JP2016079225A - 含フッ素オレフィン組成物およびそれを用いた洗浄方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】環境への負荷が少なく、取り扱いも安全で、樹脂を構成要素とする物品(ワーク)から油脂等の異物を効果的に洗浄できる、新規液体混合物の提供。【解決手段】環境へのインパクトの少ない(ハイドロ)クロロフルオロオレフィンであるHCFO−1233zd(Z)/CFO−1214yaの質量比率が、4/96〜40/60である洗浄用組成物。ポリマーアタックを生じにくく、なおかつ、油脂成分の溶解性は十分に高い洗浄組成物。【選択図】なし
Description
本発明は、ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)として知られる1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、クロロフルオロオレフィン(CFO)として知られる1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含有する組成物に関する。特にこの組成物を用いた、樹脂を含む物体の洗浄方法に関する。
地球温暖化やオゾン層破壊を防止するために、これまで種々のフロン代替品が提案されてきた。オゾン層を守るために、オゾン破壊元素である塩素を含まないハイドロフルオロカーボン(HFC)類が普及したが、HFCは一般に大気寿命が長く、地球温暖化等の地球環境への影響が大きい。
ジクロロエチレン、トリクロロエチレン等の二重結合を有するハイドロクロロオレフィン(HCO)は、分子内に二重結合を含むので、大気中で速やかに分解するので、地球温暖化やオゾン層破壊等への影響は小さいと言われ、油溶解性に優れた溶剤であるが、一般に毒性が強いとされ、使用に際しては厳重な注意が必要であり、法律で管理方法が定められている。
近年、分子内に二重結合を含むフッ素系のフロン代替品が提案されている。ハイドロフルオロオレフィン(HFO)やハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)、クロロフルオロオレフィン(CFO)が該当する。これらはC=C二重結合を持つため、大気寿命は短い一方で、フッ素原子の導入効果によりHCOよりも低毒性のものが多い。シス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(以下HCFO−1233zd(Z)と呼ぶことがある。)や1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(以下、CFO−1214yaと呼ぶことがある。)は、工業的に大量生産されている化合物からの簡便な合成例が多く報告されている、入手性の優れた化合物である。
HCFOを含む組成物は、洗浄溶剤として使用できることが知られている。例えば特許文献1には(Z)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd(Z))と1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)とからなる共沸様組成物が開示され、当該共沸様組成物が、油分洗浄溶剤として好適に使用できることが報告されている。
また特許文献2には、当該1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(CFO−1214ya)を含む洗浄用溶剤組成物が開示されているが、HCFOやCFO同士を併用した洗浄溶剤組成物は見当たらない。
CFO−1214yaは油脂(本明細書では「油」「オイル」とも呼ぶ。)等を洗い流す作用を有するものの、その溶解力(洗浄力)はそれほど高いものではない。このため上述の特許文献2ではCFO−1214yaを第1成分とし、それに各種の有機溶剤を第2成分として加えた混合溶媒を洗浄剤として適用し、それらのSUS(ステンレス鋼)材料における各種油脂類の除去(洗浄)能力が優れていることが報告されている。しかし、ここで第2成分として用いられているのは、n−ペンタン、塩化メチレン、トリクロロエチレンなど、環境へのインパクトを否定し得ない化合物であったり、大量の入手が容易でない含フッ素化合物であったりしている。確かに総合的に見れば、一定割合以上のCFO−1214yaを使用することで、環境への影響を有意に低減しているとは言えるものの、さらなる改良の余地があった。
