JP2016079268A - 新規光応答性ポリマー及びそれを用いた細胞培養用基材 - Google Patents
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Abstract
【課題】効率的な細胞シートを作製するための手段を提供すること。【解決手段】フッ化炭素基を側鎖に含む構成単位と、下記式(1)の構造を側鎖に含む構成単位を含むポリマーが固定化された基材上で細胞を培養し、可視光を照射して細胞シートを剥離させる。Rは水素原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基、又は窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を表す。【選択図】図1
Description
本発明は、新規な光応答性ポリマー、およびそれを用いた細胞培養用基材とその利用に関するものである。
先端医療分野やバイオ分野において、外部刺激により界面における生体分子や細胞との相互作用を制御する試みが革新的技術として発達してきている。なかでも、表面ぬれ性はタンパク質や細胞との相互作用を制御する重要な要素として注目されている。これまでに、刺激応答により表面の“疎水性/親水性”を変化させ、タンパク質や細胞の接着/脱着を制御するスマートバイオ界面が開発されている(非特許文献1)。これに対し、生体分子や細胞との相互作用が著しく小さいとして知られる撥水性材料(非特許文献2など)の表面特性を刺激で変化させ、生体関連物質との相互作用を制御する試みは報告されていない。非特許文献3にはスピロピラン化合物の光特性が開示されているが、それを用いてポリマーを合成することや細胞培養基材への応用については全く示唆がない。
Cole, M. A. et al. Biomaterials 2009 , 30 , 1827 -1850 .
Tamada, Y.; Ikada, Y. J. Biomed. Mater. Res. 1994 , 28 , 783 -789.
Maurer M. K. et al., Adv. Funct. Mater. 2005, 15, 1401-1406
本発明は、照射光の波長の違いにより可逆的に“撥水性(強疎水性)/非撥水性(弱疎水
性)”を変化させることで、生体関連物質の相互作用を任意に制御できるスマートバイオ界面の構築を目的とし、それに使用可能なポリマーと細胞培養基材や細胞及びタンパク質分離用基材を開発することを課題とする。
性)”を変化させることで、生体関連物質の相互作用を任意に制御できるスマートバイオ界面の構築を目的とし、それに使用可能なポリマーと細胞培養基材や細胞及びタンパク質分離用基材を開発することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するために、鋭意検討を行った結果、フッ化炭素基を側鎖に含む構成単位と、spirobenzopyran構造を側鎖に含む構成単位を含むポリマーの合成に成
功し、該ポリマーを用いて製造した基材が細胞培養および細胞シートの作製に好適であることを見出し、本発明を完成させた。
功し、該ポリマーを用いて製造した基材が細胞培養および細胞シートの作製に好適であることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下を提供する。
[1]フッ化炭素基を側鎖に含む構成単位と、下記式(1)の構造を側鎖に含む構成単位を含むポリマー。
Rは水素原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基、又は窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい炭素
数1〜10の炭化水素基を表す。
[2]フッ化炭素基がフルオロアルキル基、フルオロアリールアルキル基またはフルオロアリール基である、[1]に記載のポリマー。
[3]フッ化炭素基を側鎖に含む構成単位と、式(1)の構造を側鎖に含む構成単位の割合がモル比で95:5〜80:20である、[1]または[2]に記載のポリマー。
[4]数平均分子量が10,000〜100,000である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のポリマー。
[5]2,2,3,3,4,4,4-heptafluorobutyl methacrylateと、1'-[2-(methacryloyloxyl)ethyl]-3',3'-dimethyl-6-nitrospiro[2H-1-benzopyran-2,2'-indoline] との重合によって
得られる、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のポリマー。
[6]表面に[1]〜[5]のいずれか一項に記載のポリマーが固定化された、細胞培養用基材。
[7]表面上に[1]〜[5]のいずれか一項に記載のポリマーがパターン化されて固定化されている、「6」に記載の細胞培養用基材。
[8]表面に[1]〜[5]のいずれか一項に記載のポリマーが固定化された、細胞及び/またはタンパク質の分離用基材。
[9]フッ化炭素基を側鎖に含むモノマーと、下記式(1)の構造を側鎖に含むモノマーを重合させる工程を含む、ポリマーの製造方法。
Rは水素原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基、又は窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を表す。
[10]基材上に表面に[1]〜[5]のいずれか一項に記載のポリマーを塗布し、ポリマー塗布部の少なくとも一部に紫外光を照射する工程を含む、細胞培養用基材の製造方法。
[11][6]または[7]に記載の細胞培養用基材を用いて細胞を培養する工程を含む、細胞の培養方法。
[12][6]または[7]に記載の細胞培養用基材を用いて細胞を培養する工程、および可視光を照射して細胞を剥離する工程を含む、細胞シートの製造方法。
[1]フッ化炭素基を側鎖に含む構成単位と、下記式(1)の構造を側鎖に含む構成単位を含むポリマー。
数1〜10の炭化水素基を表す。
[2]フッ化炭素基がフルオロアルキル基、フルオロアリールアルキル基またはフルオロアリール基である、[1]に記載のポリマー。
[3]フッ化炭素基を側鎖に含む構成単位と、式(1)の構造を側鎖に含む構成単位の割合がモル比で95:5〜80:20である、[1]または[2]に記載のポリマー。
[4]数平均分子量が10,000〜100,000である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のポリマー。
[5]2,2,3,3,4,4,4-heptafluorobutyl methacrylateと、1'-[2-(methacryloyloxyl)ethyl]-3',3'-dimethyl-6-nitrospiro[2H-1-benzopyran-2,2'-indoline] との重合によって
