交する方向に対して斜め方向から見た光度の相対値で定義される。斜め方向から見た光度の相対値が小さいほど、角度依存性は強く、視界が狭くなる。
コントラストは、(電磁波透過状態における全光線透過率/電磁波透過抑制状態における全光線透過率)で定義される。電磁波透過状態における電磁波透過率が大きく、電磁波透過抑制状態における電磁波透過率が小さいほどコントラストが大きくなる。
電磁波調整粒子を分散媒に分散した懸濁液を含有する電磁波調整層に交流電圧を印加することで粒子が電磁波調整層の厚み方向に延伸した柱状に整列した状態の凝集体を形成し、電界方向の電磁波透過率が増大する原理を利用した可変式電磁波調整素子において、ヘイズを低減する方法、角度依存性を低減する方法、及びコントラストを増大する方法についてこれまで有効な提案はされていない。
本発明の発明者らは、電磁波調整層に対して交流電圧を印加した時の粒子の整列状態と、ヘイズ、角度依存性、電磁波透過率及びコントラストの関係について詳細な検討を行い、以下の結果を見出した。つまり、同じ懸濁液を用いた場合、交流電圧の印加方法によって粒子の整列状態は変化し、柱状に整列した粒子の凝集体が太く数が少ない状態(整列状態Aという)では、ヘイズは小さく、角度依存性は弱く、電磁波透過率とコントラストは大きくなる。逆に、細い柱状の凝集体が多数形成された状態(整列状態Bという)では、整列状態Aに比較してヘイズは大きく、角度依存性は強く、電磁波透過率とコントラストは小さくなる。
本発明において、整列状態Aは、具体的には、電磁波調整層と直交する方向から電磁波調整層を観察したときに、粒子の凝集体の密度が0.008個/μm以上0.1個/μm以下となる状態である。整列状態Aにおける粒子の凝集体の密度は0.01個/μm以上0.09個/μm以下が好ましく、0.012個/μm以上0.08個/μm以下がより好ましい。
整列状態Bは、具体的には、電磁波調整層と直交する方向から電磁波調整層を観察したときに、粒子の凝集体の密度が0.09個/μm以上0.15個/μm以下であって整列状態Aの場合よりも粒子の凝集体の密度が高い状態である。整列状態Bにおける粒子の凝集体の密度は0.1個/μm以上0.14個/μm以下が好ましく、0.11個/μm以上0.13個/μm以下がより好ましい。
一般に粒子の懸濁液では、粒子の粒子径が小さいほどヘイズが小さくなる。そのため、粒子の凝集体が形成された場合も、電磁波調整層と直交する方向から観察したときに柱状の凝集体が細い方がヘイズは下がると予想されるが、実際は太い柱状の凝集体が少数形成される場合にヘイズは小さくなった。柱状の凝集体が太くなることでヘイズが大きくなる効果より、柱状の凝集体の数の減少によりヘイズが小さくなる効果の方が、影響が大きいためと考えられる。
角度依存性は、太い柱状の凝集体が少数形成された場合に弱くなった。これは、柱状の凝集体の数が多く密集していると斜め方向の光が遮られ、柱状の凝集体の数が少なく間隔が広がると斜め方向の光が透過できるようになるためと考えられる。そのため、細い柱状の凝集体が多数あるより、太い柱状の凝集体が少数ある方が角度依存性は弱くなると考えられる。
電磁波透過率についても、柱状の凝集体の数が少なく凝集体間の間隔が広いほど光が透過しやすくなるため、電磁波透過率が上がると考えられる。そのため、細い柱状の凝集体が多数あるより、太い柱状の凝集体が少数ある方が、電磁波透過率とコントラストが大きくなると考えられる。
従来の技術では、粒子の整列状態を制御する方法は提案されていない。そこで、粒子の整列状態を制御するため、本発明の発明者等が交流電圧の印加方法について検討した結果、電磁波透過抑制状態から電磁波透過状態に変化させる際に、印加電圧を一定に保ち、第1の周波数から第1の周波数よりも周波数の高い第2の周波数にかけて、交流電圧を、周波数を連続的又は段階的に変化させながら印加する駆動方法A(第1の印加工程)により、整列状態Aとなり、始めから第2の周波数よりも周波数の高い第3の周波数の交流電圧を印加する駆動方法B(第2の印加工程)によって整列状態Bとなることを見出した。
これは例えば以下のように考えることができる。
低周波数の交流電圧を印加した時、粒子には、帯電によって電界方向に泳動する力と分極によって柱状に整列しようとする力とが発生する。例えば1Hz程度の周波数から交流電圧の印加を開始した場合、始めは泳動が支配的となり、整列状態にはならない。交流電圧の周波数を高くしていくと泳動作用は高周波に追随できなくなるため弱くなり、整列する力が支配的となるため、柱状に整列する。この方法では、粒子が泳動しながら整列状態に移行するため、広い範囲から粒子が集まり、太い柱状の凝集体が形成され、柱状の凝集体の数は、柱が太くなった分減少する。これに対し、始めから一定の高周波の交流電圧を印加した場合は、泳動は起こりにくく、狭い範囲の粒子が集まり柱状の凝集体を形成するため、細い柱状の凝集体が形成され、柱状の凝集体の数は多くなる。
粒子の凝集体は一旦形成されると、その後は殆ど動かないか、ゆっくりと合一していく。そのため、一定の高周波数の交流電圧を印加したまま長時間放置すると柱状の凝集体が太くなり、数が減少する場合もある。但し、この場合の柱状の凝集体の合一速度は遅いため、この方法で電磁波調整素子として所定の時間内で粒子の柱状の凝集体の形成状態を制御することは困難である。
明るく、曇りがなく、広い視界を得たい場合は、整列状態Aが好ましい。それに対し、プライバシー保護を優先し、斜め方向からの覗き見を防止したい場合には、整列状態Bが好ましい。第2の本発明ではこれら2通りの状態を状況に応じて、駆動方法Aと駆動方法Bによって選択することが可能である。
第1又は第2の本発明を可変式電磁波調整素子に適用するためには、交流電圧の印加によって柱状に整列した粒子の凝集体を、必要に応じて粒子が分散媒中に分散した状態に再分散させる必要がある。単に交流電圧の印加を停止するだけでもブラウン運動により粒子の凝集体の再分散は起こるが、所定の時間内で再分散が完了しない場合は、低周波数の交流電圧を印加することが有効である。低周波数の電圧印加により、粒子を泳動させる力が働き、柱状に整列した粒子の凝集体を短時間で再分散させることが可能である。
<第1実施形態>