一方、油分や異物を除去する必要のある被洗浄物品(これを、本明細書では、「ワーク」と呼ぶことがある。)としては、金属性の物品、ガラス製の物品だけでなく、「樹脂(本明細書において「ポリマー」とも呼ぶ。)製の物品」も存在する(例えばポリカーボネート製の物品)。こうした「樹脂製の物品」が被洗浄物品である場合、油脂分を除去しようとして、当該物品を洗浄用溶剤に接触させると、被洗浄物品それ自体が、溶剤に侵食され、膨潤、変形、色調変化等が生じてしまうことが多い。例として、透明材料として広く使われているポリカーボネートを失透(白濁化)させてしまうことが挙げられる。(これらの現象を本明細書では「ポリマーアタック」と総称する。)。概して、油脂を溶解する能力の高い溶媒を用いるとき、「ポリマーアタック」は顕著であり、油脂の洗浄力を高めようとして、洗浄力の高い溶媒を用いる場合ほど、「樹脂製の物品」がポリマーアタックを受けやすい傾向がある。
よって、油脂分の溶解能力は高く、なおかつポリマーアタックを起こしにくい洗浄溶剤の選択肢はごく限られる。まして、「環境への影響の少ない物質」という制約を加えると、選択肢はさらに少なくなり、新たな洗浄用組成物の開発が求められていた。
発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、CFO−1214yaと、HCFO−1233zd(Z)が特定の組成比で混合した混合溶剤によって、上記課題が解決することを見出した。すなわち、本発明者らは、HCFO−1233zd(Z)/CFO−1214yaの質量比率が、4/96〜40/60である組成物が、油脂分等の異物を溶解除去する能力が十分高く、なおかつ、「ポリマーアタック」を生じさせにくいという、特徴的な事実を見出した。しかも、この組成物は、両成分ともに環境へのインパクトの少ないHCFOとCFOの混合物であり、環境への影響がことのほか少ない、画期的な洗浄用組成物である。なお、当該組成物は、消防法上の不燃物に該当するから、安全面においても優れている。
すなわち、本発明は次の各発明を含む。
[発明1]
HCFO−1233zd(Z)/CFO−1214yaの質量比率が、4/96〜40/60である洗浄用組成物。
HCFO−1233zd(Z)/CFO−1214yaの質量比率が、4/96〜40/60である洗浄用組成物。
[発明2]
HCFO−1233zd(Z)/CFO−1214yaの質量比率が、4/96〜20/80である洗浄用組成物。
HCFO−1233zd(Z)/CFO−1214yaの質量比率が、4/96〜20/80である洗浄用組成物。
[発明3]
樹脂を含む被洗浄物品を洗浄するための、請求項1又は請求項2に記載の洗浄用組成物。
樹脂を含む被洗浄物品を洗浄するための、請求項1又は請求項2に記載の洗浄用組成物。
[発明4]
発明1乃至発明3の何れかに記載の洗浄用組成物を「樹脂を含む被洗浄物品」と所定時間接触させる工程と、
前記洗浄用組成物を前記被洗浄物品から、液体の状態で分離する工程と、
を含む、前記被洗浄物品の洗浄方法。
発明1乃至発明3の何れかに記載の洗浄用組成物を「樹脂を含む被洗浄物品」と所定時間接触させる工程と、
前記洗浄用組成物を前記被洗浄物品から、液体の状態で分離する工程と、
を含む、前記被洗浄物品の洗浄方法。
[発明5]
樹脂がエラストマーである、発明4に記載の方法。
樹脂がエラストマーである、発明4に記載の方法。
[発明6]
樹脂がABS、軟質塩化ビニル、およびポリカーボネートから選ばれる樹脂である、発明4に記載の方法。
樹脂がABS、軟質塩化ビニル、およびポリカーボネートから選ばれる樹脂である、発明4に記載の方法。
本発明の組成物は、地球環境への負荷が小さく、不燃性で、洗浄用溶媒としての使用に適する。とりわけ、本発明の組成物は、油脂分等の異物を溶解除去する能力は十分高く、なおかつ、「ポリマーアタック」を生じにくいため、樹脂(ポリカーボネート等)を構成成分として含む被洗浄物品(ワーク)の洗浄溶媒として好適に使用できるという効果を奏する。
HCFO−1233zd(Z)は次世代発泡剤として工業的に製造されている(E)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd(E))を異性化することにより、入手可能である[米国特許出願公開第2010/152504号明細書]。CFO−1214yaは工業的に洗浄剤として製造されているHCFC−225ca(1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン)を、相間動触媒存在下で塩基性水溶液と接触させることにより、容易に合成可能である[前記特許文献1参照]。
油性汚れに対する洗浄力の目安として用いられる指標としては、KB値(カウリブタノール値)が知られている。この値が大きいほど、油脂の洗浄力が強くなる。しかし一般に、KB値の大きい洗浄剤は、油脂を洗浄する能力が強いと同時にポリマーアタックを起こしやすい。逆に、KB値の小さい洗浄剤はポリマーにダメージを与えにくいが、油脂の洗浄力が小さい傾向にある。