得られる、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のポリマー。
[6]表面に[1]〜[5]のいずれか一項に記載のポリマーが固定化された、細胞培養用基材。
[7]表面上に[1]〜[5]のいずれか一項に記載のポリマーがパターン化されて固定化されている、「6」に記載の細胞培養用基材。
[8]表面に[1]〜[5]のいずれか一項に記載のポリマーが固定化された、細胞及び/またはタンパク質の分離用基材。
[9]フッ化炭素基を側鎖に含むモノマーと、下記式(1)の構造を側鎖に含むモノマーを重合させる工程を含む、ポリマーの製造方法。
[10]基材上に表面に[1]〜[5]のいずれか一項に記載のポリマーを塗布し、ポリマー塗布部の少なくとも一部に紫外光を照射する工程を含む、細胞培養用基材の製造方法。
[11][6]または[7]に記載の細胞培養用基材を用いて細胞を培養する工程を含む、細胞の培養方法。
[12][6]または[7]に記載の細胞培養用基材を用いて細胞を培養する工程、および可視光を照射して細胞を剥離する工程を含む、細胞シートの製造方法。
本発明により、可視光照射という低刺激条件で細胞を脱着させることができるようになったので、細胞シートを効率よく品質を保持した状態で提供できる。また、照射した領域のみ、剥離できるので、エリア制御も可能である。
本発明のポリマーは、フッ化炭素基を側鎖に含む構成単位と、下記式(1)の構造を側鎖に含む構成単位を含む。これら以外の構成単位が含まれてもよい。
ここで、フッ化炭素基としては、フッ素が結合した炭素原子を含む基であればよいが、フルオロアルキル基、フルオロアリールアルキル基またはフルオロアリール基が例示される。フルオロアルキル基、フルオロアリールアルキル基は二重結合を有するフルオロアルキレン基やフルオロアリールアルキレン基でもよい。また、このフルオロアルキル基の一部のメチレンが酸素(-O-)やカルボニル(-CO-)や-NH-などで置き換えられていてもよい
。
。
フルオロアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状のいずれでもよい。このフルオロアルキル基の炭素数は通常1〜20であり、好ましくは3〜14である。
かかるフルオロアルキル基の好ましい具体例には、3,3,3-トリフルオロプロピル、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル、
3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル、トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル、ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロドデシル、ヘンイ
コサフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロドデシル、ペンタコサフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロテトラデシル、(3-ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルなどが含まれ
る。
かかるフルオロアルキル基の好ましい具体例には、3,3,3-トリフルオロプロピル、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル、
3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル、トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル、ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロドデシル、ヘンイ
コサフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロドデシル、ペンタコサフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロテトラデシル、(3-ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルなどが含まれ
る。
フルオロアリールアルキル基は、フッ素を含有するアリール基を含むアルキル基であって、その炭素数が7〜20であるのが好ましく、さらに7〜10がより好ましい。含まれるフッ素はアリール基中の任意の1または2以上の水素が、フッ素またはトリフルオロメチル基として置き換えられたものが好ましい。アリール基部分の例にはフェニル基、ナフチル基などのほか、ヘテロアリール基も含まれ、アルキル基部分の例には、メチル、エチルおよびプロピルなどが含まれる。
また、フルオロアリール基は、アリール基中の任意の1または2以上の水素が、フッ素またはトリフルオロメチル基で置き換えられているものであり、その炭素数は6〜20であることが好ましく、より好ましくは6である。かかるアリール基の例にはフェニル基、ナフチル基などのほか、ヘテロアリール基も含まれる。具体的にはペンタフルオロフェニル基などのフルオロフェニル基や、トリフルオロメチルフェニル基が挙げられる。
フッ化炭素基を側鎖に含む構成単位は、上記のようなフッ化炭素基が付加重合性官能基の重合残基に結合していることが好ましい。
付加重合性官能基の例としては、末端オレフィン型または内部オレフィン型のラジカル重
合性官能基を有する基;ビニルエーテル、プロペニルエーテルなどのカチオン重合性官能基を有する基;およびビニルカルボキシル、シアノアクリロイルなどのアニオン重合性官能基を有する基が含まれるが、好ましくはラジカル重合性官能基が挙げられる。
付加重合性官能基の例としては、末端オレフィン型または内部オレフィン型のラジカル重
合性官能基を有する基;ビニルエーテル、プロペニルエーテルなどのカチオン重合性官能基を有する基;およびビニルカルボキシル、シアノアクリロイルなどのアニオン重合性官能基を有する基が含まれるが、好ましくはラジカル重合性官能基が挙げられる。
ラジカル重合性官能基は、ラジカル重合する基であれば特に制限はなく、例えばメタクリロイル、アクリロイル、アリル、スチリル、α-メチルスチリル、ビニル、ビニルエーテ
ル、ビニルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-ビニルアミド、マレイン
酸エステル、フマル酸エステル、N-置換マレイミドなどの官能基が含まれ、中でも(メ
タ)アクリルまたはスチリルを含む基が好ましい。ここに(メタ)アクリルとは、アクリルおよびメタクリルの総称であり、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。以下、同様とする。