以下、本発明の可変式電磁波調整方法及び可変式電磁波調整素子の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、第1実施形態では、第1の本発明について説明する。
図1は、本発明の可変式電磁波調整素子の一実施形態の断面を示す概略構成図である。
図1に示す可変式電磁波調整素子100は、一対の導電性基材2と、一対の導電性基材2の間に配置される電磁波調整層8と、一対の導電性基材2を介して電磁波調整層8に交流電圧を印加する印加手段である電源10と、電源10により印加される交流電圧の周波数、最大振幅及び波形を制御する制御手段15と、を備える。本実施形態に係る可変式電磁波調整素子においては、電磁波調整層8は、電磁波調整粒子4と分散媒6とを含む懸濁液を含有する態様とされる。一対の導電性基材2は、不図示のスペーサー等により、所定の間隔が保たれるように構成されている。また、一対の導電性基材2の周囲は、封止部材9により懸濁液が一対の導電性基材2間から流出しないように封止されている。
封止部材9としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シリコーン樹脂等が挙げられる。一対の導電性基材2の周囲は、シリコーン系接着剤、ポリウレタン系接着剤等の接着剤により封止されてもよい。
電磁波調整層8に対して電源10により交流電圧が印加されていない状態では、図1に示すように、電磁波調整層8中で電磁波調整粒子4が分散媒中で不規則に運動している分散状態となる。この場合、入射電磁波12は不規則に運動している電磁波調整粒子4によって反射又は散乱されて電磁波調整層8が電磁波透過抑制状態とされている。その結果、電磁波調整層8を入射電磁波12が透過することが抑制される。
一方、制御手段15によって電源10を制御することにより、電磁波調整層8に対し一対の導電性基材2を介して前述の駆動方法Aにより交流電圧が印加されることで、図2に示すように、電磁波調整粒子4が、電界方向に沿って互いに連なった整列状態(整列状態A)となる。
この場合、入射電磁波12は整列した電磁波調整粒子4の間を透過することで、電磁波調整層8の電磁波の入射側とは反対側で透過電磁波14として観測される。そのため、電磁波調整層8が電磁波透過状態とされている。駆動方法Aで電界を印加した図2では、電磁波調整粒子の凝集体の密度が0.008個/μm以上0.1個/μm以下とされ、粒子の柱状の凝集体が太く、数が少ないため柱状の凝集体の間隔が広くなり、透過電磁波14の強度が強くなる。
その結果、透過状態におけるヘイズが小さく、角度依存性が小さく、充分なコントラストが得られるようになる。
電磁波透過状態において、交流電圧の印加を停止するか、又は電源10から低周波数の電圧を印加することにより、電磁波調整粒子4を分散媒6中に再分散させて電磁波透過抑制状態に戻すことができる。
以下に、本発明の可変式電磁波調整素子を構成する各要素について詳述する。
[電磁波調整粒子]
懸濁液は、少なくとも1種の電磁波調整粒子を含む。電磁波調整粒子は、電磁波の透過状態を調整するための粒子であり、懸濁液中で整列状態と分散状態とを電気的に制御されるものである。電磁波調整粒子は、電磁波を反射又は吸収可能な粒子であれば、その材質、粒子径及び形状は特に制限されず、目的等に応じて適宜選択される。
なお、本発明における電磁波とは、波長300nm〜2500nmの領域の電磁波であれば特に制限されず、可変式電磁波調整素子の目的等に応じて適宜選択される。例えば、可視光線を制御したい場合は300nm〜800nmとなり、近赤外線を制御したい場合は700〜2500nmとなる。
一般に電気粘性流体に適用可能な粒子としては、誘電率が分散媒の誘電率よりもある程度大きい粒子が挙げられる。また、導電性粒子、導電性粒子を絶縁層で被覆した粒子等も使用可能である。懸濁液に用いられる電磁波調整粒子としては、アルミナ、ベーマイト、ITO(Indium Tin Oxide)、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム、酸化チタン等の金属酸化物粒子;各種無機酸化物顔料粒子;カーボンブラック、カーボンナノチューブ等の炭素粒子;有機無機複合粒子などを挙げることができる。これらは市販のものから適宜選択することができる。また目的に応じて新たに製造してもよい。
これらの中でも、可変式電磁波調整素子を可視光の調整に用いる場合、整列状態と分散状態の電磁波透過率の変化が大きいことから、電磁波調整粒子は着色粒子であることが好ましく、無彩色又は褐色の着色粒子であることがより好ましい。また同様の観点から、電磁波調整粒子は酸化物粒子であることが好ましく、金属酸化物粒子であることがより好ましく、黒色又は褐色の金属酸化物粒子であることが更に好ましい。
電磁波調整粒子が金属酸化物粒子である場合、Cu、Fe及びMnからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む黒色又は褐色の酸化物顔料は耐候性の面でも優れている。また、黒色のものは、透過光の着色が無いため、可変式電磁波調整素子に適用した際に視覚的に優れている。更に、黒色又は褐色の酸化物顔料の中でも、(Bi,Mn)、(Y,Mn)、(Co,Fe)(Fe,Cr)、Cr:Fe:CoO、Cr:Fe、CuO:MgO等の組成を有する複合酸化物は、近赤外線を反射する性質を有している。近赤外線を反射する粒子を用いた可変式電磁波調整素子を太陽光が当たる窓等に適用した場合、近赤外線の電磁波透過率制御が可能になるとともに、近赤外線の吸収による懸濁液の温度上昇が低減でき、特性の劣化を低減できるという利点がある。
電磁波調整粒子の体積抵抗率は特に制限されない。電界の印加により、粒子を柱状の凝集体に整列させる力は、粒子径が小さくなると弱くなることが、知られている。粒子を柱状の凝集体に整列させる力は、粒子の分極によって発生する電界に起因していることから、小粒子径の場合にも実用的な電界の強さで速やかに粒子を柱状に整列させるためには、粒子の分極率を大きくする必要がある。粒子の分極率を大きくする方法として、粒子の体積抵抗率を下げることが有効である。粒子に電流が流れやすくなることで、界面分極による分極が強くなり、分極率が増大すると考えられる。電磁波調整粒子の体積抵抗率は、1.0×10Ω・m以下が好ましく、1.0×10Ω・m以下がより好ましく、1.0×10−1Ω・m以下が更に好ましい。