本発明において、米国試験材料協会規格(ASTM:D1133-13)に準拠した方法でKB値を測定したところ、HCFO−1233zd(Z)は36、CFO−1214yaは21であった。すなわち、HCFO−1233zd(Z)はCFO−1214yaと比較して油性汚れに対する溶解力の強い溶剤と言える。しかし、多成分系のKB値は実施例に示したように、組成比の単純な相加平均ではなく、実際に組成物を調製して測定することによって、初めて求めることのできる数値である。
後述の実施例1に示した通り、HCFO−1233zd(Z)/CFO−1214yaの質量比率が40/60〜100/0の領域においてはHCFO−1233zd(Z)単独のKB値とほとんど変わらず一定で、反面、HCFO−1233zd(Z)/CFO−1214yaの質量比率が0/100〜40/60の領域において(特に質量比率が0/100〜10/90という、CFO−1214yaが相対的に多い領域で)、著しくKB値が変化することが判明した。
油脂の洗浄力やポリマーアタックを予想するにあたり、KB値はいくつかの洗浄力評価の指標の中で、最も信頼性の高い指標の1つであるが、あくまでも目安であり、実際に洗浄して洗浄力やポリマーアタックを確認しないと優れた洗浄剤といえないので、実際に洗浄試験やポリマーアタックを実験することが重要である。その結果、CFO−1214ya単独では洗浄力不足と認められたが、HCFO−1233zd(Z)を4質量%以上にすると、油溶解性が大幅に改善された。なおかつ、HCFO−1233zd(Z)/CFO−1214yaの質量比率が40/60までであれば、各種樹脂に対するポリマーアタックも抑制できることが判った。すなわち、HCFO−1233zd(Z)/CFO−1214yaの質量比率が4/96〜40/60の領域においては、特異的に油脂の洗浄力とポリマーアタックの最小化と言う、相反する要求性能を満足することが判明した。この中でも、HCFO−1233zd(Z)/CFO−1214yaの質量比率が4/96〜20/80という領域においては、後述の実施例に示す通り、1時間という、比較的長い時間、浸漬を行っても、各種樹脂物品はポリマーアタックをごく受けにくく、なおかつ、油脂の溶解性も十分に高いことが判った。このため、HCFO−1233zd(Z)/CFO−1214yaの質量比率が4/96〜20/80という領域は、本発明の中でも特に好ましい組成である。
本発明の洗浄用組成物は、樹脂がエラストマーである被洗浄物品(ワーク)に対して、特に好適に使用できる。エラストマーとしては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレン(CR)、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、天然ゴム(NR)、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(HNBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、フッ素ゴム(FKM)、ウレタンゴム(U)等が挙げられる。また塩化ビニルの中にも、エラストマーに該当する軟質塩化ビニルが存在する。
本発明の洗浄用組成物は、ABS、軟質塩化ビニル、およびポリカーボネートから選ばれる樹脂を含む被洗浄物品(ワーク)に対しても、好適に使用できる。
エラストマーである軟質塩化ビニル樹脂の場合、HCFO−1233zd(Z)/CFO−1214yaの質量比率が4/96から20/80の領域は、1時間という長時間の浸漬において透明を保持した好ましい組成比であった。
一方、透明材料であるポリカーボネート樹脂の場合は、HCFO−1233zd(Z)/CFO−1214yaの質量比率が4/96から40/60の領域は、1時間の浸漬において透明を保持した好ましい組成比であった。
一方、汎用プラスティックであるアクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)の場合は、HCFO−1233zd(Z)/CFO−1214yaの質量比率が4/96から20/80の領域は、1時間の浸漬において、表面の溶解が認められない好ましい組成比であった。
この他、HCFO−1233zd(Z)/CFO−1214yaの質量比率が4/96から40/60、より好ましくは4/96〜20/80の組成比の洗浄剤は、ポリエチレン,アクリル,ポリ塩化ビニル(軟質),ポリ塩化ビニル(硬質),リプロピレン,クロロプレン,アクリロニトリルブタジエンゴム,フッ素ゴム,シリコンゴム,ブチルゴム,天然ゴム,エチレンプロピレンゴム,テフロン(登録商標),ナイロン66,ポリエステルガラス,フェノール,ポリカーボネート,ポリアセタール,クロロスルホン化ポリエチレンゴム,水素化アクリロニトリルブタジエンゴム,ポリフッ化ビジニデン,ナイロン,スチレンブタジエンゴム,ポリスチレン等の各種樹脂に使用可能である。