ル、ビニルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-ビニルアミド、マレイン
酸エステル、フマル酸エステル、N-置換マレイミドなどの官能基が含まれ、中でも(メ
タ)アクリルまたはスチリルを含む基が好ましい。ここに(メタ)アクリルとは、アクリルおよびメタクリルの総称であり、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。以下、同様とする。
フッ化炭素基が(メタ)アクリル基またはスチリル基に結合したモノマーとしては、以下の(2)または(3)の化合物があげられ、これらに由来するポリマー構成単位としては、以下の(2’)または(3’)の構成単位があげられる。
式(2)、(2’)、(3)、(3’)において、R1は上述したようなフッ化炭素基を
含む基を表している。また、式(2)、(2’)において、R2は、水素、炭素数1〜5
の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル、または炭素数6〜10のアリールを示し、好ましくは水素または炭素数1〜3のアルキルを示し、より好ましくは水素またはメチルを示す。
含む基を表している。また、式(2)、(2’)において、R2は、水素、炭素数1〜5
の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル、または炭素数6〜10のアリールを示し、好ましくは水素または炭素数1〜3のアルキルを示し、より好ましくは水素またはメチルを示す。
一方、本発明のポリマーを構成する式(1)の構造を含む構成単位としては、式(1)の構造が上述したような付加重合性官能基に結合しているモノマー由来の構成単位があげられる。
なお、後述のように式(1)の構造は紫外光照射によってC−O結合が開裂すると考えら
れるが、そのような構造も当然に含まれる。
れるが、そのような構造も当然に含まれる。
式(1)において、Rは水素原子(−H)、ニトロ基(−NO2)、ヒドロキシル基(−
OH)、アミノ基(−NR3 2)(R3は水素またはアルキル基)、メルカプト基(−SH
)、又は窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい炭素数1〜10(好ましくは炭素数1〜5)の炭化水素基を表している。炭化水素基は直鎖でも分岐鎖でもよいし、脂肪族でも芳香族でもよい。なお、「窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい」とは、アミノ基(−NH2)、ニトロ基(−NO2)、シアノ基(−CN)、イソシアネート基(−NCO)、ヒドロキシル基(−OH)、アルデヒド基(−CHO)、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)、スルホン酸基(−SO3H)等の窒
素原子、酸素原子、硫黄原子等を含む官能基を含んでいてもよいことを意味するほか、エーテル基(−O−)、イミノ基(−NH−)、チオエーテル基(−S−)、カルボニル基(−C(=O)−)、アミド基(−C(=O)−NH−)、エステル基(−C(=O)−O−)、チオエステル基(−C(=O)−S−)等の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を含む連結基を炭素骨格の内部又は末端に含んでいてもよいことを意味する。
例えば、以下のような構造が例示される。
OH)、アミノ基(−NR3 2)(R3は水素またはアルキル基)、メルカプト基(−SH
)、又は窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい炭素数1〜10(好ましくは炭素数1〜5)の炭化水素基を表している。炭化水素基は直鎖でも分岐鎖でもよいし、脂肪族でも芳香族でもよい。なお、「窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい」とは、アミノ基(−NH2)、ニトロ基(−NO2)、シアノ基(−CN)、イソシアネート基(−NCO)、ヒドロキシル基(−OH)、アルデヒド基(−CHO)、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)、スルホン酸基(−SO3H)等の窒
素原子、酸素原子、硫黄原子等を含む官能基を含んでいてもよいことを意味するほか、エーテル基(−O−)、イミノ基(−NH−)、チオエーテル基(−S−)、カルボニル基(−C(=O)−)、アミド基(−C(=O)−NH−)、エステル基(−C(=O)−O−)、チオエステル基(−C(=O)−S−)等の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を含む連結基を炭素骨格の内部又は末端に含んでいてもよいことを意味する。
例えば、以下のような構造が例示される。
式(1)の構造が付加重合性官能基に結合しているモノマーとして具体的には、以下の式(4)または(5)の化合物があげられ、それに由来する構成単位としては以下の式(4’)または(5’)の構成単位があげられる。
式(4)、(4’)、(5)、(5’)において、Y1およびY2は、炭素数1〜10のアルキレン(任意のメチレンが酸素(-O-)やカルボニル(-CO-)や-NH-で置き換えられて
いてもよい)を示し、好ましくは炭素数2〜6のアルキレンを示す。また、式(4)、(4’)において、R2は、水素、炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル、または
炭素数6〜10のアリールを示し、好ましくは水素または炭素数1〜3のアルキルを示し、より好ましくは水素またはメチルを示す。
いてもよい)を示し、好ましくは炭素数2〜6のアルキレンを示す。また、式(4)、(4’)において、R2は、水素、炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル、または
炭素数6〜10のアリールを示し、好ましくは水素または炭素数1〜3のアルキルを示し、より好ましくは水素またはメチルを示す。
本発明のポリマーとして、より具体的には、トリフルオロエチルアクリレート、ヘプタフルオロブチルアクリレート等のフルオロアルキルアクリレート系モノマー、トリフルオロエチルメタクリレート、ヘプタフルオロブチルメタクリレート等のフルオロアルキルメタクリレート系モノマー、トリフルオロメチルスチレン、ペンタフルオロスチレン等のフルオロスチレン系のモノマーと、1'-[2-(methacryloyloxyl)ethyl]-3',3'-dimethyl-6-nitrospiro[2H-1-benzopyran-2,2'-indoline] との重合によって得られるポリマーがあげられる。
付加重合は、重合開始剤を用いて行うことができる。