電磁波調整粒子の体積抵抗率の下限は特に制限はない。電磁波調整素子の構造によって電圧印加時に短絡が起きる懸念がある場合は、1.0×10−4Ω・m以上が好ましく、1.0×10−3Ω・m以上がより好ましい。
粒子の体積抵抗率は、(株)三菱化学アナリテック製の粉体抵抗率測定システムを用いて測定できる。本発明の検討では、抵抗率計(商品名:ロレスタGP MCP−T610、(株)三菱化学アナリテック製)を用い、粒子の粉を圧縮した状態で、四探針法によって測定した。圧縮の圧力によって得られる測定結果が変動するため、63.7MPaの圧力をかけながら測定した結果を用いる。
電磁波調整粒子の粒子径は特に制限されない。電磁波調整粒子の粒子径は、数平均粒子径として20μm以下であることが好ましい。一般的には電磁波調整粒子の数平均粒子径は、充分な電磁波透過抑制効果(例えば、着色性)を得ることと、充分に電磁波の散乱を抑制する観点から、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることが更に好ましい。また電磁波調整粒子の数平均粒子径は、電磁波調整粒子の分散状態から整列状態への状態変化速度の観点から、0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。なお、電磁波調整粒子の数平均粒子径は、粉体の状態では、走査型電子顕微鏡を用いた粒子の観察により、無作為に選択される50個の粒子について円相当径(長径と短径の幾何平均)を算出し、その算術平均値として求められる。
懸濁液作製後は、粒子径を液中に分散した状態で測定する必要がある。その場合は、動的光散乱法、レーザー回折・散乱法等によって測定できる。粒子径測定結果としては体積平均粒子径を用いる。好ましい粒子径範囲は数平均粒子径の場合と同じである。
電磁波調整粒子の形状は特に制限されず、目的等に応じて適宜選択することができる。電磁波調整粒子の形状としては、不定形、棒状、略球状、扁平状、ブロック状、板状、鱗片状等が挙げられる。電磁波調整粒子の形状は分散性と電磁波透過率制御性の観点から、不定形、略球状、扁平状又は棒状であることが好ましい。なお、電磁波調整粒子の形状は、例えば走査型電子顕微鏡を用いる観察で判定することができる。
懸濁液中の電磁波調整粒子の含有率は特に制限されず、目的等に応じて適宜選択される。懸濁液中の電磁波調整粒子の含有率は、電磁波調整粒子の分散状態と整列状態とが切り替わる際に充分な電磁波透過率の変化を得る観点から、1質量%〜20質量%であることが好ましく、2質量%〜10質量%であることがより好ましい。
電磁波調整粒子は、懸濁液中で帯電しているのが好ましい。帯電の極性及び強さは特に制限されず、低周波数の交流電圧の印加により所望の泳動が起きればよい。絶縁性液体中の粒子の帯電の極性及び強さを制御する方法について、確立された方法は知られていないが、粒子、分散媒、分散剤及びその他の成分の組み合わせにより所望の帯電状態を得ることが可能である。
[分散媒]
懸濁液は、少なくとも1種の分散媒を含む。分散媒は電磁波調整素子を作動させる温度で電磁波調整粒子を分散できる物質であれば特に制限されず、一般的には、液体かつ絶縁性の有機化合物であることが好ましい。具体的には、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、ケトン、ポリエーテル、シリコーンオイル、アクリルオリゴマー等を挙げることができ、これらからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。特に分散媒が電磁波調整粒子に対して親和性を示す官能基を有する場合、電磁波調整粒子の分散性がより向上し、電磁波調整粒子の沈降又は凝集を低減することができる。電磁波調整粒子に対して親和性を示す官能基は電磁波調整粒子の種類に応じて適宜選択され、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルボニル基、アミノ基等を挙げることができる。
分散媒の凝固点(融点)等の物性は、可変式電磁波調整素子の用途等に応じて適宜選択することができる。例えば、可変式電磁波調整素子を低温環境下で使用する可能性がある場合、分散媒の凝固点(融点)が低いものを選択するのが好ましく、分散媒の凝固点は−10℃以下が好ましく、−20℃以下がより好ましく、−30℃以下が更に好ましい。低凝固点の分散媒を使用することで、低温での電磁波調整がより容易になり、懸濁液の凝固による粒子の凝集を防止することも可能となる。
低凝固点の分散媒としては、イソステアリン酸ヘキシルデシル、ミリスチン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、パルミチン酸イソステアリル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、ネオペンタン酸2−オクチルドデシル、サリチル酸ブチルオクチル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、モノカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、2−エチルヘキサン酸2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、炭酸ジアルキル(C14,15)、フタル酸ジ2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチルオクチル、リンゴ酸ジイソステアリル、クエン酸トリエチルヘキシル、水添ポリオレフィン、水添ポリデセン、りん酸トリオレイル、ジメチルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、ジメチルジフェニルシリコーンオイル等を挙げることができる。