ワーク材質、汚れの程度により洗浄時間、洗浄温度、超音波洗浄時の周波数や強度は適時調整することができる。特にエラストマーを含む部品の場合は1分未満の洗浄が推奨される。
ワークが樹脂を含まない物品であれば、洗浄時間、洗浄温度には特段の制限はない。組成物が沸騰状態でも洗浄も可能である。
ワークが樹脂を含む物品である場合、洗浄温度、洗浄時間は適宜予備実験を行って定めればよい。推奨例としては、洗浄温度は0℃〜洗浄液の沸点、洗浄時間は1秒から2時間が典型的である。
洗浄方法は、特に限定されず、従来から用いられている方法を採用することができる。超音波洗浄および/または加熱洗浄後、すすぎ洗浄および/または蒸気洗浄を行うことが推奨される。超音波洗浄およびまたは加熱洗浄後、直ちに洗浄用組成物を気化させて、被洗浄物品から分離すると、洗浄用組成物中の汚れが被洗浄物品に残ることがある。すなわち、洗浄用組成物を液体のまま分離することが好ましい。具体的には、汚れの濃度が管理された洗浄用組成物ですすぎ洗浄および/または蒸気洗浄を実施する方法が推奨される。特に、蒸気洗浄は簡便なので好ましい。
具体的には、本発明洗浄方法としては、浸漬、スプレー、加熱洗浄、超音波洗浄、蒸気洗浄、若しくはこれらの組み合わせが挙げられる。中でも後述の実施例に示すように、浸漬を行うことで、汚れを除去する方法が特に好ましい。ここで、浸漬とは、油等の汚れが付着した対象物(被洗浄物)を、本発明の組成物と接触させることを指す。被洗浄物を本発明の組成物に浸漬させることにより、被洗浄物に付着した汚れを該組成物中に溶解させることで、汚れを被洗浄物から取り除くことができる。なお、当該浸漬操作と共に、他の洗浄操作(沸騰洗浄、超音波洗浄など)を組み合わせることもできる。
ワーク(被洗浄物品)の種類は限定されないが、例として、電子部品(プリント基板、液晶表示器、磁気記録部品、半導体材料等)、電機部品、精密機械部品、樹脂加工部品、光学レンズ、衣料品等の洗浄が挙げられる。汚れの種類も限定されないが、CFC−113、HCFC−141b、HCFC−225で除去可能な汚れは、HCFO−1233zd(Z)/CFO−1214yaの質量比率が4/96から40/60の範囲で最適化することで除去することが可能であり、そのような汚れとしてはパーティクル、油、グリース、ワックス、フラックス、インキ等が挙げられる。
本組成物は洗浄剤としてだけでなく、溶剤、シリコーン溶剤、発泡剤、作動流体にも使用可能である。作動流体用途においてはヒートポンプの機器内には種々の樹脂やエラストマーが使用されているが、本組成物は、HCFO−1233zd(Z)単独使用の場合と比較すると、それらの劣化を緩和する効果を有する。
当業者の所望により、HCFO−1233zd(Z)とCFO−1214yaの組成物に各種の添加剤を加えることが可能である。この場合も、HCFO−1233zd(Z)/CFO−1214yaの質量比率は4/96〜40/60であり、より好ましくは4/96から20/80である。
そのような添加物としては、洗浄力、界面作用等をより一層改善する為各種、界面活性剤が挙げられる。この界面活性剤としては、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート等のソルビタン脂肪族エステル類;ポリオキシエチレンのソルビットテトラオレエート等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンモノラウレート等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ポリオキシエチレンオレイン酸アミド等のポリオキシエチレンアルキルアミン脂肪酸アミド類等のノニオン系界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で使用されてもよく、2種以上組み合わせて使用されてもよい。相乗的に洗浄力及び界面作用を改善する目的で、これらのノニオン系界面活性剤に加えてカチオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤を本発明の組成物を含む洗浄剤に添加してもよい。界面活性剤の使用量は、その種類により異なるが、通常、HCFO−1233zd(Z)とCFO−1214yaの組成物に対して0.1質量%以上20質量%以下であり、0.3質量%以上5質量%以下とすることが好ましい。