用いられる重合開始剤の例には、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-ブチロニトリル)、ジメチル-2,2'-アゾビスイソブチレート、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリ
ル)などのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチ
ルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシアセテート、
t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエートなどの過酸化
物;およびテトラエチルチウラムジスルフィドなどのジチオカルバメート;などのラジカル重合開始剤が含まれる。
用いられる重合開始剤の例には、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-ブチロニトリル)、ジメチル-2,2'-アゾビスイソブチレート、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリ
ル)などのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチ
ルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシアセテート、
t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエートなどの過酸化
物;およびテトラエチルチウラムジスルフィドなどのジチオカルバメート;などのラジカル重合開始剤が含まれる。
さらに重合反応の例には、リビングラジカル重合、および活性エネルギー線重合なども含まれる。リビングラジカル重合は、原子移動ラジカル重合;可逆的付加開裂連鎖移動;ヨウ素移動重合;イニファータ重合に代表される重合開始剤を用いて行うことができる。
なお、付加重合において用いられる重合開始剤の量は、例えば、単量体の総モル数に対して約0.01〜10mol%とすればよい。
なお、付加重合において用いられる重合開始剤の量は、例えば、単量体の総モル数に対して約0.01〜10mol%とすればよい。
また前記付加重合において、連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤を用いることで、分子量を適切に制御することができる。連鎖移動剤の例には、チオ-β-ナフトール、チオフェノール、ブチルメルカプタン、エチルチオグリコレート、メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、イソプロピルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、ドデカンチオール、
チオリンゴ酸、ペンタエリスリトールテトラ(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタ
エリスリトールテトラ(3-メルカプトアセテート)などのメルカプタン類;ジフェニル
ジサルファイド、ジエチルジチオグリコレート、ジエチルジサルファイドなどのジサルファイド類;などのほか、トルエン、メチルイソブチレート、四塩化炭素、イソプロピルベンゼン、ジエチルケトン、クロロホルム、エチルベンゼン、塩化ブチル、s-ブチルアル
コール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、塩化プロピレン、メチルクロロホルム、t-ブチルベンゼン、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、酢酸、酢酸エ
チル、アセトン、ジオキサン、四塩化エタン、クロロベンゼン、メチルシクロヘキサン、t−ブチルアルコール、ベンゼンなどが含まれる。特にメルカプト酢酸は、重合体の分子量を下げて、分子量分布を均一にさせ得る。連鎖移動剤は単独でも、または2種以上を混合しても使用することができる。
チオリンゴ酸、ペンタエリスリトールテトラ(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタ
エリスリトールテトラ(3-メルカプトアセテート)などのメルカプタン類;ジフェニル
ジサルファイド、ジエチルジチオグリコレート、ジエチルジサルファイドなどのジサルファイド類;などのほか、トルエン、メチルイソブチレート、四塩化炭素、イソプロピルベンゼン、ジエチルケトン、クロロホルム、エチルベンゼン、塩化ブチル、s-ブチルアル
コール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、塩化プロピレン、メチルクロロホルム、t-ブチルベンゼン、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、酢酸、酢酸エ
チル、アセトン、ジオキサン、四塩化エタン、クロロベンゼン、メチルシクロヘキサン、t−ブチルアルコール、ベンゼンなどが含まれる。特にメルカプト酢酸は、重合体の分子量を下げて、分子量分布を均一にさせ得る。連鎖移動剤は単独でも、または2種以上を混合しても使用することができる。
本発明の重合体の具体的な製造方法は、通常の付加重合体の製造方法と同様にすればよく、例えば、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、塊状−懸濁重合法、超臨界CO2を用いた重合法を用いることができる。
溶液重合法による場合には、適切な溶媒中に、上記のフッ化炭素基が付加重合性官能基に結合しているモノマーと、式(1)の構造が付加重合性官能基に結合しているモノマーと、重合開始剤などを溶解して、加熱または活性エネルギー線を照射して付加重合反応させればよい。
溶液重合法による場合には、適切な溶媒中に、上記のフッ化炭素基が付加重合性官能基に結合しているモノマーと、式(1)の構造が付加重合性官能基に結合しているモノマーと、重合開始剤などを溶解して、加熱または活性エネルギー線を照射して付加重合反応させればよい。
重合反応に用いられる溶媒の例には、炭化水素系溶媒(ベンゼン、トルエンなど)、エーテル系溶媒(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼンなど)、ハロゲン化炭化水素系溶媒(塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼンなど)、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコール、t-ブチルアルコールなど)、ニトリル系溶媒(アセト
ニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなど)、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、カーボネート系溶媒(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、アミド系溶媒(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド)、ハイドロクロロフルオロカーボン系溶媒(HCFC−141b、HCFC−225)、ハイドロフルオロカーボン(HFCs)系溶媒(炭素数2〜4、5および6以上のHFCs)、パーフルオロカーボン系溶媒(パーフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン)、脂環式ハイドロフルオロカーボン系溶媒(フルオロシクロペンタン、フルオロシクロブタン)、酸素含有フッ素系溶媒(フルオロエーテル、フルオロポリエーテル、フルオロケトン、フルオロアルコール)、芳香族系フッ素溶媒(α,α,α-トリフルオロトルエン、
ヘキサフルオロベンゼン)などが含まれる。これらを単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
用いられる溶媒の量は、例えば、単量体濃度を約10〜80重量%とする量であればよい。
ニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなど)、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、カーボネート系溶媒(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、アミド系溶媒(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド)、ハイドロクロロフルオロカーボン系溶媒(HCFC−141b、HCFC−225)、ハイドロフルオロカーボン(HFCs)系溶媒(炭素数2〜4、5および6以上のHFCs)、パーフルオロカーボン系溶媒(パーフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン)、脂環式ハイドロフルオロカーボン系溶媒(フルオロシクロペンタン、フルオロシクロブタン)、酸素含有フッ素系溶媒(フルオロエーテル、フルオロポリエーテル、フルオロケトン、フルオロアルコール)、芳香族系フッ素溶媒(α,α,α-トリフルオロトルエン、
ヘキサフルオロベンゼン)などが含まれる。これらを単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
用いられる溶媒の量は、例えば、単量体濃度を約10〜80重量%とする量であればよい。
反応温度は特に制限されず、目安として約0〜200℃であればよく、室温〜約150℃が好ましい。重合反応は、単量体の種類や、溶媒の種類に応じて、減圧、常圧または加圧下で行うことができる。
本発明のポリマーにおける、フッ化炭素基を側鎖に含む構成単位と、式(1)の構造を側鎖に含む構成単位の割合は、用途に応じて調節されるが、下記に示す細胞培養用途に使用される場合は、それらの割合がモル比で95:5〜80:20であることが好ましい。
また、本発明のポリマーの分子量も用途に応じて調節されるが、下記に示す細胞培養用途に使用される場合は、数平均分子量は10,000〜100,000であることが好ましい。
また、本発明のポリマーの分子量も用途に応じて調節されるが、下記に示す細胞培養用途に使用される場合は、数平均分子量は10,000〜100,000であることが好ましい。
本発明のポリマーの用途は特に制限されるものではないが、細胞培養用基材に使用することが特に好ましい。すなわち、本発明は、本発明のポリマーが表面に固定化された細胞培養用基材を提供する。
本発明のポリマーが表面に固定化される細胞培養基材の材質は、通常細胞培養に用いられるガラス、改質ガラス、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等の物質のみならず、一般に形態付与が可能である物質、例えば、上記以外の高分子化合物、セラミックス、金属類など全て用いることができる。その形状は、ペトリ皿等の細胞培養皿に限定されることはなく、プレート、ファイバー、(多孔質)粒子であってもよい。また、一般に細胞培養等に用いられる容器の形状(フラスコ等)を有したものであっても差し支えない。
基材の表面に本発明のポリマーを固定化するためには、本発明のポリマーを上述したような溶媒に溶解し、その溶液を表面に塗布するとよい。
なお、効率よく固定化し、細胞接着性を高めるためには、ポリマー固定化前に基材の表面を疎水化処理することが好ましい。
基材表面を疎水化する方法としては、例えば、ジメチルジクロルシラン、トリメチルアルコキシシラン等を用いて処理する方法が例示される。
なお、効率よく固定化し、細胞接着性を高めるためには、ポリマー固定化前に基材の表面を疎水化処理することが好ましい。
基材表面を疎水化する方法としては、例えば、ジメチルジクロルシラン、トリメチルアルコキシシラン等を用いて処理する方法が例示される。
基材表面へのポリマーの被覆量は、例えば、0.01〜10μg/cm2とすることがで
きる。
被覆量の測定は常法に従えば良く、例えばFT-IR-ATR法、元素分析法、ESCA等を利用すれば良く、いずれの方法を用いても良い。
基材表面へ固定化されるポリマー層の厚さは例えば、1〜200nmとすることができる。
なお、本発明の細胞培養用基材は、基材上で、ポリマーが固定化された部分と固定化されていない部分が存在し、それらがパターン化されていてもよい。
きる。
被覆量の測定は常法に従えば良く、例えばFT-IR-ATR法、元素分析法、ESCA等を利用すれば良く、いずれの方法を用いても良い。
基材表面へ固定化されるポリマー層の厚さは例えば、1〜200nmとすることができる。
なお、本発明の細胞培養用基材は、基材上で、ポリマーが固定化された部分と固定化されていない部分が存在し、それらがパターン化されていてもよい。
式(1)の構造は、紫外光照射により、右のスピロピラン構造から左のメロシアニン構造に変化し、それにより、細胞接着性が変化すると考えられる。
したがって、本発明の細胞培養用基材は、使用前に紫外光を照射し、細胞接着性を高くなるようにしておくことが好ましい。照射される紫外光の波長は200〜380nmであればよいが、350nm付近が好ましい。紫外光の強度は10〜20mW/cm2が好ましく、照射時間は1〜5分が好ましい。
一方、本発明の細胞培養用基材を用いて細胞を培養した後、細胞を基材から剥離させるためには、基材に可視光を照射し、式(1)の構造を細胞接着性の低いスピロピラン構造に変化させることが好ましい。照射される可視光の波長は400〜700nmであればよいが、500〜650nmが好ましく、570nm付近が好ましい。可視光の強度は2〜20mW/cm2が好ましく、照射時間は5〜30分が好ましい。
また、可視光を部分的に照射し、可視光を照射した部分のみが剥離されるようにしてもよい。