中でも凝固点が−20℃以下のものとしては、イソステアリン酸ヘキシルデシル、サリチル酸ブチルオクチル、モノカプリル酸プロピレングリコール、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、2−エチルヘキサン酸2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、炭酸ジアルキル(C14,15)、フタル酸ジ2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチルオクチル、クエン酸トリエチルヘキシル、水添ポリオレフィン、水添ポリデセン、ジメチルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、ジメチルジフェニルシリコーンオイル等を挙げることができる。
更に凝固点が−30℃以下のものとしては、炭酸ジアルキル(C14,15)、フタル酸ジ2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチルオクチル、クエン酸トリエチルヘキシル、水添ポリオレフィン、水添ポリデセン、ジメチルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、ジメチルジフェニルシリコーンオイル等を挙げることができる。
ここで炭酸ジアルキル(C14,15)とは、炭素数が14又は15のアルキル基を2つ有する炭酸ジアルキルエステルを含む混合物を意味する。
これらの分散媒は1種単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。2種類以上を混合することで、分散媒の粘度、屈折率を調整することも可能である。
分散媒の絶縁性の指標としては電気抵抗率を挙げることができる。分散媒は、電気抵抗率が100MΩ・m以上であることが好ましく、10000MΩ・m以上であることがより好ましい。抵抗率が大きい分散媒を用いた方が経時劣化等による短絡の発生をより効果的に抑制でき、可変式電磁波調整素子の信頼性及び耐久性がより向上する傾向がある。
分散媒の粘度は特に制限されず、目的等に応じて適宜選択することができる。一般的に分散媒の粘度は、25℃で1mPa・s〜30000mPa・sである。なお、分散媒の粘度は25℃において、E型粘度計等の回転粘度計を用いて測定される。
懸濁液中での電磁波調整粒子の分散安定性が良好で電磁波調整粒子の沈降が問題にならず、電磁波調整粒子の分散状態と整列状態との間の状態変化速度を、より速く設定したい場合、分散媒の粘度は低いことが好ましい。具体的には、25℃において1mPa・s〜600mPa・sであることが好ましく、10mPa・s〜400mPa・sであることがより好ましい。分散媒の粘度が25℃において600mPa・s以下であると、状態変化速度を充分に速くすることができる。
低粘度の分散媒の具体例としては、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、ケトン、ポリエーテル、シリコーンオイル等を挙げることができ、これらからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。これらの中で、シリコーンオイルは温度による粘度変化が他の分散媒と比較して小さいため、可変式電磁波調整素子を広い温度範囲で使用する用途に適している。
シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、ジメチルジフェニルシリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、エステル変性シリコーンオイル等を挙げることができる。シリコーンオイルの分子量は特に制限されず、目的等に応じて適宜選択することができる。低粘度の分散媒として用いられるシリコーンオイルの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した標準ポリスチレン換算の数平均分子量が300〜20,000であることが好ましく、1,000〜10,000であることがより好ましい。
このようなシリコーンオイルとしては、TSF451、TSF437、TSF4300、TSF410、TSF4440(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製)、KF−96、KF−50、KF−54、KF−56A(以上、信越化学工業(株)製)等を挙げることができる。
懸濁液中の分散媒の含有率は、電磁波調整粒子の種類及び含有量、分散剤等のその他成分の含有量などに応じて適宜選択される。分散媒の含有率は一般的に、60質量%〜99質量%であることが好ましく、70質量%〜98質量%であることがより好ましい。
[その他の成分]
懸濁液は、前記電磁波調整粒子及び分散媒に加えてその他の成分を必要に応じて更に含んでいてもよい。その他の成分としては、流動点降下剤、粘度指数向上剤、カップリング剤、分散剤、乳化剤、防食剤等を挙げることができる。
電磁波調整粒子を分散媒に良好に分散させるため分散剤を添加してもよい。分散剤は粒子表面に吸着又は結合することにより、粒子の凝集を防ぐ効果があり、電圧印加の繰返し及び粒子の沈降による凝集を防止し、可変式電磁波調整素子の耐久性が向上する。分散剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等の界面活性剤型分散剤、高分子型分散剤、変性シリコーンなどが挙げられる。高分子型分散剤及び変性シリコーンとしては、粒子に作用する官能基として、アミノ基、カルボキシ基、カルボニル基、スルホ基、ヒドロキシ基等を有するものが挙げられる。
分散剤の添加量としては、粒子に対して、1質量%〜200質量%が好ましく、5質量%〜100質量%がより好ましい。添加量が前記範囲内であれば、粒子の分散性が向上する傾向にある。
可変式電磁波調整素子を低温環境(例えば、−20℃以下)で使用する場合、懸濁液は、流動点降下剤を含むことが好ましい。懸濁液が流動点降下剤を含むことで、低温での流動性がより改善される。流動点降下剤としては、ポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルアクリレート、アルキル化芳香族化合物、フマレート−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