本発明の組成物を含む洗浄剤には、前記添加剤として更に各種の安定剤を添加してもよい。安定剤の種類は特に限定されない。安定剤としては、ニトロ化合物、エポキシ化合物、フェノール類、イミダゾール類、アミン類、炭化水素類等が挙げられる。安定剤の使用量は、その種類により異なるが、通常、HCFO−1233zd(Z)とCFO−1214yaの組成物に対して0.1質量%以上20質量%以下であり、0.3質量%以上5質量%以下とすることが好ましい。
ニトロ化合物としては、公知の化合物が用いられてもよく、脂肪族及び/または芳香族誘導体などが挙げられる。脂肪族系ニトロ化合物として、例えば、ニトロメタン、ニトロエタン、1−ニトロプロパン、2−ニトロプロパン等が挙げられる。芳香族ニトロ化合物として、例えば、ニトロベンゼン、o−、m−又はp−ジニトロベンゼン、トリニトロベンゼン、o−、m−又はp−ニトロトルエン、o−、m−又はp−エチルニトロベンゼン、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−又は3,5−ジメチルニトロベンゼン、o−、m−又はp−ニトロアセトフェノン、o−、m−又はp−ニトロフェノール、o−、m−又はp−ニトロアニソール等が挙げられる。
エポキシ化合物としては、例えば、エチレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、グリシドール、エピクロルヒドリン、グリシジルメタアクリレート、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル等のモノエポキシ系化合物、ジエポキシブタン、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントルグリシジルエーテル等のポリエポキシ系化合物等が挙げられる。
フェノール類としては、水酸基以外にアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、ハロゲン等各種の置換基を含むフェノール類も含むものである。例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、チモール、p−t−ブチルフェノール、o−メトキシフェノール、m−メトキシフェノール、p−メトキシフェノール、オイゲノール、イソオイゲノール、ブチルヒドロキシアニソール、フェノール、キシレノール等の1価のフェノールあるいはt−ブチルカテコール、2,5−ジ−t−アミノハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン等の2価のフェノール等が挙げられる。
イミダゾール類としては、炭素数1以上18以下の直鎖もしくは分岐を有するアルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基をN位の置換基とする、1−メチルイミダゾール、1−n−ブチルイミダゾール、1−フェニルイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、1−(β−オキシエチル)イミダゾール、1−メチル−2−プロピルイミダゾール、1−メチル−2−イソブチルイミダゾール、1−n−ブチル−2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,4−ジメチルイミダゾール、1,5−ジメチルイミダゾール、1,2,5−トリメチルイミダゾール、1,4,5−トリメチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール等が挙げられる。アミン類としては、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジアリルアミン、トリエチルアミン、N−メチルアニリン、ピリジン、モルホリン、N−メチルモルホリン、トリアリルアミン、アリルアミン、α―メチルベンジルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ジベンチルアミン、トリベンチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ベンジルアミン、ジベンジルアミン、ジフェニルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等が挙げられる。
これらは単独で用いられてもよく、2種以上の化合物が併用されてもよい。
本発明を、実施例によって説明する。
[実施例1]