また、可視光を部分的に照射し、可視光を照射した部分のみが剥離されるようにしてもよい。
本発明の細胞培養用基材を用いて培養される細胞の種類は特に制限されないが、動物細胞が好ましく、例えば、動物細胞の由来として、ヒト、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、ヌードマウス、マウス、モルモット、ブタ、ヒツジ、チャイニーズハムスター、ウシ、マーモセット、アフリカミドリザル等に由来する細胞が挙げられるが特に限定されるものではない。また、本発明で用いる培地は、通常の細胞培養に使用される培地であれば特に限定されず、細胞の種類に応じて適宜選択される。
また、本発明の光応答性細胞培養用基材であれば、培養基材に可視光を照射することによって培養細胞シートを酵素処理なく剥離させることができる。その際、培養液中において剥離処理を行うことも、その他の等張液中において行うことも可能であり、目的に合わせて選択することができる。
また、本発明の光応答性細胞培養用基材であれば、培養基材に可視光を照射することによって培養細胞シートを酵素処理なく剥離させることができる。その際、培養液中において剥離処理を行うことも、その他の等張液中において行うことも可能であり、目的に合わせて選択することができる。
本発明のポリマーは光に依存して細胞やタンパク質を脱着できるので、本発明のポリマーをシリカやセラミックスなどの無機担体、アガロースやラテックスなどの高分子担体、金属微粒子などの担体に固定化することで、クロマトグラフィー材料などの細胞やタンパク質の分離用基材として使用することも可能である。
細胞やタンパク質の分離に使用する際は、使用前にポリマーへ紫外光を照射し、細胞やタンパク質との接着性が高くなるようにしておくことが好ましい。そして、細胞やタンパク質含有試料と混合し、基材に結合させて分離した後、基材へ可視光を照射することで細胞やタンパク質を基材から剥離させることができる。
細胞やタンパク質の分離に使用する際は、使用前にポリマーへ紫外光を照射し、細胞やタンパク質との接着性が高くなるようにしておくことが好ましい。そして、細胞やタンパク質含有試料と混合し、基材に結合させて分離した後、基材へ可視光を照射することで細胞やタンパク質を基材から剥離させることができる。
以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
1. 光応答性フルオロポリマーの合成
2,2,3,3,4,4,4-heptafluorobutyl methacrylate (7FMA, 1.69 g)、1'-[2-(methacryloyloxyl)ethyl]-3',3'-dimethyl-6-nitrospiro[2H-1-benzopyran-2,2'-indoline] (SpMA) (
既報により合成、Tao Wu, Gang Zou, Jinming Hu, and Shiyong Liu, Chem. Mater., 21,
3788-3798(2009))(0.45 g)、2-cyano-2-propyl dodecyl trithiocarbonate (12.8 mg)
、2,2'-azobis(2-methylpropionitrile) (2.5 mg)を1,4-dioxane (6 mL)中に溶解し、減
圧下で凍結-融解操作により脱気処理を行なった後、70 ℃で24時間重合した。溶媒を減圧留去し、残渣物をα,α,α-trifluorotolueneに再溶解させ、methanolへ滴下し、ポリ
マーを回収した(1.12 g) [P(7FMA132-co-SpMA20), 数平均分子量: 44,100, モノマーユニット数: 7FMA/SpMA=132/20]。
2,2,3,3,4,4,4-heptafluorobutyl methacrylate (7FMA, 1.69 g)、1'-[2-(methacryloyloxyl)ethyl]-3',3'-dimethyl-6-nitrospiro[2H-1-benzopyran-2,2'-indoline] (SpMA) (
既報により合成、Tao Wu, Gang Zou, Jinming Hu, and Shiyong Liu, Chem. Mater., 21,
3788-3798(2009))(0.45 g)、2-cyano-2-propyl dodecyl trithiocarbonate (12.8 mg)
、2,2'-azobis(2-methylpropionitrile) (2.5 mg)を1,4-dioxane (6 mL)中に溶解し、減
圧下で凍結-融解操作により脱気処理を行なった後、70 ℃で24時間重合した。溶媒を減圧留去し、残渣物をα,α,α-trifluorotolueneに再溶解させ、methanolへ滴下し、ポリ
マーを回収した(1.12 g) [P(7FMA132-co-SpMA20), 数平均分子量: 44,100, モノマーユニット数: 7FMA/SpMA=132/20]。
2. 光応答性ポリマー被覆表面の作製法(図1)
P(7FMA132-co-SpMA20)をα,α,α-trifluorotolueneに1.0w/v%濃度で溶解し、疎水化表面ガラス(カバーガラスの表面を酸素プラズマ処理したものにhexyltrimethoxysilaneを
シランカップリング反応で導入したもの)(24 mm×25 mm)上に200 μL滴下し、スピンコ
ーティングした(3000 rpm, 30 sec)。純水で洗浄し、減圧乾燥することでポリマー被覆ガラス基板を作製した(ポリマー修飾量: 6.1 μg/cm2、ポリマー膜厚: 36 nm)。
P(7FMA132-co-SpMA20)をα,α,α-trifluorotolueneに1.0w/v%濃度で溶解し、疎水化表面ガラス(カバーガラスの表面を酸素プラズマ処理したものにhexyltrimethoxysilaneを
シランカップリング反応で導入したもの)(24 mm×25 mm)上に200 μL滴下し、スピンコ
ーティングした(3000 rpm, 30 sec)。純水で洗浄し、減圧乾燥することでポリマー被覆ガラス基板を作製した(ポリマー修飾量: 6.1 μg/cm2、ポリマー膜厚: 36 nm)。
3. 光応答性ポリマー被覆表面の被覆量の評価
ATR/FT-IR測定から、エステルのC=O伸縮振動 (1750 cm-1)と Si-O変角振動(1000cm-1)の
ピーク強度を比較することで、0.50, 0.75, 1.00w/v%のポリマー濃度でスピンコートした表面のポリマー修飾量を算出したところ、それぞれ2.54, 4.40, 6.08 μg/cm2であった。この結果から、スピンコート時のポリマー濃度を調整することで、ポリマー修飾量が制御できること示された。
ATR/FT-IR測定から、エステルのC=O伸縮振動 (1750 cm-1)と Si-O変角振動(1000cm-1)の