粘度指数向上剤とは、懸濁液の粘度の温度依存性を小さくすることができる添加剤を意味する。懸濁液の粘度の温度依存性を小さくすることで、可変式電磁波調整素子の応答性の温度依存性が小さくなり、取り扱い性がより向上する傾向にある。粘度指数向上剤としては、ポリアルキルメタクリレート、オレフィン共重合体、ポリイソブチレン等が挙げられる。
懸濁液の調製方法は、懸濁液を構成する成分を充分に混合し、粒子を良好に分散できる方法であれば特に制限はなく、通常用いられる方法で調製することができる。例えば、粒子、分散媒及び必要に応じて含まれるその他の成分を配合後、自動乳鉢、三本ロール、ボールミル、ビーズミル、ホモジナイザー、超音波分散機等を用いて懸濁液を得る方法を挙げることができる。
[導電性基材]
導電性基材は、基材の少なくとも一方の面上に導電層を有するものであれば特に制限されない。導電性基材は光透過性であっても光非透過性(光反射性)であってもよい。一般的に導電性基材は光透過性の透明導電性基材であることが好ましい。透明導電性基材を用いて可変式電磁波調整素子を構成することで、例えば可変的に光透過性を調整することができる調光素子を構成することができる。導電性基材が光透過性を有する場合、導電性基材の光透過率は80%以上であることが好ましい。透明導電性基材の光透過率は、ヘイズメーターを用いて測定した全光線透過率と定義する。
導電性基材を構成する基材は、その少なくとも一方の面上に導電層を形成可能であれば特に制限されず、目的に応じて通常用いられる基材から適宜選択することができる。基材として具体的には、ガラス板、樹脂板、ガラスフィルム、樹脂フィルム等を挙げることができる。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム、ポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルム、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂系のフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリカーボネートフィルムなどの樹脂フィルムが挙げられる。中でも基材は、透明性に優れ、成形性、接着性、加工性等に優れる点で、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
基材の厚みは特に制限されず、目的等に応じて適宜選択することができる。基材の厚みは、例えば、30μm〜300μmとすることができる。
基材の面上に形成される導電層は、光透過性の導電層であることが好ましい。光透過性の導電層の材料として具体的には、ITO、SnO、In等の金属酸化物膜、有機導電膜、カーボンナノチューブ、銀ナノワイヤーなどを挙げることができる。導電層の厚みは特に制限されず、目的に応じて適宜選択できる。一般的に導電層の厚みは10nm〜5,000nmであることが好ましい。導電層の厚みは光学式膜厚計を用いて測定することができる。
導電層の表面抵抗値は特に制限されず、目的に応じて適宜選択できる。一般的に導電層の表面抵抗値は、1Ω/□〜10000Ω/□であることが好ましい。導電層の表面抵抗値は、四探針法を用いて25℃で測定される。また導電層の表面抵抗値は、ギガヘルツ(GHz)付近の電磁波透過性の観点から、1000Ω/□〜10000Ω/□であることもまた好ましい。ギガヘルツ付近の電磁波透過性を有することで、携帯電話等に使用されている電磁波を透過することができる。
導電性基材は、導電層上に数nm〜1μm程度の厚みの絶縁層(好ましくは透明絶縁層)を更に有していてもよい。絶縁層を更に有することで、異物質の混入等により発生し得る短絡現象の発生を抑制することができる。また本発明の可変式電磁波調整素子を反射型の電磁波調整素子に利用する場合(例えば、自動車用リアビューミラー)は、反射体であるアルミニウム、金、銀等の導電性金属の薄膜を導電層として用いてもよい。
[電磁波調整層]
本発明の可変式電磁波調整素子は、懸濁液を含有する電磁波調整層を備える。電磁波調整層は、一対の導電性基材の間に配置されていてもよい。
電磁波調整層の構造としては、スペーサー等で一定間隔に保たれた導電性基材間を懸濁液で満たす構造、導電性基材の導電層面上に隔壁で網目状の構造を形成し、隔壁で仕切られた空間を懸濁液で満たす構造、懸濁液を閉じ込めた微細なカプセルを導電性基材間に配置した構造、懸濁液の液滴が樹脂等のマトリックス中に分散した構造などが挙げられる。電磁波調整層の厚みは特に制限されず、目的等に応じて適宜選択される。一般的に電磁波調整層の厚みは、20μm〜200μmであることが好ましい。電磁波調整層の厚みは、マイクロメータを用いて基材を含む厚みを測定し、あらかじめ測定しておいた基材の厚みを差し引くことにより測定することができる。
[印加条件]
本発明の可変式電磁波調整素子において、電磁波透過状態に制御するために電磁波調整層に印加される交流電圧の電界強度は懸濁液の構成等に応じて適宜選択される。一般的には1.0MV/m〜4.0MV/mであることが好ましく、1.5MV/m〜3.0MV/mであることがより好ましい。
本発明の可変式電磁波調整素子において、電磁波透過状態で電磁波調整層に印加される電圧は、懸濁液の構成、電磁波調整層の厚さ等に応じて適宜選択される。例えば、電磁波調整層の厚さが50μmである場合、粒子を整列状態にする電圧は、50V〜200Vであることが好ましく、75V〜150Vであることがより好ましい。
本発明の可変式電磁波調整素子において、電磁波調整層に印加される電圧は交流電圧である。低ヘイズ、低角度依存性、高電磁波透過率及び高コントラストが得られる整列状態Aに制御するためには、粒子が分散した電磁波透過抑制状態(図1の状態)において、第1の周波数から第1の周波数よりも周波数の高い第2の周波数にかけて、交流電圧を、周波数を連続的又は段階的に変化させながら印加する駆動方法Aを用いる。この時の開始周波数(第1の周波数)Z1は、0.1Hz〜10Hzが好ましく、0.5Hz〜5Hzがより好ましい。周波数を変化させる速さ(変化速度)は、0.5Hz/秒〜10Hz/秒が好ましく、1.0Hz/秒〜5.0Hz/秒がより好ましい。終了周波数(第2の周波数)Z2は10Hz〜60Hzが好ましく、20Hz〜50Hzがより好ましい。周波数の変化のさせ方は、連続的でも、段階的でもよく、周波数の変化幅Z2−Z1を変化させるために要する時間T1で割った平均の変化速度が前記の好ましい範囲内であればよい。Z1からZ2まで周波数を変化させる際に印加する電圧は一定が好ましい。なお、電源の特性により電圧が変動しても、所望の整列状態Aに制御できれば問題はない。