表1記載の質量比率のHCFO−1233zd(Z)とCFO−1214yaの組成物を調製し、ASTM:D1133-13に記載された方法に準拠して、KB値を求めた。すなわち、カウリ樹脂-ブタノール溶液を調製し、溶液が濁るサンプル量を確認した。検量線は、ヘプタンとトルエンを体積比75:25で混合した溶液(KB値=40)、CF3CH2CF2CH3(SOLVAY社製SOLKANE365mfc,KB値=13)、C4F9OMe(3M社製Novec7100,KB値=10)の三点を用いて作成した。
軟質塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂をそれぞれの組成物に1時間投入し、圧縮空気を吹き付けた後、表面状態を観察した。これらの結果を表1に示した。また、表1のHCFO−1233zd(Z)の組成比率を横軸に、KB値を縦軸にとってプロットしたグラフを図1に示す。
(なお、本実施例の表中、HCFO−1233zd(Z)を1233Z、CFO−1214yaを1214と略記している。)
表1記載の質量比率のHCFO−1233zd(Z)とCFO−1214yaの組成物を調製し、ASTM:D1133-13に記載された方法に準拠して、KB値を求めた。すなわち、カウリ樹脂-ブタノール溶液を調製し、溶液が濁るサンプル量を確認した。検量線は、ヘプタンとトルエンを体積比75:25で混合した溶液(KB値=40)、CF3CH2CF2CH3(SOLVAY社製SOLKANE365mfc,KB値=13)、C4F9OMe(3M社製Novec7100,KB値=10)の三点を用いて作成した。
軟質塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂をそれぞれの組成物に1時間投入し、圧縮空気を吹き付けた後、表面状態を観察した。これらの結果を表1に示した。また、表1のHCFO−1233zd(Z)の組成比率を横軸に、KB値を縦軸にとってプロットしたグラフを図1に示す。
(なお、本実施例の表中、HCFO−1233zd(Z)を1233Z、CFO−1214yaを1214と略記している。)
このように、本発明の組成物のKB値は、単純にHCFO−1233zd(Z)およびCFO−1214yaのKB値の加重平均とはならず、HCFO−1233zd(Z)/CFO−1214yaの質量比率が0/100〜40/60の領域において(特に質量比率が0/100〜10/90という、HCFO−1233zd(Z)が相対的に多い領域で)、著しくKB値が変化することが判った。
また、上記実施例では、軟質塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂を被洗浄物品として、1時間という比較的長い時間に渡って、浸漬処理を行っているが、HCFO−1233zd(Z)/CFO−1214yaの質量比率が5/95から20/80の範囲に渡って、各種被洗浄物品の性状の変化が観測されないことが判る。HCFO−1233zd(Z)/CFO−1214yaの質量比率が20/80を超え、40/60に至る範囲では、被洗浄物品の種類にも依存して、やや変化が認められるが、その程度は、HCFO−1233zd(Z)単独の場合に比べると、有意に少なく、ポリマーアタックは最小限に抑えられている。
[実施例2,比較例1]
4種類の樹脂のテストピースを被洗浄物品とし、HCFO−1233zd(Z)/CFO−1214yaの質量比率を変化させて、それぞれのポリマーアタック性とオイルの除去状況を調べた(実験番号2−1〜2−49の計49データ)。結果を表2〜表5にまとめる。
4種類の樹脂のテストピースを被洗浄物品とし、HCFO−1233zd(Z)/CFO−1214yaの質量比率を変化させて、それぞれのポリマーアタック性とオイルの除去状況を調べた(実験番号2−1〜2−49の計49データ)。結果を表2〜表5にまとめる。
水平に置いた樹脂のテストピースの中央部に切削油(株式会社ジャパンエナジー製ルブカットB−35)を1滴垂らして1時間静置した。その後、表2記載の各質量比率(%)の組成物中に30分間投入後引き上げて、圧縮空気を吹き付けた後、表面状態を観察した。洗浄評価は目視にて、オイルの跡が確認された場合は×、確認されない場合は○とした。ポリマーアタック評価は目視にて5段階評価を行った(表面状態が未洗浄と変わらない場合を5、著しい侵食や寸法変化が認められた場合を1とした)。
結果を、樹脂の種類ごとに表2〜5に示すが、天然ゴム、軟質ポリ塩化ビニル、プロピレンカーボネート、ABSの全てのワークに対して、HCFO−1233zd(Z)が5〜20質量%の領域は、ポリマーアタックは認められず、油を好適に除去できる組成であることが判明した。