ピーク強度を比較することで、0.50, 0.75, 1.00w/v%のポリマー濃度でスピンコートした表面のポリマー修飾量を算出したところ、それぞれ2.54, 4.40, 6.08 μg/cm2であった。この結果から、スピンコート時のポリマー濃度を調整することで、ポリマー修飾量が制御できること示された。
4. 光応答性ポリマー被覆表面の光学特性の評価〜1
1.0 w/v% P(7FMA132-co-SpMA20)溶液をスピンコートした基材表面のPBS(37℃)中に
おける吸収スペクトル測定結果を図2に示す。 紫外光照射 (352 nm)により、575 nm付近の merocyanine (MC)由来の吸収が増大した。また紫外光照射によりMC由来の吸収が平衡
状態になった後、可視光照射 (蛍光灯を使用)することで、MC由来の吸収が減少すること
が分かった。この結果から、照射光波長により表面に存在する spirobenzopyranの光異性化反応が誘起できること明らかになったともに、光波長変化のサイクルにより異性化反応の可逆性も確認された。
1.0 w/v% P(7FMA132-co-SpMA20)溶液をスピンコートした基材表面のPBS(37℃)中に
おける吸収スペクトル測定結果を図2に示す。 紫外光照射 (352 nm)により、575 nm付近の merocyanine (MC)由来の吸収が増大した。また紫外光照射によりMC由来の吸収が平衡
状態になった後、可視光照射 (蛍光灯を使用)することで、MC由来の吸収が減少すること
が分かった。この結果から、照射光波長により表面に存在する spirobenzopyranの光異性化反応が誘起できること明らかになったともに、光波長変化のサイクルにより異性化反応の可逆性も確認された。
5. 光応答性ポリマー被覆表面の細胞接着性の評価
ペトリディッシュ中にポリマー被覆ガラス基板(濃度0.5, 0.75, 1.0 w/v%のポリマー溶
液をそれぞれ使用して被覆)を設置し、37 ℃のリン酸緩衝液中で終夜インキュベートし
た後、紫外線(352 nm)または可視光(530 nm)を3分間照射した。この表面上にウシ頸
動脈血管内皮細胞 (BAEC)を2×104 cells/cm2で播種し、細胞培養液(10v/v% Fetal bovine serum、1v/v% penicillin-streptomycin solution含有Dulbecco's modified Eagle's medium)で37℃の5 % CO2インキュベーターで培養を行なった。3,6,12,24時間培
養した後のBAEC接着挙動を図3に示す。細胞培養前に可視光照射した強疎水性表面では接着が大きく抑制されたのに対して、細胞培養前に紫外光照射により疎水性を低下させた表面では細胞接着が観察された。
これらの結果から、撥水性/光応答性ポリマーを基板表面に導入することで、紫外光照射
により撥水性(強疎水性)から非撥水性(弱疎水性)に変化させ、細胞接着性を増大させることが可能であることが示された。
ペトリディッシュ中にポリマー被覆ガラス基板(濃度0.5, 0.75, 1.0 w/v%のポリマー溶
液をそれぞれ使用して被覆)を設置し、37 ℃のリン酸緩衝液中で終夜インキュベートし
た後、紫外線(352 nm)または可視光(530 nm)を3分間照射した。この表面上にウシ頸
動脈血管内皮細胞 (BAEC)を2×104 cells/cm2で播種し、細胞培養液(10v/v% Fetal bovine serum、1v/v% penicillin-streptomycin solution含有Dulbecco's modified Eagle's medium)で37℃の5 % CO2インキュベーターで培養を行なった。3,6,12,24時間培
養した後のBAEC接着挙動を図3に示す。細胞培養前に可視光照射した強疎水性表面では接着が大きく抑制されたのに対して、細胞培養前に紫外光照射により疎水性を低下させた表面では細胞接着が観察された。
これらの結果から、撥水性/光応答性ポリマーを基板表面に導入することで、紫外光照射
により撥水性(強疎水性)から非撥水性(弱疎水性)に変化させ、細胞接着性を増大させることが可能であることが示された。
6. 細胞培養および可視光照射による細胞剥離実験〜1
ペトリディッシュ中にポリマー被覆ガラス基板(濃度1.0 w/v%のポリマー溶液を使用して被覆)を設置し、37 ℃のリン酸緩衝液中で終夜インキュベートした後、紫外線(352 nm
)を3分間照射した。この表面上にウシ頸動脈血管内皮細胞 (BAEC)を1×104 cells/cm2で播種し、細胞培養液(10v/v% Fetal bovine serum、1v/v% penicillin-streptomycin solution含有Dulbecco's modified Eagle's medium)で37℃の5 % CO2インキュベーター24時間培養を行い、その後、可視光(530nm)を室温で30分間照射した。その結果、図4(B)に示すように、細胞が接着した表面に対して可視光照射(30 min)することで、細胞を自発的に剥離することが可能であった。これは、spirobenzopyranが MC 型から SP 型に変化
することで、表面疎水性が増大し、細胞接着性が著しく低下したためであると考えられた。
ペトリディッシュ中にポリマー被覆ガラス基板(濃度1.0 w/v%のポリマー溶液を使用して被覆)を設置し、37 ℃のリン酸緩衝液中で終夜インキュベートした後、紫外線(352 nm
)を3分間照射した。この表面上にウシ頸動脈血管内皮細胞 (BAEC)を1×104 cells/cm2で播種し、細胞培養液(10v/v% Fetal bovine serum、1v/v% penicillin-streptomycin solution含有Dulbecco's modified Eagle's medium)で37℃の5 % CO2インキュベーター24時間培養を行い、その後、可視光(530nm)を室温で30分間照射した。その結果、図4(B)に示すように、細胞が接着した表面に対して可視光照射(30 min)することで、細胞を自発的に剥離することが可能であった。これは、spirobenzopyranが MC 型から SP 型に変化
することで、表面疎水性が増大し、細胞接着性が著しく低下したためであると考えられた。
7. 光応答性ポリマー被覆表面の光学特性の評価〜2
ポリマー修飾ガラス基板を大気中で静的接触角測定した結果(図5)、紫外光照射した表
面のぬれ性が増大することが分かった。これは、疎水性のspiropyran型から親水性のMC型へ光異性化することでガラス基板上の高分子層の親水性が増加しためであると考えられる。一方、ポリマー修飾量が増加するともに、紫外光照射後の接触角の変化幅が増大することが分かった。
ポリマー修飾ガラス基板を大気中で静的接触角測定した結果(図5)、紫外光照射した表
面のぬれ性が増大することが分かった。これは、疎水性のspiropyran型から親水性のMC型へ光異性化することでガラス基板上の高分子層の親水性が増加しためであると考えられる。一方、ポリマー修飾量が増加するともに、紫外光照射後の接触角の変化幅が増大することが分かった。