Z2まで周波数を変化させた後は、整列状態Aを保持するために適切な周波数Z3に切り替えてもよい。この時は周波数を変化させる速度に制限はない。Z3としては、整列状態Aを保持できれば特に制限はないが、Z2以上であることが好ましい。また、電源の設計の容易さ等から、30Hz〜1kHz、が好ましく、40Hz〜600Hzがより好ましい。
本発明の可変式電磁波調整素子を電磁波透過状態から電磁波透過抑制状態に戻すためには、交流電圧の印加を停止するか、又は交流電圧の停止後、低周波数Z5の交流電圧を短時間印加する。このときの電界強度は1.0MV/m〜4.0MV/mであることが好ましく、1.5MV/m〜3.0MV/mであることがより好ましい。印加電圧としては、導電性基材間の距離が50μmである場合、50V〜200Vであることが好ましく、75V〜150Vであることがより好ましい。印加時間は0.1秒〜60秒が好ましく、0.5秒〜30秒がより好ましい。Z5は、0.5Hz〜30Hzが好ましく、1.0Hz〜20Hzがより好ましい。
<第2実施形態>
第2実施形態では、第2の本発明について説明する。
第2実施形態では、第1実施形態と同様、図1に示す可変式電磁波調整素子100の電磁波調整層8に対し一対の導電性基材2を介して前述の駆動方法Aにより交流電圧が印加されることで、図2に示すように、電磁波調整粒子4が、電界方向に沿って互いに連なった電磁波調整粒子4の整列状態(整列状態A)となる。一方、電磁波調整層8に対し一対の導電性基材2を介して前述の駆動方法Bにより交流電圧が印加されることで、図3に示すように、電磁波調整粒子4が、電界方向に沿って互いに連なった電磁波調整粒子4の整列状態(整列状態B)となる。第2実施形態では、電磁波調整粒子4の整列状態が整列状態A又は整列状態Bとなるように、駆動方法が任意に選択される。
整列状態Aは、上述のように、低ヘイズ、低角度依存、高電磁波透過率及び高コントラストの電磁波透過状態で、整列状態Bは高ヘイズ、高角度依存、低電磁波透過率及び低コントラストの透過状態である。また、電磁波透過状態において、交流電圧の印加を停止するか、電源10から低周波数の交流電圧を印加することにより、電磁波調整粒子4を分散させて電磁波透過抑制状態に戻すことができる。
このように、第2実施形態では、駆動方法A又はBに基づく交流電圧の印加と停止又は低周波数(上述の低周波数Z5)の交流電圧の印加により、2種類の電磁波透過状態と電磁波透過抑制状態を切り替えることが可能となる。
本発明の可変式電磁波調整素子を高ヘイズ、高角度依存性、低電磁波透過率、低コントラストとなる整列状態Bに制御するためには、粒子が分散した電磁波透過抑制状態において、高周波数Z4を最初から印加する駆動方法Bを用いる。Z4としては、40Hz〜1kHzが好ましく、50Hz〜600Hzがより好ましい。駆動方法Aと駆動方法Bを使い分けることにより、電磁波透過率、ヘイズ、角度依存性を適切な状態に制御することが可能である。
本発明の可変式電磁波調整方法及び可変式電磁波調整素子は、室内外の仕切り(パーティッション);建築物用の窓硝子、天窓等;電子機器又は映像機器に使用される各種平面表示素子;各種計器板と既存の液晶表示素子の代替品;光シャッター;各種室内外広告;各種案内標示板;航空機、鉄道車両、船舶等用の窓硝子;自動車用の窓硝子、バックミラー、サンルーフ等;眼鏡;サングラス;サンバイザー;などの用途に好適に使用することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
(懸濁液作製)
金属酸化物粒子(商品名:TilackD、赤穂化成(株)製、数平均粒子径0.3μm、不定形、体積抵抗率2.5×10−2Ω・m)を3.0g、分散剤としてポリグリセリン変性シリコーン(商品名:KF−6104、信越化学工業(株)製)を2.4g、分散媒としてシリコーンオイル(商品名:KF−96−10cs、信越化学工業(株)製)を24.6gを容量50mlのポリプロピレン製容器に秤量し、スパーテルで均一な状態になるまで攪拌した。次にホモジナイザー(商品名:HG−200、HSIANGTAI製)で、φ20mmのシャフトジェネレータ(型式:K−20S)を用いて、回転数10000rpmで10分間分散処理した。その後ポリプロピレン製容器に蓋をし、24時間静置した後、デカンテーションによって上澄みを分取し、懸濁液1を得た。懸濁液1の粒子径をレーザー回折・散乱法の粒度分布計(商品名:SALD−7100H、(株)島津製作所製)を用いて測定した結果、体積平均粒子径は0.51μmであった。
なお、金属酸化物粒子の数平均粒子径は、走査型電子顕微鏡で撮影した写真を用いて50個の粒子径を測定し、その算術平均値として算出した。以下、粒子の数平均粒子径は同様にして測定した。この方法で得られる粒子径は1次粒子径である。
(電磁波調整層の形成)
導電性基材として、片面にITO膜(平均厚み17nm、表面抵抗値200Ω/□)を有するガラス板(平均厚み0.7mm)を2枚用意した。導電性基材の全光線透過率は89%、ヘイズは0.3%であった。なお、ITO膜の平均厚みは、光学式膜厚計(商品名:F20、Filmetrics,Inc.製)で測定した。また、ガラス板の厚さはマイクロメータで測定した。また、導電性基材の全光線透過率とヘイズは、分光式測色ヘイズメーター(商品名:TC−1800H、(有)東京電色製)を用いて測定した。なお、全光線透過率測定におけるブランクは、空気とした。
ガラス板のITO膜が形成された面上に上記で得られた懸濁液1を滴下し、もう1枚のガラス板をそのITO膜が懸濁液1に接するように、ガラス板の周囲に配置した厚み50μmのPETフィルムを介して重ね合わせた後、更にクリップで固定し、導電性基材であるITO膜を有するガラス板間に配置された電磁波調整層を形成した。
(評価)
以下の評価は、25℃の環境下で行った。