一方、HCFO−1233zd(Z)が20質量%超、40質量%以下の領域は、ワークによって僅かな依存性が認められた。すなわち、この領域では、天然ゴムと、ポリ塩化ビニルについては、評価=4であって、長時間の浸漬によって、僅かな変化が認められた。これに対して、ABSの場合には、それよりも若干大きな変化が認められ、逆にプロピレンカーボネートの場合は、評価が5のままであって、ポリマーアタックは認められなかった。
このように被洗浄物品の種類に応じて、ポリマーアタックの度合いは、若干異なる(特にHCFO−1233zd(Z)が20質量%超、40質量%以下の領域では)。しかしながら、ポリマーアタックの度合いは、洗浄時間を調整することによって低減させることが可能である。
このように、本実施例によって、HCFO−1233zd(Z)/CFO−1214yaの質量比率が4/96から40/60の範囲においては、ポリマーアタックを最小限に抑えつつ、油分の除去を行えることが、裏付けられた。
[実施例3,比較例2]
切削油(株式会社ジャパンエナジー製ルブカットB−35)の代わりに、タービン油(JX日鉱日石エネルギー株式会社製タービンオイル ISO粘度グレード68)、潤滑油(日本サン石油株式会社製スニソ4GS)、シリコーン油A(信越化学工業株式会社製KF-54)、シリコーン油B(信越化学工業株式会社製KF-54)を用いて実施例2、比較例1と全く同様の実験を行った。(樹脂も、天然ゴム、軟質ポリ塩化ビニル、プロピレンカーボネート、ABSの4種類:すなわち49×4=156データ)。
切削油(株式会社ジャパンエナジー製ルブカットB−35)の代わりに、タービン油(JX日鉱日石エネルギー株式会社製タービンオイル ISO粘度グレード68)、潤滑油(日本サン石油株式会社製スニソ4GS)、シリコーン油A(信越化学工業株式会社製KF-54)、シリコーン油B(信越化学工業株式会社製KF-54)を用いて実施例2、比較例1と全く同様の実験を行った。(樹脂も、天然ゴム、軟質ポリ塩化ビニル、プロピレンカーボネート、ABSの4種類:すなわち49×4=156データ)。
その結果、全てのオイルにおいて、HCFO−1233zd(Z)が3質量%以下の実験においては、オイルの洗浄不良が認められ、HCFO−1233zd(Z)が5質量%以上の実験においては、実施例2と同様にオイル洗浄が良好であった。(表2〜5と同じ結果であったため、表の添付は省略する。)
すなわち、「油脂の溶解性」という点においては、油脂の種類による有意な依存性は認められないという結果が得られた。
すなわち、「油脂の溶解性」という点においては、油脂の種類による有意な依存性は認められないという結果が得られた。
Claims (6)
- (Z)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd(Z))/1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(CFO−1214ya)の質量比率が、4/96〜40/60である洗浄用組成物。
- (Z)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd(Z))/1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(CFO−1214ya)の質量比率が、4/96〜20/80である洗浄用組成物。
- 樹脂を含む被洗浄物品を洗浄するための、請求項1又は請求項2に記載の洗浄用組成物。
- 請求項1乃至請求項3の何れかに記載の洗浄用組成物を、樹脂を含む被洗浄物品と所定時間接触させる工程と、
前記洗浄用組成物を前記被洗浄物品から、液体の状態で分離する工程と、
を含む、前記樹脂を含む被洗浄物品の洗浄方法。 - 樹脂がエラストマーである、請求項4に記載の方法。
- 樹脂がABS、軟質塩化ビニル、およびポリカーボネートから選ばれる樹脂である、請求項4に記載の方法。
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---|---|---|---|---|
JP2017043742A (ja) * | 2015-08-28 | 2017-03-02 | 旭硝子株式会社 | 溶剤組成物 |
JP2018009113A (ja) * | 2016-07-14 | 2018-01-18 | ディップソール株式会社 | 洗浄用溶剤組成物 |
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CN109477046A (zh) * | 2016-07-14 | 2019-03-15 | 迪普索股份公司 | 清洗用溶剂组合物 |
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