8. 細胞培養および可視光照射による細胞剥離実験〜2
ペトリディッシュ中にポリマー被覆ガラス基板を設置し、37 ℃のリン酸緩衝液中で終夜
インキュベートした後、352 nmの紫外線を3分間照射した。この表面上にウシ頸動脈血管
内皮細胞 (BAEC)を2×104 cells/cm2で播種し、細胞培養液(10v/v% Fetal bovine serum
、1v/v% penicillin-streptomycin solution含有Dulbecco's modified Eagle's medium)
で37℃の5 % CO2インキュベーターで3日間培養を行なった。その後、5 mm孔を有するフォトマスクを用いてポリマー被覆表面に対して室温で可視光(530 nm)を30分間照射し、位相差顕微鏡を用いて光照射部位の細胞性接着を観察した。その結果、図6に示すように、可視光照射した部位のみ細胞を剥離させることが可能であった。
ペトリディッシュ中にポリマー被覆ガラス基板を設置し、37 ℃のリン酸緩衝液中で終夜
インキュベートした後、352 nmの紫外線を3分間照射した。この表面上にウシ頸動脈血管
内皮細胞 (BAEC)を2×104 cells/cm2で播種し、細胞培養液(10v/v% Fetal bovine serum
、1v/v% penicillin-streptomycin solution含有Dulbecco's modified Eagle's medium)
で37℃の5 % CO2インキュベーターで3日間培養を行なった。その後、5 mm孔を有するフォトマスクを用いてポリマー被覆表面に対して室温で可視光(530 nm)を30分間照射し、位相差顕微鏡を用いて光照射部位の細胞性接着を観察した。その結果、図6に示すように、可視光照射した部位のみ細胞を剥離させることが可能であった。
9. 可視光照射による細胞シート剥離操作
ペトリディッシュ中にポリマー被覆基板を設置し、この表面上にウシ頸動脈血管内皮細胞
(BAEC)を1×105 cells/cm2で播種し、細胞培養液(10v/v% Fetal bovine serum、1v/v% penicillin-streptomycin solution含有Dulbecco's modified Eagle's medium)で37 ℃の5% CO2インキュベーターで5日間培養を行なった。その後、細胞培養表面に室温で可視光(530 nm、1.7mW/cm2)を30分間照射し、シート状細胞組織(細胞シート)を回収した。結果
を図7に示す。
ペトリディッシュ中にポリマー被覆基板を設置し、この表面上にウシ頸動脈血管内皮細胞
(BAEC)を1×105 cells/cm2で播種し、細胞培養液(10v/v% Fetal bovine serum、1v/v% penicillin-streptomycin solution含有Dulbecco's modified Eagle's medium)で37 ℃の5% CO2インキュベーターで5日間培養を行なった。その後、細胞培養表面に室温で可視光(530 nm、1.7mW/cm2)を30分間照射し、シート状細胞組織(細胞シート)を回収した。結果
を図7に示す。
本発明の光応答型撥水性表面を有する細胞培養基材は、照射光波長の違いにより可逆的に細胞接着性を制御する新規バイオセパレーション技術への貢献が期待され、医療、研究などの分野で有用である。また、本発明によるポリマーを固定化した担体は、細胞やタンパク質の分離に使われるクロマトグラフィー用基材としても利用可能である。
Claims (12)
- フッ化炭素基を側鎖に含む構成単位と、下記式(1)の構造を側鎖に含む構成単位を含むポリマー。
- フッ化炭素基がフルオロアルキル基、フルオロアリールアルキル基またはフルオロアリール基である、請求項1に記載のポリマー。
- フッ化炭素基を側鎖に含む構成単位と、式(1)の構造を側鎖に含む構成単位の割合がモル比で95:5〜80:20である、請求項1または2に記載のポリマー。
- 数平均分子量が10,000〜100,000である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリマー。
- 2,2,3,3,4,4,4-heptafluorobutyl methacrylateと、1'-[2-(methacryloyloxyl)ethyl]-3',3'-dimethyl-6-nitrospiro[2H-1-benzopyran-2,2'-indoline] との重合によって得られる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリマー。
- 表面に請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリマーが固定化された、細胞培養用基材。
- 表面上に請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリマーがパターン化されて固定化されている、請求項6に記載の細胞培養用基材。
- 表面に請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリマーが固定化された、細胞及び/またはタンパク質の分離用基材。
- フッ化炭素基を側鎖に含むモノマーと、下記式(1)の構造を側鎖に含むモノマーを重合させる工程を含む、ポリマーの製造方法。
- 基材上に表面に請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリマーを塗布し、ポリマー塗布部の少なくとも一部に紫外光を照射する工程を含む、細胞培養用基材の製造方法。
- 請求項6または7に記載の細胞培養用基材を用いて細胞を培養する工程を含む、細胞の培養方法。
- 請求項6または7に記載の細胞培養用基材を用いて細胞を培養する工程、および可視光を照射して細胞を剥離する工程を含む、細胞シートの製造方法。
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Cited By (1)
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---|---|---|---|---|
KR102207286B1 (ko) * | 2019-07-19 | 2021-01-25 | 인하대학교 산학협력단 | 스피로피란 구조를 포함하는 고불소화 고분자 포토레지스트 및 이를 이용한 유기전자소자의 제조방법 |
-
2014
- 2014-10-15 JP JP2014210736A patent/JP2016079268A/ja active Pending
Cited By (1)
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