ITO膜を有するガラス板のITO膜に電源を接続し、以下の2種類の駆動方法で交流電圧を印加し、上記で得られた電磁波調整層について全光線透過率、ヘイズ、角度依存性及び懸濁液中の粒子が形成する柱状の凝集体の密度を測定した。駆動方法を変更する時は、100Vrms、1Hzの交流電圧を印加して、全光線透過率及びヘイズが電圧印加前の状態に戻ったことを確認した後に交流電圧を印加した。駆動方法A1では、電圧100Vrmsで、周波数を1Hzから30Hzまで1Hz/秒で変化させ、その後100Hzに固定して1分保持後に測定した。駆動方法B1では、電圧100Vrms、周波数100Hzを印加し、3分保持後に測定した。印加手段と制御手段とが一体とされた電源としてプログラマブル交流電源(商品名:EC1000S、(株)エヌエフ回路設計ブロック製)を使用した。
角度依存性は、視野角特性測定評価装置(商品名:EZcontrast 160R、PTT(株)製)を用いて測定した。図4は視野角特性測定評価装置200の概略図である。光源25上に光拡散板24を設置した。その上に、電磁波調整層8を設置した。電磁波調整層8は、端部をPETフィルム(封止部材9)で封止されたITO膜を有する2枚のガラス板(導電性基材2)の間に懸濁液1を配置し、2枚のガラス板をクリップ22で固定することで、ITO膜を有する2枚のガラス板の間に形成されている。さらにその上に配置した受光部21で光を取り込み、測定を行った。視野角特性測定評価装置200は、電磁波調整層8に対する法線26に対する角度θから見た時の光度をθ=0度〜80度の範囲で測定可能である。光度の単位はカンデラ(cd)である。45度の光度/0度の光度×100%を角度依存性の指標として用いることにする。この値が小さいほど角度依存性が強い。
角度依存性を視覚的に確認するため、電磁波調整層をライトボックスの上に設置し、電磁波調整層に対して電圧を印加しながら、ガラス面の法線に対して0度と45度の角度から見た写真を撮影して比較した。
駆動方法によって、粒子の整列状態が変化することを確認するため、電磁波調整層に交流電圧を印加しながら、光学顕微鏡で長作動距離の50倍の対物レンズ(商品名:LMPLFLN50x、オリンパス(株)製)を用いて電磁波調整層内の懸濁液を観察した。その写真を撮影し、画像解析ソフト(商品名:A像くん、旭化成エンジニアリング(株)製)を用いて単位面積あたりの凝集体の数を計測した。
(評価結果)
全光線透過率、コントラスト、ヘイズ、角度依存性、粒子の凝集体の密度の評価結果を表1に示す。交流電圧印加中の懸濁液の顕微鏡観察結果を表2に示す。また、電磁波調整層の角度0度と45度の外観写真を表3に示す。
駆動方法A1を用いた方が、B1を用いるより、全光線透過率、コントラストが高く、ヘイズ、角度依存性が低減している。表2の写真の黒い点は、粒子が形成する柱状の凝集体を、柱の長軸方向(電磁波調整層と直交する方向)から見たもので、点1つが柱状の凝集体1本に対応している。駆動方法A1の方がB1より、柱が太く、数が少なくなっている。これにより、全光線透過率、コントラスト、ヘイズ及び角度依存性が改善すると考えられる。
表3の素子の外観写真から、駆動方法A1では45度の角度で見ても背後の文字が読み取れるが、駆動方法B1では全光線透過率が下がり、背後の文字が読み取りづらいことがわかる。可変式電磁波調整素子の使用状況によって、斜め方向からの覗き見を防止したい場合には、全光線透過率、コントラスト及びヘイズの特性は劣るが、駆動方法B1の方が適している。交流電圧の印加を停止するか、低周波数の交流電圧を印加して、粒子が均一に分散した状態に戻した後は、駆動方法A1及び駆動方法B1の何れも選択可能で、状況に応じて使い分けることが可能である。
<実施例2>
(懸濁液作製)
懸濁液1を9mlのガラス瓶に5g量りとり、蓋をして1週間静置した。その後、上部の2.5gをスポイトで除去し、残りの部分を懸濁液2とした。懸濁液2は懸濁液1より粒子濃度が高くなっている。懸濁液2の粒子径をレーザー回折・散乱法の粒度分布計(商品名:SALD−7100H、(株)島津製作所製)を用いて測定した結果、体積平均粒子径は0.53μmであった。
(評価結果)
実施例1と同様にして電磁波調整層を形成し、評価を行った。全光線透過率、ヘイズ、角度依存性及び粒子の凝集体の密度の評価結果を表1に示す。また、電磁波調整層の角度が0度と45度の外観写真を表4に示す。
粒子濃度が高く、電磁波透過抑制状態における全光線透過率が0.03%と低い場合でも、駆動方法A1の方がB1より、全光線透過率、コントラスト、ヘイズ、角度依存性が改善することが分かる。
このような高濃度の懸濁液は、本実施例のように導電基材に直接挟んで使用してもよいが、懸濁液を閉じ込めた微細なカプセルを作製し導電基材間に配置したり、樹脂等のマトリックス中に懸濁液の液滴を分散させて導電性基材で挟む場合に有効である。これらの場合、電磁波調整層の厚みを同じにすると、懸濁液を直接挟む場合よりも、電磁波調整層中の懸濁液量が少ないため、適切な電磁波透過率を得るためには、粒子濃度を高くする必要がある。そのため、高濃度の懸濁液が必要となる。懸濁液2は、駆動方法A1のヘイズが30%とやや高いが、導電性基材間の液滴量が少ない構造の素子では、電磁波透過率が高くなるのと同様に、ヘイズは低下するため、素子としてのヘイズは低くなる。
<実施例3>
(懸濁液作製)
金属酸化物粒子(商品名:TMブラック3550、大日精化工業(株)製、数平均粒子径0.06μm、不定形、体積抵抗率2.2×10Ω・m)を3.0g、分散剤としてポリグリセリン変性シリコーン(商品名:KF−6104、信越化学工業(株)製)を2.4g、分散媒としてシリコンーンオイル(商品名:KF−96−10cs、信越化学工業(株)製)を24.6gを容量50mlのポリプロピレン製容器に秤量し、スパーテルで均一な状態になるまで攪拌した。次にホモジナイザー(商品名:HG−200、HSIANGTAI製)で、φ20mmのシャフトジェネレータ(型式:K−20S)を用いて、回転数10000rpmで10分間分散処理した。その後ポリプロピレン製容器に蓋をし、24時間静置した後に、デカンテーションによって上澄みを分取し、懸濁液3を得た。懸濁液3の粒子径をレーザー回折・散乱法の粒度分布計(商品名:SALD−7100H、島津製作所製)を用いて測定した結果、体積平均粒子径は0.32μmであった。
(評価結果)
実施例1と同様にして電磁波調整層を形成し、評価を行った。全光線透過率、ヘイズ、角度依存性及び粒子の凝集体の密度の評価結果を表1に示す。また、電磁波調整層の角度が0度と45度の外観写真を表5に示す。
実施例1、2とは異なる金属酸化物粒子を用いた場合でも、実施例1、2と同様に、駆動方法A1の方がB1より特性が改善する結果が得られた。
実施例1〜3の結果から、電磁波透過状態のヘイズを下げるためには、本実施例における評価方法で粒子の凝集体の密度は0.1個/μm以下が好ましく、0.08個/μm以下となるのがより好ましい。実施例2の駆動方法A1の柱の密度はやや大きいが、電磁波調整層として、懸濁液を閉じ込めた微細なカプセルを導電基材間に配置したり、樹脂等のマトリックス中に懸濁液の液滴を分散させる場合は、基材間の液滴量が少ないため、柱の密度が小さくなり上記の適切な範囲とすることが可能である。逆に角度依存性を強くしたい場合には、粒子の柱の密度は0.1個/μmより大きいのが好ましく、0.11個/μm以上がより好ましいことが分かる。粒子の凝集体の密度は素子を作製状態で上記の好ましい範囲となるのが好ましい。
<参考例>
本発明の参考例は、実施例1〜3において、駆動方法B1のみで駆動する方法である。結果は表1に示されている。駆動方法B1のみであると角度依存性が強いため、可変式電磁波調整素子を覗き見防止フィルタ等に適用することができる。
以上から、本発明の可変式電磁波調整方法を用いて可変式電磁波調整素子を駆動することで、従来の駆動方法よりも、電磁波透過率、コントラスト、ヘイズ及び角度依存性を改善できる。さらに、角度依存性の強さを状況に応じて選択することが可能になる。また用いる粒子の選択の幅が広いことから、光調整素子に適用する場合に色調の変更が可能である。更に、素子の大面積化が可能な方式であるため、自動車、列車、航空機、建築物の窓等に適した可変式電磁波調整方法及びそれを用いた可変式電磁波調整素子を提供できる。
2:導電性基材、4:電磁波調整粒子、6:分散媒、8:電磁波調整層、9:封止部材、10:電源、12:入射電磁波、14:透過電磁波、15:制御手段、21:受光部、22:クリップ、24:光拡散板、25:光源、26:法線、100:可変式電磁波調整素子、200:視野角特性測定評価装置、θ:法線に対する角度

Claims (8)

  1. 電磁波調整粒子と分散媒とを含む懸濁液を含有する電磁波調整層に交流電圧を印加することにより、前記電磁波調整層と直交する方向から前記電磁波調整層を観察したときに、前記電磁波調整粒子の凝集体の密度が0.008個/μm以上0.1個/μm以下となるように制御する制御工程を含む可変式電磁波調整方法。
  2. 電磁波調整粒子と分散媒とを含む懸濁液を含有する電磁波調整層に、第1の周波数から前記第1の周波数よりも周波数の高い第2の周波数にかけて、交流電圧を、周波数を連続的又は段階的に変化させながら印加する印加工程を含む可変式電磁波調整方法。
  3. 電磁波調整粒子と分散媒とを含む懸濁液を含有する電磁波調整層と、
    前記電磁波調整層に対して交流電圧を印加する印加手段と、
    前記電磁波調整層と直交する方向から前記電磁波調整層を観察したときに、前記電磁波調整粒子の凝集体の密度が0.008個/μm以上0.1個/μm以下となるように前記印加手段により印加される交流電圧を制御する制御手段と、
    を備える可変式電磁波調整素子。
  4. 電磁波調整粒子と分散媒とを含む懸濁液を含有する電磁波調整層と、
    前記電磁波調整層に対して交流電圧を印加する印加手段と、
    前記印加手段により印加される交流電圧の周波数を、第1の周波数から前記第1の周波数よりも周波数の高い第2の周波数にかけて連続的又は段階的に変化させる制御手段と、
    を備える可変式電磁波調整素子。
  5. 電磁波調整粒子と分散媒とを含む懸濁液を含有する電磁波調整層に交流電圧を印加することにより、前記電磁波調整層と直交する方向から前記電磁波調整層を観察したときに、前記電磁波調整粒子の凝集体の密度が0.008個/μm以上0.1個/μm以下となるように制御する第1の制御工程と、
    前記電磁波調整粒子の凝集体の密度が0.09個/μm以上0.15個/μm以下であって前記第1の制御工程よりも前記電磁波調整粒子の凝集体の密度が高くなるように制御する第2の制御工程と、を有し、
    前記第1の制御工程と前記第2の制御工程とが任意に選択される可変式電磁波調整方法。
  6. 電磁波調整粒子と分散媒とを含む懸濁液を含有する電磁波調整層に、第1の周波数から前記第1の周波数よりも周波数の高い第2の周波数にかけて、交流電圧を、周波数を連続的又は段階的に変化させながら印加する第1の印加工程と、
    前記電磁波調整層に、前記第2の周波数よりも周波数の高い第3の周波数の交流電圧を印加する第2の印加工程と、を有し、
    前記第1の印加工程と前記第2の印加工程とが任意に選択される可変式電磁波調整方法。
  7. 電磁波調整粒子と分散媒とを含む懸濁液を含有する電磁波調整層と、
    前記電磁波調整層に対して交流電圧を印加する印加手段と、
    前記電磁波調整層と直交する方向から前記電磁波調整層を観察したときに、前記電磁波調整粒子の凝集体の密度が0.008個/μm以上0.1個/μm以下の第1の状態、又は前記電磁波調整粒子の凝集体の密度が0.09個/μm以上0.15個/μm以下であって前記第1の状態よりも高い第2の状態となるように前記印加手段により印加される交流電圧を制御する制御手段と、
    を備える可変式電磁波調整素子。
  8. 電磁波調整粒子と分散媒とを含む懸濁液を含有する電磁波調整層と、
    前記電磁波調整層に対して交流電圧を印加する印加手段と、
    前記印加手段により印加される交流電圧の周波数を、第1の周波数から前記第1の周波数よりも周波数の高い第2の周波数にかけて連続的又は段階的に変化させるか、又は前記第2の周波数よりも周波数の高い第3の周波数にする制御手段と、
    を備える可変式電磁波調整素子。
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